JPWO2019194249A1 - ドープ液、改変フィブロイン繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、水分との接触による収縮が低減された改変フィブロイン繊維及びその製造方法の提供を目的とする。本発明の改変フィブロイン繊維は、改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒とを含む、ドープ液。該ドープ液を用いて成形する工程を含む、改変フィブロイン成形体の製造方法。該ドープ液を凝固液に押し出し、凝固液中で未延伸の改変フィブロイン繊維を形成させる工程を備える、改変フィブロイン繊維の製造方法。改変フィブロインと耐水性付与物質とを含む。

Description

本発明は、ドープ液、改変フィブロイン繊維及びその製造方法に関する。
フィブロインは、繊維状のタンパク質の一種であり、βプリーツシートの形成につながるグリシン残基、アラニン残基及びセリン残基を最大90%含有する(非特許文献1)。フィブロインとして、昆虫及びクモ類が産生する糸を構成するタンパク質(絹タンパク質、ホーネットシルクタンパク質、スパイダーシルクタンパク質)等が知られている。
より改良されたフィブロインを得るために、様々なアミノ酸配列の改変が行われており、例えば、タフネス及び伸度を向上させ、工業生産に適した組換えスパイダーシルクタンパク質が報告されている(特許文献1)。
しかしながら、フィブロインを紡糸して得られるフィブロイン繊維は、水分との接触(例えば、水若しくは湯への浸漬、又は高湿度環境への暴露等)により収縮する特性を有する。この特性は、製造工程及び製品化において様々な問題を発生させ、フィブロイン繊維よりなる製品にも影響が及ぶ。
当該製品の収縮を防止するための防縮方法として、例えば、精練を完了した強撚糸使用の絹織物を、緊張した状態で水、その他の溶媒、又はその混合系に浸漬して所定時間加温することを特徴とする絹織物の防縮加工法(特許文献2)、所要形状に成形された状態にある動物繊維製品に、120〜200℃の高圧飽和水蒸気を接触させる処理を施して、当該繊維製品に水蒸気処理時の形状を固定することを特徴とする動物繊維製品の形状固定化方法(特許文献3)等が報告されている。
国際公開第2017/188434号 特公平2−6869号公報 特開平6−294068号公報
Asakuraら,Encyclopedia of Agricultural Science,Academic Press:New York,NY,1994年,Vol.4,pp.1−11
特許文献2及び3に開示されるような防縮方法は、操作が煩雑であり、また工程が増えるため、工業的に不利である。このような防縮方法によらず、フィブロイン繊繊維自体の収縮を低減させることができれば、極めて工業的に有用である。
本発明は、水分との接触による収縮が低減された改変フィブロイン繊維及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒を含むドープ液から形成した改変フィブロイン繊維は、水分との接触による収縮が低減されることを見出した。本発明はこの新規な知見に基づく。
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒とを含む、ドープ液。
[2]
上記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物、及びヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]のドープ液。
[3]
上記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物であり、上記改変フィブロインと上記溶媒との合計重量を100重量%としたとき、上記改変フィブロインの含有量が5〜40重量%であり、上記タンパク質加水分解物の含有量が5〜35重量%である、[1]のドープ液。
[4]
上記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、エラスチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、卵殻膜タンパク質加水分解物、卵白タンパク質加水分解物、コンキリオン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、アーモンドタンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物、エンドウタンパク質加水分解物、ポテトタンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、エンバクタンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物及び藻タンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[2]又は[3]のドープ液。
[5]
上記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物及びエンドウタンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[2]〜[4]のいずれかのドープ液。
[6]
上記タンパク質加水分解物の分子量が、300〜50,000である、[2]〜[5]のいずれかのドープ液。
[7]
上記溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、N−メチルモルホリンN−オキシド及びギ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[6]のいずれかのドープ液。
[8]
[1]〜[7]のいずれかのドープ液を用いて成形する工程を含む、改変フィブロイン成形体の製造方法。
[9]
[1]〜[7]のいずれかのドープ液を凝固液に押し出し、凝固液中で未延伸の改変フィブロイン繊維を形成させる工程を備える、改変フィブロイン繊維の製造方法。
[10]
改変フィブロインと耐水性付与物質とを含む、改変フィブロイン繊維。
[11]
上記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物、及びヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[10]の改変フィブロイン繊維。
[12]
上記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物であり、上記改変フィブロインと上記タンパク質加水分解物との含有比率が、重量基準で0.9:0.1〜0.5:0.5である、[10]の改変フィブロイン繊維。
[13]
上記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、エラスチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、卵殻膜タンパク質加水分解物、卵白タンパク質加水分解物、コンキリオン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、アーモンドタンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物、エンドウタンパク質加水分解物、ポテトタンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、エンバクタンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物及び藻タンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[11]又は[12]の改変フィブロイン繊維。
[14]
上記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物及びエンドウタンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[11]〜[13]のいずれかの改変フィブロイン繊維。
[15]
上記タンパク質加水分解物の分子量が、300〜50,000である、[11]〜[14]のいずれかの改変フィブロイン繊維。
[16]
[1]〜[7]のいずれかのドープ液の凝固物を含む製品であって、繊維、糸、布帛、編み物、組み物、不織布、紙及び綿からなる群から選択される、製品。
[17]
上記未延伸の改変フィブロイン繊維を延伸させる工程をさらに備える、[8]の改変フィブロイン繊維の製造方法。
[18]
上記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含む改変フィブロインであって、
上記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当する、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載のドープ液、[8]、[9]及び[17]のいずれかに記載の製造方法、[10]〜[15]のいずれかに記載の改変フィブロイン繊維、或いは[16]に記載の製品。
[式1中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が83%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
[19]
上記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、
上記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当する、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載のドープ液、[8]、[9]及び[17]のいずれかに記載の製造方法、[10]〜[15]のいずれかに記載の改変フィブロイン繊維、或いは[16]に記載の製品。
[式1中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が83%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
[20]
上記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、
上記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載のドープ液、[8]、[9]及び[17]のいずれかに記載の製造方法、[10]〜[15]のいずれかに記載の改変フィブロイン繊維、或いは[16]に記載の製品。
[式1中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が83%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。][21]
上記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含み、
上記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当する、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載のドープ液、[8]、[9]及び[17]のいずれかに記載の製造方法、[10]〜[15]のいずれかに記載の改変フィブロイン繊維、或いは[16]に記載の製品。
[式1及び式2中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
[22]
上記改変フィブロインが、26.0以上の限界酸素指数(LOI)値を有している、[1]〜[7]のいずれかに記載のドープ液、[8]、[9]及び[17]のいずれかに記載の製造方法、[10]〜[15]のいずれかに記載の改変フィブロイン繊維、或いは[16]に記載の製品。
[23]
上記改変フィブロインが、0.025℃/g超の、下記式Aに従って求められる最高吸湿発熱度を有している、[1]〜[7]のいずれかに記載のドープ液、[8]、[9]及び[17]のいずれかに記載の製造方法、[10]〜[15]のいずれかに記載の改変フィブロイン繊維、或いは[16]に記載の製品。
式A:最高吸湿発熱度={(試料を、試料温度が平衡に達するまで低湿度環境下に置いた後、高湿度環境下に移したときの試料温度の最高値)−(試料を、試料温度が平衡に達するまで低湿度環境下に置いた後、高湿度環境下に移すときの試料温度)}(℃)/試料重量(g)
[式A中、低湿度環境は、温度20℃及び相対湿度40%の環境を意味し、高湿度環境は、温度20℃及び相対湿度90%の環境を意味する。]
本発明によれば、水分との接触による収縮が低減された改変フィブロイン繊維の製造に有用なドープ液を提供することができる。また本発明は、応力を維持したまま、水分との接触による収縮が低減された改変フィブロイン繊維及びその製造方法の提供が可能となる。
一実施形態に係る改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。 天然由来のフィブロインのz/w(%)の値の分布を示す図である。 天然由来のフィブロインのx/y(%)の値の分布を示す図である。 一実施形態に係る改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。 一実施形態に係る改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。 吸湿発熱性試験の結果の一例を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔ドープ液〕
本実施形態に係るドープ液は、改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒とを含む。本実施形態に係るドープ液は、改変フィブロイン及び耐水性付与物質を溶媒に溶解させたドープ液ということもできる。例えば、ドープ液として改変フィブロイン繊維、改変フィブロインフィルム等の成形に用いることができる。
<改変フィブロイン>
本実施形態に係る改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。改変フィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。なお、本実施形態において、改変フィブロインとして、保温性、吸湿発熱性及び/又は難燃性にも優れることから、好ましくは改変クモ糸フィブロインが用いられる。
本明細書において「改変フィブロイン」とは、人為的に製造されたフィブロイン(人造フィブロイン)を意味する。改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列とは異なるフィブロインであってもよく、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列と同一であるフィブロインであってもよい。本明細書でいう「天然由来のフィブロイン」もまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。
「改変フィブロイン」は、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列をそのまま利用したものであってもよく、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列を改変したもの(例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列を改変することによりアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、また天然由来のフィブロインに依らず人工的に設計及び合成したもの(例えば、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより所望のアミノ酸配列を有するもの)であってもよい。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよく、10〜40、10〜60、10〜80、10〜100、10〜120、10〜140、10〜160、又は10〜180アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、8〜300、10〜300、20〜300、40〜300、60〜300、80〜300、10〜200、20〜200、20〜180、20〜160、20〜140又は20〜120の整数であってもよい。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
本実施形態に係る改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列に対し、例えば、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行うことで得ることができる。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
天然由来のフィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質であり、具体的には、例えば、昆虫又はクモ類が産生するフィブロインが挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、及びスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、及びAAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質のより具体的な例としては、例えば、fibroin−3(adf−3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin−4(adf−4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、minor ampullate spidroin−like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)等が挙げられる。
天然由来のフィブロインのより具体的な例としては、更に、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
本実施形態に係る改変フィブロインは、改変絹(シルク)フィブロイン(カイコが産生する絹タンパク質のアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、改変クモ糸フィブロイン(クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質のアミノ酸配列を改変したもの)であってもよい。改変フィブロインとしては、改変クモ糸フィブロイン(「人工クモ糸タンパク質」ともいう)が好ましい。
改変フィブロインの具体的な例として、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロイン(第1の改変フィブロイン)、グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロイン(第2の改変フィブロイン)、(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン(第3の改変フィブロイン)、グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン(第4の改変フィブロイン)、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有する改変フィブロイン(第5の改変フィブロイン)、並びにグルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第6の改変フィブロイン)が挙げられる。
第1の改変フィブロインとしては、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。第1の改変フィブロインにおいて、(A)モチーフのアミノ酸残基数は、3〜20の整数が好ましく、4〜20の整数がより好ましく、8〜20の整数が更に好ましく、10〜20の整数が更により好ましく、4〜16の整数が更によりまた好ましく、8〜16の整数が特に好ましく、10〜16の整数が最も好ましい。第1の改変フィブロインは、式1中、REPを構成するアミノ酸残基の数は、10〜200残基であることが好ましく、10〜150残基であることがより好ましく、20〜100残基であることが更に好ましく、20〜75残基であることが更により好ましい。第1の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列中に含まれるグリシン残基、セリン残基及びアラニン残基の合計残基数がアミノ酸残基数全体に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
第1の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列の単位を含み、かつC末端配列が配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列又は配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列であるポリペプチドであってもよい。
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、ADF3(GI:1263287、NCBI)のアミノ酸配列のC末端の50残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列と同一であり、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から20残基取り除いたアミノ酸配列と同一であり、配列番号3に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から29残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。
第1の改変フィブロインのより具体的な例として、(1−i)配列番号4(recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1)で示されるアミノ酸配列、又は(1−ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
配列番号4で示されるアミノ酸配列は、N末端に開始コドン、His10タグ及びHRV3Cプロテアーゼ(Human rhinovirus 3Cプロテアーゼ)認識サイトからなるアミノ酸配列(配列番号5)を付加したADF3のアミノ酸配列において、第1〜13番目の反復領域をおよそ2倍になるように増やすとともに、翻訳が第1154番目アミノ酸残基で終止するように変異させたものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸配列は、配列番号3で示されるアミノ酸配列と同一である。
(1−i)の改変フィブロインは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
第2の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第2の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第2の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(但し、Gはグリシン残基、Pはプロリン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第2の改変フィブロインは、上述のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であってもよい。
第2の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の全REPに含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが30%以上、40%以上、50%以上又は50.9%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であってよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
第2の改変フィブロインは、GGXモチーフの1つのグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換することにより、XGXからなるアミノ酸配列の含有割合を高めたものであることが好ましい。第2の改変フィブロインは、ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが更により好ましく、4%以下であることが更によりまた好ましく、2%以下であることが特に好ましい。ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合は、下記XGXからなるアミノ酸配列の含有割合(z/w)の算出方法と同様の方法で算出することができる。
z/wの算出方法を更に詳細に説明する。まず、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる全てのREPから、XGXからなるアミノ酸配列を抽出する。XGXを構成するアミノ酸残基の総数がzである。例えば、XGXからなるアミノ酸配列が50個抽出された場合(重複はなし)、zは50×3=150である。また、例えば、XGXGXからなるアミノ酸配列の場合のように2つのXGXに含まれるX(中央のX)が存在する場合は、重複分を控除して計算する(XGXGXの場合は5アミノ酸残基である)。wは、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる総アミノ酸残基数である。例えば、図1に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+100+4+10+4+20+4+30=230である(最もC末端側に位置する(A)モチーフは除いている。)。次に、zをwで除すことによって、z/w(%)を算出することができる。
ここで、天然由来のフィブロインにおけるz/wについて説明する。まず、上述のように、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインを例示した方法により確認したところ、663種類のフィブロイン(このうち、クモ類由来のフィブロインは415種類)が抽出された。抽出された全てのフィブロインのうち、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、フィブロイン中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が6%以下である天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、上述の算出方法により、z/wを算出した。その結果を図2に示す。図2の横軸はz/w(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図2から明らかなとおり、天然由来のフィブロインにおけるz/wは、いずれも50.9%未満である(最も高いもので、50.86%)。
第2の改変フィブロインにおいて、z/wは、50.9%以上であることが好ましく、56.1%以上であることがより好ましく、58.7%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが更によりまた好ましい。z/wの上限に特に制限はないが、例えば、95%以下であってもよい。
第2の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、グリシン残基をコードする塩基配列の少なくとも一部を置換して別のアミノ酸残基をコードするように改変することにより得ることができる。このとき、改変するグリシン残基として、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフにおける1つのグリシン残基を選択してもよいし、またz/wが50.9%以上になるように置換してもよい。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記態様を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
上記の別のアミノ酸残基としては、グリシン残基以外のアミノ酸残基であれば特に制限はないが、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、メチオニン(M)残基、プロリン(P)残基、フェニルアラニン(F)残基及びトリプトファン(W)残基等の疎水性アミノ酸残基、グルタミン(Q)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基、リシン(K)残基及びグルタミン酸(E)残基等の親水性アミノ酸残基が好ましく、バリン(V)残基、フェニルアラニン(F)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基及びグルタミン(Q)残基がより好ましく、グルタミン(Q)残基が更に好ましい。
第2の改変フィブロインのより具体的な例として、(2−i)配列番号6(Met−PRT380)、配列番号7(Met−PRT410)、配列番号8(Met−PRT525)若しくは配列番号9(Met−PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(2−ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(2−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号10(Met−PRT313)で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、配列番号6で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、C末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にヒンジ配列及びHisタグ配列が付加されたものである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)におけるz/wの値は、46.8%である。配列番号6で示されるアミノ酸配列、配列番号7で示されるアミノ酸配列、配列番号8で示されるアミノ酸配列、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ58.7%、70.1%、66.1%及び70.0%である。また、配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のギザ比率(後述する)1:1.8〜11.3におけるx/yの値は、それぞれ15.0%、15.0%、93.4%、92.7%及び89.8%である。
(2−i)の改変フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−ii)の改変フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(2−ii)の改変フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であることが好ましい。
第2の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による改変フィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含むアミノ酸配列)が挙げられる。
また、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
さらに、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとして、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に改変フィブロインを精製することができる。
さらにタグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した改変フィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(2−iii)配列番号12(PRT380)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(2−iv)配列番号12、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号16(PRT313)、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(2−iii)の改変フィブロインは、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−iv)の改変フィブロインは、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(2−iv)の改変フィブロインは、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であることが好ましい。
第2の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第3の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第3の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインから(A)モチーフを10〜40%欠失させたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって1〜3つの(A)モチーフ毎に1つの(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つ連続した(A)モチーフの欠失、及び1つの(A)モチーフの欠失がこの順に繰り返されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であってよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
x/yの算出方法を図1を参照しながら更に詳細に説明する。図1には、改変フィブロインからN末端配列及びC末端配列を除いたドメイン配列を示す。当該ドメイン配列は、N末端側(左側)から(A)モチーフ−第1のREP(50アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第2のREP(100アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第3のREP(10アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第4のREP(20アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第5のREP(30アミノ酸残基)−(A)モチーフという配列を有する。
隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットは、重複がないように、N末端側からC末端側に向かって、順次選択する。このとき、選択されない[(A)モチーフ−REP]ユニットが存在してもよい。図1には、パターン1(第1のREPと第2のREPの比較、及び第3のREPと第4のREPの比較)、パターン2(第1のREPと第2のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン3(第2のREPと第3のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン4(第1のREPと第2のREPの比較)を示した。なお、これ以外にも選択方法は存在する。
次に各パターンについて、選択した隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニット中の各REPのアミノ酸残基数を比較する。比較は、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときの、他方のアミノ酸残基数の比を求めることによって行う。例えば、第1のREP(50アミノ酸残基)と第2のREP(100アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第1のREPを1としたとき、第2のREPのアミノ酸残基数の比は、100/50=2である。同様に、第4のREP(20アミノ酸残基)と第5のREP(30アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第4のREPを1としたとき、第5のREPのアミノ酸残基数の比は、30/20=1.5である。
図1中、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組を実線で示した。本明細書中、この比をギザ比率と呼ぶ。よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8未満又は11.3超となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組は破線で示した。
各パターンにおいて、実線で示した隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットの全てのアミノ酸残基数を足し合わせる(REPのみではなく、(A)モチーフのアミノ酸残基数もである。)。そして、足し合わせた合計値を比較して、当該合計値が最大となるパターンの合計値(合計値の最大値)をxとする。図1に示した例では、パターン1の合計値が最大である。
次に、xをドメイン配列の総アミノ酸残基数yで除すことによって、x/y(%)を算出することができる。
第3の改変フィブロインにおいて、x/yは、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、75%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。ギザ比率が1:1.9〜11.3の場合には、x/yは89.6%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.8〜3.4の場合には、x/yは77.1%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜8.4の場合には、x/yは75.9%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合には、x/yは64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変フィブロインが、ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフの少なくとも7つがアラニン残基のみで構成される改変フィブロインである場合、x/yは、46.4%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが更により好ましく、70%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、100%以下であればよい。
ここで、天然由来のフィブロインにおけるx/yについて説明する。まず、上述のように、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインを例示した方法により確認したところ、663種類のフィブロイン(このうち、クモ類由来のフィブロインは415種類)が抽出された。抽出された全てのフィブロインのうち、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列で構成される天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、上述の算出方法により、x/yを算出した。ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合の結果を図3に示す。
図3の横軸はx/y(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図3から明らかなとおり、天然由来のフィブロインにおけるx/yは、いずれも64.2%未満である(最も高いもので、64.14%)。
第3の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、x/yが64.2%以上になるように(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、x/yが64.2%以上になるように1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第3の改変フィブロインのより具体的な例として、(3−i)配列番号17(Met−PRT399)、配列番号7(Met−PRT410)、配列番号8(Met−PRT525)若しくは配列番号9(Met−PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(3−ii)配列番号17、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(3−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号17で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号10(Met−PRT313)で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列は、第2の改変フィブロインで説明したとおりである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)のギザ比率1:1.8〜11.3におけるx/yの値は15.0%である。配列番号17で示されるアミノ酸配列、及び配列番号7で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、いずれも93.4%である。配列番号8で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、92.7%である。配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、89.8%である。配列番号10、配列番号17、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ46.8%、56.2%、70.1%、66.1%及び70.0%である。
(3−i)の改変フィブロインは、配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−ii)の改変フィブロインは、配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−ii)の改変フィブロインは、配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3(ギザ比率が1:1.8〜11.3)となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方に上述したタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(3−iii)配列番号18(PRT399)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(3−iv)配列番号18、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号18、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号17、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(3−iii)の改変フィブロインは、配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−iv)の改変フィブロインは、配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−iv)の改変フィブロインは、配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第4の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有するものである。第4の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。すなわち、上述した第2の改変フィブロインと、第3の改変フィブロインの特徴を併せ持つ改変フィブロインである。具体的な態様等は、第2の改変フィブロイン、及び第3の改変フィブロインで説明したとおりである。
第4の改変フィブロインのより具体的な例として、(4−i)配列番号7(Met−PRT410)、配列番号8(Met−PRT525)、配列番号9(Met−PRT799)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(4−ii)配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロインの具体的な態様は上述のとおりである。
第5の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有するものであってよい。
局所的に疎水性指標の大きい領域は、連続する2〜4アミノ酸残基で構成されていることが好ましい。
上述の疎水性指標の大きいアミノ酸残基は、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましい。
第5の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に、天然由来のフィブロインと比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
第5の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第5の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であるアミノ酸配列を有してもよい。
アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105−132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、以下「HI」とも記す。)は、下記表1に示すとおりである。
Figure 2019194249
p/qの算出方法を更に詳細に説明する。算出には、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列(以下、「配列A」とする)を用いる。まず、配列Aに含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値を算出する。疎水性指標の平均値は、連続する4アミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基のHIの総和を4(アミノ酸残基数)で除して求める。疎水性指標の平均値は、全ての連続する4アミノ酸残基について求める(各アミノ酸残基は、1〜4回平均値の算出に用いられる。)。次いで、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域を特定する。あるアミノ酸残基が、複数の「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」に該当する場合であっても、領域中には1アミノ酸残基として含まれることになる。そして、当該領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpである。また、配列Aに含まれるアミノ酸残基の総数がqである。
例えば、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が20カ所抽出された場合(重複はなし)、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、連続する4アミノ酸残基(重複はなし)が20含まれることになり、pは20×4=80である。また、例えば、2つの「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が1アミノ酸残基だけ重複して存在する場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、7アミノ酸残基含まれることになる(p=2×4−1=7。「−1」は重複分の控除である。)。例えば、図4に示したドメイン配列の場合、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複せずに7つ存在するため、pは7×4=28となる。また、例えば、図4に示したドメイン配列の場合、qは4+50+4+40+4+10+4+20+4+30=170である(C末端側の最後に存在する(A)モチーフは含めない)。次に、pをqで除すことによって、p/q(%)を算出することができる。図4の場合28/170=16.47%となる。
第5の改変フィブロインにおいて、p/qは、6.2%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、20%以上であることが更により好ましく、30%以上であることが更によりまた好ましい。p/qの上限は、特に制限されないが、例えば、45%以下であってもよい。
第5の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインのアミノ酸配列を、上記のp/qの条件を満たすように、REP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列に改変することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記のp/qの条件を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ってもよい。
疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、特に制限はないが、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)が好ましく、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)がより好ましい。
第5の改変フィブロインのより具体的な例として、(5−i)配列番号19(Met−PRT720)、配列番号20(Met−PRT665)若しくは配列番号21(Met−PRT666)で示されるアミノ酸配列、又は(5−ii)配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(5−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号19で示されるアミノ酸配列は、配列番号7(Met−PRT410)で示されるアミノ酸配列に対し、C末端側の端末を除いて、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、かつC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号20で示されるアミノ酸配列は、配列番号8(Met−PRT525)で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を1カ所挿入したものである。配列番号21で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入したものである。
(5−i)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5−ii)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(5−ii)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であることが好ましい。
第5の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(5−iii)配列番号22(PRT720)、配列番号23(PRT665)若しくは配列番号24(PRT666)で示されるアミノ酸配列、又は(5−iv)配列番号22、配列番号23若しくは配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号22、配列番号23及び配列番号24で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19、配列番号20及び配列番号21で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(5−iii)の改変フィブロインは、配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5−iv)の改変フィブロインは、配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(5−iv)の改変フィブロインは、配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であることが好ましい。
第5の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第6の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。
第6の改変フィブロインは、REPのアミノ酸配列中に、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフから選ばれる少なくとも一つのモチーフが含まれていることが好ましい。
第6の改変フィブロインが、REP中にGPGXXモチーフを含む場合、GPGXXモチーフ含有率は、通常1%以上であり、5%以上であってもよく、10%以上であるのが好ましい。GPGXXモチーフ含有率の上限に特に制限はなく、50%以下であってよく、30%以下であってもよい。
本明細書において、「GPGXXモチーフ含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるGPGXXモチーフの個数の総数を3倍した数(即ち、GPGXXモチーフ中のG及びPの総数に相当)をsとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、GPGXXモチーフ含有率はs/tとして算出される。
GPGXXモチーフ含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としているのは、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列」(REPに相当する配列)には、フィブロインに特徴的な配列と相関性の低い配列が含まれることがあり、mが小さい場合(つまり、ドメイン配列が短い場合)、GPGXXモチーフ含有率の算出結果に影響するので、この影響を排除するためである。なお、REPのC末端に「GPGXXモチーフ」が位置する場合、「XX」が例えば「AA」の場合であっても、「GPGXXモチーフ」として扱う。
図5は、改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。図5を参照しながらGPGXXモチーフ含有率の算出方法を具体的に説明する。まず、図5に示した改変フィブロインのドメイン配列(「[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフ」タイプである。)では、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図5中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、sを算出するためのGPGXXモチーフの個数は7であり、sは7×3=21となる。同様に、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図5中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、当該配列から更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数tは50+40+10+20+30=150である。次に、sをtで除すことによって、s/t(%)を算出することができ、図5の改変フィブロインの場合21/150=14.0%となる。
第6の改変フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましく、0%であることが特に好ましい。
本明細書において、「グルタミン残基含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図5の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるグルタミン残基の総数をuとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、グルタミン残基含有率はu/tとして算出される。グルタミン残基含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第6の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってよい。
「他のアミノ酸残基」は、グルタミン残基以外のアミノ酸残基であればよいが、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基であることが好ましい。アミノ酸残基の疎水性指標は表1に示すとおりである。
表1に示すとおり、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)アラニン(A)、グリシン(G)、スレオニン(T)、セリン(S)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)及びヒスチジン(H)から選ばれるアミノ酸残基を挙げることができる。これらの中でも、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましく、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)及びフェニルアラニン(F)から選ばれるアミノ酸残基であることが更に好ましい。
第6の改変フィブロインは、REPの疎水性度が、−0.8以上であることが好ましく、−0.7以上であることがより好ましく、0以上であることが更に好ましく、0.3以上であることが更により好ましく、0.4以上であることが特に好ましい。REPの疎水性度の上限に特に制限はなく、1.0以下であってよく、0.7以下であってもよい。
本明細書において、「REPの疎水性度」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図5の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域の各アミノ酸残基の疎水性指標の総和をvとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、REPの疎水性度はv/tとして算出される。REPの疎水性度の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第6の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
第6の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失させること、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。
第6の改変フィブロインのより具体的な例として、(6−i)配列番号25(Met−PRT888)、配列番号26(Met−PRT965)、配列番号27(Met−PRT889)、配列番号28(Met−PRT916)、配列番号29(Met−PRT918)、配列番号30(Met−PRT699)、配列番号31(Met−PRT698)若しくは配列番号32(Met−PRT966)で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロイン、又は(6−ii)配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31若しくは配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインを挙げることができる。
(6−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号25で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)中のQQを全てVLに置換したものである。配列番号26で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てTSに置換し、かつ残りのQをAに置換したものである。配列番号27で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。配列番号28で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVIに置換し、かつ残りのQをLに置換したものである。配列番号29で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号30で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列(Met−PRT525)中のQQを全てVLに置換したものである。配列番号31で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号32で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を2回繰り返した配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率は9%以下である(表2)。
Figure 2019194249
(6−i)の改変フィブロインは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(6−ii)の改変フィブロインは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(6−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(6−ii)の改変フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましい。また、(6−ii)の改変フィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であることが好ましい。
第6の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(6−iii)配列番号33(PRT888)、配列番号34(PRT965)、配列番号35(PRT889)、配列番号36(PRT916)、配列番号37(PRT918)、配列番号38(PRT699)、配列番号39(PRT698)若しくは配列番号40(PRT966)で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロイン、又は(6−iv)配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39若しくは配列番号40で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39及び配列番号40で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。N末端にタグ配列を付加しただけであるため、グルタミン残基含有率に変化はなく、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39及び配列番号40で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率が9%以下である(表3)。
Figure 2019194249
(6−iii)の改変フィブロインは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(6−iv)の改変フィブロインは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(6−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(6−iv)の改変フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましい。また、(6−iv)の改変フィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であることが好ましい。
第6の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
改変フィブロインは、第1の改変フィブロイン、第2の改変フィブロイン、第3の改変フィブロイン、第4の改変フィブロイン、第5の改変フィブロイン、及び第6の改変フィブロインが有する特徴のうち、少なくとも2つ以上の特徴を併せ持つ改変フィブロインであってもよい。
本実施形態に係わるドープ液は、改変フィブロインと、耐水性付与物質と、溶媒とを少なくとも含む。本実施形態に係わるドープ液は、溶解促進剤をさらに含むものであってよい。
<耐水性付与物質>
本実施形態に係る耐水性付与物質とは、改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒とを含むドープ液を用いて形成した改変フィブロイン繊維などの成形体に耐水性を付与する物質である。耐水性とは、水分との接触(例えば、水若しくは湯への浸漬、又は高湿度環境への暴露等)による寸法の収縮に耐えられる性質である。すなわち、耐水性付与物質は、改変フィブロインの成形体の水分による収縮を低減できる物質である。
耐水性付与物質としてはタンパク質加水分解物、又はヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマー等が挙げられる。耐水性付与物質は、架橋剤を含まないことが好ましい。ここで架橋剤は、通常のドープ液の調整条件において、改変フィブロインの分子内架橋又は分子間架橋を起こし得る物質をいう。
(タンパク質加水分解物)
本実施形態に係るタンパク質加水分解物は、タンパク質の酸性、塩基性若しくは酵素的触媒加水分解によって得られる生成混合物又はその誘導体である。本発明では、動物起源のタンパク質加水分解物又はその誘導体を使用してもよく、植物起源のタンパク質加水分解物又はその誘導体を使用してもよく、合成起源のタンパク質加水分解物又はその誘導体を使用してもよい。ドープ液にタンパク質加水分解物が含まれることで、耐水性に優れた改変フィブロイン成形体を得ることができ、特に改変フィブロイン繊維において好適である。
タンパク質加水分解物の誘導体は、アニオン性タンパク質加水分解物の誘導体及びカチオン性タンパク質加水分解物の誘導体の両方が挙げられ、例えば、タンパク質加水分解物をカチオン化、シリル化、アシル化、エチルエステル化又はアルキルカチオン化して誘導体とすることもできる。
動物起源のタンパク質加水分解物としては、例えば、ケラチン加水分解物、エラスチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、卵殻膜タンパク質加水分解物、卵白タンパク質加水分解物、又はコンキリオン加水分解物等が挙げられる。
ケラチン加水分解物としては、羊毛由来ケラチン加水分解物、羽毛由来ケラチン加水分解物、獣毛由来ケラチン加水分解物、又は毛髪由来ケラチン加水分解物等が挙げられる。コラーゲン加水分解物としては、魚皮由来コラーゲン加水分解物、魚鱗由来コラーゲン加水分解物、牛皮由来コラーゲン加水分解物、豚皮由来コラーゲン加水分解物、又は鶏皮由来コラーゲン加水分解物等が挙げられる。シルク加水分解物としては、絹糸由来シルク加水分解物又は絹糸由来セリシン加水分解物等が挙げられる。ミルク加水分解物としては、カゼイン加水分解物、ラクトアルブミン加水分解物又は水溶性ケラチン等が挙げられる。
動物起源のタンパク質加水分解物のカチオン化誘導体としては、例えば、動物起源のタンパク質加水分解物をトリメチル第四級アンモニウム化させた誘導体である、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、若しくは塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、若しくは塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解絹、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解絹、若しくは塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]絹アミノ酸又は塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、若しくは塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン等が挙げられる。
動物起源のタンパク質加水分解物をシリル化させた誘導体としては、例えば、N−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]加水分解コラーゲン、N−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]加水分解ケラチン、又はN−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]加水分解シルク等が挙げられる。
動物起源のタンパク質加水分解物をアシル化させた誘導体としては、例えば、ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウム、ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲントリエタノールアミン、イソステアロイル加水分解コラーゲン、イソステアロイル加水分解コラーゲン・アミノメチルプロパンジオール塩、ウンデシレノイル加水分解コラーゲンカリウム、若しくは加水分解コラーゲン・樹脂酸縮合物・アミノメチルプロパンジオール、ヤシ油脂肪酸加水分解ケラチンカリウム、又はヤシ油脂肪酸加水分解シルクカリウム、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、ステアロイル加水分解シルクナトリウム、イソステアロイル加水分解シルクアミノメチルプロパノール、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、ステアリジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、加水分解シルクプロピレングリコール-プロピルメチルシランジオール、若しくはクオタニウム加水分解シルク等が挙げられる。
動物起源のタンパク質加水分解物をエチルエステル化させた誘導体としては、例えば、加水分解シルクエチルエステル等が挙げられる。
植物起源のタンパク質加水分解物としては、例えば、大豆タンパク質加水分解物、アーモンドタンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物、エンドウタンパク質加水分解物、ポテトタンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、エンバクタンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物又は藻タンパク質加水分解物等が挙げられる。
植物起源のタンパク質加水分解物のカチオン化誘導体としては、例えば、植物起源のタンパク質加水分解物をトリメチル第四級アンモニウム化させた誘導体である、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ダイズタンパク等が挙げられる。
植物起源のタンパク質加水分解物をシリル化させた誘導体としては、例えば、N−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]加水分解ダイズタンパク又は加水分解ゴマタンパクPGプロピルメチルシランジオール等が挙げられる。
植物起源のタンパク質加水分解物をアシル化させた誘導体としては、例えば、ヤシ油脂肪酸加水分解ダイズタンパクカリウム、ヤシ油脂肪酸加水分解ダイズタンパクトリエタノールアミン、若しくは塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ダイズタンパク質、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解米タンパク質、若しくはヤシ油脂肪酸加水分解米タンパク又は塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギタンパク質等が挙げられる。
本発明において好適なタンパク質加水分解物としては、ケラチン加水分解物又はその誘導体が挙げられ、より好適には羊毛由来ケラチン加水分解物若しくはその誘導体、羽毛由来ケラチン加水分解物若しくはその誘導体、獣毛由来ケラチン加水分解物若しくはその誘導体、又は毛髪由来ケラチン加水分解物若しくはその誘導体が挙げられ、さらに好適には、羊毛由来のケラチン加水分解物若しくはその誘導体、又は羽毛由来のケラチン加水分解物若しくはその誘導体が挙げられ、特に好適には羽毛由来のケラチン加水分解物又はその誘導体が挙げられる。
本実施形態に係るタンパク質加水分解物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。タンパク質加水分解物又はその誘導体は、特開2005−247692号公報、特開2006−124341号公報、特開2008−247925号公報、特開平6−116300号公報又は国際公開第2017/038814号等に記載の公知の方法に準じて製造して使用してもよいし、市販のものを使用してもよい。
本実施形態に係るタンパク質加水分解物の数平均分子量は、ドープの混合性の点から、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、より好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下、より好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、より好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、さらに好ましくは1,500以下であり、且つ好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上である。また、好ましくは300〜50,000、より好ましくは300〜30,000、より好ましくは400〜20,000、より好ましくは400〜15,000、より好ましくは400〜10,000、より好ましくは500〜10,000、より好ましくは500〜8,000、より好ましくは500〜5,000、より好ましくは500〜3,000、より好ましくは600〜2,000、より好ましくは600〜1,500、さらに好ましくは700〜1,500である。数平均分子量が50,000以下である場合は、十分な溶解性を得られ易く、生産性が向上する。数平均分子量が300以上である場合は、十分な溶解性を得られることに加え、改変フィブロイン繊維の収縮率低減効果を安定して得られ易くなる。
本実施形態に係るドープ液におけるタンパク質加水分解物の濃度は、ドープ液全量を100重量%としたとき、5〜35重量%が好ましく、5〜32重量%がより好ましく、7〜32重量%がより好ましく、9〜32重量%がより好ましく、5〜30重量%がより好ましく、7〜30重量%がより好ましく、9〜30重量%がより好ましく、5〜28重量%がより好ましく、7〜28重量%がより好ましく、9〜28重量%がより好ましく、5〜26重量%がより好ましく、7〜26重量%がより好ましく、9〜26重量%がより好ましく、5〜24重量%がより好ましく、7〜24重量%がより好ましく、9〜24重量%がより好ましく、5〜22重量%がより好ましく、7〜22重量%がより好ましく、9〜22重量%がより好ましく、9〜20重量%がより好ましく、9〜18重量%がさらに好ましく、9〜16重量%が特に好ましい。また、本実施形態に係るドープ液におけるタンパク質加水分解物の濃度は、改変フィブロインと溶媒の合計重量を100重量%としたとき、5〜35重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、7〜30重量%がより好ましく、9〜30重量%がより好ましく、5〜28重量%がより好ましく、7〜28重量%がより好ましく、9〜28重量%がより好ましく、5〜26重量%がより好ましく、7〜26重量%がより好ましく、9〜26重量%がより好ましく、5〜24重量%がより好ましく、7〜24重量%がより好ましく、9〜24重量%がより好ましく、5〜22重量%がより好ましく、7〜22重量%がさらに好ましく、9〜22重量%が特に好ましい。タンパク質加水分解物の濃度が5重量%以上あると、改変フィブロイン繊維の収縮率低減効果を安定して得られ易くなる。タンパク質加水分解物の濃度が35重量%以下であると、十分な収縮率低減効果を安定して得られ易くなることに加え、紡糸口金からドープ液をより一層安定的に吐出させることができ、生産性が向上する。
(ヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマー)
修飾ヒドロキシル基含有ポリマー
修飾ヒドロキシル基含有ポリマーは、ヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合したポリマーである。修飾ヒドロキシル基含有ポリマーは、例えば、ヒドロキシル基含有ポリマーと、機能性官能基を有する反応剤とを反応させることで得ることができる。
ヒドロキシル基含有ポリマーは、ヒドロキシル基を有する高分子化合物であれば、特に制限なく使用することができる。ヒドロキシル基含有ポリマーの具体例としては、例えば、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ペクチン及びカラギーナン等の多糖類、ポリビニルアルコール(PVA)及びフェノール樹脂等の合成高分子が挙げられる。
ヒドロキシル基含有ポリマーとしては、生分解性を有するという観点からは、多糖類が好ましい。また、ヒドロキシル基含有ポリマーとしては、生分解性を有することに加え溶解性が高いという観点からは、デンプンが好ましい。
機能性官能基
機能性官能基とは、タンパク質組成物に付与したい機能性(例えば、耐水性、親水性、親油性、耐油性)に対応した特性(例えば、疎水性、親水性)を有する官能基であり、タンパク質組成物に付与したい機能性に応じて、適宜選択することができる。
例えば、タンパク質組成物の耐水性を向上したい場合は、機能性官能基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、並びにアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基等のアシル基といった疎水性官能基を使用することができる。
機能性官能基を有する反応剤
機能性官能基を有する反応剤は、機能性官能基を有し、更にヒドロキシル基含有ポリマーと結合可能な結合性官能基を有する化合物である。結合性官能基は、ヒドロキシル基含有ポリマーと、水素結合又は共有結合で結合可能であればよいが、ヒドロキシル基含有ポリマーと共有結合で結合可能な官能基であることが好ましく、ヒドロキシル基含有ポリマー中のヒドロキシル基と共有結合で結合可能な官能基であることがより好ましい。
機能性官能基を有する反応剤としては、例えば、機能性官能基を有するイソシアネート(R−N=C=O:Rは機能性官能基)、酸無水物(R−C(=O)−O−C(=O)−R:Rは機能性官能基)、エポキシド、アジリジン及びアルキルハライド等が挙げられる。機能性官能基を有する反応剤としては、ヒドロキシル基含有ポリマー中のヒドロキシル基と共有結合で結合可能であることから、機能性官能基を有するイソシアネート及び無水酢酸が好ましく、更に任意の機能性官能基を導入可能であることから、機能性官能基を有するイソシアネートがより好ましい。
本実施形態に係るドープ液におけるヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーの濃度は、ドープ液全量を100重量%としたとき、0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、0.01〜5重量%がより好ましく、0.01〜3重量%がより好ましく、0.01〜2重量%がより好ましく、0.02〜3重量%がさらに好ましく、0.02〜2重量%がさらに好ましく、0.02〜1.5重量%が特に好ましい。ヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーの濃度が0.001重量%以上あると、改変フィブロイン繊維の収縮率低減効果を安定して得られ易くなる。ヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーの濃度が10重量%以下であると、十分な収縮率低減効果を安定して得られ易くなることに加え、紡糸口金からドープ液をより一層安定的に吐出させることができ、生産性が向上する。
(溶媒)
本実施形態に係るドープ液の溶媒は、改変フィブロインを溶解し得るものであればいずれも使用することができ、例えばヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン(HFA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、N−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)及びギ酸等が挙げられる。これらの有機溶媒は、水を含んでいてもよい。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態に係るドープ液における改変フィブロインの濃度は、ドープ液全量を100重量%としたとき、5〜40重量%であることが好ましく、7〜40重量%であることがより好ましく、10〜40重量%であることがより好ましく、7〜35重量%であることがより好ましく、10〜35重量%であることがより好ましく、12〜35重量%であることがより好ましく、15〜35重量%であることがより好ましく、15〜30重量%であることがより好ましく、20〜35重量%であることがさらに好ましく、20〜30重量%であることが特に好ましい。また、本実施形態に係るドープ液における改変フィブロインの濃度は、改変フィブロインと溶媒の合計重量を100重量%としたとき、5〜40重量%であることが好ましく、7〜40重量%であることがより好ましく、10〜40重量%であることがより好ましく、7〜35重量%であることがより好ましく、10〜35重量%であることがより好ましく、12〜35重量%であることがより好ましく、15〜35重量%であることがより好ましく、15〜30重量%であることがより好ましく、20〜35重量%であることがさらに好ましく、20〜30重量%であることが特に好ましい。改変フィブロインの濃度が5重量%以上であると、上記のタンパク質加水分解物を添加した際に、改変フィブロイン繊維の収縮率低減効果を得られ易くなる。改変フィブロインの濃度が40重量%以下であると、紡糸口金からドープ液をより一層安定的に吐出させることができ、生産性が向上する。
本実施形態に係るドープ液における耐水性付与物質の濃度は、ドープ液全量を100重量%としたとき、0.001〜35重量%が好ましく、0.01〜32重量%がより好ましく、0.02〜32重量%が特に好ましい。
本実施形態に係るドープ液には、必要に応じて無機塩を添加してもよい。無機塩は、改変フィブロインの溶解促進剤として機能し得る。無機塩としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属硝酸塩等が挙げられる。無機塩の具体例としては、炭酸リチウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、臭化バリウム、臭化カルシウム、塩素酸バリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウムが挙げられる。これらのうちの少なくとも1種類の無機塩を溶媒に添加してもよい。
本実施形態に係るドープ液の調製法は、特に限定されるものではなく、改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒とをそれぞれ任意の順序で混合してよい。混合は、改変フィブロインと耐水性付与物質を同一の溶媒中で混合して溶解させてもよく、改変フィブロインを溶媒に溶解させた溶液と、耐水性付与物質を溶媒に溶解させた溶液を混合してもよい。
本実施形態に係るドープ液の粘度は、ドープ液の用途等に応じて適宜設定してよい。例えば、ドープ液を紡糸原液として使用する場合、その粘度は紡糸方法に応じて適宜設定してよく、例えば、20℃において、5,000〜40,000mPa・secであってよく、7,000〜40,000mPa・secであってよく、10,000〜40,000mPa・secであってよく、7,000〜35,000mPa・secであってよく、10,000〜35,000mPa・secであってよく、10,000〜30,000mPa・secであってよく、10,000〜25,000mPa・sec等であってよい。紡糸原液の粘度は、例えば京都電子工業社製の商品名“EMS粘度計”を使用して測定することができる。
ドープ液は、溶解を促進するために、ある程度の時間撹拌又は振とうしてもよい。その際、ドープ液は必要により、使用する改変フィブロイン、耐水性付与物質及び溶媒に応じて溶解可能な温度に加熱してもよい。ドープ液は、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、又は、90℃以上に加熱してもよい。加熱温度の上限は、例えば、溶媒の沸点以下である。
〔改変フィブロイン成形体の製造方法〕
本実施形態に係る改変フィブロイン成形体の製造方法は、上記ドープ液を用いて成形する工程を含む。改変フィブロイン成形体は、改変フィブロインと耐水性付与物質とを含み、改変フィブロイン繊維と同様な組成を有する。改変フィブロイン成形体としては、繊維(繊維を用いて製造された紡績糸等も含む)、フィルム、シート、又は多孔体等が挙げられる。
〔改変フィブロイン繊維の製造方法〕
本実施形態に係る改変フィブロイン繊維の製造方法は、上記ドープ液(紡糸原液)を凝固液に押し出し(吐出し)、凝固液中で未延伸の改変フィブロイン繊維を形成させる工程を備える。改変フィブロイン繊維(フィラメント)は、公知の紡糸方法によって製造することができる。すなわち、例えば、本実施形態に係るドープ液を用いて、乾式紡糸、溶融紡糸、湿式紡糸、乾湿式紡糸等の公知の紡糸方法により紡糸して、目的とする改変フィブロイン繊維を得ることができる。好ましい紡糸方法としては、湿式紡糸、又は乾湿式紡糸を挙げることができる。
湿式紡糸又は乾湿式紡糸では、改変フィブロインと耐水性付与物質を溶解させた溶媒(ドープ液)を紡糸口金(ノズル)から凝固液(凝固液槽)の中に押出して、凝固液中で改変フィブロインを固めることにより糸の形状の未延伸糸を得ることができる。
凝固液としては、脱溶媒できる溶液であればよく、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、並びにアセトン等を挙げることができる。凝固液には、適宜水を加えてもよい。凝固液の温度は、0〜30℃であることが好ましい。
凝固液が貯留される凝固浴槽は複数設けられていてもよい。
凝固した改変フィブロインは、凝固浴槽又は洗浄浴槽を離脱してから、そのままワインダーにて巻き取られてもよいし、乾燥装置を通過し、乾燥され、その後、ワインダーにて巻き取られてもよい。
凝固した改変フィブロインが凝固液中を通過する距離は、脱溶媒が効率的に行えればよく、ノズルからの紡糸原液の押出速度(吐出速度)等に応じて決定されるものであってよい。凝固した改変フィブロイン(又は紡糸原液)の凝固液中での滞留時間は、凝固した改変フィブロインが凝固液中を通過する距離、ノズルからの紡糸原液の押出速度等に応じて決定されるものであってよい。
滞留時間は、未延伸糸中からドープ溶媒が除去される時間であればよく、例えば、0.01〜3分であってよく、0.01〜1.5分であることが好ましく、0.01〜0.2分であることがより好ましく、0.03〜0.2分であることがさらに好ましく、0.05〜0.15分であることが特に好ましい。
延伸は、凝固液中で延伸(前延伸)をしてもよい。低級アルコールの蒸発を抑えるため凝固液を低温に維持し、未延伸糸の状態で引き取ってもよい。凝固液槽は多段設けてもよく、また延伸は必要に応じて、各段、又は特定の段で行ってもよい。
上記の方法で得られた未延伸糸(又は前延伸糸)は、延伸工程を経て延伸糸(改変フィブロイン繊維)とすることができる。延伸方法としては、湿熱延伸、乾熱延伸等をあげることができる。
湿熱延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液中、又はスチーム加熱中で行うことができる。温度としては、例えば、40〜200℃であってよく、50〜180℃であってよく、50〜150℃であってよく、75〜90℃であってよい。湿熱延伸における延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、1〜30倍であってよく、2〜25倍であってよく、2〜20倍であってよく、2〜15倍であってよく、2〜10倍であってよく、2〜8倍であってよく、2〜6倍であってよく、2〜4倍であってよい。ただし、延伸倍率は、所望する繊維の太さ、機械物性などの特性が得られる範囲であれば限定されるものではない。
乾熱延伸は、接触型の熱板、及び非接触型の炉などの装置を用いて行うことができるが、特に限定されるものではなく、繊維を所定の温度まで昇温させ、かつ所定の倍率で延伸が可能な装置であればよい。温度としては、例えば、100℃〜270℃であってよく、140℃〜230℃であってよく、140℃〜200℃であってよく、160℃〜200℃であってよく、160℃〜180℃であってよい。
乾熱延伸工程における延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、1〜30倍であってよく、2〜30倍であってよく、2〜20倍であってよく、3〜15倍であってよく、3〜10倍であることが好ましく、3〜8倍であることがより好ましく、4〜8倍であることがさらに好ましい。ただし、延伸倍率は、所望する繊維の太さ、機械物性などの特性が得られる範囲であれば限定されるものではない。
延伸工程は、湿熱延伸及び乾熱延伸を、それぞれ単独で行うものであってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行うものであってもよい。すなわち、延伸工程として、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を乾熱延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸行い、二段目延伸を湿熱延伸行い、更に三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
延伸工程を経た改変フィブロイン繊維の最終的な延伸倍率の下限値は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、好ましくは、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍のうちの何れかであってよい。延伸工程を経た改変フィブロイン繊維の最終的な延伸倍率の上限値は、好ましくは40倍、30倍、20倍、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、又は10倍のうちの何れかであってよい。また、例えば、3〜40倍であてよく、3〜30倍であってよく、5〜30倍であってよく、5〜20倍であってよく、5〜15倍であってよく、5〜13倍であってよい。
紡糸工程において、紡糸口金の口金形状、ホール形状、ホール数などは特に限定されるものではなく、所望の繊維径及び単糸本数等に応じて適宜選択できる。
乾燥の前又は後に、必要に応じて、未延伸糸(若しくは前延伸糸)又は延伸糸に対して、帯電抑制性、収束性及び潤滑性等を付与する目的で油剤を付与してもよい。付与する油剤の種類及び付与する量等は、特に限定されるものではなく、改変フィブロイン繊維を使用する用途、改変フィブロイン繊維の取扱い性等を考慮し適宜調整することができる。
紡糸口金のホール形状が円形である場合は、0.1mm以上0.6mm以下の孔径を例示できる。孔径が0.1mm以上であると、圧力損失を低減することができ設備費用を抑えることができる。孔径が0.6mm以下であると、繊維径を細くするための延伸操作の必要性を低減することができ、吐出から引き取りまでの間で延伸切れを起こす可能性を低減することができる。
紡糸口金を通過する際のドープ液の温度、及び紡糸口金の温度は、特に限定されるものではなく、用いるドープ液の濃度及び粘度、有機溶媒の種類等により適宜調整すればよい。当該温度は、改変フィブロインの劣化等を防止するという観点から、30℃〜100℃が好ましい。また、当該温度は、溶媒の揮発による圧力上昇、ドープ液の固形化による配管内の閉塞が発生する可能性を低減するという観点から、用いる溶媒の沸点に満たない温度を上限とすることが好ましい。これにより工程安定性が向上する。
本実施形態に係る製造方法は、ドープ液の吐出前にドープ液を濾過する工程(濾過工程)、及び/又は吐出前にドープ液を脱泡する工程(脱泡工程)を更に備えるものであってもよい。
〔改変フィブロイン繊維〕
本実施形態に係る改変フィブロイン繊維は、改変フィブロインと、耐水性付与物質とを含有する。また、上記ドープ液を用いて、上記改変フィブロイン繊維の製造方法によって形成することができる。改変フィブロインと、耐水性付与物質との含有比率は、特に制限されるものではなく、改変フィブロイン繊維の用途等に応じて、適宜設定することができる。例えば、重量基準で0.9:0.1〜0.5:0.5の範囲であってよく、より耐水性を重視する場合には、0.75:0.25〜5.5:4.5の範囲にすることがより好ましい。
本発明に係る改変フィブロイン繊維は、さらに改変フィブロイン繊維内のポリペプチド分子間で化学的に架橋させてもよい。架橋させることができる官能基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、チオール基及びヒドロキシ基等が挙げられる。例えば、ポリペプチドに含まれるリジン側鎖のアミノ基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸側鎖のカルボキシル基と脱水縮合によりアミド結合で架橋できる。真空加熱下で脱水縮合反応を行なうことにより架橋してもよいし、カルボジイミド等の脱水縮合剤により架橋させてもよい。例えば、システインを多く含有するタンパク質加水分解物を含むドープ液を紡糸して得られる改変フィブロイン繊維においては、さらに酸処理を行ない、チオール基を架橋させても良い。架橋させることで、改変フィブロイン繊維の収縮率低減効果をより安定して得られ易くなる。
ポリペプチド分子間の架橋は、カルボジイミド、グルタルアルデヒド等の架橋剤を用いて行ってもよく、トランスグルタミナーゼ等の酵素を用いて行ってもよい。カルボジイミドは、一般式RN=C=NR(但し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基を含む有機基を示す。)で示される化合物である。カルボジイミドの具体例として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等が挙げられる。これらの中でも、EDC及びDICはポリペプチド分子間のアミド結合形成能が高く、架橋反応し易いことから好ましい。
架橋処理は、混合フィブロイン繊維に架橋剤を付与して真空加熱乾燥で架橋するのが好ましい。架橋剤は純品を混合フィブロイン繊維に付与してもよいし、炭素数1〜5の低級アルコール及び緩衝液等で0.005〜10質量%の濃度に希釈したものを混合フィブロイン繊維に付与してもよい。架橋処理は、温度20〜45℃で3〜42時間行うのが好ましい。架橋処理により、混合フィブロイン繊維に更に高い応力(強度)を付与することができる。
<改変フィブロイン繊維の物性評価>
以下のようにして、改変フィブロイン繊維の物性を測定し、評価することができる。
(a)光学顕微鏡を用いて繊維の直径を求める。
(b)温度20℃、相対湿度65%の条件で引張り試験機(INSTRON3342)又はTextechno社製の単糸強伸度測定装置「FAVIMAT」を用いて繊維の応力、初期弾性率、伸度(破断点変位、変位)を測定する。INSTRON3342」を使用した引張試験では10m秒間隔で測定することが好ましい。例えば、改変フィブロイン繊維のサンプルを厚紙で作製した型枠に貼り付け、つかみ具間距離を20mm、引張り速度を10mm/分として行えばよい。ロードセル容量10N、つかみ冶具はクリップ式でよい。測定値は、例えば、サンプル数n=5の平均値として算出することが好ましい。
<改変フィブロイン繊維の収縮性評価>
改変フィブロイン繊維は、沸点未満の水に接触(湿潤)させることにより収縮する特性を有する。改変フィブロイン繊維において、このような収縮が少ないほど好ましい。
収縮は、以下の方法で求められる収縮率を指標として評価することができる。
長さ約30cmの複数本の改変フィブロイン繊維を束ね、繊度150デニールの繊維束とする。この繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態で繊維束を40℃の水に5分間浸漬し収縮させる。収縮したフィブロイン繊維束を水中から取り出し、3分経過後、0.8gの鉛錘を取り付けたまま、各改変フィブロイン繊維束の長さを測定する。収縮率は下記式に従って算出される。
収縮率(%)={1−(収縮後の繊維の長さ/収縮前の繊維(原糸)の長さ)}×100
<改変フィブロインフィルム>
改変フィブロイン成形体がフィルム状の成形体(タンパク質フィルム)である場合、本実施形態に係る改変フィブロインフィルムは、本実施形態に係るドープ溶液を基材表面にキャスト成形し、乾燥及び/又は脱溶媒することにより得ることができる。
改変フィブロインフィルムを形成する際のドープ溶液の粘度は15〜80cP(センチポアズ)であることが好ましく、20〜70cPであることがより好ましい。
ドープ溶液全量を100質量%としたとき、本発明に係る改変フィブロイン及び耐水性付与物質の合計濃度は3〜50質量%であることが好ましく、3.5〜35質量%であることがより好ましく、4.2〜15.8質量%であることがさらに好ましい。
基材は、樹脂基板、ガラス基板、金属基板等であってよい。基材は、キャスト成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、好ましくは樹脂基板である。樹脂基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、又はこれらのフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであってよい。基材は、HFIP、DMSO溶媒等に対して安定であり、ドープ溶液を安定してキャスト成形でき、成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、PETフィルム又はPETフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであることがより好ましい。
具体的な手順を説明すると、まずドープ液を基材表面に流延し、アプリケーター、ナイフコーター、バーコーター等の膜厚制御手段を使用して、所定の厚さ(例えば、乾燥及び/又は脱溶媒後の厚さで1〜1000μm)の濡れ膜を作製する。
乾燥及び/又は脱溶媒は、乾式又は湿式で行うことができる。乾式で行う方法としては、真空乾燥、熱風乾燥、風乾等を挙げることができる。湿式で行う方法としては、キャストフィルムを脱溶媒液(凝固液とも言う)に浸漬して溶媒を脱離する方法等を挙げることができる。脱溶媒液として、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール等のアルコール液、水とアルコールとの混合液等を挙げることができる。脱溶媒液(凝固液)の温度は0〜90℃であることが好ましい。
乾燥及び/又は脱溶媒後の未延伸フィルムは、水中で1軸延伸又は2軸延伸することができる。2軸延伸は、逐次延伸でも同時2軸延伸でもよい。2段以上の多段延伸をしてもよい。延伸倍率は、縦、横ともに、好ましくは1.01〜6倍、より好ましくは1.05〜4倍である。この範囲であると応力−歪のバランスがとりやすい。水中延伸は、20〜90℃の水温で行われることが好ましい。延伸後のフィルムは、50〜200℃の乾熱で5〜600秒間熱固定することが好ましい。この熱固定により、常温における寸法安定性が得られる。なお、1軸延伸したフィルムは1軸配向フィルムとなり、2軸延伸したフィルムは2軸配向フィルムとなる。
<フィルムの耐水性評価>
フィルムの耐水性は、塩類の飽和水溶液を用いた飽和塩法を利用し、高湿度下での吸湿の度合いを測定することにより評価することができる。
塩類としては、硫酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム等を挙げることができる。
フィルムの耐水性は、例えば、硫酸カリウムの飽和水溶液を入れたファルコンチューブ等の密閉容器に、適当な大きさに切断したフィルムを、水溶液に浸からないように設置し、例えば、相対湿度98%のような高湿度で平衡状態にある空気中で、20〜48時間静置し、フィルムの重量及び水分含量を測定し、重量あたりの水分含量より水分率をもとめることにより、評価することができる。
〔製品〕
本実施形態に係る改変フィブロイン繊維は、各種の製品に応用することができる。このような製品としては、例えば、繊維、糸、布帛、編み物、組み物、不織布、紙及び綿等を挙げることができる。繊維としては、例えば、長繊維、短繊維、モノフィラメント、又はマルチフィラメント等を挙げることができ、糸としては、紡績糸、撚糸、仮撚糸、加工糸、混繊糸、又は混紡糸等を挙げることができる。さらに、これらの繊維や糸から、織物等の布帛、編物、組み物、若しくは不織布等、紙及び綿等を製造することができる。また、ロープ、手術用縫合糸、電気部品用の可撓性止め具、さらには移植用生理活性材料(例えば、人工靭帯及び大動脈バンド)等の高強度用途にも応用できる。これらの製品は、公知の方法により製造することができる。
これらの製品は、改変フィブロインと耐水性付与物質とを含む製品であってもよく、本実施形態に係るドープ液の凝固物を含む製品であってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔改変フィブロインの製造〕
(1)発現ベクターの作製
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)、配列番号37で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(PRT918)、及び配列番号40で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(PRT966)を設計した。なお、配列番号15で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列を有し、さらにN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されている。
次に、PRT799、PRT918及びPRT966をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、それぞれタンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
(2)改変フィブロインの発現
(1)で得られた発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表4)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2019194249
当該シード培養液を500mLの生産培地(表5)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
Figure 2019194249
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、改変フィブロインを発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とする改変フィブロインサイズのバンドの出現により、目的とする改変フィブロインの発現を確認した。
(3)改変フィブロインの精製
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社製)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収することにより、改変フィブロイン(PRT799、PRT918及びPRT966)を得た。
〔タンパク質加水分解物を含む改変フィブロイン繊維の製造及び評価〕
(実施例1〜2)
(1)ドープ液の調製
ギ酸(純度99%)を溶解用溶媒として用い、上記のようにして得られた改変フィブロイン(PRT799)と、タンパク質加水分解物として数平均分子量750の羽毛ケラチン加水分解物を下記の比率(重量%)で混合し、攪拌して室温で溶解させた。目開き1μmの金属フィルターで濾過し、遠心分離した後、脱泡してドープ液を得た。なお、上記羽毛ケラチン加水分解物は、羽毛を国際公開第2017/038814号に開示の方法に準じて、アルカリ加水分解することで製造した。
ギ酸:改変フィブロイン:タンパク質加水分解物=64:26:10(実施例1)
ギ酸:改変フィブロイン:タンパク質加水分解物=54:26:20(実施例2)
ギ酸:改変フィブロイン:タンパク質加水分解物=74:26:0(比較例1)
(2)紡糸
調製したドープ液をリザーブタンクに充填し、0.2mm径のモノホールノズルからギアポンプを用い100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。凝固後、100質量%メタノール凝固浴槽中で延伸を行った。水洗浄浴中で洗浄及び延伸後、乾熱板を用いて乾燥させ、得られた改変フィブロイン繊維(原糸)を卓上の紡糸装置を用いて巻き取った。乾湿式紡糸の条件は以下のとおりである。
押出しノズル直径:0.2mm
凝固浴延伸倍率:1〜1.5倍
水洗浄浴延伸倍率:3倍
凝固液(メタノール)の温度:5℃
乾燥温度:60℃
エアギャップ長さ:2mm
(3)改変フィブロイン繊維の収縮性評価
上記(2)で得られた改変フィブロイン繊維(原糸)を長さ約30cmに揃えて束ね、繊度150デニールのフィブロイン繊維束とした。各フィブロイン繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態でフィブロイン繊維束を40℃の水に5分間浸漬して収縮させた。収縮した繊維束を水中から取り出し、3分経過後、0.8gの鉛錘を取り付けたまま、各改変フィブロイン繊維束の長さを測定した。収縮率は下記式に従って算出した。
収縮率(%)={1−(収縮後の繊維の長さ/収縮前の繊維(原糸)の長さ)}×100
実施例1〜2及び比較例1の改変フィブロイン繊維の収縮率を表6に示す。表6に示す収縮率は、比較例1(PRT799単独)の改変フィブロイン繊維の収縮率の値を100としたときの相対値である。
Figure 2019194249
PRT799に対してタンパク質加水分解物を当量以下の割合で混合した改変フィブロイン繊維(実施例1及び2)は、PRT799単独の改変フィブロイン繊維(比較例1)と比べて、優れた収縮率の低減効果を得ることができた。また、PRT799単独の改変フィブロイン繊維(比較例1)を基準に見ると、タンパク質加水分解物を混合した改変フィブロイン繊維は、タンパク質加水分解物の割合が高いほど、更に収縮率の低減効果を付与可能であることが認められた(実施例1及び2)。
(4)改変フィブロイン繊維の物性評価
上記(2)で得られた原糸の物性を以下の方法で測定した。
(a)光学顕微鏡を用いてフィブロイン繊維の直径を求めた。
(b)温度20℃、相対湿度65%の条件で引張り試験機(INSTRON3342)を用いて改変フィブロイン繊維の応力を測定した。引張試験では10m秒間隔で測定した。各サンプルは厚紙で作製した型枠に貼り付け、つかみ治具間距離は20mm、引張り速度は10mm/分とした。ロードセル容量10N、つかみ冶具はクリップ式とした。測定値はサンプル数n=5の平均値とした。
実施例1及び比較例1の各原糸の物性評価結果を表7に示す。表7の応力値は、比較例1(PRT799単独)の改変フィブロイン繊維の応力の値を100としたときの相対値である。
Figure 2019194249
PRT799に対してタンパク質加水分解物を当量以下の割合で混合した改変フィブロイン繊維(実施例1)は、PRT799単独の改変フィブロイン繊維(比較例1)と比べて、応力が維持されていることが確認された。すなわち、タンパク質加水分解物を混合した改変フィブロイン繊維(実施例1)は、応力を維持したまま、優れた収縮率の低減効果を得ることができた。
(実施例3〜18)
(1)ドープ液の調製
上記改変フィブロインの製造工程で得られた改変フィブロイン(PRT799)26重量%とギ酸74重量%を混合攪拌して改変フィブロイン溶液40gを調製した。表8に示したタンパク質加水分解物を表8の添加量(g)で添加し、改変フィブロイン溶液に対する各タンパク質加水分解物の混合比率を10重量%又は20重量%とした他は、実施例1〜2と同様の手順でドープ液を調製した。なお、羽毛ケラチン加水分解物は、実施例1〜2で使用したものと同一である。
Figure 2019194249
(2)紡糸
上記(1)で調製した各ドープ液をリザーブタンクにそれぞれ充填し、実施例1〜2と同様の手順で改変フィブロイン繊維を製造した。
(3)改変フィブロイン繊維の収縮性評価
上記(2)で得られた改変フィブロイン繊維の収縮性を実施例1〜2と同様の手順で評価し、収縮率を算出した。上記(3)で算出した改変フィブロイン繊維の収縮率と収縮低減量を表9に示した。表9の収縮率の相対値は、比較例1(PRT799単独)の繊維の収縮率の値を100としたときの相対値であり、この値が小さい程、繊維の収縮が低減されたことを意味する。表9の収縮低減量は、比較例1(PRT799単独)の繊維の収縮長[mm](収縮長[mm]=収縮前の繊維の長さ−収縮後の繊維の長さ)を1としたときの相対値であり、この値が大きい程、繊維の収縮が低減されたことを意味する。
Figure 2019194249
PRT799に対してタンパク質加水分解物を当量以下の割合で混合した改変フィブロイン繊維(実施例3〜18)は、PRT799単独の改変フィブロイン繊維(比較例1)と比べて、優れた収縮率の低減効果を得ることができた。また、PRT799単独の改変フィブロイン繊維(比較例1)を基準に見ると、タンパク質加水分解物を混合した改変フィブロイン繊維は、タンパク質加水分解物の割合が高いほど、更に収縮率の低減効果を付与可能であることが認められた(実施例3〜6及び実施例8〜17)。
(4)改変フィブロイン繊維の物性評価
上記(2)で得られた繊維の物性を以下の方法で測定した。温度20℃、相対湿度65%の環境下でTextechno社製の単糸強伸度測定装置である「FAVIMAT」を使用し、ランダムにサンプリングした15本の繊維の繊度と応力を測定し(サンプル数=15)、異常値を除いて平均値を算出した。測定条件は、ロードセル容量210cN、ゲージ長20mm、引張速度10mm/minとした。
実施例3、5、7、8、10、12、14、16及び18及び比較例1の各繊維の評価結果を表10に示した。なお、表10の応力の相対値は、比較例1(PRT799単独)の繊維の応力の値を100としたときの相対値である。
Figure 2019194249
PRT799に対してタンパク質加水分解物を当量以下の割合で混合した改変フィブロイン繊維(実施例3、5、7、8、10、12、14、16及び18)は、PRT799単独の改変フィブロイン繊維(比較例1)と比べて、応力が維持されていることが確認された。すなわち、これらの実施例のタンパク質加水分解物を混合した改変フィブロイン繊維は、応力を維持したまま、優れた収縮率の低減効果を得ることができた。
〔修飾デンプンを含む改変フィブロイン繊維の製造及び評価〕
(実施例19)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
デンプン(和光純薬工業株式会社製)200mgを11400mgの溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に溶解させた後、これにフェニルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)400mgを添加し、90℃で4時間撹拌して反応させた。これにより、デンプンのヒドロキシル基とフェニルイソシアネートのイソシアネート基とが反応して、フェニル基(機能性官能基)が、ウレタン結合を介して結合した修飾デンプン(修飾ヒドロキシル基含有ポリマー)を得た。修飾デンプンは、仕込み比から求めた修飾率(ヒドロキシル基が機能性官能基に変換された割合)が100%であった。
反応液を室温まで冷却した後、上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末300mgを反応液に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。紡糸原液中の修飾デンプンの含有量は、修飾デンプンとデンプンの総含有量を基準として、17質量%である。
<タンパク質繊維の製造>
調製した紡糸原液を60℃にて目開き5μmの金属フィルターで濾過し、次いで30mLのステンレスシリンジ内で静置し、脱泡させた後に、ニードル径0.2mmのソリッドノズルから窒素ガスを用い100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。吐出温度は60℃であり、吐出圧は0.3MPaであった。凝固後、得られた原糸を巻き取り速度3.00m/分で巻き取り、自然乾燥させてタンパク質繊維(改変フィブロイン繊維)を得た。
<水収縮試験>
得られたタンパク質繊維を長さ約10cmに切断し、水への浸漬前の糸の長さ(cm)を測定した。次いで、糸を40℃の水浴に1分間浸漬した。その後、糸を水浴から取り出して、15分間室温で真空乾燥させた後、乾燥後の糸の長さを測定した。タンパク質繊維の水収縮率を以下の式に従って算出した。
水収縮率(%)={(浸漬前の長さ/浸漬・乾燥後の長さ)−1}×100
(実施例20)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
デンプン(和光純薬工業株式会社製)253mgを7600mgの溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に溶解させた後、これに無水酢酸(和光純薬工業株式会社製)147mgを添加し、90℃で4時間撹拌して反応させた。これにより、デンプンのヒドロキシル基と無水酢酸とが反応して、アセチル基(機能性官能基)が結合した修飾デンプン(修飾ヒドロキシル基含有ポリマー)を得た。修飾デンプンは、仕込み比から求めた修飾率(ヒドロキシル基が機能性官能基に変換された割合)が100%であった。
反応液を室温まで冷却した後、上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末2000mgを反応液に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。紡糸原液中の修飾デンプンの含有量は、修飾デンプンとデンプンの総含有量を基準として、17質量%である。
<タンパク質繊維の製造、及び水収縮試験>
調製した紡糸原液を使用して、実施例19と同様の手順でタンパク質繊維の製造、及び水収縮試験を実施した。
(実施例21)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
デンプン(和光純薬工業株式会社製)215mgを7600mgの溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に溶解させた後、これに無水酢酸(和光純薬工業株式会社製)185mgを添加し、90℃で4時間撹拌して反応させた。これにより、デンプンのヒドロキシル基と無水酢酸とが反応して、アセチル基(機能性官能基)が結合した修飾デンプン(修飾ヒドロキシル基含有ポリマー)を得た。修飾デンプンは、仕込み比から求めた修飾率(ヒドロキシル基が機能性官能基に変換された割合)が50%であった。
反応液を室温まで冷却した後、上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末2000mgを反応液に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。紡糸原液中の修飾デンプンの含有量は、修飾デンプンとデンプンの総含有量を基準として、17質量%である。
<タンパク質繊維の製造、及び水収縮試験>
調製した紡糸原液を使用して、実施例19と同様の手順でタンパク質繊維の製造、及び水収縮試験を実施した。
(実施例22)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
ポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬工業株式会社製)128mgを7600mgの溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に溶解させた後、これにフェニルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)272mgを添加し、90℃で4時間撹拌して反応させた。これにより、PVAのヒドロキシル基とフェニルイソシアネートとが反応して、フェニル基(機能性官能基)が、ウレタン結合を介して結合した修飾PVA(修飾ヒドロキシル基含有ポリマー)を得た。修飾PVAは、仕込み比から求めた修飾率(ヒドロキシル基が機能性官能基に変換された割合)が100%であった。
反応液を室温まで冷却した後、上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末2000mgを反応液に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。紡糸原液中の修飾PVAの含有量は、修飾PVAとPVAの総含有量を基準として、17質量%である。
<タンパク質繊維の製造、及び水収縮試験>
調製した紡糸原液を使用して、実施例1と同様の手順でタンパク質繊維の製造、及び水収縮試験を実施した。
(実施例23)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
ポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬工業株式会社製)193mgを7600mgの溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に溶解させた後、これにフェニルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)207mgを添加し、90℃で4時間撹拌して反応させた。これにより、PVAのヒドロキシル基とフェニルイソシアネートとが反応して、フェニル基(機能性官能基)が、ウレタン結合を介して結合した修飾PVA(修飾ヒドロキシル基含有ポリマー)を得た。修飾PVAは、仕込み比から求めた修飾率(ヒドロキシル基が機能性官能基に変換された割合)が50%であった。
反応液を室温まで冷却した後、上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末2000mgを反応液に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。紡糸原液中の修飾PVAの含有量は、修飾PVAとPVAの総含有量を基準として、17質量%である。
<タンパク質繊維の製造、及び水収縮試験>
調製した紡糸原液を使用して、実施例19と同様の手順でタンパク質繊維の製造、及び水収縮試験を実施した。
(比較例2)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末1200mgを溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。
<タンパク質繊維の製造、及び水収縮試験>
調製した紡糸原液を使用して、実施例19と同様の手順でタンパク質繊維の製造、及び水収縮試験を実施した。
(比較例3)
<紡糸原液(ドープ液)の調製>
上記で得た改変フィブロイン(PRT799)の粉末3000mg、及びデンプン(和光純薬工業株式会社製)600mgを溶媒(4重量%のLiClを含むジメチルスルホキシド(DMSO))に添加し、90℃で12時間撹拌して溶解させ、透明な紡糸原液を得た。
<タンパク質繊維の製造、及び水収縮試験>
調製した紡糸原液を使用して、実施例19と同様の手順でタンパク質繊維の製造、及び水収縮試験を実施した。
結果を表11に示す。
Figure 2019194249
機能性官能基として疎水性の官能基(フェニル基又はアセチル基)が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマー(修飾デンプン又は修飾PVA)と、タンパク質(改変フィブロイン)とを含む紡糸原液を用いてタンパク質繊維を製造することにより(実施例19〜23)、タンパク質のみを含む紡糸原液を用いた場合(比較例2)、及びタンパク質と修飾されていないヒドロキシル基含有ポリマーとを含む紡糸原液を用いた場合(比較例3)と比べて、水収縮率が低減され、耐水性を有するタンパク質繊維が得られた。
(参考例1:改変フィブロインの難燃性評価)
4.0質量%になるようにLiClを溶解させたジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として用意し、そこに改変フィブロイン(PRT799)の凍結乾燥粉末を、濃度24質量%となるよう添加し、シェーカーを使用して3時間溶解させた。その後、不溶物と泡を取り除き、改変フィブロイン溶液(紡糸原液)を得た。
調製した紡糸原液を90℃にて目開き5μmの金属フィルターで濾過し、次いで30mLのステンレスシリンジ内で静置し、脱泡させた後に、ニードル径0.2mmのソリッドノズルから100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。吐出温度は90℃であった。凝固後、得られた原糸を巻き取り、自然乾燥させて改変フィブロイン繊維(原料繊維)を得た。
得られた原料繊維を撚り合せた撚糸を使用して、丸編機を使用した丸編みで編地を製造した。編地は、太さ180デニール、ゲージ数18とした。得られた編地から20g切り出して試験片とした。
燃焼性試験は、消防庁危険物規制課長 消防危50号平成7年5月31日の粉粒状又は融点の低い合成樹脂の試験方法に準拠した。試験は、温度22℃、相対湿度45%、気圧1021hPaの条件下で実施した。測定結果(酸素濃度(%)、燃焼率(%)、換算燃焼率(%))を表12に示す。
Figure 2019194249
難燃性試験の結果、改変フィブロイン(PRT799)繊維で編んだ編地の限界酸素指数(LOI)値は27.2であった。一般にLOI値が26以上あれば難燃性があるとされる。改変フィブロインは、難燃性に優れていることが分かる。
改変(人造)フィブロイン繊維は、限界酸素指数(LOI)値が、18以上であってよく、20以上であってもよく、22以上であってもよく、24以上であってもよく、26以上であってもよく、28以上であってもよく、29以上であってもよく、30以上であってもよい。上記のLOI値は、消防庁危険物規制課長 消防危50号平成7年5月31日の粉粒状又は融点の低い合成樹脂の試験方法に準拠して測定される値である。
(参考例2:改変フィブロインの吸湿発熱性評価)
4.0質量%になるようにLiClを溶解させたジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として用意し、そこに改変フィブロインの凍結乾燥粉末を、濃度24質量%となるよう添加し、シェーカーを使用して3時間溶解させた。その後、不溶物と泡を取り除き、改変フィブロイン溶液(紡糸原液)を得た。
調製した紡糸原液を60℃にて目開き5μmの金属フィルターで濾過し、次いで30mLのステンレスシリンジ内で静置し、脱泡させた後に、ニードル径0.2mmのソリッドノズルから100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。吐出温度は60℃であった。凝固後、得られた原糸を巻き取り、自然乾燥させて改変フィブロイン繊維(原料繊維)を得た。
比較のため、原料繊維として、市販されているウール繊維、コットン繊維、テンセル繊維、レーヨン繊維及びポリエステル繊維を用意した。
各原料繊維を使用して、横編機を使用した横編みで編地を製造した。原料繊維としてPRT918繊維を使用した編地は、太さ:1/30N(毛番手単糸)、ゲージ数:18とした。原料繊維としてPRT799繊維を使用した編地は、太さ:1/30N(毛番手単糸)、ゲージ数:16とした。その他の原料繊維を使用した編地は、PRT918繊維及びPRT799繊維を使用した編地とほぼ同一のカバーファクターとなるように太さ及びゲージ数を調整した。具体的には、以下のとおりである。
ウール 太さ:2/30N(双糸)、ゲージ数:14
コットン 太さ:2/34N(双糸)、ゲージ数:14
テンセル 太さ:2/30N(双糸)、ゲージ数:15
レーヨン 太さ:1/38N(単糸)、ゲージ数:14
ポリエステル 太さ:1/60N(単糸)、ゲージ数:14
10cm×10cmに裁断した編地を2枚合わせにし、四辺を縫い合わせて試験片(試料)とした。試験片を低湿度環境(温度20±2℃、相対湿度40±5%)で4時間以上放置した後、高湿度環境(温度20±2℃、相対湿度90±5%)に移し、試験片内部中央に取り付けた温度センサーにより30分間、1分間隔で温度の測定を行った。
測定結果から、下記式Aに従って、最高吸湿発熱度を求めた。
式A:最高吸湿発熱度={(試料を、試料温度が平衡に達するまで低湿度環境下に置いた後、高湿度環境下に移したときの試料温度の最高値)−(試料を、試料温度が平衡に達するまで低湿度環境下に置いた後、高湿度環境下に移すときの試料温度)}(℃)/試料重量(g)
図6は、吸湿発熱性試験の結果の一例を示すグラフである。グラフの横軸は、試料を低湿度環境から高湿度環境に移した時点を0とし、高湿度環境での放置時間(分)を示す。グラフの縦軸は、温度センサーで測定した温度(試料温度)を示す。図6に示したグラフ中、Mで示した点が、試料温度の最高値に対応している。
最高吸湿発熱度の算出結果を表13に示す。
Figure 2019194249
表13に示すとおり、改変フィブロイン(PRT918及びPRT799)は、既存の材料と比べて、最高吸湿発熱度が高く、吸湿発熱性に優れていることが分かる。
改変(人造)フィブロイン繊維は、上記式Aに従って求められる最高吸湿発熱度が0.025℃/g超であってよく、0.026℃/g以上であってもよく、0.027℃/g以上であってもよく、0.028℃/g以上であってもよく、0.029℃/g以上であってもよく、0.030℃/g以上であってもよく、0.035℃/g以上であってもよく、0.040℃/g以上であってもよい。最高吸湿発熱度の上限に特に制限はないが、通常、0.060℃/g以下である。
(参考例3:改変フィブロインの保温性評価)
4.0質量%になるようにLiClを溶解させたジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として用意し、そこに改変フィブロインの凍結乾燥粉末を、濃度24質量%となるよう添加し、シェーカーを使用して3時間溶解させた。その後、不溶物と泡を取り除き、改変フィブロイン溶液(紡糸原液)を得た。
調製した紡糸原液を60℃にて目開き5μmの金属フィルターで濾過し、次いで30mLのステンレスシリンジ内で静置し、脱泡させた後に、ニードル径0.2mmのソリッドノズルから100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。吐出温度は60℃であった。凝固後、得られた原糸を巻き取り、自然乾燥させて改変フィブロイン繊維(原料繊維)を得た。
比較のため、原料繊維として、市販されているウール繊維、シルク繊維、綿繊維、レーヨン繊維及びポリエステル繊維を用意した。
各原料繊維を使用して、横編機を使用した横編みで編地を製造した。原料繊維としてPRT966繊維を使用した編地は、番手:30Nm、撚り本数:1、ゲージ数:18GG、目付け:90.1g/mとした。原料繊維としてPRT799繊維を使用した編地は、番手:30Nm、撚り本数:1、ゲージ数GG:16、目付け:111.0g/mとした。その他の原料繊維を使用した編地は、PRT966繊維及びPRT799繊維を使用した編地とほぼ同一のカバーファクターとなるように太さ及びゲージ数を調整した。具体的には、以下のとおりである。
ウール 番手:30Nm、撚り本数:2、ゲージ数:14GG、目付け:242.6g/m
シルク 番手:60Nm、撚り本数:2、ゲージ数:14GG、目付け:225.2g/m
綿 番手:34Nm、撚り本数:2、ゲージ数:14GG、目付け:194.1g/m
レーヨン 番手:38Nm、撚り本数:1、ゲージ数:14GG、目付け:181.8g/m
ポリエステル 番手:60Nm、撚り本数:1、ゲージ数:14GG、目付け:184.7g/m
保温性は、カトーテック株式会社製のKES−F7サーモラボII試験機を使用し、ドライコンタクト法(皮膚と衣服が乾燥状態で直接触れた時を想定した方法)を用いて評価した。20cm×20cmに裁断した編地1枚を試験片(試料)とした。試験片を、一定温度(30℃)に設定した熱板にセットし、風洞内風速30cm/秒の条件で、試験片を介して放散された熱量(a)を求めた。試験片をセットしない状態で、上記同様の条件で放散された熱量(b)を求め、下記の式Bに従い保温率(%)を算出した。
式B:保温率(%)=(1−a/b)×100
測定結果から、下記式Cに従って、保温性指数を求めた。
式C:保温性指数=保温率(%)/試料の目付け(g/m
保温性指数の算出結果を表14に示す。保温性指数が高いほど、保温性に優れる材料と評価することができる。
Figure 2019194249
表14に示すとおり、改変フィブロイン(PRT966及びPRT799)は、既存の材料と比べて、保温性指数が高く、保温性に優れていることが分かる。
改変フィブロイン繊維は、優れた保温性を有することが好ましく、上記式Cに従って求められる保温性指数が0.20以上であってよい。
改変フィブロイン繊維の保温性指数は、0.22以上であってよく、0.24以上であってよく、0.26以上であってよく、0.28以上であってよく、0.30以上であってよく、0.32以上であってよい。保温性指数の上限に特に制限はないが、例えば、0.60以下、又は0.40以下であってよい。

Claims (22)

  1. 改変フィブロインと耐水性付与物質と溶媒とを含む、ドープ液。
  2. 前記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物、及びヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のドープ液。
  3. 前記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物であり、前記改変フィブロインと前記溶媒との合計重量を100重量%としたとき、前記改変フィブロインの含有量が5〜40重量%であり、前記タンパク質加水分解物の含有量が5〜35重量%である、請求項1に記載のドープ液。
  4. 前記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、エラスチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、卵殻膜タンパク質加水分解物、卵白タンパク質加水分解物、コンキリオン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、アーモンドタンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物、エンドウタンパク質加水分解物、ポテトタンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、エンバクタンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物及び藻タンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項2又は3に記載のドープ液。
  5. 前記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物及びエンドウタンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載のドープ液。
  6. 前記タンパク質加水分解物の分子量が、300〜50,000である、請求項2〜5のいずれか一項に記載のドープ液。
  7. 前記溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、N−メチルモルホリンN−オキシド及びギ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のドープ液。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液を用いて成形する工程を含む、改変フィブロイン成形体の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液を凝固液に押し出し、凝固液中で未延伸の改変フィブロイン繊維を形成させる工程を備える、改変フィブロイン繊維の製造方法。
  10. 改変フィブロインと耐水性付与物質とを含む、改変フィブロイン繊維。
  11. 前記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物、及びヒドロキシル基含有ポリマーに機能性官能基が結合した修飾ヒドロキシル基含有ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の改変フィブロイン繊維。
  12. 前記耐水性付与物質がタンパク質加水分解物であり、前記改変フィブロインと前記タンパク質加水分解物との含有比率が、重量基準で0.9:0.1〜0.5:0.5である、請求項10に記載の改変フィブロイン繊維。
  13. 前記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、エラスチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、卵殻膜タンパク質加水分解物、卵白タンパク質加水分解物、コンキリオン加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、アーモンドタンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物、エンドウタンパク質加水分解物、ポテトタンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、エンバクタンパク質加水分解物、ゴマタンパク質加水分解物及び藻タンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項11又は12に記載の改変フィブロイン繊維。
  14. 前記タンパク質加水分解物が、ケラチン加水分解物、コラーゲン加水分解物、シルクタンパク質加水分解物、ミルクタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、米タンパク質加水分解物及びエンドウタンパク質加水分解物、並びにこれらの加水分解物の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維。
  15. 前記タンパク質加水分解物の分子量が、300〜50,000である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維。
  16. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液の凝固物を含む製品であって、繊維、糸、布帛、編み物、組み物、不織布、紙及び綿からなる群から選択される、製品。
  17. 前記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含む改変フィブロインであって、
    前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当する、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液、請求項10〜15のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維、又は請求項16に記載の製品。
    [式1中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が83%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
  18. 前記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、
    前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当する、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液、請求項10〜15のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維、又は請求項16に記載の製品。
    [式1中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が83%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
  19. 前記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、
    前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液、請求項10〜15のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維、又は請求項16に記載の製品。
    [式1中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が83%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
  20. 前記改変フィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]m、又は式2:[(A)モチーフ−REP]m−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含み、
    前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当する、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液、請求項10〜15のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維、又は請求項16に記載の製品。
    [式1及び式2中、(A)モチーフは2〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
  21. 前記改変フィブロインが、26.0以上の限界酸素指数(LOI)値を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液、請求項10〜15のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維、又は請求項16に記載の製品。
  22. 前記改変フィブロインが、0.025℃/g超の、下記式Aに従って求められる最高吸湿発熱度を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドープ液、請求項10〜15のいずれか一項に記載の改変フィブロイン繊維、又は請求項16に記載の製品。
    式A:最高吸湿発熱度={(試料を、試料温度が平衡に達するまで低湿度環境下に置いた後、高湿度環境下に移したときの試料温度の最高値)−(試料を、試料温度が平衡に達するまで低湿度環境下に置いた後、高湿度環境下に移すときの試料温度)}(℃)/試料重量(g)[式A中、低湿度環境は、温度20℃及び相対湿度40%の環境を意味し、高湿度環境は、温度20℃及び相対湿度90%の環境を意味する。]
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