JPWO2018230731A1 - がん遺伝子の転写調節領域 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者は、これらの知見に基づいて、c−Myc遺伝子の転写調節領域の、転写開始点の最も近傍に位置するRunx結合配列へのRunx3の結合を、何らかの手段により特異的に阻害することにより、オフターゲット効果による副作用を回避しつつ、多種多様ながんに対して顕著な抗腫瘍効果が得られるものと結論し、本発明を完成するに至った。
[1] c−Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤。
[2] 前記Runx結合配列が、ヒトc−Myc遺伝子の転写開始点から−309〜−304番目のヌクレオチド配列、又は他の哺乳動物オルソログにおける該ヌクレオチド配列に対応する配列(counterpart)である、[1]に記載の剤。
[3] p53が不活性化されている対象に適用することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の剤。
[4] 前記物質が、前記標的領域内のDNA配列に対するアンチジーンである、[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[5] 前記アンチジーンがピロール・イミダゾールポリアミドである、[4]に記載の剤。
[6] 前記物質が、前記標的領域に特異的に結合する核酸配列認識モジュールである、[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[7] 前記核酸配列認識モジュールが、CRISPR-Cas、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター又はPPRモチーフである、[6]に記載の剤。
[8] 前記核酸配列認識モジュールがCRISPR-dCasである、[6]に記載の剤。
[9] 前記物質が、前記核酸配列認識モジュールと複合体形成するヌクレアーゼとからなる、[6]又は[7]に記載の剤。
[10] 前記物質が、前記ヌクレアーゼで切断される部位で相同組換えを生じさせ得るドナーDNAをさらに含む、[9]に記載の剤。
[11] 前記核酸配列認識モジュールが、転写抑制因子と複合体を形成する、[6]〜[8]のいずれかに記載の剤。
[12] 前記物質が、それをコードする1以上の発現ベクターの形態で提供される、[1]〜[3]及び[6]〜[11]のいずれかに記載の剤。
[13] p53の不活性化を検定するための試薬と組み合わせてなる、[1]〜[12]のいずれかに記載の剤。
[14] (1)被検物質の存在下又は非存在下で、c−Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
を含む、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法。
[15] c−Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質の有効量を哺乳動物に対し投与することを特徴とする、該哺乳動物における腫瘍の形成の抑制及び/又は既に形成された腫瘍の増殖の抑制方法。
[16] 腫瘍の形成の抑制及び/又は既に形成された腫瘍の増殖の抑制における使用のための、c−Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質。
(a)三重鎖DNA形成型オリゴヌクレオチド(TFO)
典型的なアンチジーンは、DNA二重鎖に対して3本目の核酸が結合することを基盤としており、3本目核酸の塩基がプリン−ピリミジン塩基対のプリン塩基と水素結合することで、平面内に3つの塩基が連続して並ぶ構造をとることによって三重鎖形成が可能となる。下記構造式に示すように、3本目の核酸(TFO)の塩基の1’位の炭素の位置が外向きのもの(Hoogsteen結合型)(配列番号13)とその反対のもの(逆Hoogsteeen結合型)(配列番号14)の2種類があり、前者がパラレル配向性(DNA二重鎖の塩基対形成する側の鎖と同じ配向性)、後者がアンチパラレル配向性(DNA二重鎖の塩基対形成する側の鎖と逆の配向性)である。DNA二本鎖の各鎖の配列を、配列番号15又は16で表す。
また、上記化学修飾の別の例として、各ヌクレオチドの糖の2'位水酸基を別の官能基に置換する修飾が挙げられる。ここで、別の官能基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子);C1-6アルキル基(例、メチル基);C1-6アルキル基(例、メチル基)で置換されていてもよいアミノ基;-OR(Rは、例えばCH3(2'-O-Me)、CH2CH2OCH3(2'-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CNを示す)に置換する修飾が挙げられる。
また、前記核酸類縁物質の例としては、UNA(unlocked nucleic acid)、HNA、モルフォリーノオリゴ(morpholino oligo)等が挙げられる。上記HNAは、そのヘキソピラノース部分の水酸基がデオキシ化されていてもよい。また、上記HNAは、そのヘキソピラノース部分の水酸基がフッ素原子に置換されていてもよい。
第2のアンチジーンとして、ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド及びその修飾物が挙げられる。PIポリアミドは、N−メチルピロール単位(Py)とN−メチルイミダゾール単位(Im)とγ−アミノ酪酸部分とを含むポリアミドであり、PyとImとγ−アミノ酪酸部分とは互いにアミド結合(−C(=O)−NH−)で連結される(Trauger et al, Nature, 382, 559-61 (1996); White et al, Chem. Biol., 4, 569-78 (1997);及びDervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 2215-35 (2001))。PIポリアミドは、ピロール(Py)/イミダゾール(Im)ペアがCG塩基対を、Py/PyペアがAT又はTA塩基対を、Im/PyペアがGC塩基対を、それぞれ認識する。また、3−ヒドロキシピロール(Hp)を用いると、Hp/PyペアがTA塩基対を、Py/HpペアがAT塩基対を、それぞれ認識する。γ−アミノ酪酸部分はリンカーとなって全体が折りたたまれてU字型のコンフォメーション(ヘアピン型)をとる。U字型のコンフォメーションにおいては、リンカーを挟んでPyとImとを含む2本の鎖が並列に並ぶ。これによりPIポリアミドはDNA二重鎖のマイナーグルーブに入り込み、任意のDNA二重鎖と塩基配列特異的に結合し、それによって転写因子の該DNA二重鎖への結合を阻害することができる。
PIポリアミドが所望のヘアピン構造を形成できるように、対形成するピロール−イミダゾール両鎖の間に、例えばγ−アミノ酪酸などの適当なリンカーが分子内に導入される。また、β−アラニンなどの標的DNA配列との結合に寄与しない適当なスペーサー分子を、対形成するピロール−イミダゾール両鎖の相補的な位置に挿入することもできる。
第3のアンチジーンとして、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。PNAは主鎖にペプチド構造を保持した、DNAやRNAに類似の構造を有する分子である。PNAでは、糖の代わりにN−(2−アミノエチル)グリシンがアミド結合で結合したものが主鎖となっている。そして核酸塩基に相当するプリン環やピリミジン環が、メチレン基とカルボニル基を介して主鎖に結合している。
(a)ゲノム配列の改変を伴わない結合阻害物質
本発明はまた、ゲノム編集技術を利用して、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害することにより、c−Myc遺伝子の転写活性化を抑制することを特徴とする、抗腫瘍剤を提供する。
従来のゲノム編集の手法としては、配列非依存的なDNA切断能を有する分子と配列認識能を有する分子とを組み合わせた人工ヌクレアーゼを利用する方法がよく知られている。例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと非特異的なDNA切断ドメインとを連結した、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、植物病原菌キサントモナス属が有するDNA結合モジュールである転写活性化因子様(TAL)エフェクターと、DNAエンドヌクレアーゼとを連結したTALEN、あるいは、真正細菌や古細菌が持つ獲得免疫システムで機能する核酸配列CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)と、CRISPRとともに重要な働きを持つヌクレアーゼCas(CRISPR-associated)タンパク質ファミリーとを組み合わせたCRISPR−Cas9システムを利用する方法などが報告されている。さらには、35個のアミノ酸からなり1個の核酸塩基を認識するPPRモチーフの連続によって、特定のヌクレオチド配列を認識するように構成されたPPRタンパク質と、ヌクレアーゼとを連結した人工ヌクレアーゼも報告されている。
従って、核酸配列認識モジュール、又は核酸配列認識モジュール及びエフェクターは、それらの融合タンパク質をコードする核酸として、或いは、タンパク質に翻訳後、宿主細胞内で複合体形成し得るような形態で、各構成因子をコードする核酸として調製することが好ましい。ここで核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。DNAの場合は、好ましくは二本鎖DNAであり、哺乳動物細胞内で機能的なプロモーターの制御下に各構成因子を発現し得る発現ベクターの形態で提供される。RNAの場合は、好ましくは一本鎖RNAである。
ガイドRNAは、標的ヌクレオチド配列と既知のtracrRNA配列とを連結したオリゴRNA配列を設計し、DNA/RNA合成機を用いて、化学的に合成することもできる。この場合、ガイドRNAを構成するリボヌクレオチドに、安定性や膜透過性を向上させるための種々の修飾を付与することができる。また、crRNAとtracrRNAとを別個に合成し、アニーリングして用いることもできる。
プロモーターとしては、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなど哺乳動物細胞で機能し得るプロモーターが用いられるが、これらに限定されない。
上記(a)において、ヌクレアーゼとして、DSB活性を有する野生型酵素を用いることにより、本発明のシスエレメント内でDSBを生じせしめ、本発明のシスエレメントの1以上のヌクレオチドの欠失又は他のヌクレオチドへの置換、或いは該シスエレメント内への1以上のヌクレオチドの挿入をもたらすことにより、該シスエレメントを破壊することができる。
(a)抗腫瘍剤
本発明の結合阻害物質は、本発明の標的領域を特異的に認識して結合することにより、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害し、Runx3やc−Mycの発現を直接阻害するよりも、効率よくc−Myc遺伝子の転写活性化を抑制することができ、しかも他の遺伝子上のRunx結合領域へのオフターゲット作用が十分に低減されているので、がん、特にp53の不活性化を伴うがんに対して、安全かつ有効な抗腫瘍薬となり得る。
従って、本発明の結合阻害物質が抗腫瘍効果を発揮し得るがんとしては、p53が不活性化している限り特に制限はなく、例えば、慢性リンパ球性白血病、子宮頸がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、骨肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性がん、慢性骨髄性がん、皮膚がん、甲状腺がん、咽頭がん、喉頭がん、肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、結腸がん、精巣がん、卵巣がん、子宮頸がん、尿管がん、膀胱がんが挙げられる。特に、p53の変異率が高く、且つ悪性度が高い膵臓がんや、骨肉腫、とりわけ、化学療法による治療期間が1年に及び、かつそれでも治癒困難である場合が多い小児性骨肉腫の治療に有用である。
他の薬剤の投与量としては、例えば、当該薬剤を単独投与する場合に通常使用される投与量をそのまま適用することができる。
本発明の結合阻害物質が、ゲノム配列の改変を伴うゲノム編集の構成要素(例、核酸配列認識モジュール、ヌクレアーゼ、核酸塩基改変酵素、ドナーDNA)である場合、これらを用いて、本発明のシスエレメント内に変異を有し、該シスエレメントの機能が欠損した非ヒト動物を作製することができる。
本発明はまた、本発明のシスエレメントを含む、c−Myc遺伝子の調節領域内の特定領域に対する特異的な結合能力を指標とする、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法を提供する。当該方法は、以下の(1)〜(3)の工程を含む。
(1)被検物質の存在下又は非存在下で、本発明のシスエレメントを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
前記工程(1)に用いられる二本鎖DNAとしては、上述の本発明の標的領域を構成する二本鎖DNAが好ましい。
(1’)被検物質の存在下又は非存在下で、Runx結合配列TGCGGTを含み、かつc−Myc遺伝子の調節領域に存在しない、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2’)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3’)該DNAとRunx3との結合を阻害しないか、その阻害活性が、前記工程(1)の二本鎖DNAとRunx3と結合に対する阻害活性よりも低い被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
前記工程(1’)に用いられる二本鎖DNAとしては、c−Myc遺伝子以外の遺伝子、好ましくは生存に関連する遺伝子内に存在する、Runx結合配列を含む部分ヌクレオチド配列からなるものが挙げられる。多数のそのような配列を有する二本鎖DNAを収集し、例えばアレイ化することによって、被検物質のRunx3結合阻害の特異性(オフターゲット作用の程度)を網羅的に検出することができる。
マウス・ヒトのc−Mycプロモーター領域として、転写開始点から上流3kbを図1に示す。下に塩基配列を拡大して明示したように、c−Myc遺伝子の転写開始点からもっとも近位に存在するRunxサイト(TGCGGT)をmR1として着目した。mR1はほ乳類において相同性が高く良く保存された領域に存在しており、マウスのmR1は−360bp付近に、ヒトのmR1は−310bp付近に位置し、近接する。
マウスmR1配列にCRISPR/Cas9システムを用いて変異を導入したマウス骨肉腫細胞を準備した。骨芽細胞特異的p53ノックアウトマウスに発症した骨肉腫から樹立した細胞株(83−1細胞)のmR1配列に、−365〜−363の位置に存在するTGG(アンチセンス側の配列)PAM配列を使用し、CRISPR/Cas9システムでインデルを誘起して2種類のホモ欠損変異(T7およびT13欠損変異)を導入した細胞(83−1−T7細胞および83−1−T13細胞)を作出した。図2左図のEMSA(Electrophoresis−Mobility−Shift−Assay)が示すように、83−1細胞の核抽出液中の内在性Runx3およびRunx2タンパク質のDNA結合力は、正常配列を有する2本鎖20塩基プローブDNA(WT:TTCCACCTGCGGTGACTGAT(配列番号7);5’末端ビオチンラベル)に比べ、T7およびT13欠損変異をもつプローブDNA(T7:GTTCCACCGCGGTGACTGAT(配列番号8)、T13:CTGTTCCACCGGTGACTGAT(配列番号9);ともに5’末端ビオチンラベル)に対しては明らかに減少した(室温で20分反応させた後、4%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて検出)。特にT13欠損変異でRunx3およびRunx2タンパク質の結合が完全に阻害された。図2中図のWesternブロットの結果が示すように、83−1−T7細胞および83−1−T13細胞では、コントロールの83−1−C細胞と比較しRunx3のタンパク量は変わらないものの、明らかにc−Mycのタンパク量が減少していた。83−1−T7細胞および83−1−T13細胞の造腫瘍性を83−1−C細胞とともにヌードマウスを用いた担癌実験で検討した。ヌードマウス(BALB/c nu/nu ♀ 6週齢)の背側の皮下に、それぞれ2.5x106個注入し、30日後に形成された腫瘍の重量を測定し比較した(図2右図)。83−1−T7細胞を注入したマウスおよび83−1−T13細胞を注入したマウスでは、コントロールの83−1−C細胞を注入したマウスと比較して、明らかに造腫瘍能が抑制されていた。
Runx3およびc−Mycそれぞれを特異的shRNAを用いてノックダウンさせた83−1細胞を作出し、それらの造腫瘍性を検討した担癌実験の結果を、[実施例2]で得られた担癌実験の結果と比較した(図3)。担癌実験は、[実施例2]とまったく同様に実施した。Clontech社のpSIRENレトロウイルス用shRNA発現ベクターに、Runx3およびc−MycそれぞれのsiRNA特異的配列(Runx3:TGGTCGGTGGAAATAGAAA(配列番号10)、c−Myc:GAACATCATCATCCAGGAC(配列番号11))を組み込み、HEK293T細胞にトランスフェクションすることでレトロウイルスを産生させた。そのレトロウイルスを83−1細胞に感染させることでshRNA発現系を83−1細胞のゲノムに挿入し、U6プロモーターによりshRNAが恒常的に発現されるようにした。感染細胞は、pSIRENベクターにコードされたピューロマイシン耐性遺伝子の活性を利用して、5μg/mlのピューロマイシン添加培養液で培養することによって選別し、生き残った細胞を2.5x106個ヌードマウスに注入した。mR1への変異の導入により、Runx3のノックダウンやc−Mycのノックダウンよりも高い造腫瘍能抑制効果が示された。
c−Myc遺伝子の転写開始点より上流のmR1:TGCGGTをBglII配列(AGATCT)に置換する(図4−1)。c−Myc遺伝子のExon2の上流に「FRT-Neoカセット-FRT」を挿入したターゲティングベクターを構築した。定法に従い、C57BL/6由来のES細胞(TT2)にターゲティングベクターをエレクトロポレーション法で導入し、Neoカセット由来のネオマイシン耐性遺伝子活性を利用して、ネオマイシン(G418)で選別した。生き残ったES細胞のうち、期待通りに相同組み換えを起こしたES細胞からキメラマウスを作成し、F1マウスを得た。その後、F1マウスはCAG−FLPマウス(全身性に酵母由来のFLPリコンビナーゼを発現するマウス)と交配して、その産仔から、Neoカセットが除かれたマウスを選別した。FRT配列特異的にDNAを切り出すFLPリコンビナーゼの活性を利用した。
ゲノム編集を受精卵に応用し、mR1を特異的に変異させたマウスを作製した(図4−2)。(1) CTGCGTATATCAGTCACCGC(配列番号12)を標的とするcrRNAとtracrRNAの複合体がガイドRNAを構成し、Cas9ヌクレアーゼを誘導する。誘導されたCas9ヌクレアーゼは、PAM配列(AGG)から数塩基5’側の位置でゲノムDNAを二本鎖切断する。(2)二本鎖切断されたゲノムDNAは、mR1を制限酵素BglIIサイト(AGATCT)で置換した一本鎖DNAをドナーとして、HDR(Homology-directed repair; 相同組み換え修復)によって修復される。一本鎖DNAには、切断箇所から5’と3’の両方向に70塩基余りの相同配列を持たせている。(3)HDRによって修復されたゲノムDNAは、mR1が特異的に制限酵素BglIIサイト(AGATCT)で置換される。
マウスmR1配列近傍にCRISPR/Cas9システムを用いて変異を導入したマウス骨肉腫細胞を準備した。骨芽細胞特異的p53ノックアウトマウスで発症した骨肉腫から樹立した細胞株(83−1細胞)のmR1配列近傍の、−341〜−339の位置に存在するAGG(センス側の配列)PAM配列を使用し、CRISPR/Cas9システムでインデルを誘起して2種類のホモ欠損変異(NA8およびNA11欠損変異)を導入した細胞(83−1−NA8および83−1−NA11細胞)を作出した。これらの細胞、及び[実施例2]と同様の方法により作出した細胞(83−1−T13細胞及び83−1−T18細胞)の造腫瘍性を検討する担癌実験を、[実施例2]とまったく同様に実施した(図5)。83−1−NA11細胞、83−1−T7細胞又は83−1−T13細胞を注入したマウスはいずれも、コントロールの83−1−C細胞(WT)を注入したマウスと比較して、大幅に造腫瘍能が抑制されていた。一方で、83−1−NA11細胞を注入したマウスは、造腫瘍能があまり抑制されていなかった。従って、mR1への変異の導入により腫瘍形成能が大幅に低下するが、mR1以外の部分に欠損(NA8)があっても、腫瘍形成能はそれほど変わらないことが示された。
変異を導入する細胞として、83−1細胞(mOS4 cl.1)だけでなく、OSマウスに発症した骨肉腫由来の細胞株(mOS3 cl.2及び97−3細胞)を用いること以外は、[実施例2]と同様の方法により、CRISPR/Cas9システムを用いて、マウスmR1配列に欠失又は挿入を有するホモ変異を導入したマウス骨肉腫細胞(親細胞(Parental)、T7細胞、T14細胞、T13細胞、T18細胞、T16細胞、T3細胞、A5細胞、A3細胞;ただし、T7細胞、T14細胞は同じホモ変異をもつが別クローン由来)を準備し、担癌実験を行った(図6)。いずれの細胞も、コントロールの親細胞と比較して、造腫瘍能が抑制されていた。
The Jackson Laboratory(米国)から、C57B6系統の全身性p53遺伝子ノックアウトマウス(#002101; Current Biology Vol.4 p1-7, 1994; p53−/−マウス)を購入した。p53−/−マウスは、3〜4か月程度で大半がT細胞リンパ腫を発症して死亡するため(Current Biology Vol.4 p1-7, 1994)、T細胞リンパ腫発症モデルとして使用できる。
C57B6系統の全身性Runx3遺伝子ノックアウトマウス(Runx3遺伝子のExon3をLacZに置き換えたマウス;Cell Vol.109 p113-124, 2002)を交配に使用して、p53−/−Runx3+/−マウスを作出した。なお、C57B6系統Runx3−/−マウスは生後すぐに死亡するため、p53−/−Runx3−/−マウスは検討できなかった。
全長Runx3はプロモーターの違いから2種類の全長タンパク質が生じるが、そのひとつであるP1プロモーター由来の全長Runx3を、Exon0を欠失させることにより全身性にノックアウトしたマウス(Runx3(P1)−/−マウス)を作製した。C57B6系統のRunx3(P1)−/−マウスは、P2プロモーター由来の全長Runx3は発現しているため、野生型と同程度の寿命で健康であり、交配も可能である。交配を繰り返すことによって、p53−/− Runx3(P1)−/−マウスを作出した。
実施例4−2で得たC57B6系統のmR1ホモ変異体マウス(mR1m/mマウス)は、野生型と同程度の寿命で健康であり、交配も可能であった。交配を繰り返すことによって、p53−/−mR1m/mマウスを作出した。
Claims (14)
- c−Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤。
- 前記Runx結合配列が、ヒトc−Myc遺伝子の転写開始点から−309〜−304番目のヌクレオチド配列、又は他の哺乳動物オルソログにおける該ヌクレオチド配列に対応する配列(counterpart)である、請求項1に記載の剤。
- p53が不活性化されている対象に適用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の剤。
- 前記物質が、前記標的領域内のDNA配列に対するアンチジーンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
- 前記アンチジーンがピロール・イミダゾールポリアミドである、請求項4に記載の剤。
- 前記物質が、前記標的領域に特異的に結合する核酸配列認識モジュールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
- 前記核酸配列認識モジュールが、CRISPR-Cas、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター又はPPRモチーフである、請求項6に記載の剤。
- 前記核酸配列認識モジュールがCRISPR-dCasである、請求項6に記載の剤。
- 前記物質が、前記核酸配列認識モジュールと複合体形成するヌクレアーゼとからなる、請求項6又は7に記載の剤。
- 前記物質が、前記ヌクレアーゼで切断される部位で相同組換えを生じさせ得るドナーDNAをさらに含む、請求項9に記載の剤。
- 前記核酸配列認識モジュールが、転写抑制因子と複合体を形成する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の剤。
- 前記物質が、それをコードする1以上の発現ベクターの形態で提供される、請求項1〜3及び6〜11のいずれか1項に記載の剤。
- p53の不活性化を検定するための試薬と組み合わせてなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の剤。
- (1)被検物質の存在下又は非存在下で、c−Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
を含む、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法。
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