JPWO2018134980A1 - 軟骨組織の分析装置 - Google Patents
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Abstract
軟骨組織の分析装置(100)は、レーザ光源(1)からのレーザ光を射出面から射出する照明ファイバ(6)と、射出面からの距離が互いに異なる受光面において散乱光をそれぞれ受光する2つの集光ファイバ(71,72)と、集光ファイバ(71,72)によって受光された散乱光の各々からラマンスペクトルを検出する検出部(3,5)と、2つのラマンスペクトルの各々から軟骨組織および骨組織にそれぞれ由来する2つのラマンバンドの強度比を演算する演算部(10)と、強度比が所定の範囲内であるラマンスペクトルを2つのラマンスペクトルの中から選択し、選択されたラマンスペクトルを解析する評価部(10)とを備える。
Description
本発明は、軟骨組織の分析装置に関するものである。
関節軟骨の病変である変形性関節症(OA:Osteoarthritis)や外傷による軟骨損傷の診断、あるいは培養軟骨細胞移植による再生治療後の再生軟骨診断においては、従来、X線画像や核磁気共鳴画像、および関節鏡視に基づく診断が行われている。近年、細径の光ファイバプローブ下で、近赤外光の拡散反射法やラマン散乱法等の分光測定を実施することにより、コラーゲンやグリコサミノグリカン(GAG)等の関節軟骨基質の変化の情報を取得して、光学的にその軟骨状態を評価する方法が提案されている。(例えば、非特許文献1、非特許文献2および特許文献1参照。)。
関節骨は、骨表面を覆う軟骨組織と該軟骨組織の下層に存在する骨組織から構成されている。軟骨組織は硝子軟骨であり、その主成分は、II型コラーゲン、コンドロイチン硫酸等のグリコサミノグリカン(GAG)、および水である。また、骨組織の主成分は、I型コラーゲン、ヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム、および炭酸カルシウムである。ヒト軟骨組織の厚みは、正常軟骨では約2〜4mm程度であり、変形性関節症等の病変進行に伴ってより薄くなる傾向を有することが知られている。従来提案されている軟骨性状の光学評価法は、上記関節骨端において軟骨組織および骨組織に由来する分光スペクトルを測定する。例えば、特許文献1の装置では、関節骨の軟骨組織および骨組織に由来するラマンスペクトルを測定し、該ラマンスペクトルにおける特定ラマンバンドの情報に基づいて軟骨組織の状態を評価している。
例えば、特許文献1の図8には、骨組織に含まれるリン酸カルシウムと炭酸カルシウムのラマンバンドの強度比に基づいて変形性関節症(OA)を診断する方法が記載されている。また、特許文献1の図9には、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムのラマンバンドと、さらに蛋白質に由来するCH基由来のラマンバンドとの強度比に基づいて変形性膝関節症(OA)を診断する方法が記載されている。またさらに、特許文献1の図19には、コラーゲンの分子構造変化、すなわちコラーゲン変性と相関することが知られている1240cm−1および1270cm−1における2つのアミドIIIバンドの強度比に基づいてOAを診断する方法が記載されている。
Karen A. Esmonde-White、外3名、"Fiber-optic Raman Spectroscopy of Joint Tissues"、Analyst、2011年4月、Vol.136、p.1675-1685
I. Afara、外4名、"Non-destructive evaluation of articular cartilage defects using near-infrared spectroscopy in osteoarthriticrat models and its direct relation to Mankin score"、Osteoartthritis and Cartilage、2012年11月、Vol.20、p.1367-1373
特許文献1に開示される測定方法では、軟骨組織のラマンスペクトルと骨組織のラマンスペクトルとが重畳されたラマンスペクトルを取得している。この場合、ヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムや炭酸カルシウム、およびI型コラーゲン等の骨組織成分のラマンスペクトル強度が、II型コラーゲンやグリコサミノグリカン等の軟骨組織成分のラマンスペクトル強度と比較して著しく強いため、関節骨表層の軟骨組織のみに由来するラマンスペクトルの情報は、関節骨深層の骨組織に由来するラマンスペクトルの情報に覆い隠されて、軟骨組織を選択して観測することが困難であることが記載されている。
変形性関節症(OA)では、一般に早期には軟骨組織表層付近において病変が生じ、さらに深部の軟骨組織や骨組織へ病変が拡大することが知られている。したがって、特許文献1の方法では、骨組織まで進行した変形性関節症(OA)病変であれば診断することができるが、軟骨組織における早期の変形性関節症(OA)病変を検出することが難しいという問題がある。また、培養軟骨細胞移植による軟骨再生治療においては、細胞移植される軟骨欠損部位において、軟骨組織が硝子軟骨へと再生していることを評価することが必要である。しかし、特許文献1で開示される測定方法では、そのラマンスペクトルから、軟骨組織の固有成分であるII型コラーゲンやコンドロイチン硫酸をはじめとするグリコサミノグリカン等の軟骨組織の基質成分を検出することが難しく、軟骨組織の再生状態の良悪を評価することが難しいという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、関節骨のラマンスペクトルから軟骨組織選択的にラマンスペクトルを取得し、軟骨組織の状態を精度良く評価することができる軟骨組織の分析装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、レーザ光を出力するレーザ光源と、先端に射出面を有し、前記レーザ光源から入射されたレーザ光を前記射出面から軟骨組織を含む生体組織に向けて射出する照明ファイバと、先端に受光面を各々有し、前記生体組織からの散乱光を前記受光面においてそれぞれ受光する第1の集光ファイバおよび第2の集光ファイバと、前記第1の集光ファイバによって受光された前記散乱光から第1のラマンスペクトルを検出するとともに、前記第2の集光ファイバによって受光された前記散乱光から第2のラマンスペクトルを検出する検出部と、該検出部によって検出された前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの各々から、軟骨組織に由来するラマンバンドと骨組織に由来するラマンバンドとの強度比を演算する強度比演算部と、該強度比演算部によって算出された強度比が所定の範囲内であるラマンスペクトルを前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの中から選択し、選択されたラマンスペクトルを解析して前記軟骨組織の状態を評価する評価部とを備え、前記第1の集光ファイバの前記受光面の前記射出面からの距離と、前記第2の集光ファイバの前記受光面の前記射出面からの距離とが、互いに異なる軟骨組織の分析装置である。
本発明の一態様は、レーザ光を出力するレーザ光源と、先端に射出面を有し、前記レーザ光源から入射されたレーザ光を前記射出面から軟骨組織を含む生体組織に向けて射出する照明ファイバと、先端に受光面を各々有し、前記生体組織からの散乱光を前記受光面においてそれぞれ受光する第1の集光ファイバおよび第2の集光ファイバと、前記第1の集光ファイバによって受光された前記散乱光から第1のラマンスペクトルを検出するとともに、前記第2の集光ファイバによって受光された前記散乱光から第2のラマンスペクトルを検出する検出部と、該検出部によって検出された前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの各々から、軟骨組織に由来するラマンバンドと骨組織に由来するラマンバンドとの強度比を演算する強度比演算部と、該強度比演算部によって算出された強度比が所定の範囲内であるラマンスペクトルを前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの中から選択し、選択されたラマンスペクトルを解析して前記軟骨組織の状態を評価する評価部とを備え、前記第1の集光ファイバの前記受光面の前記射出面からの距離と、前記第2の集光ファイバの前記受光面の前記射出面からの距離とが、互いに異なる軟骨組織の分析装置である。
本態様によれば、レーザ光源から照明ファイバにレーザ光が供給されて射出面から生体組織にレーザ光が照射されると、レーザ光の照明領域内で発生した生体組織の散乱光が第1および第2の集光ファイバによって受光され、第1および第2の集光ファイバによって受光された散乱光から第1および第2のラマンスペクトルがそれぞれ検出部によって取得される。このときに、第1および第2のラマンスペクトルは、関節骨表層に位置する軟骨組織のラマンスペクトルのみ、あるいは、軟骨組織と該軟骨組織の下に位置する骨組織の両方のラマンスペクトルを含む。
この場合に、第1の集光ファイバの受光面と第2の集光ファイバの受光面は、照明ファイバの射出面からの距離が互いに異なる位置に配置されているので、第1の集光ファイバおよび第2の集光ファイバは、レーザ光の照明領域の内、深さ方向(レーザ光の照射方向)に互いに異なる範囲からの散乱光を受光する。したがって、第1のラマンスペクトルにおいて軟骨組織が該ラマンスペクトルへ寄与する割合と、第2のラマンスペクトルにおいて軟骨組織が該ラマンスペクトルへ寄与する割合は、互いに異なり得る。
ここで、軟骨組織成分由来のラマンバンドと骨組織成分由来のラマンバンドとの強度比を、第1のラマンスペクトルと第2のラマンスペクトルの各ラマンスペクトルについて算出することによって、該各ラマンスペクトルにおける軟骨組織のラマンスペクトルの寄与の割合を見積もることが可能である。したがって、算出された強度比に基づいて、第1および第2のラマンスペクトルから、軟骨組織のラマンスペクトルのみを含むラマンスペクトル、あるいは、軟骨組織のラマンスペクトルの寄与が大きいラマンスペクトルを選択することができる。そして、選択されたラマンスペクトルを用いて、骨組織由来のラマンスペクトルの情報を可能な限り排除して軟骨組織の状態を精度良く評価することができる。
上記態様においては、前記強度比演算部が強度比の演算に、前記軟骨組織に由来するラマンバンドとしてII型コラーゲンのラマンバンド強度を用い、前記骨組織に由来するラマンバンドとしてヒドロキシアパタイトのラマンバンド強度を用いてもよい。あるいは、上記態様においては、前記強度比演算部が強度比演算に、前記軟骨組織に由来するラマンバンドとしてグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンド強度を用い、前記骨組織に由来するラマンバンドとしてヒドロキシアパタイトのラマンバンド強度を用いてもよい。
このようにすることで、第1および第2のラマンスペクトルにおける、軟骨組織のラマンスペクトルおよび骨組織のラマンスペクトルの寄与の割合を精度良く算出することができる。
このようにすることで、第1および第2のラマンスペクトルにおける、軟骨組織のラマンスペクトルおよび骨組織のラマンスペクトルの寄与の割合を精度良く算出することができる。
上記態様においては、前記評価部が、前記選択されたラマンスペクトルにおける前記軟骨組織に由来する、ラマンシフトが互いに異なる2種類のラマンバンドの強度比を算出し、算出された強度比に基づいて前記軟骨組織の状態を評価してもよい。
軟骨組織に含有される各成分のラマンバンド強度は、該成分の含有量に比例するため、異なる2種類の成分のラマンバンド強度比は、異なる2種類の成分の相対量を反映する。あるいは所定成分において、ラマンシフトが互いに異なる2種類のラマンバンドの強度比が、該成分の分子構造を反映することが知られている。
したがって、算出されたラマンバンドの強度比から、軟骨組織に含有される成分について、該成分の相対量や分子構造の変化、すなわち軟骨基質分子の変性についての情報を得ることができる。このような情報に基づいて、変形性関節症(OA)をはじめとする軟骨病変や再生軟骨の成熟度などの軟骨組織の生化学的状態を評価することができる。
軟骨組織に含有される各成分のラマンバンド強度は、該成分の含有量に比例するため、異なる2種類の成分のラマンバンド強度比は、異なる2種類の成分の相対量を反映する。あるいは所定成分において、ラマンシフトが互いに異なる2種類のラマンバンドの強度比が、該成分の分子構造を反映することが知られている。
したがって、算出されたラマンバンドの強度比から、軟骨組織に含有される成分について、該成分の相対量や分子構造の変化、すなわち軟骨基質分子の変性についての情報を得ることができる。このような情報に基づいて、変形性関節症(OA)をはじめとする軟骨病変や再生軟骨の成熟度などの軟骨組織の生化学的状態を評価することができる。
上記態様においては、前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンのラマンバンドとグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドであってもよい。このグリコサミノグリカンは、軟骨組織に含有される主たるグリコサミノグリカンである、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸等の硫酸化グリコサミノグリカンである。
ここで、コラーゲンのラマンバンドとグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとの強度比は、軟骨組織に含まれるグリコサミノグリカン(GAG)の、コラーゲンに対する相対量を反映する。
したがって、算出された強度比に基づいて、グリコサミノグリカン(GAG)量の変化を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。また、グリコサミノグリカン(GAG)は硝子軟骨において多く含まれ、線維軟骨においてはほとんど含まれないことから、再生途上の軟骨組織において、グリコサミノグリカン(GAG)量は、軟骨組織が硝子軟骨であるか、線維軟骨であるか、あるいは硝子軟骨と線維軟骨との混合であるかによって変動する。したがって、軟骨組織中のグリコサミノグリカン(GAG)の量に基づいて、再生途上にある軟骨組織の成熟状態を評価することができる。
ここで、コラーゲンのラマンバンドとグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとの強度比は、軟骨組織に含まれるグリコサミノグリカン(GAG)の、コラーゲンに対する相対量を反映する。
したがって、算出された強度比に基づいて、グリコサミノグリカン(GAG)量の変化を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。また、グリコサミノグリカン(GAG)は硝子軟骨において多く含まれ、線維軟骨においてはほとんど含まれないことから、再生途上の軟骨組織において、グリコサミノグリカン(GAG)量は、軟骨組織が硝子軟骨であるか、線維軟骨であるか、あるいは硝子軟骨と線維軟骨との混合であるかによって変動する。したがって、軟骨組織中のグリコサミノグリカン(GAG)の量に基づいて、再生途上にある軟骨組織の成熟状態を評価することができる。
上記態様においては、前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンやプロテオグリカン等の細胞外基質および軟骨細胞中のタンパク質に含まれるアミノ酸のラマンバンドと、グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドであってもよい。
タンパク質のアミノ酸のラマンバンドとグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとの強度比は、軟骨組織の全タンパク質の量に対するグリコサミノグリカン(GAG)の相対量を反映する。したがって、算出された強度比に基づいて、グリコサミノグリカン(GAG)の量の変化を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。また、グリコサミノグリカン(GAG)量に基づいて、再生途上にある軟骨の成熟状態を評価することができる。
タンパク質のアミノ酸のラマンバンドとグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとの強度比は、軟骨組織の全タンパク質の量に対するグリコサミノグリカン(GAG)の相対量を反映する。したがって、算出された強度比に基づいて、グリコサミノグリカン(GAG)の量の変化を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。また、グリコサミノグリカン(GAG)量に基づいて、再生途上にある軟骨の成熟状態を評価することができる。
上記態様においては、前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンやプロテオグリカン等の細胞外基質および軟骨細胞中のタンパク質に含まれるアミノ酸のラマンバンドと、コラーゲンのラマンバンドであってもよい。
タンパク質のアミノ酸のラマンバンドとコラーゲンのラマンバンドとの強度比は、軟骨組織において、全タンパク質の量に対するコラーゲンの相対量を反映する。したがって、算出された強度比に基づいて、コラーゲン量の変化を伴う軟骨組織の病変を評価することができる。また、再生過程にある軟骨組織のコラーゲンのうち、II型コラーゲン量は、軟骨組織が正常な硝子軟骨であるか、再生軟骨としては不良な線維軟骨であるか、または再生途中の軟骨であるかによって変動する。したがって、コラーゲン量に基づいて、再生途上にある軟骨の成熟状態を評価することができる。
タンパク質のアミノ酸のラマンバンドとコラーゲンのラマンバンドとの強度比は、軟骨組織において、全タンパク質の量に対するコラーゲンの相対量を反映する。したがって、算出された強度比に基づいて、コラーゲン量の変化を伴う軟骨組織の病変を評価することができる。また、再生過程にある軟骨組織のコラーゲンのうち、II型コラーゲン量は、軟骨組織が正常な硝子軟骨であるか、再生軟骨としては不良な線維軟骨であるか、または再生途中の軟骨であるかによって変動する。したがって、コラーゲン量に基づいて、再生途上にある軟骨の成熟状態を評価することができる。
上記態様においては、前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンやプロテオグリカン等の細胞外基質および軟骨細胞中のタンパク質、あるいは脂質に含まれるメチレン基のラマンバンドとメチル基のラマンバンドであってもよい。
メチレン基のラマンバンドとメチル基のラマンバンドとの強度比は、軟骨組織に含まれる細胞の相対量と相関する。したがって、算出された強度比に基づいて、再生途上にある軟骨の成熟状態を評価することができる。
メチレン基のラマンバンドとメチル基のラマンバンドとの強度比は、軟骨組織に含まれる細胞の相対量と相関する。したがって、算出された強度比に基づいて、再生途上にある軟骨の成熟状態を評価することができる。
上記態様においては、前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンのアミドIIIバンドであってもよい。
コラーゲンのアミドIIIバンドは、1230〜1280cm−1のラマンシフト範囲において、1240cm−1近傍の低波数および1260cm−1近傍の高波数に2つのピークを有するラマンバンドとして観測される。このアミドIIIバンドの低波数側のラマンバンドと高波数側のラマンバンドの2つのラマンバンドの強度比は、軟骨組織中のコラーゲンの二次構造に特徴づけられる分子構造の変化を反映することが知られている。変形性関節症などの軟骨組織病変は、軟骨組織中のII型コラーゲンの変性、すなわち分子構造変化を特徴とすることが知られている。したがって、算出されたアミドIIIラマンバンドの強度比に基づいて、変形性関節症のようなコラーゲン変性を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。
コラーゲンのアミドIIIバンドは、1230〜1280cm−1のラマンシフト範囲において、1240cm−1近傍の低波数および1260cm−1近傍の高波数に2つのピークを有するラマンバンドとして観測される。このアミドIIIバンドの低波数側のラマンバンドと高波数側のラマンバンドの2つのラマンバンドの強度比は、軟骨組織中のコラーゲンの二次構造に特徴づけられる分子構造の変化を反映することが知られている。変形性関節症などの軟骨組織病変は、軟骨組織中のII型コラーゲンの変性、すなわち分子構造変化を特徴とすることが知られている。したがって、算出されたアミドIIIラマンバンドの強度比に基づいて、変形性関節症のようなコラーゲン変性を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。
上記態様においては、前記評価部が、前記選択されたラマンスペクトルを主成分分析(PCA)、主成分回帰分析(PCR)、または部分最小二乗分析(PLS)等の多変量解析することによって、前記軟骨組織に含まれるグリコサミノグリカン(GAG)、コラーゲンまたは細胞の量と相関するラマンスペクトルの特徴量を算出するか、あるいはそれら成分量を推定し、得られたラマンスペクトルの特徴量、あるいは前記グリコサミノグリカン(GAG)、コラーゲンまたは細胞の成分量に基づいて前記軟骨組織の状態を評価してもよい。
このようにすることで、再生軟骨の成長の度合いや、変形性関節症等のグリコサミノグリカン量の変化、もしくはコラーゲン変性を主とした組織変性を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。
このようにすることで、再生軟骨の成長の度合いや、変形性関節症等のグリコサミノグリカン量の変化、もしくはコラーゲン変性を主とした組織変性を特徴とする軟骨組織の病変を評価することができる。
上記態様においては、前記評価部が、前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの各々から、前記軟骨組織に由来するラマンバンドと前記骨組織に由来するラマンバンドとの強度比を演算し、算出された2つの強度比、および、前記軟骨組織と前記骨組織のラマンバンドの強度比と前記軟骨組織の厚みとを相関づける予め準備された検量線または統計的推定法に基づいて前記軟骨組織の厚みを推定してもよい。
このようにすることで、算出された軟骨組織のラマンバンドと骨組織のラマンバンドの2つのラマンバンドの強度比に基づいて、軟骨組織の厚みを評価することができる。
このようにすることで、算出された軟骨組織のラマンバンドと骨組織のラマンバンドの2つのラマンバンドの強度比に基づいて、軟骨組織の厚みを評価することができる。
本発明によれば、軟骨組織と骨組織からなる関節骨のラマンスペクトルから軟骨組織由来のラマンスペクトルと骨組織由来のラマンスペクトルを分離して軟骨組織由来のラマンスペクトルを選択的に取得し、該軟骨組織由来のラマンスペクトルを解析することにより、関節骨表層に存在する軟骨組織の状態を精度良く評価することができるという効果を奏する。
以下に、本発明の一実施形態に係る軟骨組織の分析装置100について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る軟骨組織の分析装置100は、図1に示されるように、レーザ光源1と、該レーザ光源1からのレーザ光を関節骨(生体組織)Aに照射するとともに関節骨Aからのラマン散乱光を受光する光学プローブ2と、該光学プローブ2によって受光されたラマン散乱光を分光する分光器(検出部)3と、光学プローブ2と分光器3との間に配置された結合光学系4と、分光器3によって分光された光を検出してラマンスペクトルを取得する光検出器(検出部)5とを備えている。
本実施形態に係る軟骨組織の分析装置100は、図1に示されるように、レーザ光源1と、該レーザ光源1からのレーザ光を関節骨(生体組織)Aに照射するとともに関節骨Aからのラマン散乱光を受光する光学プローブ2と、該光学プローブ2によって受光されたラマン散乱光を分光する分光器(検出部)3と、光学プローブ2と分光器3との間に配置された結合光学系4と、分光器3によって分光された光を検出してラマンスペクトルを取得する光検出器(検出部)5とを備えている。
レーザ光源1は、785nmの波長を有する近赤外のレーザ光を出力する半導体レーザである。レーザ光源1の波長は、785nm以外の波長であってもよい。
光学プローブ2は、レーザ光源1からのレーザ光を導光する照明ファイバ6と、ラマン散乱光を受光および導光する第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72とを備えている。照明ファイバ6および集光ファイバ71,72は先端側において1本に束ねられ、光学プローブ2の先端部のプローブヘッド2a内に照明ファイバ6の先端部および集光ファイバ71,72の先端部が収容されている。照明ファイバ6と集光ファイバ71,72は、長手方向の途中位置において互いに分岐し、照明ファイバ6の基端はレーザ光源1に接続され、集光ファイバ71,72の基端は結合光学系4を介して分光器3と光学的に結合されている。
光学プローブ2は、レーザ光源1からのレーザ光を導光する照明ファイバ6と、ラマン散乱光を受光および導光する第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72とを備えている。照明ファイバ6および集光ファイバ71,72は先端側において1本に束ねられ、光学プローブ2の先端部のプローブヘッド2a内に照明ファイバ6の先端部および集光ファイバ71,72の先端部が収容されている。照明ファイバ6と集光ファイバ71,72は、長手方向の途中位置において互いに分岐し、照明ファイバ6の基端はレーザ光源1に接続され、集光ファイバ71,72の基端は結合光学系4を介して分光器3と光学的に結合されている。
レーザ光源1から照明ファイバ6に入射したレーザ光は、照明ファイバ6を導光し、プローブヘッド2aから関節骨Aに向けて射出されるようになっている。また、レーザ光の照射によって関節骨Aにおいて励起されたラマン散乱光は、集光ファイバ71,72によって集められ、該集光ファイバ71,72および結合光学系4を導光し、分光器3に入射するようになっている。
結合光学系4は、集光ファイバ71,72の基端から発散光束として射出される光を平行光束に変換するレンズ4aと、該レンズ4aによって形成された平行光束を分光器3の入口スリットの位置に結像させるレンズ4bとの組み合わせからなるコリメート光学系である。レンズ4a,4bの間には、レーザ光Lの反射光を遮断し、レーザ光の波長よりも波長の長いラマン散乱光を透過させる光学フィルタ4cが設けられている。
分光器3は、結合光学系4を介して集光ファイバ71,72から入射した光を波長毎に空間的に分離し、得られたスペクトルを光検出器5の受光面上に再結像する。
分光器3は、結合光学系4を介して集光ファイバ71,72から入射した光を波長毎に空間的に分離し、得られたスペクトルを光検出器5の受光面上に再結像する。
光検出器5は、例えば、CCD素子のような光電変換素子が2次元的に配列する撮像素子を備えるカメラであり、分光器3に取り付けられている。光検出器5は、分光器3から受光面に入射した光を光電変換素子によって電気信号へ変換してラマンスペクトルのデータを取得する。
次に、光学プローブ2の詳細な構成について説明する。
光学プローブ2は、図2から図4に示されるように、1本の照明ファイバ6と、複数本の第1の集光ファイバ71と、複数本の第2の集光ファイバ72とを備えている。図2は、プローブヘッド2aの横断面(光学プローブ2の長手方向に垂直な断面)を示し、図3および図4は、図2のI−I線およびII−II線におけるプローブヘッド2aの縦断面(光学プローブ2の長手方向の断面)をそれぞれ示している。
光学プローブ2は、図2から図4に示されるように、1本の照明ファイバ6と、複数本の第1の集光ファイバ71と、複数本の第2の集光ファイバ72とを備えている。図2は、プローブヘッド2aの横断面(光学プローブ2の長手方向に垂直な断面)を示し、図3および図4は、図2のI−I線およびII−II線におけるプローブヘッド2aの縦断面(光学プローブ2の長手方向の断面)をそれぞれ示している。
照明ファイバ6および集光ファイバ71,72は、例えば、105μmまたは200μmのコア径と125μmmまたは240μmのクラッド径とを有し、水酸基の含有量が少ないシリカ製の光ファイバである。照明ファイバ6の開口数NAは0.22以上であることが好ましく、集光ファイバ71,72の開口数NAは0.22以下であることが好ましい。
図2に示されるように、プローブヘッド2aにおいて、照明ファイバ6および集光ファイバ71,72は、プローブヘッド2aの長手方向に沿って互いに平行に配列している。第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72は、照明ファイバ6を中心とする同心円状に配列され、第1の集光ファイバが径方向内側に、第2の集光ファイバ72が径方向外側に配置されている。したがって、照明ファイバ6の先端面(射出面)から各第1の集光ファイバ71の先端面(受光面)までの径方向の距離は、照明ファイバ6の先端面から各第2の集光ファイバ72の先端面(受光面)までの径方向の距離よりも短くなっている。
図3および図4に示されるように、照明ファイバ6の先端面は、プローブヘッド2aの長手方向に対して垂直である。したがって、照明ファイバ6の先端面から所定の開口数で射出されたレーザ光は、図5および図6に示されるように、プローブヘッド2aの先端前方の円錐状の照明領域Dに照射され、照明領域Dにおいてラマン散乱光が発生する。
一方、集光ファイバ71,72の先端面は、図3および図4に示されるように、照明ファイバ6および集光ファイバ71,72に対して平行であるプローブヘッド2aの長軸について、この長軸に垂直な面に対して所定角δだけ傾斜しており、斜め外方を向いている。これにより、集光ファイバ71,72は、図5および図6に示されるように、照明ファイバ6側から各々の長手軸に対して斜め方向に入射する光を集めるので、集光ファイバ71,72の先端面をプローブヘッド2aの長軸に垂直に形成した場合と比べて、集光ファイバ71,72によって光が集められる集光領域E1,E2と照明領域Dとが重なり合う範囲(観察範囲)F1,F2の体積が増大する。集光ファイバ71,72によるラマン散乱光の受光量は、観察範囲F1,F2の体積が大きい程、増大するので、集光ファイバ71,72の先端面を傾斜させることによって、関節骨Aの表層付近において発生したラマン散乱光を効果的に集光し、信号対雑音比の高い関節骨Aのラマンスペクトルを取得することができる。
所定角δは集光ファイバ71,72の開口数NAの大きさに依存して決められる角度であって、集光ファイバ71,72の開口数NAが小さい程、所定角δを大きく設定することが可能であり、関節骨Aにおいて、より表層部から発せられるラマン散乱光を集めることができる。例えば、照明ファイバ6のコア径が200μmかつ開口数NAが0.22であり、集光ファイバ71,72のコア径が200μmかつ開口数NAが0.15であるとき、所定角δを30度以上37度以下に含まれる所定の角度に設定することにより、関節骨Aのうち、表面からの厚みが1乃至2mm程度の軟骨組織Bに由来するラマンスペクトルを選択的に観測することができる。また、照明ファイバ6および集光ファイバ71,72のコア径を更に小さくすることによって、より薄い軟骨組織に由来するラマンスペクトルを選択的に観測することもできる。
また、プローブヘッド2aの先端面において、照明ファイバ6の断面(先端面)と接するように合成石英またはサファイア製の窓材が配置されていて、該窓材を含む平面とδの角を成す集光ファイバ71,72の先端面と、該窓材との間に空隙が設けられるようにしても良い。関節骨を測定するにおいて、灌流液によって集光ファイバ71,72が水浸される場合には、集光ファイバ71,72の構成材の屈折率と水の屈折率との屈折率差が該構成材と空気との屈折率差よりも小さくなるために、集光領域E1およびE2と照明領域Dとの重なりが小さくなり、関節骨Aの表層付近の観察に不利である。そこで、上記のように空隙を設けることで集光領域E1およびE2と照明領域Dとの重なりを大きく保ち、水浸環境でも関節骨Aの表層付近にある軟骨組織Bを選択的に観測できる効果がある。
ここで、第1の集光ファイバ71は、第2の集光ファイバ72よりも照明ファイバ6の近くに位置しているため、第1の集光領域E1と照明領域Dとが重なり合う第1の観察範囲F1は、第2の集光領域E2と照明領域Dとが重なり合う第2の観察範囲F2よりも、プローブヘッド2aの先端部に近くなる。したがって、第1の集光ファイバ71は、関節骨Aの相対的に浅い位置からのラマン散乱光を集め、第2の集光ファイバ72は、関節骨Aの相対的に深い位置からのラマン散乱光を集める。すなわち、第1の集光ファイバ71によって集められるラマン散乱光には、第2の集光ファイバ72によって集められるラマン散乱光に比べて、関節骨Aの表層部を覆う軟骨組織Bのラマン散乱光がより多く含まれる。
図7は、光学プローブ2の基端部の横断面図である。図7に示されるように、光学プローブ2の基端部において、第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72は、一側に第1の集光ファイバ71が集まり、他側に第2の集光ファイバ72が集まるように、一列に配列されている。したがって、図8に示されるように、第1の集光ファイバ71から射出されるラマン散乱光は、受光面25上の第1の受光領域G1に再結像し、第2の集光ファイバ72から射出されるラマン散乱光は、受光面25上の第1の受光領域G1とは異なる第2の受光領域G2に再結像する。これにより、第1の観察範囲F1の第1のラマンスペクトルと、第2の観察範囲F2の第2のラマンスペクトルとが、分離して取得されるようになっている。
図9は、軟骨組織Bが十分に厚い関節骨Aから得られた第1のラマンスペクトルおよび第2のラマンスペクトルの一部を示し、図10は、軟骨組織Bが薄い関節骨Aから得られた第1のラマンスペクトルおよび第2のラマンスペクトルの一部を示している。
軟骨組織Bに含まれる主な成分は、水、コラーゲン(II型コラーゲン)、グリコサミノグリカン(GAG)とタンパク質との複合体であるプロテオグリカン、および、軟骨細胞である。骨組織Cに含まれる主な成分は、コラーゲン(I型コラーゲン)、リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)、および炭酸カルシウムである。図9および図10のラマンスペクトルにおいて、921cm−1近傍にピークを有するラマンバンドは、軟骨組織中のII型コラーゲンに含まれるアミノ酸であるプロリン由来であり、958cm−1近傍にピークを有するラマンバンドは、軟骨組織中のII型コラーゲンのラマンバンドと骨組織中のリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)のリン酸基のラマンバンドとが重畳されたバンドである。
図9および図10に示される921cm−1および958cm−1における2つのラマンバンドの強度に着目すると、図9の第1のラマンスペクトルおよび第2のラマンスペクトルにおける921cm−1のラマンバンドと958cm−1のラマンバンドの強度比はほとんど変化しない一方、図10の第1のラマンスペクトルと第2のラマンスペクトルにおいては、第2のラマンスペクトルにおける958cm−1のラマンバンド強度は921cm−1のラマンバンド強度より大きくなっている。これは、図9の第2のラマンスペクトルに対し、図10の第2のラマンスペクトルには、骨組織の成分であるヒドロキシアパタイトに由来するラマンスペクトルの寄与がより多く含まれることを意味している。このように、図9の第1および第2のラマンスペクトルに含まれる信号のほとんどは、軟骨組織Bからの信号であるのに対し、図10の第1のラマンスペクトルおよび第2のラマンスペクトルには、軟骨組織Bの成分由来の信号と骨組織Cの成分由来の信号の両方が含まれることが分かる。
また、軟骨組織の分析装置100は、図1に示されるように、制御部8、記憶部9、演算部(強度比演算部、評価部)10および表示部11をさらに備えている。
制御部8は、レーザ光源1から出射されるレーザ光の出力強度および出力タイミングを制御することによって、レーザ光の照射強度および照射タイミングを制御する。また、制御部8は、分光器3の中心波長、光検出器5による光の検出条件(例えば、露光時間およびゲイン)を制御する。
制御部8は、レーザ光源1から出射されるレーザ光の出力強度および出力タイミングを制御することによって、レーザ光の照射強度および照射タイミングを制御する。また、制御部8は、分光器3の中心波長、光検出器5による光の検出条件(例えば、露光時間およびゲイン)を制御する。
記憶部9は、光検出器5によって取得された第1および第2のラマンスペクトルのデータと、演算部10による演算結果(後述)とを記憶する。
表示部11は、記憶部9に記憶されているラマンスペクトルおよび演算部10による演算結果を表示する。
表示部11は、記憶部9に記憶されているラマンスペクトルおよび演算部10による演算結果を表示する。
演算部10は、記憶部9から第1および第2のラマンスペクトルのデータを読み出し、第1および第2のラマンスペクトルを解析して関節骨Aに含まれる軟骨組織Bの状態を評価するための以下の第1および第2の処理を実行する。
第1の処理において、演算部10は、第1および第2のラマンスペクトルのうち、軟骨組織Bのラマンスペクトルであるものを選択する。具体的には、演算部10は、下式に定義されるように、第1のラマンスペクトルにおける軟骨組織B由来のラマンバンドおよび骨組織C由来のラマンバンドの強度比(第1のバンド強度比)を算出する。
バンド強度比=軟骨組織由来のラマンバンドの強度÷骨組織由来のラマンバンドの強度
同様にして、演算部10は、第2のラマンスペクトルにおける軟骨組織B由来のラマンバンドおよび骨組織C由来のラマンバンドの強度比(第2のバンド強度比)を算出する。
バンド強度比=軟骨組織由来のラマンバンドの強度÷骨組織由来のラマンバンドの強度
同様にして、演算部10は、第2のラマンスペクトルにおける軟骨組織B由来のラマンバンドおよび骨組織C由来のラマンバンドの強度比(第2のバンド強度比)を算出する。
軟骨組織B由来のラマンバンドは、例えば、II型コラーゲンのラマンバンドであって、アミノ酸(プロリン)の921cm−1のラマンバンド、コラーゲンのポリペプチド骨格の815cm−1のラマンバンドを用いることができる。骨組織C由来のラマンバンドは、例えば、958cm−1におけるヒドロキシアパタイト(HAP)に含まれるリン酸イオンのラマンバンドである。各ラマンバンド強度は、バンドのピーク値および面積強度のいずれであってもよい。
続いて、演算部10は、第1のバンド強度比および第2のバンド強度比をそれぞれ所定の閾値と比較し、バンド強度比が所定の閾値よりも大きいラマンスペクトルを軟骨組織Bのラマンスペクトルとして選択する。
続いて、演算部10は、第1のバンド強度比および第2のバンド強度比をそれぞれ所定の閾値と比較し、バンド強度比が所定の閾値よりも大きいラマンスペクトルを軟骨組織Bのラマンスペクトルとして選択する。
ここで、軟骨組織Bの厚みとラマンバンド強度比との関係および所定の閾値について説明する。
図11Aに示すのは、観察範囲F1および観察範囲F2を含む程度に軟骨組織Bが十分厚い場合における、観察範囲F1および観察範囲F2と関節骨Aとの関係を図示するものである。この場合において、集光ファイバ71で取得される第1のラマンスペクトルおよび集光ファイバ72で取得される第2のラマンスペクトルは、図11Bに示されるように、ほぼ軟骨組織Bのラマンスペクトルに因るものである。このときの921cm−1にピークを有するコラーゲンのラマンバンド強度と、958cm−1にピークを有するヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンド強度は略等しくなる。
図11Aに示すのは、観察範囲F1および観察範囲F2を含む程度に軟骨組織Bが十分厚い場合における、観察範囲F1および観察範囲F2と関節骨Aとの関係を図示するものである。この場合において、集光ファイバ71で取得される第1のラマンスペクトルおよび集光ファイバ72で取得される第2のラマンスペクトルは、図11Bに示されるように、ほぼ軟骨組織Bのラマンスペクトルに因るものである。このときの921cm−1にピークを有するコラーゲンのラマンバンド強度と、958cm−1にピークを有するヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンド強度は略等しくなる。
図12Aに示すのは、観察範囲F1および観察範囲F2をほとんど含まない程度に軟骨組織Bが十分薄いか、軟骨組織Bが存在しない場合における、観察範囲F1および観察範囲F2と関節骨Aとの関係を図示するものである。この場合において、集光ファイバ71で取得される第1のラマンスペクトルおよび集光ファイバ72で取得される第2のラマンスペクトルは、図12Bに示されるように、ほぼ骨組織Cのラマンスペクトルに因るものである。このときの958cm−1にピークを有するヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンド強度は、921cm−1にピークを有するコラーゲンのラマンバンド強度の10倍以上となる。
図13Aに示すのは、軟骨組織Bの厚みが図11Aの場合と図12Aの場合の中間的な場合を図示するものである。この場合、図13Bに示されるように、集光ファイバ71で取得される第1のラマンスペクトルおよび集光ファイバ72で取得される第2のラマンスペクトルにおいて、921cm−1にピークを有するコラーゲンのラマンバンド強度と、958cm−1にピークを有するヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンドの強度の強度比は、観察範囲F1および観察範囲F2に含まれる軟骨組織Bと骨組織Cの割合によって変化する。
このように、921cm−1にピークを有するコラーゲンのラマンバンドと958cm−1にピークを有するヒドロキシアパタイトのラマンバンドのバンド強度比は、関節骨Aにおける軟骨組織Bの厚みに応じて異なり、第1および第2のラマンスペクトルにおける軟骨組織Bのラマンスペクトルの寄与の割合に依存して変化する。したがって、バンド強度比に基づいて、骨組織Cのラマンスペクトルの寄与が小さく軟骨組織Bのラマンスペクトルの寄与が大きいものを、第1および第2のラマンスペクトルの中から選択することができる。
軟骨組織Bのラマンスペクトルの選択の基準となる所定の閾値は実験的に決定される。
例えば、観察範囲F1に対して軟骨組織が十分に厚いブタ関節骨(サンプル数n=20)のラマンスペクトルを測定して、921cm−1と958cm−1のラマンバンドのバンド強度比を計算した結果、バンド強度比は、0.80以上1.25以下であった。したがって、所定の閾値を当該範囲の最小値以上の値に設定することによって、関節骨Aのラマンスペクトルから、軟骨組織Bのラマンスペクトルを選択的に観測することができる。
例えば、観察範囲F1に対して軟骨組織が十分に厚いブタ関節骨(サンプル数n=20)のラマンスペクトルを測定して、921cm−1と958cm−1のラマンバンドのバンド強度比を計算した結果、バンド強度比は、0.80以上1.25以下であった。したがって、所定の閾値を当該範囲の最小値以上の値に設定することによって、関節骨Aのラマンスペクトルから、軟骨組織Bのラマンスペクトルを選択的に観測することができる。
例えば、所定の閾値は、0.8に設定される。図9に示される第1および第2のラマンスペクトルの場合、バンド強度比はそれぞれ1.15および1.0である。したがって、第1および第2のラマンスペクトルの両方が、軟骨組織のラマンスペクトルとして選択される。このような場合には、軟骨組織Bのラマンスペクトルとして、第1のラマンスペクトルのみを、この後の第2の処理に用いても良いし、第1のラマンスペクトルと第2のラマンスペクトルとの和を、この後の第2の処理に用いてもよい。図10に示される第1および第2のラマンスペクトルの場合、バンド強度比はそれぞれ0.95および0.56である。したがって、第1のラマンスペクトルのみが、軟骨組織Bのラマンスペクトルとして選択される。
次に、第2の処理において、演算部10は、選択された軟骨組織Bのラマンスペクトルを解析して軟骨組織Bに含まれるグリコサミノグリカン(GAG)の量を算出し、算出されたグリコサミノグリカン(GAG)の量に基づいて軟骨組織Bの状態を評価する。具体的には、演算部10は、軟骨組織Bのラマンスペクトルからコラーゲンのラマンバンドの強度およびグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドの強度を算出する。コラーゲンのラマンバンドとしては、例えば、921cm−1におけるプロリン残基のラマンバンド、または、815cm−1におけるコラーゲンのラマンバンドが選択される。グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとして、例えば、1063cm−1における硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の硫酸基のラマンバンド、または、1380cm−1のラマンバンドが選択される。各ラマンバンド強度は、バンドのピーク値および面積強度のいずれであってもよい。
図14は、図1に示す分析装置100において関節骨Aのラマンスペクトルを取得した後に、第1の処理において選択された軟骨組織Bのラマンスペクトルの一例を示している。図14において、実線は、正常な関節骨Aにおける軟骨組織Bのラマンスペクトルを示し、破線は、正常な関節骨Aをプロテオグリカン分解酵素(トリプシン)に浸漬してグリコサミノグリカン(GAG)を一部欠失させた病変モデルの関節骨Aにおける軟骨組織Bのラマンスペクトルを示している。2つのラマンスペクトルを比較すると、921cm−1のコラーゲンのラマンバンドの強度は変化していないのに対し、1063cm−1近傍および1380cm−1近傍の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドの強度には、グリコサミノグリカン(GAG)を欠損させた軟骨組織のラマンスペクトルにおいて減少が見られる。
続いて、演算部10は、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとコラーゲンのラマンバンドの強度比(GAGのラマンバンドの強度÷コラーゲンのラマンバンドの強度)GAG/Colを算出する。硫酸化グリコサミノグリカンのラマンバンドとしては、1063cm−1近傍または1380cm−1近傍に強度ピークを有するラマンバンドを用い、コラーゲンのラマンバンドとしては921cm−1近傍または940cm−1近傍に強度ピークを有するラマンバンドを用いることができる。
図15Aおよび図15Bは、ラマンバンドの強度比GAG/Colと、生化学分析によって得られた軟骨組織中における、単位湿重量当たりの硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の重量との相関関係を示している。硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとして1063cm−1近傍および1380cm−1近傍のいずれのラマンバンドを用いた場合にも、強度比GAG/Colは、軟骨組織中のグリコサミノグリカン(GAG)の量に対して相関係数0.9以上の高い相関を示した。再生途中にあって硝子軟骨として成熟していない再生軟骨や、線維性軟骨や、変形性関節症の軟骨組織においては、正常な軟骨組織に比べてコンドロイチン硫酸等のGAGの量が減少することが知られている。演算部10は、ラマンバンドの強度比GAG/Colに基づいて、軟骨組織B中のGAGの量を推定し、再生軟骨や変形性関節症等の軟骨組織Bの状態を評価する。
演算部10によって得られたGAGの量、評価結果等の解析結果は、記憶部9に記憶されるとともに、表示部11に表示される。
次に、このように構成された軟骨組織の分析装置100の作用について説明する。
図16に示されるように、レーザ光源1から出力されたレーザ光は、光学プローブ2の照明ファイバ6によって導光され、プローブヘッド2aから関節骨Aへ照射される(ステップS1)。関節骨Aの照明領域Dにおいては、レーザ光の照射によって関節骨Aの成分由来のラマン散乱光が発生し、ラマン散乱光(非弾性散乱光)とレーザ光の散乱光(弾性散乱光)が関節骨Aから拡散反射される。関節骨Aから拡散反射された散乱光のうち、第1の観察範囲F1からの散乱光は第1の集光ファイバ71によって受光され、第2の観察範囲F2からの散乱光は第2の集光ファイバ72によって受光される(ステップS2)。
図16に示されるように、レーザ光源1から出力されたレーザ光は、光学プローブ2の照明ファイバ6によって導光され、プローブヘッド2aから関節骨Aへ照射される(ステップS1)。関節骨Aの照明領域Dにおいては、レーザ光の照射によって関節骨Aの成分由来のラマン散乱光が発生し、ラマン散乱光(非弾性散乱光)とレーザ光の散乱光(弾性散乱光)が関節骨Aから拡散反射される。関節骨Aから拡散反射された散乱光のうち、第1の観察範囲F1からの散乱光は第1の集光ファイバ71によって受光され、第2の観察範囲F2からの散乱光は第2の集光ファイバ72によって受光される(ステップS2)。
第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72によって受光された散乱光はそれぞれ、結合光学系4を介して分光器3に導光され、分光器3によって波長毎に空間的に分離され、光検出器5によって検出される。これにより、第1の観察範囲F1の第1のラマンスペクトルと第2の観察範囲F2の第2のラマンスペクトルが取得される(ステップS3)。取得されたラマンスペクトルは、記憶部9に記憶されるとともに演算部10に送信される。
次に、演算部10において、第1のラマンスペクトル内の軟骨組織Bのラマンバンドおよび骨組織Cのラマンバンドの強度から、第1のバンド強度比が算出される(ステップS4)。同様に、第2のラマンスペクトル内の軟骨組織Bのラマンバンドおよび骨組織Cのラマンバンドの強度から、第2のバンド強度比が算出される(ステップS5)。次に、第1および第2のラマンスペクトルの中から、所定の閾値よりも大きなバンド強度比を与えるラマンスペクトルが軟骨組織Bのラマンスペクトルとして選択される(ステップS6,S7)。
次に、演算部10において、選択された軟骨組織Bのラマンスペクトル内のグリコサミノグリカン(GAG)およびコラーゲンのラマンバンドの強度比GAG/Colが算出され(ステップS8)、算出された強度比GAG/Colに基づいて軟骨組織Bの状態が評価される(ステップS9)。評価結果は、表示部11に表示される。表示部11に表示される軟骨組織Bの評価結果は、例えば、軟骨組織B中におけるグリコサミノグリカン(GAG)の推定量である。あるいは、グリコサミノグリカン(GAG)の推定量と相関するように段階付けされている、軟骨組織Bの状態を示す分類指標であってもよい。
このように、本実施形態によれば、照明ファイバ6の先端面から互いに異なる距離に先端面が配置された第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72によって、関節骨Aの異なる深さの観察範囲F1,F2の2つのラマンスペクトルが取得される。そして、各ラマンスペクトルから算出された軟骨組織B由来のラマンバンドと骨組織C由来のラマンバンドとのラマンバンド強度比に基づいて、軟骨組織Bのラマンスペクトルを選択することにより、骨組織C由来の信号の影響を極力排除した上で、軟骨組織Bのラマンスペクトルを評価に用いることができる。これにより、関節骨Aの表層に存在する軟骨組織Bにおいて再生途上にある再生軟骨の状態や、関節骨A表層に存在する軟骨組織Bのみに異常を伴う早期の変形性関節症等における軟骨組織Bの状態を、精度良く評価することができるという利点がある。
本実施形態においては、複数の第1の集光ファイバ71と複数の第2の集光ファイバ72が同心円状に配列されていることとしたが、第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72の数および配列はこれに限定されるものではない。
例えば、図17Aから図17Cに示されるように、第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72が、それぞれ1本のみ設けられ、照明ファイバ6、第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72が径方向に一列に配列されていてもよい。この場合も、照明ファイバ6の先端面から第1の集光ファイバ71の先端面までの距離と、照明ファイバ6の先端面から第2の集光ファイバの先端面までの距離とが互いに異なるように、光ファイバ6,71,72は配列される。
例えば、図17Aから図17Cに示されるように、第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72が、それぞれ1本のみ設けられ、照明ファイバ6、第1の集光ファイバ71および第2の集光ファイバ72が径方向に一列に配列されていてもよい。この場合も、照明ファイバ6の先端面から第1の集光ファイバ71の先端面までの距離と、照明ファイバ6の先端面から第2の集光ファイバの先端面までの距離とが互いに異なるように、光ファイバ6,71,72は配列される。
図17Cに示されるように、集光ファイバ71,72の先端面はプローブヘッド2aの長軸方向に垂直な平面に対して所定角δ2だけ傾斜している。あるいは、図17Bに示されるように、集光ファイバ71,72の先端面がプローブヘッド2aの長軸方向に垂直な平面に対して所定角δ2だけ傾斜しているのみならず、照明ファイバ6の先端面も、プローブヘッド2aの長軸方向に垂直な平面に対して所定角δ1だけ傾斜していてもよい。このようにすることで、照明ファイバ6が形成する照明領域Dと、集光ファイバ71,72が形成する集光領域E1およびE2が重なりあう範囲として形成される観察範囲F1とF2が、プローブヘッド2a先端により近い位置に形成されるため、関節骨A表層に存在する軟骨組織Bを観察するにおいて、図17Cに示される構造よりもさらに効果的である。
本実施形態においては、第1および第2のバンド強度比の算出にコラーゲンとHAPのラマンバンドを用いることとしたが、グリコサミノグリカン(GAG)は軟骨組織Bのみに含まれ、骨組織Cには含まれないため、軟骨組織B由来のラマンバンドとして、コラーゲンに代えてグリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドを用いてもよい。
グリコサミノグリカン(GAG)とヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンドの強度比も、第1および第2のラマンスペクトルにおける軟骨組織Bのラマンスペクトルの寄与の割合を反映したものとなる。したがって、当該強度比に基づいて、軟骨組織Bのラマンスペクトルを選択することができる。
グリコサミノグリカン(GAG)とヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンドの強度比も、第1および第2のラマンスペクトルにおける軟骨組織Bのラマンスペクトルの寄与の割合を反映したものとなる。したがって、当該強度比に基づいて、軟骨組織Bのラマンスペクトルを選択することができる。
本実施形態においては、軟骨組織Bの状態を評価するために、グリコサミノグリカン(GAG)とコラーゲンのラマンバンドの強度比GAG/Colを算出することとしたが、これに代えて、またはこれに加えて、軟骨組織Bに含まれる他の2種類のラマンバンドの強度比を算出してもよい。
2種類のラマンバンドの第1の例として、グリコサミノグリカン(GAG)とタンパク質のラマンバンドが用いられる。タンパク質のラマンバンドとしては、例えば、図14に示されるように、1003cm−1近傍にピークを有するタンパク質のフェニルアラニン残基のラマンバンドが選択される。グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドは、例えば図14に示される、1063cm−1近傍もしくは1380cm−1近傍にピークを有する硫酸化グリコサミノグリカンのラマンバンドを選択することができる。そして、グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドとタンパク質のラマンバンドの強度比(GAGのラマンバンドの強度÷タンパク質のラマンバンドの強度)GAG/Proteinが算出される。
再生途中にあって硝子軟骨として成熟していない再生軟骨や、線維性軟骨や、変形性関節症の軟骨組織においては、軟骨組織Bの全タンパク質の量に対してグリコサミノグリカン(GAG)の量が低下する。したがって、軟骨組織B中の全タンパク質とグリコサミノグリカン(GAG)の相対量に比例する強度比GAG/Proteinに基づいて、軟骨組織Bの状態を評価することができる。
2種類のラマンバンドの第2の例として、コラーゲンとタンパク質のラマンバンドが用いられる。コラーゲンのラマンバンドとしては、上述した921cm−1および815cm−1のラマンバンドの他に、図14に示されるように、1230cm−1〜1240cm−1のコラーゲンのアミドIIIバンド、または、1650cm−1近傍のコラーゲンのアミドIバンドを選択してもよい。タンパク質のラマンバンドとしては、1003cm−1近傍にピークを有するタンパク質のフェニルアラニン残基のラマンバンドが選択される。そして、コラーゲンのラマンバンドとタンパク質のラマンバンドの強度比(コラーゲンのラマンバンドの強度÷タンパク質のラマンバンドの強度)Col/Proteinが算出される。このように取得された軟骨組織B中の全タンパク質量に対するコラーゲンの相対量に比例する強度比Col/Proteinを用いることによっても、軟骨組織Bの状態を評価することができる。
2種類のラマンバンドの第3の例として、軟骨組織B中のタンパク質や脂質に由来するメチル基(CH3)とメチレン基(CH2)のラマンバンドを用いることができる。図18は、軟骨組織Bのラマンスペクトルの内、メチル基およびメチレン基のラマンバンドが観測される2830cm−1から3050cm−1のラマンシフト範囲を示している。
図18に示されるように、メチル基のラマンバンドとしては、2940〜2950cm−1のバンドが選択され、メチレン基のラマンバンドとしては、2855cm−1近傍または2885cm−1近傍にピークを有するラマンバンドが選択される。そして、メチレン基のラマンバンドとメチル基のラマンバンドの強度比(メチレン基のラマンバンド強度÷メチル基のラマンバンド強度)CH2/CH3が算出される。
図18に示されるように、メチル基のラマンバンドとしては、2940〜2950cm−1のバンドが選択され、メチレン基のラマンバンドとしては、2855cm−1近傍または2885cm−1近傍にピークを有するラマンバンドが選択される。そして、メチレン基のラマンバンドとメチル基のラマンバンドの強度比(メチレン基のラマンバンド強度÷メチル基のラマンバンド強度)CH2/CH3が算出される。
図19は、メチレン基とメチル基のラマンバンドの強度比CH2/CH3と、軟骨組織中のDNA量(1mgの軟骨組織における乾燥重量)との相関関係を示している。図19に示されるように、強度比CH2/CH3は、軟骨組織中のDNA量に対して相関係数0.8以上の強い相関を有することから、メチレン基のラマンバンドは、細胞中の脂質に由来することが示唆された。
したがって、メチレン基とメチル基のラマンバンドの強度比CH2/CH3に基づいて軟骨組織B中の細胞量を推定し、細胞量に基づいて再生途上にある軟骨または変形性関節症軟骨の状態を評価することができる。
したがって、メチレン基とメチル基のラマンバンドの強度比CH2/CH3に基づいて軟骨組織B中の細胞量を推定し、細胞量に基づいて再生途上にある軟骨または変形性関節症軟骨の状態を評価することができる。
2種類のラマンバンドの第4の例として、1240cm−1近傍および1270cm−1近傍にピークを有する2つに分裂したアミドIIIバンドが用いられる。この2つに分裂したコラーゲンのアミドIIIバンドの強度比は、軟骨組織B中のコラーゲンの分子構造を反映し、コラーゲンの変性に伴って変化することが知られている。変形性関節症の軟骨においては、硝子軟骨中のII型コラーゲンの変性を示すことが知られており、2つのアミドIIIバンドの強度比に基づいて変形性関節症のような軟骨組織のII型コラーゲンの変性を伴う病変の程度を評価することができる。
本実施形態においては、演算部10が、ステップS7において選択された軟骨組織Bのラマンスペクトルを多変量解析することで、軟骨組織B中に含まれる所定の成分量を反映するラマンスペクトルの特徴量を算出するか、あるいは所定の成分そのものの定量を実行することで、軟骨組織の状態を評価してもよい。
多変量解析の第1の例において、軟骨組織Bのラマンスペクトルから、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンド(1063cm−1)を含む任意のラマンシフト範囲を選択し、選択された範囲のラマンスペクトルを多変量解析する。多変量解析としては、例えば、主成分分析(PCA)、主成分回帰分析(PCR)、部分最小二乗分析(PLS)、あるいは古典最小二乗分析(CLS)法が用いられる。
多変量解析の第1の例において、軟骨組織Bのラマンスペクトルから、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンド(1063cm−1)を含む任意のラマンシフト範囲を選択し、選択された範囲のラマンスペクトルを多変量解析する。多変量解析としては、例えば、主成分分析(PCA)、主成分回帰分析(PCR)、部分最小二乗分析(PLS)、あるいは古典最小二乗分析(CLS)法が用いられる。
ここで、様々な状態にある軟骨組織Bのラマンスペクトルを多変量解析した例として、主成分分析を実施した例について説明する。図20Aは、ステップS7において選択された様々な状態にある軟骨組織Bのラマンスペクトル群を示し、図20Bは、図20Aのラマンスペクトル群を主成分分析した結果得られた第1主成分のローディングスペクトル(第1主成分波形)を示している。第1主成分のローディングスペクトルは、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)のラマンバンドのピークに相当する1063cm−1近傍のラマンシフト値に強い正のピークを有するため硫酸化グリコサミノグリカンに由来する信号である。図21に示すように、この第1主成分のローディングスペクトルへ図20Aのラマンスペクトル群を射影した第1主成分のスコア(第1主成分スコア)の大きさと硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の量との間には正の相関が存在する。
図21は、主成分分析により得られた第1主成分スコアと軟骨組織において単位乾燥重量中に含まれる硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の量との相関関係を示している。図21から分かるように、第1主成分スコアと硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の量との間には、相関係数が0.86の強い相関が認められた。このように、軟骨組織B中の硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の量と相関するラマンスペクトル特徴量として主成分分析の第1主成分スコアを計算することで、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の量に基づいて軟骨組織Bの状態を評価することができる。
主成分分析に代えて、他の多変量解析によるラマンスペクトル分析法を用いてもよい。
例えば、軟骨組織Bの主成分である硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)およびコラーゲン(II型コラーゲン)の単離品から、成分比の異なる多数の混合サンプルを調整した上で、各混合サンプルのラマンスペクトルを測定し、混合サンプル毎の成分比とラマンスペクトルとを対応付けたデータを作成する。そして、当該データに基づき、PLS(部分最小二乗回帰)分析法またはPCR(主成分回帰)等の回帰分析法によって硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)やII型コラーゲンの検量線を作成し、該検量線のデータを記憶部9に記憶しておく。このようにすることで、未知の軟骨組織Bのラマンスペクトルを測定することで、該検量線を用いて硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)やII型コラーゲンの相対量を推定することができる。
例えば、軟骨組織Bの主成分である硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)およびコラーゲン(II型コラーゲン)の単離品から、成分比の異なる多数の混合サンプルを調整した上で、各混合サンプルのラマンスペクトルを測定し、混合サンプル毎の成分比とラマンスペクトルとを対応付けたデータを作成する。そして、当該データに基づき、PLS(部分最小二乗回帰)分析法またはPCR(主成分回帰)等の回帰分析法によって硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)やII型コラーゲンの検量線を作成し、該検量線のデータを記憶部9に記憶しておく。このようにすることで、未知の軟骨組織Bのラマンスペクトルを測定することで、該検量線を用いて硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)やII型コラーゲンの相対量を推定することができる。
多変量解析の第2の例において、軟骨組織Bのラマンスペクトルから、メチレン基のラマンバンド(2855cm−1近傍および2885cm−1近傍)を含む任意のラマンシフト範囲を選択し、選択された範囲のラマンスペクトルを多変量解析する。多変量解析としては、例えば、主成分分析が用いられる。
図22Aは、ステップS7において選択された軟骨組織Bのラマンスペクトル群を示し、図22Bは、図22Aのラマンスペクトル群を主成分分析して得られた第1主成分のローディングスペクトル(第1主成分波形)を示している。第1主成分のローディングスペクトルは、メチレン基のラマンバンドのピークに相当する2855cm−1および2885cm−1のラマンシフト値に強い正のピークを有するために、軟骨組織Bに含まれる脂質の寄与を含むスペクトルであることが示唆された。図23に示すように、この第1主成分のローディングスペクトルへ図22Aのラマンスペクトル群を射影した第1主成分スコアの大きさと軟骨組織B中のDNA量との間には正の相関が存在することが明らかにされ、このメチレン基のラマンバンドは、軟骨細胞B中の脂質に由来すると考えられる。
図23は、主成分分析により得られた第1主成分スコアと軟骨組織B中のDNA量(1ミリグラムの軟骨組織におけるDNA乾燥重量)との相関関係を示している。主成分分析の第1主成分スコアと軟骨組織B中のDNAの量との間には、相関係数0.82の強い相関が認められる。このように、軟骨組織B中の細胞の量と相関するラマンスペクトルの特徴量として主成分分析の第1主成分スコアを計算することで、細胞の量に基づいて、軟骨組織Bにおいて再生途上にある軟骨または変形性関節症の軟骨の状態を評価することができる。
本実施形態においては、演算部10が、第1および第2のラマンスペクトルに基づいて、軟骨組織Bの厚みをさらに推定してもよい。
具体的には、演算部10は、下式に定義されるように、第1および第2のラマンスペクトルの各々における軟骨組織B由来のラマンバンドおよび骨組織C由来のラマンバンドの強度比を算出する。
強度比=骨組織由来のラマンバンドの強度÷軟骨組織由来のラマンバンドの強度
ここで、骨組織C由来のラマンバンドとしては、ラマンシフト値が958cm−1近傍にピークを有するヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンドを用い、軟骨組織B由来のラマンバンドとしては、ラマンシフト値が921cm−1近傍または815cm−1近傍にピークを有するII型コラーゲンのラマンバンドを用いることができる。
具体的には、演算部10は、下式に定義されるように、第1および第2のラマンスペクトルの各々における軟骨組織B由来のラマンバンドおよび骨組織C由来のラマンバンドの強度比を算出する。
強度比=骨組織由来のラマンバンドの強度÷軟骨組織由来のラマンバンドの強度
ここで、骨組織C由来のラマンバンドとしては、ラマンシフト値が958cm−1近傍にピークを有するヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンドを用い、軟骨組織B由来のラマンバンドとしては、ラマンシフト値が921cm−1近傍または815cm−1近傍にピークを有するII型コラーゲンのラマンバンドを用いることができる。
図24は、様々な厚みの軟骨組織についてラマンスペクトルを取得し、第1のラマンスペクトルから算出された強度比と第2のラマンスペクトルから算出された強度比とをプロットした図である。演算部10はさらに、第1のラマンスペクトルの強度比と第2のラマンスペクトルの強度比を示す2つのプロットを通る直線のY切片の値Yおよび直線の傾きAを算出する。
ここで、図11Aに示すように、軟骨組織Bの厚みが、観察範囲F1と観察範囲F2を含む程度に十分厚い場合(図24の丸いプロット参照。)、Yおよび傾きAは共に小さくなる。また、図12Aに示すように、軟骨組織Bの厚みが、観察範囲F1と観察範囲F2をほとんど含まない程度に十分薄い場合(図24の三角のプロット参照。)、Yは大きくなり、傾きAは小さくなる。また、軟骨組織Bの厚みが上記の中間的な厚みである場合(図24の四角のプロット参照。)、Yは小さくなり、傾きAは大きくなる。
このように、観察範囲F1と観察範囲F2に関する軟骨組織Bの相対的な厚みに応じて(Y,A)の値が異なる。したがって、軟骨組織Bの実際の厚みと(Y,A)の値との関係を計測したデータベースを記憶部9に記憶した上で、演算部10が記憶部9から当該データベースを読み出し、データベースに基づいて、未知の関節骨の第1および第2のラマンスペクトルから算出された2つのラマンバンドの強度比から(Y,A)を求め、求められた(Y,A)の値から軟骨組織Bの厚みを推定することができる。
軟骨組織Bの厚み推定は、次のようにして実施することができる。
様々な軟骨について第1および第2のラマンスペクトルの強度比を求め、さらに図24に示すプロットを実施することによって(Y,A)を求める。また同時に軟骨組織の厚みZを計測し、図25に示すような、Y切片の値Yと、傾きAと、軟骨組織の厚みZを座標軸にとった3次元座標系における座標点(Y,A,Z)をプロットする。例えば、組織厚みが異なる3種類の軟骨組織について、(Y1,A1,Z1)、(Y2,A2,Z2)、および(Y3,A3,Z3)の3点を3次元空間にプロットすることができる。このような座標点を多数の軟骨組織について教師データとして取得した上で、任意の(Y,A)に対する軟骨組織厚みZを推定できるように、空間補間計算により厚み推定面(平面または曲面)を算出しておけばよい。このような厚み推定面を算出しておけば、未知の関節骨のラマンスペクトルを測定し、第1および第2のラマンスペクトルから(Y,A)を計算しさえすれば、観察点における軟骨厚みを推定することが可能である。このような空間補間による推定法としては、クリギング補間などの空間統計法を使用すればよい。
様々な軟骨について第1および第2のラマンスペクトルの強度比を求め、さらに図24に示すプロットを実施することによって(Y,A)を求める。また同時に軟骨組織の厚みZを計測し、図25に示すような、Y切片の値Yと、傾きAと、軟骨組織の厚みZを座標軸にとった3次元座標系における座標点(Y,A,Z)をプロットする。例えば、組織厚みが異なる3種類の軟骨組織について、(Y1,A1,Z1)、(Y2,A2,Z2)、および(Y3,A3,Z3)の3点を3次元空間にプロットすることができる。このような座標点を多数の軟骨組織について教師データとして取得した上で、任意の(Y,A)に対する軟骨組織厚みZを推定できるように、空間補間計算により厚み推定面(平面または曲面)を算出しておけばよい。このような厚み推定面を算出しておけば、未知の関節骨のラマンスペクトルを測定し、第1および第2のラマンスペクトルから(Y,A)を計算しさえすれば、観察点における軟骨厚みを推定することが可能である。このような空間補間による推定法としては、クリギング補間などの空間統計法を使用すればよい。
再生途上にある再生軟骨の成熟度や変形性関節症の進行度によって軟骨組織Bの厚みは変化し得るので、軟骨組織Bの厚みを推定することにより、再生軟骨や変形性関節症の軟骨組織の状態について知ることができる。上記方法で推定された軟骨組織Bの厚みが表示部11に表示されるか、軟骨組織Bの厚みと相関するように段階付けされている、軟骨組織Bの状態を表す分類指標が表示部11に表示されてもよい。
多数の関節骨Aから(Y,A)のデータ群を得て、得られたデータ群に基づいて主成分回帰法(PCR)や部分最小二乗法(PLS)等の回帰分析法により、軟骨組織Bの厚みとY切片および傾きAとを相関付ける検量線を予め作成しておき、該検量線を用いて未知の関節骨のラマンスペクルデータから軟骨組織Bの厚みを推定してもよい。
あるいは、ラマンスペクトルの多変量解析によって軟骨組織Bの厚みを推定してもよい。具体的には、軟骨組織Bの厚みが異なる多数の関節骨Aサンプルについて、ラマンシフト値が958cm−1近傍のヒドロキシアパタイトのラマンバンドと、921cm−1近傍のII型コラーゲンのラマンバンドとを含む範囲において、第1および第2のラマンスペクトルを取得し、ステップS4,S5と同様にして第1および第2のラマンスペクトルの各々からコラーゲンのラマンバンドとヒドロキシアパタイト(HAP)のラマンバンドの強度比を算出する。さらに、第1のラマンスペクトルにおけるラマンバンド強度比と第2のラマンスペクトルにおけるラマンバンド強度比との和を算出し、該ラマンバンド強度比の和と、実際の軟骨組織の厚みとを対応付けたデータを作成する。そして、当該データに基づき、PLS分析法またはPCR分析法等の回帰分析法によって軟骨組織の厚みの検量線を作成し、検量線を記憶部9に記憶しておく。
このようにすることで、未知の関節骨の第1および第2のラマンスペクトルから軟骨組織の厚みを推定することができる。
このようにすることで、未知の関節骨の第1および第2のラマンスペクトルから軟骨組織の厚みを推定することができる。
上述した軟骨組織の分析装置100の制御部8および演算部10は、例えば、CPU(中央演算処理装置)と、上述した制御部8および演算部10の処理をCPUに実行させるための制御プログラムおよび演算プログラムを格納するHDDのような補助記憶装置と、CPUの作業領域として機能するRAMまたはROMのような主記憶装置とを備えるコンピュータによって実現される。記憶部9は、例えば、主記憶装置によって実現される。
1 レーザ光源
3 分光器(検出部)
5 光検出器(検出部)
6 照明ファイバ
71 第1の集光ファイバ
72 第2の集光ファイバ
10 演算部(強度比演算部、評価部)
100 軟骨組織の分析装置
A 関節骨
B 軟骨組織
C 骨組織
3 分光器(検出部)
5 光検出器(検出部)
6 照明ファイバ
71 第1の集光ファイバ
72 第2の集光ファイバ
10 演算部(強度比演算部、評価部)
100 軟骨組織の分析装置
A 関節骨
B 軟骨組織
C 骨組織
Claims (13)
- レーザ光を出力するレーザ光源と、
先端に射出面を有し、前記レーザ光源から入射されたレーザ光を前記射出面から軟骨組織を含む生体組織に向けて射出する照明ファイバと、
先端に受光面を各々有し、前記生体組織からの散乱光を前記受光面においてそれぞれ受光する第1の集光ファイバおよび第2の集光ファイバと、
前記第1の集光ファイバによって受光された前記散乱光から第1のラマンスペクトルを検出するとともに、前記第2の集光ファイバによって受光された前記散乱光から第2のラマンスペクトルを検出する検出部と、
該検出部によって検出された前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの各々から、前記軟骨組織に由来するラマンバンドと骨組織に由来するラマンバンドとの強度比を演算する強度比演算部と、
該強度比演算部によって算出された前記強度比が所定の範囲内であるラマンスペクトルを前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの中から選択し、選択されたラマンスペクトルを解析して前記軟骨組織の状態を評価する評価部とを備え、
前記第1の集光ファイバの前記受光面の前記射出面からの距離と、前記第2の集光ファイバの前記受光面の前記射出面からの距離とが、互いに異なる軟骨組織の分析装置。 - 前記強度比演算部が、前記強度比の演算に、前記軟骨組織に由来するラマンバンドとしてII型コラーゲンのラマンバンド強度を用い、前記骨組織に由来するラマンバンドとしてヒドロキシアパタイトのラマンバンド強度を用いる請求項1に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記強度比演算部が、前記強度比の演算に、前記軟骨組織に由来するラマンバンドとしてグリコサミノグリカンのラマンバンド強度を用い、前記骨組織に由来するラマンバンドとしてヒドロキシアパタイトのラマンバンド強度を用いる請求項1に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記評価部が、前記選択されたラマンスペクトルにおける前記軟骨組織に由来する、ラマンシフトが互いに異なる2種類のラマンバンドの強度比を算出し、算出された強度比に基づいて前記軟骨組織の状態を評価する請求項1から請求項3のいずれかに記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンのラマンバンドとグリコサミノグリカンのラマンバンドである請求項4に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記2種類のラマンバンドが、タンパク質に含まれるアミノ酸のラマンバンドとグリコサミノグリカンのラマンバンドである請求項4に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記2種類のラマンバンドが、タンパク質に含まれるアミノ酸のラマンバンドとコラーゲンのラマンバンドである請求項4に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記2種類のラマンバンドが、メチレン基のラマンバンドとメチル基のラマンバンドである請求項4に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記2種類のラマンバンドが、コラーゲンのアミドIIIバンドである請求項4に記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記評価部が、前記選択されたラマンスペクトルを多変量解析することによって前記軟骨組織に含まれるグリコサミノグリカンの量を推定するか、グリコサミノグリカン量と相関するラマンスペクトルの特徴量を算出し、得られた前記グリコサミノグリカンの量または前記ラマンスペクトルの特徴量に基づいて前記軟骨組織の状態を評価する請求項1から請求項9のいずれかに記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記評価部が、前記選択されたラマンスペクトルを多変量解析することによって前記軟骨組織に含まれるコラーゲンの量を推定するか、コラーゲンの量と相関するラマンスペクトルの特徴量を算出し、得られた前記コラーゲンの量または前記ラマンスペクトルの特徴量に基づいて前記軟骨組織の状態を評価する請求項1から請求項10のいずれかに記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記評価部が、前記選択されたラマンスペクトルを多変量解析することによって前記軟骨組織に含まれる細胞の量を推定するか、細胞の量と相関するラマンスペクトルの特徴量を算出し、得られた前記細胞の量または前記ラマンスペクトルの特徴量に基づいて前記軟骨組織の状態を評価する請求項1から請求項11のいずれかに記載の軟骨組織の分析装置。
- 前記評価部が、前記第1のラマンスペクトルおよび前記第2のラマンスペクトルの各々から、前記軟骨組織に由来するラマンバンドと前記骨組織に由来するラマンバンドとの強度比を演算し、算出された2つの強度比に基づいて前記軟骨組織の厚みを推定する請求項1から請求項12のいずれかに記載の軟骨組織の分析装置。
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