JPWO2018168955A1 - 細胞のin vivoでの特性を反映した細胞の反応の評価 - Google Patents

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Abstract

発明者が今回新たに見出した前記課題に基づき、生体内で起こっている細胞の反応に、より近い細胞の反応をin vitroで発現できる評価系を提供する。細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kpa以下である支持体と細胞とを接触させる工程と、in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現した細胞の特性をin vitroで維持する工程と、前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程と、入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程と、を含む、細胞の反応の評価方法を提供する。

Description

細胞のin vivoでの特性を反映した細胞の反応の評価が開示される。
生体内に存在する細胞は周辺の物理的環境を認識し応答していることが知られている(非特許文献1)。
非特許文献2には、間葉系幹細胞を生体組織の微小環境と同じ剛性を有するゲルマトリックスで培養することにより、筋系細胞や骨芽細胞に誘導したことが記載されている。また、特許文献1及び2には、間葉系幹細胞を生体組織の微小環境と同じ剛性を有するゲルマトリックス上で培養することにより、休眠状態に誘導したことが記載されている。
このように、細胞は、その細胞が接する周辺組織の微小環境に応じて、状態や分化の方向性を変える。
特表2010−532167号公報 特表2010−532166号公報
長山和亮、松本健郎、「細胞のバイオメカニクス」、人工臓器第42巻3号2013年、205−208頁 Cell, 2006, Vol.126, pp.677-689
in vitroで培養した細胞は、薬理試験等の試験に幅広く使用されている。しかし、その培養には、細胞の支持体として、その細胞が存在している組織の微小環境とはかけ離れた、非常に硬い剛性を有するプラスチックのシャーレが使用されている。
発明者らの検討により、このような人工的な剛性条件では、本来生体内で細胞に起きている反応が観察できない場合があることが明らかとなった。
本発明は、発明者が今回新たに見出した前記課題に基づき、生体内で起こっている細胞の反応に、より近い細胞の反応をin vitroで発現できる評価系を提供することを一課題とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、細胞を、その細胞が由来する生体組織の微小環境と同じ剛性を有するゲル、又はゲルマトリックス上で培養することにより、生体内で起こっている細胞の反応に、より近い細胞の反応をin vitroで発現できることを見出した。
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
項1.細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体と細胞とを接触させる工程と、
in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現した細胞の特性をin vitroで維持する工程と、
前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程と、
入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程と、
を含む、細胞の反応の評価方法(ただし、前記細胞に間葉系幹細胞は含まない)。
項2.前記シグナルは、化学的因子及、物理的因子及び生物学的因子よりなる群から選択される少なくとも一つの因子を細胞に負荷することによって細胞に入力される、項1に記載の方法。
項3.化学的因子が、化合物、イオン、気体、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ポリフェノール類、サイトカイン類及びケモカインよりなる群から選択される少なくとも一種である、項1又は2に記載の方法。
項4.物理的因子が、細胞の周囲環境の剛性、圧力、張力、光、放射線、酸素濃度、pH及び温度よりなる群から選択される少なくとも一種である、項1又は2に記載の方法。
項5.生物学的因子が、細菌、真菌、ウイルス、アレルゲン、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞及びこれらに含まれる成分より選択される少なくとも一種である、項1又は2に記載の方法。
項6.細胞が肝細胞であり、支持体の剛性が0.2〜5kpaである、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
項7.細胞の反応が薬物代謝酵素の誘導、非アルコール性脂肪肝炎のメカニズム、又は特発性肝障害を示す、項6に記載の方法。
項8.細胞の反応が前記因子の効能又は毒性である、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
項9.細胞が心筋細胞であり、支持体の剛性が5〜100kpaである、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
項10.化学的因子が酸化ストレス誘導物質であり、細胞の反応が酸化ストレス応答である、項9に記載の方法。
項11.酸化ストレス誘導物質がグルコースである、項10に記載の方法。
項12.細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体と細胞とを接触させる工程と、
in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現した細胞の特性をin vitroで維持する工程と、
前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程と、
シグナルの入力に先立って、シグナルの入力と同時に、又はシグナルの入力の後に、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質と細胞とを接触させる工程と、
入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程と、
を含む、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニング方法(ただし、前記細胞に間葉系幹細胞は含まない)。
項13.前記シグナルは、化学的因子及、物理的因子及び生物学的因子よりなる群から選択される少なくとも一つの因子を細胞に負荷することによって細胞に入力される、項12に記載の方法。
項14.化学的因子が、化合物、イオン、気体、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ポリフェノール類、サイトカイン類及びケモカインよりなる群から選択される少なくとも一種である、項12又は13に記載の方法。
項15.物理的因子が、細胞の周囲環境の剛性、圧力、張力、光、放射線、酸素濃度、pH及び温度よりなる群から選択される少なくとも一種である、項12又は13に記載の方法。
項16.生物学的因子が、細菌、真菌、ウイルス、アレルゲン、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞及びこれらに含まれる成分より選択される少なくとも一種である、項12又は13に記載の方法。
項17.細胞が肝細胞であり、支持体の剛性が0.2〜5kPaである、項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
項18.細胞の反応が薬物代謝酵素の誘導、非アルコール性脂肪肝炎のメカニズム、又は特発性肝障害を示す、項17に記載の方法。
項19.細胞の反応が前記因子の効能又は毒性である、項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
項20.細胞が心筋細胞であり、支持体の剛性が5〜100kPaである、項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
項21.化学的因子が酸化ストレス誘導物質であり、細胞の反応が酸化ストレス応答である、項20に記載の方法。
項22.酸化ストレス誘導物質がグルコースである、項20に記載の方法。
項23.細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体を含む、請求項12〜22に記載の細胞の反応の評価方法、又は請求項1〜11に記載のスクリーニング方法を実施するためのキット。
項24.さらに目的とする細胞の反応の評価又はスクリーニングを実施するために適した細胞を含む、項23に記載のキット。
シグナルの入力に対する生体内で起こっている細胞の反応に、より近い細胞の反応をin vitroで発現できる。
Aは、代表的な細胞が生体内で接している微小環境の剛性を示す図である。Bは、正常組織又は異常組織の剛性を示す図である(Soft Matter, 2007, 3, 299-306.及びAm J Physiol Gastrointest Liver Physiol 293: G1147-G1154, 2007.からデータを引用) ポリアクリルアミド支持体の作製方法の一例を記載した図である(図は、Cell, 2006, Vol.126, pp.677−689より引用)。 アクリルアミドとビスアクリルアミドの混合割合に応じたポリアクリルアミドゲルの剛性の変化を示すグラフである(Cell Motil Cytoskeleton. 2005 Jan;60(1):24−34.より引用)。 本発明のポリアクリルアミド支持体を用いた心筋細胞障害モデルの作製方法の一例を記載した図である。 心筋細胞が整列した筋線維分節の構造を形成するには、生理学的な剛性を持った支持体が必要であることを示した図である。 25mMの高グルコース濃度に心筋細胞を曝露し、その細胞の応答を表した図である。 本発明の細胞モデルにおける、過酸化水素投与による酸化ストレス負荷時の細胞骨格構造を、ガラス上の培養心筋細胞と15kPaゲル上の培養心筋細胞とで比較した図である。 初代培養心筋細胞に対する培養支持体の影響を見るため、高グルコール負荷時のROS蓄積の変化とその影響、活性酸素種(ROS)除去剤の効果を評価する実験方法の概要を表した図である。 正常なグルコース濃度におけるROSの蓄積量は、ガラス支持体よりも15kPaゲル支持体で培養された心筋細胞で顕著に低い値を示していること、ROS除去剤の効果が15kPaでより高いことを表した図である。 正常グルコース濃度と15mMグルコース濃度での培養心筋細胞のミトコンドリア膜電位を表した図である。 正常グルコース濃度と15mMグルコース濃度での培養心筋細胞のミトコンドリア膜電位を表した図である。 培養心筋細胞中のアポトーシス細胞をTUNELアッセイで評価した図である。 ガラス支持体上で心筋細胞を正常グルコース濃度又は高グルコース濃度に曝露した場合の、TUNELアッセイの結果を示す。 15kPaゲル支持体上で心筋細胞を正常グルコース濃度又は高グルコース濃度に曝露した場合の、TUNELアッセイの結果を示す。 図13及び図14のアポトーシス核の存在比率をグラフで表した図である。 高グルコース負荷後にROS除去剤を投与し、ROS除去による治療効果をミトコンドリア膜電位で評価する実験方法の概要とその結果を表した図である。 骨格筋細胞に高グルコース負荷を行った結果を示す。AはROSの蓄積を示す。Bは、ミトコンドリア膜電位を示す。 500Paの支持体上の初代培養肝細胞と三次元培養Spheroidのリファンピシン反応性の比較を示す図である。 特発性薬剤性肝障害における500Paの支持体の効果を示す図である。 非アルコール性脂肪肝炎の症状の1つである細胞内の脂肪滴の蓄積を支持体上で培養した初代培養肝細胞で発現した図である。 非アルコール性脂肪肝炎の症状の1つである細胞内のROSの蓄積を支持体上で培養した初代培養肝細胞で発現した図である。 肝細胞のマクロファージに対する炎症惹起作用をTNF−αの量で評価した図である。
1.細胞の反応の評価方法
細胞の反応の評価方法(以下、単に「評価方法」とする)について説明する。
評価方法は、in vitroで細胞に入力されるシグナルに対する細胞の反応を評価する。評価方法は、細胞を、その細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有する支持体と接触させる工程を含む。評価方法は、in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現している細胞を用い、その特性をin vitroで維持する工程を含む。評価方法は、前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程を含む。評価方法は、入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程を含む。
評価方法は、細胞を前記条件の支持体と接触させることにより、細胞は、in vitroにおいて、in vivoにおけるその細胞の本来の特性を、又はその特性に近い特性を発現することができる。
細胞は、生物に由来する限り制限されない。例えば哺乳類細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、両生類細胞、魚類細胞等を挙げることができる。哺乳類細胞として好ましくは、ヒト、サル、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット及びモルモット等に由来する細胞である。鳥類細胞として好ましくは、ニワトリに由来する細胞である。好ましくは、細胞はin vitroで培養可能な細胞である。細胞は、培養細胞株であってもよい。細胞は、初代培養細胞等の培養にあたって生体から採取された細胞であってもよい。細胞は、初代培養細胞等にウイルスを感染させ、一定の増殖能力(初代培養細胞よりも高い増殖能力又は分裂回数を有する、好ましくは不死化)を獲得させた細胞であってもよい。初代培養細胞は、細胞又は組織を採取後、培養を開始し増殖能がなくなるまでの間の、継代中のいずれかの細胞をいう。初代培養細胞として、例えば、肝細胞、筋細胞(心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞を含む)及び肝非実質細胞、神経細胞、グリア細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、タコ足細胞、メサンギウム細胞、尿細管細胞、皮膚上皮細胞、粘膜上皮細胞、角膜上皮細胞、視細胞、双極細胞、水平細胞、ミュラー細胞、肺胞上皮細胞、気管支上皮細胞、食道上皮細胞、消化管上皮細胞、乳腺細胞、乳管上皮細胞、膵島細胞、膵管細胞、脂肪細胞、マクロファージ、単球細胞、線維芽細胞、およびこれらの前駆細胞、変異後の細胞を挙げることができる。好ましくは細胞からは、間葉系幹細胞が除かれる。より好ましくは細胞からは、体性幹細胞、胚性幹細胞等の幹細胞は除かれる。
細胞には、多能性幹細胞(胚性幹細胞、人工多能性幹細胞等を含む。)から特定の細胞に分化させた細胞も含まれる。また、間葉系幹細胞等の組織幹細胞から特定の細胞に分化させた細胞も含まれる。例えば胚性幹細胞から間葉系幹細胞に分化させる方法は、Stem Cell Rev and Rep (2017) 13:68-78に開示されている。間葉系幹細胞から肝細胞に分化させる方法は、World J Stem Cells 2011 December 26; 3(12): 113-121に開示されている。
細胞は、正常な細胞であっても疾病細胞等の異常を有する細胞であってもよい。また、遺伝子組換え動物、及び疾患モデル動物から採取された細胞であってもよい。
細胞が生体内で認識する周囲環境は、細胞が、初代培養細胞等であれば、その細胞を採取した組織における目的の細胞の周囲の環境である。細胞が、培養細胞株であれば、その細胞が本来生体内にあるとすれば、置かれていたはずの組織の微小環境である。組織は、正常であっても疾患、又は障害等の何らかの異常を有していてもよい。例えば病巣から細胞を採取する場合には、組織はその病巣部の組織を意味する。微小環境とは、一般的に、生物物理学的あるいは生化学的な因子などを通じて細胞の挙動を制御する、細胞の周囲の状態を示す用語として使用されている。
細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性は、組織そのものの剛性であってもよく、組織内において細胞が接している微小環境そのものの環境であってもよい。
剛性は、硬さを表す限り制限されない。好ましくは、剪断弾性率(ずれ弾性率)で表される。測定方法としては様々な異なる原理でいくつかの手法が存在する(Sportsmedicine,2014,No.166,1〜30)。剛性は、例えば次の方法で測定することができる。
組織又は支持体を弾性体の正四角柱と見做して、底面とそれに平行な面に剪断応力Sが働くと、正四角柱の側面が頂角90°±γの菱形に変形する。このとき、フックの法則が成り立つ範囲でS=G’γという比例関係があり、その係数Gを剛性率とよぶ。
具体的には、ひずみ制御型rheometrics fluids spectrometer III(Rheometrics, Piscataway, NJ)で組織の動的剛性率を測定する。振動(1rad/s)剪断ひずみ2%で、同位相の剪断応力から弾性抵抗を表す値である剛性率G’を計算で求める。例えばステンレスパンチを使用して、例えば厚さ5〜10mm、直径5〜10mmの試料を切り出し、プレート間に配置する。剪断ひずみ2%で振動させて短期G’(ω)を測定する。また、定常ひずみ10%を適用し、試料を30秒間弛緩させて、長期剛性率G’(t)を測定する。単位はパスカル(Pa)で表す。支持体の動的剛性率を測定する場合には、プレート間で直接支持体を形成させ、組織と同様の振動剪断ひずみ及び同位相の剪断応力から剛性率G’を計算で求める。ガラスやプラスチックの動的剛性率は、プレートに試料を接着剤で固定して測定した。
表1に、さまざまなタイプの正常組織の剛性をあげておく。また、図1Aには、代表的な細胞が接している微小環境の剛性を示す。また、図1Bには代表的な組織の正常状態、異常状態における剛性を示す。肝臓、血管等は線維化や石灰化により剛性が高くなる。
Figure 2018168955
また、微小環境の剛性は、例えばBiophysical Journal, Volume 93, December 2007, p4453-4461等に記載されている原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて測定することができる。
支持体は、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映できる限り制限されない。例えば、ゲル、及びゲルマトリックスを挙げることができる。支持体には、二次元での培養環境を提供できるもの、及び三次元での培養環境を提供できるものが含まれる。
ゲルとしては、アガロース、アクリルアミド、コラーゲン、フィブリン、シリコーン、グリコサミノグリカン、カラギーナン、及びローカストビーンガム等のゲル化剤から構成される骨格を有するゲルを挙げることができる。ゲル化剤として好ましくは、アクリルアミド、コラーゲン、及びフィブリン等である。アクリルアミドは、剛性の低いゲル及び高いゲルの両方を作製でき、ゲルの剛性を調整しやすい点から特に好ましい。また、コラーゲンは、生体内の環境に近い環境を発現できることから好ましい。ゲルは公知の方法により調製することができる。アガロース、アクリルアミド、コラーゲン、フィブリン、シリコーン、グリコサミノグリカン、カラギーナン、及びローカストビーンガム等のゲル化剤は二次元培養用のゲルの調製に好適に用いられる。三次元培養用のゲル化剤としては、コラーゲン、フィブリン、シリコーン、グリコサミノグリカン、VitroGelTM 3D、VitroGelTM 3D−RGB(TheWell BIOSIENCE社)、BDマトリゲルTMマトリクス(BD Bioscience社)等を使用することができる。
ゲルマトリックスは、前記ゲル以外の成分を含む。ゲル以外の成分としては、接着タンパク質、及び接着タンパク質をゲルに架橋させるための接着タンパク質架橋剤を挙げることができる。ゲルマトリックスは、好ましくはその表面が接着タンパク質によってコーティングされる。ポリアクリルアミドゲル、及びシリコーンゲル等のゲル化剤が生物由来でないゲルは、ゲルマトリックスとして使用することが好ましい。
接着タンパク質としては、コラーゲン、フィブロネクチン、インテグリン、カドヘリン、ラミニン及びプロテオグリカン等よりなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。好ましくはコラーゲン、フィブロネクチン、及びコラーゲンとフィブロネクチンとを混合物よりなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。コラーゲンとフィブロネクチンとの混合割合は、質量(g)割合で、フィブロネクチン1に対してコラーゲン15〜3、好ましくは10〜5である。コラーゲンとしては特に制限されないが、好ましくは、I型コラーゲン、又はIV型コラーゲンである。コラーゲンは、ヒト、ラット、マウス、カンガルー、ウシ及び魚(例えばサメ)等由来のものを使用することができる。コラーゲンは遺伝子組換えによって作製されたものでもよい。フィブロネクチンとして好ましくは、魚、ヒト、ウシ、カンガルー、マウス及びラット等由来のものを使用することができる。フィブロネクチンは、遺伝子組換えによって作製されたものでもよい。
接着タンパク質架橋剤としては、ヘテロ二官能性架橋剤を使用することができる。ヘテロ二官能性架橋剤として好ましくは、スルホ−SANPAH(スルホスクシンイミジル6(4’−アジド−2’−ニトロフェニル−アミノ)ヘキサノエート、Pierce No.22589)、又はアクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)である。
ゲルマトリックスの調製方法は、特に制限されないが、例えば、ゲルを調製する際に、ゲル以外の成分を混合してゲル化することにより調製することができる。コラーゲン(終濃度で0.3〜1.0 mg/ml程度)、又はコラーゲン(終濃度で0.3〜1.0 mg/ml程度)とフィブロネクチン(終濃度で0.05〜0.5mg/ml)との混合物ならびに、ヘテロ二官能性架橋剤(終濃度で0.5〜3mg/ml)程度をアクリルアミド溶液(ビスアクリルアミドを含む)に混合し、過硫酸アンモニウム、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を添加してゲル化させる。
ゲルを接着タンパク質でコーティングしてゲルマトリックスを調製する方法としては、はじめにポリアクリルアミドゲルを作製し、例えば0.2〜1mg/mlのヘテロ二官能性架橋剤をジメチルスルホオキサイド(DMSO)及びHEPESバッファーの混合液に溶解し、この溶液をピペットでゲル表面に滴下する。続いて、ポリアクリルアミドゲルを、例えば、紫外線ランプの6インチ下に配置し、8〜15分間照射する。次に、紫外線照射後のゲルを洗浄する。最後の洗浄液を吸引した後、例えば0.01〜0.2 mg/mlのフィブロネクチン溶液及び/又は0.05〜0.2 mg/mlのコラーゲンをピペットでポリアクリルアミドゲルの上に滴下する。次に、ゲルを例えば3〜8℃で3〜5時間程度インキュベートする。図2に接着タンパク質でコーティングされたポリアクリルアミドゲルの調製するための模式図を示す。
支持体の剛性は、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映する。「周囲環境の剛性を反映する」とは、支持体の剛性が、周囲環境の剛性の範囲に含まれる、或いは支持体の剛性が、周囲環境の剛性と同程度であることを意図する。したがって、支持体の剛性は、細胞が由来する組織の剛性に応じて決定され、100kPa以下、50kPa以下、10kPa以下、5kPa以下、1kPa以下、500Pa以下である。支持体の剛性は、好ましくはゲルの剛性に依存する。ゲルの剛性は、各ゲルのゲル化剤を含むゲル調製液中のゲル化剤濃度によって調整することができる。また、ゲル化剤がゲル化する際にゲル架橋剤を必要とする場合には、ゲル化剤とゲル架橋剤の混合割合によってもゲルの剛性を調整することができる。例えば、ゲル化剤がアクリルアミドの場合は、10Pa〜100,000Paの剛性のゲルを調製することができる。ゲル化剤がコラーゲンの場合は、1Pa〜1kPaの剛性のゲルを調製することができる。ゲル化剤がフィブリンの場合は、50Pa〜4kPaの剛性のゲルを調製することができる。ゲル化剤がシリコーンの場合は、400Pa〜300kPaの剛性のゲルを調製することができる。
例えば、ゲルがポリアクリルアミドゲルである場合、ゲル調製液に含まれる総アクリルアミド(アクリルアミド及びビスアクリルアミドの総量)の濃度を変化させることにより所望の剛性のゲルを得ることができる。ゲル調製液に含まれる総アクリルアミドの濃度は、所望の剛性に応じて0.5〜50質量%とすることができる。図3にアクリルアミドとビスアクリルアミドの濃度に応じた剛性を示す。例えば3質量%のアクリルアミド溶液から調製されるポリアクリルアミドゲルの剛性は、50〜300Pa程度である。
アクリルアミドゲルのアクリルアミド:ビスアクリルアミド比は質量比で100:1から5:1の範囲であることが好ましい。ビスアクリルアミド1質量部に対するアクリルアミドの混合比は、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、10、5質量部から選択することができる。
アクリルアミド溶液の溶媒としては、水、PBS、150mM NaCl加Tris−HClバッファー、血清を添加していない又は血清が添加された細胞培養用培地等を挙げることができる。アクリルアミドは、過硫酸アンモニウム及びTEMEDを使ってゲル化させることができる。過硫酸アンモニウム及びTEMEDの添加量は公知である。例えば、過硫酸アンモニウム及びTEMEDの添加量は総アクリルアミド濃度を問わず、アクリルアミド溶液1,500μlあたり10%過硫酸アンモニウムを15μl程度、TEMEDを4.5μl程度添加することができる。
フィブリンゲルは、in vitroでフィブリノーゲンにトロンビンとカルシウムイオンを作用させて調製することができる。フィブリンゲル調製液に含まれるフィブリノーゲンの含有量は、1〜50mg/mLとすることができる。例えば、サケフィブリノーゲン(Searun Holdings, Freeport, ME)を水で再水和し、150mMのNaClを含む50mMのTris−HClバッファー(pH7.4)にて3mg/mL、又は18mg/mL濃度で調製したフィブリノーゲン溶液400μlに2単位/mLの魚トロンビン(Searun Holdings)を添加する。3mg/mLと18mg/mLのフィブリノーゲン溶液から調製したフィブリンゲルの剛性は、それぞれ250Paと2150Pa程度となる。
フィブリノーゲンは、変温動物又は恒温動物由来のフィブリノーゲンを使用することができる。変温動物として、好ましくは魚であり、より好ましくはサケである。恒温動物として、好ましくは哺乳動物であり、よし好ましくはヒト又はウシである。フィブリノーゲンは、遺伝子組換えにより作製されたものを使用してもよい。
フィブリノーゲン溶液を調製する溶媒は、水、PBS、150mM NaCl加Tris−HClバッファー、血清を添加していない又は血清が添加された細胞培養用培地等を挙げることができる。
フィブリノーゲンをフィブリンに重合するために添加するトロンビンは、フィブリノーゲンを重合できる限り制限されない。フィブリノーゲンとトロンビンは同種であることが好ましい。また、トロンビンによるフィブリノーゲンの重合を促進するためにカルシウムイオンを添加することができる。カルシウムイオンは、例えば塩化カルシウム等から供給される。
コラーゲンゲルは、コラーゲン溶液に架橋剤を添加し、例えば3〜8℃に12〜24時間静置することにより調製することができる。コラーゲン溶液に含まれるコラーゲン含有量は、0.05質量%〜0.8質量%とすることができる。0.55質量%のコラーゲン溶液を用いることにより、圧縮弾性率で60〜100kPa(剪断弾性率で20〜33kPa)程度の剛性のゲルを調製することができる。
コラーゲンは、ゲルを調製できる限り制限されないが、I型コラーゲン又はIV型コラーゲンであることが好ましい。コラーゲンとしてI型コラーゲンが好ましい。コラーゲンは、ヒト、ラット、マウス、カンガルー、ウシ及び魚(例えばサメ)等由来のものを使用することができる。コラーゲンは遺伝子組換えによって作製されたものでもよい。
コラーゲン溶液を調製する溶媒は、酸性(pH 1〜4程度、好ましくはpH 2.5〜3.5程度)水溶液であることが好ましい。例えば、溶媒として10−3モルの希塩酸を溶媒として用いることができる。希塩酸に溶解したコラーゲンは、中和してもよい。
架橋剤は、N−(3−dimethylaminopropyl)−N’−ethylcarbodiimide (EDC)、グルタルアルデヒド、1,4−dibutandiol diglycidyl ether (BDDGE)、N−ヒドロキシスクシイミド(NHS)及び水溶性カルボジイミド(WSC)等から選択される。好ましくは、WSCである。コラーゲンと架橋剤の混合割合は、公知である。
シリコーンゲルは、信越シリコーン(信越化学株式会社)等から入手することができる。例えば、KE−104Gel Cat−104(複素弾性率2×10N/m)、KE−1051J(A/B)(複素弾性率2×10N/m)、KE−1052(A/B)(複素弾性率2×10N/m)、KE−110Gel Cat−110(複素弾性率2×10N/m)、KE−1056(複素弾性率4×10N/m)、FE−57(複素弾性率3×10N/m)等を挙げることができる。複素弾性率は、剪断弾性率に換算すると、1N/mが、およそ0.3 Paとなる。
細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために細胞と支持体を接触させる。発現とは、細胞のin vivoでの特性(例えば、シグナルの入力に対する細胞の応答)により近い状態をin vitroで引き出すことをいう。好ましくは、発現は再現である。in vivoでの特性が引き出されたか否かは、例えば、シャーレ等で培養した細胞と、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有する支持体を用いて培養した細胞との間で、シグナルの入力に対する応答を比較し、前記支持体上で培養した細胞において応答性が生体内の細胞の応答により近い場合にin vivoでの特性が引き出された(発現された)と決定することができる。シグナル及びシグナルに対する応答性の評価については、後述する。
細胞と支持体を接触させることは、細胞と支持体が一時的に接触すること、又は一定時間接触し続けることを含む。また、細胞と支持体を接触させることには、支持体上で細胞を培養することを含む。初代培養細胞等は、特に採取されてから、プラスチックシャーレ等の硬い剛性に接触させずに、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性の支持体と接触させることが好ましい。プラスチック等の硬い支持体に細胞を接触させると、その時点で細胞のin vivoでの特性が失われる畏れがあるためである。
接触は、細胞を培養することができる環境下で行うことが好ましい。例えば、細胞に応じた培養培地の存在下で接触させる。培養培地は、細胞に応じて選択すればよく、例えば、Minimum Essential培地(MEM)、イーグルMEM、α−MEM、高グルコース(4.5g/L) 含有DMEM、低グルコース(1.0g/L)含有DMEM、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、Glasgow MEM(GMEM)、RPMI−1640、マッコイ5A培地、MCDB培地、Ham’s F−12、Ham’s F−10、Williams Medium E及びこれらの混合培地等を挙げることができる。培養培地は、必要に応じて、5〜30%程度の血清を含んでいてもよい。血清はウシ胎児血清、ヒト血清及びウマ血清等を使用することができる。また、培養培地は、抗生物質を含んでいてもよい。培養培地には、細胞の増殖を助けるために、脂肪酸、アルブミン、細胞増殖因子、アミノ酸、核酸、及びビタミン類から選択される少なくとも一種を付加的に添加的に添加してもよい。
細胞と支持体との接触は、細胞の種類に応じて、例えば25〜38℃の温度下で、好ましくは4〜10%の炭酸ガス存在下で行われる。
支持体は、PBS、ハンクス緩衝塩、目的細胞の培養培地(血清等は含んでいても含まなくてもよい)で、洗浄又は平衡化してから細胞と接触させることが好ましい。
評価方法は、前記支持体と接触した細胞は、in vivoの特性がin vitroで導入(発現)される。また、評価方法は、発現したin vivo細胞の特性をin vitroで維持することを含む。発現した細胞の特性をin vitroで維持することには、支持体を用いて細胞を培養培地存在下で増殖させることが含まれていてもよい。また、発現した細胞の特性をin vitroで維持することには、細胞を継代することを含んでいてもよい。支持体と接触した細胞の維持は、上述の培養培地を使用し、細胞の種類に応じて、例えば25〜38℃の温度下で、好ましくは4〜10%の炭酸ガス存在下で行われる。in vivoにおける細胞の特性の導入及び/又は維持に必要なシグナル以外のシグナルの入力がない状態を「基底状態」ともいう。基底状態は、好ましくは、その細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有する支持体と細胞を接触させて、好ましくは培養培地存在下で支持体と接触した状態の細胞を維持することで、in vivo細胞の特性がin vitroで安定化した状態にあることをいう。
評価方法は、前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程を含む。シグナルは、細胞を使って評価したい反応を惹起するものである限り、制限されない。シグナルは、外的刺激因子であることが好ましい。外的刺激因子には、化学的因子、物理的因子、生物学的因子及びこれらの組み合わせを含む。化学的因子としては、化合物、イオン、気体、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(抗体を含む)、ポリフェノール類、サイトカイン類及びケモカインよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。化学的因子としてさらに好ましくは、酸化ストレス誘導物質である。酸化ストレスは、好ましくは高グルコース負荷(終濃度で7mM〜30mM、好ましくは10mM〜20mM、より好ましくは10mM〜15mM)、高脂肪酸負荷(好ましくは炭素数14〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸、より好ましくはオレイン酸、パルミチン酸又はこれらの混合液を終濃度で0.01mM〜10mMの範囲、好ましくは0.1mM〜7mMの範囲)、過酸化水素(終濃度で1μM〜100μM、好ましくは5μM〜80μM、より好ましくは10μM〜50μM)を挙げることができる。物理的因子としては、細胞の周囲環境の剛性、圧力、張力、光、放射線、酸素濃度、pH及び温度よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。生物学的因子が、細菌、真菌、ウイルス、アレルゲン(花粉、動物皮膚、及びダニ等)、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞(好ましくはヒト以外の哺乳類細胞)及びこれらに含まれる成分(リポポリサッカライド、アレルゲン抽出物、細菌抽出物、真菌抽出物、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスコアタンパク質、ウイルスエンベロープタンパク質、ワクチン成分等)、細胞外分泌小胞(コンディショニングメディウム、細胞培養上清等であってもよい)より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
上記シグナルは、それぞれのシグナルの種類に応じた濃度又は強さで必要な期間、細胞に入力することができる。シグナルを入力する際は、物理的因子の場合、上述の培養培地を使用し、物理的因子が温度である場合を除き、細胞の種類に応じて、例えば25〜38℃の温度下で、好ましくは4〜10%の炭酸ガス存在下で行われる。化学的因子、及び生物学因子の場合には、細胞と支持体を含む培養培地に各因子を添加し、細胞の種類に応じて、例えば25〜38℃の温度下で、好ましくは4〜10%の炭酸ガス存在下で細胞と各因子を接触させる。シグナルの入力は、一過性でも、一定期間継続していても、断続的であってもよい。細胞と化学的因子を接触させる際に使用される培養培地は、細胞と支持体を接触させる際に用いられる培養培地であってもよく、シグナルに応じて細胞と支持体を接触させる際に用いられる培養培地と異なる培養培地を用いてもよい。
評価方法は、入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程を含む。測定方法は、入力されたシグナルに応じた方法で測定することができる。例えば、ゲノムの修飾(DNA修飾及びヒストン修飾を含む)、DNAの変異、RNAの発現や分解、タンパク質の発現や分解、タンパク質のリン酸化、酵素活性、脂質代謝、糖代謝、活性酸素の発生量、解毒反応(例えばP450の活性化)、ストレス応答タンパク質(ヒートショックタンパク質等)の活性化、発現又は放出、デインジャーシグナルタンパク質(HMGB1等)の活性化、発現又は放出、貪食反応、アポトーシス反応、ユビキチン化、ミトコンドリア機能、小胞体機能、免疫応答等を測定することにより細胞の反応を評価することができる。また、細胞の反応は細胞を染色物質等で染色して顕微鏡等で観察することによっても評価することができる。これらの測定方法は、公知である。細胞の反応の評価には、入力されたシグナルが、細胞に好適に働くことを評価すること、及び/又は細胞に悪影響を及ぼすと評価することが含まれる。また、細胞の反応を評価することには、入力されたシグナルに対する細胞の反応のメカニズムを解明することが含まれる。
2.スクリーニング方法
評価方法において、物理的因子、化学的因子又は生物学的因子として、例えば疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質を用いてもよい。また、シグナルの入力(好ましくは細胞に障害を来すシグナルの入力)と、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質の添加を組み合わせて細胞の反応の評価を行ってもよい。すなわち評価方法は、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニング方法としても使用できる。
疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニング方法は、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体と細胞とを接触させる工程と、in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現した細胞の特性をin vitroで維持する工程と、前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程と、シグナルの入力に先立って、シグナルの入力と同時に、又はシグナルの入力の後に、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質と細胞とを接触させる工程と、入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程と、を含む方法である。入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定した際に、候補物質と接触していない細胞と候補物質と接触した細胞の反応を比較して、候補物質と接触した細胞において細胞の反応が改善していると決定された時に、前記候補物質は、疾患、又は障害を予防、治療又は改善することができることが示唆又は決定される。本項における用語の説明は、評価方法の項の説明を援用する。
3.筋細胞障害モデル
評価方法の一態様は、筋細胞を使用した評価方法に関する。また、筋細胞障害モデル、及び筋細胞障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニング方法に関する。評価方法の項に記載された用語で、本項でも使用される用語については、評価方法の項の説明をここに援用する。
「筋細胞」とは、心筋細胞、平滑筋細胞又は骨格筋細胞のことをいう。好ましくは初代培養の筋細胞、平滑筋細胞又は骨格筋細胞を挙げることができる。筋細胞を採取する動物は、特に限定されるものではないが、評価方法の項で述べた動物を挙げることができる。
筋細胞を用いた評価方法では、好ましくは代謝と炎症に由来する筋細胞障害を評価することができる。「代謝と炎症に由来する筋細胞障害」とは、例えば高血糖やミトコンドリア代謝異常、酸化ストレス、小胞体ストレス、脂質代謝異常等に由来する細胞障害の中で、心筋細胞、平滑筋細胞又は骨格筋細胞に発生する細胞障害のことをいう。例えば高血糖における心筋細胞の障害としては、酸化ストレスの増加、ミトコンドリアの機能不全(代謝異常)、脂質代謝異常、アンギオテンシン・アルドステロン活性化、カルシウム恒常性とイオン代謝の異常等があり、それらの結果として例えば高グルコース負荷による糖尿病性の心筋症に至るとされている(愛媛県立医療技術大学紀要第11巻第1号P.1−7、2014年)。ミトコンドリアの機能不全(代謝異常)とは、まずミトコンドリア由来の活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)の濃度が増加し、ミトコンドリアが障害を受け、その障害によりミトコンドリアでの膜電位の低下を引き起こす。その結果、心筋でのインスリン抵抗性が発症する原因となっている(心臓、Vol.42、No.4(2010)564−572)。脂質代謝異常とは、ミトコンドリアにおけるATP産生が障害を受け、長鎖脂肪酸を基質とするエネルギー産生が阻害され、心収縮効果が低下することをいう(月刊糖尿病、2013/2、Vol.5、No.2、6−7)。
「筋細胞障害モデル」とは、初代培養の心筋細胞、平滑筋細胞又は骨格筋細胞を用いたin vitroでの障害モデルのことである。in vitroにおいて、in vivoの筋細胞と同じ物理的な(支持体の剛性がin vivoの筋細胞の周囲環境の剛性を反映している)環境に筋細胞を接触させ、生理学的な機能がin vivoの筋細胞に近い特性となるように導入、又は維持された筋細胞を含む。また、筋細胞障害モデルには、in vivoの筋細胞に近い特性となるように導入、又は維持された筋細胞に、シグナルを入力した筋細胞を含む。好ましくは、前記シグナルは、高グルコース又は過酸化水素であり、筋細胞障害モデルには、高グルコース負荷により細胞障害を惹起した筋細胞障害モデルを含む。筋細胞障害モデルは基底状態では、酸化ストレスの蓄積量は少ないが、シグナルの入力(好ましくは高グルコース負荷)を受けることにより酸化ストレスが蓄積する。この反応は、in vivoの心筋組織或いは骨格筋組織の剛性を反映している剛性を有する支持体上で、高グルコース負荷を行った場合可逆的でありうる。しかし、ガラス等の非常に剛性の高い支持体上では不可逆的であり、酸化ストレスの蓄積により、細胞がアポトーシスを起こす。
支持体は、評価方法の項に記載のものを使用することができる。
「剛性」の定義は、評価方法の項の説明にしたがう。
筋細胞を支持体と接触させるとき、或いは支持体上で維持するための培養培地は、例えば5〜20%(好ましくは8〜12%、より好ましくは5〜10%)ウシ胎児血清加DMEM(低グルコース)等を使用することがでる。筋細胞を支持体と接触させるとき、或いは支持体上で維持するための条件は、評価の方法の項に記載した条件にしたがう。
筋細胞が接する支持体の剛性は、心臓や骨格筋組織と同程度の5kPa〜100kPa程度であることが好ましい。より好ましくは10kPa〜30kPa、さらに好ましくは10kPa〜15kPaを挙げることができる。更に好ましくは15kPaを挙げることができる。
高グルコースとは、培養培地のグルコースが高濃度に添加されていることをいう。培養培地のグルコースの濃度は、ヒトの一般的な糖尿病患者の血糖値に相当する10〜25mM、又は10〜15mMのグルコース濃度を用いることが好ましい。ガラス支持体上で筋細胞を培養した場合、グルコース濃度が、10mM、15mMであっても、心筋細胞のミトコンドリア膜電位やROSに対する影響は検知されない。しかし、心臓組織の剛性を反映した剛性を有する支持体上で培養すれば、グルコース濃度が10mM程度であっても酸化ストレスが蓄積される。また、15kPaの支持体上で培養された初代培養心筋細胞は、安定しており、脱分化が起こり難くなっている。
本発明の酸化ストレスの蓄積とは、細胞内のROSの蓄積(濃度上昇)のことをいい、その蓄積量の変化(応答性)は、ROSの標識試薬によって検知することができる。ROSの標識試薬としては各種の試薬が市販されており、適宜、目的に応じて使用することができる。好ましいものとしては、例えばH2DCFDA、カルボキシ−H2DCFDA、クロロメチル−H2DCFDA等のフルオレセイン誘導体を挙げることができる。活性酸素種の濃度上昇は、公知の活性酸素種を測定するキットを用いて測定することができる。
「ミトコンドリア代謝異常」とは、ミトコンドリアの呼吸鎖の機能障害によって引き起こされる多様な疾患群のことをいう。この疾患は細胞核内DNA、又はミトコンドリアDNA(mtDNA)における変異によって引き起こされ、複数の内臓器官に影響を及ぼし,顕著な神経と筋肉障害を引き起こす。ミトコンドリア代謝異常の主だった症状は眼瞼下垂、外眼筋麻痺、近位筋障害と運動不耐性、心筋症、感音難聴、視神経萎縮、網膜色素変性、糖尿病などが挙げられる。中枢神経への症状は変動性脳症、てんかん、認知症、偏頭痛、脳卒中様発作、運動失調、痙攣などが挙げられる。
「酸化ストレス」とは、生体内で生成する活性酸素種(ROS)の酸化損傷力が生体内の抗酸化システムの抗酸化能力を上回った状態のことをいう。ROSは、本来、エネルギー生産、侵入異物攻撃、不要な細胞の処理、細胞情報伝達などに際して生産されるが、生体内の抗酸化システムで捕捉しきれない余剰なROSが生じる場合には、生体の構造や機能を担っている脂質、蛋白質・酵素や、遺伝情報を担う遺伝子DNAが酸化され損傷する。その結果、生体の構造や機能が乱れ、病気を引き起こし、老化が早まり、癌や、生活習慣病になりやすくなる。
「脂質代謝異常」とは、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足している状態のことをいう。一般的には、高脂血症のことをいう。脂質代謝異常症(高脂血症)としては、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種類に区分されている。
「代謝又は炎症に由来する筋細胞障害」には、例えば肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病に関する代謝性疾患、及び例えばぜんそくや関節リュウマチなどの自己免疫、アレルギー、免疫不全などに由来する筋細胞障害のことをいう。特に、好ましいものとして、高血圧などの生活習慣病に関する代謝性疾患に由来する筋細胞障害を含む。
筋細胞障害モデルは、シグナルの入力に先だって、シグナルの入力と同時に、又はシグナルの入力を行った後に、筋細胞障害を予防、治療又は改善するための候補物質と筋細胞を接触させ、入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定することにより、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質をスクリーニングすることができる。スクリーニング方法の詳細は、2.スクリーニング方法の項の記載をここに援用する。
酸化ストレスが亢進した筋細胞障害モデルと、それを用いた代謝と炎症性の筋細胞障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニングにより、糖尿病性の心筋疾患及び骨格筋疾患に有効な薬剤を評価し、創出することができる。更に、糖尿病性の筋細胞障害モデルを用いて、心筋細胞における慢性合併症と心不全に対する発症メカニズムの解析が容易になり、糖尿病患者の心臓合併症の早期治療と病状に応じた薬剤の選択が評価できる。前記スクリーニング方法は、酸化ストレスが亢進した患者、特に糖尿病患者等のサルコペニアやロコモーテイブ症候群の予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニングにも利用できる。
4.肝細胞障害モデル
評価方法の一態様は、肝細胞を使用した評価方法に関する。また、評価方法は、肝細胞障害(特に特発性薬剤性肝障害)の評価、非アルコール性脂肪肝炎のメカニズムの解析方法、及び肝細胞障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニング方法を含む。評価方法の項に記載された用語で、本項でも使用される用語については、評価方法の項の説明をここに援用する。
「肝細胞」とは、肝臓の実質由来の細胞のことをいう。好ましくは初代培養の肝細胞を挙げることができる。肝細胞を採取する動物は、特に限定されるものではないが、評価方法の項で述べた動物を挙げることができる。
「肝細胞障害の評価」とは、初代培養の肝細胞を用いたin vitroでの肝細胞の障害の評価を意味する。肝細胞障害の評価に用いられる肝細胞は、in vitroにおいて、in vivoの肝細胞と同じ物理的な(支持体の剛性がin vivoの正常又は異常な肝臓組織において肝細胞が認識する周囲環境の剛性を反映している)環境に肝細胞を接触させ、生理学的な機能がin vivoの肝細胞に近い特性となるように導入、又は維持された肝細胞を含む。また、肝細胞障害の評価に用いられる肝細胞には、in vivoの肝細胞に近い特性となるように導入、又は維持された肝細胞に、シグナルを入力した肝細胞を含む。
支持体は、評価方法の項に記載のものを使用することができる。
「剛性」の定義は、評価方法の項の説明にしたがう。
in vivoの正常又は異常な肝臓組織において肝細胞が認識する周囲環境の剛性は、0.2〜5kpa程度である。したがって、支持体の剛性もこの範囲であることが好ましい。肝臓組織の剛性は、図1Bに示すように線維化等によって高くなる。正常の肝臓組織の微小環境の剛性は、0.2〜0.7kPa程度、好ましくは、0.3〜0.6kPa程度である。したがって、正常な肝細胞を使用し、正常な細胞の反応を評価する場合、或いは正常な組織が異常を来す段階の初期における細胞の反応を評価する場合には、この剛性の支持体を使用することが好ましい。一方、異常な肝臓組織、例えば、腫瘍や線維化(例えば肝硬変)により組織が硬化した場合には、肝臓の剛性は高くなる。このような場合における細胞の反応を評価するためには、0.7kPa以上かつ2〜3kPa程度の剛性の支持体を使用することができる。
肝細胞を支持体と接触させるとき、或いは支持体上で維持するための培養培地は、例えば5〜20%(好ましくは8〜12%)ウシ胎児血清及びHepatocyte Maintenance Supplement Pack(サーモフィッシャー株式会社)添加Williams Medium E等を使用することがでる。肝細胞を支持体と接触させるとき、或いは支持体上で維持するための条件は、評価の方法の項に記載した条件にしたがう。
シグナルは、好ましくは薬物代謝酵素の誘導、特発性薬物性肝障害又は非アルコール性脂肪肝炎の反応を引き起こすシグナルである。特発性薬物性肝障害を引き起こすシグナルは、例えば化学的因子、又は生物学的因子である。中でもヒトまたは動物に疾患、又は障害を予防、治療又は改善するために投与される候補物質であり得る。入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する方法は、シグナルに応じて選択できる。例えば、肝細胞の解毒機能の測定(CYP3A4等のP450ファミリーの活性測定)、酸化ストレスの蓄積を測定する方法、HMGB1等の細胞の危機的な状態に放出されるタンパク質の発現を測定する方法を挙げることができる。入力されたシグナルに対する細胞の反応の測定結果が、シグナルを入力されなかった細胞と比較して、細胞が傷害される、或いは細胞が傷害されうると決定された場合には、シグナルが、特発性薬物性肝障害を引き起こすと決定することができる。
薬物代謝酵素の誘導、又は特発性薬物性肝障害を引き起こすシグナルは、例えば化学的因子、又は生物学的因子である。中でもヒトまたは動物に疾患、又は障害を予防、治療又は改善するために投与される薬剤やその候補物質であり得る。入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する方法は、シグナルに応じて選択できる。例えば、肝細胞の解毒機能の測定(CYP3A4等のP450ファミリーの活性測定)、酸化ストレスの蓄積を測定する方法、HMGB1等の細胞の危機的な状態に発現されるタンパク質の発現を測定する方法を挙げることができる。入力されたシグナルに対する細胞の反応の測定結果が、シグナルを入力されなかった細胞と比較して、細胞が傷害される、或いは細胞が傷害されうると決定された場合には、シグナルが、特発性薬物性肝障害を引き起こすと決定することができる。シグナルは、それぞれのシグナルの種類に応じた濃度又は強さで必要な期間、細胞に入力することができる。シグナルは、好ましくは、非アルコール性脂肪肝炎のメカニズムを示す。
非アルコール性脂肪肝炎を引き起こすメカニズムを示すシグナルは、例えば化学的因子又は生物学的因子である。中でも成人病の原因である過栄養となりうる糖質及び/又は脂質であり得る。糖質として好ましくは、フルクトースであり、脂質として好ましくは脂肪酸(好ましくは炭素数14〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸)、特に飽和脂肪酸である。糖質又は脂質は、必要に応じて、終濃度で0.01mM〜10mMの範囲、好ましくは0.1mM〜7mMの範囲で肝細胞を含む培養培地に添加しうる。前記培養培地は、5%程度のウシ胎児血清を含む低グルコース(5mM)含有培養培地を使用することが好ましい。細胞と、シグナルの接触期間は、4時間〜30日程度、好ましくは1日〜7日程度、1日〜3日程度である。入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する方法は、シグナルに応じて選択できる。例えば、肝細胞の脂肪滴蓄積の顕微鏡観察、酸化ストレスの蓄積を測定する方法、HMGB1等の細胞の危機的な状態に放出されるタンパク質の発現や放出等を測定する方法を挙げることができる。入力されたシグナルに対する細胞の反応の測定結果が、シグナルを入力されなかった細胞と比較して、非アルコール性脂肪肝炎が引き起こされる、或いは非アルコール性脂肪肝炎が引き起こされうると決定された場合には、シグナルが、非アルコール性脂肪肝炎を引き起こすと決定することができる。シグナルは、それぞれのシグナルの種類に応じた濃度又は強さで必要な期間、細胞に入力することができる。
評価方法は、シグナルの入力に先だって、シグナルの入力と同時に、又はシグナルの入力を行った後に、肝細胞障害を予防、治療又は改善するための候補物質と肝細胞を接触させ、入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定することにより、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質をスクリーニングすることができる。スクリーニング方法の詳細は、2.スクリーニング方法の項の記載をここに援用する。
5.キット
本発明には、上記1.〜4.で述べた細胞の反応の評価方法、スクリーニング方法、筋細胞障害モデル、及び肝細胞障害モデルを実現するためのキットを含む。キットは、細胞の反応の評価方法、スクリーニング方法、筋細胞障害モデル、及び肝細胞障害モデルを実施するために必要な細胞が、in vivoにける特性をin vitroで発現するように、生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体(上記1.〜4.で述べた支持体)を含む。また、キットは、目的とする細胞の反応の評価方法、スクリーニング方法、筋細胞障害モデル、及び肝細胞障害モデルを実施するために適した細胞を含んでいてもよい。この他、キットは、前記細胞に適した培地、サイトカインやインヒビター等の添加物、抗生物質、バッファー等を含んでいてもよい。上記1.〜4.に記載の細胞の反応の評価方法、スクリーニング方法、筋細胞障害モデル、及び肝細胞障害モデルの説明は、ここに援用される。
以下に実施例を示して、本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
1.実験例
(1)ポリアクリルアミドゲルの剛性
ゲルの剛性を変化させるために、ポリマー質量を一定の7.5%とし、ビスアクリルアミド濃度を0.01%、0.03%または0.3%に変化させて、アクリルアミドおよびビスアクリルアミド(Fisher Biotech, Loughborough, Leicestershire, UK)溶液を調製した。アクリルアミド及びビスアクリルアミドを含む溶液を後述するひずみ制御型rheometrics fluids spectrometer IIIのプレート間に流し込み、過硫酸アンモニウム及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を添加してとのまま重合させ、動的剛性率を測定した。
プレート間で重合させたポリアクリルアミドゲルについて、ひずみ制御型rheometrics fluids spectrometer III(Rheometrics, Piscataway, NJ)で支持体の動的剛性率を測定した。振動(1rad/s)剪断ひずみ2%で、同位相の剪断応力から弾性抵抗を表す値である剛性率G’を計算で求めた。ひずみ2%で振動させて短期剛性率G’(ω)を測定した。また、定常ひずみ10%を適用し、試料を30秒間弛緩させて、長期剛性率G’(t)を測定した。結果を図3に示す。
(2)ポリアクリルアミド支持体の作製方法
0.1NのNaOHを200μlのピペットで滴下し、直径22 mmのガラス製カバーガラス(Fisherbrandカタログ番号12-545-101;Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)の表面を5分間覆った。NaOH溶液を吸引し、3-APTMS(3−アミノプロピルトリメトキシシラン、Sigma社のNo.28-1778、Sigma, St. Louis, MO)200μlを3分間適用した。このガラス製カバーガラスを脱イオン水で十分にすすいで残っている3-APTMS溶液を洗い流し、0.5%vグルタルアルデヒド(Sigma社のNo.G7651)水溶液200μlを20分間カバーガラスに加えた。
図2に示すように、アクリルアミドとビスアクリルアミドの共重合体を作成し、15kPa(筋細胞培養用)または500Pa(肝細胞用)のポリアミドゲル支持体を作製した。まず、アクリルアミドとビスアクリルアミドの混合溶液をN,N,N,N―テトラメチルエチレンジアミンと10%過硫酸アンモニウムを用いて重合させた。その溶液を、3−アミノプロピルトリメトキシシランとグルタルアルデヒドで前処理した直径22 mmのガラス板に載せた。ポリアクリルアミドゲルには細胞接着性がないため、架橋剤としてN−スルホサクシンイミドイル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(0.5mg/ml)の50mMのHEPESバッファー溶液(pH8)を滴下し被覆した。その上をカバーグラスで覆い、その後カバーグラスを除去した。次に、筋細胞培養用のゲルは、0.05mg/mlのフィブロネクチン及び0.1mg/mlのI型コラーゲンの混合液で被覆した。肝細胞培養用のゲルは、0.1mg/mlのI型コラーゲン(ラット肝細胞)又はIV型コラーゲン(ヒト肝細胞)の溶液で被覆した。接着タンパク質によるゲルの被覆は、ヘテロ二官能性架橋剤を含むゲルを接着タンパク質を含む溶液で覆い、接着タンパク質がヘテロ二官能性架橋剤と結合するまで静置することにより行った。
(3)ガラス支持体の調製
カバーグラスを培養皿中に置き、0.05mg/mlのフィブロネクチン及び0.1mg/mlのI型コラーゲンの混合液またはIV型コラーゲン溶液を加えて、30分間UV照射の後、室温で2-3時間静置し、表面を被覆した。
2.実施例1:in vivoと同じ剛性支持体環境(15 kPa)で培養された初代培養心筋細胞の機能評価
(1)15 kPaのポリアミドゲル支持体での初代培養心筋細胞の培養
図4に示すように、Wistarラットの生後1〜3日の新生児の心室を採取し、IV型のコラゲナーゼとディスパーゼで消化した。酵素的に単離した細胞を、プラスチックの培養皿に播種し、37℃で5%炭酸ガスを含む細胞培養インキュベーター内で40分間培養した。そして共存する線維芽細胞を培養皿の底に定着させて除去した後に上清を回収、遠心分離して回収した心筋細胞を、上記ポリアクリルアミド支持体に播種し、5 mMグルコース(正常血糖に相当)を含む5%FCS加DMEM(低グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド含有)で培養した。
(2)結果
図5に示すように、心筋収縮に寄与する細胞骨格系を評価した。ガラスの上では、心筋細胞は不整列なアクチン・ネットワークと筋線維分節を示した。生体の心臓の剛性に近い、15 kPaの支持体上で培養された場合にのみ、心筋細胞は整列した筋線維分節を作り上げて行くことが分かった。生理学的な剛性の15 kPaであれば、心筋細胞は細長い形状を形成することが示された。
一方、心臓の生理学的な剛性ではない柔らかなゲルの上では、大きなアクチンを含む線維束の形状がすべて崩れてしまい、分散したアクチン・フィラメントを持った丸い形状の細胞になった。
以上の結果は、心筋細胞が整列した筋線維分節の構造を形成するには、生理学的な剛性を持った支持体が必要であることを示している。
3.実施例2:in vivoと同じ剛性環境(15 kPa)で高グルコース負荷された初代培養心筋細胞の機能評価
(1)方法
実施例1と同様に心筋細胞の培養を15 kPaの支持体上で行い、最後に5 mM〜25 mMのグルコース濃度の培地に交換して1〜2日の培養を行った。細胞骨格の評価は、α−アクチニン抗体と、F−アクチンに結合するPhalloidinを蛍光ラベルされたものを用いて蛍光免疫染色を行い評価した。
(2)結果
図6に示すように、25 mMの高グルコース濃度で培養すると、細胞骨格構造(α-アクチニン、及びF−アクチン)は15 kPaゲル上の培養心筋細胞で崩壊したが、ガラス上の培養細胞ではその崩壊は認められなかった。また、高グルコース刺激と同様の浸透圧刺激を与える高マンニトール刺激では15 kPaゲル上の培養心筋細胞における細胞骨格構造の崩壊が見られず、高グルコースでの細胞骨格の崩壊は浸透圧による影響ではないことが明らかとなった。
この結果は、心臓の生理的剛性である15 kPaゲル上の培養心筋細胞は、現実の高血糖の心筋細胞障害の実体を反映していると考えられた。
4.実施例3:in vivoと同じ剛性環境(15 kPa)で過酸化水素負荷された初代培養心筋細胞の機能評価
(1)方法
実施例1と同様に初代培養心筋細胞を単離した後1〜2日間正常な濃度(5 mM)のグルコースを含む10%FCS加DMEMで培養し、最後に1時間過酸化水素を負荷した(10μM、50μM)。細胞骨格の評価は、α−アクチニン抗体を用いて蛍光免疫染色を行い評価した。
(2)結果
図7に示すように、10μM、50μMの過酸化水素を曝露すると、細胞骨格構造(α-アクチニン)は15 kPaゲル上の培養心筋細胞で崩壊したが、ガラス上ではその崩壊は認められなかった。高グルコース負荷で細胞骨格の崩壊が起きることの原因の一つに酸化ストレスの蓄積が考えられるため、過酸化水素を直接負荷したが、やはり高グルコース負荷と同様の変化がみられた。
5.実施例4:15 mMグルコース濃度が初代培養心筋細胞のROSに及ぼす影響
心筋細胞における慢性合併症に繋がるイベントを確認するため、2型糖尿病患者のありふれた高血糖である10〜15 mMグルコース濃度がミトコンドリアに及ぼす影響を、15 kPaのゲル上の培養心筋細胞と、ガラス上の培養心筋細胞とで比較することを行った。
(1)方法
図8に示すような方法で行った。N−アセチルシステイン(NAC)をROSの除去剤(scavenger)として使用した。まず、新たに調製された初代培養心筋細胞のミトコンドリアにおけるROS蓄積を、蛍光試薬CM-H2DCFDAを指示薬として評価した。CM-H2DCFDAは、細胞膜透過性を有するROSの蛍光指示薬であり細胞内のROS、特に過酸化水素やヒドロキシラジカルによって酸化されることにより緑色の蛍光が増加することが知られている。
15 mMグルコース負荷、あるいは15 mMグルコースにNACを併用負荷した初代培養心筋細胞を24時間培養した後に、CM-H2DCFDA色素を心筋細胞に取り込ませた(37℃、50分)。その後、共焦点レーザー顕微鏡(Nikon)上で、青色光(波長;485 nm)で励起した際の緑色発光(波長;535 nm)を蛍光画像として取得する。
(2)結果
図9に示されるように、正常なグルコース濃度におけるROSの蓄積量は、ガラス支持体よりも15 kPaゲル支持体での培養心筋細胞で顕著に低い値を示した。一方、高グルコース濃度では、ガラス支持体と15 kPaゲル支持体上の培養心筋細胞は共にROS蓄積量が増加した。しかし、ROS除去剤であるNACの作用で15 kPa支持体上の培養心筋細胞では、ガラス上の培養心筋細胞に比較し、高グルコース負荷によるROS蓄積が極めて効率よく除去された。
この結果は、15 kPaゲル上の培養心筋細胞が、ガラス培養群に比べ基底状態のROSの蓄積量が低く、高グルコース負荷で基底状態からの応答性が亢進しており、さらにROS除去剤に対して高い反応性を示すことを示している。
6.実施例5:15 mMグルコース濃度が初代培養心筋細胞のミトコンドリア膜電位に及ぼす影響
(1)方法
ミトコンドリアの膜電位の評価は、JC-I染色により評価する。ミトコンドリア膜電位を検出するプローブであるJC-1色素は、正に荷電しているため、電気陰性的なミトコンドリア内部に蓄積する。JC-I色素によるミトコンドリア膜電位依存的なミトコンドリア内部への蓄積は、緑色(約529 nm)から赤色(約590 nm)への蛍光波長シフトによって示される。すなわち、ミトコンドリアが障害を受けた時には、JC-I色素のミトコンドリア内部への蓄積が減少するため、赤色の比率が低下し、緑色が支配的になってくる。このことから、ミトコンドリアの膜電位は、赤色/緑色の蛍光強度比の減少によって示すことができる(Circulation.2005;111:p2752-2759)。そこで、心筋細胞に24時間の高グルコース負荷を行った後、JC-1色素を取り込ませて(37℃、30分)共焦点レーザー顕微鏡で蛍光画像を取得し評価した。
(2)結果
図10及び図11に示されるように、正常グルコース濃度でのミトコンドリア膜電位は、ガラス支持体での培養心筋細胞よりも、15 kPaゲル支持体上の培養心筋細胞の方がより顕著に高くなっていることが見出された。更に、15 kPaゲル支持体上の培養心筋細胞においては、中程度の高グルコース濃度(15 mM)でミトコンドリア膜電位が、有意に減少するが、ROS除去剤NAC(1 mM)によってROSを除去すると顕著に回復した。この結果は、ミトコンドリア内でのROS蓄積の結果と相関していた。一方でガラス上の培養心筋細胞では、高グルコース負荷で低下した膜電位がROS除去剤によって回復せず、ROS蓄積レベルとミトコンドリア膜電位の減少との間に相関性は見られなかった。即ち、ガラス支持体よりも、15 kPaゲル支持体上の培養心筋細胞の方が、基底状態におけるミトコンドリア活性が高く、かつグルコース濃度上昇に伴うROS蓄積に応じてミトコンドリア活性が低下し、生体内で心筋細胞が酸化ストレスに暴露された際の挙動に近いことを示している。この相違点については次のアポトーシスアッセイの結果と合わせて考察する。
7.実施例6:培養支持体の相違による初代培養心筋細胞のアポトーシス(細胞死)への影響
(1)方法
15 kPaゲル支持体上とガラス支持体上での初代培養心筋細胞のアポトーシスの相違を比較するため、In situ Cell Death Detection kit-FITC (Roche)を用いてTUNEL(terminal deoxynucleotidyl-transferase-mediated dUTP nick end-labeling)アッセイを行った。なお、TUNELアッセイは、アポトーシスのシグナル伝達経路の中で派生してくるDNA断片を検知する一般的な方法である(Cell Death and Disease(2014)5, e1479; doi:10.1038/cddis. 2014.430)。DNAの断片化を起こした細胞をラベル化し緑色の蛍光として捕捉することができる。細胞核を染めるDAPI色素と二重染色することで、一視野あたりの死細胞(TUNEL陽性核/全核数)を算出することができる。心筋細胞を高グルコース負荷した後、TUNEL色素を取り込ませ反応させた(37℃、60分)。その後、DAPIを含んだ蛍光劣化防止剤で封入し正立蛍光顕微鏡で画像を取得して解析した。
(2)結果
a)培養支持体の相違による初代培養心筋細胞のアポトーシス確認
図12に示すように、DNaseI処理によるTUNEL陽性核は、ガラス支持体と15 kPaゲル支持体のどちらでも同様に観察された。この結果から、15 kPaゲル支持体上でのアポトーシス細胞を評価できると考えられた。
b)ガラス支持体上の心筋細胞に対す高グルコース及びROS除外剤の効果
図13及び図15に示すように、高グルコース濃度がアポトーシスにもたらす影響を、TUNELアッセイで評価した。その結果、ガラス支持体上での培養心筋細胞では正常グルコース濃度においてもアポトーシスを認め、高グルコース濃度に曝露するとアポトーシスが著明に誘導された。更にROS除外剤NAC(1 mM)を添加してもアポトーシスは抑制されなかった。
c)15 kPaゲル支持体上のTUNEL陽性細胞に対する高グルコースの影響
図14及び図15に示すように、15 kPaゲル支持体上の培養心筋細胞中のTUNEL陽性核は、ガラス支持体上の培養心筋細胞と比較すると顕著に少なかった。
高グルコース濃度に曝露することにより、ガラス上でも15 kPaゲル支持体上でも正常血糖値に該当する5 mMグルコースの時よりTUNEL陽性核が増加した。しかし高グルコース濃度に曝露時にもガラス上の細胞に比較し、15 kPaゲル支持体上ではTUNEL陽性を示す核が少なかった。さらにこのグルコースの影響は、ROS除外剤のNAC(1 mM)を使用することにより、15 kPaゲル支持体上の培養心筋細胞では軽減された。
図13〜図14を定量化した図15に示されるように、15 kPaゲル支持体上での培養では、ガラス支持体上より、アポトーシスが起こり難いことを示しており、長期間培養時でも細胞障害が軽減され、より良い状態を維持できる可能性が示唆された。さらにガラス支持体上の心筋細胞では、高血糖に伴ってROSの蓄積が起きる際、不可逆的な障害が発生し、ミトコンドリア膜電位の低下、そしてアポトーシスが開始される。したがってROS除去剤で除去しても、アポトーシスが抑制されない。一方、15 kPaゲル支持体上の心筋細胞では、ROSの蓄積による障害が可逆的で、細胞死が起こりにくく、ROS除去剤でROSを除去することによって、ミトコンドリアの膜電位が回復することと考えられた。このように、本発明の心筋細胞モデルでは長期間培養時の酸化ストレスに関連した不可逆的な細胞障害を軽減でき、心筋細胞に対する慢性的な酸化ストレス負荷の影響を評価することにふさわしいモデルであると考えられる。
また既存の培養方法ではありふれた高血糖レベルのグルコース負荷(10〜15 mM)では心筋細胞の変化をとらえることは不可能であったが、我々の実験システムではより敏感に、より正確に心筋細胞の挙動をとらえることができることが分かった。
8.実施例7:高グルコース負荷後にROS除去剤を投与した際の培養心筋細胞のミトコンドリア膜電位の評価
(1) 方法
実施例5と同様に行った。15 kPaゲル支持体上とガラス支持体上での初代培養心筋細胞を培養し、高グルコース負荷を行った(15 mM、24時間)。その後、培養液をROS除去剤、あるいは正常グルコース濃度(5 mM)のものに交換して24時間培養した後JC-1色素を取り込ませて(37℃、30分)共焦点レーザー顕微鏡で蛍光画像を取得し評価した。
(2) 結果
図16に示すように、15 kPaゲル上の培養心筋細胞のミトコンドリア膜電位は、高グルコース濃度(15 mM)による培養の後にROS除去剤の入った培養液に交換することで回復した。また、正常グルコース濃度の培養液に交換すると、部分的にミトコンドリア膜電位が回復することがわかった。一方、ガラス支持体上の心筋細胞のミトコンドリア膜電位は、ROS除去剤入りの培養液に交換、あるいは正常グルコース濃度の培養液に交換しても回復しないことがわかった。
以上の結果より、15 kPaゲル上の心筋細胞は高グルコース負荷によりミトコンドリア膜電位が著しく低下するが、後からROS除去剤を投与することで正常レベルまで回復することが示された。この作用は、ガラス支持体上の心筋細胞ではみることができなかった。これまで、高グルコース負荷による酸化ストレスからミトコンドリア機能異常が生じると心臓はきわめて重大な影響を受けることが知られていたが、既存の細胞培養方法ではそれを正確に発現することが難しかった。しかし、我々の実験システムを利用することにより、細胞内ROSの除去が培養心筋細胞の代謝障害の治療に貢献できるという新たな可能性を見出した。
9.実施例8:骨格筋細胞における高血糖の影響
骨格筋細胞における高血糖の影響を確認するため、2型糖尿病患者のありふれた高血糖である10〜15 mMグルコース濃度がミトコンドリアに及ぼす影響を、15 kPaのゲル上の培養骨格筋細胞と、ガラス上の培養骨格筋細胞とで比較することを行った。
(1)方法
ラット骨格筋芽細胞はコスモバイオから入手した。細胞と共に提供された分化用培地(内容非公開)を用い、コスモバイオ指定のプロトコールに則って骨格筋細胞に分化させた。この骨格筋細胞を実施例1に記載と同様の方法で準備したカバーグラス上、または15 kPaのゲル上に蒔いた。実施例5に記載の方法で高血糖処理およびROS除去剤(NAC)処理を行い、ROS蓄積を蛍光試薬CM-H2DCFDAによる染色(図17A)で、ミトコンドリア膜電位をJC-1による染色(図17B)で評価した。
(2)結果
図17に示すように、培養心筋細胞と同様、培養骨格筋細胞においても正常グルコース濃度でのROS蓄積はガラス支持体での培養よりも15 kPaゲル支持体上の培養の方がより顕著に低く、またミトコンドリア膜電位は、ガラス支持体での培養よりも15 kPaゲル支持体上の培養の方がより顕著に高くなっていることが見出された。更に、15 kPaゲル支持体上の培養骨格筋細胞においては、中程度の高グルコース濃度(15 mM)でROSが優位に蓄積してミトコンドリア膜電位が有意に減少するが、ROS除去剤NAC(1 mM)によってROSが除去されると同時にミトコンドリア膜電位も顕著に回復した。一方ガラス支持体上の骨格筋細胞においてはROS除去剤によるROSの低下やミトコンドリア膜電位の回復は見られなかった。この結果は、培養心筋細胞の場合と同様に、ガラス支持体よりも15 kPaゲル支持体上の培養骨格筋細胞の方が、生体内で骨格筋細胞が酸化ストレスに暴露された際の挙動に近いことを示している。
10.実施例9:500 Paの支持体上の初代培養肝細胞と三次元培養Spheroidのリファンピシン反応性の比較
(1)方法
ヒト初代培養肝細胞において、従来の初代培養肝細胞培養で最も生体内の機能を忠実に反映しうると考えられているスフェロイド培養に対し、正常肝組織の剛性に一致する500 Paの支持体の優位性の有無を評価した。IV型コラーゲンで表面をコーティングした500 Paの支持体または細胞培養で通常使用されるが非生理的に高い剛性であるガラスにヒト初代培養肝細胞を蒔き、実施例9と同様に培養した。またCell-able(住友ベークライト)を用い、ヒト初代培養肝細胞でスフェロイドを形成させた。12日間培養後、CYP3A4を誘導することで知られているリファンピシンを用い、0または40 μMのリファンピシンで46時間刺激した。CYP3A4活性をP450-Glo CYP3A4 Assay (Luciferin-IPA) (Promega)で測定して細胞数で除し、リファンピシン刺激時のCYP3A4活性を基底状態のCYP3A4活性で除することにより、リファンピシンによるCYP3A4活性の上昇度を求めた。
(2)結果
ヒト初代培養細胞においてリファンピシン刺激によるCYP3A4活性上昇度は、500 Paの支持体が最高であった。したがって正常肝組織の剛性に近い支持体上での培養が、スフェロイドによる三次元培養に比較し、CYP3A4発現を誘導する薬剤刺激時でCYP3A4活性上昇において優位であることが示唆された(図18)。
11.実施例10:特発性薬剤性肝障害の予測
ジクロフェナク、トログリタゾン、ラニチジン等は、特発性薬剤肝障害を起こすことが知られている。一方、アセトアミノフェン、エタノール等は、過剰摂取すれば肝毒性を示すものの、特発性薬剤肝障害を惹起することはない。特発性薬剤肝障害のリスクをスクリーニングするための評価系を探索するため、以下の実験を行った。
(1)方法
正常肝組織の硬度に一致する500 Paの支持体上で培養されている初代培養肝細胞は、細胞培養で通常使用されるが非生理的に高い硬度であるガラス上で培養されている初代培養肝細胞に比較し、生体内における肝細胞機能をより正確に発現すると想定される。そこで化合物による特発性薬剤性肝障害の発生予測において、500 Paの支持体上で培養されている初代培養肝細胞の優位性の証明を目指した。High-mobility group box 1 protein (HMGB1)は細胞死の過程で細胞外に放出され、免疫細胞を活性化する作用を持つ(Immunol Rev. 2017 Nov;280(1):74-82)。そこで特発性薬剤性肝障害の過程の早期検出マーカーに、肝細胞が放出するHMGB1が有用であるとの仮説を設定し、その証明を行った。
ヒト初代培養肝細胞を実施例9に記載の方法と同様に2日間培養後、5%FCS加D-MEM (低グルコース)(L−グルタミン、フェノールレッド含有)に培養培地を交換し、ジクロフェナク(特発性薬剤性肝障害を起こしうる化合物として知られる)あるいはアセトアミノフェン(特発性薬剤性肝障害を起こさない化合物として知られる)を加えて24時間培養し、培養液中に放出されたHMGB1濃度をHMGB1 ELISA Kit2(シノテスト)を用いてELISAにて定量した。
(2)結果
ジクロフェナクは250 μM以上の高濃度で、アセトアミノフェンは2.5 mM以上の高濃度で細胞毒性を示すことが報告されている(J Toxicol Sci. 2016;41(5):605-15)。特発性薬剤性肝障害を起こしうるジクロフェナク刺激の場合、500 Paの支持体において既報の毒性領域と一致して濃度依存性に肝細胞によるHMGB1放出が見られた。ガラスにおいては毒性領域より低濃度のジクロフェナクでHMGB1放出が見られた。また特発性薬剤性肝障害を起こさないアセトアミノフェン刺激の場合、500 Paの支持体、ガラス支持体のいずれでも毒性領域である高濃度でもHMGB1放出は見られなかった。したがってHMGB1は化合物による特発性薬剤性肝障害の発生を予測するマーカーになりうること、またその予測において正常肝組織の剛性と同等な支持体上で培養された初代培養肝細胞が有用であることが示唆された(図19)。
12.実施例11:非アルコール性脂肪肝炎のメカニズム1
非アルコール性脂肪肝炎は、生活習慣が原因で肝細胞が死滅しないまでも、肝細胞が障害され引き起こされると考えられる。
非アルコール性脂肪肝炎のメカニズムを解明するため、以下の実験を行った。
(1)方法
ラットの初代培養肝細胞は以下の方法で採取した。
5〜6週齢のWistar rat(オス)に麻酔をした後、腹部を切開し門脈がよくみえるように結合組織類を剥離した。20 Gのサーフローで門脈をクランプし、クリップで固定した。37℃に加温したEGTA灌流液で灌流し肝臓の血液を洗い流した。肝臓が黄土色に変わった後、37℃に加温したコラゲナーゼ液で灌流した。十分にコラゲナーゼを作用させた後、肝臓を摘出しシャーレに移し、ハサミやメスで細断した。その後、遠心分離、セルストレイナーでろ過し、再度遠心分離した。沈殿に培養液を加えピペッティング後、トリパンブルー染色で細胞の生存率を確認した。生存率が75%以下のものは除外した。同時に細胞数のカウントも行い3.5x10^5個/well(6ウェルプレート)ずつ細胞を500 Paの支持体、またはガラス支持体に蒔き、5%FCS及び Hepatocyte Maintenance Supplement Pack(サーモフィッシャー株式会社CM4000)加D-MEM(低グルコース)(L−グルタミン、フェノールレッド含有)で3日間培養した。 その後、被験物質として、フルクトース(5.5mM)、パルミチン酸(0.5mM)、又はオレイン酸−パルミチン酸(0.5mM、OA:PA=2:1)を添加し、24時間後に脂肪滴染色、及びROSの定量を行った。被験物質を添加する際、培養培地は5 mMグルコースを含む10%FCS加DMEMに交換した。コントロールには何も加えなかった。コントロール群は脂質を溶解するときに使用した10%ウシ血清アルブミンを添加した。
脂肪滴染色には、ライブセルイメージング用色素LipiDye(Lipid Droplet Green))を使用した。Lipidyeは細胞内の脂肪滴を高い感度で染色する蛍光色素である(参考文献;Yamaguchi E, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 54: 4539-4543 (2015))。LipiDyeを最終濃度1 μMになるようにDMEM(FCS及び抗生剤未添加)で希釈し、6well dishに1-2mlずつ添加した。37℃で2時間インキュベーションし、HBSS(+)で1回洗浄後、Nikon A1 共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
(2)結果
図20に示すように脂肪滴の蓄積は、ガラス支持体上で培養された初代培養肝細胞においては、コントロール(control)と、フルクトース(fructose)、パルミチン酸(PA)、又はオレイン酸−パルミチン酸混合液(OA:PA(2:1))との間に差は認められなかった。一方500Paの支持体上で培養された初代培養肝細胞では、フルクトース、パルミチン酸、オレイン酸−パルミチン酸混合液を添加された細胞は、コントロールと比較して顕著な脂肪滴の蓄積が認められた。このことから、ガラス支持体では、細胞への脂肪の蓄積は観察できないが、正常肝組織の剛性と同等な支持体上で培養された初代培養肝細胞では、脂肪の蓄積をin vitroで発現できることが示された。
また、ROSの蓄積に関しては、図21に示すように、ガラス支持体上で培養された初代培養肝細胞のコントロールは、500Paの支持体上で培養された初代培養肝細胞のコントロールと比較して、ROSの蓄積が多く認められた。ガラス支持体上で培養された初代培養肝細胞でもパルミチン酸、パルミチン酸−オレイン酸混合液を添加した細胞では、ROSの蓄積が認められた。しかし、これらの細胞よりも、500Paの支持体上で培養された初代培養肝細胞であって、フルクトース、パルミチン酸、オレイン酸−パルミチン酸混合液を添加された細胞は、ガラス支持体上で培養された初代培養肝細胞よりもROSの蓄積が多かった。
このことから、ガラス支持体では、細胞へのROSの蓄積を十分に評価できないが、正常肝組織の剛性と同等な支持体上で培養された初代培養肝細胞では、ROSの蓄積をin vitroで発現できることが示された。
以上の結果から、500Paの支持体上で培養された初代培養肝細胞は、非アルコール性脂肪肝炎の病態モデルとして非アルコール性脂肪肝炎のメカニズムの解明に使用できると考えられた。
13.実施例12:非アルコール性脂肪肝炎のメカニズム2
非アルコール性脂肪肝炎のメカニズムを解明するため、以下の実験を行った。
(1)方法
培養支持体の硬度の相違による、肝細胞のマクロファージに対する炎症惹起作用への影響を評価するため、ラット初代培養肝細胞を、正常肝組織の硬度に一致する500 Paのポリアクリルアミドゲル、または細胞培養で通常使用されるが非生理的に高い硬度であるガラス上で培養した。細胞の接着を促すため、それぞれの培養支持体の表面をIV型コラーゲンでコーティングした。翌日、ラット初代培養肝細胞を含むウェルに106個/ウェルのマウス腹腔マクロファージを加え、共培養を開始した。マウス腹腔マクロファージは、invitrogenの「マウス初代腹腔マクロファージへの遺伝子導入の検討」に記載の方法でチオグリコネート刺激、および腹腔マクロファージの採取を行った。具体的には、C57/BL6J マウス腹腔内に5%thioglycollate medium (Sigma) 2 mlを注入し、3.5日後に断頭の上、シリンジ及び注射針を用いて計15mlのPBS(7 ml+8 ml) にて2 回腹腔内を洗浄し腹腔マクロファージを回収した。回収した腹腔洗浄液は1000rpm、4℃、5 分間遠心後、PBSにて2 回洗浄し、細胞数を算定した。同肝細胞-マクロファージ共培養開始24時間後にフルクトース刺激を加え、その24時間後に培養液を採取してTNFα分泌量をELISAにて測定した。
(2)結果
図22に示すように、500 Paのポリアクリルアミドゲルを用いた場合、マクロファージ共培養でTNFα分泌量が増加しており、マクロファージによるTNFα分泌を観測できた。フルクトース刺激による過栄養状態でTNFα分泌がさらに有意に増加しており、脂肪肝の状態を模倣した肝細胞がマクロファージを刺激し、マクロファージによるTNFα分泌を増加させたものと考えられた。一方ガラスを用いた場合でも、マクロファージ共培養でTNFα分泌量が増加しており、マクロファージによるTNFα分泌を観測できているが、フルクトース刺激によるTNFα分泌増加は見られなかった。
これらのことから、500 Paのポリアクリルアミドゲル上で肝細胞に脂肪肝の状態を誘導する場合、マクロファージに炎症を惹起することが可能であり、非アルコール性肝炎の発生過程を体外でモデルできることが示唆された。

Claims (24)

  1. 細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体と細胞とを接触させる工程と、
    in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現した細胞の特性をin vitroで維持する工程と、
    前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程と、
    入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程と、
    を含む、細胞の反応の評価方法(ただし、前記細胞に間葉系幹細胞は含まない)。
  2. 前記シグナルは、化学的因子及、物理的因子及び生物学的因子よりなる群から選択される少なくとも一つの因子を細胞に負荷することによって細胞に入力される、請求項1に記載の方法。
  3. 化学的因子が、化合物、イオン、気体、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ポリフェノール類、サイトカイン類及びケモカインよりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 物理的因子が、細胞の周囲環境の剛性、圧力、張力、光、放射線、酸素濃度、pH及び温度よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 生物学的因子が、細菌、真菌、ウイルス、アレルゲン、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞及びこれらに含まれる成分より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 細胞が肝細胞であり、支持体の剛性が0.2〜5kpaである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 細胞の反応が薬物代謝酵素の誘導、非アルコール性脂肪肝炎のメカニズム、又は特発性肝障害を示す、請求項6に記載の方法。
  8. 細胞の反応が前記因子の効能又は毒性である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  9. 細胞が心筋細胞であり、支持体の剛性が5〜100kpaである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  10. 化学的因子が酸化ストレス誘導物質であり、細胞の反応が酸化ストレス応答である、請求項9に記載の方法。
  11. 酸化ストレス誘導物質が、グルコースである、請求項10に記載の方法。
  12. 細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体と細胞とを接触させる工程と、
    in vivoの細胞の特性をin vitroで導入及び/又は発現した細胞の特性をin vitroで維持する工程と、
    前記特性が導入、及び/又は維持されている細胞に、シグナルを入力する工程と、
    シグナルの入力に先立って、シグナルの入力と同時に、又はシグナルの入力の後に、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質と細胞とを接触させる工程と、
    入力されたシグナルに対する細胞の反応を測定する工程と、
    を含む、疾患、又は障害を予防、治療又は改善するための候補物質のスクリーニング方法(ただし、前記細胞に間葉系幹細胞は含まない)。
  13. 前記シグナルは、化学的因子及、物理的因子及び生物学的因子よりなる群から選択される少なくとも一つの因子を細胞に負荷することによって細胞に入力される、請求項12に記載の方法。
  14. 化学的因子が、化合物、イオン、気体、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ポリフェノール類、サイトカイン類及びケモカインよりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 物理的因子が、細胞の周囲環境の剛性、圧力、張力、光、放射線、酸素濃度、pH及び温度よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項12又は13に記載の方法。
  16. 生物学的因子が、細菌、真菌、ウイルス、アレルゲン、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞及びこれらに含まれる成分より選択される少なくとも一種である、請求項12又は13に記載の方法。
  17. 細胞が肝細胞であり、支持体の剛性が0.2〜5kpaである、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 細胞の反応が薬物代謝酵素の誘導、非アルコール性脂肪肝炎のメカニズム、又は特発性肝障害を示す、請求項17に記載の方法。
  19. 細胞の反応が前記因子の効能又は毒性である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
  20. 細胞が心筋細胞であり、支持体の剛性が5〜100kPaである、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
  21. 化学的因子が酸化ストレス誘導物質であり、細胞の反応が酸化ストレス応答である、請求項20に記載の方法。
  22. 酸化ストレス誘導物質が、グルコースである、請求項20に記載の方法。
  23. 細胞のin vivoでの特性をin vitroで発現するために、細胞が生体内で認識する周囲環境の剛性を反映した剛性を有し、かつ前記剛性が剪断弾性率で100kPa以下である支持体を含む、請求項1〜11に記載の細胞の反応の評価方法、又は請求項12〜22に記載のスクリーニング方法を実施するためのキット。
  24. さらに目的とする細胞の反応の評価又はスクリーニングを実施するために適した細胞を含む、請求項23に記載のキット。
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