JPWO2019163354A1 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、発光性薄膜、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、発光性薄膜、表示装置及び照明装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、高い発光効率を示し、発光を長寿命化することも可能な有機エレクトロルミネッセンス素子、発光性薄膜、表示装置及び照明装置を提供するものである。有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間に設けられた発光層と、を備え、前記発光層中にリン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する。発光性薄膜は、リン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する。表示装置及び照明装置は、発光層中にリン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する。

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、発光性薄膜、表示装置及び照明装置に関する。
テレビやコンピュータ等の映像表示部であるディスプレイは、現代社会において欠かすことのできない電子デバイスの一つとなっている。ディスプレイは、近年、大型化や薄型化が加速しており、これに伴って有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ということがある。)素子の開発も盛んになっている。有機EL素子は、構造が比較的単純で視野角にも富んだ自発光型の全固体発光素子であり、ディスプレイの構成要素として理想的な特性を持つため、今後の更なる普及が見込まれている。
一般に、有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光層等の機能性薄膜が積層された構造を有している。陽極と陰極との間に設けられる発光層には、発光性を示す有機化合物が用いられている。陽極と陰極との間に電圧が印加されると、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが、発光層に含まれる発光性化合物上で再結合して励起子を生じる。この励起子が励起状態から基底状態へと失活する際、エネルギーが光として放出されることによって発光が生じる。
有機EL素子の開発においては、低価格化や量産化、発光効率や素子寿命の向上といった要求が、これまで以上に高まることが予測されている。有機EL素子の低価格化や量産化を実現する方法としては、溶液の塗布や印刷によって機能性薄膜を成膜する湿式塗布法が有効であると考えられている。そこで、現在では、従来主流であった真空蒸着法の代わりに湿式塗布法を用いる製造プロセスの開発が広く進められている。
また、発光層に用いる発光性化合物についても、様々な観点から検討がなされている。発光性化合物としては、有機EL素子が開発された当初から、主として蛍光発光性化合物が用いられてきた。しかし、電子と正孔の再結合によると、スピン統計則に従って一重項励起子と三重項励起子とが1:3の比率で生成する。そのため、一重項励起子からの遷移が発光に寄与する蛍光発光性化合物では、内部量子効率が最大でも25%に制限されていた。
これに対し、現在では、三重項励起子からの遷移が発光に寄与するリン光発光性化合物によって、理論上、100%の内部量子効率を実現できることが明らかになっている。リン光発光性化合物としては、本来は禁制である一重項励起状態から三重項励起状態へのエネルギー移動(項間交差:ISCという。)を重原子効果によって容易にした種々のリン光発光性金属錯体が開発されている。
従来、蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体とを同一の発光層で併用して、量子効率を改善する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、発光層が、ホスト材料、ホスト材料中にドーパントとして存在する蛍光発光分子、及び、蛍光発光分子にエネルギーを移動させる項間交差剤を含み、アノードとカソードとを通して電圧を印加した場合に蛍光発光分子が蛍光を発する有機発光素子が記載されている。
特許第4571359号公報
近年、有機EL素子について、発光効率や素子寿命の更なる向上が求められているが、発光性化合物のうち、青色のような短波長側の発光色を示すリン光発光性金属錯体は、長波長側の発光色を示す他のリン光発光性金属錯体と比較して、発光寿命が短い現状がある。リン光発光性金属錯体を利用することによって、理論上、内部量子効率を向上させることはできるものの、青色発光自体を利用する場合や、青色発光等を合成して白色光等を得ようとする場合、青色を示すリン光発光性金属錯体の発光寿命によって素子寿命も短くなるため、未だ発光効率と素子寿命との両立を実現できていない状況にある。
また、従来一般的に用いられている蛍光発光性化合物は、分子が孤立している状態では強い発光を示す一方、分子の濃度が高くなって分子同士が凝集すると消光を起こす性質がある。そのため、有機EL素子の発光効率の向上を狙って蛍光発光性化合物の濃度を高くしたとしても、デクスター型のエネルギー移動や自己遮蔽効果等が原因で、その効果は直ちに限度に達してしまうので、濃度の制御によって高い発光効率を実現するのは困難になっている。
また、発光性化合物の濃度を高くする手法は、特許文献1に記載されるように、蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体とを併用する場合にも消光を生じ得るし、発光層を成膜するにあたって湿式塗布法を用いる場合にも、固有の問題を生じることが知られている。例えば、塗布に用いる溶液中で発光性化合物の濃度が高くなると、分子同士が凝集し易くなるため、成膜される発光層等の機能性薄膜に、局所的な膜密度の低下や均一性の低下を生じ易くなる。このような凝集に伴う変質も、発光効率の低下をもたらすため、発光効率と素子寿命とを両立し得る新たな手法が望まれる。
そこで、本発明は、高い発光効率を示し、発光を長寿命化することも可能な有機エレクトロルミネッセンス素子、発光性薄膜、表示装置及び照明装置を提供することを目的とする。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間に設けられた発光層と、を備え、前記発光層中にリン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.前記リン光発光性金属錯体が下記一般式(DP)で表される有機金属錯体である前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2019163354
[但し、一般式(DP)中、Mは、Ir、Pt、Rh、Ru、Cu又はOsを表し、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、炭素原子又は窒素原子を表し、環Zは、A及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環、又は、5員若しくは6員の芳香族複素環を表し、環Zは、B及びBと共に形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z及び環Zは、置換基を有していてもよく、置換基同士は、互いに結合して縮環構造を形成していてもよく、互いに結合して配位子同士を連結していてもよい。L’は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、m’は、0〜2の整数を表し、n’は、1〜3の整数を表し、m’+n’は、2又は3であり、m’及びn’が2以上のとき、環Z及び環Zで表される配位子とL’は、互いに同一の構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。]
3.前記凝集誘起発光性分子が、テトラフェニルエチレン誘導体、又は、シロール誘導体である前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.リン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する発光性薄膜。
5.前記1から前記3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する表示装置。
前記1から前記3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する照明装置。
本発明によれば、高い発光効率を示し、発光を長寿命化することも可能な有機エレクトロルミネッセンス素子、発光性薄膜、表示装置及び照明装置を提供することができる。
AIE分子の凝集誘起発光性を説明する概念図である。 有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。 表示部Aの模式図である。 画素の模式図である。 パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図である。 照明装置の概略図である。 照明装置の模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、有機EL素子や発光性薄膜の発光効率と発光寿命とを両立すべく鋭意検討した結果、従来の蛍光発光性化合物に代えて、凝集により強い発光を示す凝集誘起発光性(aggregation-induced emission:AIE)分子をリン光発光性金属錯体と併用すると、リン光発光性金属錯体の発光寿命に大きく影響されることなく、有機EL素子や発光性薄膜の全体としての発光の寿命が長寿命化し、発光性化合物の全体としての発光効率も向上することを見出した。
発光性化合物として従来型の蛍光発光性化合物を用いる場合、発光効率の向上を狙って化合物の濃度を高くすると、濃度消光が起こり、却って発光効率が低下してしまうことが知られている。これに対し、発光性化合物としてAIE分子を用いると、化合物の濃度を高くした場合に、分子同士の凝集によって、寧ろ強い発光を生じる。よって、発光性化合物としてAIE分子を併用する手法は、発光効率と発光寿命とを両立する有効な手段になると考えられる。
また、一般には、発光層等に生じる膜構造の経時的変化が、有機EL素子等を劣化させる一因であると知られている。通常、電圧の印加によって発光性化合物の分子が拡散すると、分子の凝集化や結晶化が進み、発光層等の機能性薄膜の膜構造が変化し得る。このような膜構造の変化は、有機EL素子等の全体としての発光効率にも影響すると考えられている。これに対し、AIE分子は、凝集した状態で強い発光を示すことができるため、分子が拡散を始める以前に予め凝集体を形成させておくことによって、電圧の印加による膜構造の変化を少なくすることができる。この手法によると、長期間の駆動を行う場合にも、膜構造を安定に保つことができるため、リン光発光性金属錯体自体の発光寿命に大きく影響されることなく、有機EL素子等の発光の寿命を長寿命化するのに好適であると判断した。
また、AIE分子は、凝集した状態で強い発光を示すことができるため、予め凝集体を形成させておくことによって、大気中の酸素や水分等との接触を低減することができる。凝集体が形成されることによって、有機EL素子等の劣化因子である酸素や水分等との接触面積が小さくなり、大気下における発光性化合物の安定性が向上すると推察される。よって、有機EL素子等を封止するにあたって、従来よりも低い性能の封止材を採用することが可能になり、低コスト化に繋がることも期待される。
《有機EL素子》
はじめに、本実施形態に係る有機EL素子について説明する。本実施形態に係る有機EL素子は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に配置され、少なくとも発光層を含んで構成された機能性薄膜とを備える。この有機EL素子は、陽極と陰極の間に設けられた発光層中に、リン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する。
<凝集誘起発光性分子(AIE分子)>
凝集誘起発光性分子(AIE分子)は、液媒体中、分子が凝集することなく溶解又は分散している状態では、量子収率が低いため発光を発さないか、発光強度が弱く、反対に、分子が凝集して集合体を形成している状態では、量子収率が高くなって発光強度が強くなる性質を示す分子である。
本実施形態に係る有機EL素子においては、AIE分子として、前記の性質を示す適宜の分子を用いることができる。AIE分子の種類は、特に制限されるものではない。AIE分子としては、単一の発光層において、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。AIE分子の好ましい形態は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のうち、少なくとも一方を有する分子である。このような分子であれば、適切な置換基の導入等によって、必要とされる可視光領域の極大発光波長を持つ蛍光を容易に得ることができる。
AIE分子としては、具体的には、ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子、カルボラン系凝集誘起発光性分子、テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子、シロール系凝集誘起発光性分子、ローダミン系凝集誘起発光性分子の他、配位子に分子運動を抑制する部位を導入した芳香環含有金属錯体、芳香族複素環を有するその他のヘテロ化合物等が挙げられる。但し、AIE分子の種類は、これらに限定されるものではない。
(ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子)
ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子としては、下記一般式(1)で表されるベンゾフロ[2,3−c]オキサゾロ[4,5−a]カルバゾール骨格を有するベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を用いることができる。
Figure 2019163354
[但し、一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を表し、mは、0〜4の整数を表し、nは、0〜4の整数を表す。]
ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する置換基としては、ハメット則による任意の置換基定数を示す各種の電子供与基、電子求引基等が挙げられるが、特に、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、複素環基が好ましい。
ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の直鎖状又は分枝状のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、フリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インダゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基、キノキサリニル基、フェナントリジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等の芳香族複素環基や、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等の非芳香族複素環基が挙げられる。
ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体は、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基等のその他の置換基を、一般式(1)で表される骨格自体や、その骨格に置換した脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、複素環基に有していてもよい。
(カルボラン系凝集誘起発光性分子)
カルボラン系凝集誘起発光性分子としては、C1012で表される1,2−closo−ジカルバドデカボランの誘導体を用いることができる。カルボラン系凝集誘起発光性分子の特に好ましい形態は、下記一般式(2)で表されるo−カルボランの誘導体である。o−カルボランの誘導体は、π電子が非局在化しているクラスター部分が高い電子求引性を有している。1位や2位の炭素にπ電子共役ユニットを導入したカルボラン誘導体は強い蛍光を発することが、一般的に知られている(K.Kokado,et al.,Macromolecules,2009,42,1418−1420等参照)。
Figure 2019163354
[但し、一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、有機基、又は、有機金属基を表し、R及びRの少なくとも一方は、π電子共役ユニットを表す。]なお、一般式(2)において、白抜きの丸は、炭素原子を表し、黒丸は、水素原子が結合したホウ素原子を表す。一般式(2)で表されるカルボランは、正二重面体の構造を有するクラスター分子であり、式中では、背面側に位置するホウ素原子や水素原子の図示を省略している。
カルボランを置換する有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基等の飽和脂肪族炭化水素基や、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基や、芳香族炭化水素基や、複素環基等が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、前記のベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
カルボランを置換する有機金属基としては、Ir、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu、Os、Re等の金属原子が配位結合した有機基が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、トリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、インダゾール環、キノキサリン環、フェナントリジン環等が挙げられる。
カルボランは、前記のベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体と同様、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基、ハロゲン原子等、その他の置換基を、クラスター部分に置換した飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基等の有機基や、有機金属基に有していてもよい。
一般式(2)中、R及びRは、少なくとも一方がπ電子共役ユニットである限り、互いに同一の構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。また、R及びRは、互いに縮合して環を形成していてもよい。また、R及びRは、電子供与性のπ電子共役ユニットと電子受容性のπ電子共役ユニットとの組み合わせで構成されてもよいし、電子供与性のπ電子共役ユニットと非共役の原子団との組み合わせで構成されてもよい。
π電子共役ユニットとしては、例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等の有機基や、有機金属基や、共役ジエン基、エチニレン基、ヘテロ原子等の連結基によって構成される原子団ないし分子鎖が挙げられる。π電子共役ユニットは、そのπ電子共役ユニットの分子運動がカルボランの凝集によって制約され易い点で、平面的な分子鎖ないし原子団で構成されることが好ましい。
π電子共役ユニットの特に好ましい形態は、カルボランの凝集によって分子運動が制約され易く、エネルギー準位の制御や、分子運動の制御を適切に行える点等から、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である。π電子共役ユニットを構成する芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、ピレニル基等が好ましい。また、π電子共役ユニットを構成する芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基等が好ましい。具体的には、RやRとして、9−カルバゾリルフェニル基、γ−カルボニリルフェニル基、トリフェニルシリル基等も好ましく用いることができる。
(テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子)
テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子としては、下記一般式(3)で表されるテトラフェニルエチレン骨格を有するテトラフェニルエチレン誘導体を用いることができる。
Figure 2019163354
[但し、一般式(3)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、有機基、又は、有機金属基を表し、o、p、q及びrは、それぞれ独立して、0〜5の整数を表す。]
テトラフェニルエチレン誘導体を置換する有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基や、芳香族炭化水素基や、複素環基等が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、前記のベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
テトラフェニルエチレン誘導体を置換する有機金属基としては、Ir、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu、Os、Re等の金属原子が配位結合した有機基が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、前記のカルボランを置換する有機金属基と同様の基が挙げられる。
テトラフェニルエチレン誘導体は、前記のベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体と同様、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基、ハロゲン原子等、その他の置換基を、テトラフェニルエチレン骨格自体や、その骨格に置換した脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基等の有機基や、有機金属基に有していてもよい。
一般式(3)中、R〜R10は、同一の環に置換している置換基の1以上のうちで、互いに同一の構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。また、R〜R10同士は、互いに同一の構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。また、R〜R10は、同一の環に置換している置換基同士で縮合して環を形成していてもよいし、異なる環に置換している置換基同士で縮合して環を形成していてもよい。なお、テトラフェニルエチレン誘導体は、一般式(3)で表されるテトラフェニルエチレン骨格を2個以上含み、これら複数の骨格同士がR〜R10のいずれかを介して互いに連結した構造であってもよい。
テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子の具体例としては、テトラフェニルエチレンや、一般式(3)で表されるテトラフェニルエチレン誘導体のベンゼン環のパラ位に、9−カルバゾリルフェニル基、γ−カルボニリルフェニル基、4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル基等が置換した誘導体が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
(シロール系凝集誘起発光性分子)
シロール系凝集誘起発光性分子としては、シロール環にπ電子共役ユニットが結合したシロール誘導体を用いることができる。シロール系凝集誘起発光性分子の特に好ましい形態は、下記一般式(4)で表されるシロール環の3位及び4位の炭素が置換基を有していてもよいベンゼン環で置換された誘導体である。
Figure 2019163354
[但し、一般式(4)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、炭素数が1〜12の炭化水素基を表し、s及びtは、それぞれ独立して、0〜5の整数を表し、R13及びR16は、それぞれ独立して、有機基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立して、炭素数が1〜20の有機基を表す。]
シロール誘導体を置換するR11やR12としては、例えば、炭素数が1〜12の飽和脂肪族炭化水素基や、炭素数が1〜12の不飽和脂肪族炭化水素基や、炭素数が1〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、前記のベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。R11やR12としては、炭素数が1〜6の炭化水素基がより好ましく、炭素数が1〜4の炭化水素基が更に好ましい。また、sやtは、0又は1であることが好ましく、0であること、すなわちR11やR12がフェニル基であることが特に好ましい。
シロール誘導体を置換するR13やR16としては、例えば、脂肪族炭化水素基や、芳香族炭化水素基や、複素環基によって構成される原子団ないし分子鎖が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、前記のカルボランを置換する置換基と同様の基が挙げられる。R13やR16としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピラゾリル環、ピラジン環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、及び、チオフェン環のうちの1種以上によって構成されるπ電子共役ユニットがより好ましく、1以上のベンゼン環を含むπ電子共役ユニットが更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
シロール誘導体を置換するR14やR15としては、例えば、炭素数が1〜20の飽和脂肪族炭化水素基や、炭素数が1〜20の不飽和脂肪族炭化水素基や、炭素数が1〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの有機基の具体例としては、前記のベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール誘導体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。R14やR15で表される有機基は、炭化水素に限られず、N、O、S、Si等のヘテロ原子を有していてもよい。R14やR15としては、炭素数が1〜12の有機基がより好ましく、フェニル基、又は、炭素数が1〜12のアルキル基が更に好ましい。
(AIE分子の取得法)
以上のAIE分子は、従来一般的に知られている方法を利用して合成することができる。例えば、K.Kokado,et al.,Macromolecules,2009,42,1418−1420、米国特許出願公開第2012/299474号明細書、米国特許出願公開第2013/177991号明細書、米国特許出願公開第2013/89889号明細書、Qin W.,et al.,Chem.Commun.,2015,51,7321−7324、Kim J.Y.,et al.,Adv.Mater.2013,25,2666−2671、Chen B.,et al.,Chem.Eur.J.,2014,20,1931−1939に記載された方法を用いることができる。また、ローダミン系凝集誘起発光性分子としては、例えば、S.Kamino,et al.,Chem.Commun.,2010,46,9013−9015に記載されたものを用いることができる。
(AIE分子の凝集誘起発光性)
図1は、AIE分子の凝集誘起発光性を説明する概念図である。図1に示すように、凝集誘起発光性を示さない従来型の蛍光発光性化合物は、濃度が増大すると消光を生じて発光強度が低下する。これに対し、AIE分子は、濃度が増大するほど発光強度が高くなる性質を有している。発光性化合物が、このような凝集誘起発光性を有しているか否かは、溶媒中に分子を分散し、濃度毎に観測される発光強度を比較することによって確認することができる。
具体的には、室温(25℃)の良溶媒中に所定濃度の発光性化合物を分散し、励起した発光性化合物の発光スペクトルを測定し、最大発光波長におけるピーク強度について、希薄分散溶液の場合に対する相対強度を求めることで、凝集誘起発光性を有しているか否かを確認することができる。図1に示すように、濃度0.01mMの分散溶液から検出される最大発光波長λmaxの発光強度をI、濃度10mMの分散溶液から検出される最大発光波長λmaxの発光強度をI10とするとき、下記の数式(A)を満たす発光性化合物がAIE分子であると定義される。
10/I>1 ・・・(A)
(AIE分子の濃度)
AIE分子は、後記するリン光発光性金属錯体と併用される限り、発光層中に適宜の濃度で含まれてよい。AIE分子の発光層中の膜中濃度は、例えば、0.1質量%以上99.9質量%以下とすることができる。AIE分子の電荷輸送性が良好であれば、このような広範な膜中濃度で発光層を形成しても、高い発光効率を得ることができる。なお、後記するリン光発光性金属錯体の発光層中の膜中濃度は、例えば、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下とする。発光層は、リン光発光性金属錯体とAIE分子のみで構成することも可能であるし、リン光発光性金属錯体とAIE分子と後記するホスト化合物で構成することも可能である。
AIE分子の発光層中の膜中濃度は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、30質量%以下としてもよいし、30質量%以上99.9質量%以下としてもよい。AIE分子の膜中濃度が2質量%以上であると、AIE分子の凝集による強い発光が得られ易い。また、AIE分子の膜中濃度が30質量%以下であると、リン光発光性金属錯体に加えてホスト化合物を併用したとき、高い発光効率を得ることができる。一方、AIE分子の膜中濃度が30質量%以上であると、一般的な発光層と比較して、発光性化合物がより凝集した状態で存在するため、凝集したAIE分子による発光が確実に得られると共に、大気中の酸素や水分等による発光性化合物の劣化を避けることができる。
《有機EL素子の構成層》
本発明に係る有機EL素子は、例えば、基材上に陽極及び陰極を有し、発光層を含む有機構成層が陽極と陰極の間に挟まれた構造として設けることができる。本発明に係る有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
本発明に係る有機EL素子は、電極の外側に、封止層、バリア層、光取出し層等の層が適宜組み合わされて設けられていてもよい。なお、上記の構成中、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
発光層は、単層で構成してもよいし、複数層で構成してもよい。発光層が複数層で構成される場合は、各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。また、必要に応じて、発光層と陰極との間に、正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や、電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよい。また、発光層と陽極との間に、電子阻止層(電子障壁層ともいう)や、正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
(タンデム構造)
本発明に係る有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば、以下の構成が挙げられる。
(I)陽極/第1発光ユニット/第2発光ユニット/第3発光ユニット/陰極
(II)陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
タンデム型の有機EL素子において、複数の発光ユニットは、全て同じ構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。また、一部の発光ユニットが同じ構成であり、残りの発光ユニットが異なる構成であってもよい。また、タンデム型の有機EL素子は、二つの発光ユニットで構成してもよいし、第3発光ユニットと陰極との間に発光ユニットや中間層を設けて、四つ以上の発光ユニットで構成してもよい。発光ユニット同士は、隣接して積層されていてもよいし、中間層を介して積層されていてもよい。
中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側に隣接する層に電子を、陰極側に隣接する層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料及び構成で設けることができる。
中間層の材料としては、例えば、ITO(インジウム・錫酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜や、C60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層や、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
発光ユニットの好ましい構成としては、例えば、上記の(1)〜(7)のいずれかの素子構成から陽極と陰極を除いた構成等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
タンデム型の有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6,337,492号、米国特許第7,420,203号、米国特許第7,473,923号、米国特許第6,872,472号、米国特許第6,107,734号、米国特許第6,337,492号、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号、特開2006−24791号、特開2006−49393号、特開2006−49394号、特開2006−49396号、特開2011−96679号、特開2005−340187号、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号、特開2009−076929号、特開2008−078414号、特開2007−059848号、特開2003−272860号、特開2003−045676号、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る有機EL素子において、後記するリン光発光性金属錯体と前記のAIE分子は、同一の発光層で併用されている限り、単層で構成される発光層に含まれてもよいし、複数層で構成される発光層のうちの1以上に含まれてもよい。また、後記するリン光発光性金属錯体と前記のAIE分子は、同一の発光層で併用されている限り、タンデム型を構成する発光ユニットのうち、単一の発光ユニットに含まれてもよいし、複数の発光ユニットに含まれてもよい。
本発明に係る有機EL素子は、リン光発光性金属錯体に由来する発光のみが出射される構成、AIE分子に由来する発光のみが出射される構成、及び、リン光発光性金属錯体に由来する発光とAIE分子に由来する発光の両方が出射される構成のうち、いずれの構成とされてもよい。リン光発光性金属錯体のエネルギー準位と、AIE分子のエネルギー準位との関係は、特に制限されるものではなく、リン光発光性金属錯体からAIE分子へのエネルギー移動が発光に関与してもよいし、関与しなくてもよい。但し、発光層にホスト化合物を用いる場合は、リン光発光性金属錯体及びAIE分子のHOMOのエネルギー準位が、ホスト化合物のHOMOのエネルギー準位より深く、且つ、リン光発光性金属錯体及びAIE分子のLUMOのエネルギー準位が、ホスト化合物のLUMOのエネルギー準位より浅いことが好ましい。
本発明に係る有機EL素子は、室温(25℃)における発光の外部取り出し量子効率が、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
以下、本発明に係る有機EL素子を構成する各層(正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層、発光層)について説明する。
《正孔注入層》
正孔注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層である。正孔注入層については、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。正孔注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層は、例えば、陽極と発光層との間や、陽極と正孔輸送層との間に設けてよい。
正孔注入層については、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にも、その詳細が記載されている。
正孔注入層の材料としては、例えば、後記する正孔輸送層の材料と同様の材料を用いることができる。正孔注入層の材料は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
正孔注入層の材料としては、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
《正孔輸送層》
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極から注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
正孔輸送層の厚さの総和は、特に制限されるものではないが、通常、5nm〜5μm、好ましくは2〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
正孔輸送層の材料としては、正孔の注入性、正孔の輸送性、及び、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、このような性質を有する公知の化合物を用いることができる。正孔輸送層の材料は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
正孔輸送層の材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、ポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入したポリマー高分子又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、PEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミンの連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、正孔輸送層の材料としては、特表2003−519432号公報や、特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も用いることができる。
また、正孔輸送層の材料としては、特開平11−251067号公報、J.Huang,et.al.著文献(Applied Physics Letters,80(2002),p.139)に記載されているような、p型−Si、p型−SiC等の無機半導体も用いることができる。また、Ir(ppy)に代表される中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送層は、ドープ材をドープしてp性の高い層として形成してもよい。このような構成の正孔輸送層の具体例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
正孔輸送層の材料としては、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入したポリマーやオリゴマー等が好ましく用いられる。
正孔輸送層の材料の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Appl.Phys.Lett.,69,2160(1996)、J.Lumin.,72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.,78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.,90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.,90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)、Synth.Met.,87,171(1997)、Synth.Met.,91,209(1997)、Synth.Met.,111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chern.,3,319(1993)、Adv.Mater.,6,677(1994)、Chern.Mater.,15,3148(2003)、米国特許公開第20030162053号、米国特許公開第20020158242号、米国特許公開第20060240279号、米国特許公開第20080220265号、米国特許第5061569号、国際公開第2007002683号、国際公開第2009018009号、EP650955号、米国特許公開第20080124572号、米国特許公開第20070278938号、米国特許公開第20080106190号、米国特許公開第20080018221号、国際公開第2012115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
《正孔阻止層》
正孔阻止層は、広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなる。電子を輸送しつつ正孔を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、前記の電子輸送層を、必要に応じて正孔阻止層として用いることもできる。正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
正孔阻止層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは3〜100nm、より好ましくは5〜30nmである。
正孔阻止層の材料としては、後記する電子輸送層の材料や、後記するホスト化合物として用いられる材料が好ましく用いられる。
《電子阻止層》
電子阻止層は、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなる。正孔を輸送しつつ電子を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、前記の正孔輸送層を、必要に応じて電子阻止層として用いることもできる。電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
電子阻止層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは3〜100nm、より好ましくは5〜30nmである。
電子阻止層の材料としては、後記する正孔輸送層の材料や、後記するホスト化合物として用いられる材料が好ましく用いられる。
《電子輸送層》
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極から注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
電子輸送層の厚さの総和は、特に制限されるものではないが、通常、2nm〜5μm、好ましくは2〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
有機EL素子においては、発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極の対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総膜厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。一方で、電子輸送層の厚さを厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に厚さが厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層の材料としては、電子の注入性、電子の輸送性、及び、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、このような性質を有する公知の化合物を用いることができる。電子輸送層の材料は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
電子輸送層の材料としては、例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の1つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、電子輸送層の材料としては、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等や、これらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き換えられた金属錯体が挙げられる。
また、電子輸送層の材料としては、その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又は、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものが挙げられる。また、発光層の材料となり得るジスチリルピラジン誘導体も用いることができるし、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も用いることができる。また、これらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料や、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料も用いることができる。
電子輸送層は、ドープ材をドープしてn性の高い層として形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体や、ハロゲン化金属等の金属化合物をはじめとするn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
電子輸送層の材料の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。米国特許第6528187号、米国特許第7230107号、米国特許公開第20050025993号、米国特許公開第20040036077号、米国特許公開第20090115316号、米国特許公開第20090101870号、米国特許公開第20090179554号、国際公開第2003060956号、国際公開第2008132085号、Appl.Phys.Lett.,75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.,79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.,81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.,81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.,79,156(2001)、米国特許第7964293号、米国特許公開第2009030202号、国際公開第2004080975号、国際公開第2004063159号、国際公開第2005085387号、国際公開第2006067931号、国際公開第2007086552号、国際公開第2008114690号、国際公開第2009069442号、国際公開第2009066779号、国際公開第2009054253号、国際公開第2011086935号、国際公開第2010150593号、国際公開第2010047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012115034号等である。
より好ましい電子輸送層の材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
《電子注入層》
電子注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層である。電子注入層については、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。電子注入層は、必要に応じて設けることができる。電子注入層は、例えば、陰極と発光層との間や、陰極と電子輸送層との間に設けてよい。
電子注入層は、極めて薄い膜であることが好ましい。電子注入層の厚さは、好ましくは0.1〜5nmである。電子注入層は、構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層については、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にも、その詳細が記載されている。
電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウムをはじめとする金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムをはじめとするアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムをはじめとするアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムをはじめとする金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)をはじめとする金属錯体等が挙げられる。また、前記の電子輸送層の材料と同様の材料を用いることも可能である。電子注入層の材料は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
《発光層》
発光層は、発光を生じる場を提供する層である。電極又は隣接する層から注入されてくる電子と正孔は、発光層において再結合し、再結合により生じた励起子の失活に伴って発光が生じる。発光する部位は、発光層の層内であってもよいし、発光層と隣接する層との界面であってもよい。
発光層の厚さの総和は、特に制限されるものではないが、形成する膜の均質性を向上させる観点や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性を向上させる観点からは、好ましくは2nm〜5μm、より好ましくは2〜500nm、更に好ましくは5〜200nmである。
発光層の個々の厚さは、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは2〜200nm、更に好ましくは3〜150nmである。
発光層は、発光ドーパント(発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう)と、ホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう)とを含有することが好ましい。本実施形態に係る有機EL素子においては、後記するリン光発光性金属錯体と前記のAIE分子が、発光ドーパントとして機能する。
(1)発光ドーパント
発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)と、リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう)とがある。本実施形態に係る有機EL素子においては、後記するリン光発光性金属錯体がリン光発光性ドーパントして機能し、前記のAIE分子は、蛍光発光性ドーパントとして機能する。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用されるドーパント及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができる。発光ドーパントは、発光層の膜厚方向に対し、均一な濃度で分布していてもよいし、不均一な任意の濃度で分布していてもよい。
発光ドーパントとしては、後記するリン光発光性金属錯体や、前記のAIE分子の他に、その他のリン光発光性ドーパントや、その他の蛍光発光性ドーパントを併用することも可能である。リン光発光性ドーパント毎、又は、蛍光発光性ドーパント毎について、一種の発光性化合物を用いてもよいし、複数種の発光性化合物を併用してもよい。また、同一の発光層で異なる発光ドーパントを併用してもよいし、異なる発光層毎に異なる発光ドーパントを用いてもよい。このような組み合わせにより、有機EL素子から出射される発光について、任意の発光色を得ることができる。
本発明に係る有機EL素子や化合物の発光色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で定義することができる。
本発明に係る有機EL素子は、1層又は複数層の発光層が発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示す素子とされてもよい。白色発光を示す発光ドーパントの組み合わせについては、特に限定されるものではないが、例えば、青と橙の組み合わせや、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
本発明に係る有機EL素子が示す白色発光は、色相等が限定されるものではなく、橙色寄りの白色であっても、青色寄りの白色であってもよいが、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度が、x=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
(1.1)リン光発光性ドーパント
本発明に係るリン光発光性ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物である。具体的には、室温(25℃)においてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義される。リン光発光性ドーパントの好ましいリン光量子収率は、0.1以上である。
リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光発光性ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて0.01以上のリン光量子収率が達成されればよい。
リン光発光性ドーパントの発光の原理は、二種に大別される。一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光発光性ドーパントに移動させることでリン光発光性ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つは、リン光発光性ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光発光性ドーパント上でキャリアの再結合が起こってリン光発光性ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光発光性ドーパントの励起状態のエネルギーは、ホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本実施形態に係る有機EL素子においては、リン光発光性ドーパント、すなわち、AIE分子と併用するリン光発光性金属錯体や、リン光発光性金属錯体に加えて併用するその他のリン光発光性化合物として、一般的な有機EL素子の発光層に使用される適宜の種類を用いることができる。リン光発光性ドーパントの発光の原理は、前記のいずれの原理によるものであってもよい。
リン光発光性ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Nature,395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.,78,1622(2001)、Adv.Mater.,19,739(2007)、Chern.Mater.,17,3532(2005)、Adv.Mater.,17,1059(2005)、国際公開第2009100991号、国際公開第2008101842号、国際公開第2003040257号、米国特許公開第2006835469号、米国特許公開第20060202194号、米国特許公開第20070087321号、米国特許公開第20050244673号、Inorg.Chern.,40,1704(2001)、Chern.Mater.,16,2480(2004)、Adv.Mater.,16,2003(2004)、Angew.Chern.lnt.Ed.,2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.,86,153505(2005)、Chern.Lett.,34,592(2005)、Chern.Commun.,2906(2005)、Inorg.Chern.,42,1248(2003)、国際公開第2009050290号、国際公開第2002015645号、国際公開第2009000673号、米国特許公開第20020034656号、米国特許第7332232号、米国特許公開第20090108737号、米国特許公開第20090039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20060008670号、米国特許公開第20090165846号、米国特許公開第20080015355号、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許公開第20060263635号、米国特許公開第20030138657号、米国特許公開第20030152802号、米国特許第7090928号、Angew.Chern.lnt.Ed.,47,1(2008)、Chern.Mater.,18,5119(2006)、Inorg.Chern.,46,4308(2007)、Organometallics,23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.,74,1361(1999)、国際公開第2002002714号、国際公開第2006009024号、国際公開第2006056418号、国際公開第2005019373号、国際公開第2005123873号、国際公開第2005123873号、国際公開第2007004380号、国際公開第2006082742号、米国特許公開第20060251923号、米国特許公開第20050260441号、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20080297033号、米国特許第7338722号、米国特許公開第20020134984号、米国特許第7279704号、米国特許公開第2006098120号、米国特許公開第2006103874号、国際公開第2005076380号、国際公開第2010032663号、国際公開第第2008140115号、国際公開第2007052431号、国際公開第2011134013号、国際公開第2011157339号、国際公開第2010086089号、国際公開第2009113646号、国際公開第2012020327号、国際公開第2011051404号、国際公開第2011004639号、国際公開第2011073149号、米国特許公開第2012228583号、米国特許公開第2012212126号、特開2012−069737号、特開2012−195554号、特開2009−114086号、特開2003−81988号、特開2002−302671号、特開2002−363552号等である。
AIE分子と併用するリン光発光性金属錯体としては、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合のうち少なくとも1つの配位様式を含む有機金属錯体が好ましく用いられる。リン光発光性金属錯体としては、下記一般式(DP)で表される有機金属錯体が特に好ましい。
Figure 2019163354
[但し、一般式(DP)中、Mは、Ir、Pt、Rh、Ru、Cu又はOsを表し、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、炭素原子又は窒素原子を表し、環Zは、A及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環、又は、5員若しくは6員の芳香族複素環を表し、環Zは、B及びBと共に形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z及び環Zは、置換基を有していてもよく、置換基同士は、互いに結合して縮環構造を形成していてもよく、互いに結合して配位子同士を連結していてもよい。L’は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、m’は、0〜2の整数を表し、n’は、1〜3の整数を表し、m’+n’は、2又は3であり、m’及びn’が2以上のとき、環Z及び環Zで表される配位子とL’は、互いに同一の構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。]
Mは、有機金属錯体の中心金属であり、Ir、Pt、Rh、Ru、Cu又はOsである。Mとしては、Ir又はPtが好ましく、Irが特に好ましい。
環Zを形成する6員の芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環が挙げられる。このような環Zによって形成される縮環構造としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環等がある。
環Zや環Zを形成する5員の芳香族複素環としては、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。5員の芳香族複素環としては、ピラゾール環又はイミダゾール環がより好ましく、イミダゾール環が特に好ましい。
環Zや環Zを形成する6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環等が挙げられる。
二座配位子L’としては、例えば、フェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボール、ピコリン酸、アセチルアセトン等が挙げられる。二座配位子L’は、置換基を有していてもよい。
一般式(DP)で表される有機金属錯体に置換する置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリール基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったもの)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。
一般式(DP)において、Aは、炭素原子であることが好ましく、更に、Aが、炭素原子であることが好ましい。また、環Zは、置換若しくは無置換のベンゼン環又はピリジン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。また、環Zは、5員の芳香族複素環であることが好ましく、B及びBのうち、少なくとも一方は、窒素原子であることが好ましい。
リン光発光性金属錯体のより好ましい構造は、下記一般式(DP−1)又は一般式(DP−2)で表される。
Figure 2019163354
[但し、一般式(DP−1)中、B、B及びBは、芳香族複素環を構成する環形成原子であり、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。M、A、A、B、B、環Z、L’、m’、n’は、一般式(DP)においてと同義である。]
一般式(DP−1)において、B〜Bを置換する置換基としては、一般式(DP)で表される有機金属錯体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
一般式(DP−1)において、Aは、炭素原子であることが好ましく、更に、A及びAが、炭素原子であることが好ましい。また、環Zは、置換若しくは無置換のベンゼン環又はピリジン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。また、B及びBのうち、少なくとも一方は、窒素原子であることが好ましい。
一般式(DP−1)において、B〜Bによって構成される芳香族複素環は、下記一般式(DP−1a)、一般式(DP−1b)、及び、一般式(DP−1c)のうちのいずれかで表される構造であることが好ましい。
Figure 2019163354
[但し、一般式(DP−1a)、一般式(DP−1b)、及び、一般式(DP−1c)中、Rb、Rb及びRbは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、*1はA2との結合部位を表し、*2はMとの結合部位を表す。B〜Bは、一般式(DP−1)においてと同義である。]
一般式(DP−1a)、一般式(DP−1b)、及び、一般式(DP−1c)において、Rb〜Rbの置換基としては、一般式(DP)で表される有機金属錯体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
一般式(DP−1a)において、B及びBのうち、少なくとも一方は、炭素原子であることが好ましい。また、一般式(DP−1c)において、B及びBのうち、少なくとも一方は、炭素原子であることが好ましい。
Figure 2019163354
[但し、一般式(DP−2)中、Aは、環Zを構成する環形成原子であり、炭素原子又は窒素原子を表し、Bは、5員の芳香族複素環である環Zを構成する環形成原子であり、炭素原子又は窒素原子を表し、L”は、2価の連結基を表す。M、A、A、B、B、環Z、L’、m’、n’は、一般式(DP)においてと同義である。]
連結基L”としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、2価の複素環基、−O−、−S−、又は、これらを任意に組み合わせた基が挙げられる。
一般式(DP−2)において、Aは、炭素原子であることが好ましく、更に、Aが、炭素原子であることが好ましい。また、環Zは、置換若しくは無置換のベンゼン環又はピリジン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。また、環Zは、5員の芳香族複素環であることが好ましく、B及びBのうち、少なくとも一方は、窒素原子であることが好ましい。
一般式(DP−2)で表される有機金属錯体は、下記一般式(DP−2a)で表される構造であることがより好ましい。
Figure 2019163354
[但し、一般式(DP−2a)中、L”及びL”は、それぞれ独立して、C−Rb又は窒素原子を表し、Rbは、水素原子又は置換基を表す。L”及びL”がC−Rbであるとき、Rb同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。M、A、A、A、B、B、B、環Z、環Z、L’、m’、n’は、一般式(DP−2)においてと同義である。]
一般式(DP−2a)において、Rbを置換する置換基としては、一般式(DP)で表される有機金属錯体を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
一般式(DP−2a)において、Aは、炭素原子であることが好ましく、更に、Aが、炭素原子であることが好ましい。また、環Zは、置換若しくは無置換のベンゼン環又はピリジン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。また、環Zは、5員の芳香族複素環であることが好ましく、B及びBのうち、少なくとも一方は、窒素原子であることが好ましい。
以下、リン光発光性金属錯体として好ましい化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2019163354
Figure 2019163354
Figure 2019163354
Figure 2019163354
Figure 2019163354
Figure 2019163354
Figure 2019163354
(1.2)蛍光発光性ドーパント
本発明に係る蛍光発光性ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物である。蛍光発光性ドーパントの種類は、励起一重項からの発光が観測される限り、特に限定されるものではない。但し、本実施形態に係る有機EL素子において、AIE分子と共に、凝集誘起発光性を有しないその他の蛍光発光性ドーパントを併用すると、濃度消光が起こる虞がある。そのため、その他の蛍光発光性ドーパントを併用しない構成がより好ましい。
蛍光発光性ドーパントの具体例としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンゾアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号、特開2010−93181号等に記載の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(2)ホスト化合物
本発明に係るホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない化合物である。好ましくは、室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物であり、より好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。
ホスト化合物は、発光層に含まれる化合物のうちで、その発光層中における質量比が20%以上であることが好ましい。また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含まれる発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。なお、本実施形態に係る有機EL素子においては、リン光発光性金属錯体やAIE分子と共にホスト化合物を併用した構成の発光層を形成してもよいし、ホスト化合物を併用しない構成の発光層を形成してもよい。
ホスト化合物としては、一般的な有機EL素子の発光層に使用される適宜の種類を用いることができる。ホスト化合物は、低分子化合物であってもよいし、繰り返し単位を有する高分子化合物であってもよい。また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物であってもよい。ホスト化合物は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。複数種のホスト化合物を併用すると、電荷の移動を容易に調整することができるため、有機EL素子を高効率化することができる。
ホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、更に、有機EL素子を高温駆動時や駆動による発熱の中で安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。ホスト化合物のガラス転移温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは120℃以上である。なお、このガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
ホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第20030175553号、米国特許公開第20060280965号、米国特許公開第20050112407号、米国特許公開第20090017330号、米国特許公開第20090030202号、米国特許公開第20050238919号、国際公開第2001039234号、国際公開第2009021126号、国際公開第2008056746号、国際公開第2004093207号、国際公開第2005089025号、国際公開第2007063796号、国際公開第2007063754号、国際公開第2004107822号、国際公開第2005030900号、国際公開第2006114966号、国際公開第2009086028号、国際公開第2009003898号、国際公開第2012023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP2034538号等である。
《含有物》
有機EL素子の有機層は、その他の含有物を更に含んでいてもよい。その他の含有物としては、例えば、臭素、ヨウ素、塩素等の単体のハロゲンやハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属や遷移金属の化合物、金属錯体、塩等が挙げられる。
その他の含有物の量は、特に制限されるものではないが、含有物を含む層の全質量に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。但し、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的等によっては、このような範囲に限定されない。
《有機層の形成方法》
有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法は、特に制限されるものではなく、例えば、真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等を用いることができる。
湿式法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等が挙げられる。湿式法としては、均質な薄膜が得られ易く、且つ、生産性が高い点で、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・ツー・ロール方式の適性が高い方法が好ましく用いられる。
有機層の材料を溶解又は分散させる液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類や、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類や、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類や、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類や、DMF、DMSO等の有機溶媒が挙げられる。有機層の材料を分散させる分散方法としては、超音波分散、高剪断力分散、メディア分散等を用いることができる。
有機層は、層毎に同じ方法を用いて形成してもよいし、層毎に異なる方法を用いて形成してもよい。真空蒸着法を用いる場合、蒸着条件は、使用する化合物の種類等によって異なるが、一般に、ボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で、適宜の条件とすることができる。
有機層は、一回の真空引きで一貫して陽極側の層から陰極側の層までを作製することが好ましい。但し、途中で取り出して異なる製膜法を施してもよい。途中で取り出す場合は、その際の作業を、乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
《陽極》
陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、又は、これらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等のように非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、電極物質を蒸着やスパッタリング等で成膜することにより、薄膜として形成することができる。陽極の成膜に際しては、フォトリソグラフィー法により所望の形状のパターンを形成してもよい。また、高いパターン精度を必要としない場合は(100μm以上程度の場合)、電極物質の蒸着やスパッタリング等を行う時にマスクを使用してパターンを形成してもよい。また、有機導電性化合物のように塗布可能な電極物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等の湿式法を用いることもできる。
有機EL素子の発光を陽極から取り出す場合には、陽極の透過率を10%より大きくすることが好ましい。陽極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の厚さは、電極材料にもよるが、通常、10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmである。
《陰極》
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属という)、合金、電気伝導性化合物、又は、これらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。
陰極の電極物質としては、電子注入性や、酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等がより好ましい。
陰極は、電極物質を蒸着やスパッタリング等で成膜することにより、薄膜として形成することができる。
陰極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陰極の厚さは、通常、10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmである。
なお、有機EL素子の陽極及び陰極のいずれか一方は、発光した光を透過させて発光輝度を向上させる点から、透明又は半透明であることが好ましい。例えば、陰極の電極物質である金属を1〜20nmの膜厚で成膜した後、その上に、前記の導電性透明材料を成膜することによって、透明又は半透明の陰極を作製することができる。
《支持基板》
有機EL素子の支持基板(基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等を用いることが可能であり、その種類は特に限定されるものではない。支持基板は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等が挙げられる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることができる樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレンや、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はこれらの誘導体や、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物の被膜、有機物の被膜、無機物と有機物のハイブリッド被膜等が形成されていてもよい。樹脂フィルムは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が10−3ml/(m・24h・atm)以下、且つ、水蒸気透過度が10−5g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることがより好ましい。
バリア性フィルムに形成するバリア膜の材料としては、水分や酸素等のように有機EL素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。バリア膜には、脆弱性を改良するために、無機層と有機層の積層構造を持たせることが好ましい。無機層と有機層の積層順は、特に制限されるものではないが、無機層と有機層を交互に複数回積層することが好ましい。
バリア膜の形成方法は、特に制限されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。バリア膜の形成方法としては、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法が特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板やフィルム、樹脂基板、セラミック製の基板等を用いることができる。
《封止》
有機EL素子を封止する方法としては、例えば、封止部材と、電極や支持基板とを接着剤で接着する方法が挙げられる。封止部材は、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状であってもよいし、平板状であってもよい。封止部材を凹状に加工する方法としては、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が挙げられる。封止部材の透明性や電気絶縁性は、特に限定されるものではない。
封止部材の具体例としては、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。また、ポリマー板・フィルムとしては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等で形成されたものが挙げられる。金属板・フィルムとしては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム、タンタル等の金属や合金で形成されたものが挙げられる。
封止部材としては、有機EL素子を薄膜化できる点から、ポリマーフィルムや、金属フィルムを好ましく用いることができる。ポリマーフィルムとしては、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m/24h以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が1×10−3g/(m/24h)以下のものが好ましい。
接着剤としては、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマー等の反応性ビニル基を有する光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系等の熱硬化型接着剤や化学硬化型(二液混合)接着剤が挙げられる。また、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等のホットメルト型接着剤や、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤が挙げられる。
接着剤としては、有機EL素子が熱処理によって劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤は、乾燥剤が分散されたものであってもよい。封止部分への接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使って行ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷で行ってもよい。
また、有機EL素子を封止する方法としては、支持基板の反対側に設けられた電極の外側に、有機層及び電極を被覆する封止膜を成膜する方法を用いることもできる。封止膜は、無機物の被膜、有機物の被膜、無機物と有機物のハイブリッド被膜等のいずれによって設けてもよい。封止膜の材料としては、水分や酸素等のように有機EL素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。封止膜には、脆弱性を改良するために、無機層と有機層の積層構造を持たせることが好ましい。
封止膜の形成方法は、特に制限されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相のいずれについても、窒素、アルゴン等の不活性気体や、フッ化炭化水素、シリコンオイル等の不活性液体を注入することが好ましい。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙は、真空としてもよいし、吸湿性化合物を封入してもよい。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられる。硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類については、無水塩が好適に用いられる。
《用途》
本発明に係る有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源としては、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計用バックライト、液晶用バックライト、看板広告の光源、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。特に、液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
(表示装置)
本発明に係る有機EL素子は、具体的には、表示装置の画素として用いることができる。表示装置は、単色表示装置であってもよいし、多色表示装置であってもよい。以下では、本発明の有機EL素子を具備する表示装置の一例として、多色表示装置について説明する。
表示装置に備えられる有機EL素子の構成は、前記の素子構成例をはじめとして各種の構成を採ることができる。多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光を観測することができる。交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光を観測することができる。なお、印加する交流の波形は、特に制限されるものではない。
多色表示装置は、例えば、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイスや、ディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青発光、赤発光及び緑発光の三種類の有機EL素子を用いるとフルカラーの表示が可能である。静止画像や動画像を再生する表示装置としての使用が可能であり、動画像の再生を行う場合の駆動方式としては、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式、アクティブマトリクス方式のいずれであってもよい。
図2は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。この表示装置は、有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う。ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部Aと、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部Bと、表示部Aと制御部Bとの間を電気的に接続する配線部等を備えている。
制御部Bは、複数の画素のそれぞれに、外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号とを送る。そして、走査信号によって走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光し、表示部Aによって画像情報が表示される。
図3は、表示部Aの模式図である。表示部Aは、基板上に、複数の画素3と、複数の走査線5と、複数のデータ線6とを有している。図3においては、各画素3からの光が下方向(白矢印方向)へ取り出される場合が示されている。
配線部の走査線5及びデータ線6は、それぞれ導電材料からなる。走査線5とデータ線6とは、互いに格子状に直交し、直交する位置で各画素3に接続している。画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光色が赤色の画素、緑色の画素及び青色の画素のそれぞれを、適宜、基板上に配列させることによってフルカラーの表示が可能となる。
図4は、画素の模式図である。画素3は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサー13等を備えている。基板上に備えられる複数の画素3には、赤色、緑色及び青色の各発光色の有機EL素子10が用いられる。
図4において、スイッチングトランジスタ11のドレインには、制御部Bからデータ線6を介して画像データ信号が印加される。そして、制御部Bからスイッチングトランジスタ11のゲートに、走査線5を介して走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号が、コンデンサー13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達によって、コンデンサー13が画像データ信号の電位に応じて充電されると共に、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続されており、ソースが有機EL素子10の電極に接続されている。有機EL素子10には、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から電流が供給される。
制御部Bが順次走査を行い、走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしても、コンデンサー13は、充電された画像データ信号の電位を保持する。そのため、駆動トランジスタ12の駆動は、オン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。そして、順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動し、有機EL素子10が発光する。
このように有機EL素子10の発光は、複数の画素3にそれぞれ用いられる有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12とを設けることによって、複数の画素毎に行われる方式で構成することができる。このような発光方式は、アクティブマトリクス方式と呼ばれる。
なお、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフによる発光でもよい。また、コンデンサー13の電位は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
なお、表示装置の発光方式は、以上のアクティブマトリクス方式に制限されるものではなく、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式としてもよい。
図5は、パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図である。図5において、複数の走査線5と、複数の画像データ線6とは、画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式によると、画素3にアクティブ素子を設ける必要がなく、製造コストが低減する。
<照明装置>
本発明に係る有機EL素子は、具体的には、各種の照明装置の光源として用いることができる。照明装置としては、適宜の光源色を生じる装置であってよいが、白色の光源色を生じる装置とすることが好ましい。
白色の発光は、複数の発光性化合物によって複数の発光色を同時に発光させて、混色することで得ることができる。発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色及び青色の三原色の組み合わせであってもよいし、青色と黄色、青緑色と橙色等の補色の関係の組み合わせであってもよい。また、発光性化合物からの光を励起光として発光する色素を併用してもよいし、カラーフィルターを利用してもよい。
照明装置においては、各色の発光色を生じる有機EL素子をアレイ上に配列して白色の発光を生成してもよいし、有機EL素子自体の発光色を白色化してもよい。有機EL素子自体の発光色を白色にする場合には、発光層等のみについてパターニングを行い、電極等については一面に一括して成膜してもよい。
図6は、照明装置の概略図である。また、図7は、照明装置の模式図である。照明装置は、例えば、本発明に係る有機EL素子101を、厚み300μm程度のガラスカバー102等で覆うことにより形成することができる。一対の電極105,107と、有機層106とを、周囲にシール材を塗布したガラスカバー102等で封止することによって、有機層106等が大気中の酸素や水分で劣化するのを防ぐことができる。例えば、封止を、窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行い、ガラスカバー102内に窒素ガス等の不活性ガス108を充填したり、捕水剤109等を設置したりすることが可能である。
なお、以上の本実施形態に係る有機EL素子は、その構成、製法、用途等が、前記の説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の公知の構成や製法を適用することができるし、本発明をその他の用途に用いることもできる。例えば、有機EL素子の公知の構成、製法、用途等に関して、特開2013−089608号公報、特開2014−120334号公報、特開2015−201508号公報等を参照してもよい。
《発光性薄膜》
次に、本実施形態に係る発光性薄膜について説明する。本実施形態に係る発光性薄膜は、リン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子(AIE分子)とを含有する。例えば、基材上に、リン光発光性金属錯体とAIE分子とを含む機能性薄膜を成膜することによって、各種の用途に使用可能な発光性の機能薄膜を形成することができる。AIE分子の発光性薄膜中の濃度は、例えば、0.1質量%以上99.9質量%以下とすることができる。また、リン光発光性金属錯体の発光性薄膜中の濃度は、例えば、0.1質量%以上99.9質量%以下とすることができる。
本実施形態に係る発光性薄膜は、例えば、有機EL素子、光電変換素子、有機機能性薄膜等の材料として用いることができる。また、前記の表示装置や照明装置を構成する発光素子として用いることもできる。本発明の発光性薄膜の形成方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の真空蒸着法、湿式法等による形成方法を用いることができる。形成する発光性薄膜には、リン光発光性金属錯体とAIE分子に加えて、その他の発光性化合物やホスト化合物を配合してもよい。
湿式法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等が挙げられる。湿式法としては、均質な薄膜が得られ易く、且つ、生産性が高い点で、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・ツー・ロール方式の適性が高い方法が好ましく用いられる。
リン光発光性金属錯体やAIE分子を溶解又は分散させる液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類や、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類や、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類や、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類や、DMF、DMSO等の有機溶媒が挙げられる。材料を分散させる分散方法としては、超音波分散、高剪断力分散、メディア分散等を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における「%」は、特に記載がない限り「質量%」を意味する。
(リン光発光性金属錯体)
実施例で使用したリン光発光性金属錯体(A−1,A−2,A−3)を以下に示す。
Figure 2019163354
(蛍光発光性化合物)
実施例で使用した蛍光発光性化合物(B−1,B−2)を以下に示す。なお、化合物B−1及び化合物B−2は、凝集誘起発光性が無い従来型の蛍光発光性化合物である。
Figure 2019163354
(正孔輸送材料)
実施例で使用した正孔輸送材料(HT−1)を以下に示す。
Figure 2019163354
(電子輸送材料)
実施例で使用した電子輸送材料(ET−1,ET−2)を以下に示す。
Figure 2019163354
(ホスト化合物)
実施例で使用したホスト化合物(H−1,H−2)を以下に示す。
Figure 2019163354
(AIE分子)
実施例で使用したAIE分子(AIE−1,AIE−2,AIE−3,AIE−4)を以下に示す。なお、AIE分子は凝集して集合体を形成することにより強い蛍光を発光する、蛍光発光性化合物である。
Figure 2019163354
なお、実施例で使用した化合物のうち、AIE−1とAIE−2は、刊行物(Qin W.,et al.,Chem.Commun.,2015,51,7321−7324)に記載された方法に基づいて合成した。また、AIE−3は、刊行物(Kim J.Y.,et al.,Adv.Mater.2013,25,2666−2671)に記載された方法に基づいて合成した。また、AIE−4は、刊行物(Chen B.,et al.,Chem.Eur.J.,2014,20,1931−1939)に記載された方法に基づいて合成した。その他の化合物については、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
[実施例1]
正孔輸送層に後架橋型の化合物HT−1、発光層に表1に示すリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性分子を用いて有機EL素子を作製し、発光効率の評価を行った。
<有機EL素子1−1の作製>
(陽極の作製)
100mm×100mm×1.1mmの透明支持基板(NHテクノグラス社製、NA−45)上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を約100nmの厚さで成膜し、パターニングを行った。次いで、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後に、UVオゾン洗浄を5分間行った。
(正孔輸送層の作製)
続いて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS、へレウス社製、商品名:CLEVIOS P VP AI 4083)を純水で70%に希釈して得た溶液を、透明支持基板に作製した陽極上に、3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、200℃において1時間乾燥し、膜厚30nmの第1正孔輸送層を形成した。次いで、この基板を窒素雰囲気下に移し、9.0mgの化合物HT−1を1.1gのクロロベンゼンに溶解させて得た塗布液を、第1正孔輸送層上に、1500rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、180秒間紫外光を照射し、後架橋型の化合物HT−1の光重合・架橋を行い、膜厚約20nmの第2正孔輸送層を形成した。
(発光層の作製)
続いて、6.75mgのホスト化合物H−1と1.69mgの蛍光発光性化合物B−1を窒素雰囲気下で1.1gのクロロベンゼンに溶解させて得た塗布液を、第2正孔輸送層上に、1500rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、真空下、130℃で加熱乾燥することにより溶媒を完全に除去し、膜厚約50nmの発光層を形成した。
(電子輸送層の作製)
続いて、発光層を成膜した透明支持基板を真空蒸着装置に取り付けた後、真空槽を4×10−4Paまで減圧し、発光層上に、化合物ET−1を0.1nm/秒で蒸着して、膜厚約35nmの電子輸送層を形成した。
(電子注入層・陰極の作製)
続いて、真空蒸着装置を使用して、電子輸送層上に、フッ化リチウムを蒸着して、膜厚約1.0nmの電子注入層を形成した。次いで、電子注入層上に、アルミニウムを蒸着して、膜厚約110nmの陰極を形成した。
(封止)
封止用のガラスカバーの周縁部に、酸素や水分を吸着する吸湿性化合物を配合したエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製、ラックストラックLC0629B)を塗布し、このガラスカバーで、透明支持基板上に形成した電極と有機層を覆い、シール材としてのエポキシ系光硬化型接着剤を塗布した周縁部と透明支持基板とを密着させた。その後、電極や有機層が成膜されていない部分に、透明支持基板側からUV光を照射し、接着剤を硬化させることにより、封止された有機EL素子1−1を得た。
<有機EL素子1−2の作製>
発光層を成膜する塗布液に8.01mgのホスト化合物H−1と0.42mgのリン光発光性金属錯体A−1を用いたこと以外は有機EL素子1−1と同様にして、有機EL素子1−2を作製した。
<有機EL素子1−3の作製>
発光層を成膜する塗布液に6.33mgのホスト化合物H−1と0.42mgのリン光発光性金属錯体A−1と1.69mgの蛍光発光性化合物B−1を用いたこと以外は有機EL素子1−1と同様にして、有機EL素子1−3を作製した。
<有機EL素子1−4の作製>
蛍光発光性化合物B−1をAIE分子(AIE−1)に置き換えたこと以外は有機EL素子1−3と同様にして、有機EL素子1−4を作製した。
<有機EL素子1−5の作製>
蛍光発光性化合物B−1をAIE分子(AIE−2)に置き換えたこと以外は有機EL素子1−3と同様にして、有機EL素子1−5を作製した。
<発光効率の評価>
室温(25℃)において、2.5mA/cmの定電流密度で有機EL素子を点灯させて、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)により発光輝度を測定し、発光効率(外部取り出し量子効率)を求めた。その結果を表1に示す。表中の発光効率は、有機EL素子1−3の測定値を100とした相対値を表す。
Figure 2019163354
表1に示すように、発光性化合物として凝集誘起発光性が無い蛍光発光性化合物B−1のみを20質量%の濃度で用いた有機EL素子1−1では、発光が全く見られなかった。発光性化合物としてリン光発光性金属錯体A−1と蛍光発光性化合物B−1とを併用した有機EL素子1−3では、リン光発光性金属錯体A−1のみを用いた有機EL素子1−2と比較すると、発光効率がある程度向上した。
これに対し、AIE分子を蛍光発光性化合物B−1の代わりに同濃度添加し、リン光発光性金属錯体A−1と併用した有機EL素子1−4〜1−5では、有機EL素子1−3と比較して、約2倍近い発光効率の向上が見られた。この結果から、従来型の蛍光発光性化合物では凝集状態となり、消光が生じる程度の高濃度であっても、AIE分子であれば十分に発光を得ることが可能であり、AIE分子を併用する手法が発光効率の改善に非常に効果的であると判断した。なお、構造が類似しているAIE−1とAIE−2とでは、発光効率の大きな違いは見られなかった。
[実施例2]
実施例1で発光を生じた成分を確認するため、実施例1と同様のリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性分子を用いて発光性薄膜のサンプルを作製し、発光スペクトルの評価を行った。
<サンプル2−1の作製>
300mm×300mm×1.1mmのガラス基板に、UVオゾン洗浄処理を10分間行った。その後、窒素雰囲気下において、有機EL素子1−1の発光層の形成に用いた塗布液を、基板上に、1000rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、有機EL素子1−1と同様の手順で封止を行って、サンプル2−1とした。
<サンプル2−2の作製>
蛍光発光性化合物B−1をリン光性発光性金属錯体A−1に置き換え、発光層の形成に用いた塗布液の配合を変えた以外はサンプル2−1と同様にして、サンプル2−2を作製した。
<サンプル2−3〜2−4の作製>
蛍光発光性化合物B−1をAIE−1又はAIE−2に置き換えた以外はサンプル2−1と同様にして、サンプル2−3〜2−4を作製した。
<サンプル2−5の作製>
有機EL素子1−2の発光層の形成に用いた塗布液を使用した以外はサンプル2−1と同様にして、サンプル2−5を作製した。
<サンプル2−6〜2−7の作製>
有機EL素子1−4〜1−5の発光層の形成に用いた塗布液を使用し、発光性化合物の種類を表2に示す化合物に置き換えた以外はサンプル2−1と同様にして、サンプル2−6〜2−7を作製した。
<スペクトルの評価>
表2に示す励起方法を用いてサンプルを発光させて、分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、F−7000)により室温下で発光スペクトルを測定し、発光極大波長を確認した。サンプル2−1〜2−4については、可視光領域を含む波長領域の光で光励起し、サンプル2−5〜2−7については、2.5mA/cmで電流励起した。
Figure 2019163354
その結果、発光性化合物としてAIE分子とリン光発光性金属錯体とを併用したサンプル2−6及び2−7の発光極大波長は、リン光発光性金属錯体のみを用いたサンプル2−5で検出された発光極大波長と、発光性化合物としてAIE分子のみを用いたサンプル2−3及び2−4の発光極大波長の両方を含んでいた。さらに、サンプル2−5で見られた発光極大波長のスペクトル強度は減少した一方で、サンプル2−6及び2−7で見られた発光極大波長のスペクトル強度は増大していたことから、リン光発光性金属錯体からAIE分子にエネルギーの移動が生じた可能性が推測された。
[実施例3]
正孔輸送層に後架橋型の化合物HT−1、発光層に表3に示すリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性分子を用いて有機EL素子を作製し、発光効率の評価を行った。
<有機EL素子3−1〜3−5の作製>
発光性化合物の種類を表3に示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子1−1と同様にして、有機EL素子3−1〜3−5を作製した。
<発光効率の評価>
実施例1と同様に、室温(25℃)において、2.5mA/cmの定電流密度で有機EL素子を点灯させて、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)により発光輝度を測定し、発光効率(外部取り出し量子効率)を求めた。その結果を表3に示す。表中の発光効率は、有機EL素子3−3の測定値を100とした相対値を表す。
Figure 2019163354
表3に示すように、発光性化合物として凝集誘起発光性が無い蛍光発光性化合物B−2のみを20質量%の濃度で用いた有機EL素子3−1では、発光が全く見られなかった。これに対し、AIE分子を蛍光発光性化合物B−2の代わりに同濃度添加し、リン光発光性金属錯体A−2と併用した有機EL素子3−4〜3−5では、有機EL素子3−3と比較して、高い発光効率が得られた。よって、発光効率を向上させる目的で蛍光発光性化合物の濃度を高くする場合、AIE分子を併用する手法が有効であると推察される。
[実施例4]
実施例3で発光を生じた成分を確認するため、実施例3と同様のリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性分子を用いて発光性薄膜のサンプルを作製し、発光スペクトルの評価を行った。
<サンプル4−1の作製>
実施例2と同様にして、300mm×300mm×1.1mmのガラス基板に、UVオゾン洗浄処理を10分間行った。その後、窒素雰囲気下において、有機EL素子3−1の発光層の形成に用いた塗布液を、基板上に、1000rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、有機EL素子1−1と同様の手順で封止を行って、サンプル4−1とした。
<サンプル4−2の作製>
蛍光発光性化合物B−2をリン光性発光性金属錯体A−2に置き換え、発光層の形成に用いた塗布液の配合を変えた以外はサンプル4−1と同様にして、サンプル4−2を作製した。
<サンプル4−3〜4−4の作製>
蛍光発光性化合物B−2をAIE−3又はAIE−4に置き換えた以外はサンプル4−1と同様にして、サンプル4−3〜4−4を作製した。
<サンプル4−5の作製>
有機EL素子3−2の発光層の形成に用いた塗布液を使用した以外はサンプル4−1と同様にして、サンプル4−5を作製した。
<サンプル4−6〜4−7の作製>
有機EL素子3−4〜3−5の発光層の形成に用いた塗布液を使用し、発光性化合物の種類を表4に示す化合物に置き換えた以外はサンプル4−1と同様にして、サンプル4−6〜4−7を作製した。
<スペクトルの評価>
実施例2と同様にして、表4に示す励起方法を用いてサンプルを発光させて、分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、F−7000)により室温下で発光スペクトルを測定し、発光極大波長を確認した。サンプル4−1〜4−4については、可視光領域を含む波長領域の光で光励起し、サンプル4−5〜4−7については、2.5mA/cmで電流励起した。
Figure 2019163354
その結果、発光性化合物としてAIE分子とリン光発光性金属錯体とを併用したサンプル4−6及び4−7の発光極大波長は、リン光発光性金属錯体のみを用いたサンプル4−5で検出された発光極大波長と、発光性化合物としてAIE分子のみを用いたサンプル4−3及び4−4の発光極大波長の両方を含んでいた。さらに、サンプル4−5で見られた発光極大波長のスペクトル強度は減少した一方で、サンプル4−6及び4−7で見られた発光極大波長のスペクトル強度は増大していたことから、リン光発光性金属錯体からAIE分子にエネルギーの移動が生じた可能性が推測された。
[実施例5]
発光層に高濃度のAIE分子を含む有機EL素子を作製し、発光性を確認した。
<有機EL素子5−1の作製>
(陽極の作製)
実施例1と同様に、100mm×100mm×1.1mmの透明支持基板(NHテクノグラス社製、NA−45)上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を約100nmの厚さで成膜し、パターニングを行った。次いで、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後に、UVオゾン洗浄を5分間行った。
(正孔輸送層の作製)
続いて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS、へレウス社製、商品名:CLEVIOS P VP AI 4083)を純水で70%に希釈して得た溶液を、透明支持基板に作製した陽極上に、3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、200℃において1時間乾燥し、膜厚30nmの正孔輸送層を形成した。
(発光層の作製)
続いて、8.43mgのAIE−1と、0.01mgのホスト化合物H−2を窒素雰囲気下で1.1gのクロロベンゼンに溶解させて得た塗布液を、正孔輸送層上に、1500rpm、30秒の条件でスピンコート法により成膜した。そして、真空下、130℃で加熱乾燥することにより溶媒を完全に除去し、膜厚約50nmの発光層を形成した。
(電子輸送層の作製)
続いて、発光層を成膜した透明支持基板を真空蒸着装置に取り付けた後、真空槽を4×10−4Paまで減圧し、発光層上に、化合物ET−2を0.1nm/秒で蒸着して、膜厚約35nmの電子輸送層を形成した。
(陰極の作製、封止)
続いて、実施例1と同様に、真空蒸着装置を使用して、電子輸送層上に、アルミニウムを蒸着して、膜厚約110nmの陰極を形成した。そして、実施例1と同様に封止を行って、有機EL素子5−1を得た。
<発光性の確認>
室温(25℃)において、直流電圧を印加して有機EL素子を駆動させて、目視により発光の有無を確認した。その結果、十分な発光が確認された。従来型の蛍光発光性化合物では濃度消光を生じる程度の高濃度であっても、AIE分子であれば、発光を生じさせることが可能であることが確認された。
[実施例6]
発光性化合物としてAIE分子を含む有機EL素子を作製し、水分や酸素に対する耐性の評価を行った。
<有機EL素子6−1〜6−2の作製>
リン光性発光性金属錯体A−1をリン光性発光性金属錯体A−3に置き換え、封止を行わず素子を完成させたこと以外は有機EL素子1−3〜1−4と同様にして、有機EL素子6−1〜6−2を作製した。
<水分や酸素に対する耐性の評価>
作製直後の有機EL素子の発光効率と、大気中で24時間放置した後の有機EL素子の発光効率とをそれぞれ求めて、発光効率の低下に基づいて水分や酸素に対する耐性を評価した。なお、発光効率(外部取り出し量子効率)は、実施例1と同様にして求めた。その結果を表5に示す。表中の発光効率は、各有機EL素子について、作製直後(0時間後)の測定値を100とした相対値を表す。
Figure 2019163354
表5に示すように、発光層にAIE分子を含む有機EL素子6−2では、大気中で放置した後においても、高い発光効率が確認された。この要因は明らかではないが、AIE分子が凝集体を形成することにより、個々の発光体の径が大きくなり、劣化の原因となる水分子や酸素との接触面積や衝突回数が減少したためであると推測できる。なお、この際に用いるリン光発光性金属錯体は、本明細書記載のDp−1〜Dp−59を用いた場合にも同様の結果が得られた。
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサー
101 照明装置内の有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部

Claims (6)

  1. 陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間に設けられた発光層と、を備え、前記発光層中にリン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記リン光発光性金属錯体が下記一般式(DP)で表される有機金属錯体である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2019163354
    [但し、一般式(DP)中、Mは、Ir、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsを表し、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、炭素原子又は窒素原子を表し、環Zは、A及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環、又は、5員若しくは6員の芳香族複素環を表し、環Zは、B及びBと共に形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z及び環Zは、置換基を有していてもよく、置換基同士は、互いに結合して縮環構造を形成していてもよく、互いに結合して配位子同士を連結していてもよい。L’は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、m’は、0〜2の整数を表し、n’は、1〜3の整数を表し、m’+n’は、2又は3であり、m’及びn’が2以上のとき、環Z及び環Zで表される配位子とL’は、互いに同一の構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。]
  3. 前記凝集誘起発光性分子が、テトラフェニルエチレン誘導体、又は、シロール誘導体である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. リン光発光性金属錯体と凝集誘起発光性分子とを含有する発光性薄膜。
  5. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する表示装置。
  6. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する照明装置。
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