JPWO2018216641A1 - 刃具用材料及びその製造方法、並びに刃具 - Google Patents

刃具用材料及びその製造方法、並びに刃具 Download PDF

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Abstract

耐食性と高硬度とを両立した刃具を製造することができる刃具用材料の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。マルテンサイト系ステンレス鋼を用いレーザー肉盛溶接を組み合わせて刃先部を形成することにより課題を解決できることを見出した。具体的には金属粉末を原料とするレーザー肉盛溶接を利用することで、ステンレス鋼相当の耐食性を維持しつつ、刃先に要求される耐摩耗性や靭性を満足する合金成分・合金組織の調製が容易になることを見出した。すなわち上記課題を解決する本発明の刃具用材料の製造方法は、マルテンサイト系ステンレス鋼からなる鉄系金属粒子材料を胴材の表面に供給し、レーザービームによって前記胴材と前記鉄系金属粒子材料からなる肉盛層とを一体化するレーザー肉盛溶接工程を一回以上行うことにより前記マルテンサイト系ステンレス鋼からなる刃先部を形成する刃先部形成工程を有する。

Description

本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼を刃先に採用した刃具を製造するための刃具用材料、そしてその刃具用材料の製造方法、並びにその刃具用材料から製造した刃具に関する。
丸太を回転させて単板に剥くベニヤレースに装着されるベニヤレースナイフ、木材突板を製造するスライサーナイフ、古紙から再生パルプを製造するパルパーに装着される粉砕刃物など腐食環境で使用される刃具が知られており、硬度はHRC58以上が望ましいと言われている。
合板製造工程において環境保護の観点から自然林の伐採は規制され、植林木の利用が進められている。植林木は成長が早い早生樹種が多く、その年輪幅は広く、軟質材に分類され比重すなわち密度が小さいことが多い。そのため合板用単板を剥き出す際には、刃物に対して硬質材や中質材よりも優れた切れ味が要求される。
木質家具及び木質床材は木材資源有効利用のため、複合材が用いられ外観のみに木材突板を貼る製法が広く用いられている。多種の木材を突板に利用する場合に、樹種により腐食性の違いがあり、一部の樹種では切削時にナイフが腐食されて溶出した金属成分が突板に付着することで外観が重要である突板表面にブルーステインと称するシミが発生してしまう。このため、ナイフの刃先の部分や台金部分の防食が必要になり、コストと刃先の切れ味を犠牲にしてナイフ全体にCrめっきを行う対策を講じている。
日本国内ではIT化によって紙自体の消費量は減少傾向にあるが、東南アジアを含めて世界での人口増加により消費量は増加している。そのため原料となる木材バージンパルプの利用を減らすことを目的として古紙再生が進んでいる。製紙工程では原料パルプの主成分であるセルロースを化学処理するために、各設備では防食対策が重要になっている。古紙再生の工程においても、薬剤と共に古紙を粉砕して解繊する刃具(製紙用パルパー刃具)が用いられており、これまで以上に処理能力を上げるためには解繊する刃具の耐食性・耐摩耗性向上が望まれている。多くは耐食性を重視して刃金としてステライト(商標、以下省略)などCo基合金が利用されているが、ステライトよりも更に耐摩耗性に優れた刃具が望まれている。
合板用、突板単板を剥き出すベニヤレースナイフやスライサーナイフなど刃物の刃金としては特殊鋼として炭素工具鋼、合金工具鋼、冷間工具鋼、高速度鋼、粉末高速度鋼が用いられ、HRC58以上の硬度に熱処理される。また製紙用ステライト製刃具は、HRC40〜50の硬度で利用されており、プラズマトーチやバーナでステライトワイヤ素材から肉盛されることで刃金部分が形成される。
ナイフに要求される性能としては長時間使用できることであり、刃先を形成する工具鋼に要求される品質としては、鋭利な刃先が変形しない剛性、カケが発生しない靭性、アブレシブ摩耗が少ない耐摩耗性、腐食摩耗が少ない耐食性、鋭利な刃先が構成しやすい刃付性が求められる。
一般に工業用の刃具類は、高価な工具鋼の使用量を最小限にするために、工具鋼で構成される刃金と機械加工が容易な普通鋼による台金で構成される。工具鋼から構成される刃先の熱処理に加え、刃先と台金との間を強固に接合する工程が必要である。刃先に使用する鋼材の焼き入れなどの熱処理工程、刃先と台金とを接合するためのろう付けや肉盛など接合工程によって製造される。
一般に木材切削加工では木材に含まれる有機成分によって切削する刃物はアブレシブ摩耗だけではなく腐食摩耗によって刃先摩耗が進行する。
ベニヤレースナイフは伐採した原木を切削して単板を生産するが、生産される単板の割れなどの欠陥を抑制するために切削される原木は乾燥させないのが一般的である。このため、一般の木材切削加工に用いる刃物と比べてベニヤレースナイフは耐腐食性に優れた工具鋼が使用されている。
一般に耐食性に優れた鋼材としてはステンレス鋼がある。一般的な刃具の製造方法により処理してもHRC58以上の硬度を得ることができるステンレス刃物鋼も存在するが、そのようなステンレス刃物鋼は靭性が不足し刃かけが発生しやすい。
また、一般的なステンレス鋼では、組織中に大きな金属炭化物が内在することから木工用刃物に必要な鋭角な刃角度に研磨形成する際に、その金属炭化物の存在に起因するチッピングにより鋭利な刃先が構成できないと共に、切削時にその金属炭化物が脱落して刃かけが早期に発生するおそれがある。
ステンレス刃物鋼は既にカスタムナイフ用途で数多くの鋼種が市販されているが、特殊な元素を含む場合が多く鋼材単価が高いこと、品質面でも内在する金属炭化物の粒径が大きく刃かけなどが生じやすいことから、ベニヤレースナイフには適さない。またベニヤレースナイフのように大型の工業用刃物に適した寸法の素材を製造することが困難である。
スライサーナイフでは、突板を剥き出すために切れ味が高いことが重要になる一方で、腐食や、樹種により問題になるブルーステインを抑制するために、刃物全体をCrめっきしたり、台金部分だけでもステンレス鋼を用いるなどの対策がされている。Crめっきを行うとメッキ層の厚さが数μmであってもその厚みの分だけ切れ味が低下すると共に、Crめっき層の硬度が充分で無いため耐摩耗性が充分で無くなる。台金だけをステンレス鋼にしても刃金の耐食性が充分無いため、鋼に由来する問題(耐食性向上、ブルーステインの抑制)は充分とは言えない。
製紙用パルパー用刃具は、製紙パルプを再生するために古紙に各種溶剤を混ぜて行う解繊作業に用いるため、強い腐食性の環境に曝される。印刷物のインクや異物に対する耐摩耗性も必要になり、耐食性と高硬度が要求される。耐食性を重視してステライトが採用されるが、HRC58を超える硬度は得られていない。
特許第5487376号公報 特開2000−237469号公報
Journal of Laser Applications Vol. 21 (2009)No.4 P176 鉄と鋼 Vol.81 (1995) No.5 p565
本願発明は上記実情に鑑み完成したものであり、耐食性と高硬度とを両立した刃具を製造することができる刃具用材料及びその製造方法、並びにそれらの刃具用材料から製造した刃具を提供することを解決すべき課題とする。
本願発明者らは上記課題を解決するために刃具・刃物の寿命を延ばすために耐食性の高いステンレス鋼で、優れた切れ味をもつ材料について検討を行った結果、マルテンサイト系ステンレス鋼を用いレーザー肉盛溶接を組み合わせて刃先部を形成することにより課題を解決できることを見出した。
具体的にはマルテンサイト系ステンレス鋼からなる粉末を原料とするレーザー肉盛溶接を利用することで、ステンレス鋼相当の耐食性を維持しつつ、刃先に要求される耐摩耗性や靭性を満足する合金成分・合金組織の調製が容易になることを見出した。
すなわち上記課題を解決する本発明の刃具用材料は、500℃以上の加熱後までに少なくとも一部の硬度がHRC58以上であり、マルテンサイト系ステンレス鋼からなる刃先部と、その刃先部が形成されている胴部とを有する。
また、上記課題を解決する本発明の刃具用材料の製造方法は、マルテンサイト系ステンレス鋼からなる鉄系金属粒子材料を胴材の表面に供給し、レーザービームによって前記胴材と前記鉄系金属粒子材料からなる肉盛層とを一体化するレーザー肉盛溶接工程を一回以上行うことにより前記マルテンサイト系ステンレス鋼からなる刃先部を形成する刃先部形成工程を有する。特に上述した本発明の刃具用材料を好適に製造することができる方法である。
レーザー肉盛溶接により形成された肉盛層は一般の特殊鋼の製鋼工程を経ないため、製鋼工程で生成する一次炭化物がない凝固組織となって刃先におけるチッピングが発生し難い。
一般的に「レーザー肉盛にてステンレス鋼を肉盛りすることで耐食性部材の製造例は多いが肉盛層がHRC58を超える硬度を得るのは難しい。ステライト#1など肉盛りした段階で母材と肉盛層との熱膨張係数の違いによる応力が大きく、肉盛層の硬度が高い場合は応力によってクラックが発生する。」と言われている。
高硬度を得るために、レーザー肉盛溶接後に部材全体を再加熱することで、高速度鋼と同様にMo、Wなどの合金成分による二次効果を狙った焼き戻し処理を行っているが(特許文献1)、ステンレス鋼の場合は、大きな冷却速度によって出来た準安定オーステナイトの分解による硬化が発生し、肉盛直後はHRC58前後の硬度が得られる一方でクラックは発生せず、その後の再加熱でHRC60以上にまで硬化させることができることを見出した。
本発明の刃具用材料は上記構成を有することにより高い耐食性と高硬度とを両立することが可能となった。従来はステンレス鋼においてHRC58以上の材料を提供することは不可能であると考えられていたが、所定の金属組織を採用すれば達成可能であった。
特に本発明の刃具用材料の製造方法により上記金属組織を実現することが容易であり、従来では得られなかった刃具用材料を提供することが可能になった。更にレーザー肉盛溶接工程は大気中で充分に行うことができる工程で有り、また形成される刃先部の大きさの制限も少なく出来る方法であるという付随的な利点もある。
実施例においてレーザー肉盛溶接工程により肉盛層を並列して形成した状態及び硬度を測定した位置を示す断面図である。 実施例における再加熱温度と硬度との関係を示すグラフである。 実施例においてレーザー肉盛溶接工程により肉盛層を積層して形成した状態及び硬度を測定した位置を示す図である。 実施例において肉盛層を積層して形成した場合の各肉盛層についての再加熱前後の硬度を示すグラフである。
本発明の刃具用材料及びその製造方法、並びにその刃具用材料から製造できる刃具について実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。
(刃具材料)
本実施形態の刃具材料は、刃先部と胴部とを有する。刃先部は本実施形態の刃具材料から刃具を製造したときに刃先になる部分である。胴部は刃先以外の部分であり、刃先部が一体的に形成されている。本実施形態の刃具用材料に対して加工を行うことで刃具を製造することができる。加工としては刃具用材料から目的とする刃具の形状にまで切削等により加工する機械的加工と適正な温度条件により焼き戻しなどを行う熱加工とが例示できる。
・刃先部
刃先部はマルテンサイト系ステンレス鋼(いわゆる焼入型)からなる。マルテンサイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS440系ステンレス鋼が挙げられる。特にSUS440Cを採用することが好ましい。
刃先部は、少なくとも一部の硬度がHRC58以上であるか、所定の条件での処理を行った後に硬度がHRC60以上である。高硬度が求められる部位(HRC58以上となる少なくとも一部の部位)としては最終的に製造される刃先の部分や、その刃先の部分でも特に応力が集中しやすい部分である。所定の条件での処理としては500℃以上での加熱であり、組織として存在する準安定オーステナイトをマルテンサイト化させることができる温度である。加熱温度としては下限値や上限値として530℃、540℃、550℃、560℃、580℃を採用することが好ましい。加熱は焼き戻し工程として行うことができる。硬度の下限値としては、HRC61、HRC62、HRC63、HRC64、HRC65を採用することが好ましい。高硬度を実現するための方法は特に限定しないが、急速に加熱し急速に冷却する条件を採用したり、刃先部を形成する前に金属組織を構成する結晶の大きさを小さくしておくことや細かい粉末状にしておくことが例示できる。特に好ましい製造方法としては後述する本発明の刃具用材料の製造方法にて製造することが例示できる。
刃先部の大きさは特に限定しないが、厚み(胴部の表面に対して重なる方向)が1mm以下であることが好ましい。刃先部は胴部の表面に拡がる板状に形成されていることが好ましい。刃先部は最終的に製造する刃具の刃先が形成される部分に必要な形状で配置される。刃先部の拡がり方向の大きさは特に限定しないが、ある程度の長さで形成することにより製造された刃具の刃先を研いで再生できる回数を増やすことができる。
刃先部は内部に金属炭化物が分散されていることがあるが、その炭化物の粒子径は1μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。金属炭化物の粒径が小さいと炭化物が脱落したときの刃かけの影響を小さくできる。
・胴部
胴部は刃先部以外の部分である。最終的に製造される刃具においては台金に相当する部分で有り、公知の鋼材等どのような材料から構成しても良いが、ステンレス鋼などの耐食性に優れた材料から形成することが好ましい。
胴部の大きさは特に限定されず、最終的に製造される刃具の大きさに応じた大きさである。胴部の形状も特に限定しないが、先述した刃先部が設けられる部分は切り欠かれており、その切り欠かれた部分に先述した刃先部が充填されるように形成されることが好ましい。例えば厚み1mmで刃先部を構成する場合には深さ1mmで胴部の一部を切り欠いていることが好ましい。
(刃具材料の製造方法)
本実施形態の刃具用材料の製造方法は、刃具用材料を製造する方法であり、製造される刃具用材料は先述した本実施形態の刃具用材料と同じであるため、更なる説明は省略する。本実施形態の刃具用材料の製造方法は、レーザー肉盛溶接工程を一回以上行うことで胴材の表面に肉盛層を形成して刃先部とする刃先部形成工程を有する。
肉盛溶接の中でもレーザーによる方法ではプラズマアーク肉盛のような大きな熱量が母材(胴材)に入らないので、肉盛層の冷却速度が大きい。このため一般特殊鋼を焼き入れ熱処理した場合よりも高い硬度が得られると共に、金属組織は微細緻密になり靭性が高くなる。また、ベニヤレースナイフのような直線度が要求される平型長尺製品の場合には歪抑制の効果がある。
レーザー肉盛溶接工程は鉄系金属粒子材料を胴材の表面に供給し、レーザービームによってその胴材の表面に一体化する工程である。鉄系金属粒子材料は、SUS440系の鉄系合金からなる。
従来技術においては耐食性を兼ね備えた高硬度材料としてステライトが用いられるが、ベニヤレースナイフやスライサーナイフなどの工業用刃物の硬度は、HRC60以上が望まれる。ステライトの中でも硬度が高い#1、#12、#6の利用が検討されているが、#12、#6はHRC60以上の硬度が得られず、#1はクラックの発生を抑制してレーザー肉盛溶接を行うことは困難である(特許文献2参照)。
製紙用パルパー刃具も腐食環境下での耐摩耗性が必要なことから、ステライト肉盛が利用されているが、本実施形態の刃具用材料の製造方法では更に高硬度の刃先を形成することができる。本実施形態の刃具用材料の製造方法にて得られた刃具材料の刃先部はステンレス鋼相当の耐食性があり、且つ工具鋼同等の硬度と耐摩耗性をもつことによって木材切削時の刃先摩耗量を1/2以下にすることができる。
鉄系金属粒子材料の粒径は、下限値が10μm、30μm、50μm、上限値が100μm、200μm、300μmとすることが好ましく、特に粒径は揃っていた方が好ましい。
従来の特殊鋼製鋼材から構成された必要な大きさをもつ刃金を普通鋼の台金(胴材)と接合して刃具材料を製造する工程に比べて、刃金の代わりに金属粉末原料を使用するので、刃金として、製造する刃具の大きさに合わせた長さ・幅を寸法別に鋼材を加工製作する必要が無くなる。
また、接合品質においてもレーザー肉盛溶接工程は母材となる胴材表面も加熱溶融させて肉盛層との境界部分は合金層を形成しており、ろう付け欠陥・空隙・密着不良による接合不良の解消にも繋がる。
鉄系金属粒子材料を供給する量は特に限定しないが、レーザービームの照射により全体が溶融されて胴材の表面に一体化できる程度の量にすることが望ましい。特に形成される刃先部の厚みが0.1mm以上1mm以下程度になるように供給することが好ましい。更に好ましくは下限値が0.5mm以上である。
ここで、ナイフの刃先の耐摩耗性・耐食性など実際に切削に必要な肉盛層の厚さは1mm以下であり、更には耐食性や耐摩耗性が最も要求されるのは刃先部であり、プラズマアーク肉盛のように厚肉での肉盛層(例えば数mm)を形成する必要は無く、それよりも薄い肉盛層(例えば0.1mm〜1mm程度)を形成できれば刃先部の形成には充分である。肉盛層の厚みを薄くすると、胴材への入熱量が少なくなって母材の熱変形が抑制できる利点があり、更には肉盛層から胴材への熱拡散による冷却速度が向上して肉盛層の硬度を高くすることができる。
その結果、母材金属への入熱量を少なくできるので、ナイフ製造工程において歪矯正が容易である。更にはレーザー肉盛溶接が消費する金属粉末量や消費電力などのコスト面でも有効である。
刃先部形成工程では、刃先部が必要な大きさ・形状になるまで一回以上レーザー肉盛溶接工程を行う。通常は、レーザービームを照射して加熱できる範囲は刃先部の大きさより小さいことが多いため、製造したい刃先部の形状に沿ってレーザー肉盛溶接工程を行う。レーザー肉盛溶接工程により刃先部を形成する際には胴部の表面に対して重なり方向(厚み方向)に複数回積層させて行うことができる。また、刃先部の大きさに応じて胴部の表面で二次元方向にて分割するように複数回行うこともできる。レーザー肉盛溶接工程を複数回行う場合には特に刃先となる部分など最終的に高硬度が要求される部位を形成した後はそれ以上のレーザービームによる加熱(焼き戻し温度以上の温度:例えば580℃以上の加熱)が行われることがないようにすることが好ましい。例えばレーザー肉盛溶接工程により刃先部の一部を形成した上に積層するようにレーザー肉盛溶接工程を行う場合などである。特に一度溶融した後固化した肉盛層を再度加熱する場合に硬度が低下する傾向にあり、レーザービームの照射により溶融した状態のまま固化する前に隣接してレーザー肉盛溶接工程にて肉盛を行う場合には高硬度を維持することができる。但し、レーザー肉盛溶接工程を複数回積層するように行った場合でも最表面は再加熱されていないので高硬度が維持できる。
刃先部形成工程は、レーザー肉盛溶接工程の他、レーザー肉盛溶接工程にて形成した肉盛を切削などにより整える工程などをもつことができる。また、レーザー肉盛溶接工程を行う前に胴部の表面に刃先部を形成できる形状に整える工程をもつことができる。例えば刃先部の形状に応じた切り欠きを胴部に形成しておくことができる。
本実施形態の刃具用材料の製造方法では、従来製鋼による工具鋼とは異なり巨大な炭化物を生成せず、刃付研磨時に炭化物が原因となるチッピングがなく鋭利な刃付状態が得られる。
(刃具)
本実施形態の刃具は、上述した本実施形態の刃具用材料から形成されるか、本実施形態の刃具用材料の製造方法にて製造された刃具用材料から形成される。特に刃先部の厚みが0.1mm以上1mm以下になるような刃具であることが好ましい。更に好ましくは下限値が0.5mm以上の刃具である。また、耐食性が要求される分野に用いる刃具を構成することが好ましい。耐食性が求められる刃具としては、ベニヤレースナイフ、木材突板を製造するスライサーナイフ、製紙用パルパー用刃具が例示される。
刃具用材料から刃具を製造する方法としては特に限定されず常法により製造することができる。例えば適正な方法により刃具の形状を整えた後に適正な温度にて熱処理を行うことができる。適正な加熱温度としては本実施形態の刃具用材料の欄にて説明した「所定の条件での処理」での加熱温度と同様で有り、500℃以上での加熱であり、加熱温度としては下限値や上限値として530℃、540℃、550℃、560℃、580℃を採用することが好ましい。また、加熱した後に適正な条件で冷却することが好ましい。
(マルテンサイト系ステンレス鋼:SUS440Cとレーザー肉盛層の硬度比較)
一般的な製鋼によって製造されたSUS440C(試験試料1)の硬度と、SUS440Cから構成された鉄系金属粒子材料をレーザー肉盛溶接によりS45Cからなる胴材の表面に形成した肉盛層(試験試料2)の硬度とを比較する。
・試験試料1
SUS440Cは焼入れ硬度HRC 59.5が最大硬度であり、焼戻しを行うことで焼入直後より硬度が下がった。焼入温度は1050℃、焼戻し温度は530℃とした。
・試験試料2
SUS440Cからなる鉄系金属粒子材料(体積平均粒径100μm)からレーザー肉盛溶接にて形成された肉盛層(厚み1mm、幅3mm)について硬度を測定した結果、肉盛直後の硬度はHRC57.0だったが、550℃での再加熱によりHRC65.2と大幅に硬度が上がった。
(レーザー肉盛溶接工程により製造された肉盛層の硬度評価)
S45C母材上にステンレス系金属粉末をレーザー肉盛し、肉盛後の硬度と再加熱後の硬度変化を測定した。
肉盛は横方向(胴材の表面に並列する方向)に3列行い、厚み約1mm、幅約8mmの肉盛層を形成した。硬度の測定は、得られた肉盛層を胴材の表面と垂直な断面において胴材と肉盛層の境界から0.8mm肉盛層側での位置(図1参照)で肉盛層の表面と水平方向に0.5mmピッチで16箇所測定し、その平均値を採用した。結果を表1及び図2に示す。
Figure 2018216641
表1より明らかなように、レーザー肉盛溶接工程により肉盛層が形成された直後の硬度よりも500℃以上で再加熱を行った後の方が高硬度になることが分かった。特に500℃以上での再加熱では硬度がHRC60以上とSUS440系の鉄系合金では予想できない硬度にまで達成することができた。
(レーザー肉盛溶接工程により積層した肉盛層の硬度の評価)
肉盛層を積層して形成したときのそれぞれの肉盛層の硬度を評価した。肉盛層はSKH51からなる胴材の表面に10層にわたって形成した。その後、図3に示す位置にて硬度を0.25mmピッチで55箇所測定し、その平均値を硬度とした。硬度の測定は10層にわたる肉盛層の形成後と、530℃での再加熱後について行った。結果を図4に示す。
図4から明らかなように、肉盛層形成直後は6層目の硬度が一番硬かった。これは7層目以降の肉盛層形成により再加熱と同じ効果が得られたためと推測できる。1層目、2層目、4層目は6層目と比べて硬度が低かった。特に4層目よりも2層目、2層目よりも1層目の硬度が低かった。これは積層の下側に位置する肉盛層の方がその後の肉盛層形成時の加熱による影響を大きく受けている為と推察された。最表面である10層目は、単層の場合と同様に肉盛層形成直後の硬度は低かったものの、その後の再加熱により一番硬度が高くなった。4〜8層目については再加熱によって硬度が低下してしまった。なお、一層目については再加熱により大きく硬度が向上した。
以上の知見から、積層して肉盛層を形成すると、上層の熱影響で下層になる層が再加熱されて硬度に影響を与えることが分かった。単層を肉盛と再加熱した時のように単純な硬度変化にはならず、再加熱による硬度向上と上層の形成による熱的影響による硬度低下の両方が発生することが分かった。
(刃具の製造)
・その1
刃具としての鉋刃を装着した鉋胴を回転させ杉の生材を切削した。鉋刃としては、無垢のSKH51(ハイス:試験試料3)、無垢のSUS440C(試験試料4)、S45Cからなる胴材の表面にレーザー肉盛溶接工程によりSUS440Cからなる粒子材料の肉盛層(刃先部)を形成した材料(試験試料5)からそれぞれ製造した。
その結果、試験試料3では大きく摩耗しており耐食性が低いことが明らかになったのに対して、試験試料4及び5では摩耗量が小さく耐食性に優れていることが分かった。また、試験試料5では試験試料4と比べて刃かけの発生が少ないことが分かった。乾燥した針葉樹についても杉の生材と同様に切削して評価したが同様の結果が得られた。
・その2
試験試料5の鉋刃と、SUS440Cに代えてSKH51を用いて試験例5の鉋刃と同様にして製造した鉋刃(試験試料6の鉋刃)とについて前述のその1の条件にて生材を切削した後、刃先線粗さを比較評価した。その結果、試験試料5では刃かけが発生しない条件でも試験試料6では刃かけが発生しており、試験試料6の鉋刃における刃先線の粗さが試験試料5の鉋刃よりも粗くなっていた。更に生材の切削を進めていくと、試験試料5の鉋刃によっては得られた単板の表面が滑らかな条件でも、試験試料6の鉋刃では得られた単板の表面に刃筋が発生した。従って、SUS440Cを採用することにより刃先の耐久性が向上していることが分かった。
・その3
刃先部の長さ(刃長)1500mm、刃先部の幅20mm、刃先部の厚み1mmの刃先部をSKH51製の胴部の表面にレーザー肉盛溶接工程を繰り返すことで形成して刃具材料を製造し、その刃具用材料から刃具としてのベニヤレースナイフを製造した。得られたベニヤレースナイフについて浸透探傷法にて検査を行ったが、クラックや空隙などの欠陥は発見できなかった。

Claims (7)

  1. マルテンサイト系ステンレス鋼からなる鉄系金属粒子材料を胴材の表面に供給し、レーザービームによって前記胴材と前記鉄系金属粒子材料からなる肉盛層とを一体化するレーザー肉盛溶接工程を一回以上行うことにより前記マルテンサイト系ステンレス鋼からなる刃先部を形成する刃先部形成工程を有する刃具用材料の製造方法。
  2. 前記刃先部形成工程は、前記胴材の表面を覆うように前記肉盛層を並列して前記レーザー肉盛溶接工程を繰り返して前記刃先部を形成する工程である請求項1に記載の刃具用材料の製造方法。
  3. 前記刃先部形成工程は、前記胴材の表面に前記肉盛層を積層するように前記レーザー肉盛溶接工程を繰り返して前記刃先部を形成する工程である請求項1又は2に記載の刃具用材料の製造方法。
  4. 胴部と、
    500℃以上の加熱後までに少なくとも一部の硬度がHRC58以上であり、マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、前記胴部に形成された刃先部と、
    を有する刃具用材料。
  5. 前記刃先部に分散されている炭化物の粒径が、1μm以下である請求項4に記載の刃具用材料。
  6. 前記刃先部の厚さは1mm以下である請求項4又は5に記載の刃具用材料。
  7. 請求項4〜6の何れか1項に記載の刃具用材料から構成された耐食性の高い刃具。
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