JPWO2020145404A1 - 記録用紙及びその用途、並びに記録用紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

密着性、特に耐水密着性が高く、印刷物のインク転移不良やインク密着力の低下を生じさせず、かつブロッキングや印刷後の紙質の変化がない記録用紙の提供。熱可塑性樹脂フィルムからなる基材、及び前記基材の少なくとも一方の面に配する樹脂被膜、を有する記録用紙であって、前記樹脂被膜に面する基材の表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂を含有し、前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下である記録用紙。

Description

本発明は、記録用紙及びその用途、並びに記録用紙の製造方法に関する。
従来、印刷用紙、ポスター用紙、ラベル用紙、インクジェット記録紙、感熱記録紙、熱転写受容紙、感圧転写記録紙、電子写真記録紙等の各種記録用紙として、耐水性、耐候性及び耐久性に優れた記録用紙が提案されている。例えば、耐水性向上及び被記録層の塗膜安定化のために、オレフィン系共重合体エマルジョンを含む塗工液を塗工して、乾燥することにより形成された樹脂被膜を有する熱転写用記録用紙が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また同様の樹脂被膜は他の記録方式に適した記録用紙にも応用され、例えば近年普及が進んでいる、液体トナーを用いた湿式電子写真印刷方式に好適な記録用紙としても、提案されている(例えば、特許文献2参照)。この記録用紙は、表面処理層中のエマルジョン由来のオレフィン系共重合体粒子が加熱により軟化して、液体トナーと融着することにより、液体トナーや基材との密着性を高めたものである。
一方、プラスチック容器のラベルとして、熱可塑性樹脂フィルムのバック面に粘着剤層を設けてなる粘着フィルムや、インモールドラベルが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
インモールドラベルとしては、例えば樹脂容器に熱融着するヒートシール層を基材層上に設け、該ヒートシール層が、二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの製品温度や金型温度で軟化して溶融し、二軸延伸ブロー成形品の表面に接着することにより、ラベルの配置を的確にし、また成形品との接着性を高めたインモールドラベルが提案されている。
インモールドラベルは、通常、基材のヒートシール層と反対側の表面上に文字、意匠等を印刷することによって、印刷層が設けられる。
特開2002−113959号公報 国際公開2014/092142号 特開2017−159651号公報 特開2004−136486号公報
上記特許文献1又は2に記載のエマルジョン系熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂被膜は、耐水性を向上させたものではあるが、基材表面と樹脂被膜の密着性に関し改善の余地があることが判明した。また、エマルジョン由来のオレフィン系重合体粒子が熱により互いに融着し、樹脂被膜の表面形状が変形しやすいため、高温下で記録用紙を保管した場合のアンチブロッキング性に加え、UV硬化型や熱定着型等の印刷前後又はインモールド成形前後における印刷面の光沢変化について、改善の余地があることが判明した。
また、基材と樹脂被膜との接着強度が十分でない場合、上記特許文献1又は2に記載の樹脂被膜が形成された記録用紙に粘着剤層を設けて粘着ラベルを作製すると、糊残り等の問題が生じる場合があり、改善の余地があることが判明した。
本発明は、密着性、特に耐水密着性が高く、印刷物のインク転移不良及びインク密着力の低下が少なく、かつブロッキングが少なく、印刷後及び成形後の紙質の変化が少ない記録用紙、粘着ラベル、インモールドラベル及び記録用紙の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
(1)熱可塑性樹脂フィルムからなる基材、及び
前記基材の少なくとも一方の面に配する樹脂被膜、を有する記録用紙であって、
前記樹脂被膜に面する基材の表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、
前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂を含有し、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とする記録用紙。
(2)前記カチオン性水溶性ポリマーが、アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体であることを特徴とする前記(1)に記載の記録用紙。
(3)前記アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体が、第1級〜第3級のアミノ基又は第1級〜第3級のアンモニウム塩構造を有することを特徴とする前記(2)に記載の記録用紙。
(4)前記シランカップリング剤が、エポキシ系シランカップリング剤であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の記録用紙。
(5)前記樹脂被膜の厚みが0.01μm〜5μmであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の記録用紙。
(6)熱可塑性樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配する熱可塑性樹脂組成物からなる表面層とを有する積層樹脂フィルムに対し、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子は含有せず、無機フィラーの含有量が、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対して9質量部以下である水溶液を塗工した後、乾燥することにより、前記積層樹脂フィルムに樹脂被膜を形成することを特徴とする記録用紙の製造方法。
(7)熱可塑性樹脂フィルムからなる基材、
前記基材の両方の面に配する樹脂被膜、及び
前記基材の一方の面に配する前記樹脂被膜に対して、前記基材とは反対の面に配する粘着層、を有する粘着ラベルであって、
前記基材の両方の表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、
前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂を含有し、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とする粘着ラベル。
(8)熱可塑性樹脂フィルムからなる基材の一方の面にヒートシール層が設けられたインモールドラベルであって、
前記基材の前記ヒートシール層と反対側の面に設けられた樹脂被膜を有し、
前記樹脂被膜に面する基材の表面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、
前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂とを含有し、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とするインモールドラベル。
(9)前記ヒートシール層の前記基材と反対側の面に設けられた樹脂被膜をさらに有し、
前記ヒートシール層の前記樹脂被膜が設けられる面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が、0.01〜0.5であり、
前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂とを含有し、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とする、前記(8)に記載のインモールドラベル。
本発明によれば、密着性、特に耐水密着性が高く、印刷物のインク転移不良及びインク密着力の低下が少なく、かつブロッキングが少なく、印刷後及び成形後の紙質変化が少ない記録用紙、粘着ラベル、インモールドラベル及び記録用紙の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態の記録用紙の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態の記録用紙の構造を示す断面図である。 本発明の一実施形態の粘着ラベルの構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態の粘着ラベルの構造を示す断面図である。 本発明の一実施形態のインモールドラベルの構成例を示す断面図である。 本発明の一実施形態のインモールドラベルの他の構成例を示す断面図である。 比較例3の記録用紙の樹脂被膜の表面を撮影した写真である。 実施例1の記録用紙の樹脂被膜の表面を撮影した写真である。 比較例3と実施例1の記録用紙に使用した基材の表面を撮影した写真である。
以下、本発明の記録用紙及びその用途、並びに記録用紙の製造方法について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。「(共)重合体」の記載は、単独重合体と共重合体の両方を示す。
また「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
(記録用紙)
本発明の記録用紙は、基材と、基材の少なくとも一方の面に配する樹脂被膜と、を備えている。
図1は、本発明の一実施の形態としての記録用紙の構成例を示す。
図1に示すように、記録用紙10は、基材1と、基材1の一方の面に配する樹脂被膜3を備えている。
本明細書においては、基材と、基材の少なくとも一方の面に配した樹脂被膜とを合わせて記録用紙と称する。具体的には、図1において、樹脂被膜3と基材1からなる積層体を記録用紙10という。
後述するように基材を表面処理した部分を、図1中、表面処理部2として示す。
<基材>
本発明の記録用紙において、基材は熱可塑性樹脂フィルムからなり、その表面の酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が特定の範囲にある。
<<基材表面のO/C値>>
基材において樹脂被膜が設けられる面、例えば図1に記載の記録用紙10における表面処理部2、の酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)は、0.01〜0.5である。基材と樹脂被膜はもともと密着性が高いが、酸素濃度が比較的高い基材の表面上に樹脂被膜を設けることにより、基材と樹脂被膜間の密着性がより向上する。
上記組成比の値(O/C)は、基材の樹脂被膜が設けられる面に表面処理を施し、活性化することで上記範囲内に制御することができる。使用できる表面処理としては、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ処理又はプラズマ処理が好ましく、プラズマ処理のなかでも、低温プラズマ処理は基材へのダメージが少なく、低分子量化合物の発生を抑制でき、樹脂被膜と良好な密着性を得ることができ、より好ましい。
上記組成比の値(O/C)は、表面処理後の表面に対するXPS(X線電子光分光法)測定にて得られた、O1s及びC1sのそれぞれのピーク強度面積に各ピークの相対感度をかけた値の比から求められる酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の存在比(O/C)である(例えば、筏 義人編、「高分子表面の基礎と応用(上)」、化学同人発行、1986年、第4章 参照)。例えば、基材に使用される熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合、ポリプロピレンの分子式は(Cであるから、本来酸素原子は存在しないはずであるが、上記表面処理によって酸素原子が付加され、酸素濃度が上昇すると考えられる。組成比の値(O/C)が、0.01以上であれば、樹脂被膜との反応に十分な官能基数が得られ、良好な密着性を担保でき、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上である。一方、同値(O/C)が0.5以下であれば、蟻酸又は酢酸等の低分子量化合物の発生を抑え、良好な密着性を担保でき、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.25以下である。なお基材が多層構造である場合には、基材の最外層に相当する面が表面処理されているとよい。
プラズマ処理又はコロナ処理を実施する場合の処理強度は、樹脂被膜との反応に十分な官能基数を得る観点からは、好ましくは3,600J/m(60W・分/m)以上であり、より好ましくは4,800J/m(80W・分/m)以上であり、さらに好ましくは6,000J/m(100W・分/m)以上である。また、上記処理強度は、熱可塑性樹脂の低分子量化を抑える観点からは、好ましくは24,000J/m(400W・分/m)以下であり、より好ましくは18,000J/m(300W・分/m)以下であり、さらに好ましくは12,000J/m(200W・分/m)以下である。
<<熱可塑性樹脂>>
本発明の記録用紙において、基材は熱可塑性樹脂フィルムからなる。基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより、記録用紙又は記録用紙を用いた印刷物に、コシ等の機械強度、耐水性、耐薬品性、必要に応じて不透明性等を付与することができる。
基材に用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1〜8であることが好ましい)、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有オレフィン系樹脂;芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、脂肪族ポリエステル(ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等)等のポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;シンジオタクティックポリスチレン、アタクティックポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体、スチレン−ブタジエン(SBR)共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
なかでも、耐水性、透明性が高く、後述する樹脂被膜を形成しやすいことから、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂が好ましい。フィルムの成形性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂のなかでもポリプロピレン系樹脂がさらに好ましく、ポリエステル系樹脂のなかでもポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。本発明の効果は、ポリオレフィン系樹脂を使用した場合に顕著である。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンを単独重合させたアイソタクティックホモポリプロピレン、シンジオタクティックホモポリプロピレンの他、プロピレンを主体とし、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィン等を共重合させた様々な立体規則性を有するポリプロピレン系共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系共重合体は、2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
<<フィラー>>
基材は、基材の剛度、白色度及び不透明度の調整のため、フィラーを含むことができる。フィラーとしては、例えば、無機フィラー及び有機フィラーが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。フィラーを含む基材を延伸した場合、フィラーを核とした微細な空孔を基材内部に多数形成することができ、白色化、不透明化及び軽量化を図ることができる。
無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、これらを脂肪酸、高分子界面活性剤、帯電防止剤等で表面処理した無機粒子等が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ又はタルクが、空孔の成形性が良く、安価なために好ましい。白色度、不透明度を向上させる観点からは、酸化チタン、酸化亜鉛又は硫酸バリウムが好ましい。
有機フィラーとしては特に限定されないが、熱可塑性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が熱可塑性樹脂よりも高く、熱可塑性樹脂の溶融混練条件下で微分散する有機粒子が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等の有機粒子が挙げられる。また、メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂の微粉末を用いてもよく、熱可塑性樹脂を架橋して不溶化することも好ましい。
なお、樹脂の融点(℃)及びガラス転移温度(℃)は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定できる。
無機フィラー及び有機フィラーは、上記のなかから1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組合せる場合は無機フィラーと有機フィラーの組合せであってもよい。
無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、熱可塑性樹脂との混合の容易さの観点からは、大きいことが好ましい。また、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、延伸により内部に空孔を発生させて不透明性や印刷性を向上させる場合に、延伸時のシート切れ又は基材の強度低下等のトラブルを発生させにくくする観点からは、小さいことが好ましい。具体的には、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。また、同平均粒子径は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。
無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、基材の切断面を電子顕微鏡で観察し、粒子の少なくとも10個の最大径を測定したときの平均値を、溶融混練と分散により熱可塑性樹脂中に分散したときの平均分散粒子径として求めることができる。
基材中のフィラーの含有量は、基材の不透明度等を付与する観点から、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
基材に剛度を与えて記録用紙の取扱い性を向上させる観点からは、基材中のフィラーの含有量は、45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
<<その他の成分>>
本発明において、基材には、必要に応じて公知の添加剤を任意に含有することができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、可塑剤、フィラーの分散剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤等の公知の助剤が挙げられる。特に、記録用紙を屋外で用いるポスター用紙のように耐久性が求められる場合には酸化防止剤又は光安定剤等を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤等が挙げられる。
酸化防止剤及び光安定剤の含有量は、基材の質量に対して、0.001〜1質量%の範囲内で使用することが好ましい。また、含有量は、基材との密着性を阻害しない範囲で調整すればよい。
熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、結晶核剤を含有することによって基材の透明性を高くすることができる。
結晶核剤としては、例えば、ソルビトール系核剤、リン酸エステル金属塩系核剤、アミド系核剤、芳香族金属塩核剤、タルク等が挙げられる。
結晶核剤の含有量は、基材の質量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい一方、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂を使用する場合は、可塑剤を用いて可塑化させることもできる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等のカルボン酸エステル;トリアセチン等が挙げられる。
基材は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。例えば、基材を第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造とし、コア層にて記録用紙に好適な剛度、不透明性、軽量性等を付与することができる。このとき、第1表面層と第2表面層を構成する成分の種類及びその構成成分の割合、並びに厚さは、同じであっても異なっていてもよい。第1表面層と第2表面層の組成や厚さ等を適宜設計することで、基材のカールを抑えるだけでなく、記録用紙としたときのカールをも特定範囲内に制御することが可能となる。また、第1表面層又は第2表面層より内側にベタ印刷層又は顔料含有層を隠蔽層として備えることにより、一方の面から見たときに他方の面の印刷が透けることがなく、両面印刷時の視認性も向上させることもでき、ポスター用紙等に適した記録用紙を得ることができる。
本発明の他の一実施の形態の記録用紙として、例えば、基材を3層構造の多層構造とした場合の記録用紙の構造を示す模式図を図2に示す。
図2において、基材1は、第1表面層12とコア層11と第2表面層13の3層で構成されている。
基材の厚さは、屋外掲示する大型のポスター用紙等としての使用に十分な機械的強度が得られやすいことから、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、記録用紙の重量が減り、取扱い性が向上しやすいことから、基材の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
<<空孔率>>
基材が内部に空孔を有する場合、基材中の空孔の割合を表す空孔率は、不透明性を得る観点から、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。機械的強度を維持する観点からは、同空孔率は、45%以下であることが好ましく、44%以下であることがより好ましく、42%以下であることがさらに好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
空孔率の測定方法は、電子顕微鏡で観察した基材の断面の一定領域において、空孔が占める面積率より求めることができる。具体的には、基材の任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて基材の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付ける。観察面に金又は金−パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍〜3000倍の拡大倍率)において空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込む。得られた画像データに対して画像解析装置にて画像処理を行い、空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とすることができる。この場合、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、空孔率とすることができる。
<<基材の製造方法>>
基材である熱可塑性樹脂フィルムは、通常、上述した熱可塑性樹脂と層中に含まれる他の成分を混合した後、成形することにより得ることができる。成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独で又は組み合わせて製造することができる。
熱可塑性樹脂フィルムは、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いて、フィルム状に成形することができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、熱可塑性樹脂フィルムを成形してもよい。
上述したように、基材は、単層構造であっても多層構造であっても構わない。この場合、例えば、基材が第1表面層/コア層/第2表面層からなる多層構造である場合には、これらの層は、個別に成形して、その後成形した層を積層することにより多層構造の基材を得てもよいし、複数の層をまとめて成形することにより多層構造の基材を得てもよい。
熱可塑性樹脂フィルムを多層構造にする場合の成形方法としては、例えばフィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
熱可塑性樹脂フィルムは、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
記録用紙に適度なコシを与え、またラベルとして使用する際の施工性を高める観点から、熱可塑性樹脂フィルムが多層構造である場合は、少なくともそのうちの一層が延伸されていることが好ましい。
複数層を延伸する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
延伸を実施するときの延伸温度は、基材に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2〜60℃低い温度が好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20〜350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムを延伸する場合の延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。一方、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
また、ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は10倍以下であり、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、通常は1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上である一方、通常は20倍以下であり、好ましくは12倍以下である。
例えば、基材を延伸する場合の延伸倍率が、上記範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、熱可塑性樹脂フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
<樹脂被膜>
本発明における樹脂被膜は、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂と、必要に応じて無機フィラーとを含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子を含有しない。本発明における樹脂被膜は、通常、印刷、筆記具等により文字や画像等の記録が可能な膜である。
<<樹脂被膜の製造方法>>
上記樹脂被膜は、基材の少なくとも一方の面であり、かつ上述した組成比の値(O/C値)が特定の範囲内にある面に、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有し、必要に応じて無機フィラーを含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子を含有しない水溶液(以下、「樹脂被膜形成用塗工液」と言う場合がある。)を塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。ここで、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応率は100%でなくてもよい。すなわち、樹脂被膜は、反応物(反応生成物)である樹脂以外に、未反応のカチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有することがある。また、樹脂被膜形成用塗工液は、カチオン性水溶性ポリマー、シランカップリング剤及び水性溶媒を混合した後、撹拌することにより、得ることができる。本発明における樹脂被膜形成用塗工液は、カチオン性水溶性ポリマーの水溶液とシランカップリング剤の水溶液を混合することにより得てもよい。
樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー(未反応成分)、シランカップリング剤(未反応成分)及びカチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤との反応物は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により確認することができる。
上記反応物である樹脂を含有する樹脂被膜は、オレフィン系共重合体エマルジョンを含む塗工液を塗工して形成された樹脂被膜と比べると、エマルジョン由来のオレフィン系共重合体粒子を含有していないため、表面の凹凸が少ない。そのため、光沢性及び透明性が高く、優れた外観の記録用紙が得られる。樹脂被膜の剥がれも少ないため、毛羽立ちも起こりにくい。また、この樹脂被膜は、一般的に他樹脂との密着性が低いホモポリプロピレン等のような単独重合体の熱可塑性樹脂との密着性も十分であることから、樹脂被膜が設けられる対象に使用する熱可塑性樹脂の種類によらず、その対象との密着性を高めることができる。すなわち、樹脂被膜は基材との高い密着性を有するため、基材上に樹脂被膜をそのまま設けることもできるが、表面処理によってさらに密着性が高めるため、本発明の記録用紙においては表面処理された基材面に設けられている。また、樹脂被膜は、油性インク又はUVインクを用いたオフセット印刷方式、UVフレキソ印刷方式等の一般的な印刷方式に使用するインクだけでなく、UVインクジェット印刷方式又は乾式電子写真印刷方式にも適しており、更に湿式電子写真印刷方式に使用される液体トナーを使用した場合でも十分に高い密着性、特に耐水密着性を得ることができる。したがって、湿式電子写真印刷方式を含めた各種印刷方式に対して印刷適性を有する記録用紙を提供することができる。また当該記録用紙は耐水性が高く、インク又はトナーの脱落が少ない印刷物を提供できる。
<<カチオン性水溶性ポリマー>>
樹脂被膜において、カチオン性水溶性ポリマーは、シランカップリング剤との反応物である樹脂として含有される。ただし、上述のように、樹脂被膜には、未反応のカチオン性水溶性ポリマーが含まれていてもよい。
カチオン性水溶性ポリマーが有する極性基により、樹脂被膜はインク又はトナーと化学的な接着(具体的には、イオン結合による接着。)及び分散接着(具体的には、ファンデルワールス力による接着。)することができ、樹脂被膜に対するインク又はトナーの転移性及び密着性が向上すると推定される。
カチオン性水溶性ポリマーの水溶性としては、上記樹脂被膜形成用塗工液を調製する際に、カチオン性水溶性ポリマーを含有する水性媒体が溶液状態になる程度の溶解度があればよい。
使用できるカチオン性水溶性ポリマーとしては、例えばアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体、ホスホニウム塩構造を有する水溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を変性によりカチオン化したビニル系ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体が、樹脂被膜に対するインク又はトナーの転移性及び密着性の観点から、好ましい。
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体は、安全性の観点からは、第1級〜第3級のアミノ基又は第1級〜第3級のアンモニウム塩構造を有することが好ましく、第2級〜第3級のアミノ基又は第2級〜第3級のアンモニウム塩構造を有することがより好ましく、第3級のアミノ基又は第3級のアンモニウム塩構造を有することがさらに好ましい。また、シランカップリング剤との反応により架橋度の高い樹脂が得られ、インク又はトナーと樹脂被膜との高い密着性が得られるという観点からは、第1級〜第3級のアミノ基又は第1級〜第3級のアンモニウム塩構造が好ましく、第1級〜第2級のアミノ基又は第1級〜第2級のアンモニウム塩構造がより好ましく、第1級のアミノ基又は第1級のアンモニウム塩構造がさらに好ましい。
なかでも、エチレンイミン系重合体は、各種印刷方式で使用されるインク又はトナー、特にフレキソ印刷方式で使用される紫外線硬化型インクとの親和性が高いことから、樹脂被膜とインクとの密着性が向上し、好ましい。
エチレンイミン系重合体としては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、環状脂肪族炭化水素変性体、グリシドール変性体、これらの水酸化物等が挙げられる。変性体を得るための変性剤としては、例えば塩化メチル、臭化メチル、塩化n−ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化アリル、塩化シクロペンチル等が挙げられる。
なかでも、下記一般式(I)で表されるエチレンイミン系重合体が、印刷に用いるインク又はトナー、特に紫外線硬化型インクの転移性及び密着性の観点から好ましい。
Figure 2020145404
〔上記式(I)中、RとRはそれぞれ独立して水素原子;炭素数1〜12の直鎖又は分岐状のアルキル基;炭素数6〜12の脂環式構造を有するアルキル基又はアリール基を表す。Rは水素原子;ヒドロキシ基を含んでいてもよい炭素数1〜18の範囲のアルキル基又はアリル基;ヒドロキシ基を含んでいてもよい炭素数6〜12の脂環式構造を有するアルキル基又はアリール基を表す。mは2〜6の整数を表し、nは20〜3000の整数を表す。〕
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体としては、市販品を使用することもできる。
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーの市販品としては、ポリメント(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
また、エチレンイミン系重合体の市販品としては、エポミン(株式会社日本触媒製)、ポリミンSK(BASF社製)等が挙げられる。
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体の重量平均分子量は、基材との密着性及びインク等との密着性の向上の観点から、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。一方で、同重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
なお本発明において、樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法により測定した値をポリスチレン換算することによって得ることができる。
樹脂被膜形成用塗工液には、樹脂被膜の優れた効果の発現を大幅に損ねない範囲で、カチオン性水溶性ポリマー以外のポリマーが含まれていてもよい。
<<シランカップリング剤>>
樹脂被膜において、シランカップリング剤は、カチオン性水溶性ポリマーとの反応物である樹脂として含有される。ただし、上述のように、樹脂被膜には、未反応のシランカップリング剤が含まれていてもよい。
シランカップリング剤は、基材と樹脂被膜との密着性を高める機能の発現に寄与していると推定される。
具体的には、シランカップリング剤は、有機材料との反応性が高い官能基を有し、この官能基が基材の熱可塑性樹脂とカチオン性水溶性ポリマーを架橋反応させて基材との密着性を高め、基材と樹脂被膜の間への水分の浸入を防いでいると推定される。これにより、樹脂被膜の剥離、ひいては印刷物からのインク又はトナーの剥がれを抑えて耐擦過性を高めていると推定される。また、シランカップリング剤は、カチオン性水溶性ポリマー同士を架橋反応させて網目構造を形成し、この網目構造がインク又はトナーの転写性及び密着性を高めていると推定される。さらに、シランカップリング剤は、カチオン性水溶性ポリマーと架橋反応し、カチオン性水溶性ポリマーの親水性成分(極性樹脂成分)をより高分子量化させることによって、耐水性を向上させていると推定される。
シランカップリング剤としては、カチオン性水溶性ポリマーと反応する基、例えばシラノール基等の各種官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。カチオン性水溶性ポリマーと反応する基とは、カチオン性水溶性ポリマーが有する原子又は原子団と反応して結合を形成する基をいう。反応によって形成される結合は、共有結合、イオン結合、水素結合等のいずれであってもよく、特に限定されない。
具体的には、分子内に、アルコキシシリル基又はアルコキシシリル基が加水分解したシラノール基ととともに、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基等の、シラノール基以外の官能基の少なくとも1種を有するシランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤は、シラノール基が基材の熱可塑性樹脂と縮合反応する一方、シラノール基以外の官能基が樹脂被膜に含まれるアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル酸残基又はエチレンイミン系重合体におけるアミノ基等と縮合反応して、架橋反応を行うと推定される。
または、シランカップリング剤は、シラノール基がアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル酸残基又はエチレンイミン系重合体におけるアミノ基と縮合反応する一方、シラノール基以外の官能基が基材の熱可塑性樹脂と高い親和性で結びつくことで、架橋反応を行うと推定される。
シランカップリング剤におけるアルコキシシリル基又はこれが加水分解したシラノール基の含有率は、基材と樹脂被膜とを強固に密着させ、かつ樹脂被膜とインク又はトナーとを強固に密着させる点から、25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい一方、75%以下であることがより好ましい。また、シランカップリング剤におけるアルコキシシリル基又はこれが加水分解したシラノール基以外の反応性官能基の含有率は、25%以上であることが好ましい一方、75%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
使用できるシランカップリング剤の具体例としては、例えばエポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。
エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、インク又はトナーとの密着性の観点から、好ましい。
ビニル系シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリル系シランカップリング剤としては、例えば3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ系シランカップリング剤としては、例えばN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイド系シランカップリング剤としては、例えば3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト系シランカップリング剤としては、例えば3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
イソシアネート系シランカップリング剤としては、例えば3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
シランカップリング剤の市販品としては、例えば信越化学工業株式会社製のKBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1003、KBE−1003、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−9007(いずれも商品名);東レ・ダウコーニング株式会社製のZ−6043、Z−6040、Z−6519、Z−6300、Z−6030、Z−6011、Z−6094、Z−6062(いずれも商品名)等を使用することができる。
なかでも、インク又はトナーとの密着性の観点からは、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤又はイソシアネート系シランカップリング剤が好ましく、エポキシ系シランカップリング剤又はアミノ系シランカップリング剤がより好ましく、エポキシ系シランカップリング剤がさらに好ましい。
カチオン性水溶性ポリマーが有する第1級〜第3級アミノ基との架橋反応のし易さの観点からは、エポキシ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤又はイソシアネート系シランカップリング剤が好ましく、エポキシ系シランカップリング剤がより好ましい。
基材への適応性の観点からは、基材の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合には、ビニル系シランカップリング剤又は(メタ)アクリル系シランカップリング剤が好ましい。
また、基材表面に無機フィラー等の金属酸化物粒子が存在する場合、当該粒子と強固に結合して基材との密着性を高める観点から、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤又はメルカプト系シランカップリング剤を用いることが好ましい。
シランカップリング剤は、アルコキシシリル基の種類によって加水分解速度を制御できることが知られており、この性質を利用して、シランカップリング剤の自己縮合に基づく樹脂被膜形成用塗工液の劣化を抑制し、経時安定性を高めることができる。水への溶解性が高く、樹脂被膜形成用塗工液の調製が容易であり、かつ経時安定性が高いという観点からは、シランカップリング剤としてはエポキシ系シランカップリング剤が好ましく、なかでも3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
樹脂被膜形成用塗工液において、シランカップリング剤分子内のアルコキシシラン基は、加水分解によりシラノール基に変化しており、シラノール基が基材である熱可塑性樹脂フィルム上の、特に表面処理を施した熱可塑性樹脂フィルム上のヒドロキシ基、カルボキシ基等の官能基と水素結合等の化学結合することにより、基材と樹脂被膜との密着性が向上すると推定される。また、シラノール基同士が縮合反応することで、樹脂被膜自体の凝集力も向上し、樹脂被膜自体の物理的強度も向上すると推定される。
樹脂被膜がインク又はトナーとの密着性に優れる点では、樹脂被膜形成用塗工液に含まれる未反応シランカップリング剤が多すぎないことが好ましい。未反応のシランカップリング剤が多すぎると、得られる樹脂被膜が硬質になり、記録用紙のしなりに追随できずに割れたり、インクやトナーが剥がれる場合がある。また、樹脂被膜が耐水性に優れる点では、未反応カチオン性水溶性ポリマーが少ないことが好ましい。これらの観点から、樹脂被膜形成用塗工液中のシランカップリング剤の量は、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し、15質量部以上であり、17質量部以上であることが好ましい一方、60質量部以下であり、55質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましく、25質量部以下であることが最も好ましい。すなわち、樹脂被膜中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量。以下同様。)の含有量が、当該樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量。以下同様。)100質量部に対して15質量部以上であり、17質量部以上が好ましい一方、60質量部以下であり、55質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましく、25質量部以下であることが最も好ましい。
この範囲内であれば、例えば本発明に係る記録用紙を、液体トナーを用いた湿式電子写真印刷方式に用いた場合に、トナーとの密着性が十分であり、耐水性が高くトナーが脱落しにくい印刷物とすることができる。
<<無機フィラー>>
樹脂被膜形成用塗工液における無機フィラーの含有量は、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し9質量部以下である。すなわち無機フィラーを含まないか、含む場合はその含有量が9質量部以下である。無機フィラーの含有量が、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し9質量部以下であれば、無機フィラーに起因する樹脂被膜の凹凸による印刷部の白抜けを有効に防止でき、高いインク転写率を実現することができる。また無機フィラー脱落による記録用紙の汚れを有効に防止することができ、基材が持つ質感(紙質)をよりよく反映できる。このような観点から、無機フィラーの含有量は5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、0.1質量部未満がさらに好ましく、無機フィラーを含有しないことが特に好ましい。
すなわち本発明における樹脂被膜中の無機フィラーの含有量は、カチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対し9質量部以下であり、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部未満であり、特に好ましくは0質量部(含まない)である。
一方、ブロッキング防止の観点からは、樹脂被膜中に若干の無機フィラーを含有することが好ましく、具体的には樹脂被膜形成用塗工液における無機フィラーの含有量が、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。すなわち本発明における樹脂被膜中の無機フィラーの含有量が、カチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対し0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。
樹脂被膜形成用塗工液は、必要に応じて、帯電防止剤、架橋促進剤、アンチブロッキング剤、pH調整剤、消泡剤等のその他の助剤成分を含むことができる。すなわち、樹脂被膜は、必要に応じて、帯電防止剤、架橋促進剤、アンチブロッキング剤、pH調整剤、消泡剤等のその他の助剤成分を含むことがある。
<<帯電防止剤>>
樹脂被膜は、帯電による埃の付着及び印刷時の搬送不良を防いで、記録用紙としての取扱い性を向上させる観点から、帯電防止剤を含有することが好ましい。
帯電防止剤のなかでも、ブリードアウトによる表面の汚染等を減らす観点から、ポリマー型帯電防止剤が好ましい。
ポリマー型帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン型、アニオン型、両性型又はノニオン型の帯電防止剤を用いることができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせることができる。
カチオン型の帯電防止剤としては、アンモニウム塩構造、ホスホニウム塩構造等を有する帯電防止剤を例示できる。アニオン型の帯電防止剤としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等。)の構造を有する帯電防止剤を例示できる。アニオン型の帯電防止剤は、分子構造中に、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩の構造を有する帯電防止剤であってよい。
両性型の帯電防止剤としては、同一分子中に、カチオン型の帯電防止剤及びアニオン型の帯電防止剤の両方の構造を含有する帯電防止剤を例示できる。両性型の帯電防止剤としては、ベタイン型の帯電防止剤が挙げられる。ノニオン型の帯電防止剤としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等を例示できる。その他の帯電防止剤としては、分子構造中にホウ素を有するポリマー型帯電防止剤が挙げられる。
なかでも、ポリマー型帯電防止剤としては、カチオン型の帯電防止剤が好ましく、窒素含有ポリマー型帯電防止剤がより好ましく、アンモニウム塩構造を有する帯電防止剤がさらに好ましく、3級又は4級アンモニウム塩構造を有するアクリル系樹脂が特に好ましく、4級アンモニウム塩構造を有するアクリル系樹脂が最も好ましい。
ポリマー型帯電防止剤としては、三菱化学株式会社製のサフトマーST−1000、ST−1100、ST−3200(商品名)等の市販品を使用することができる。
ポリマー型帯電防止剤としては、シランカップリング剤と反応する化合物を使用してもよいし、反応しない化合物を使用してもよい。ただし、帯電防止性能の発現しやすさの観点からは、シランカップリング剤と反応しない化合物が好ましい。
樹脂被膜形成用塗工液に含まれる帯電防止剤の量は、帯電防止の観点からは、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。また、樹脂被膜の耐水性の観点からは、樹脂被膜形成用塗工液に含まれる帯電防止剤の量は、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対して、45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。
<<架橋促進剤>>
架橋促進剤としては、例えばリン酸、硫酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。
樹脂被膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましい。均一な樹脂被膜を安定的に形成する観点からは、樹脂被膜の厚さは0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。また基材に含まれる添加剤や低分子化合物のブリードアウトを効果的に抑制し、高温多湿環境下に保管された後も良好なインク転移性を有する観点からは、樹脂被膜は比較的厚い方が好ましい。具体的には0.1μm以上であることが好ましく、0.25μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。
一方、樹脂被膜の凝集破壊による、基材に対する密着性低下を有効に防ぐ観点からは、樹脂被膜の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましい。また、基材が持つ質感(紙質)をよりよく反映できる観点からは、樹脂被膜は比較的薄い方が好ましい。具体的には、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。
<<熱可塑性樹脂粒子>>
樹脂被膜は、上述のように、熱可塑性樹脂粒子を含まない。熱可塑性樹脂粒子は、樹脂被膜形成用塗工液中の分散媒体に分散している、オレフィン系共重合体等の熱可塑性樹脂のエマルジョン由来の粒子をいう。
熱可塑性樹脂粒子を含まないことにより、熱可塑性樹脂粒子の熱融着によるブロッキングと、印刷又は成形の前後における樹脂被膜表面の光沢の変化を避けることができる。また、樹脂被膜の表面の均一性が高まり、光沢、透明性等の外観に優れた記録用紙を得ることができる。また、トナー、特に液体トナーを用いた湿式電子写真印刷方式の液体トナーとの密着性が向上するとともに、基材に使用する熱可塑性樹脂がホモポリプロピレンを含有する場合であっても、基材との密着性も向上する。
樹脂被膜が熱可塑性樹脂粒子を含まない構成であることと、当該樹脂被膜の表面の均一性は、走査型電子顕微鏡観察等により確認できる。
オレフィン系共重合体エマルジョンは、国際公開2014/092142号に開示されるように、水性分散媒にオレフィン系共重合体を微粒子状に分散又は乳化させて得られるエマルジョンである。このエマルジョンには、分散剤として、非イオン性又はカチオン性の界面活性剤、非イオン性又はカチオン性の水溶性ポリマー等が使用されることがある。
エマルジョン中に分散又は乳化させるオレフィン系共重合体としては、カルボキシ基を含む構成単位又はその塩を共重合成分として含有するオレフィン系共重合体が挙げられる。このような共重合体の代表例としては、オレフィン系単量体と、不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体及びその塩が例示できる。具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ(土類)金属塩、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸グラフトポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸グラフト(メタ)アクリル酸エステル−エチレン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸グラフトプロピレン−ブテン共重合体等が挙げられる。
エマルジョン中のオレフィン系共重合体粒子は、通常、体積平均粒径が0.2〜3μm程度の粒子である。体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置((株)島津製作所製:SALD−2200)を用いて測定される体積平均粒径のことをいう。
国際公開2014/092142号に開示されているように、樹脂被膜中にオレフィン系共重合体粒子以外の熱可塑性樹脂粒子、例えばアクリル系共重合体粒子やウレタン系共重合体粒子を含有すると、オレフィン系共重合体粒子を含有する場合より、トナー、特に湿式電子写真印刷方式の液体トナーとの密着性がさらに不十分になる。
本発明の記録用紙は、表面処理されている(すなわち表面の組成比の値(O/C)が特定の範囲内にある)基材の表面に樹脂被膜を配するが、基材の一方の面だけでなく、基材の両面に対して、樹脂被膜を形成してもよい。例えば、基材の両面に上記表面処理が施されており、それぞれの表面上に樹脂被膜を形成させてもよい。
<<下地層>>
なお、本発明の記録用紙は、50〜1200Mpaの押し込み弾性率を有する下地層を、基材と樹脂被膜間に有してもよい。この場合、下地層の表面(すなわち樹脂被膜に対向する面)における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)を、0.01〜0.5の範囲内とすることが更に好ましい。なお下地層の押し込み弾性率は、下地層の表面側からナノインデンデーション試験により測定される。押し込み弾性率が上記範囲内にある柔軟な下地層が介在することにより、樹脂被膜と基材表面との界面に生じる応力を分散(緩和)させ、基材と樹脂被膜間に強い密着力を付与できる。その結果、耐水性が向上し、水に濡れる環境又は高湿度環境下であっても印刷層の剥がれが大きく減るため、記録用紙の耐久性が向上する。このような記録用紙は、特に飲料等の液体容器用のインモールドラベルとして有用である。
下地層の押し込み弾性率は、製造工程中の下地層の粘着力の上昇によるブロッキングを減らす観点からは、70MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましく、印刷層中のインク又はトナーとの密着性の低下を抑える観点からは、1000MPa以下が好ましく、900MPa以下がより好ましい。
下地層の押し込み弾性率は、使用する熱可塑性樹脂の種類、含有量、厚み、粘弾性、添加剤等を制御することで上記範囲内に調整することができる。例えば、後述する粘着付与剤、ワックス等の各種添加剤の使用、表面自由エネルギーの低いオレフィン系樹脂の使用等によって、押し込み弾性率を低く調整できる。また、厚みを大きくすること等によっても押し込み弾性率を高く調整できる。
下地層に使用できる熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り限定されず、基材と同様の熱可塑性樹脂を用いることができる。基材の材料として挙げた熱可塑性樹脂のなかでも、フィルムの加工性に優れる観点から、ポリオレフィン系樹脂又は官能基含有オレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂のなかでも、耐薬品性、加工性、低コストの観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
下地層は、必要に応じて粘着付与剤、ワックス、滑剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。なかでも、下地層は、粘着付与剤を含有することが好ましい。下地層に使用できる粘着付与剤としては、例えば脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族−芳香族系共重合体、脂環式系共重合体等の石油樹脂、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、又はこれらの水添物等が挙げられる。下地層中の粘着付与剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい一方、10.0質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
下地層の厚みは、基材と樹脂被膜間の密着性を高める観点からは、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。また記録用紙の厚みは、記録用紙自体の重量を軽くし、取扱い性を良好にする観点から500μm以下が好ましいため、その範囲に調整するためには、下地層の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
<記録用紙の使用方法>
上述のように、本発明の記録用紙における樹脂被膜は、記録可能な膜である。記録の仕方としては、例えば、印刷、筆記具等での記録が挙げられる。
本発明の記録用紙は、オフセット印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、及びスクリーン印刷を含む種々の方法の印刷が可能であり、得られた印刷物のインクの密着性に優れ、かつ耐水性、耐候性及び耐久性に優れることから、屋内外で用いるポスター、屋内外で用いるステッカー、冷凍食品用容器のラベル、工業製品のネーマー(使用方法、注意書きを記したラベル)等の用紙として好適に用いられる。
本発明の記録用紙は、特に液体トナーを用いた湿式電子写真印刷方式によって得られた印刷物のトナーの密着性にも優れており、小ロット印刷及び可変情報印刷が行われる用途にも好適である。また、本発明の記録用紙は、印刷物だけでなく、さらにラミネート加工した印刷物の耐水性も優れていることから、屋内外で用いるメニュー、フォトブック、ポスター、ステッカー等の用紙として好適に用いられる。
記録用紙に印刷を施すと、例えばインク等の印刷層が、記録用紙の樹脂被膜の表面上に形成される。例えば、図1の模式図で示すと、記録用紙の樹脂被膜3の表面上に印刷層5が形成される。
なお、印刷面を保護する観点から、さらに保護層が印刷層上に設けられていてもよい。
保護層は、印刷層が設けられる樹脂被膜3側の最表面に位置する。保護層は、シリコーンを含有することによって、最表面の摩擦係数を低下させ、印刷層の損傷、汚れ等を減らすことができる。シリコーン(silicone)は、ポリシロキサン結合を有するケイ素化合物である。
<記録用紙の特性>
本発明の記録用紙は、上述したように、図1で例示される構造を有し得る。樹脂被膜3は、良好な印刷受容層であるだけでなく、基材との密着性に優れている。さらに、樹脂被膜3との間の基材1の表面が表面処理されており、該表面処理された表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が特定の値になるよう表面処理されていることにより、基材1と樹脂被膜3との密着性がより向上すると推定される。
そして、本発明の記録用紙は、後述の実施例でも示すとおり、密着性、特に耐水密着性が高く、印刷物のインク転移不良及びインク密着力の低下が少なく、ブロッキング及び印刷後の紙質変化が少ない記録用紙になると推定される。
(粘着ラベル)
次に、本発明の粘着ラベルについて詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
本発明の粘着ラベルは、基材と、基材の両面に配する樹脂被膜と、粘着層と、を備えている。
図3は、本発明の一実施形態としての粘着ラベルの構成例を示す。
図3に示すように、粘着ラベル40は、基材1と、基材1の両面に配する樹脂被膜31及び樹脂被膜32を備えている。
また、粘着ラベル40は、基材1の一方の面に配する樹脂被膜32に対して、基材1とは反対の面に配する粘着層4を備えている。
本発明の他の一実施の形態の粘着ラベルとして、例えば、基材を3層構造の多層構造とした場合の粘着ラベルの構造を示す模式図を図4に示す。図4において、図3と同じ構成には同じ符号が付されている。
図4において、基材1は、第1表面層12とコア層11と第2表面層13の3層で構成されている。
なお、本発明の粘着ラベルにおいては、基材と、基材の両面に配した樹脂被膜とを合わせて記録用紙と称する。具体的には、図3及び図4において、樹脂被膜31と基材1と樹脂被膜32からなる積層体を記録用紙10ともいう。粘着ラベル40は、記録用紙10と粘着層4とを積層したものである。
後述するように基材を表面処理した部分を、図3及び図4中、表面処理部21又は表面処理部22として示す。
<基材>
本発明の粘着ラベルにおいて、基材は熱可塑性樹脂フィルムからなる。
熱可塑性樹脂フィルムに含まれる熱可塑性樹脂、フィラー及びその他の成分としては、いずれも(記録用紙)の項で述べたものと同様のものが挙げられ、好ましい材料及び好ましい含有量等も同様である。基材の空孔率、基材表面のO/C値、製造方法についても、(記録用紙)の項で述べたとおりであり、好ましい態様も同様である。
基材の層構成及び厚さについても、(記録用紙)の項で述べたとおりであり、好ましい態様も同様である。基材の厚さについては、粘着ラベルとして使用するに十分な機械的強度が得やすいことから、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。またラベル自体の重量を軽くし、取扱い性を良好にする観点から、基材の厚さは200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
<樹脂被膜>
本発明の粘着ラベルにおいて、基材の両面に配する樹脂被膜はカチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂を含有し、熱可塑性樹脂粒子を含有しない。このような樹脂被膜は、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子を含有しない水溶液を用いて形成することができる。具体的には、(記録用紙)の項で述べた樹脂被膜の製造方法と同様の方法で形成することができる。基材の両面に配する樹脂被膜を構成する成分の種類及びその構成成分の割合は、同じであっても、異なっていてもよい。
またカチオン性水溶性ポリマー、シランカップリング剤、無機フィラー、及びその他の成分(帯電防止剤、架橋促進剤、アンチブロッキング剤等)としては、いずれも(記録用紙)の項で述べたものと同様のものが挙げられ、好ましい材料及び好ましい含有量等も同様である。
樹脂被膜の厚さについても、(記録用紙)の項で述べたとおりであり、好ましい態様も同様である。樹脂被膜と基材の間に下地層を有していてもよい点も同様である。
樹脂被膜は、印刷、筆記具などにより文字や画像等の記録が可能な膜であり、また後述する粘着層との接着性が良好な層でもある。樹脂被膜を介して積層することにより、基材と粘着層との接着性が向上するため、本発明の粘着ラベルは他の物品に貼付した後で剥がしても糊残りが生じ難いという利点を有する。
<粘着層>
粘着層に用いる粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、例えばポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、及びこれらの混合物、或いはこれらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体等の粘着付与剤を配合したもの等を挙げることができる。
アクリル系粘着剤としては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が−20℃以下のものが挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、白金化合物等を触媒とする付加硬化型粘着剤、過酸化ベンゾイル等によって硬化させる過酸化物硬化型粘着剤等が挙げられる。
粘着剤の形態としては、溶液型、エマルジョン型、ホットメルト型等の各種形態が挙げられる。
粘着層は、粘着剤を記録用紙の表面に直接塗工して形成してもよいし、後述する剥離シートの表面に粘着剤を塗工して粘着層を形成した後、これを記録用紙の表面に適用するようにしてもよい。
粘着剤の塗工装置としては、例えばバーコーター、ブレードコーター、コンマコーター、ダイコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リップコーター、リバースコーター、ロールコーター、スプレーコーター等を挙げることができる。これらの塗工装置によって塗工された粘着剤等の塗膜を、必要に応じてスムージングし、乾燥工程を行うことで粘着層が形成される。粘着剤の塗工量は、特に限定されないが、乾燥後の固形分量で3g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることがより好ましい一方、60g/m以下であることが好ましく、40g/m以下であることがより好ましい。
粘着層には、必要に応じて、粘着層が記録用紙と接する面とは反対の面に、剥離シートが設けられていてもよい。
<<剥離シート>>
剥離シートは、粘着層表面を保護する目的で、粘着層の記録用紙と接しない面に必要に応じて設けられる。剥離シートとしては、上質紙又はクラフト紙をそのまま、上質紙又はクラフト紙にカレンダー処理、樹脂コート、フィルムラミネート等を施したもの、又はグラシン紙、コート紙、プラスチックフィルム等にシリコーン処理を施したもの等を使用することができる。このうち、粘着層との剥離性が良好であることから、粘着層に接触する面にシリコーン処理を施したものを用いることが好ましい。
<粘着ラベルの使用方法>
上述のように、樹脂被膜は、記録可能な膜である。記録の仕方としては、例えば、印刷、筆記具等での記録が挙げられる。本発明の粘着ラベルは、樹脂被膜を介して粘着層を有することにより、他の物品に貼付可能な記録用紙として使用することができる。
印刷方法は(記録用紙)の項で述べたものと同様のものが挙げられる。また印刷層(印刷面)保護の為に保護層を設けてもよく、保護層の材料についても先の記載と同様である。
<粘着ラベルの特性>
本発明の粘着ラベルは、上述したように、図3で例示される構造を有し得る。樹脂被膜31は、良好な印刷受容層であるだけでなく、基材との密着性に優れている。さらに、樹脂被膜31との間の基材1の表面が表面処理されており、該表面処理された表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が特定の値になるよう表面処理されていることにより、基材1と樹脂被膜31との密着性がより向上すると推定される。
樹脂被膜32は、基材1と粘着層4との接着性に寄与するが、さらに、樹脂被膜32との間の基材1の表面が表面処理されており、該表面処理された表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が特定の値になるよう表面処理されていることにより、基材1と樹脂被膜32との密着性がより向上すると推定される。
そして、これらが相まって、本発明の粘着ラベルは、後述の実施例でも示すとおり、密着性、特に耐水密着性が高く、印刷物のインク転移不良及びインク密着力の低下が少なく、糊残りも生じさせず、ブロッキング及び印刷後の紙質変化も少ない粘着ラベルになると推定される。
(インモールドラベル)
本発明のインモールドラベルは、熱可塑性樹脂フィルムからなる基材と、当該基材の一方の面に設けられたヒートシール層と、当該基材の他方の面に設けられた樹脂被膜とを有する。樹脂被膜は、基材のヒートシール層と反対側の面であって酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比(O/C)が特定範囲内にある面に設けられ、熱可塑性樹脂粒子を含有しない。本発明のインモールドラベルは、印刷によって樹脂被膜上に形成される印刷層をさらに有していてもよい。
上記樹脂被膜によりインク又はトナーとの密着性、特に耐水密着性が高まる。また、樹脂被膜はどの種類の熱可塑性樹脂とも密着性が高いため、樹脂被膜だけでも基材との密着性を高めることができるが、樹脂被膜が設けられる基材の面の酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が特定範囲にあると、基材と樹脂被膜間の密着性がより高まる。結果として、インモールドラベル全体の耐水性が向上し、優れた印刷適性及びインモールド成形適性が得られる。また基材と樹脂被膜との密着性を高めることにより、インモールドラベルを型抜きする際のインクの剥がれを減らせる可能性もある。さらに本発明における樹脂被膜は熱可塑性樹脂粒子を含有しないため、熱可塑性樹脂粒子の熱融着によるブロッキング及び樹脂被膜表面の光沢の変化も少ない。
本発明のインモールドラベルを用いる樹脂容器が、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂容器である場合、PET樹脂容器とヒートシール層との密着性を向上させる観点から、本発明のインモールドラベルは、さらにヒートシール層の基材と反対側の面上にも樹脂被膜を有することが好ましい。ヒートシール層と樹脂被膜の密着性を高める観点からは、ヒートシール層の樹脂被膜が設けられる面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が0.01〜0.5であることが好ましい。PET樹脂は、ポリエチレン樹脂等と比べて溶融粘度が低く、成形時には融点ではなく軟化点付近まで加熱するストレッチブロー法が用いられる。このような低温成形条件下でも十分に熱融着するようにヒートシール層には低融点樹脂が用いられるが、樹脂被膜はこの低融点樹脂との密着性が高く、また後述するように極性基を有するカチオン性水溶性ポリマーを含有することから、PET樹脂との密着性も高い。すなわち、樹脂被膜によってヒートシール層とPET樹脂容器の密着性がより高まり、耐水性が向上することから、水に濡れた時の剥がれが少なく、飲料等の液体容器用として特に有用なインモールドラベルを提供できる。なお、この場合の2つの樹脂被膜は、本発明の効果が得られるのであれば、各樹脂被膜を構成する成分の種類及び割合が同一でも異なっていてもよい。
図5は、本発明の一実施形態としてのインモールドラベル50aの構成例を示す。
図5に示すように、インモールドラベル50aは、基材1、ヒートシール層6及び樹脂被膜31を有する。ヒートシール層6は、基材1の一方の表面上に設けられている。基材1のヒートシール層6と反対側の表面21は、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が上記特定の範囲内にある表面である。樹脂被膜31はこの表面21上に設けられている。インモールドラベル50aは、印刷によって樹脂被膜31上に印刷層5を有していてもよい。
図6は、PET樹脂容器に好適なインモールドラベル50bの構成例を示す。図6において、図5のインモールドラベル50aと同じ構成には同じ符号が付されている。
図6に示すように、インモールドラベル50bは、インモールドラベル50aと同様に、基材1の一方の表面にヒートシール層6を有する。基材1のヒートシール層6と反対側の表面21及びヒートシール層6の基材1と反対側の表面22は、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が上記特定の範囲内にある。また、インモールドラベル50bは、基材1の表面21上に樹脂被膜31を有するとともに、ヒートシール層6の表面22上にも樹脂被膜32を有している。印刷層5は、樹脂被膜31上に設けられている。
以下、基材と基材上の樹脂被膜を合わせて記録用紙と称する場合がある。図5に示す例の場合、基材1及び樹脂被膜3の積層体が記録用紙10である。図6に示す例の場合、基材1及び樹脂被膜31の積層体が記録用紙10である。
<基材>
本発明のインモールドラベルにおいて、基材は熱可塑性樹脂フィルムからなる。基材は、インモールドラベルに、コシ等の機械強度、耐水性、耐薬品性、必要に応じて不透明性等を付与することができる。
熱可塑性樹脂フィルムに含まれる熱可塑性樹脂、フィラー及びその他の成分としては、いずれも(記録用紙)の項で述べたものと同様のものが挙げられ、好ましい材料及び好ましい含有量等も同様である。基材の空孔率、基材表面のO/C値についても、(記録用紙)の項で述べたとおりであり、好ましい態様も同様である。
基材は、単層構造であってもよいが、多層構造であることが好ましく、各層に特有の性質を付与した多層構造がさらに好ましい。例えば、基材を第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造とし、コア層にてインモールドラベルに好適な剛度、不透明性、軽量性等を付与することができる。このとき、第1表面層と第2表面層は、2つの層を構成する成分の種類及びその構成成分の割合が同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、後述する下地層が設けられる場合、第1表面層を下地層に対して親和性の高い層とし、第2表面層はヒートシール層に対して親和性の高い層とすることで、両面に設けられる各層との密着性が高い基材を得ることができる。また、第1表面層及び第2表面層の組成や厚み等を適宜設計することで、基材のカールを防いだり、インモールドラベルとしたときのカールをも特定範囲内に制御することが可能となる。また、第1表面層又は第2表面層より内側にベタ印刷層又は顔料含有層を隠蔽層として備えることにより、一方の面から見たときに他方の面の印刷が透けることがなく、視認性を向上させることができる。
基材は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。基材が多層構造である場合は、無延伸フィルムの層と延伸フィルムの層を組み合わせることもできるし、各層で延伸軸数が同じ又は異なる延伸フィルム同士を組み合わせることもできるが、少なくともそのうちの一層が延伸されていることが好ましい。
基材の厚さは、印刷時にしわの発生を抑え、金型内部への挿入時に正規の位置への固定を容易にする観点からは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。また、インモールドラベルを容器に設けたときにラベル境界部分の容器の薄肉化による強度低下を抑える観点からは、基材の厚みは200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。したがって、基材の厚みは20〜200μmが好ましく、40〜150μmがより好ましい。
<樹脂被膜>
本発明のインモールドラベルにおいて、基材の一方の面に配する樹脂被膜は、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子を含有しない水溶液を用いて形成することができる。具体的には、(記録用紙)の項で述べた樹脂被膜の製造方法と同様の方法で形成することができる。
またカチオン性水溶性ポリマー、シランカップリング剤、無機フィラー、及びその他の成分(帯電防止剤、架橋促進剤、アンチブロッキング剤等)としては、いずれも(記録用紙)の項で述べたものと同様のものが挙げられ、好ましい材料及び好ましい含有量等も同様である。樹脂被膜の厚さについても、(記録用紙)の項で述べたとおりであり、好ましい態様も同様である。
本発明における樹脂被膜は、基材との高い密着性が得られるため、基材上に樹脂被膜をそのまま設けることもできるが、表面処理によってさらに密着性が高めるため、表面処理された基材面に設けられている。結果、インモールド成形後もインク又はトナーの脱落が少ない、成形適性に優れたインモールドラベルを提供できる。
なお、樹脂被膜は、後述するヒートシール層との密着性が高く、またPET樹脂との接着性も高い。従って、特に本発明のインモールドラベルをPET樹脂容器に適用する場合には、ヒートシール層表面にも樹脂被膜を形成することが好ましい。この場合、基材上に設けられる樹脂被膜と、ヒートシール層上に設けられる樹脂被膜は、本発明の効果が得られるのであれば、それぞれの構成成分の種類及び含有量が同じでも異なっていてもよい。
<下地層>
(記録用紙)の項で述べたように、インモールドラベルにおいても樹脂被膜と基材の間に下地層を有していてもよい。下地層の物性、組成、厚み等についても、先に記述した通りである。
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、樹脂容器との優れた接着性をインモールドラベルに付与する。容器のインモールド成形時には、容器とヒートシール層が対面するようにインモールドラベルが金型の内側に設けられる。インモールド成形時の熱によってヒートシール層が溶融し、容器の表面に熱融着する。
インモールド成形の方法には、原料樹脂のパリソンを用いるダイレクトブロー法と、原料樹脂のプリフォームを用いるストレッチブロー法がある。ダイレクトブロー法は、原料樹脂を融点以上に加熱して溶融させてパリソンを形成し、金型内で当該パリソンに空気圧を加えて膨張させることで容器を形成する方法である。ストレッチブロー法は、原料樹脂から予め形成したプリフォームを原料樹脂の軟化点付近まで加熱し、金型内で当該プリフォームをロッドで延伸するとともに空気圧を加えて膨張させることで容器を形成する方法である。
ポリエチレンテレフタレート(PET)製の樹脂容器は、PETの溶融粘度が低く、溶融状態ではパリソンの形状を保つことが難しいため、通常は融点ではなく軟化点付近まで加熱するストレッチブロー法により形成される。そのため、PET樹脂容器へのインモールドラベルの熱融着も、PET樹脂の融点ではなく軟化点付近の加熱温度域で行われる。このようにして成形されるPET樹脂容器用のインモールドラベルでは、融点以上に加熱するダイレクトブロー法に比べて低温の成形条件下でも十分に溶融して容器への接着性を高める観点から、ヒートシール層は、60〜130℃の低融点を有する熱可塑性樹脂のフィルムであることが好ましい。融点が低いほど少ない熱量で十分な接着性が得られるため、ヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂の融点は、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。また、融点が高いほどフィルム成形がしやすく、フィルム製造時のロールへの貼り付き等も減らしやすいため、熱可塑性樹脂の融点は、70℃以上がより好ましく、75℃以上がさらに好ましい。したがって、熱可塑性樹脂の融点は70〜110℃がより好ましく、75〜100℃がさらに好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定することができる。
ヒートシール層に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば密度が0.900〜0.935g/cmの低密度又は中密度のポリエチレン、密度が0.880〜0.940g/cmの直鎖状ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アルキル基の炭素数が1〜8のエチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のZn、Al、Li、K、Na等の金属塩等の融点が60〜130℃のポリエチレン系樹脂が好ましく挙げられる。なかでも、X線法で計測される結晶化度が10〜60%、数平均分子量が10,000〜40,000の低密度あるいは中密度ポリエチレンか、又は直鎖状ポリエチレンが好ましい。
接着性を高め、かつインモールドラベル同士を重ねたときのブロッキングを減らす観点からは、ヒートシール層の熱可塑性樹脂としては、極性構造単位と非極性構造単位とを含む共重合体を使用することが好ましい。このような共重合体としては、例えば国際公開2018/062214号に記載のもの等が挙げられる。
ヒートシール層には、1種の熱可塑性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の熱可塑性樹脂を混合して使用してもよいが、後者の場合、剥離を抑える観点からは、混合する2種以上の樹脂は相溶性が高いことが好ましい。
ヒートシール層は、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤等の高分子分野で一般に用いられる添加剤を含むことができる。
ヒートシール層は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。単層構造の場合、ヒートシール層の厚みは、接着性を高める観点からは、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。一方、ヒートシール層内部での凝集破壊を抑える観点からは、同厚みは、10μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。したがって、単層構造のヒートシール層の厚みは、0.5〜10μmが好ましく、0.7〜3μmがより好ましく、1〜2μmがさらに好ましい。
ヒートシール層上にさらに樹脂被膜が設けられる場合、樹脂被膜との密着性を高める観点から、ヒートシール層の樹脂被膜が設けられる面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)は、0.01〜0.5であることが好ましい。組成比の値(O/C)としてより好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上である一方、より好ましくは0.4以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。ヒートシール層における組成比の値(O/C)は、基材と同様の表面処理によって上記範囲に制御することができる。
<印刷層及び保護層>
前述のように、本発明における樹脂被膜は記録可能な層である。記録の仕方としては、例えば、印刷、筆記具等での記録が挙げられる。本発明のインモールドラベルは、樹脂被膜とは反対の表面にヒートシール層を有することにより、他の物品に貼付可能な記録用紙として使用することができる。
印刷方法は(記録用紙)の項で述べたものと同様のものが挙げられる。また印刷層(印刷面)保護の為に保護層を設けてもよく、保護層の材料についても先の記載と同様である。
<インモールドラベルの特性>
<<インモールドラベルの厚み>>
インモールドラベルの厚みは、ラベルのシワ等を抑える観点から、25μm以上が好ましく、45μm以上がより好ましい。また、インモールドラベルを容器に設けたときにラベル境界部分の容器の薄肉化による強度低下を抑える観点からは、同厚みは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。したがって、インモールドラベルの厚みは、25〜200μmが好ましく、45〜150μmがより好ましい。
<<光沢度>>
本発明のインモールドラベルの樹脂被膜表面の光沢度は、基材表面の光沢を維持できることが好ましい。光沢度としては、JIS P 8142:1993に準拠して測定した、75度鏡面沢度を使用することができる。
なお本発明における樹脂被膜は、インモールド成形前後で光沢度の変化が小さい点でも好ましい。
<<ヘイズ>>
印刷層が設けられる前のインモールドラベルのヘイズは、ラベルの透明性が向上しやすい点では低いことが好ましい。また、製造のしやすさの点では、ヘイズが高いことが好ましい。具体的には、本発明のインモールドラベルのヘイズは、下限が1%であることが好ましく、2%であることがさらに好ましい。一方で、ヘイズの上限が10%であることが好ましく、5%であることがより好ましい。ここで、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメータ(曇り度計)を用いて測定した値をいう。
上記ヘイズは、基材の種類、基材の厚み、基材表面の形状、樹脂被膜に用いる材料の種類、樹脂被膜の厚み等によって調整できる。
本発明のインモールドラベルは、特に湿式電子写真印刷方式に使用される液体トナーとの密着性にも優れており、小ロット印刷及び可変情報印刷が行われる用途にも好適である。
(記録用紙の製造方法)
本発明の記録用紙の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムからなり、表面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が特定の値になるよう表面処理されている基材に対し、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有し、必要に応じて無機フィラーを、カチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対し9質量部以下含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子は含有しない水溶液を塗工した後、乾燥することにより、基材上に樹脂被膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
このようにして、基材の少なくとも一方の面に樹脂被膜を形成した記録用紙を作製することができる。
以下、本発明の記録用紙を製造する方法について詳しく説明する。
本発明の記録用紙は、樹脂被膜形成用塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムからなり、表面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が特定の値になるよう表面処理されている基材の少なくとも一方の面(表面処理が施されている側の面)に塗工した後、乾燥し、基材上に樹脂被膜を形成することにより、製造することができる。
本発明に係る記録用紙は、ロール・トゥ・ロールで製造し、生産性を向上させることもできる。樹脂被膜の厚さは、樹脂被膜形成用塗工液の塗工量により調整することができるので、印刷適性を維持して樹脂被膜の厚さを薄くする等、目的の記録用紙を製造することができる。
樹脂被膜形成用塗工液は、カチオン性水溶性ポリマー、シランカップリング剤等の各成分を水性溶媒に溶解させることにより、調製することができる。
水性溶媒は、水であってもよいし、水を主成分としてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等の水溶性有機溶媒を含有してもよい。水を主成分とするとは、全体の50質量%以上が水であることをいう。水性溶媒を用いることにより、工程管理が容易になり、安全上の観点からも好ましい。
樹脂被膜形成用塗工液に含まれる、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の合計量は、樹脂被膜形成用塗工液の全量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂被膜形成用塗工液に含まれる、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の合計量は、40質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
本発明における樹脂被膜形成用塗工液の塗工及び塗工膜の乾燥は、基材の成形に合わせてインラインで実施してもよく、オフラインで実施してもよい。
樹脂被膜形成用塗工液の塗工は、例えばダイコーター、バーコーター、ロールコーター、リップコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等の塗工装置を用いることができる。
樹脂被膜形成用塗工液の塗工量は、乾燥後の樹脂被膜の厚さや含有成分の濃度等を考慮して適宜調整することができる。
塗工膜の乾燥は、熱風送風機、赤外線乾燥機等の乾燥装置を用いることができる。
塗工膜を乾燥させることにより、塗工膜中のシランカップリング剤による脱水縮合反応が進み、シランカップリング剤とカチオン性水溶性ポリマーの反応物である樹脂が生成すると推定される。
(粘着ラベルの製造方法)
本発明の粘着ラベルは、(記録用紙の製造方法)の項で述べた方法にて得られた記録用紙の表面に、粘着層を設けることにより作製することができる。
より具体的には、基材の両表面を、該表面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が各々特定の値になるよう表面処理する。次いで、基材の両表面に樹脂被膜形成用塗工液を塗工し、乾燥することにより、基材の両表面に樹脂被膜を形成し、記録用紙を作製する。樹脂被膜形成用塗工液の組成、塗工方法、乾燥方法等は、(記録用紙の製造方法)の項の記載と同様のものが挙げられる。
得られた記録用紙の表面に粘着剤を直接塗工して形成してもよいし、前述した剥離シートの表面に粘着剤を塗工して粘着層を形成した後、これを記録用紙の表面に適用してもよい。
(インモールドラベルの製造方法)
本発明のインモールドラベルの製造方法は、一方の面にヒートシール層が設けられた基材の他方の面に表面処理を施す工程と、基材の表面処理が施された面上に上述した樹脂被膜形成用塗工液を塗工した後、乾燥することにより、上記樹脂被膜を形成する工程と、を含む。
本発明のインモールドラベルは、ロール・トゥ・ロールで製造し、生産性を向上させることもできる。樹脂被膜の厚みは、樹脂被膜形成用塗工液の塗工量により調整することができるので、印刷適性を維持して樹脂被膜の厚みを薄くする等、目的のインモールドラベルを製造することができる。
<ヒートシール層付き基材の製造方法>
基材上にヒートシール層を積層する方法としては、共押出法、押出ラミネート法、フィルム貼合法、塗工法等が挙げられる。
共押出法は、多層ダイスに基材用の熱可塑性組成物と、ヒートシール層用の熱可塑性組成物(それぞれ複数あってもよい)とを供給し、多層ダイス内で積層して押し出すため、成形と同時に積層が行われる。
押出ラミネート法は、基材を先に成形し、これに溶融したヒートシール層用の熱可塑性組成物を積層し、冷却しながらロールでニップするため、成形と積層とは別工程で行われる。
フィルム貼合法は、基材(例えば前述した記録用紙の基材等)及びヒートシール層をそれぞれフィルム成形し、感圧接着剤を介して両者を貼り合わせるため、成形と積層とは別工程で行われる。
また、ヒートシール層が非極性樹脂層と極性樹脂層を含む多層構成の場合は、上記方法で基材の片面に非極性樹脂層を積層した基材に、塗工法で極性樹脂層を設けることができる。塗工法としては、溶剤塗工法及び水系塗工法を挙げることができる。
これらの方法のなかでも、各層を強固に接着できる観点から、共押出法が好ましい。
各層を単独でフィルム成形する場合のフィルム成形方法としては、Tダイによる押出し成形(キャスト成形)、Oダイによるインフレーション成形、圧延ロールによるカレンダー成形等が挙げられる。多層構造の基材のフィルム成形方法としては、上述した共押出法、押出ラミネート法等を使用できる。
基材及びヒートシール層は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
基材とヒートシール層は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
延伸を実施するときの延伸温度は、各層に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2〜60℃低い温度が好ましい。
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20〜350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムを延伸する場合の延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。また、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、熱可塑性樹脂フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
<表面処理>
基材のヒートシール層と反対側の面に上述した表面処理を施し、酸素原子数と炭素原子数の組成比の値(O/C)を0.01〜0.5の範囲に調整する。表面処理の方法としては、<基材表面のO/C値>の項に記載した方法が挙げられる。
表面処理は、基材表面にヒートシール層を設ける前に行ってもよいし、ヒートシール層を設けた後に行ってもよい。例えばヒートシール層を押出ラミネート法、フィルム貼合法、塗工法等で形成する場合は、予め基材の、ヒートシール層を設ける面とは反対の面に表面処理を行ってもよく、ヒートシール層を共押出法にて形成する場合は、ヒートシール層を設けた後で表面処理を行えばよい。
<樹脂被膜の形成方法>
前記表面処理を施した基材表面に樹脂被膜を形成する方法としては、樹脂被膜形成用塗工液の組成も含め、(記録用紙の製造方法)の項の記載と同様のものが挙げられる。
なお、ヒートシール層上に樹脂被膜を設ける場合も、基材表面に設ける場合と同様に、ヒートシール層の表面処理及び樹脂被膜の形成を行えばよい。
基材側に設けられる樹脂被膜上には、印刷によって印刷層を設けることができる。
また必要に応じて印刷層を設けた後、保護層用の塗工液を塗工することによって基材のヒートシール層と反対側の最表面に保護層が設けられる。
<ラベル加工>
本発明のインモールドラベルは、裁断又は打ち抜きにより必要な形状及び寸法に加工される。裁断又は打ち抜きは、印刷前に行うこともできるが、作業の容易性からは印刷後に行うことが好ましい。
<ラベル付き容器>
本発明のインモールドラベルとともに樹脂容器をインモールド成形することによって樹脂容器の表面にインモールドラベルが貼着されたラベル付き容器が得られる。基材表面のO/C値の調整、及びその上に設けた樹脂被膜により、印刷後又は成形後のインク又はトナーの剥がれが少ないラベル付き容器を提供できる。また、ヒートシール層上に樹脂被膜を設けることにより、基材とは異質のPET樹脂に対しても接着性が高く、剥がれが少ないラベル付き容器を提供できる。
<<樹脂容器>>
本発明のインモールドラベルを使用できる樹脂容器の材質は特に限定されず、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂等の樹脂容器に使用できる。
容器の色は、透明か又は顔料、染料等の色材を含まない自然色であってもよく、色材又は着色による不透明色であってもよい。
容器の胴体の断面形状は、真円であってもよく、楕円形や矩形であってもよい。胴体の断面形状が矩形である場合は、角が曲率を有することが好ましい。強度の観点から、胴体の断面は真円か真円に近い楕円形であることが好ましく、真円であることがより好ましい。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
(測定方法)
<酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比(O/C)>
以下の装置、測定条件で熱可塑性樹脂フィルム表面をXPS(X線電子光分光法)にて、O1s及びC1sのそれぞれのピーク強度面積に各ピークの相対感度をかけた値の比から酸素と炭素の存在比(O/C)を求めた(例えば、筏 義人編、「高分子表面の基礎と応用(上)」、化学同人発行、1986年、第4章 参照)。
・装置:Thermo Fisher社製 K−Alpha
・励起X線:Monochromatic Al Kα1、2線
・X線径:200μm
・光電子脱出角度(試料表面に対する検出器の傾き):45°
<表面粗さ(μm)>
基材の熱可塑性樹脂フィルムの表面粗さ(算術平均粗さRa(μm))は、JIS B0601:2003に準拠し、三次元粗さ測定装置((株)小坂研究所製、商品名:SE−3AK)、及び解析装置((株)小坂研究所製、商品名:SPA−11)を用いて測定した。
<層の厚み(μm)>
基材の熱可塑性樹脂フィルムの厚み(総厚み(μm))は、JIS K7130:1999に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、商品名:PG−01J)を用いて測定した。また、基材が多層構造である場合の各熱可塑性樹脂フィルムの厚み(μm)は、測定対象試料を液体窒素にて−60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面観察用の試料を作製し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM−6490)を使用して断面観察を行い、組成外観から熱可塑性樹脂組成物ごとの境界線を判別して、熱可塑性樹脂フィルムの総厚みに観察される各層の厚み比率を乗算して求めた。
<光沢度(°)>
本発明の記録用紙の樹脂被膜表面の光沢度(°)は、基材表面の光沢を維持できることが好ましい。光沢度としては、JIS P 8142:1993に準拠して測定した、75度鏡面光沢度を使用した。
(樹脂組成物の調製)
<樹脂組成物(a)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY−4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)80質量部、重質炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製、商品名:ソフトン1800、平均粒径1.2μm(測定方法:空気透過法))20質量部よりなる樹脂組成物(a)を調製した。
<樹脂組成物(b)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY−4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)58質量部、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名:ノバテックHD HJ360、MFR(190℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:132℃)20質量部、マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製、商品名:モディック P908、軟化点:140℃)2質量部、重質炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製、商品名:ソフトン1800、平均粒径1.2μm(測定方法:空気透過法))20質量部よりなる樹脂組成物(b)を調製した。
<樹脂組成物(c)の調製>
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FY−4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)100質量部よりなる樹脂組成物(c)を調製した。
<樹脂組成物(d)の調製>
プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP FW4B、MFR(230℃、2.16kg荷重):6.5g/10分、融点:140℃)100質量部よりなる樹脂組成物(d)を調製した。
樹脂組成物(a)〜(d)の構成成分について、下記表1に示す。
Figure 2020145404
(樹脂被膜形成用塗工液の構成成分)
<カチオン性水溶性ポリマー(A1)水溶液>
還流冷却器、窒素導入管、撹拌機、温度計、滴下ロート及び加熱用のジャケットを装備した、内容積が150Lの反応器に、イソプロパノール(トクヤマ社製、商品名:トクソーIPA)40kgを仕込んだ。撹拌しながら、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三洋化成工業社製、商品名:メタクリレートDMA)12.6kg、ブチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルB)12.6kg及び高級アルコールメタクリル酸エステル(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルSL、ラウリルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの混合物)2.8kgを仕込んだ。系内の窒素置換を行い、内温を80℃まで上昇させた後、重合開始剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製、商品名:V−60(AIBN))0.3kgを添加し、重合を開始した。
反応温度を80℃に保って4時間重合を行い、得られた共重合体を、氷酢酸(和光純薬工業社製)4.3kgを用いて中和した。反応器からイソプロパノールを留去しながらイオン交換水48.3kgを添加して系内を置換し、第3級アミノ基含有メタクリル系ポリマー(重量平均分子量40,000)の粘調な水溶液(第3級アミノ基含有メタクリル系ポリマーの濃度が35質量%)を得た。得られた水溶液をカチオン性水溶性ポリマー(A1)水溶液として用いた。
<カチオン性水溶性ポリマー(A2)水溶液>
第2級アミノ基含有ポリマーである、市販のポリエチレンイミン水溶液(BASFジャパン社製、商品名:ポリミンSK)を、カチオン性水溶性ポリマー(A2)水溶液として用いた。
<シランカップリング剤(B)>
市販のシランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)を、シランカップリング剤(B)として用いた。
<帯電防止剤(C)>
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を取り付けた四つ口フラスコ内に、ジメチルアミノエチルメタクリレート35質量部、エチルメタアクリレート20質量部、シクロヘキシルメタアクリレート20質量部、ステアリルメタアクリレート25質量部、エチルアルコール150質量部、及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加した。系内を窒素置換後、窒素気流下で80℃の温度で6時間重合反応を行った。次いで、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムクロリドの60質量%エチルアルコール溶液70質量部を加え、さらに温度80℃で15時間反応させた。水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、第4級アンモニウム塩含有アクリル系樹脂の濃度が30質量%の水溶液を得て、これを帯電防止剤(C)として用いた。
<オレフィン系共重合体エマルジョン>
二軸押出機(日本製鋼所社製、機器名:TEX30HSS)を使用して、原料樹脂の溶融混練と乳化を以下の手順で行い、オレフィン系共重合体エマルジョンを調製した。
具体的には、オレフィン系共重合体としてペレット状のエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(三井・デュポン・ポリケミカル社製、商品名:ニュクレルN035C)を、ホッパーから押出機に供給した。そして、スクリュー回転数230rpm、シリンダー温度160〜250℃の条件で、溶融、混練した。
次いで、上記カチオン性水溶性ポリマー(A1)を、押出機のシリンダー中間部の注入口から、オレフィン系共重合体100質量部に対してカチオン性水溶性ポリマー(A1)5質量部となるように連続的に供給し、オレフィン系共重合体の乳化及び分散処理を行った。その後、押出機出口から押し出して、乳白色の水性分散液を得た。この水性分散液にイオン交換水を加えて、カチオン性水溶性ポリマー(A1)とオレフィン系共重合体の合計濃度が45質量%となるように調整し、オレフィン系共重合体エマルジョンを得た。エマルジョン中のオレフィン系共重合体粒子の体積平均粒径をレーザー回析型粒度分布測定装置(島津製作所社製、機器名:SALD−2000)で測定したところ、1.0μmであった。
<架橋剤>
ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物(日本PMC社製、商品名:WS−4082)を、シランカップリング剤以外の架橋剤として用いた。
<無機フィラー>
炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製、商品名:ソフトン1800、平均粒径1.2μm(測定方法:空気透過法))を無機フィラーとして使用した。
(樹脂被膜形成用塗工液の調製)
<樹脂被膜形成用塗工液(a)の調製例1>
上記カチオン性水溶性ポリマー(A1)100質量部(固形分換算)に対し、カチオン性水溶性ポリマー(A2)20質量部(固形分換算)、シランカップリング剤(B)20質量部、帯電防止剤(C)20質量部、及び無機フィラー2質量部を含む水溶液を、樹脂被膜形成用塗工液(a)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(a)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、17質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(b)の調製例2>
上記カチオン性水溶性ポリマー(A1)100質量部(固形分換算)に対し、カチオン性水溶性ポリマー(A2)25質量部(固形分換算)、シランカップリング剤(B)30質量部、帯電防止剤(C)20質量部を含む水溶液を、樹脂被膜形成用塗工液(b)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(b)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、24質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(c)の調製例3>
上記カチオン性水溶性ポリマー(A1)100質量部(固形分換算)に対し、カチオン性水溶性ポリマー(A2)25質量部(固形分換算)、シランカップリング剤(B)40質量部、及び帯電防止剤(C)20質量部、及び無機フィラー5質量部を含む水溶液を、樹脂被膜形成用塗工液(c)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(c)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、32質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(d)の調製例4>
表2に示すように、オレフィン系共重合体エマルジョン100質量部(固形分換算)に対し、カチオン性水溶性ポリマー(A2)5質量部、シランカップリング剤(B)5質量部、帯電防止剤(C)5質量部、及び無機フィラー2質量部を含む水溶液を、樹脂被膜形成用塗工液(d)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(d)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、100質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(e)の調製例5>
樹脂被膜形成用塗工液(d)において、オレフィン系共重合体エマルジョンを用いず、さらにシランカップリング剤(B)5質量部の代わりに架橋剤5質量部を用いたこと以外は、樹脂被膜形成用塗工液(d)と同様にして、樹脂被膜形成用塗工液(e)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(e)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、0質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(f)の調製例6>
樹脂被膜形成用塗工液(b)において、無機フィラー12質量部を含有させたこと以外は、樹脂被膜形成用塗工液(b)と同様にして、樹脂被膜形成用塗工液(f)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(f)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、24質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(g)の調製例7>
上記カチオン性水溶性ポリマー(A1)50質量部(固形分換算)に対し、カチオン性水溶性ポリマー(A2)50質量部(固形分換算)、シランカップリング剤(B)45質量部、帯電防止剤(C)20質量部、及び無機フィラー0.1質量部を含む水溶液を、樹脂被膜形成用塗工液(g)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(g)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、45質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(h)の調製例8>
上記カチオン性水溶性ポリマー(A1)40質量部(固形分換算)に対し、カチオン性水溶性ポリマー(A2)60質量部(固形分換算)、シランカップリング剤(B)53質量部、帯電防止剤(C)30質量部、及び無機フィラー0.1質量部を含む水溶液を、樹脂被膜形成用塗工液(h)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(h)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、53質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(i)の調製例9>
樹脂被膜形成用塗工液(h)において、シランカップリング剤(B)の含有量を60質量部、帯電防止剤(C)の含有量を15質量部、及び無機フィラーの含有量を1.0質量部としたこと以外は、樹脂被膜形成用塗工液(h)と同様にして、樹脂被膜形成用塗工液(i)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(i)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、60質量%であった。
<樹脂被膜形成用塗工液(j)の調製例10>
樹脂被膜形成用塗工液(h)において、シランカップリング剤(B)の含有量を65質量部、帯電防止剤(C)の含有量を15質量部、及び無機フィラーの含有量を1.0質量部としたこと以外は、樹脂被膜形成用塗工液(h)と同様にして、樹脂被膜形成用塗工液(j)として調製した。
樹脂被膜形成用塗工液(j)において、カチオン性水溶性ポリマーA(A1及びA2を含む)に対するシランカップリング剤(B)の含有量は、65質量%であった。
樹脂被膜形成用塗工液(a)〜(j)の調製例1〜10について、下記表2に示す。
Figure 2020145404
[記録用紙の実施例]
(基材の製造)
<基材の製造例1>
上記樹脂組成物(a)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。
次いで、上記樹脂組成物(c)を250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、上記樹脂組成物(a)からなる樹脂層の第1面に積層した。
次いで、上記樹脂組成物(a)を250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、先に形成した樹脂組成物(a)からなる樹脂層の第1面とは反対の第2面に積層した。
このようにして、樹脂組成物(c)からなる樹脂層、樹脂組成物(a)からなる樹脂層、及び樹脂組成物(a)からなる樹脂層の3層が積層された積層シートを得た。
次いで、この3層の積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが80μm、各層の樹脂組成物(c/a/a)、各層厚み(5μm/60μm/15μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸)の基材を得た。
この基材は3層構造であり、1軸延伸された樹脂組成物(c)からなる樹脂層は上記第1表面層に対応し、2軸延伸された樹脂組成物(a)からなる層がコア層、1軸延伸された樹脂組成物(a)からなる層が第2表面層に対応している。
<基材の製造例2〜7及び9〜20>
基材の製造例1において、各樹脂層を下記表3に示すように変更したこと以外は、基材の製造例1と同様にして、基材の製造例2〜7及び9〜20の基材を得た。
<基材の製造例8>
上記樹脂組成物(b)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。
次いで、この樹脂組成物(b)からなる樹脂層を60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで、60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが60μm、単層2軸延伸シートを得た。
次いで、上記樹脂組成物(c)を250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、上記樹脂組成物(b)からなる樹脂層の第1面に積層すると同時に、第2面に積層して、3層が積層された積層シートを得た。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが100μm、各層の樹脂組成物(c/b/c)、各層厚み(20μm/60μm/20μm)、各層延伸軸数(無延伸/2軸/無延伸)の基材を得た。
この基材は3層構造であり、2軸延伸された樹脂組成物(b)からなる樹脂層はコア層に対応し、コア層の第1面に積層された樹脂組成物(c)からなる樹脂層は第1表面層に対応し、コア層の第2面に積層された樹脂組成物(c)からなる層が第2表面層に対応している。
(記録用紙の製造)
<実施例1>
製造例1で得た基材の両面に、60W・分/mの条件でコロナ放電処理を施した後、各面の乾燥後の厚みが0.03μmとなるように、調製例1で調製した樹脂被膜形成用塗工液(a)をロールコーターにより塗工した。60℃のオーブンにおいて塗工膜を乾燥して樹脂被膜を形成し、記録用紙を得た。
<実施例2〜10及び比較例1〜6>
実施例1において、基材と樹脂被膜を下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、記録用紙を得た。
実施例1〜13及び比較例1〜7について、下記表3に示す。
Figure 2020145404
(評価)
実施例1〜8、10〜13、比較例1〜4、6及び7にて得られた記録用紙に対し、以下の評価を行った。
<アンチブロッキング性1>
各実施例及び比較例にて得られた記録用紙を、ロール状に巻回して、温度40℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、ロールからの引出時にブロッキングを引き起こすことなくスムースな引き出しが可能であるか、以下の方法で巻き取りブロッキングを評価した。
○:剥離音がなくスムースに引き出せること
△:剥離音があるが、引き取り後の基材の外観を損ねていないこと(実用下限)
×:大きな剥離音があり、かつ引き取り後の基材の外観を損ねていること(実用に適さない)
<アンチブロッキング性2>
各実施例及び比較例にて得られた記録用紙を各2枚、樹脂被膜同士が接するように重ねて熱傾斜試験機(TYPE HG−100、株式会社東洋精機製作所製)に挟持し、30〜50℃の5℃刻みの温度設定で5分間圧着させ、熱ロール融着性を以下の評価基準で判定した。
○:40℃以上50℃以下で接着しない
△:30℃以上40℃未満で接着しない(実用下限)
×:30℃未満で接着した(実用に適さない)
(湿式電子写真印刷方式の印刷適性)
次いで実施例1〜8、10〜13、比較例1〜4、6及び7にて得られた記録用紙に対し、以下の方法で印刷適性を評価した。
まず各実施例及び比較例にて得られた記録用紙を温度23℃、相対湿度50%の環境下で3時間調湿した。次いで、調湿時と同じ環境下で、湿式電子写真印刷機(日本HP社製、機器名:Indigo7800)を用いて、記録用紙の片面に濃度100%の墨ベタ画像及び濃度30%の墨の網点絵柄を印刷した。印刷機には、複数色の液体トナー(日本ヒューレット・パッカード社製、商品名:HP ElectroInk Light Cyan Q4045A、HP ElectroInk Light Magenta Q4046A、HP ElectroInk Digital Matt 4.0,3 Cartridges Q4037A、HP ElectroInk Digital Matt 4.0,9 Cartridges Q4038A)を搭載した。
<トナー転移性>
上記印刷後の記録用紙上の画像の状態をルーペで拡大して目視で観察し、トナー転移性を次のようにして評価した。
○:画像が鮮明であり、トナーの転移性が良好
△:目視ではインク滲みが不明瞭であるが、ルーペによる観察ではドット面積が広がっている(実用下限)
×:画像にかすれが生じており、トナーの転移性が低い(実用に適さない)
<トナー密着性>
上記の手順で印刷された記録用紙を、23℃の水中に24時間浸漬した後、水中から取り出して水分をウエスで軽く拭き取った5分後に、記録用紙の印刷面に、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ(登録商標)CT−18)の粘着面を貼り付け、指で3回擦って十分に密着させた。密着させたセロハンテープを180度方向に300m/minの速度で手剥離した後、小型汎用画像解析装置(ニレコ社製、型式名:LUZEX−AP)を用いて、記録用紙上のインクの残存率を算出した。具体的には、印刷面を撮影して得られた画像に2値化処理を実施し、トナーが占める面積の割合を残存率として算出した。算出したインクの残存率から、以下の基準でインクの密着性をランク評価した。
〇:トナーの残存率が80%以上
△:トナーの残存率が50%以上80%未満(実用下限)
×:トナーの残存率が50%未満(実用に適さない)
<耐擦過性:ウェットA>
上記の手順で印刷された記録用紙を、学振形染色摩擦堅ろう度試験機(スガ試験器社製、機器名:摩擦試験機II形)に取り付けて、水に湿らせた白綿布で、荷重500gで100回擦る摩擦試験を行った。トナー密着性の評価と同様の基準で、摩擦試験後の記録用紙上のトナーの残存率から耐擦過性を評価した。
<耐擦過性:ウェットB>
上記の手順で印刷された記録用紙を、23℃の水中に24時間浸漬した後、水中から取り出して水分をウエスで軽く拭き取った5分後に、耐擦過性:ウェットAの場合と同様に摩擦試験及び評価を行った。
<印刷時の光沢変化>
記録用紙を1枚、印刷面が加圧さるように、熱傾斜試験機(TYPE HG−100、株式会社東洋精機製作所製)に挟持し、90〜170℃の20℃刻みの温度設定で5秒間加圧した。加圧された箇所の75度鏡面光沢度を、JIS P 8142:1993に準拠して測定し、加圧していない記録用紙の光沢度との差から、印刷時の光沢変化を以下の評価基準で判定した。
○:130℃以上170℃未満で、光沢度差が5%未満
△:100℃以上130℃未満で、光沢度差が10%未満(実用下限)
×:100℃未満で、光沢度差が10%以上(実用に適さない)
<耐光性>
ポスター等の用途においては、屋外使用によってUVインク印刷物のインクの剥がれが発生し問題となる場合がある。しかし耐候性の評価は、実際に屋外で暴露試験を行うと、気候や天候等の種々の変動ファクターによって結果が振れやすい。本明細書では、印刷物に、JIS K−7350−4に準拠して、均一な条件で耐候性の促進処理(暴露試験)を行った後に、UVインク密着性の評価を行った。より具体的には、以下の条件で促進処理を行った。
超促進耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス(株)製、商品名「メタルウェザー KU−R5N−A」、メタルハライドランプ式)及び295〜450nmの紫外線光を透過するガラスフィルター「KF−2フィルター」(商品名)を使用した。上記の手順で印刷された記録用紙を90mm×150mmの寸法に切り取って得た試験片を、印刷面側が暴露面となるように、四方をアルミ箔テープ「AL−T」(竹内工業(株)製、商品名)でステンレス板(100mm×200mm)に貼り付けて固定し、これを試験機内に設置した。試験片の面の放射照度を90W/mとし、ブラックパネル温度を63℃とした。温度63℃、相対湿度50%での暴露5時間及び温度30℃、相対湿度98%での暴露3時間を1サイクルとして、促進処理はこれを2サイクル実施した。したがって、印刷面への放射露光量は5.18×10J/mであった。
次いで、耐候性促進処理を施した試験片を、耐擦過性のウェットAの場合と同様に摩擦試験及び評価を行った。
実施例1〜8及び10〜13、並びに比較例1〜4、6及び7の評価結果を、下記表4に示す。
Figure 2020145404
(水性インクジェット印刷方式の印刷評価)
実施例9及び比較例5にて得られた記録用紙に対し、水性インクジェット印刷方式の印刷評価を行った。
<吸水量>については白紙の記録用紙を用い、それ以外については水性顔料インクジェットプリンタ(形式名: TM−C3500、セイコーエプソン社製)と、当該プリンタ標準のシアン、マゼンタ、イエロー及び黒の水性顔料インク(型番:SJIC22)を用いて、水性インクジェット印刷方式の印刷適性を評価した。
<吸水量>
実施例9及び比較例5にて得られた記録用紙に対し、樹脂被膜の吸水量を測定した。吸水量は、コッブ法(JIS P8140:1998)に準拠して、コッブサイズ測定器(熊谷理機工業社製)を使用して120秒間接触した後、吸水量を測定することにより求め、3点データの平均値を測定値とした。
<滲み>
実施例9及び比較例5にて得られた記録用紙を、上記印刷機を用いて、記録用紙の片面にJIS X9201:2001(高精細カラーディジタル標準画像(CMYK/SCID))のN5の絵柄をインクジェット方式で印刷した。水性顔料インクジェットプリンタで印刷した画像を、印刷直後に目視で観察するとともに、画像のドットを顕微鏡で観察し、次の通りに滲みを判定した。
○:滲みが全く見られない
△:線の輪郭が太くなるか、不明瞭になり、所々に滲みが見られる(実用下限)
×:画像全体に滲みが見られる(実用に適さない)
<乾燥性>
上記の手順で印刷した画像上に、印刷直後に紙を押し当てて、次の通りインクの乾燥性を判定した。
○:表面にインクが液体として視認できず、紙を軽く押し当ててもインクが紙に全く転写しない
△:表面にインクが液体として視認できないが、紙を押し当てると画像全体のインクが紙に転写する(実用下限)
×:表面にインクが液体として視認できる(実用に適さない)
<耐擦過性>
上記の手順で印刷した画像部分を、印刷から1日後に30mm×120mmのサイズに切り取り、学振試験機(スガ試験機社製)にセットした。ドライ条件での評価として、常温下で乾燥したガーゼを荷重215gの錘に取り付け、この錘で印刷した画像部分の表面を100回擦り、インクの剥離具合を目視観察にて評価した。また、ウェット条件での評価として、常温下で20μLの純水を浸みこませたガーゼを荷重215gの錘に取り付け、この錘で印刷した画像部分の表面を100回擦り、インクの剥離具合を目視観察にて評価した。なお、ドライ条件でもウェット条件でも評価基準は同一であり、下記に示す評価基準である。
〇:擦った画像部分の残存率が95%以上
△:擦った画像部分の残存率が80%以上(実用下限)
×:擦った画像部分の残存率が80%未満(実用に適さない)
実施例9及び比較例5の評価結果を、下記表5に示す。
Figure 2020145404
表4に示すように、実施例の記録用紙は、液体トナーを用いた湿式電子写真印刷方式により印刷を行った場合でも、トナー転移性、トナーの密着性及び耐擦過性のいずれにおいても印刷適性が良好であることが確認された。ウェット条件下でも良好な結果であることから、特に耐水性に優れることが分かる。また、実施例の記録用紙は、アンチブロッキング性及び耐候性に優れることから、印刷物を高温で保管した際にブロッキングや紙質変化を生じにくいことが確認された。さらに、印刷前後の光沢変化も小さいことが確認された。
また、表5に示すように、実施例の記録用紙は、水性インクジェット印刷方式により印刷を行った場合でも、滲み、乾燥性及び耐擦過性のいずれにおいても印刷適性が良好であり、ブロッキングを生じにくいことが確認された。
すなわち、実施例の記録用紙は、密着性、特に耐水密着性が高く、印刷物のインク転移不良及びインク密着力の低下を生じさせず、かつブロッキング及び印刷後の紙質の変化がない記録用紙であることが分かる。
一方、比較例の記録用紙は、オレフィン系共重合体粒子を含むと、トナー転移性及び密着性は得られるものの、ウェット条件下では密着性が低下し、耐水性及び耐候性が低下していることが確認された。また、シランカップリング剤及びカチオン性水溶性ポリマーを含まない樹脂被膜は、いずれの印刷方式においても、十分な印刷適性が得られていない。
またシランカップリング剤成分の含有量が多すぎる樹脂被膜は硬すぎて、樹脂被膜とトナーとの界面に応力が集中したため、十分なトナー密着性が得られなかった。
図7〜図9は、それぞれ比較例3の記録用紙、実施例1の記録用紙及び樹脂被膜を形成する前の基材の表面に、金を蒸着した後、走査電子顕微鏡により撮影した写真を示す。図7及び図9の写真はトプコン社製の走査電子顕微鏡(型番:SM−200)を用いて、図8の写真は日本電子社製の走査電子顕微鏡(型番:JCM−6000)を用いて撮影した。撮影時の倍率は、いずれも3000倍である。
図7に示すように、比較例3は表面に微細な凹凸が多く、毛羽立ちやすいことが分かる。この凹凸は、オレフィン系共重合体粒子に由来すると考えられる。一方、図8に示すように、実施例1は表面の凹凸が少なく均一であり、毛羽立ちにくい表面構造であることが分かる。図8を、基材の撮影写真である図9と比較すると、いずれも大きな粒状物が確認できることから、この粒状物は、図9に示す基材中のフィラーであると考えられる。
[粘着ラベルの実施例]
(基材の製造)
<基材の製造例21>
上記樹脂組成物(a)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。
次いで、上記樹脂組成物(c)を250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、上記樹脂組成物(a)からなる樹脂層の第1面に積層すると同時に、第2面に積層して、3層積層シートを得た。
次いで、この3層積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて3層積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが80μm、各層の樹脂組成物(c/a/c)、各層厚み(10μm/60μm/10μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸)〕の積層体を得た。
上記基材に対し、後述するように粘着層を配した。基材おいて、粘着層側でない樹脂組成物(c)からなる樹脂層が第1表面層に、粘着層側の樹脂組成物(c)からなる樹脂層が第2表面層に、それぞれ対応する。
<基材の製造例22〜27、29〜38>
基材の製造例21において、各樹脂層を下記表6に示すように変更したこと以外は、基材の製造例21と同様にして、基材の製造例22〜27、29〜38の基材を得た。
<基材の製造例28>
上記樹脂組成物(c)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。
次いで、この樹脂組成物(c)からなる樹脂層を60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで、60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが60μm、単層2軸延伸シートを得た。
次いで、樹脂組成物(c)を250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、上記樹脂組成物(c)からなる樹脂層の単層2軸延伸シートの第1面に積層すると同時に、第2面に積層して、3層が積層された積層シートを得た。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが80μm、各層の樹脂組成物(c/c/c)、各層厚み(20μm/60μm/20μm)、各層延伸軸数(無延伸/2軸/無延伸)の積層体を基材として得た。
製造例21〜38で得た基材について測定した結果を、下記表6に示す。
Figure 2020145404
(記録用紙の製造)
<記録用紙の製造例21>
製造例1で得た基材の両面に、60W・分/mの条件でコロナ放電処理を施した後、各面の乾燥後の厚みが0.03μmとなるように、樹脂被膜形成用塗工液の調製例1で調製した樹脂被膜形成用塗工液(a)をロールコーターにより塗工した。60℃のオーブンにおいて塗工膜を乾燥して樹脂被膜を形成し、記録用紙を得た。
<記録用紙の製造例22〜38>
記録用紙の製造例21において、基材と樹脂被膜を下記表7に示すように変更し、コロナ放電処理の強度を表7に示すように変更したこと以外は、記録用紙の製造例1と同様にして、製造例22〜38の記録用紙を得た。
記録用紙の製造例21〜38について、下記表7に示す。
Figure 2020145404
(粘着ラベルの製造)
<実施例21>
シリコーン処理を施したグラシン紙(G7B、王子タック株式会社製)を剥離シート層として用い、グラシン紙のシリコーン処理面に、溶剤系アクリル系粘着剤(オリバインBPS1109、トーヨーケム株式会社製)と、イソシアネート系架橋剤(オリバインBHS8515、トーヨーケム株式会社製)と、トルエンとを100:3:45の割合で混合した混合液を、乾燥後の坪量が25g/mとなるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層を形成した。
次いで、この粘着層に基材の第2表面層側が接するように積層し、製造例21で得た記録用紙とグラシン紙とを圧着ロールで加圧接着して、記録用紙上に粘着層を形成した。
<実施例22〜32及び比較例21〜26>
実施例21において、製造例1で得た記録用紙21を、製造例22〜38で得た記録用紙に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例22〜32及び比較例21〜26の粘着ラベルを得た。
実施例21〜32及び比較例21〜26について、下記表8に示す。
(評価)
実施例21〜32及び比較例21〜26で製造した粘着ラベルに対し、前述の方法にて以下の評価を行った。但し、印刷は粘着ラベルの粘着層形成面とは反対側の表面(樹脂被膜表面)に対して行った。
<アンチブロッキング性1>
<アンチブロッキング性2>
<トナー転移性>
<トナー密着性>
<耐擦過性:ウェットA>
<耐擦過性:ウェットB>
<印刷時の光沢変化>
また、実施例21〜29及び比較例21〜25で製造した粘着ラベルに対し、以下の方法にてラミネート性及び糊残り性を評価した。
<ラミネート性>
上記の手順で印刷された粘着ラベルの印刷面上に、コールドラミネーションの手法を用いてPETフィルムをラミネーション加工した。ここで用いたPETフィルムは片面に粘着剤が形成されているものであり(商品名プロシールド コールドUV−HG50、ジェットグラフ株式会社製)、ラミネーション加工は23℃にてPETフィルムの粘着面を粘着ラベルの印刷面上に重ね合わせて圧着することにより行った。次いで、これらを23℃の水中に24時間漬け込んだ。水中から取り出した表面の水分をウエスで軽く拭き取り、5分後にPETフィルムを手でゆっくり剥離した。PETフィルム剥離後の印刷面の状態を目視観察することで、ラミネート性を以下の基準で評価した。
〇:トナーの剥離は認められない
△:PETフィルム剥離部分の30%以上50%未満のトナーがPETフィルム側に転移(実用下限)
×:PETフィルム剥離部分の50%以上のトナーがPETフィルム側に転移(実用に適さない)
<糊残り性>
粘着ラベルの剥離シートを剥がし、透明で高平滑なガラス板に粘着層面を貼り付け、指で3回擦って十分に密着させた。次いで、粘着ラベルを密着させたガラス板に対し、温度40℃の環境下で24時間の熱処理を行った後、23℃の水中に24時間浸漬した。次いで、水中から取り出して水分をウエスで軽く拭き取った5分後に、密着させた粘着ラベルを180度方向に300m/minの速度で手で剥離した。ガラス板の粘着ラベルを剥がした箇所のヘイズをJIS K7136:2000に準拠して、ヘイズ計(日本電色工業社製、型式名:NDH2000)を用いて測定した。測定したヘイズと無垢のガラス板のヘイズとの差から、粘着剤の糊残り性を以下の基準で判定した。
○:ヘイズ差が5%未満
△:ヘイズ差が5%以上10%未満(実用下限)
×:ヘイズ差が10%以上(実用に適さない)
実施例21〜32及び比較例21〜26で製造した粘着ラベルの評価結果を、下記表8に示す。
Figure 2020145404
表8から明らかなように、実施例21〜32の粘着ラベルは、液体トナーを用いた湿式電子写真印刷方式により印刷を行った場合でも、トナー転移性、トナー密着性及び耐擦過性のいずれにおいても良好な印刷適性が確認された。トナー密着性については、ウェット条件でも良好な結果であり、特に耐水密着性が高い。
また、実施例21〜32の粘着ラベルは、糊残りも生じさせず、ブロッキング及び印刷後の紙質変化を生じさせない粘着ラベルとなることが確認された。
[インモールドラベルの実施例]
(測定方法)
<酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比(O/C)>
基材及びヒートシール層表面の酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比(O/C)は、前述の<酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比(O/C)>と同様にして求めた。
<表面粗さ(μm)>
各層の表面粗さ(算術平均粗さRa(μm))は、前述の<表面粗さ(μm)>と同様にして求めた。
<層の厚み(μm)>
インモールドラベルの総厚みは、前述の<層の厚み(μm)>と同様にして求めた。
<光沢度(°)>
光沢度は、前述の<光沢度(°)>と同様にして求めた。
(樹脂組成物の調製)
上記樹脂組成物(a)、(c)及び(d)に加えて、下記樹脂組成物(e)を調製した。
<樹脂組成物(e)の調製>
長鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名:ノバテックLL UF240、MFR(190℃、2.16kg荷重):2.1g/10分、融点:123℃)100質量部よりなる樹脂組成物(e)を調製した。
以降の実施例及び比較例にて使用する、樹脂組成物(a)、(c)、(d)及び(e)の構成成分について、下記表9に示す
Figure 2020145404
(ヒートシール(HS)層付き基材の製造)
<HS層付き基材の製造例41>
上記樹脂組成物(a)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、1軸延伸シートを得た。次いで、樹脂組成物(c)を250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記1軸延伸シートの一方の面上に積層し、同時に樹脂組成物(e)を250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記1軸延伸シートの他方の面上に積層し、#150線のグラビアエンボスを付形した金属冷却ロールとマット調ゴムロールとの間に導いた。金属冷却ロールとマット調ゴムロールとの間で挟圧して両者を接合しながら、熱可塑性樹脂側にエンボスパターンを転写し、冷却ロールにて室温に冷却して、樹脂組成物(c)を用いて形成された層、樹脂組成物(a)を用いて形成された層、樹脂組成物(e)を用いて形成された層の順に積層された3層積層シートを得た。
得られた3層積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて3層積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。次いで、60℃に冷却し、耳部をスリットして、各層の樹脂組成物が(c/a/e)、全層の厚みが80μm、各層の厚みが(15μm/60μm/5μm)、各層延伸軸数が(1軸/2軸/1軸)のHS層付き基材を得た。得られたHS層付き基材において、樹脂組成物(e)を用いて形成された層がヒートシール層に相当する。また、樹脂組成物(a)を用いて形成された層が基材のコア層に相当し、樹脂組成物(c)を用いて形成された層が基材の表面層に相当する。
<HS層付き基材の製造例42〜47及び49〜59>
製造例41において、各層を下記表10に示すように変更したこと以外は、製造例41と同様にして、製造例42〜47及び49〜59のHS層付き基材を得た。
<HS層付き基材の製造例48>
上記樹脂組成物(c)を230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸して、1軸延伸シートを得た。次いで、この1軸延伸シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。次いで、60℃に冷却し、耳部をスリットして、厚みが60μm、2軸延伸シートを得た。
一方、上記樹脂組成物(c)を250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記2軸延伸シートの一方の面上に積層した。並行して樹脂組成物(e)を250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記2軸延伸シートの他方の面上に積層し、#150線のグラビアエンボスを付形した金属冷却ロールとマット調ゴムロールとの間に導いた。金属冷却ロールとマット調ゴムロールとの間で挟圧して両者を接合しながら、熱可塑性樹脂側にエンボスパターンを転写し、冷却ロールにて室温に冷却して、樹脂組成物(c)を用いて形成された層、樹脂組成物(c)を用いて形成された層、樹脂組成物(e)を用いて形成された層の順に積層された3層積層シートを得た。次いで、60℃に冷却し、耳部をスリットして、各層の樹脂組成物が(c/c/e)、全層の厚みが100μm、各層の厚みが(20μm/60μm/20μm)、各層延伸軸数が(無延伸/2軸/無延伸)のHS層付き基材を得た。樹脂組成物(e)を用いて形成された層がHS層に相当する。また、HS層側に位置する樹脂組成物(c)を用いて形成された層が基材のコア層に相当し、HS層と基材を挟んで反対側に位置する樹脂組成物(c)を用いて形成された層が基材の表面層に相当する。
(インモールドラベルの製造)
<実施例41>
上記HS層付き基材の製造例41で得られた基材のヒートシール層を設けた面とは反対の表面に、60W・分/mの条件でコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理を施した基材表面上に、乾燥後の厚さが0.03μmとなるように、調製例1で調製した樹脂被膜形成用塗工液(a)をロールコーターにより塗工した。60℃のオーブンにおいて塗工膜を乾燥して樹脂被膜を形成し、実施例41のインモールドラベルを得た。
<実施例42〜48、50〜53及び比較例41〜46>
実施例41において、各層を下記表10に示すように変更したこと以外は、実施例41と同様にして、実施例42〜48、50〜53及び比較例41〜46のインモールドラベルを得た。
<実施例49>
HS層付き基材の製造例49にて得られた基材の両面、すなわち基材のヒートシール層が設けられた面とは反対側の表面、及びヒートシール層の表面のそれぞれに、表10に記載の条件でコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理を施した各面の乾燥後の厚みが0.03μmとなるように、調製例2で調製した樹脂被膜形成用塗工液(b)をロールコーターにより塗工した。60℃のオーブンにおいて塗工膜を乾燥してHS層付き基材の両面に樹脂被膜を形成し、実施例49のインモールドラベルを得た。
下記表10は、各実施例及び比較例のインモールドラベルの構成を示す。なお、表10中の延伸軸数及び厚みは、基材の表面層(ヒートシール層と反対側に位置する層)/基材のコア層/ヒートシール層の順に記載されている。
Figure 2020145404
(評価)
実施例41〜53及び比較例41〜46にて得られたインモールドラベルに対し、前述の記録用紙と同じ方法にて以下の評価を行った。但し、印刷はインモールドラベルのヒートシール層形成面とは反対側の表面(樹脂被膜表面)に対して行った。
<アンチブロッキング性1>
<トナー転移性>
<トナー密着性>
<耐擦過性:ウェットA>
<耐擦過性:ウェットB>
さらに、実施例41〜53及び比較例41〜46にて得られたインモールドラベルに対し、以下の方法にて印刷適性及びインモールド成形適性を評価した。
<トナー密着性2>
前記<トナー密着性>の評価と同様に印刷したインモールドラベルの印刷面を、カッターで1mm間隔の格子状(横10mm、縦10mm)に傷をつけ、23℃の水中に24時間浸漬した後、水中から取り出して水分をウエスで軽く拭き取った。拭き取りから5分後に、記録用紙の印刷面に、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ(登録商標)CT−18)の粘着面を貼り付け、指で3回擦って十分に密着させた。密着させたセロハンテープを180度方向に300m/minの速度で手で剥離した後、小型汎用画像解析装置(ニレコ社製、型式名:LUZEX−AP)を用いて、記録用紙上のインクの残存率を算出した。具体的には、印刷面を撮影して得られた画像に2値化処理を実施し、トナーが占める面積の割合を残存率として算出した。算出したインクの残存率から、以下の基準でインクの密着性をランク評価した。
〇:トナーの残存率が80%以上
△:トナーの残存率が50%以上80%未満(実用下限)
×:トナーの残存率が50%未満(実用に適さない)
<耐擦過性:ウェットC>
上記印刷後のインモールドラベルを、23℃のエタノール中に24時間浸漬した後、エタノール中から取り出してウエスで軽く拭き取った。拭き取りから5分後に、学振形染色摩擦堅ろう度試験機(スガ試験器社製、機器名:摩擦試験機II形)に取り付けて、水に湿らせた白綿布で、荷重500gで100回擦る摩擦試験を行った。トナー密着性2の評価と同様の基準で、摩擦試験後の記録用紙上のトナーの残存率から耐擦過性を評価した。
<耐擦過性:ウェットD>
上記印刷後のインモールドラベルを、23℃の中性洗剤(花王株式会社製、製品名:キュキュット)に24時間浸漬した後、洗剤中から取り出して、洗剤を水で十分に洗い流し、軽く拭き取った。拭き取りから5分後に、耐擦過性:ウェットCと同様に摩擦試験及び評価を行った。
<成形性>
上記実施例41〜48及び50〜53並びに比較例41〜46にて得られた印刷後のインモールドラベルを、横60mm、縦110mmの矩形に打抜加工した。加工後のインモールドラベルを400mLの内容量のボトルを成型できるブロー成形用金型の一方にヒートシール層がキャビティ側に向くように配置し、吸引を利用して金型上に固定した。次いで、金型間に高密度ポリエチレン(商品名「ノバテックHD HB420R」、日本ポリエチレン株式会社製、MFR(JIS K 7210:1999)=0.2g/10分、融解ピーク温度(JIS K 7121:2012)=133℃、結晶化ピーク温度(JIS K 7121:2012)=115℃、密度=0.956g/cm)を170℃で溶融してパリソン状に押出した。
金型を型締めした後、4.2kg/cmの圧縮空気をパリソン内に供給した。16秒間パリソンを膨張させて、当該パリソンを金型に密着させて容器状とするとともに、当該パリソンとラベルとを融着させた。次いで、金型内で成型物を冷却し、型開きをしてラベル付き容器を得た。この際、金型冷却温度は20℃、ショットサイクル時間は34秒/回とした。得られた容器の外観を目視にて確認して下記のように評価した。
○:強固に接着し、目視でラベルの浮きが認識できない
△:目視で一部のラベルの浮きが認識できるが、強固に接着している(実用下限)
×:ラベルの剥がれ又はラベルの大部分の浮きが認識でき、強固に接着できていない(実用不可)
一方、実施例49にて得られた印刷後のインモールドラベルを、横60mmm、縦80mmの矩形に打抜加工した。加工後のインモールドラベルを、ストレッチブロー成形機(日精ASB社製、機器名:ASB−70DPH)の成形用金型の内部に、ヒートシール層がキャビティ側を向くように配置して型締めした。金型は、キャビティ側の表面温度が20〜45℃の範囲内となるように制御した。一方、金型間に、100℃に予熱したポリエチレンテレフタレート樹脂製のプリフォームを導き、5〜40kg/cmのブロー圧力下、1秒間ストレッチブロー成形した。その後、15秒間で50℃まで冷却し、型を開き、インモールドラベル付き容器を得た。得られた容器の外観を、上述した実施例41〜48及び50〜53並びに比較例41〜46にて得られた容器と同様に評価した。
<トナー密着性3>
上記の方法で得たラベル付き容器のインモールドラベル表面を、カッターで傷をつけ、23℃の水中に24時間浸漬した後、水中から取り出した。水分をウエスで軽く拭き取った後、カッターで傷つけた箇所に、傷の方向の垂直方向にセロハンテープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ(登録商標)CT−18)の粘着面を貼り付け、指で3回擦って十分に密着させた。密着させたセロハンテープを180度方向に300m/minの速度で手剥離した後、小型汎用画像解析装置(ニレコ社製、型式名:LUZEX−AP)を用いて、インモールドラベル上のトナーの残存率を算出した。算出したトナーの残存率から、以下の基準でトナーの密着性をランク評価した。
〇:トナーの残存率が80%以上
△:トナーの残存率が50%以上80%未満(実用下限)
×:トナーの残存率が50%未満(実用に適さない)
<成形後の光沢変化>
上記の方法で得たラベル付き容器のラベル部の白紙箇所75度鏡面光沢度をJIS P 8142:1993に準拠して測定し、成形前のインモールドラベルの光沢度との差から、成形後の光沢変化を以下の評価基準で判定した。
○:光沢度差が5%未満
△:光沢度差が5%以上10%未満(実用下限)
×:光沢度差が10%以上(実用に適さない)
下記表11及び表12は、評価結果を示す。
Figure 2020145404
Figure 2020145404
表11及び表12に示すように、実施例のインモールドラベルは、液体トナーを用いた湿式電子写真方式により印刷を行った場合でも、トナー転移性、トナーの密着性、耐擦過性のいずれにおいても印刷適性が良好であり、ブロッキングも少ないことが確認された。ウェット条件下でも良好な結果であることから、特に耐水性に優れることが分かる。また、インモールド成形時にも容器に十分に接着し、インモールド成形後の印刷の剥がれ及び光沢の変化もほとんどない、優れたインモールド成形適性が得られている。ヒートシール層側にも樹脂被膜を設けた実施例49によれば、PET樹脂容器でもインモールド成形適性が高いことが分かる。
一方、比較例のインモールドラベルは、オレフィン系共重合体粒子を含むと、トナー転移性及び密着性は得られるものの、ウェット条件下では密着性が低下し、ブロッキングも生じている。また、シランカップリング剤及びカチオン性水溶性ポリマーを含まない樹脂被膜は、十分な印刷適性が得られていない。
本出願は、2019年1月11日に出願された日本特許出願である特願2019−3745号、特願2019−3812号及び特願2019−3791号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
本発明の記録用紙は、外観に優れ、支持体と樹脂被膜との密着性だけでなく、各種印刷方式のインク又はトナーとの密着性、特に耐水密着性が高いことから、印刷用紙、ポスター用紙、ラベル用紙、インクジェット記録紙、感熱記録紙、熱転写受容紙、感圧転写記録紙、電子写真記録紙等として広く利用することができる。
本発明の粘着ラベルは、外観に優れ、基材と樹脂被膜との密着性だけでなく、各種印刷方式のインク又はトナーとの密着性、特に耐水密着性が高いことから、粘着ラベルとして包装用又は服飾用の表示ラベル、タグ等として広く利用することができる。
本発明のインモールドラベルは、外観に優れ、基材と樹脂被膜との密着性だけでなく、各種印刷方式のインク又はトナーとの密着性に優れ、耐水密着性が高いことから、インモールド成形される成形体、例えばPET樹脂容器、ポリエチレン樹脂容器等の樹脂容器の表面に設けられるラベルとして広く利用することができる。特に、飲料、化粧品、医薬品等の液体容器に有用である。
1 基材
2 表面処理部
3 樹脂被膜
4 粘着層
5 印刷層
6 ヒートシール層
10 記録用紙
11 コア層
12 第1表面層
13 第2表面層
21、22 表面処理部
31、32 樹脂被膜
40 粘着ラベル
50a、50b インモールドラベル

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムからなる基材、及び
    前記基材の少なくとも一方の面に配する樹脂被膜、を有する記録用紙であって、
    前記樹脂被膜に面する基材の表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、
    前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂を含有し、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
    前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とする記録用紙。
  2. 前記カチオン性水溶性ポリマーが、アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体であることを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。
  3. 前記アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系重合体が、第1級〜第3級のアミノ基又は第1級〜第3級のアンモニウム塩構造を有することを特徴とする請求項2に記載の記録用紙。
  4. 前記シランカップリング剤が、エポキシ系シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録用紙。
  5. 前記樹脂被膜の厚みが、0.01〜5μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録用紙。
  6. 熱可塑性樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配する熱可塑性樹脂組成物からなる表面層とを有する積層樹脂フィルムに対し、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤を含有し、かつ熱可塑性樹脂粒子は含有せず、無機フィラーの含有量が、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対して9質量部以下である水溶液を塗工した後、乾燥することにより、前記積層樹脂フィルムに樹脂被膜を形成することを特徴とする記録用紙の製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂フィルムからなる基材、
    前記基材の両方の面に配する樹脂被膜、及び
    前記基材の一方の面に配する前記樹脂被膜に対して、前記基材とは反対の面に配する粘着層、を有する粘着ラベルであって、
    前記基材の両方の表面における、酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、
    前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂を含有し、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
    前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とする粘着ラベル。
  8. 熱可塑性樹脂フィルムからなる基材の一方の面にヒートシール層が設けられたインモールドラベルであって、
    前記基材の前記ヒートシール層と反対側の面に設けられた樹脂被膜を有し、
    前記樹脂被膜に面する基材の表面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が、0.01以上0.5以下であり、
    前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂とを含有し、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
    前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とするインモールドラベル。
  9. 前記ヒートシール層の前記基材と反対側の面に設けられた樹脂被膜をさらに有し、
    前記ヒートシール層の前記樹脂被膜が設けられる面における酸素原子数(O)と炭素原子数(C)の組成比の値(O/C)が、0.01〜0.5であり、
    前記樹脂被膜が、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤の反応物である樹脂とを含有し、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対するシランカップリング剤成分の含有量が、15〜60質量部であり、
    前記樹脂被膜中に、熱可塑性樹脂粒子は含有せず、
    前記樹脂被膜中のカチオン性水溶性ポリマー成分100質量部に対する無機フィラーの含有量が、9質量部以下であることを特徴とする、請求項8に記載のインモールドラベル。

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