以下、図面を参照して、本発明に係るシミュレーション方法、物理量計算プログラム及び物理量計算装置について説明する。
以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
本実施形態でいう「物理現象」とは、シミュレーションで再現可能な現象を意味する。例えば、自動車のキャビンに関するシミュレーションの場合には、窓ガラスを透過する太陽による日射や、車速に応じて窓ガラス外表面から奪われる熱や空調による空気の吹き出しやキャビン内の熱対流、熱輻射等の熱移動の現象が挙げられる。
本実施形態でいう「物理量」とは、物理現象のシミュレーションでの解析結果となる、温度、熱流束、応力、圧力、流速、その他の値を意味する。
本実施形態でいう「解析領域」とは、物理現象をシミュレーションするために設定した解析モデルの対象領域を意味する。例えば、自動車のキャビンであれば、解析領域は、自動車のボディや窓ガラス等の物体で囲まれるキャビン空間部分となる。
(概略)
まず、本実施形態が、解析精度の悪化を伴わずにソルバ処理における計算負荷の軽減を図る方法について、その方法の概略を説明する。
一般に、数値解析手法においては、分割領域のサイズを大きくすればソルバ処理における計算負荷は軽くなる。分割領域のサイズを大きくするということは、解析領域の分割数を少なくするということである。そのため、分割領域のサイズを大きくすればソルバ処理における計算負荷は軽くなる。したがって、ソルバ処理における計算負荷は解析領域の分割数を少なくすることで軽減される、と言い換えることができる。しかしながら、分割数を少なくすれば、解析精度は悪くなる。
本実施形態においては、以下のようなプリ処理を行うことで、解析領域の分割数を少なくしてソルバ処理における計算負荷を軽減することと、解析領域の分割数の減少による解析精度の悪化を抑制することとを両立する。
本実施形態におけるプリ処理では、解析領域の分割数を少なくするために、まず、Vertex(分割領域の頂点座標)とConnectivity(連結情報)とを必要としない量によって特徴づけられる分割領域での計算用データモデル(以下「第一計算用データモデル」という。)を生成する。次にその分割領域を複数集合させた集合領域での計算用データモデル(以下「第二計算用データモデル」という。)を生成する。集合領域もVertexとConnectivityとを必要としない量によって特徴づけられる。本実施形態において、集合領域を生成するための分割領域が、VertexとConnectivityとを必要としない量によって特徴づけられるため、後述するように、ソルバ処理における計算負荷が軽減される。さらに、後述するように、本実施形態の処理においては、分割領域を複数集合させた集合領域で解析するため、従来の数値解析手法と異なり、解析領域の分割数の削減によってソルバ処理における計算負荷を軽減することと、解析領域の分割数の削減による解析精度の悪化を抑制することとが両立し、さらに解析をより高速で行うことを可能にする。
(原理)
以下、本実施形態が計算負荷を軽減することと解析精度の悪化を抑制することとを両立することについて、詳細を説明する。
本実施形態で用いられる離散化支配方程式は、従来のように分割領域の幾何学的形状を規定する量である座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を含んだ形式で表現されるものではなく、分割領域の幾何学的形状を規定する量である座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない。本実施形態では、以下、幾何学的形状を規定する量である座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を単に「幾何学的形状を規定する量」と呼ぶ。さらに、本実施形態で用いられる離散化支配方程式は、複数の分割領域を集合させた集合領域の幾何学的形状を規定する量をも必要としない。本実施形態で用いられる離散化支配方程式は、従来の幾何学的形状を規定する量を使用する方程式を重み付き残差積分法に基づいて導出する過程で敢えて途中にて留めることによって得ることができる。このような本実施形態で用いられる離散化支配方程式は、分割領域及び集合領域の幾何学的形状を必要としない量で表現され、例えば分割領域の体積と境界面特性量の2つのみに依存する形式とすることができる。また、例えば、本実施形態で用いられる離散化支配方程式は、集合領域の体積と境界面特性量の2つのみに依存する形式とすることができる。
つまり、従来の有限要素法や有限体積法では、前提として解析対象物を微小領域に分割するため、この微小領域の幾何学的形状を規定する量を用いることを前提にして離散化支配方程式の導出をしている。しかし、本実施形態で用いられる離散化支配方程式は、従来のこれらの方法と異なる発想に基づいて導出される。
そして、本実施形態は、この発想に基づいて導出された離散化支配方程式を用いることを特徴とし、従来の数値解析方法と異なり、幾何学的形状を規定する量に依存しない。さらに、本実施形態は、特許文献1に開示も示唆もない、分割領域を集合する集合領域で計算を可能としたことによって、計算時間の短縮等の種々の顕著な効果を奏する。
ここで、分割領域及び集合領域の体積と境界面特性量とが、分割領域の特定の幾何学的形状を規定する量を必要としない量であることについて説明する。なお、幾何学的形状を規定する量を必要としない量とは、VertexとConnectivityとを用いなくとも定義が可能な量である。
例えば、分割領域の体積について考えると、分割領域の体積がある所定の値となるための分割領域の幾何学的形状は複数存在する。つまり、体積がある所定の値をとる分割領域の幾何学的形状は、立方体である場合や球である場合も考えられる。そして、例えば、分割領域の体積は、全分割領域の総和が解析領域全体の体積と一致するという制約条件の下で、例えば分割領域の体積が隣接分割領域との平均距離の3乗にできるだけ比例するような最適化計算により定義することができる。したがって、分割領域の体積は、分割領域の特定の幾何学的形状を必要としない量と捉えることができる。
このような分割領域の体積に関する特徴は、集合領域の体積に関しても同様に存在する。そのため、集合領域の体積は、集合領域の特定の幾何学的形状を規定する量を必要としない量と捉えることができる。
また、分割領域の境界面特性量としては、例えば境界面の面積や、境界面の法線ベクトル、境界面の周長等が考えられるが、これらの分割領域の境界面特性量がある所定の値となるための分割領域の幾何学的形状は複数存在する。そして、例えば、分割領域の境界面特性量は、各分割領域を取り囲む全境界面に対して、法線ベクトルの面積加重平均ベクトルの長さがゼロとなる制約条件の下で、境界面の法線ベクトルの方向を隣接する2つの分割領域のコントロールポイント(図1参照)を結ぶ線分に近づけ、かつ、分割領域を取り囲む全境界面面積の総和が当該分割領域の体積の2分の3乗にできるだけ比例するような最適化計算により定義することができる。したがって、分割領域の境界面特性量は、分割領域の特定の幾何学的形状を規定する量を必要としない量と捉えることができる。このような分割領域の境界面特性量に関する特徴は、集合領域の境界面特性量に関しても同様に存在する。そのため、集合領域の境界面特性量は、集合領域の特定の幾何学的形状を規定する量を必要としない量と捉えることができる。なお、以下、集合領域のコントロールポイントを集合コントロールポイントという。
また、本実施形態において「幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式」とは、代入される値がVertexとConnectivityとを必要としない量のみである離散化支配方程式を意味する。
本実施形態を用いる数値解析手法の場合には、ソルバ処理(本実施形態の物理量計算工程)にて、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式を用いて集合領域における物理量の算出が行われる。このため、離散化支配方程式を解くにあたり、プリ処理にて作成される第一及び第二計算用データモデルにVertexとConnectivityとを含める必要がない。
そして、本実施形態を用いる場合には、幾何学的形状を規定する量を必要としない量として、集合領域の体積と集合領域の境界面特性量とが使用される。このため、プリ処理にて作成される計算用データモデルは、VertexとConnectivityとを持たず、集合領域の体積と、集合領域の境界面特性量と、その他補助データ(例えば、後述する、集合領域の係合情報や集合コントロールポイントの座標等)とを有するものとなる。
このように本実施形態を用いた場合には、前述のように、幾何学的形状を規定する量を必要としない量である集合領域の体積と上記境界面特性量に基づいて各領域における物理量が計算可能とされる。このため、第二計算用データモデルに、集合領域の幾何学的形状を規定する量を持たせることなく物理量を算出することが可能となる。したがって、本実施形態を用いることにより、プリ処理において、少なくとも集合領域の体積と境界面特性量(境界面の面積及び境界面の法線ベクトル)とを有する第二計算用データモデルを作成すれば良くなり、幾何学的形状を規定する量を有する計算用データモデルを作成することなく物理量の計算を行うことが可能となる。
幾何学的形状を規定する量を持たない第二計算用データモデルは、集合領域の幾何学的形状を規定する量を必要としないため、集合領域の幾何学的形状を規定する量に縛られることなく作成することができる。
このため、3次元形状データの修正作業に対する規制も大幅に緩和される。よって、幾何学的形状を規定する量を持たない第二計算用データモデルは、幾何学的形状を規定する量を有する計算用データモデルと比較して遥かに容易に作成できる。したがって、本実施形態によれば、計算用データモデルの作成における作業負担を軽減できる。
また、本実施形態を用いる場合であっても、プリ処理においては、幾何学的形状を規定する量を使用しても構わない。つまり、プリ処理において幾何学的形状を規定する量を用いて分割領域の体積や境界面特性値等を算出しても良い。このような場合であっても、ソルバ処理においては集合領域の体積や境界面特性値があれば物理量の計算が可能であるため、プリ処理において幾何学的形状を規定する量を利用するにしても、集合領域の幾何学的形状に対する制約、例えば分割領域の歪みや捩じれ等に起因する制約がなく、計算用データモデルの作成における作業負担の軽減が可能である。
また、本実施形態を用いることによって、プリ処理において、集合領域の幾何学的形状に対する制約がなくなるため、集合領域を任意の形状に変更させることができる。このため、集合領域の数を増やすことなく、解析領域を実際に解析したい領域に容易にフィッティングさせることが可能となり、計算負荷を増大させることなく解析精度を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態を用いることによって集合領域の分布密度も任意に変更することができるため、必要な範囲で計算負荷の増大を許容しながらさらに解析精度を向上させることも可能である。
本実施形態では、プリ処理において、まず、任意に配置された分割領域の体積、境界面特性量(境界面の面積、境界面の法線ベクトル)及び物理量のやり取りを行う分割領域同士を関連付ける情報を有する分割領域の第一計算用データモデルを作成する。例えば、この物理量のやり取りを行う分割領域同士を関連付ける情報は、隣り合う分割領域同士の結合情報(link)と、隣り合う分割領域同士の距離からなる。そして、このlinkによって関連付けられる分割領域は、必ずしも空間的に隣接されている必要はなく、空間的に離間していても構わない。このようなlinkは、幾何学的形状を規定する量と関連するものではなく、幾何学的形状を規定する量と比較すると、極めて短時間で作成できる。また、後に詳説するが、本実施形態では、必要に応じて、分割領域の内部に配置されるコントロールポイントの座標を、第一計算用データモデルに持たせる場合もある。次に、本実施形態では、プリ処理において、分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成する。そして、集合領域の体積、境界面特性量(境界面の面積、境界面の法線ベクトル)及び物理量のやり取りを行う集合領域同士を関連付ける情報を有する第二計算用データモデルを作成する。この物理量のやり取りを行う集合領域同士を関連付ける情報、隣り合う集合領域同士の結合情報(link)も、分割領域に対する特徴と同様の特徴を有する。また、後に詳説するが、本実施形態では、必要に応じて、集合領域の内部に配置されるコントロールポイントの座標を、第二計算用データモデルに持たせる場合もある。
そして、本実施形態では、プリ処理から、分割領域の体積、境界面特性量及びlink並びにコントロールポイントの座標等を有する分割領域の第一計算用データモデルと、境界条件や初期条件等とをソルバ処理に受け渡す。ソルバ処理では、受け渡されたその第一計算用データモデルに含まれる分割領域の体積、境界面特性量等を使用して離散化支配方程式を解くことによって物理量の算出を行う。
また、本実施形態では、プリ処理から、集合領域の体積、境界面特性量及びlink並びにコントロールポイントの座標等を有する第二計算用データモデルと、境界条件や初期条件等とをソルバ処理に受け渡す。ソルバ処理では、受け渡されたその第二計算用データモデルに含まれる集合領域の体積、境界面特性量等を使用して離散化支配方程式を解くことによって物理量の算出を行う。
そして、本実施形態では、ソルバ処理において、幾何学的形状を規定する量を使用しないで物理量を計算している点が従来の有限体積法と大きく異なり、この点が本実施形態の大きな特徴である。このような特徴は、ソルバ処理にて、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式を用いることによって得られる。
この結果、本実施形態では、ソルバ処理に幾何学的形状を規定する量を受け渡す必要がなくなり、プリ処理において、幾何学的形状を規定する量を持たない計算用データモデルを作成すればよい。したがって、従来の有限体積法と比較して本実施形態では、遥かに容易に計算用データモデルを作成でき、計算用データモデルの作成における作業負担を軽減できる。
まず、本実施形態を用いた数値解析手法における数値解析の処理の流れを簡単に説明する。
前述したように、本実施形態を用いた数値解析手法は、解析領域を複数の分割領域に分割する処理(以下「複数の分割領域に分割する処理」という)を有する。さらに、本数値解析手法は、分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された分割領域での支配方程式に基づき、各分割領域の体積と隣り合う分割領域同士の特性を示す分割領域特性量とを分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する第一計算用データモデルを生成する処理(以下「分割領域での第一計算用データモデルを生成する処理」という)を有する。
さらに、本数値解析手法は、分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成する処理(以下「集合領域を生成する処理」という)を有する。さらに、本数値解析手法は、集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された集合領域での支配方程式に基づき、各集合領域の体積と隣り合う集合領域同士の特性を示す集合領域特性量とを集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する第二計算用データモデルを生成する処理(以下「集合領域での第二計算用データモデルを生成する処理」という)を有する。さらに、本数値解析手法は、解析領域での物性値と、集合領域での計算データモデルとに基づいて、物理量を計算する処理を有する。
(複数の分割領域に分割する処理)
第一計算用データモデルを作成するための解析領域を複数の分割領域に分割する処理について説明する。解析領域を複数の分割領域に分割する処理では、解析領域を幾何学的形状を規定する量を使用しないセルで細かく分割する。
(分割領域での第一計算用データモデルを生成する処理)
分割領域での第一計算用データモデルを生成する処理について説明する。なお、この分割領域での第一計算用データモデルを生成する処理は、特許文献1で開示されている処理と同様である。
図1において、セルR1,R2,R3・・・は、解析領域を分割して得られる分割領域であり、各々が体積Va,Vb,Vc・・・を有している。また、境界面Eは、セルR1とセルR2との間において物理量の交換が行われる面であり、本実施形態における境界面に相当する。また、面積Sabは、境界面Eの面積を示し、本実施形態における境界面特性量の1つである。また、[n]abは、境界面Eの法線ベクトルを示し、本実施形態における境界面特性量の1つである。
また、コントロールポイントa,b,c・・・は、各セルR1,R2,R3の内部に配置されており、図1においては各セルR1,R2,R3・・・の重心位置に配置されている。ただし、コントロールポイントa,b,c・・・は、必ずしも各セルR1,R2,R3・・・の重心位置に配置される必要はない。また、αは、コントロールポイントaからコントロールポイントbまでの距離を1とした場合におけるコントロールポイントaから境界面Eまでの距離を示し、境界面Eがコントロールポイントaとコントロールポイントbとを結ぶ線分のどの内分点に存在するかを示す比率である。なお、コントロールポイントaからコントロールポイントbまでの距離は、隣り合う分割領域同士の距離の一例である。
なお、境界面は、セルR1とセルR2との間のみに限らず、隣り合う全てのセル間に存在する。そして、境界面の法線ベクトル及び境界面の面積も、境界面ごとに与えられる。
そして、実際の分割領域での第一計算用データモデルは、各コントロールポイントa,b,c・・・の配置データと、各コントロールポイントa,b,c・・・が存在するセルR1,R2,R3・・・の体積Va,Vb,Vc・・・を示す体積データと、各境界面の面積を示す面積データと、各境界面の法線ベクトル(以下「法線ベクトル」という。)を示す法線ベクトルデータとを有するデータ群として構築されている。
このことは、本数値解析手法の分割領域での第一計算用データモデルは、セルR1,R2,R3・・・の体積Va,Vb,Vc・・・と、隣り合うセルR1,R2,R3・・・同士の境界面の特性を示す境界面特性量である境界面の面積と、隣り合うセルR1,R2,R3・・・同士の境界面の特性を示す境界面特性量である境界面の法線ベクトルとを有して定義されていることを意味する。
なお、各セルR1,R2,R3・・・は、コントロールポイントa,b,c・・・を有している。このため、セルR1,R2,R3・・・の体積Va,Vb,Vc・・・は、コントロールポイントa,b,c・・・が仮想的に占める空間(コントロールボリューム)の体積として捉えることができる。
また、本数値解析手法の第一計算用データモデルは、必要に応じて、境界面が挟まれたコントロールポイント同士を結ぶ線分のどの内分点に存在するかの比率αを示す比率データを有する。
以下では、前述の第一計算用データモデルを用いて解析領域の各セルにおける流速を求める物理量計算例について説明する。なお、ここでは、各コントロールポイントにおける流速を各セルにおける流速として求める。
まず、本物理量計算において本数値解析手法は、流体解析の場合、下式(1)で示すナビエ・ストークスの式と、下式(2)で示す連続の式とを用いる。
なお、式(1),(2)において、tが時間を示し、xi(i=1,2,3)がカーテシアン系における座標を示し、ρが流体密度を示し、ui(i=1,2,3)が流体の流速成分を示し、Pが圧力を示し、μが流体の粘性係数を示し、添字i(i=1,2,3),j(j=1,2,3)がカーテシアン座標系における各方向成分を示している。また、添字jに関しては総和規約に従うものとする。
そして、式(1),(2)を、重み付き残差積分法に基づいて、分割領域のコントロールボリュームの体積に対して積分して示すと、式(1)が下式(3)のように示され、式(2)が下式(4)のように示される。
なお、式(3),(4)において、Vがコントロールボリュームの体積を示し、∫VdVが体積Vに関する積分を示し、Sがコントロールボリュームの面積を示し、∫SdSが面積Sに関する積分を示し、[n]がSの法線ベクトルを示し、ni(i=1,2,3)が法線ベクトル[n]の成分を示し、∂/∂nが法線方向微分を示している。
ここで、説明を簡単化するために、流体の密度ρと粘性係数μを定数とする。ただし、以下の定数化は、流体の物性値が、時間、空間、温度等によって変化する場合に対して拡張可能である。
そして、図1のコントロールポイントaについて、境界面Eの面積Sabについて離散化し、代数方程式による近似式に変換すると、式(3)が下式(5)、式(4)が下式(6)のように示される。
ここで、添字abが付く、[n]ab,[u]ab,uiab,niab,Pab,(∂ui/∂n)abは、コントロールポイントaとコントロールポイントbとの間の境界面E上における物理量であることを示す。また、niabは[n]abの成分である。また、mは、コントロールポイントaと結合関係(境界面を挟む関係)にある全てのコントロールポイントの数である。
そして、式(5),(6)をVa(コントロールポイントaのコントロールボリュームの体積)で割ると、式(5)が下式(7)のように示され、式(6)が下式(8)のように示される。
ここで、下式(9)とする。
すると、式(7)が下式(10)のように示され、式(8)が下式(11)のように示される。
式(10),(11)において、[u]ab、uiab、Pab、(∂ui/∂n)abは、コントロールポイントaとコントロールポイントb上の物理量の重み付け平均(移流項については、風上性を考慮した重み付け平均)により近似的に求められ、コントロールポイントa,b間の距離及び向きと、その間に存在する境界面Eとの位置関係(上記比率α)と、境界面Eの法線ベクトルの向きに依存して決定される。ただし、[u]ab、uiab、Pab、(∂ui/∂n)abは、境界面Eの幾何学的形状を規定する量には無関係な量である。 また、式(9)で定義されるφabも(面積/体積)という量であり、コントロールボリュームの幾何学的形状を規定する量には無関係な量である。
つまり、このような式(10)、(11)は、セル形状を規定する幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用して物理量が算出可能な、重み付き残差積分法に基づく演算式である。
このため、物理量計算(ソルバ処理)に先立って前述の第一計算用データモデルを作成し、物理量計算において当該第一計算用データモデルと、式(10)、(11)の離散化支配方程式とを用いることによって、物理量計算においてコントロールボリュームの幾何学的形状を規定する量を全く使用せずに、流速の計算を行うことができる。
このように、物理量計算において幾何学的形状を規定する量を全く使用せずに流速の計算が行えることから、第一計算用データモデルに幾何学的形状を規定する量を持たせる必要がなくなる。よって、第一計算用データモデルの作成にあたり、セルの幾何学的形状に縛られる必要がなくなるため、セルの形状を任意に設定することができる。このため、本数値解析手法によれば、前述のように3次元形状データの修正作業に対する規制を大幅に緩和することができる。
なお、実際に式(10)、(11)を解くにあたり、[u]ab、uiab、Pab等の境界面E上の物理量は、通常、線形補間によって補間される。例えば、コントロールポイントaの物理量をψa、コントロールポイントbの物理用をψbとすると、境界面E上の物理量ψabは、下式(12)によって求めることができる。
また、物理量ψabは、境界面が挟まれたコントロールポイント同士を結ぶ線分のどの内分点に存在するかの比率αを用いることによって、下式(13)によって求めることもできる。
したがって、第一計算用データモデルが比率αを示す比率データを有している場合には、式(13)を用いて境界面E上の物理量をコントロールポイントaとコントロールポイントbとからの離間する距離に応じた重み付け平均を用いて算出することができる。
また、連続体モデルの方程式(ナビエ・ストークスの式等)には、式(1)に示すように、1階の偏導関数(偏微分)が含まれる。
ここで、連続体モデルの方程式の微係数を部分積分、ガウスの発散定理、あるいは一般化されたグリーンの定理を利用して、体積分を面積分に変換し、微分の次数を下げる。これによって1次微分は0次微分(スカラー量またはベクトル量)とすることができる。
例えば一般化されたグリーンの定理では、物理量をψとすると、下式(14)という関係が成り立つ。
なお、式(14)において、ni(i=1、2、3)は、表面S上の単位法線ベクトル[n]のi方向の成分である。
連続体モデルの方程式の1次微分項は、体積分から面積分の変換により、境界面上ではスカラー量またはベクトル量として取り扱われる。そして、これらの値は、前述の線形補間等によって、各コントロールポイント上の物理量から補間できる。
また、連続体モデルの方程式によっては、2階の偏導関数が含まれる場合もある。
式(14)の被積分関数をさらに1階微分した式は下式(15)となり、連続体モデルの方程式の2次微分項は、体積分から面積分の変換により境界面E上では下式(16)となる。
なお、式(15)において∂/∂nは法線方向微分を示し、式(16)において∂/∂nabは、[n]ab方向微分を示す。
つまり、連続体モデルの方程式の2次微分項は、体積分から面積分の変換により、物理量ψの法線方向微分(Sabの法線[n]ab方向への微分)に、[n]の成分niab、njabを乗じた形となる。
ここで式(16)中の∂ψ/∂nabは、下式(17)と近似される。
なお、コントロールポイントaとコントロールポイントbとのコントロールポイント間ベクトル[r]abは、コントロールポイントaの位置ベクトル[r]aとコントロールポイントbの位置ベクトル[r]bから下式(18)のように定義される。
したがって、境界面Eの面積がSabであるため、式(16)は下式(19)となり、これを利用して式(16)を計算できる。
なお、式(16)の導出にあたり、次のことがわかる。
すべての線形偏微分方程式は、定数と、1次、2次、その他の偏導関数に係数を乗じた項の線形和で表わされる。式(15)から式(19)において、物理量ψをψの1次偏導関数に置き換えると、より高次の偏導関数の体積分を、式(14)のように低次の偏導関数の面積分により求めることができる。この手順を、低次の偏微分から順次繰り返すと、線形偏微分方程式を構成するすべての項の偏導関数は、コントロールポイントの物理量ψと、式(12)又は式(13)で計算される境界面上のψであるψabと、式(18)で定義されるコントロールポイント間ベクトルから求められるコントロールポイント間距離と、境界面Eの面積Sab、境界面Eの法線ベクトルの成分niabとnjabから、すべて求めることができる。
本数値解析手法において物理量計算にあたり幾何学的形状を規定する量を必要としないことは前述した。このため、第一計算用データモデルの作成にあたり、コントロールボリュームの体積と、境界面の面積及び法線ベクトルとを、幾何学的形状を規定する量を使用しないで求めれば、式(10)と式(11)との離散化支配方程式を用いて、コントロールボリュームの幾何学的形状であるセルの幾何学的形状を全く使用せずに、流速の計算を行うことができる。
ただし、本数値解析手法においては、必ずしも、コントロールボリュームの体積と、境界面の面積及び法線ベクトルとを、コントロールボリュームの具体的な幾何学的形状を使用しないで求める必要はない。このように、ソルバ処理において幾何学的形状を規定する量を利用しないので、コントロールボリュームの具体的な幾何学的形状、具体的にはVertexとConnectivityとを利用するとしても、従来の有限要素法、有限体積法のような分割領域に関わる制約、すなわち分割領域の歪みや捩じれに対する制約がないため、前述のように容易に計算用データモデルの作成ができる。
なお、前述の説明においては、ナビエ・ストークスの式及び連続の式から重み付き残差積分法に基づいて導出した離散化支配方程式を用いる物理量の計算例について説明したが、本数値解析手法において用いられる離散化支配方程式はこれに限られるものではない。
つまり、種々の方程式(質量保存の方程式、運動量保存の方程式、エネルギ保存の方程式、移流拡散方程式、及び波動方程式等)から重み付き残差積分法に基づいて導出されると共に、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用して物理量を算出可能な離散化支配方程式であれば本数値解析手法に用いることができる。
そして、このような離散化支配方程式の特性によって、従来の有限要素法や有限体積法のようにいわゆるメッシュを必要としない、メッシュレスでの計算が可能となる。また、たとえ、プリ処理において、セルの幾何学的形状を規定する量を利用するとしても、従来の有限要素法、有限体積法、ボクセル法のようなメッシュに対する制約がないため、第一計算用データモデルの作成に伴う作業負荷を軽減できる。
本実施形態では、質量保存の方程式、運動量保存の方程式、エネルギ保存の方程式、移流拡散方程式、及び波動方程式から、重み付き残差積分法に基づいて、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式が導出可能である。そのため、本数値解析手法において他の支配方程式を用いることができる。これについては、特許文献1に記載した理由と同様であるため、説明を省略する。
(集合領域を生成する処理)
次に、本数値解析手法の第二計算用データモデルを作成するための分割領域から集合領域を生成する処理について説明する。集合領域を生成する処理では、セルの集合和により集合領域を作成する。以下、集合領域は、ドメインと呼ぶこともある。ドメインが作成されることによって、解析領域はドメイン分割された状態となる。
図2で、集合領域を生成する処理では、解析領域内に自動生成されたコントロールボリューム(セル)を集合させ、新たに設定されたコントロールボリュームを、ドメインと定義する。ドメインは、コントロールボリュームであり、セルの集合和である。
図3に示される複数のドメインのうち、任意のドメインをドメインAとする。ドメインA内に存在するセルの総数をNVAとした場合、ドメインAの体積VAは式(20)で表され、ドメインAのコントロールポイントの座標ベクトル[r]Aは式(21)で表される。以下の式(20)、式(21)により、セルの集合和を計算し、ドメインを設定する。
式(20)、(21)において、A,B,・・・は、ドメインを表す添え字である。
ここで、ドメインを設定した後に、設定したドメインを集合させることによって、新たにドメインを設定するようにしてもよい。
図4に示されるように、複数のドメインの集合和が設定される。図4に示される例では、細い線によってドメインが示されている。
図5に示されるように、ドメインを複数集合させることによって、新たにドメインが設定される。新たに設定されたドメインは、太線によって示されている。
新たに設定されたドメインも、コントロールボリュームであり、ドメインの集合和である。新たに設定されたドメインについても、式(20)、式(21)により、新たに設定されたドメインの体積と、新たに設定されたドメインのコントロールポイントの座標ベクトルが計算される。図6に示されるように、コントロールポイントが示される。そして、新たに設定されたドメインは、ドメインと同様に取り扱われる。
セルの集合和によって作成されたドメインをドメイン1とし、ドメイン1の集合和によって作成されたドメインをドメイン2とし、ドメイン2の集合和によって作成されたドメインをドメイン3とする。解析領域に自動生成されたコントロールボリューム(セル)に基づいて、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型にドメインを設定できる。
要求される計算精度に合わせて、コントロールボリューム(セル)から、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型にドメインを設定できる。ここで、ドメイン1から、ドメイン2やドメイン3を経ることなく、最終ドメインを設定してもよい。コントロールボリューム(セル)から、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型にドメインを設定した場合や、ドメイン1から、ドメイン2を経ることなく、最終ドメインを設定した場合に、最初の解析領域の境界形状のセル分割精度が失われない。
従来の有限体積法や有限要素法では、初期の分割メッシュを集合させると、集合させたドメインの境界形状は複雑な多面となるため、計算を実行できない。具体的には、現状では、有限体積法では二十面体が限度であり、有限要素法では6面体を超える多面体の要素内補間関数を定義できない。このように、従来の方法においては、初期の分割メッシュを集合するという思想自体が存在しない。このことから、本実施形態は、分割領域から集合領域を形成することの動機づけも示唆もないところから着想され、従来の方法では不可能で、顕著な効果を奏する。
自動生成されたコントロールボリューム(セル)では、セル間でのマスバランス(質量保存)や運動量保存、エネルギ保存などの物理量の保存則を満足させながら数値解析ができる。従って、コントロールボリューム(セル)から、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型に設定されたドメインでも、ドメイン1から、ドメイン2やドメイン3を経ることなく、最終ドメインと階層構造型に設定された場合でも、ドメイン間での物理量の保存則は満足される。
解析領域内に自動生成されたコントロールボリューム(セル)を集合させることによって、新たにドメインを設定するための、コントロールボリューム(セル)の集合方法について説明する。
図7に示されるように、解析領域を直交格子状の領域に粗く分割し、その直交格子内にコントロールポイントの座標が含まれるセルを集合させる。
図8に示されるように、解析領域内に、ドメインのコントロールポイントを設定する。ドメインのコントロールポイントから、予め指定された半径の球体内にコントロールポイントの座標が含まれるセルを集合させる。半径を徐々に拡大し、解析領域内のセルを全て、ドメインのいずれかに集合させる。
また、ボクセル法で、解析領域を包含する領域にボクセルを生成し、そのボクセルをドメインとしてもよい。この場合、ボクセル内にコントロールポイントの座標が含まれるセルを集合させる。
ここでは、セルの集合方法として、三例について説明したが、この例に限られない。例えば、ここに示した例以外の集合方法が使用されてもよい。
解析領域内に自動生成されたコントロールボリューム(セル)を、コントロールボリューム(セル)の集合方法にしたがって集合させることによって新たにドメインを設定した場合には、最初の解析領域の境界形状のセル分割精度が失われない。このため、解析領域内に自動生成されたコントロールボリューム(セル)を、コントロールボリューム(セル)の集合方法にしたがって集合させることによって新たに設定されたドメイン間で、物理量の保存則を満足させながら数値解析ができる。
(集合領域での第二計算用データモデルを生成する処理)
さらに、集合領域での第二計算用データモデルを生成する処理について説明する。
図9は、発明の数値解析手法の集合領域における境界面特性量の一例を示す概念図である。図9は解析領域を分割する複数の分割領域と、複数の集合領域とを表す。図9において、実線で囲まれたドメインA及びドメインBは、集合領域である。図9において、破線で囲まれた図形は分割領域である。例えば、セルR201〜セルR208は、分割領域である。ドメインAは、セルR201〜セルR208を含む複数の分割領域を集合して得られる集合領域である。境界面EABは、ドメインAとドメインBとの間において物理量の交換が行われる面であり、第二計算用データモデルにおける境界面に相当する。また、面積SABは、境界面EABの面積を示し、本実施形態における集合領域の境界面特性量の1つである。
[n]a1〜[n]a8の各々は、境界面EABで互いに接するセル同士の境界面の特性を示す量である法線ベクトルである。
図10のドメインA及びドメインBは、図9のドメインA及びドメインBである。コントロールポイントAc及びコントロールポイントBcは、それぞれドメインA及びドメインBの内部に配置されている。
ドメインBに属し境界面EABに接するセルbの境界面の総数をNSABとすると、ドメインAとドメインBとの間の境界面の面積SABと、ドメインAとドメインBとの間の境界面の法線ベクトル[n]ABは、式(22)、式(23)で計算される。ここで、Sabは、ドメインBに属し境界面EABに接するセルbの境界面の面積である。
図11に示される例では、ドメインAが解析領域のうちの外部空間との境界に接している場合を示す。この場合、図12に示されるように、ドメインBが解析領域の外部に存在すると仮定して、ドメインBに接するセルaの境界面の集合和を計算することによって、式(22)、式(23)と同様に、ドメインAとドメインBとの間の境界面の面積SABと、ドメインAとドメインBとの間の境界面の法線ベクトル[n]ABとを導出できる。
前述した数値解析手法では、解析領域内に自動生成されたコントロールボリューム(セル)を集合させることによって、ドメインを生成した。
さらに、数値解析手法では、セルaとセルbとの間の境界面Sabにおける境界面特性量(境界面の面積Sab、境界面の法線ベクトル[n]ab)を用いて、ドメインAとドメインBとの間の境界面SABに関して、集合和を計算することによって、ドメインAとドメインBとの間の境界面SABにおける境界面特性量(境界面の面積SAB、境界面の法線ベクトル[n]AB)を求めた。つまり、幾何学的形状を規定する量を使用しないセルによる連続体の数値解析手法を、ドメインに対しても全く同じ計算手法として適用した。
さらに、解析領域内に自動生成されたコントロールボリューム(セル)に基づいて、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型にドメインを設定することができる。したがって、連続体の数値解析手法を、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型に設定されたドメイン全てに対して適用できる。
コントロールボリューム(セル)から一度に最終ドメインを設定したときも、コントロールボリューム(セル)からドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型にドメインを設定したときも、最初の解析領域の境界形状のセル分割精度は失われない。これは、熱流体解析のように伝熱面積を重要視する数値解析では、非常に大きなメリットである。
解析領域内に自動的に生成されたコントロールボリューム(セル)の分割数が、数10個〜数1000個のオーダー以下の粗さの場合、その粗い分割数のセルを用いた数値解析は、解析結果に誤差を多く含むおそれがある。
一方、数1000万個〜数億個以上のオーダーのセル分割による数値解析は、非常に高精度であるが、スーパーコンピュータを用いて行う計算レベルであり、大型のメモリ容量と、HDD容量との計算資源が必要であり、長大な計算時間、解析結果処理のための多大な計算コストの増大を招く。
しかし、数1000万個〜数億セル以上のオーダーのセル分割に関しては、セルの自動生成だけなら、比較的低容量のメモリを備えるコンピュータで、短時間で実行できる。
そこで、数1000万個〜数億個以上のオーダーのセル分割を、解析領域内で行い、そのセル分割に基づいて、ドメイン1、ドメイン2、ドメイン3、・・・、最終ドメインと階層構造型にドメイン分割を行うこともできる。ドメイン分割数が、数千〜数万個のオーダーであれば、比較的低容量のメモリを備えるコンピュータで短時間に数値解析を実行できる。
この場合、セルを集合させたドメインの境界形状は非常に複雑な多面となるが、幾何学的形状を規定する量を使用しないセルによる連続体の数値解析手法を用いることによって、解析領域の境界形状のセル分割精度を維持した状態で、連続体の数値解析を、比較的低メモリのコンピュータで、解析結果に含まれる誤差を問題とならない程度に抑制しながら、短時間に実行できる。
次に、前述の第二計算用データモデルを用いて解析領域の集合領域における流速を求める物理量計算例について説明する。なお、ここでは、各集合コントロールポイントにおける流速を各集合領域における流速として求める。
第二計算用データモデルを用いる場合であっても、第一計算用データモデルを用いる場合と同様に、まずは、式(1)及び式(2)によって表されるナビエ・ストークスの式及び連続の式を重み付き残差積分法に基づいて集合領域の体積に対して積分する。
その結果、式(3)及び(4)が導出される。ただし、式(3)及び(4)において、第一計算用データモデルを用いる場合と異なり、Vが集合領域の体積を示し、∫VdVが集合領域の体積Vに関する積分を示し、Sが集合領域の面積を示し、∫SdSが集合領域の境界面Sに関する積分を示し、[n]が集合領域の境界面Sの法線ベクトルを示し、ni(i=1,2,3)が集合領域の境界面Sの法線ベクトル[n]の成分を示し、∂/∂nが集合領域の境界面Sの法線方向微分を示す。
第一計算用データモデルの場合と同様に、以下、説明を簡単化するために、流体の密度ρと粘性係数μを定数とする。ただし、第一計算用データモデルの場合と同様に、以下の定数化は、流体の物性値が、時間、空間、温度等によって変化する場合に対して拡張可能である。
集合コントロールポイントについて、図9と図10に示すように、境界面EABの面積SABについて離散化し、代数方程式による近似式に変換すると、式(3)が下式(24)、式(4)が下式(25)のように示される。
ここで、添字ABが付く、[n]AB,[u]AB,uiAB,niAB,PAB,(∂ui/∂n)ABは、集合領域Aと集合領域Bとの間の境界面EAB上における物理量であることを示す。また、niABは[n]ABの成分である。また、mAは、集合領域Aと結合関係(境界面を挟む関係)にある全ての集合コントロールポイントの数である。
そして、式(24),(25)をVA(集合領域Aの体積)で割ると、式(24)が下式(26)のように示され、式(25)が下式(27)のように示される。
ここで、第一計算用データモデルの場合と同様に、ここで、下式(28)の置換をおこなう。
すると、式(26)が下式(29)のように示され、式(27)が下式(30)のように示される。
式(29),(30)において、[u]AB、uiAB、PAB、(∂ui/∂n)ABは、集合コントロールポイントAと集合コントロールポイントB上の物理量の重み付け平均(移流項については、風上性を考慮した重み付け平均)により近似的に求められ、集合コントロールポイントA,B間の距離及び向きと、その間に存在する集合領域の境界面EABとの位置関係(上記比率α)と、集合領域の境界面EABの法線ベクトルの向きに依存して決定される。ただし、[u]AB、uiAB、PAB、(∂ui/∂n)ABは、集合領域の境界面EABの幾何学的な形状を規定する量には無関係な量である。
また、式(28)で定義されるφABも(面積/体積)という量であり、集合領域のコントロールボリュームの幾何学的形状を規定する量には無関係な量である。
つまり、このような式(29)、(30)は、集合領域の形状を規定するVertexとConnectivityを必要としない量のみを使用して物理量が算出可能な、重み付き残差積分法に基づく演算式である。
このため、物理量計算(ソルバ処理)に先立って前述の第二計算用データモデルを作成し、物理量計算において当該計算用データモデルと、式(29),(30)の離散化支配方程式とを用いることによって、物理量計算において集合領域の幾何学的形状を規定する量を全く使用せずに、流速の計算を行うことが可能である。
このように、物理量計算において集合領域の形状を規定するVertexとConnectivityとを全く使用せずに流速の計算が行えることから、第一計算用データモデルと同様に、第二計算用データモデルにおいても幾何学的形状を規定する量を持たせる必要がなくなる。
なお、実際に式(29),(30)を解くにあたり、[u]ABやPAB等の境界面EAB上の物理量は、第一計算用データモデルでの計算式(12)〜(19)において、物理量Ψを分割領域のコントロールポイントの物理量から集合領域のコントロールポイントの物理量に置き換え、分割領域の境界面の面積と法線ベクトルを集合領域の境界面の面積(22)式と法線ベクトル(23)式に置き換え、分割領域のコントロールポイント間の距離(18)式において分割領域のコントロールポイントの位置(座標)ベクトルを集合領域のコントロールポイントの位置(座標)ベクトル(21)式に置き換えることで、第一計算用データモデルと同様に計算することができる。
次に、物理量計算にあたり、物理量の保存則が満足される条件について説明する。以下、まずは本数値解析における第一計算用データモデルを用いた計算において物理量の保存則が満足される条件を説明する。
第一計算用データモデルを用いた計算において、分割領域の質量保存則を表す連続の式(6)式におけるコントロールポイント間の分割領域の境界面の面積は、コントロールポイントa側から見てもコントロールポイントb側から見ても等しいとすると、コントロールポイント間の質量流束(ρ[n]・[u])・Sは、コントロールポイントa側とコントロールポイントb側で正負が逆で絶対値が等しくなる。従って、(6)式を解析領域内の全分割領域に対して総和を取ると、分割領域間の質量流束は差し引きゼロとなりキャンセルされ、計算する解析領域全体に対して、流入する質量と流出する質量が等しいことを示す。
よって、計算する解析領域全体についての質量保存則を満足するためには、分割領域の2つのコントロールポイント間の境界面の面積が一致するという条件及び分割領域の境界面の法線ベクトルが一方のコントロールポイント側から見た場合と他方のコントロールポイント側から見た場合とで正負が逆で絶対値が一致するという条件が必要である。
また、質量保存則を満足するためには、下式(31)に示される分割領域のコントロールボリュームの占める体積の総和が解析領域の全体積Vtotalと一致するという条件が必要である。なお、解析領域内の分割領域の総数はNである。
なお、ここでは、質量保存の式に対して説明を行ったが、保存則は、連続体の運動量やエネルギに対しても成立しなければならない。これらの物理量に対しても、解析領域内の全分割領域に対して総和を取ることによって、保存側が満足されるためには、解析領域内の全分割領域のコントロールボリュームの体積の総和が解析領域の全体積と一致するという条件と、2つのコントロールポイント間の境界面の面積が一致する条件及び分割領域の境界面の法線ベクトルが一方のコントロールポイント側から見た場合と他方のコントロールポイント側から見た場合とで絶対値が一致する(正負逆符号)という条件とが必要であることが分かる。
また、保存則を満たすためには、図13に示すように、分割領域のコントロールポイントaの占めるコントロールボリュームを考えた場合に、コントロールポイントaを通り、任意の向きの単位第一法線ベクトル[n]pを持つ無限に広い投影面Pを考えたときに下式(32)が成り立つという条件が必要である。単位法線ベクトルは、単位長さの法線ベクトルである。
なお、図13及び式(32)において、Siが境界面Eiの面積、[n]iが境界面Eiの単位第一法線ベクトル、mがコントロールボリュームの面の総数を示す。
式(32)は、コントロールボリュームを構成する多面体が、閉包空間を構成することを示す。この式(32)は、コントロールボリュームを構成する多面体の一部が凹んでいる場合であっても成立する。
また、多面体の1つの面を微小面dSとし、mを∞とする極限を取ると、下式(33)となり、図14に示すような閉包曲面体についても成り立つことが分かる。
式(32)が成り立つという条件は、ガウスの発散定理や、式(14)に示す一般化されたグリーンの定理が成り立つために必要な条件である。
そして、一般化されたグリーンの定理は、連続体の離散化のための基本となる定理である。したがって、グリーンの定理にしたがって体積分を面積分に変形し離散化させる場合において、保存則を満足させるためには式(32)が成り立つという条件は必須となる。
このように、前述の第一計算用データモデル及び物理量計算を用いて数値解析を行う際に、物理量の保存則が満足されるためには、以下の3つの条件(以下「第一計算用条件」という。)が必要となる。
(a1)全コントロールポイントのコントロールボリュームの体積(全分割領域の体積)の総和が解析領域の体積と一致する。
(b1)2つのコントロールポイント間の境界面の面積が一致する及び第一法線ベクトルが一方のコントロールポイント側(境界面を挟む一方の分割領域)から見た場合と他方のコントロールポイント側(境界面を挟む他方の分割領域)から見た場合とで絶対値が一致する。
(c1)コントロールポイントを通り(分割領域を通り)、任意の向きの単位第一法線ベクトル[n]pを持つ無限に広い投影面Pを考えたときに式(32)が成り立つ。
第二計算用データモデルを用いた計算において、集合領域の質量保存則を表す連続の式(25)式における集合コントロールポイント間の集合領域の境界面の面積は、集合コントロールポイントA側から見てもコントロールポイントB側から見ても等しいとすると、集合コントロールポイント間の質量流束は、集合コントロールポイントA側と集合コントロールポイントB側で正負が逆で絶対値が等しくなる。従って、(25)式を解析領域内の全集合領域に対して総和を取ると、集合領域間の質量流束は差し引きゼロとなりキャンセルされ、計算する解析領域全体に対して、流入する質量と流出する質量が等しいことを示す。
よって、計算する解析領域全体についての質量保存則を満足するためには、集合領域の2つのコントロールポイント間の境界面の面積が一致するという条件及び集合領域の境界面の法線ベクトルが一方のコントロールポイント側から見た場合と他方のコントロールポイント側から見た場合とで正負が逆で絶対値が一致するという条件が必要である。
また、質量保存則を満足するためには、下式(34)に示される集合領域のコントロールボリュームの占める体積の総和が解析領域の全体積Vtotalと一致するという条件が必要である。解析領域内の集合領域の総数をNDとする。
なお、ここでは、質量保存の式に対して説明を行ったが、保存則は、連続体の運動量やエネルギに対しても成立しなければならない。これらの物理量に対しても、全集合コントロールポイントに対して足し加えることによって、保存側が満足されるためには、全集合コントロールポイントの集合コントロールボリュームの占める体積が解析領域の全体積と一致するという条件と、2つの集合コントロールポイント間の境界面の面積が一致する条件及び第二法線ベクトルが一方の集合コントロールポイント側から見た場合と他方の集合コントロールポイント側から見た場合とで絶対値が一致する(正負逆符号)という条件とが必要であることが分かる。
また、保存則を満たすためには、図15に示すように、集合コントロールポイントAの占める集合コントロールボリュームを考えた場合に、集合コントロールポイントAを通り、任意の向きの単位第二法線ベクトル[N]Pを持つ無限に広い投影面Pdを考えたときに下式(35)が成り立つという条件が必要である。単位第二法線ベクトルは、単位長さの第二法線ベクトルである。
なお、式(35)において、Qiがドメインのひとつの境界面Ediの面積、[N]iが境界面Ediの単位第二法線ベクトル、Mが集合コントロールボリュームの面の総数を示す。なお、添え字のiは1〜Mの整数である。
式(35)は、集合コントロールボリュームを構成する多面体が、閉包空間を構成することを示す。この式(35)は、集合コントロールボリュームを構成する多面体の一部が凹んでいる場合であっても成立する。
また、多面体の1つの面を微小面dQとし、Mを∞とする極限を取ると、下式(36)となり、図16に示すような閉包曲面体についても成り立つことが分かる。
式(35)が成り立つという条件は、ガウスの発散定理や、式(14)に示す一般化されたグリーンの定理が成り立つために必要な条件である。
そして、一般化されたグリーンの定理は、連続体の離散化のための基本となる定理である。したがって、グリーンの定理にしたがって体積分を面積分に変形し離散化させる場合において、保存則を満足させるためには式(35)が成り立つという条件は必須となる。
このように、前述の第二計算用データモデル及び物理量計算を用いて数値解析を行う際に、物理量の保存則が満足されるためには、以下の3つの条件(以下「第二計算用条件」という。)が必要となる。
(a2)全集合領域の体積の総和が解析領域の体積と一致する。
(b2)2つの集合コントロールポイント間の境界面の面積が一致する及び第二法線ベクトルが一方の集合コントロールポイント側(境界面を挟む一方の集合領域)から見た場合と他方の集合コントロールポイント側(境界面を挟む他方の集合領域)から見た場合とで絶対値が一致する。
(c2)集合コントロールポイントを通り(集合領域を通り)、任意の向きの単位集合第二法線ベクトル[N]Pを持つ無限に広い投影面Pdを考えたときに上式(35)が成り立つ。
つまり、保存則を満足させる場合には、これらの条件を満足するように第一及び第二計算用データモデルを作成する必要がある。ただし、前述のように本数値解析手法においては、計算用データモデルの作成にあたり、分割領域のセル形状を任意に変形することができ、その分割領域セルを集合和させることにより集合領域を作成することから、容易に上記3つの条件を満足するように第一及び第二計算用データモデルを作成することができる。
このように、本数値解析手法においては、第一計算用データモデルだけでなく、第一計算用データモデルよりも解析領域の分割数が少ない第二計算用データモデルも保存則を満足する。そのため、本数値解析手法は、解析領域の分割数が少なくても解析精度が悪くならない、という特徴を有する。
なお、前述の説明においては、ナビエ・ストークスの式及び連続の式から重み付き残差積分法に基づいて導出した離散化支配方程式を用いる物理量の計算例について説明したが、本数値解析手法において用いられる離散化支配方程式はこれに限られるものではない。
つまり、種々の方程式(質量保存の方程式、運動量保存の方程式、エネルギ保存の方程式、移流拡散方程式、及び波動方程式等)から重み付き残差積分法に基づいて導出されると共に、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用して物理量を算出可能な離散化支配方程式であれば本数値解析手法に用いることができる。
そして、このような離散化支配方程式の特性によって、従来の有限要素法や有限体積法のようにいわゆるメッシュを必要としない、メッシュレスでの計算が可能となる。また、たとえ、プリ処理において、セルの幾何学的形状を規定する量を利用するとしても、従来の有限要素法、有限体積法、ボクセル法のようなメッシュに対する制約がないため、計算用データモデルの作成に伴う作業負荷を軽減できる。具体的には、従来の有限要素法や有限体積法等に基づくソフトによる幾何学的形状を規定する量に基づいて、各分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す分割領域特性量を求めてもよい。
本実施形態では、質量保存の方程式、運動量保存の方程式、エネルギ保存の方程式、移流拡散方程式、及び波動方程式から、重み付き残差積分法に基づいて、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式が導出可能である。そのため、本数値解析手法において他の支配方程式を用いることができる。これについては、特許文献1に記載した理由と同様であるため、説明を省略する。
なお、特許文献1では、解析領域が分割領域によって分割される場合について離散化支配方程式が導出可能であることを説明するが、解析領域が集合領域によって分割される場合についても、同様に離散化支配方程式が導出可能である。
(適用例)
以下の説明においては、本実施形態に係る物理量計算方法を含む数値解析方法と、本実施形態に係る物理量計算プログラムを含む数値解析プログラムと、本実施形態に係る物理量計算装置を含む数値解析装置との具体的な適用例について説明する。
また、以下の具体的な適用例においては、自動車のキャビン空間における空気の流速を数値解析によって求める場合について説明する。
図17は、本実施形態の数値解析装置Aのハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
この図に示すように、本実施形態の数値解析装置Aは、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータによって構成され、CPU1、記憶装置2、DVDドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6を備えている。
CPU1は、記憶装置2、DVDドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6と電気的に接続されており、これらの各種装置から入力される信号を処理すると共に、処理結果を出力する。なお、CPU1は、演算部1opの具体例である。
記憶装置2は、メモリ等の内部記憶装置及びハードディスクドライブ等の外部記憶装置によって構成されており、CPU1から入力される情報を記憶すると共にCPU1から入力される指令に基づいて記憶した情報を出力する。
そして、本実施形態において記憶装置2は、プログラム記憶部2aとデータ記憶部2bとを備えている。
プログラム記憶部2aは、数値解析プログラムPを記憶している。この数値解析プログラムPは、所定のOS(Operating System)において実行されるアプリケーションプログラムであり、コンピュータから構成される本実施形態の数値解析装置Aを、数値解析を行うように機能させる。そして、演算部1opが数値解析プログラムPを実行することによって、本実施形態の数値解析装置Aの各機能が実現される。
そして、図17に示すように、数値解析プログラムPは、プリ処理プログラムP1と、ソルバ処理プログラムP2と、ポスト処理プログラムP3とを有している。
プリ処理プログラムP1は、ソルバ処理を実行するための前処理(プリ処理)を本実施形態の数値解析装置Aに実行させ、本実施形態の数値解析装置Aを第一計算用データモデル作成部として機能させることによって第一計算用データモデルを作成させる。また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第二計算用データモデル作成部として機能させることによって第二計算用データモデルを作成させる。また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに、ソルバ処理を実行するにあたり必要となる条件の設定を実行させ、さらには上記計算用データモデルや設定された条件を纏めたソルバ入力データファイルFの作成を実行させる。なお、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第一計算用データモデル作成部として機能させ、第一計算用データモデルが作成された後、本実施形態の数値解析装置Aを第二計算用データモデル作成部として機能させる。
プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第一計算用データモデル作成部及び第二計算用データモデル作成部として機能させる場合に、まず本実施形態の数値解析装置Aに対して、自動車のキャビン空間を含む3次元形状データを取得させ、この取得させた3次元形状データに含まれる自動車のキャビン空間を示す解析領域の作成を実行させる。
なお、後に詳説するが、本実施形態においては、ソルバ処理において、前述の本実施形態を用いた数値解析手法にて説明した離散化支配方程式を用いる。前述の本実施形態を用いた数値解析手法にて説明した離散化支配方程式とは、具体的には、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化支配方程式である。このため、第一計算用データモデル及び第二計算用データモデルの作成にあたり、保存則を満たす条件の下、分割領域の形状、分割領域に基づく集合領域の形状及び解析領域の形状を任意に変更できる。よって、3次元形状データに含まれる自動車のキャビン空間の修正あるいは変更作業は簡易的なもので充分となる。そこで、本実施形態においてプリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、取得させた3次元形状データに含まれる自動車のキャビン空間に存在する穴や隙間に、微小な閉曲面を覆いかぶせるラッピング処理によって修繕する処理を実行させる。
その後、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、複数の分割領域に分割する処理で説明したように分割領域を形成し、ラッピング処理等により修繕されたキャビン空間の全領域を含む解析領域の作成を実行させる。続いて、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに対して作成された分割領域のうちキャビン空間から食み出した領域をカットすることによって、キャビン空間を示す解析領域の作成を実行させる。ここでも、ソルバ処理において前述の離散化支配方程式を用いることから、解析領域のうちキャビン空間から食み出した領域を容易にカットすることができる。
これにより、ボクセル法のように、外部空間との境界が階段状になることがなく、また、ボクセル法のカットセル法のような外部空間の境界付近の解析領域の形成に対して、経験や試行錯誤を要する非常に膨大な手作業を伴う特別な修正または処理を必要としない。そのため、本実施形態では、ボクセル法で問題となる外部空間との境界の処理に関わる問題がない。
なお、本実施形態においては、後述のようにキャビン空間とカットした領域との隙間に新たな任意形状の分割領域を充填することによって、直交格子形状のみによらない分割領域で解析領域が構成されるようにし、さらには解析領域に分割領域を重なることなく充填させている。
次に、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第一計算用データモデル作成部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、作成させたキャビン空間を示す解析領域に含まれる分割領域の各々の内部に対して1つのコントロールポイントを仮想的に配置する処理を実行させ、コントロールポイントの配置情報、及び各コントロールポイントが占めるコントロールボリュームの体積データを記憶させる。
また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第一計算用データモデル作成部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、上記分割領域同士の境界面である境界面の面積及び第一法線ベクトルの算出を実行させ、これらの境界面の面積及び第一法線ベクトルを記憶させる。
また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第一計算用データモデル作成部として機能させる場合に、コントロールボリューム又はコントロールポイントの結合情報(link)を作成させ、このlinkを記憶させる。
そして、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、上記各コントロールポイントが占めるコントロールボリュームの体積と、境界面の面積及び第一法線ベクトルと、分割領域の配置情報を表すコントロールポイントの配置情報と、linkとを纏めさせて第一計算用データモデルを作成させる。配置情報が示す配置は、例えば座標を用いて示されてもよい。
プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第二計算用データモデル作成部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、作成された第一計算用データモデルを用いて、図7あるいは図8に示す方法でコントロールボリューム(セル)を集合させ、キャビン空間を示す解析領域内に、集合領域を生成する。
次に、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第二計算用データモデル作成部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、作成させたキャビン空間を示す解析領域に含まれる集合領域の各々の内部に対して1つの集合コントロールポイントを仮想的に配置する処理を実行させ、集合コントロールポイントの配置情報、及び各集合コントロールポイントが配置されたドメインの体積データを記憶させる。
プリ処理プログラムP1は、上記集合コントロールポイントを仮想的に配置する処理において、本実施形態の数値解析装置Aにたいして、集合コントロールポイント算出処理を実行させることで、各集合コントロールポイントを配置する箇所を示す情報を取得する。集合コントロールポイント算出処理は、本実施形態の数値解析装置Aが第一計算用データモデルが有するコントロールボリュームの体積とコントロールポイントの配置情報とを取得し、式(20)及び式(21)の計算を行うことで、集合コントロールポイントの配置箇所を算出する処理である。
また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第二計算用データモデル作成部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、上記集合領域同士の境界面の面積及び第二法線ベクトルの算出(以下「集合領域境界面特性量算出処理」という。)を実行させ、これらの境界面の面積及び第二法線ベクトルを記憶させる。
集合領域境界面特性量算出処理は、本実施形態の数値解析装置Aが第一計算用データモデルが有する境界面の面積と第一法線ベクトルとの情報を取得し、式(22)及び式(23)の計算を実行することで、集合領域同士の境界面の面積及び第二法線ベクトルを算出する処理である。
また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aを第二計算用データモデル作成部として機能させる場合に、ドメイン又は集合コントロールポイントの結合情報(link)を作成させ、このlinkを記憶させる。
そして、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、上記各集合コントロールポイントが配置されたドメインの体積と、境界面の面積及び第二法線ベクトルと、集合領域の配置情報を表す集合コントロールポイントの配置情報と、linkとを纏めさせて第二計算用データモデルを作成させる。配置情報が示す配置は、例えば座標を用いて示されてもよい。
また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに、前述のソルバ処理を実行するにあたり必要となる条件の設定を行わせる場合には、物性値の設定、境界条件の設定、初期条件の設定、計算条件の設定を行わせる。
ここで、物性値とは、キャビン空間における空気の密度、粘性係数等である。
境界条件とは、コントロールポイント間の物理量の交換の法則を規定する条件であり、、本実施形態においては前述した式(10)で示されるナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式、及び式(11)で示される連続の式に基づく離散化支配方程式である。
また、境界条件には、キャビン空間と外部空間との境界面に臨む集合領域を示す情報が含まれる。
初期条件とは、ソルバ処理を実行する際の最初の物理量を示すものであり、各分割領域及び集合領域の流速の初期値である。
計算条件とは、ソルバ処理における計算の条件であり、例えば反復回数や収束基準である。
また、プリ処理プログラムP1は、本実施形態の数値解析装置Aに、GUI(Graphical User Interface)を形成させる。より詳細には、プリ処理プログラムP1は、出力装置5が備えるディスプレイ5aに対してグラフィックを表示させると共に、入力装置4が備えるキーボード4aやマウス4bによって操作が可能な状態とさせる。
ソルバ処理プログラムP2(物理量計算プログラム)は、本実施形態の数値解析装置Aにソルバ処理を実行させるものであり、本実施形態の数値解析装置Aを物理量計算装置として機能させる。
そして、ソルバ処理プログラムP2は、本実施形態の数値解析装置Aを物理量計算部として機能させる場合に、ソルバ入力データファイルFを用いて、解析領域における物理量を数値計算させる。
そして、ソルバ処理プログラムP2は、本実施形態の数値解析装置Aを物理量計算部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、ソルバ入力データファイルFに含まれるナビエ・ストークスの式及び連続の式の離散化係数行列の作成を実行させると共に、マトリックス形成用のデータテーブルの作成を実行させる。
また、ソルバ処理プログラムP2は、本実施形態の数値解析装置Aを物理量計算部として機能させる場合に、本実施形態の数値解析装置Aに対して、前述した式(29)で示されるナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式、及び前述した式(30)で示される連続の式に基づく離散化支配方程式から、下式(37)で示すマトリックス計算用の大規模疎行列方程式の組み上げを実行させる。
なお、ソルバ処理プログラムP2は、集合領域から作成される第二計算用データモデルを入力とする数値計算だけでなく、分割領域から作成される第一計算用データモデルを入力とする数値計算を実行することもできる。この場合は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、前述した式(10)で示されるナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式、及び前述した式(11)で示される連続の式に基づく離散化支配方程式から、下式(37)で示すマトリックス計算用の大規模疎行列方程式の組み上げを実行させる。
なお、式(37)において[A]が大規模疎行列を示し、[B]が境界条件ベクトルを示し、[X]が流速の解を示す。
また、ソルバ処理プログラムP2は、上記離散化支配方程式に非圧縮性等の付帯条件が存在する場合には、本実施形態の数値解析装置Aに対して、この付帯条件の行列方程式への組み上げを実行させる。
そして、ソルバ処理プログラムP2は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、CG法(共役勾配法)等による行列方程式の解の計算、当該解の下式(38)を用いた解のアップデート、収束条件の判定を実行させ、最終的な計算結果を取得させる。
ポスト処理プログラムP3は、本実施形態の数値解析装置Aにポスト処理を実行させるものであり、本実施形態の数値解析装置Aに対して、ソルバ処理において取得された計算結果に基づく処理を実行させる。
より詳細には、ポスト処理プログラムP3は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、計算結果の可視化処理、抽出処理を実行させる。
ここで、可視化処理とは、例えば、断面コンター表示、ベクトル表示、等値面表示、アニメーション表示を出力装置5に出力させる処理である。また、抽出処理とは、作業者が指定する領域の定量値を抽出して数値やグラフとして出力装置5に出力させる、あるいは作業者が指定する領域の定量値を抽出してファイル化したものの出力を実行させる処理である。
また、ポスト処理プログラムP3は、本実施形態の数値解析装置Aに対して、自動レポート作成、計算残差の表示及び分析を実行させる。
データ記憶部2bは、図17に示すように、第一計算用データモデルM1、第二計算用データモデルM2、境界条件を示す境界条件データD1、計算条件を示す計算条件データD2、物性値を示す物性値データD3、及び初期条件を示す初期条件データD4を有するソルバ入力データファイルFと、3次元形状データD5と、計算結果データD6等を記憶するものである。また、データ記憶部2bは、CPU1の処理過程において生成される中間データを一時的に記憶する。
DVDドライブ3は、DVDメディアXを取り込み可能に構成されており、CPU1から入力される指令に基づいて、DVDメディアXに記憶されるデータを出力するものである。そして、本実施形態においては、DVDメディアXに数値解析プログラムPが記憶されており、DVDドライブ3は、CPU1から入力される指令に基づいて、DVDメディアXに記憶される数値解析プログラムPを出力する。
入力装置4は、本実施形態の数値解析装置Aと作業者とのマンマシンインターフェイスであり、ポインティングデバイスであるキーボード4aやマウス4bを備えている。
出力装置5は、CPU1から入力される信号を可視化して出力するものであり、ディスプレイ5a及びプリンタ5bを備えている。
通信装置6は、本実施形態の数値解析装置AとCAD装置C等の外部装置との間においてデータの受け渡しを行い、社内LAN(Local Area Network)等のネットワークBに対して電気的に接続されている。
次に、このように構成された本実施形態の数値解析装置Aを用いた数値解析方法(本実施形態の数値解析方法)について、図18〜図20のフローチャートを参照して説明する。
図18のフローチャートに示すように、本実施形態の数値解析方法は、プリ処理(ステップS1)と、ソルバ処理(ステップS2)と、ポスト処理(ステップS3)とから構成されている。
なお、本実施形態の数値解析方法を行うより前に、CPU1は、DVDドライブ3に取り込まれたDVDメディアXに記憶された数値解析プログラムPをDVDメディアXから取り出し、記憶装置2のプログラム記憶部2aに記憶させる。
そして、CPU1は、入力装置4から数値解析の開始を指示する信号が入力されると、記憶装置2に記憶された数値解析プログラムPに基づいて数値解析を実行する。より詳細には、CPU1は、プログラム記憶部2aに記憶されたプリ処理プログラムP1に基づいてプリ処理(ステップS1)を実行し、プログラム記憶部2aに記憶されたソルバ処理プログラムP2に基づいてソルバ処理(ステップS2)を実行し、プログラム記憶部2aに記憶されたポスト処理プログラムP3に基づいてポスト処理(ステップS3)を実行する。なお、このようにCPU1がプリ処理プログラムP1に基づくプリ処理(ステップS1)を実行することによって、本実施形態の数値解析装置Aが計算用データモデル作成部として機能される。また、CPU1がソルバ処理プログラムP2に基づくソルバ処理(ステップS2)を実行することによって、本実施形態の数値解析装置Aが物理量計算部として機能される。
図19は、プリ処理(ステップS1)を示すフローチャートである。この図に示すように、プリ処理(ステップS1)が開始されると、CPU1は、通信装置6に、ネットワークBを介してCAD装置Cから自動車のキャビン空間を含む3次元形状データD5を取得させる(ステップS1a)。CPU1は、取得した3次元形状データD5を記憶装置2のデータ記憶部2bに記憶させる。
続いて、CPU1は、ステップS1aで取得した3次元形状データD5に基づいて、第一計算用データモデルの作成を実行する(ステップS1b)。
具体的には、CPU1は、キャビン空間を示す解析領域に含まれる各分割領域内に1つのコントロールポイントを仮想的に配置する。ここでは、CPU1は、分割領域の重心を算出し、各々の重心に対して1つのコントロールポイントを仮想的に配置する。そして、CPU1は、コントロールポイントの配置情報、各コントロールポイントが占めるコントロールボリュームの体積(コントロールポイントが配置される分割領域の体積)を算出し、記憶装置2のデータ記憶部2bに一時的に記憶させる。
また、CPU1は、分割領域同士の境界面である境界面の面積及び第一法線ベクトルを算出し、これらの境界面の面積及び第一法線ベクトルを記憶装置2のデータ記憶部2bに一時的に記憶させる。
また、CPU1は、分割領域間のlinkを作成し、この分割領域間のlinkを記憶装置2のデータ記憶部2bに一時的に記憶させる。
そして、CPU1は、データ記憶部2bに記憶された、コントロールポイントの配置情報と、各コントロールポイントが占めるコントロールボリュームの体積と、境界面の面積及び法線ベクトルと、linkとをデータベース化することによって第一計算用データモデルを作成し、作成した第一計算用データモデルを記憶装置2のデータ記憶部2b内に記憶させる。
また、本実施形態では、ステップS1bにおいて、先に分割領域を形成し、その後コントロールポイントを配置し、各コントロールポイントに対して、自らが配置された分割領域の体積を割り当てる構成を採用している。
しかしながら、本実施形態においては、先にコントロールポイントを解析領域に配置し、各コントロールポイントに対して後から体積を割り当てることも可能である。
具体的には、例えば、異なるコントロールポイントにぶつかるまでの半径や、結合関係にある(linkで関連付けられた)コントロールポイントまでの距離に基づいて、各コントロールポイントに対して重み付けを行う。
ここでコントロールポイントiの重みをwi、基準体積をV+とし、コントロールポイントiに割り当てられる体積Viを下式(39)とする。
さらに、各コントロールポイントの体積Viの総和は、解析領域の体積Vtotalと等しいため、下式(40)が成り立つ。
この結果、基準体積V+は下式(41)で求めることができる。
したがって、各コントロールポイントに割り当てる体積は、式(40),(41)から求めることができる。
このような方法を用いれば、プリ処理において、幾何学的形状を規定する量を用いることなく、第一計算用データモデルに持たせる分割領域の体積を求めることができる。
また、当該第一計算用データモデルの作成(ステップS1b)において、CPU1は、GUIを形成し、GUIから指令(例えば分割領域の密度を示す指令や分割領域の形状を示す指令)が入力された場合には、当該指令を反映させた処理を実行する。したがって、作業者は、GUIを操作することによって、コントロールポイントの配置や分割領域の形状を任意に調節することが可能とされている。
ただし、CPU1は、数値解析プログラムに記憶された保存則を満足するための3つの条件に照らし合わせ、GUIから入力される指令が、当該条件から外れる場合には、その旨をディスプレイ5aに表示させる。
続いて、CPU1は、ステップS1bで作成した第一計算用データモデルに基づいて、第二計算用データモデルの作成を実行する(ステップS1c)。
具体的には、CPU1は、作成された第一計算用データモデルを用いて、図7あるいは図8に示す方法でコントロールボリューム(セル)を集合させ、キャビン空間を示す解析領域内に、集合領域を生成する。次に、CPU1は、キャビン空間を示す解析領域に含まれる各集合領域内に1つの集合コントロールポイントを仮想的に配置する。ここでは、CPU1は、第一計算用データモデルに基づいて、式(20)及び(21)によって、集合コントロールポイントを算出し、各々の集合領域に対して1つの集合コントロールポイントを仮想的に配置する。そして、CPU1は、集合コントロールポイントの配置情報、各集合コントロールポイントが占める集合コントロールボリュームの体積(集合コントロールポイントが配置される集合領域の体積)を算出し、記憶装置2のデータ記憶部2bに一時的に記憶させる。
また、CPU1は、集合領域同士の境界面である境界面の面積及び第二法線ベクトルを算出し、これらの境界面の面積及び第二法線ベクトルを記憶装置2のデータ記憶部2bに一時的に記憶させる。
また、CPU1は、集合領域のlinkを作成し、この集合領域のlinkを記憶装置2のデータ記憶部2bに一時的に記憶させる。
そして、CPU1は、データ記憶部2bに記憶された、集合コントロールポイントの配置情報と、各集合コントロールポイントを有する集合領域の体積と、境界面の面積及び第二法線ベクトルと、linkとをデータベース化することによって第二計算用データモデルを作成し、作成した第二計算用データモデルを記憶装置2のデータ記憶部2b内に記憶させる。
また、当該第二計算用データモデルの作成(ステップS1c)において、CPU1は、GUIを形成し、GUIから指令(例えば分割領域の密度を示す指令や分割領域の形状を示す指令)が入力された場合には、当該指令を反映させた処理を実行する。したがって、作業者は、GUIを操作することによって、集合コントロールポイントの配置や集合領域の形状を任意に調節することが可能とされている。なお、集合領域は、あくまでもコントロールボリューム(セル)の集合なので、集合領域に対してコントロールボリューム(セル)を無視して形状変更はできない。
ただし、CPU1は、数値解析プログラムに記憶された保存則を満足するための3つの条件に照らし合わせ、GUIから入力される指令が、当該条件から外れる場合には、その旨をディスプレイ5aに表示させる。
続いて、CPU1は、物性値データの設定(ステップS1d)を行う。具体的には、CPU1は、GUIを用いて、ディスプレイ5a上に物性値の入力画面を表示し、キーボード4aあるいはマウス4bから入力される物性値を示す信号を物性値データD3としてデータ記憶部2bに一時的に記憶させることで物性値の設定を行う。なお、ここで言う物性値とは、キャビン空間における流体である空気の特性値であり、空気の密度、粘性係数等である。
続いて、CPU1は、境界条件データの設定(ステップS1e)を行う。具体的には、CPU1は、GUIを用いて、ディスプレイ5a上に境界条件の入力画面を表示し、キーボード4aあるいはマウス4bから入力される境界条件を示す信号を境界条件データD1としてデータ記憶部2bに一時的に記憶させることで境界条件データの設定を行う。なお、ここで言う境界条件とは、キャビン空間の物理現象を支配する離散化支配方程式や、キャビン空間と外部空間との境界面に臨む集合コントロールポイントの特定情報、及びキャビン空間と外部空間との間における熱の伝熱条件等を示す。
なお、本実施形態の数値解析方法は、キャビン空間における流速を数値解析により求めることを目的とするため、上記離散化支配方程式として、前述のナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式(29)及び連続の式に基づく離散化支配方程式(30)が用いられる。
なお、これらの離散化支配方程式は、例えば、数値解析プログラムPに予め記憶された複数の離散化支配方程式をディスプレイ5a上に表示された複数の離散化支配方程式から作業者がキーボード4aやマウス4bを用いることによって選択される。
続いて、CPU1は、初期条件データの設定(ステップS1f)を行う。具体的には、CPU1は、GUIを用いて、ディスプレイ5a上に初期条件の入力画面を表示し、キーボード4aあるいはマウス4bから入力される初期条件を示す信号を初期条件データD4としてデータ記憶部2bに一時的に記憶させることで初期条件データの設定を行う。なお、ここ言う初期条件とは、各コントロールポイント(各分割領域)における初期流速、及び各集合コントロールポイント(各集合領域)における初期流速である。
続いて、CPU1は、計算条件データの設定(ステップS1g)を行う。具体的には、CPU1は、GUIを用いて、ディスプレイ5a上に計算条件の入力画面を表示し、キーボード4aあるいはマウス4bから入力される計算条件を示す信号を計算条件データD2としてデータ記憶部2bに一時的に記憶させることで計算条件データの設定を行う。なお、ここで言う計算条件とは、ソルバ処理(ステップS2)における計算の条件であり、例えば、反復回数や収束基準を示す。
続いて、CPU1は、ソルバ入力データファイルFの作成(ステップS1h)を行う。
具体的には、CPU1は、ステップS1bにて作成された第一計算用データモデルM1と、ステップS1cにて作成された第二計算用データモデルM2と、ステップS1dで設定された物性値データD3と、ステップS1eで設定された境界条件データD1と、ステップS1fで設定された初期条件データD4と、ステップS1gで設定された計算条件データD2とをソルバ入力データファイルFに格納することによってソルバ入力データファイルFを作成する。なお、このソルバ入力データファイルFは、データ記憶部2bに記憶される。
以上のようなプリ処理(ステップS1)が完了すると、CPU1は、ソルバ処理プログラムP2に基づいて、図18のフローチャートに示すソルバ処理(ステップS2)を実行する。
図20に示すように、ソルバ処理(ステップS2)が開始されると、CPU1は、プリ処理(ステップS1)で作成されたソルバ入力データファイルFを取得する(ステップS2a)。なお、本実施形態に示す数値解析方法のように、単一の装置(本実施形態の数値解析装置A)によってプリ処理及びソルバ処理を実行する場合には、既にデータ記憶部2bにソルバ入力データファイルFが記憶されているため、ステップS2aを省略することができる。ただし、プリ処理(ステップS1)とソルバ処理(ステップS2)とが異なる装置において実行される場合には、ネットワークやリムーバルディスクによって搬送されるソルバ入力データファイルFを取得する必要があるため、本ステップS2aを行う必要がある。
続いて、CPU1は、ソルバ入力データの整合性を判定する(ステップS2b)。なお、ソルバ入力データとは、ソルバ入力データファイルFに格納されたデータを示し、第一計算用データモデルM1、第二計算用データモデルM2、境界条件データD1、計算条件データD2、物性値データD3及び初期条件データD4である。
具体的には、CPU1は、ソルバ処理において物理量計算を実行可能なソルバ入力データがソルバ入力データファイルFに全て格納されているかを分析することによってソルバ入力データの整合性の判定を行う。
そして、CPU1は、ソルバ入力データが不整合であると判定した場合には、ディスプレイ5aにエラーを表示させ(ステップS2b+)、さらには不整合である部分のデータを入力するための画面を表示させる。その後、CPU1は、GUIから入力される信号に基づいてソルバ入力データの調整を行い(ステップS2c)、再度ステップS2aを実行する。
一方、CPU1は、ステップS2bにおいてソルバ入力データの整合性があると判定した場合には、初期計算処理(ステップS2e)を実行する。
具体的には、CPU1は、境界条件データD1に記憶された離散化支配方程式から離散化係数行列を作成し、さらにマトリクス計算用のデータテーブルの作成を行うことによって初期計算処理を行う。なお、境界条件データD1に記憶された離散化支配方程式とは、例えば、ナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式(29)及び連続の式に基づく離散化支配方程式(30)である。
なお、分割領域から作成される第一計算用データモデルをソルバ入力データとする数値計算を実行する場合は、CPU1は、境界条件データD1に記憶された離散化支配方程式から離散化係数行列を作成し、さらにマトリクス計算用のデータテーブルの作成を行うことによって初期計算処理を行う。なお、境界条件データD1に記憶された離散化支配方程式とは、例えば、ナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式(10)及び連続の式に基づく離散化支配方程式(11)である。
続いて、CPU1は、大規模疎行列方程式の組み上げ(ステップS2f)を行う。具体的には、CPU1は、ナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式(29)及び連続の式に基づく離散化支配方程式(30)から、前述の式(37)で示すマトリックス計算用の大規模疎行列方程式の組み上げを行う。
なお、分割領域から作成される第一計算用データモデルをソルバ入力データとする数値計算を実行する場合は、CPU1は、ナビエ・ストークスの式に基づく離散化支配方程式(10)及び連続の式に基づく離散化支配方程式(11)から、前述の式(37)で示すマトリックス計算用の大規模疎行列方程式の組み上げを行う。
続いて、CPU1は、離散化支配方程式に、非圧縮性や接触等の付帯条件が存在するかの判定を行う。この付帯条件は、例えば、境界条件データとしてソルバ入力データファイルFに格納されている。
そして、CPU1は、離散化支配方程式に付帯条件が存在すると判定した場合には当該付帯条件の大規模行列方程式の組み込み(ステップS2h)を実行した後に大規模行列方程式の計算(ステップS2i)を実行する。一方、CPU1は、離散化支配方程式に付帯条件が存在しないと判定した場合には付帯条件の大規模行列方程式の組み込み(ステップS2h)を実行することなく大規模行列方程式の計算(ステップS2i)を実行する。
そしてCPU1は、大規模行列方程式を例えば、CG法(共役勾配法)によって解き、前述の式(38)を用いて解のアップデート(ステップS2j)を行う。
続いて、CPU1は、式(38)の残差が収束条件に達したか否かの判定(ステップS2k)を行う。具体的には、CPU1は、式(38)の残差を計算し、計算条件データD2に含まれる収束条件と比較し、これによって式(38)の残差が収束条件に達したか否かの判定を行う。
そして、残差が収束条件に達していないと判定した場合には、CPU1は、物性値のアップデートを行った後、再度ステップS2gを実行する。つまり、CPU1は、式(38)の残差が収束条件に達するまで、物性値のアップデートを行いながらステップS2f〜S2kを繰り返し行う。
一方、残差が収束条件に達したと判定した場合には、CPU1は、計算結果の取得を行う(ステップS2l)。具体的には、CPU1は、直前のステップS2iにおいて計算された物理量の解を計算結果データとしてデータ記憶部2bに記憶させることによって計算結果の取得を行う。
このようなソルバ処理(ステップS2)によって、キャビン空間における空気の流速が求められる。なお、このようなソルバ処理(ステップS2)は、本実施形態の物理量計算方法に相当する。
以上のようなソルバ処理(ステップS2)が完了すると、CPU1は、ポスト処理プログラムP3に基づいてポスト処理(ステップS3)を実行する。
具体的には、例えばCPU1は、GUIから入力される指令に基づいて、計算結果データから、例えば断面コンタデータ、ベクトルデータ、等値面データ、アニメーションデータを生成し、当該データを、出力装置5に可視化させる。
また、CPU1は、GUIから入力される指令に基づいて、キャビン空間の一部における定量値(計算結果)を抽出して数値やグラフとし、この数値やグラフを出力装置5に可視化させ、さらには数値やグラフをファイルとして纏めて出力する。また、CPU1は、GUIから入力される指令に基づいて、例えば計算結果データから自動レポート作成、計算残差の表示及び分析を行ってその結果を出力する。
さらに、本実施形態の数値解析装置A、数値解析方法及び数値解析プログラムの利用者が、ポスト処理の結果に応じて3次元形状データを変更して再度、図18のフローチャートの処理を繰り返す場合にも、現実的な時間内で物理量の計算が可能となる。
即ち、利用者は、ポスト処理により得られた計算結果データを評価することにより、解析対象である3次元形状データにより所望の結果が得られたと判断する場合には、シミュレーションを終了してよい。また利用者は、ポスト処理により得られた計算結果データを評価することにより、解析対象である3次元形状データにより所望の結果が得られていないと判断する場合には、3次元形状データを修正してから再度シミュレーションを実行してよい。
上記の動作において、シミュレーションが所望の結果を示す場合、その解析対象であった3次元形状データが表現する物理的実体(閉鎖された空間を構成する自動車キャビン、コックピット、住宅、若しくは電気機器や産業機器の内部等、又はガラスや鉄鋼等の製造装置等)の設計が満足できるものと判断し、当該物理的実体を製造・生産してよい。またシミュレーションが所望の結果を示さない場合、その解析対象で、あった3次元形状データが表現する物理的実体の設計が満足できないものと判断し、当該物理的実体の設計を変更し、この設計変更後の3次元形状データに基づいて再度シミュレーションを実行することになる。
以上のような本実施形態の数値解析装置A、数値解析方法及び数値解析プログラムによれば、プリ処理にて集合コントロールボリュームの体積と境界面の面積及び第二法線ベクトルとを有する第二計算用データモデルM2が作成され、ソルバ処理にて第二計算用データモデルM2に含まれる集合コントロールボリュームの体積と境界面の面積及び第二法線ベクトルとを用いて各集合コントロールボリュームにおける物理量が計算される。
このように、本実施形態の数値解析方法を用いることで、物理量を計算することができる。そのため、本実施形態の数値解析方法は、物理現象を数値的に解析する物理現象解析方法である。
なお、本実施形態の数値解析装置A、数値解析方法及び数値解析プログラムにおいては、解析領域に分割領域を重なることなく充填させている。このため、前述した保存側を満足するための6つの条件(a1)〜(c1)及び(a2)〜(c2)が満たされることとなり、保存則を満足して流速を計算することができる。
このように構成された本実施形態の数値解析装置Aは、幾何学的形状を規定する量を有さない計算用データモデルであって、保存則を満たす計算用データモデルを作成するため、解析領域の分割数を少なくしてソルバ処理における計算負荷を軽くすることと、解析領域の分割数を少なくしても解析精度を悪くしないこととを両立することが可能である。
また、本実施形態の数値解析装置A、数値解析方法及び数値解析プログラムによれば、前述のように、プリ処理における第一及び第二計算用データモデルの作業負担が大幅に減少し、またソルバ処理における計算負荷を軽減させることが可能となる。
したがって、解析領域が移動境界を含み解析領域の形状が時系列的に変化する場合であっても、本実施形態によれば、図21のフローチャートに示すように、解析領域が形状変化するたびにプリ処理とソルバ処理とを繰り返し行うことによって、現実的な時間内で物理量の計算が可能となる。 さらに、本実施形態の数値解析装置A、数値解析方法及び数値解析プログラムの利用者が、ポスト処理の結果に応じて3次元形状データを変更して再度、図21のフローチャートの処理を繰り返す場合にも、現実的な時間内で物理量の計算が可能となる。
即ち、利用者は、ポスト処理により得られた計算結果データを評価することにより、解析対象である3次元形状データにより所望の結果が得られたと判断する場合には、シミュレーションを終了してよい。また利用者は、ポスト処理により得られた計算結果データを評価することにより、解析対象である3次元形状データにより所望の結果が得られていないと判断する場合には、3次元形状データを修正してから再度シミュレーションを実行してよい。
上記の動作において、シミュレーションが所望の結果を示す場合、その解析対象であった3次元形状データが表現する物理的実体(閉鎖された空間を構成する自動車キャビン、コックピット、住宅、若しくは電気機器や産業機器の内部等、又はガラスや鉄鋼等の製造装置等)の設計が満足できるものと判断し、当該物理的実体を製造・生産してよい。またシミュレーションが所望の結果を示さない場合、その解析対象で、あった3次元形状データが表現する物理的実体の設計が満足できないものと判断し、当該物理的実体の設計を変更し、この設計変更後の3次元形状データに基づいて再度シミュレーションを実行することになる。
移動境界は、解析領域の中で、対象とする物体が移動することによって変化する物体の境界をいう。解析領域が移動境界を含み解析領域の形状が時系列的に変化する場合としては、例えば、キャビンにおいて、人がいない状態から、人がキャビン内に入るまでの現象を再現する場合が挙げられる。その他、例えば、加熱炉の中を加熱対象物が移動する現象を再現する場合が挙げられる。
以上、添付図面を参照しながら本実施形態の好適な実施形態について説明したが、本実施形態は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。前述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本実施形態の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
上記実施形態においては、運動量保存の方程式の変形例であるナビエ・ストークスの式及び連続の式から導出した離散化支配方程式を用いて空気の流速を数値解析によって求める構成について説明した。
しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、質量保存の方程式、運動量保存の方程式、角運動量保存の方程式、エネルギ保存の方程式、移流拡散方程式及び波動方程式の少なくともいずれかから導出した離散化支配方程式を用いて物理量を数値解析によって求めることが可能である。
また、上記実施形態においては、本実施形態の境界面特性量として、境界面の面積と境界面の法線ベクトルとを用いる構成について説明した。
しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、境界面特性量として他の量(例えば境界面の周長)を用いることもできる。
また、上記実施形態においては、保存則を満足するために前述の6つの条件を満たすように計算用データモデルを作成する構成について説明した。
しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、保存則を満足させる必要がない場合には、計算用データモデルを必ずしも前述の6つの条件を満たすように作成する必要はない。
また、上記実施形態においては、分割領域の体積を、当該分割領域の内部に配置されるコントロールポイントが占めるコントロールボリュームの体積として捉えた構成について説明した。
しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、分割領域の内部に対してコントロールポイントを配置する必要は必ずしもない。このような場合には、コントロールポイントが占めるコントロールボリュームの体積を分割領域の体積に置き換えることによって数値解析を行うことができる。
また、上記実施形態においては、解析領域をまずは複数のコントロールボリューム(セル)に分割して第一計算用データモデルを作成し、次に、コントロールボリューム(セル)を集合させた集合領域(ドメイン)によって解析領域を分割して第二計算用データモデルを作成した。そして、そのソルバ処理においては、第二計算用データモデルを用いて計算を行った。しかし、第二計算用データモデルは、セルを集合させたドメインに基づく計算用データモデルであればよく、セルを集合させたドメインをさらに集合させた新たなドメインでの計算用データモデルであってもよい。
図22〜図38は、本実施形態における第一計算用データモデル(分割領域)及び第二計算用データモデル(集合領域)を使用して実施した熱流体シミュレーション結果の一例を示す図である。
本実施形態では、流体解析の基礎方程式として、式(1)で示すナビエ・ストークスの式と、式(2)で示す連続の式を用いた数値計算方法を説明したが、前述の通り、本実施形態では、ナビエ・ストークスの式だけでなく、移流拡散方程式に対しても重み付き残差積分法に基づいて、幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式が導出可能であることを説明した。図22〜図38に示す熱流体シミュレーションの実行では、熱流体解析の基礎方程式として、式(1)で示すナビエ・ストークスの式と、式(2)で示す連続の式に加え、熱の移流拡散方程式を基礎方程式として使用した。熱の移流拡散方程式に対する本実施形態での重み付き残差積分法に基づく幾何学的形状を規定する量を必要としない量のみを使用する離散化支配方程式の導出については、特許文献1に詳細が記載されているためここでは説明を省略する。
熱流体シミュレーションでは、解析領域の一例は自動車のキャビンであり、境界条件の一例は夏季で、冷房空調条件である。具体的には、車外参照温度は35度、車外熱伝達率は40W/m2K、乗車人員数は4名、空調吹出風速は5m/s、空調吹出温度は8℃である。なお、必要に応じて、境界条件として、エンジンルームの温度、トランクルームの温度、床下フロアーの温度、ダッシュボードの内側の温度、天井の温度、その他の少なくとも一つが含まれる場合等も解析可能である。
数値解析装置Aは、解析領域(自動車のキャビン)を、前述したように、頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としないセルに分割する。
解析領域(自動車のキャビン)を、約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の一例を、図22〜図24に示す。図22は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、図23は、その垂直断面上の7点のサンプリング点での温度値(以降、温度値の単位はK(ケルビン)で表示する。)を示す。また、図24は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の流速コンター図であり、流速の向きを矢印の向き、流速の大きさを矢印の大きさで示す。図22〜図24に示す結果は、定常状態の計算結果を得るまでに、インテル社製CPU Xeon(2.6GHz)を搭載したPCを用いて、約30時間の計算時間を要した。
本実施形態では、数値解析装置Aは、解析領域(自動車のキャビン)に対して約450万個のセルを自動生成する。数値解析装置Aは、前述したセルから集合領域を生成する処理によって、図25〜図32に示す約450万個のセルから27個の集合領域(ドメイン)を生成する場合について説明する。27個の集合領域の各々を生成した結果の一例を、図25〜図30に示す。図25〜図30の各々において、DCPは集合領域(ドメイン)のコントロールポイントであり、CCPはセルのコントロールポイントの一つである。図25〜図30は、順番にドメイン1からドメイン6までを示す。また、図25〜図30には、図示されていないが、数値解析装置Aは、各集合領域について、外表面を取得する。数値解析装置Aは、取得した外表面と、その外表面に接している部材との間の境界条件を取得する。境界条件は、外表面が接する部材の材料によって異なる場合がある。
図31と図32は、前述の27個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の一例を示す。
図31は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その垂直断面上の7点のサンプリング点での温度値を示す。図31の7点のサンプリング点での温度値は、それぞれ上段の温度値と下段の括弧内の温度値に分けて示しているが、上段は前述の27個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値であり、下段の括弧内の温度値は図23に示す約450万個の分割領域(セル)に分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値を示す。上段と下段の温度値を比較すると、数度の温度値の差はあるものの平均的には良く一致している。
図32は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その同じ垂直断面上に流速ベクトルを重ねて示した図である。キャビン空間内に空調吹出流れによる循環流が形成されていることが分かるが、図24に示す約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果と比較すると、図32ではキャビン空間内の流れの詳細な分布までは計算できていないことが分かる。
図31と図32に示す27個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションは、定常状態の計算結果を得るまでに、インテル社製CPU Xeon(2.6GHz)を搭載したPCを用いて、1秒以下の計算時間を要した。約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションに約30時間の計算時間を要したことと比較すると数値計算は非常に高速である。
図33と図34は、792個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の一例を示す。
図33は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その垂直断面上の7点のサンプリング点での温度値を示す。図31と同様に、7点のサンプリング点での温度値は、それぞれ上段の温度値と下段の括弧内の温度値に分けて示しているが、上段は792個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値であり、下段の括弧内の温度値は図35に示す約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値を示す。上段と下段の温度値を比較すると、数度の温度値の差はあるものの平均的には良く一致している。
図34は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その同じ垂直断面上に流速ベクトルを重ねて示した図である。キャビン空間内に空調吹出流れによる循環流が形成されていることが分かるが、図32と比較すると、図34ではキャビン空間内の流れの詳細度が向上していることが分かる。
図33と図34に示す792個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションは、定常状態の計算結果を得るまでに、インテル社製CPU Xeon(2.6GHz)を搭載したPCを用いて、約20秒の計算時間を要した。約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションに約30時間の計算時間を要したことと比較すると数値計算は非常に高速である。
図35と図36は、16055個の集合領域を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の一例を示す。
図35は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その垂直断面上の7点のサンプリング点での温度値を示す。図31と同様に、7点のサンプリング点での温度値は、それぞれ上段の温度値と下段の括弧内の温度値に分けて示しているが、上段は16055個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値であり、下段の括弧内の温度値は図35に示す約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値を示す。上段と下段の温度値を比較すると、温度値の差は1度程度であり非常に良く一致している。
図36は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その同じ垂直断面上に流速ベクトルを重ねて示した図である。キャビン空間内に空調吹出流れによる循環流が形成されていることが分かるが、図32、図34と比較すると、図36ではキャビン空間内の流れの詳細度が大きく向上しており、キャビン空間内の局所的な流れや渦も計算できていることが分かる。
図35と図36に示す16055個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションは、定常状態の計算結果を得るまでに、インテル社製CPU Xeon(2.6GHz)を搭載したPCを用いて、約3分の計算時間を要した。約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションに約30時間の計算時間を要したことと比較すると数値計算は非常に高速である。
図37と図38は、66257個の集合領域を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の一例を示す。
図37は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その垂直断面上の7点のサンプリング点での温度値を示す。図31と同様に、7点のサンプリング点での温度値は、それぞれ上段の温度値と下段の括弧内の温度値に分けて示しているが、上段は66257個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値であり、下段の括弧内の温度値は図23に示す約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の温度値を示す。上段と下段の温度値を比較すると、温度値の差はゼロであり非常に良く一致している。
図38は、解析領域であるキャビン空間内の運転席中央での垂直断面上の温度コンター図であり、その同じ垂直断面上に流速ベクトルを重ねて示した図である。キャビン空間内に空調吹出流れによる循環流が形成されていることが分かるが、図32、図34と比較すると、図38ではキャビン空間内の流れの詳細度が大きく向上しており、キャビン空間内の局所的な流れや渦も計算できており、図24に示す約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果と比較しても精度上差異のない結果である。
図37と図38に示す66257個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションは、定常状態の計算結果を得るまでに、インテル社製CPU Xeon(2.6GHz)を搭載したPCを用いて、約12分の計算時間を要した。約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションに約30時間の計算時間を要したことと比較すると数値計算は非常に高速である。
前述の通り、集合領域(ドメイン)の個数が、27個、792個、16055個、66257個の集合領域(ドメイン)を含む第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の一例を示した。また、約450万個のセルに分割した第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果と比較して、第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーション結果の精度を示した。さらに、第二計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションは、第一計算用データモデルを使用して実施した3D熱流体シミュレーションの計算速度と比較して、非常に高速であることを示した。解析する目的や必要とされる精度に応じて、集合領域(ドメイン)の数を適切に選択することによって、特許文献1に相当するセルのみを使用した計算に比べ非常に高速に解析結果を得ることができることを示した。
また、上記実施形態においては、数値解析プログラムPがDVDメディアXに記憶されて搬送可能な構成について説明した。
しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではなく、数値解析プログラムPを他のリムーバブルメディアに記憶させて搬送可能とする構成を採用することもできる。
また、プリ処理プログラムP1とソルバ処理プログラムP2とを別々のリムーバブルメディアに記憶させて搬送可能とすることもできる。また、数値解析プログラムPは、ネットワークを介して伝達することも可能である。
なお、本実施形態は、例えば、自動車ボディの形状、エアコンなどのHeating Ventilation and Air Conditioning(HVAC)での消費エネルギ、ガラス、人の存在、外部日射エネルギ、湿度、車速等をシミュレーションモデルに反映した自動車のキャビンの温熱解析に用いられてもよい。
また、本実施形態は、自動車のキャビンの温熱解析以外にも、自動車のエンジンの燃焼解析や、自動車の燃焼ガスの排気効率の解析や、自動車のエンジンルームの温熱解析等に用いられてもよい。
また、本実施形態は、自動車以外の分野における温熱解析に用いられてもよい。例えば、航空機、船舶、宇宙船、宇宙ステーションのキャビン、コックピット等の内部空間の温熱解析に用いられてもよい。また、例えば、住宅、ビル、アトリウム等の内部空間の温熱解析に用いられてもよい。また、例えば、電気機器や産業機器の内部の温熱解析に用いられてもよい。また、例えば、ガラス、鉄鋼等の製造設備の装置自体の温熱解析に用いられてもよいし、それら製造設備の装置周辺の温熱解析に用いられてもよい。
なお、第一計算用データモデルは、分割領域の計算用データモデルの一例である。また、第二計算用データモデルは、集合領域の計算用データモデルの一例である。また、分割領域の境界面特性量は、分割領域特性量の一例である。また、集合領域の境界面特性量は、集合領域特性量の一例である。また、第一法線ベクトルは、分割領域の境界面の法線ベクトルの一例である。また、第二法線ベクトルは、集合領域の境界面の法線ベクトルの一例である。なお、重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化支配方程式と集合領域の体積と境界面特性量とによって算出された物理量と、空気の流速とは、解析結果である物理量の一例である。なお、数値解析方法はシミュレーション方法の一例である。
本出願を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
コンピュータによって物理現象での物理量を数値的に解析するシミュレーション方法であって、コンピュータが、外部装置から解析領域の3次元形状データを取得し、
前記解析領域を複数の分割領域に分割し、
前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された分割領域での支配方程式に基づき、各前記分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す分割領域特性量とを前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記分割領域での計算用データモデルを生成し、
前記分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成し、
前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された集合領域での支配方程式に基づき、各前記集合領域の体積と隣り合う前記集合領域同士の特性を示す集合領域特性量とを前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記集合領域での計算用データモデルを生成し、
前記解析領域での物性値と、前記集合領域での計算用データモデルとに基づいて、前記集合領域での解析結果である物理量を計算し、
前記解析結果である物理量の可視化データを生成して出力装置に表示し、
当該シミュレーション方法の利用者が、前記出力装置に表示された内容に応じて前記解析領域の前記形状を変更して再度、前記解析領域の前記形状変更後の3次元形状データから前記出力装置への表示までを繰り返すシミュレーション方法。
(付記2)
コンピュータによって物理現象での物理量を数値的に解析するシミュレーション方法であって、
コンピュータが、外部装置から解析領域の3次元形状データを取得して前記解析領域を複数の分割領域に分割し、
前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された分割領域での支配方程式に基づき、各前記分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す分割領域特性量とを前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記分割領域での計算用データモデルを生成し、
前記分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成し、
前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された集合領域での支配方程式に基づき、各前記集合領域の体積と隣り合う前記集合領域同士の特性を示す集合領域特性量とを前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記集合領域での計算用データモデルを生成し、
前記解析領域での物性値と、前記集合領域での計算用データモデルとに基づいて、前記集合領域での解析結果である物理量を計算し、
前記解析領域が移動境界を含む場合には、前記解析領域の形状が時系列的に変化したかどうかを判断し、変化した場合には、前記前記分割領域での計算用データモデルの生成、前記集合領域での計算用データモデルの生成、前記集合領域での解析結果である物理量の計算を繰り返し、
変化しない場合には、前記解析結果である物理量の可視化データを生成して出力装置に表示する、シミュレーション方法。
(付記3)
コンピュータによって物理現象での物理量を数値的に解析するシミュレーション方法であって、
コンピュータが、外部装置から解析領域の3次元形状データを取得して前記解析領域を複数の分割領域に分割し、
前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された分割領域での支配方程式に基づき、各前記分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す分割領域特性量とを前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記分割領域での計算用データモデルを生成し、
前記分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成し、
前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された集合領域での支配方程式に基づき、各前記集合領域の体積と隣り合う前記集合領域同士の特性を示す集合領域特性量とを前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記集合領域での計算用データモデルを生成し、
前記解析領域での物性値と、前記集合領域での計算用データモデルとに基づいて、前記集合領域での解析結果である物理量を計算し、前記解析結果である物理量の可視化データを生成して出力装置に表示する、シミュレーション方法。
(付記4)
前記分割領域での計算用データモデルの生成において、
全分割領域の体積の総和が解析領域の体積と一致するという条件と、
前記分割領域同士の境界面の面積が一致するという条件及び法線ベクトルが当該境界面を挟む一方の分割領域から見た場合と他方の分割領域から見た場合とで絶対値が一致するという条件と、
前記分割領域を通る無限に広い投影面Pの任意の向きの単位法線ベクトルが[n]p、境界面の面積がSi、境界面の単位法線ベクトルが[n]i、分割領域の面の総数がm、前記[]で囲まれた文字がベクトルを示す太字であるときに下式(1)が成り立つという条件と、
が満足されるように前記分割領域を形成する、付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
前記集合領域での計算用データモデルの生成において、
全集合領域の体積の総和が解析領域の体積と一致するという条件と、
隣り合う前記集合領域同士の境界面の面積が一致するという条件及び法線ベクトルが当該境界面を挟む一方の集合領域から見た場合と他方の集合領域から見た場合とで絶対値が一致するという条件と、
前記集合領域を通る無限に広い投影面Pの任意の向きの単位法線ベクトルが[N]P、境界面の面積がQi、境界面の単位法線ベクトルが[N]i、集合領域の面の総数がM、前記[]で囲まれた文字がベクトルを示す太字であるときに下式(2)が成り立つという条件と、
が満足されるように前記集合領域を形成する付記1から4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
前記分割領域特性量は、隣り合う前記分割領域同士の境界面の特性を示す境界面特性量と、隣り合う前記分割領域同士の結合情報と、隣り合う前記分割領域同士の距離とからなり、
前記集合領域特性量は、隣り合う前記集合領域同士の境界面の特性を示す境界面特性量と、隣り合う前記集合領域同士の結合情報と、隣り合う前記集合領域同士の距離とからなる、
付記1から5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
前記隣り合う前記分割領域同士の境界面の特性を示す境界面特性量は、前記隣り合う前記分割領域同士の境界面の面積と前記境界面との法線ベクトルであり、
前記隣り合う前記集合領域同士の境界面の特性を示す前記境界面特性量は、前記隣り合う前記集合領域同士の境界面の面積と前記境界面の法線ベクトルとである、
付記6に記載の方法。
(付記8)
前記分割領域での計算用データモデルの生成において、前記分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す前記分割領域特性量とを前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)から得る、付記1から7のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
コンピュータに、外部装置から解析領域の3次元形状データを取得させて前記解析領域を複数の分割領域に分割させ、
前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された分割領域での支配方程式に基づき、各前記分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す分割領域特性量とを前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記分割領域での計算用データモデルを生成させ、
前記分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成させ、
前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法に基づいて導出された離散化された集合領域での支配方程式に基づき、各前記集合領域の体積と隣り合う前記集合領域同士の特性を示す集合領域特性量とを前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記集合領域での計算用データモデルを生成させ、
前記解析領域での物性値と、前記集合領域での計算用データモデルとに基づいて、前記集合領域での解析結果である物理量を計算させる、ことを特徴とする物理量計算プログラム。
(付記10)
物理現象での物理量を数値的に解析する物理量計算装置であって、
データを表示する出力装置と、
外部装置との間においてデータの受け渡しを行う通信装置と、
前記通信装置を介して前記外部装置から解析領域の3次元形状データを取得し、前記解析領域を複数の分割領域に分割し、前記分割領域を複数集合させることによって、要求される数の集合領域を生成する演算部と、
前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法によって導出された離散化された分割領域での支配方程式と、前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量のみを使用すると共に重み付き残差積分法によって導出された離散化された集合領域での支配方程式とを記憶する記憶部とを備え、
前記演算部は、前記記憶部に記憶された前記分割領域での支配方程式に基づき、各前記分割領域の体積と隣り合う前記分割領域同士の特性を示す分割領域特性量とを前記分割領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記分割領域での計算用データモデルを生成し、前記記憶部に記憶された前記集合領域での支配方程式に基づき、各前記集合領域の体積と隣り合う前記集合領域同士の特性を示す集合領域特性量とを前記集合領域の頂点の座標(Vertex)及び該頂点の連結情報(Connectivity)を必要としない量として有する前記集合領域での計算用データモデルを生成し、前記解析領域での物性値と、前記集合領域での計算用データモデルとに基づいて、前記集合領域での解析結果である物理量を計算し、
前記解析結果である物理量の可視化データを生成して前記出力装置に表示することを特徴とする物理量計算装置。