以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面におけるクラッドの外形の様子を示す図である。なお、本図では、クラッドの外形を示し、コアや被覆層については記載していない。また、本実施形態のマルチコアファイバは通信に用いられる通信系マルチコアファイバとされる。
本実施形態のマルチコアファイバのクラッド21は、長手方向に垂直な断面の形状が楕円形状とされる。このクラッド21は、当該断面において、所定方向が短径方向とされ、短径方向に垂直な方向が長径方向とされる。従って、クラッド21の外形は、所定方向において直径が最も小さくなると共に凹部を有さない非円形の形状とされる。ここで、図1に示すように、短径の大きさをaとし、長径の大きさをbとする。この場合、楕円は、下記式1で定義される。
また、楕円率をeとすると、楕円率eはb/aで定義され、クラッド21の面積である楕円の面積をSとすると、面積Sは、下記式2で定義される。
更に、上記非特許文献2によれば、破断確率をFとすると、破断確率Fは下記式3で示される。
なお、N
pはプルーフ時の平均破断回数であり、Lは曲げターン数が10回となる実効的な光ファイバの長さであり、nは疲労係数であり20とされ、mはワイブルパラメータ(形状指数)であり、t
pはプルーフ時間であり1秒とされ、tは使用年数であり20年とされ、σ
pはプルーフレベルであり1%または2%とされ、σは最大曲げ歪とされる。
上記非特許文献3,4によれば、最大曲げ歪σは、下記式4で近似できる。
なお、Eはガラスのヤング率であり、R
bは曲げ半径であり、rは破断確率を求めるマルチコアファイバの座標である。本実施形態では、マルチコアファイバを曲げた場合に最もストレスがかかる部位について求めれば良いので、マルチコアファイバを曲げた際にクラッド21の最も外側になる位置とした。例えば、マルチコアファイバを短径方向に曲げる場合、座標rは(0,a/2)となる。
そこで、図1に示すクラッド21の外形を有するマルチコアファイバにおいて、図1に示す短径方向からの角度θの方向にマルチコアファイバを曲げる場合の断面積と破断確率との関係を求めた。なお、シングルモードファイバは、アクセス径で曲げ直径が30mmで使用される条件で破断確率が求められる。また、高空間多重度のマルチコアファイバは、長距離通信用として幹線系での使用が想定されており、曲げ直径を60mmとして破断確率を下げたり、プルーフレベルを2%として破断確率を下げることができる。
これらを考慮して図2〜図4に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを1%とし、曲げ直径を60mmとし、図2では楕円率eを1.5とし、図3では楕円率eを2.0とし、図4では楕円率eを2.5として計算を行った。また、図5〜図7に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを2%とし、曲げ直径を30mmとし、図5では楕円率eを1.5とし、図6では楕円率eを2.0とし、図7では楕円率eを2.5として計算を行った。また、図8〜図10に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを2%とし、曲げ直径を60mmとし、図8では楕円率eを1.5とし、図9では楕円率eを2.0とし、図10では楕円率eを2.5として計算を行った。また、図11〜図13に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを1%とし、曲げ直径を30mmとし、図11では楕円率eを1.5とし、図12では楕円率eを2.0し、図13では楕円率eを2.5として計算を行った。なお、各図において、クラッドの外形が円形のマルチコアファイバの当該条件における断面積と破断確率との関係を実線で示す。また、各図に示す横線は、クラッドの直径が125μmの標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率であり、その値は3.2×10−6とされる。
図2から図13に示す通り、曲げ方向の短径方向からの角度θが30度以下であれば、楕円率eが2.5以下において、同じ破断確率の場合にクラッドの形状が楕円形状のマルチコアファイバの方が、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバよりも断面積を大きくすることができるという結果になった。
次に、図2から図4に示すそれぞれの計算結果に基づいて、各図における角度θが0度及び30度のそれぞれにおいて、破断確率が上記の3.2×10
−6となる場合における、クラッドの断面積、断面の形状が円形のクラッドに対する断面の形状が楕円形状のクラッドの断面積比、クラッドの短径を表1に示す。ただし、表1においてクラッドの断面の形状が円の場合の短径は当該円の直径を示す。
また、図5から図7に示すそれぞれの計算結果に基づいて、上記表1に示す項目と同様の項目を表2に示す。
更に、図8から図10に示すそれぞれの計算結果に基づいて、上記表1に示す項目と同様の項目を表3に示す。
更に、図11から図13に示すそれぞれの計算結果に基づいて、上記表1に示す項目と同様の項目を表4に示す。
上記のように、楕円率eが2.5以下では、曲げ方向の短径方向からの角度θが30度以下であれば、クラッドの形状が楕円形状のマルチコアファイバの方が、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバよりも断面積を大きくすることができる。ただし、表1〜表4より、楕円率eが1.5以上2.0以下であれば、曲げ方向の短径方向からの角度θが0度以上30度以下において、断面積比を1.10以上とすることができる。また、楕円率eが2.0を超えると、この断面積比が1.10よりも小さくなる傾向がある。従って、楕円率eは、1.5以上2.5以下であることが好ましく、1.5以上2.0以下であることがより好ましい。
なお、曲げ方向の短径方向からの角度θが0度の場合、楕円率eが1.5以上2.5以下であれば、断面積比は1.46以上から2.43以下となる。この場合において、断面積比を2以上とするためには、楕円率eが2.0以上とされることが好ましい。
次に、上記クラッド21を有する本実施形態のマルチコアファイバの例について説明する。
図14は、コア要素を示す図であり、図15〜図19は、本実施形態のマルチコアファイバの第1の例〜第5の例を示す図である。これらの例のマルチコアファイバ1A〜1Eは、マトリックス状に配置される複数のコア要素10A,10B,10Cのうち少なくとも2種類のコア要素と、それぞれのコア要素を囲む楕円形状の単一のクラッド21と、被覆層30とを備え、それぞれの例において、複数のコア要素は隣り合うコア要素が互いに異なる種類とされる。なお、図が煩雑となることを避けるため、以下の図において、コア要素10Aを実線で示し、コア要素10Bを破線で示し、コア要素10Cを点線で示す。
図14に示すように、コア要素10Aは、コア11Aと、コア11Aを囲む内側クラッド12Aと、内側クラッド12Aを囲みクラッド21に囲まれる低屈折率層13Aとを有する。同様に、コア要素10Bは、コア11Bと、コア11Bを囲む内側クラッド12Bと、内側クラッド12Bを囲みクラッド21に囲まれる低屈折率層13Bとを有し、コア要素10Cは、コア11Cと、コア11Cを囲む内側クラッド12Cと、内側クラッド12Cを囲みクラッド21に囲まれる低屈折率層13Cとを有する。上記のようにマルチコアファイバ1A〜1Eはマトリックス状に配置される複数のコア要素10A,10B,10Cのうち少なくとも2種類のコア要素を有するため、上記のようにマルチコアファイバ1A〜1Eは、マトリックス状に配置される複数のコア11A,11B,11Cのうち少なくとも2種類のコアを有する。
コア11A〜11Cは、クラッド21よりも高い屈折率とされ、低屈折率層13A〜13Cは、クラッド21よりも低い屈折率とされ、内側クラッド12Aはコア11Aと低屈折率層13Aとの間の屈折率とされ、内側クラッド12Bはコア11Bと低屈折率層13Bとの間の屈折率とされ、内側クラッド12Cはコア11Cと低屈折率層13Cとの間の屈折率とされる。例えば、図14の例では、内側クラッド12A〜12Cは、クラッド21と同じ屈折率とされる。こうして、それぞれのコア要素10A〜10Cは、トレンチ型の屈折率分布を有する。また、本実施形態では、コア要素10Aのコア11Aのクラッド21の屈折率に対する屈折率差が最も大きく高屈折率差コアとされ、コア要素10Cのコア11Cのクラッド21の屈折率に対する屈折率差が最も小さく低屈折率差コアとされ、コア要素10Bのコア11Bのクラッド21の屈折率に対する屈折率差がコア11Aとコア11Bとの間とされ中屈折率差コアとされる。
また、本実施形態において、以下に示すマルチコアファイバは、楕円の短径方向に沿って2以上のコアが配置されると共に、楕円の長径方向に沿って短径方向に沿って配置されるコアの数よりも多い数のコアが配置される。また、本実施形態では、長径の中心を通り短径方向に沿った軸を短径軸とすると、短径軸に近い位置において短径軸に沿って配置されるコアの数は、短径軸から遠い位置において短径軸に沿って配置されるコアの数よりも多くされる。
なお、本実施形態では、コア11A〜11Cは、コア要素10A〜10Cの一部として示され、クラッド21は、内側クラッド12A〜12C及び低屈折率層13A〜13Cを介してそれぞれのコア11A〜11Cを間接的に囲む。しかし、本実施形態において、内側クラッド12A〜12C及び低屈折率層13A〜13Cが省略され、クラッド21がそれぞれのコア11A〜11Cを直接囲んでも良い。
図15に示す第1の例のマルチコアファイバ1Aは、楕円率eが1.5のクラッド21を有し、当該クラッド21内にコア要素10A,10Cの2種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように正方格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、2−6−8−8−6−2という配列になり、コア要素10A、10Cの合計の数は32となる。
本例のマルチコアファイバ1Aにおいて、プルーフ2%、曲げ直径30mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、上記標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合のプルーフ1%での破断確率3.2×10−6と同じ破断確率となる場合の断面積は、図5より、概ね56.1×10−8μm2となる。従って、短径は概ね218μmとなり、長径は概ね327μmとなる。この場合、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、クラッド21の外周で囲まれた面積に対するコア要素10A、10Bの占める面積の割合をコア専有面積割合とすると、コア専有面積割合は37.8%となる。
図16は、本実施形態のマルチコアファイバの第2の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ1Bは、楕円率eが1.5のクラッド21を有し、当該クラッド21内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。このようにコア要素10A,10B,10Cが三角格子状に配置されることで、コア要素10A,10B,10Cは最密充填状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、6−9−10−9−6という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は40となる。
本例のマルチコアファイバ1Bは、上記マルチコアファイバ1Aと楕円率eが同じであるため、プルーフ2%、曲げ直径30mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、破断確率3.2×10−6となる場合の断面積は、図5より、概ね56.0×10−8μm2となる。従って、短径は概ね218μmとなり、長径は概ね327μmとなる。また、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、コア専有面積割合は47.2%となる。
図17は、本実施形態のマルチコアファイバの第3の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ1Cは、楕円率eが2.0のクラッド21を有し、当該クラッド21内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、7−10−11−10−7という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は41となる。
本例のマルチコアファイバ1Cにおいて、プルーフ2%、曲げ直径30mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、破断確率3.2×10−6となる場合の断面積は、図6より、概ね56.1×10−8μm2となる。従って、概ね短径は189μmとなり、概ね長径は378μmとなる。また、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、コア専有面積割合は48.3%となる。
ここで、上記マルチコアファイバ1A〜マルチコアファイバ1Cの構成を表5に纏める。
更に、上記マルチコアファイバ1A〜マルチコアファイバ1Cのコア要素10A〜10Cにおいて、コア11A〜11Cのクラッド21に対する屈折率差をΔ
1とし、低屈折率層13A〜13Cのクラッド21に対する屈折率差をΔ
2とし、コア11A〜11Cの半径をr
1とし、内側クラッド12A〜12Cの外周の半径をr
2とし、低屈折率層13A〜13Cの厚さをWとすると、コア要素10A〜10Cのパラメータは、例えば、下記表6の様にすることができる。
このようなマルチコアファイバ1A〜マルチコアファイバ1Cによれば、短径方向からの角度θが30度以下の方向で曲げられて使用される場合に、シングルモードファイバと概ね同等の信頼性を有して光通信を行うことができる。
図18は、本実施形態のマルチコアファイバの第4の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ1Dは、楕円率eが1.5のクラッド21を有し、当該クラッド21内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、6−7−8−7−6という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は34となる。
本例のマルチコアファイバ1Dにおいて、プルーフ1%、曲げ直径60mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、破断確率3.2×10−6となる場合の断面積は、図2より、概ね48.8×10−8μm2となる。従って、短径は概ね204μmとなり、長径は概ね305μmとなる。また、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、コア専有面積割合は52.7%となる。なお、本例の各コア要素のパラメータは、上記第2の例、第3の例の各コア要素のパラメータと同様とされる。
図19は、本実施形態のマルチコアファイバの第5の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ1Eは、楕円率eが2.0のクラッド21を有し、当該クラッド21内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、6−9−10−9−6という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は40となる。
本例のマルチコアファイバ1Eにおいて、プルーフ1%、曲げ直径60mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、破断確率3.2×10−6となる場合の断面積は、図3より、概ね48.8×10−8μm2となる。従って、短径は概ね176μmとなり、長径は概ね353μmとなる。また、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、コア専有面積割合は47.4%となる。なお、本例の各コア要素のパラメータは、上記第2の例、第3の例の各コア要素のパラメータと同様とされる。
ここで、上記マルチコアファイバ1D〜マルチコアファイバ1Eの構成を表7に纏める。
このようなマルチコアファイバ1D〜マルチコアファイバ1Eによっても、短径方向からの角度θが30度以下の方向で曲げられて使用される場合に、シングルモードファイバと同等の信頼性を有して光通信を行うことができる。
なお、上記例で示した、クラッド21の楕円率eや、コア要素10A〜10Cの配置は例示に過ぎず、楕円率eやコア要素10A〜10Cの配置は適宜変更可能である。
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ1A〜1Eは、マトリックス状に配置される複数のコア11A〜11Cと、それぞれのコア11A〜11Cを囲む単一のクラッド21と、を備える。このクラッド21の長手方向に垂直な断面における外形は楕円率eが2.5以下の楕円形状とされ、楕円の短径方向に沿って2以上のコアが配置されると共に、楕円の長径方向に沿って、短径方向に沿って配置されるコアの数よりも多い数のコアが配置される。そして、マルチコアファイバ1A〜1Eは、短径方向に対して30度以下の方向に曲げられて使用される。
したがって、クラッド21の外形が楕円であるマルチコアファイバ1A〜1Eが短径方向に対して30度以下で曲げられて使用されることで、上記説明のように、破断確率が同じ場合に、クラッドの外形が円形のマルチコアファイバよりもクラッドの外形が楕円であるマルチコアファイバ1A〜1Eの方が断面積を大きく出来る。従って、このようなマルチコアファイバ1A〜1Eであれば、長期信頼性が悪化することを抑制しつつより多くのコアを配置することができる。
次にマルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを0度とする場合に、コアをより多く配置できることについて説明する。
図20は、角度θが0度の場合に第1実施形態におけるマルチコアファイバにおいてコアを多く配置できることを示す第1の形態の図である。なお、図20では、被覆層30を省略している。図20では、クラッドの断面の形状が円形のマルチコアファイバ101と、クラッドの断面の形状が楕円形状で楕円率eが2.0のマルチコアファイバ1Fと、クラッドの断面の形状が楕円形状で楕円率eが2.5のマルチコアファイバ1Gとが重ねられて示されている。つまり、図20では、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバ101と、短径の長さがマルチコアファイバ101のクラッドの直径と同じ大きさである楕円形状のクラッド21を有するマルチコアファイバ1F,1Gとが示されている。
マルチコアファイバを曲げる場合、最も応力のかかる位置は、曲げた状態でのクラッドの最も外周側の位置となる。従って、このようなクラッドを有するマルチコアファイバ1F,1Gが短径方向からの角度θが0度で曲げられる場合に、最も応力のかかる位置での当該応力の大きさは、同じ曲率で曲げられたマルチコアファイバ101における最も応力のかかる位置での当該応力の大きさと同じになる。従って、マルチコアファイバ1F,1Gが上記のように角度θが0度で曲げられる場合、マルチコアファイバ1F,1Gの破断確率は、同じ曲率で曲げられたマルチコアファイバ101の破断確率と等しくされる。このため、マルチコアファイバ1F,1Gは、マルチコアファイバ101と比べて、長期信頼性の悪化を抑制できる。
また、図20に示すように、クラッドの断面の外形が円形のマルチコアファイバ101と比べて、上記のようにマルチコアファイバ1F,1Gのクラッドの短径は、マルチコアファイバ101のクラッドの直径と同じ大きさとされる。従って、マルチコアファイバ1F,1Gのクラッドの断面積はマルチコアファイバ101のクラッドの断面積よりも大きくされる。また、マルチコアファイバ1F,1Gでは、楕円の長径方向に沿って、短径方向に沿って配置されるコア要素の数よりも多い数のコア要素が配置される。従って、マルチコアファイバ1F,1Gは、直径がマルチコアファイバ1F,1Gのクラッドの短径と同じ大きさであるマルチコアファイバ101よりも多くのコア要素を配置することができる。
具体的に配置されるコア要素の数の例を示す。マルチコアファイバ101のクラッドに配置可能なコア要素は、図20において、破線と重なるコア要素及び破線の内側に配置されるコア要素である。従って、マルチコアファイバ101が有するコア要素の数は37とされる。また、マルチコアファイバ1Fのクラッドに配置可能なコア要素は、図20において、点線と重なるコア要素及び点線の内側に配置されるコア要素である。従って、マルチコアファイバ1Fが有するコア要素の数は77とされる。また、マルチコアファイバ1Gが有するコア要素の数は89とされる。
図21は、図20と同様に、角度θが0度の場合に第1実施形態におけるマルチコアファイバにおいてコアを多く配置できることを示す第2の形態の図である。図20では、クラッドの断面の形状が円形のマルチコアファイバ102と、クラッドの断面の形状が楕円形状で楕円率eが2.0のマルチコアファイバ1Hと、クラッドの断面の形状が楕円形状で楕円率eが2.5のマルチコアファイバ1Iとが重ねられて示されている。つまり、図20では、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバ102と、短径の長さがマルチコアファイバ102のクラッドの直径と同じ大きさである楕円形状のクラッド21を有するマルチコアファイバ1H,1Iとが示されている。
図20での説明と同様にして、マルチコアファイバ1H,1Iが短径方向からの角度θが0度で曲げられる場合、マルチコアファイバ1H,1Iの破断確率は、同じ曲率で曲げられたマルチコアファイバ102の破断確率と等しくされる。従って、マルチコアファイバ1H,1Iは、マルチコアファイバ102と比べて、長期信頼性の悪化を抑制できる。
また、図20での説明と同様にして、マルチコアファイバ1H,1Iのクラッドの断面積はマルチコアファイバ102のクラッドの断面積よりも大きくされ、マルチコアファイバ1H,1Iでは、楕円の長径方向に沿って、短径方向に沿って配置されるコア要素の数よりも多い数のコア要素が配置される。従って、マルチコアファイバ1H,1Iは、直径がマルチコアファイバ1H,1Iのクラッドの短径と同じ大きさであるマルチコアファイバ102よりも多くのコア要素を配置することができる。
具体的に配置されるコア要素の数の例を示す。マルチコアファイバ102のクラッドに配置可能なコア要素は、図21において、破線と重なるコア要素及び破線の内側に配置されるコア要素であり、マルチコアファイバ102が有するコア要素の数は37とされる。また、マルチコアファイバ1Hのクラッドに配置可能なコア要素は、図21において、点線と重なるコア要素及び点線の内側に配置されるコア要素であり、マルチコアファイバ1Hが有するコア要素の数は89とされる。また、マルチコアファイバ1Iが有するコア要素の数は105とされる。
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバは、マトリックス状に配置される複数のコア11A〜11Cと、それぞれのコア11A〜11Cを囲む単一のクラッド21と、を備える。このクラッド21の長手方向に垂直な断面における外形は、所定方向において直径が最も小さくなると共に凹部を有さない非円形の形状とされる。そして、所定方向に沿って2以上のコア11A〜11Cが配置されると共に、所定方向に垂直な方向に沿って、所定方向に沿って配置されるコアの数よりも多い数のコアが配置され、所定方向に曲げられて使用される。
図20、図21を用いて説明したように、クラッドの断面の外形が円形である従来のマルチコアファイバ101,102の場合、所定方向に配置可能なコアの数の上限と、所定方向に垂直な方向に配置可能なコアの数の上限とは互いに等しい。しかし、本実施形態のマルチコアファイバ1F〜1Iによれば、例えば、本実施形態のマルチコアファイバ1F〜1Iのクラッドの所定方向である短径方向の直径と等しい直径の従来のマルチコアファイバ101,102よりも、クラッドの断面積を大きくすることができる。しかも、所定方向に沿って配置されるコア11A〜11Cの数よりも、所定方向に垂直な方向に沿って配置されるコア11A〜11Cの数が多くされる。このため、本実施形態のマルチコアファイバ1F〜1Iによれば、上記従来のマルチコアファイバ101,102よりも多くのコアを配置することができる。また、本実施形態のマルチコアファイバ1F〜1Iは、所定方向に曲げて使用される。この場合、クラッドに最も大きな応力がかかる位置は、曲げた状態におけるクラッド21の最も外周側の位置であるため、クラッドにかかる最も大きな応力は、本実施形態のマルチコアファイバ1F〜1Iと従来のマルチコアファイバ101,102とで概ね同じ大きさとなる。従って、本発明のマルチコアファイバ1F〜1Iを上記のように曲げる場合、その破断確率は、上記従来のマルチコアファイバ101,102の破断確率と概ね同等となる。従って、本発明のマルチコアファイバ1F〜1Iによれば、長期信頼性が悪化することを抑制し得る。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図22〜図42を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図22は、本発明の第2実施形態におけるマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面におけるクラッドの外形の様子を示す図である。なお、本図では、クラッドの外形を示し、コアや被覆層については記載していない。また、本実施形態のマルチコアファイバは第1実施形態のマルチコアファイバと同様に通信に用いられる通信系マルチコアファイバとされる。
本実施形態のマルチコアファイバのクラッド22は、長手方向に垂直な断面の形状が、互いに平行な一組の直線22Lが半円状の曲線22Cで結ばれたレーストラック形状とされる。それぞれの直線22Lは互いに平行移動した関係とされる。また、このクラッド22は、当該断面において、直線22Lに垂直な方向が短径方向とされ、直線22Lに沿った方向が長径方向とされる。この短径方向を所定の方向とすると、クラッド22の外形は、所定方向において直径が最も小さくなると共に凹部を有さない非円形の形状とされる。ここで、図22に示すように、直線22L間の距離である短径をaとし、長径の大きさをbとする。ここで、本実施形態では、この短径aと長径bとの比(b/a)をeとする。
また、本実施形態のクラッド22の場合においても、マルチコアファイバの破断確率は、式3で示される。そこで、図22に示すクラッド22の外形を有するマルチコアファイバにおいて、図22に示す短径方向からの角度θの方向にマルチコアファイバを曲げる場合の断面積と破断確率との関係を第1実施形態において破断確率を求めた際と同様のことを考慮して求めた。
図23〜図25に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを1%とし、曲げ直径を60mmとし、図23では比eを1.5とし、図24では比eを2.0とし、図25では比eを2.5として計算を行った。また、図26〜図28に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを2%とし、曲げ直径を30mmとし、図26では比eを1.5とし、図27では比eを2.0とし、図28では比eを2.5として計算を行った。また、図29〜図31に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを2%とし、曲げ直径を60mmとし、図29では比eを1.5とし、図30では比eを2.0とし、図31では比eを2.5として計算を行った。また、図32〜図34に示す断面積と破断確率との関係では、曲げプルーフを1%とし、曲げ直径を30mmとし、図32では比eを1.5とし、図33では比eを2.0とし、図34では比eを2.5として計算を行った。なお、第1実施形態の図2から図13と同様に各図において、クラッドの外形が円形のマルチコアファイバの当該条件における断面積と破断確率との関係を実線で示す。また、第1実施形態の図2から図13と同様に、各図に示す横線は、クラッドの直径が125μmの標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率であり、その値は3.2×10−6とされる。
図23から図34に示す通り、曲げ方向の短径方向からの角度θが45度未満であれば、短径aと長径bとの比eが2.5以下において、同じ破断確率の場合にクラッドの形状がレーストラック形状のマルチコアファイバの方が、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバよりも断面積を大きくすることができるという結果になった。
次に、図23から図25に示すそれぞれの計算結果に基づいて、各図における角度θが0度、30度及び45度のそれぞれにおいて、破断確率が上記の3.2×10
−6となる場合における、クラッドの断面積、断面の形状が円形のクラッドに対する断面の形状がレーストラック形状のクラッドの断面積比、クラッドの短径を表8に示す。ただし、表8においてクラッドの断面の形状が円の場合の短径は当該円の直径を示す。
また、図26から図28に示すそれぞれの計算結果に基づいて、上記表8に示す項目と同様の項目を表9に示す。
更に、図29から図31に示すそれぞれの計算結果に基づいて、上記表8に示す項目と同様の項目を表10に示す。
更に、図32から図34に示すそれぞれの計算結果に基づいて、上記表8に示す項目と同様の項目を表11に示す。
上記のように、短径aと長径bとの比eが2.5では、曲げ方向の短径方向からの角度θが30度以下であれば、クラッドの形状がレーストラック形状のマルチコアファイバの方が、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバよりも断面積を大きくすることができる。また、角度θが45度では、比eが1.5において、クラッドの形状がレーストラック形状のマルチコアファイバの方が、円形のマルチコアファイバよりも断面積が僅かに小さくなることがある。ただし、この場合、レーストラック形状のマルチコアファイバの断面積は、円形のマルチコアファイバと断面積と略同じである。従って、角度θは45度未満とされれば、クラッドの形状がレーストラック形状のマルチコアファイバの方が、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバよりも断面積を大きくすることができる。特に、角度θは44度以下とされれば、クラッドの形状がレーストラック形状のマルチコアファイバの方が、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバよりもより確実に断面積を大きくすることができる。更に、比eが2.0以上2.5以下であれば、角度θは45度以下において、クラッドの形状がレーストラック形状のマルチコアファイバの方が円形のマルチコアファイバよりも断面積が小さくなることが無いため好ましい。
ここで、図35において、本実施形態のようにクラッド22の形状がレーストラック形状とされるマルチコアファイバにおいて、短径aと長径bとの比eと、配置可能なコア数との関係を示す。図35は、直線間の距離である短径aを固定して長径bを変化させて比e及び断面積を求め、表6に記載されたコア要素10A〜10Cのパラメータを用いたコア要素の面積で上記断面積を除した数をコア数としている。図35に示すように、短径aによらず、比eが少なくとも2.5までにおいては、比eが大きな方が、配置可能なコアが多くなることが分かる。
次に、上記クラッド22を有する本実施形態のマルチコアファイバの例について説明する。
このようなクラッド22を有する本実施形態のマルチコアファイバでは、例えば、クラッド22に図15から図19に示すコア要素10A〜10Cを配置することができる。また、本実施形態においても、内側クラッド12A〜12C及び低屈折率層13A〜13Cが省略され、クラッド22がそれぞれのコア11A〜11Cを直接囲んでも良い。
本実施形態において、以下に示すマルチコアファイバは、レーストラック形状の短径方向に沿って2以上のコアが配置されると共に、レーストラック形状の長径方向に沿って短径方向に沿って配置されるコアの数よりも多い数のコアが配置される。また、本実施形態では、長径の中心を通り短径方向に沿った軸を短径軸とすると、短径軸に近い位置において短径軸に沿って配置されるコアの数は、短径軸から遠い位置において短径軸に沿って配置されるコアの数よりも多くされる。
図36に示す第1の例のマルチコアファイバ2Aは、短径aと長径bとの比eが1.5のクラッド22を有し、当該クラッド22内にコア要素10A,10Cの2種類のコア要素が、異なる種類となるように正方格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、4−6−8−8−6−4という配列になり、コア要素10A、10Cの合計の数は36となる。本例のマルチコアファイバ2Aにおいて、プルーフ1%、曲げ直径60mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、上記標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率3.2×10−6と同じ破断確率となる場合の断面積は、図23より、概ね52.8×10−8μm2となる。従って、短径は概ね202.7μmとなり、長径は概ね304.1μmとなる。この場合、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、クラッド21の外周で囲まれた面積に対するコア要素10A,10Bの占める面積の割合をコア専有面積割合とすると、コア専有面積割合は44.4%となる。
図37は、本実施形態のマルチコアファイバの第2の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ2Bは、短径aと長径bとの比eが1.5のクラッド22を有し、当該クラッド22内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。このようにコア要素10A,10B,10Cが三角格子状に配置されることで、コア要素10A,10B,10Cは最密充填状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、6−7−8−7−6という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は、34となる。本例のマルチコアファイバ2Bにおいて、プルーフ1%、曲げ直径60mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、上記標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率3.2×10−6と同じ破断確率となる場合の断面積は、図23より、概ね52.8×10−8μm2となる。従って、短径は概ね202.7μmとなり、長径は概ね304.1μmとなる。この場合、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、クラッド21の外周で囲まれた面積に対するコア要素10A,10B,10Cの占める面積の割合をコア専有面積割合とすると、コア専有面積割合は41.9%となる。
図38は、本実施形態のマルチコアファイバの第3の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ2Cは、比eが2.0のクラッド22を有し、当該クラッド22内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、7−8−9−8−7という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は、39となる。本例のマルチコアファイバ2Cにおいて、プルーフ1%、曲げ直径60mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを45度とすると、上記標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率3.2×10−6と同じ破断確率となる場合の断面積は、図24より、概ね48.6×10−8μm2となる。従って、短径は概ね165.0μmとなり、長径は概ね330.0μmとなる。この場合、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、クラッド21の外周で囲まれた面積に対するコア要素10A,10B,10Cの占める面積の割合をコア専有面積割合とすると、コア専有面積割合は52.2%となる。
図39は、本実施形態のマルチコアファイバの第4の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ2Dは、比eが1.5のクラッド22を有し、当該クラッド22内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、5−6−7−8−7−6−5という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は44となる。本例のマルチコアファイバ2Dにおいて、プルーフ2%、曲げ直径30mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを30度とすると、上記標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率3.2×10−6と同じ破断確率となる場合の断面積は、図26より、概ね60.6×10−8μm2となる。従って、短径は概ね217.1μmとなり、長径は概ね325.7μmとなる。この場合、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、クラッド21の外周で囲まれた面積に対するコア要素10A,10B,10Cの占める面積の割合をコア専有面積割合とすると、コア専有面積割合は47.3%となる。
図40は、本実施形態のマルチコアファイバの第5の例を示す図である。本例では、マルチコアファイバ2Eは、比eが2.0のクラッド22を有し、当該クラッド22内にコア要素10A,10B,10Cの3種類のコア要素が配置されている。これらコア要素10A,10B,10Cは互いに隣り合うコア要素が異なる種類となるように三角格子状に配置される。また、本例では、長径方向に沿って配列されたコア要素の数を、短径方向に沿って順に数えると、8−9−10−9−8という配列になり、コア要素10A,10B,10Cの合計の数は45となる。本例のマルチコアファイバ2Eにおいて、プルーフ2%、曲げ直径30mm、マルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを45度とすると、上記標準シングルモードファイバが曲げ直径30mmで曲げられた場合の破断確率3.2×10−6と同じ破断確率となる場合の断面積は、図27より、概ね55.8×10−8μm2となる。従って、短径は概ね176.8μmとなり、長径は概ね353.6μmとなる。この場合、コア間距離を28.8μmとすることができる。また、クラッド21の外周で囲まれた面積に対するコア要素10A,10B,10Cの占める面積の割合をコア専有面積割合とすると、コア専有面積割合は52.5%となる。
なお、上記例で示した、クラッド21の比eや、コア要素10A〜10Cの配置は例示に過ぎず、比eやコア要素10A〜10Cの配置は適宜変更可能である。
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ2A〜2Eは、マトリックス状に配置される複数のコア11A〜11Cと、それぞれのコア11A〜11Cを囲む単一のクラッド22と、を備える。このクラッド22の長手方向に垂直な断面における外形は、互いに平行な一組の直線22Lが半円状の曲線22Cで結ばれた短径aと長径bとの比eが2.5以下のレーストラック形状とされる。また、短径方向に沿って2以上のコアが配置されると共に、長径方向に沿って短径方向に沿って配置されるコアの数よりも多い数のコアが配置される。そして、マルチコアファイバ2A〜2Eは、短径方向に対して45度未満の方向に曲げられて使用される。
したがって、クラッド22の外形がレーストラック形状であるマルチコアファイバ2A〜2Eが短径方向に対して45度未満で曲げられて使用されることで、上記説明のように、破断確率が同じ場合に、クラッドの外形が円形のマルチコアファイバよりもクラッドの外形がレーストラック形状であるマルチコアファイバ2A〜2Eの方が断面積を大きく出来る。従って、このようなマルチコアファイバ2A〜2Eであれば、長期信頼性が悪化することを抑制しつつより多くのコアを配置することができる。
次にマルチコアファイバを曲げる方向の上記角度θを0度とする場合に、コアをより多く配置できることについて説明する。
図41は、角度θが0度の場合に第2実施形態におけるマルチコアファイバにおいてコアを多く配置できることを示す第1の形態の図である。なお、図41では、被覆層30を省略している。図41では、クラッドの断面の形状が円形のマルチコアファイバ101と、クラッドの断面の形状がレーストラック形状で短径aと長径bとの比eが2.0のマルチコアファイバ2Fと、クラッドの断面の形状がレーストラック形状で短径aと長径bとの比eが2.5のマルチコアファイバ2Gとが重ねられて示されている。つまり、図41では、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバ101と、短径がマルチコアファイバ101のクラッドの直径と同じ大きさであるレーストラック形状のクラッドを有するマルチコアファイバ2F,2Gとが示されている。
第1実施形態で説明したように、マルチコアファイバを曲げる場合、最も応力のかかる位置は、曲げた状態でのクラッドの最も外周側の位置となる。従って、このようなクラッドを有するマルチコアファイバ2F,2Gが短径方向からの角度θが0度で曲げられる場合に、最も応力のかかる位置での当該応力の大きさは、同じ曲率で曲げられたマルチコアファイバ101における最も応力のかかる位置での当該応力の大きさと同じになる。従って、マルチコアファイバ2F,2Gが上記のように角度θが0度で曲げられる場合、マルチコアファイバ2F,2Gの破断確率は、同じ曲率で曲げられたマルチコアファイバ101の破断確率と等しくされる。このため、マルチコアファイバ2F,2Gは、マルチコアファイバ101と比べて、長期信頼性の悪化を抑制できる。
また、図41に示すように、クラッドの断面の外形が円形のマルチコアファイバ101と比べて、上記のようにマルチコアファイバ2F,2Gのクラッドの短径aは、マルチコアファイバ101のクラッドの直径と同じ大きさとされる。従って、マルチコアファイバ2F,2Gのクラッドの断面積はマルチコアファイバ101のクラッドの断面積よりも大きくされる。また、マルチコアファイバ2F,2Gでは、長径方向に沿って短径方向に沿って配置されるコア要素の数よりも多い数のコア要素が配置される。従って、マルチコアファイバ2F,2Gは、直径がマルチコアファイバ2F,2Gのクラッドの短径aと同じ大きさであるマルチコアファイバ101よりも多くのコア要素を配置することができる。
具体的に配置されるコア要素の数の例を示す。マルチコアファイバ101のクラッドに配置可能なコア要素は、第1実施形態と同様にして、破線と重なるコア要素及び破線の内側に配置されるコア要素であり37とされる。また、マルチコアファイバ2Fのクラッドに配置可能なコア要素は、図36において、点線と重なるコア要素及び点線の内側に配置されるコア要素である。従って、マルチコアファイバ2Fが有するコア要素の数は93とされる。また、マルチコアファイバ2Gが有するコア要素の数は117とされる。
図42は、角度θが0度の場合に第2実施形態におけるマルチコアファイバにおいてコアを多く配置できることを示す第2の形態の図である。なお、図42では、被覆層30を省略している。図42では、クラッドの断面の形状が円形のマルチコアファイバ102と、クラッドの断面の形状がレーストラック形状で短径aと長径bとの比eが2.0のマルチコアファイバ2Hと、クラッドの断面の形状がレーストラック形状で短径aと長径bとの比eが2.5のマルチコアファイバ2Iとが重ねられて示されている。ただし、本例では、クラッドの形状が円形のマルチコアファイバ102と、短径aがマルチコアファイバ102のクラッドの直径よりも小さいレーストラック形状のクラッド22を有するマルチコアファイバ2H,2Iとが示されている。
本例のマルチコアファイバ2H,2Iが短径方向からの角度θが0度で曲げられる場合、直線22L間の距離がマルチコアファイバ102のクラッドの直径よりも小さいため、マルチコアファイバ2H,2Iの破断確率は、同じ曲率で曲げられたマルチコアファイバ102の破断確率よりも小さくなる。このため、マルチコアファイバ2H,2Iは、マルチコアファイバ102と比べて、長期信頼性の悪化を抑制できる。
また、図42に示すように、直線22L間の距離がマルチコアファイバ102のクラッドの直径よりも小さいにもかかわらず、マルチコアファイバ2H,2Iは、マルチコアファイバ102よりも多くのコア要素を配置することができる。
具体的に配置されるコア要素の数の例を示す。マルチコアファイバ102のクラッドに配置可能なコア要素は、第1の形態と同様にして37とされる。また、マルチコアファイバ2Hのクラッドに配置可能なコア要素は、図37において、点線と重なるコア要素及び点線の内側に配置されるコア要素であり93とされる。また、マルチコアファイバ2Iが有するコア要素の数は117とされる。
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ2F〜2Iによっても、図41、図42を用いて説明したように、クラッドの断面の外形が円形である従来のマルチコアファイバ101,102と比べて、破断確率の悪化を抑制でき、多くのコアを配置し得る。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図43を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図43は、本実施形態のマルチコアファイバテープを示す図である。図43に示すマルチコアファイバテープ51は、複数の第1実施形態のマルチコアファイバ1Aが単一のテープ層50内に並列されて配置されている。テープ層50は、マルチコアファイバ1Aの並列方向が薄くされた平板状の形状をしている。従って、マルチコアファイバテープ51は厚さ方向に曲がり易い。テープ層50内に配置されるマルチコアファイバ1Aは、短径方向が、テープ層50の厚さ方向から30度以下となるように配置されている。なお、テープ層50は、樹脂が成型されることで単一のテープ層50とされても良く、2枚のテープが張り合わされることで単一のテープ層50とされても良い。
以上のように、本実施形態のマルチコアファイバテープ51は、互いに並列されたクラッド21の外形が楕円形状のマルチコアファイバ1Aと、それぞれのマルチコアファイバ1Aを被覆する単一のテープ層50と、を備える。そして、それぞれのマルチコアファイバ1Aは、マルチコアファイバ1Aの並列方向に垂直な方向、すなわち厚さ方向に対して短径方向が30度以下となるように配置されている。このようなマルチコアファイバテープ51では、テープを曲げると、それぞれのマルチコアファイバ1Aが短径方向に対して30度以下の方向に曲がる。従って、それぞれのマルチコアファイバ1Aの破断確率が悪化することを抑制することができる。また、マルチコアファイバ1Aが複数並列されることでより多くのコアを配置することができる。
なお、本実施形態ではマルチコアファイバ1Aが配置されるマルチコアファイバテープ51を例に説明したが、本実施形態のマルチコアファイバテープ51に配置されるマルチコアファイバは、第1実施形態で説明したマルチコアファイバであれば特に限定されない。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図44を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図44は、本実施形態のマルチコアファイバテープを示す図である。図44に示すマルチコアファイバテープ52は、複数の第2実施形態のマルチコアファイバ2Aが単一のテープ層50内に並列されて配置されている。テープ層50は、マルチコアファイバ2Aの並列方向が薄くされた平板状の形状をしている。従って、マルチコアファイバテープ52は厚さ方向に曲がり易い。テープ層50内に配置されるマルチコアファイバ2Aは、短径方向が、テープ層50の厚さ方向から45度未満となるように配置されている。特に、マルチコアファイバ2Aは、短径方向が、テープ層50の厚さ方向から44度以下となるように配置されることが好ましい。また、マルチコアファイバ2Aは、第2実施形態における比eが2.0以上2.5以下とされて、短径方向が、テープ層50の厚さ方向から45度以下となるように配置されることが好ましい。
以上のように、本実施形態のマルチコアファイバテープ52は、互いに並列されたクラッド22の外形がレーストラック形状のマルチコアファイバ2Aと、それぞれのマルチコアファイバ2Aを被覆する単一のテープ層50と、を備える。そして、それぞれのマルチコアファイバ2Aは、マルチコアファイバ2Aの並列方向に垂直な方向、すなわち厚さ方向に対して短径方向が45度未満となるように配置されている。このようなマルチコアファイバテープ52では、テープを曲げると、それぞれのマルチコアファイバ2Aが短径方向に対して45度未満の方向に曲がる。従って、それぞれのマルチコアファイバ2Aの破断確率が悪化することを抑制することができる。また、マルチコアファイバ2Aが複数並列されることでより多くのコアを配置することができる。
なお、本実施形態ではマルチコアファイバ2Aが配置されるマルチコアファイバテープ52を例に説明したが、本実施形態のマルチコアファイバテープ52に配置されるマルチコアファイバは、第2実施形態で説明したマルチコアファイバであれば特に限定されない。
以上、本発明のマルチコアファイバ及びマルチコアファイバテープについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、クラッドの長手方向に垂直な断面における外形が、所定方向において直径が最も小さくされると共に凹部を有さない非円形の形状とされるマルチコアファイバについて、上記実施形態では、楕円形状とレーストラック形状とを例に説明したが、本発明はこれに限らない。図45は、クラッドの他の形状を示す図である。図45に示すように、本例のクラッド23は、D型とされる。このD型の短径方向を所定方向とする場合おいて、所定方向に曲げる場合の破断確率は、図45に示す短径と同じ直径を有する断面が円形のマルチコアファイバの破断確率と同等になる。従って、このようなクラッドを有するマルチコアファイバによれば、長期信頼性が悪化することを抑制しつつ、多くのコアを配置し得る。
これを一般化すると、クラッドの長手方向に垂直な断面における外形が所定方向において直径が最も小さくされると共に凹部を有さない非円形の形状とされ、当該所定方向に沿って2以上のコアが配置されると共に、所定方向に垂直な方向に沿って、所定方向に沿って配置されるコアの数よりも多い数の前記コアが配置され、所定方向に曲げられて使用されるマルチコアファイバとなる。このマルチコアファイバによれば、上記のように長期信頼性が悪化することを抑制しつつ、多くのコアを配置し得る。
また、このようなマルチコアファイバを用いたマルチコアファイバテープは、互いに並列された複数の上記マルチコアファイバと、それぞれのマルチコアファイバを被覆する単一のテープ層と、を備え、それぞれのマルチコアファイバは、マルチコアファイバの並列方向に垂直な方向に所定方向が向くように配置されるというものになる。このマルチコアファイバテープは、テープを曲げると、それぞれのマルチコアファイバが所定方向に曲がる。従って、それぞれのマルチコアファイバの破断確率が悪化することを抑制することができる。また、マルチコアファイバが複数並列されることでより多くのコアを配置することができる。
本発明に係るマルチコアファイバ、マルチコアファイバテープは、長期信頼性が悪化することを抑制しつつ、多くのコアを配置し得、光通信の産業において利用することができる。