JPWO2018168582A1 - 殺虫剤および殺虫剤の製造方法 - Google Patents

殺虫剤および殺虫剤の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2018168582A1
JPWO2018168582A1 JP2019505911A JP2019505911A JPWO2018168582A1 JP WO2018168582 A1 JPWO2018168582 A1 JP WO2018168582A1 JP 2019505911 A JP2019505911 A JP 2019505911A JP 2019505911 A JP2019505911 A JP 2019505911A JP WO2018168582 A1 JPWO2018168582 A1 JP WO2018168582A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
insecticide
fatty acid
acid
proteobacteria
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019505911A
Other languages
English (en)
Inventor
大野 勝也
勝也 大野
久美子 高田
久美子 高田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ibiden Co Ltd
Original Assignee
Ibiden Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ibiden Co Ltd filed Critical Ibiden Co Ltd
Publication of JPWO2018168582A1 publication Critical patent/JPWO2018168582A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N63/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators containing microorganisms, viruses, microbial fungi, animals or substances produced by, or obtained from, microorganisms, viruses, microbial fungi or animals, e.g. enzymes or fermentates
    • A01N63/50Isolated enzymes; Isolated proteins
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P1/00Preparation of compounds or compositions, not provided for in groups C12P3/00 - C12P39/00, by using microorganisms or enzymes
    • C12P1/04Preparation of compounds or compositions, not provided for in groups C12P3/00 - C12P39/00, by using microorganisms or enzymes by using bacteria

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Dentistry (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Pest Control & Pesticides (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Agronomy & Crop Science (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

土壌汚染や毒性が低く、殺虫効果に優れた殺虫剤、およびその製造方法を提供する。炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させることで得られる脂肪酸代謝物を含む殺虫剤、および炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させる脂肪酸代謝工程を含む、脂肪酸代謝物を含む殺虫剤の製造方法。

Description

本発明は、殺虫剤および殺虫剤の製造方法に関する。
従来より、植物害虫に対し殺虫を目的として、除虫菊の有効成分であるピレトリン、そしてピレトリンの誘導体由来のアレスリンなどの合成ピレスロイドなどをはじめとした薬剤が使用されてきた。ピレスロイド類は、哺乳類や鳥類に対する毒性は低い一方、昆虫類の神経細胞に強力に作用して神経毒をもたらし殺虫する。また、近年では昆虫類の神経伝達物質アセチルコリン受容体に結合することで殺虫するネオニコチノイド系殺虫剤も広範囲に殺虫剤として使用されている。
しかしながら、このような虫にとって一般的に毒となる成分を用いて直接殺虫する殺虫方法では、受粉などに必要な有益昆虫や天敵虫も一様に殺虫してしまうという問題がある。生態系の乱れが懸念される。また、ネオニコチノイドのように植物への浸透移行性などにより残効が長い殺虫剤では、有益昆虫が長期にわたって影響を受けてしまう恐れもある。さらに、過多の農薬散布による殺虫剤耐性虫の発生も問題となっている。土壌汚染などの環境への負荷の観点からも、化学合成農薬の使用量の削減が望まれている。
一方、虫に対する毒ではなく、オレイン酸や脂肪酸エステル、合成でんぷんなどを有効成分とした気門封鎖系の殺虫剤の使用も知られている。気門封鎖型殺虫剤は、害虫の気門を塞ぎ、窒息させることで効果を発揮するため、大型の有益昆虫類を殺虫するリスクや薬剤耐性虫を発生させるリスクが少ないと考えられている。
また、害虫を忌避する方法や化学合成農薬を使用せずに天然物質に由来する薬剤を用いて植物を病害虫から防除する方法などの対策が報告されている。天然物質に由来する薬剤としては、例えば、特許文献1には、微生物バイオサーファクタントが記載されている。
特表2008−501039号公報
特許文献1には、バイオサーファクタントとして、ラムノリピドを含有させた発酵ブロス濾液を用いた病害虫を防除する方法が開示されており、これをイエバエや線虫を防除するための殺虫剤として使用することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の薬剤では、蛾の幼虫のような大型の害虫まで殺虫できないという問題があった。
本発明は、前記課題に鑑み、土壌汚染や毒性が低く、殺虫効果に優れた殺虫剤、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/l(リットル)の溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させることで得られる脂肪酸代謝物を含む殺虫剤に関する。
前記脂肪酸が、20℃で液体の脂肪酸である殺虫剤が好ましい。
前記代謝が、Mg、P、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種以上のミネラルの存在下での代謝である殺虫剤が好ましい。
前記プロテオバクテリアが、前培養されたプロテオバクテリアである殺虫剤が好ましい。
前記前培養されたプロテオバクテリアが、菌数1×108〜9×1010cells/ml(ミリリットル)に前培養されたプロテオバクテリアである殺虫剤が好ましい。
前記殺虫剤が、バイオサーファクタントを含む殺虫剤であることが好ましい。
前記代謝が、20〜30℃の条件下での代謝である殺虫剤が好ましい。
また、本発明は、炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させる脂肪酸代謝工程を含む、脂肪酸代謝物を含む殺虫剤の製造方法に関する。
前記脂肪酸が、20℃で液体の脂肪酸である殺虫剤の製造方法が好ましい。
前記脂肪酸代謝工程を、Mg、P、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種以上のミネラルの存在下で実施する殺虫剤の製造方法が好ましい。
前記プロテオバクテリアが、前培養されたプロテオバクテリアである殺虫剤の製造方法が好ましい。
前記前培養されたプロテオバクテリアが、菌数1×108〜9×1010cells/mlに前培養されたプロテオバクテリアである殺虫剤の製造方法が好ましい。
バイオサーファクタントを含む殺虫剤の製造方法である殺虫剤の製造方法が好ましい。
前記脂肪酸代謝工程を、20〜30℃の条件下で実施する殺虫剤の製造方法が好ましい。
本発明の殺虫剤は、土壌汚染や毒性が低く、殺虫効果に優れる。また、本発明の殺虫剤の製造方法によれば、土壌汚染や毒性が低く、殺虫効果に優れる殺虫剤を製造することができる。
ワタアブラムシ成虫に対する殺虫効果を示すグラフである。
殺虫剤
本発明の殺虫剤は、炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させることで得られる脂肪酸代謝物を含むことを特徴とする。
脂肪酸代謝物を害虫に接触させることで、害虫、特には微小害虫を気門封鎖によって殺虫することができる。本発明の殺虫剤は、殺虫剤に対する薬剤抵抗性を獲得しやすいような世代交代が早い微小害虫や、従来の殺虫剤に対する薬剤抵抗性を発達させた害虫にも有効であると考えられる。かつ脂肪酸代謝物は、化学合成農薬と比べその毒性が遥かに低い。また、脂肪酸代謝物を植物に施用した場合、トライコーム等の発達が確認できることから、脂肪酸代謝物は、感染特異的タンパク質(pathogenesis-related (PR) protein)の生成に関与する遺伝子群やサリチル酸またはジャスモン酸を生成する酵素産生に関わる遺伝子群などを活性化して、植物に全身獲得抵抗性を誘導していると考えられる。これは、脂肪酸代謝物中に抵抗性誘導に関係するサリチル酸経路やジャスモン酸経路を活性化する物質またはこの物質の前駆体が含まれていることによると考えられる。
本発明における代謝とは、0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下においてプロテオバクテリアが外分泌または内分泌する酵素等により炭素数4〜30の脂肪酸の分解が行われることをいう。例えば、0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下、脂肪酸を含有する培地でプロテオバクテリアを培養する方法が挙げられる。
プロテオバクテリアは、脂肪酸の代謝に関わる酵素であるリポキシゲナーゼ(lipoxygenase:LOX)を産生する遺伝子を持っており、脂肪酸代謝物を生成できる。
酸素濃度の調整によって、脂肪酸が低分子化される。そして、バイオサーファクタントと脂肪酸代謝物との混合物によるミセルが形成され、ミセル状になることで比較的大型の害虫にも殺虫作用が有効になったものと推定される。ミセルはバイオサーファクタントだけでは形成されない。このため、特表2008−501039号公報記載の技術では理論上ミセルは形成されないため、本発明の効果は生じ得ない。
本発明にて用いられる脂肪酸の炭素数は4〜30であり、10〜20が好ましい。炭素数が4未満の場合は、融点・沸点が低いため、培養時の温度で揮発性が高まり培地中に残存しにくくなる傾向がある。また、炭素数が30を超える場合は、融点・沸点が高くなるため、培養時の温度で固体となり培地と混合できず分離してしまう傾向がある。ただし、融点は水素結合の数によって炭素数のみに依存しない場合もある。
本発明において用いられる脂肪酸は、代謝効率の観点や培地中で固化することを抑制する観点から、20〜30℃で液体であることが好ましく、20℃で液体であることがより好ましい。
本発明の脂肪酸は、飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のいずれか、または両方を含む混合物とすることができる。また、植物油やグリセリドの形態や遊離脂肪酸を用いることができるが、分解速度に優れるという理由から遊離脂肪酸(モノカルボン酸)が好ましい。
炭素数4〜30の遊離脂肪酸としては、酪酸(ブチル酸)、吉草酸(バレリアン酸)、カプロン酸、エナント酸(ヘプチル酸)、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられ、なかでも炭素数が10〜20のカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸が好ましく、炭素数が18のオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸がより好ましい。
脂肪酸を含有する培地を使用する場合の脂肪酸の含有量は、120g/l以下が好ましく、100g/l以下がより好ましく、60g/l以下がさらに好ましい。120g/lを超える場合は、培地の水分との乳化が困難となり、代謝効率が悪化する恐れやプロテオバクテリアの生育を阻害する恐れがある。また、脂肪酸の含有量の下限は特に限定されないが、1.0g/l以上が好ましい。
脂肪酸を含有する培地は、他にミネラル成分を含有することが好ましい。ミネラル成分としては、特に限定されず微生物培養に通常用いられるミネラル成分を挙げることができる。例えば、マグネシウム(Mg)、リン(P)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)を有する成分が挙げられる。これらの成分は単独で使用することも、複数を併用することもできる。好ましくはこれらの成分のうちの2種類、さらに好ましくは3種類以上が使用され得る。培地中のミネラル成分の含有量は特に限定されず、従来の好気性細菌の培養方法で使用される量とすることができるが、植物への施用時に塩害が発生する恐れがあるため、好ましくは15g/l以下、より好ましくは10g/l以下で使用され得る。
本発明にて用いられるプロテオバクテリアは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。好ましくは脂肪酸の代謝効率や生育効率の観点から、増殖に適した温度(至適温度)が10〜40℃のプロテオバクテリアが好ましく、20〜30℃のプロテオバクテリアがより好ましい。
プロテオバクテリアは、脂肪酸の代謝効率に優れるという理由から、前培養されたプロテオバクテリアであることが好ましく、菌数が1×108〜9×1010cells/mlまで前培養されていることがより好ましい。
本発明においては、前述のように、代謝は、0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下で行われる。溶存酸素濃度が0.1mg/l未満の場合は、プロテオバクテリアの活動が低下し脂肪酸の代謝効率が極めて低くなる傾向がある。また、溶存酸素濃度が8mg/lを超える場合は、プロテオバクテリアによる代謝工程と並行して、基質である脂肪酸の培地中の酸素による分解が進行してしまい、代謝効率が低下し、ひいては有効成分である代謝産物の産生量が低下してしまう恐れがある。より好ましくは、溶存酸素濃度は0.1〜5mg/lであり、さらに好ましくは0.1〜4mg/lである。なお、溶存酸素濃度は株式会社堀場製作所製の溶存酸素計でPO電極に隔膜ガルバニ電極法または隔膜ポーラログラフ法により測定される値とする。
代謝における温度は使用するプロテオバクテリアに応じて適宜調整することができ、脂肪酸の代謝効率の観点から、20〜30℃が好ましい。
本発明において、殺虫剤は、脂肪酸代謝物に加えバイオサーファクタントを含有し得る。脂肪酸代謝物が水に分散されやすくなり、殺虫剤の取扱性の観点から好ましいと考えられる。本発明に係るバイオサーファクタントとは、微生物が疎水性の高い物質を取り込むために産生し、細胞外へと分泌する界面活性剤様の物質を意味する。本発明において、プロテオバクテリアによって分泌されたバイオサーファクタントは、脂肪酸代謝物の水への分散も容易にするため、脂肪酸代謝物を含む殺虫剤の噴霧処理などが効率よく簡単に行えるようになる。しかしながら、バイオサーファクタントとしては、脂肪酸の分解時に本発明のプロテオバクテリアによって産生されたバイオサーファクタントだけではなく、他の微生物が産生したバイオサーファクタントが使用されてもよく、すなわち、本発明の殺虫剤には他の微生物によって産生されたバイオサーファクタントがさらに添加されてもよい。人工的に合成された界面活性剤と比較して、バイオサーファクタントは生物に関する毒性が低く、また、生分解性も高いため、より環境に優しい殺虫剤が得られると考えられる。また、プロテオバクテリアによる脂肪酸分解を促進させるために、他の微生物が産生したバイオサーファクタントが、プロテオバクテリアによる脂肪酸分解において添加されてもよい。プロテオバクテリアによる脂肪酸の取り込みが促進される可能性がある。
本発明の殺虫剤は、土壌汚染や毒性は低いが、殺虫効果には優れる気門封鎖型殺虫剤である。さらに、本発明の殺虫剤は、植物に施用された場合に、植物に全身獲得抵抗性を誘導して抵抗性遺伝子発現量を増加させ、害虫に対する殺虫成分を植物に産生させることができる。しかも、本発明の殺虫剤は、サリチル酸経路およびジャスモン酸経路ともに、上流および下流の遺伝子の両方を発現させることができるので、抵抗性誘導が持続し、持続的な殺虫効果が得られると考えられる。
本発明の殺虫剤は、微小害虫を殺虫するために用いられ得る。微小害虫としては、これらに限定される訳ではないが、ワタアブラムシなどのアブラムシ科、ハダニ科、コガネムシ科、ヤガ科、ハバチ科などの害虫および/またはその幼虫が例示される。
本発明の殺虫剤の施用方法としては特に限定されない。例えば、害虫、害虫のついた植物および/または土壌に施用することが可能である。また、施用される植物も限定されるものではなく、植物一般に対して良好に用いることができる。例えば、ナス科、ウリ科、バラ科などの双子葉類植物、イネ科などの単子葉類植物が挙げられる。
製造方法
本発明の脂肪酸代謝物を含む殺虫剤の製造方法は、炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させる脂肪酸代謝工程を含むことを特徴とする。
本発明における脂肪酸代謝工程は、0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下においてプロテオバクテリアが外分泌または内分泌する酵素等により炭素数4〜30の脂肪酸の分解が行われる工程である。例えば、0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下、脂肪酸を含有する培地でプロテオバクテリアを培養することにより行われる工程が挙げられる。
脂肪酸代謝工程における溶存酸素濃度は、0.1〜8mg/lである。溶存酸素濃度が0.1mg/l未満の場合は、プロテオバクテリアの活動が低下し脂肪酸の代謝効率が極めて低くなる傾向がある。また、溶存酸素濃度が8mg/lを超える場合は、プロテオバクテリアによる代謝工程と並行して、基質である脂肪酸の培地中の酸素による分解が進行してしまい、代謝効率が低下し、ひいては有効成分である代謝産物の産生量が低下してしまう恐れがある。より好ましくは、溶存酸素濃度は0.1〜5mg/lであり、さらに好ましくは0.1〜4mg/lである。なお、溶存酸素濃度は株式会社堀場製作所製の溶存酸素計でPO電極に隔膜ガルバニ電極法または隔膜ポーラログラフ法により測定される値とする。
溶存酸素濃度は、培養容器、振とう数、通気量などによって、調整することができる。
脂肪酸代謝工程における培養条件は、溶存酸素濃度を所定の範囲とすること以外は、従来の好気性細菌を培養する条件と同様の条件とすることができる。例えば、フラスコによる振とうや、スピナーフラスコまたはジャーファメンターによる通気培養により3〜7日間培養する方法が挙げられる。
培養日数は、脂肪酸の乳化、分解等が充分に行われる日数とすることが好ましいが、撹拌や菌量によって培養日数は変化する。なお、脂肪酸代謝工程の終了は、脂肪酸の分解状態を、波長230nmにおける吸光度の測定、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)等で確認することが好ましい。
脂肪酸代謝工程における温度は使用するプロテオバクテリアに応じて適宜調整することができ、脂肪酸の代謝効率の観点から、20〜30℃の条件下で実施することが好ましい。
脂肪酸代謝工程における脂肪酸およびプロテオバクテリアは、本発明の殺虫剤の説明で前述したものを使用することができる。
なお、プロテオバクテリアの前培養工程としては、特に限定されず通常の好気性細菌の培養方法とすることができる。前培養液から遠心分離等により菌体のみを回収し、脂肪酸代謝工程に用いることが好ましい。
本発明の製造方法により得られる殺虫剤は、脂肪酸代謝物に加えバイオサーファクタントを含有し得る。本発明に係るバイオサーファクタントとは、微生物が疎水性の高い物質を取り込むために産生し、細胞外へと分泌する界面活性剤様の物質を意味する。本発明において、プロテオバクテリアによって分泌されたバイオサーファクタントは、脂肪酸代謝物の水への分散も容易にする。殺虫剤の取扱性が向上すると考えられる。
本発明の殺虫剤は、培地、バイオサーファクタントを含むプロテオバクテリアの外分泌物、菌体などとの混合物である培養液として得られる。当該培養液をそのまま本発明の殺虫剤としてもよく、培養液から遠心分離などにより菌体を除去した上澄み液を殺虫剤としてもよい。培養液は原液のままでも使用することができるが、害虫のついた植物に施用する場合、原液のまま用いると高温時に植物への処理部分が、ミネラル分が蒸発濃縮され浸透圧の影響で縮む恐れがあるため、原液を希釈して使用することが望ましい。希釈倍率としては本発明の効果を発揮する限り特に限定されないが、10〜1000倍希釈が好ましく、10〜100倍希釈がさらに好ましい。なお、除去した菌体を再度、脂肪酸を含有する培地で培養することにより本発明の脂肪酸代謝工程を繰り返し行うことが可能である。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
試験用殺虫剤の調製
<前培養工程>
ガラス製三角フラスコ内の1l(リットル)の水にペプトン(Difco製のタンパク質酵素加水分解物)20g、硫酸マグネシウム七水和物1.5gおよびリン酸水素二カリウム1.5g、または、1l(リットル)の水にペプトン(Difco製のタンパク質酵素加水分解物)10g、イーストエキストラクト5gおよび塩化ナトリウム10gを溶解させ、121℃、20分間オートクレーブ滅菌を行い、室温まで冷却後、プロテオバクテリアの菌液を植菌した。なお、培養容器の口はシリコン栓で密栓した。植菌後の容器をバイオシェーカー(タイテック株式会社製のBR−23UM)を用い、25±5℃、120rpmの条件下で、24時間培養を行った。培養液中の菌数は5×108cells/mlであった。培養後、培養液を15,000×G、20℃の条件で遠心分離することで培養液から菌体を回収した。
<脂肪酸代謝工程>
ガラス製三角フラスコ内の1l(リットル)の滅菌水に、リノール酸(和光純薬工業株式会社製の一級リノール酸)12g、硫酸マグネシウム七水和物1.5gおよび/またはリン酸水素二カリウム1.5g、および前培養工程から得られた菌体の全量を加えた。これを、バイオシェーカー(タイテック株式会社製のBR−23UM)を用い、20℃、120rpm、溶存酸素濃度4mg/lの条件下で、4日間培養を行った。なお、リノール酸の分解は、リノール酸中間生成物の1つである酸化脂質の培養液中の濃度を株式会社島津製作所製の分光光度計BioSpec−miniを用いて波長230nmにおける吸光度を測定することによって、確認した。培養後、菌体を含む培養液を試験用殺虫剤とし、下記の評価を行った。
ワタアブラムシ成虫に対する殺虫効果
・実施例1〜3
最大長さ10cmのキュウリの本葉を2cm四方に切り取り、その葉裏にワタアブラムシ成虫20頭を定着させたものを準備した。試験用殺虫剤の原液(実施例1)ならびにその10倍および100倍希釈液(実施例2および3)を、噴霧量190μl/cm2で虫体に噴霧した。シャーレの中に葉と虫を載置し、本発明の殺虫剤を噴霧し、24時間後に、生存虫数、死虫数を測定した。対照として、虫体に水を噴霧し、同様に供試虫の生存虫数、死虫数を測定した。以下の式に基づいて補正死虫率を求めた。
補正死虫率(%)={(対照における生存虫率−処理後の生存虫率)/対照における生存虫率}×100
ここで、補正死虫率が高いものほど殺虫効果が高かったことを示している。結果を図1に示す。
・比較例1〜6
試験用殺虫剤に替えて、既存の、オレイン酸ナトリウムを有効成分として含有する気門封鎖型殺虫剤(比較例1)、ヒドロキシプロピルデンプンを有効成分として含有する気門封鎖型殺虫剤(比較例2)、ピレトリンを有効成分とする殺虫剤(比較例3)、アセタミプリドを有効成分とする殺虫剤(比較例4)、代表的なバイオサーファクタントであるサーファクチンナトリウムの1%溶液(比較例5)、および、1%SDS(比較例6)を用いたこと以外は実施例1〜3と同様に処理して補正死虫率を求めた。結果を図1に示す。
図1に示されるように、希釈なしの試験用殺虫剤(原液)で処理した場合、補正死虫率は100%であり、既存殺虫剤と同等である補正死虫率を示した。したがって、本発明の殺虫剤が、従来の気門封鎖型殺虫剤やピレスロイド系およびアセタミプリド系の殺虫剤と同等の優れた殺虫効果を有していることがわかる。
ガ幼虫に対する殺虫効果
・実施例4
屋外で栽培中のバラより採取したガ幼虫を約25℃で48時間飼育した後、体長別に3つの群(1.0cm未満、1.0〜2.0cm、2.0cmより大きい)に分けた。シャーレ内にバラの葉を置き、その上に3つの群のうちのいずれか一つの群のガ幼虫1頭を置いた。各群につきそれぞれ4頭(体長1.0cm未満)、5頭(体長1.0〜2.0cm)、5頭(体長2.0cmより大きい)のガ幼虫を用いた。試験用殺虫剤を水で30倍に希釈した希釈液を1.1mlの噴霧量で虫体に噴霧した。シャーレの蓋を閉じて暗所で静置し、24時間後に、ガ幼虫の生死を観察し、死虫率を産出した。対照として、ガ幼虫に水を噴霧したものを同様に試験した。結果を表1に示す。
Figure 2018168582
表1に示されるように、試験用殺虫剤の30倍希釈液を噴霧した場合、20%〜100%の死虫率を示し、水を噴霧した場合よりも高い死虫率を示した。特に、体長1.0cm未満の幼齢幼虫では、死虫率は100%であり、高い殺虫効果が確認された。したがって、本発明の殺虫剤が優れた殺虫効果、とりわけ微小害虫に対する高い殺虫効果を有していることがわかる。
上記の結果より、本発明の殺虫剤および本発明の製造方法により製造される殺虫剤が、土壌汚染や毒性が低く、殺虫効果に優れた殺虫剤であることがわかる。

Claims (14)

  1. 炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させることで得られる脂肪酸代謝物を含む殺虫剤。
  2. 前記脂肪酸が、20℃で液体の脂肪酸である請求項1記載の殺虫剤。
  3. 前記代謝が、Mg、P、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種以上のミネラルの存在下での代謝である請求項1または2記載の殺虫剤。
  4. 前記プロテオバクテリアが、前培養されたプロテオバクテリアである請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺虫剤。
  5. 前記前培養されたプロテオバクテリアが、菌数1×108〜9×1010cells/mlに前培養されたプロテオバクテリアである請求項4記載の殺虫剤。
  6. バイオサーファクタントを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の殺虫剤。
  7. 前記代謝が、20〜30℃の条件下での代謝である請求項1〜6のいずれか1項に記載の殺虫剤。
  8. 炭素数4〜30の脂肪酸を0.1〜8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させる脂肪酸代謝工程を含む、脂肪酸代謝物を含む殺虫剤の製造方法。
  9. 前記脂肪酸が、20℃で液体の脂肪酸である請求項8記載の殺虫剤の製造方法。
  10. 前記脂肪酸代謝工程を、Mg、P、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種以上のミネラルの存在下で実施する請求項8または9記載の殺虫剤の製造方法。
  11. 前記プロテオバクテリアが、前培養されたプロテオバクテリアである請求項8〜10のいずれか1項に記載の殺虫剤の製造方法。
  12. 前記前培養されたプロテオバクテリアが、菌数1×108〜9×1010cells/mlに前培養されたプロテオバクテリアである請求項11記載の殺虫剤の製造方法。
  13. バイオサーファクタントを含む殺虫剤の製造方法である請求項8〜12のいずれか1項に記載の殺虫剤の製造方法。
  14. 前記脂肪酸代謝工程を、20〜30℃の条件下で実施する請求項8〜13のいずれか1項に記載の殺虫剤の製造方法。
JP2019505911A 2017-03-14 2018-03-06 殺虫剤および殺虫剤の製造方法 Pending JPWO2018168582A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017048721 2017-03-14
JP2017048721 2017-03-14
PCT/JP2018/008631 WO2018168582A1 (ja) 2017-03-14 2018-03-06 殺虫剤および殺虫剤の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2018168582A1 true JPWO2018168582A1 (ja) 2020-01-09

Family

ID=63522961

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019505911A Pending JPWO2018168582A1 (ja) 2017-03-14 2018-03-06 殺虫剤および殺虫剤の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2018168582A1 (ja)
WO (1) WO2018168582A1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11514365A (ja) * 1995-10-20 1999-12-07 マイコーゲン コーポレーション 線虫を制御するための材料および方法
JP2007137888A (ja) * 1997-12-08 2007-06-07 Koa Corp 植物用薬剤
JP2013521227A (ja) * 2010-02-25 2013-06-10 マロン バイオ イノベイションズ インコーポレイテッド バークホルデリア(Burkholderia)属の単離菌株およびそれに由来する殺虫性代謝物
JP2013543846A (ja) * 2010-10-25 2013-12-09 マロン バイオ イノベイションズ インコーポレイテッド クロモバクテリウムの生物活性組成物および代謝産物

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11382281B2 (en) * 2016-09-08 2022-07-12 Ibiden Co., Ltd. Plant activator and a method of manufacturing the same

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11514365A (ja) * 1995-10-20 1999-12-07 マイコーゲン コーポレーション 線虫を制御するための材料および方法
JP2007137888A (ja) * 1997-12-08 2007-06-07 Koa Corp 植物用薬剤
JP2013521227A (ja) * 2010-02-25 2013-06-10 マロン バイオ イノベイションズ インコーポレイテッド バークホルデリア(Burkholderia)属の単離菌株およびそれに由来する殺虫性代謝物
JP2013543846A (ja) * 2010-10-25 2013-12-09 マロン バイオ イノベイションズ インコーポレイテッド クロモバクテリウムの生物活性組成物および代謝産物

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
大野勝也: "菌の脂肪酸代謝物(BMFA)による植物病害抑制効果などの植物応答へのアプローチ(1)", 日本農芸化学会大会講演要旨集, JPN6018018559, 5 March 2017 (2017-03-05), pages 32 - 07, ISSN: 0004340924 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2018168582A1 (ja) 2018-09-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20220295713A1 (en) Plant activator and a method of manufacturing the same
RU2614063C1 (ru) Упаковка для противомикробной обработки растений
DE102009045077A1 (de) Verwendung von Sophorolipiden und deren Derivaten in Kombination mit Pestiziden als Adjuvant/Additiv für den Pflanzenschutz und den industriellen non-crop Bereich
US11666051B2 (en) Composition comprising nucleic acids of parasitic, pathogenic or infesting biological systems for inhibiting and/or controlling the growth of said systems and process for the preparation thereof
Grahovac et al. Bacillus VOCs in the context of biological control
CN101984828A (zh) 一种复配杀虫剂
JPWO2018168582A1 (ja) 殺虫剤および殺虫剤の製造方法
Anith Mature coconut as a bio-fermentor for multiplication of plant growth promoting rhizobacteria
US20150119246A1 (en) Compositions and methods comprising colletotrichum for controlling plant species
CN115443996A (zh) 一种柠檬醛的应用
WO2018168581A1 (ja) 害虫忌避剤および害虫忌避剤の製造方法
US20220152128A1 (en) Bee gut microbial formulation for use as a probiotic for improved bee health and pathogen resistance
Ujjan et al. Insecticidal potential of Beauveria bassiana strain PDRL1187 and Imidacloprid to mustard aphid (Lipaphis erysimi) under field conditions.
CN111374129A (zh) 一种含1-辛烯-3-醇的杀线虫药剂及其制备方法和应用
JP2007014296A (ja) 糸状菌の培養方法
Abdel-Halim et al. Comparative toxicity of abamectin and nano-derived form on land snail, Helix aspersa in attributing to cytotoxicity and biochemical alterations
KR20100118424A (ko) 식물기생선충 방제용 제제 및 그 제조방법
US20170135322A1 (en) A biocontrol combination and method for improving quality of shelled eggs
RU2333644C1 (ru) Способ борьбы с колорадским жуком и средство для его осуществления
WO2016042520A1 (es) Composicion pesticida
JP2001064103A (ja) 農園芸用殺虫剤組成物
Xu et al. Screening and biological characteristics of fufenozide degrading bacteria
US20190191712A1 (en) Method for Control of Insect on Poultry
CN113826635A (zh) 一种增效型杀菌剂及其应用
SAĞIN et al. OXIDATIVE STRESS AND PESTICIDE TOXICITY

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190912

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200908

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20210309