以下に、本発明の実施の形態に係る電力変換装置、モータ駆動装置及び空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置100の構成例を示す図である。電力変換装置100は、ブリッジ回路3を用いて、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換して負荷50に印加する交流直流変換機能を有する電源装置である。図1に示すように、電力変換装置100は、リアクタ2と、ブリッジ回路3と、平滑コンデンサ4と、電源電圧検出部5と、電源電流検出部6と、母線電圧検出部7と、制御部10とを備える。
ブリッジ回路3は、ダイオードが並列接続されたスイッチング素子が2つ直列接続されたアームを2つ備え、2つのアームが並列接続された回路である。ブリッジ回路3は、交流電源1から出力される交流電圧を直流電圧に変換する。具体的には、ブリッジ回路3は、第1の回路である第1のアーム31と、第2の回路である第2のアーム32とを備える。第1のアーム31は、直列接続されるスイッチング素子311及びスイッチング素子312を備える。スイッチング素子311には寄生ダイオード311aが形成される。寄生ダイオード311aは、スイッチング素子311のドレインとソースとの間に並列接続される。スイッチング素子312には寄生ダイオード312aが形成される。寄生ダイオード312aは、スイッチング素子312のドレインとソースとの間に並列接続される。寄生ダイオード311a,312aのそれぞれは、還流ダイオードとして使用されるダイオードである。なお、第1のアーム31をレグと称することがある。
第2のアーム32は、直列接続されたスイッチング素子321及びスイッチング素子322を備える。第2のアーム32は、第1のアーム31に並列接続される。スイッチング素子321には寄生ダイオード321aが形成される。寄生ダイオード321aは、スイッチング素子321のドレインとソースとの間に並列接続される。スイッチング素子322には寄生ダイオード322aが形成される。寄生ダイオード322aは、スイッチング素子322のドレインとソースとの間に並列接続される。寄生ダイオード321a,322aのそれぞれは、還流ダイオードとして使用されるダイオードである。なお、第2のアーム32をレグと称することがある。
詳細には、電力変換装置100は、それぞれが交流電源1に接続される第1の配線501及び第2の配線502と、第1の配線501に配置されるリアクタ2とを備える。また、第1のアーム31は、第1のスイッチング素子であるスイッチング素子311と、第2のスイッチング素子であるスイッチング素子312と、第1の接続点506を有する第3の配線503とを備える。スイッチング素子311及びスイッチング素子312は、第3の配線503により直列に接続される。第1の接続点506には第1の配線501が接続される。第1の接続点506は、第1の配線501及びリアクタ2を介して、交流電源1に接続される。リアクタ2については、一端が交流電源1に接続され、他端がスイッチング素子311及びスイッチング素子312の接続点に接続されているともいえる。
第2のアーム32は、第3のスイッチング素子であるスイッチング素子321と、第4のスイッチング素子であるスイッチング素子322と、第2の接続点508を備える第4の配線504とを備え、スイッチング素子321及びスイッチング素子322は、第4の配線504により直列に接続される。第2の接続点508には第2の配線502が接続される。第2の接続点508は、第2の配線502を介して交流電源1に接続される。
また、ブリッジ回路3は、スイッチング素子311を駆動するゲート駆動部33と、スイッチング素子312を駆動するゲート駆動部34と、スイッチング素子321を駆動するゲート駆動部35と、スイッチング素子322を駆動するゲート駆動部36とを備える。ゲート駆動部33は、制御部10で生成された制御信号に基づいて、スイッチング素子311をターンオンまたはターンオフする第1の駆動部である。ゲート駆動部34は、制御部10で生成された制御信号に基づいて、スイッチング素子312をターンオンまたはターンオフする第2の駆動部である。ゲート駆動部35は、制御部10で生成された制御信号に基づいて、スイッチング素子321をターンオンまたはターンオフする第3の駆動部である。ゲート駆動部36は、制御部10で生成された制御信号に基づいて、スイッチング素子322をターンオンまたはターンオフする第4の駆動部である。
ゲート駆動部33〜36は、内部に備えるゲート抵抗によって、接続されているスイッチング素子のスイッチング速度を制御する。本実施の形態では、ゲート駆動部33は、スイッチング素子311をターンオンさせるときとスイッチング素子311をターンオフさせるときとで、異なる抵抗値のゲート抵抗を用いる。同様に、ゲート駆動部34は、スイッチング素子312をターンオンさせるときとスイッチング素子312をターンオフさせるときとで、異なる抵抗値のゲート抵抗を用いる。ゲート駆動部33,34の具体的な構成については後述する。ゲート駆動部35,36は、内部に1つのゲート抵抗を備え、ターンオンのときとターンオフのときとで同じ抵抗をゲート抵抗として使用する。以降の説明において、ターンオンのことを単にオンと称し、ターンオフのことを単にオフと称することがある。なお、ゲート駆動部については図1の例に限定されず、1つのゲート駆動部がスイッチング素子311,312をターンオンまたはターンオフしてもよいし、1つのゲート駆動部がスイッチング素子321,322をターンオンまたはターンオフしてもよい。
平滑コンデンサ4は、ブリッジ回路3、詳細には第2のアーム32に並列接続されるコンデンサである。ブリッジ回路3では、スイッチング素子311の一端が平滑コンデンサ4の正側に接続され、スイッチング素子311の他端とスイッチング素子312の一端とが接続され、スイッチング素子312の他端が平滑コンデンサ4の負側に接続されている。
スイッチング素子311,312,321,322は、MOSFETで構成される。スイッチング素子311,312,321,322には、窒化ガリウム(Gallium Nitride:GaN)、酸化ガリウム(Gallium Oxide:Ga2O3)、炭化珪素(Silicon Carbide:SiC)、ダイヤモンドまたは窒化アルミニウムといったワイドバンドギャップ(Wide Band Gap:WBG)半導体で構成されたMOSFETを用いることができる。スイッチング素子311,312,321,322にWBG半導体を用いることにより、耐電圧性が高く、許容電流密度も高くなるため、モジュールの小型化が可能となる。WBG半導体は、耐熱性も高いため、放熱部の放熱フィンの小型化も可能になる。本実施の形態では、スイッチング素子311,312のスイッチング速度は、スイッチング素子321,322のスイッチング速度より速いものとする。
制御部10は、電源電圧検出部5、電源電流検出部6及び母線電圧検出部7からそれぞれ出力される信号に基づいて、ブリッジ回路3のゲート駆動部33〜36を動作させる制御信号を生成する。電源電圧検出部5は、交流電源1の出力電圧の電圧値である電源電圧Vsを検出し、検出結果を示す電気信号を制御部10へ出力する電圧検出部である。電源電流検出部6は、交流電源1から出力される電流の電流値である電源電流Isを検出し、検出結果を示す電気信号を制御部10へ出力する電流検出部である。電源電流Isは、交流電源1とブリッジ回路3との間に流れる電流の電流値である。母線電圧検出部7は、母線電圧Vdcを検出し、検出結果を示す電気信号を制御部10へ出力する電圧検出部である。母線電圧Vdcは、ブリッジ回路3の出力電圧を平滑コンデンサ4で平滑した電圧である。制御部10は、電源電圧Vs、電源電流Is、及び母線電圧Vdcに応じて制御信号を生成し、ゲート駆動部33〜36を動作させ、スイッチング素子311,312,321,322のオンオフを制御する。なお、制御部10は、電源電圧Vs、電源電流Is、及び母線電圧Vdcのうち、少なくとも1つを用いてスイッチング素子311,312,321,322のオンオフを制御してもよい。
次に、実施の形態1に係る電力変換装置100の基本的な動作を説明する。以下では、交流電源1の正側すなわち交流電源1の正極端子に接続されるスイッチング素子311,321を、上側スイッチング素子と称する場合がある。また、交流電源1の負側すなわち交流電源1の負極端子に接続されるスイッチング素子312,322を、下側スイッチング素子と称する場合がある。
第1のアーム31では、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子は相補的に動作する。すなわち、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のうち、一方がオンの場合には他方はオフである。第1のアーム31を構成するスイッチング素子311,312は、各々ゲート駆動部33,34により生成される駆動信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号により駆動される。PWM信号に従ったスイッチング素子311,312のオンまたはオフの動作を、以下ではスイッチング動作とも呼ぶ。交流電源1及びリアクタ2を介した平滑コンデンサ4の短絡を防ぐため、交流電源1から出力される電源電流Isの絶対値が電流閾値以下の場合には、スイッチング素子311及びスイッチング素子312はともにオフとなる。以下では、平滑コンデンサ4の短絡をコンデンサ短絡と称する。コンデンサ短絡は、平滑コンデンサ4に蓄えられたエネルギーが放出され、交流電源1に電流が回生される状態である。
第2のアーム32を構成するスイッチング素子321,322は、各々ゲート駆動部35,36により生成される駆動信号によりオンまたはオフとなる。スイッチング素子321,322は、基本的には、交流電源1から出力される電圧の極性である電源電圧極性に応じてオンまたはオフの状態となる。具体的には、電源電圧極性が正の場合、スイッチング素子322はオンであり、かつ、スイッチング素子321はオフであり、電源電圧極性が負の場合、スイッチング素子321はオンであり、かつ、スイッチング素子322はオフである。なお、図1では、制御部10からブリッジ回路3へ向かう矢印でゲート駆動部33〜36への制御信号を示している。
次に、実施の形態1におけるスイッチング素子の状態と実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路との関係を説明する。なお、本説明の前に、MOSFETの構造について、図2を参照して説明する。
図2は、MOSFETの概略構造を示す模式的断面図である。図2には、n型MOSFETが例示される。n型MOSFETの場合、図2に示すように、p型の半導体基板600が用いられる。半導体基板600には、ソース電極S、ドレイン電極D及びゲート電極Gが形成される。ソース電極S及びドレイン電極Dと接する部位には、高濃度の不純物がイオン注入されてn型の領域601が形成される。また、半導体基板600において、n型の領域601が形成されない部位とゲート電極Gとの間には、酸化絶縁膜602が形成される。すなわち、ゲート電極Gと、半導体基板600におけるp型の領域603との間には、酸化絶縁膜602が介在している。
ゲート電極Gに正電圧が印加されると、半導体基板600におけるp型の領域603と酸化絶縁膜602との間の境界面に電子が引き寄せられ、当該境界面が負に帯電する。電子が集まった所は、電子の密度がホール密度よりも高くなりn型化する。このn型化した部分は電流の通り道となりチャネル604と呼ばれる。チャネル604は、図2の例では、n型チャネルである。MOSFETがオンに制御されることにより、通流する電流は、p型の領域603に形成される寄生ダイオードよりも、チャネル604に多く流れる。
図3は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が正のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第1の図である。図3では、電源電圧極性が正であり、スイッチング素子311及びスイッチング素子322がオンであり、スイッチング素子312及びスイッチング素子321がオフである。この状態では、交流電源1、リアクタ2、スイッチング素子311、平滑コンデンサ4、スイッチング素子322、交流電源1の順序で電流が流れる。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード311a及び寄生ダイオード322aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子311及びスイッチング素子322のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、同期整流動作が行われる。なお、図3では、オンしているスイッチング素子を丸印で示している。以降の図においても同様とする。
図4は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が負のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第1の図である。図4では、電源電圧極性が負であり、スイッチング素子312及びスイッチング素子321がオンであり、スイッチング素子311及びスイッチング素子322がオフである。この状態では、交流電源1、スイッチング素子321、平滑コンデンサ4、スイッチング素子312、リアクタ2、交流電源1の順序で電流が流れる。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード321a及び寄生ダイオード312aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子321及びスイッチング素子312のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、同期整流動作が行われる。
図5は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が正のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第2の図である。図5では、電源電圧極性が正であり、スイッチング素子312及びスイッチング素子322がオンであり、スイッチング素子311及びスイッチング素子321がオフである。この状態では、交流電源1、リアクタ2、スイッチング素子312、スイッチング素子322、交流電源1の順序で電流が流れ、平滑コンデンサ4を経由しない電源短絡経路が形成される。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード312a及び寄生ダイオード322aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子312及びスイッチング素子322のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、電源短絡経路が形成される。
図6は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が負のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第2の図である。図6では、電源電圧極性が負であり、スイッチング素子311及びスイッチング素子321がオンであり、スイッチング素子312及びスイッチング素子322がオフである。この状態では、交流電源1、スイッチング素子321、スイッチング素子311、リアクタ2、交流電源1の順序で電流が流れ、平滑コンデンサ4を経由しない電源短絡経路が形成される。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード321a及び寄生ダイオード311aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子321及びスイッチング素子311のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、電源短絡経路が形成される。
図5および図6の例では、スイッチング素子311,312は、短絡電流の流れを制御するスイッチとして機能する。また、図5および図6の例では、スイッチング素子321,322は、整流器として機能する。電力変換装置100において、ブリッジ回路3の短絡時に流れる短絡電流は、交流電源1の極性に応じて、リアクタ2から、寄生ダイオード312aの順方向とは逆向きに電流を流すスイッチング素子312の順、または、寄生ダイオード311aの順方向とは逆向きに電流を流すスイッチング素子311から、リアクタ2の順に流れることになる。具体的には、図5に示す例のように交流電源1の正極がリアクタ2側の場合、電力変換装置100では、リアクタ2とスイッチング素子312とが直列接続されていることから、短絡電流はリアクタ2の次にスイッチング素子312に流れる。また、図6に示す例のように交流電源1の負極がリアクタ2側の場合、電力変換装置100では、スイッチング素子311とリアクタ2とが直列接続されていることから、短絡電流はスイッチング素子311の次にリアクタ2に流れる。このような構成により、スイッチング素子311,312で発生するスイッチング時のノイズが、リアクタ2のインピーダンスの影響によって減衰することが期待できる。
ここで、図3に示す同期整流動作時、オンオフのタイミングによってはスイッチング素子311の寄生ダイオード311aに電流が流れる場合がある。この場合、図5に示す電源短絡動作に切り替わると、寄生ダイオード311aにはスイッチング素子312aを介して負荷側電圧(直流電圧)が印加される。このため、寄生ダイオード311aには逆回復動作によるリカバリ電流が流れるが、併せて本電流に起因するノイズ(リカバリノイズ)も発生することとなる。このリカバリノイズは配線を伝わり交流電源1側に伝導していくことになるが、図5に示すような経路で電源短絡動作を行うことで、リアクタ2のインピーダンスの存在により、交流電源1側へのノイズ流出を抑制することができる。すなわち、リアクタ側に接続されるレグのスイッチング素子に並列接続されたダイオードに関して、順方向とは逆向きの短絡電流が流れるようスイッチング素子を制御することで、リカバリノイズの電源側流出を抑制することができる。
制御部10は、以上に述べた電流経路の切替えを制御することで、電源電流Is及び母線電圧Vdcの値を制御できる。電力変換装置100は、電源電圧極性が正のときは図3に示す負荷電力供給モードと図5に示す電源短絡モードとを連続的に切り替え、電源電圧極性が負のときは図4に示す負荷電力供給モードと図6に示す電源短絡モードとを連続的に切り替えることで、母線電圧Vdcの上昇、電源電流Isの同期整流などの動作を実現する。具体的には、制御部10は、PWMによるスイッチング動作を行うスイッチング素子311,312のスイッチング周波数を、電源電圧Vsの極性に応じたスイッチング動作を行うスイッチング素子321,322のスイッチング周波数よりも高くして、スイッチング素子311,312,321,322のオンオフを制御する。以降の説明において、スイッチング素子311,312,321,322を区別しない場合は単にスイッチング素子と称することがある。同様に、寄生ダイオード311a,312a,321a,322aを区別しない場合は単に寄生ダイオードと称することがある。
次に、ブリッジ回路3が備えるゲート駆動部33,34の構成について説明する。ブリッジ回路3では、リアクタ2が接続されていることで第1のアーム31のスイッチング素子311,312に起因するノイズを低減でき、ブリッジ回路3のグランド線の揺れを抑えることができる。ブリッジ回路3では、スイッチング素子311,312に起因するノイズを低減できることから、スイッチング素子311,312の各々に接続されているゲート駆動部33,34が備えるゲート抵抗の抵抗値を小さくすることができる。この結果、前述のように、スイッチング素子311,312のスイッチング速度を、スイッチング素子321,322のスイッチング速度よりも高速にすることができる。また、電力変換装置100では、スイッチング素子311,312のスイッチング速度がスイッチング素子321,322のスイッチング速度と同じ場合と比較して、リアクタ2の大きさを小さくする、すなわちリアクタ2を小型化することができる。
ブリッジ回路3は、ゲート駆動部33,34のゲート抵抗の抵抗値を小さくすることで、スイッチング素子311,312のスイッチング速度を速くすることができる。一方で、ブリッジ回路3は、スイッチング素子311,312のスイッチング速度を速くし過ぎても、スイッチングに起因する放射ノイズ、負荷50または負荷50に接続された構成から対地インピーダンス経由で漏れ電流が帰還する伝導ノイズなどのノイズが増加してしまう。また、スイッチング素子311,312では、ターンオンのときとターンオフのときとでノイズの発生状況が異なることがある。そのため、本実施の形態では、スイッチング素子311,312をオンオフさせるゲート駆動部33,34において、ターンオンのときとターンオフのときとで異なる抵抗値のゲート抵抗を用いる。具体的には、ゲート駆動部33,34は、スイッチング素子311,312において、ターンオンまたはターンオフのときに発生するノイズが小さい方の動作で使用するゲート抵抗の抵抗値を、ノイズが大きい方の動作で使用するゲート抵抗の抵抗値よりも小さくする。ゲート駆動部33,34で使用するゲート抵抗の抵抗値をターンオンのときとターンオフのときとで変えることによって、ブリッジ回路3は、ノイズの発生を抑えるとともに、スイッチング素子のスイッチング速度を向上することができる。
具体的に、スイッチング素子311,312においてターンオフのときよりもターンオンのときのノイズが大きい場合の、ゲート駆動部33,34の構成について説明する。なお、ここではゲート駆動部33,34は同様の構成とするので、ゲート駆動部33を用いて説明する。図7は、実施の形態1に係る電力変換装置100のブリッジ回路3が備えるゲート駆動部33の第1の構成例を示す図である。ゲート駆動部33は、抵抗331と、ダイオード332と、抵抗333とを備える。抵抗331は、ゲート抵抗であって、スイッチング素子311をターンオフさせるときに使用される第1の抵抗である。ダイオード332は、スイッチング素子311をターンオフさせるときに電流を通す第1のダイオードである。ダイオード332は、カソードが抵抗331に接続され、アノードがスイッチング素子311に接続されている。なお、図7に示すダイオード332の配置は一例であり、これに限定されない。ダイオード332は、カソードが制御部10に接続され、アノードが抵抗331に接続されていてもよい。抵抗333は、ゲート抵抗であって、スイッチング素子311をターンオンさせるときに使用される第2の抵抗である。図7では、抵抗331及びダイオード332の直列回路と、抵抗333とが並列接続されている。図7で示される回路は、スイッチング素子311のオンオフ時でスイッチング速度を変える速度変更手段である。以降で説明するゲート駆動部が備える回路についても同様である。ゲート駆動部33は、オンオフ時のスイッチング速度を、ゲート抵抗の抵抗値によって変更するものである。
ここで、抵抗331の抵抗値≦抵抗333の抵抗値とする。図7において、抵抗331の抵抗値と抵抗333の抵抗値との差が大きい場合、例えば10倍以上の差がある場合、スイッチング素子311から制御部10への電流はほぼ抵抗331に流れ、抵抗333にはほとんど流れない。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、概ね抵抗331の抵抗値となる。なお、抵抗331の抵抗値と抵抗333の抵抗値とが同じまたは差が大きくない場合、スイッチング素子311から制御部10への電流は抵抗333にも流れる。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、抵抗331及び抵抗333が並列接続された合成抵抗の抵抗値となる。ただし、抵抗331の抵抗値≦抵抗333の抵抗値であるので、合成抵抗の抵抗値は抵抗333の抵抗値よりも小さくなる。
ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせる場合、ゲート駆動部33では、逆方向でダイオード332が接続されているので抵抗331に電流は流れず、制御部10から抵抗333を経由してスイッチング素子311に電流が流れる。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、抵抗333の抵抗値となる。
このように、ゲート駆動部33は、ノイズの大きいターンオンのときに抵抗333をゲート抵抗として使用し、ノイズの小さいターンオフのときに抵抗331、または、抵抗331及び抵抗333の合成抵抗をゲート抵抗として使用することができる。
次に、スイッチング素子311,312においてターンオンのときよりもターンオフのときのノイズが大きい場合の、ゲート駆動部33,34の構成について説明する。なお、ここではゲート駆動部33,34は同様の構成とするので、ゲート駆動部33を用いて説明する。図8は、実施の形態1に係る電力変換装置100のブリッジ回路3が備えるゲート駆動部33の第2の構成例を示す図である。ゲート駆動部33は、抵抗331と、抵抗333と、ダイオード334とを備える。ダイオード334は、スイッチング素子311をターンオンさせるときに電流を通す第2のダイオードである。ダイオード334は、アノードが抵抗333に接続され、カソードがスイッチング素子311に接続されている。なお、図8に示すダイオード334の配置は一例であり、これに限定されない。ダイオード334は、アノードが制御部10に接続され、カソードが抵抗333に接続されていてもよい。図8では、抵抗331と、抵抗333及びダイオード334の直列回路とが並列接続されている。
ここで、抵抗331の抵抗値≧抵抗333の抵抗値とする。図8において、抵抗331の抵抗値と抵抗333の抵抗値との差が大きい場合、例えば10倍以上の差がある場合、制御部10からスイッチング素子311への電流はほぼ抵抗333に流れ、抵抗331にはほとんど流れない。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、概ね抵抗333の抵抗値となる。なお、抵抗331の抵抗値と抵抗333の抵抗値とが同じまたは差が大きくない場合、制御部10からスイッチング素子311への電流は抵抗331にも流れる。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、抵抗333及び抵抗331が並列接続された合成抵抗の抵抗値となる。ただし、抵抗331の抵抗値≧抵抗333の抵抗値であるので、合成抵抗の抵抗値は抵抗331の抵抗値よりも小さくなる。
ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせる場合、ゲート駆動部33では、逆方向でダイオード334が接続されているので抵抗333に電流は流れず、スイッチング素子311から抵抗331を経由して制御部10に電流が流れる。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、抵抗331の抵抗値となる。
このように、ゲート駆動部33は、ノイズの大きいターンオフのときに抵抗331をゲート抵抗として使用し、ノイズの小さいターンオンのときに抵抗333、または、抵抗333及び抵抗331の合成抵抗をゲート抵抗として使用することができる。
次に、スイッチング素子311,312においてターンオフのときよりもターンオンのときのノイズが少し大きい場合の、ゲート駆動部33,34の構成について説明する。なお、ここではゲート駆動部33,34は同様の構成とするので、ゲート駆動部33を用いて説明する。図9は、実施の形態1に係る電力変換装置100のブリッジ回路3が備えるゲート駆動部33の第3の構成例を示す図である。ゲート駆動部33は、抵抗331と、ダイオード332と、抵抗333と、ダイオード334とを備える。図9では、抵抗331及びダイオード332の直列回路と、抵抗333及びダイオード334の直列回路とが並列接続されている。
ここで、抵抗331の抵抗値<抵抗333の抵抗値とする。ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせる場合、ゲート駆動部33では、逆方向でダイオード332が接続されているので抵抗331に電流は流れず、順方向でダイオード334が接続されている抵抗333を経由して、制御部10からスイッチング素子311に電流が流れる。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、抵抗333の抵抗値となる。
ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせる場合、ゲート駆動部33では、逆方向でダイオード334が接続されているので抵抗333に電流は流れず、順方向でダイオード332が接続されている抵抗331を経由して、スイッチング素子311から制御部10に電流が流れる。このとき、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、抵抗331の抵抗値となる。なお、スイッチング素子311,312においてターンオンのときよりもターンオフのときのノイズが少し大きい場合は、抵抗331の抵抗値>抵抗333の抵抗値とする。
ユーザは、スイッチング素子311でターンオンのときに発生するノイズ及びターンオフのときに発生するノイズについて、ノイズの大きさに著しい差が無い場合、発生するノイズの大きさに応じてゲート駆動部33に適切な抵抗値の抵抗331,333を用いることができる。ゲート駆動部33は、2つのダイオード332,334を用いることで、ターンオフのときのノイズを考慮した抵抗値の抵抗331をゲート抵抗として使用し、ターンオンのときのノイズを考慮した抵抗値の抵抗333をゲート抵抗として使用することができる。
なお、ゲート駆動部33,34が同一の構成の場合について説明したが、一例であり、これらに限定されない。例えば、ゲート駆動部33の構成が図7に示す構成の場合に、ゲート駆動部34の構成を図8または図9に示す構成のようにすることも可能である。
また、ゲート駆動部33,34が同様の構成の場合においても、ゲート駆動部33,34において異なる抵抗値のゲート抵抗を用いることができる。図10は、実施の形態1に係る電力変換装置100のブリッジ回路3が備えるゲート駆動部33,34の第4の構成例を示す図である。ゲート駆動部33は、抵抗331と、ダイオード332と、抵抗333とを備える。また、ゲート駆動部34は、抵抗341と、ダイオード342と、抵抗343とを備える。抵抗341は、ゲート抵抗であって、スイッチング素子312をターンオフさせるときに使用される第3の抵抗である。ダイオード342は、スイッチング素子312をターンオフさせるときに電流を通す第3のダイオードである。ダイオード342は、カソードが抵抗341に接続され、アノードがスイッチング素子312に接続されている。なお、図10に示すダイオード342の配置は一例であり、これに限定されない。ダイオード342は、カソードが制御部10に接続され、アノードが抵抗341に接続されていてもよい。抵抗343は、ゲート抵抗であって、スイッチング素子312をターンオンさせるときに使用される第4の抵抗である。図10では、抵抗341及びダイオード342の直列回路と、抵抗343とが並列接続されている。
例えば、ターンオンのときに、スイッチング素子311のノイズよりもスイッチング素子312のノイズが大きい場合、ゲート駆動部33の抵抗333の抵抗値よりも、ゲート駆動部34の抵抗343の抵抗値を大きくする。同様に、ターンオフのときに、スイッチング素子311のノイズよりもスイッチング素子312のノイズが大きい場合、ゲート駆動部33の抵抗331の抵抗値よりも、ゲート駆動部34の抵抗341の抵抗値を大きくする。これにより、ブリッジ回路3は、各スイッチング素子で発生するノイズの大きさに応じて、適切な抵抗値のゲート抵抗を使用することができる。
すなわち、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオンさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、ゲート駆動部34がスイッチング素子312をターンオンさせるときのゲート抵抗の抵抗値と異なっていてもよい。同様に、ゲート駆動部33がスイッチング素子311をターンオフさせるときのゲート抵抗の抵抗値は、ゲート駆動部34がスイッチング素子312をターンオフさせるときのゲート抵抗の抵抗値と異なっていてもよい。電力変換装置100は、スイッチング素子311,312で発生するノイズの大きさに応じて設定されたゲート駆動部33,34のゲート抵抗を使用することで、制御部10の制御内容を変更することなく、ノイズの発生を抑えることができる。なお、図10では、ゲート駆動部33,34の構成として、図7のゲート駆動部33と同様の構成の場合について説明したが、一例であり、これに限定されるものではない。ゲート駆動部33,34の構成として、図8または図9のゲート駆動部33と同様の構成を用いてもよい。
ここで、スイッチング素子の構成について説明する。電力変換装置100において、スイッチング素子のスイッチング速度を速くする方法の1つに、スイッチング素子のゲート抵抗を小さくする方法が挙げられる。ゲート抵抗が小さくなる程、ゲート入力容量への充放電時間が短くなり、ターンオン期間及びターンオフ期間が短くなるため、スイッチング速度が速くなる。
しかしながら、ゲート抵抗を小さくすることでスイッチング損失を低減するには限界がある。そこで、スイッチング素子を、GaNまたはSiCといったWBG半導体で構成することにより、1回のスイッチング当りの損失を更に抑制することができ、より一層効率が向上し、かつ、高周波スイッチングが可能となる。また、高周波スイッチングが可能となることで、リアクタ2の小型化が可能となり、電力変換装置100の小型化及び軽量化が可能となる。また、スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、スイッチング速度が向上して、スイッチング損失が抑制されるため、スイッチング素子が正常な動作を継続できるような放熱対策を簡素化できる。また、スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、スイッチング周波数を十分に高い値、例えば16kHz以上にすることができるため、スイッチングに起因する騒音を抑制できる。
また、GaN半導体は、GaN層と窒化アルミニウムガリウム層との界面に2次元電子ガスが生じ、この2次元電子ガスにより、キャリアの移動度が高い。このため、GaN半導体を用いたスイッチング素子は、高速スイッチングを実現可能である。ここで、交流電源1が、50Hz/60Hzの商用電源である場合、可聴域周波数は、16kHzから20kHzまでの範囲、すなわち商用電源の周波数の266倍から400倍までの範囲となる。GaN半導体は、この可聴域周波数より高い周波数でスイッチングする場合に好適である。半導体材料として主流である珪素(Si)で構成されたスイッチング素子311,312,321,322を、数十kHz以上のスイッチング周波数で駆動した場合、スイッチング損失の比率が大きくなり、放熱対策が必須となる。これに対して、GaN半導体で構成されたスイッチング素子311,312,321,322は、数十kHz以上のスイッチング周波数、具体的には20kHzより高いスイッチング周波数で駆動した場合でも、スイッチング損失が非常に小さい。そのため、放熱対策が不要になり、または放熱対策のために利用される放熱部材のサイズを小型化でき、電力変換装置100の小型化及び軽量化が可能となる。また、高周波スイッチングが可能となることで、リアクタ2の小型化が可能になる。なお、雑音端子電圧規格の測定範囲にスイッチング周波数の1次成分が入らないようにするため、スイッチング周波数は、150kHz以下とすることが好ましい。
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて静電容量が小さいため、スイッチングに起因するリカバリ電流の発生が少なく、リカバリ電流に起因する損失及びノイズの発生を抑制できるため、高周波スイッチングに適している。
なお、SiC半導体はGaN半導体に比べてオン抵抗が小さいため、第2のアーム32よりも、スイッチング回数が多い第1のアーム31のスイッチング素子311,312は、GaN半導体で構成し、スイッチング回数が少ない第2のアーム32のスイッチング素子321,322は、SiC半導体で構成してもよい。これにより、SiC半導体及びGaN半導体のそれぞれの特性を最大限に生かすことができる。また、SiC半導体を、第1のアーム31よりも、スイッチング回数が少ない第2のアーム32のスイッチング素子321,322に利用することで、スイッチング素子321,322の損失の内、導通損失が占める割合が多くなり、ターンオン損失及びターンオフ損失が小さくなる。従って、スイッチング素子321,322のスイッチングに伴う発熱の上昇が抑制され、第2のアーム32を構成するスイッチング素子321,322のチップ面積を相対的に小さくでき、チップ製造時の歩留まりが低いSiC半導体を有効に活用できる。
また、スイッチング回数が少ない第2のアーム32のスイッチング素子321,322には、スーパージャンクション(Super Junction:SJ)−MOSFETを用いてもよい。SJ−MOSFETを用いることにより、SJ−MOSFETのメリットである低オン抵抗を生かしつつ、静電容量が高くリカバリが発生しやすいというデメリットを抑制できる。また、SJ−MOSFETを用いることにより、WBG半導体を用いる場合に比べて、第2のアーム32の製造コストを低減できる。
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて耐熱性が高く、ジャンクション温度が高温でも動作が可能である。そのため、WBG半導体を用いることにより、第1のアーム31及び第2のアーム32を、熱抵抗が大きい小型のチップでも構成できる。特に、チップ製造時の歩留まりが低いSiC半導体は、小型のチップに利用した方が低コスト化を実現できる。
また、WBG半導体は、100kHz程度の高周波で駆動した場合でも、スイッチング素子で発生する損失の増加が抑制されるため、リアクタ2の小型化による損失低減効果が大きくなり、広い出力帯域、すなわち広い負荷条件において、高効率なコンバータを実現できる。
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて耐熱性が高く、アーム間の損失の偏りによるスイッチングの発熱許容レベルが高いため、高周波駆動によるスイッチング損失が発生する第1のアーム31に好適である。
つづいて、電力変換装置100が備える制御部10のハードウェア構成について説明する。図11は、実施の形態1に係る電力変換装置100が備える制御部10を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部10は、プロセッサ201及びメモリ202により実現される。
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ202は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置100では、ブリッジ回路3の短絡時において、交流電源1の極性に応じて、リアクタ2と、スイッチとして機能するスイッチング素子312とリアクタ2とが直列接続され、または、スイッチとして機能するスイッチング素子311と、リアクタ2とが直列接続される回路構成となる。これにより、電力変換装置100は、リアクタ2のインピーダンスの影響によってスイッチング素子311,312で発生するスイッチング時のノイズを減衰できることから、リアクタ2を小型化しつつ、ノイズを低減することができる。
また、電力変換装置100において、ブリッジ回路3では、スイッチング素子311,312のスイッチング速度を、スイッチング素子321,322のスイッチング速度より速くする。また、ブリッジ回路3において、スイッチング素子311を駆動するゲート駆動部33は、スイッチング素子311をターンオンさせるときとターンオフさせるときとで異なる抵抗値のゲート抵抗を用いて、ターンオンとターンオフとでスイッチング速度を変える。スイッチング素子312を駆動するゲート駆動部34は、スイッチング素子312をターンオンさせるときとターンオフさせるときとで異なる抵抗値のゲート抵抗を用いて、ターンオンとターンオフとでスイッチング速度を変える。これにより、電力変換装置100は、リアクタ2を小型化しつつ、ノイズを低減することができる。
また、電力変換装置100において、ゲート駆動部33は、スイッチング素子311で発生するノイズの大きさに応じて設定されたゲート抵抗を使用し、ゲート駆動部34は、スイッチング素子312で発生するノイズの大きさに応じて設定されたゲート抵抗を使用する。すなわち、ゲート駆動部33及びゲート駆動部34は、スイッチング素子をターンオンさせるときに異なる抵抗値のゲート抵抗を使用し、スイッチング素子をターンオフさせるときに異なる抵抗値のゲート抵抗を使用する。これにより、電力変換装置100は、ゲート駆動部33,34で異なる抵抗値のゲート抵抗を使用することができ、制御部10の制御内容を変更することなく、実際のノイズの発生状況に応じてノイズを低減することができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明した電力変換装置100を備えるモータ駆動装置について説明する。
図12は、実施の形態2に係るモータ駆動装置101の構成例を示す図である。モータ駆動装置101は、負荷であるモータ42を駆動する。モータ駆動装置101は、実施の形態1の電力変換装置100と、インバータ41と、モータ電流検出部44と、インバータ制御部43とを備える。インバータ41は、電力変換装置100から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ42へ出力することにより、モータ42を駆動する。なお、モータ駆動装置101の負荷がモータ42である場合の例を説明しているが、一例であり、インバータ41に接続される機器は、交流電力が入力される機器であればよく、モータ42以外の機器でもよい。
インバータ41は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)をはじめとするスイッチング素子を、3相ブリッジ構成または2相ブリッジ構成とした回路である。インバータ41に用いられるスイッチング素子は、IGBTに限定されず、WBG半導体で構成されたスイッチング素子、IGCT(Integrated Gate Commutated Thyristor)、FET(Field Effect Transistor)またはMOSFETでもよい。
モータ電流検出部44は、インバータ41とモータ42との間に流れる電流を検出する。インバータ制御部43は、モータ電流検出部44で検出された電流を用いて、モータ42が所望の回転数にて回転するように、インバータ41内のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を生成してインバータ41へ印加する。インバータ制御部43は、制御部10と同様に、プロセッサ及びメモリにより実現される。なおモータ駆動装置101のインバータ制御部43と、電力変換装置100の制御部10は、1つの回路で実現してもよい。
電力変換装置100がモータ駆動装置101に用いられる場合、ブリッジ回路3の制御に必要な母線電圧Vdcが、モータ42の運転状態に応じて変化する。一般に、モータ42の回転数が高回転になる程、インバータ41の出力電圧を高くする必要がある。このインバータ41の出力電圧の上限は、インバータ41への入力電圧、すなわち電力変換装置100の出力である母線電圧Vdcにより制限される。インバータ41からの出力電圧が、母線電圧Vdcにより制限される上限を超えて飽和する領域を過変調領域と呼ぶ。
このようなモータ駆動装置101において、モータ42が低回転の範囲、すなわち過変調領域に到達しない範囲では、母線電圧Vdcを昇圧させる必要はない。一方、モータ42が高回転となった場合には、母線電圧Vdcを昇圧させることで、過変調領域をより高回転側にすることができる。これにより、モータ42の運転範囲を高回転側に拡大できる。
また、モータ42の運転範囲を拡大する必要がなければ、その分、モータ42が備える固定子への巻線の巻数を増やすことができる。巻線の巻数を増やすことにより、低回転の領域では、巻線の両端に発生するモータ電圧が高くなり、その分、巻線に流れる電流が低下するため、インバータ41内のスイッチング素子のスイッチング動作で生じる損失を低減できる。モータ42の運転範囲の拡大と、低回転の領域の損失改善との双方の効果を得る場合には、モータ42の巻線の巻数は適切な値に設定される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置100を用いることによりアーム間の発熱の偏りが低減され、信頼性が高く高出力のモータ駆動装置101を実現できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態2で説明したモータ駆動装置101を備える空気調和機について説明する。
図13は、実施の形態3に係る空気調和機700の構成例を示す図である。空気調和機700は、冷凍サイクル装置の一例であり、実施の形態2のモータ駆動装置101及びモータ42を備える。空気調和機700は、圧縮機構87及びモータ42を内蔵した圧縮機81と、四方弁82と、室外熱交換器83と、膨張弁84と、室内熱交換器85と、冷媒配管86とを備える。空気調和機700は、室外機が室内機から分離されたセパレート型空気調和機に限定されず、圧縮機81、室内熱交換器85及び室外熱交換器83が1つの筐体内に設けられた一体型空気調和機でもよい。モータ42は、モータ駆動装置101により駆動される。
圧縮機81の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構87と、圧縮機構87を動作させるモータ42とが設けられる。圧縮機81、四方弁82、室外熱交換器83、膨張弁84、室内熱交換器85及び冷媒配管86に冷媒が循環することにより、冷凍サイクルが構成される。なお、空気調和機700が備える構成要素は、冷凍サイクルを備える冷蔵庫または冷凍庫といった機器にも適用可能である。
また、実施の形態3では、圧縮機81の駆動源にモータ42が利用され、モータ駆動装置101によりモータ42を駆動する構成例を説明した。しかしながら、空気調和機700が備える不図示の室内機送風機及び室外機送風機を駆動する駆動源にモータ42を適用し、当該モータ42をモータ駆動装置101で駆動してもよい。また、室内機送風機、室外機送風機及び圧縮機81の駆動源にモータ42を適用し、当該モータ42をモータ駆動装置101で駆動してもよい。
また、空気調和機700では、出力が定格出力の半分以下である中間条件、すなわち低出力条件での運転が年間を通じて支配的であるため、中間条件での年間の消費電力への寄与度が高くなる。また、空気調和機700では、モータ42の回転数が低く、モータ42の駆動に必要な母線電圧Vdcは低い傾向にある。このため、空気調和機700に用いられるスイッチング素子は、パッシブな状態で動作させることがシステム効率の面から有効である。従って、パッシブな状態から高周波スイッチング状態までの幅広い運転モードで損失の低減が可能な電力変換装置100は、空気調和機700にとって有用である。上述した通り、インタリーブ方式ではリアクタ2を小型化できるが、空気調和機700では、中間条件での運転が多いため、リアクタ2を小型化する必要がなく、電力変換装置100の構成及び動作の方が、高調波の抑制、電源力率の面で有効である。
また、電力変換装置100は、スイッチング損失を抑制できるため、電力変換装置100の温度上昇が抑制され、不図示の室外機送風機のサイズを小型化しても、電力変換装置100に搭載される基板の冷却能力を確保できる。従って、電力変換装置100は、高効率であると共に4.0kW以上の高出力の空気調和機700に好適である。
また、本実施の形態によれば、電力変換装置100を用いることによりアーム間の発熱の偏りが低減されるため、スイッチング素子の高周波駆動によるリアクタ2の小型化を実現でき、空気調和機700の重量の増加を抑制できる。また、本実施の形態によれば、スイッチング素子の高周波駆動により、スイッチング損失が低減され、エネルギー消費率が低く、高効率の空気調和機700を実現できる。
実施の形態4.
実施の形態1では、電力変換装置100のブリッジ回路3が、2つのスイッチング素子が直列接続されたアームを2つ備えていたが、一方のアームについてはスイッチング素子をダイオードに置き換えることも可能である。
図14は、実施の形態4に係る電力変換装置100aの構成例を示す図である。図14に示す電力変換装置100aは、図1に示す電力変換装置100のブリッジ回路3をブリッジ回路3aに置き換えたものである。ブリッジ回路3aは、ブリッジ回路3からゲート駆動部35,36を削除し、第2のアーム32を第2のアーム32aに置き換えたものである。昇圧動作のみを考えた場合、電力変換装置100aは、第2のアーム32aを2つのダイオード323,324にすることができる。電力変換装置100aは、第2のアーム32aを2つのダイオード323,324にすることで、電力変換装置100と比較して、スイッチング素子321,322およびゲート駆動部35,36を削除できるため、回路コストの低減が可能となる。このように、電力変換装置100aにおいて、ブリッジ回路3aは、ダイオードが並列接続されたスイッチング素子を直列に接続して成るレグを少なくとも1つ以上備えていればよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。