以下に、本発明の実施の形態にかかる電力取引調整装置、電力取引調整システムおよび電力取引調整方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電力取引調整システムの構成例を示す図である。本実施の形態の電力取引調整システムは、本発明にかかる電力取引調整装置である相対契約調整装置1と、相対契約調整装置1に接続される事業者装置2−1〜2−3とを備える。事業者装置2−1〜2−3は、それぞれが異なる電気事業者(以下、事業者とも呼ぶ)により管理される装置である。事業者装置2−1〜2−3は同様の構成を有しており、以下事業者装置2−1〜2−3を個別に区別せずに示すときには、事業者装置2と呼ぶ。なお、図1では相対契約調整装置1に接続される事業者装置2を3台図示しているが、相対契約調整装置1に接続される事業者装置2の数は図1に示した例に限定されない。
相対契約調整装置1は、相対契約によって取引される電力量の計画値(以下、相対契約の計画値ともいう)を調整する。本実施の形態における相対契約は、2つの事業者間で締結される電力の供給に関する契約である。相対契約は、1対1で締結される契約であり、契約の内容は当事者間、すなわち事業者間で合意される。事業者は、本実施の形態の電力取引調整システムに参加する際には、事業者装置2を相対契約調整装置1に接続し、事業者装置2を介して相対契約調整装置1へ、計画値の調整に必要な情報を提供する。これにより、事業者は、相対契約の計画値の調整のサービスを受けることができる。相対契約調整装置1は、複数の電気事業者によって共同で管理される装置であってもよいし、電気事業者以外の第3者により管理される装置であってもよいし、特定の電気事業者により管理される装置であってもよい。相対契約の計画値の調整の処理については後述する。
事業者装置2−1は、需給管理システム3−1と接続され、事業者装置2−2は、需給管理システム3−2と接続される。需給管理システム3−1は、事業者装置2−1を管理する事業者により管理され、需給管理システム3−2は、事業者装置2−2を管理する事業者により管理される。需給管理システム3−1,3−2は、対応する事業者の管理対象の設備による需給量、例えば電力の需要量および発電量のうち少なくとも一方を管理する。需給管理システム3−1,3−2は、それぞれの構成および機能は異なっていてもよい。例えば、需給管理システム3−1を管理する事業者が電力小売事業者である場合、需給管理システム3−1は、該事業者と契約している需要家の需要量を管理する。需給管理システム3−1を管理する事業者が電力小売事業者であり、かつこの電力小売事業者が発電機を有している場合には、需給管理システム3−1は、さらに、発電機による発電量を管理する。また、需給管理システム3−2を管理する事業者が発電事業者である場合には、需給管理システム3−2は、発電機による発電量を管理する。
需給管理システム3−1,3−2は、管理している需給量に基づいて、需給計画を生成し広域機関システム4へ送信する。広域機関システム4は、広域機関により管理されるシステムであり、事業者からの需給計画の提出を受け付け、各事業者の需給計画を管理する。具体的には、事業者が広域機関に提出する需給計画には、翌日の計画を示す翌日計画と当日の計画を示す当日計画とがある。これらの計画では、30分を1枠とする時間帯ごとの需給量の計画値が示される。翌日計画の提出期限は、実際の需給の生じる日の前日の12時であり、当日計画の提出期限は、30分単位の時間帯の開始時刻の1時間前である。翌日計画では、翌日の1日分、すなわち48枠分の計画値が示される。また、これらの提出期限は現在の日本において定められた値を一例として示しており、各計画の提出期限はこの例に限定されず、例えば、今後、上述した提出期限が変更された場合にも、変更後の期限を用いて本実施の形態の電力取引調整システムは、同様の処理を行うことが可能である。
また、本実施の形態では、広域機関が各事業者の計画を管理する例を説明するが、広域機関の代わりに他の機関、国、事業者などにより各事業者の計画が管理されてもよい。この場合には、広域機関システム4のかわりに、各事業者の計画を管理する計画管理システムが用いられる。また、ここでは、電力取引調整システムが日本で運用される例を挙げて説明するが、本実施の形態の電力取引調整システムは日本以外の他国で運用されてもよい。本実施の形態の電力取引調整システムが他国で運用される場合、広域機関システム4のかわりに、各国において広域機関と同様に事業者の計画を管理する管理システムが用いられる。広域機関と同様の機関の例としては、米国のPJM(Pennsylvania-New Jersey-Maryland)、英国のNGESO(National Grid Electricity System Operator)、インドのPOSOCO(POwer System Operation COrporation Limited)などが挙げられる。また、各計画の提出期限についても、各管理システムで定められた期限が用いられればよい。
図1に示した例では、事業者装置2−1,2−2がそれぞれ需給管理システム3−1,3−2と接続され、事業者装置2−3は需給管理システムと接続されていない。このように、本実施の形態の相対契約調整装置1は、需給管理システムを有している事業者だけでなく、需給管理システムを有していない事業者に対しても相対契約の計画値の調整のサービスを提供可能である。以下、需給管理システム3−1,3−2を個別に区別せずに示すときには、需給管理システム3と呼ぶ。なお、需給管理システム3に接続される事業者装置2の数、および需給管理システム3に接続されない事業者装置2の数は、図1に示した例に限定されない。
本実施の形態の電力取引調整システムに参加する事業者は、上述した通り、他の事業者との間で相対契約を締結している。相対契約を締結する事業者は、広域機関に翌日計画、当日計画を提出する必要があるとともに、契約相手の事業者との間で各計画における計画値を合意しておく必要がある。このため、事業者は、需要量または発電量などが、前日の予想から変化して計画値を変更したいとしても、自由に変更することはできない。従来は、例えば、相対契約を締結している事業者は、次のような手順で計画値を調整している。まず、相対契約を締結している事業者の両者は、12時までに、翌日の計画値を、一旦、合意の上確定させて、それぞれが、広域機関へ、合意した計画値を反映させた翌日計画を提出する。その後に、計画値を変更する必要が生じた場合、事業者は、その都度、当事者間で電話などの人手により計画値を調整し、調整後の計画値を反映させた当日計画を広域機関へ提出している。このように、従来は、合意した計画値を変更する場合には、手間がかかっていた。人手による調整は、変更の要求元となる事業者だけでなく、契約相手の事業者にとっても手間がかかることになる。特に、複数の事業者と相対契約を締結している事業者は、契約ごとに上記の調整を行うことになり、当日の状況に応じて計画値を柔軟に変更することは難しい。
本実施の形態では、相対契約調整装置1に、相対契約ごとにあらかじめ調整のための条件を登録しておき、相対契約調整装置1が、この調整条件に基づいて、翌日計画の提出後の計画値の調整を自動で実施する。これにより、手間を抑制して、相対契約を締結している事業者の需給量の計画値の調整を行うことができる。
次に、相対契約調整装置1および事業者装置2の構成例について説明する。図1に示すように、相対契約調整装置1は、通信部11、計画値登録部12、調整条件登録部13、記憶部14、チェック結果反映部15、計画調整部16、トランザクション監視部17、結果出力部18および広域機関連係部19を備える。
通信部11は、事業者装置2をはじめとした他の装置との間で通信を行う。計画値登録部12は、事業者装置2から通信部11を介して、計画値を示す情報である計画値情報を受信すると、受信した計画値情報を記憶部14へ格納することにより、計画値を登録する。事業者装置2から通信部11を介して、計画値の調整における調整条件を示す情報である調整条件情報を受信すると、受信した調整条件情報を記憶部14へ格納することにより、調整条件を登録する。
記憶部14は、契約基本情報、計画値情報、調整条件情報および調整量情報を記憶する。契約基本情報は、相対契約ごとの契約に関する情報であり、調整量情報は、本実施の形態の計画値の調整で用いられる情報である。契約基本情報、計画値情報、調整条件情報および調整量情報の詳細については後述する。
チェック結果反映部15は、通信部11を介して、計画チェック者の事業者装置2からチェック結果を受信すると、チェック結果を記憶部14の計画値情報に反映する。計画調整部16は、通信部11を介して計画調整要求を受信し、計画調整要求と調整条件情報とに基づいて、計画値の調整対象となる相対契約と計画値を変更する量である調整量とを決定する調整処理を行う。計画調整要求は、計画値を、後述する仮の確定値から変更するための調整を相対契約の当事者である2つの事業者のうち一方の事業者が要求することを示す要求であり、詳細は後述する。トランザクション監視部17は、計画調整部16による計画値の調整がループ状に行われることを避けるために、対応する事業者の計画値の変動可能量を変更する。変動可能量については後述する。チェック結果反映部15、計画調整部16およびトランザクション監視部17の動作の詳細については後述する。
結果出力部18は、計画調整部16による調整の結果を出力する。結果出力部18による調整の結果の出力方法は、事業者装置2へ調整の結果を送信する方法であってもよいし、調整の結果を画面表示する方法であってもよい。前者の場合には、事業者装置2が、調整の結果を画面表示することで事業者へ調整の結果を知らせることができる。
広域機関連係部19は、計画調整部16による調整の結果を計画値情報に反映させ、調整の結果を反映させた計画値情報を、通信部11を介して、調整により計画値が変更された事業者の需給管理システム3へ送信する。これにより、事業者装置2は、調整後の計画値を当日計画に反映させ、調整を反映させた当日計画を広域機関システム4へ送信することができる。なお、事業者装置2が需給管理システム3と接続される場合には、当日計画の広域機関システム4への送信は、需給管理システム3によって行われる。この場合、事業者装置2は、調整後の計画値を反映した翌日結果を、需給管理システム3を介して広域機関システム4へ送信する。
ここで、相対契約における計画登録者と計画チェック者について説明する。相対契約では、相対契約を締結している2つの事業者のうちの一方が計画登録者となり、他方が計画チェック者となる。計画登録者は、翌日計画として提出される翌日の計画値を登録する事業者であり、計画チェック者は、登録された計画値をチェックする事業者である。本実施の形態では、計画値は、事業者装置2から相対契約調整装置1に送信されることにより、登録される。計画チェック者は、登録された計画値をチェックし、登録された計画値に問題が有る場合には、計画登録者と調整の上、計画値を修正する。また、計画チェック者は、登録された計画値に問題が無い場合には、計画値を修正せずに承認する。計画チェック者は、例えば、事業者装置2を用いて、登録された計画値の修正量を、チェック結果として相対契約調整装置1へ送信する。登録された計画値が承認された場合には、修正量は0となる。相対契約調整装置1のチェック結果反映部15は、チェック結果を通信部11を介して、チェック計画者の事業者装置2から受信すると、チェック結果を、記憶部14に登録されている対応する計画値情報に反映する。なお、チェック結果の通知方法はこの例に限定されない。
図2は、本実施の形態の事業者装置2の構成例を示す図である。事業者装置2は、通信部21、計画作成部22、計画チェック部23、調整条件管理部24、調整要求生成部25および表示部26を備える。通信部21は、相対契約調整装置1をはじめとした他の装置との間で通信を行う。計画作成部22は、翌日の30分ごとの需給量の計画値を作成し、30分ごとの各計画値を計画値情報として通信部21を介して相対契約調整装置1へ送信する。なお、事業者装置2が需給管理システム3に接続される場合には、計画作成部22は、需給管理システム3から翌日計画を取得し、取得した翌日計画に基づいて翌日の30分ごとの需給量の計画値を作成してもよい。計画チェック部23は、通信部21を介して、相対契約調整装置1からまたは相対契約の相手方の事業者の事業者装置2から、相手方の事業者の計画値を示す計画値情報を取得し、相手方の事業者の計画値をチェックする。計画作成部22の処理は、計画作成部22を備える事業者装置2を管理する事業者が計画作成者である場合に行われ、計画チェック部23の処理は、計画チェック部23を備える事業者装置2を管理する事業者が計画チェック者である場合に行われる。
調整条件管理部24は、計画チェック部23を備える事業者装置2を管理する事業者が変動吸収者である場合に、調整条件を決定し、決定した調整条件を相対契約調整装置1へ通信部11を介して送信する。変動吸収者および調整条件については後述する。調整要求生成部25は、翌日計画の提出期限後に、計画値を変更する場合に、計画値の変更を要求するための計画調整要求を作成し、通信部21を介して相対契約調整装置1へ送信する。計画調整要求の詳細については後述する。表示部26は、計画作成部22により作成された計画値情報、契約の相手方が登録した計画値情報、相対契約調整装置1から受信した調整の結果、などを画面表示する。
なお、図2では、事業者装置2が、計画値のチェックを行う計画チェック部23を備える例を説明したが、相対契約調整装置1が、計画値のチェックを行う計画チェック部を備えてもよい。この場合、例えば、各事業者が事業者装置2を用いて相対契約調整装置1へログインするなどにより、アクセスして計画チェックの実行を指示することにより、相対契約調整装置1が相手方の事業者により登録された計画値情報を実行する。なお、この場合、相対契約調整装置1に記憶されている計画値情報については、計画値情報のうち相対契約ごとに、この相対契約に対応する計画値情報のみ閲覧および編集が可能なように構成される。
なお、以上の例では、相対契約を締結している事業者の一方が計画登録者であり他方が計画チェック者であったが、翌日計画の提出期限までに相対契約を締結する事業者間で計画値が合意される方法であればよく、この例に限定されない。
次に、本実施の形態の電力取引調整システムを構成する各装置のハードウェアについて説明する。本実施の形態の相対契約調整装置1は、コンピュータシステム上で、相対契約調整装置1における処理が記述されたプログラムである電力取引調整プログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが相対契約調整装置1として機能する。図3は、本実施の形態の相対契約調整装置1を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図3に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
図3において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の相対契約調整装置1における処理が記述された電力取引調整プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタなどである。なお、図3は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図3の例に限定されない。
ここで、本実施の形態の電力取引調整プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)−ROMまたはDVD(Digital Versatile Disc)−ROMドライブにセットされたCD−ROMまたはDVD−ROMから、電力取引調整プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、電力取引調整プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された電力取引調整プログラムが記憶部103に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の相対契約調整装置1としての処理を実行する。
なお、上記の説明においては、CD−ROMまたはDVD−ROMを記録媒体として、相対契約調整装置1における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
図1に示した計画値登録部12、調整条件登録部13、チェック結果反映部15、計画調整部16、トランザクション監視部17、結果出力部18および広域機関連係部19は、図3の制御部101により実現される。また、調整条件登録部13、チェック結果反映部15、計画調整部16、トランザクション監視部17、結果出力部18および広域機関連係部19の実現には、記憶部103も用いられる。図1に示した記憶部14は、図3に示した記憶部103により実現される。図1に示した通信部11は、図3に示した通信部105により実現される。結果出力部18は、制御部101に加えて出力部106により実現される。
図2に示した事業者装置2もコンピュータシステムにより実現される。事業者装置2は、例えば、相対契約調整装置1と同様に、図3に示したコンピュータシステムにより実現される。本実施の形態の事業者装置2は、コンピュータシステム上で、事業者装置2における処理が記述されたプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが事業者装置2として機能する。プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作は、相対契約調整装置1と同様である。
図2に示した計画作成部22、計画チェック部23および調整要求生成部25は、図3の制御部101により実現される。また、計画作成部22、計画チェック部23および調整要求生成部25の実現には、記憶部103も用いられる。図2に示した通信部11は、図3に示した通信部105により実現される。図2に示した表示部26は、図3に示した出力部106により実現される。
次に、本実施の形態の電力取引調整システムの動作について説明する。まず、本実施の形態において各処理が行われる期間について説明する。図4は、本実施の形態の電力取引調整システムにおいて実施される各処理と期間の関係を示す図である。図4では、需給が実際に発生する日を当日とし、当日の前の日を前日として記載している。上述したように、各事業者は、前日には、翌日すなわち図4における当日にあたる日の需給に関する計画を翌日計画として広域機関に提出する必要がある。図4に示した例では、翌日計画の最終的な提出締切である翌日計画提出期限は、前日の12:00である。翌日計画提出期限は、相対契約の有無にかかわらず、すべての事業者が守るべき期限である。
図4に示した例では、計画登録期限は、翌日計画提出期限である前日の12:00の一時間前、すなわち前日の11:00に設定されている。計画登録期限は、相対契約ごとに設定される期限である。計画登録者は、計画登録期限までに翌日の計画値を、相対契約調整装置1に登録する。図4に示すように、計画登録者が翌日の計画値を登録可能な計画登録期間は、計画登録期限以前の期間である。なお、計画登録期間の始点は、計画登録期限より前であれば任意に決定可能である。計画登録期限から翌日計画提出期限までが、計画登録者によって計画をチェックすることが可能な計画チェック期間となる。
上述したとおり、本実施の形態では、相対契約調整装置1が、翌日計画提出期限より後、相対契約ごとの調整条件に応じて、自動で計画値を調整する。相対契約調整装置1により計画値を調整可能な期間を、調整期間と呼ぶ。調整期間の始点は翌日計画提出期限であり、調整期間の終点である計画調整期限(以下、図では調整期限と記載)は、相対契約ごとに定められる。計画調整期限は、ゲートクローズより前となるように設定される。ゲートクローズは、当日計画の広域機関への提出期限であり、図4に示した例では、調整の対象となる枠(図4では調整対象コマと記載)の開始時刻の1時間前である。ゲートクローズが、相対契約の有無にかかわらず、すべての事業者が守るべき期限である。本実施の形態では、調整期間では、相対契約調整装置1による調整だけが行われ、事業者による計画値の変更はできない。なお、図4では、翌日計画提出期限とゲートクローズは、広域機関により現在定められている例を示しているが、上述したように、これらの具体的な時刻はこの例に限定されない。
次に、本実施の形態の電力取引調整システムにおいて、翌日の計画値の仮の確定までの処理について説明する。本実施の形態では、図4を用いて説明したように、翌日計画提出期限までに、翌日の計画値の登録と計画値のチェックとが行われる。チェックを経た計画値は、翌日の計画値として一旦、仮に確定される。この仮に確定された計画値は、広域機関に提出される翌日計画における計画値に対応した値である。
図5は、本実施の形態の電力取引調整システムにおける翌日の計画値の仮の確定までの動作を示すチャート図である。まず、計画登録者の事業者装置2は、翌日の需要量の計画を相対契約ごとに作成し(ステップS1)、作成した計画における時間帯ごとの計画値を、計画値情報として相対契約調整装置1へ送信する(ステップS2)。なお、上述したように、需給管理システム3に接続されている事業者装置2は、需給管理システム3が作成した翌日計画を取得し、翌日計画に基づいて翌日の計画を作成してもよい。
相対契約調整装置1は、計画登録者の事業者装置2から受信した計画値を登録する(ステップS3)。具体的には、相対契約調整装置1は、記憶部14に事業者装置2から受信した計画値情報を記憶することにより、計画値を登録する。以上のステップS1からステップS3は、計画登録期間に実施される。
次に、計画チェック期間に、計画チェック者の事業者装置2は、相対契約調整装置1から、計画登録者の事業者装置2により登録された計画値を受信する(ステップS4)。例えば、計画チェック者の事業者装置2は、相対契約調整装置1に、該当する該事業者装置2に対応する計画値情報の読み出しを要求することにより、計画登録者の事業者装置2により登録された計画値を受信する。上述した通り、計画チェック者の事業者装置2は、計画登録者の事業者装置2から計画値を受信してもよい。次に、計画チェック者の事業者装置2は、計画登録者の事業者装置2により登録された計画値をチェックし(ステップS5)、チェック結果を相対契約調整装置1へ送信する(ステップS6)。上述したように、計画チェック者の事業者装置2は、計画登録者の事業者装置2により登録された計画値の修正が必要な場合には修正量をチェック結果として相対契約調整装置1へ送信する。相対契約調整装置1は、計画チェック者の事業者装置2からチェック結果を受信すると、チェック結果を記憶している計画値情報に反映する(ステップS7)。以上の処理により、翌日の計画値が仮に確定される。ステップS7で、チェック結果の反映された後の計画値が仮の確定値となる。仮の確定値は、上述したとおり、相対契約に対応する2つの事業者間で合意済みの計画値である。
次に、翌日の計画値が仮に確定された後に、本実施の形態の相対契約調整装置1が行う計画値の調整処理について説明する。ここで、まず、計画値の調整処理に用いる情報について説明する。図6は、本実施の形態の相対契約調整装置1の記憶部14に記憶される契約基本情報の一例を示す図である。契約基本情報は、後述する調整量情報の元になる情報の1つである。契約基本情報は、相対契約を締結した事業者が本実施の形態の電力取引調整システムに参加するとき、または相対契約を新たに締結したときなどに、事業者により登録される。例えば、事業者は、事業者装置2を操作することにより、事業者装置2から契約基本情報を相対契約調整装置1へ送信させることにより、契約基本情報を登録する。なお、契約基本情報は、相対契約の当事者間で合意されている情報であるため、相対契約調整装置1への契約基本情報の登録は、相対契約の当事者のどちらが行ってもよい。また、一度登録された契約基本情報が、当事者間の合意により変更された場合には、事業者は、相対契約調整装置1に登録されている内容を、事業者装置2を介して変更する。
図6に示すように、契約基本情報は、契約を識別する情報と、供給される電力量の上限値と、供給される電力量の下限値と、計画登録者と、計画登録期限と、計画調整期限とで構成される。上限値および下限値は、年単位など契約で定められている上限値および下限値であり、後述する計画値の調整処理で、調整後の値がこれらの値に収まっているかの確認に用いられてもよい。ここでは、相対契約を対象としているため、契約を識別する情報は、相対契約を識別する情報を意味する。図6では、相対契約の対象となる事業者と、電力の供給の方向とをわかりやすくするため、相対契約を識別する情報を、供給元の事業者の識別情報−供給先の事業者の識別情報の形式で示しているが情報の形式はこの例に限定されない。また、図6では、事業者の識別情報を、発電事業者Aを発Aと記載し、小売事業者aを小aと記載するといったように、事業者の種別と識別文字との略称で表している。図6に示した例では、少なくとも、発電事業者A,B,Cと小売事業者a,b,c,d,e,fとが、本実施の形態の電力取引調整システムに参加している。
例えば、図6に示した例で、一番上に記載されている「発A−小b」は、発電事業者Aから小売事業者bへ電力が供給される相対契約を示している。この契約では、発電事業者Aが計画登録者に設定されている。このため、この相対契約の相手である小売事業者bが計画チェック者となる。また、この契約では、計画登録期限は、提出締切すなわち翌日計画の提出期限の60分前に設定されている。したがって、翌日計画の提出期限を12:00とすると、計画登録期限は11:00である。また、この契約では、計画調整期限は、ゲートクローズ(GC)の60分前に設定されている。なお、図6に示した例では、計画登録期限および計画調整期限は、それぞれ、全て同じ値となっているが、これらは相対契約ごとに設定されるものであり、同じ値でなくてもよい。
なお、相対契約の当事者以外は、他の相対契約に関する情報を閲覧できることは好ましくないため、相対契約調整装置1は、各相対契約に対応する契約基本情報を、対応する当時者だけが閲覧および編集可能であるように契約基本情報のアクセス権を設定しておく。例えば、事業者装置2の識別情報ごとに、記憶部14に格納されている各情報に、閲覧および編集に関するアクセス権を設定しておいてもよいし、事業者が事業者装置2を介して相対契約調整装置1へログインする構成としておき、事業者に割り当てられたログインID(IDentifier)ごとに記憶部14に格納されている各情報に閲覧および編集に関するアクセス権を設定しておいてもよい。
例えば、図6に示した例では、上から1番目から3番目までの契約が、発電事業者Aが当事者となる相対契約であるため、発電事業者Aは、図6に示した契約基本情報のうちエリア201の情報に対して、閲覧および編集を行うことが可能である。
図7は、本実施の形態の相対契約調整装置1の記憶部14に記憶される計画値情報の一例を示す図である。計画値情報は、本実施の形態の計画値の調整処理では用いられないが、広域機関との連係処理において用いられる。図7に示すように、計画値情報は、各相対契約に関しての、30分の枠ごとの各枠の時間帯を示す情報と枠内で供給される電力量とで構成される。図7に示した例では、縦方向に各時間帯を示し、横方向に相対契約を示している。なお、図7では、各契約を識別する情報として、図6に示した例と同様に、供給元の事業者の略称−供給先の事業者の略称の形式で示している。例えば、図7に示した計画値情報の左から1番目の相対契約は、発電事業者Aから小売事業者bへ電力が供給される契約である。
計画値情報は、上述したように、計画登録者による登録と、計画チェック者によるチェックとを経て仮に確定される。仮に確定された計画値は、各事業者が翌日計画として提出した計画値に対応するものである。なお、仮に確定された計画値が決定される前の手順は、上述した例に限定されない。例えば、計画登録者と計画チェック者を定めずに、相対契約の当事者間で調整することにより、翌日の計画として合意した計画値を決定し、この計画値を計画値情報として、当事者のいずれかが、翌日計画提出期限までに、相対契約調整装置1に、仮に確定された計画値情報として登録するようにしてもよい。
計画値情報は、翌日計画提出期限までに翌日の値として仮に確定された後は、相対契約調整装置1による計画値の調整処理によって変更されることがあるが、事業者からの直接的な変更はできない。また、契約基本情報と同様に、相対契約調整装置1は、各相対契約に対応する計画値情報を対応する当時者だけが閲覧および編集可能であるように計画値情報のアクセス権を設定しておく。例えば、図7に示した例では、1番左から3番目までの契約が、発電事業者Aが当事者となる相対契約であるため、発電事業者Aは、図7に示した計画値情報のうちエリア202の情報に対して、閲覧および編集を行うことが可能である。
図8は、本実施の形態の相対契約調整装置1の記憶部14に記憶される調整条件情報の一例を示す図である。調整条件情報は、本実施の形態の相対契約調整装置1による計画値の調整処理の条件を示す情報である。調整条件情報は、相対契約ごとの、相対契約に基づいて供給される電力量の計画値を2つの事業者間で合意済みの仮の確定値から変更する調整を行うための調整条件を示す。調整条件情報は、後述する調整量情報の元になる情報の1つである。図8に示すように、調整条件情報は、契約を識別する情報と、調整キック者と、変動吸収者と、上げ価格と、下げ価格と、翌日計画提出値からの下げ変動可能量と、翌日計画提出値からの上げ変動可能量とで構成される。契約を識別する情報は、図6に示した契約基本情報における契約を識別する情報と同様である。上げ価格と、下げ価格と、翌日計画提出値からの下げ変動可能量と、翌日計画提出値からの上げ変動可能量とは、変動吸収者が決定する情報である。
第1の事業者である調整キック者は、本実施の形態の相対契約調整装置1による計画値の調整処理を開始するトリガーとなる計画調整要求を送信可能な事業者であり、相対契約を締結している事業者のうちの一方である。第2の事業者である変動吸収者は、調整キック者により要求された計画値の変更を吸収する、すなわち要求に応じて計画値を変更する事業者である。1つの相対契約を締結している2つの事業者のうち、一方が調整キック者であり、他方が変動吸収者である。したがって、相対契約ごとに、調整キック者を定めれば変動吸収者は自動的に決定されることになる。相対契約を締結している事業者は、どちらが調整キック者になるかを合意の上定めておく。
相対契約では、一方の事業者が他方の事業者へ電力を供給するため、どちらかの事業者が計画値を変更する場合には、他方の事業者も計画値の変更が必要となる。相対契約が1つしか存在しない場合には、調整キック者が計画値の変更を要求した場合に、この変更を受け入れ可能な事業者はこの相対契約における変動吸収者だけである。これに対し、1つの事業者が複数の相対契約を締結している場合には、この事業者の要求に応じて計画値を変更する事業者の候補が複数存在する可能性がある。すなわち、ある事業者が調整キック者となり他の事業者が変動吸収者となっている相対契約が複数存在する場合には、複数の相対契約に対応する複数の他の事業者が、実際に計画値を変更する事業者の候補となる。本実施の形態では、変動吸収者が、上げ価格と、下げ価格と、翌日計画提出値からの下げ変動可能量と、翌日計画提出値からの上げ変動可能量とを定めておくことで、相対契約調整装置1が、これらを考慮して、実際に計画値を変更する事業者と変更する電力量である調整量とを決定する。
上げ価格および下げ価格は第1の価格を構成する。第1の価格は、変動吸収者が、調整キック者から要求のあった計画値の変更を吸収する際の、吸収する電力量の単価である。すなわち、第1の価格は、計画値を仮の確定値から変更することにより生じて変化する電力量の単価であって第2の事業者が受け入れ可能な単価である。上げ価格は、調整キック者から要求のあった計画値の変更が供給量を上げる方向の変更であるときの単価であり、下げ価格は、調整キック者から要求のあった計画値の変更が供給量を下げる方向の変更であるときの単価である。
翌日計画提出値からの下げ変動可能量(以下、下げ変動可能量と呼ぶ)は、変動吸収者が、仮に確定された翌日の計画値から下げることが可能な最大の電力量を示す値である。図8に示した例では、下げ変動可能量は、計画値から下げることが可能な電力量であることから、正負符号が負の値で示されている。翌日計画提出値からの上げ変動可能量(以下、上げ変動可能量と呼ぶ)は、変動吸収者が、仮に確定された翌日の計画値から上げることが可能な最大の電力量を示す値である。図8に示した例では、上げ変動可能量は、計画値から上げることが可能な電力量であることから、正負符号が正の値で示されている。なお、下げ変動可能量と上げ変動可能量とを区別せずに示すときには、変動可能量と呼ぶ。変動可能量は、第2の事業者が受け入れ可能な仮の確定値からの計画値の変更量を示す。
なお、調整条件情報のうち調整キック者および変動吸収者の情報は、調整キック者と変動吸収者のうちいずれの事業者装置2から登録されてもよい。ただし、相対契約ごとに、どちらが調整キック者となるかは、当事者間で合意されているとする。また、上げ価格と、下げ価格と、下げ変動可能量と、上げ変動可能量とは変動吸収者によって定められるので、変動吸収者の事業者装置2から登録される。調整条件情報は、枠ごとすなわち30分の時間帯ごとに設定されてもよいし、調整条件情報が変更されない限り登録された調整条件情報を枠によらずに用いることとして枠ごとには調整条件情報を設定しない形態としてもよい。枠ごとに調整条件情報が設定される場合には、図8に例示した情報が時間帯ごとに記憶部14に記憶される。また、複数の枠を単位として調整条件情報を設定するようにしてもよい。
また、契約基本情報と同様に、相対契約調整装置1は、各相対契約に対応する調整条件情報を対応する当時者だけが閲覧および編集可能であるように調整条件情報のアクセス権を設定しておく。ただし、調整条件情報は、変動吸収者により決定される情報であるため、対応する相対契約の変動吸収者だけが、閲覧および編集可能であるように調整条件情報のアクセス権を設定しておいてもよい。調整キック者については対応する相対契約に関する調整条件情報の閲覧だけを可能とするようアクセス権を設定してもよい。例えば、図8に示した例では、1番上から3番目までの契約が、発電事業者Aが当事者となる相対契約であるため、発電事業者Aは、図8に示した調整条件情報のうちエリア203の情報に対して、閲覧および編集を行うことが可能である。
なお、変動吸収者は、上げ価格と、下げ価格と、下げ変動可能量と、上げ変動可能量とを、例えば、自身が管理する設備の能力と需給状況などに応じて決定する。例えば、変動吸収者が発電事業者であり、相対契約における電力の供給の方向が、発電事業者から小売事業者へ電力を供給する方向である場合、上げ価格は、発電にかかる原価などと得たい利益とを考慮して決定する。また、変動吸収者が発電事業者であり、相対契約における電力の供給の方向が、発電事業者から小売事業者へ電力を供給する方向である場合、管理する全ての発電機で発電が可能な最大値の合計である最大発電量と翌日の計画値との差に応じて、上げ変動可能量を決定する。また、複数の相対契約に関して変動吸収者となっている事業者は、下げ変動可能量、上げ変動可能量のそれぞれを、複数の相対契約に割り振ることにより相対契約ごとの下げ変動可能量、上げ変動可能量を決定する。例えば、発電事業者である変動吸収者が、最大発電量と翌日の計画値とを考慮して、合計の300kWhまで計画値を上げることが可能であると判断したとする。そして、この変動吸収者は3つの相対契約において変動吸収者となっていたとする。この場合、変動吸収者は300kWhを3で割った100kWhを、各相対契約の上げ変動可能量としてもよいし、3つの相対契約にそれぞれ80kWh、100kWh、120kWhといったように異なる上げ変動可能量を割当てるようにしてもよい。
また、変動吸収者が発電事業者であり、相対契約における電力の供給の方向が、発電事業者から小売事業者へ電力を供給する方向である場合は、計画値を下げる方向の調整が行われると、小売事業者から発電事業者へ仮に確定した計画値からの減少分が返品されることに相当する。発電事業者は、仮に確定した計画値から減少した分を買い取ることになるが、発電事業者にとっては計画値が減るとその分を支払うことになるため下げ価格は一般には低い値に設定される。また、変動吸収者が小売事業者であり、相対契約における電力の供給の方向が、発電事業者から小売事業者へ電力を供給する方向である場合は、計画値を上げる方向の調整が行われると、発電事業者が小売事業者に対して、仮に確定した計画値からの増加分を強制的に購入させることに相当する。したがって、この場合には、一般には、下げ価格は低い値に設定される。また、変動吸収者が小売事業者であり、相対契約における電力の供給の方向が、発電事業者から小売事業者へ電力を供給する方向である場合に、計画値を下げる方向の調整が行われると、発電事業者が小売事業者に対して、仮に確定した計画値より少ない供給量しか供給されないことになり、小売事業者は他の手段により足りない電力を購入するなどにより対応する。したがって、この場合には、一般には、上げ価格は、小売事業者が別の手段で調達する場合のコストなどを考慮して設定される。上げ価格と、下げ価格と、下げ変動可能量と、上げ変動可能量の決定方法は、上述した例に限定されず、変動吸収者は、上げ価格と、下げ価格と、下げ変動可能量と、上げ変動可能量とを、自身の都合により任意に決定することが可能である。
図9は、本実施の形態の相対契約調整装置1の記憶部14に記憶される調整量情報の一例を示す図である。調整量情報は、本実施の形態の相対契約調整装置1による計画値の調整処理で用いられるとともに、計画値の調整処理の過程で適宜更新される情報である。相対契約調整装置1の計画調整部16は、契約基本情報および調整条件情報が登録されると契約基本情報および調整条件情報に基づいて調整量情報を生成して記憶部14に格納する。また、契約基本情報および調整条件情報のうちの一方または両方が更新されると、相対契約調整装置1の計画調整部16は、更新された情報に基づいて調整量情報を更新する。調整量情報は、枠ごとすなわち30分の時間帯ごとに設定される。すなわち、記憶部14には、30分の時間帯ごとの調整量情報が記憶される。
図9に示すように、調整量情報は、契約を識別する情報と、調整期限と、調整キック者と、変動吸収者と、上げ価格と、下げ価格と、下げ変動可能量と、上げ変動可能量と、現時点での変動量とで構成される。調整量情報のうち、調整期限と現時点での変動量とを除いた情報は、調整条件情報と同様の項目であり、初期値としては調整条件情報と同一の値が格納される。また、調整量情報の調整期限には、契約基本情報の調整期限と同一の値が格納される。調整キック者と、変動吸収者と、上げ価格と、下げ価格とは、相対契約調整装置1によって変更されることはないが、下げ変動可能量および上げ変動可能量は、後述するようにループ状に計画値の調整が行われることがないようにするために、相対契約調整装置1によって変更される場合がある。
現時点での変動量は、調整処理によって仮の確定値から変更された調整量の現時点での累積値を示し、初期値は0に設定される。後述する計画値の調整処理により、変動吸収者の計画値が調整処理により変更された場合、この調整量が現時点での変動量に反映される。すなわち、現時点での変動量は、計画値の調整のたびに更新される。相対契約調整装置1は、各相対契約の現時点での変動量が、下げ変動可能量を下回らずかつ上げ変動可能量を超えないように、計画値の調整を実施する。
次に、本実施の形態の相対契約調整装置1による計画値の調整処理の詳細について説明する。本実施の形態の計画値の調整処理では、相対契約調整装置1は、変動吸収者によってあらかじめ設定された調整条件と、計画調整要求により調整キック者から要求された条件とを用いて、調整が成立する条件を満たす変動吸収者と調整量を求める。調整キック者と変動吸収者を決めずに、任意の事業者から計画値の調整の要求を受け付けると相反する方向の調整を同時に受ける可能性もあり、調整処理が複雑になる。本実施の形態では、このように、調整キック者と変動吸収者の役割を分けて、調整を行うことで、調整処理が複雑化することを抑制して、計画値の調整を行うことができる。
図10は、本実施の形態の相対契約調整装置1による計画値の調整処理手順の一例を示すフローチャートである。図10に示した処理は、図5で説明した翌日の計画値の仮の確定の後に行われる。図10に示すように、相対契約調整装置1の計画調整部16は、通信部11を介して、事業者装置2から計画調整要求を受信したか否かを判断する(ステップS11)。なお、図10に示す処理が行われる前に、各事業者は、契約基本情報および調整条件情報を登録済であり、相対契約調整装置1の計画調整部16は、調整条件情報に基づいて調整量情報を生成して、調整量情報を記憶部14へ格納済みであるとする。
図11は、本実施の形態の計画調整要求の構成例を示す図である。図11に示すように、計画調整要求には、送信元の事業者を示す事業者の識別情報と、調整対象の日時と、送信元の事業者が調整を希望する計画値の変更量を示す希望調整量と、希望価格とが含まれる。送信元の事業者を示す事業者の識別情報は、計画調整要求の送信元の事業者を示す識別情報であり、調整対象の日時は、計画値の変更要求の対象となる枠、すなわち30分の時間帯を示す情報である。調整を希望する変更量(以下、希望調整量)は、計画調整要求の送信元の事業者が、現在の計画値から変更を希望する量を示す。希望調整量は、計画調整要求の送信元の事業者において、電力が足りなくなるときに負の値をとり、電力が余るときに正の値をとることとする。例えば、計画調整要求の送信元の事業者が電力の供給元となる相対契約の場合には、供給する電力が足りなくなる場合には、希望調整量は負の値となる。このとき、この相対契約では、供給される電力が減ることになるので、供給量の計画値を減少させる調整が行われる。一方、計画調整要求の送信元の事業者が電力の供給を受ける供給先となる相対契約の場合には、供給する電力が足りなくなる場合には、希望調整量は負の値となるが、この相対契約の計画値の調整では計画値を増やす調整が行われることになる。このように、同じ希望調整量であっても、相対契約の電力の供給の方向によって計画値の調整において計画値を上げるか下げるかの方向が異なることになる。
希望価格は、計画値を仮の確定値から変更することにより生じて変化する電力量の単価であって、計画調整要求の要求元の事業者が希望する単価を示す。希望価格は、変更によって変更を要求した事業者が最終的に変更された量である調整量に応じて調整キック者が変動吸収者に支払うまたは変動吸収者が調整キック者へ支払う際の、調整キック者にとっての希望単価である。調整量に関して変動吸収者と調整キック者のうちどちらが支払者になるかは、相対契約で定められている電力の供給の方向、電力の供給元と供給先のどちらの事業者が調整キック者であるか、および計画値を下げる調整か上げる調整か、によって決まる。例えば、発電事業者Aから小売事業者aへ電力を供給する相対契約があり、発電事業者Aが調整キック者であれば、計画値を上げる調整が行われた場合には、発電事業者Aが小売事業者aから支払を受ける。このため、調整キック者の利益を考慮すれば、希望単価は高いほど望ましい。一方で、このような場合には、変動吸収者である小売事業者は調整条件情報における下げ価格は低く設定されている可能性が高いことから、希望単価を高く設定すると、調整が成立しない可能性もある。したがって、調整キック者は、例えば、調整の必要度などに応じて希望単価を決定する。
図10の説明に戻る。ステップS11で事業者装置2から計画調整要求を受信していないと判断した場合(ステップS11 No)、計画調整部16は、ステップS11を繰り返す。ステップS11で事業者装置2から計画調整要求を受信したと判断した場合(ステップS11 Yes)、計画調整部16は、計画調整要求を送信した事業者装置2に対応する事業者によって調整可能な相対契約が有るか否かを判断する(ステップS12)。具体的には、計画調整部16は、記憶部14に格納されている調整量情報を参照して、計画調整要求の送信元の事業者が調整キック者となっている相対契約があるか否かを判断する。
計画調整部16は、計画調整要求を送信した事業者装置2に対応する事業者によって調整可能な相対契約が無いと判断した場合(ステップS12 No)、受信した計画調整要求に関する処理を終了する。これにより、調整キック者以外から計画調整要求を受信しても計画値の調整処理は実施されない。
ステップS12で計画調整要求を送信した事業者装置2に対応する事業者によって調整可能な相対契約が有ると判断した場合(ステップS12 Yes)、計画調整部16は、計画調整要求を送信した事業者装置2に対応する事業者によって調整可能な相対契約の調整量情報を抽出する(ステップS13)。具体的には、計画調整部16は、記憶部14に格納されている調整量情報から、計画調整要求の送信元の事業者が調整キック者となっており、かつ調整期限が過ぎておらず、かつ調整の成立の条件を満たす相対契約の調整量情報を抽出する。
ここで、本実施の形態の計画値の調整処理における調整の成立の条件と調整の順序とをケースごとに説明する。なお、以下では、電力の供給元の事業者を単に供給元とも呼び、電力の供給先の事業者を単に供給先とも呼ぶ。ここでは、ケースNo.1〜ケースNo.4までの4つのケースに分けて説明する。以下の説明では、支払方向は、調整により生じた電力量に関する支払が、供給元から供給先の方向と供給先から供給元の方向とのどちらの方向で行われるかを示している。調整方向とは、調整キック者から変更吸収者へ向かう方向を示し、調整キック者が電力の供給元である場合には、調整方向は供給元から供給先へ向かう方向であり、調整キック者が供給先である場合には、調整方向は供給先から供給元へ向かう方向である。
計画調整部16は、計画調整要求の送信元の事業者の利益が最大となるように、調整の対象となる相対契約を決定していくが、ケースによって送信元の利益を最大とするために、優先して考慮すべき相対契約とが異なる。例えば、ケースNo.1の場合、計画値の変更方向が計画値を上げる方向であり、支払方向が供給先から供給元へ向かう方向であり、調整キック者が供給元であるとする。このため、ケースNo.1では、調整方向が供給元から供給先へ向かう方向となり、調整方向と支払方向が一致しない。ケースNo.1の場合、調整キック者に対応する事業者装置2が計画調整要求を送信する場合には、計画調整要求の送信元の事業者は、調整により増えた計画値に関して高く買い取ってもらった方が有利である。したがって、ケースNo.1では、調整の成立の条件は、上げ価格が計画調整要求により通知された希望価格以上であることとなり、調整を進めていく順序は、上げ価格が高い順となる。なお、上げ価格は、上述したとおり、変動吸収者により設定される。
ケースNo.2の場合、計画値の変更方向が計画値を上げる方向であり、支払方向が供給先から供給元へ向かう方向であり、調整キック者が供給先であるとする。このため、ケースNo.2では、調整方向が供給先から供給元へ向かう方向となり、調整方向と支払方向が一致する。ケースNo.2で、調整キック者に対応する事業者装置2が計画調整要求を送信する場合には、計画調整要求の送信元の事業者は、調整により増えた分の購入価格が安いほど有利となる。したがって、ケースNo.2では、調整の成立の条件は、上げ価格が計画調整要求により通知された希望価格以下であることとなり、調整を進めていく順序は、上げ価格が安い順となる。
ケースNo.3の場合、計画値の変更方向が計画値を下げる方向であり、支払方向が供給元から供給先へ向かう方向であり、調整キック者が供給元であるとする。このため、ケースNo.3では、調整方向が供給元から供給先へ向かう方向となり、調整方向と支払方向が一致する。ケースNo.3で、調整キック者に対応する事業者装置2が計画調整要求を送信する場合には、計画調整要求の送信元の事業者は、調整により計画値が減少することに対する対価を供給先に支払うことになる。ケースNo.3では、計画調整要求の送信元の事業者は、調整によって支払う額が安いほど有利となる。したがって、ケースNo.3では、調整の成立の条件は、下げ価格が計画調整要求により通知された希望価格以下であることとなり、調整を進めていく順序は、下げ価格が安い順となる。なお、下げ価格は、上述したとおり、変動吸収者により設定される。
ケースNo.4の場合、計画値の変更方向が計画値を下げる方向であり、支払方向が供給元から供給先へ向かう方向であり、調整キック者が供給先であるとする。このため、ケースNo.4では、調整方向が供給先から供給元へ向かう方向となり、調整方向と支払方向が一致しない。ケースNo.4で、調整キック者に対応する事業者装置2が計画調整要求を送信する場合には、計画調整要求の送信元の事業者は、供給される電力量の計画値を調整により減少させた分を供給元に購入してもらうことになる。ケースNo.4では、計画調整要求の送信元の事業者は、購入してもらう価格が高い方が有利となる。したがって、ケースNo.4の調整の成立の条件は、下げ価格が計画調整要求により通知された希望価格以上であることとなり、調整を進めていく順序は、下げ価格が高い順となる。
上述した4つのケースと希望調整量の正負の対応は、次のとおりとなる。希望調整量が正の場合、調整キック者が供給元である場合にケースNo.1に対応し、調整キック者が供給先である場合にケースNo.4に対応する。また、希望調整量が負の場合は、調整キック者が供給元である場合にケースNo.3に対応し、調整キック者が供給先である場合にケースNo.2に対応する。したがって、1つの計画調整要求に対してステップS13で抽出される相対契約は、ケースNo.1およびケースNo.4のうちの少なくとも一方であるか、またはケースNo.2およびケースNo.3のうちの少なくとも一方である。したがって、ステップS13で抽出される相対契約にケースNo.1〜ケースNo.4のうちの複数のケースの相対契約が含まれていても、ケースNo.1とケースNo.4の組み合わせであるか、またはケースNo.2およびケースNo.3の組み合わせである。例えば、ケースNo.1とケースNo.2の組み合わせ、ケースNo.2とケースNo.4の組み合わせとなることはない。
ケースNo.1とケースNo.4は、参照する項目はそれぞれ上げ価格と下げ価格とであり異なっているものの、調整の順序がいずれも価格の高い順である。ケースNo.2とケースNo.3は、参照する項目はそれぞれ上げ価格と下げ価格とであり異なっているものの、調整の順序がいずれも価格の安い順である。したがって、ステップS13では、計画調整部16は、まず、調整量情報から、計画調整要求の送信元の事業者が調整キック者となっており、かつ調整期限が過ぎていないものを抽出し、抽出された調整量情報に対応する相対契約が、ケースNo.1〜No.4のうちのいずれであるかを判定する。計画調整部16は、抽出された調整量情報から、判定結果に基づいて、各ケースの調整の成立の条件を満たす調整量情報をさらに抽出する。
次に、計画調整部16は、抽出した調整量情報を用いて、計画調整要求の送信元の事業者の利益が最大となるように計画値の調整を行う(ステップS14)。具体的には、計画調整部16は、調整の成立の条件を満たす範囲で計画調整要求の送信元の事業者の利益が最大となるように、調整の対象となる相対契約と対応する調整量とを決定する。なお、上述したとおり、相対契約ごとに調整キック者と変動吸収者とが定められているため、調整の対象となる相対契約が決定されることにより、調整の対象となる変動吸収者も決定される。
ステップS14では、計画調整部16は、抽出した調整量情報を用いて、例えば、上述したケースに応じた調整の順序に基づいて計画値の調整を行うことにより、計画調整要求の送信元の事業者の利益が最大となるように計画値の調整を行う。なお、上述したように、希望調整量が同じであっても、相対契約ごとの電力の供給の方向によっては、要求された調整が計画値を下げる調整であるのか上げる調整であるのかが異なることになる。
具合的には、ステップS14では、計画調整部16は、ステップS13で抽出された調整量情報から、希望調整量が正か負かに基づいて、各相対契約の上げ価格を参照するか下げ価格を参照するかを決定する。そして、計画調整部16は、参照する価格に基づいて相対契約を、調整量情報で定められた調整の順序に並べる。上述したように、抽出されたケースNo.1とケースNo.4が混在する、またはケースNo.2とケースNo.3が混在する可能性がある。しかし、参照する価格が上げ価格か下げ価格であるかは異なるものの、ケースNo.1とケースNo.4はいずれも調整の順序は高い順であり、参照する価格が上げ価格か下げ価格であるかは異なるものの、ケースNo.2とNo.3はいずれも調整の順序は安い順である。したがって、計画調整部16は、参照する価格を決定すれば、ケースによらずに、参照する価格を、高い順、または安い順に並べればよい。
すなわち、計画調整部16は、希望調整量が正の値である場合、第1の価格が第2の価格である希望調整価格以上の相対契約のうち第1の価格が高いものから順に優先して調整対象に決定することになる。また、計画調整部16は、希望調整量が負の値である場合、第1の価格が希望調整価格以下の相対契約のうち第1の価格が安いものから順に優先して調整対象に決定することになる。詳細には、計画調整部16は、希望調整量が正の値である場合、計画調整要求の要求元の事業者が電力の供給元となる相対契約については上げ価格を参照し、要求元の事業者が供給先となる相対契約については下げ価格を参照する。また、計画調整部16は、希望調整量が負の値である場合、計画調整要求の要求元の事業者が電力の供給元となる相対契約については下げ価格を参照し、要求元の事業者が供給先となる相対契約については上げ価格を参照する。
そして、調整の順序で定められた順に、抽出された調整量情報に対応する相対契約における上げ変動可能量または下げ変動可能量で希望調整量を賄えるかどうかを判断する。なお、希望調整量を賄えるかの判断において上げ変動可能量を参照するか下げ変動可能量を参照するかは、希望調整量がプラスであるかマイナスであるかと、調整キック者が供給元であるか供給先であるかと、により決まる。具体的には、上述した4つのケースのうち、上げ価格を参照するケースNo.1,No.2の場合は上げ変動可能量が参照され、下げ価格を参照するケースNo.3,No.4の場合は下げ変動可能量が参照される。
計画調整部16は、調整の順序の最初の相対契約で、希望調整量を賄える場合には、この相対契約を調整対象と決定するとともにこの相対契約の計画値を変更する量である調整量を決定し、ステップS14を終了する。希望調整量を賄えない場合は、計画調整部16は、調整の順序の最初の相対契約と次の相対契約とで、希望調整量を賄えるかを判断する。計画調整部16は、これらを繰り返し、希望調整量を賄えるまで考慮する相対契約を順次増やし、希望調整量を賄える場合には、ステップS14を終了する。抽出した調整量情報に対応する全ての相対契約を考慮しても希望調整量を賄えない場合には、調整可能な量だけ調整を行うこととしてもよいし、調整不可と判断して調整を行わなくてもよい。
図10の説明に戻り、計画調整部16は、ステップS14で行われた調整の結果を、記憶部14の調整量情報に反映する(ステップS15)。具体的には、調整量情報のうち、調整対象として決定された相対契約の現時点での変動量に、ステップS14の調整結果である調整量を反映させる。このように、現時点での変動量は、1回の計画値の調整処理により得られる調整量が、調整処理ごとに反映された結果となる。また、ループ状の調整が行われることを避けるために、トランザクション監視部17が、調整量情報のうち、計画調整要求の送信元の事業者が変動吸収者となっている相対契約の上げ変動可能量または下げ変動可能量を予め定められた値に設定する。すなわち、トランザクション監視部17は、調整処理が行われた後、調整処理に対応する計画調整要求の要求元の事業者が変動吸収者として定められている相対契約に対応する変動可能量を予め定められた値に設定する。予め定められた値の一例は0であり、以下予め定められた値は0であるとして説明する。なお、このとき、トランザクション監視部17が、上げ変動可能量および下げ変動可能量のうち対応する変動可能量を0に設定するかは、計画値を上げる調整が行われるか下げる調整が行われるかに依存する。
次に、計画調整部16は、調整結果を計画値情報に反映する(ステップS16)。具体的には、計画調整部16は、調整対象として決定された相対契約の現時点での変動量に基づいて、記憶部14に格納されている計画値情報のうちの対応する計画値を変更する。相対契約調整装置1は、計画値が変更された場合に、結果出力部18が、変更された計画値を表示するようにしてもよい。
次に、結果出力部18が、計画値の調整結果を、対応する事業者に送信し(ステップS17)、計画値の調整処理が終了する。また、ステップS17では、広域機関連係部19は、調整処理により計画値が変更される事業者が需給管理システム3を有する事業者である場合、対応する需給管理システム3へ調整処理によって生じる計画値の変更を通知する。具値的には、広域機関連係部19は、計画値の修正に必要な情報を通信部11を介して需給管理システム3へ送信する。例えば、広域機関連係部19は、通信部11を介して計画値が更新された事業者の需給管理システム3へ、調整により変更された計画値の変更量と対応する時間帯とを通知してもよいし、調整により変更された計画値と対応する時間帯とを通知してもよい。これにより、需給管理システム3は、調整結果を、広域機関システム4へ送信する当日計画に、速やかに反映することができる。
また、上記の例では、計画調整要求を受信するたびに、図10に示したステップS12からステップS17の処理すなわち調整処理を行うようにしたが、一定期間ごとに、この一定期間に受信した計画調整要求に関してステップS12からステップS17までの処理を行うようにしてもよい。一定期間に受信した計画調整要求が複数あった場合には、複数の計画調整要求のそれぞれについて、順次ステップS12からステップS17までの処理を行う。すなわち、計画調整部16は、一定期間内に1つ以上の計画調整要求を受信したか否かを判断し、1つ以上の計画調整要求を受信したと判断した場合に、一定期間内に受信した1つ以上の計画調整要求に対応する調整処理を連続して実施するようにしてもよい。
次に、ステップS13とステップS14の処理を、具体例を挙げて、詳細に説明する。図12は、第1の具体例の計画変更要求を受信したときの本実施の形態の計画値の調整処理の一例を示す図である。図12に示した第1の具体例では、発電事業者Aの事業者装置2が、計画調整要求を送信する。この計画調整要求では、事業者の識別情報が発電事業者Aであり、調整対象の日時がYYYYMMDD hh:mmであり、調整を希望する変更量が−100kWhであり、希望価格が5円/kWhであったとする。
図12の中央付近には、第1の具体例の計画調整要求を受信する前の、YYYYMMDD hh:mmの時間帯の枠に対応する調整量情報の内容が示されている。この調整量情報では、説明の都合上、左端に相対契約を識別するための番号であるNo(契約No.)が示されている。図12に示した調整量情報のうち、発電事業者Aが当事者となっている相対契約は、契約No.1〜No.4の4つである。契約No.1は、発電事業者Aから小売事業者bへ電力を供給する相対契約であり、調整キック者は発電事業者Aである。契約No.2は、発電事業者Aから小売事業者cへ電力を供給する相対契約であり、調整キック者は小売事業者cである。契約No.3は、発電事業者Aから小売事業者dへ電力を供給する相対契約であり、調整キック者は発電事業者Aである。契約No.4は、小売事業者aから発電事業者Aへ電力を供給する相対契約であり、調整キック者は、小売事業者aである。
第1の具体例の計画調整要求を受信すると、相対契約調整装置1では、図10に示したステップS11でYesと判断されてステップS12の処理が行われる。ステップS12では、相対契約調整装置1の計画調整部16は、上述したように調整量情報に、計画調整要求の送信元である発電事業者Aが調整キック者である相対契約があるかどうかを判断する。図12に示すように、調整量情報に発電事業者Aが調整キック者である相対契約が存在するため、計画調整部16は、ステップS13へ処理を進める。なお、ここでは、相対契約調整装置1が計画調整要求を受信した時刻は、YYYYMMDD hh:mmの60分前より前、すなわち調整期限より前であったとする。
ステップS13では、相対契約調整装置1の計画調整部16は、発電事業者Aが調整キック者であり、下げ価格が希望価格以下の契約No.1と契約No.3が抽出される。図12では、ステップS13で抽出される調整量情報を情報301として示している。なお、希望調整量が負の値であるときには上述したケースNo.2,No.3に対応するケースとなるが、第1の具体例では、発電事業者Aが調整キック者となる相対契約はいずれも、発電事業者Aが供給元となっている。このため、これら2つは両方ともケースNo.3に相当するので、計画調整部16は、ステップS13では下げ価格を希望価格と比較する。なお、現時点での変動量は、上述したように、初期値は全て0に設定されるが、図12では、既に、YYYYMMDD hh:mmの時間帯に関して計画値の調整が行われており、これにより、契約No.1の現時点での変動量は−100kWhに設定されているとする。
相対契約調整装置1の計画調整部16は、ステップS14の処理において、契約No.1と契約No.3に関して、下げ価格の安い順に調整を実施する。図12に示すように、契約No.1の下げ価格は2円/kWhであり、契約No.3の下げ価格は3円/kWhであるから、契約No.1の方が下げ価格が安い。したがって、計画調整部16は、契約No.1から調整を実行する。計画調整部16は、契約No.1の下げ変動可能量は−130kWhであり、契約No.1の現時点での変動量が−100kWhであることから、下げ変動可能量から既に調整により変更された量である現時点での変動量を差し引いて、契約No.1の調整可能量を求める。契約No.1の調整可能量は、以下の式(1)により求めることができ、−30kWhとなる。
−130−(−100)=−30 ・・・(1)
希望調整量は、−100kWhであることから、−30kWhの調整では希望調整量を賄うことができない。したがって、計画調整部16は、契約No.1と契約No.3のうち、2番目に下げ価格の安い契約No.3の調整量情報を参照して、契約No.1と同様に、調整可能量を求める。契約No.3の下げ変動可能量は−80kWhであり、現時点での変動量が0kWhであることから、契約No.3の調整可能量は−80kWhとなる。
契約No.1の方が契約No.3より下げ価格が安いことから、計画調整部16は、契約No.1による調整を優先し、契約No.1の調整量が−30kWh、契約No.3の調整量が−70kWhという調整結果を得る。また、トランザクション監視部17は、ループ状の調整を避けるために、発電事業者Aが変動吸収者となっている契約No.2および契約No.4の調整情報を抽出する。図12では、トランザクション監視部17が抽出した調整量情報を情報302として示している。トランザクション監視部17は、抽出した調整量情報の下げ変動可能量を0に設定する。
図13は、第2の具体例の計画変更要求を受信したときの本実施の形態の計画値の調整処理の一例を示す図である。図13に示した第2の具体例では、発電事業者Aの事業者装置2が、第1の具体例と同様に、事業者の識別情報が発電事業者Aであり、調整対象の日時がYYYYMMDD hh:mmであり、調整を希望する変更量が−100kWhであり、希望価格が5円/kWhである計画調整要求を送信する。
図13の中央付近には、第2の具体例の計画調整要求を受信する前の、YYYYMMDD hh:mmの時間帯の枠に対応する調整量情報の内容が示されている。この調整量情報は、第1の具体例と契約No.3および契約No.6の内容が異なっているが、これら以外は第1の具体例の調整量情報と同じである。契約No.3の調整量情報は、下げ価格が第1の具体例と異なるが、これ以外は第1の具体例と同様である。契約No.6は、発電事業者Bから発電事業者Aへ電力を供給する相対契約であり、調整キック者は発電事業者Aである。図13に示した調整量情報のうち、発電事業者Aが当事者となっている相対契約は、契約No.1〜No.4,No.6の5つである。
第1の具体例と同様に、相対契約調整装置1では、計画調整要求を受信すると、図10に示したステップS11でYesと判断されてステップS12の処理が行われ、第1の具体例と同様に、ステップS13へ処理が進められる。なお、ここでは、第1の具体例と同様に、相対契約調整装置1が計画調整要求を受信した時刻は、YYYYMMDD hh:mmの60分前より前、すなわち調整期限より前であったとする。
第2の具体例では、ステップS13では、相対契約調整装置1の計画調整部16は、発電事業者Aが調整キック者であり、下げ価格が希望価格以下の契約No.1および契約No.3と、上げ価格が希望価格以下の契約No.6と、が抽出される。図13では、図12と同様に、ステップS13で抽出される調整量情報を情報301として示している。第2の具体例では、ケースNo.3に対応する契約No.1および契約No.3と、ケースNo.2に対応する契約No.6とが混在する。計画調整部16は、ケースNo.3に対応する契約については下げ価格を、ケースNo.2に対応する契約については上げ価格をそれぞれ参照して、参照した価格の安い順に調整を実行する。
図13に示すように、契約No.1の下げ価格は2円/kWhであり、契約No.3の下げ価格は4円/kWhであり、契約No.6の上げ価格は3円/kWhである。したがって、これらを安い順に並べると、契約No.1の下げ価格、No.6の上げ価格、契約No.3の下げ価格の順となる。したがって、計画調整部16は、契約No.1から調整を実行する。契約No.1の調整可能量は、第1の具体例と同様に−30kWhである。希望調整量は、−100kWhであることから、−30kWhの調整では希望調整量を賄うことができない。したがって、計画調整部16は、次に価格の安い契約No.6の調整量情報を参照して、調整可能量を求める。なお、契約No.6は、ケースNo.2に対応するため、計画値を上げる方向で調整が行われる。具体的には、計画調整部16は、契約No.6の上げ変動可能量は(+)120kWhであり、現時点での変動量が0kWhであることから、契約No.6の調整可能量は120kWhとなる。
契約No.1の下げ価格の方が契約No.6の上げ価格より安いことから、計画調整部16は、契約No.1による調整を優先し、契約No.1の調整量が−30kWh、契約No.3の調整量が(+)70kWhという調整結果を得る。また、トランザクション監視部17は、ループ状の調整を避けるために、第1の具体例と同様に、発電事業者Aが変動吸収者となっている契約No.2および契約No.4の調整情報を抽出する。図13では、図12と同様に、トランザクション監視部17が抽出した調整量情報を情報302として示している。トランザクション監視部17は、抽出した調整量情報の下げ変動可能量を0に設定する。
次に、ループ状の調整を避けるためにトランザクション監視部17が行う変動可能量の変更動作について説明する。図14は、本実施の形態のトランザクション監視部17が行う変動可能量の変更動作を説明するための図である。図14に示した例では、発電事業者Cと小売事業者aと小売事業者fとの間で、図14の矢印で示す3つの相対契約がある。具体的には、3つの相対契約は、小売事業者aが発電事業者Cへ電力を供給する契約401と、発電事業者Cが小売事業者fへ電力を供給する契約402と、小売事業者fが小売事業者aへ電力を供給する契約403と、である。契約401では調整キック者は小売事業者aであり、契約402では調整キック者は発電事業者Cであり、契約403では調整キック者は小売事業者fであるとする。また、契約402の翌日の計画における計画値は200kwhであり、契約403の翌日の計画における計画値は100kwhであり、契約401の翌日の計画における計画値は100kwhであったとする。なお、図では、計画値の単位を省略している。
図14に示すように、翌日の計画における計画値の仮の確定後、(1)として発電事業者Cの発電機に故障が生じ、発電事業者Cは電力が足りない状態になったとする。これにより、発電事業者Cは、事業者装置2を用いて、(2)として、希望調整量を−100kWhとした計画調整要求を相対契約調整装置1へ送信する。相対契約調整装置1は、この計画調整要求に基づいて計画値の調整を行い、その結果、契約402が調整対象として選択されて契約402の計画値が100kWhに変更される。
図15は、図14に示した計画値の調整が行われた後の様子を示す図である。図15に示すように、図14で説明した計画値の調整が行われることにより、契約402の計画値が100kWhに変更されており、これにより、小売事業者fは、電力が不足する状態となり、(3)として、事業者装置2を用いて、希望調整量を−100kWhとした計画調整要求を相対契約調整装置1へ送信する。相対契約調整装置1は、この計画調整要求に基づいて計画値の調整を行い、その結果、契約403が調整対象として選択されて契約403の計画値が0kWhに変更される。これにより、小売事業者aは、電力が不足する状態となり、(4)として、事業者装置2を用いて、希望調整量を−100kWhとした計画調整要求を相対契約調整装置1へ送信する。
ここで、(4)の計画調整要求を受信することにより、相対契約調整装置1が、契約401を計画値の調整の対象として、計画値を100kWh減らしてしまうと、発電事業者Cに供給される電力が減ることになってしまい、再び発電事業者Cが事業者装置2を用いて計画調整要求を送信することになる。すなわち、この例で、契約401の計画値を100kWh減らしてしまうと、ループ状の調整が行われてしまうことになる。このようなループ状の調整を避けるために、本実施の形態では、トランザクション監視部17が、変動可能量の変更を行う。すなわち、トランザクション監視部17は、計画調整要求の送信元の事業者が変動吸収者となる相対契約の上げ変動可能量および下げ変動可能量のうち、計画値の調整の行われた方向に対応する変動可能量を0kWhに変更する。
図16は、本実施の形態のトランザクション監視部17による変動可能量の変更の一例を示す図である。図16は、図14に示した例に対応する調整量情報を示す図である。図16に示した3つの契約は上から順に契約401,402,403にそれぞれ対応している。図16は、図14の(2)の計画調整要求に基づいて相対契約調整装置1が契約401の計画値を変更した後の状態を示している。このため、図16の上から2番目の契約である図14に示した契約402の現時点での変動量が−100kWhとなっている。図16の上から1番目の契約である図14に示した契約401の下げ変動可能量は、欄303に示すように、契約402の計画値の調整の前は−100kWhであるが、トランザクション監視部17によって、契約402の計画値の調整後に0kWhに変更される。これにより、この後に、相対契約調整装置1が、小売事業者aから、希望調整量を負の値とした計画調整要求を受信しても、契約401の計画値は変更されないので、ループ状の調整は生じない。
また、計画調整要求が無制限に頻繁に送信されると、計画値の調整が頻繁に行われることになり、他の事業者にとって好ましくない。また、計画調整要求が頻繁に送信されると相対契約調整装置1の負荷も増加する。したがって、計画調整要求の送信に手数料を設けるようにしてもよい。また、1つの事業者からの同一の30分の時間帯に関する計画調整要求の送信の回数に上限を設けてもよい。また、過大な希望調整量の要求がある場合にも他の事業者への影響が大きくなるため、希望調整量に関する従量制の料金を設けてもよい。
以上のように、本実施の形態では、相対契約ごとに、計画値の調整の要求を行うことのできる調整キック者と変動吸収者とを定めておき、変動吸収者が、計画値の変更を許容できる最大量である変動可能量と計画値を変更するときの許容可能な単価とを含む調整条件をあらかじめ定めておく。そして、相対契約調整装置1は、調整キック者に対応する事業者装置2から計画値の変更を要求する計画調整要求を受信すると、計画調整要求に含まれる調整を希望する調整量と希望する単価である希望価格と、調整条件とに基づいて、調整対象の相対契約を決定し、調整対象の相対契約ごとの調整量を求めるようにした。これにより、本実施の形態の相対契約調整装置1は、手間を抑制して、相対契約を締結している事業者の需給量の計画値の調整を行うことができる。
実施の形態2.
図17は、本発明の実施の形態2にかかる電力取引調整システムの構成例を示す図である。本実施の形態の電力取引調整システムは、本発明にかかる電力取引調整装置である事業者装置1a−1〜1a−9を備える。事業者装置1a−1〜1a−9は、それぞれが異なる事業者により管理される。事業者装置1a−1〜1a−9は、ネットワーク50を介して、ブロックチェーンと呼ばれる分散型ネットワーク方式で接続される。事業者装置1a−1〜1a−9は同様の構成を有しており、以下事業者装置1a−1〜1a−9を個別に区別せずに示すときには、事業者装置1aと呼ぶ。事業者装置1a−1は、需給管理システム3−1と接続され、事業者装置1a−2は、需給管理システム3−2と接続される。需給管理システム3−1,3−2は、実施の形態1の需給管理システム3−1,3−2と同様であり、広域機関システム4と接続される。なお、図17では、事業者装置1aを9台示しているが、事業者装置1aの数は、図17に示した例に限定されない。
実施の形態1では、相対契約調整装置1が、中央管理型で計画値の調整処理を実施した。本実施の形態では、各事業者が有する事業者装置1aを用いて、計画値の調整を分散処理によって実施する。以下、実施の形態1と同一の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図18は、本実施の形態の事業者装置1aの構成例を示す図である。図18に示すように、本実施の形態の事業者装置1aは、通信部11、記憶部14、計画調整部16、トランザクション監視部17、結果出力部18および広域機関連係部19、計画作成部22、計画チェック部23、調整条件管理部24、調整要求生成部25、表示部26および情報伝搬部27を備える。事業者装置1aの通信部11、記憶部14、計画調整部16、トランザクション監視部17、結果出力部18および広域機関連係部19は、相対契約調整装置1の対応する構成要素とそれぞれ同様である。ただし、通信部11の通信の相手先と、これらが実施する一部の処理は実施の形態1と異なる。事業者装置1aの計画作成部22、計画チェック部23、調整条件管理部24、調整要求生成部25および表示部26は、実施の形態1の事業者装置2の対応する構成要素とそれぞれ同様である。以下実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態1と重複する説明を省略する。以上のように、本実施の形態の事業者装置1aは、概ね、実施の形態1の事業者装置2の機能と相対契約調整装置1の機能との両方を有する。
情報伝搬部27は、ブロックチェーン方式により、事業者装置1a内で、計画値の調整処理で使用する情報および計画値の調整処理の内容が変更になった場合、変更内容を、通信部11を介して他の事業者装置1aへ送信する。このように、本実施の形態では、調整処理で用いられる情報は、ブロックチェーン方式により、複数の事業者装置1a間で共有される。また、他の事業者装置1aから、通信部11を介して変更内容を受信した場合、予め定められた手順にしたがって変更内容を承認するか否かを判断し、承認する場合には、変更内容を記憶部14へ反映する。変更内容の送信先、改ざん防止のための処理、他の事業者装置1aから変更内容を受信した場合の承認処理などは、事前に事業者装置1a間で定められる。
本実施の形態の相対契約ごとの、契約基本情報、計画値情報、調整条件情報および調整量情報は、実施の形態1と同様であるが、本実施の形態では、事業者装置1aを管理する事業者に関する情報は、事業者装置1a内で生成されて記憶部14に格納される。そして、情報伝搬部27は、記憶部14に格納された契約基本情報、計画値情報、調整条件情報および調整量情報などの情報のうち更新されたものがあれば、更新された情報を他の事業者装置1aへ、通信部11を介して送信することにより、電力取引調整システムを構成する事業者装置1a間で、情報を共有する。また、情報伝搬部27は、事業者装置1a内の処理のためのプログラムが変更された場合にも同様に変更されたプログラムの内容を供給するために他の事業者装置1aへ変更内容を送信する。情報の共有の方法は、ブロックチェーンにおける情報の共有方法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
電力取引調整システムの動作のうち、翌日の計画値の仮の確定までの処理について説明する。本実施の形態では、計画登録者の事業者装置1aが、実施の形態1の計画チェック者の事業者装置2と同様に図5に示すステップS1を実施する。本実施の形態では、ステップS2,S3では、事業者装置1aの計画作成部22は、相対契約調整装置1へ送信する替わりに、記憶部14の計画値情報に作成した計画を反映する。また、上述したとおり、情報伝搬部27は、記憶部14の計画値情報が更新されると、更新された情報を、通信部11を介して他の事業者装置1aに送信する。
また、本実施の形態では、計画チェック者の事業者装置1aは、ステップS4では記憶部14の計画値情報を参照することになる。そして、計画チェック者の事業者装置1aは、実施の形態1の計画チェック者の事業者装置2と同様に図5に示すステップS5を実施する。その後、実施の形態1のステップS6,S7の替わりに、計画チェック者の事業者装置1aの計画チェック部23は、計画チェックにより、計画値を修正する場合には、計画登録者と合意された修正を、記憶部14の計画値情報に直接反映する。上述したとおり、情報伝搬部27は、記憶部14の計画値情報が更新されると、更新された情報を、通信部11を介して他の事業者装置1aに送信する。
次に、仮の計画値の確定後の、計画値の調整処理について説明する。本実施の形態では、調整条件管理部24は、調整条件管理部24を備える事業者装置1aが変動吸収者となる相対契約に関する調整条件を、記憶部14の調整条件情報に格納する。また、契約基本情報についても、相対契約の当事者の事業者装置1aが、記憶部14に対応する相対契約の契約基本情報を格納する。上述したとおり、情報伝搬部27は、記憶部14の調整条件情報、契約基本情報が更新されると、更新された情報を、通信部11を介して他の事業者装置1aに送信する。このようにして、調整条件情報、契約基本情報は、全ての事業者装置1aで共有される。なお、実施の形態1と同様に、各情報のアクセス権を相対契約の当事者以外が閲覧および編集できないように設定する。
本実施の形態の計画調整部16の動作は、実施の形態1の計画調整部16と同様である。ただし、本実施の形態では、調整要求生成部25は、計画調整要求を生成すると、計画調整部16へ計画調整要求を送信する。計画調整部16は、調整要求生成部25から計画調整要求を受信すると、図10で示したステップS11で計画調整要求を受信した場合と同様の動作を行う。または、計画調整部16は、受け取った計画調整要求を、記憶部14、情報伝搬部27および通信部11を介して、他の事業者装置1aへ送信してもよい。また、計画調整部16は、通信部11、情報伝搬部27および記憶部14を介して計画調整要求を他の事業者装置1aから受信した場合、実施の形態1の計画調整部16と同様の動作を行う。また、実施の形態1と同様に、計画調整要求を受信するごとに計画値の調整処理を行ってもよいし、一定期間ごとに、一定期間に受信した計画調整要求に対応する処理を行ってもよい。
本実施の形態の事業者装置1aは、実施の形態1の相対契約調整装置1、事業者装置2と同様に、コンピュータシステムにより実現される。事業者装置1aは、例えば、相対契約調整装置1と同様に、図3に示したコンピュータシステムにより実現される。本実施の形態の事業者装置1aは、コンピュータシステム上で、事業者装置1aにおける処理が記述されたプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが事業者装置1aとして機能する。プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作は、実施の形態1の相対契約調整装置1と同様である。
以上説明した以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。本実施の形態では、各事業者の事業者装置1aにより構成されるブロックチェーンにより、計画値の調整処理を行うようにした。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、実施の形態1では中央管理方式で相対契約調整装置1が計画値の調整を行っているため、相対契約調整装置1がある事業者により管理される場合などには、この事業者が相対契約調整装置1内の計画値の調整処理の内容を変更しても他の事業者にはわからない。このため、公平性が保てなくなる可能性もあるが、本実施の形態では、全ての事業者装置1aは同じ処理を行うことが可能なため、公平性を確保することができる。
なお、以上説明した実施の形態1、2の例では、相対契約ごとに、変動吸収者が調整条件を決定するようにした。これに限らず、調整条件は事業者ごとに決定しておいてもよい。すなわち、各事業者は、変動吸収者となったときの上げ価格、下げ価格、上げ変更可能量および下げ変動可能量を、相対契約によらず共通の値として定めておいてもよい。この場合、図8に示す調整条件情報は、相対契約ごとではなく、事業者ごとの情報で構成されることになる。したがって、調整条件情報は、事業者ごとに定められており、事業者が受け入れ可能な仮の確定値からの計画値の変更量を示す変動可能量と、計画値を仮の確定値から変更することにより生じて変化する電力量の単価であって事業者が受け入れ可能な単価を示す第1の価格と、を含むことになる。
例えば、発電事業者Aが、小売り事業者aとの間の相対契約と、小売り事業者bとの間の相対契約とを締結しているとする。これら2つの相対契約において、発電事業者Aが変動吸収者に設定されているとすると、計画調整部16は、調整対象の相対契約を決定する際に、発電事業者Aに対応する共通の調整条件を参照して、実施の形態1、2と同様の処理を行う。すなわち、計画調整部16は、第2の事業者である変動吸収者の調整条件情報における第1の価格および変動可能量と、計画調整要求における第2の価格および希望調整量とに基づいて調整処理を行う。具体的には、例えば、計画調整部16は、図9に示す調整量情報を生成する際に、相対契約ごとに、変動吸収者の事業者に対応する調整条件情報を読み出して、調整量情報に格納する。これにより、以降の動作は、実施の形態1、2と同様とすることができる。このように、事業者ごとに調整条件を設定すると、各事業者は相対契約ごとに調整条件を定める必要がなくなり、各事業者における登録および管理のための工数を抑制することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。