JPWO2017179349A1 - MgB2超伝導線材の製造方法,超伝導コイル及びMRI - Google Patents

MgB2超伝導線材の製造方法,超伝導コイル及びMRI Download PDF

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Abstract

本発明は,メカニカルミリング法を用いて,丸線や角線などの対称性の良い形状の線材の臨界電流密度を高めることを目的とする。本発明に係るMgB2超伝導線材の製造方法は、マグネシウム粉末とホウ素粉末に固体有機化合物を添加した後に衝撃を粉末に与えてマグネシウム粒子の内部にホウ素粒子が分散した混合体を作成する混合工程と、前記混合体を金属管に充填する充填工程と、前記混合体を充填した金属管を加工して線材にする伸線工程と、前記線材を熱処理してMgB2を合成する熱処理工程と、を有する。

Description

本発明は、臨界電流特性に優れた高密度なMgB2線材の製造方法に関する。
金属系超伝導体として最も高い約40 Kの臨界温度をもつMgB2は,超伝導線材や超伝導磁石への応用が期待されている。
超伝導線材の一般的な製法は,Powder in Tube (PIT) 法である。PIT法では,出発原料となる粉末を金属管に詰めて,引抜加工などの方法で伸線し,単芯線材(1本の超伝導フィラメントをもつ線材),または多芯線材(複数の超伝導フィラメントをもつ線材)を作製する。
出発原料にMgB2粉末を使用する方法をex situ法,マグネシウム粉末とホウ素の混合物を使用する方法をin situ法という。
超伝導線材を利用する際,その臨界電流密度が高いことが望ましい。臨界電流密度とはゼロ抵抗で通電できる電流密度の上限である。超伝導体の臨界電流密度は磁束ピンニング現象が決定づける。第二種超伝導体では磁束性が量子化されて試料内に侵入し,通電時に磁束線はローレンツ力を受ける。このとき磁束線が運動すると抵抗損失が生じる。このため,臨界電流密度を高めるには,磁束線をピンニングする欠陥や不均質部を試料内に導入する必要がある。
MgB2では主に結晶粒界において磁束線のピンニングが起こる。結晶粒界による磁束ピンニングは,結晶性を低下させるとともに結晶粒を小径化することにより強化される。800oC以上の温度でMgB2を合成すると,結晶性が高まるとともに結晶粒が成長しやすいとされ,磁束ピンニングの観点では700oC以下の温度で合成することが有効である。(非特許文献1) Ex situ法では,伸線加工後に熱処理をしなくてもMgB2粒子の接触により超伝導電流が流れる。ただし,MgB2粒子同士を焼結させることで,臨界電流密度は向上する。この焼結には,800-900oCの熱処理を必要とする。しかしながら,このような高温での熱処理は,先述したように,磁束ピンニングの観点からは必ずしも好ましいとはいえない。(非特許文献2) In situ法では,伸線加工後にマグネシウムとホウ素を反応させてMgB2を合成するための熱処理をする。このとき,700oC以下の熱処理温度であっても,十分にMgB2の生成が進み,磁束ピンニング力の高い微細組織が形成される。しかしながら,マグネシウムとホウ素からMgB2が生成する反応は体積収縮反応であるため,最終的なMgB2の充填率が低いという課題が指摘されている。一般に,MgB2はマグネシウムがホウ素粒子の領域に拡散することで生成し,さらに出発原料のマグネシウム粒子は数十マイクロメートルの大きさのものが使用されるため,この充填率の低下は微細組織内に多数生成する数十マイクロメートルの空隙が原因である。(非特許文献2)
このようにPIT法を代表する製法であるin situ法とex situ法にはそれぞれ課題があり,これらの製法は必ずしも最良な方法であるとはいえない。一方,マグネシウム粉末とホウ素粉末に対して遊星ボールミル装置を用いて混合することで,粉末の反応性を高める試みがなされている。以下ではこの方法をメカニカルアロイング法,またはメカニカルミリング法と呼ぶ。これらの方法では,熱処理をせずに混合だけでMgB2が一部生成し,このように一部MgB2の生成が起きたマグネシウムとホウ素の混合粉末を用いて合成したMgB2では高い電流密度を得られるという報告がある(例えば,非特許文献3,4,5,特許文献1)。
特許第4259806号公報
Supercond. Sci. Technol. 21 (2008) 015008 Jpn. J. Appl. Phys. 51 (2012) 010105 Supercond. Sci. Technol. 22 (2009) 125017 Appl. Phys. Lett. 91 (2007) 082507 Supercond. Sci. Technol. 23 (2010) 065001 Supercond. Sci. Technol. 27 (2014) 114001
メカニカルミリング法に関する報告の多くはテープに関するものである。一部,丸線に関する報告があるものの,その臨界電流密度は決して高くない。また,テープにおいては,テープ面と外部磁場の成す角によって,臨界電流密度の値が大きく変化する(非特許文献5)。
磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging: MRI)などの磁場の均一性が求められる用途では,断面が丸や角などの対称性の良い形状が好まれる。アスペクト比の大きなテープは巻線の寸法精度の確保が難しい。加えて,磁場方向に対して異方性な臨界電流密度を有する線材はコイル設計に制約を与える。
本発明は,メカニカルミリング法を用いて,丸線や角線などの対称性の良い形状の線材の臨界電流密度を高めることを目的とする。
本発明に係るMgB2超伝導線材の製造方法は、マグネシウム粉末とホウ素粉末に固体有機化合物を添加した後に衝撃を粉末に与えてマグネシウム粒子の内部にホウ素粒子が分散した混合体を作成する混合工程と、前記混合体を金属管に充填する充填工程と、前記混合体を充填した金属管を加工して線材にする伸線工程と、前記線材を熱処理してMgB2を合成する熱処理工程と、を有する。
本発明は,メカニカルミリング法を用いて,丸線や角線などの対称性の良い形状の線材の臨界電流密度を高めることができる。
引抜加工に使用するダイスの模式図 カセットロール加工に使用するダイスの模式図 作製した単芯線材の臨界電流密度の磁場依存性 in sit法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像 メカニカルミリング法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像 固体有機物を添加してメカニカルミリング法で作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像 熱処理前の試料INと試料MMCOにおける高倍の電子顕微鏡像 粉末X線回折プロファイル Ex situ線材と試料MMCOにおける高倍の電子顕微鏡像 Ex situ線材と試料MMCOにおける空隙の円相当径の個数基準累積頻度 Wire 1, 2, 3の断面構成 Wire 3の横断面 多芯線の他の断面構成。(a)さらにフィラメント数が多い場合,(b)中心に銅を配した場合 MRI装置の構成
以下,本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明は,次の手順によってMgB2線材を作製する。マグネシウム粉末とホウ素粉末と固体有機化合物を所定の割合となるように秤量する。固体有機化合物の一例として,芳香族炭化水素,有機酸,有機酸の金属塩などが挙げられる。また,固体有機化合物の添加量は,ホウ素に対する炭素の割合として7.5at%を超えないことが好ましい。粉末に衝撃を与えながら混合し,マグネシウム粉末の内部にホウ素粉末が分散した状態とする。このとき,MgB2が明確には生成しない(粉末X線回折にてMgB2のピークが明確には確認できない)ようにする。この混合方法の一例として遊星ボールミル混合が挙げられ,この方法ではボールが粉末に衝撃を与える。混合体は金属管に充填し,それを伸線加工して線材にする。伸線加工では,加工治具の線材と直接接触する部分が固定されておらず回転するような加工方法を工程の一部に用いるとよい。このような加工方法の一例として,カセットロール加工が挙げられる。あるいは,150?500oCの温度範囲での温間加工を工程の一部に用いてもよい。
このように作製したMgB2線材の縦断面は,次のような微細組織の特徴を有する。MgB2フィラメントの10 μmより大きい空隙が占める面積割合が5%以下であり,円相当径が20 nmより大きな空隙に対する個数基準分布のメディアン径が100nmより小さい。
多芯線の断面構成としては,MgB2フィラメントの周囲に,鉄,ニオブ,タンタル,またはチタンをバリア材として配置し,全てのMgB2フィラメントがバリア材を介して繋がっており,線材の最外層には純銅よりもビッカース硬さの硬い材料を配置し,純銅をMgB2フィラメントの周囲でも最外層でもない領域に配置すると,均一な断面構造の線材を作製することが可能となる。
表1に作製した試料の諸元を示す。すべての線材に対し,出発原料として,粒度−200mesh,純度>99.8%のマグネシウム粉末,粒径<250 nm,純度>98.5%のアモルファスホウ素粉末を使用した。
一部の試料に対して,固体有機物を添加した。固体有機物としては,コロネン(C24H12,純度>83%),ステアリン酸(C18H36O2,純度>99%)を使用した。マグネシウム,ホウ素,固体有機物を,原子組成比でMg: B: C = 1: 2(1?x): 2xとなるように秤量した。ここで,xは表1における添加量である。
混合方法は試料に応じて,「通常」または「メカニカルミリング」の二種の方法とした。「通常」では,原料粉末をプラスチック容器に直径10 mmのステンレスボールとともに封入し,ポットミル装置で混合した。「メカニカルミリング」では,原料粉末7 gを直径10 mmのジルコニア製ボール30個とともに容量80 mlのジルコニア製容器に封入し,遊星ボールミル装置で400rpm,6 hの条件で混合した。
混合体を,内径13.5 mm,外径18.0 mmの鉄管に充填し,直径0.5 mmまで伸線加工した。ここで,伸線加工は試料に応じて,引抜加工のみ,または引抜加工とカセットロール加工の併用とした。引抜加工とカセットロール加工を併用する場合には,直径0.8 mmまでを引抜加工,それ以降をカセットロール加工とした。引抜加工とは,図1に示すように,ダイスに空いたテーパー状の孔に試料を通して引き抜くことで伸線する加工法である。ダイスを徐々に孔が小さいものに交換しながら加工を繰り返すことで,試料の径を縮めて伸線していくことができる。カセットロール加工とは,図2に示すように,溝の切られたロールがボックスに取り付けられ,この溝に試料を通して引き抜くことで伸線する加工法である。ロールを徐々に溝の小さいものに交換しながら加工を繰り返すことで,試料の径を縮めて伸線していくことができる。引抜加工では試料は固定されたダイスから力を受けるのに対し,カセットロール加工では線材は回転するロールから力を受ける。
直径0.5 mmの線材をアルゴン雰囲気中で熱処理した。なお,表1に示す熱処理条件は,臨界電流密度が最大となるように最適化されたものである。
Figure 2017179349
図3にそれぞれの試料の臨界電流密度Jcの磁場Bに対する依存性を示す。無添加(固体有機物を添加していない)試料では,試料MMのJcが最も低い。また,試料INと試料MM-CRのJcは20 Kでほぼ等しいが,10 Kでは試料MM-CRの方が若干高い。固体有機物を添加すると,いずれも無添加の場合よりもJcが高まる。このとき,特に試料MMCO-CR,試料MMST-CRではJcが顕著に高まっている。
それぞれの試料を樹脂埋め後,乾式研磨とCross Section Polisher加工により縦断面を作製し,電子顕微鏡により観察した。
図4はin sit法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像である。上から順に、IN熱処理前(熱処理前の試料),IN600℃3h(熱処理後の試料),INCO600℃6h(熱処理後の試料)の縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。ここで,二次電子像は凹凸,反射電子像は組成および密度がより強調される。試料IN熱処理前では,淡色部がマグネシウム粒子の領域,濃色部がホウ素粒子の領域である。マグネシウム粒子は,引抜加工により線材長手方向に引き延ばされている。これを熱処理すると,もともとマグネシウム粒子だった領域は空隙となる。このように線材長手方向に伸びた多数の空隙を内包する微細組織はin situ線材に典型的なものであり,先述したようにこのような低い充填率がin situ法の課題である。試料INCOではコロネンC24H12が添加されていることが試料INと異なる点である。試料INCOのJcは試料INよりも大幅に改善しているが,両者の微細組織に特段の差異は認められず,このJcの改善は炭素置換効果によるものと考えられる。C24H12のように炭素化合物を添加すると,MgB2の結晶のホウ素サイトが炭素原子に置換される。置換された炭素原子は格子欠陥として振る舞い,電子の平均自由行程を短縮させることで上部臨界磁場を向上させ,特に高磁場域のJcが高まることが知られている。
図5はメカニカルミリング法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像である。上から順に、MM熱処理前(熱処理前の試料),MM600℃3h(熱処理後の試料),MM-CR熱処理前(熱処理前の試料),MM-CR600℃3h(熱処理後の試料)の縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。
これらの試料では,線材長手方向に直交する空隙が多い。熱処理前試料における反射電子像では,粉末粒子の境界が強調され,それぞれの粒子を識別することができる。熱処理前試料の空隙は,このような粒子同士の境界に生じている。また,熱処理後の微細組織では,熱処理前の空隙がそのまま残留することがわかる。試料MM-CRでは,試料MMと比較して空隙の数が減少している。試料MM-CRの熱処理前の微細組織からは,粉末粒子が潰され隙間が埋まることで空隙の数が減少していることが示唆される。すなわち,カセットロール加工には,メカニカルミリングによる混合体の粉末粒子を潰して,空隙の数を減少させる効果がある。ただし,試料MM-CRでは完全に空隙が消失したわけではなく,大きな空隙が残っており,これらは超伝導電流の輸送を妨げる要因となる。
図6は固体有機物を添加してメカニカルミリング法で作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像である。
上から順に、MM熱処理前(熱処理前の試料),MM600℃3h(熱処理後の試料),MM-CR熱処理前(熱処理前の試料),MM-CR600℃3h(熱処理後の試料)の縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。に試料MMCO-CR(熱処理前後),MMST-CRの縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。熱処理前の試料MMCO-CRでは,試料MM-CRと比較して,メカニカルミリングによる混合体の粉末粒子が線材長手方向に引き延ばされており,空隙は殆ど認められない。この結果,熱処理後も極めて緻密な微細組織となっている。また,試料MMST-CRも同様に,その微細組織は極めて緻密である。
ここで,固体有機化合物を添加したメカニカルミリング法線材における微細組織が緻密化する機構について考察する。図7において(a)は熱処理前の試料INの縦断面における高倍率の二次電子像であり、(b)は試料MMCO-CRの縦断面における高倍率の二次電子像である。試料INでは,伸線加工により引き延ばされたマグネシウム粒子の領域と,微細なホウ素粒子が集合した領域が存在する。ホウ素粒子は硬く変形しないため,ホウ素粒子が集合した領域には隙間が存在し,原理的に充填率が100%となることはない。一方,試料MMCO-CRでは,遊星ボールミルによる混合の過程でマグネシウムのマトリクスにホウ素粒子が分散した微細組織となるため,理想的には100%の充填率にすることができる。Mg,B,MgB2の真密度はそれぞれ1.74,2.36,2.62 g cm?3であるため熱処理によるMgB2の生成過程で24%の体積収縮が起こるが,熱処理前の充填率が高いメカニカルミリング法の方が熱処理後も高い充填率を維持できる。
図8は粉末X線回折プロファイルである。(a)に試料MMCOの充填粉末のX線回折プロファイルを示す。ピークとともに示した指数はマグネシウムのそれであり,殆どのピークがマグネシウムと同定された。(b)に試料INから取り出したMgB2粉末のX線回折プロファイルを示す。ピークとともに示した指数はMgB2のそれである。図8(a),(b)を比較するとわかるように,試料MMCOの充填粉末ではMgB2相は確認されない。すなわち,試料MMCOにおける遊星ボールミルによる混合ではMgB2の生成は起きていないと考えられ,この点は非特許文献4の製法と異なる。
一方,マグネシウムのマトリクスにホウ素が分散したメカニカルミリング法による充填粉末の粒子は純粋なマグネシウムと比較して変形し難い。このため,試料MMでみられるような粒子同士の境界に隙間が残る。この隙間は引抜加工にカセットロール加工を併用することである程度埋めることが可能であるが,この対策だけで十分とはいえない。しかしながら,固体有機物を添加することで,本来は硬く変形し難いはずの充填粉末が線材長手方向に引き延ばされるようになり,微細組織が緻密化する。したがって,メカニカルミリング法における固体有機化合物の添加には,炭素置換効果だけではなく,微細組織を緻密化する効果がある。この結果,in situ法では到達できない極めて高いJcを得ることができる。
実施例1ではカセットロール加工を用いたが,メカニカルミリング法による充填粉末粒子の変形を促すのであれば他の加工方法であっても構わない。カセットロール加工は,加工治具から試料への力の加わり方が引抜加工よりは圧延加工に近い。例えば溝ロールなどのように,加工治具の線材と直接接触する部分が固定されておらず、回転する複数の加工治具の間に混合粉末が充填された前記金属管を通して金属管を縮径するような加工方法であれば,同様の効果を期待できる。一方,温間加工も有効である。充填粉末粒子のマトリクスであるマグネシウムは,結晶構造が六方最密充填構造であり,室温では主に底面すべりしか塑性変形に寄与しないので加工が困難とされるが,150oC以上に加熱すると非底面すべりが塑性変形に寄与するようになり加工性が改善する。ただし,加熱温度はMgB2が生成するよりも低い温度,例えば500oC以下とすることが好ましい。
添加する固体有機化合物の種類としてどの化合物が最も良いかについては明確ではない。しかしながら,コロネンなどの炭化水素,ステアリン酸などの有機酸,ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸の金属塩には,十分に微細組織を緻密化する効果が認められた。
製造後の線材の性能(臨界電流密度)で評価すると、有機酸または有機酸の金属塩を用いる方が、炭化水素を用いるよりも優れている。
固体有機化合物の添加量が変化すると,臨界電流密度の温度と磁場に対する依存性が変化する。このため,固体有機化合物の添加量は線材を使用する温度と磁場の環境に応じて適切に選択する必要がある。これは,MgB2のホウ素サイトの炭素置換率が変化するためである。一方,固体有機化合物の添加による微細組織の緻密化の観点からは,あまり多量に入れ過ぎることは好ましくはない。コロネン,ステアリン酸について,添加量に対する依存性を調べたところ,ホウ素に対する炭素の配合比率は0.1at%以上7.5at%未満が好ましく,特に1.0at%以上3.0at%以下が好ましいことが分かった。一方、7.5at%以上を添加した場合には,マグネシウム粒子の内部にホウ素が分散した状態を形成できなくなった。マグネシウムの内部にホウ素が取り込まれる過程は,遊星ボールミル混合におけるマグネシウムの粉砕と結着の繰返しによるものである。固体有機化合物の添加量が多すぎる場合,固体有機化合物がマグネシウムの表面を覆って結着が防止され,ホウ素が内部に取り込まれなくなる。同様に,液体の有機化合物を添加した場合も,マグネシウムの結着が防止されてマグネシウム粒子の内部にホウ素が分散した状態が形成されない。したがって,固体有機化合物の添加量は7.5at%を超えないことが好ましく,もしそれよりも炭素置換量を増やしたい場合には,金属炭化物などの他の炭素を含む添加材と併用するとよい。
本発明によるMgB2超伝導線材のMgB2フィラメントは,特徴的な微細組織を有する。まず,粗大な空隙がほぼ存在しない。MgB2フィラメントに占める長さが10μmより大きい空隙の面積割合は5%以下である。ここで,空隙の長さとは,空隙の外周上の任意の2点を結んでできる線分のうち最長のものの長さとして定義する。このような緻密な微細組織を通常のin situ法により形成することはできない。
粗大な空隙の量が少ないという特徴はex situ法による線材にもみられるが(非特許文献2),ex situ法とMMCO-CRとではより高倍の微細組織に差異がある。図9に試料MMCO-CR(左側)と比較のために作製した単芯ex situ線材(右側)の高倍の微細組織を比較する。試料MMCO-CRはex situ線材と比較して空隙の大きさがずっと小さくみえる。ここで,空隙の円相当径の個数基準分布を図10に示す。なお,20 nmよりも小さな空隙については,電子顕微鏡像からの識別が難しいため,ここではそれよりも大きな空隙を扱う。MMCO-CRのメディアン径は60 nm程度であるのに対し,ex situ線材のメディアン径は200 nm程度である。このように空隙の大きさに差が生じるのは次の理由による。試料MMCO-CRは,ホウ素粒子へのマグネシウムの侵入によりMgB2の生成が起こるため,もともとのホウ素粒子どうしの隙間が空隙として残留する。MgB2の合成に使用されるホウ素粉末の粒子径は通常100 nm程度であるため,空隙も微細になる。一方,ex situ法ではMgB2粒子を焼結させるため,MgB2粒子どうしの隙間が空隙として残留する。MgB2粉末は一般的にはMgB2を合成後に粉砕処理によって微細化されるが,粉砕によって到達できる粒子径はせいぜい1 μm程度であり(非特許文献6),その結果,ex situ法による線材の空隙はMMCO-CRと比較して大きくなる。
様々な材料構成で多芯線材を作製した。内径13 mm,外径18 mmの金属管を準備し,試料MMCO-CRに使用したものと同一の方法で準備した粉末を充填した。それを外径12 mmまで引抜加工し,次に六角ダイスを通して対辺長さ10.2 mmの六角形の断面をもつ線材を作製した。六角線材の外側に金属管を被せ,中心には金属棒を挿入した。この組込材を引抜加工で加工した後にカセットロール加工で外径1.5 mmまで伸線した。
ここで,粉末充填管,外被管,中心棒の材質を表2の組合せとした。理想的に加工が進むと図11に示すような断面構成となる。Wire 1については,組込後の加工の過程でフィラメントの周囲を囲む鉄の層が至るところで破れ,フィラメントの形状も乱れたものとなった。Wire 2についても鉄の層の破れが認められたが,Wire 1の方が破れは著しかった。Wire 3では,図11に示したものに近い断面が得られた。Wire 3の実際の断面を図12に示す。
Figure 2017179349
メカニカルミリング法による充填粉末は硬く,伸線過程で鉄の層を突き破ることがある。しかしながら,Wire 3のように全てのフィラメントが鉄を介して繋がった断面構成とすることで,鉄の層が破れるリスクを著しく低減することができる。なお,MgB2と接する部分の材料は,マグネシウムと実質的に反応しない物質であればよく,鉄の他に,ニオブ,タンタル,チタンなどが挙げられる。
最外層の材質については,銅のように柔らかい材料の場合,フィラメントの形状が伸線過程で乱れやすくなるため,モネルなどの高強度の材料とすることが有効である。モネルのほかに,ニッケル,キュプロニッケル,鉄などを使用してもよい。
なお,本実施例では,フィラメント数を6として試作したが,フィラメント数は最低限2本あれば多芯線と呼ぶことができ,6本より多くても構わない。また,図13(a)に示すように,フィラメントを複数の同心円に沿って並べてもよい。
熱的な安定化の観点から,超伝導線では断面構成に純銅を配することが多きが,純銅は例えば図11のように最外層のすぐ内側に配してもよいし,図13(b)に示すように線材の中心に配してもよい。
本実施例では,本発明の超伝導線材を用いて超伝導コイルを作製する二つの方法について説明する。
第一の方法は,ワインド・アンド・リアクト法であり,ボビンに超伝導線材を巻き回した後に必要に応じた熱処理を加える。超伝導コイルを作製する場合,超伝導線材同士が短絡するとコイルの励磁速度を速めることができないので,超伝導線材に絶縁材を被せることが好ましい。後工程で熱処理をするワインド・アンド・リアクト法では,絶縁材に熱処理に耐えられる材料,例えばガラス繊維を用いる。その後,熱処理を施した後に,必要に応じて樹脂含浸などをすることで超伝導線材を固定する。
第二の方法は,リアクト・アンド・ワインド法であり,超伝導線材に熱処理を施した後に,ボビンに超伝導線材を巻き回す。この場合,超伝導線材の熱処理後に絶縁材を被せることができ,絶縁材にはエナメルなどの耐熱性のないものを使用することができる。超伝導線材をボビンに巻き回した後で,必要に応じて樹脂含浸などで超伝導線材を固定する。
本実施例では,本発明の超伝導線材を用いたMRIの構成について説明する。図14にMRIの構成図を示す。超伝導線材を用いた超伝導コイルは永久電流スイッチとともにクライオスタット102に格納され,冷媒または冷凍機で冷却される。超伝導コイル101と永久電流スイッチ103のつくる回路を流れる永久電流は,測定対象の位置に時間安定性の高い静磁場を発生させる。この静磁場強度が高いほど,核磁気共鳴周波数が高くなり,周波数分解能が向上する。傾斜磁場コイル111には,傾斜磁場用アンプ112から必要に応じて時間変化する電流が供給され,測定対象110の位置に空間的な分布を持つ磁場を発生させる。さらにRF(Radio Frequency)アンテナ113とRF送受信機114を用いて測定対象に核磁気共鳴周波数の振動磁場を印加し,測定対象から発せられる共鳴信号を受信することで,測定対象の断層画像診断が可能となる。
本発明のMgB2超伝導線材は,超伝導機器の設計に制約を与えず使用しやすい丸や角の断面形状をもち,高い臨界電流密度をもつ。本発明の超伝導機器は,その超伝導線材の高い臨界電流密度により,その運転のための冷却温度をより高く設定することができる。このため,液体ヘリウムや冷却に必要とする冷凍機の電気代を節約することができる。
1:ダイス,2:孔,3:ロール,4:ロール固定治具,5:溝,6:フィラメント,7:バリア材,8:銅,9:外被材,101:超伝導コイル,102:クライオスタット,103:永久電流スイッチ,110:測定対象,111:傾斜磁場コイル,112:傾斜磁場用アンプ,113:RFアンテナ,114:送受信機
Supercond. Sci. Technol. 21 (2008) 015008 Jpn. J. Appl. Phys. 51 (2012) 010105 Supercond. Sci. Technol. 22 (2009) 125017 Appl. Phys. Lett. 91 (2007) 082507 Supercond. Sci. Technol. 23 (2010) 065001
本発明に係るMgB2超伝導線材の製造方法は、マグネシウム粉末とホウ素粉末に固体有機化合物を添加した後に衝撃を粉末に与えてマグネシウム粒子の内部にホウ素粒子が分散した混合体を作する混合工程と、前記混合体を金属管に充填する充填工程と、前記混合体を充填した金属管を加工して線材にする伸線工程と、前記線材を熱処理してMgB2を合成する熱処理工程と、を有する。
引抜加工に使用するダイスの模式図 カセットロール加工に使用するダイスの模式図 作製した単芯線材の臨界電流密度の磁場依存性 in situ法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像 メカニカルミリング法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像 固体有機化合物を添加してメカニカルミリング法で作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像 熱処理前の試料INと試料MMCO-CRにおける高倍の電子顕微鏡像 粉末X線回折プロファイル ex situ線材と試料MMCO-CRにおける高倍の電子顕微鏡像 ex situ線材と試料MMCO-CRにおける空隙の円相当径の個数基準累積頻度 Wire 1, 2, 3の断面構成 Wire 3の横断面 多芯線の他の断面構成。(a)さらにフィラメント数が多い場合,(b)中心に銅を配した場合 MRI装置の構成
本発明は,次の手順によってMgB2線材を作製する。マグネシウム粉末とホウ素粉末と固体有機化合物を所定の割合となるように秤量する。固体有機化合物の一例として,芳香族炭化水素,有機酸,有機酸の金属塩などが挙げられる。また,固体有機化合物の添加量は,ホウ素に対する炭素の割合として7.5at%を超えないことが好ましい。粉末に衝撃を与えながら混合し,マグネシウム粉末の内部にホウ素粉末が分散した状態とする。このとき,MgB2が明確には生成しない(粉末X線回折にてMgB2のピークが明確には確認できない)ようにする。この混合方法の一例として遊星ボールミル混合が挙げられ,この方法ではボールが粉末に衝撃を与える。混合体は金属管に充填し,それを伸線加工して線材にする。伸線加工では,加工治具の線材と直接接触する部分が固定されておらず回転するような加工方法を工程の一部に用いるとよい。このような加工方法の一例として,カセットロール加工が挙げられる。あるいは,150500oCの温度範囲での温間加工を工程の一部に用いてもよい。
一部の試料に対して,固体有機化合物を添加した。固体有機化合物としては,コロネン(C24H12,純度>83%),ステアリン酸(C18H36O2,純度>99%)を使用した。マグネシウム,ホウ素,固体有機化合物を,原子組成比でMg: B: C = 1: 2(1x): 2xとなるように秤量した。ここで,xは表1における添加量である。
図3にそれぞれの試料の臨界電流密度Jcの磁場Bに対する依存性を示す。無添加(固体有機化合物を添加していない)試料では,試料MMのJcが最も低い。また,試料INと試料MM-CRのJcは20 Kでほぼ等しいが,10 Kでは試料MM-CRの方が若干高い。固体有機化合物を添加すると,いずれも無添加の場合よりもJcが高まる。このとき,特に試料MMCO-CR,試料MMST-CRではJcが顕著に高まっている。
図4はin situ法により作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像である。上から順に、IN熱処理前(熱処理前の試料),IN600℃3h(熱処理後の試料),INCO600℃6h(熱処理後の試料)の縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。ここで,二次電子像は凹凸,反射電子像は組成および密度がより強調される。試料IN熱処理前では,淡色部がマグネシウム粒子の領域,濃色部がホウ素粒子の領域である。マグネシウム粒子は,引抜加工により線材長手方向に引き延ばされている。これを熱処理すると,もともとマグネシウム粒子だった領域は空隙となる。このように線材長手方向に伸びた多数の空隙を内包する微細組織はin situ線材に典型的なものであり,先述したようにこのような低い充填率がin situ法の課題である。試料INCOではコロネンC24H12が添加されていることが試料INと異なる点である。試料INCOのJcは試料INよりも大幅に改善しているが,両者の微細組織に特段の差異は認められず,このJcの改善は炭素置換効果によるものと考えられる。C24H12のように炭素化合物を添加すると,MgB2の結晶のホウ素サイトが炭素原子に置換される。置換された炭素原子は格子欠陥として振る舞い,電子の平均自由行程を短縮させることで上部臨界磁場を向上させ,特に高磁場域のJcが高まることが知られている。
図6は固体有機化合物を添加してメカニカルミリング法で作製した単芯線材の縦断面の電子顕微鏡像である。
上から順に、MM熱処理前(熱処理前の試料),MM600℃3h(熱処理後の試料),MM-CR熱処理前(熱処理前の試料),MM-CR600℃3h(熱処理後の試料)の縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。に試料MMCO-CR(熱処理前後),MMST-CRの縦断面の二次電子像と反射電子像を示す。熱処理前の試料MMCO-CRでは,試料MM-CRと比較して,メカニカルミリングによる混合体の粉末粒子が線材長手方向に引き延ばされており,空隙は殆ど認められない。この結果,熱処理後も極めて緻密な微細組織となっている。また,試料MMST-CRも同様に,その微細組織は極めて緻密である。
ここで,固体有機化合物を添加したメカニカルミリング法線材における微細組織が緻密化する機構について考察する。図7において(a)は熱処理前の試料INの縦断面における高倍率の二次電子像であり、(b)は試料MMCO-CRの縦断面における高倍率の二次電子像である。試料INでは,伸線加工により引き延ばされたマグネシウム粒子の領域と,微細なホウ素粒子が集合した領域が存在する。ホウ素粒子は硬く変形しないため,ホウ素粒子が集合した領域には隙間が存在し,原理的に充填率が100%となることはない。一方,試料MMCO-CRでは,遊星ボールミルによる混合の過程でマグネシウムのマトリクスにホウ素粒子が分散した微細組織となるため,理想的には100%の充填率にすることができる。Mg,B,MgB2の真密度はそれぞれ1.74,2.36,2.62 g cm 3であるため熱処理によるMgB2の生成過程で24%の体積収縮が起こるが,熱処理前の充填率が高いメカニカルミリング法の方が熱処理後も高い充填率を維持できる。
一方,マグネシウムのマトリクスにホウ素が分散したメカニカルミリング法による充填粉末の粒子は純粋なマグネシウムと比較して変形し難い。このため,試料MMでみられるような粒子同士の境界に隙間が残る。この隙間は引抜加工にカセットロール加工を併用することである程度埋めることが可能であるが,この対策だけで十分とはいえない。しかしながら,固体有機化合物を添加することで,本来は硬く変形し難いはずの充填粉末が線材長手方向に引き延ばされるようになり,微細組織が緻密化する。したがって,メカニカルミリング法における固体有機化合物の添加には,炭素置換効果だけではなく,微細組織を緻密化する効果がある。この結果,in situ法では到達できない極めて高いJcを得ることができる。
粗大な空隙の量が少ないという特徴はex situ法による線材にもみられるが(非特許文献2),ex situ法とMMCO-CRとではより高倍の微細組織に差異がある。図9に試料MMCO-CR(左側)と比較のために作製した単芯ex situ線材(右側)の高倍の微細組織を比較する。試料MMCO-CRはex situ線材と比較して空隙の大きさがずっと小さくみえる。ここで,空隙の円相当径の個数基準分布を図10に示す。なお,20nmよりも小さな空隙については,電子顕微鏡像からの識別が難しいため,ここではそれよりも大きな空隙を扱う。MMCO-CRのメディアン径は60nm程度であるのに対し,ex situ線材のメディアン径は200nm程度である。このように空隙の大きさに差が生じるのは次の理由による。試料MMCO-CRは,ホウ素粒子へのマグネシウムの侵入によりMgB2の生成が起こるため,もともとのホウ素粒子どうしの隙間が空隙として残留する。MgB2の合成に使用されるホウ素粉末の粒子径は通常100nm程度であるため,空隙も微細になる。一方,ex situ法ではMgB2粒子を焼結させるため,MgB2粒子どうしの隙間が空隙として残留する。MgB2粉末は一般的にはMgB2を合成後に粉砕処理によって微細化されるが,粉砕によって到達できる粒子径はせいぜい1μm程度であり(Supercond. Sci. Technol. 27 (2014) 114001),その結果,ex situ法による線材の空隙はMMCO-CRと比較して大きくなる。
熱的な安定化の観点から,超伝導線では断面構成に純銅を配することが多が,純銅は例えば図11のように最外層のすぐ内側に配してもよいし,図13(b)に示すように線材の中心に配してもよい。
1:ダイス,2:孔,3:ロール,4:ロール固定治具,5:溝,6:フィラメント,7:バリア材,8:銅,9:外被材,101:超伝導コイル,102:クライオスタット,103:永久電流スイッチ,110:測定対象,111:傾斜磁場コイル,112:傾斜磁場用アンプ,113:RFアンテナ,114:RF送受信機

Claims (10)

  1. マグネシウム粉末とホウ素粉末に固体有機化合物を添加した後に衝撃を粉末に与えてマグネシウム粒子の内部にホウ素粒子が分散した混合体を作製する混合工程と、
    前記混合体を金属管に充填する充填工程と、
    前記混合体を充填した金属管を加工して線材にする伸線工程と、
    前記線材を熱処理してMgB2を合成する熱処理工程と、を有するMgB2超伝導線材の製造方法。
  2. 請求項1に記載のMgB2超伝導線材の製造方法であって、
    前記固体有機化合物が、炭化水素、有機酸、または有機酸の金属塩であることを特徴とするMgB2超伝導線材の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のMgB2超伝導線材の製造方法であって、
    前記固体有機化合物の添加量が、ホウ素に対する炭素の配合比率として7.5at%未満であることを特徴とするMgB2超伝導線材の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のMgB2超伝導線材の製造方法であって、
    前記混合工程における衝撃を粉末に与える方法はメカニカルミリング法であることを特徴とするMgB2超伝導線材の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のMgB2超伝導線材の製造方法であって、
    前記伸線工程において、
    回転する複数の加工治具の間に前記混合粉末が充填された前記金属管を通して前記金属管を縮径することを特徴とするMgB2超伝導線材の製造方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のMgB2超伝導線材の製造方法であって、
    前記縮径工程において、
    150以上500℃以下の温度で加熱しながら前記金属管を縮径することを特徴とするMgB2超伝導線材の製造方法。
  7. MgB2フィラメントと外層金属材とからなるMgB2超伝導線材であって、
    前記MgB2フィラメントの領域において長さが10μmより大きい空隙が占める面積割合が5%以下であり、
    円相当径が20nmより大きな空隙に対する個数基準分布のメディアン径が100nmより小さいことを特徴とするMgB2超伝導線材。
  8. 請求項7に記載のMgB2超伝導線材であって、
    前記MgB2フィラメントを複数有し、
    前記MgB2フィラメントの周囲には、鉄、ニオブ、タンタルまたはチタンを主成分とするバリア材が配置され、
    前記複数のMgB2フィラメントが前記バリア材を介して繋がっており、
    前記バリア材料の外周には、銅で構成する銅層を有し、
    前記銅層の外周には、銅よりビッカース硬さの高い材料で構成する外被材を有することを特徴とするMgB2超伝導線材。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載のMgB2超伝導線材を含む超伝導コイル。
  10. 請求項9に記載の超伝導コイルと、被検体からの核磁気共鳴信号を解析する解析手段とを備えたことを特徴とするMRI。
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