JPWO2018235761A1 - 喫煙物品用フィルタおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材（２）であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルム（２１）を含み、尾根部および谷部は、第１端面から第２端面まで延びて、空気が第１端面から第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路（２２）を形成している濾材と、空気流通路に配置された複数の粒子（３）と、側面が被覆されるように濾材を巻装する巻取紙（４）とを含む喫煙物品用フィルタ。

Description

本発明は、喫煙物品用フィルタおよびその製造方法に関する。

喫煙物品用フィルタとしては、セルロースアセテートの繊維束（アセテートトウ）を濾材として使用したアセテートフィルタが一般的に使用されている。一方、フィルム素材にひだを付けた後に、長手方向に空気流通路を形成するように折りたたみ、これを、巻取紙で包んで形成されるフィルムフィルタが、喫煙物品用フィルタとして知られている（例えば、英国特許第２１１８４２３号明細書および特開平９−２９４５７７号公報を参照）。フィルムフィルタは、アセテートフィルタと比べて、香喫味への寄与が大きい成分の透過率が高く、ユーザーが喫煙時に香喫味を感じやすいという特性を有する。

本発明者らは、喫煙物品においてフィルムフィルタの汎用性が高くない原因として、フィルムフィルタは、アセテートフィルタと比べて、フィルタ硬さやフィルタ通気抵抗が十分でないことに着目した。フィルタ硬さが十分でないと、ユーザーの使用感（例えば、つかみ心地やくわえ心地）が低下し、フィルタ通気抵抗が十分でないと、ユーザーが吸い難いと感じる。したがって、本発明は、フィルムフィルタの濾過特性を維持しつつ、十分なフィルタ硬さと十分なフィルタ通気抵抗を有する喫煙物品用フィルムフィルタを提供することを目的とする。

一つの側面によれば、
第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルムを含み、前記尾根部および前記谷部は、前記第１端面から前記第２端面まで延びて、空気が前記第１端面から前記第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している濾材と、
前記空気流通路に配置された複数の粒子と、
前記側面が被覆されるように前記濾材を巻装する巻取紙と
を含む喫煙物品用フィルタが提供される。

別の側面によれば、
フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、４０％以下である低濾過性濾材と、
前記低濾過性濾材の空隙に配置された複数の粒子と、
前記低濾過性濾材を巻装する巻取紙と
を含む喫煙物品用フィルタが提供される。

更に別の側面によれば、前記喫煙物品用フィルタを含む喫煙物品が提供される。

更に別の側面によれば、前記喫煙物品用フィルタと、
たばこ充填材を含み、前記フィルタの一端に連結されたたばこロッドと、
前記フィルタおよび前記たばこロッドを連結するように前記フィルタおよび前記たばこロッドの上に巻かれたチッピングペーパーと
を含むシガレットが提供される。

更に別の側面によれば、
波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程と、
前記波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を形成するように集めて濾材を形成し、これにより、前記粒子を前記空気流通路に配置させる工程と、
前記濾材を巻取紙で巻装してフィルタを得る工程と
を含む、喫煙物品用フィルタの製造方法が提供される。

本発明によれば、フィルムフィルタの濾過特性を維持しつつ、十分なフィルタ硬さと十分なフィルタ通気抵抗を有する喫煙物品用フィルムフィルタを提供することができる。

喫煙物品用フィルタの一例を示す断面図。 波形フィルムのフィルム厚さおよびフィルム横幅を示す図。 粒子添加量とフィルタ通気抵抗との関係を示すグラフ。 粒子添加量とフィルタ硬さとの関係を示すグラフ。 フィルタ通気抵抗とタール透過率との関係を示すグラフ。 半揮発性成分のデリバリー量比の結果を示すグラフ。 実施例２で評価したシガレットの概略図。 実施例２で評価したシガレットの概略図。

以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を詳説することを目的とし、本発明を限定することを意図していない。

１．喫煙物品用フィルタ
喫煙物品用フィルタの一例の断面図を図１に示す。図１に示されるとおり、喫煙物品用フィルタ１は、
第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材２であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルム２１を含み、前記尾根部および前記谷部は、前記第１端面から前記第２端面まで延びて、空気が前記第１端面から前記第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路２２を形成している濾材２と、
前記空気流通路２２に配置された複数の粒子３と、
前記側面が被覆されるように前記濾材を巻装する巻取紙４と
を含む。

別の側面によれば、喫煙物品用フィルタ１は、
波形フィルム２１を、長手方向に複数の空気流通路２２を有しかつ全体として円柱形状を有するように集めて形成された濾材２と、
空気流通路２２に配置された複数の粒子３と、
濾材２を巻装する巻取紙４と
を含む。

なお、以下の説明において、喫煙物品用フィルタは、単にフィルタともいう。

濾材は、第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有する。ただし、濾材は、波形フィルムを長手方向に複数の空気流路を形成するように集めて形成され（ギャザリング加工）、巻取紙で巻装されているため、第１端面および第２端面は、空気流路の存在により「す」が入ったように見え、厳密には平面ではなく、側面も厳密には表面に凹凸を有する。また、第１および第２端面は、厳密に真円である必要はなく、楕円であってもよい。

濾材を構成する波形フィルム（corrugated film）２１は、蛇腹状のひだが付いているフィルム、すなわち尾根部２１ａと谷部２１ｂとが交互に配列したフィルムをいう（図２を参照）。波形フィルムの尾根部および谷部は、濾材の第１端面から第２端面まで延びて、空気が第１端面から第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している。

波形フィルムは、蛇腹状のひだを付ける公知の処理をフィルムに施すことにより調製することができる。かかる処理は、プリーツ処理、クリンプ処理（捲縮処理）、またはクレープ処理とも呼ばれ、公知である。例えば、特開平９−２９４５７７号公報は、たばこ用ペーパーフィルタの原料シートを一対のひだ付けローラの間を通過させてひだを付ける処理を開示する。

好ましくは、波形フィルムは、溶融されたフィルム材料から成形されたフィルムである。溶融されたフィルム材料からフィルムを成形する手法は、公知であり、例えば、Ｔダイ法（キャスト法）とインフレーション法が挙げられる。フィルムは、溶融されたフィルム材料から成形された後に、一軸方向または二軸方向に延伸されてもよい。

波形フィルムが、溶融されたフィルム材料から成形されたフィルムである場合、このフィルムは、空気を実質的に透過させない。この場合、波形フィルムは、繊維の集合体（例えば、紙または不織布）から構成されていない。すなわち、波形フィルムは、繊維に圧縮力や熱を加えてシート状に成形したフィルムではない。

波形フィルムが、溶融されたフィルム材料から成形されている場合、繊維の集合体から構成されている場合と比べて、表面が密である構造を有する。かかるフィルムの表面特性（即ち、表面緻密性）は、空気流通路に配置される粒子をフィルムの厚さ方向に埋没させないようにすることに寄与する。粒子がフィルムに埋没しないで空気流通路に配置されると、粒子は、フィルタ通気抵抗の上昇に効率よく寄与することができるとともに、フィルタ硬さの増大に効率よく寄与することができる。

より好ましくは、波形フィルムは、高分子ポリマーフィルムである。更に好ましくは、波形フィルムは、プラスチックフィルムである。具体的には、波形フィルムは、ポリオレフィンフィルム、またはポリエステルフィルムである。より具体的には、波形フィルムは、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンサクシネートフィルム、ポリブチレンサクシネートアジペートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ乳酸フィルム、セルロースアセテートフィルム、またはこれらフィルムを構成する材料の２種類以上からなるフィルムである。波形フィルムは、生分解性フィルムとすることもできる。波形フィルムが２種類以上のフィルム材料からなる場合、波形フィルムは、フィルム材料を原料のペレットの状態で複合（混合）し、溶融してフィルム化することで製造することができる。このように波形フィルムが２種類以上のフィルム材料から構成される場合、波形フィルムの耐熱性、引張伸び等の各種物性を調整することが可能である。

波形フィルムは、一般的には３０μｍ〜２００μｍ、好ましくは３０μｍ〜１００μｍの厚みを有する。ここでの厚みは、ひだを付ける処理の前のフィルムの厚みを指す。フィルムは、上記範囲内の厚みを有すると、ひだを付ける処理の際に、部分的にダメージ（切れ目）が発生しにくい。

波形フィルムは、一般的には０．５ｍｍ〜１．５ｍｍ、好ましくは０．５ｍｍ〜１．０ｍｍの波のピッチを有する。波のピッチは、波形フィルムのひだを平面状に伸ばした際の、隣り合うひだとひだとの間隔の平均値を指す。波のピッチが１．５ｍｍを超えると、波形フィルムを集めて全体として円柱形状を形成する際に、断面をきれいな真円にしにくくなる。０．５ｍｍ未満のピッチは、ひだ付けの精度やひだ付けローラの耐久性の観点で好ましくない。

１つの波形フィルムにおいて、ひだ（すなわち波）は、規則的に（すなわち同じピッチで）フィルムの全面に付けられていることが好ましい。

波形フィルムは、一般的には１００％以上、好ましくは１００％〜１０００％、より好ましくは１５０％〜８００％の引張伸びを有する。ここでの引張伸びは、ひだを付ける処理の前のフィルムに引張試験を行って測定された値を指す。引張伸びは、ＡＳＴＭ Ｄ８８２に従って引張試験を行い、試験結果を下記式にあてはめることにより求めることができる。
引張伸び（％）＝１００×（Ｌ−Ｌ₀）／Ｌ₀
（ここで、Ｌは破断時のフィルム長を表し、Ｌ₀は初期（試験前）のフィルム長を表す。）

フィルムは、上記範囲内の引張伸びを有すると、ひだを付ける処理の際に、部分的にダメージ（切れ目）が発生しにくい。波形フィルムにダメージ（切れ目）が発生すると、波形フィルムが部分的に空気を透過させるため、フィルタを形成した際に、フィルタ通気抵抗当たりのタール／ニコチン濾過率が上がってしまう。

また、フィルムの引張伸びが大きいほど、作製されたフィルタのフィルタ通気抵抗が大きくなる（図３を参照）。したがって、引張伸びの特性に基づいてフィルムの素材を選択して、フィルタ通気抵抗を調整することができる。

上述の波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を有するように集めて濾材を形成する。すなわち、濾材は、波形フィルムから構成され、波形フィルムの隙間により規定される長手方向に走る複数の空気流通路を有するとともに、全体として円柱形状を有する。

波形フィルムのフィルタへの充填程度、すなわち波形フィルムの充填率は、好ましくは１０〜４０％、より好ましくは２０〜４０％である。「充填率」は、以下の式により定義される。
充填率（％）＝｛（フィルム厚さ×フィルム横幅）÷フィルタ断面積｝×１００

波形フィルムのフィルム厚さおよびフィルム横幅を、図２にそれぞれｔおよびｗにより示す。フィルム横幅（ｗ）は、ひだを伸ばした状態で測定したフィルムの横幅を指す。

充填率が１０％未満であると、空気流通路に配置された粒子が空気流通路に保持されにくく、脱落し易くなる。また、この場合、空気流通路が占める割合が高いため、通気抵抗を調整するためには粒子を多く添加する必要があり、その結果、フィルタ表面が凸凹し易くなる。一方、充填率が４０％を超えると、フィルムの反発力によってフィルタの高速成形が困難になり、巻取紙で巻装する際に糊付けされたラップ部のパンクが発生し易くなる。充填率は、達成したいフィルタ硬さやフィルタ通気抵抗を考慮して、上記範囲内で適宜調整することができる。

波形フィルムを集めて濾材を形成する際、１枚の波形フィルムを折り畳むように円柱形状に集めて濾材を形成してもよいし、複数枚の波形フィルムを円柱形状に集めて濾材を形成してもよい。

上述のとおり、波形フィルムを集めて濾材を形成すると、波形フィルムの隙間が、長手方向に走る複数の空気流通路を形成する。本発明では、この空気流通路に複数の粒子が配置される。粒子が空気流通路に配置されると、かかる粒子は、フィルムフィルタのフィルタ硬さの上昇およびフィルタ通気抵抗の上昇に寄与する（図３および図４を参照）。粒子は、波形フィルムに埋没しないで空気流通路を塞ぐように配置されることが好ましく、これにより、フィルタ硬さの上昇およびフィルタ通気抵抗の上昇に効率よく寄与することができる。

粒子は、ＪＩＳ Ｚ８８０１−１（２００６）に基づいて、好ましくは１０〜７０メッシュ（すなわち、１．７ｍｍ〜０．２１２ｍｍの目開き）、より好ましくは１２〜７０メッシュ（すなわち、１．４ｍｍ〜０．２１２μｍの目開き）、より好ましくは１０〜４２メッシュ（すなわち、１．７ｍｍ〜０．３５５ｍｍの目開き）の粒径を有する。１０〜７０メッシュの粒径とは、１０メッシュの篩いを通過し、７０メッシュの篩いを通過しない粒子サイズをいう。

粒子が、上記範囲内の粒径を有すると、空気流通路を塞いでフィルタ通気抵抗の上昇に効率よく寄与するとともに、接着剤や可塑剤等のバインダーを用いなくても空気流通路内に確実に保持されやすい。１０メッシュの篩いを通過しない粒子を用いると、フィルタの表面に粒子の凸凹が現れやすくなり、フィルタをたばこロッドと接続するためのチップペーパの糊付け工程で、糊付けの品質に影響を及ぼす可能性がある。７０メッシュの篩いより１サイズ小さい目開きの篩を通過する粒子を用いると、フィルタ切断端面からの粒子の脱落が起こりやすくなる。

粒子は、接着剤や可塑剤等のバインダーを用いることなく空気流通路に配置させてもよいし、バインダーを用いて空気流通路に配置させてもよい。バインダーとして使用される接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル；ポリビニルアルコール；ポリエチレングリコール；水溶性エステルまたはエーテル類；ペクチン、寒天、澱粉、グァーガム、カラギーナン、ゲランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドガム、アルギン酸、アルギン酸塩類等の多糖類；油脂；天然高分子（例えば、蛋白質）；パラフィン等のワックス；ＣＭＣ（カルボキシメチルセルロース）、ＨＥＣ（ヒドロキシエチルセルロース）、ＨＰＭＣ（ヒドロキシプロピルメチルセルロース）等のセルロース誘導体を使用することができる。バインダーとして使用される可塑剤としては、使用するフィルムへの可塑性を有する物質を使用することができる。可塑剤としては、例えば、セルロースアセテートフィルムに対しては、トリアセチンやクエン酸トリエチルなどを使用することができる。

バインダーを用いた場合、粒子の脱落を低減することができる。バインダーは、フィルム表面や粒子表面に塗布することにより使用することができる。使用されるバインダーの種類を選択することにより、煙中成分の内の特定の成分を選択的に除去し、より好ましい香喫味を実現することも可能である。

また、バインダーを用いることなく、温度上昇によって溶融する特徴を有するフィルムを用いた場合は、フィルタ成形前または後にフィルタに熱を加えて、フィルムを部分的に融解させ、粒子との接触面積を増大させるか、もしくは部分的に粒子と融着させ、これにより粒子を空気流通路に確実に保持することもできる。

粒子は、フィルタの円周が２４．０ｍｍの場合、フィルタの長さ１０ｍｍあたり、好ましくは２０〜１００ｍｇ、より好ましくは２０〜６０ｍｇ、更に好ましくは２０〜５０ｍｇの量で含有される。粒子の添加量は、達成したいフィルタ通気抵抗を考慮して、上記範囲内で適宜調整することができる。

フィルタの円周が変化した場合には、フィルタの体積あたりの粒子の添加量が同じになるように粒子の添加量を計算することができる。具体的には、フィルタの円周がＸ［ｍｍ］の場合の粒子の添加量Ａx［ｍｇ］は、以下の計算式により計算することができる。
Ａ_x＝Ａ₂₄×Ｖ_x／Ｖ₂₄
（Ａ₂₄は、フィルタの円周が２４．０ｍｍの場合の粒子の添加量［ｍｇ］、Ｖ_xは、フィルタの円周がＸ［ｍｍ］の場合のフィルタの体積［ｍｍ³］、Ｖ₂₄は、フィルタの円周が２４．０ｍｍの場合のフィルタの体積［ｍｍ³］である）

例えば、フィルタの円周が２０．０ｍｍの場合、粒子は、フィルタの長さ１０ｍｍあたり、好ましくは１３．９〜４１．７ｍｇ、より好ましくは２０．８〜３４．７ｍｇの量で含有される。

粒子は、好ましくは、主流煙の蒸気相成分全般に対する吸着性能が比較的低い粒子、すなわち比表面積が比較的小さい粒子である。具体的には、１〜５００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有する粒子が好ましく、１〜１００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有する粒子がより好ましい。下限の１ｍ²／ｇは検出限界以下の意味合いである。

かかる粒子は、主流煙の蒸気相成分全般を実質的に除去しない低吸着性粒子であってもよい。かかる低吸着性粒子は、波形フィルムから構成される濾材に添加されると、濾材の低い濾過性能と粒子の低い吸着性能により、増大したたばこ香味（すなわち増大した満足感）をユーザーに提供することができる。

かかる低吸着性粒子は、例えば、セルロース粒子、セルロースアセテート粒子、炭酸カルシウム粒子、賦活度の低い活性炭粒子、賦活されていないカーボン粒子、およびこれら粒子の組み合わせから選ばれる粒子である。これら粒子は、主流煙の蒸気相成分全般を実質的に除去しない。

セルロース粒子およびセルロースアセテート粒子は、ＷＯ ２０１３／０８４６６１を参照することができる。

セルロースアセテート粒子は、任意の平均酢化度を有していてもよいが、平均酢化度が２．７６〜３．０と高い数値であるセルローストリアセテート粒子は、シガレット蔵置中にシガレットパック内に存在する種々の揮発性の香料成分を収着しない点で好ましい。平均酢化度は、滴定法：ＡＳＴＭ Ｄ８７１−９６に準拠して測定することができる。かかる測定法によって求められるセルロースアセテートのアセチル置換度は、正規分布を示すため、「平均酢化度」として規定される。例えば、セルロースアセテート粒子は、セルローストリアセテートフレークとして市販されているものを原料として、ミル等の粉砕機を用いて所望の粒径に粉砕し、篩を用いて分級して準備することができる。別の方法としては、セルローストリアセテートフレークとして市販されているものを原料として、ミル等の粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉体を圧縮方式の造粒装置で圧縮成形し、得られた成形体を更に粉砕し、分級して準備することもできる。

セルロース粒子は、市販されている微結晶セルロース等のセルロース粉を原料として、圧縮方式の造粒装置で圧縮成形し、得られた成形体を粉砕し、分級して準備することができる。

賦活度の低い活性炭粒子は、３００〜１０００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有する活性炭粒子とすることができる。また、賦活されていないカーボン粒子は、１〜３００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有するカーボン粒子とすることができる。

あるいは、粒子は、主流煙の蒸気相成分から特定の刺激成分を選択的に除去する選択的吸着性粒子であってもよい。かかる選択的吸着性粒子は、波形フィルムから構成される濾材に添加されると、濾材の低い濾過性能と粒子の選択的な成分除去性能により、刺激を抑えながら増大したたばこ香味（すなわち増大した満足感）をユーザーに提供することができる。

かかる選択的吸着性粒子は、例えば、ハイドロタルサイト類化合物の粒子、および、陰イオン交換樹脂（例えば、オルガノ株式会社から市販される陰イオン交換樹脂アンバーライト）の粒子から選ばれる粒子である。特に、ハイドロタルサイト類化合物の粒子は、主流煙の蒸気相成分からアルデヒド化合物を選択的に除去することができる。

ハイドロタルサイト類化合物の粒子は、ハイドロタルサイトと同様の層状構造を有する公知の化合物の粒子であり、例えばＷＯ ２００３／０５６９４７を参照することができる。

ハイドロタルサイト類化合物は、具体的には、下記一般式
［Ｍ ²⁺ _1-x Ｍ ³⁺ _x （ＯＨ）₂ ］［（Ａ ^n-）_x/n ・ｍ Ｈ₂Ｏ］
（ここで、Ｍ ²⁺は、Ｍｇ、Ｚｎ、ＮｉおよびＣａからなる群より選択される２価の金属イオンであり、Ｍ ³⁺は、Ａｌイオンであり、Ａ ^n-は、ＣＯ₃、ＳＯ₄、ＯＯＣ−ＣＯＯ、Ｃｌ、Ｂｒ、Ｆ、ＮＯ₃、Ｆｅ（ＣＮ）₆ ^3-、Ｆｅ（ＣＮ）₆ ^4-、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アルケニル酸およびその誘導体、リンゴ酸、サリチル酸、アクリル酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸ならびにスルホン酸からなる群より選択されるｎ価のアニオンであり、ｘは０．１＜ｘ＜０．４であり、ｍは０＜ｍ＜２である）で表される。

上記一般式において、Ｍ ²⁺は、Ｍｇイオンであり、Ｍ ³⁺は、Ａｌイオンであり、Ａ ^{n -}は、ＣＯ₃ ^2-またはＳＯ₄ ^2-であり、ｘは０．１＜ｘ＜０．４であり、ｍは０＜ｍ＜２であることが好ましい。かかるＭｇ−Ａｌ系ハイドロタルサイト類化合物は、ｘが０．２０〜０．３３の範囲にある場合に安定である。上記一般式は、Ｍｇ₆Ａｌ₂（ＯＨ）₁₆ＣＯ ₃・４Ｈ₂Ｏであることが最も好ましい。

Ｍｇ−Ａｌ系ハイドロタルサイト類化合物は、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウムおよび明ばんから選ばれる水溶性のアルミニウム塩またはアルミン酸と水溶性マグネシウム塩との水溶液に、炭酸アルカリまたは炭酸アルカリと苛性アルカリを添加し、反応混合物のｐＨを８．０以上に保って反応させることにより製造することができる。得られたハイドロタルサイト類化合物を、粉砕して分級することにより、ハイドロタルサイト類化合物の粒子とすることができる。

ハイドロタルサイト類化合物の粒子、および、陰イオン交換樹脂（例えば、オルガノ株式会社から市販される陰イオン交換樹脂アンバーライト）の粒子は、造粒、分級されて、好ましい粒径に加工することができる。造粒方法としては、押出成形による造粒もしくは圧縮成形による造粒が、ＢＥＴ比表面積５００ｍ²／ｇ以下の粒子を作りやすいため好ましい。とりわけ、押出成形による造粒が、ＢＥＴ比表面積１００ｍ²／ｇ以下の粒子を作りやすいため好ましい。

粒子は、上述のとおり、フィルタ硬さの上昇およびフィルタ通気抵抗の上昇に寄与するだけでなく、種類や添加量を変更することにより、主流煙の蒸気相成分の濾過率を変化させることができる。例えば、上述の低吸着性粒子と上述の選択的吸着性粒子を組み合わせて使用することができる。この場合、低吸着性粒子は、主流煙の蒸気相成分全般を実質的に除去しないが、選択的吸着性粒子は、刺激成分の選択的な除去に寄与する。これにより、フィルムフィルタの濾過特性を維持しながら刺激成分の選択的な除去が可能になる。

あるいは、粒子は、喫煙物品の香喫味のバリエーションを増やす観点では、上記の低吸着性粒子や選択的吸着性粒子ではなく、主流煙の蒸気相成分全般を、選択性を持たずに広範囲に除去する能力を有する非選択的吸着性粒子、例えば、活性炭、ゼオライト、酸化アルミニウム多孔質体、シリカゲルなどの粒子を用いることもできる。活性炭はヤシガラ、パーム、もしくは石炭を原料として賦活、粉砕、分級された活性炭を用いることができる。この場合の活性炭のＢＥＴ比表面積は１０００〜１８００ｍ²／ｇとすることができる。フィルムフィルタのタール低濾過特性と非選択的吸着性粒子の蒸気相成分高吸着特性とを組み合わせて、従来にない新たな香味を発現することが可能となる。

本発明のフィルタは、波形フィルムから構成され空気流通路を有する上述の濾材と、空気流通路に配置された上述の粒子に加えて、濾材を巻装する巻取紙を含む。巻取紙は、アセテートトウの濾材を巻装するために一般に使用される巻取紙を使用することができる。

上述のとおり、本発明のフィルタは、波形フィルムから構成され空気流通路を有する濾材と、空気流通路に配置された粒子とを含む。かかる構成により、本発明のフィルタは、主流煙成分全体の濾過率を低くすることができるとともに、十分なフィルタ硬さと十分なフィルタ通気抵抗を達成することができる。これにより、本発明のフィルタを備えた喫煙物品は、ユーザーに、違和感のないつかみ心地やくわえ心地を提供するとともに、程良い吸い込み抵抗と増大したたばこ感（増大した吸い応え）を提供することができる。

本発明のフィルタは、好ましくは１６〜２６ｍｍ、より好ましくは２４〜２６ｍｍの円周を有する。すなわち、フィルタは、好ましくは５．１〜８．３ｍｍ、より好ましくは７．６〜８．３ｍｍの直径を有する。

十分なフィルタ硬さとして、フィルタは、２〜１０［ｍｍ^＊１０］の硬さを有することができる。また、十分なフィルタ通気抵抗として、フィルタは、長さ１０ｍｍあたり、５０〜１４０ｍｍＨ₂Ｏの通気抵抗を有することができる。

フィルタ硬さは、セルリアン社製フィルタ硬さ測定器によって、荷重３００ｇ、押し付け面は面積１１３ｍｍ²で形状は丸形状で、１０秒間フィルタを押した際の歪み量［ｍｍ］（ΔＤ）を測定し、測定値から下記の式で算出することができる。
フィルタ硬さ［ｍｍ^＊１０］＝ΔＤ × １０
フィルタ硬さの測定前には、フィルタを２２℃の温度および６０％の湿度の条件下で１２時間以上放置し、その後で測定を行う。

フィルタ硬さを１０［ｍｍ^＊１０］以下、すなわち、「柔らかすぎない硬さ」とすることで、ユーザーは、違和感のないつかみ心地、違和感のないくわえ心地、違和感のない噛み心地を感じることができる。また、フィルタ硬さを１０［ｍｍ^＊１０］以下とすることで、喫煙中にシガレットを軽く叩いて灰落としをする時、喫煙終了時に灰皿に火種を押し付けて消火する時などに予期せぬフィルタの変形が生じることが無い。また、フィルタ硬さを２［ｍｍ^＊１０］以上、すなわち、「硬すぎない硬さ」とすることで、シガレット製造時のシガレットロッドとフィルタロッドをチップペーパで糊付けして接続する工程を既存のシガレット製造装置を用いて高速で行うことができる。

フィルタ通気抵抗は、ＩＳＯ標準法（ＩＳＯ６５６５）に従って、例えばセルリアン社製フィルタ通気抵抗測定器を使用して測定される。フィルタ通気抵抗は、フィルタの側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面（第１端面）から他方の端面（第２端面）に所定の空気流量（１７．５ｃｃ／ｍｉｎ）の空気を流した際の、第１端面と第２端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはｍｍＨ₂Ｏで表す。フィルタ通気抵抗とフィルタ長さとの関係は、通常実施する長さ範囲（長さ５ｍｍ〜２００ｍｍ）においては比例関係であることが知られていて、長さが倍になれば、フィルタ通気抵抗は倍になる。

フィルタ通気抵抗を、上記範囲内とすることで、ユーザーが喫煙物品（例えばシガレット）を喫煙する際に違和感のない吸い込み抵抗を実現することができる。

別の側面によれば、本発明の喫煙物品用フィルタは、
フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、４０％以下である低濾過性濾材と、
前記低濾過性濾材の空隙に配置された複数の粒子と、
前記低濾過性濾材を巻装する巻取紙と
を含む。

「フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率（％）」は、以下のとおり求めることができる。すなわち、フィルタにおけるタール濾過率（E_tar）(単位％）は、タール濾過率の評価を行ないたいフィルタを接続しないシガレットのタール生成量（Tar_0）と、上記フィルタを接続した際のシガレットのタール生成量（Tar_1）とを用いて、下記の式で算出する。
E_tar [%] ＝ ｛(Tar_0 − Tar_1) ÷ Tar_0｝ × 100

また、フィルタにおけるタール透過率（％）は、100−E_tarで表される。

タール量の測定のために、ピストンタイプの定容量型自動喫煙器（ボルグワルド社製ＲＭ２０／ＣＳ）を用い、流量１７．５ｍｌ／秒で喫煙時間２秒／回、喫煙頻度１回／分の条件で喫煙を行った。フィルタを通過した煙中のニコチン及び粗タールをガラス繊維製フィルタ（ケンブリッジフィルタ）で捕集し、「ニコチン量」と「水分重量」はガスクロマトグラフ（Ａｇｉｌｅｎｔ社製 ７８９０Ａ）を用いて測定した。タール量は重量法により測定を行った。喫煙前のガラス繊維製フィルタの重量と喫煙後のガラス繊維製フィルタの重量との差が粗タール重量であり、粗タール重量から、ニコチン重量と水分重量をひいたものを「タール量」とした。

フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、４０％以下である低濾過性濾材は、例えば、上記で説明した濾材、すなわち、第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルムを含み、尾根部および谷部は、第１端面から第２端面まで延びて、空気が第１端面から第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している濾材である。言い換えると、フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、４０％以下である低濾過性濾材は、例えば、波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を有するように集めて形成された濾材である。

従来の繊維充填層フィルタ（すなわち、アセテートフィルタ）においては、フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率は、５５％程度である。本発明のフィルタは、従来の繊維充填層フィルタと同じ通気抵抗を有しているが、従来の繊維充填層フィルタと比べて非常に低いタール濾過率を達成できる。これにより、本発明は、違和感のない吸い込み抵抗を有するとともに、たばこ香味に優れた喫煙物品を実現することができる。具体的には、粒子として、上述の「低吸着性粒子」を使用した場合、違和感のない吸い込み抵抗を有するとともに、たばこ香味の増大された喫煙物品を実現することができる。あるいは、粒子として、上述の「選択的吸着性粒子」を使用した場合、違和感のない吸い込み抵抗を有するとともに、刺激を抑えながらたばこ香味が増大された喫煙物品を実現することができる。あるいは、粒子として、上述の「非選択的吸着性粒子」を使用した場合、違和感のない吸い込み抵抗を有するとともに、従来にない新たなたばこ香味を有する喫煙物品を実現することができる。

２．喫煙物品
別の側面によれば、本発明の喫煙物品用フィルタを含む喫煙物品が提供される。喫煙物品としては、たばこ充填材を燃焼させる燃焼型喫煙物品、例えばシガレット；たばこ充填材を燃焼させることなく加熱する非燃焼加熱型喫煙物品；またはたばこ充填材を燃焼も加熱もしないでたばこ充填材の香味成分を吸引する非加熱型喫煙物品が挙げられる。非燃焼加熱型喫煙物品としては、炭素熱源の燃焼熱でたばこ充填材を加熱する炭素熱源型吸引器（例えばＷＯ２００６／０７３０６５を参照）；吸引器と吸引器を電気加熱するための加熱デバイスとを備えた電気加熱型吸引器（例えばＷＯ２０１０／１１０２２６を参照）；または香喫味源を含有する液状のエアロゾル源を加熱により霧化する液体霧化型吸引器（例えばＷＯ２０１５／０４６３８５を参照）などが挙げられる。非加熱型喫煙物品としては、吸引ホルダと吸引ホルダのメイン流路に充填されたたばこ充填材とを含み、たばこ充填材の香味成分を吸引する香味吸引器が挙げられる（例えば、ＷＯ２０１０／０９５６５９を参照）。

本発明のシガレットは、
本発明の喫煙物品用フィルタと、
たばこ充填材を含み、前記フィルタの一端に連結されたたばこロッドと、
前記フィルタおよび前記たばこロッドを連結するように前記フィルタおよび前記たばこロッドの上に巻かれたチッピングペーパーと
を含む。

上述のとおり、本発明の喫煙物品は、本発明のフィルタを備えているため、ユーザーに、違和感のないつかみ心地、違和感のないくわえ心地、違和感のない噛み心地を提供するとともに、程良い吸い込み抵抗と増大したたばこ感を提供することができる。

３．喫煙物品用フィルタの製造方法
本発明の喫煙物品用フィルタの製造方法は、
波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程と、
前記波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を形成するように集めて濾材を形成し、これにより、前記粒子を前記空気流通路に配置させる工程と、
前記濾材を巻取紙で巻装してフィルタを得る工程と
を含む。

この方法は、公知のフィルタロッド製造装置を用いて実施することができ、例えば特開平１−２４３９７９号公報または特開平９−２９４５７７号公報に記載される装置を用いて実施することができる。

この方法は、濾材を巻取紙で巻装した後、巻取紙のオーバーラップ部分を糊付けする工程を含んでいてもよい。

また、この方法は、波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程の後に、波形フィルムの上に、接着剤や可塑剤等のバインダーを含む液体添加物（すなわち、液体バインダー）を噴霧する工程を有していてもよい。具体的には、この方法は、波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程と、波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を形成するように集めて濾材を形成する工程との間に、接着剤や可塑剤等のバインダーを含む液体添加物をスプレー等で波形フィルムの表面および粒子の表面に塗布する工程を有していてもよい。あるいは、この方法は、波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程の前に、接着剤や可塑剤等のバインダーを含む液体添加物をスプレー等で波形フィルムの表面に塗布する工程を有していてもよい。バインダーを塗布する工程を含むことにより、粒子を空気流通路に確実に保持することができる。

また、この方法は、濾材を巻取紙で巻装してフィルタを得る工程の後に、得られたフィルタを加熱する工程を更に有していてもよい。具体的には、濾材を巻取紙で巻装してフィルタを得る工程の後に、濾材を巻取紙で巻装して得られたフィルタを、環境温度が高い処理容器に所定時間入れる工程、マイクロウェブにより加熱する工程、または熱風を当てて加熱する工程の何れかの工程に供することもできる。これらの工程の何れかの工程を含むことにより、バインダーを含む液体添加物を添加した場合は、バインダーを含む液体添加物の乾燥を促進することができ、バインダーを含む液体添加物を添加していない場合は、フィルム表面を部分的に溶融し粒子とフィルムとの接着面積を増大させることで粒子の確実な保持を行うことができる。

また、この方法は、波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程の前に、波形フィルムを事前に加熱して、波形フィルムの表面を適度に半溶融する工程を更に有していてもよい。具体的には、フィルムに波形を型付けする一対の金属製クレープローラーを予め加熱しておくことで、フィルムが波形に成形されると同時に加熱され、フィルムの表面を適度に半溶融することができる。これにより、添加された粒子とフィルムとの接着面積が増大し、粒子の確実な保持を行うことができる。

４．マルチセグメントフィルタ
本発明の喫煙物品用フィルタを、プレーンフィルタ（すなわちモノフィルタ）として使用してもよいし、マルチセグメントフィルタのフィルタセグメントとして使用してもよい。本発明のフィルタを、マルチセグメントフィルタのフィルタセグメントとして使用する場合、残りのフィルタセグメントを、本発明のフィルタと長手方向に配列してマルチセグメントフィルタを形成することができる。残りのフィルタセグメントとしては、例えば通常の酢酸セルロース繊維充填層からなるフィルタ、濾過材を含まない空洞の紙管、プラスチックや金属から作られた成型体等を使用することができる。

本発明のフィルタと組み合わせて使用されるフィルタセグメントの選定や、上流下流配置の順番は、種々の目的によって決めることができる。例えば、従来の酢酸セルロース繊維充填層からなるフィルタの外観に慣れている喫煙者にフィルタの吸口端面の外観の違和感を感じさせないようにするため、本発明のフィルタを上流セグメントとして配置し、下流セグメントとして酢酸セルロース繊維充填層からなるフィルタを配置することができる。これにより、本発明のフィルタで得られる効果を達成しつつ、吸口端面の外観の違和感を喫煙者に感じさせないようにすることもできる。さらに、フレーバー放出機能を有する部材（例えば香料顆粒）を含むフィルタセグメントと本発明のフィルタとを組み合わせて使用することで、喫煙物品の味香のバリエーションを広げることができる。

マルチセグメントフィルタの場合、各フィルタセグメントの長さは目的に応じて適宜選定できるし、フィルタセグメントの数は目的に応じて適宜選定できる。セグメント２つを組み合わせたフィルタは一般的にデュアルフィルタと呼ばれ、セグメント３つを組み合わせたフィルタは一般的にトリプルフィルタと呼ばれる。マルチセグメントフィルタの製造方法としては、例えば、各フィルタセグメントを作製し、所定長さにカットした後に、外側フィルタ巻取紙でこれらのフィルタセグメントを包むことでマルチセグメントフィルタを製造することができる。

５．好ましい態様
以下に、好ましい態様をまとめて記載する。
［１］第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルムを含み、前記尾根部および前記谷部は、前記第１端面から前記第２端面まで延びて、空気が前記第１端面から前記第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している濾材と、
前記空気流通路に配置された複数の粒子と、
前記側面が被覆されるように前記濾材を巻装する巻取紙と
を含む喫煙物品用フィルタ。
［２］波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を有するように集めて形成された濾材と、
前記空気流通路に配置された複数の粒子と、
前記濾材を巻装する巻取紙４と
を含む喫煙物品用フィルタ。
［３］前記波形フィルムが、溶融されたフィルム材料から成形されたフィルムである［１］または［２］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［４］前記波形フィルムが、空気を実質的に透過させないフィルムである［３］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［５］前記波形フィルムが、３０μｍ〜２００μｍの厚み、好ましくは３０〜１００μｍの厚みを有する［１］〜［４］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［６］前記波形フィルムが、１００％以上の引張伸び、好ましくは１００％〜１０００％の引張伸び、より好ましくは１５０％〜８００％の引張伸びを有する［１］〜［５］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［７］前記波形フィルムが、０．５ｍｍ〜１．５ｍｍの波のピッチ、好ましくは０．５ｍｍ〜１．０ｍｍの波のピッチを有する［１］〜［６］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［８］前記波形フィルムが、１０〜４０％の充填率、好ましくは２０〜４０％の充填率で含有される［１］〜［７］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［９］前記粒子が、ＪＩＳ Ｚ８８０１−１（２００６）に基づいて、１０〜７０メッシュの粒径、好ましくは１２〜７０メッシュの粒径、好ましくは１０〜４２メッシュの粒径を有する［１］〜［８］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１０］前記粒子が、前記フィルタの円周が２４．０ｍｍの場合、長さ１０ｍｍあたり、２０〜１００ｍｇ、好ましくは２０〜６０ｍｇ、より好ましくは２０〜５０ｍｇの量で含有される［１］〜［９］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。

［１１］前記喫煙物品用フィルタが、１６〜２６ｍｍの円周、好ましくは２４〜２６ｍｍの円周を有する［１］〜［１０］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１２］前記前記喫煙物品用フィルタが、５．１〜８．３ｍｍの直径、好ましくは７．６〜８．３ｍｍの直径を有する［１］〜［１０］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。［１３］前記波形フィルムが、高分子ポリマーフィルムである［１］〜［１２］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１４］前記波形フィルムが、プラスチックフィルムである［１］〜［１３］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１５］前記波形フィルムが、ポリオレフィンフィルムまたはポリエステルフィルムである［１］〜［１４］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１６］前記フィルムが、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンサクシネートフィルム、ポリブチレンサクシネートアジペートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ乳酸フィルム、セルロースアセテートフィルム、およびこれらフィルムを構成する材料の２種類以上からなるフィルムから選ばれるフィルムである［１］〜［１５］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１７］前記波形フィルムが、生分解性フィルムである［１］〜［１６］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１８］前記粒子が、１〜５００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積、好ましくは１〜１００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有する粒子である［１］〜［１７］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［１９］前記粒子が、セルロース粒子、セルロースアセテート粒子、炭酸カルシウム粒子、賦活度の低い活性炭粒子、賦活されていないカーボン粒子、およびこれら粒子の組み合わせから選ばれる粒子である［１］〜［１８］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。［２０］前記粒子が、ハイドロタルサイト類化合物の粒子、陰イオン交換樹脂の粒子から選ばれる粒子である［１］〜［１９］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。

［２１］前記粒子が、下記一般式
［Ｍ ²⁺ _1-x Ｍ ³⁺ _x （ＯＨ）₂ ］［（Ａ ^n-）_x/n ・ｍ Ｈ₂Ｏ］
（ここで、Ｍ ²⁺は、Ｍｇ、Ｚｎ、ＮｉおよびＣａからなる群より選択される２価の金属イオンであり、Ｍ ³⁺は、Ａｌイオンであり、Ａ ^n-は、ＣＯ₃、ＳＯ₄、ＯＯＣ−ＣＯＯ、Ｃｌ、Ｂｒ、Ｆ、ＮＯ₃、Ｆｅ（ＣＮ）₆ ^3-、Ｆｅ（ＣＮ）₆ ^4-、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アルケニル酸およびその誘導体、リンゴ酸、サリチル酸、アクリル酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸ならびにスルホン酸からなる群より選択されるｎ価のアニオンであり、ｘは０．１＜ｘ＜０．４であり、ｍは０＜ｍ＜２である）で表されるハイドロタルサイト類化合物の粒子である［１］〜［２０］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２２］前記一般式において、Ｍ ²⁺は、Ｍｇイオンであり、Ｍ ³⁺は、Ａｌイオンであり、Ａ ^n-は、ＣＯ₃ ^2-またはＳＯ₄ ^2-であり、ｘは０．１＜ｘ＜０．４であり、ｍは０＜ｍ＜２である［２１］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２３］前記一般式において、ｘが０．２０〜０．３３の範囲にある［２２］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２４］前記一般式が、Ｍｇ₆Ａｌ₂（ＯＨ）₁₆ＣＯ₃・４Ｈ₂Ｏである［２１］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２５］前記粒子が、活性炭、ゼオライト、酸化アルミニウム多孔質体、シリカゲル、およびこれら粒子の組み合わせから選ばれる粒子である［１］〜［２４］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２６］前記粒子が、［１９］に記載される粒子と［２０］〜［２４］の何れか１に記載される粒子との組み合わせである［１］〜［１８］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２７］前記粒子が、バインダーを介して空気流通路に配置される［１］〜［２６］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２８］前記バインダーが、接着剤または可塑剤である［２７］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［２９］前記喫煙物品用フィルタが、長さ１０ｍｍあたり、５０〜１４０ｍｍＨ₂Ｏの通気抵抗を有する［１］〜［２８］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。
［３０］前記喫煙物品用フィルタが２〜１０ｍｍ^＊１０の硬さを有する［１］〜［２９］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタ。

［３１］フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、４０％以下である低濾過性濾材と、
前記低濾過性濾材の空隙に配置された複数の粒子と、
前記低濾過性濾材を巻装する巻取紙と
を含む喫煙物品用フィルタ。
［３２］前記低濾過性濾材が、第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルムを含み、前記尾根部および前記谷部は、前記第１端面から前記第２端面まで延びて、空気が前記第１端面から前記第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している濾材である［３１］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［３３］前記低濾過性濾材が、波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を有するように集めて形成された濾材である［３１］に記載の喫煙物品用フィルタ。
［３４］［１］〜［３３］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタを含む喫煙物品。
［３５］前記喫煙物品が、たばこ充填材を燃焼させる燃焼型喫煙物品である［３４］に記載の喫煙物品。
［３６］前記喫煙物品が、たばこ充填材を燃焼させることなく加熱する非燃焼加熱型喫煙物品である［３４］に記載の喫煙物品。
［３７］前記非燃焼加熱型喫煙物品が、炭素熱源の燃焼熱でたばこ充填材を加熱する炭素熱源型吸引器、吸引器と前記吸引器を電気加熱するための加熱デバイスとを備えた電気加熱型吸引器、または香喫味源を含有する液状のエアロゾル源を加熱により霧化する液体霧化型吸引器である［３６］に記載の喫煙物品。
［３８］前記喫煙物品が、たばこ充填材を燃焼も加熱もしないで前記たばこ充填材の香味成分を吸引する非加熱型喫煙物品である［３４］に記載の喫煙物品。
［３９］前記非加熱型喫煙物品が、吸引ホルダと前記吸引ホルダのメイン流路に充填されたたばこ充填材とを含み、前記たばこ充填材の香味成分を吸引する香味吸引器である［３８］に記載の喫煙物品。
［４０］［１］〜［３３］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタと、
たばこ充填材を含み、前記フィルタの一端に連結されたたばこロッドと、
前記フィルタおよび前記たばこロッドを連結するように前記フィルタおよび前記たばこロッドの上に巻かれたチッピングペーパーと
を含むシガレット。

［４１］波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程と、
前記波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を形成するように集めて濾材を形成し、これにより、前記粒子を前記空気流通路に配置させる工程と、
前記濾材を巻取紙で巻装してフィルタを得る工程と
を含む、喫煙物品用フィルタの製造方法。
［４２］前記喫煙物品用フィルタが、［１］〜［３３］の何れか１に記載の喫煙物品用フィルタである［４１］に記載の方法。
［４３］前記濾材を前記巻取紙で巻装してフィルタを得る前記工程の後に、前記巻取紙のオーバーラップ部分を糊付けする工程を更に含む［４１］または［４２］に記載の方法。［４４］前記波形フィルムの上に前記複数の粒子を添加する前記工程の後に、前記波形フィルムの上に液体バインダーを噴霧する工程を更に含む［４１］〜［４３］の何れか１に記載の方法。
［４５］前記波形フィルムの上に前記複数の粒子を添加する前記工程の前に、前記波形フィルムの上に液体バインダーを噴霧する工程を更に含む［４１］〜［４３］の何れか１に記載の方法。
［４６］前記液体バインダーが、バインダーとして接着剤または可塑剤を含む［４４］または［４５］に記載の方法。
［４７］前記濾材を前記巻取紙で巻装してフィルタを得る前記工程の後に、前記フィルタを加熱する工程を更に含む［４１］〜［４６］の何れか１に記載の方法。
［４８］前記濾材を前記巻取紙で巻装してフィルタを得る前記工程の前に、前記濾材を加熱する工程を更に含む［４１］〜［４６］の何れか１に記載の方法。
［４９］前記波形フィルムの上に前記複数の粒子を添加する前記工程の前に、前記波形フィルムを加熱する工程を更に含む［４１］〜［４６］の何れか１に記載の方法。

［実施例１］
１．フィルタの作製
１−１．波形フィルムの作製
波形フィルムの作製のために、下記フィルムＡ〜Ｃを使用した。
フィルムＡ：ポリプロピレンフィルム（購入先：ＭｉｔｓｕｉＣｈｅｍｉｃａｌｓ Ｔｏｈｃｅｌｌｏ）
厚み： ５０μｍ
引張伸び：７００％
フィルムＢ：ポリブチレンサクシネートフィルム ＦＺ９１（購入先：Ｍｉｔｓｕｂｉｓｈｉ Ｃｈｅｍｉｃａｌ）
厚み： ５０μｍ
引張伸び：１６０％
フィルムＣ：ポリブチレンサクシネートアジペートフィルム ＦＤ９２（購入先：Ｍｉｔｓｕｂｉｓｈｉ Ｃｈｅｍｉｃａｌ）
厚み： ５０μｍ
引張伸び：３８０％

ボビンに巻かれている状態のフィルムＡ〜Ｃを繰り出しながら、ひだを付すための一対の溝付きクレープロール（エンボスロール）の間を通した。溝付きクレープロールは、それぞれ、円周方向に平行に延びる複数の溝であって、ピッチが１ｍｍの複数の溝を表面に有する。これにより、フィルムに、フィルム進行方向に沿った複数の溝（蛇腹状のひだ）を付して、波形フィルムＡ〜Ｃを作製した。

１−２．粒子含有濾材の作製
波形フィルムＡ〜Ｃ（フィルム横幅（ｗ）２６０ｍｍ）を使用して、以下のとおり粒子含有濾材Ａ〜Ｃを作製した。

粒子として、ハイドロタルサイト類化合物の粒子（グレード：Ｇ−７ 購入先：Ｋｙｏｗａ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｉｎｄｕｓｔｒｙ）を使用した。粒子は、１０〜４２メッシュの粒径、６５ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有していた。粒子は、フィルタの長さ１０ｍｍあたり２０ｍｇ〜４５ｍｇの量で波形フィルムの上に添加した。

その後、波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を形成するように集めて粒子含有濾材を形成した。これにより、粒子が空気流通路に配置された粒子含有濾材Ａ〜Ｃが作製された。

一方、粒子を添加しなかったこと以外は同様の方法により波形フィルムＡ〜Ｃから濾材Ａ〜Ｃを形成した。濾材Ａ〜Ｃは、フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、３０〜３５％程度であった。

１−３．フィルタの作製
粒子含有濾材Ａ〜Ｃを巻取紙（木材パルプを主原料とする紙、厚さ１１０μｍ、坪量５２ｇ/ｍ³、通気度 ７０００[ＣＵ]）で巻取り、フィルタＡ〜Ｃを作製した。

フィルタＡ〜Ｃは、７．７ｍｍの直径、２４．１ｍｍの円周、１２０ｍｍの長さを有していた。また、フィルタＡ〜Ｃにおいて、波形フィルムの充填率は２８％であった。

２．評価
２−１．評価１（粒子添加量とフィルタ通気抵抗との関係）
フィルタＡ〜Ｃのそれぞれについて、粒子添加量を変化させ、粒子添加量とフィルタ通気抵抗との関係を調べた。

フィルタ通気抵抗は、ＩＳＯ標準法（ＩＳＯ６５６５）に従って、セルリアン社製フィルタ通気抵抗測定器を使用して測定した。

粒子添加量とフィルタ通気抵抗との関係を図３に示す。図３において、粒子添加量は、フィルタの長さ１０ｍｍあたりの添加量を示す。図３において、フィルタ通気抵抗は、フィルタの長さ２７ｍｍあたりの通気抵抗［ｍｍＨ₂Ｏ］で表す。フィルタ通気抵抗は、フィルタの長さと比例関係にあることから、例えば、フィルタ長さ１０ｍｍ当たりの通気抵抗値を求めたい際は、フィルタの長さ２７ｍｍあたりの通気抵抗［ｍｍＨ₂Ｏ］に１０／２７を掛けることにより、フィルタの長さ１０ｍｍあたりの通気抵抗［ｍｍＨ₂Ｏ］を求めることができる。

フィルタＡ〜Ｃのすべてにおいて、粒子添加量の増加に応じて、フィルタ通気抵抗が増加した。また、フィルタＡ〜Ｃを比較すると、フィルムの引張伸びが大きいほど、フィルタ通気抵抗が大きくなった。これらの結果は、フィルムの種類（引張伸び）や粒子の添加量を調整することにより、所望のフィルタ通気抵抗を設計可能であることを示す。

２−２．評価２（粒子添加量とフィルタ硬さとの関係）
フィルタＡ〜Ｃのそれぞれについて、粒子添加量を変化させ、粒子添加量とフィルタ硬さとの関係を調べた。

フィルタ硬さは以下のとおり測定した。
フィルタ硬さは、セルリアン社製フィルタ硬さ測定器によって、荷重３００ｇ、押し付け面は面積１１３ｍｍ²で形状は丸形状で、１０秒間フィルタを押した際の歪み量［ｍｍ］（ΔＤ）を測定し、測定値から下記の式で算出した。
フィルタ硬さ［ｍｍ^＊１０］＝ΔＤ × １０
フィルタ硬さの測定前には、フィルタを２２℃の温度および６０％の湿度の条件下で１２時間以上放置し、その後で測定を行った。

粒子添加量とフィルタ硬さとの関係を図４に示す。図４において、粒子添加量は、フィルタの長さ１０ｍｍあたりの添加量を示す。フィルタＡ〜Ｃのすべてにおいて、粒子添加量の増加に伴って、フィルタ硬さが増加した。また、フィルタＡ〜Ｃを比較すると、フィルムＡおよびＢは、フィルムＣと比べてフィルタ硬さを発現しやすかった。これらの結果は、フィルムの種類（材質）や粒子の添加量を調整することにより、所望のフィルタ硬さを設計可能であることを示す。

２−３．評価３（フィルタ通気抵抗とタール透過率との関係）
フィルタＡ〜Ｃのそれぞれについて、フィルタ通気抵抗を変化させ、フィルタ通気抵抗とタール透過率との関係を調べた。コントロールとして、従来のアセテートフィルタについても、フィルタ通気抵抗とタール透過率との関係を調べた。

フィルタ通気抵抗は、ＩＳＯ標準法（ＩＳＯ６５６５）に従って、セルリアン社製フィルタ通気抵抗測定器で測定した。

タール透過率の測定は、フィルタ通気抵抗を変化させたフィルタＡ〜Ｃ、および、従来のアセテートフィルタを下記の方法でたばこロッドに接続して行なった。

フィルタＡ〜Ｃ、および、従来のアセテートフィルタを長さ２０ｍｍにカットし、カットされたフィルタと、市販のメビウススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のフィルタを取り外したたばこロッド部とを端面どうしで密着させてセロハンテープで接続した。次に、フィルタＡ〜Ｃと円周が同一のシガレットサンプル作製用アセテートフィルタ（単繊度５．５デニール、繊維断面形状Ｙ断面、総繊度３１０００デニールの酢酸セルロース繊維を濾材として含み、可塑剤としてトリアセチンを繊維重量に対して６％含むフィルタ）を長さ７ｍｍにカットし、カットされたフィルタを、フィルタＡ〜Ｃのたばこロッドと接続していない端面と密着させてセロハンテープで接続した。２０ｍｍ長さのフィルタＡ〜Ｃ、従来のアセテートフィルタ、および、７ｍｍ長さのシガレットサンプル作製用アセテートフィルタは、空気の漏れが生じないように側面全面をセロハンテープで塞いだ。

タール透過率を評価したいフィルタのタール透過率は、以下のとおり求めた。まず、タール濾過率（E_tar）を、タール透過率を評価したいフィルタを接続しないシガレット（すなわち、メビウススーパーライトのたばこロッド部に、長さ７ｍｍのシガレットサンプル作製用アセテートフィルタのみを接続したシガレット）のタール生成量（Tar_0）と、タール透過率を評価したいフィルタを接続したシガレット（すなわち、フィルタＡ〜Ｃおよび従来のアセテートフィルタの何れかを２０ｍｍ長さにカットして得られたフィルタと、長さ７ｍｍのシガレットサンプル作製用アセテートフィルタとをメビウススーパーライトのたばこロッド部に接続したシガレット）のタール生成量（Tar_1）とを用いて、下記の式で算出した。
タール濾過率(E_tar) ＝ ｛(Tar_0 − Tar_1) ÷ Tar_0｝

タール透過率を、タール濾過率（E_tar）の値から下記の式で算出した。
タール透過率 ＝ 1−E_tar

タール量およびニコチン量の測定のために、ピストンタイプの定容量型自動喫煙器（ボルグワルド社製ＲＭ２０／ＣＳ）を用い、流量１７．５ｍｌ／秒で喫煙時間２秒／回、喫煙頻度１回／分の条件で喫煙を行った。フィルタを通過した煙中のニコチン及び粗タールをガラス繊維製フィルタ（ケンブリッジフィルタ）で捕集し、「ニコチン量」と「水分重量」はガスクロマトグラフ（Ａｇｉｌｅｎｔ社製 ７８９０Ａ）を用いて測定した。タール量は重量法により測定を行った。喫煙前のガラス繊維製フィルタの重量と喫煙後のガラス繊維製フィルタの重量との差が粗タール重量であり、粗タール重量から、ニコチン重量と水分重量をひいたものを「タール量」とした。

フィルタ通気抵抗とタール透過率との関係を図５に示す。図５において、「フィルム」はフィルタＡ〜Ｃを表し、「ＭＡ」は、酢酸セルロース繊維充填層からなるアセテートフィルタを表す。図５では、フィルタＡ〜Ｃの結果を区別することなく示す。

フィルタＡ〜Ｃは、アセテートフィルタと比較してタールの透過率が高かった。この結果は、本発明のフィルタは、粒子を添加しても、濾過率が低いというフィルムフィルタの特性を維持できることを示す。

本発明のフィルタは、アセテートフィルタと同じフィルタ通気抵抗を達成しようとした場合、アセテートフィルタと比較してタール透過率が高くなる。タール透過率の異なる本発明のフィルタおよびアセテートフィルタをたばこロッドに接続してシガレットを製造した場合、それぞれのシガレットからのタールデリバリー量を同一にするためには、本発明のフィルタを接続したシガレットのチップペーパの貫通孔から流入する空気量の割合（Ｖｆ）を増加させて調整をする。これにより、本発明のフィルタは、低いＣＯ／タール比を達成することができる。また、本発明は、Ｖｆを増加させることにより、低い濾過性能および高いＶｆ値を有するシガレットを設計することが可能になり、その結果、刺激性の蒸気相成分の透過を抑制し、半揮発性成分（香喫味成分）の透過を高めることができる。

［実施例２］
１．フィルタの作製
上記方法と同様の方法に従って、波形フィルムＢに、下記の粒子Ｂ１〜Ｂ３の何れかを添加し、粒子含有濾材Ｂ１〜Ｂ３を作製し、これを巻取紙で巻取ってフィルタを作製した。その後、長さを２０ｍｍに調整し、フィルタＢ１〜Ｂ３を作製した。

粒子Ｂ１：セルロース粒子 ８６ｍｇ／２０ｍｍ
２８〜７０メッシュの粒径、５ｍ²／ｇ未満のＢＥＴ比表面積
市販のセルロース粉（エンデュランスＭＣＣ ＶＥ−０９０、ＦＭＣ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ製）を原料として、圧縮造粒装置（ローラーコンパクターＴＦ−２０８、フロイント産業（株）製）を用いて、圧縮成形し粉砕および分級して作製した。

粒子Ｂ２：ハイドロタルサイト粒子とセルロース粒子との混合物
ハイドロタルサイト粒子（グレード：Ｇ−７ 購入先：Ｋｙｏｗａ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｉｎｄｕｓｔｒｙ）４１ｍｇ／１０ｍｍ、
１０〜４２メッシュの粒径、６５ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積
セルロース粒子 ４３ｍｇ／１０ｍｍ
２８〜７０メッシュの粒径、５ｍ²／ｇ未満のＢＥＴ比表面積
ハイドロタルサイト粒子添加フィルタ１０ｍｍとセルロース粒子添加フィルタ１０ｍｍとを接続し、ハイドロタルサイト粒子とセルロース粒子が混在するフィルタＢ２を作製した。

粒子Ｂ３：活性炭粒子（Ｃｈ）７６ｍｇ／２０ｍｍ
２８〜７０メッシュの粒径、１１００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積、市販のヤシガラ由来活性炭を用いた。

フィルタＢ１〜Ｂ３のフィルタ通気抵抗は、以下のとおりであった。
フィルタＢ１：５１［ｍｍＨ2Ｏ／２０ｍｍ］
フィルタＢ２：５２［ｍｍＨ2Ｏ／２０ｍｍ］
フィルタＢ３：５２［ｍｍＨ2Ｏ／２０ｍｍ］

２．シガレットの作製
フィルタＢ１をピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のたばこロッド部分に連結して、シガレット１を作製した。

また、フィルタＢ２をピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のたばこロッド部分に連結して、シガレット２を作製した。

また、フィルタＢ３をピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のたばこロッド部分に連結して、シガレット３を作製した。

フィルタＢ１、Ｂ２、およびＢ３のたばこロッドへの連結は、下記の方法で行なった。ピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のフィルタ部分（長さ２７ｍｍ、アセテートフィルタ）のうち、下流端から７ｍｍについては元々の酢酸セルロース繊維充填層を残して、上流部分の長さ２０ｍｍに相当する部分の酢酸セルロース繊維充填層を取り出して、フィルタＢ１またはフィルタＢ３を挿入した（図７Ａ参照）。

同様に、ピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のフィルタ部分（長さ２７ｍｍ、アセテートフィルタ）の上流部分の長さ２０ｍｍに相当する部分の酢酸セルロース繊維充填層を取り出して、フィルタＢ２を挿入した（図７Ｂ参照）。フィルタＢ２は、上述のとおり、ハイドロタルサイト粒子添加フィルタ（１０ｍｍ）とセルロース粒子添加フィルタ（１０ｍｍ）の２つのフィルタセグメントから構成される。

「半揮発性成分の透過能の評価」および「香喫味の評価」を行なう際には、ピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）のタール値とフィルタＢ１、Ｂ２、およびＢ３を接続したシガレットのタール値を合わせるために、フィルタＢ１、Ｂ２、およびＢ３を挿入した後で、チップペーパに希釈空気流入のための穿孔を施して、フィルタベンチレーション割合を３７％として評価を行なった。

図７Ａおよび図７Ｂに、本実施例で評価したシガレットの概略図を示す。図７Ａおよび図７Ｂにおいて、参照符号は以下の構成を示す。
１０…たばこロッド
２０ａ…フィルタＢ１またはＢ３
２０ｂ…酢酸セルロース繊維充填層
２０ｃ…フィルタＢ２
２３…巻取紙の穿孔
３０…チップペーパ
３１…チップペーパの穿孔。

３．評価
３−１．半揮発性成分の透過能の評価
シガレット１〜３、および、アセテートフィルタを含むピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社）について、半揮発性成分のデリバリー量の評価を行った。

半揮発性成分のデリバリー量は、以下のとおり測定した。
自動喫煙器（Borgwaldt KC Inc.製ＲＭ２０Ｄ）を用いて、吸煙容量３５．０ｍＬ／２秒、吸煙時間２秒／パフ、吸煙頻度１パフ／分の条件で自動喫煙し、たばこ煙中粒状物質をケンブリッジフィルタ（Borgwaldt KC Inc.製ＣＭ−１３３）で捕集し、このケンブリッジフィルタを通過した煙を、ドライアイスとイソプロパノールからなる冷媒で−７０℃に冷却したメタノール１０ｍＬに捕集した。なお、メタノール溶液には内部標準物質としてｄ−３２ペンタデカンが５μｇ／ｍＬの濃度で含まれている。

上記粒状物質を捕集したケンブリッジフィルタと、上記たばこ煙を捕集したメタノール溶液１０ｍＬを血清瓶に移し、３０分間振盪を行った。振盪後、上澄液を採取し、分析用試料として用いた。

上記分析用試料を、ガスクロマトグラフ質量分析（ＧＣ−ＭＳＤ）で分析した。ＧＣにはAgilent 7890A（Agilent Technologies Inc.）を、ＭＳＤにはAgilent 5975C（Agilent
Technologies Inc.）を用いた。

上記分析で得られたクロマトグラムにおける各成分のピーク面積（内部標準で規格化）を、対照シガレット（ピーススーパーライト（日本たばこ産業株式会社））についてのクロマトグラムにおける各成分のピーク面積と比較し、各成分のデリバリー量比を算出した。

半揮発性成分として、リモネン、２，５−ジメチルピラジン、３−ビニルピリジン、３−ブチルピリジン、フェニルエチルアルコール、およびインドールを測定した。

半揮発性成分のデリバリー量比の結果を図６に示す。ピーススーパーライトと比較して、シガレット１は、リモネンを除く半揮発性成分のデリバリーが多かった。シガレット２は、ピーススーパーライトと比較して、リモネンを除く半揮発性成分のデリバリーが多かった。シガレット３は、ピーススーパーライトと比較して、リモネンと３−ビニルピリジンを除く半揮発性成分のデリバリーが多かった。

この結果は、本発明のフィルタは、アセテートフィルタよりも、ほとんどの半揮発性成分の透過率が高いため、ユーザーに、増大したたばこ感を提供できることを示す。

３−２．香喫味の評価
シガレット１〜３に加えて、シガレット４を作製した。具体的には、フィルタＢ２をＭｅｖｉｕｓ Ｏｒｉｇｉｎａｌ（日本たばこ産業株式会社）のたばこロッド部分に連結して、シガレット４を作製した。

シガレット１〜４についてパネラー１０人により香喫味評価を行った。

シガレット１は、アセテートフィルタを備えたシガレットと比べて、パネラーに強いたばこ感を提供することができた。シガレット２および４は、パネラーに強いたばこ感を提供するとともに、シガレット１と比べて低減した刺激感を提供した。シガレット３は、ピーススーパーライトと比較してパネラーに強いたばこ感を提供するとともにスムースな吸い心地を伴う新たなタイプの香味を提供した。

これらの結果は、本発明の喫煙物品が、ユーザーに、違和感のないつかみ心地、違和感のないくわえ心地、違和感のない噛み心地を提供するとともに、程良い吸い込み抵抗と増大したたばこ感を提供することができることを示す。また、本発明の喫煙物品は、添加する粒子として、選択的に刺激成分を除去する性能を有する粒子を使用することにより、刺激を抑えながら増大したたばこ感をユーザーに提供することもできる。また、添加する粒子として、蒸気相成分全般を除去する性能を有する粒子を使用することにより、新たなたばこ香味をユーザーに提供することもできる。

フィルタ通気抵抗は、ＩＳＯ標準法（ＩＳＯ６５６５）に従って、例えばセルリアン社製フィルタ通気抵抗測定器を使用して測定される。フィルタ通気抵抗は、フィルタの側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面（第１端面）から他方の端面（第２端面）に所定の空気流量（１７．５ｃｃ／ｓｅｃ）の空気を流した際の、第１端面と第２端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはｍｍＨ₂Ｏで表す。フィルタ通気抵抗とフィルタ長さとの関係は、通常実施する長さ範囲（長さ５ｍｍ〜２００ｍｍ）においては比例関係であることが知られていて、長さが倍になれば、フィルタ通気抵抗は倍になる。

Claims (23)

1. 第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルムを含み、前記尾根部および前記谷部は、前記第１端面から前記第２端面まで延びて、空気が前記第１端面から前記第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している濾材と、
   前記空気流通路に配置された複数の粒子と、
   前記側面が被覆されるように前記濾材を巻装する巻取紙と
   を含む喫煙物品用フィルタ。
2. 前記波形フィルムが、溶融されたフィルム材料から成形されたフィルムである請求項１に記載の喫煙物品用フィルタ。
3. 前記波形フィルムが、３０μｍ〜２００μｍの厚みを有する請求項１または２に記載の喫煙物品用フィルタ。
4. 前記波形フィルムが、１００％以上の引張伸びを有する請求項１〜３の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
5. 前記波形フィルムが、０．５ｍｍ〜１．５ｍｍの波のピッチを有する請求項１〜４の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
6. 前記波形フィルムが、１０〜４０％の充填率で含有される請求項１〜５の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
7. 前記粒子が、ＪＩＳ Ｚ８８０１−１（２００６）に基づいて、１２〜７０メッシュの粒径を有する請求項１〜６の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
8. 前記粒子が、前記フィルタの円周が２４．０ｍｍの場合、長さ１０ｍｍあたり、２０〜６０ｍｇの量で含有される請求項１〜７の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
9. 前記喫煙物品用フィルタが、１６〜２６ｍｍの円周を有する請求項１〜８の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
10. 前記フィルムが、プラスチックフィルムである請求項１〜９の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
11. 前記フィルムが、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンサクシネートフィルム、ポリブチレンサクシネートアジペートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ乳酸フィルム、セルロースアセテートフィルム、およびこれらフィルムを構成する材料の２種類以上からなるフィルムから選ばれるフィルムである請求項１〜１０の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
12. 前記粒子が、１〜５００ｍ²／ｇのＢＥＴ比表面積を有する粒子である請求項１〜１１の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
13. 前記粒子が、セルロース粒子、セルロースアセテート粒子、炭酸カルシウム粒子、賦活度の低い活性炭粒子、賦活されていないカーボン粒子、およびこれら粒子の組み合わせから選ばれる粒子である請求項１〜１２の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
14. 前記粒子が、ハイドロタルサイト類化合物の粒子、陰イオン交換樹脂の粒子から選ばれる粒子である請求項１〜１２の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
15. 前記喫煙物品用フィルタが、長さ１０ｍｍあたり、５０〜１４０ｍｍＨ₂Ｏの通気抵抗を有する請求項１〜１４の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
16. 前記喫煙物品用フィルタが２〜１０ｍｍ^＊１０の硬さを有する請求項１〜１５の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタ。
17. フィルタ通気抵抗９０ｍｍＨ₂Ｏの場合のタール濾過率が、４０％以下である低濾過性濾材と、
    前記低濾過性濾材の空隙に配置された複数の粒子と、
    前記低濾過性濾材を巻装する巻取紙と
    を含む喫煙物品用フィルタ。
18. 前記低濾過性濾材が、第１および第２端面と側面とを備えた円柱形状を有している濾材であって、尾根部と谷部とが交互に配列した波形フィルムを含み、前記尾根部および前記谷部は、前記第１端面から前記第２端面まで延びて、空気が前記第１端面から前記第２端面まで流通するのを可能とする複数の空気流通路を形成している濾材である請求項１７に記載の喫煙物品用フィルタ。
19. 請求項１〜１８の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタを含む喫煙物品。
20. 請求項１〜１８の何れか１項に記載の喫煙物品用フィルタと、
    たばこ充填材を含み、前記フィルタの一端に連結されたたばこロッドと、
    前記フィルタおよび前記たばこロッドを連結するように前記フィルタおよび前記たばこロッドの上に巻かれたチッピングペーパーと
    を含むシガレット。
21. 波形フィルムの上に複数の粒子を添加する工程と、
    前記波形フィルムを、長手方向に複数の空気流通路を有しかつ全体として円柱形状を形成するように集めて濾材を形成し、これにより、前記粒子を前記空気流通路に配置させる工程と、
    前記濾材を巻取紙で巻装してフィルタを得る工程と
    を含む、喫煙物品用フィルタの製造方法。
22. 前記波形フィルムの上に前記複数の粒子を添加する前記工程の後に、前記波形フィルムの上に液体バインダーを噴霧する工程を更に含む、請求項２１に記載の喫煙物品用フィルタの製造方法。
23. 前記濾材を前記巻取紙で巻装してフィルタを得る前記工程の前または後に、前記フィルタを加熱する工程を更に含む、請求項２１または２２に記載の喫煙物品用フィルタの製造方法。

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