JPWO2020122022A1 - 肝機能改善剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、肝機能の改善に有用な薬剤を提供することを目的とする。4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド及びそれらの医薬上許容し得る塩から選択される少なくとも1種を有効成分として含む肝機能改善剤は、肝機能、特に肝疾患等の際に観察される肝臓の糖代謝機能、電子伝達系機能及び肝合成能における障害を改善することができる。

Description

本発明は肝機能の改善に有用な薬剤に関する。
C型肝硬変において、肝予備能が保たれ、黄疸、腹水、肝性脳症、胃・食道静脈瘤出血などの肝不全症状がない状態を代償性肝硬変、肝不全症状を伴う状態を非代償性肝硬変と呼ぶ。肝硬変の病態は炎症により傷害を受けた生体組織の修復機能により細胞外マトリックス(線維)が蓄積するが、この過剰な線維が除去されない場合、臓器線維症を引き起こし様々な病因となる。高度の肝線維化進行がみられる肝硬変の場合、肝発癌の高リスク群となる。また、肝発癌を生じない場合でも、肝不全に進展すれば生命予後が非常に不良となる。したがって、肝硬変の治療目的は肝発癌と肝不全の両者を抑制することにある。現在、C型肝炎に起因する代償性肝硬変ではウイルスの排除を目指して積極的な抗ウイルス治療が行われている。しかし現状では、どのレジメンにおいても非代償性肝硬変に対する投与は禁忌であり、Child-Pugh分類grade B症例に対する使用も禁忌ないし避けるべきとなっている。このような状況下において、肝線維化が進展して肝不全症状を伴う非代償性肝硬変の肝機能を改善する治療薬の開発が急務であると考えられている。
その一環として、線維自体を積極的に除去し得る薬剤の開発が進められており、例えば、熱ショックタンパク質47(Heat Shock Protein 47, HSP47)に対するsiRNAを用いた製剤が報告されている(特許文献1)。
肝臓は、消化管に付属する消化腺の一つで消化管へ胆汁を分泌するだけでなく、消化管から体内に取り込まれた諸物質を代謝して恒常性維持にあずかる。肝臓の主な機能には、(1)栄養に関係の深い諸物質の代謝(グリコーゲンの合成・貯蔵・分解、アミノ酸の代謝等)、(2)胆汁の生産、(3)血液成分の生成・変換、(4)解毒と異物除去、(5)血液の貯蔵による循環量の調節が挙げられる。肝機能障害とはなんらかの要因で上記肝臓の機能が低下している状態を意味し、多くの場合、肝機能検査で異常値を示す。
肝機能障害の主な原因は肝炎ウイルス(例、B型・C型肝炎ウイルス)による肝炎や、アルコールの長期摂取によるアルコール性肝障害、メタボリックシンドローム(メタボ)、肥満、糖尿病といった生活習慣病等によって起こる非アルコール性の肝障害(例、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、薬物の服用(副作用)によって起こる薬物誘導性の肝障害、自己免疫の異常による自己免疫性の肝障害等が挙げられる。肝機能障害は進行すると病理組織学的な変化が観察されるようになり、正常な肝細胞の破壊と減少、線維化を経て、肝硬変から肝不全に至る。
正常肝細胞の破壊や線維化等の病理組織学的な変化が起こる前に肝機能障害を改善することができれば、病気の進行を抑制することができ予後の改善が期待できる。また、肝臓の病理組織学的な変化(即ち、肝線維化)の進行度と肝機能障害の重篤度とは必ずしも一致せず、病理組織学的な変化が観察されない場合でも著しい肝機能障害を起こしている場合があり、また、病理組織学的な変化が顕著であっても肝機能が維持されている場合もある。
特表2013−514761号公報
本発明は、肝機能の改善に有用な薬剤の提供を目的とする。
PRI−724[4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート]は、がん幹細胞(CSC)の制御に不可欠なWnt経路における細胞内のタンパク質間相互作用の阻害に関連する低分子治療薬である。PRI−724は活性分子種C−82[(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド]のプロドラッグであり、生体内でC−82に変換されたのち、cAMP応答エレメント結合(CREB)蛋白(CBP)とβ−カテニンとの相互作用を阻害し、Wntシグナル伝達経路の不可欠な転写ステップを停止させる薬剤で脱線維化治療薬としての開発が進められてきた。
本発明者らは、PRI−724の非盲検・用量検討試験(第I相)治験において、病理組織学的検討を加えて肝機能との関係を検討した。結果、病理組織学的な作用と肝機能に及ぼす作用とは必ずしも一致せず、PRI−724が肝機能障害に対して独立した効果を有することを見出し、さらに、かかる肝機能の改善効果を詳細に解析して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、
(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド及びそれらの医薬上許容し得る塩から選択される少なくとも1種
を有効成分として含む肝機能改善剤。
[2]肝機能が糖代謝機能である、上記[1]記載の剤。
[3]肝機能が電子伝達系機能である、上記[1]記載の剤。
[4]肝機能が肝合成能である、上記[1]記載の剤。
[5]肝機能の改善が、肝実質領域の脱線維化を伴わない、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の剤。
[6]肝機能の改善が、代償性肝硬変患者における改善である、上記[1]記載の剤。
[7]4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、
(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド及びそれらの医薬上許容し得る塩の少なくとも1種の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、肝機能を改善する方法。
[8]肝機能が糖代謝機能である、上記[7]記載の方法。
[9]肝機能が電子伝達系機能である、上記[7]記載の方法。
[10]肝機能が肝合成能である、上記[7]記載の方法。
[11]肝機能の改善が肝実質領域の脱線維化を伴わない、上記[7]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]肝機能の改善が、代償性肝硬変患者における改善である、上記[7]記載の方法。
[13]肝機能の改善に使用する為の4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、
(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド及びそれらの医薬上許容し得る塩から選択される少なくとも1種の化合物。
[14]肝機能が糖代謝機能である、上記[13]記載の化合物。
[15]肝機能が電子伝達系機能である、上記[13]記載の化合物。
[16]肝機能が肝合成能である、上記[13]記載の化合物。
[17]肝機能の改善が肝実質領域の脱線維化を伴わない、上記[13]〜[16]のいずれかに記載の化合物。
[18]肝機能の改善が、代償性肝硬変患者における改善である、上記[13]記載の化合物。
4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート及び(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミドは、肝機能、特に肝臓の糖代謝機能、電子伝達系機能及び肝合成能における機能低下を改善する作用を有し、従って、肝機能改善剤として有効である。
治療前後での病理組織学的変化を示した図である(被験者識別コードC2−02の場合)。 治療前後での病理組織学的変化を示した図である(被験者識別コードC2−06の場合)。 治療前後での病理組織学的変化を示した図である(被験者識別コードC2−03の場合)。 治療前後での病理組織学的変化を示した図である(被験者識別コードC2−04の場合)。 治療前後での病理組織学的変化を示した図である(被験者識別コードC2−07の場合)。 肝細胞内ミトコンドリアをC82が活性化することをWST−8アッセイにより示したグラフである。上図はHepG2細胞の、下図はHuh7細胞の結果をそれぞれ示す。縦軸は吸光度を、横軸はC82の濃度(μM)をそれぞれ示す。 肝細胞内ミトコンドリアをC82が活性化することをMitoBrightを用いた細胞染色により示した図である。
本発明は、4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド及びそれらの医薬上許容される塩から選択される少なくとも1種を有効成分として含む肝機能改善剤(以下、「本発明の肝機能改善剤」あるいは「本発明の剤」とも称する)を提供するものである。以下、詳細に説明する。
本発明でいう「肝機能」「肝臓の機能」とは、肝臓の有する機能全てを意味し、特に制限はない。肝臓が有する機能としては、具体的には、血液貯蔵(循環量の調整等);血色素の処理(ヘモグロビンの処理排出等);胆汁の生成;胆汁色素の腸肝循環;血漿タンパク質(急性期タンパク質、アルブミン、血液凝固因子、ステロイド結合タンパク質、他のホルモン結合タンパク質等)の合成等の血液および循環における機能[肝合成能];栄養素とビタミン(グルコースおよび/または他の糖類、アミノ酸、脂質および/または脂肪酸、コレステロール、リポタンパク、脂溶性ビタミン、ならびに水溶性ビタミンなど)の代謝などの栄養素の代謝機能[代謝機能];種々の物質(毒素、エストロゲンおよびアンドロステロンなどのステロイド、ならびに他のホルモンなど)の不活性化などの解毒または分解機能;および免疫機能などが挙げられる。また、肝ミトコンドリアはその電子伝達系により肝臓におけるエネルギー生産に寄与している[電子伝達系機能](Sherlock's Diseases of the Liver & Biliary System, 13th ed. S.Dooley, A.S.F.Lok, G.Garcia-Tsao他著、2018年06月発行、WILEY-BLACKWELL社、参照)。
本明細書中において、肝機能の「改善」とは、特に限定されないが、例えば、肝機能の低下を防止または抑制すること(例えば、肝機能の活性化・維持・改善ならびに老化および疾患に伴う肝機能障害の予防・改善など)の他、急性肝炎、慢性肝炎、肝不全、肝硬変、および脂肪肝などの治療効果をも包含して言う。本発明において、肝機能の「改善」とは、上記した肝機能のうちの少なくとも1つの機能が損なわれた状態を改善することであり、好ましくは、肝臓のグリコーゲン・糖代謝能、電子伝達系機能及び/又は肝合成能が低下した場合におけるそれらの機能の改善である。
肝機能の「改善」の具体的な例としては、特に限定されないが、具体的には肝予備能(肝合成能)における改善であって、例えば、肝機能障害時の、肝グリコーゲンの減少抑制;血液中のアルブミン量の減少抑制;肝機能の検査項目であるプロトロンビン時間の減少抑制;チトクロームCの減少抑制などが挙げられる。電子伝達系機能を担う、肝細胞内ミトコンドリアに対する活性化もまた、肝機能の改善の一例である。
本発明の剤の効果は、好ましくは、肝臓における糖代謝機能、電子伝達系機能及び/又は肝合成能における作用効果によって評価することができる。
肝臓の糖代謝機能を評価する方法としては、例えば血糖値を測定する方法が挙げられる。血糖値は、一般に血中のβ−D−グルコース濃度を測定することにより行うことができる。また、実施例に示されるように病理組織学的手法を用いたPAS染色によって肝臓のグリコーゲンを染色し、病理組織の変化を観察することによって肝臓の糖代謝機能を評価することもできる。また、フェルナンデス負荷試験(グルコース負荷試験、グルカゴン負荷試験およびガラクトース負荷試験)も好ましい。
肝臓の電子伝達系機能を評価する方法としては、実施例に示されるように病理組織学的手法を用いた免疫染色によって肝臓チトクロームCを染色し、病理組織の変化を観察することによって肝臓の電子伝達系機能を評価することもできる。電子伝達系機能を評価する方法としては他に、肝細胞内ミトコンドリアに対する活性化作用を調べる方法が挙げられる。当該方法としては、実施例に示されるようにミトコンドリア脱水素酵素によって形成されるテトラゾリウム化合物を用いて測定する方法やミトコンドリア膜電位依存的に染色される色素を用いた方法が挙げられる。
肝臓の肝合成能を評価する方法としては、肝臓で合成されるタンパク質の量や機能を測定する方法が挙げられる。例えば実施例に示されるように血清アルブミンの量を測定することによって評価することができる。血清アルブミンの量は、吸光光度法(ローリー法)や電気泳動−染色デンシトメトリー法及び高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法等によって測定できる。コリンエステラーゼやコレステロールの量を測定することでも評価できる。他の肝臓で合成されるタンパク質としてプロトロンビンが挙げられ、その機能を評価する方法として、プロトロンビン時間の測定がある。肝機能が損なわれると胆汁の分泌が少なくなり、脂溶性のビタミンKの吸収が阻害される。凝固因子の中で、II、VII、IXおよびXはビタミンK依存性で、肝臓で合成される他の因子よりも減少が早い。この中で第VII因子の半減期が一番短いので、肝合成能が低下すると第VII因子が関与するプロトロンビン時間が鋭敏に延長する。さらに、第VII因子は外因系凝固因子であるが、時間が経てば、内因系凝固因子が関与する活性化部分トロンボプラスチン時間も延長する。
本発明の肝機能改善剤は、実施例にて後述するように、肝実質領域の脱線維化が観察されない状況下でも肝機能を改善することができる。
肝実質領域の線維化及び脱線維化の様子は、実施例に示すように、病理組織学的手法を用いた組織染色(例、シリウスレッド染色)によって観察し、また評価することができる。シリウスレッド染色は、線維化を評価するための染色であり、コラーゲン線維を赤色に染色する。
本発明の肝機能改善剤は、有効成分として、4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド(これらを総称して本発明化合物ともいう)、及びそれらの医薬上許容される塩から選択される少なくとも1種、好ましくは4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド(これらを総称して本発明化合物ともいう)、又はそれらの医薬上許容される塩を含む。
「医薬上許容される」とは、一般に安全で無毒性であり、そして生物学的にもそれ以外にも望ましくないものではない医薬組成物の調製に有用であることを意味し、且つヒトの医薬的用途のみならず獣医学的用途にも許容され得ることを含む。
「医薬上許容される塩」とは、上で定義したように、医薬上許容され、且つ所望の薬理学的活性を有する本発明化合物の塩を意味する。このような塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の無機酸;又は例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸及びムコン酸等の有機酸で形成された酸付加塩が挙げられる。医薬上許容される塩としては、存在する酸性プロトンが無機又は有機の塩基と反応できる場合に形成され得る、塩基付加塩も挙げられる。許容され得る無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム及び水酸化カルシウムが挙げられる。許容され得る有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン及びN−メチルグルカミン等が挙げられる。
本発明の肝機能改善剤は、常法により製剤化した医薬製剤(例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤など)として、ヒト又は動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等の哺乳動物)に投与することができる。例えば、有効成分の量に換算して、1日あたり約0.01〜1000mg/kg(体重)、好ましくは1日あたり約0.1〜500mg/kg(体重)の投与量で、1回または数回に分けて投与するとよいが、その投与量、投与方法や投与回数は、症状、年齢などにより適宜変更しうる。例えば注射剤に製剤化する場合には、蒸留水、生理食塩水などの担体を用いるとよく、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤に製剤化する場合には、デンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウムなどの賦形剤、デンプンのり液、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤など、デンプン、寒天、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤などを用いるとよい。製剤中の有効成分の含有率は、1〜99重量%の間で変動させることができる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの形態をとる場合には、有効成分を5〜80重量%含有させるのが好ましく、注射剤の場合には、有効成分を1〜10重量%含有させるのが好ましい。
投与方法としては特に限定されないが、経口投与、静脈内投与、静脈内持続投与、腹腔内投与などが挙げられる。
また、本発明の医薬組成物を充填した浸透圧ポンプを、例えば、皮下に埋め込み、持続的に投与する態様も好ましい。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:病理組織学的検討(PRI−724)
C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変を有する者のうち、Child-Pugh分類がA又はBの状態にあり、現行の内科的な治療法では改善が見込めない患者(被験者識別コード:C2−02、C2−06、C2−03、C2−04、C2−07)を対象とした4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート(PRI−724)の非盲検・用量検討試験(第I相)において、1週間持続静脈内投与と1週間の観察期間を1サイクルとし、計6サイクル、12週間にわたって、10、40及び160mg/m/日の用量でPRI−724を投与した。
この治験において、40mg/m/日の用量で投与を受けた患者の肝組織について、更に病理組織学的検討を加えて肝機能との関係を検討した。
試料は、各患者において、治療前及び治療後観察15日目(第6サイクルDay15)の肝組織(生検)、スクリーニング期、治療前及び治療後観察28日目の血液を用いた。
検討の為に実施した各試験方法は以下の通り。
1.ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色
HE染色は、細胞核及び細胞質を染め分け、組織の形態を観察することが可能な染色方法であり、HE染色により細胞や組織構造の全体像を把握することが可能となる。
Bouin溶液で前固定した肝組織のパラフィンブロックから切片を切り出し、Lillie-Mayer’s Hematoxylin(武藤化学株式会社、日本)及びエオシン溶液(和光純薬工業株式会社)で染色する。
2.シリウスレッド染色
コラーゲンの沈着を可視化するために、Bouin固定された肝切片をピクロシリウスレッド溶液(Waldeck GmbH & Co., Germany)を用いて染色する。定量的解析には、デジタルカメラ(DFC280, Leica, Germany)を用いて、200倍拡大で、中心静脈付近でシリウスレッド染色された切片をキャプチャーして、1切片あたり5視野で陽性の領域をImageJ software(ImageJ, National Institute of Health, USA)を用いて測定する。
3.銀染色
銀染色は、結合組織線維の1つである細網線維を銀アンモニア錯体によって銀メッキする染色法であり、組織構築像の観察が可能となる。
常法(例、http://www.mutokagaku.com/products/reagent/pathology/nf_watanabe/を参照)に従って実施した。検体試料を脱パラフィン、脱キシレン、水洗した後、過マンガン酸カリウム液、2%しゅう酸液、2%鉄ミョウバン水溶液で順に処理し、水洗した後、アンモニア性の銀溶液で5〜10分反応させ、還元液で処理し、水洗した後0.2%塩化金液で10分〜一晩反応させる。その後、2%しゅう酸水溶液で処理し、写真用酸性硬膜定着液に浸して水洗、脱水、透徹、封入して観察に供する。
4.PAS染色
PAS染色は、主に組織におけるグリコーゲンの証明のために行うことができる。過ヨウ素酸がグルコース残基を選択的に酸化してアルデヒドを生成し、シッフ試薬によって赤紫色に変色する。
常法(例、http://www.mutokagaku.com/products/reagent/pathology/passtain/を参照)に従って実施した。検体試料を脱パラフィン、脱キシレン、水洗した後、0.5%過よう素酸液で10分間反応させ、水洗後、シッフ試薬で5〜30分間反応させ、亜硫酸水、マイヤーヘマトキシリン液で順次処理し、水洗、色だしの後に脱水、透徹、封入して観察に供する。
5.チトクロームCオキシダーゼ(CytoC)
チトクロームCオキシダーゼは他のタンパク質とともにミトコンドリアで膜貫通タンパク質複合体を形成している。ミトコンドリア膜における電子伝達系の最後の酵素であり、4分子のチトクロームCからそれぞれ電子を受け取り、酸素1分子に転移させ2分子の水に変換する機能を有する。この過程でミトコンドリアマトリックス由来の4個のプロトンから水が生成されるのと同時に4個のプロトンがマトリックスから膜間スペースに透過し、これにより発生した膜間の電気化学ポテンシャルの差がATP合成酵素によるATP合成に用いられることになる。ミトコンドリアの主要機能である電子伝達系におけるエネルギー産生に関わる重要な酵素である。
チトクロームCオキシダーゼは具体的には、以下の方法で測定することができる。
ジアミノベンチジン(3,3'-diaminobenzidine)の酸化的重合反応(呈色反応)を利用した方法を実施する。A液 DAB 1mg/mL(0.1 M PBS)とB液 0.6mg/mL Cytochrome C、80 mg/mL (0.1M PBS)を作成し、脱パラフィンした組織標本に等量滴下して数時間インキュベーションする。その後0.1M PBSで洗浄、脱水、封入して検鏡に供する。
6.血清アルブミン
血清アルブミンは、肝臓で作られるタンパク質で肝機能の低下とともにその量が減少することが知られている。
血清アルブミンの測定は常法に従って行うことができる。例えば、アルブミンと結合することで色素を生成するような試薬を用いて、当該色素を分光学的に測定することによって検体中のアルブミン量を求める。このような色素としてはpH4.0付近でアルブミンと反応し青色のアルブミン結合色素を生成するブロモクレゾールグリーンが挙げられる。
市販の測定用試薬(シカリキッド ALB、関東化学株式会社)を用いることもできる。検体に試薬を混合し、生成した結合色素の吸光度を測定する。
7.プロトロンビン時間(PT)
プロトロンビンは肝臓によって合成される血液凝固因子の第II因子で、トロンボプラスチンを添加することにより固まる性質を有する。血液試料(例、血漿)にトロンボプラスチンを加え、固まるまでの時間を測定することによって肝合成能を評価することができる。
PTの測定には市販の測定用試薬(コアグサーチ(登録商標)PT、株式会社エイアンドティー)を用いて以下の要領で実施することができる。
(1)精製水で溶解した試薬(トロンボプラスチンを含む)を、プラスチック試験管に移し37℃で加温する。
(2) 血漿検体0.1mLをガラス試験管にとり、37℃の恒温槽に入れ3分間加温する。
(3)(2)の加温した血漿に、(1)の予め加温しておいた試薬0.2mLを添加し、混合する。混合すると同時に、計測を開始し、軽く振とうして傾斜させながらフィブリンが析出するまでの時間を測定する。
(結果)
40mg/m/日の用量で治療を受けたコホートで認められた線維化の変化を表1に示す。
Figure 2020122022
被験者識別コード:C2-02(図1)
被験者識別コード:C2-02はベースラインと第6サイクルDay15における肝硬変重症度分類であるChild-Pugh Scoreが6及び5、慢性肝炎の病態分類であるHepatitis Histology Index(HAI)が10及び9と各々1段階改善しているが、肝実質領域での線維化面積が微増した症例である(表1)。
病理組織学的手法であるPAS染色(図1ではPASと表記)は肝臓のグリコーゲンを染色する手法であり、またCytochrome C(Cyto C)は電子伝達系の構成酵素の一つでエネルギー生産に重要な働きを担い、ともに肝機能の状態を反映する。生検検体を病理組織学的に検討したところ、PAS及びCyto Cの好染部位が増加して病理組織学的には肝機能が改善していることが示唆された。血清アルブミンはスクリーニング期3.9、治療期間中は3.4から3.9を推移したが、治療後観察28日には4となった。またプロトロンビン時間(PT)は、スクリーニング期70%、治療期間中は66%から74%を推移したが、治療後観察28日には79%となった。これらの結果は、被験者識別コード:C2-02では肝実質領域での線維化が改善していないにも関わらず肝機能が改善していることを示すものである。
被験者識別コード:C2-06(図2)
被験者識別コード:C2-06はベースラインと第6サイクルDay15におけるChild-Pugh Scoreが5及び5、Hepatitis Histology Index(HAI)が13及び12であった。肝実質領域での線維化面積は改善傾向にあったが有意な変化ではなかった(表1)。
生検検体を病理組織学的に検討したところ、PAS及びCyto Cの好染部位が顕著に増加して肝機能が改善していることが明らかになった。血清アルブミンはスクリーニング期3.7、治療期間中は3.3から4.0を推移したが、治療後観察28日には4.3となった。またプロトロンビン時間(PT)は、スクリーニング期77%、治療期間中は74%から86%を推移したが、治療後観察28日には92%となった。これらの結果は、被験者識別コード:C2-06では肝実質領域での線維化がわずかに改善しているだけであるのに、肝機能の改善が著明であることを示すものである。
被験者識別コード:C2-03(図3)
被験者識別コード:C2-03はベースラインと第6サイクルDay15におけるChild-Pugh Scoreが7及び7、Hepatitis Histology Index(HAI)が13及び12であった。肝実質領域での線維化面積は表1に示したように有意に減少した。
生検試料を病理組織学的に検討したところ、Cyto Cの好染部位がやや減少していることが明らかになった(治療前のPAS染色像を得ることが出来なかった)。血清アルブミンはスクリーニング期3.1、治療期間中は2 .3から3.3を推移したが、治療後観察28日には3.4となった。またプロトロンビン時間(PT)は、スクリーニング期51%、治療期間中は44%から64%を推移したが、治療後観察28日には67%となった。これらの結果は、被験者識別コード:C2-03 では肝実質領域での線維化は有意に改善しているのに、肝機能はわずかに改善したに過ぎなかったことを示すものである。
被験者識別コード:C2-04(図4)
被験者識別コード:C2-04はベースラインと第6サイクルDay15におけるChild-Pugh Scoreが7及び7、Hepatitis Histology Index(HAI)が12及び11であった。肝実質領域での線維化面積は表1に示したように有意に減少した。
生検検体を病理組織学的に検討したところ、Cyto Cの好染部位が顕著に増加していることが明らかになった(治療後のPAS染色像を得ることが出来なかった)。血清アルブミンはスクリーニング期3.4、治療期間中は2.7から3.3を推移したが、治療後観察28日には3.2となった。またプロトロンビン時間(PT)は、スクリーニング期62%、治療期間中は61%から67%を推移したが、治療後観察28日には69%となった。これらの結果は、被験者識別コード:C2-02では肝実質領域での線維化が有意に改善しているにも関わらず、肝機能はわずかに改善しているに過ぎなかったことを示している。
被験者識別コード:C2-07(図5)
被験者識別コード:C2-07はベースラインと第6サイクルDay15におけるChild-Pugh Scoreが8及び6、Hepatitis Histology Index(HAI)が15及び13であった。肝実質領域での線維化面積は表1に示したように有意に減少した。
生検検体を病理組織学的に検討したところ、PAS及びCyto Cの好染部位が顕著に増加していることが明らかになった。血清アルブミンはスクリーニング期2.3、治療期間中は2.3から3.5を推移したが、治療後観察28日には3.0となった。またプロトロンビン時間(PT)は、スクリーニング期79%、治療期間中は68%から82%を推移したが、治療後観察28日には79%となった。これらの結果は、被験者識別コード:C2-07では肝実質領域での線維化が有意に改善し、肝機能も改善していることを示している。
考察及び結論
C2-03を除いた、どの被験者においてもCyto C・PASの両方又は片方で好染部位が増加して病理組織学的に肝機能の改善が示唆された。この結果は慢性肝炎の病態分類であるHAIとほぼ一致する結果であった。しかし、この結果は表1に示した肝実質領域の線維化面積の治療に伴う変化と明確に相関するものではなく、特にChild-Pugh分類がA(代償性肝硬変患者)である被験者C2-02及びC2-06の線維化の変化との間には明確な相関は認めらなかった。また被験者C2-03では線維化が顕著に改善したにも関わらずCyto C好染部位の減少が認められた。生化学的指標として血清アルブミンとPTを比較したところ、Child-Pugh分類がAの被験者では顕著に、Bの被験者でも緩慢な改善が認められたが、線維化の改善の程度と明確に相関したものではなかった。これらの結果はPRI−724の肝機能改善作用は肝実質領域の脱線維化によって生じたものではなく、肝機能の改善と肝実質領域の脱線維化が独立して起きていることを強く示唆するものである。つまりPRI―724は脱線維化だけでなく、肝機能改善作用を有することを示していると結論される。
実施例2:細胞学的検討(C−82)
PRI−724の活性体であるC−82が肝細胞内ミトコンドリアを活性化することを、株化細胞を用いて検証した。株化細胞としては、ヒト肝癌由来のHepG2細胞及びHuh7細胞を用いた。いずれの細胞も商業的に入手可能である。
2−1:WST−8アッセイ
(目的)
PRI−724の活性体であるC82が肝細胞内ミトコンドリアを活性化することを検証するために、まずWST−8アッセイを実施した。WST−8は化合物の細胞毒性試験や細胞増殖試験に一般的に用いられ、細胞内の脱水素酵素により産生されるNADHがWST−8(2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt)をホルマザンに還元する。このホルマザン色素の量が細胞内代謝を反映する。この脱水素酵素反応は主にミトコンドリアで行われ、ミトコンドリアの酵素活性を測定するMTTアッセイとよく相関している事が知られている。
(試験方法)
測定はCell Counting Kit-8(同仁化学)を用い、iMarkマイクロプレートリーダー(Bio-rad)にて450nMの吸光度を測定した。HepG2細胞又はHuh7細胞を5000 cells/wellにて96穴マイクロプレートに各ウェル100μlのDMEM 10%FBSで播種した。その後、添付のテクニカルマニュアルに従い実施した。
(結果)
結果を図6に示す。HepG2細胞(上図)、Huh7細胞(下図)の両方で、C82が50nMから500nMで酵素活性が最大10%上昇した。C82(1μM)では酵素活性がコントロール(control)群と拮抗し、さらにC82濃度を上げると、細胞毒性が現れてくる事が示唆された。コントロール群にはDMSOを加えた。
(考察)
これらの結果より、PRI−724の活性体であるC82には、ミトコンドリアの酵素活性を上昇させる薬効を併せ持つ事が明らかとなり、そのピークは100nMから500nMにある事が示唆された。当該効果は、C82の肝機能改善効果を裏付けるものである。
2−2:細胞染色
(目的)
PRI−724の活性体であるC82が肝細胞内ミトコンドリアを活性化することを検証するために、MitoBright(同仁化学)を用い、蛍光顕微鏡にて観察した。MitoBrightは、生細胞のミトコンドリアを染色する蛍光試薬である。染色はミトコンドリアの膜電位に依存しており、細胞膜透過後、正常なミトコンドリアに特異的に集積する。また、集積後、ミトコンドリアとの強い相互作用により色素の滞留性がある。
(試験方法)
HepG2細胞、Huh7細胞を35mmガラスボトムディッシュに播き、24時間後にC82(1μM)を加え、その後8時間後に100nM MitoBright(同仁化学)を加えて37℃で30分間インキュベートした後、蛍光顕微鏡(BZ-X800 キーエンス)にて観察した。コントロール群(Cont)にはDMSOを加えた。結果を図7に示す。
(考察)
C82(1μM)にて8時間処理した細胞は、コントロールに比べ、蛍光が強い像が得られた。当該結果は、C82により肝ミトコンドリアの電子伝達系機能が改善(向上)したことを示している。
4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、及び(6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミドは、肝機能、特に肝疾患等の際に観察される肝臓の糖代謝機能、電子伝達系機能及び肝合成能における障害を改善する作用を有し、従って、肝機能改善剤として有効である。
本出願は、日本で出願された特願2018−231220(出願日:2018年12月10日)及び特願2019−094055(出願日:2019年5月17日)を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (6)

  1. 4−(((6S,9S,9aS)−1−(ベンジルカルバモイル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−6−イル)メチル)フェニルジヒドロゲンホスフェート、
    (6S,9S,9aS)−N−ベンジル−6−(4−ヒドロキシベンジル)−2,9−ジメチル−4,7−ジオキソ−8−(キノリン−8−イルメチル)オクタヒドロ−1H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1−カルボキサミド及びそれらの医薬上許容し得る塩から選択される少なくとも1種
    を有効成分として含む肝機能改善剤。
  2. 肝機能が糖代謝機能である、請求項1記載の剤。
  3. 肝機能が電子伝達系機能である、請求項1記載の剤。
  4. 肝機能が肝合成能である、請求項1記載の剤。
  5. 肝機能の改善が、肝実質領域の脱線維化を伴わない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。
  6. 肝機能の改善が、代償性肝硬変患者における改善である、請求項1記載の剤。
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