JPWO2018043725A1 - 有機半導体材料及び有機化合物並びに有機半導体装置 - Google Patents

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Abstract

本発明の有機半導体材料は、式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットAと、該ユニットAと単結合で連結された脂肪族系鎖ユニットBと、該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機半導体材料であって;前記有機半導体材料が液晶性を示す。深いLUMO準位を有し、好適にはn型有機トラジスタ材料として使用できる、液晶性を示す有機半導体材料が提供される。本発明はまた新規化合物を提供する。

Description

本発明は、液晶性を示す有機半導体材料及び有機化合物並びに有機半導体装置に関する。より詳しくは、本発明は液晶性を示し、且つ液晶相および結晶相の少なくとも一方において有機半導体(例えば、n型有機半導体)として好適に使用可能な有機半導体材料及び有機化合物並びにその有機半導体材料及び有機化合物を用いた有機半導体装置に関する。
一般的に、「棒状」の分子構造を有し、且つ、拡張された芳香族π−共役部位をもつ液晶性を示す物質は、比較的に柔軟な長鎖の炭化水素鎖からなる特徴的な構造をしており、液晶性有機半導体として有用であるばかりでなく、可溶性の有機トランジスタ材料と類似した構造を有している。
実際に、多くの有機トランジスタ材料(例えば、クオータチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)、アントラセン誘導体)は、ある温度領域でスメクチック液晶相を示す傾向がある。加えて、最近の報告では、これらのスメクチック液晶相などの液晶相は、ウェットプロセスによる均一製膜ができ、さらに高移動度の材料であり、また高耐熱性を実現できることが報告され、スメクチック液晶相などの液晶相は有機トランジスタ材料として好適な材料として注目されている(特許文献1,2)。
有機トランジスタにおいては、ペンタセンの結晶材料を用いた有機トランジスタ(非特許文献1)が報告されて以来、オリゴチオフェン(非特許文献2)、TIPS-ペンタセン(非特許文献13)およびベンゾチエノベンゾチオフェン[5,10]誘導体などが合成され、トランジスタが作製されている。
しかし、n型有機半導体材料は低いLUMO準位(深いLUMO準位)を持つ材料が必要であるため、大気下でn型動作できる(電子輸送可能な)有機半導体材料はきわめてかぎられ、また、n型のトランジスタ動作できる材料の報告も限られている(非特許文献4〜非特許文献6)。このため、CMOSの作製に必要なn型有機トラジスタ材料に関しては、依然として熱心に探索が行われている。
深いLUMO準位を有する半導体材料としてフラーレンなどの材料が報告されているが、フラーレンは溶解性が乏しいのでウェットプロセスによる均一製膜が困難である。
WO2012/121393号パンフレット WO2008/047896号パンフレット
Y.Lin,D.J.Gundlach,S.F.Nelson,T.N.Jackson.IEEE Trans.Electr.Dev.1997,44,1325. A.J.J.M.van Breemen,P.T.Herwig,C.H.T.Chlon,J.Sweelssen,H.F.M.Schoo, S.Setayesh, W.M.Hardeman,C.A.Martin,D.M.de Leeuw,J.J.P.Valeton,C.W.M.Bastiaansen,D.J.Broer,A.R.Popa-Merticaru,and S.C.J.Meskers,J.Am.Chem.Soc.2006,128,2336. H.T.Yi,M.M.Payne,J.E.Anthony,V.Podzorov.Nat.Commun.2012,3,1259. S.Tatemichi,M.Ichikawa,T.Koyama,Y.Taniguchi.Appl.Phys.Lett.2006,89,112108. C.Wang,J.Zhang,G.Long,N.Aratani,H.Yamada,Y.Zhao,Q.Zhang.Angew.Chem.Int.Ed.2015,54,6292. G.Gruntz,H.Lee,L.Hirsch,F.Castet,T.Toupance,A.L.Briseno,Y.Nicolas.Adv.Electron.Mater.2015,1,1500072.
本発明の主たる目的は、上記した従来技術の欠点を解消することができる、深いLUMO準位を有し、好適にはn型有機半導体として使用できる、液晶性を示す有機半導体材料を提供することにある。本発明はまたその有機半導体材料を用いた有機半導体装置及び新規化合物を提供することも目的としている。
本発明者は鋭意研究の結果、特定のイソキノリノ・イソキノリン(以下、「IQIQ」と略称することがある)骨格構造を有する新規な化合物は深いLUMO準位を持つ「有機半導体材料」として用いることができ、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
本発明の有機半導体材料は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、IQIQ(イソキノリノ・イソキノリン)タイプの骨格構造を有するユニットAと;該ユニットAと単結合で連結された、炭素主鎖を構成する炭素原子の1以上が酸素原子で置換されていても良い、脂肪族系鎖ユニットBと;該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機半導体材料であって;前記有機半導体材料が液晶性を示すことを特徴とするものである。
本発明は、例えば、以下の態様を包含することができる。
[1]下記式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットAと、該ユニットAと単結合で連結された脂肪族系鎖ユニットBと、該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機半導体材料であって;前記有機半導体材料が液晶性を示すことを特徴とする有機半導体材料。
[2]前記ユニットAは下記式(2)
(式中、aはそれぞれ独立して水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和および/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良い。)
で表される構造を有し、ユニットB及びユニットCの夫々が、2つのaにそれぞれ単結合で結合されており、当該aが単結合であるときはユニットB及び/又はユニットCはIQIQに直接に単結合で結合される、上記[1]に記載の有機半導体材料。
[3]前記式(2)のaが、それぞれ独立して、下記構造式
(式中、Rは水素原子又は脂肪族系鎖基である。)
のいずれかで表される構造を有し、ユニットB及びユニットCの夫々は、上記構造の置換可能な部位又は原子と置換する形でaに結合し、上記式中のRが水素原子である場合にはRに置換して、又はRが脂肪族系鎖基である場合にはRの脂肪族系鎖基が有する水素原子に置換して、前記ユニットAに結合されることができる、上記[2]に記載の有機半導体材料。
[4]ユニットBが炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[5]前記ユニットCの脂肪族系鎖は炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基であり、ユニットCの環状構造を含む基は、芳香族基、複素環基又は脂肪族環基を含む基である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[6]LUMOの準位が−3eVよりも深い、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[7]室温(25℃)において、トルエンへの溶解度が0.1wt%以上である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[8]電子および/又は正孔の移動度が10-4cm2/Vsよりも大きい、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[9]n型有機半導体の性質を示す、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[10]液晶状態および結晶状態の少なくとも一方においてn型有機半導体の性質を示す、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[11]発現する液晶相として、スメクチック(Sm)液晶相を示す、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[12] 下記式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットAと、該ユニットAと単結合で連結された脂肪族系鎖ユニットBと、該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機化合物。
[13]前記ユニットAは下記式(2)
(式中、aはそれぞれ独立して水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和および/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良い。)
で表される構造を有し、ユニットB及びユニットCの夫々が、2つのaにそれぞれ単結合で結合されており、当該aが単結合であるときはユニットB及び/又はユニットCはIQIQ骨格に直接に単結合で結合される、上記[12]に記載の有機化合物。
[14]前記式(2)のaが、それぞれ独立して、下記構造式
(式中、Rは水素原子又は脂肪族系鎖基である。)
のいずれかで表される構造を有し、ユニットB及びユニットCの夫々は、上記式中のRが水素原子である場合にはRに置換して、又はRが脂肪族系鎖基である場合にはRの脂肪族系鎖基の水素原子に置換して、前記ユニットAに結合されることができる、上記[13]に記載の有機化合物。
[15]ユニットBが、炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基である、上記[12]〜[14]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[16]前記ユニットCの脂肪族系鎖は炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基であり、ユニットCの環状構造を含む基は、芳香族基、複素環基又は脂肪族環基を含む基である、上記[12]〜[15]のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
[17] 下記式(3)で表される、上記[12]に記載の有機化合物。
(式中、a、a、a及びaは、それぞれ独立して、水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和及び/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良いが、a、a、a及びaの少なくとも1つは、単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり;R、R,R及びRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、脂肪族系鎖基であり、R、R,R及びRのいずれかが脂肪族系鎖基でないとき、その残りのR、R,R及びRは水素原子であることができる。)
[18]上記式(3)中、R及びRの少なくとも一方が脂肪族系鎖基である、上記[17]に記載の有機化合物。
[19]前記脂肪族系鎖ユニットB又は前記脂肪族系鎖基が、炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基である、上記[17]〜[18]のいずれか1項に記載の有機化合物。
[20]2,8−ジデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(10−IQIQ−10)、2.8−ジドデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(12−IQIQ−12)又は2.8−ジテトラデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(14−IQIQ−14)である、上記[12]〜[19]のいずれか1項に記載の有機化合物。
[21]上記[1]〜11]のいずれか1項に記載の有機半導体材料又は上記[12]〜[20]のいずれか1項に記載の有機化合物を用いて形成された層を半導体層として有し、該半導体層に電気的に結合された正電極及び負電極を具備することを特徴とする半導体装置。
上述したように本発明によれば、好適な特性(例えば、液晶性、溶媒溶解性、深いLUMO準位、優れた半導体特性、特にn型有機半導体特性)を示す有機半導体材料を得ることができる。またその有機半導体材料を用いた半導体装置も提供される。さらに本発明によれば、IQIQに基づく骨格構造を有する新規な化合物が提供される。
10−IQIQ−10の示唆熱分析による測定DSCカーブ、及び10−IQIQ−10の偏光顕微鏡により観察した組織の写真である。 10−IQIQ−10の140℃(固体結晶)におけるX線回折チャートである。 H12−IQIQ−12の示唆熱分析による測定DSCカーブ、及び12−IQIQ−12の150℃で偏光顕微鏡により観察した組織の写真である。 H12−IQIQ−12のX線回折パターンであるが、(a)は150℃のSm相、(b)は130℃での結晶(固体)のX線回折パターンである。 H12−IQIQ−12の150℃のSm相のX線回折パターンと、液晶層における液晶分子配列の模式図である。 12−Chrysene−12および12−IQIQ−12のクロロフォルム溶液のUVスペクトルである。 12−Chrysene−12および12−IQIQ−12の25℃において、光電子分光法により測定した光電子収量スペクトルである。 12−IQIQ−12の146℃において、TOF法により測定された両対数プロットした過渡光電流波形であり、(a)正電荷、(b)負電荷の光電流による結果である。(a)(b)の光電流波形図中の挿入図はそれぞれのリニアプロットを示す。 12−IQIQ−12の電界強度:6.6×104V/cmにおける正電荷、および、負電荷の移動度の温度依存性である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(有機半導体材料)
本発明の有機半導体材料は、イソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)タイプの骨格構造を有するユニットAと;該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖ユニットB(炭素主鎖を構成する炭素原子の1以上が「O(酸素原子)」で置換されていても良い)と;該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機化合物を含む有機半導体材料であって;前記有機半導体材料が液晶性を示すことを特徴とするものである。「有機半導体材料が液晶性を示す」とは、有機半導体材料がいずれかの温度で液晶性を示すことをいう。本発明の有機半導体材料は電子輸送特性を示すものであり、特に液晶相又は(固体)結晶相で優れた半導体として利用可能なものである。
本発明の有機半導体材料を構成する有機化合物は、ユニットAの両端部にユニットB及びユニットCがそれぞれ単結合で結合した化合物であることが好ましい。すなわち、本発明の有機半導体材料を構成する有機化合物は<ユニットC>−<ユニットA>−<ユニットB>の構成を有することができる。
(ユニットA)
本発明の有機半導体材料を構成する有機化合物の「ユニットA」について述べる。
ユニットAは、下記式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットである。イソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造は後記のような基を付加して有することができる。ユニットAはユニットB及びユニットCが単結合で結合している点で式(1)のIQIQは修正された構造を有する。本発明の有機半導体材料は、拡張された芳香族πー共役系としてイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むことで、より深いLUMO準位、特に3eVより深いLUMO準位の半導体特性を示し、n型有機半導体として好適に利用できるという効果がある。
「ユニットA」は、式(1)で示される「IQIQ」単独で構成されるものであってもよく、また、下記式(2)
(式中、aはそれぞれ独立して水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良く;少なくとも1つのaは該環状基である。)
で示さるように、少なくとも1つの「環状基a」(少なくとも1つのaが環状基であるので、a全部を又は環状基であるaを「環状基a」ということがある)が該IQIQに単結合で連結されているものあっても良い。なお、この環状基aを含むユニットAの場合、本発明の有機半導体材料ではユニットB及びユニットCの夫々が上記式中の2つのaにそれぞれ単結合で結合されるので、ユニットB及び/又はユニットCが結合される当該aが飽和及び/又は不飽和の環状基であるときは、ユニットB及び/又はユニットCはその環状基に単結合で結合されることになり、また、ユニットB及び/又はユニットCが結合される当該a自体が単結合であるときは、そのユニットB及び/又はユニットCはユニットAのIQIQ骨格に直接に単結合で結合されることになる。ユニットAにこのような環状基aを有する態様においては、環状基aの性質によって、液晶性を好適に発現させるのに有効である。
また、「ユニットA」は、IQIQ骨格に、環状基aに代えて、あるいは環状基aに加えて、特に下記式(4)のR5〜R8の位置で、少なくとも1個の他の置換基、特に脂肪族基が単結合で連結されているものあっても良い。この置換基、特に脂肪族基は、後述のユニットB及びユニットCを構成する置換基、脂肪族基と同様であることができる。ユニットAにこのような置換基を有する態様においては、置換基の性質に応じて、液晶性を好適に発現させるのに有効である。
(好適な環状基a)
上記式(2)において、環状基aの少なくとも1つは、飽和および/又は不飽和の環状基である。該環状基aを構成する環状構造は、5員環および/又は6員環および/又はそれらの複合構造であることが好ましい。該環状基aは、炭化水素基であるか、1以上のヘテロ原子(例えば、O、Nおよび/又はS)を含んでいても良い。
本発明において、「好適な環状基a」は、例えば、以下の構造を含むことができる。
上記式中、Rは水素原子又は脂肪族系鎖基である。水素原子であることは好ましい。また脂肪族系鎖基はアルキル基のほか、主鎖に酸素原子を含むものでもよく、Rの炭素原子数は20以下が好ましい。ユニットB及びユニットCの夫々は、上記式中のRが水素原子である場合にはそのRに置換して、又はRが脂肪族系鎖基である場合にはそのRの脂肪族系鎖基の水素原子に置換する形で、ユニットAに結合されてもよい。
本発明の有機半導体材料では、ユニットAに対してユニットB及びユニットCが単結合で結合される。ユニットAにユニットB及びユニットCが「単結合で結合」されると、ユニットB及びユニットCはユニットAの上記IQIQを含む骨格構造を構成する炭素原子に単結合される。そのため、上記式(1)〜(3)に示される骨格構造における該炭素原子に結合していた水素原子に置換する形で、ユニットB及びユニットCと該炭素原子との間で単結合(直接結合)が形成される。すなわち、式(1)〜(3)で示される構造はユニットB及びユニットCが置換結合される前の構造であることに留意されるべきである。ユニットB及びユニットCが単結合で結合される骨格構造を構成する炭素原子は、式(1)で示されるIQIQ自体を構成する炭素原子であるほか、式(2)及び式(3)で示されるIQIQに結合した環状基aあるいは置換基R5〜R8を構成する炭素原子であってもよい。
本発明において有機化合物は<ユニットC>−<ユニットA>−<ユニットB>の構成、すなわち、ユニットAの一方の端部にユニットB、他方の端部にユニットCが結合した鎖状の分子構造を有していることが好ましい。ユニットAの両端部とは、IQIQの2,3,8,9位(式(2)のピリジン環にaが結合している位置)である。ユニットAの一方の端部(たとえばIQIQの2,3位の少なくとも1つ)にユニットBが結合し、他方の端部(たとえばIQIQの8,9位の少なくとも1つ)にユニットCが結合していればよく、残りの端部(式(2)のaの位置、すなわち、IQIQの2,3,8,9位のうちユニットB、Cが結合していない位置があれば)にはユニットB及び/又はユニットCが結合し、あるいは結合しないことができる。さらに、ユニットB及びユニットCは、下記式(5)で示すIQIQの2,8位の炭素原子(aが結合している位置)に直接に又はその2,8位の炭素原子に結合している環状基aの炭素原子に結合していることが好ましい。
(ユニットB)
本発明の有機半導体材料において、「ユニットB」はユニットAと単結合で連結された脂肪族系鎖基である。本発明の有機半導体材料においてユニットBは必須であり、剛直なユニットAに比較的柔軟な長鎖であるユニットBが結合することで、本材料の液晶性を好適に発現させることができ、また、溶解度の向上に有効である。
該脂肪族系鎖基は、飽和および不飽和の脂肪族系鎖基のいずれでもよく、たとえば、主鎖が炭素原子からなる飽和又は不飽和の基(たとえばアルキル基)であるか、又はその炭素原子からなる主鎖に「O(酸素原子)」を含む飽和又は不飽和の脂肪族系鎖基であることが好ましい。ユニットBの脂肪族系鎖を構成する炭素原子数は3〜20であることが好ましく、さらには10〜14、特に12であることが好ましい。脂肪族系鎖基の原子数が2以下では分子に柔軟性を付与することが困難であり、20を超えてもよいが、20を超えると入手が困難となる可能性がある。
本発明において好適な一態様においては、「ユニットB」を構成する脂肪族系鎖基は、C3〜C20のアルキル基である。
本発明において好適な他の態様においては、「ユニットB」の脂肪族系鎖基において1以上「O(酸素)原子」が、炭素主鎖中に存在してもよい。この態様における好適な「ユニットB」は、その部分構造として、下記式で示される1以上の構造を有するものである。この部分構造を有する脂肪族系鎖基の末端は−CH3である。
(−X1−(CH2r−X2−)、
(式中、X1およびX2=OまたはCH2であり、r=1〜19の整数である。ただし、X1=X2=O(酸素原子)の態様を除く)。主鎖の炭素原子の数は3〜20であることが好ましい。
更に詳細には、このような好適な「ユニットB」の構造を例示すれば、以下の通りである。以下の式中、X=OまたはCH2であり、n+m=3〜19、p+n+m=3〜19、またはp+・・・・・+n+m=3〜19であり、mおよびnなどは0を含んでもよい。主鎖の炭素原子の数は3〜20であることが好ましい。
−(CH2n−X−(CH2m−CH3
−(CH2p−X−(CH2n−X−(CH2m−CH3
(中略)
−(CH2p−X−・・・・・・−X−(CH2n−X−(CH2m−CH3
本発明において、「ユニットB」の構造中に「O原子」が入った場合、本発明の有機半導体材料と、有機溶媒との相性(溶解性)が、より良好となるという利点がある。有機溶媒(純粋な炭化水素溶媒を除く)は、一般的には、全くの無極性ではなく、ある程度の極性を有することが多いからである。
上記のごとく、ユニットBは、ユニットAの端部、すなわち、IQIQの2,3,8,9位(式(2)のピリジン環にaが結合している位置)のいずれかに結合することが好ましい。ユニットBがユニットAの端部に結合すると、ユニットAは、上記式(1)〜(3)で示した構造あるいは環状基aの例示として示した構造において、それらの構造の端部に存在する炭素原子に結合している水素原子に対してユニットBが置換した構造になることができる。
ユニットBを構成する脂肪族系鎖基は、ユニットAに含まれることがある脂肪族系鎖基と同様の基であることができる。したがって、ユニットAが脂肪族系鎖基を含み、その脂肪族系鎖基がユニットBの要件を満たす場合、ユニットBの脂肪族系鎖基は、ユニットAが有する脂肪族系鎖基とは別に追加的に存在してもよく、あるいはユニットAが有する脂肪族系鎖基自体がユニットBの脂肪族系鎖基であってもよいことになるが、しかし、ユニットAが有する脂肪族系鎖基自体がユニットBの脂肪族系鎖基を構成する場合には、ユニットBの脂肪族系鎖基を構成するその脂肪族系鎖基はユニットAを構成する部分とは見做さない。
ユニットAがIQIQ骨格に付加した環状基aを有し、環状基aに脂肪族系鎖基Rを有し、その環状基aの脂肪族系鎖基にユニットBが連結する場合、環状基aの脂肪族系鎖基RとユニットBの脂肪族系鎖基とは、それらの主鎖の炭素原子の数が3〜20であることが好ましい。ユニットAとユニットBとが結合して形成される脂肪族系鎖基の合計長さが炭素原子数3〜20であることが好ましい理由は、ユニットBの脂肪族系鎖基の長さについて述べた上記の理由と同じである。
(ユニットC)
本発明の有機半導体材料において、「ユニットC」は、ユニットAと単結合で連結された、水素原子、脂肪族系鎖、または環状構造を含む基である。本発明の有機半導体材料においてユニットCは、ユニットCの性質に応じて本有機半導体材料の液晶性を好適に発現させることができる。
ユニットCの定義において、「環状構造を含む基」とは、芳香族基(例えば、フェニル基)、複素環基(例えば、チオフェン基)、または脂肪族基(例えば、シクロヘキシル基)を含むことができる。このユニットCにおける「環状構造を含む基」は、ユニットAにおける上記環状基aと同様であることができる。このユニットCにおける「脂肪族系鎖を含む基」における「脂肪族系鎖」の意義は、上記「ユニットB」において脂肪族系鎖基について記載したものと同様である。
環状構造を含む基における芳香族基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントレニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、ビフェニル、ターフェニル、シクロヘキシルファニル、ナフチルフェニルなどがある。
環状構造を含む基における複素環基としては、チエニル、ベンゾチエニル、ナフトチエニル、フルイル、オキサジアゾリル、チアゾイル、チアジアゾイル、ベンゾフラニル、ピローリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミデュニル(Pyrimidunyl)、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノクサリニル、キナゾリニル、チノリニル、カルバゾイル、アクリジニル、フェナントリジニル、フェナジニル、フェタリジニル(Pteridinyl)などがある。
環状構造を含む基における脂肪族基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニルシクロヘキシルなどの他、その構造の一部にO, S, Nなどのヘテロ原子や不飽和結合を含むものなどがある。
上記のごとく、ユニットCは、ユニットAの端部、特にIQIQの2,3,8,9位(式(2)のピリジン環にaが結合している位置)に結合することが好ましい。ユニットCがユニットAに単結合で結合すると、ユニットCは式(1)〜(3)で示したユニットAを構成する炭素原子に結合している水素原子と置換してユニットAに結合した構造になる。ユニットCは、ユニットAのユニットBが結合している端部と反対側の端部に結合していることが好ましい。
ユニットCを構成する環状構造を含む基又は脂肪族系鎖を含む基は、ユニットAに含まれることがある環状基又は脂肪族系鎖基と同様の基であることができる。したがって、ユニットAが環状基又は脂肪族系鎖基を含み、その環状基又は脂肪族系鎖基がユニットCの要件を満たす場合、ユニットCの環状基又は脂肪族系鎖基は、ユニットAが有する環状基又は脂肪族系鎖基とは別に追加的に存在してもよく、あるいはユニットAが有する環状基又は脂肪族系鎖基自体がユニットCの環状基又は脂肪族系鎖基であってもよいことになるが、しかし、ユニットAが有する環状基又は脂肪族系鎖基自体がユニットCの環状基又は脂肪族系鎖基を構成する場合には、ユニットCの環状基又は脂肪族系鎖基を構成するその環状基又は脂肪族系鎖基はユニットAを構成する部分とは見做さない。
ユニットAがIQIQ骨格に付加した環状基aを有し、環状基aに脂肪族系鎖基Rを有し、その環状基aの脂肪族系鎖基にユニットCが連結する場合、環状基aの脂肪族系鎖基RとユニットCの脂肪族系鎖基とは、それらの主鎖の炭素原子の数が3〜20であることが好ましい。ユニットAとユニットCとが結合して形成される脂肪族系鎖基の合計長さが炭素原子数3〜20であることが好ましい理由は、ユニットBの脂肪族系鎖基の長さについて述べた上記の理由と同じである。
(好適な有機半導体材料の具体的な構造例)
本発明の有機半導体材料を構成を有する有機化合物、すなわち<ユニットC>−<ユニットA>−<ユニットB>の構成を有する有機化合物の構造の好ましい一例は、以下の構造式(3)に示す通りである。
式中、a、a、a及びaは、それぞれ独立して、水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和及び/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良いが、a、a、a及びaの少なくとも1つは、単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり;R、R,R及びRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、脂肪族系鎖系鎖基であり、R、R,R及びRのいずれかが脂肪族系鎖基でないとき、その残りのR、R,R及びRは水素原子であることができる。
上記式中、R1=<ユニットC>、R3=<ユニットB>であるか、または逆にR1=<ユニットB>、R3=<ユニットC>が可能である。このような形にユニットA,B,Cが結合した有機化合物は、上記したように、好ましい。なお、R1とR3は同一(すなわち、対称的)であってもよく、また異なって(すなわち、非対称的)であっても良い。他方、R2とR4は、水素原子、脂肪族系鎖、または環状構造を含む基のいずれであっても良い。例えば、好ましくR2=R4=Hであっても良い。R2とR4も同一(すなわち、対称的)であってもよく、また異なって(すなわち、非対称的)であっても良い。また、上記ではユニットAがIQIQ単体である例を示したが、上記したように、構造式(5)において、R1〜R4、特にR1とR3のいずれかの位置に、少なくとも1つの環状基aが結合したものであってもよい。
本発明の有機半導体材料の構成を有する有機化合物、すなわち<ユニットC>−<ユニットA>−<ユニットB>の構成を有する有機化合物の好適な構造を、以下に例示する。
H−<ユニットA>−アルキル基
アルキル基−<ユニットA>−アルキル基
フェニル基−<ユニットA>−アルキル基
チオフェン基−<ユニットA>−アルキル基
上記において、ユニットAは、IQIQ骨格単独であるか、または、たとえばIQIQ骨格−(環状基、たとえばフェニレン基)のように複合構造であってもよい。このとき、たとえば、チオフェン基−IQIQ骨格−フェニレン基−アルキル基の構造を有する。
このような好ましい構造を有する有機化合物の例は、下記構造式(3’)で表すことができる。
(式中、a及びaは、それぞれ独立して、水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和及び/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良く;R及びRの1つは脂肪族系鎖系鎖基(たとえばアルキル基)であり、R及びRの残りは水素原子、脂肪族系鎖系鎖基(たとえばアルキル基)、環状構造を含む基(たとえばフェニル基)又は1以上のヘテロ原子を含む環状炭化水素基(たとえばチオフェン基)であることができる。)
(液晶性、結晶性)
本発明において、「有機半導体材料が液晶性を示す」とは、該有機半導体材料が半導体性を示す「いずれかの温度領域」において、液晶性を示すことを言う。液晶性を示すことは、様々な方法で確認できるが、たとえば偏光顕微鏡観察、さらには偏光顕微鏡観察と示唆熱分析、X線回折との組合せによって確認できる。有機材料が液晶性を示すことが可能な材料であることで、凝集状態において分子配向を制御し、優れた半導体特性を実現することが可能にされる。液晶性の優れた特性として溶解性があるが、溶解性は溶媒に溶解することによって簡単に確認できる。
本発明の有機半導体材料は液晶性を示すものであるが、液晶又は固体結晶の状態であることが好ましい。スメクチック液晶、SmE,SmI,SmH,SmK ,などのより高次スメクチック液晶のであることがより好ましい。本発明の有機半導体材料は、液晶又は固体結晶のいずれかの状態であることで、液晶性を示さない場合と比べて、分子配向の制御が可能で優れた半導体特性が発現される。液晶であることはたとえば偏光顕微鏡組織(テクスチャー)観察、さらには偏光顕微鏡と示唆熱分析、X線回折分析との組合せによって確認でき、固体結晶相であることはたとえばX線回折分析で確認することができる。詳細は後出の文献が参照される。
(半導体特性)
本発明の有機半導体材料は「電子性の伝導特性を示す」ものである。半導体特性の良く知られた一般的な評価方法は、TOF法により直接、移動度を求めるか、あるいは、トランジスタ(FET)を作製して、移動度を求める方法である。後者は結晶薄膜材料の評価に広く用いられる方法であるが、特に、n-チャネル、すなわち、電子がキャリアとなる場合には、制約が大きく、電極材料や絶縁膜材料の選択を適切に行う必要がある。
「イオン伝導/電子性伝導」
液晶相の伝導においては、「イオン伝導/電子性伝導」の評価は重要で、流動性の高い液晶を有機半導体として用いる場合には、その確認が必要となる。
一般的に、液晶物質には、高分子液晶と低分子液晶があるが、高分子液晶の場合は液晶相においては一般に粘性が高いため、イオン伝導は起きにくい傾向を有する。他方、低分子液晶の場合は、イオン化した不純物が存在する場合、ネマティック相(N相)やスメクチックA相(SmA相、以下同様に記載する)やSmC相などの液体性の強い低次の液晶相では、イオン伝導が誘起される傾向がある。ここで言う「イオン化した不純物」とは、イオン性の不純物が解離して生成したイオンや電荷のトラップとなりうる電気的に活性な不純物(つまり、HOMO準位、LUMO準位、あるいは、その両方の準位が、液晶物質のHOMO,LUMO準位の間に準位を持つ不純物)が、光イオン化や電荷の捕獲によって生成したイオン化したものをいう(例えば、M. Funahashi and J. Hanna, Impurity effect on charge carrier transport in smectic liquid crystals, Chem. Phys. Lett., 397,319-323(2004)、H. Ahn, A. Ohno, and J. Hanna, Detection of Trace Amount of Impurity in Smectic Liquid Crystals, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 44, No.6a,2005,pp.3764-37687を参照)。
(LUMO準位)
本発明に関わる有機半導体材料をデバイスに応用する観点からみると、コア部(本発明ではIQIQ骨格部分を含むπー電子共役部位、つまり、電荷輸送に関わる部位、特にIQIQ自体)のHOMO、LUMOのエネルギー準位が重要となる。一般に、有機半導体のHOMOレベルは、脱水されたジクロロメタンなどの有機溶媒に被検物質を、例えば、1mmol/Lから10mmol/Lの濃度となるように溶解し、テトラブチルアンモニウム塩などの支持電解質を0.2mol/L程度加え、この溶液にPtなどの作用電極とPtなどの対向電極、およびAg/AgClなど参照電極を挿入後、ポテンショスタットにて50mV/sec程度の速度で掃引し、CV曲線を書かせ、ピークの電位および基準となる、例えばフェロセンなどの既知物質との電位の差より、HOMOレベル、LUMOレベルを見積ることができる。
HOMOレベル、あるいは、LUMOレベルが用いた有機溶媒の電位窓よりも外れている場合、紫外可視吸収スペクトラムの吸収端より、HOMO−LUMO間のエネルギーギャップを求め、測定できたレベルから差し引くことでHOMOレベルやLUMOレベルを見積ることができる。この方法は、J. Pommerehne, H. Vestweber, W. Guss, R. F. Mahrt, H. Bassler, M. Porsch, and J. Daub, Adv. Mater.,7,551(1995)を参照にすることができる。
一般に、有機半導体材料のHOMO,LUMOレベルは、それぞれ陽極、陰極と電気的な接触の目安を与え、電極材料の仕事関数との差によって決まるエネルギー障壁の大きさによって電荷注入が制限されることになるので、注意が必要である。金属の仕事関数は、しばしば、電極として用いられる物質の例をあげると、銀(Ag)4.0eV、アルミニウム(Al)4.28eV、金(Au)5.1eV、カルシウム(Ca)2.87eV、クロム(Cr)4.5eV、銅(Cu)4.65eV、マグネシウム(Mg)3.66eV、モリブデン(Mo)4.6eV、白金(Pt)5.65eV、インジウムスズ酸化物(ITO)4.35〜4.75eV、酸化亜鉛(ZnO)4.68eVである。前述の観点から、有機半導体材料と電極物質との仕事関数の差は1eV以下が好ましく、より、好ましくは0.8eV以下、さらに好ましくは、0.6eV以下である。金属の仕事関数は、必要に応じて、下記の文献を参照することができる。
文献A:化学便覧 基礎編 改訂第5版II−608−61014.1b仕事関数 (丸善出版株式会社)(2004)
コア部の共役したπ−電子系の大きさによりHOMO,LUMOエネルギー準位は影響を受けるため、共役系の大きさは材料を選択する際に参考となる。また、HOMO、LUMOエネルギー準位を変化させる方法として、コア部に、例えば、Fや他のハロゲン元素、シアノ基などの電子吸引性基を導入することは有効である。
(スクリーニング法)
本発明において、上記の分子設計を満足する化合物中から、高次のスメクチック液晶相を発現し、有機半導体として有用な物質を、必要に応じてスクリーニングすることができる。このスクリーニングにおいて、基本的には、液晶相で有機半導体として用いる場合は高次のスメクチック相を発現すること、結晶相で有機半導体として用いる場合は、結晶相温度より高い温度から冷却したときに、結晶相に隣接して低次の液晶相を発現しないものを選ぶことが好ましい。この選択の方法は、後述する「スクリーニング法」にしたがって判定することにより、有機半導体材料として有用な物質を選択することが出来る。
(具体的なスクリーニング法)
これは、以下に述べるスクリーニング法(判定法)によって、容易に判定することが出来る。このスクリーニング法に用いる各測定法の詳細に関しては、必要に応じて、下記の文献を参照することができる。
文献B:偏光顕微鏡の使い方:実験化学講第4版1巻、丸善、P429〜435
文献C:液晶材料の評価:実験化学講座第5版27巻、P295〜300、丸善
文献D:「液晶科学実験入門」日本液晶学会編、P1〜P10、シグマ出版
(S1)単離した被検物質をカラムクロマトグラフィーと再結晶により精製した後、シリカゲルの薄層クロマトグラフィーにより、該被検物質が単一スポットを示す(すなわち、混合物でない)ことを確認する。
(S2)等方相に加熱したサンプルを毛細管現象を利用して、スライドガラスをスペーサーを介して貼り合わせた15μm厚のセルに注入する。一旦、セルを等方相温度まで加熱し、偏光顕微鏡でそのテクスチャーを観察し、等方相より低い温度領域で暗視野とならないことを確認する。これは、分子長軸が基板に対して水平配向していることを示すもので、以後のテクスチャー観察に必要な要件となる。
(S3)適当な降温速度、例えば、5℃/分程度の速度でセルを冷却しながら、顕微鏡によるテクスチャーを観察する。その際、冷却速度が速すぎると、形成される組織が小さくなり、詳細な観察が難しくなるので、再度、等方相まで温度を上げて、冷却速度を調整して、組織が容易に観察しやすい、組織のサイズが50μm以上となる条件を設定する。
(S4)上記(S3)項で設定した条件で、等方相から室温(20℃)まで冷却しながらテクスチャーを観察する。この間にセル中で試料が結晶化すると、格子の収縮に伴い、亀裂や空隙が生じ、観察されるテクスチャーに黒い線、または、ある大きさを有する領域が現れる。サンプルを注入する際に空気がはいると同様の黒い領域(一般には丸い)が局所的に生じるが、結晶化によって生じた黒い線や領域は組織内や境界に分布して現われるので容易に区別できる。これらは、偏光子、及び、検光子を回転させても、消失や色の変化が見られないことから、テクスチャーに見られるこれ以外の組織とは容易に識別できる。サンプルがネマチック相を示す場合は、糸巻き状と表現される特徴的なシュリーレンテクスチャー(図3参照:典型的なシュリーレンテクスチャー)が観察され、SmA相やSmC相を示す場合は、fan−likeテクスチャーと呼ばれる扇型でその領域内は均一組織を有する特徴的なテクスチャー(図4参照:典型的なFan−likeテクスチャー)が観察されるので、その特徴的なテクスチャーから容易に判定することができる。
特殊なケースとして、SmA相からSmB相、SmC相からSmF、SmI相に転移する物質では、相転移温度で一瞬に、視野の変化が見られるが、相転移したテクスチャーにはほとんど変化が見られない場合があり、形成されたSmB相やSmF相、SmI相のテクスチャーをSmA相、SmC相と誤認する場合があるので注意が必要である。その場合は、相転移温度で見られる一瞬の視野の変化に気をつけることが重要である。この確認が必要な場合は、DSCにより、中間相の数を確認した後、それぞれの温度領域でX線回折を測定し、各相に特有の高角度領域(θ−2θの判定において15〜30度)においてピークの有無を確認すれば、SmA相、SmC相(いずれもピークなし)とSmB相、SmF相、SmI相(いずれもピーク有り)を容易に判定することができる。
(S5)室温(20℃)で、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって、黒い組織が見られないものは、有機半導体材料として利用可能であるので、この物質が室温で高次の液晶相、あるいは、結晶相(準安定な結晶相を含む)の如何に関わらず、本発明の範疇として取り扱うものとする。
(LUMOのスクリーニング)
LUMOのエネルギー準位は、脱水THFなどの有機溶媒に被検物質を、溶解し、テトラブチルアンモニウム塩などの支持電解質を0.2mol/L程度加え、この溶液にPtなどの作用電極とPtなどの対向電極、およびAg/AgClなど参照電極を挿入後、ポテンショスタットにて50mV/sec程度の速度で掃引し、CV曲線を書かせ、ピークの電位が約−1.8Vよりも低い電圧で現れたときLUMOレベルがおおよそ−3eVよりも深いことが見積ることができる。
(溶解度のスクリーニング)
室温、トルエンへの0.1wt%以上の溶解度の有無の測定は、サンプル管に約5mgの被検物質と約5gのトルエンをいれ、ホットステージなどで適度に加熱後、一度均一にトルエンに溶かした上で、室温(25℃)に冷却し、1時間、室温で保持し、結晶が現れなければ、0.1wt%以上の溶解度を有する判断することができる。
本発明においては、窒素含有縮環であるイソキノ[8,7−h]イソキノリン(IQIQ)骨格をもつ液晶材料を設計し且つ実際に合成し、その相転移の挙動、エネルギー準位、光学特性、電荷輸送特性を調べた。このような骨格を有し、且つ液晶性をも有する有機半導体材料(ないし有機化合物)は、イソキノ[8,7−h]イソキノリン(IQIQ)骨格をもつ点でそれ自体で新規な有機化合物である。
(新規化合物)
本発明によれば、上記した液晶性を示す新規な有機半導体材料が提供されるが、上記の有機半導体材料は有機化合物自体として新規な化合物である。
したがって、本発明によれば、下記式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットAと、該ユニットAと単結合で連結された、炭素主鎖を構成する炭素原子の1以上が酸素原子で置換されていても良い、脂肪族系鎖ユニットBと、該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機化合物が提供される。
この新規な有機化合物の化学構造は、上記した本発明の有機半導体材料について説明したと同様であることができるので、繰り返しの説明は省略するが、必要に応じて上記あるいは後記の記載が参照される。
本発明の新規な有機化合物の1つの好ましい態様は、下記式(3)で表されることを特徴とする。
(式中、a、a、a及びaは、それぞれ独立して、水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和及び/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良いが、a、a、a及びaの少なくとも1つは、単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状炭化水素基であり;R、R,R及びRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、脂肪族系鎖基であり、R、R,R及びRのいずれかが脂肪族系鎖基でないとき、その残りのR、R,R及びRは水素原子であることができる。)
本発明の有機化合物は、1つの態様において、下記式(6)
(式中、R1、R2,R3及びR4の少なくとも1つは、それぞれ独立して、炭素原子数3〜20のアルキル基その他の脂肪族系鎖基であり、R、R,R及びRのいずれかが脂肪族系鎖基でないとき、その残りのR1、R2,R3及びR4は水素原子であることができる。)
であることができる。
上記式(3)及び(6)中、R1、R2,R3及びR4の少なくとも1つは、それぞれ独立して、ユニットB又はユニットCにおいて述べた脂肪族系鎖基、特に炭素原子数3〜20で1以上の酸素原子を含む脂肪族系鎖基であり、たとえば、−(CH2n−X−(CH2m−CH3(式中、X=OまたはCH2で、n+m=3〜19であり、mおよびnは0を含んでもよい)で表される基であるが、R、R,R及びRのいずれかが脂肪族系鎖基でないとき、その残りのR1、R2,R3及びR4は水素原子であることができる。
本発明の有機化合物の好適な例には、2,8−ジデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(10−IQIQ−10)、2.8−ジドデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(12−IQIQ−12)又は2.8−ジテトラデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(14−IQIQ−14)などがある。
本発明の有機化合物(及び/又は本発明の有機半導体材料)は液晶材料、有機半導体材料などとして有用である。本発明の有機化合物(及び/又は本発明の有機半導体材料)の製造方法は特に制限されないが、簡便さの点からは、以下の製造方法を好適に使用することができる。
(製造方法)
後述する実施例に示すように、以下の「合成スキームI」に沿って、本発明の有機化合物を好適に得ることができる。
上記の合成スキームに従って、原料化合物(合成スキームに示す化合物1、化合物2および化合物3)を調製し、次いで本発明の化合物(合成スキームIに示す化合物4)を合成することができる。
より具体的には、上記化合物(化合物1、化合物2、化合物3、化合物4)の合成法の概要は、以下の通りである。
鍵となる合成中間体、2,6−ジブロモナフタレン−1,5−ジカルバルデヒド(化合物1)は、(i)先ず、臭素を含む塩化メチレン溶液に1,5−ジメチルナフタレンを滴下して反応させて2,6−ジブロモ−1,5−ジメチルナフタレンを得;(ii)次に、2,6−ジブロモ−1,5−ジメチルナフタレンの四塩化炭素溶液にN−ブロモスクシンイミドとAIBNを加え、加熱還流して2,6−ジブロモ−1,5−ジブロモメチルナフタレンを得;(iii)次に、2,6−ジブロモ−1,5−ジブロモメチルナフタレンと炭酸カルシウム、1,4−ジオキサンの混合物を加熱還流して、2,6−ジブロモ−1,5−ジヒドロキシメチルナフタレンを得;(iv)次に、シリカゲルとクロロクロム酸ピリジニウムの無水塩化メチレンのスラリーに2,6−ジブロモ−1,5−ジヒドロキシメチルナフタレンを加え、加熱還流して、2,6−ジブロモ−1,5−ジホルミルナフタレン(化合物1)を得ることができる。これらの合成反応の条件については、文献(Y.Ma,Q.Zheng,Z.Yin,D.Cai,S.Chen,C.Tang.Macromolecules.2013,46,4813)を参照することができる。
次いで、上記により得た化合物1に、様々な置換基Rを有するアルキンの例として、たとえば、1−ドデシン、1−テトラデシンなどの1−アルキンであれば、1−アルキンから、所謂、薗頭反応によって、2,6−ジアルシニルナフタレン−1,5−ジカルバルデヒド(化合物2)を得ることができる。また、置換基Rを有するR−1−アルキンの置換基Rがアルキル基以外の様々な有機基(オルガノ基)、特にユニットB,ユニットCを構成する有機基であれば、薗頭反応によって、アルキル基以外の様々な置換基(オルガノ基)Rを有する2,6−ジオルガニルナフタレン−1,5−ジカルバルデヒド(化合物2)を得ることができる。「典型的な薗頭反応の条件」に関しては、必要に応じて、文献(A. V. Malkov, M. M. Westwater, A. Gutnov, P. Ramirez-Lopez, F. Friscourt, A. Kadicikova, J. Hodacova, Z. Randkovic, M. Kotora, P. Kocovsky, Tetrahedron, 2008,64,11335)を参照することができる。
Rの混合物を用いて、非対称の化合物を生成させた場合は、再結晶法やカラムクロマトグラフィー、あるいは、それを組み合わせることにより分離する。
次に、上記により得た化合物2をNaOAcの存在下でベンジルオキシアンモニウムクロリド(BnONH2・HCl)と縮合し、オキシム誘導体(化合物3)を得る。この際の反応条件に関しては、必要に応じて、文献(S. Hwang, Y. Lee, P. H. Lee, S. Shin, Tetrahedron Lett. 2009,50,2305)を参照することができる。
最後に、AgOTfとTfOHとの共触媒による化合物3の環化反応により目的物である化合物4を得る。それらは、無色の結晶として容易に単離でき、カラムクロマトと再結晶による精製することができる。得られる化合物の構造は1HNMRスペクトルと高分解能質量分析器により確認できる。
ユニットB,Cの種類,またユニットAの環状基aの場合は、基本的に合成法はスキーム1に準ずるが、鍵中間体である化合物1の園頭反応において、一方のブロムのみ、対応するアルキン化合物と反応させた生成物をまず単離し、それを用いて、残りブロム基と、最終生成物に対応したアルキン化合物とを同様に園頭反応によるカップリング反応を行うことによって、合成することができる。
上記の合成スキームにおいて、化合物4に対して複素環に公知の各種の置換反応をすることで、IQIQの3位及び9位の位置にアルキル基やアリール碁などの置換基を導入することができる。公知の置換反応としては、ピリジンの3位やイソキノリンの4位を選択的に置換する反応が知られており、例えば、J.Org.Chem.,53(11),2653-5(1988]やJ.Amer.Chem.Soc.,93(5)1294-6(1971)を利用して、IQIQの同一のピリジンユニットに二つのB,Cが置換した化合物を合成することができる。
また、以下に示す「合成ルート1」または「合成ルート2」によっても、本発明の有機化合物を好適に得ることができる。
<合成ルート1および合成ルート2>
これらの合成ルートは、上記合成スキームIの変形例であり、鍵中間体である化合物1を用いずに、別ルートで、スキーム1の化合物2を得るもので、入手が容易なナフタレンジオールの出発物質とした合成スキームである。
(有機半導体装置)
本発明の有機半導体材料は、液晶性を示し、溶媒への溶解性に優れ、高移動度であり、深いLUMO準位を有する有機半導体材料であるので、ウェットプロセスで容易に均一な製膜でき、かつ優れた半導体特性を示すことができ、特に深いLUMO準位を有するので有機トランジスタへの応用ばかりでなく、電子輸送性のn型有機半導体としても利用できる利点がある。この半導体装置は、本発明の新規な有機半導体材料又は新規な有機化合物を用いて形成された層を半導体層とし、その半導体層に電気的に結合された正電極及び負電極を具備することを特徴とする。
したがって、本発明の有機半導体材料を用いて、有機ELや有機太陽電池などのトランジスタ以外の有用な半導体装置を作製することが可能である。
たとえば、本発明の有機半導体材料は、有機ELに用いられて、高移動度の電荷注入・輸送層として期待され、HOMO準位も深いので正孔のブロッキング層としても働き電荷の封じ込めにも有利であり、さらに液晶材料であるために平行制御も可能で、縦型デバイスにも対応可能である。
また、有機トランジスタにおいて、本発明の有機半導体材料は、HOMO準位が5〜6eV程度であるp-チャンネルトランジスタの材料と組み合わせて、LUMO位が3〜5eV程度であるn-チャンネルトランジスタの材料として利用でき、CMOSを実現するn-チャンネルトランジスタの材料としても有用である。
このような本発明の有機半導体材料を用いる半導体装置は、本発明の有機半導体材料を用いて形成された層を半導体層として有し、その半導体層に電気的に結合された正電極及び負電極を具備することを特徴とする。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
以下の実施例においては、下記の<合成スキーム(実施例)>に従って、原料化合物(化合物I、化合物IIおよび化合物III)を調製し、次いで本発明の化合物(化合物4)を合成した。なお、化合物IIは化合物IIa及び化合物IIb、化合物IIIは化合物IIIa及び化合物IIIb、化合物IVは化合物IVa及び化合物IVbを、それぞれまとめて指すものである。以下の実施例において、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IVなどはいずれも<合成スキーム(実施例)>にそれぞれの番号で指定されている化合物である。
化合物IV(化合物IVaおよび化合物IVb)について、それぞれの「半導体特性」に関する種々の物性を測定した。
<原料調製>
特に記載のない限り、試薬や溶媒は、(特に記載しない限り)Aldrich Chemical,東京化成、和光純薬のいずれかのメーカーから購入し、そのまま使用した。
例1
(化合物Iの合成)
合成中間体(化合物I)たる、2,6−ジブロモ−1,5−ジホルミルナフタレンは、文献(Y.Ma,Q.Zheng,Z.Yin,D.Cai,S.Chen,C.Tang.Macromolecules.2013,46,4813)に従って合成した。具体的には、下記のとおりである。
臭素(3ml,9.3g,60mmol)を含む10mlの塩化メチレン溶液を1時間かけて室温にて,1,5-ジメチルナフタレン(3.9g,25mmol)を含む50mlの塩化メチレン溶液に滴下した。2時間後、溶液を-20℃まで冷却し,析出物をろ過下した後、エタノールで再結晶することにより、2,6-ジブロモ-1,5-ジメチルナフタレン(1.49g,19%)を白色結晶として得た。1HNMR (CDCl3, 400MHz): 7.75 (d, 2H), 7.64 (d, 2H), 2.77 (s, 6H)であった。
次に、還流条件下,2,6-ジブロモ-1,5-ジメチルナフタレン(2g,6.35mmol)の四塩化炭素溶液にN-ブロモスクシンイミド(6.8g,38.2mmol)とAIBN(0.1g,0.64mmol)を3回に分けて加え、さらに、12時間、加熱還流を行った。冷却後、混合物溶液を濾別し、メタノール、酢酸エチルで洗浄し、94%の収率で、2,6-ジブロモ-1,5-ジブロモジメチルナフタレンを白色粉末として得た。1HNMR (CDCl3, 400MHz): 7.97 (d, 2H), 7.77 (d, 2H), 5.06 (s, 4H)であった。
2,6-ジブロモ-1,5-ジブロモジメチルナフタレン(1.72g,3.62mmol)と炭酸カルシウム(3.62g、36.2mmol),1,4−ジオキサン(75ml)の混合物を48時間、加熱還流した。その混合物を熱時濾過し、濾紙に残った残留物を加熱ジオキサンで洗浄し、濾液を真空下で濃縮し後、希塩酸(1M、10ml)を加え、析出物を分離した。得られた析出物を水で洗浄後、乾燥して、収率92%で,2,6-ジブロモ-1,5-ジヒドロオキシメチルナフタレンをワックス状の白色固体として得た。1HNMR (CDCl3, 400MHz): 8.16 (d, 2H), 7.77 (d, 2H), 5.38 (t, 2H), 5.06 (d, 4H)であった。
次に、10gのシリカゲルとクロロクロム酸ピリジニウム(PCC, 8.57g, 40mmol)の無水塩化メチレンのスラーリーに、2,6-ジブロモ-1,5-ジヒドロオキシメチルナフタレン(3.44g,10mmol)を加え,4時間加熱還流した。冷却後,同量のエチルエーテルを加え,混合物を8cmのシリカゲルを通した後、加熱クロロフォルムでシリカゲルを洗浄後、洗液を加え、溶媒を溜去後、残渣をクロロフォルムから再結晶し、中間体化合物である2,6-ジブロモ-1,5-ジホルミルナフタレン(下記式(7)で表される化合物I)を収率74%で得た。1HNMR (CDCl3, 400MHz): 10.74 (s, 2H), 9.21 (d, 2H), 7.90 (d, 2H)であった。
例2
(化合物IIの合成)
2,6−ジブロモ−1,5−ジホルミルナフタレン(1eq.)と1−テトラデシン(2.2eq.)の乾燥トリエチルエミン溶液に(Ph3P)2PdCl2(0.1eq.)とCuI(0.1eq.)を加え、得られた混合物をAr雰囲気下、55℃に4時間加熱し、室温まで冷却した。生成したアンモニウム塩をろ過により除去し、ろ液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトで(展開溶媒:DCM:Hex=1:3)により精製し、2,6−ジテトラデシニルナフタレン−1,5−ジカルバルデヒド(化合物IIb)を得た。
上記において、1−テトラデシンに代えて1−ドデシンを用いて、2,6−ジドデシニル−1,5−ジカルバルデヒド(化合物IIa)を得た。
1HNMRスペクトルおよび高分解能質量分析器による分析)
以下の条件で、対象化合物(化合物II)を、1HNMRスペクトルと高分解能質量分析器による分析に供した。
1HNMRの測定条件)
測定機器:1HNMR(400MHz Bruker biospin・AVANCEIII 400A型)
測定条件:
・測定周波数:400MHz
・NMR用の溶媒:CDCl3
(高分解能質量分析の測定条件)
測定機器:高分解能マススペクトル測定装置(HRMS:JEOL JMS−700)
測定条件:イオン化法は高速原子衝撃(FAB)法を用いた。
(測定結果)
上記の1HNMRスペクトルによる分析結果を、以下に示す。
化合物IIa:1HNMR(CDCl3,400MHz):10.97(s,2H),9.47(d,2H),7.70(d,2H),2.56(t,4H),1.69(m,4H),1.50(m,4H),1.25−1.48(m,28H),0.92(t,6H).
化合物IIb:1HNMR(CDCl3,400MHz):10.96(s,2H),9.46(d,2H),7.69(d,2H),2.55(t,4H),1.68(m,4H),1.49(m,4H),1.24−1.40(m,36H),0.92(t,6H).
例3
(化合物IIIの合成)
化合物IIのジアルデヒド(1eq.)をMeOH/CHCl3(1:2)に溶解し、BnONH2・HCl(2.4eq.)とNaOAc(2.4eq.)を加え、得られた混合物を室温で5時間撹拌し、その後、celite(登録商標)を用いてろ過した。ロ液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクトマトグラフィー(展開溶媒:DCM:Hex=1:1)により精製し、化合物IIIを得た。
上記例2と同様の測定条件により、化合物IIIを1HNMRスペクトルおよび高分解能質量分析器により分析した。得られた結果を、以下に示す。
化合物IIIa:1HNMR(CDCl3,400MHz):9.01(s,2H),8.79(d,2H),7.52−7.37(m,12H),5.32(s,4H),2.52(t,4H),1.69(t,4H),1.52(t,4H)1.27−1.48(m,24H),0.93(t,6H).
化合物IIIb:1HNMR(CDCl3,400MHz):8.99(s,2H),8.77(d,2H),7.50−7.35(m,12H),5.30(s,4H),2.50(t,4H),1.67(t,4H),1.50(t,4H)1.25−1.40(m,32H),0.90(t,6H).
例4
(化合物IVの合成)
本発明の化合物4a=10−IQIQ−10(化合物IVa)、および化合物4b=12−IQIQ−12(化合物IVb)を、以下の方法により合成した。
パイレックス(登録商標)製ガラスフラスコに、例3で得られた化合物III(1eq)のジクロロエタン溶液を加えた。磁気スタ−ラによる攪拌下で該化合物III(1eq)のジクロロエタン溶液に対して、AgOTf(0.1eq)とTfOH(0.1eq.;0.10M inジクロロエタン)を、暗所下、不活性ガス(Ar)雰囲気下で、加え、更に、同様の攪拌下、75℃で12h加熱した。その後、さらに、AgOTf/TfOH(0.1eq)を、同様の攪拌下、追加した。さらに、75℃で12時間加熱後、TLC(和光純薬社製、商品名:シリカゲル70F254)により、反応の完結を確かめた。
上記により得られた反応混合物を室温まで自然冷却した後、Et3Nを加え、溶媒を濃縮し、残渣を、シリカカラムクロマトグラフィ―(展開溶媒:ジクロロエタン)により、精製・単離した。化合物IVa及び化合物IVbの収率は70%であった。
この際に用いたシリカカラムクロマトグラフィ―の条件は、以下の通りである。
・カラムのサイズ:内径3.5cm×長さ18cm
・シリカ充填剤:関東化学社製、商品名:シリカゲル60 100−210μm
最終生成物である10−IQIQ−10(化合物IVa)と、12−IQIQ−12(化合物IVb)とは、カラムクロトマトと再結晶により精製し、その構造を1HNMR(400MHz Bruker biospin・AVANCEIII 400A型)と高分解能マススペクトル測定装置(HRMS:JEOL JMS−700)により測定した。この際の測定条件は、例2と同様の条件を使用した。
10−IQIQ−10(化合物IVa):
1HNMR(CDCl3,400MHz):10.07(s,2H),8.95(d,2H),7.98(d,2H),7.64(s,2H),(d,2H),3.04(t,4H),1.89(m,4H),1.24−1.45(m,28H),0.95(t,6H).
HRMS:Calcd.For C36H50N2 [M+]:510.3974; Found:510.3974.
12−IQIQ−12(化合物IVb):
1HNMR(CDCl3,400MHz):10.04(s,2H),8.93(d,2H),7.96(d,2H),7.62(s,2H),(d,2H),3.02(t,4H),1.87(m,4H),1.31−1.55(m,36H),0.93(t,6H).
HRMS:Calcd.For C40H58N2 [M+]:566.4600; Found:566.4598.
例5
(化合物IVaの示唆熱分析、偏光顕微鏡による組織、X線回折)
10−IQIQ−10(化合物IVa)の相転移挙動を、示唆熱分析(DSC),偏光顕微鏡による組織観察、X線回折測定により測定した。
<示唆熱分析の方法>
示唆熱分析は島津製作所製 SHIMAZU DSC−60 を用いた。偏光顕微鏡による組織観察はニコン社製 Optiphot2−pol,ホットステージ:Mettler社製:FP900 thermo−systemを用い、観察像を記録した。X線回折はリガク社製Rigaku RAD−2Bを用い、相の同定を行った。
<示唆熱分析の条件>
・装置:SHIMAZU DSC−60
2mgから5mgを秤取ったサンプルをアルムニウムクリンプセルにいれサンプルとする。その後、リファレンスに空のアルミニウムクリンプセルとして、10℃/minの昇温過程、降温過程でのDSC測定を行った。
<偏光顕微鏡分析の条件>
・装置:偏光顕微鏡:ニコン社製 Optiphot2−pol,ホットステージ:Mettler社製:FP900 thermo−system
ガラス基板2枚に挟んだサンプルを等方相温度まで加熱し、上記装置にて、冷却過程で偏光顕微鏡観察を行った。
<X線回折の条件>
・装置:リガク社製Rigaku RAD−2B
ガラス基板上に、サンプルを等方相温度で塗布し、上記装置にて、測定を行った。
<分析の結果>
上記分析により得られた結果を、図1および図2に示す。図1のDSCチャートによれば、10−IQIQ−10(化合物IVa)は、それぞれ降温、昇温過程で複数の発熱と吸熱ピークをそれぞれ示し、160℃付近で明確な液晶相への相転移の挙動が見られる。また図1の偏光顕微鏡及び図2のX線回折によれば、SmAあるいはSmC相等の低次の液晶相に特徴的な扇形組織が観測された。図2はその結晶相におけるX線回折像である。
例6
(化合物4bの示唆熱分析、偏光顕微鏡による組織、X線回折)
12−IQIQ−12(化合物IVb)の相転移挙動を、例5と同様の条件を用いて、示唆熱分析(DSC),偏光顕微鏡による組織観察、X線回折測定により測定した。
(計算機ミュレーション)
MOPAC PM7により、液晶分子長のシミュレーションを、以下の条件で行った。
・使用機器:汎用のパーソナルコンピュータ
・使用ソフトウエア:設計した各分子の分子長は、MOPAC 2012.MOPAC(Molecular Orbital PACkage)を用いて、Dewar− ThielによるNDDO 近似による半経験的量子化学計算(PM7)を行い、見積もった。このような「MOPAC PM7によるシミュレーション」の詳細に関しては、必要に応じて、文献(J.J.P. Stewart, J. Comp. Chem. 10, 209-264 (1989). J.J.P. Stewart, J. Mol. Modelling 10, 6-12 (2004). J.J.P. Stewart, J. Phys. Chem. Ref. Data 33, 713-724 (2004). G.B. Rocha et al J. Comp. Chem. 27, 1101-1111 (2006).)を参照することができる。
<分析の結果>
12−IQIQ−12(化合物IVb)においては,図3のDSCチャートに示すように、150℃付近(153.9〜141.6℃)で明確な液晶相への相転移の挙動が見られ、偏光顕微鏡による組織観察でも、高次の液晶相の存在が確認できた。
図4に12−IQIQ−12(化合物IVb)の150℃(上図)及び130℃(下図)におけるX線回折チャートを示す。
12−IQIQ−12(化合物IVb)においては,図4のX線回折チャートに見られるように、低角度側のX線観測では(001),(002),(003),(004)(005)面からの回折ピークが観測され、明らかにこの凝集相が層状構造を持つことが判明した。加えて、広角度領域にみられる小さな回折ピークが観測された。
図4上図と同じ12−IQIQ−12(化合物IVb)の150℃におけるX線回折チャートを示す図5をも参照すると、(111)面の回折ピークから層間距離を見積もると、25.8Å(オングストローム)で、この値は上記のMOPAC PM7により計算された12−IQIQ−12(化合物IVb)の分子長38.16Åよりも短く、分子は分子層に対しておよそ42.5°傾いて配置していることが判明した。図5の右側に液晶層を形成している液晶分子の配列状態を模式的に示す。(200),(110),(210)に対応する広角度側の回折ピークから、この液晶相はSmH相と同定した。広角度側の回折にみられる他のいくつかのピークは同定が困難で、これらのいくつかは試料中に残留した結晶のドメインからの回折によるものであると考えられる。これはX線回折の測定において、試料温度を140℃〜150℃のおよそ10℃の狭い温度領域での温度制御することが困難であったためである。図4に示す130℃でのX線回折ピークから、140℃以下の温度領域では結晶相と同定した。
DSC分析から求められた10−IQIQ−10(化合物IVa)及び12−IQIQ−12(化合物IVb)の相転位温度を下記表1に示す。なお、表1には、例10で作成した14−IQIQ−14の転位温度も示す。表1中、「Iso」は等方相、「SmC」及び「SmH」はスメクチックC相及びスメクチックH相、「Cr」は結晶(固体)相を表す。
例7
(化合物IVbの光学吸収特性とイオン化ポテンシャルの測定)
HOMO,LUIMO準位を見積もるため、12−IQIQ−12(化合物IVb)を、光学吸収特性(UVスペクトル)、およびイオン化ポテンシャル(IP)の測定(光電子分光法による光電子収量スペクトル)に供した。これらの測定においては、以下の条件を用いた。
<UVスペクトル測定>
・測定機器:日立ハイテク社製 HITACHI U−3900H
UV−VISセル(角形セル:光路長1cm)にクロロホルムに溶かしたサンプルを入れ、上記測定機器にて測定した。
<光電子分光法による光電子収量スペクトル測定>
・測定機器:住友重機械工業社製 光電子収量分光装置 PYS−202
試料を溶かした溶液をITO付きガラス基板にドロップキャストして製膜し、1.3×10-2Paの真空下で、Xe光源(HAMAMATSU C9559)、および、重水素光源(USHIO,XB−50101AA−A)により光照射(3eV〜9eV)を行い、放射される光電子を住友重機械工業社製 光電子収量分光装置PYS−202を用いて、室温で測定した。
(対照化合物の合成)
上記特性の測定に際しては、12−IQIQ−12との比較のため、窒素を含まない12−Chrysene−12を別途、文献[M.Kawamura,K.Nishimura,T.Iwakuma,K.Fukuoka,C.Hosokawa,M.Funahashi,T.Inoue,Y.Jinde,Y.Kawamura,M.Ito,Y.Tkashima,T.Ogiwara.U.S.Patent 2010194270,2010.18]に従って合成した。
上記により得られた12−Chrysene−12、および12−IQIQ−12のクロロフォルム溶液のUVスペクトルを、図6に示す。また、12−Chrysene−12および12−IQIQ−12の25℃における、光電子分光法により測定した光電子収量スペクトルを、図7に示す。図7の横軸は照射フォトンエネルギー、縦軸は光電子収量に対応するシグナル強度である。
上記の光電子分光測定の結果から、12−IQIQ−12、及び12−Chrysene−12のイオン化ポテンシャル(IP)は、それぞれ、−6.47eV、及び−5.85eVと決定された。また、12−IQIQ−12のLUMO準位はアザ−アセンの骨格から期待したように、12−Chrysene−12に比べて、0.85eVと低く、HOMO準位は同様に0.62eV低いことが明らかとなった。
上記により得られた12−IQIQ−12および12−Chrysene−12の光学特性、および、エネルギー準位に関する諸特性を下記表2に示す。
例8
(化合物IVbの電荷輸送特性の測定)
次に、12−IQIQ−12(化合物IVb)の電荷輸送特性を、time−of−flight(TOF)法により評価した。この測定に際して、測定対象たる「12−IQIQ−12」を、カラムクロマトグラフィー(column chromatography)と再結晶を数回(6回以上)繰り返すことにより精製した。この際に使用したカラムクロマトグラフィー条件、および再結晶条件は、以下の通りである。
<カラムクロマトグラフィー条件>
・カラム材料・寸法:パイレックスガラス(登録商標)、内径3.5cm×充填剤を充填した部分の長さ18cm
・カラム充填剤:関東化学社製、商品名:シリカゲル60(100−210μm)
・溶媒:ジクロロメタン
<再結晶条件>
・再結晶溶媒:エタノールとクロロホルムもしくはヘキサン
上記により精製した試料を、厚さ9μmのITO電極を持つ液晶セルに注入し、試料とした。
上記測定は、以下の方法によって行った。ITO透明電極つきのガラス基板2枚をスペーサーを含む熱硬化性樹脂で張り合わせたセル厚9μmのセル(市販品:EHC社製)を各化合物の等方相温度に加熱しておき、少量のサンプルをセルの開口部に接触させ、毛細管現象を利用して、サンプルをセルに注入した。ヒーターを内在した試料ステージにセルを固定し、電極に直流電圧を印加した。パルス幅600psの窒素パルスレーザーを照射し、その際に流れる電流をデジタルオシロスコープで測定した。その際に、光照射によって流れる光電流の積分値(電荷量)がセルの幾何学的電気容量の10%以内となるように、光照射強度を調整し空間電荷による波形のゆがみを起こさないように注意した。
該測定により得られた結果を、図8に示す。図8の(a)及び(b)は、それぞれ164℃及び130℃において、12−IQIQ−12のTOF法により測定された両対数プロットした過渡光電流波形を示す。ここに、図8(a)は正電荷の光電流による結果を示し、図8(b)は負電荷の光電流による結果を示す。各図への「挿入図」は、それぞれの「リニアプロット」を示す。
SmH相では分散性波形であったが、図8に示す様に、両対数プロットすることにより走行時間が決定できた。この伝導は、高次の液晶相であることからイオン伝導ではなく電子性伝導と考えることができる。なお、このような「イオン伝導/電子性伝導」決定方法詳細に関しては、以下の各文献を参照することができる(文献[19−21])。
・M.Funahashi,J.I.Hanna,Phys.Rev.Lett.1997,78,2184.
・H.Ahn,A.Ohno,J.Hanna.Jpn.J.Appl.Phys.2005,44,3764.
・.M.Funahashi,J.I.Hanna,Adv.Mater.2005,17,594.
図9に上記の電荷輸送特性の測定により求めた12−IQIQ−12の電界強度6.6×104V/cmにおける正電荷及び負電荷の移動度の温度依存性を示す。図11の左側の約140〜150℃の温度領域に示されるように、Sm液晶相における電子の移動度および正孔の移動度はそれぞれ1.86×10-4cm2/Vsおよび1.08×10-4cm2/Vsと見積もることが出来た。これらの移動度は、10Kの限られた温度ではあるが、この領域では移動度の温度依存性は見られなかった。また、電界依存性も見られなかった。
他方、図9の右側の約155℃以上の温度領域に示されるように、等方相における、負、正電荷の移動度は共に10-5cm2/Vsのオーダーで、わずかな電界依存性が見られた。結晶相では光電流の顕著な低下が見られ、結晶粒界による深い準位の形成が示唆された。
(例10)
例1〜9と同様にして、2.8−ジテトラデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(14−IQIQ−14)を合成し、その物性及び半導体特性等を測定した。10−IQIQ−10及び12−IQIQ−12と同様に、150℃付近でスメクチック相を発現し、そのLUMO準位は−3eVより深いことから、この材料は電子伝導に有効である。10−IQIQ−10及び14−IQIQ−14も同様に、−3eVより深いLUMO準位をもつと判断できる。
(例1〜10のまとめ)
結論、上記したように、低電子密度のイソキノ[8,7−h]イソキノリン(IQIQ)骨格をコア部に持つ新しい棒状液晶かつ有機半導体としても期待されるIQIQ誘導体である、2,8−ジデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(10−IQIQ−10)と2.8−ジドデシルイソキノ[8,7−h]イソキノリン(12−IQIQ−12)と2.8−ジテトラデシルイソキノリノ[8,7−h]イソキノリン(14−IQIQ−14)を簡便な手法を用いて比較的高い収率で合成した。
図5に示すように、10−IQIQ−10と2.8−ジテトラデシルイソキノリノ[8,7−h]イソキノリン(14−IQIQ−14)は限られた温度範囲で低次のスメクチック液晶相を発現したが、12−IQIQ−12は140℃〜150℃付近で高次のスメクチック相を発現し、そのLUMO準位は−3.33eVであった。この材料は電子伝導が期待される。
12−IQIQ−12と骨格構造が同じである10−IQIQ−10と2.8−ジテトラデシルイソキノリノ[8,7−h]イソキノリン(14−IQIQ−14)のLUMO準位が、12−IQIQ−12と同様に−3eVより深いことは確認されている。
TOF法による移動度の測定から、高次のスメクチック相では電子、正孔とも10-4cm2/Vs台の移動度で、等方相では10-5cm2/Vs台であった。このIQIQ材料は有機トランジスタへの応用が期待される。
例11
上記例と同様にして、2−フェニル−8−デシル−ベンゾチエノベンゾチオフェン(Ph−BTBT−10)を合成し、LUMO準位を測定したところ、−2.5eVであり、12−Chrysene−12と同様に3eV以下の浅いLUMO準位であり、BTBT骨格構造によって予想されるとおりの結果であった。
<参考文献>
本発明における用語の解釈、合成、実験、測定等の詳細な条件等に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
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12.A. J. J. M. van Breemen, P. T. Herwig, C. H. T. Chlon, J. Sweelssen, H. F. M. Schoo, S. Setayesh, W. M. Hardeman, C. A. Martin, D. M. de Leeuw, J. J. P. Valeton, C. W. M. Bastiaansen, D. J. Broer, A. R. Popa-Merticaru, and S. C. J. Meskers, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2336.
13. H. T. Yi, M. M. Payne, J. E. Anthony, V. Podzorov. Nat. Commun. 2012, 3, 1259.
14. S.Tatemichi, M.Ichikawa, T. Koyama,Y.Taniguchi. Appl. Phys. Lett. 2006, 89, 112108.
15. C. Wang, J. Zhang, G. Long, N. Aratani, H. Yamada, Y. Zhao, Q. Zhang. Angew.Chem. Int. Ed. 2015, 54, 6292.
16. G. Gruntz, H. Lee, L. Hirsch, F. Castet, T. Toupance, A. L. Briseno, Y. Nicolas. Adv. Electron. Mater. 2015, 1, 1500072.
17. Y. Ma, Q. Zheng, Z. Yin, D. Cai, S. Chen, C. Tang. Macromolecules. 2013, 46, 4813.
18. M. Kawamura, K. Nishimura, T. Iwakuma, K. Fukuoka, C. Hosokawa, M. Funahashi, T. Inoue, Y. Jinde, Y. Kawamura, M. Ito, Y. Tkashima, T. Ogiwara. U.S. Patent 2010194270, 2010.
19. M. Funahashi, J. I. Hanna, Phys. Rev. Lett. 1997, 78, 2184.
20. H. Ahn, A. Ohno, J. Hanna. Jpn. J. Appl. Phys. 2005, 44, 3764.
21. M. Funahashi, J. I. Hanna, Adv. Mater. 2005, 17, 594.

Claims (15)

  1. 下記式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットAと、該ユニットAと単結合で連結された脂肪族系鎖ユニットBと、該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機半導体材料であって;前記有機半導体材料が液晶性を示すことを特徴とする有機半導体材料。
  2. 前記ユニットAは下記式(2)
    (式中、aはそれぞれ独立して水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良く、少なくとも1つのaは該環状基である。)
    で表される構造を有し、ユニットB及びユニットCの夫々が、2つのaにそれぞれ単結合で結合されており、当該aが単結合であるときはユニットB及び/又はユニットCはIQIQに直接に単結合で結合される、請求項1に記載の有機半導体材料。
  3. 前記式(2)のaが、それぞれ独立して、下記構造式
    (式中、Rは水素原子又は脂肪族系鎖基である。)
    のいずれかで表される構造を有し、ユニットB及びユニットCの夫々は、上記構造の置換可能な部位又は原子と置換する形でaに結合し、上記式中のRが水素原子である場合にはRに置換して、又はRが脂肪族系鎖基である場合にはRの脂肪族系鎖基が有する水素原子に置換して、前記ユニットAに結合されることができる、請求項2に記載の有機半導体材料。
  4. ユニットBが、炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  5. ユニットCの脂肪族系鎖は、炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基であり、ユニットCの環状構造を含む基は、芳香族基、複素環基又は脂肪族環基を含む基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  6. LUMOの準位が−3eVよりも深い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  7. 室温において、トルエンへの溶解度が0.1wt%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  8. 電子および/又は正孔の移動度が10−4cm/Vsよりも大きい、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  9. N型半導体の性質を示す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  10. 液晶状態および結晶状態の少なくとも一方においてN型半導体の性質を示す、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  11. 発現する液晶相としてスメクチック(Sm)液晶相を示す、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  12. 下記式(1)で表されるイソキノリノ・イソキノリン(IQIQ)に基づく骨格構造を含むユニットAと、該ユニットAと単結合で連結された脂肪族系鎖ユニットBと、該ユニットAと単結合で連結された、脂肪族系鎖および/又は環状構造を含む基、または水素原子であるユニットCとを少なくとも有する有機化合物。
  13. 下記式(3)で表される、請求項12に記載の有機化合物。
    (式中、a、a、a及びaは、それぞれ独立して、水素原子であるか、または単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり、該飽和及び/又は不飽和の環状基は炭化水素基であるか又は1以上のヘテロ原子を含んでいても良いが、a、a、a及びaの少なくとも1つは単結合であるか、または飽和及び/又は不飽和の環状基であり;R、R,R及びRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、脂肪族系鎖基であり、R、R,R及びRのいずれかが脂肪族系鎖基でないとき、その残りのR、R,R及びRは水素原子であることができる。)
  14. 請求項12に記載の前記脂肪族系鎖ユニットB又は請求項13に記載の前記脂肪族系鎖基が、炭素原子数3〜20の脂肪族系鎖基である、請求項12又は13に記載の有機化合物。
  15. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機半導体材料又は請求項12〜14に記載の有機化合物を用いて形成された層を半導体層として有し、該半導体層に電気的に結合された正電極及び負電極を具備することを特徴とする半導体装置。
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