(一実施形態)
図1には、一実施形態の熱整流ユニット9の構造を、模式的に示している。一実施形態では、熱整流ユニット9が一つの熱整流器90を含んでいる。後述の変形例に示すように、熱整流ユニット9が複数の熱整流器90を含むことも可能である。
一実施形態の熱整流器90は、第一パネル1、第二パネル2及び切換機構6を備える。
第一パネル1と第二パネル2は、互いに対向して位置する平板状のパネルである。
たとえば、第一パネル1と第二パネル2の外形は、多角形状、円形状、楕円形状及びこれらが適宜に組み合わさった形状のうち、いずれでもよい。第一パネル1と第二パネル2の表面形状は、平坦な形状、凹凸形状、曲面形状及びこれらが適宜に組み合わさった形状のうち、いずれでもよい。第一パネル1と第二パネル2の厚みは特に限定されず、数[mm]程度の厚みでもよいし、10[mm]以上の厚みでもよいし、或いは1[mm]以下の厚みでもよい。
第一パネル1と第二パネル2の材料は、金属、合金、ガラス、樹脂及びこれらが適宜に組み合わさった材料のうち、いずれでもよい。第一パネル1と第二パネル2は、高い熱伝導性と剛性を有することが好ましく、また、低熱膨張性であることが好ましい。
第一パネル1と第二パネル2の材料に用いられる金属としては、たとえばアルミニウム、銅、ステンレスが挙げられる。第一パネル1と第二パネル2の材料に用いられる合金としては、たとえばFe−Ni系のインバー合金、Fe−Ni−Co系のコバール合金が挙げられる。
第一パネル1と第二パネル2の好ましい熱膨張係数は5[ppm/℃]以下である。第一パネル1と第二パネル2の熱膨張係数は、2[ppm/℃]以下であることが更に好ましく、0.5[ppm/℃]以下であることが更に好ましい。
第一パネル1と第二パネル2が低熱膨張性の材料で形成されていると、第一パネル1と第二パネル2の温度差で熱整流器90の全体に反りを生じることが抑制され、使用可能な温度範囲が広くなるという利点がある。第一パネル1と第二パネル2の材質は、互いに同一でもよいし、互いに相違してもよい。
切換機構6は、第一パネル1と第二パネル2の間に設けられた機構であり、第一パネル1と第二パネル2が熱的に接続された状態と、第一パネル1と第二パネル2が熱的に遮断された状態を、自動的に切り換えるように構成されている。切換機構6は、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度を、第一パネル1と第二パネル2の温度に応じて自動的に切り換えるように構成されている。言い換えれば、切換機構6は、第一パネル1と第二パネル2の間の熱コンダクタンスを、第一パネル1と第二パネル2の温度に応じて切り換えるように構成されている。
切換機構6は、第一熱伝導部61、第二熱伝導部62、スペーサ63、封止材64及び中間パネル65を備える。後述の変形例で示すように、封止材64を備えずに切換機構6を構成することも可能であり、中間パネル65を備えずに切換機構6を構成することも可能である。
まず、中間パネル65、スペーサ63及び封止材64について、順に説明する。
中間パネル65は、封止材64を介して第一パネル1と第二パネル2の間に固定されている。中間パネル65は、第一パネル1に対向して位置し、且つ、第二パネル2に対向して位置する。中間パネル65と第一パネル1は互いに平行であり、中間パネル65と第二パネル2は互いに平行である。本願において用いる平行の文言は、完全に平行な意味に限定されず、略平行な場合を含む。
中間パネル65の材料は、金属、合金、ガラス、樹脂及びこれらが適宜に組み合わさった材料のうち、いずれでもよい。中間パネル65は、高い熱伝導性と剛性を有することが好ましく、また、低熱膨張性であることが好ましい。
中間パネル65の材料に用いられる金属としては、たとえばアルミニウム、銅、ステンレスが挙げられる。中間パネル65の材料に用いられる合金としては、たとえばFe−Ni系のインバー合金、Fe−Ni−Co系のコバール合金が挙げられる。中間パネル65の好ましい熱膨張係数は5[ppn/℃]以下である。中間パネル65の熱膨張係数は、2[ppn/℃]以下であることが更に好ましく、0.5[ppn/℃]以下であることが更に好ましい。
スペーサ63は、第一パネル1と第二パネル2の間に、複数設けられている。複数のスペーサ63は、それぞれ柱状の外形を有する。
スペーサ635の材料は、金属、合金、ガラス、樹脂及びこれらが適宜に組み合わさった材料のうち、いずれでもよいが、絶縁性材料であることが好ましい。スペーサ63は、低熱伝導性であることが好ましい。スペーサ63は、第一パネル1、第二パネル2及び中間パネル65よりも熱伝導度が低いことが好ましい。
複数のスペーサ63は、第一パネル1と中間パネル65の間に介在する複数の第一スペーサ631と、第二パネル2と中間パネル65の間に介在する複数の第二スペーサ632を含む。第一スペーサ631の形状寸法と材料、第二スペーサ632の形状寸法と材料については、スペーサ63に関して上記した通りである。
複数の第一スペーサ631は、第一パネル1の中間パネル65側を向く平坦な対向面11と、中間パネル65の第一パネル1側を向く平坦な第一対向面651に、それぞれ接触する。複数の第一スペーサ631は、第一パネル1と中間パネル65の間の距離D1を、一定に保つ。第一パネル1と中間パネル65の間には、第一空間S11が形成されている。
複数の第二スペーサ632は、第二パネル2の中間パネル65側を向く平坦な対向面21と、中間パネル65の第二パネル2側を向く平坦な第二対向面652に、それぞれ接触する。複数の第二スペーサ632は、第二パネル2と中間パネル65の間の距離D2を、一定に保つ。第二パネル2と中間パネル65の間には、第二空間S12が形成されている。
封止材64は、第一パネル1と中間パネル65の間に介在する第一封止材641と、第二パネル2と中間パネル65の間に介在する第二封止材642を含む。
第一封止材641は、第一パネル1の対向面11の周縁部分と、中間パネル65の第一対向面651の周縁部分のそれぞれに接触し、第一空間S11を全周にわたって囲んでいる。第一空間S11は、第一パネル1、中間パネル65及び枠状の第一封止材641によって、気密に封止されている。
第二封止材642は、第二パネル2の対向面21の周縁部分と、中間パネル65の第二対向面652の周縁部分のそれぞれに接触し、第二空間S12を全周にわたって囲んでいる。第二空間S12は、第二パネル2、中間パネル65及び枠状の第二封止材642によって、気密に封止されている。
第一空間S11と第二空間S12は、空間の断熱性を高めるために減圧されているが、これに限定されず、第一空間S11と第二空間S12に乾燥ガス(たとえばアルゴン、クリプトン等の乾燥した希ガス、乾燥空気等)が充填されることも有り得る。
第一空間S11を減圧する場合、第一空間S11内の空気の平均自由工程をλ1としたとき、λ1/D1>0.3の関係を満たすまで第一空間S11を減圧することが好ましい。同様に、第二空間S12を減圧する場合、第二空間S12内の空気の平均自由工程をλ2としたとき、λ2/D2>0.3の関係を満たすまで第二空間S12を減圧することが好ましい。
これらの関係を満たすことで、第一空間S11と第二空間S12は共に分子流領域となり、第一空間S11の熱コンダクタンスが距離D1に依存しないという特性と、第二空間S12の熱コンダクタンスが距離D2に依存しないという特性が得られる。その結果、高断熱性の第一空間S11と第二空間S12を内部に有する熱整流器90を、非常に薄型に形成することが可能になる。
一般的に、固体と気体の両方において、熱が伝導する距離が大きいほど熱コンダクタンスが低くなる。したがって、一般的には、熱整流器90が薄型であるほど、第一空間S11と第二空間S12の断熱性を高めるには不利である。しかし、第一空間S11においてλ1/D1>0.3の関係が満たされ、第二空間S12においてλ2/D2>0.3の関係が満たされていると、第一空間S11と第二空間S12が高い断熱性を有することと、熱整流器90の薄型化が、両立される。
熱整流器90が薄型であると、切換機構6を介して、第一パネル1と第二パネル2が熱的に接続されたときに、その薄さによって、高い熱伝導性を発揮することができる。
すなわち、第一空間S11においてλ1/D1>0.3の関係が満たされ、第二空間S12においてλ2/D2>0.3の関係が満たされていると、切換機構6を介して第一パネル1と第二パネル2が熱的に接続されたときに、熱整流器90は、その薄さによって、高い熱伝導性を発揮することができる。第一パネル1と第二パネル2が熱的に遮断されたときには、第一空間S11と第二空間S12の断熱性によって、熱整流器90は高い断熱性を発揮することができる。
加えて、第一空間S11においてλ1/D1>0.3の関係が満たされることで、第一空間S11が分子流領域になると、第一熱伝導部61(つまり各バイメタル部材71)と中間パネル65の間の熱コンダクタンスが、第一熱伝導部61と中間パネル65の間の距離に依存しないという特性が得られる。
そのため、第一熱伝導部61と中間パネル65が非接触であり、且つ、第一熱伝導部61と中間パネル65が非常に接近した状態にあるときに、第一熱伝導部61と中間パネル65が非接触であるにも関わらず両者の間の熱コンダクタンスが高くなるという事態(ひいては、これが熱整流器90の動作精度を低下させるという事態)が、抑えられる。
同様に、第二空間S12においてλ2/D2>0.3の関係が満たされることで、第二空間S12が分子流領域になると、第二熱伝導部62(つまり各バイメタル部材72)と中間パネル65の間の熱コンダクタンスが、第二熱伝導部62と中間パネル65の間の距離に依存しないという特性が得られる。
そのため、第二熱伝導部62と中間パネル65が非接触であり、且つ、第二熱伝導部62と中間パネル65が非常に接近した状態にあるときに、第二熱伝導部62と中間パネル65が非接触であるにも関わらず両者の間の熱コンダクタンスが高くなるという事態(ひいては、これが熱整流器90の動作精度を低下させるという事態)が、抑えられる。
次に、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62について、説明する。
第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は、高熱伝導性であることが好ましい。第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は、少なくともスペーサ63(つまり第一スペーサ631、第二スペーサ632)よりも熱伝導度が高いことが好ましい。第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の材料は、金属、合金等の導電性材料であることが好ましい。
一実施形態の熱整流ユニット9において、第一熱伝導部61は、第一パネル1に対して熱的に接続された複数のバイメタル部材71を含む。第一熱伝導部61は、少なくとも一つのバイメタル部材71を含んでいればよい。
各バイメタル部材71は、気密に封止された第一空間S11に位置する。各バイメタル部材71は、自身の温度変化に伴って変形するように平板状のバイメタルを用いて形成されている。各バイメタル部材71に含まれるバイメタルは、たとえばアルミニウム製の板材とFe−Ni合金製の板材が接合されたバイメタルである。
各バイメタル部材71の一部分(つまり固定端部)が、第一パネル1の対向面11に固定されている。各バイメタル部材71は、第一パネル1と第二パネル2が対向する方向A1(以下「第一方向A1」という。)に変形する。
第一熱伝導部61に含まれる複数のバイメタル部材71は、第一方向A1と直交する方向A2(以下「第二方向A2」という。)において、互いに距離をあけて配置されている。第二方向A2は、第一パネル1及び第二パネル2と平行な方向である。第二方向A2は、第一パネル1の対向面11と平行な方向であり、また、第二パネル2の対向面21と平行な方向である。
各バイメタル部材71の自由端部が、第一熱伝導部61の変位部分615(以下「第一変位部分615」という。)を構成している。第一変位部分615は、第一熱伝導部61の温度変化に伴って第一方向A1に変位する部分である。
第一変位部分615が第一方向A1において変位することは、即ち、第一変位部分615の第一パネル1からの距離が変化することと、第一変位部分615の中間パネル65からの距離が変化することを意味する。
熱整流器90においては、第一パネル1の温度が変化すると、第一パネル1に対して熱的に且つ機械的に接続された第一熱伝導部61の温度(つまり各バイメタル部材71の温度)が変化する。第一熱伝導部61は、自身の温度変化に伴って、第一変位部分615を中間パネル65に対して近接離反させるように構成されている。
より具体的に述べると、第一熱伝導部61(つまり各バイメタル部材71)は、自身の温度上昇に伴って、第一変位部分615が中間パネル65に接触した状態(つまり中間パネル65に熱的に接続された状態)から、第一変位部分615が中間パネル65から離れた状態(つまり中間パネル65に熱的に遮断された状態)に切り換わるように、構成されている。本願において用いる遮断の文言は、完全に遮断する意味に限定されず、大きな熱抵抗で実質的に遮断することを含む。
第二熱伝導部62は、第二パネル2に対して熱的に接続された複数のバイメタル部材72を含む。複数のバイメタル部材72は、第二方向A2において、互いに距離をあけて配置されている。第二熱伝導部62は、少なくとも一つのバイメタル部材72を含んでいればよい。
各バイメタル部材72は、気密に封止された第二空間S12に位置する。各バイメタル部材72は、自身の温度変化に伴って変形するように平板状のバイメタルを用いて形成されている。各バイメタル部材72に含まれるバイメタルは、たとえばアルミニウム製の板材とFe−Ni合金製の板材が接合されたバイメタルである。
各バイメタル部材72の一部分(つまり固定端部)が、第二パネル2の対向面21に固定されている。各バイメタル部材72は、第一方向A1に変形する。
各バイメタル部材72の自由端部が、第二熱伝導部62の変位部分(以下「第二変位部分625」という。)を構成している。第二変位部分625は、第二熱伝導部62の温度変化に伴って第一方向A1に変位する部分である。
第二変位部分625が第一方向A1において変位することは、即ち、第二変位部分625の第二パネル2からの距離が変化することと、第二変位部分625の中間パネル65からの距離が変化することを意味する。
熱整流器90においては、第二パネル2の温度が変化すると、第二パネル2に対して熱的に且つ機械的に接続された第二熱伝導部62の温度(つまり各バイメタル部材72の温度)が変化する。第二熱伝導部62は、自身の温度変化に伴って、第二変位部分625を中間パネル65に対して近接離反させるように構成されている。
より具体的に述べると、第二熱伝導部62(つまり各バイメタル部材72)は、自身の温度上昇に伴って、第二変位部分625が中間パネル65から離れた状態(つまり中間パネル65から熱的に遮断された状態)から、第二変位部分625が中間パネル65に接触した状態(つまり中間パネル65に熱的に接続された状態)に切り換わるように、構成されている。
一実施形態の熱整流器90は、上記の構成を備えるので、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の特性(つまり自身の温度変化に伴ってどのように変形するかという特性)に基づいて、第一パネル1と第二パネル2の間において放熱と断熱が切り換わる条件が、自在に設定される。
図2A〜図2Dには、一実施形態の熱整流器90の更に要部を示している。図3Aには、第一熱伝導部61と中間パネル65の間の熱抵抗Rd1と、第一熱伝導部61の温度T1の関係を、簡略に示している。図3Bには、第二熱伝導部62と中間パネル65の間の熱抵抗Rd2と、第二熱伝導部62の温度T2の関係を、簡略に示している。
以下、これらの簡略化された図に基づいて、一実施形態の熱整流器90の切換機構6の作動について説明する。
第一熱伝導部61は、図3Aに示すように、その温度T1が所定の第一切換温度TSW1よりも低温であるときには、第一熱伝導部61と中間パネル65の間の熱抵抗Rd1=RON1の状態(つまり第一変位部分615が中間パネル65と接触する状態)を保つように構成されている。
第一熱伝導部61は、その温度T1が第一切換温度TSW1よりも高温であるときには、熱抵抗Rd1=ROFF1の状態(つまり第一変位部分615が中間パネル65から離れた状態)を保つように構成されている。
ROFF1とRON1の値は、ROFF1>>RON1の関係にある。熱抵抗Rd1=RON1のときには、第一熱伝導部61と中間パネル65が熱的に接続されている。熱抵抗Rd1=ROFF1のときには、第一熱伝導部61と中間パネル65は熱的に遮断されている。
第二熱伝導部62は、図3Bに示すように、その温度T2が所定の第二切換温度TSW2よりも低温であるときには、第二熱伝導部62と中間パネル65の間の熱抵抗Rd2=ROFF2の状態(つまり第二変位部分625が中間パネル65から離れた状態)を保つように構成されている。
第二熱伝導部62は、その温度T2が第二切換温度TSW2よりも高温であるときには、熱抵抗Rd2=RON2の状態(つまり第二変位部分625が中間パネル65と接触する状態)を保つように構成されている。
ROFF2とRON2の値は、ROFF2>>RON2の関係にある。熱抵抗Rd2=ROFF2のときには、第二熱伝導部62と中間パネル65は熱的に遮断されている。熱抵抗Rd2=RON2のときには、第二熱伝導部62と中間パネル65は熱的に接続されている。
このように、第一熱伝導部61(つまり各バイメタル部材71)は、第一切換温度TSW1を閾値とし、自身の温度T1が第一切換温度TSW1よりも低いときは中間パネル65に接触し、自身の温度T1が第一切換温度TSW1よりも高いときは中間パネル65から離れるように、第一方向A1に変形する。第一切換温度TSW1は、たとえばバイメタル部材71の材料と形状寸法を選定することで、自在に設定することができる。
第二熱伝導部62(つまり各バイメタル部材72)は、第二切換温度TSW2を閾値とし、自身の温度T2が第二切換温度TSW2よりも低い温度のときは中間パネル65から離れ、自身の温度T2が第二切換温度TSW2よりも高い温度のときは中間パネル65に接触するように、第一方向A1に変形する。第二切換温度TSW2は、たとえばバイメタル部材72の材料と形状寸法を選定することで、自在に設定することができる。
一実施形態の熱整流器90において、第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2は、同一温度に設定されている。
切換機構6は、第一熱伝導部61の温度T1が第一切換温度TSW1よりも低く、且つ、第二熱伝導部62の温度T2が第二切換温度TSW2(即ち第一切換温度TSW1)よりも高い場合にだけ、図2Dに示すように、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が中間パネル65を介して熱的に接続された放熱状態となる。切換機構6が放熱状態にあるとき、第一パネル1と第二パネル2は、両者の間で放熱可能な状態にある。
このとき、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2は、T1<TSW1=TSW2<T2の関係にあるので、第二熱伝導部62から第一熱伝導部61に熱が流れる方向(つまり第二パネル2から第一パネル1に熱が流れる方向)で、放熱が行われる。
これに対して、図2A、図2B及び図2Cに示す状態は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の少なくとも一方が中間パネル65から離れ、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に遮断された断熱状態である。
図2Aに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が、第一切換温度TSW1よりも低い低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が、第二切換温度TSW2(=TSW1)よりも低い低温TLである。このとき、第一熱伝導部61が中間パネル65に接触し、第二熱伝導部62が中間パネル65から離れるので、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は断熱している。
図2Bに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が、第一切換温度TSW1よりも高い高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が、第二切換温度TSW2(=TSW1)よりも高い高温THである。このとき、第一熱伝導部61が中間パネル65から離れ、第二熱伝導部62が中間パネル65に接触し、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は断熱している。
図2Cに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が、第一切換温度TSW1よりも高い高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が、第二切換温度TSW2(=TSW1)よりも低い低温TLである。このとき、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62はともに中間パネル65から離れるので、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は断熱している。
一実施形態の熱整流器90では、第一パネル1と第二パネル2の温度に基づいて、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度T1,T2が決まり、この温度T1,T2に基づいて、第一パネル1と第二パネル2の間での熱伝導度が切り換わる。
たとえば、第一パネル1、第二パネル2及び中間パネル65の材料がアルミニウムであり、スペーサ63の材料が樹脂であり、バイメタル部材71とバイメタル部材72に用いられるバイメタルが、アルミニウム製の板材とFe−Ni合金製の板材が接合されたバイメタルである場合、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度は、非常に大きく変化する。
特に、一実施形態の熱整流器90は、第二パネル2から第一パネル1に向けてだけ熱が流れるように、熱整流を行うので、多様な分野で利用することができる。
図4には、一実施形態の熱整流ユニット9(熱整流器90)を利用する分野の一例を、概略的に示している。この例では、建物51の壁材515に設けられる断熱材の一部を熱整流ユニット9で構成している。熱整流ユニット9は、建物51の内側に形成される室内空間510と、建物51の外部空間との間に、介在している。
熱整流ユニット9の熱整流器90は、第二パネル2よりも屋外側に第一パネル1が位置するように構成されている。したがって、たとえば第一切換温度TSW1及び第二切換温度TSW2が30[℃]で設定されていると、日射等を原因として室内温度が30[℃]を超え、且つ、外気温が30[℃]よりも低い環境にあるときにだけ、屋内側から屋外側への放熱が行われる。これとは別の環境にあるときは、熱整流ユニット9(熱整流器90)は断熱状態で維持される。
図5には、一実施形態の熱整流ユニット9(熱整流器90)を利用する分野の別例を、概略的に示している。この例では、家庭、商業施設、工場等の複数の熱源53と蓄熱部54の間に、それぞれ熱整流ユニット9を介在させている。この例では熱源53は二つであるが、三つ以上でもよいし、或いは一つでもよい。
熱整流ユニット9の熱整流器90は、熱源53の側に第二パネル2が位置し、蓄熱部54の側に第一パネル1が位置するように配置される。これにより、熱源53が所定温度よりも高温であり、且つ、蓄熱部54がこの所定温度よりも低温である環境でのみ、熱源53から蓄熱部54に向けて放熱が行われる。これとは別の環境にあるときは、熱整流ユニット9(熱整流器90)は断熱状態で維持される。
一実施形態の熱整流ユニット9(熱整流器90)は、他の分野でも利用することが可能である。たとえば、上記した住宅、工場、商業施設以外の分野として、航空機、自動車、衣服等の分野で利用することも可能である。いずれの分野においても、一実施形態の熱整流ユニット9を利用することで、省エネルギー化、快適性の向上等が実現される。
以上、一実施形態の熱整流ユニット9について説明したが、熱整流ユニット9各構成は適宜に変更することが可能である。以下においては、熱整流ユニット9の各種の変形例について、順に説明する。なお、各種の変形例の説明において、上記した一実施形態の熱整流ユニット9と同様の構成については同一符号を付し、詳しい説明を省略する。
(変形例1)
熱整流ユニット9の変形例1においては、図6Aと図6Bに示すように、第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2を、第一切換温度TSW1の方が第二切換温度TSW2よりも所定の温度差だけ高温になるように、相違させている。
既述したように、第一切換温度TSW1は、第一熱伝導部61が中間パネル65に対して熱的に接続する状態と、第一熱伝導部61が中間パネル65に対して熱的に遮断される状態が、切り換わる温度である。第二切換温度TSW2は、第二熱伝導部62が中間パネル65に対して熱的に接続する状態と、第二熱伝導部62が中間パネル65に対して熱的に遮断される状態が、切り換わる温度である。
変形例1において、切換機構6は、第一熱伝導部61の温度T1が第一切換温度TSW1よりも低く、且つ、第二熱伝導部62の温度T2が第二切換温度TSW2(<第一切換温度TSW1)よりも高い場合に、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が中間パネル65を介して熱的に接続された放熱状態となる。切換機構6が放熱状態にあるとき、第一パネル1と第二パネル2は、両者の間で熱伝導が可能な状態(つまり放熱が可能な状態)にある。
変形例1においては、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度T1,T2がともに、第二切換温度TSW2よりも高く、且つ、第一切換温度TSW1よりも低い温度の範囲内にあるときに、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度T1,T2の大小関係に関わらず、第一パネル1と第二パネル2は、両者の間で熱伝導が可能な状態(つまり放熱が可能な状態)にある。
したがって、変形例1によれば、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導が、予期しないタイミングで遮断されるという事態が、抑えられる。
(変形例2)
熱整流ユニット9の変形例2においては、図7Aと図7Bに示すように、第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2を、第一切換温度TSW1の方が第二切換温度TSW2よりも所定の温度差だけ低温になるように、相違させている。
変形例2において、切換機構6は、第一熱伝導部61の温度T1が第一切換温度TSW1よりも低く、且つ、第二熱伝導部62の温度T2が第二切換温度TSW2(>第一切換温度TSW1)よりも高い場合に、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が中間パネル65を介して熱的に接続された放熱状態となる。切換機構6が放熱状態にあるとき、第一パネル1と第二パネル2は、両者の間で熱伝導が可能な状態(つまり放熱が可能な状態)にある。
変形例2においては、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度T1,T2がともに、第一切換温度TSW1よりも高く、且つ、第二切換温度TSW2よりも低い温度の範囲内にあるときは、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度T1,T2の大小関係に関わらず、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導が遮断される。
したがって、変形例2によれば、予期しないタイミングで第一パネル1と第二パネル2が熱的に接続されるという事態が、抑えられる。
(変形例3)
熱整流ユニット9の変形例3においては、図8に示すように、複数の熱整流器90が、ガスバリアフィルム8内に収容されている。複数の熱整流器90は、第二方向A2に並設されている。
変形例3においては、各熱整流器90が第一封止材641と第二封止材642を備えておらず、その代わりに、複数の熱整流器90の全体がガスバリアフィルム8に気密に封入されている。
各熱整流器90において、第一熱伝導部61は一つのバイメタル部材71を含んでいるが、複数のバイメタル部材71を含んでもよい。同様に、第二熱伝導部62は一つのバイメタル部材72を含んでいるが、複数のバイメタル部材72を含んでもよい。このことは、他の変形例においても同様である。
ガスバリアフィルム8内の空間は、断熱性を高めるために減圧されてもよいし、乾燥ガス(たとえばアルゴン、クリプトン等の乾燥した希ガス、乾燥空気等)が充填されてもよい。
ガスバリアフィルム8の材料は、金属、合金、樹脂、ガラス及びこれらが適宜に組み合わさった材料のうち、いずれでもよい。ガスバリアフィルム8は、高いガスバリア性を有することと、低熱膨張性であることが好ましい。
ガスバリアフィルム8に用いられる低熱膨張性の材料としては、たとえばFe−Ni系のインバー合金、Fe−Ni−Co系のコバール合金が挙げられる。ガスバリアフィルム8の好ましい熱膨張係数は5[ppm/℃]以下である。ガスバリアフィルム8の熱膨張係数は、2[ppm/℃]以下であることが更に好ましく、0.5[ppm/℃]以下であることが更に好ましい。
ガスバリアフィルム8が低熱膨張性の材料で形成されていると、ガスバリアフィルム8に含まれる複数の部分間の温度差によって、ガスバリアフィルム8に反りが生じることが、抑制される。これにより、熱整流ユニット9を使用することのできる温度範囲が広くなる。
変形例3では、熱整流器90ごとに気密に封止する必要がなく、ガスバリアフィルム8内に複数の熱整流器90を収容し、ガスバリアフィルム8の外周部を局所加熱して封止部804を形成することで、一括的に気密封止することができる。そのため、製造工程が簡易化される。
変形例3では、封止部804が、ガスバリアフィルム8の外周部に位置する。そのため、複数の熱整流ユニット9を第二方向A2に並べるときには、ガスバリアフィルム8の外周部を折り曲げて、隣接する熱整流ユニット9の互いの封止部804が接触しないように設けることができる。これにより、隣接する熱整流ユニット9間の熱伝導が抑えられる。
変形例3では、ガスバリアフィルム8内に、複数の熱整流器90が並設されているので、熱整流ユニット9の全体を曲げることも可能である。
変形例3では、複数の熱整流器90が、ガスバリアフィルム8内に並設されるので、各々の熱整流器90が大型化することは、抑えられる。そのため、熱整流器90を製造するための装置が大型化することが、抑えられる。
また、熱整流器90の大型化(つまり第一パネル1と第二パネル2の大型化)が抑えられるので、熱整流器90を製造する過程において、第一パネル1と第二パネル2の間で大きな位置ずれ(特に、第一方向A1に伸びる回転軸まわりの位置ずれ)を生じることが、抑えられる。
変形例3では、別々に製造された複数の熱整流器90が、ガスバリアフィルム8内に並設されるので、複数の熱整流器90のうち一つが不良品であっても、その不良品を廃棄するだけでよく、ロスの発生が抑えられる。
変形例3では、ガスバリアフィルム8に収容する複数の熱整流器90の組み合わせによって、熱整流ユニット9の多様な仕様が実現される。
(変形例4)
熱整流ユニット9の変形例4においては、図9に示すように、各熱整流器90の中間パネル65が、互いに熱的に接続された第三パネル3と第四パネル4を含んでいる。
第三パネル3は、第一パネル1に対向して位置する熱伝導性のパネルである。第三パネル3と第一パネル1は互いに平行に位置している。第三パネル3と第一パネル1の間に複数の第一スペーサ631が介在し、第三パネル3と第一パネル1の間に、第一空間S11が形成されている。
第四パネル4は、第二パネル2に対向して位置する熱伝導性のパネルである。第四パネル4と第二パネル2は互いに平行に位置している。第四パネル4と第二パネル2の間に複数の第二スペーサ632が介在し、第四パネル4と第二パネル2の間に、第二空間S12が形成されている。
熱整流ユニット9の変形例4が備える各熱整流器90は、第一半部901と第二半部902が組み合わさった構造を有する。第一半部901は、第一パネル1、第一熱伝導部61、第三パネル3及び複数の第一スペーサ631を、一体に備えた構造を有する。第二半部902は、第二パネル2、第二熱伝導部62、第四パネル4及び複数の第二スペーサ632を、一体に備えた構造を有する。
更に、熱整流ユニット9の変形例4は、熱伝導性のガスバリアフィルム80を二つ備えている。二つのガスバリアフィルム80は、第一ガスバリアフィルム81と、熱伝導性の第二ガスバリアフィルム82である。
第一ガスバリアフィルム81には、各熱整流器90の第一半部901(つまり第一パネル1、第一熱伝導部61、第三パネル3及び複数の第一スペーサ631)とゲッター817が、気密に収容されている。
第二ガスバリアフィルム82には、各熱整流器90の第二半部902(つまり第二パネル2、第二熱伝導部62、第四パネル4及び複数の第二スペーサ632)とゲッター827が、気密に収容されている。
第一ガスバリアフィルム81の一部分と第二ガスバリアフィルム82の一部分は、互いに接触している。これにより、第一ガスバリアフィルム81と第二ガスバリアフィルム82は、熱的に接続されている。各熱整流器90の第三パネル3と第四パネル4は、第一ガスバリアフィルム81と第二ガスバリアフィルム82のうち互いに接触する部分を介して、熱的に接続されている。
各熱整流器90において、第三パネル3と第四パネル4が熱的に接続された状態で、第三パネル3と第四パネル4は互いに平行である。つまり、各熱整流器90において、第一パネル1、第二パネル2、第三パネル3及び第四パネル4は、互いに平行である。
変形例4においては、各熱整流器90に第一封止材641と第二封止材642を備える必要がなく、製造工程が簡略化される。
第一ガスバリアフィルム81内の空間と、第二ガスバリアフィルム82内の空間は、減圧されてもよいし、乾燥ガス(たとえばアルゴン、クリプトン等の乾燥した希ガス、乾燥空気等)が充填されてもよい。
第一ガスバリアフィルム81の材料と、第二ガスバリアフィルム82の材料は、金属、合金、樹脂、ガラス及びこれらが適宜に組み合わさった材料のうち、いずれでもよい。第一ガスバリアフィルム81と、第二ガスバリアフィルム82は、高いガスバリア性を有することと、低熱膨張性であることが好ましい。
第一ガスバリアフィルム81と第二ガスバリアフィルム82に用いられる低熱膨張性の材料としては、たとえばFe−Ni系のインバー合金、Fe−Ni−Co系のコバール合金が挙げられる。第一ガスバリアフィルム81と第二ガスバリアフィルム82の好ましい熱膨張係数は5[ppm/℃]以下である。第一ガスバリアフィルム81と第二ガスバリアフィルム82の熱膨張係数は、2[ppm/℃]以下であることが更に好ましく、0.5[ppm/℃]以下であることが更に好ましい。
変形例4によれば、第一ガスバリアフィルム81に収容される第一半部901の特性と、第二ガスバリアフィルム82に収容される第二半部902の特性の組み合せによって、熱整流ユニット9の仕様が多様に実現される。
(変形例5)
熱整流ユニット9の変形例5においては、図10に示すように、複数の熱整流器90が内部に収容されたガスバリアフィルム8を、複数備えている。
熱整流ユニット9の変形例5は、熱整流ユニット9の変形例3と同様の構成のユニット(つまりガスバリアフィルム8内に少なくとも一つの熱整流器90が収容されたユニット)を、複数(この変形例では二つ)備えている。二つのユニットは、互いの裏表が逆となる姿勢で、対象物55にそれぞれ接触している。ここでの、互いの裏表が逆とは、第一パネル1に対して第二パネル2が位置する向きが、互いに逆であることを意味する。
熱整流ユニット9の変形例5が備える二つのガスバリアフィルム8のうち、一方(図中では右側)のガスバリアフィルム8内の各熱整流器90においては、第一パネル1が外気側(図中では上側)に位置し、第二パネル2が対象物55側(図中では下側)に位置している。二つのガスバリアフィルム8のうち、他方(図中左側)のガスバリアフィルム8内の各熱整流器90においては、第二パネル2が外気側に位置し、第一パネル1が対象物55側に位置している。
これにより、変形例5においては、複数の熱整流器90のうち少なくとも一つ(この変形例では二つ)の熱整流器90が、残りの熱整流器90とは裏表が逆になっている。少なくとも一つの熱整流器90と、残りの熱整流器90とでは、第一パネル1に対して第二パネル2が位置する向きが、互いに逆である。
複数の熱整流器90は、第二方向A2に並設されている。変形例5においては、対象物55が所定の温度に近付くように、対象物55と外気の間での熱伝導が行われる。
つまり、図中の右側のガスバリアフィルム8内の各熱整流器90(以下「正の熱整流器90f」という。)は、T0<T1<TSW1=TSW2<T2<Tiの関係にあるときに、対象物55から外気に向けて放熱するように機能する。ここで、T0は外気の温度であり、Tiは対象物55の温度である。既述したように、T1は第一熱伝導部61の温度、T2は第二熱伝導部62の温度、TSW1は第一切換温度、TSW2は第二切換温度である。
これに対して、図中の左側のガスバリアフィルム8内の各熱整流器90(以下「逆の熱整流器90r」という。)は、T0>T2>TSW2=TSW1>T1>Tiの関係にあるときに、外気から対象物55に向けて放熱するように機能する。
したがって、たとえば外気温度T0が昼夜において上昇と下降を繰り返すような場合に、正逆の熱整流器90f,90rが互いの熱整流の機能を発揮することで、対象物55の温度Tiは、所定の温度(TSW2=TSW1)に近づいてゆく。
変形例5においても、第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2を、変形例1のようにTSW1>TSW2の関係に設定してもよいし、変形例2のようにTSW1<TSW2の関係に設定してもよい。熱整流器90ごとに第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2の値が異なってもよい。
(変形例6)
熱整流ユニット9の変形例6においては、図11に示すように、ガスバリアフィルム8内において、複数の熱整流器90が、第二方向A2に並設されている。
変形例6によれば、変形例3等の場合と同様に、熱整流器90ごとに気密に封止しなくても、ガスバリアフィルム8内に複数の熱整流器90を収容して一括的に気密封止することができる。
変形例6においては、変形例5と同様の正逆の熱整流器90f,90rが、単一のガスバリアフィルム8内に並設されている。そのため、変形例5で既述したように、正逆の熱整流器90f,90rのそれぞれにおいて放熱状態と断熱状態を切り換えることで、対象物55の温度は、所定の温度(TSW2=TSW1)に近づいてゆく。
変形例6においては、各熱整流器90(つまり正逆の熱整流器90f,90r)を、第一方向A1から視たときに、中間パネル65の外形が、第一パネル1と第二パネル2の外形の内側に位置している。
このように、中間パネル65の外形を第一パネル1と第二パネル2の外形よりも一回り小さく設けることで、隣接する正逆の熱整流器90f,90rの互いの中間パネル65が接触することが、抑えられる。
仮に、正逆の熱整流器90f,90rの互いの中間パネル65が接触すると、図11中に破線矢印で概略的に示すような経路で、正の熱整流器90fの第二パネル2と、逆の熱整流器90rの第二パネル2が、熱的に接続される可能性がある。また、正の熱整流器90fの第一パネル1と、逆の熱整流器90rの第一パネル1が、熱的に接続されることも有り得る。
前者の場合と後者の場合のいずれにおいても、本来は断熱されるべきタイミングで放熱がなされ、不具合を生じるおそれがある。
これに対して、変形例6においては、このような不具合の発生が抑えられる。減圧によりガスバリアフィルム8内の真空度が高められていると、隣接する中間パネル65の間の距離が僅かであっても、隣接する中間パネル65同士を熱的に遮断することが可能である。
(変形例7)
熱整流ユニット9の変形例7においては、図12A〜図12Dに要部を模式的に示すように、第一パネル1と第二パネル2の間に介在する切換機構6は、第一熱伝導部61、第二熱伝導部62及びスペーサ63を備え、中間パネル65を備えない。
スペーサ63は、複数設けられている。複数のスペーサ63の各々は、第一パネル1と第二パネル2の互いの対向面11,21に接触し、第一パネル1と第二パネル2の間の距離Dを一定に保つ。第一パネル1と第二パネル2の間には、空間S1が形成されている。
空間S1は、上述した封止材64のような部材で気密に封止されてもよいし、上述したガスバリアフィルム8のような部材で気密に封止されてもよい。
空間S1は、空間S1内の空気の平均自由工程をλとしたとき、λ/D>0.3の関係を満たすまで減圧されていることが好ましい。この関係を満たすことで、空間S1は分子流領域となり、空間S1の熱コンダクタンスが距離Dに依存しないという特性が得られる。その結果、高断熱性の空間S1を内部に有する熱整流器90を、非常に薄型に形成することが可能になる。
上述したように、固体と気体の両方において、熱が伝導する距離が大きいほど熱コンダクタンスが低くなる。したがって、一般的には熱整流器90が薄型であるほど、空間S1の断熱性を高めるには不利である。しかし、空間S1においてλ/D>0.3の関係が満たされていると、空間S1が高い断熱性を有することと、熱整流器90の薄型化が、両立される。
熱整流器90が薄型であると、切換機構6を介して、第一パネル1と第二パネル2が熱的に接続されたときに、その薄さによって、高い熱伝導性を発揮することができる。すなわち、空間S1においてλ/D>0.3の関係が満たされていると、切換機構6を介して第一パネル1と第二パネル2が熱的に接続されたときに、熱整流器90の薄さによって、高い熱伝導性を発揮することができ、第一パネル1と第二パネル2が熱的に遮断されたときには、空間S1の断熱性によって、高い断熱性を発揮することができる。
加えて、空間S1においてλ/D>0.3の関係が満たされることで、空間S1が分子流領域になると、第一熱伝導部61(つまり各バイメタル部材71)と第二熱伝導部62(つまり各バイメタル部材72)の間の熱コンダクタンスが、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の間の距離に依存しないという特性が得られる。
そのため、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が非接触であり、且つ、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が非常に接近した状態にあるときに、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が非接触であるにも関わらず両者の間の熱コンダクタンスが高くなるという事態(ひいては、これが熱整流器90の動作精度を低下させるという事態)が、抑えられる。
なお、空間S1を減圧するのではなく、空間S1に乾燥ガス(たとえばアルゴン、クリプトン等の乾燥した希ガス、乾燥空気等)を充填することも可能である。
第一熱伝導部61は、空間S1に位置する。第一熱伝導部61は、第一パネル1に対して熱的に接続された複数のバイメタル部材71を含む。第一熱伝導部61は、少なくとも一つのバイメタル部材71を含んでいればよい。
各バイメタル部材71の一部分(つまり固定端部)が、第一パネル1の対向面11に固定されている。各バイメタル部材71は、自身の温度変化に伴って第一方向A1に変形する。
バイメタル部材71の自由端部は、第一熱伝導部61の第一変位部分615を構成している。第一変位部分615は、第一熱伝導部61の温度変化に伴って第一方向A1に変位し、第一パネル1との距離(つまり第二パネル2との距離)を変化させる。第一熱伝導部61は、その温度T1が高くなるほど第一変位部分615が第一パネル1に近づく(つまり第二パネル2から離れる)ように構成されている。
第二熱伝導部62は、空間S1に位置する。第一方向A1において、第二熱伝導部62は第一熱伝導部61に対向して位置する。第二熱伝導部62は、第二パネル2に対して熱的に接続された複数のバイメタル部材72を含む。第二熱伝導部62は、少なくとも一つのバイメタル部材72を含んでいればよい。
各バイメタル部材72の一部分(つまり固定端部)が、第二パネル2の対向面21に固定されている。各バイメタル部材72は、自身の温度変化に伴って第一方向A1に変形する。
バイメタル部材72の自由端部は、第二熱伝導部62の第二変位部分625を構成している。第二変位部分625は、第二熱伝導部62の温度変化に伴って第一方向A1に変位し、第一パネル1との距離(つまり第二パネル2との距離)を変化させる。第二熱伝導部62は、その温度T2が高くなるほど第二変位部分625が第一パネル1に近づく(つまり第二パネル2から離れる)ように構成されている。
第一変位部分615と第二変位部分625は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が温度上昇すると、これに伴って、第一方向A1において同じ側(つまり第一パネル1に近づく側)に変位する。
第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔTに依存して変化する。温度差ΔTによって、第一変位部分615と第二変位部分625が接触した状態(即ち放熱状態)と、第一変位部分615と第二変位部分625が離れて位置する状態(即ち断熱状態)が、切り換わる。
図12Aに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに低温TLの状態である。このとき、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62はともに平坦な形状を維持する。第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は互いに平行である。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、断熱に十分な距離である。
図12Bに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに高温TH(>低温TL)の状態である。このとき、第一熱伝導部61は、低温TLのときよりも第一変位部分615が第一パネル1側に近くなるように、全体が湾曲する。第二熱伝導部62は、低温TLのときよりも第二変位部分625が第一パネル1側に近くなるように、全体が湾曲する。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、図12Aの状態のときと略変わらず、断熱に十分な距離である。
図12Cに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1が高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が低温TLの状態である。このとき、第一熱伝導部61は第一変位部分615が第一パネル1側に近くなるように湾曲し、第二熱伝導部62は平坦な形状を維持している。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、図12Aの状態のときよりも拡大する。ここで拡大した距離は、断熱に十分な距離である。
図12Dに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1が低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が高温THの状態である。このとき、第一熱伝導部61は平坦な形状を維持し、第二熱伝導部62は、第二変位部分625が第一パネル1側に近くなるように湾曲している。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離はゼロである。第一変位部分615と第二変位部分625が接触していることで、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態にある。
変形例7においては、第一パネル1と第二パネル2の温度差に基づいて、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔTが決まり、この温度差ΔTに基づいて、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度が、上記のように切り換わる。
変形例7では、第二パネル2が第一パネル1よりも高温であり、且つ、その温度差が所定値を超える場合にだけ、第二パネル2から第一パネル1に熱が流れる。
放熱状態と断熱状態が切り換わるときの温度差ΔT(=T2−T1)は、第一熱伝導部61の構成(つまり各バイメタル部材71の配置、形状寸法、材料等)と、第二熱伝導部62の構成(つまり各バイメタル部材72の配置、形状寸法、材料等)を選択することで、調整可能である。
切換機構6が放熱状態になるための条件が、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔT>C(一定値)という条件であるとき、この一定値Cは、適宜に調整可能である。一例として、バイメタル部材71とこれに接触可能なバイメタル部材72の間の距離を調整することで、一定値Cを調整することができる。一定値Cは正の値であるが、負の値とすることも可能である。
放熱状態と断熱状態が切り換わるときの温度差ΔTが互いに異なる複数の熱整流器90を用意し、これら複数の熱整流器90を、第一方向A1に並ぶように直列に熱接続させることも可能であるし、第二方向A2に並ぶように並列に熱接続させることも可能である。この場合、複数の熱整流器90の直列、並列の組み合わせ次第で、多様な熱制御が実現可能である。
たとえば、第一パネル1と第二パネル2の材料がアルミニウムであり、スペーサ63の材料が樹脂であり、バイメタル部材71とバイメタル部材72に用いられるバイメタルが、アルミニウム製の薄板とFe−Ni合金製の薄板が接合されたバイメタルである場合、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度は、非常に大きく変化する。
一例として、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度は、断熱状態では0.006[W/mK]と非常に小さいのに対して、放熱状態では196[W/mK]と非常に大きい。この一例において、第一パネル1と第二パネル2の厚みは3[mm]、柱状であるスペーサ63の直径は0.6[mm]、スペーサ63の軸方向の高さは0,2[mm]、スペーサ63が配置されるピッチは20[mm]、バイメタルに含まれるアルミニウム製の薄板の厚さは0.05[mm]、バイメタルに含まれるFe−Ni合金製の薄板の厚さは0.05[mm]、バイメタルの長さは0.8[mm]、バイメタル部材71が配置されるピッチは1[mm]、バイメタル部材72が配置されるピッチは1[mm]、空間S1の真空度は0.001[Pa]である。
このように、第一パネル1、第二パネル2の材料が導電性材料であり、スペーサ63の材料が絶縁性材料である場合には、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度は、断熱状態のときと放熱状態のときで大きく相違する。
第一熱伝導部61の構成(つまり各バイメタル部材71の構成)と、第二熱伝導部62の構成(つまり各バイメタル部材72の構成)は、互いに同一でもよいし、互いに相違してもよい。バイメタル部材71とバイメタル部材72の互いの湾曲係数が相違してもよい。たとえば、バイメタル部材71とバイメタル部材72の湾曲係数と、バイメタル部材71とバイメタル部材72の間の第一方向A1の距離を選択することで、放熱状態と断熱状態の切り換わるときの温度差ΔTが調整可能である。
変形例7において、第一パネル1の対向面11は、第一熱伝導部61の第一変位部分615との接触をさけるための凹部15を有している。第二パネル2の対向面21は、第二熱伝導部62の第二変位部分625との接触をさけるための凹部25を有している。
凹部15と凹部25は必須ではなく、第一パネル1が凹部15を有し、第二パネル2が凹部25を有さないことも有り得る。第一パネル1が凹部15を有さず、第二パネル2が凹部25を有することも有り得る。
(変形例8)
熱整流ユニット9の変形例8の基本的な構成は、上記した変形例7の基本的な構成と共通である。熱整流ユニット9の変形例8は、第一パネル1と第二パネル2が突起部17,27を備えている点で、変形例7とは相違する。以下、熱整流ユニット9の変形例8の構成のうち、変形例7と共通の構成については説明を省略する。
図13A〜図13Dに要部を模式的に示すように、第一パネル1の対向面11には、周囲よりも一段盛り上がった突起部17が設けられている。突起部17には、第一熱伝導部61の一部分(つまり固定端部)が固定されている。対向面11のうち突起部17を除いた部分と、第一熱伝導部61の間には、第一熱伝導部61の第一変位部分615が対向面11に接触することを避けるための距離が保たれている。
同様に、第二パネル2の対向面21には、周囲よりも一段盛り上がった突起部27が設けられている。突起部27には、第二熱伝導部62の一部分(つまり固定端部)が固定されている。対向面21のうち突起部27を除いた部分と、第二熱伝導部62の間には、第二熱伝導部62の第二変位部分625が対向面21に接触することを避けるための距離が保たれている。
換言すると、変形例8においては、第一熱伝導部61の第一変位部分615の接触を避けるための凹部15が、対向面11のうち突起部17を除いた部分に形成されている。同様に、第二熱伝導部62の第二変位部分625の接触を避けるための凹部25が、対向面21のうち突起部27を除いた部分に形成されている。
突起部17と突起部27は必須ではなく、第一パネル1が突起部17を有し、第二パネル2が突起部27を有さないことも有り得る。第二パネル2が突起部17を有さず、第二パネル2が突起部27を有することも有り得る。
(変形例9)
熱整流ユニット9の変形例9の基本的な構成は、上記した変形例7及び変形例8の基本的な構成と共通である。以下、変形例7及び変形例8と共通の構成については説明を省略する。
熱整流ユニット9の変形例9において、第一パネル1と第二パネル2は、変形例7の凹部15,25のような凹部を備えておらず、また、変形例8の突起部17,27のような突起部を備えていない。
図14A〜図14Dに要部を模式的に示すように、第一パネル1の対向面11はその全体が平坦である。対向面11の一部領域に、第一熱伝導部61の一部分(つまり固定端部)が固定されている。同様に、第二パネル2の対向面21はその全体が平坦である。対向面21の一部領域に、第二熱伝導部62の一部分(つまり固定端部)が固定されている。
第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は、変形例7と変形例8のように低温TLのときに平坦な形状を維持するのではなく、低温TLのときに湾曲した形状を維持する。
図14Aに示すように、第一熱伝導部61は、その温度T1が低温TLであるときには、第一変位部分615が第一パネル1から離れて位置するように円弧状に湾曲した形状を有する。第二熱伝導部62は、その温度T2が低温TLであるときには、第二変位部分625が第二パネル2から離れて位置するように円弧状に湾曲した形状を有する。
第一熱伝導部61の湾曲している向きと、第二熱伝導部62の湾曲している向きは、第一方向A1において、互いに近づく側の向きである。第一熱伝導部61の第一変位部分615と第一パネル1の間の距離と、第二熱伝導部62の第二変位部分625と第二パネル2の間の距離は、互いに異なる。
変形例9では、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2がともに低温TLであるときに、第一変位部分615と第一パネル1の間の距離が、第二変位部分625と第二パネル2の間の距離よりも大きくなるように、設定されている。このとき、第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、断熱に十分な距離である。
図14Bに示すように、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに高温THであるとき、第一変位部分615と第二変位部分625はともに、低温TLのときよりも第一パネル1に近くなる。
このとき、第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、図14Aの状態のときと略変わらず、断熱に十分な距離である。第一変位部分615と第二変位部分625と第一パネル1は、互いに非接触に保たれている。
図14Cに示すように、第一熱伝導部61の温度T1が高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が低温TLであると、第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、図14Aに示す状態のときよりも拡大し、断熱が保たれる。第一変位部分615は第一パネル1に近くなるが、図14Bの状態と同様に、第一変位部分615と第一パネル1は互いに非接触に保たれている。
図14Dに示すように、第一熱伝導部61の温度T1が低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が高温THであると、図14Aに示す状態のときよりも、第二変位部分625が第一パネル1に近くなり、第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離がゼロになる。第一変位部分615と第二変位部分625が接触することで、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態になる。
(変形例10)
熱整流ユニット9の変形例10の基本的な構成は、上記した変形例7及び変形例8の基本的な構成と共通である。以下、変形例7及び変形例8と共通の構成については説明を省略する。
熱整流ユニット9の変形例10において、第一熱伝導部61に含まれる少なくとも一つのバイメタル部材71と、第二熱伝導部62に含まれる少なくとも一つのバイメタル部材72は、自身の温度変化に伴って第二方向A2に変形するように構成されている。図15、図16A〜図16D等に示すように、バイメタル部材71と、これに対応するバイメタル部材72は、第二方向A2において、互いに距離をあけて位置する。
各バイメタル部材71の一部分(つまり固定端部)は、第一パネル1の対向面11に固定されている。各バイメタル部材71の自由端部が、第一熱伝導部61の第一変位部分615を構成している。第一変位部分615は、第一熱伝導部61の温度変化に伴って、第二方向A2に変位する部分である。
各バイメタル部材72の一部分(つまり固定端部)は、第二パネル2の対向面21に固定されている。バイメタル部材72の自由端部が、第二熱伝導部62の第二変位部分625を構成している。第二変位部分625は、第二熱伝導部62の温度変化に伴って、第二方向A2に変位する部分である。
第一変位部分615と第二変位部分625は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が温度上昇すると、これに伴って、第二方向A2の同じ側に変位する。
第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔTに依存して変化する。温度差ΔTによって、第一変位部分615と第二変位部分625が接触した状態(即ち放熱状態)と、第一変位部分615と第二変位部分625が離れて位置する状態(即ち断熱状態)が、切り換わる。
図16Aに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに低温TLの状態である。このとき、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62はともに一直線状であり、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は互いに平行である。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、断熱に十分な距離である。
図16Bに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに高温TH(>低温TL)の状態である。このとき、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は、第二方向A2の同じ側に向けて湾曲する。第一変位部分615と第二変位部分625は、第二方向A2の同一の側に移動する。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、図12Aの状態のときと略変わらず、断熱に十分な距離である。
図16Cに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1が高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が低温TLの状態である。このとき、第一熱伝導部61は、第一変位部分615が第二熱伝導部62から離れるように湾曲する。第二熱伝導部62は一直線状の形状を維持している。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離は、図16Aに示す状態のときよりも拡大する。ここで拡大した距離は、断熱に十分な距離である。
図16Dに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1が低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が高温THの状態である。このとき、第一熱伝導部61は一直線状の形状を維持し、第二熱伝導部62は、第一熱伝導部61に近づく側に向けて湾曲する。第一変位部分615と第二変位部分625の間の距離はゼロである。第一変位部分615と第二変位部分625が接触することで、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態にある。
変形例10においては、第一パネル1と第二パネル2の温度差に基づいて、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔTが決まり、この温度差ΔTに基づいて、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度が、上記のように切り換わる。
変形例10では、第二パネル2が第一パネル1よりも高温であり、且つ、その温度差が所定値を超える場合にだけ、第二パネル2から第一パネル1に熱が流れる。
たとえば、バイメタル部材71とバイメタル部材72の湾曲係数と、バイメタル部材71とバイメタル部材72の間の第二方向A2の距離を選択することで、放熱状態と断熱状態の切り換わるときの温度差ΔTを調整することができる。バイメタル部材71とバイメタル部材72とで、材料と構造を同一にすることも可能である。
変形例10では、第一熱伝導部61(つまり各バイメタル部材71)の外面のうち、第二熱伝導部62に当たる部分に、斜面617を設けている。第二熱伝導部62(つまり各バイメタル部材72)の外面のうち、第一熱伝導部61に当たる部分に、斜面627を設けている。第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が当たるとき、両斜面617,627は互いに平行な姿勢で接触する。これにより、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は広い面積で接触する。
変形例10では、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が第二方向A2に変形し、第一変位部分615と第二変位部分625が第二方向A2に変位するので、第一パネル1の対向面11に、変形例7,8の凹部15のような凹部を形成しなくてもよい。また、第二パネル2の対向面21に、変形例7,8の凹部25のような凹部を形成しなくてもよい。変形例10では、第一パネル1と第二パネル2の間の距離を小さく設定することが比較的容易である。
変形例10では、放熱状態において第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が直接的に接触するように構成されているが、上記した中間パネル65のような熱伝導性の中間パネルを、第一パネル1と第二パネル2の間に備えることも可能である。
この場合、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の両方が中間パネルに接触することで、切換機構6は放熱状態となる。第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の少なくとも一方が中間パネルから離れることで、切換機構6は断熱状態となる。
(変形例11)
図17A〜図17Dには、熱整流ユニット9の変形例11の要部を模式的に示している。
熱整流ユニット9の変形例11において、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は、第一方向A1の寸法が、温度変化に伴って変化する性質(つまり熱膨張性)を有する。
変形例11においては、熱膨張性材料を用いて第一熱伝導部61と第二熱伝導部62を形成している。
具体的には、第一熱伝導部61が、負の熱膨張性材料を用いて形成された熱膨張性部材73を含んでいる。第二熱伝導部62が、正の熱膨張性材料を用いて形成された熱膨張性部材74を含んでいる。
図17A〜図17Dに示す熱整流ユニット9(熱整流器90)では、熱膨張性部材73を一つだけ示しているが、第一熱伝導部61が複数の熱膨張性部材73を含むことも可能である。同様に、図17A〜図17Dに示す熱整流ユニット9では、熱膨張性部材74を一つだけ示しているが、第二熱伝導部62が複数の熱膨張性部材74を含むことも可能である。このことは、後述の変形例においても同様である。
負の熱膨張性を有する第一熱伝導部61(つまり各熱膨張性部材73)は、第一空間S11に位置し、その一部分(つまり固定端部)が第一パネル1の対向面11に固定されている。
変形例11においては、第一熱伝導部61の固定端部とは反対側に位置する端部が、第一変位部分615を構成している。第一変位部分615は、第一熱伝導部61の温度変化に伴って、第一方向A1に変位する部分である。
第一熱伝導部61は、自身の温度上昇に伴って、第一変位部分615が中間パネル65に接触した状態(つまり熱的に接続された状態)から、第一変位部分615が中間パネル65から離れた状態(つまり熱的に遮断された状態)に切り換わるように構成されている。
第二熱伝導部62(つまり各熱膨張性部材74)では、固定端部とは反対側に位置する端部が、第二変位部分625を構成している。第二変位部分625は、第二熱伝導部62の温度変化に伴って、第一方向A1に変位する部分である。
第二熱伝導部62は、温度上昇に伴って、第二変位部分625が中間パネル65から離れた状態(つまり熱的に遮断された状態)から、第二変位部分625が中間パネル65に接触した状態(つまり熱的に接続された状態)に切り換わるように構成されている。
図17Aに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2がともに低温TLである。このとき、第一熱伝導部61の第一方向A1の突先部分である第一変位部分615が、中間パネル65に接触し、第二熱伝導部62の第一方向A1の突先部分である第二変位部分625が、中間パネル65から離れるので、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に遮断された断熱状態にある。
図17Bに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2がともに高温TH(>TL)である。このとき、第一熱伝導部61は低温TLのときよりも第一方向A1に収縮し、第一変位部分615が中間パネル65から離れる。第二熱伝導部62は、低温TLのときよりも第一方向A1に膨張し、第二変位部分625が中間パネル65に接触する。その結果、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に遮断された断熱状態にある。
図17Cに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が低温TLである。このとき、第一変位部分615と第二変位部分625は、ともに中間パネル65から離れて位置する。切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に遮断された断熱状態にある。
図17Dに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が高温THである。このとき、第一変位部分615と第二変位部分625は、ともに中間パネル65に接触する。切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態にある。
変形例11においては、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の熱膨張率、形状寸法、配置等を選択することで、第一熱伝導部61と中間パネル65の熱的な接続と遮断が切り換わるときの第一熱伝導部61の温度(即ち第一切換温度TSW1)と、第二熱伝導部62と中間パネル65の熱的な接続と遮断が切り換わるときの第二熱伝導部62の温度(即ち第二切換温度TSW2)が、自在に設定される。第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2は共通の温度に設定されてもよいし、互いに異なる温度に設定されてもよい。第一切換温度TSW1と第二切換温度TSW2の設定により、第二パネル2から第一パネル1に向けてだけ熱が流れるように、熱を整流することも可能である。
変形例10の第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の構成は、上記した他の変形例においても適用することが可能である。つまり、変形例1〜9の第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が、少なくとも一つの熱膨張性部材73,74を含むことも有り得る。
(変形例12)
図18A〜図18Dには、熱整流ユニット9の変形例12の要部を模式的に示している。
熱整流ユニット9の変形例12は、変形例7〜9と同様に中間パネルを備えず、変形例11と同様に第一熱伝導部61が少なくとも一つの熱膨張性部材73を含み、第二熱伝導部62が少なくとも一つの熱膨張性部材74を含んでいる。加えて、変形例12では、スペーサ63が熱膨張性を有する。
変形例12では、第一方向A1において、第一熱伝導部61(つまり各熱膨張性部材73)と第二熱伝導部62(つまり各熱膨張性部材74)の寸法が温度に応じて変化する。加えて、変形例12では、スペーサ63の寸法(つまり第一パネル1と第二パネル2の距離D)が温度に応じて変化する。
第一熱伝導部61は、第一パネル1と第二パネル2の間に形成される空間S1に位置し、その一部分(つまり固定端部)が第一パネル1の対向面11に固定されている。第一熱伝導部61のうち固定端部とは反対側に位置する端部が、第一変位部分615を構成している。第一変位部分615は、第一熱伝導部61の温度変化に伴って第一方向A1に変位する部分である。
同様に、第二熱伝導部62は空間S1に位置し、その一部分(つまり固定端部)が第二パネル2の対向面21に固定されている。第二熱伝導部62のうち固定端部とは反対側に位置する端部が、第二変位部分625を構成している。第二変位部分625は、第二熱伝導部62の温度変化に伴って第一方向A1に変位する部分である。
変形例12では、第一熱伝導部61、第二熱伝導部62及びスペーサ63が正の熱膨張係数を有する。第一熱伝導部61の熱膨張係数をα1、第二熱伝導部62の熱膨張係数をα2、スペーサ63の熱膨張係数をα3としたとき、その大きさはα2>α3>>α1の関係にある。変形例11では、熱膨張係数α1が非常に小さく、第一熱伝導部61の熱膨張は実質的に無視することができる。
図18Aに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2がともに低温TLである。スペーサ63の温度T3は、第一熱伝導部61及び第二熱伝導部62と同じく低温TLである。
このとき、第一熱伝導部61の第一方向A1の突先部分である第一変位部分615と、第二熱伝導部62の第一方向A1の突先部分である第二変位部分625は、第一方向A1に距離をあけて位置するので、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に遮断された断熱状態にある。
図18Bに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2がともに高温TH(>TL)である。スペーサ63の温度T3は、第一熱伝導部61及び第二熱伝導部62と同じく高温THである。
このとき、第一熱伝導部61の膨張は実質的に無視できるので、第一変位部分615の第一パネル1からの距離は、低温TLのときと略変わらない。
第二熱伝導部62は、低温TLのときよりも全体が膨張し、第二変位部分625の第二パネル2からの距離は増大する。スペーサ63は、低温TLのときよりも第一方向A1に膨張し、第一パネル1と第二パネル2の間の距離Dを増大させる。熱膨張係数α2,α3の値は、第二変位部分625と第二パネル2の間の距離の増大量と、距離Dの増大量とが、略同一になるように設定されている。
したがって、図18Bに示す状態においても、第一変位部分615と第二変位部分625は、第一方向A1に距離をあけて位置し、切換機構6は断熱状態にある。
図18Cに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が低温TLである。スペーサ63の温度T3は、高温THよりも低く且つ低温TLよりも高い中温TMである。
このとき、高温THである第一熱伝導部61の第一変位部分615の、第一パネル1からの距離は、低温TLのときと略変わらない。中温TMであるスペーサ63は、低温TLのときよりも第一方向A1に膨張し、第一パネル1と第二パネル2の間の距離Dを、低温TLのときよりも増大させる。
したがって、図18Cに示す状態においても、第一変位部分615と第二変位部分625は、第一方向A1に距離をあけて位置し、切換機構6は断熱状態にある。
図18Dに示す状態では、第一熱伝導部61の温度T1が低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が高温THである。スペーサ63の温度T3は中温TMである。
スペーサ63は、低温TLのときよりも第一方向A1に膨張し、第一パネル1と第二パネル2の間の距離Dを、低温TLのときよりも増大させる。高温THである第二熱伝導部62は、低温TLのときよりも第一方向A1に膨張し、第二変位部分625の第二パネル2からの距離は、低温TLのときよりも増大する。
熱膨張係数α2,α3の値は、第二変位部分625と第二パネル2の間の距離の増大量が、距離Dの増大量よりも大きくなるように設定されている。図18Dに示す状態において、第一変位部分615と第二変位部分625は熱伝導可能に接触し、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態にある。
変形例12においては、第一熱伝導部61、第二熱伝導部62及びスペーサ63の熱膨張率、形状寸法、配置等を選択することで、所定の条件を満たす場合にだけ第二パネル2から第一パネル1に熱が流れるように、熱を整流することが可能となる。
変形例12では、第一熱伝導部61が、熱膨張を実質的に無視し得るように構成されているが、これに限定されず、第二熱伝導部62が、熱膨張を実質的に無視し得るように構成されてもよい。
(変形例13)
図19A〜図19D、図20には、熱整流ユニット9の変形例13の要部を示している。
熱整流ユニット9の変形例13は、変形例11,12と同様に中間パネルを備えず、第一熱伝導部61が少なくとも一つの熱膨張性部材73を含み、第二熱伝導部62が少なくとも一つの熱膨張性部材74を含んでいる。
変形例13において、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62は、自身の温度変化に伴って第二方向A2の寸法が変化する性質(つまり熱膨張性)を有する。
具体的に説明すると、第一熱伝導部61は、正の熱膨張性材料を用いてシート状に形成された熱膨張性部材73と、熱膨張性部材73に固定された二つの凸状の接続体735を有する。第一熱伝導部61には、接続体735が少なくとも一つ設けられればよい。
図20では、第一パネル1と熱膨張性部材73の図示を省略し、接続体735を破線で示している。第一方向A1から視たとき、接続体735は一直線状の形状を有する。
熱膨張性部材73と接続体735は、ともに熱伝導性を有する。接続体735は、熱膨張性部材73に対して熱的に接続されている。
熱膨張性部材73は、第一方向A1が厚み方向となるように設けられた、シート状の部材である。第一パネル1の対向面11には、熱膨張性部材73の第二方向A2の一部分が固定されている。この一部分が、熱膨張性部材73の固定部732である。熱膨張性部材73は、自身の温度変化に伴って、固定部732を中心として第二方向A2の両側に膨縮する。
接続体735は、固定部732を基準として第二方向A2の両側に位置する。両側の接続体735は、熱膨張性部材73から、第二パネル2に近づく向きに突出している。両側の接続体735は、熱膨張性部材73の温度変化に伴って、第二方向A2において近接または離間する。
第二熱伝導部62は、正の熱膨張性材料を用いてシート状に形成された熱膨張性部材74と、熱膨張性部材74に固定された二つの凸状の接続体745を有する。図20に示すように、第一方向A1から視たとき、接続体745は一直線状の形状を有する。第二熱伝導部62には、接続体745が少なくとも一つ設けられればよい。
熱膨張性部材74と接続体745は、ともに熱伝導性を有する。接続体735は、熱膨張性部材73に対して熱的に接続されている。
熱膨張性部材74は、第一方向A1が厚み方向となるように設けられた、シート状の部材である。第二パネル2の対向面21には、熱膨張性部材74の第二方向A2の一部分が固定されている。この一部分が、熱膨張性部材74の固定部742である。熱膨張性部材74は、自身の温度変化に伴って、固定部742を中心として第二方向A2の両側に膨縮する。
二つの接続体745は、固定部742を基準として第二方向A2の両側に位置する。両側の接続体745は、熱膨張性部材74から、第一パネル1に近づく向きに突出している。両側の接続体745は、熱膨張性部材74の温度変化に伴って、第二方向A2において近接または離間する。
第二方向A2において、第二熱伝導部62に含まれる二つの接続体745は、第一熱伝導部61に含まれる二つの接続体735の間に位置する。二つの接続体745と、二つの接続体735は、一対一で対応する。
接続体745と固定部742の間の距離は、この接続体745に対応する接続体735と固定部732の間の距離よりも、小さい。第二熱伝導部62に含まれる固定部742と、第一熱伝導部61に含まれる固定部732は、第一方向A1において対向して位置する。
接続体735とこれに対応する接続体745は、第一方向A1において、少なくとも互いの一部が重なるように位置する。
図19Aに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに低温TLの状態である。このとき、第一熱伝導部61に含まれる接続体735と、これに対応する第二熱伝導部62の接続体745は、第二方向A2に距離をあけて位置する。この距離は、断熱に十分な距離である。
図19Bに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1と第二熱伝導部62の温度T2が、ともに高温TH(>低温TL)の状態である。このとき、第一熱伝導部61に含まれる熱膨張性部材73と、第二熱伝導部62に含まれる熱膨張性部材74はともに、低温TLのときよりも、第二方向A2に膨張している。
第一熱伝導部61の接続体735と、これに対応する第二熱伝導部62の接続体745は、低温TLのときよりも、第二方向A2の同一側に移動している。接続体735とこれに対応する接続体745の間の距離は、図19Aの状態のときと略変わらず、断熱に十分な距離である。
図19Cに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1が高温THであり、第二熱伝導部62の温度T2が低温TLの状態である。このとき、第一熱伝導部61に含まれる熱膨張性部材73は、低温TLのときよりも、第二方向A2に膨張する。
第一熱伝導部61の接続体735は、低温TLのときよりも、第二方向A2において固定部732から離れる側に向けて移動する。接続体735とこれに対応する接続体745の間の距離は、図19Aの状態のときよりも拡大する。ここで拡大した距離は、断熱に十分な距離である。
図19Dに示す状態は、第一熱伝導部61の温度T1が低温TLであり、第二熱伝導部62の温度T2が高温THの状態である。このとき、第二熱伝導部62に含まれる熱膨張性部材74は、低温TLのときよりも、第二方向A2に膨張する。
第二熱伝導部62の接続体745は、低温TLのときよりも、第二方向A2において固定部742から離れる側に向けて移動する。
図19Dに示す状態においては、接続体735とこれに対応する接続体745が接触する。つまり、第一熱伝導部61に含まれる二つの接続体735と、第二熱伝導部62に含まれる二つの接続体745が、一対一で接触する。切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態にある。
このように、変形例13では、接続体735とこれに対応する接続体745において、第一熱伝導部61の温度上昇に伴って接続体735が変位する第二方向Aの向きと、第二熱伝導部62の温度上昇に伴って接続体745が変位する第二方向Aの向きが、同一である。
変形例13では、第一熱伝導部61に含まれる各接続体735が、第一熱伝導部61の温度変化に伴って第二方向A2に変位する第一変位部分615に相当する。第二熱伝導部62に含まれる各接続体745が、第二熱伝導部62の温度変化に伴って第二方向A2に変位する第二変位部分625に相当する。
変形例13においては、第一パネル1と第二パネル2の温度差に基づいて、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔTが決まり、この温度差ΔTに基づいて、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度が、上記のように切り換わる。
変形例13では、第二パネル2が第一パネル1よりも高温であり、且つ、その温度差が所定値を超える場合にだけ、第二パネル2から第一パネル1に熱が流れる。
たとえば、第一熱伝導部61の構成(たとえば熱膨張性部材73の膨張係数、固定部732と接続体735の間の距離等)と、第二熱伝導部62の構成(たとえば熱膨張性部材74の膨張係数、固定部742と接続体745との間の距離等)を選択することで、放熱状態と断熱状態の切り換わるときの温度差ΔTを調整することができる。熱膨張性部材73と熱膨張性部材74とで、材料を同一にする(つまり膨張係数を同一にする)ことも可能である。
変形例13では、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が第二方向A2に伸縮するので、第一パネル1の対向面11に、変形例7,8の凹部15のような凹部を形成しなくてもよい。また、第二パネル2の対向面21に、変形例7,8の凹部25のような凹部を形成しなくてもよい。変形例13では、第一パネル1と第二パネル2の間の距離を小さく設定することが比較的容易である。
変形例13では、熱膨張性部材73と熱膨張性部材74が、自身の厚み方向とは直交する第二方向A2に膨縮するので、接続体735と接続体745は比較的大きく移動することができる。そのため、変形例13では、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の寸法精度に求められる水準が非常に高くなることを、抑えることができる。変形例13では、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の配置を適切に設定すれば、熱整流器90の安定的な動作が実現される。
変形例13では、接続体735の外面のうち第二熱伝導部62に当たる部分(つまり接続体745に当たる部分)に、斜面737を設けている。接続体745の外面のうち第一熱伝導部61に当たる部分(つまり接続体735に当たる部分)に、斜面747を設けている。接続体735と接続体745が当たるとき、互いに平行な両斜面737,747が、広い面積で接触する。
変形例13では、放熱状態において第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が直接的に接触するように構成されているが、上記した中間パネル65のような熱伝導性の中間パネルを、第一パネル1と第二パネル2の間に備えることも可能である。
この場合、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の両方が中間パネルに接触することで、切換機構6は放熱状態となる。第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の少なくとも一方が中間パネルから離れることで、切換機構6は断熱状態となる。
(変形例14)
図21には、熱整流ユニット9の変形例14を示している。
熱整流ユニット9の変形例14の基本的な構成は、上記した変形例13の基本的な構成と共通である。以下、熱整流ユニット9の変形例14の構成のうち、変形例13と共通の構成については説明を省略する。
第一熱伝導部61は、シート状の熱膨張性部材73と、熱膨張性部材73の一面に固定された四つの接続体735を有する。固定部732を基準として第二方向A2の両側に、それぞれ二つの接続体735が位置する。第二方向A2の両側において、二つの接続体735の固定部732からの距離は、互いに相違している。
第二熱伝導部62は、シート状の熱膨張性部材74と、熱膨張性部材74の一面に固定された四つの接続体745を有する。固定部742を中心として第二方向A2の両側に、それぞれ二つの接続体734が位置する。第二方向A2の両側において、二つの接続体745と固定部742との距離は、互いに相違している。
熱膨張性部材73に一体に設けられた四つの接続体735と、熱膨張性部材74に一体に設けられた四つの接続体745は、一対一で対応する。対応関係にある接続体735と接続体745の接触と非接触は、熱膨張性部材73と熱膨張性部材74の第二方向A2の膨縮によって、切り換えられる。
接続体735とこれに対応する接続体745との間の距離は、固定部732から離れて位置する接続体735ほど大きくなるように、設定されている。つまり、固定部732から離れた側の接続体735とこれに対応する接続体745との間の距離は、固定部732に近い側の接続体735とこれに対応する接続体745との間の距離よりも、大きく設定されている。
この設定により、切換機構6が放熱状態にあるとき、四つの接続体735と四つの接続体745が、一対一で接触することができる。
なお、接続体735と接続体745の数と形状は、特に限定されない。たとえば、接続体735が円形状または円弧状の形状を有し、接続体745が円形状または円弧状の形状を有してもよい。この場合、第一方向A1から視たときに接続体735と接続体745が同心円状に位置することで、接続体735と接続体745の接触と非接触が、熱膨張性部材73と熱膨張性部材74の膨縮によって切り換え可能である。
(変形例15)
図22、図23には、熱整流ユニット9の変形例15を示している。図23では、第一パネル1の図示を省略し、第一熱伝導部61を破線で示している。
熱整流ユニット9の変形例15の基本的な構成は、上記した変形例13の基本的な構成と共通である。以下、熱整流ユニット9の変形例15の構成のうち、変形例13と共通の構成については説明を省略する。
第一熱伝導部61は、棒状の熱膨張性部材73と、熱膨張性部材73に結合された棒状の非熱膨張性部材733と、非熱膨張性部材733に結合された三つの接続体735を含む。
熱膨張性部材73は、第二方向A2に沿って一直線状の形状を有する。熱膨張性部材73の第二方向A2の一端部が、第一パネル1に固定される固定部732である。熱膨張性部材73の第二方向A2の他端部(つまり、固定部732とは反対側の端部)に、非熱膨張性部材733が結合されている。
非熱膨張性部材733は、第二方向A2に沿って一直線状の形状を有する。熱膨張性部材73と非熱膨張性部材733は、一直線状に連続する。非熱膨張性部材733の熱膨張係数は非常に小さく、自身の温度変化に伴う熱膨張は実質的に無視することができる。
三つの接続体735は、第二方向A2において互いに距離をあけて位置する。三つの接続体735は、それぞれ一直線状の形状を有する。三つの接続体735は、互いに平行である。
第二熱伝導部62は、棒状の熱膨張性部材74と、熱膨張性部材74に結合された棒状の非熱膨張性部材743と、非熱膨張性部材743に結合された三つの接続体745を含む。
熱膨張性部材74は、第二方向A2に沿って一直線状の形状を有する。熱膨張性部材74の第二方向A2の一端部が、第二パネル2に固定される固定部742である。熱膨張性部材74の第二方向A2の他端部(つまり、固定部742とは反対側の端部)に、非熱膨張性部材743が結合されている。
非熱膨張性部材743は、第二方向A2に沿って一直線状の形状を有する。熱膨張性部材74と非熱膨張性部材743は、一直線状に連続する。非熱膨張性部材743の熱膨張係数は非常に小さく、自身の温度変化に伴う熱膨張は実質的に無視することができる。
三つの接続体745は、第二方向A2において互いに距離をあけて位置する。三つの接続体745は、それぞれ一直線状の形状を有する。三つの接続体745は、互いに平行である。
第一熱伝導部61に含まれる三つの接続体735と、第二熱伝導部62に含まれる三つの接続体745は、一対一で対応する。対応関係にある接続体735と接続体745の接触と非接触は、熱膨張性部材73と熱膨張性部材74の第二方向A2の膨縮によって、切り換えられる。接続体735とこれに対応する接続体745との間の距離は、三つの接続体735で共通である。
変形例15においては、第一パネル1と第二パネル2の温度差に基づいて、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62の温度差ΔTが決まり、この温度差ΔTに基づいて、第一パネル1と第二パネル2の間の熱伝導度が切り換わる。
具体的には、第一熱伝導部61の温度T1よりも第二熱伝導部62の温度T2が高温であり、且つ、その温度差ΔTが所定値を超える場合に、三つの接続体735と三つの接続体745が一対一で接触する。このとき、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に接続された放熱状態にある。この場合以外は、切換機構6は、第一熱伝導部61と第二熱伝導部62が熱的に遮断された断熱状態にある。
熱整流ユニット9の変形例15は、第二パネル2が第一パネル1よりも高温であり、且つ、その温度差が所定値を超える場合にだけ、第二パネル2から第一パネル1に熱が流れる。
変形例15においては、第一熱伝導部61が、第一パネル1の対向面11に接触した状態で膨縮するので、対向面11に潤滑剤を塗布しておくことが好ましい。同様に、第二熱伝導部62が、第二パネル2の対向面21に接触した状態で膨縮するので、対向面21に潤滑剤を塗布しておくことが好ましい。空間S1が真空である場合、対向面11と対向面21には、WS2、WMo2等を材質とした真空用潤滑剤を塗布することが好ましい。
なお、接続体735と接続体745の数と形状は、特に限定されない。接続体735と接続体745の数は、それぞれが一つまたは複数であればよい。接続体735と接続体745の形状は、互いに接触することのできる形状であればよく、一直線状に限定されない。
以上、一実施形態の熱整流ユニット9(熱整流器90)とこれの各種の変形例について、順に説明したが、上記した各構成において更に設計変更が可能であり、また、各変形例の構成を組み合わせることが可能である。
(態様)
以上、一実施形態及びこれの変形例1〜15で説明した内容から理解されるように、第1の態様の熱整流器(90)は、以下の構成を備える。
第1の態様の熱整流器(90)は、第一パネル(1)と、第一パネル(1)に対向して位置する第二パネル(2)と、切換機構(6)を具備する。切換機構(6)は、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間に設けられ、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間の熱伝導度を、第一パネル(1)と第二パネル(2)の温度に応じて切り換える機構である。
切換機構(6)は、第一パネル(1)に対して熱的に接続された第一熱伝導部(61)と、第二パネル(2)に対して熱的に接続された第二熱伝導部(62)を備える。第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方は、自身の温度変化に伴って形状寸法が変化する性質を有する。
切換機構(6)は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方の形状寸法が変化することで、放熱状態と断熱状態が切り換わるように構成されている。放熱状態は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が熱的に接続された状態である。断熱状態は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が熱的に遮断された状態である。
第1の態様の熱整流器(90)によれば、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の性質の設定によって、断熱と放熱が切り換わる温度を、広範な温度域から設定することができる。そのため、たとえば常温の環境下で断熱と放熱が切り換わるような熱整流器(90)を提供することができる。なお、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)がともに、自身の温度変化に伴って形状が変化する性質を有することも好ましい。第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)がともに、自身の温度変化に伴って寸法が変化する性質(即ち熱膨張性)を有することも好ましい。第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の一方が、自身の温度変化に伴って寸法が変化する性質を有することも好ましい。
また、一実施形態及びこれの変形例1〜6,11で説明した内容から理解されるように、第2の態様の熱整流器(90)は、第1の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第2の態様の熱整流器(90)において、切換機構(6)は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の間に位置する熱伝導性の中間パネル(65)を、更に備える。放熱状態は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の両方が、中間パネル(65)に対して熱的に接続された状態である。断熱状態は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方が、中間パネル(65)に対して熱的に遮断された状態である。
第2の態様の熱整流器(90)によれば、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)の間で熱的な接続と遮断が切り換わる温度と、第二熱伝導部(62)と中間パネル(65)の間で熱的な接続と遮断が切り換わる温度を設定することで、熱整流器(90)の熱伝導度が切り換わる温度を、自在に設定することができる。
また、一実施形態及びこれの変形例1〜6,11で説明した内容から理解されるように、第3の態様の熱整流器(90)は、第2の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第3の態様の熱整流器(90)において、第一熱伝導部(61)は、自身の温度降下に伴って、中間パネル(65)に対して熱的に遮断された状態から、中間パネル(65)に対して熱的に接続された状態に切り換わるように構成されている。第二熱伝導部(62)は、自身の温度上昇に伴って、中間パネル(65)に対して熱的に遮断された状態から、中間パネル(65)に対して熱的に接続された状態に切り換わるように構成されている。
第3の態様の熱整流器(90)によれば、第二パネル(2)から第一パネル(1)に向けて放熱がなされるように、熱の流れを整流することができる。
また、一実施形態及びこれの変形例1〜6,11で説明した内容から理解されるように、第4の態様の熱整流器(90)は、第3の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第4の態様の熱整流器(90)においては、第一切換温度(TSW1)と第二切換温度(TSW2)が、互いに異なる。第一切換温度(TSW1)は、第一熱伝導部(61)において中間パネル(65)との熱的な接続と遮断が切り換わる温度である。第二切換温度(TSW2)は、第二熱伝導部(62)において中間パネル(65)との熱的な接続と遮断が切り換わる温度である。
第4の態様の熱整流器(90)によれば、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間の熱的な接続と遮断が切り換わるタイミングを、適切なタイミングとなるように、自在に調整することができる。
また、一実施形態及びこれの変形例1〜6,11で説明した内容から理解されるように、第5の態様の熱整流器(90)は、第2〜第4のいずれか一つの態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第5の態様の熱整流器(90)において、第一パネル(1)と中間パネル(65)の距離をD1、第一空間(S11)内の空気の平均自由工程をλ1としたとき、第一空間(S11)は、λ1/D1>0.3の関係を満たすように減圧されている。第一空間(S11)は、第一パネル(1)と中間パネル(65)の間に形成される空間である。第二パネル(2)と中間パネル(65)の距離をD2、第二空間(S12)内の空気の平均自由工程をλ2としたとき、第二空間(S12)は、λ2/D2>0.3の関係を満たすように減圧されている。第二空間(S12)は、第二パネル(2)と中間パネル(65)の間に形成される空間である。
第5の態様の熱整流器(90)によれば、第一空間(S11)と第二空間(S12)は共に分子流領域となり、第一空間(S11)の熱コンダクタンスが距離(D1)に依存せず、第二空間(S12)の熱コンダクタンスが距離D2に依存しないという特性が得られる。これにより、熱整流器(90)を薄型に形成することが可能になる。
上述したように、一般的には、熱整流器(90)が薄型であるほど、第一空間(S11)と第二空間(S12)の断熱性を高めるには不利である。しかし、第一空間(S11)においてλ1/D1>0.3の関係が満たされ、第二空間(S12)においてλ2/D2>0.3の関係が満たされていると、第一空間(S11)と第二空間(S12)が高い断熱性を有すること、熱整流器(90)の薄型化が、両立され得る。熱整流器(90)が薄型であると、切換機構(6)が放熱状態にあるときに、高い熱伝導性を発揮することができる。
つまり、第一空間(S11)においてλ1/D1>0.3の関係が満たされ、第二空間(S12)においてλ2/D2>0.3の関係が満たされていると、熱整流器(90)は、切換機構(6)が放熱状態であるときには、その薄さによって、高い熱伝導性を発揮することができ、切換機構(6)が断熱状態にあるときには、第一空間(S11)と第二空間(S12)の断熱性によって、全体として高い断熱性を発揮することができる。
加えて、第一空間(S11)においてλ1/D1>0.3の関係が満たされることで、第一空間(S11)が分子流領域になると、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)の間の熱コンダクタンスが、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)の間の距離に依存しないという特性が得られる。そのため、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)が非接触であり、且つ、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)が非常に接近した状態にあるときに、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)が非接触であるにも関わらず両者の間の熱コンダクタンスが高くなるという事態(ひいては、これが熱整流器(90)の動作精度を低下させるという事態)が、抑えられる。
同様に、第二空間(S12)においてλ2/D2>0.3の関係が満たされることで、第二空間(S12)が分子流領域になると、第二熱伝導部(62)と中間パネル(65)の間の熱コンダクタンスが、第二熱伝導部(62)と中間パネル(65)の間の距離に依存しないという特性が得られる。そのため、第二熱伝導部(62)と中間パネル(65)が非接触であり、且つ、第一熱伝導部(61)と中間パネル(65)が非常に接近した状態にあるときに、第二熱伝導部(62)と中間パネル(65)が非接触であるにも関わらず両者の間の熱コンダクタンスが高くなるという事態(ひいては、これが熱整流器(90)の動作精度を低下させるという事態)が、抑えられる。
また、変形例7〜10,12〜15で説明した内容から理解されるように、第6の態様の熱整流器(90)は、第1の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第6の態様の熱整流器(90)において、放熱状態は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が接触した状態である。断熱状態は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が離れて位置する状態である。
第6の態様の熱整流器(90)によれば、第2〜第5の態様のように中間パネル(65)を備える必要がなく、熱整流器(90)を更に薄型に形成することが可能になる。
また、変形例7〜10,12〜15で説明した内容から理解されるように、第7の態様の熱整流器(90)は、第6の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第7の態様の熱整流器(90)において、第一パネル(1)と第二パネル(2)の距離をD、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間に形成される空間(S1)内の空気の平均自由工程をλとしたとき、空間(S1)は、λ/D>0.3の関係を満たすように減圧されている。
第7の態様の熱整流器(90)によれば、空間S(1)は分子流領域となり、空間(S1)の熱コンダクタンスが距離(D)に依存しないという特性が得られる。これにより、熱整流器(90)を更に薄型に形成することが可能になる。
上述したように、一般的には、熱整流器(90)が薄型であるほど、空間(S1)の断熱性を高めるには不利である。しかし、空間(S1)においてλ/D>0.3の関係が満たされていると、空間(S1)が高い断熱性を有することと、熱整流器(90)の薄型化が、両立され得る。熱整流器(90)が薄型であると、切換機構(6)が放熱状態にあるときに、高い熱伝導性を発揮することができる。
つまり、空間(S1)においてλ/D>0.3の関係が満たされていると、熱整流器(90)は、切換機構(6)が放熱状態であるときには、その薄さによって、高い熱伝導性を発揮することができ、切換機構(6)が断熱状態にあるときには、空間(S1)の断熱性によって、高い断熱性を発揮することができる。
加えて、空間(S1)において(λ/D>0.3)の関係が満たされることで、第一空間(S11)が分子流領域になると、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の間の熱コンダクタンスが、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の間の距離に依存しないという特性が得られる。そのため、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が非接触であり、且つ、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が非常に接近した状態にあるときに、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)が非接触であるにも関わらず両者の間の熱コンダクタンスが高くなるという事態(ひいては、これが熱整流器(90)の動作精度を低下させるという事態)が、抑えられる。
また、変形例7〜10,13〜15で説明した内容から理解されるように、第8の態様の熱整流器(90)は、第6または第7の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第8の態様の熱整流器(90)において、第一熱伝導部(61)は、第一熱伝導部(61)の温度変化に伴って変位する第一変位部分(615)を有する。第二熱伝導部(62)は、第二熱伝導部(62)の温度変化に伴って変位する第二変位部分(625)を有する。第一変位部分(615)が、第一熱伝導部(61)の温度上昇に伴って変位する向きと、第二変位部分(625)が、第二熱伝導部(62)の温度上昇に伴って変位する向きは、同一である。
第8の態様の熱整流器(90)によれば、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間の断熱と放熱を、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の温度差、つまりは第一パネル(1)と第二パネル(2)の温度差に基づいて、切り換えることができる。
また、一実施形態及びこれの変形例1〜10で説明した内容から理解されるように、第9の態様の熱整流器(90)は、第1〜第8のいずれか一つの態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第9の態様の熱整流器(90)において、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)はともに、自身の温度変化に伴って変形するように構成された一つ以上のバイメタル部材(71,72)を含む。
第9の態様の熱整流器(90)によれば、バイメタルの特性を利用して、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)を、自身の温度変化に伴って精度よく変形させることができる。
また、一実施形態及びこれの変形例1〜9で説明した内容から理解されるように、第10の態様の熱整流器(90)は、第9の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第10の態様の熱整流器(90)において、切換機構(6)は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)に変形することで、放熱状態と断熱状態とが切り換わるように構成されている。
また、変形例10で説明した内容から理解されるように、第11の態様の熱整流器(90)は、第9の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第11の態様の熱整流器(90)において、切換機構(6)は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)と直交する方向(A2)に変形することで、放熱状態と断熱状態とが切り換わるように構成されている。
第11の態様の熱整流器(90)によれば、熱整流器(90)を更に薄型に形成することができる。
また、変形例11,12で説明した内容から理解されるように、第12の態様の熱整流器(90)は、第1〜第8の態様のいずれ一つの構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第12の態様の熱整流器(90)において、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)はともに、一つ以上の熱膨張性部材(73,74)を含む。切換機構(6)は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方の寸法が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)に変化することで、放熱状態と断熱状態とが切り換わるように構成されている。
第12の態様の熱整流器(90)によれば、熱膨張性材料の特性を利用したシンプルな構造で、常温を含む広い温度範囲で利用可能な熱整流器(90)を形成することができる。なお、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方の寸法が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)に変化することは、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)において膨縮することを含む。
また、変形例13〜15で説明した内容から理解されるように、第13の態様の熱整流器(90)は、第1〜第8の態様のいずれ一つの構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第13の態様の熱整流器(90)において、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)はともに、一つ以上の熱膨張性部材(73,74)を含む。切換機構(6)は、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方の寸法が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)と直交する方向(A2)に変化することで、放熱状態と断熱状態とが切り換わるように構成されている。
第13の態様の熱整流器(90)によれば、熱膨張性材料の特性を利用したシンプルな構造で、常温を含む広い温度範囲で利用可能な熱整流器(90)を形成することができ、熱整流器(90)を更に薄型に形成することができる。なお、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方の寸法が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)と直交する方向(A2)に変化することは、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方が、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)と直交する方向(A2)において膨縮することを含む。
また、変形例12で説明した内容から理解されるように、第14の態様の熱整流器(90)は、第6または第7の態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第14の態様の熱整流器(90)において、切換機構(6)は、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間に介在し、両パネル(1,2)間の距離(D)を確保するスペーサ(63)を、更に備える。切換機構(6)は、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)において、第一熱伝導部(61)と第二熱伝導部(62)の少なくとも一方の寸法と、スペーサ(63)の寸法が変化することで、放熱状態と断熱状態とが切り換わるように構成されている。
第14の態様の熱整流器(90)によれば、熱膨張性材料の特性を利用したシンプルな構造で、常温を含む広い温度範囲で利用可能な熱整流器(90)を形成することができる。
また、変形例3〜6で説明した内容から理解されるように、第15の態様の熱整流器(90)は、第1〜第14のいずれか一つの態様の構成に加えて、以下の構成を備えることができる。
第15の態様の熱整流器(90)は、第一パネル(1)、第二パネル(2)及び切換機構(6)を、気密に収容するガスバリアフィルム(8,81,82)を、更に具備する。
第15の態様の熱整流器(90)によれば、第一パネル(1)と第二パネル(2)の間の空間(S1,S11,S12)を、ガスバリアフィルム(8,81,82)によって気密に封止することができる。
また、変形例4で説明した内容から理解されるように、第1の態様の熱整流ユニット(9)は、以下の構成を備える。
第1の態様の熱整流ユニット(9)は、第2〜第5のいずれか一つの態様の熱整流器(90)と、熱伝導性の第一ガスバリアフィルム(81)と、熱伝導性の第二ガスバリアフィルム(82)を具備する。
熱整流器(90)の中間パネル(65)は、第一パネル(1)に対向して位置する熱伝導性の第三パネル(3)と、第二パネル(2)に対向して位置する熱伝導性の第四パネル(4)を含む。
第一ガスバリアフィルム(81)には、第一パネル(1)、第一熱伝導部(61)及び第三パネル(3)が気密に収容されている。第二ガスバリアフィルム(82)には、第二パネル(2)、第二熱伝導部(62)及び第四パネル(4)が気密に収容されている。第三パネル(3)と第四パネル(4)は、第一ガスバリアフィルム(81)の一部分と第二ガスバリアフィルム(82)の一部分を介して、熱的に接続されている。
第1の態様の熱整流ユニット(9)によれば、第一ガスバリアフィルム(81)側のブロックと、第二ガスバリアフィルム(82)側のブロックを組み合わせて、熱整流ユニット(9)を構成することができる。
また、変形例5,6で説明した内容から理解されるように、第2の態様の熱整流ユニット(9)は、以下の構成を備える。
第2の態様の熱整流ユニット(9)は、第1〜第15のいずれか一つの態様の熱整流器(90)を複数備える。複数の熱整流器(90)のうち少なくとも一つの熱整流器(90)は、残りの熱整流器(90)と裏表が逆になるように並設されている。
第2の態様の熱整流ユニット(9)によれば、これに接触した対象物(55)が所定の温度に近づくように、各熱整流器(90)において放熱状態と断熱状態を切り換えることができる。
また、変形例6で説明した内容から理解されるように、第3の態様の熱整流ユニット(9)は、以下の構成を備える。
第3の態様の熱整流ユニット(9)は、第2〜第5のいずれか一つの態様の熱整流器(90)を複数備える。複数の熱整流器(90)のうち少なくとも一つの熱整流器(90)は、残りの熱整流器(90)と裏表が逆になるように並設されている。各熱整流器(90)を、第一パネル(1)と第二パネル(2)が対向する方向(A1)から視たときに、中間パネル(65)の外形は、第一パネル(1)と第二パネル(2)の外形の内側に位置する。
第3の態様の熱整流ユニット(9)によれば、これに接触した対象物(55)が所定の温度に近づくように、各熱整流器(90)において放熱状態と断熱状態を切り換えることができる。