JPWO2018186356A1 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置及び遷移金属錯体 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置及び遷移金属錯体 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、青色リン光素子として十分に短波な発光を有しながら、発光効率が高く、駆動電圧が低く、耐久性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。またそれが具備された照明装置及び表示装置を提供することである。さらに、それを可能にすることのできるリン光発光性の遷移金属錯体、当該リン光発性の金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子材料組成物を提供することである。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層を含む有機層の少なくとも1層に、リン光発光性の遷移金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記遷移金属錯体が、中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有し、かつ配位子が、特定の2要件を満足することを特徴とする。

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置、遷移金属錯体、有機エレクトロルミネッセンス素子材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子材料組成物に関し、更に詳しくは、青色リン光素子として十分に短波な発光を有しながら、発光効率が高く、駆動電圧が低く、耐久性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子等に関する。
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
一方、有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
実用化に向けた有機EL素子の開発としては、例えば、プリンストン大より、M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154ページ(1998年)に記載のように、励起三重項からのリン光発光を用いる有機EL素子の報告がされ、以来、米国特許第6,097,147号明細書、M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750〜753頁(2000年)などに記載のように、室温でリン光を示す材料の研究が活発になってきている。
リン光発光を利用する有機EL素子では、以前の蛍光発光を利用する素子に比べ原理的に約4倍の発光効率が実現可能であることから、その材料開発を初めとし、発光素子の層構成や電極の研究開発が世界中で行われている。
発光素子を構成する材料として、イリジウム錯体系等重金属錯体を中心に多くの化合物の合成検討がなされており、例えば、S.Lamansky et al.,J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)には、それらの金属錯体を有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう)の発光層に使用することが記載されている。
このように、リン光発光方式は大変ポテンシャルの高い方式であるが、リン光発光を利用する有機ELデバイスにおいては、発光中心の位置をコントロールする方法、とりわけ発光層の内部で再結合を行い、いかに発光を安定に行わせることができるかと共に、リン光発光性材料自身の発光性をいかに向上させるかが、素子の効率・寿命の面から、重要な技術的な課題となっている。
有機EL素子に使用される青色リン光用の発光材料として、フェニルピラゾール系、イミダゾフェナンスリジン系、フェニルイミダゾール系等の配位子を有するイリジウム錯体が知られているが、発光性、短波長発光、高耐久性の全てを同時に満足させることは非常に困難である。
フェニルイミダゾールを配位子とする金属錯体は発光波長が比較的短い発光材料であることが開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
これら特許文献に記載の技術にあっては、発光性と発光寿命を同時に改善するためにイミダゾール環への置換基において、π共役系の拡張を検討しているが、十分な発光性と堅牢性を持ったドーパントが得られず、発光波長の短波化、高い発光性及び発光寿命の長寿命化を同時に達成することができていない。
米国特許出願公開第2011/0057559号明細書 米国特許出願公開第2011/0204333号明細書
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、青色リン光素子として十分に短波な発光を有しながら、発光効率が高く、駆動電圧が低く、耐久性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。またそれが具備された照明装置及び表示装置を提供することである。さらに、それを可能にすることのできるリン光発光性の遷移金属錯体、当該リン光発性の金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子材料組成物を提供することである。
フェニルイミダゾールを配位子とする金属錯体のフェニルイミダゾール骨格に電子吸引性の置換基を導入することで発光波長が短波化することはよく知られていたが、このような発光波長の短波化した金属錯体を発光ドーパントとした発光素子を作製すると、溶液状態又は固体状態で測定されるドーパント単体の発光量子効率(PLQE;光励起による発光効率)が良好であるにもかかわらず、発光素子の通電時の発光効率(EQE;外部取り出し量子効率)が期待されるほどには高くならないことが判明した。
この問題を細かく解析した結果、これは、短波化のために導入した電子吸引性基によって、金属錯体の分子軌道のエネルギー準位が全体的に大幅に低下したために、隣接する正孔輸送層の正孔輸送材料や発光層において金属錯体を分散しているホスト材料の最高被占軌道(以下HOMOともいう。)の準位と、金属錯体のHOMOの準位との準位差が拡大してしまった結果、正孔輸送材料やホスト材料からの正孔の移動が阻害され、その結果、ドーパント上での励起子の生成確率が著しく低下することで引き起こされていることが判明した。なお、本願において、エネルギー準位が低い場合準位が深いともいい、エネルギー準位が高いとき浅いともいう。
本発明者らは、フェニルイミダゾールを配位子とし、電子吸引性基を有する金属錯体のフェニルイミダゾール骨格に、共役系を連続させずに、特定の正孔輸送性の基を導入することで、発光波長を大きくは変えることなく、ドーパントへの正孔注入を促進し、発光効率を向上させるとともに、発光寿命の低下原因となる発光層の隣接層への過剰な正孔の流入による寿命劣化の改善を図るという着目点の下に種々の錯体を検討した。
検討の結果、本発明で開示している特定の正孔輸送性の置換基の導入によって、発光ドーパントへの正孔注入が促進され、金属錯体上での電荷の再結合による励起子の生成が促進されることで発光効率が向上し、同時に、発光寿命の低下原因となる発光層の隣接層への過剰な正孔の流入を抑制することで、発光素子の発光寿命も延ばすことができた。
本発明者らは、本発明の技術思想の適用可能性の拡大を検討しフェニルイミダゾールを配位子とする金属錯体のみでなく、後述する一般式(2)で表される部分構造を有する遷移金属錯体全般においても同様の効果が得られることを見いだし、一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体を含有した有機エレクトロルミネッセンス素子により上記課題を解決できることを見いだした。
さらに、本発明者らは、本発明の技術思想の適用可能性の拡大を検討し一般式(2)で表される部分構造を有する遷移金属錯体のみでなく、遷移金属に直接結合している芳香族環が、特定の2つの要件を満たせば、中心金属と中心金属に直接結合している複数の芳香族環配位子からなる、リン光発光性の遷移金属錯体全般においても同様の効果が得られることを見いだした。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.発光層を含む有機層の少なくとも1層に、リン光発光性の遷移金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記遷移金属錯体が、中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有し、かつ下記要件(1)及び(2)を満足することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(1)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有する。
(2)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性部分構造を有する。
2.前記遷移金属錯体が、分子軌道計算での評価において、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つは、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満であることを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記遷移金属錯体と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体のそれぞれについて分子軌道計算で算出される発光極大波長の差の絶対値が、10nm以下であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造が、それぞれ、無置換又は置換されていてもよい、ジアリールアミノ基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェニチアジン−10−イル基、ジヒドロフェナジン−5−イル基及びジヒドロアクリジン−10−イル基から選ばれることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、アゾール環であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、イミダゾール環又はトリアゾール環であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.発光層を含む有機層を少なくとも1層有する有機ルミネッセンス素子であって、当該有機層の少なくとも1層が、下記一般式(1)で表される遷移金属錯体を含有することを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
一般式(1)
ML・L・(L)n
〔式中、MLは、下記一般式(2)で表される部分構造を表し、Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。L〜Lは、各々2価の配位子を表し、L〜Lは同一であっても異なっていてもよく、互いに結合していてもよい。nは、1又は0を表す。〕
Figure 2018186356
〔式中、
環Bは、C=Cと共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
環Cは、C=Nと共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
nbは、0〜3の整数を表し、ncは0〜2の整数を表す。1≦nb+nc≦4である。Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
HTGは、窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造を表す。
Lは炭素数6〜10のアリーレン基を表し、Lは環B又は環Cに結合しているが、環B又は環Cと共役は連続していない。n1は、1又は2を表す。n2は、1又は2を表す。Lが複数ある場合には、互いに同一であっても良いし異なってもよい。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。〕
9.前記HTGで表される窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造が、それぞれ、無置換又は置換されていてもよい、ジアリールアミノ基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェニチアジン−10−イル基、ジヒドロフェナジン−5−イル基及びジヒドロアクリジン−10−イル基から選ばれることを特徴とする第8項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.前記Rb及びRcで表される電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることを特徴とする第8項又は第9項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記環Cで表される芳香族複素環が、アゾール環を表すことを特徴とする第8項から第10項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.前記環Cで表される芳香族複素環が、イミダゾール環又はトリアゾール環を表すことを特徴とする第8項から第11項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
13.前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(3)で表される部分構造で表されることを特徴とする第8項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2018186356
〔式中、
環Aは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。
環Bは、C=Cと共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
環Cは、N−C=Nと共に形成される5員の芳香族複素環を表す。
Raは、置換可能な置換基を表す。naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
nbは、0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは、0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
、L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4,5又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは、0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
14.前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(4)で表される部分構造であることを特徴とする第8項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2018186356
〔式中、
及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
環Cは、N−C=Nと共に形成される5員の芳香族複素環を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
nbは、0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L、Lは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Arは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
、L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは、0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4、5又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは、0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
15.前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(5)で表される部分構造で表されることを特徴とする第8項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2018186356
〔式中、
及びXは、一方が炭素原子を、他方が窒素原子を表す。
及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは、0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
nbは、0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは、0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
、L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは、0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4、5又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは、0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
16.前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(6)で表される部分構造で表されることを特徴とする第8項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2018186356
〔式中、
及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
nbは、0〜3の整数を表し、ncは、0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは、0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
、L、Lは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは、0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4、5又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは、0又は1を表す。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々、水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
17.前記Rb及びRcで表される電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることを特徴とする第13項から第16項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
18.前記遷移金属が、イリジウムであることを特徴とする第1項から第17項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
19.前記発光層が、フルオレン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、又は、これらの縮環化合物誘導体を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも1つが窒素原子で置換されているもの、及び、これらの組合せ、をホスト材料として含有することを特徴とする第1項から第18項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
20.前記リン光発光性の遷移金属錯体を含有した有機層が、塗布形成層であることを特徴とする第1項から第19項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
21.第1項から第20項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする表示装置。
22.第1項から第20項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする照明装置。
23.中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有するリン光発光性の遷移金属錯体であって、以下の4要件を満足することを特徴とするとする遷移金属錯体。
(1)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有する。
(2)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性の部分構造を有する。
(3)分子軌道計算での評価において、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つは、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満であること
(4)前記遷移金属錯体と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体のそれぞれについて分子軌道計算で算出される発光極大波長の差の絶対値が、10nm以下である
24.第23項に記載の遷移金属錯体を含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子材料。
25.第23項に記載の遷移金属錯体を含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子材料組成物。
本発明の上記手段により、青色リン光素子として十分に短波な発光を有しながら、発光効率が高く、駆動電圧が低く、耐久性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。またそれが具備された照明装置及び表示装置を提供することができる。さらに、それを可能にすることのできるリン光発光性の遷移金属錯体、当該リン光発性の金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子材料組成物を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
金属錯体の中心金属に直接結合する芳香族環に、電子吸引性基を導入することにより、発光波長を短波化することができ、さらに、当初着目したように、共役系を連続させないで特定の正孔輸送性の基を導入することにより、発光波長の長波化を抑制するとともに、ドーパントへの正孔注入を促進することができるものと考えられる。このため、発光効率を向上させ、発光寿命の低下原因となる発光層の隣接層への過剰な正孔の流入による寿命劣化が改善され、かつ駆動電圧を低く抑えることができものと考えられる。
有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図 図1の表示装置の表示部の模式図 図1の表示装置の画素の回路図 パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図 照明装置の概略図 照明装置の断面図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層を含む有機層の少なくとも1層に、リン光発光性の遷移金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記遷移金属錯体が、中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有し、かつ前記要件(1)及び(2)を満足する。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記遷移金属錯体が、分子軌道計算での評価において、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つは、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満であることが好ましい。
また、前記遷移金属錯体と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体のそれぞれについて分子軌道計算で算出される発光極大波長の差の絶対値が、10nm以下であることが好ましい。
さらに、本発明においては、前記窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造が、それぞれ、無置換又は置換されていてもよい、ジアリールアミノ基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェニチアジン−10−イル基、ジヒドロフェナジン−5−イル基及びジヒドロアクリジン−10−イル基から選ばれることが好ましい。
また、前記電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることが好ましい。
また、前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、アゾール環であることが好ましい。
さらに、本発明においては、前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、イミダゾール環又はトリアゾール環であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、発光層を含む有機層を少なくとも1層有する有機ルミネッセンス素子であって、当該有機層の少なくとも1層が、前記一般式(1)で表される遷移金属錯体を含有することが好ましい。
すなわち、本発明の要件を満たす遷移金属錯体の中でも、一般式(2)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体は、当該遷移金属錯体を構成する配位子の合成容易性及び遷移金属錯体の合成容易性などの点で好ましい。
また、前記HTGで表される窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造が、それぞれ、無置換又は置換されていてもよい、ジアリールアミノ基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェニチアジン−10−イル基、ジヒドロフェナジン−5−イル基及びジヒドロアクリジン−10−イル基から選ばれることが好ましい。
また、本発明においては、前記Rb及びRcで表される電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることが好ましい。
前記一般式(2)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体において化合物の堅牢性の点から、環Cは窒素数3以下の5員の含窒素複素芳香族環であることが好ましい。すなわち、環Cはアゾール環であることが好ましい。より好ましくは、イミダゾール環又はトリアゾール環であることが好ましい。
前記一般式(2)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体において化合物の堅牢性の点から、環Cはアゾール環であることが好ましく、より具体的には、前記一般式(2)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体は、前記一般式(3)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体であることが好ましい。
具体的には、前記一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体が、前記一般式(3)表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体であることが好ましい。
前記一般式(2)又は一般式(3)で表される部分構造を有するリン光発光性有機金属錯体において、発光性の点及び化合物の堅牢性の点から、環Bは6員の芳香族炭化水素環又は含窒素複素芳香族環であることが好ましい。すなわち、前記一般式(2)又は(3)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体は、前記一般式(4)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体であることが好ましい。
具体的には、前記一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体が、前記一般式(4)表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体であることが好ましい。
前記一般式(4)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体としてより好ましくは、前記一般式(5)又は(6)のいずれかで表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体であることが好ましい。
前記一般式(3)〜一般式(6)において、Rb及びRcで表される電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることが好ましい。
また、前記遷移金属が、イリジウムであることが好ましい。
また、前記発光層が、フルオレン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、又は、これらの縮環化合物誘導体を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも1つが窒素原子で置換されているもの、及び、これらの組合せをホスト材料として含有することが好ましい。
さらに、前記リン光発光性の遷移金属錯体を含有した有機層が、塗布形成層であることが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくいことから好ましい。
本発明の有機EL素子は、照明装置及び表示装置に好適に具備され得る。
本発明の実施態様として、本発明の遷移金属錯体は中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有するリン光発光性の遷移金属錯体であって、前記(1)〜(4)の4要件を満足することが好ましい。
さらに、本発明のリン光発光性の遷移金属錯体は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として好ましく用いることができる。
また、本発明のリン光発光性の遷移金属錯体を含有する組成物は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料組成物として好ましく用いることができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子》
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層を含む有機層の少なくとも1層に、リン光発光性の遷移金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記遷移金属錯体が、中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有し、かつ下記要件(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
(1)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有する。
(2)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性の部分構造を有する。
すなわち、本発明の基本要件として、リン光発光性の遷移金属錯体において、前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有することによって、前記遷移金属錯体の3重項励起エネルギーが拡大し、3重項遷移に伴うリン光発光の波長が短波化されている。
一方、ここで、電子吸引性基の導入によるリン光発光波長の短波化に伴って、前記遷移金属錯体の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が低くなることにより、隣接する正孔輸送層の正孔輸送材料や発光層において前記の遷移金属錯体を分散しているホスト材料のHOMOの準位と、前記の遷移金属錯体のHOMOの準位との準位差が拡大してしまった結果、正孔輸送材料やホスト材料からの正孔の移動が阻害され、その結果、前記の遷移金属錯体上での励起子の生成確率が著しく低下することで発光効率の低下が引き起こされることが問題となる。
前記の遷移金属錯体への正孔の移動を促進し、発光効率を回復するための必須要件が、前記の遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性の部分構造を有することである。
従来も、窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性の部分構造を遷移金属に置換基として導入することは試みられているが、本発明において、短波化のために導入している電子吸引性基とは互いの効果が相反していることが多く、単純に組み合わせるだけでは、所望の結果を得ることはできなかった。
本発明においては、窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性の部分構造を前記の遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つと結合する際に、当該芳香族環との共役が切断された状態で、単結合によって窒素原子と接続することで、正孔輸送性の部分構造を導入することによる副次的な影響を最小化することに成功した。
本発明の構成要件を満たす遷移金属錯体に共通する特徴を分子軌道計算によって確認することができる。分子軌道計算によって、本発明の遷移金属錯体の電子軌道を詳細に解析することで以下のような共通する特徴が確認できた。ここで、使用する分子軌道計算手法は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian09を用い、キーワードとしてB3LYP/LANL2DZを用いて構造最適化を行うことにより算出した。
本発明の遷移金属錯体の分子軌道計算を行い、算出された分子軌道を詳細に検討すると、前記遷移金属錯体の最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つの中に、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記の正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有する軌道が存在し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道(HOMO−x:xは1〜5のいずれか)とのエネルギー準位との差の絶対値を見ると、いずれも0.7eV未満であることが確認できた。
一方、正孔輸送性の部分構造を有しているが、本発明の構成要件を満たしていない、他の遷移金属錯体について同様の解析を行うと、それらも当該遷移金属錯体の最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位の結合性軌道のいずれか1つの中に、当該結合性軌道上の電子の60%以上が、前記の正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有する軌道が存在するものの、それらは、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値を見ると、いずれも0.9eV以上であった。
すなわち、遷移金属錯体の最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位の結合性軌道の中で、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満の軌道の電子の80%以上が正孔輸送性の部分構造に分布していることが、本発明の遷移金属錯体への正孔の移動を促進し、発光効率を回復したものと考えられる。
また、前記最高被占軌道(HOMO)と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満の軌道の電子の80%以上が正孔輸送性の部分構造に分布していることで、当該結合性軌道が、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5:HOMOを1番目としてそこから数えて6番目の結合性軌道)までの結合性軌道のいずれか1つの中に位置することになったと考えられる。
一方、本発明の遷移金属錯体の3重項励起エネルギー(T)と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体の3重項励起エネルギー(T)のそれぞれについて分子軌道計算で算出し、3重項励起エネルギー(T)を発光極大波長(λmax)に変換して比較すると、それぞれの発光極大波長の差の絶対値は、10nm以下であり、前記正孔輸送性部分構造の導入による発光波長の長波化は極めて小さく抑えられていることが確認できた。
《有機EL素子の構成層》
本発明において、有機層とは、有機物を含有する層をいう。陽極と陰極との間に設けられている有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう)を構成する正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等が含まれる
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/陽極バッファー層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
複数の発光層が含まれる場合、該発光層間に非発光性の中間層を有してもよい。また、上記層構成の内、陽極及び陰極を除く発光層を含む有機化合物層を1つの発光ユニットとし、複数の発光ユニットを積層することが可能である。該複数の積層された発光ユニットにおいては、発光ユニット間に非発光性の中間層を有していてもよく、更に中間層は電荷発生層を含んでいてもよい。
本発明の有機EL素子としては白色発光層であることが好ましく、これらを用いた照明装置であることが好ましい。本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
《発光層》
本発明に係る発光層は、陰極若しくは電子輸送層又は陽極若しくは正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して生成した励起子が失活する際発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の厚さの総和は特に制限はないが、膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、好ましくは2nm〜5μmの範囲に調整され、更に好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、特に好ましくは5〜100nmの範囲に調整される。
発光層の作製には、後述する発光ドーパントやホスト材料(以下ホスト化合物ともいう。)を、例えば、真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいい、例えば、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法)等を挙げることができる。))等により製膜して形成することができる。好ましくは発光層が、ウェットプロセスを経て形成された層である。ウェットプロセスにより層を形成することにより、真空蒸着法に比べて熱による発光層のダメージを軽減することができる。
本発明の有機EL素子の発光層には、発光ドーパントと、ホスト化合物とを含有し、少なくとも1つの発光ドーパントは、前述の一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体であることが好ましく、より好ましくは、一般式(2)から(6)までのいずれかで表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体である。
また、本発明に係る発光層には、以下の特許公報に記載されている化合物等を併用してもよい。
例えば、国際公開第00/70655号、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等である。
(1)発光ドーパント
発光ドーパントとしては、蛍光ドーパント(蛍光性化合物ともいう)、リン光ドーパント(リン光発光ドーパント、リン光性化合物、リン光発光性化合物等ともいう)を用いることができる。
本発明者らは、上記した本発明の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体をリン光ドーパントとして用いることにより、短波な波長を持ちながら、高い発光輝度と低駆動電圧、さらに発光寿命の長寿命化も同時に達成できることを見いだし、本発明に至った。また、本発明のリン光ドーパントを用いて作製された有機EL素子は経時安定性の点でも改善されることが分かった。
本発明に係る一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体においては、Mは元素周期表における8〜10族の遷移金属であることが好ましい。
遷移金属原子Mに配位している配位子の組み合わせを変更したり、配位子に置換基を導入したりすることによって、リン光発光性の遷移金属錯体の発光波長を所望の領域に制御することができる。
(1.1)リン光ドーパント
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、1つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう1つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明の実施形態におけるリン光ドーパントとしては、以下に説明する、一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体が用いられる。
(1.1.1)一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体
一般式(1)
ML・L・(L)n
〔式中、MLは、下記一般式(2)で表される部分構造を表し、Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。L〜Lは、各々2価の配位子を表し、L〜Lは同一であっても異なっていてもよく、互いに結合していてもよい。nは、1又は0を表す。〕
Figure 2018186356
一般式(2)において、環Bは、C=Cと共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
環Bで表される6員の芳香族炭化水素環としてはベンゼン環が挙げられ、環Bで表される5員又は6員の芳香族複素環としては、例えば、オキサゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、等が挙げられる。
前記一般式(2)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体において発光性の点及び化合物の堅牢性の点から、環Bは6員の芳香族炭化水素環又は含窒素複素芳香族環であることが好ましく、より好ましくは、環Bは、ベンゼン環、ピリジン環、又はピリミジン環である。
環Cは、C=Nと共に形成される5員もしくは6員の芳香族複素環を表す。
環Cで表される5員の芳香族複素環としては、例えば、トリアゾール環、イミダゾール環、テトラゾール等が挙げられる。
環Cで表される6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環等が挙げられる。
前記一般式(2)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体において化合物の発光波長の点から、環Cはピリジン環、又はアゾール環であることが好ましく、より好ましくは、アゾール環であり、さらに好ましくはイミダゾール環、又はトリアゾール環である。
Rb及びRcは、それぞれ環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
電子吸引性基の例としては、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基などのフッ化アルキル基、ペンタフルオロフェニル基のようなフッ化アリール基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、ペンタフルオロスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ホスフェノ基、ホスフィンオキシド基、などが挙げられる。
本発明において、電子吸引性基は、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることが好ましい。
nbは0〜3の整数を表し、ncは0〜2の整数を表す。1≦nb+nc≦4である。Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
HTGは窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造を表す。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環などが挙げられる。HTGとして好ましくは2つの芳香族環が置換した窒素原子からなる構造が好ましく、2つの芳香族環同士が互いに結合して環状構造を形成してもよい。2つの芳香族環の連結部分は単結合で直接結合してもよいし、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を介して結合してもよい。さらに、芳香族環は置換されていてもよく、置換基としては炭素数1〜4の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又は炭素数1〜4の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基が好ましい。
具体的には、ジアリールアミノ基、アリールヘテロアリールアミノ基、ビス(ヘテロアリールアミノ)基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェノチアジン−10−イル基、5,10−ジヒドロフェナジン−5−イル基、9,10−ジヒドロアクリジン−10−イル基などが挙げられる。これらの基はさらに置換されていてもよい。
HTGの例としては以下のような構造を挙げることができる。
Figure 2018186356
式中、*は遷移金属錯体の配位子部分である環B又は環Cとの、又は連結基Lとの結合部位を表す。
Lは炭素数6〜10のアリーレン基を表し、Lは環B又は環Cに結合しているが、環B又は環Cと共役は連続していない。Lと環B又は環Cの結合部分で共役が連続しないためには、Lと環B又は環Cの結合部分が単結合であり、さらに、この単結結合を挟んでLと環B又は環Cが形成する2面角が30°以上になればよい。具体的には、Lと環B又は環Cの結合部分に隣接する2つのo−位の原子上に置換基を導入すればよい。導入される置換基が多くなるか、嵩高くなることで、前記の2面角はより大きくなる。置換基としては、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
炭素数6〜10のアリーレンとしては、無置換又は置換されていてもよい、フェニレン基、ナフタレン基が挙げられる。置換基としては炭素数1〜4の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又は炭素数1〜4の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基が好ましい。n1は1又は2を表す。n2は1又は2を表す。Lが複数ある場合には、互いに同一であっても良いし異なってもよい。
連結基Lの好ましい例として、連結基LG−1〜LG−12を以下に示す。式中、*は正孔輸送性の部分構造との結合部位を表す。#は遷移金属錯体の配位子部分との結合部位を表す。
Figure 2018186356
式中、*は正孔輸送性の部分構造HTGとの結合部位を表す。#は遷移金属錯体の配位子部分である環B又は環Cとの結合部位を表す。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。8〜10族の遷移金属としては、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、白金などが挙げられるが、イリジウム、パラジウム、白金が好ましく、最も好ましくはイリジウムである。
一般式(1)において、L、Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。L、Lで表されるモノアニオン性の二座配位子の具体例としては、下記式の配位子等が挙げられる。
Figure 2018186356
上記の式中において、Xは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を表す。X及びXは、炭素原子又は窒素原子を表す。各配位子内で複数存在しているX及びXは、互いに同じであっても良いし異なっていても良い。
R′、R″及びR″′は水素原子又は置換基を表し、R′、R″及びR″′で表される置換基の例としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、非芳香族炭化水素環基、シクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、非芳香族複素環基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基、ホスホノ基等が挙げられる。
(1.1.2)一般式(3)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体
一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体の好ましい実施態様の1つは一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(3)で表される部分構造であるリン光発光性の遷移金属錯体である。
Figure 2018186356
一般式(3)において、
環Aは炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。
環Bは、C=Cと共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員もしくは6員の芳香族複素環を表す。
環Cは、N−C=Nと共に形成される5員の芳香族複素環を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
nbは0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは炭素数6〜10の芳香族基を表す。
,L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは4,5,又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。
Ra及びR及びRで表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、非芳香族炭化水素環基(例えば、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、テトラヒドロナフタレン環、9,10−ジヒドロアントラセン環、ビフェニレン環等から導出される1価の基)、非芳香族複素環基(例えば、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε−カプロラクトン環、ε−カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン−1,1−ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、オキサントレン環、チオキサンテン環、フェノキサチイン環等から導出される一価の基)、芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等から導出される一価の基)、芳香族複素環基(例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環等から導出される一価の基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
(1.1.3)一般式(4)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体
一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体のより好ましい実施態様の1つは一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(4)で表される部分構造であるリン光発光性の遷移金属錯体である。
Figure 2018186356
一般式(4)において、
及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
環Cは、N−C=Nと共に形成される5員の芳香族複素環を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
nbは0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは炭素数6〜10の芳香族基を表す。
,L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合ったAr環同士は連結されない。xは4、5又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。
(1.1.4)一般式(5)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体
一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体のさらに好ましい実施態様の1つは一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(5)で表される部分構造であるリン光発光性の遷移金属錯体である。
Figure 2018186356
一般式(5)において、
X1及びX2は、一方が炭素原子を、他方が窒素原子を表す。
及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
nbは0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは炭素数6〜10の芳香族基を表す。
,L、Lは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは4,5,又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
1及びは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。
(1.1.5)一般式(6)で表される部分構造を有するリン光発光性の遷移金属錯体
一般式(1)で表されるリン光発光性の遷移金属錯体のさらに好ましい実施態様のもう1つは一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(6)で表される部分構造であるリン光発光性の遷移金属錯体である。
Figure 2018186356
一般式(6)において、
及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
Rb及びRcは、それぞれ環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
nbは0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
nd及びneは、0又は1を表す。
、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは0又は1を表す。
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは炭素数6〜10の芳香族基を表す。
,L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
m、n及びoは0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは4,5,又は6のいずれかを表す。
p、q及びrは0又は1を表す。1≦p+q+r≦2である。
Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。
本発明に係る青色リン光発光性の遷移金属錯体についてさらに説明する。
(1.1.6)遷移金属錯体の分子軌道計算例
以下に、一般式(1)で表される遷移金属錯体の分子計算の具体例と共に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
ここで、使用する分子軌道計算手法は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian09を用い、キーワードとしてB3LYP/LANL2DZを用いて構造最適化を行うことにより算出した。
(1.1.6.1)計算例−1
計算例1−aの化合物はHOMO〜HOMO−5のいずれの分子軌道も中心金属及び中心金属に直結している芳香族環部分に電子雲が分布している。
一方、計算例1−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてジフェニルアミノ基を置換した化合物である計算例1−bの化合物は、HOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。この軌道のエネルギー準位とHOMOとの準位差の絶対値(以下単に準位差ともいう。)は0.23eVであった。また、この化合物の計算で算出された3重項励起エネルギーは435nmであり、比較となる計算例1−aの化合物のそれとの差は4nmであり波長変化が少ないことが計算結果から推測される。
さらに、計算例1−a及び計算例1−bの化合物を合成して室温での発光波長を測定した結果、それぞれ、計算例1−aの化合物が465nm、計算例1−bの化合物が465nmであり、計算結果以上に波長変化は少ないことを確認した。
同様に、計算例1−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてカルバゾール−9−イル基を置換した化合物である計算例1−cの化合物も、HOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。この軌道の準位とHOMOとの準位差は0.45eVであった。また、この化合物の計算で算出された3重項励起エネルギーは435nmであり、比較となる計算例1−aの化合物のそれとの差は4nmであり波長変化が少ないことが計算結果から推測される。分子計算の結果を以下の表Iにまとめる。
Figure 2018186356
また、計算で算出された分子軌道を示したもの及びイメージ化したものを示す。
計算例1−b、計算例1−cでは、HOMO−3の軌道が1つの正孔輸送性部位の上に分布していることが判る。
下記の分子軌道では、各原子上の実線で仕切られた領域の内部に電子が存在するという計算結果を示している。各領域の内、ドット表記の部分と斜線表記の部分は互いに分子軌道の位相が異なっていること示す。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
(1.1.6.2)計算例−2
計算例2−aの化合物はHOMO〜HOMO−5のいずれの分子軌道も中心金属及び中心金属に直結している芳香族環部分に電子雲が分布している。
一方、計算例2−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてジフェニルアミノ基を置換した化合物である計算例2−bの化合物は、HOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。この軌道の準位とHOMOとの準位差は0.52eVであった。また、この化合物の計算で算出された3重項励起エネルギーは434nmであり、比較となる計算例2−aの化合物のそれとの差は1nmであり波長変化が少ないことが計算結果から推測される。
同様に、計算例2−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてカルバゾール−9−イル基を置換した化合物である計算例2−cの化合物も、HOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。この軌道の準位とHOMOとの準位差は0.63eVであった。また、この化合物の計算で算出された3重項励起エネルギーは435nmであり、比較となる計算例2−aの化合物のそれとの差は2nmであり波長変化が少ないことが計算結果から推測される。分子計算の結果を以下の表IIにまとめる。
Figure 2018186356
また、計算で算出された分子軌道を図示したものは、計算例1同様のものであった。
計算例2の結果はイメージ化した図のみを示す。
計算例2−b、計算例2−cでも、HOMO−3の軌道が1つの正孔輸送性部位の上に分布していることが判った。
Figure 2018186356
(1.1.6.3)計算例−3
計算例3の結果も、計算例1及び計算例2同様の結果となった。正孔輸送性置換基を導入した化合物ではいずれもHOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。分子計算の結果を以下の表IIIにまとめる。
Figure 2018186356
また、計算で算出された分子軌道を図示したものは、計算例1同様のものであった。
計算例3の結果もイメージ化した図のみを示す。計算例3−b、計算例3−cでも、HOMO−3の軌道が1つの正孔輸送性部位の上に分布していることが判った。
Figure 2018186356
(1.1.6.4)計算例−4
計算例4の結果も、計算例1、計算例2及び計算例3同様の結果となった。正孔輸送性置換基を導入した化合物ではいずれもHOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。分子計算の結果を以下の表IVにまとめる。
Figure 2018186356
また、計算で算出された分子軌道を図示したものは、計算例1同様のものであった。
計算例4の結果もイメージ化した図のみを示す。計算例4−b、計算例4−cでも、HOMO−3の軌道が1つの正孔輸送性部位の上に分布していることが判った。
Figure 2018186356
(1.1.6.5)計算例−5
計算例5−aの化合物はHOMO〜HOMO−5のいずれの分子軌道も中心金属及び中心金属に直結している芳香族環部分に電子雲が分布している。
一方、計算例5−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてジフェニルアミノ基を置換した化合物である計算例5−bの化合物は、強い電子吸引性置換基の効果で錯体全体のエネルギー準位が低くなったことによって、HOMO(最も準位の高い結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。計算からは、HOMO−1(HOMOから数えて2番目の結合性軌道)とHOMO−2(HOMOから数えて3番目の結合性軌道)に相当する分子軌道も正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。通常の遷移金属錯体(たとえば計算例5−aの化合物)においてHOMOに相当する電子分布を示す軌道は、HOMO−3であることが計算結果から示された。計算上のHOMOと通常のHOMOに相当するHOMO−3の軌道の準位差は0.31eVであった。また、この化合物の計算で算出された3重項励起エネルギーは427nmであり、比較となる計算例5−aの化合物のそれとの差は−1nmであり波長変化が少ないことが計算結果から推測される。
同様に、計算例5−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてカルバゾール−9−イル基を置換した化合物である計算例5−cの化合物も、強い電子吸引性置換基の効果で錯体全体の準位が低くなったことによって、HOMO(最もエネルギー準位の高い結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。計算からは、HOMO−1(HOMOから数えて2番目の結合性軌道)とHOMO−2(HOMOから数えて3番目の結合性軌道)に相当する分子軌道も正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示された。通常の遷移金属錯体(たとえば計算例5−aの化合物)においてHOMOに相当する電子分布を示す軌道は、HOMO−3であることが計算結果から示された。計算上のHOMOと通常のHOMOに相当するHOMO−3の軌道の準位差は0.18eVであった。また、この化合物の計算で算出された3重項励起エネルギーは428nmであり、比較となる計算例5−aの化合物のそれとの差は0nmであり波長変化が少ないことが計算結果から推測される。分子計算の結果を以下の表Vにまとめる。
Figure 2018186356
また、計算で算出された分子軌道を図示したもの、及びイメージ化した図を示す。
計算例5−b、計算例5−cでは、HOMO、HOMO−1及びHOMO−2の軌道がそれぞれ異なる1つの正孔輸送性部位の上に分布していることが判る。また、HOMO−3の軌道が通常のHOMOに相当する電子の分布を示すことが判った。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
(1.1.6.6)計算例−比較1
計算例5の比較として計算例5−aの化合物に正孔輸送性ではない芳香族環を置換した化合物である計算例−比較1は、計算例5−aの化合物と同様にHOMO〜HOMO−5のいずれの分子軌道も中心金属及び中心金属に直結している芳香族環部分に電子雲が分布していることが計算結果から示された。計算で算出された分子軌道の結果はイメージ化した図のみを示す。
Figure 2018186356
(1.1.6.7)計算例−比較2
計算例1〜5に対する比較として、電子吸引性基を配位子の芳香族環上の置換基として有さない遷移金属の分子軌道計算を行った。
計算例−比較2−aの化合物はHOMO〜HOMO−5のいずれの分子軌道も中心金属及び中心金属に直結している芳香族環部分に電子雲が分布している。
一方、計算例−比較2−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてジフェニルアミノ基を置換した化合物である計算例−比較2−bの化合物は、HOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示されたが、この軌道の準位とHOMOとの準位差は0.92eVであり、本発明の遷移金属錯体と比較すると準位差が大きいことが判る。
同様に、計算例−比較2−aの化合物に正孔輸送性の部分構造としてカルバゾール−9−イル基を置換した化合物である計算例−比較2−cの化合物も、HOMO−3(HOMOから数えて4番目の結合性軌道)に相当する分子軌道が正孔輸送部位(HTG)上に分布することが計算結果から示されたが、この軌道の準位とHOMOとの準位差は1.12eVであり、本発明の遷移金属錯体と比較して準位差が大きいことが判る。
分子計算の結果を以下の表VIにまとめる。
Figure 2018186356
計算で算出された分子軌道の結果はイメージ化した図のみを示す。
Figure 2018186356
以上の計算例から、本発明の遷移金属錯体に共通する特性が、分子軌道計算によって検証できることが判る。
すなわち、リン光発光性の遷移金属錯体が、中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有し、かつ、(1)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有しており、及び(2)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性部分構造を有する場合に、前記遷移金属錯体は、分子軌道計算での評価において、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つは、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満であることが、共通する特性として確認できることが判った。
また、同時に前記遷移金属錯体と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体のそれぞれについて分子軌道計算で算出される発光極大波長の差の絶対値が、10nm以下であることも、共通する特性として確認できることが判った。
本発明に係る青色リン光発光性の遷移金属錯体についてさらに説明する。
(1.1.7)青色リン光発光性の遷移金属錯体の具体例
以下に、一般式(1)で表される遷移金属錯体の具体例をそれぞれ記載するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の一般式(DP−A)〜一般式(DP−Y)で表される構造を有する例示化合物中、金属錯体に直接結合する芳香族環のうち、上部が、一般式(2)及び一般式(3)に記載の環C、下部が環Bを表している。
及びRは、一般式(3)〜一般式(6)に記載のR及びRと同義であり、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。
101、Q102、Q103、Q201、Q202、Q203、Q301、Q302、Q401、Q402、Q403及びQ404は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基は、一般式(3)〜一般式(6)に記載のRa、Ra、Ra、Rb、Rb、Rb、Rc、Rc、Rd、Rd、Rd及びRdに記載した置換基及び本発明に係る正孔輸送性部分構造が含まれる。
環B又は環Cの少なくとも一つは、電子吸引性基を有する。そして、環B又は環C少なくとも1つは、正孔輸送性部分構造HTG−1〜HTG−15のいずれかと結合している。このとき連結基LG−1〜LG−12のいずれかを介して結合していても良い。
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化合物例における正孔輸送性部分構造HTG−1〜HTG−15と連結基LG−1〜LG−12は、前記した構造のものである。
前記の化合物例における配位子AL−1〜AL−24は、以下に示す構造である。
式中、*は遷移金属との結合部位を表す。
Figure 2018186356
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これらの金属錯体は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、Organic Letter誌、vol8、No.3、415〜418頁(2006)、更にこれらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
以下に、代表的な化合物の合成例を示す。
・錯体 DP−A1の合成
1.中間体C−1の合成
以下の反応スキームに沿って、3−臭化安息香酸と1.5当量の塩化チオニルを混合し、還流温度で3時間反応させた後、過剰の塩化チオニルを減圧濃縮で溜去し、3−臭化安息香酸塩化物とした。次いで、1.2当量の2−クロロエチルアミン塩酸、3.0当量のトリエチルアミンを塩化メチレン中、室温で1時間撹拌した中に前記の3−臭化安息香酸塩化物を添加し、さらに室温で5時間反応させ、中間体A−1を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は72%だった。なお、反応スキーム中、RTは室温を表し、yは単離収率を表す。
次いで、1当量の中間体A−1と1.5当量の五塩化リンをキシレン中で加熱還流下に3時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後、1.5当量の4−ヨード−2,6−ジメチルアニリンを添加し、再び加熱し還流温度で10時間反応し、中間体B−1を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は80%だった。
次いで、この中間体B−1を20倍量の塩化メチレン:アセトニトリル混合溶媒(1:1)に溶解し、この溶液を撹拌している中に、2.0当量の過マンガン酸カリウムと同重量のK−10 crayを乳鉢で細かく砕いたものを少しずつ添加した。添加終了後、室温で4時間反応させ、中間体C−1とした。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は65%だった。
Figure 2018186356
2.中間体D−1の合成
以下の反応スキームに沿って、1当量の中間体C−1と1.5当量のビス−トリルアミン、2モル%のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、1.8当量のナトリウム−tert−ブトキシドをトルエン−水混合溶媒中、還流温度で10時間反応し、中間体D−1を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は85%だった。
Figure 2018186356
3.配位子L−1の合成
以下の反応スキームに沿って、1当量の中間体D−1と2.5当量のN−臭化コハク酸イミドを10倍量のジメチルホルムアミド中、50℃で4時間反応させ、中間体E−1とした。反応液は、水と酢酸エチルで希釈後に3回水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮した。得られた中間体E−1の粗製物を10倍量の脱水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、窒素雰囲気化に−78℃まで冷却した。ここに1.1当量分のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を滴下し、さらに冷却下に3時間反応した。その後、冷却下に、過剰の水を添加し反応を停止させた。そのまま室温まで昇温させた後、反応液を飽和食塩水で洗浄した。その後、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮し、配位子L−1を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は68%だった。
Figure 2018186356
・中間体F−1の合成
Figure 2018186356
窒素雰囲気下で配位子L−1 1.20g(2.0ミリモル;4.0当量)及び酢酸イリジウム 0.18g(0.50ミリモル;1.0当量)をエチレングリコール30mlに懸濁させた。そのまま加熱を始め、窒素雰囲気下に160℃で5時間反応させた。反応液を冷却し、メタノール30mlを加え、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を更にメタノールで洗浄し、乾燥後収量620mgの粗生成物を得た。この粗生成物をシカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−テトラヒドロフラン=10:1〜4:1)及びGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって精製し540mg(収率54%)の中間体F−1を得た。
・錯体DP−A1の合成
Figure 2018186356
窒素雰囲気下で中間体F−1 540mg(0.27ミリモル)及び、シアン化亜鉛 0.95g(8.1ミリモル;10.0当量)、亜鉛粉 0.59g(9ミリモル;11.0当量)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) 0.16g(0.28ミリモル、1.0当量)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン 0.27g(1.35ミリモル、5.0当量)をジメチルアセトアミド20mlに懸濁させた。そのまま加熱を始め、窒素雰囲気下に150℃で30時間反応させた。反応液を、水と酢酸エチルで希釈後に3回水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮した。得られた粗生成物をシカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−テトラヒドロフラン=10:1〜4:1)及びGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって精製し158mg(収率35%)の錯体DP−A1を得た。
精製した化合物が目的物であることをMASS、1H−NMRにより確認した。
日立製作所製F−4500を用いて測定した例示化合物DP−A1の溶液におけるPL発光極大波長は、
450nm(T=77K、2−メチルテトラヒドロフラン中)、456nm(室温、塩化メチレン中)
であった。
・錯体 DP−A162の合成
1.中間体A−2の合成
以下の反応スキームに沿って、1当量の4−ブロモ−2,6−ジイソプロピルアニリンと1.5当量のビス−(4−イソプロピルフェニル)アミン、2モル%のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、1.8当量のナトリウム−tert−ブトキシドをトルエン−水混合溶媒中、還流温度で10時間反応し、中間体A−2を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は85%だった。
Figure 2018186356
2.配位子L−2、L−3の合成
以下の反応スキームに沿って、窒素雰囲気下に中間体A−2と1.1当量のn−ブチルリチウムをエーテル中で反応させた。次いでその中に、1.05当量の3−ブロモベンゾニトリルのエーテル溶液を滴下し、さらに室温で3時間反応させた。反応液に水を加え反応を停止した後、3回水洗を行った。硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮した。得られた粗生成物からシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製によって、中間体B−2を得た。単離収率は72%だった。
次いで、1当量の中間体B−2と2.2当量の3−ブロモ−1,1,1−トリフルオロプロパン−2−オン、2.0当量の炭酸水素ナトリウムをイソプロピルアルコール中に溶解し、加熱還流下に3時間反応させた。反応液を濃縮し、中間体C−2の粗製物を得た。
シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は70%だった。
次いで、この中間体C−2を20倍量のトルエンに溶解し、0.5当量のp−トルエンスルホン酸を加えた後、加熱還流下に8時間反応させた。反応液を水酸化ナトリウムで中和後に3回水洗した後、濃縮し、配位子L−2の粗製物を得た。
シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜2:1)による精製後の単離収率は65%だった。
中間体B−2、C−2と同様の反応によって、3−ブロモベンゾニトリルと2,6−ジイソプロピルアニリンから、中間体D−2、E−2を経由して配位子L−3を合成した。中間体D−2の単離収率は80%、中間体E−2の単離収率は76%、配位子L−3の単離収率は70%だった。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
3.中間体F−2の合成
Figure 2018186356
窒素雰囲気下で配位子L−2 0.70g(1.0ミリモル;2.0当量)、配位子L−3 0.45g(1.0ミリモル;2.0当量)及び酢酸イリジウム 0.18g(0.50ミリモル;1.0当量)をエチレングリコール30mlに懸濁させた。そのまま加熱を始め、窒素雰囲気下に160℃で5時間反応させた。反応液を冷却し、メタノール30mlを加え、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を更にメタノールで洗浄し、乾燥後収量720mgの粗生成物を得た。この粗生成物をシカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−テトラヒドロフラン=10:1〜4:1)及びGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって精製し480mg(収率42%)の中間体F−2を得た。
・錯体DP−A162の合成
Figure 2018186356
窒素雰囲気下で中間体F−2 480mg(0.20ミリモル)及び、シアン化亜鉛 0.70g(6.0ミリモル;30.0当量)、亜鉛粉 0.43g(6.6ミリモル;33.0当量)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0) 0.115g(0.20ミリモル、1.0当量)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン 0.202g(1.0ミリモル、5.0当量)をジメチルアセトアミド20mlに懸濁させた。そのまま加熱を始め、窒素雰囲気下に150℃で30時間反応させた。反応液を、水と酢酸エチルで希釈後に3回水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮した。得られた粗生成物をシカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−テトラヒドロフラン=10:1〜4:1)及びGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって精製し192mg(収率45%)の錯体DP−A162を得た。
精製した化合物が目的物であることをMASS、H−NMRにより確認した。
日立製作所製F−4500を用いて測定した例示化合物DP−A162の溶液におけるPL発光極大波長は、448nm(T=77K、2−メチルテトラヒドロフラン中)、454nm(室温、塩化メチレン中)であった。
本発明のその他の化合物も上記の合成例と同様に、適切な原料、反応を用いることで収率良く合成することができる。
本発明のその他の化合物も上記の合成例と同様に、適切な原料、反応を用いることで収率良く合成することができる。
(1.2)蛍光ドーパント
蛍光ドーパント(蛍光性化合物ともいう)としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等や、レーザー色素に代表される蛍光量子収率が高い化合物が挙げられる。
(1.3)従来公知の発光ドーパントとの併用
また本発明に係る発光ドーパントは、複数種の化合物を併用して用いてもよく、構造の異なるリン光ドーパント同士の組み合わせや、リン光ドーパントと蛍光ドーパントを組み合わせて用いてもよい。併用するリン光ドーパント及び蛍光ドーパントとして、公知のものを用いることができる。
(2)ホスト材料
本発明においてホスト材料(ホスト化合物ともいう)は、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
本発明に用いることができるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有 機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、又は、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも1つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
本発明に用いることができる公知のホスト化合物としては正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
また、本発明においては、従来公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、前記リン光ドーパントとして用いられる本発明の金属錯体及び/又は従来公知の化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。また、本発明に用いられるホスト化合物としては、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(重合性ホスト化合物)でもよく、このような化合物を一種又は複数種用いても良い。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物が挙げられる。特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
次に、本発明の有機EL素子の構成層として好ましく用いられる、注入層、阻止層、電子輸送層等について説明する。
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体層等が挙げられる。
また、特表2003−519432や特開2006−135145等に記載されているようなアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔注入材料として用いることができる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその厚さは0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係わる正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
正孔阻止層には、前述のホスト化合物として挙げたカルバゾール誘導体、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体(カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭素原子のいずれかひとつが窒素原子で置き換わったものを示す)を含有することが好ましい。
また、本発明においては、複数の発光色の異なる複数の発光層を有する場合、その発光極大波長が最も短波にある発光層が、全発光層中、最も陽極に近いことが好ましいが、このような場合、該最短波層と該層の次に陽極に近い発光層との間に正孔阻止層を追加して設けることが好ましい。更には、該位置に設けられる正孔阻止層に含有される化合物の50質量%以上が、前記最短波発光層のホスト化合物に対しそのイオン化ポテンシャルが0.3eV以上大きいことが好ましい。
イオン化ポテンシャルは化合物のHOMO(最高被占分子軌道)準位にある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、例えば下記に示すような方法により求めることができる。
(1)米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian09を用い、キーワードとしてB3LYP/6−31G*を用いて構造最適化を行うことにより算出した値(eV単位換算値)の小数点第2位を四捨五入した値としてイオン化ポテンシャルを求めることができる。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
(2)イオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接測定する方法により求めることもできる。例えば、理研計器社製の低エネルギー電子分光装置「Model AC−1」を用いて、又は紫外光電子分光として知られている方法を好適に用いることができる。
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層、電子輸送層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。また、特表2003−519432や特開2006−135145号公報等に記載されているようなアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。また、銅フタロシアニンやトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるシクロメタル化錯体やオルトメタル化錯体等も正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、所謂p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることからこれらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の厚さについては特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなp性の高い正孔輸送層を用いることが、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
従来、単層の電子輸送層及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して、単独又は組み合わせて用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の厚さについては特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
又は、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に厚さは材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
一方、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《支持基板》
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、ポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)又はアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。
ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
《封止》
本発明に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。
更には、ポリマーフィルムは、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
《保護膜、保護板》
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜、又は前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために保護膜、若しくは保護板を設けてもよい。特に封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量且つ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
《光取り出し》
有機EL素子は空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等がある。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、又は基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明はこれらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度又は耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また、更に1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚さは媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む厚さになると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面、若しくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は回折格子が1次の回折や2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては前述の通り、いずれかの層間若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。
このとき、回折格子の周期は媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。
回折格子の配列は正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
《集光シート》
本発明の有機EL素子は基板の光取り出し側に、例えば、マイクロレンズアレイ状の構造を設けるように加工したり、又は所謂集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば、素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば、液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして、例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば、基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
また、発光素子からの光放射角を制御するために、光拡散板・フィルムを集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることができる。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子の作製法を説明する。
まず適当な基体上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの厚さになるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陽極を作製する。
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層等の有機化合物薄膜を形成させる。
これら各層の形成方法としては、前記の如く蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、本発明においてはスピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。特に、本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を含有した有機層は、ウェットプロセスを経て形成されることが上記の理由で好ましい。
本発明に係る有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは、50〜200nmの範囲の厚さになるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
また作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
《用途》
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
また、本発明の有機EL素子が白色素子の場合には、白色とは、2度視野角正面輝度を上記方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE 1931表色系における色度がx=0.33±0.07、y=0.33±0.1の領域内にあることを言う。
《表示装置》
本発明の表示装置について説明する。本発明の表示装置は上記有機EL素子を有する。
本発明の表示装置は、単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においては、シャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
また作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス、ディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
発光光源としては、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これに限定するものではない。
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
ディスプレイ1は複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。制御部Bは表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図2は表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。図2においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示していない)。
画素3は走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図3は画素の回路図である。
画素は有機EL素子10、スイッチングトランジスター11、駆動トランジスター12、コンデンサー13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスター11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスター11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスター11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサー13と駆動トランジスター12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサー13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスター12の駆動がオンする。駆動トランジスター12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスター11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスター11の駆動がオフしてもコンデンサー13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスター12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスター12が駆動して有機EL素子10が発光する。
即ち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスター11と駆動トランジスター12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子10の発光は複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。また、コンデンサー13の電位の保持は次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図4はパッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
《照明装置》
本発明の照明装置について説明する。本発明の照明装置は上記有機EL素子を有する。
本発明の有機EL素子は照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
また本発明の有機EL材料は照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光又は蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光又はリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよいが、本発明に係る白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせ混合するだけでよい。
発光層若しくは正孔輸送層又は電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよく、他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で例えば電極膜を形成でき、生産性も向上する。この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が発光白色である。
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係る金属錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
このように、本発明に係る白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また露光光源のような一種のランプとして、また液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、更には表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられる。
《本発明の照明装置の一態様》
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図5、図6に示すような照明装置を形成することができる。
図5は、照明装置の概略図を示している。図5に示すとおり、有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている。
ガラスカバー102での封止作業は、好ましくは、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行われる。
図6は、照明装置の断面図を示している。図6に示すとおり、照明装置は主に陰極105、有機EL層106及び透明電極付きガラス基板107で構成され、これら部材がガラスカバー102で覆われている。
ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
《遷移金属錯体》
本発明の遷移金属錯体は前述した有機エレクトロルミネッセンス素子に、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として好ましく用いることができる。また、本発明のリン光発光性の遷移金属錯体を含有する組成物は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料組成物として好ましく用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例において用いられる化合物の構造を下記に示す。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
〔実施例1〕
〈蒸着型青色発光有機EL素子〉
《青色発光有機EL素子1−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに正孔注入材料1を200mg入れ、別のモリブデン抵抗加熱ボートに正孔輸送材料1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物(OC−11)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(比較化合物1)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料1を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料2を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
次いで真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔注入材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、透明支持基板に蒸着し厚さ20nmの正孔注入層を設けた。
更に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、厚さ20nmの正孔輸送層を設けた。
更に、ホスト化合物(OC−11)と発光ドーパント(比較化合物1)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.035nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ40nmの発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
更に、電子輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
その上に、更に、電子輸送材料2の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して更に厚さ20nmの電子輸送層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子1−1を作製した。なお以下の表では、有機EL素子をELと略記し、例えば有機EL素子1−1をEL1−1と表記した。
《有機EL素子1−2〜1−75の作製》
有機EL素子1−1の作製において、正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト化合物及び発光ドーパント(以下の表ではドーパントと略記した。)のみを表VII〜IXに示す化合物
に置き換えた以外は有機EL素子1−1と同様にして、有機EL素子1−2〜1−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子1−1〜1−75を評価するに際しては、作製後の各有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを上記陰極上に重ねて前記透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図5及び図6に示すような照明装置を形成して評価した。
図5は照明装置の概略図を示している。有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバー102での封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った)。
図6は照明装置の断面図を示している。照明装置の内部には、陽極としての透明電極付きガラス基板107、有機EL層106及び陰極105がこの順に積層されている。ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
(1)外部取り出し量子効率
各有機EL素子を室温(25℃)、初期輝度2000cd/m、及び4000cd/m(以下の表ではそれぞれ、輝度A、輝度Bとして示した。)を与える電流で定電流駆動して、点灯開始直後の駆動電流[mA]を測定することにより、発光効率の評価尺度として外部取り出し量子効率(η)を算出した。ここで、発光輝度の測定はCS−1000(コニカミノルタ(株)製)を用いた。
外部取り出し量子収率はいずれも、初期輝度2000cd/mにおける有機EL素子1−1を基準(100)とした相対値で示した。
(2)駆動電圧
各有機EL素子を室温(25℃)、初期輝度2000cd/m、及び4000cd/mを与える電流で定電流駆動して、点灯開始直後の駆動電流[mA]を測定することにより、駆動電圧を測定した。ここで、発光輝度の測定はCS−1000(コニカミノルタ(株)製)を用いた。
駆動電圧はいずれも、初期輝度2000cd/mにおける有機EL素子1−1を基準(100)とした相対値で示した。
駆動電圧={(各素子の駆動電圧/有機EL素子1−1の駆動電圧(初期輝度2000cd/m))}×100
値が小さいほうが比較に対して駆動電圧が低いことを示す。
(3)駆動電圧上昇率
10mA/cmの一定電流で駆動したときに、初期電圧と200時間後の電圧を測定した。初期電圧に対する200時間後の電圧の上昇を百分率で表示し駆動電圧上昇率とした。
駆動電圧上昇率(%)={[(各有機EL素子の駆動200時間後の駆動電圧/V)−(各有機EL素子の初期駆動電圧/V)]/(各有機EL素子の初期駆動電圧/V)}×100
(4)半減発光寿命(25℃)
下記に示す測定法に従って、半減発光寿命の評価を行った。
各有機EL素子を25℃及び70℃の高温槽内で、初期輝度2000cd/mを与える電流で定電流駆動して、初期輝度の1/2(1000cd/m)になる時間を求め、これを半減発光寿命の尺度とした。
半減発光寿命は、25℃において得られた有機EL素子1−1の半減発光寿命を基準(100)と設定する相対値で表した。
(5)初期劣化
下記に示す測定法に従って、初期劣化の評価を行った。
前記25℃での半減発光寿命の測定時に、各有機EL素子の発光輝度が初期輝度の90%(1800cd/m)に到達する時間を測定し、これを初期劣化の尺度とした。
初期劣化は、有機EL素子1−1の半減発光寿命を基準(100)と設定する相対値で表した。
初期劣化は以下の計算式を基に計算した。
初期劣化={(有機EL素子1−1の輝度90%到達時間(hr))/(各有機EL素子の輝度90%到達時間(hr))}×100
すなわち、初期劣化の値は、小さいほど初期の劣化が小さいことを示す。
《発光色度の測定》
各有機EL素子について、発光色を観察し、すべて青色を呈することを目視で確認した。さらに、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で、1000cd/mでの2度視野角正面輝度を測定し、CIE色度座標(CIE 1931表色系)における色度(x、y)を求めた。
以上の評価結果を表VII〜IXに示す。なお、以下の表では、初期輝度2000cd/m
を輝度A、及び初期4000cd/mを輝度Bとして示した。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
表VII〜IX、から、比較の有機EL素子1−1〜1−6に比べて、本発明の有機EL素
子1−7〜1−75は、外部取り出し量子効率が高く、かつ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
さらに、駆動電圧の上昇も抑えられていることもわかる。
かかる結果から、少なくとも発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、青色発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
〔実施例2〕
〈ウェットプロセス型青色発光素子〉
《青色発光有機EL素子2−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、200℃にて1時間乾燥し、厚さ30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を窒素雰囲気下に移し、前記第1正孔輸送層上に、50mgの正孔輸送材料3を10mlのトルエンに溶解した溶液を1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜した。更に180秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行った後、60℃で1時間真空乾燥し第2正孔輸送層とした。
この第2正孔輸送層上に、100mgのホスト化合物(ホスト材料1)と15mgの発光ドーパント(比較化合物1)とを10mlの酢酸ブチルに溶解した溶液を用いて600rpm、30秒の条件下、スピンコート法により薄膜を形成した。更に60℃で1時間真空乾燥し、厚さ約70nmの発光層とした。
次に、この発光層上に、50mgの電子輸送材料3を10mlのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した溶液を用いて1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により薄膜を形成した。更に60℃で1時間真空乾燥し、厚さ約30nmの電子輸送層とした。
続いて、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、陰極バッファー層としてフッ化カリウム0.4nmを蒸着し、更にアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子2−1を作製した。
《有機EL素子2−2〜2−75の作製》
有機EL素子2−1の作製において、ホスト化合物及び発光ドーパントのみを表X〜XIIに示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子2−1同様にして、有機EL素子2−2〜2−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子2−1〜2−75について、実施例1と同様の手法及び基準で、素子の性能を評価した。
なお、本実施例では、(1)外部取り出し量子効率、(2)駆動電圧、(4)半減発光寿命及び(5)初期劣化の各評価では、有機EL素子2−1を基準として実施例1と同様にして相対値を求めた。
評価結果を表X〜XIIに示す。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
表X〜XIIから、比較の有機EL素子2−1〜2−6に比べて、本発明の有機EL素子2−7〜2−75は、外部取り出し量子効率が高く、且つ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
さらに、本発明の有機EL素子2−7〜2−75は駆動電圧の上昇も抑えられていることもわかる。
かかる結果から、発光層をスピンコート法によるウェットプロセスで形成する場合も、発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、青色発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
〔実施例3〕
〈蒸着型白色発光素子−1〉
《白色発光有機EL素子の3−1作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに正孔注入材料1を200mg入れ、別のモリブデン抵抗加熱ボートに正孔輸送材料1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物(OC−11)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(比較化合物1)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(D−6)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料1を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料2を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
次いで真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔注入材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、透明支持基板に蒸着し厚さ20nmの正孔注入層を設けた。
更に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、厚さ20nmの正孔輸送層を設けた。
更に、ホスト化合物(OC−11)と発光ドーパント(比較化合物1)と発光ドーパント(D−6)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.022nm/秒、0.0010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ40nmの発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
更に、電子輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
その上に、更に、電子輸送材料2の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して更に厚さ20nmの電子輸送層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子3−1を作製した。
《有機EL素3−2〜3−75の作製》
有機EL素子3−1の作製において、正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト化合物、及び発光ドーパントのうち比較化合物1のみを表XIII〜XVに示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子3−1と同様にして、有機EL素子3−2〜3−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子3−1〜3−75について、実施例1と同様の手法及び基準で、素子の性能を評価した。
なお、本実施例では、(1)外部取り出し量子効率、(2)駆動電圧、(4)半減発光寿命及び(5)初期劣化の各評価では、有機EL素子3−1を基準として実施例1と同様にして相対値を求めた。
評価結果を表XIII〜XVに示す。
なお、本発に係る有機EL素子は、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で、1000cd/mでの2度視野角正面輝度を測定した結果、CIE色度座標(CIE 1931表色系)における色度がx=0.33±0.07、y=0.33±0.1の領域内にあり、白色に発光することを確認した。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
表XIII〜XVから、比較の有機EL素子3−1〜3−6に比べて、本発明の有機EL素子3−7〜3−75は、外部取り出し量子効率が高く、且つ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
さらに、本発明の有機EL素子3−7〜3−75は、駆動電圧の上昇も抑えられていることもわかる。
かかる結果から、2種の発光ドーパントで単層の発光層を形成し白色発光させる場合も、発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
〔実施例4〕
〈蒸着型白色発光素子−2〉
《白色発光素子4−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに正孔注入材料1を200mg入れ、別のモリブデン抵抗加熱ボートに正孔輸送材料1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物(OC−11)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(比較化合物1)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(D−3)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(D−6)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料1を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料2を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
次いで真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔注入材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、透明支持基板に蒸着し厚さ20nmの正孔注入層を設けた。
更に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、厚さ20nmの正孔輸送層を設けた。
更に、ホスト化合物(OC−11)と発光ドーパント(比較化合物1)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.035nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ20nmの青色発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
更に、ホスト化合物(OC−11)と発光ドーパント(D−3)と発光ドーパント(D−6)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.010nm/秒、0.0010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ20nmの黄色発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
更に、電子輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
その上に、更に、電子輸送材料2の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して更に厚さ20nmの電子輸送層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子4−1を作製した。
《有機EL素4−2〜4−75の作製》
有機EL素子4−1の作製において、正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト化合物、及び発光ドーパントのうち比較化合物1のみを表XVI〜XVIIIに示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子4−1と同様にして、有機EL素子4−2〜4−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子4−1〜4−75について、実施例1と同様の手法及び基準で、素子の性能を評価した。
なお、本実施例では、(1)外部取り出し量子効率、(2)駆動電圧、(4)半減発光寿命及び(5)初期劣化の各評価では、有機EL素子4−1を基準として実施例1と同様にして相対値を求めた。
評価結果を表XVI〜XVIIIに示す。
なお、本発明に係る有機EL素子は、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で、1000cd/mでの2度視野角正面輝度を測定した結果、CIE色度座標(CIE 1931表色系)における色度がx=0.33±0.07、y=0.33±0.1の領域内にあり、白色に発光することを確認した。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
表XVI〜XVIIIから、比較の有機EL素子4−1〜4−6に比べて、本発明の有機EL素子4−7〜4−75は、外部取り出し量子効率が高く、且つ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
さらに、本発明の有機EL素子4−7〜4−75は、駆動電圧の上昇も抑えられていることもわかる。
かかる結果から、同一のホスト化合物と3種の発光ドーパントとで2層の発光層を形成し白色発光させる場合も、発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
〔実施例5〕
〈蒸着型白色発光素子−3〉
《白色発光素子5−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに正孔注入材料1を200mg入れ、別のモリブデン抵抗加熱ボートに正孔輸送材料1を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物1(OC−11)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物2(OC−6)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(比較化合物1)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(D−3)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに発光ドーパント(D−6)を100mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料1を200mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートに電子輸送材料2を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
次いで真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔注入材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、透明支持基板に蒸着し厚さ20nmの正孔注入層を設けた。
更に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、正孔輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、厚さ20nmの正孔輸送層を設けた。
更に、ホスト化合物(OC−11)と発光ドーパント(比較化合物1)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.035nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ20nmの青色発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
更に、ホスト化合物(OC−6)と発光ドーパント(D−3)と発光ドーパント(D−6)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.010nm/秒、0.0010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して、厚さ20nmの黄色発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
更に、電子輸送材料1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して厚さ10nmの正孔阻止層を設けた。
その上に、更に、電子輸送材料2の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して更に厚さ20nmの電子輸送層を設けた。尚、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子5−1を作製した。
《有機EL素5−2〜5−75の作製》
有機EL素子5−1の作製において、正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト化合物1(OC−11)、ホスト化合物2(OC−6)、及び発光ドーパントのうち比較化合物1のみを表XIX〜XXIに示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子5−1と同様にして、有機EL素子5−2〜5−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子5−1〜5−75について、実施例1と同様の手法及び基準で、素子の性能を評価した。
なお、本実施例では、(1)外部取り出し量子効率、(2)駆動電圧、(4)半減発光寿命及び(5)初期劣化の各評価では、有機EL素子5−1を基準として実施例1と同様にして相対値を求めた。
評価結果を表XIX〜XXIに示す。
なお、本発明に係る有機EL素子は、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で、1000cd/mでの2度視野角正面輝度を測定した結果、CIE色度座標(CIE 1931表色系)における色度がx=0.33±0.07、y=0.33±0.1の領域内にあり、白色に発光することを確認した。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
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表XIX〜XXIから、比較の有機EL素子5−1〜5−6に比べて、本発明の有機EL素子5−7〜5−75は、外部取り出し量子効率が高く、且つ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
さらに、本発明の有機EL素子5−7〜5−75は、駆動電圧の上昇も抑えられていることもわかる。
かかる結果から、互いに異なる2種のホスト化合物と3種の発光ドーパントとで2層の発光層を形成し白色発光させる場合も、発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
〔実施例6〕
〈ウェットプロセス型白色発光素子−1〉
《白色発光有機EL素子6−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、200℃にて1時間乾燥し、厚さ30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を窒素雰囲気下に移し、第1正孔輸送層上に、50mgの正孔輸送材料3を10mlのトルエンに溶解した溶液を1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜した。180秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行った後、60℃で1時間真空乾燥し第2正孔輸送層とした。
この第2正孔輸送層上に、100mgのホスト化合物(OC−11)、14mgの発光ドーパント(比較化合物1)と1mgの発光ドーパント(D−13)と0.5mgの発光ドーパント(D−6)とを10mlのトルエンに溶解した溶液を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜し、発光層を形成した。更に60℃で1時間真空乾燥し、厚さ約70nmの発光層とした。
次に、この発光層上に、50mgの電子輸送材料3を10mlのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した溶液を用いて1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により薄膜を形成した。更に60℃で1時間真空乾燥し、厚さ約30nmの電子輸送層とした。
続いて、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、陰極バッファー層としてフッ化カリウム0.4nmを蒸着し、更にアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子6−1を作製した。
なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
《有機EL素子6−2〜6−75の作製》
有機EL素子6−1の作製において、ホスト化合物、及び発光ドーパントのうち比較化合物1のみを表XXII〜XXIVに示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子6−1と同様にして、有機EL素子6−2〜6−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子6−1〜6−75について、実施例1と同様の手法及び基準で、素子の性能を評価した。
なお、本実施例では、(1)外部取り出し量子効率、(2)駆動電圧、(4)半減発光寿命及び(5)初期劣化の各評価では、有機EL素子6−1を基準として実施例1と同様にして相対値を求めた。
評価結果を表XXII〜XXIVに示す。
なお、本発明に係る有機EL素子は、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で、1000cd/mでの2度視野角正面輝度を測定した結果、CIE色度座標(CIE 1931表色系)における色度がx=0.33±0.07、y=0.33±0.1の領域内にあり、白色に発光することを確認した。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
表XXII〜XXIVから、比較の有機EL素子6−1〜6−6に比べて、本発明の有機EL素子6−7〜6−75は、外部取り出し量子効率が高く、且つ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
かかる結果から、3種の発光ドーパントを用いて発光層をスピンコート法によるウェットプロセスで形成し白色発光させる場合も、発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
〔実施例7〕
〈ウェットプロセス型白色発光素子−2〉
《白色発光有機EL素子7−1の作製》
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムスズ酸化物)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、200℃にて1時間乾燥し、厚さ30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を窒素雰囲気下に移し、第1正孔輸送層上に、50mgの正孔輸送材料3を10mlのトルエンに溶解した溶液を1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜した。180秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行った後、60℃で1時間真空乾燥し第2正孔輸送層とした。
この第2正孔輸送層上に、100mgのホスト化合物(ホスト材料1)、14mgのドーパント(比較化合物1)と1mgのドーパント(D−33)と0.5mgのドーパント(Ir−14)とを10mlの酢酸ブチルに溶解した溶液を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜し、発光層を形成した。15秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行わせ、更に60℃で1時間真空乾燥し、厚さ約70nmの発光層とした。
次に、この発光層上に、50mgの電子輸送材料4を10mlのメタノールに溶解した溶液を用いて1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により薄膜を形成した。60秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行った後、更に60℃で1時間真空乾燥し、厚さ約30nmの電子輸送層とした。
続いて、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、陰極バッファー層としてフッ化カリウム0.4nmを蒸着し、更にアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子7−1を作製した。
なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
《有機EL素子7−2〜7−75の作製》
有機EL素子7−1の作製において、ホスト化合物、及びドーパントのうち比較化合物1のみを表XXV〜XXVIIに示す化合物に置き換えた以外は有機EL素子7−1と同様にして、有機EL素子7−2〜7−75を作製した。
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子7−1〜7−75について、実施例1と同様の手法及び基準で、素子の性能を評価した。
なお、本実施例では、(1)外部取り出し量子効率、(2)駆動電圧、(4)半減発光寿命及び(5)初期劣化の各評価では、有機EL素子7−1を基準として実施例1と同様にして相対値を求めた。
評価結果を表XXV〜XXVIIに示す。
なお、本発明に係る有機EL素子は、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で、1000cd/mでの2度視野角正面輝度を測定した結果、CIE色度座標(CIE 1931表色系)における色度がx=0.33±0.07、y=0.33±0.1の領域内にあり、白色に発光することを確認した。
Figure 2018186356
Figure 2018186356
Figure 2018186356
表XXV〜XXVIIから、比較の有機EL素子7−1〜7−6に比べて、本発明の有機EL素子7−7〜7−75は、外部取り出し量子効率が高く、且つ、初期の輝度劣化が少なく、それに伴って室温でも高温度でも長寿命であることがわかる。
さらに、本発明の有機EL素子7−7〜7−75は、駆動電圧の上昇も抑えられていることもわかる。
かかる結果から、3種のドーパントを用いて発光層をスピンコート法によるウェットプロセスで形成し光反応によって硬化させて作製した白色発光素子においても、発光効率の向上や駆動電圧の低減、発光寿命の向上を図るうえでは、発光ドーパントとして本発明に係るリン光発光性の遷移金属錯体を使用することが有用であることがわかる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、青色リン光素子として十分に短波な発光を有しながら、発光効率が高く、駆動電圧が低く、耐久性に優れており、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスター
12 駆動トランジスター
13 コンデンサー
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部

Claims (25)

  1. 発光層を含む有機層の少なくとも1層に、リン光発光性の遷移金属錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記遷移金属錯体が、中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有し、かつ下記要件(1)及び(2)を満足することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    (1)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有する。
    (2)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性部分構造を有する。
  2. 前記遷移金属錯体が、分子軌道計算での評価において、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つは、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記遷移金属錯体と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体のそれぞれについて分子軌道計算で算出される発光極大波長の差の絶対値が、10nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造が、それぞれ、無置換又は置換されていてもよい、ジアリールアミノ基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェニチアジン−10−イル基、ジヒドロフェナジン−5−イル基及びジヒドロアクリジン−10−イル基から選ばれることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、アゾール環であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、イミダゾール環又はトリアゾール環であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 発光層を含む有機層を少なくとも1層有する有機ルミネッセンス素子であって、当該有機層の少なくとも1層が、下記一般式(1)で表される遷移金属錯体を含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    一般式(1)
    ML・L・(L)n
    〔式中、MLは、下記一般式(2)で表される部分構造を表し、Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。L〜Lは、各々2価の配位子を表し、L〜Lは同一であっても異なっていてもよく、互いに結合していてもよい。nは、1又は0を表す。〕
    Figure 2018186356
    〔式中、
    環Bは、C=Cと共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
    環Cは、C=Nと共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
    Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
    nbは、0〜3の整数を表し、ncは0〜2の整数を表す。1≦nb+nc≦4である。Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
    HTGは、窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造を表す。
    Lは炭素数6〜10のアリーレン基を表し、Lは環B又は環Cに結合しているが、環B又は環Cと共役は連続していない。n1は、1又は2を表す。n2は、1又は2を表す。Lが複数ある場合には、互いに同一であっても良いし異なってもよい。
    Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。〕
  9. 前記HTGで表される窒素原子と芳香族環を含んだ正孔輸送性の部分構造が、それぞれ、無置換又は置換されていてもよい、ジアリールアミノ基、カルバゾール−9−イル基、フェノキサジン−10−イル基、フェニチアジン−10−イル基、ジヒドロフェナジン−5−イル基及びジヒドロアクリジン−10−イル基から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 前記Rb及びRcで表される電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記環Cで表される芳香族複素環が、アゾール環を表すことを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 前記環Cで表される芳香族複素環が、イミダゾール環又はトリアゾール環を表すことを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(3)で表される部分構造で表されることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2018186356
    〔式中、
    環Aは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。
    環Bは、C=Cと共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
    環Cは、N−C=Nと共に形成される5員の芳香族複素環を表す。
    Raは、置換可能な置換基を表す。naは0〜3の整数を表す。
    Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
    nbは、0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
    Ra、Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
    Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
    nd及びneは、0又は1を表す。
    、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは、0又は1を表す。
    Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
    、L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
    m、n及びoは0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4,5又は6のいずれかを表す。
    p、q及びrは、0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
    Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
    及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
  14. 前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(4)で表される部分構造であることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2018186356
    〔式中、
    及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
    環Cは、N−C=Nと共に形成される5員の芳香族複素環を表す。
    Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
    Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性の置換基を表す。
    nbは、0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
    Ra、Rb、Rcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
    Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
    nd及びneは、0又は1を表す。
    、L、Lは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは0又は1を表す。
    Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Arは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
    、L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
    m、n及びoは、0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4、5又は6のいずれかを表す。
    p、q及びrは、0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
    Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
    及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
  15. 前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(5)で表される部分構造で表されることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2018186356
    〔式中、
    及びXは、一方が炭素原子を、他方が窒素原子を表す。
    及びYは、炭素原子又は窒素原子を表す。
    Raは、置換可能な置換基を表し、naは、0〜3の整数を表す。
    Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
    nbは、0〜3の整数を表し、ncは0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
    Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
    Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
    nd及びneは、0又は1を表す。
    、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは、0又は1を表す。
    Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
    、L及びLは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
    m、n及びoは、0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4、5又は6のいずれかを表す。
    p、q及びrは、0又は1を表し。1≦p+q+r≦2である。
    Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
    及びRは、各々水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
  16. 前記一般式(2)で表される部分構造が、下記一般式(6)で表される部分構造で表されることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2018186356
    〔式中、
    及びYは炭素原子、又は窒素原子を表す。
    Raは、置換可能な置換基を表し、naは0〜3の整数を表す。
    Rb及びRcは、それぞれ、環B及び環Cに置換可能な電子吸引性基を表す。
    nbは、0〜3の整数を表し、ncは、0又は1を表す。1≦nb+nc≦4である。
    Ra、Rb及びRcが複数ある場合には、互いに同一の置換基であっても良いし異なる置換基であってもよい。
    Rd及びReは、それぞれ炭素数1〜4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
    nd及びneは、0又は1を表す。
    、L及びLは、炭素数6〜10の2価のアリーレン基を表す。kは、0又は1を表す。
    Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、炭素数6〜10の芳香族基を表す。
    、L、Lは、単結合、置換されてもよい炭素原子、置換されてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれ、隣り合った芳香族環を連結している。
    m、n及びoは、0又は1を表し、0である場合は対応するLxは存在せず、隣り合った芳香族環同士は連結されない。xは、4、5又は6のいずれかを表す。
    p、q及びrは、0又は1を表す。1≦p+q+r≦2である。
    Mは、元素周期表における8〜10族の遷移金属を表す。
    及びRは、各々、水素原子又は置換基を表し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を表す。〕
  17. 前記Rb及びRcで表される電子吸引性基が、フッ素原子、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、ペンタフルオロスルファニル基、オキシカルボニル基及びフッ化アルキル基から選ばれることを特徴とする請求項13から請求項16までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  18. 前記遷移金属が、イリジウムであることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  19. 前記発光層が、フルオレン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、又は、これらの縮環化合物誘導体を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも1つが窒素原子で置換されているもの、及び、これらの組合せ、をホスト材料として含有することを特徴とする請求項1から請求項18までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  20. 前記リン光発光性の遷移金属錯体を含有した有機層が、塗布形成層であることを特徴とする請求項1から請求項19までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  21. 請求項1から請求項20までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする表示装置。
  22. 請求項1から請求項20までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする照明装置。
  23. 中心金属としての遷移金属に複数の芳香族環が直接結合している配位子を有するリン光発光性の遷移金属錯体であって、以下の4要件を満足することを特徴とするとする遷移金属錯体。
    (1)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、電子吸引性基を有する。
    (2)前記遷移金属に直接結合している複数の芳香族環の少なくとも1つが、当該芳香族環との共役が切断され、単結合によって接続された窒素原子と芳香族環とを含んだ正孔輸送性の部分構造を有する。
    (3)分子軌道計算での評価において、最高被占軌道(HOMO)から下位のエネルギー準位5番目(HOMO−5)までの結合性軌道のいずれか1つは、当該結合性軌道上の電子の80%以上が前記正孔輸送性の部分構造上に存在する電子密度分布を有し、かつ、前記最高被占軌道と当該結合性軌道とのエネルギー準位との差の絶対値が0.7eV未満であること
    (4)前記遷移金属錯体と当該前記遷移金属錯体から前記正孔輸送性部分構造を除いた構造を有する遷移金属錯体のそれぞれについて分子軌道計算で算出される発光極大波長の差の絶対値が、10nm以下である
  24. 請求項23に記載の遷移金属錯体を含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子材料。
  25. 請求項23に記載の遷移金属錯体を含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子材料組成物。
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