JPWO2018235138A1 - 熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体 - Google Patents

熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2018235138A1
JPWO2018235138A1 JP2019524726A JP2019524726A JPWO2018235138A1 JP WO2018235138 A1 JPWO2018235138 A1 JP WO2018235138A1 JP 2019524726 A JP2019524726 A JP 2019524726A JP 2019524726 A JP2019524726 A JP 2019524726A JP WO2018235138 A1 JPWO2018235138 A1 JP WO2018235138A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heat ray
ray absorbing
resin
tungsten oxide
composite tungsten
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019524726A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6949304B2 (ja
Inventor
長南 武
武 長南
裕史 常松
裕史 常松
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Publication of JPWO2018235138A1 publication Critical patent/JPWO2018235138A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6949304B2 publication Critical patent/JP6949304B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08JWORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
    • C08J3/00Processes of treating or compounding macromolecular substances
    • C08J3/20Compounding polymers with additives, e.g. colouring
    • C08J3/22Compounding polymers with additives, e.g. colouring using masterbatch techniques

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)

Abstract

視光線透過能及び熱線吸収機能を有する様々な形状の熱線吸収透明樹脂成形体において、可視光透過性が良好でかつ優れた熱線吸収機能を有し、さらには耐侯性の高い熱線吸収透明樹脂成形体が得られる熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法を提供する。複合タングステン酸化物微粒子と熱可塑性樹脂とを含み、前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MyWOzで示される六方晶の結晶構造を有し、且つ、シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上であり、前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂から選択される1種以上である、ことを特徴とする熱線吸収成分含有マスターバッチを提供する。

Description

本発明は、建築物の屋根材や壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に広く利用される熱線吸収透明樹脂成形体の製造に用いられる熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、当該マスターバッチを用いて製造された熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体に関するものである。
各種建築物や車両の窓、ドア等のいわゆる開口部分から入射する太陽光線には可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれている。この太陽光線に含まれている赤外線のうち波長800〜2500nmの近赤外線は熱線と呼ばれ、開口部分から進入することにより室内の温度を上昇させる原因になる。これを解消するために、近年、各種建築物や車両の窓材等の分野では、可視光線を十分に取り入れながら熱線を吸収し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制する熱線吸収成形体の需要が急増しており、熱線吸収成形体に関し多くの提案がなされている。
例えば、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムを、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明成形体に接着した熱線吸収板が提案されている。しかし、この熱線反射フィルム自体が非常に高価である。その上、接着工程等の煩雑な工程を要するため高コストとなる。また、透明成形体と反射フィルムとの接着性に問題があり、経時変化によりフィルムが剥離するといった欠点を有している。
透明成形体表面に、金属若しくは金属酸化物を直接蒸着してなる熱線吸収板も数多く提案されている。当該熱線吸収板の製造に際しては、高真空で精度の高い雰囲気制御を要する装置が必要となるため、量産性が悪く、汎用性に乏しいという問題を有している。
この他、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性透明樹脂にフタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機熱線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルムが提案されている(特許文献1、2等参照)。
さらに、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に、熱線反射能を有する酸化チタンあるいは酸化チタンで被覆されたマイカ等の無機粒子を、熱線反射粒子として練り込んだ熱線遮蔽板も提案されている(特許文献3、4等参照)。
一方、本出願人は、熱線吸収効果を有する成分として自由電子を多量に保有する六ホウ化物微粒子に着目し、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂中に、六ホウ化物微粒子が分散され、または、六ホウ化物微粒子とITO微粒子及び/又はATO微粒子とが分散されている熱線遮蔽樹脂シート材を開示している(特許文献5参照)。
六ホウ化物微粒子単独、または、六ホウ化物微粒子と、ITO微粒子および/またはATO微粒子と、が分散された熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性は、可視光領域に可視光透過率の極大を有すると共に、近赤外線領域に強い吸収を発現して日射透過率の極小を有する。この結果、可視光透過率が70%以上で日射透過率が50%台という光学特性を発揮する。
本出願人は、特許文献6において、熱可塑性樹脂と熱線遮蔽成分六ホウ化物(XB、但し、Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上)とを主成分として含有するマスターバッチと、このマスターバッチが適用された熱線遮蔽透明樹脂成形体並びに熱線遮蔽透明積層体を開示した。そして、当該マスターバッチを適用することで、優れた可視光線透過能を維持しつつ高い熱線遮蔽機能を有する様々な形状の熱線遮蔽透明樹脂成形体を、高コストの物理成膜法などを用いることなく簡便な方法で作製することを開示した。
さらに、本出願人は、特許文献7において、熱線遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子を適用することにより、高い熱線遮蔽特性を有し、ヘイズ値が小さく、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造できることを開示している。
特開平6−256541号公報 特開平6−264050号公報 特開平2−173060号公報 特開平5−78544号公報 特開2003−327717号公報 特開2004−59875号公報 国際公開第WO2005/87680A1号パンフレット
本発明者らの検討によると、特許文献1、2に記載の熱線遮蔽板およびフィルムにおいては、熱線を十分に遮蔽するために多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならない。しかし、近赤外線吸収剤を多量に配合すると、今度は可視光線透過能が低下してしまうという課題がある。さらに、近赤外線吸収剤として有機化合物を使用しているため、直射日光に常時曝される建築物や車両の窓材等への適用は耐侯性に難があり、必ずしも適当であるとは言えなかった。
また特許文献3、4に記載の熱線遮蔽板においては、熱線遮蔽能を高めるために当該熱線反射粒子を多量に添加する必要があり、熱線反射粒子の配合量の増大に伴って可視光線透過能が低下したり、成形体である透明樹脂の物性、特に耐衝撃強度や靭性が低下するという課題があった。
一方、特許文献5から7に記載の熱線遮蔽シート材も、耐侯性に関しては、十分満足すべきものではなく未だ改善の余地が残されていた。
本発明は上述の問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、可視光線透過能及び熱線吸収機能を有する様々な形状の熱線吸収透明樹脂成形体において、可視光透過性が良好でかつ優れた熱線吸収機能を有し、さらには耐侯性の高い熱線吸収透明樹脂成形体が得られる熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法を提供し、併せてこのマスターバッチを用いて製造された熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明者等が鋭意研究を行った結果、一般式MWO(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される六方晶の結晶構造を有し、かつシリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度を1としたときの、前記複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物微粒子を含む分散粉を、酸素含有雰囲気下で酸化暴露処理することで、可視光透過性が良好でかつ優れた熱線吸収機能に優れることを知見した。そして、当該酸化暴露処理を施された前記XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物微粒子は、さらに耐侯性にも優れることを知見した。そして、当該酸化暴露処理を施された前記XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物微粒子が分散されてなるマスターバッチや熱線吸収透明樹脂成形体並びに熱線吸収透明積層体も、耐侯性に優れていることを知見するに至った。本発明はこのような技術的知見に基づき完成されたものである。
すなわち、上述の課題を解決するための第1の構成は、
複合タングステン酸化物微粒子と熱可塑性樹脂とを含み、熱線吸収透明樹脂成形体を製造するために用いられる熱線吸収成分含有マスターバッチであって、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MWO(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される六方晶の結晶構造を有し、且つ、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上であり、
前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂から選択される1種以上である、ことを特徴とする熱線吸収成分含有マスターバッチである。
第2の構成は、
前記複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径が100nm以下である、ことを特徴とする第1の構成に記載の熱線吸収成分含有マスターバッチである。
第3の構成は、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、酸素含有雰囲気下における50℃以上400℃以下の加熱による酸化暴露処理を施されたものであることを特徴とする第1または第2の構成に記載の熱線吸収成分含有マスターバッチである。
第4の構成は、
第1から第3の構成のいずれかに記載の熱線吸収成分含有マスターバッチと、
前記マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂と同種、または、相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂との混合混練物であって、所定の形状に成形されたものである、ことを特徴とする熱線吸収透明樹脂成形体である。
第5の構成は、
第4の構成に記載の熱線吸収透明樹脂成形体が他の透明成形体に積層されたものである、ことを特徴とする熱線吸収透明積層体である。
第6の構成は、
熱線吸収透明樹脂成形体を製造するために用いられる熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法であって、
一般式MWO(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される六方晶の結晶構造を有し、且つ、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上で、平均粒子径が100nm以下の複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを、溶媒に加えて粉砕・分散処理を行い、微粒子分散液を得る工程と、
前記微粒子分散液から溶媒を除去して微粒子分散粉を得る工程と、
前記微粒子分散粉へ、酸素含有雰囲気下において50℃以上400℃以下の加熱による酸化暴露処理する工程と、
前記酸化暴露処理を受けた微粒子分散粉と、熱可塑性樹脂ペレットとを混合し、熔融混練し、成形する工程とを、具備することを特徴とする熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法である。
第7の構成は、
前記酸素含有雰囲気の酸素濃度が、0.1体積%以上25体積%以下であることを特徴とする第6の構成に記載の熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法である。
本発明に係る熱線吸収成分含有マスターバッチを、熱可塑性樹脂成形材料により希釈・混練し、さらに、押出成形、射出成形、圧縮成形等の公知の方法により、板状、フィルム状、球面状等の任意の形状に成形することによって、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外域に強い吸収を持ち、かつ高耐侯性を発揮する熱線吸収透明樹脂成形体並びに熱線吸収透明積層体が得られた。
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。
本発明に係る熱線吸収透明樹脂成形体用の熱線吸収成分含有マスターバッチは、熱可塑性樹脂と、一般式MWO(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される六方晶の結晶構造を持ち、かつシリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度を1としたときの、前記複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物微粒子とを主成分としている。そして、前記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種であると共に、前記複合タングステン酸化物微粒子表面が酸化暴露処理されていることを特徴とする熱線吸収成分含有マスターバッチである。
以下、当該熱線吸収成分含有マスターバッチを構成する[1]複合タングステン酸化物微粒子、[2]高耐熱性分散剤、[3]熱可塑性樹脂、について順に説明し、さらに[4]熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法、[5]熱線吸収成分含有マスターバッチ、について説明し、そして、当該熱線吸収成分含有マスターバッチを用いて製造した[6]熱線吸収透明樹脂成形体および熱線吸収透明積層体、について説明する。
[1]複合タングステン酸化物微粒子
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。また、当該熱線遮蔽材料の粒子径は、その使用目的によって適宜選定することができる。
まず、透明性を保持した応用に使用する場合には、複合タングステン酸化物微粒子は、800nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。800nmよりも小さい分散粒子径は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合には、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
また、この粒子による散乱の低減を重視するときには、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。その理由は、分散粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による波長400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減される結果、熱線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、分散粒子の分散粒子径が200nm以下になると、前記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上するからである。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子について、(A)組成、(B)XRDピークトップ強度の比の値、(C)結晶構造、(D)耐候性の付与、(E)合成方法、の順に説明する。
(A)組成
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MWO(但し、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、六方晶の結晶構造を持ち、かつシリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度を1としたときの、前記複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物微粒子である。ここで、M元素が、例えばH、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上を含むような複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。添加元素Mの添加量yは、0.1以上、0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.29≦x/y≦0.39である。理論的にはz/y=3の時、x/yの値が0.33となることで、添加M元素が六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出されるyの値が0.33であり、0.29≦x/y≦0.39で好ましい光学特性が得られるからである。また、zの範囲については、2.2≦z≦3.0が好ましい。典型的な例としてはCs0.33WO、Cs0.03Rb0.30WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができる。
(B)XRDピークトップ強度の比の値
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、熱線吸収特性の観点からシリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度を1としたときの、前記複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上である。さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子においては、アモルファス相の体積比率が50%以下である単結晶であることが好ましい。
当該複合タングステン酸化物微粒子が、アモルファス相の体積比率50%以下である単結晶であると、XRDピークトップ強度を維持しながら結晶子径を200nm以下にすることが出来る。複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径を200nm以下とすることで、その分散粒子径を1nm以上200nm以下とすることが出来る。
これに対し、複合タングステン超微粒子において、分散粒子径が1nm以上200nm以下ではあるが、アモルファス相が体積比率で50%を超えて存在する場合や、多結晶の場合、当該複合タングステン超微粒子のXRDピークトップ強度比の値が0.13未満となり、結果的に、近赤外線吸収特性が不十分で近赤外線吸収特性を発現が不十分となる場合がある。
そして、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径が200nm以下10nm以上であることが、より好ましい。結晶子径が200nm以下10nm以上の範囲であれば、XRDピークトップ強度比の値が0.13を超え、さらに優れた赤外線吸収特性が発揮されるからである。
(C)結晶構造
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子においては、後述する解砕、粉砕または分散された後の複合タングステン酸化物微粒子分散液中の複合タングステン酸化物微粒子のX線回折パターンは、後述する本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液中の揮発成分を除去して得られた複合タングステン酸化物微粒子のX線回折パターンや、前記分散液から得られる分散体中に含まれる複合タングステン酸化物微粒子のX線回折パターンにおいても維持される。
結果的に、複合タングステン酸化物微粒子分散液や該分散液から得られる複合タングステン超微粒子分散体中の複合タングステン酸化物微粒子のXRDパターン、XRDピークトップ強度、結晶子径など結晶の状態が、本発明で用いることができる複合タングステン酸化物微粒子の結晶の状態であれば、本発明の効果は発揮される。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造が単結晶であることは、透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡像において、各微粒子内部に結晶粒界が観察されず、一様な格子縞のみが観察されることから確認することができる。また、複合タングステン酸化物微粒子においてアモルファス相の体積比率が50%以下であることは、同じく透過型電子顕微鏡像において、粒子全体に一様な格子縞が観察され、格子縞が不明瞭な箇所が殆ど観察されないことから確認することができる。アモルファス相は粒子外周部に存在する場合が多いので、粒子外周部に着目することで、アモルファス相の体積比率を算出可能な場合が多い。例えば、真球状の複合タングステン酸化物微粒子において、格子縞が不明瞭なアモルファス相が当該粒子外周部に層状に存在する場合、その粒子径の10% 以下の厚さであれば、当該複合タングステン酸化物微粒子におけるアモルファス相の体積比率は、50%以下である。
一方、複合タングステン酸化物微粒子が、熱線吸収透明樹脂成形体の樹脂等の内部で分散している場合、当該分散している複合タングステン酸化物微粒子の平均粒子径から結晶子径を引いた差が20%以下であれば、当該複合タングステン酸化物微粒子は、アモルファス相の体積比率50%以下の単結晶であると言え、実質的に単結晶である。
ここで、複合タングステン酸化物微粒子の平均粒子径は、熱線吸収透明樹脂成形体の透過型電子顕微鏡像から画像処理装置を用いて複合タングステン酸化物微粒子100個の粒子径を測定し、その平均値を算出することで求めることが出来る。そして、複合タングステン酸化物微粒子分散体に分散された複合タングステン酸化物微粒子の平均粒子径と結晶子径との差が20%以下になるように、複合タングステン酸化物微粒子の合成工程、粉砕工程、分散工程を、製造設備に応じて適宜調整すればよい。
(D)耐候性の付与
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、上述の構成を有する複合タングステン酸化物微粒子が既に酸化物であるが、優れた耐候性を付与する為、当該複合タングステン酸化物微粒子を含む分散粉を酸素含有雰囲気下で酸化暴露処理することが望ましい。
当該酸化暴露処理により、最終製品である熱線吸収透明樹脂成形体や積層体の耐候性が向上する理由は、当該酸化暴露処理で、上述の構成を有する複合タングステン酸化物微粒子の表面に予め劣化層が形成される為であると考えられる。当該劣化層が外部酸素の内部拡散のバリアー層となる結果、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の耐侯性が向上し、最終製品である熱線吸収透明樹脂成形体や積層体の耐侯性が向上したものと考えている。
すなわち、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、分散粒子径200nm以下の微粒子に酸化暴露処理を施され、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面に係るXRDピーク強度を1としたときの、前記複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が0.13以上であることが好ましい。
そして、酸化暴露処理をされて得られた複合タングステン酸化物微粒子は、酸化暴露処理で表面に膜が形成されたナノレベルのコアシェル構造になっていると推移され、結果として、酸化暴露処理により複合タングステン酸化物の耐候性が改善されるので、熱線吸収透明樹脂成形体の光学性の劣化が少ない。
(E)合成方法
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の合成方法について説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の合成方法としては、熱プラズマ中にタングステン化合物出発原料を投入する熱プラズマ法や、タングステン化合物出発原料を還元性ガス雰囲気中で熱処理する固相反応法が挙げられる。熱プラズマ法や固相反応法で合成された複合タングステン酸化物微粒子は、分散処理または粉砕・分散処理される。
以下、(1)熱プラズマ法、(2)固相反応法、(3)合成された複合タングステン酸化物粒子、(4)揮発成分と乾燥処理方法、(5)酸化暴露処理、の順に説明する。
(1)熱プラズマ法
熱プラズマ法について(i)熱プラズマ法に用いる原料、(ii)熱プラズマ法とその条件、の順に説明する。
(i)熱プラズマ法に用いる原料
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を熱プラズマ法で合成する際には、タングステン化合物と、M元素化合物との混合粉体を原料として用いることができる。
タングステン化合物としては、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、M元素化合物としては、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
上述したタングステン化合物と上述したM元素化合物とを含む水溶液とを、M元素とW元素の比が、MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)のM元素とW元素の比となるように湿式混合する。そして、得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる、そして、当該混合粉体は、熱プラズマ法の原料とすることが出来る。
また、当該混合粉体を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下にて、1段階目の焼成によって得られる複合タングステン酸化物を、熱プラズマ法の原料とすることもできる。他にも、1段階目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、当該1段階目の焼成物を、2段階目にて不活性ガス雰囲気下で焼成する、という2段階の焼成によって得られる複合タングステン酸化物を、熱プラズマ法の原料とすることも出来る。
(ii)熱プラズマ法とその条件
本発明で用いる熱プラズマとして、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマ、のいずれか、または、これらのプラズマの重畳したもの、または、直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法により生成するプラズマ、大出力レーザーの照射により生成するプラズマ、大出力電子ビームやイオンビームにより生成するプラズマ、が適用出来る。尤も、いずれの熱プラズマを用いるにしても、10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマであり、特に、超微粒子の生成時間を制御できるプラズマであることが好ましい。
当該高温部を有する熱プラズマ中に供給された原料は、当該高温部において瞬時に蒸発する。そして、当該蒸発した原料は、プラズマ尾炎部に至る過程で凝縮し、プラズマ火炎外で急冷凝固されて、複合タングステン酸化物微粒子を生成する。
高周波プラズマ反応装置を用いる場合を例として、合成方法について説明する。
先ず、真空排気装置により、水冷石英二重管内と反応容器内とで構成される反応系内を、約0.1Pa(約0.001Torr)まで真空引きする。反応系内を真空引きした後、今度は、当該反応系内をアルゴンガスで満たし、1気圧のアルゴンガス流通系とする。
その後、反応容器内にプラズマガスとして、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス(Ar−He混合ガス)、またはアルゴンと窒素の混合ガス(Ar−N混合ガス)から選択されるいずれかのガスを30〜45L/minの流量で導入する。一方、プラズマ領域のすぐ外側に流すシースガスとして、Ar−He混合ガスを60〜70L/minの流量で導入する。
そして、高周波コイルに交流電流をかけて、高周波電磁場(周波数4MHz)により熱プラズマを発生させる。このとき、プレート電力は30〜40kWとする。
さらに、粉末供給ノズルより、前記合成方法で得たM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、または、複合タングステン酸化物を、ガス供給装置から供給する6〜98L/minのアルゴンガスをキャリアガスとして、供給速度25〜50g/minの割合で,熱プラズマ中に導入して所定時間反応を行う。反応後、生成した複合タングステン酸化物微粒子はフィルターに堆積するので、これを回収する。
キャリアガス流量と原料供給速度は、微粒子の生成時間に大きく影響する。そこで、キャリアガス流量を6L/min以上9L/min以下とし、原料供給速度を25〜50g/minとするのが好ましい。
また、プラズマガス流量を30L/min以上45L/min以下、シースガス流量を60L/min以上70L/min以下とすることが好ましい。プラズマガスは10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマ領域を保つ機能があり、シースガスは反応容器内における石英トーチの内壁面を冷やし、石英トーチの溶融を防止する機能がある。それと同時に、プラズマガスとシースガスはプラズマ領域の形状に影響を及ぼすため、それらのガスの流量はプラズマ領域の形状制御に重要なパラメータとなる。プラズマガスとシースガス流量を上げるほどプラズマ領域の形状がガスの流れ方向に延び、プラズマ尾炎部の温度勾配が緩やかなるので、生成される微粒子の生成時間を長くし、結晶性の良い微粒子を生成できるようになる。これにより、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度比の値を所望の値とすることが出来る。逆に、プラズマガスとシースガス流量を下げるほどプラズマ領域の形状がガスの流れ方向に縮み、プラズマ尾炎部の温度勾配が急になるので、生成される微粒子の生成時間を短くし、BET比表面積の大きい微粒子を生成できるようになる。これにより本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値を所定の値に設定することが出来る。
熱プラズマ法で合成し得られる複合タングステン酸化物が、その結晶子径が200nmを超える場合や、熱プラズマ法で合成し得られる複合タングステン酸化物から得られる複合タングステン酸化物微粒子分散液中の複合タングステン酸化物の分散粒子径が200nmを超える場合は、後述する、粉砕・分散処理を行うことができる。熱プラズマ法で複合タングステン酸化物を合成する場合は、そのプラズマ条件や、その後の粉砕・分散処理条件を適宜選択して、XRDピークトップ強度比の値が0.13以上となるようにする。
(2)固相反応法
固相反応法について(i)固相反応法に用いる原料、(ii)固相反応法における焼成とその条件、の順に説明する。
(i)固相反応法に用いる原料
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を固相反応法で合成する際には、原料としてタングステン化合物およびM元素化合物を用いる。
タングステン化合物は、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後、溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、より好ましい実施形態である一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、Baから選択される1種類以上の元素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で示される複合タングステン酸化物微粒子の原料の製造に用いるM元素化合物には、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、Si、Al、Zrから選ばれる1種以上の不純物元素を含有する化合物(本発明において「不純物元素化合物」と記載する場合がある。)を、原料として含んでもよい。当該不純物元素化合物は、後の焼成工程において複合タングステン化合物と反応せず、複合タングステン酸化物の結晶成長を抑制して、結晶の粗大化を防ぐ働きをするものである。不純物元素を含む化合物は、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上であることが好ましく、粒径が500nm以下のコロイダルシリカやコロイダルアルミナが特に好ましい。
前記タングステン化合物と、前記M元素化合物を含む水溶液とを、M元素とW元素の比が、MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)のM元素とW元素の比となるように湿式混合する。不純物元素化合物を原料として含有させる場合は、不純物元素化合物が0.5質量%以下になるように湿式混合する。そして、得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、もしくは不純物元素化合物を含むM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる。
(ii)固相反応法における焼成とその条件
当該湿式混合で製造したM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、もしくは不純物元素化合物を含むM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下、1段階で焼成する。このとき、焼成温度は複合タングステン酸化物微粒子が結晶化し始める温度に近いことが好ましく、具体的には焼成温度が1000℃以下であることが好ましく、800℃以下であることがより好ましく、800℃以下500℃以上の温度範囲がさらに好ましい。この焼成温度の制御により、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値を所定の値に設定することが出来る。
尤も、当該複合タングステン酸化物微粒子の合成において、前記タングステン化合物に替えて、三酸化タングステンを用いても良い。
(3)合成された複合タングステン酸化物微粒子
熱プラズマ法や固相反応法による合成法で得られた複合タングステン酸化物微粒子を用いて複合タングステン酸化物微粒子分散液を作製した場合、当該分散液に含有されている微粒子の分散粒子径が200nmを超える場合は、後述する複合タングステン酸化物微粒子分散液を製造する工程において、粉砕・分散処理すればよい。そして、粉砕・分散処理を経て得られた複合タングステン酸化物微粒子のXRDピークトップ強度の比の値が、本発明の範囲を実現できていれば、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子やその分散液から得られる複合タングステン酸化物微粒子分散体は、優れた近赤外線遮蔽特性を実現できるのである。
(4)揮発成分と乾燥処理方法、
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、揮発成分を含む場合があるが、当該揮発成分の含有率は2.5質量%以下であることが好ましい。しかし、複合タングステン酸化物微粒子が大気中に暴露されるなどして、揮発成分の含有率が2.5質量%を超えた場合は、乾燥処理により当該揮発成分の含有率を低減させることが出来る。
当該乾燥処理の工程は、後述する粉砕分散工程で得られる複合タングステン酸化物微粒子分散液を、乾燥処理して当該分散液中の揮発成分を除去し、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を得るものである。
乾燥処理の設備としては、加熱および/または減圧が可能で、当該超微粒子の混合や回収がし易いという観点から、大気乾燥機、万能混合機、リボン式混合機、真空流動乾燥機、振動流動乾燥機、凍結乾燥機、リボコーン、ロータリーキルン、噴霧乾燥機、パルコン乾燥機、等が好ましいが、これらに限定されない。
以下、その一例として、(i)大気乾燥機による乾燥処理、(ii)真空流動乾燥機による乾燥処理、(iii)噴霧乾燥機による乾燥処理、について説明する。以下、それぞれの乾燥処理について順に説明する。
(i)大気乾燥機による乾燥処理
後述する方法で得られた複合タングステン酸化物微粒子分散液を、大気乾燥機によって乾燥処理して当該分散液中の揮発成分を除去する処理方法である。この場合、複合タングステン酸化物微粒子から当該揮発成分が揮発するよりも高い温度であって、元素Mが脱離しない温度で乾燥処理することが望ましく、150℃以下であることが望ましい。
当該大気乾燥機により、乾燥処理して製造した複合タングステン酸化物微粒子は、弱い二次凝集体となっている。この状態でも、当該複合タングステン酸化物微粒子を樹脂等に分散させることは可能であるが、より分散し易くするために、当該微粒子を擂潰機等によって解砕することも好ましい一例である。
(ii)真空流動乾燥機による乾燥処理
真空流動乾燥機による乾燥処理を行うことで、複合タングステン酸化物微粒子分散液中の揮発成分を除去する処理方法である。当該真空流動乾燥機では、減圧雰囲気下で乾燥と解砕の処理を同時に行うため、乾燥速度が速い上に、上述した大気乾燥機での乾燥処理品に見られるような凝集体を形成しない。また、減圧雰囲気下での乾燥のため、比較的低温でも揮発成分を除去することができ、残存する揮発成分量も限りなく少なくすることができる。
乾燥温度は複合タングステン酸化物微粒子から元素Mが脱離しない温度で乾燥処理することが望ましく、当該揮発成分が揮発するよりも高い温度であって、150℃以下であることが望ましい。
(iii)噴霧乾燥機による乾燥処理
噴霧乾燥機による乾燥処理を行うことで、複合タングステン酸化物微粒子分散液の揮発成分を除去する処理方法である。当該噴霧乾燥機では、乾燥処理における揮発成分除去の際に、揮発成分の表面力に起因する二次凝集が発生しにくく、解砕処理を施さずとも比較的二次凝集していない複合タングステン酸化物微粒子が得られる。
上述した(i)〜(iii)に係る乾燥処理を施した複合タングステン酸化物微粒子を、適宜な方法で樹脂等に分散させることで、高い可視光透過率と、近赤外線吸収機能の発現による低い日射透過率を有しながら、ヘイズ値が低いという光学特性を有する近赤外線遮蔽材料微粒子分散体である複合タングステン酸化物微粒子分散体を形成することができる。
このようにして得た複合タングステン酸化物粒子を、適宜な溶媒とともに、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどとともに湿式粉砕して複合タングステン酸化物粒子をより微粒子化する。
(5)酸化暴露処理
複合タングステン酸化物微粒子を分散粉とした後、耐侯性を付与する為に当該複合タングステン酸化物微粒子を含む分散粉を酸素含有雰囲気下で酸化暴露処理する。
当該酸素含有雰囲気の酸素濃度が25体積%以下であれば、複合タングステン酸化物微粒子表面が過度に酸化されて酸化膜が厚膜化することを回避出来る。当該酸化膜の過度に厚膜化を回避することで、後工程においてフィラー使用量の増加を招きコストアップとなる場合を回避出来るからである。
一方、当該酸素含有雰囲気の酸素濃度が0.1体積%以上あれば、複合タングステン酸化物微粒子表面の酸化膜の膜厚が確保出来、耐侯性向上の効果を得ることが出来る。
以上のことから、当該酸素含有雰囲気の酸素濃度は、0.1体積%以上25体積%以下が好ましい。従って、大気中(酸素濃度、約21体積%)で当該酸化暴露処理を行なっても、本発明に係る熱線吸収体形成用複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
処理温度は、酸素濃度に応じて適宜選択すればよいが、耐侯性効果の観点から20℃以上400℃以下が好ましい。酸化暴露処理時間は、処理温度に応じて適宜選択すればよいが、具体的には、例えば、処理温度が50℃以上100℃未満であれば、処理時間は10時間以上72時間以下、100℃以上400℃以下であれば1時間以上72時間以下が好ましい。得られた複合タングステン酸化物微粒子は、十分な耐侯性を発揮する。
[2]高耐熱性分散剤
従来、塗料用として一般的に使用されている分散剤は、様々な酸化物微粒子を有機溶剤中に均一に分散する目的で使用されている。分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものである。
市販の分散剤としては、日本ルーブリゾール(株)製SOLSPERSE3000、SOLSPERSE9000、SOLSPERSE11200、SOLSPERSE13000、SOLSPERSE13240、SOLSPERSE13650、SOLSPERSE13940、SOLSPERSE16000、SOLSPERSE17000、SOLSPERSE18000、SOLSPERSE20000、SOLSPERSE21000、SOLSPERSE24000SC、SOLSPERSE24000GR、SOLSPERSE26000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE28000、SOLSPERSE31845、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE32500、SOLSPERSE32550、SOLSPERSE32600、SOLSPERSE33000、SOLSPERSE33500、SOLSPERSE34750、SOLSPERSE35100、SOLSPERSE35200、SOLSPERSE36600、SOLSPERSE37500、SOLSPERSE38500、SOLSPERSE39000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE53095、SOLSPERSE55000、SOLSPERSE56000、SOLSPERSE76500等;
ビックケミー・ジャパン(株)製Disperbyk−101、Disperbyk−103、Disperbyk−107、Disperbyk−108、Disperbyk−109、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−112、Disperbyk−116、Disperbyk−130、Disperbyk−140、Disperbyk−142、Disperbyk−145、Disperbyk−154、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−165、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−181、Disperbyk−182、Disperbyk−183、Disperbyk−184、Disperbyk−185、Disperbyk−190、Disperbyk−2000、Disperbyk−2001、Disperbyk−2020、Disperbyk−2025、Disperbyk−2050、Disperbyk−2070、Disperbyk−2095、Disperbyk−2150、Disperbyk−2155、Anti−Terra−U、Anti−Terra−203、Anti−Terra-204、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−220S、BYK−6919等;
BASFジャパン(株)社製 EFKA4008、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4015、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4080、EFKA4300、EFKA4330、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4500、EFKA4510、EFKA4530、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA4800、EFKA5220、EFKA6230、JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL−JDX5050等;
東亞合成(株)製アルフォンUC−3000、アルフォンUF−5022、アルフォンUG−4010、アルフォンUG−4035、アルフォンUG−4070等;
味の素ファインテクノ(株)製アジスパーPB−711、アジスパーPB−821、アジスパーPB−822等が挙げられる。
しかし本発明者らの検討によれば、これらの分散剤には、200℃以上の高温で使用されることを想定されて設計されていないものがある。具体的には、本実施形態において、熱線吸収微粒子と熱可塑性樹脂とを溶融混練する際に、耐熱性の低い分散剤を使用すると、当該分散剤中の官能基が熱により分解され、分散能が低下すると伴に黄〜茶色に変色する等の不具合を起こしていたのである。
これに対し、本実施形態においては、高耐熱性分散剤として、TG−DTAで測定される熱分解温度が230℃以上、好ましくは250℃以上あるものを用いることとしている。当該高耐熱性分散剤の具体的な構造例としては、主鎖としてアクリル主鎖、官能基として水酸基またはエポキシ基とを有する分散剤がある。当該構造を有する分散剤は、耐熱性が高く好ましい。
そして、分散剤の熱分解温度が230℃以上であれば、成形時に当該分散剤が熱分解することなく分散能を維持すると伴に、それ自体が黄〜茶色に変色することもない。この結果、製造される成形体において、熱線遮蔽微粒子が十分に分散される結果、可視光透過率が良好に確保されて本来の光学特性を得ることができると伴に、成形体が黄色に着色することもない。
具体的には、ポリカーボネートの一般的な混練設定温度(290℃)で前記本発明の分散剤とポリカーボネート樹脂とを混練する試験を行った場合、混練物はポリカーボネートのみを混練した場合とまったく同じ外観を呈し、無色透明で全く着色しないことが確認された。一方、例えば、後述する比較例1で説明する耐熱性の低い分散剤を用いて同様の試験を行った場合、混練物は茶色に着色してしまうことが確認された。
上述したように、本発明に使用される高耐熱性分散剤はアクリル主鎖を有するが、同時に、水酸基またはエポキシ基を官能基として有する分散剤が好ましい。これらの官能基は,複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着して、これらの複合タングステン酸化物微粒子の凝集を防ぎ、成形体中で複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散させる効果を持つからである。
具体的には、エポキシ基を官能基として有するアクリル系分散剤、水酸基を官能基として有するアクリル系分散剤が好ましい例として挙げられる。このような分散剤は、市販の分散剤製品に対し、上述したTG−DTA測定を行い、適宜なものを選択すれば良い。
特に、熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂など、溶融混練温度が高い樹脂を使用する場合には、熱分解温度が250℃以上であるアクリル主鎖と水酸基またはエポキシ基とを有する高耐熱性分散剤を使用することの効果が顕著に発揮される。
前記高耐熱性分散剤と複合タングステン酸化物微粒子との重量比は、10≧[高耐熱性分散剤の重量/複合タングステン酸化物微粒子の重量]≧0.5の範囲であることが好ましい。当該重量比が0.5以上あれば、複合タングステン酸化物微粒子を十分に分散することが出来るので、微粒子同士の凝集が発生せず、十分な光学特性が得られるからである。また、当該重量比が10以下あれば、熱線吸収透明樹脂成形体自体の機械特性(曲げ強度、表面高度)が損なわれることがない。
[3]熱可塑性樹脂
次に、本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、可視光領域の光線透過率が高い透明な熱可塑性樹脂であれば特に制限はない。例えば、3mm厚の板状成形体としたときのJISR3106記載の可視光透過率が50%以上で、JISK7105記載のヘイズが30%以下のものが好ましいものとして挙げられる。
具体的には、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂およびポリオレフィン樹脂を挙げることができる。熱線吸収透明樹脂成形体を各種建築物や車両の窓材等に適用することを目的とした場合、透明性、耐衝撃性、耐侯性などを考慮すると、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素系樹脂がより好ましい。
アクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートを主原料とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として用いた重合体または共重合体が挙げられる。さらには、多段で重合したアクリル樹脂を用いることもできる。
また、ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表される二価のフェノール系化合物の一種以上と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネート等で代表されるカーボネート前駆体とから、界面重合、溶融重合または固相重合等の公知の方法によって得られる重合体が挙げられる。
また、フッ素系樹脂としては、ポリフッ化エチレン、ポリ2フッ化エチレン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−2フッ化エチレン共重合体、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体などが挙げられる。
[4]熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を熱可塑性樹脂へ分散させて、本発明に係る熱線吸収成分含有マスターバッチを製造する方法は、微粒子が均一に樹脂に分散できる方法であれば任意に選択できる。例としては、まず、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用い、前記複合タングステン酸化物微粒子を任意の溶剤に分散した分散液を調製する。次に、当該分散液と、分散剤と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、および、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して、当該分散液から溶剤を除去しながら均一に溶融混合して、熱可塑性樹脂に複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散した混合物を調製することができる。混錬時の温度は、使用する熱可塑性樹脂が分解しない温度に維持される。
また、他の方法として、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の分散液に高耐熱性分散剤を添加し、溶剤を公知の方法で除去し、得られた粉末と熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に溶融混合して、熱可塑性樹脂に複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散した混合物を調整することもできる。
その他、分散処理をしていない本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の粉末と分散剤とを熱可塑性樹脂に直接添加し、均一に溶融混合する方法を用いることもできる。
分散方法は、熱可塑性樹脂中に複合タングステン酸化物微粒子が均一に分散されていればよく、これらの方法に限定されない。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子が均一に分散された熱可塑性樹脂を、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工することにより、本発明に係る熱線吸収成分含有マスターバッチを得ることができる。
前記熱線吸収成分含有マスターバッチのペレットは、最も一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法により得ることができる。従って、その形状としては円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。当該ホットカット法を採る場合には、球状に近い形状をとることが一般的である。
[5]熱線吸収成分含有マスターバッチ
本発明に係る熱線吸収成分含有マスターバッチは、上述したいずれの形態または形状を採り得るものである。尤も、熱線吸収透明樹脂成形体を成形するときに、当該熱線吸収成分含有マスターバッチの希釈に使用される熱可塑性樹脂成形材料と同一の形態および形状を有していることが好ましい。
更に、本発明に係る熱線吸収成分含有マスターバッチへ、さらに、一般的な添加剤を配合することも可能である。例えば、必要に応じて任意の色調を与えるため、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系染料、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料の、有効発現量を配合してもよい。また、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等の有効発現量を配合してもよい。
[6]熱線吸収透明樹脂成形体および熱線吸収透明積層体
本発明に係る熱線吸収透明樹脂成形体は、前記熱線吸収成分含有マスターバッチを、当該マスターバッチの熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂成形材料、あるいは当該マスターバッチの熱可塑性樹脂と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂成形材料で希釈・混練し、所定の形状に成形することによって得られる。
本発明に係る熱線吸収透明樹脂成形体は、熱線吸収成分含有マスターバッチを用いて製造されていることから、成形時の熱劣化が非常に少ない。このため、複合タングステン酸化物微粒子である熱線吸収微粒子が、透明樹脂成形体中に、十分に分散される結果、可視光透過率が良好に確保される。
前記熱線吸収透明樹脂成形体の形状は、必要に応じて任意の形状に成形可能であり、平面状および曲面状に成形することが可能である。また、熱線吸収透明樹脂成形体の厚さは、板状からフィルム状まで必要に応じて任意の厚さに調整することが可能である。さらに平面状に形成した樹脂シートは、後加工によって球面状等の任意の形状に成形することができる。
前記熱線吸収透明樹脂成形体の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形または回転成形等の任意の方法を挙げることができる。特に、射出成形により成形品を得る方法と、押出成形により成形品を得る方法が好適に採用される。押出成形により板状、フィルム状の成形品を得る方法として、Tダイなどの押出機を用いて押出した溶融熱可塑性樹脂を冷却ロールで冷却しながら引き取る方法により製造される。前記射出成形品は、自動車の窓ガラスやルーフ等の車体に好適に使用され、押出成形により得られた板状、フィルム状の成形品は、アーケードやカーポート等の建造物に好適に使用される。
前記熱線吸収透明樹脂成形体は、それ自体のみを、窓ガラス、アーケード等の構造材に使用することができるほか、無機ガラス、樹脂ガラス、樹脂フィルムなどの他の透明成形体に任意の方法で積層し、一体化した熱線吸収透明積層体として、構造材に使用することもできる。例えば、予めフィルム状に成形した熱線吸収透明樹脂成形体を無機ガラスに熱ラミネート法により積層一体化することで、熱線吸収機能、飛散防止機能を有する熱線吸収透明積層体を得ることができる。
また、熱ラミネート法、共押出法、プレス成形法、射出成形法等により、熱線吸収透明樹脂成形体の成形と同時に他の透明成形体に積層一体化することで、熱線吸収透明積層体を得ることも可能である。前記熱線吸収透明積層体は、相互の成形体の持つ利点を有効に発揮させつつ、相互の欠点を補完することで、より有用な構造材として使用することができる。
以上、詳細に述べたように熱線吸収成分として複合タングステン酸化物微粒子を、分散剤を用いて熱可塑性樹脂に均一に分散させた、本発明に係る熱線吸収成分含有マスターバッチを用いることにより、高コストの物理成膜法や複雑な工程を用いることなく熱線吸収機能を有しかつ可視光域に高い透過性能を有し、さらには耐侯性の高い熱線吸収透明樹脂成形体並びに熱線吸収透明積層体を提供することが可能となる。
以下、本発明について実施例を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各実施例において、熱線吸収透明樹脂成形体の可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。この日射透過率は、熱線吸収性能を示す指標である。また、ヘイズ値は村上色彩技術研究所(株)製HR−200を用い、JIS K 7105に基づいて測定した。
[実施例1]
水330gにCsCO216gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるCs0.33WO前駆体を得た。
次に、高周波プラズマ反応装置を用い、真空排気装置により反応系内を約0.1Pa(約0.001Torr)まで真空引きした後、アルゴンガスで完全に置換して1気圧の流通系とした。その後、反応容器内にプラズマガスとしてアルゴンガスを30L/minの流量で導入し、シースガスとしてシースガス供給口より螺旋状にアルゴンガス55L/minとヘリウムガス5L/minの流量で導入した。そして、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイルに高周波電力を印加し、高周波プラズマを発生させた。このとき、10000〜15000Kの高温部を有している熱プラズマを発生させるため、高周波電力は40KWとした。
前記条件で高周波プラズマを発生させた後、キャリアガスとして、アルゴンガスをガス供給装置から9L/minの流量で供給しながら、前記混合粉体を50g/minの割合で熱プラズマ中に供給した。
その結果、混合粉体は熱プラズマ中にて瞬時に蒸発し、プラズマ尾炎部に至る過程で急冷凝固して微粒化した。当該生成した微粒子は、回収フィルターに堆積した。
当該堆積した超微粒子を回収し、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X‘Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)によりX線回折パターンを測定した。
得られた微粒子の粉末X線回折測定を行った結果、六方晶Cs0.33WO単相と同定された。さらに当該X線回折パターンを用いて、リートベルト解析法による結晶構造解析を行ったところ、得られた微粒子の結晶子径は16.9nmであった。さらに得られた微粒子のX線回折パターンのピークトップ強度の値は、4200カウントであった。
得られた超微粒子の組成を、ICP発光分析法により調べた。その結果、Cs濃度が13.6質量%、W濃度が65.3質量%であり、Cs/Wのモル比は0.29であった。CsとW以外の残部は酸素であり、1質量%以上含有されるその他不純物元素は存在していないことを確認した。
次に、得られた複合タングステン酸化物微粒子を20重量部と、メチルイソブチルケトン64重量部と、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と記載する。)16重量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。このスラリーをビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、1時間粉砕分散処理を行った。なお、媒体攪拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)を使用し、ベッセル内壁とローター(回転攪拌部)の材質はジルコニアとした。また、ビーズには、直径0.1mmのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は14rpm/秒とし、スラリー流量0.5kg/minにて粉砕分散処理を行い、実施例1に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液を得た。
実施例1に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液に含まれる複合タングステン酸化物微粒子、すなわち粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物微粒子のX線回折パターンにおけるピークトップ強度の値は3000カウント、ピーク位置は2θ=27.8°であった。
一方、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)を準備し、当該シリコン粉末標準試料における(220)面を基準としたピーク強度の値を測定したところ、19800カウントであった。従って、当該標準試料のピーク強度の値を1としたときの、実施例1に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物微粒子のXRDピーク強度の比の値は0.15であることが判明した。
また、実施例1に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径は16.9nmであった。
さらに、実施例1に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液の分散粒子径を、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)を用いて測定したところ、70nmであった。なお、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは、メチルイソブチルケトンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.40とした。
次に、得られた複合タングステン酸化物微粒子分散液を真空擂潰機に装填し、真空擂潰しながらトルエンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(A粉)を得た。
得られたA粉を、Nガスをキャリアとした5体積%Oガスの流通下において、100℃の温度で24時間酸化暴露処理して、実施例1に係る酸化暴露処理粉(処理A粉)を得た。
得られた処理A粉と、熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂ペレットとを、Cs0.33WO濃度が2.0重量%となるように混合し、ブレンダーを用いて均一に混合した。
当該混合物を、二軸押出機を用いて290℃で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、熱線吸収透明樹脂成形体用の熱線吸収成分含有マスターバッチ(マスターバッチA)を得た。
得られたマスターバッチAを、ポリカーボネート樹脂ペレット(直径2.5mm、長さ3mm)で希釈し、Cs0.33WO濃度を0.03重量%とした。当該マスターバッチAのポリカーボネート樹脂希釈物をタンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ1mm、2mmおよび3mmに押出成形し、複合タングステン酸化物微粒子が樹脂全体に均一に分散した実施例1に係る各熱線吸収透明樹脂成形体(成形体A)を得た。
熱線吸収透明樹脂成形体に分散した複合タングステン酸化物微粒子の平均粒子径はTEM(透過型電子顕微鏡)像より画像処理により、複合タングステン酸化物微粒子100個の粒子径を測定し、その平均値を算出求めた。
実施例1に係る成形体Aの光学特性を測定し、3点プロットより可視光透過率75%のときの日射透過率とヘイズ値を求めた。
表1に示すように、成形体Aの日射透過率は36.7%で、ヘイズ値は0.9%であった。
次に、成形体Aの耐侯性を調べるために以下のような加速試験を行った。
成形体Aを120℃の温度下に72時間暴露し、当該暴露前後の可視光透過率の変化率(ΔVLTと記す)を調べた。その結果、168時間後におけるΔVLTは0.92%であり、酸素含有雰囲気下で焼成処理しない場合(下記の参考例1参照)と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例2]
実施例1において得られたA粉を大気雰囲気下で加熱し、100℃の温度で1時間酸化暴露処理して、実施例2に係る酸化暴露処理粉(処理B粉)を得た。
以降、処理A粉を処理B粉に代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例2に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体B)を得た。
表1に示すように、成形体Bの可視光透過率75%のときの日射透過率は36.7%で、ヘイズ値は0.8%であった。
また、120℃の温度下に168時間暴露後のΔVLTは1.28%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
〔実施例3〕
炭酸セシウム7.43kgを水6.70kgに溶解した水溶液に、タングステン酸(HWO)34.57kgを添加して混合した後、100℃で攪拌しながら水分を除去して乾燥粉を得た。次に、当該乾燥粉を、Nガスをキャリアとした5%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で5.5時間加熱処理することによって複合タングステン酸化物を得た。
次に、得られた複合タングステン酸化物粒子を20重量部と、メチルイソブチルケトン64重量部と、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と記載する。)16重量部を混合し、3kgのスラリーを調製した。このスラリーをビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、4時間粉砕分散処理を行った以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例3に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体C)を得た。
表1に示すように、成形体Cの可視光透過率75%のときの日射透過率は36.0%で、ヘイズ値は0.7%であった。また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.90%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例4]
熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って実施例4に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体D)を得た。
表1に示すように、成形体Dの可視光透過率75%のときの日射透過率は37.2%で、ヘイズ値は1.7%であった。
また、120℃の温度下に168時間暴露後のΔVLTは0.95%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例5]
熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って実施例5に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体E)を得た。
表1に示すように、成形体Eの可視光透過率75%のときの日射透過率は36.6%で、ヘイズ値は0.5%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.92%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例6]
熱可塑性樹脂としてエチレン−4フッ化エチレン樹脂を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って実施例6に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体F)を得た。
表1に示すように、成形体Fの可視光透過率75%のときの日射透過率は37.5%で、ヘイズ値は18.6%であった。
また、120℃の温度下に168時間暴露後のΔVLTは0.94%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
なお、ヘイズ値が18.6%と高い値を示したが、これはエチレン−4フッ化エチレン樹脂自体が濁っているためヘイズが高くなったものである。
[実施例7]
熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って実施例7に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体G)を得た。
表1に示すように、成形体Gの可視光透過率75%のときの日射透過率は38.1%で、ヘイズ値は10.3%であった。
また、120℃の温度下に168時間暴露後のΔVLTは0.95%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
なお、ヘイズ値が10.3%と高い値を示したが、これはポリエチレン樹脂自体が濁っているためヘイズが高くなったものである。
[実施例8]
実施例1において得られたA粉を、酸素5体積%窒素95体積%の混合ガス雰囲気下において加熱し、200℃の温度で24時間酸化暴露処理して、実施例8に係る酸化暴露処理粉(処理C粉)を得た。
以降、処理A粉を処理C粉に代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例8に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体H)を得た。
表1に示すように、成形体Hの可視光透過率75%のときの日射透過率は36.5%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.26%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例9〕
実施例1において得られたA粉を、酸素1体積%窒素99体積%の混合ガス雰囲気下において加熱し、100℃の温度で24時間酸化暴露処理して、実施例9に係る酸化暴露処理粉(処理D粉)を得た。
以降、(処理A粉)を(処理D粉)に代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例9に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体I)を得た。
表1に示すように、成形体Iの可視光透過率75%のときの日射透過率は36.7%で、ヘイズ値は0.8%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは1.18%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例10]
水330gにLiCO44gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるLi0.3WOの実施例10に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例10に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体J)を得た。
表1に示すように、成形体Jの可視光透過率75%のときの日射透過率は45.0%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.96%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例11]
水330gにNaCO21gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるNa0.1WOの実施例11に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例11に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体K)を得た。
表1に示すように、成形体Kの可視光透過率75%のときの日射透過率は46.0%で、ヘイズ値は0.8%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.95%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例12]
水330gにCu(NO・3HO251gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるCu0.26WO2.72の実施例12に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例12に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体L)を得た。
表1に示すように、成形体Lの可視光透過率75%のときの日射透過率は46.8%で、ヘイズ値は0.8%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.99%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[実施例13]
水0330gにAgCO5gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるAg0.01WOの実施例13に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例13に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体M)を得た。
表1に示すように、成形体Mの可視光透過率75%のときの日射透過率は46.0%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.95%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
〔実施例14〕
水330gにCaCO40gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるCa0.1WOの実施例14に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例14に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体N)を得た。
表1に示すように、成形体Nの可視光透過率75%のときの日射透過率は44.5%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.98%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
〔実施例15〕
水330gにSrCO47gを溶解し、これをHWO1000gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるSr0.08WOの実施例15に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例15に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体O)を得た。
表1に示すように、成形体Oの可視光透過率75%のときの日射透過率は44.2%で、ヘイズ値は0.8%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.93%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
〔実施例16〕
In11gとHWO1000gを擂潰機で十分混合し、狙いの組成であるIn0.02WOの実施例16に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例16に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体P)を得た。
表1に示すように、成形体Pの可視光透過率75%のときの日射透過率は45.3%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.97%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
〔実施例17〕
SnO115gとHWO1000gを擂潰機で十分混合し、狙いの組成であるSn0.19WOの実施例17に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例17に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体Q)を得た。
表1に示すように、成形体Qの可視光透過率75%のときの日射透過率は46.0%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは1.00%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
〔実施例18〕
Yb150gとHWO1000gを擂潰機で十分混合し、狙いの組成であるYb0.19WOの実施例18に係る混合粉体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例18に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体R)を得た。
表1に示すように、成形体Rの可視光透過率75%のときの日射透過率は45.0%で、ヘイズ値は0.9%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.98%であり、酸素含有雰囲気下で処理しない以下の参考例1と比べて耐熱性試験後の光学的特性が優れ、耐侯性の向上が確認された。
[参考例1]
実施例1において得られた(A粉)を酸化暴露処理することなく、処理A粉をA粉に代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って、参考例1に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体S)を得た。
表1に示すように、成形体Sの可視光透過率75%のときの日射透過率は35.7%で、ヘイズ値は0.7%であった。
また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは1.40%であり、前記実施例1〜18と比べて耐熱性試験後の光学的特性が低く、耐侯性が劣ることが確認された。
[比較例1]
5000〜10000Kの高温部を有している熱プラズマを発生させるために、高周波電力は15KWとした以外は、実施例1と同様の操作を行って比較例1に係る熱線遮蔽透明樹脂成形体(成形体T)を得た。
表1に示すように、成形体Tの可視光透過率75%のときの日射透過率は51.2%で、ヘイズ値は1.1%であった。また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.94%であり、前記実施例1〜18と比べて日射透過率が劣ることが確認された。
[比較例2]
実施例3に係る粉砕分散処理時間を40時間とした以外は、実施例3と同様の操作を行って比較例2に係る熱線吸収透明樹脂成形体(成形体U)を得た。
表1に示すように、成形体Uの可視光透過率75%のときの日射透過率は51.9%で、ヘイズ値は2.2%であった。また、120℃の温度下に72時間暴露後のΔVLTは0.93%であり、前記実施例1〜18と比べて日射透過率が劣ることが確認された。

Claims (7)

  1. 複合タングステン酸化物微粒子と熱可塑性樹脂とを含み、熱線吸収透明樹脂成形体を製造するために用いられる熱線吸収成分含有マスターバッチであって、
    前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MWO(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される六方晶の結晶構造を有し、且つ、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上であり、
    前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂から選択される1種以上である、ことを特徴とする熱線吸収成分含有マスターバッチ。
  2. 前記複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径が100nm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の熱線吸収成分含有マスターバッチ。
  3. 前記複合タングステン酸化物微粒子は、酸素含有雰囲気下における50℃以上400℃以下の加熱による酸化暴露処理を施されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線吸収成分含有マスターバッチ。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の熱線吸収成分含有マスターバッチと、
    前記マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂と同種、または、相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂との混合混練物であって、所定の形状に成形されたものである、ことを特徴とする熱線吸収透明樹脂成形体。
  5. 請求項4に記載の熱線吸収透明樹脂成形体が他の透明成形体に積層されたものである、ことを特徴とする熱線吸収透明積層体。
  6. 熱線吸収透明樹脂成形体を製造するために用いられる熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法であって、
    一般式MWO(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される六方晶の結晶構造を有し、且つ、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の(220)面のXRDピーク強度の値を1としたとき、XRDピークトップ強度の比の値が0.13以上で、平均粒子径が100nm以下の複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを、溶媒に加えて粉砕・分散処理を行い、微粒子分散液を得る工程と、
    前記微粒子分散液から溶媒を除去して微粒子分散粉を得る工程と、
    前記微粒子分散粉へ、酸素含有雰囲気下において50℃以上400℃以下の加熱による酸化暴露処理する工程と、
    前記酸化暴露処理を受けた微粒子分散粉と、熱可塑性樹脂ペレットとを混合し、熔融混練し、成形する工程とを、具備することを特徴とする熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法。
  7. 前記酸素含有雰囲気の酸素濃度が、0.1体積%以上25体積%以下であることを特徴とする請求項6に記載の熱線吸収成分含有マスターバッチの製造方法。
JP2019524726A 2017-06-19 2017-06-19 熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体 Active JP6949304B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2017/022570 WO2018235138A1 (ja) 2017-06-19 2017-06-19 熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018235138A1 true JPWO2018235138A1 (ja) 2020-04-23
JP6949304B2 JP6949304B2 (ja) 2021-10-13

Family

ID=64736899

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019524726A Active JP6949304B2 (ja) 2017-06-19 2017-06-19 熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6949304B2 (ja)
WO (1) WO2018235138A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110253980B (zh) * 2019-06-27 2021-04-06 福建船政交通职业学院 铁铟环状复合微晶磁盘制造方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20100261037A1 (en) * 2007-10-25 2010-10-14 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. High heat resistant masterbatch, heat ray shielding transparent molded resin, and heat ray shielding transparent lamination body
JP2010265144A (ja) * 2009-05-15 2010-11-25 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 複合タングステン酸化物超微粒子の製造方法
JP2012082326A (ja) * 2010-10-12 2012-04-26 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチおよびその製造方法、高耐熱性熱線遮蔽透明樹脂成形体、並びに高耐熱性熱線遮蔽透明積層体

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3392199B1 (en) * 2015-12-18 2024-02-07 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. Ultrafine particles of complex tungsten oxide, and fluid dispersion thereof

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20100261037A1 (en) * 2007-10-25 2010-10-14 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. High heat resistant masterbatch, heat ray shielding transparent molded resin, and heat ray shielding transparent lamination body
JP2010265144A (ja) * 2009-05-15 2010-11-25 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 複合タングステン酸化物超微粒子の製造方法
JP2012082326A (ja) * 2010-10-12 2012-04-26 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチおよびその製造方法、高耐熱性熱線遮蔽透明樹脂成形体、並びに高耐熱性熱線遮蔽透明積層体

Also Published As

Publication number Publication date
WO2018235138A1 (ja) 2018-12-27
JP6949304B2 (ja) 2021-10-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102620283B1 (ko) 근적외선 차폐 초미립자 분산체, 일사 차폐용 중간막, 적외선 차폐 적층 구조체, 및 근적외선 차폐 초미립자 분산체의 제조 방법
JP6825577B2 (ja) 複合タングステン酸化物超微粒子およびその分散液
JP6769562B2 (ja) 表面処理赤外線吸収微粒子、表面処理赤外線吸収微粒子粉末、当該表面処理赤外線吸収微粒子を用いた赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体およびそれらの製造方法
JP4632094B2 (ja) 高耐熱性マスターバッチの製造方法、熱線遮蔽透明樹脂成形体、並びに熱線遮蔽透明積層体
KR20150093186A (ko) 근적외선 흡수 필터 및 촬상소자
JP2012082326A (ja) 高耐熱性熱線遮蔽成分含有マスターバッチおよびその製造方法、高耐熱性熱線遮蔽透明樹脂成形体、並びに高耐熱性熱線遮蔽透明積層体
JP7276159B2 (ja) 近赤外線吸収材料微粒子分散体、近赤外線吸収体、近赤外線吸収物積層体および近赤外線吸収用合わせ構造体
JP2011026440A (ja) 近赤外線遮蔽ポリエステル樹脂組成物、近赤外線遮蔽ポリエステル樹脂積層体並びに成形体
TW202130584A (zh) 近紅外線吸收材料粒子、近紅外線吸收材料粒子分散液、近紅外線吸收材料粒子分散體
JP4487787B2 (ja) 日射遮蔽用ホウ化物微粒子、このホウ化物微粒子を用いた日射遮蔽体形成用分散液および日射遮蔽体、並びに日射遮蔽用ホウ化物微粒子の製造方法および日射遮蔽体形成用分散液の製造方法
JP6949304B2 (ja) 熱線吸収成分含有マスターバッチおよびその製造方法、熱線吸収透明樹脂成形体、並びに熱線吸収透明積層体
KR102575326B1 (ko) 근적외선 흡수 재료 미립자 분산체, 근적외선 흡수체, 근적외선 흡수물 적층체 및 근적외선 흡수용 접합 구조체
WO2022138568A1 (ja) 熱線遮蔽樹脂シート材
EP3643161B1 (en) Agricultural and horticultural soil-covering film, and method for manufacturing same
WO2023190758A1 (ja) 複合タングステン酸化物粒子、近赤外線吸収粒子分散液、および近赤外線吸収粒子分散体
JP2021042101A (ja) 複合タングステン酸化物微粒子の製造方法、複合タングステン酸化物微粒子分散液の製造方法、および複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200213

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201208

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210326

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210817

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210830

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6949304

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150