JPWO2017111129A1 - 急性リンパ性白血病関連の新規遺伝学的異常及びその利用 - Google Patents

急性リンパ性白血病関連の新規遺伝学的異常及びその利用 Download PDF

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Abstract

急性リンパ性白血病の治療方針の決定や予後予測などに役立つ、新規な遺伝学的異常を見出し、治療成績の向上に貢献することを課題とする。再発小児急性リンパ性白血病患者から、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる遺伝学的異常が見出された。この遺伝学的異常は治療方針を決定する際の新たな指標となる。

Description

本発明は急性リンパ性白血病に関連する新規遺伝学的異常に関する。詳しくは、新たに見出されたMEF2D-BCL9融合遺伝子の各種用途(例えば、検査方法、治療方針の決定、治療方法)等に関する。本出願は、2015年12月25日に出願された日本国特許出願第2015−255179号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
急性リンパ性白血病(ALL; acute lymphoblastic leukemia)は小児期において最も頻度の高い白血病である。日本においては年間500例が発生し、長期生存率は80%前後である。ALLの特徴として非常に多様な遺伝学的異常(遺伝子融合、遺伝子欠失・増幅、点変異)を伴って発症することが知られている(非特許文献1)。そして、備える遺伝学的異常の違いによって、生命予後や各種治療法への反応性が異なる。例えば、ETV6-RUNX1融合遺伝子やTCF3-PBX1融合遺伝子を有するALLは通常の化学療法によく反応し、予後良好である。BCR-ABL融合遺伝子を有するALLは予後不良とされていたが、BCR-ABLの分子標的薬(イマチニブ、ダサチ二ブ等)を用いた治療で予後が改善することが明らかとなった。TP53遺伝子やIKZF1遺伝子に点変異・欠失を有するALLや、21番染色体内に部分的な増幅を有するALLは予後不良である。NT5C2遺伝子に点変異を有するALLは特定の化学療法(6-メルカプトプリン)に対して抵抗性を備える(特許文献1)。近年の大規模研究によって、活性化型チロンンキナーゼ変異(点変異や遺伝子融合による)を有するALLの一群が同定され、対応するチロンンキナーゼ阻害薬によって治療できる可能性が示された。
国際公開第2014/074651号パンフレット 国際公開第2005/082933号パンフレット
Roberts KG et al. Genomics in acute lymphoblastic leukemia: insights and treatment implications. External Web Site Icon. Nat Rev Clin Oncol 2015 Jun (6) 344-357 Yuki Y et. al. Identification of a novel fusion gene in a pre-B acute lymphoblastic leukemia with t(1;19)(q23;p13). Cancer Sci. 2004 Jun;95(6):503-7. Prima V et. al. Cooperative transformation by MEF2D/DAZAP1 and DAZAP1/MEF2D fusion proteins generated by the variant t(1;19) in acute lymphoblastic leukemia. Leukemia. 2007 Dec;21(12):2470-5. Lilljebjorn H et. al. RNA-seq identifies clinically relevant fusion genes in leukemia including a novel MEF2D/CSF1R fusion responsive to imatinib. Leukemia. 2014 Apr;28(4):977-9.
ALLにおいて様々な遺伝学的異常が発見されているが、未だに予後を予測する遺伝学的異常が見つからない例(B-other ALL)が存在する。これを説明する仮説の一つとして、未だにALLにおける遺伝的異常の解明は不十分である可能性が考えられる。例えば、診断時点における解析の報告は数多く存在するが、再発時点など、より病期の進行した時点での解析の報告はほとんどない。世界的にはALL患者の長期生存率は90%にまで改善しつつあるが、さらに治療成績を改善するためには、特定の化学療法への反応を予測する新たな遺伝学的異常や、分子標的治療の標的となる遺伝学的異常を探すことが必要と考えられる。
このように、治療方針の決定や予後予測などに役立つ、未知の遺伝学的異常を見出すことが望まれている。そこで本発明は、このようなニーズに応え、ALLの治療成績の向上に貢献することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を行った。まず、再発又は治療抵抗性の小児ALL 59例(乳児ALL 3例、Ph1陽性ALL 6例、T細胞性ALL 4例、成熟B細胞性ALL 3例を含む)において、骨髄又は末梢血の白血病細胞を用いてRNAシーケンスを行った。その結果、4例でMEF2D-BCL9融合遺伝子が同定された。これらの4例は、発症年齢が比較的高い年齢(10〜13歳)であることや、短期間で再発し、再発後の治療も困難であること、更には細胞の形態(巨大な空胞を有する)が通常のALLと異なることなど、共通の特徴を示した。さらに、これらの4例においては、ALLの既知の遺伝学的異常は見つからなかった。即ち、MEF2D-BCL9融合遺伝子が単独で特徴的なALLの一群を規定することが示唆された。従って、当該融合遺伝子の形成で特徴付けられる遺伝学的異常の存在を指標にすれば、当該症例を特定でき、より有効な治療方針の決定が可能になるといえる。尚、MEF2D遺伝子については、DAZAP1遺伝子との融合(特許文献2、非特許文献2、3)、CSF1R遺伝子との融合(非特許文献4)が報告されている。
更に検討した結果、ゲノムにおけるMEF2D遺伝子とBCL9遺伝子の切断点の特定に成功し、検出法の確立ないし実現が可能になった。また、切断点の情報を基にプライマーを設計し、初発の急性白血病115例(B前駆細胞性ALL 100例、T細胞性ALL 4例、急性骨髄性白血病 10例、混合形質性急性白血病 1例、急性混合性白血病 1例)でMEF2D-BCL9融合遺伝子のスクリーニングを行ったが、検出される症例はなく、当該融合遺伝子が上記4例に特徴的な遺伝子異常であることが裏づけられた。
一方、MEF2D-BCL9融合遺伝子を指標とした新たな治療戦略の確立を目指し、更に検討を進めた。まず、MEF2D-BCL9融合遺伝子の陽性4症例における腫瘍細胞の発現解析を行った。その結果、古典的な予後不良因子として知られているHDAC9遺伝子の特徴的な高発現が観察された。HDAC9はクラスIIaのヒストン脱アセチル化酵素であり、転写調節に関わる。HDAC9の阻害に有効な薬剤としてボリノスタット(vorionstat)、キシノスタット(quisinostat)、TMP269等のHDAC阻害剤が開発されている。HDAC阻害剤を使用した治療法の有効性を調べるため、患者由来初代培養白血病細胞を用いた薬剤感受性試験を行った。その結果、HDAC阻害剤(ボリノスタット、キシノスタット)が有意な細胞増殖阻害活性を示した。また、近年、治療抵抗性B前駆細胞性ALLに対して効果が期待されているプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブ(bortezomib)にも同様の活性が認められた。即ち、HDAC阻害剤及びプロテアソーム阻害剤が当該症例の治療に有効である可能性が示された。
以下の発明は、主として上記の成果に基づく。
[1]以下のステップ(1)〜(3)を含む、急性リンパ性白血病の検査方法:
(1)急性リンパ性白血病患者から単離した白血病細胞を含む検体を用意するステップ;
(2)前記検体における、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又は該融合遺伝子がコードする融合タンパク質の存否を検出するステップ;
(3)前記融合遺伝子又は前記融合タンパク質が検出された場合に予後不良又は治療困難と判定するステップ。
[2]MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって前記融合遺伝子が形成される、[1]に記載の検査方法。
[3]ステップ(2)における前記融合遺伝子の検出が、RT-PCR法、PCR法、PCR-RFLP、PCR-SSCP法、RNAシーケンス解析、ターゲットシーケンス解析、FISH法及び全ゲノム解析からなる群より選択されるいずれかの検出法によって行われ、ステップ(2)における前記融合タンパク質の検出が免疫学的測定法によって行われる、[1]又は[2]に記載の検査方法。
[4]前記急性リンパ性白血病患者が小児である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の検査方法。
[5]以下のステップ(4)又は(4')を更に含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の検査方法:
(4)前記ステップ(3)の判定に基づき、前記急性リンパ性白血病患者が属するリスク群を特定し、治療方針を決定又は変更するステップ;
(4')前記ステップ(3)の判定と、他の検査の結果に基づき、前記急性リンパ性白血病患者が属するリスク群を特定し、治療方針を決定又は変更するステップ。
[6]前記リスク群が高リスク群である、[5]に記載の検査方法。
[7]前記ステップ(4)又は(4')で変更した後の治療方針が、変更前よりも強化された療法を含む、[5]又は[6]に記載の検査方法。
[8]前記ステップ(4)又は(4')で決定した又は変更した後の治療方針が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤の投与による処置を含む、[5]又は[6]に記載の検査方法。
[9]前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がヒストン脱アセチル化酵素9阻害剤である、[8]に記載の検査方法。
[10]前記ステップ(4)又は(4')で決定した又は変更した後の治療方針が、造血幹細胞移植の適応を含む、[5]又は[6]に記載の検査方法。
[11]前記造血幹細胞移植が第1寛解期に実施される、[10]に記載の検査方法。
[12][5]〜[11]のいずれか一項に記載の検査方法で決定した又は変更した後の治療方針に従って前記急性リンパ性白血病患者を処置することを含む、急性リンパ性白血病の治療方法。
[13]ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤を含む、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる急性リンパ性白血病患者を治療するための医薬。
[14]前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がヒストン脱アセチル化酵素9阻害剤である、[13]に記載の医薬。
[15]MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる急性リンパ性白血病患者に対して、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤を含む医薬を治療上有効量投与することを含む、急性リンパ性白血病の治療方法。
[16]前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がヒストン脱アセチル化酵素9阻害剤である、[15]に記載の治療方法。
[17]MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって形成される、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の転写産物であるmRNAに相補的なDNAを特異的に増幅できるように設計したフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセット。
[18]MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって形成される、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を特異的に増幅できるように設計したフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセット。
[19][17]又は[18]に記載のプライマーセットを含む、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる遺伝学的異常の検出用キット。
[20]前記プライマーセットとして以下のプライマーセットを含む、[19]に記載の検出用キット:
MEF2D遺伝子のエクソン1〜6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
[21]前記プライマーセットとして以下の(a1)〜(a3)の中の一つ以上を含む、[19]に記載の検出用キット:
(a1)MEF2D遺伝子のエクソン3〜4の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット;
(a2)MEF2D遺伝子のエクソン5〜6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット;
(a3)MEF2D遺伝子のエクソン6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット。
[22]前記プライマーセットとして以下の(b1)及び/又は(b2)を含む、[19]に記載の検出用キット:
(b1)MEF2D遺伝子のエクソン2の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット;
(b2)MEF2D遺伝子のエクソン5の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット。
[23]以下のステップ(i)〜(iii)を含む、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる急性リンパ性白血病患者の治療に有効な物質のスクリーニング方法:
(i)MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を発現する細胞を用意するステップ;
(ii)試験物質の存在下、前記細胞を培養するステップ;
(iii)細胞の生存数を測定し、前記試験物質の有効性を判定するステップ。
[24]MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子。
[25]MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって生ずる、[24]に記載の融合遺伝子。
[26]MEF2D遺伝子のエクソン1〜6とBCL9遺伝子のエクソン10又はその一部を含む、[25]に記載の融合遺伝子。
[27]配列番号11の配列と配列番号12の配列を含む、[26]に記載の融合遺伝子。
[28][24]〜[27]のいずれか一項に記載の融合遺伝子がコードする融合タンパク質。
[29]配列番号13の配列と配列番号14の配列を含む、[28]に記載の融合タンパク質。
[30][24]〜[27]のいずれか一項に記載の融合遺伝子の転写産物であるmRNAに相補的なDNA。
[31]配列番号15の配列と配列番号16の配列を含む、[30]に記載のDNA。
[32]MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子がコードする融合タンパク質を認識する抗体。
[33]前記融合タンパク質が、[28]又は[29]に定義される融合タンパク質である、[32]に記載の抗体。
小児ALLにおけるMEF2D-BCL9融合遺伝子の発見。A:MEF2D遺伝子及びBCL9遺伝子の染色体上の位置。B:MEF2D-BCL9の融合遺伝子を形成させる切断点の例。 RT-PCRによる融合遺伝子mRNAの検出。RT-PCRの結果。症例1(上段)と症例4(下段)を示す。 ゲノムDNAにおける切断点の検出。PCRの結果(上段)。プライマーセット4(左)とプライマーセット5(右)を用いて検出を試みた。各症例におけるゲノムの切断点を下段に示す。 発現プロファイル解析の結果。 MEF2D-BCL9融合遺伝子の機能解析。MEF2D-BCL9陽性例と陰性例でHDAC9発現レベルを比較した(A)。NALM-6にMEF2D-BCL9を導入し、HDAC9の発現レベル(B)及び細胞増殖率(C)を調べた。 分子標的薬の効果。MEF2D-BCL9融合遺伝子陽性の患者白血病細胞から樹立した初代培養細胞を用い、ボリノスタット(A)、キシノスタット(B)、ボルテゾミブ(C)の効果(薬剤感受性)を試験した。
1.急性リンパ性白血病(ALL)の検査方法
本発明の第1の局面はALLの検査方法に関する。本発明の検査方法では以下のステップ(1)〜(3)を行う。
(1)ALL患者から単離した白血病細胞を含む検体を用意するステップ
(2)前記検体における、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又は該融合遺伝子がコードする融合タンパク質の存否を検出するステップ
(3)前記融合遺伝子又は前記融合タンパク質が検出された場合に予後不良又は治療困難と判定するステップ
ステップ(1)では、検査に使用する検体を用意する。ALL患者から単離した白血病細胞を含む検体が用いられる。白血病細胞を含む限り、検体の種類や由来などは特に限定されない。例えば、骨髄から調製した細胞画分(骨髄細胞)や末梢血などの血液から調製した細胞画分(血液細胞)を検体として用いる。本発明の検査方法は、小児のALLの予後予測や治療方針の決定等に特に有用であることから、好ましくは、小児ALL患者由来の検体を用いる。一般に、15歳以下の者が小児とされる。検体は、本発明の実施に先立って調製される。即ち、本発明の検査方法は、検体を調製するための骨髄等を患者から単離(採取)するステップを含むものではない。
ステップ(2)では、検体における、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子(MEF2D-BCL9融合遺伝子)又は当該融合遺伝子がコードする融合タンパク質の存否を検出する。前者の態様(MEF2D-BCL9融合遺伝子を検出)ではゲノムDNA又はmRNAが検出対象となる。ゲノムDNAを検出対象とした場合には、染色体の部分的逆位による融合遺伝子の形成の有無が検出されることになる。他方、mRNAを検出対象とした場合には、融合遺伝子の発現の有無が検出されることになる。MEF2D-BCL9融合遺伝子の検出手段は特に限定されない。例えば、RT-PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)法、PCR法、PCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism)法、RNAシーケンス解析、ターゲットシーケンス解析、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法、全ゲノム解析、Invader(登録商標、Third Wave Technologies社)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、CGH(Comparative Genomic Hybridization)法、ドットハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等の検出手段を利用できる。ゲノムDNA及びmRNAの抽出、精製などは公知の方法で行うことができる。調製用のキットも各種市販されており、それらを利用することにしてもよい。
MEF2D-BCL9融合遺伝子は、後述の実施例に示す通り、ALL患者由来の新規な融合遺伝子である。本発明者らの検討によって、MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって当該融合遺伝子が形成されることが明らかとなった。この情報に基づき、融合遺伝子の検出に使用するプライマーやプローブを設計・調製することができる。尚、核酸増幅反応を利用した検出手段(上掲のRT-PCR法やPCR法)に利用可能なプライマーの具体例は後述する。
後者の態様(融合タンパク質を検出)の場合、例えば、免疫学的測定法によって融合タンパク質を検出することができる。免疫学的測定法によれば迅速で感度のよい検出が可能となる。また、操作も簡便である。免疫学的測定法では、融合タンパク質に対する抗体が使用され、当該抗体の結合性(結合量)を指標として融合タンパク質が検出される。免疫学的測定法の例は、ウエスタンブロット法、免疫組織化学、蛍光免疫測定法(FIA法)、酵素免疫測定法(EIA法)、放射免疫測定法(RIA法)、フローサイトメトリー(FCM)、免疫沈降法、イムノクロマト法、ELISA法等である。
ステップ(3)では、ステップ(2)の検出結果に基づき、患者の予後又は治療困難性を評価する。具体的には、ステップ(2)における検出対象である融合遺伝子又は融合タンパク質が検出された場合に予後不良又は治療困難と判定する。このように、ALL患者の予後や治療反応性を判定するための指標として、MEF2D-BCL9融合遺伝子の形成で特徴付けられる遺伝学的異常(以下では、「本発明の遺伝学的異常」と呼ぶこともある)が用いられる。ここでの判定は、その判定基準から明らかな通り、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。
ところで、後述の実施例に示す通り、MEF2D-BCL9融合遺伝子が特徴的なALLの一群を規定することが示唆された。この知見に基づき、本発明の一態様では、ステップ(3)に続いて以下のステップ(4)を行う。
(4)前記ステップ(3)の判定に基づき、前記急性リンパ性白血病患者が属するリスク群を特定し、治療方針を決定又は変更するステップ
ALLではリスクに応じた層別化治療を行うことが一般的である。ALLの層別化治療は、一般に、寛解導入療法、強化療法、中枢神経系浸潤予防療法、再寛解導入療法、維持療法等からなり、これらの療法を組み合わせた治療方針が設定される。化学療法だけでは治療が望めない場合には造血幹細胞移植の適応も考慮される。通常、ALLの治療では寛解の導入を当初の目標として治療を開始する。寛解の導入が成功した後、中枢神経系などへの浸潤を防止しつつ、残存する腫瘍細胞を更に減らすための治療を行う。その後、維持療法、再寛解導入療法等を継続し、腫瘍細胞の根絶を目指す。
ALLの層別化治療では、様々な指標を利用して複数のリスク群の設定し、リスク群毎、最適と考えられる治療方針に従い治療を行う。通常、治療開始前及び治療開始後の検査に基づき、患者が属すべきリスク群が特定される。層別化治療により、治療効果の最大化が図られる。
本発明の検査方法は治療開始前又は治療開始後に実施される。治療開始前に実施すれば、暫定又は確定のリスク群の特定(これに伴い当面の又は確定の治療方針が決定される)に本発明を利用できる。層別化治療プロトコールでは、例えば、年齢、白血球数、染色体・遺伝子異常、初期治療(例えば、メトトレキサート(MTX)髄注と7日間のプレドニゾロン(PSL)投与)に対する反応性、中枢神経浸潤の有無等を総合評価して暫定のリスク分類を行い、寛解導入療法を開始する。本発明の検査方法を治療開始前に実施し、その結果を利用すれば、本発明の遺伝学的異常を有する症例をより適格なリスク群に分類することができ、より早期且つ適切な処置が可能になる。一方、治療開始後に本発明の検査方法を実施すれば、リスク群の確定や変更(これに伴い、以降の治療方針が決定される)に本発明を利用できる。この態様は、例えば、寛解後に再発した場合の治療方針の見直しを可能にする。本発明の検査方法を経時的に複数回実施し、治療効果のモニターや治療方針の見直し(例えばリスク群の変更及びそれに伴う治療方法の変更)を図ることにしてもよい。
現在、層別化のために様々な指標が利用されている。本発明は、層別化に有用な指標の一つとなる、新規遺伝学的異常を提供する。ステップ(4)は、本発明の遺伝学的異常を指標として用いた層別化に該当する。ステップ(4)で特定される「リスク群」は、典型的には、高いリスクが関連付けられた群、即ち「高リスク群」である。既存の層別化治療プロトコールに本発明を適用した場合には、当該層別化治療プロトコールで設定されている複数のリスク群の中から、該当するリスク群を特定することができる。以下では、この点に関して具体例を示す。
本邦では、小児ALLに対する治療研究グループとして、JACLS(小児白血病研究会)、TCCSG(東京小児がん研究グループ)、CCLSG(小児癌・白血病研究グループ)、KYCCSG(九州・山口小児がん研究グループ)等が存在しており、各々、独自の層別化治療プロトコールを作成していた。平成22年には小児白血病リンパ腫の標準的治療法を確立することを目的としてJPLSG(日本小児白血病リンパ腫研究グループ)が設立された。JPLSGが行う最新の臨床試験(小児B前駆細胞性急性リンパ性白血病に対する多施設共同第II相および第III相臨床試験JPLSG ALL-B12)のプロトコールでは、標準リスク群(SR群)、中間リスク群(IR群)及び高リスク群(HR群)の3群が設定されている(各試験群に対して対照群も設定される)。このプロトコールに本発明を適用した場合には、例えば、予後不良又は治療困難との判定(ステップ(3))のときに、患者が「HR群」に属するとし、別の判定(即ち、ステップ(2)においてMEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又は融合タンパク質が検出されなかった場合)のときに、患者が「SR群」に属する、或いは患者が「IR群」に属するとする。
一方、上掲の治療研究グループJACLSが作成した従前の治療プロトコール(JACLS ALL-02)では、標準危険群(SR群)、高危険群(HR群)及び超危険群(ER群)が設定されていた。但し、その他の治療群としてT群(T細胞性ALL)、F群(造血幹細胞移植の適応、寛解導入不能例とt(4;11)陽性ALL)及びPh1群(フィラデルフィア染色体陽性ALL)も設定される。更に、1歳未満の乳児ALL(MLL遺伝子再構成陽性例と、MLL遺伝子再構成を認めない例)に対しては特別な治療が選択される。このようなプロトコールに本発明を適用しようとすれば、例えば、予後不良又は治療困難との判定(ステップ(3))のときに、患者が「ER群」に属するとし、別の判定(即ち、ステップ(2)においてMEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又は融合タンパク質が検出されなかった場合)のときに、患者が「HR群」に属する、或いは患者が「SR群」に属するとする。
以上の例に示したように、本発明の遺伝学的異常が検出された患者は、通常、設定された複数のリスク群の中で、リスクの高い(予後不良、治療困難)群に分類される。このように分類することにより、本発明の遺伝学的異常を有する患者に対して適切な処置(強化された治療)を施すことが可能になる。
ステップ(4)と択一的なステップ(4')では、ステップ(3)の判定と、他の検査の結果を併用し、患者が属するリスク群を特定する。換言すれば、本願が提供する新たな指標(即ち、本発明の遺伝学的異常)を含め、各種指標を総合評価し、患者が属するリスク群を特定する。ここでの他の検査としては、問診、身体診察(髄外浸潤、特に精巣浸潤のスクリーニング等)、血液検査(全血球数測定、血液生化学検査、細胞表面マーカー解析、染色体異常の検出)、画像検査(胸部レントゲン(例えば、縦隔腫瘤のスクリーニング))、超音波検査、CT検査)、骨髄穿刺又は骨髄生検(有核細胞数検査、メイ・ギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色、エステラーゼ染色、細胞表面マーカー解析、染色体異常の検出、Gバンド分染法、遺伝子解析、病理学的検査)、脳脊髄液検査等を挙げることができる。これらの検査は常法で行えばよい。また、受託検査を利用してもよい。例えば、適切な層別化治療を行う上で特に重要な検査の一つである染色体異常の検出について、株式会社ビー・エム・エル、株式会社エスアールエル等が受託検査サービスを提供している。
患者が属するリスク群を既存のリスク群の中から特定するのではなく、専用のリスク群を設け、ステップ(4)又は(4')において、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又は融合タンパク質が検出された患者が当該リスク群に属するとしてもよい。専用のリスク群を設けることにより、本発明の遺伝学的異常の症例を、より最適化した治療方針の下で治療することが可能になる。
ALLの層別化治療ではリスク群毎に治療方針が設定される。従って、属するリスク群が特定されることにより、患者の治療方針も決定する。治療の経過に沿って本発明の検査方法を複数回実施する場合の2回目以降の実施のときや、或いは他の指標によるリスク分類を既に行っている場合等では、ステップ(4)又は(4')で特定されたリスク群が、従前のリスク群と異なること(即ち、リスク群の変更)が生じ得る。この場合にはリスク群の変更に伴って治療方針も変更されることになる。変更後の治療方針は、典型的には、変更前よりも強化された療法を含む。強化された治療は、例えば、併用する薬剤の数を増加した(例えば高リスク群におけるエトポシド、イホスファミド、ビンデシンの使用)化学療法、薬剤の累積投与量・投与回数を増加した(例えばビンクリスチン、ダウノルビシン、シクロフォスファミド、L-アスパラギナーゼ、メソトレキセート、シタラビン、メソトレキセート・シタラビン・プレドニゾロンの三者髄腔内注入)化学療法、頭蓋放射線照射、又は造血幹細胞移植である。
後述の実施例に示す通り、本発明の遺伝学的異常の症例に対してヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及びプロテアソーム阻害剤が有効であることが示唆された。この知見に基づけば、好ましくは、ステップ(4)又は(4')で決定された治療方針(変更後の治療方針の場合も該当する)はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤又はプロテアソーム阻害剤、或いはこれら両者の投与による処置を含む。一方、本発明の遺伝学的異常の症例は予後不良であり、治療抵抗性を示すことから、より積極的かつ強化された治療の適用が望まれる。この観点からは、好ましくは、ステップ(4)又は(4')で決定された治療方針(変更後の治療方針の場合も該当する)は造血幹細胞移植の適応を含む。通常、造血幹細胞移植は化学療法だけでは治癒が望めない場合に採用される。造血幹細胞移植の実施時期は第1寛解期又はそれ以降の寛解期であるが、好ましくは、早期の積極的な治療介入によって治療効果を高めるべく、第1寛解期とする。造血幹細胞移植の例は同種骨髄移植、自家骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植、ミニ移植である。同種骨髄移植は病気の再発が少ない反面、移植に伴う合併症(例えばGVHD)が多いという問題がある。自家骨髄移植はHLAが一致するドナーが見出せないような場合の選択肢となる。末梢血幹細胞移植は末梢血液中の造血幹細胞を採取して移植するものであり、移植後の造血の回復が早いという利点がある。臍帯血幹細胞移植にはドナーの負担がないことや早期に移植を実施できることなどの利点がある。ミニ移植とは、免疫抑制剤を併用することで移植前処置(抗がん剤の投与や放射線照射)の量を減らし、副作用を低減させるものであり、骨髄非破壊的移植とも呼ばれる。
2.急性リンパ性白血病の治療方法、医薬
上記の通り、本発明の検査方法はALLの治療方針の決定、変更、見直しなどに有用である。換言すれば、本発明の検査方法を適用すれば、より最適化された治療方針の下でALLの治療が可能になる。そこで本発明は、別の局面として、本発明の検査方法を利用した治療方法を提供する。尚、本明細書において用語「処置」又は「治療」を使用する場合には、疾病(ALL)又は病態の予防、寛解、防止または治癒が意図される。症状が現れた後の処置は、当該症状及び/又は関連する症状の減少、寛解又は除去、或いは悪化の防止を目的とする。症状が現れる前の処置(即ち、予防処置)は、典型的には、症状が現れるリスクを減少すること、或いは症状が現れた場合に重症度を和らげることを目的とする。
本発明の治療方法では、本発明の検査方法で決定した又は変更した後の治療方針に従って急性リンパ性白血病患者を処置する。本発明によれば、より最適化された層別化治療が可能になる。特に、これまでは識別ないし区別できなかった、本発明の遺伝学的異常を認める症例に対し、より適切な治療戦略を提供できる。本発明の治療方法における処置の具体例は化学療法、造血幹細胞移植、放射線療法である。目的別に分類すれば、寛解導入療法、強化療法、中枢神経系浸潤予防療法、再寛解導入療法、維持療法等を挙げることができる。化学療法に使用される薬剤の例を挙げると、副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)、アルキル化剤(例えばシクロフォスファミド、イホスファミド、メルファラン)、代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、シタラビン、フルダラビン、クロファラビン)、抗がん抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン)、植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド)、L-アスパラギナーゼである。化学療法では、作用機序や副作用が異なる数種類の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法を行うのが基本となる。薬剤の投与方法には静注(ワン・ショット静注法、点滴静注法)、皮下注、筋注、経口投与(内服)、髄腔内注入等がある。
本発明は更に、本発明の遺伝学的異常を認める症例に対してヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤及びプロテアソーム阻害剤が有効であることが示唆された事実に基づき、ALLの特定の症例に対する医薬を提供する。本発明の医薬は、MEF2D-BCL9融合遺伝子の形成で特徴付けられる遺伝学的異常を認めるALL患者の治療に用いられるものであり、HDAC阻害剤又はプロテアソーム阻害剤、或いはこの両者を有効成分として含む。HDAC阻害剤及びプロテアソーム阻害剤は特に限定されるものではない。HDAC阻害剤としては、好ましくは、直接又は他の分子を介してHDAC9を阻害するものが採用される。HDAC阻害剤の例を挙げるとボリノスタット(vorinostat)、パノビノスタット(panobunostat)、キシノスタット(quisinostat)、ロミデプシン、TMP269である(Baas, T. Closer to class IIa HDAC inhibitors. SciBX 6(13) 2013を参照)。ボリノスタットはクラスI及びクラスII HDAC阻害剤であり、商品名「ZOLINZA(登録商標)」として上市されている。また、ロミデプシンはクラスI HDAC阻害剤であり、商品名「ISTODAX(登録商標)」として上市されている。一方、プロテアソーム阻害剤の具体例はボルテゾミブ(bortezomib)、カルフォルゾミブ(carfilzomib)、イキサゾミブ(ixazomib)である。ボルテゾミブは、近年、治療抵抗性B前駆細胞性ALLに対して効果が期待されている薬剤である。
本発明の医薬(HDAC阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤を含む医薬)を治療上有効量投与する治療は、本発明の遺伝学的異常を有するALL患者に対する、有望な治療戦略として期待できる。
3.新規遺伝学的異常を検出するためのプライマーセット及び検出用キット
本発明の更なる局面は、本発明の遺伝学的異常を検出するためのプライマーセット及び検出用キットを提供する。本発明のプライマーセットは、典型的には、上記本発明の検査方法に用いられる。検出用キットも同様である。
<プライマーセット>
本発明のプライマーセットの一態様は、MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって形成される、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又はその転写産物であるmRNAに相補的なDNA(cDNA)を特異的に増幅できるように設計される。本発明のプライマーセットの例として以下のものを挙げることができる。
MEF2D遺伝子のエクソン1〜6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
cDNAを標的としたプライマーセットの好ましい一例としては、以下の(a1)〜(a3)を挙げる。尚、当該プライマーセットはcDNAを標的とすることから、RT-PCR法等、mRNAを鋳型として調製したcDNAを検出対象とした各種方法に適する。
(a1)MEF2D遺伝子のエクソン3〜4の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
(a2)MEF2D遺伝子のエクソン5〜6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
(a3)MEF2D遺伝子のエクソン6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
尚、上記(a1)のプライマーセットの具体例として、フォワードプライマー5'-CATCATCGAGACCCTGAGGAAG-3'(配列番号1)とリバースプライマー5'-TGTGGGGGAGACTGTACTGG-3'(配列番号2)のセットを挙げることができる。同様に、上記(a2)のプライマーセットの具体例として、フォワードプライマー5'-GGCGCTATGGGTCAACTGTC-3'(配列番号3)とリバースプライマー5'-CGTCCTTGAGGTACCATCGG-3'(配列番号4)のセットを、上記(a3)のプライマーセットの具体例として、フォワードプライマー5'-GCCCGTGTCCAATCAGAGC-3'(配列番号5)とリバースプライマー5'-CCGGGCATTGTAGATTGTGC-3'(配列番号6)のセットをそれぞれ挙げることができる。
別の態様のプライマーセットはゲノムDNAを標的とするものであり、MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって形成される、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を特異的に増幅できるように設計される。好ましい具体例として、以下の(b1)と(b2)を挙げることができる。尚、これらのプライマーセットはPCR法に好適なものであるが、他の核酸増幅反応への使用を制限するものではない。
(b1)MEF2D遺伝子のエクソン2の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
(b2)MEF2D遺伝子のエクソン5の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
上記(b1)のプライマーセットの具体例として、フォワードプライマー5'-AGGCTGTGCAGAAGGTATCC-3'(配列番号7)とリバースプライマー5'-GTGCAACACATGACCGATGG-3'(配列番号8)のセットを挙げることができる。同様に、上記(b2)のプライマーセットの具体例として、フォワードプライマー5'-TTCTGTGGGCCAGAAATGGA-3'(配列番号9)とリバースプライマー5'-GGGACCCCATGAGGAGGTAT-3'(配列番号10)のセットを挙げることができる。
各プライマーの長さは、通常13塩基以上(上限は例えば40塩基)であるが、特異性や増幅反応の効率等を考慮すれば、好ましくは15塩基〜30塩基、更に好ましくは18塩基〜26塩基、より一層好ましくは20塩基〜24塩基とする。プライマーセットによって増幅されるDNA断片の長さは、cDNAが標的の場合には、例えば200〜2000塩基長、好ましくは400〜1500塩基長であり、ゲノムDNAが標的の場合には、例えば500〜12000塩基長、好ましくは800〜10000塩基長である。各プライマーの配列は標的(鋳型となる)配列に相補的であるが、特異的なハイブリダイゼーションが生じ、目的のDNA断片が特異的に増幅される限り、プライマーの配列と標的配列の間に僅かなミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個である。
プライマーを予め標識物質で標識しておくことができる。このような標識化プライマーを用いることにより、例えば、増幅産物の標識量を指標とした検出が可能となる。プライマーの標識に用いられる標識物質としては7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin(APC)、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、テキサスレッド(Texas Red(登録商標))、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC-CyTM7、オレゴングリーン(Oregon Green)、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドットなどの蛍光色素、32P、131I、125Iなどの放射性同位元素、ビオチンを例示でき、標識方法としてはアルカリフォスファターゼ及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いた5'末端標識法、T4 DNAポリメラーゼやKlenow断片を用いた3'末端標識法、ニックトランスレーション法、ランダムプライマー法(Molecular Cloning,Third Edition,Chapter 9,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)などを例示できる。
本発明のプライマーセットの設計には各種ソフトウエアを利用することができる。プライマー設計用のソフトウエアとして、例えば、Primer3、OLIGO Primer Analysis Software、Primer-BLAST等がある。尚、プライマーはホスホジエステル法など公知の方法によって合成することができる。
<検出用キット>
本発明のキットは、本発明の検出方法を簡便且つ効率的に行うことを可能にする。本発明の検出用キットは必須の要素として本発明のプライマーセットを含む。cDNAを標的とする検出用キットの場合、好ましくは、上記(a)のプライマーセットと(b)のプライマーセットを含む。同様に、ゲノムDNAを標的とする検出用キットでは、好ましくは、上記(A)のプライマーセットと(B)のプライマーセットを含む。これらの検出用キットによれば、本発明の遺伝学的異常の症例のカバー率(即ち、遺伝学的異常を有するとして検出される症例の数)が高まり、検査結果がより有益なものとなる。
本発明のキットが他の要素を含んでいてもよい。他の要素の例は、プライマーセットの使用に関する説明書、各種試薬(DNAポリメラーゼ、制限酵素、緩衝液など)、溶媒、標準検体、反応容器、その他の器具である。更には、治療方針を決定するための指針や説明を含んでいてもよい。
4.薬剤のスクリーニング方法
本発明は更に、MEF2D-BCL9融合遺伝子を導入したALL細胞が、MEF2D-BCL9陽性の患者由来細胞と同様にHDAC9を高発現し、その増殖速度も上昇した事実(後述の実施例の欄を参照)と、MEF2D-BCL9陽性の患者由来細胞を用いて薬剤感受性評価系を構築できた事実(後述の実施例の欄を参照)に基づき、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成を認めるALL患者の治療に有効な物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法では以下のステップ(i)〜(iii)を行う。
(i)MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を発現する細胞を用意するステップ
(ii)試験物質の存在下、前記細胞を培養するステップ
(iii)細胞の生存数を測定し、前記試験物質の有効性を判定するステップ
本発明のスクリーニング方法では、まず、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を発現する細胞を用意する(ステップ(i))。換言すれば、MEF2D-BCL9融合遺伝子陽性の細胞を用意する。例えば、ALLの細胞株(例えば、NALM-6、BALL-1、CCRF-CEM、Jurkat、CPT-K5)にMEF2D-BCL9融合遺伝子を導入して強制発現させたものを、ここでの細胞として使用することができる。MEF2D-BCL9融合遺伝子陽性の患者から単離した細胞、当該細胞の継代細胞、又は当該細胞から樹立した細胞株を使用することも可能である。
ステップ(ii)では、試験物質の存在下、用意した細胞を培養する。使用する細胞の数は特に限定されず、検出感度、実験設備等を考慮して定めることができる。例えば、1回のスクリーニング操作に1×102個〜1×106個の細胞を用いることができる。
培養液中の試験物質の存在量(添加量)は任意に設定可能であるが、正常細胞を同様の条件で培養した際に致命的な影響を与えない範囲で添加量を設定するとよい。当業者であれば予備実験によって適切な添加量を設定可能である。
培養時間は、試験物質の作用・効果が十分に評価できるように設定されるものであるが、特に限定されない。例えば、培養時間を10分〜1月の範囲内で設定することができる。尚、目的の作用・効果を示す物質が見出された場合には、その物質が作用・効果を示すまでに要する時間を基に、以降のスクリーニングにおける培養時間を設定することができる。
試験物質としては様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミンを例示できる。試験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。尚、細胞抽出液、培養上清などを試験物質として用いてもよい。また、既存の薬剤を試験物質としてもよい。2種類以上の被験物質を同時に添加することにより、被験物質間の相互作用、相乗作用などを調べることにしてもよい。
ステップ(ii)に続くステップ(iii)では、培養後の細胞の生存数を測定し、試験物質の細胞増殖阻害活性(細胞傷害活性)、即ち有効性を判定する。例えば、試験物質の存在下で培養する細胞(試験群)と、試験物質の非存在下で培養する細胞(対照群)とを用意し、各群について細胞生存数を測定し、比較する。比較結果から、試験物質が存在した結果として細胞生存率が変化した程度が求められる。対照群に比較して試験群の生細胞数が少ない(細胞生存率が低い)場合、即ち試験物質に細胞増殖阻害活性が認められた場合、当該試験物質が、本発明の遺伝学的異常を有する症例に対して有効であると判定できる。試験群において生存率の顕著な低下が認められた場合、当該試験物質の有効性は特に高いと判定できる。対照群を設定するのではなく、試験群における培養前後の細胞数を比較することによっても、試験物質の有効性を判定することが可能である。但し、上記の如き対照群を設定した方が信頼性の高い結果を得ることができる。
本発明のスクリーニング方法で選抜された物質(スクリーニング結果物)は、本発明の遺伝学的異常を有するALL症例に対する医薬の有効成分として有力な候補(リード化合物)となる。選抜された物質が十分な薬効を有する場合にはそのまま医薬の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合であっても化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で医薬の有効成分としての使用に供することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
5.融合遺伝子、融合タンパク質
本発明は更に、本発明の遺伝学的異常を規定するMEF2D-BCL9融合遺伝子及びMEF2D-BCL9融合タンパク質も提供する。MEF2D-BCL9融合遺伝子は、MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって生ずる。MEF2D-BCL9融合タンパク質は当該融合遺伝子の発現産物である。MEF2D-BCL9融合遺伝子及びMEF2D-BCL9融合タンパク質は、ALLの新たな一群を規定し得ること、当該一群を検出する際の指標になること(例えば本発明の検査方法の検出対象になる)、治療の標的になり得ること等の点において有用である。尚、本発明者らの検討によって得られた知見によれば(後述の実施例の欄)、本発明の遺伝学的異常はALLの発症原因になることが示唆される。
典型的には、MEF2D-BCL9融合遺伝子はMEF2D遺伝子のエクソン1〜6を含むととともに、BCL9遺伝子のエクソン10又はその一部を含む。MEF2D遺伝子のエクソン1〜6の配列の具体例を配列番号11に示す。他方、BCL9遺伝子のエクソン10の配列の具体例を配列番号12に示す。
MEF2D-BCL9融合タンパク質は、MEF2D-BCL9融合遺伝子によってコードされるものである。従って、MEF2D遺伝子のエクソン1〜6に対応するアミノ酸配列(配列番号13)とBCL9遺伝子のエクソン10又はその一部に対応するアミノ酸配列(配列番号14)を含む。MEF2D-BCL9融合タンパク質の具体例のアミノ酸配列を配列番号15〜20に示す。
MEF2D-BCL9融合遺伝子及びMEF2D-BCL9融合タンパク質は、例えば、本発明の遺伝学的異常を有する患者から分離、精製することによって、単離された状態に調製することができる。また、本明細書が開示する配列情報に基づき、化学合成、遺伝子工学的手法などによって調製してもよい。
本発明は更に、MEF2D-BCL9融合遺伝子の転写産物であるmRNAに相補的なcDNAも提供する。当該cDNAはALLの新たな一群を検出する際の指標になる(例えば本発明の検査方法の検出対象になる)点において特に有用である。
本発明のcDNAは、MEF2D遺伝子のエクソン1〜6(配列番号21)の配列とBCL9遺伝子のエクソン10の配列(配列番号22)又はその一部を含む。本発明のcDNAの具体例を配列番号23〜28に示す。
本発明のcDNAは常法で調製することができる。例えば、cDNA調製用の試薬やキットも各種市販されており、それらを利用すれば、簡便に本発明のcDNAを調製することができる。
6.融合タンパク質を認識する抗体
本発明は更に、MEF2D-BCL9融合タンパク質を認識する抗体も提供する。本発明の抗体は例えばMEF2D-BCL9融合タンパク質の検出に有用である。従って、本発明の検査方法に利用することができる。
本発明の抗体は免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。免疫学的手法によるポリクローナル抗体の調製は次の手順で行うことができる。抗原(MEF2D-BCL9融合タンパク質又はその一部(融合部位を含むもの))を調製し、これを用いてウサギ等の動物に免疫を施す。生体試料を精製することにより抗原を得ることができる。また、組換え型抗原を用いることもできる。組換え型抗原は、例えば、MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードする遺伝子(即ち、MEF2D-BCL9融合遺伝子)を、ベクターを用いて適当な宿主に導入し、得られた組換え細胞内で発現させることにより調製することができる。
免疫惹起作用を増強するために、キャリアタンパク質を結合させた抗原を用いてもよい。キャリアタンパク質としてはKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、BSA(Bovine Serum Albumin)、OVA(Ovalbumin)などが使用される。キャリアタンパク質の結合にはカルボジイミド法、グルタルアルデヒド法、ジアゾ縮合法、MBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)法などを使用できる。一方、MEF2D-BCL9融合タンパク質(又はその一部)を、GST、βガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク、又はヒスチジン(His)タグ等との融合タンパク質として発現させた抗原を用いることもできる。このような融合タンパク質は、汎用的な方法により簡便に精製することができる。
必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で採血し、遠心処理などによって血清を得る。得られた抗血清をアフィニティー精製し、ポリクローナル抗体とする。
一方、モノクローナル抗体については次の手順で調製することができる。まず、上記と同様の手順で免疫操作を実施する。必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で免疫動物から抗体産生細胞を摘出する。次に、得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合してハイブリドーマを得る。続いて、このハイブリドーマをモノクローナル化した後、目的タンパク質(即ち、MEF2D-BCL9融合タンパク質)に対して高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択する。選択されたクローンの培養液を精製することによって目的の抗体が得られる。一方、ハイブリドーマを所望数以上に増殖させた後、これを動物(例えばマウス)の腹腔内に移植し、腹水内で増殖させて腹水を精製することにより目的の抗体を取得することもできる。上記培養液の精製又は腹水の精製には、プロテインG、プロテインA等を用いたアフィニティークロマトグラフィーが好適に用いられる。また、抗原を固相化したアフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。更には、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、硫安分画、及び遠心分離等の方法を用いることもできる。これらの方法は単独ないし任意に組み合わされて用いられる。
MEF2D-BCL9融合タンパク質への特異的結合性を保持することを条件として、得られた抗体に種々の改変を施すことができる。また、標識化してもよい。標識化に利用可能な標識物質の例を挙げると、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、オレゴングリーン等の蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、各種放射性同位体、ビオチンである。
本発明の抗体には、マウス、ラットなどの非ヒト動物の抗体、一部の領域を他の動物(ヒトを含む)のものに置換したキメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体が含まれる。また、抗体のクラスも特に限定されない。例えば、IgGクラス(例えばヒト抗体のサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に属するもの)の抗体である。
尚、本明細書で特に言及しない事項(条件、操作方法など)については常法に従えばよく、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、Current protocols in Immunology, John Wiley& Sons Inc等を参考にすることができる。
1.小児ALLにおけるMEF2D-BCL9融合遺伝子の発見
(1)方法
59人の再発小児ALL患者(乳児ALL 3例、Ph1陽性ALL 6例、T細胞性ALL 4例、成熟B細胞性ALL 3例を含む)の、白血病細胞を含む骨髄からRNeasy(登録商標) Mini Kit (キアゲン社)を用いてRNAを抽出した。Agilent 2200 TapeStationとRNA ScreenTape (アジレント社)を用いてRNAの分解度を確認した後、NEBNext(登録商標) Ultra RNA Prep Kit for Illumina (New England Biolabs社)を用いてRNAシーケンス解析用のライブラリーを作成した。HiSeqTM 2500 (イルミナ社)を用いて次世代シーケンスを行い、得られたシーケンスデータをTophat-fusionソフトウエアを用いて解析し、融合遺伝子を検出した。
(2)結果
4例についてMEF2D-BCL9融合遺伝子が検出された。検出された融合遺伝子はin-frameで融合しており、機能性のタンパク質が産生される可能性が示唆された。MEF2D、BCL9はいずれも1番染色体の長腕に位置し、この2つの遺伝子の距離は約9 Mbである(図1A)。この部位の部分的逆位により、MEF2D-BCL9の融合遺伝子が形成される。この染色体異常は、Gバンド分染法では検出されなかった。
(3)考察
4例全例において、ダイレクトシーケンスでゲノムの切断点が同定された。MEF2D側はイントロン6もしくは7、BCL9側はエクソン8もしくはイントロン9に切断点が存在した(図1Bに一例を示す)。MEF2D-BCL9融合遺伝子は4人の患者で観察されており、ALLの再発に関与することが示唆される。
2.RT-PCRによる融合遺伝子mRNAの検出
(1)方法
MEF2D-BCL9が検出された患者について、白血病細胞を含む骨髄から抽出したRNAを鋳型として、ThermoScriptTM RT-PCRシステム(Thermo社)を用いてcDNAを合成した。MEF2DとBCL9の配列に対応する以下のプライマーセットとPrimeSTAR(登録商標) GXL DNAポリメラーゼを用いてRT-PCRを行った。PCR産物をBigDye(登録商標) Terminater 3.1 (ライフテクノロジーズ社)を用いてダイレクトシーケンス解析した。
<プライマーセット1>
フォワードプライマー(MEF2Dのエクソン3〜4にまたがる領域):5'-CATCATCGAGACCCTGAGGAAG-3'(配列番号1)
リバースプライマー(BCL9のエクソン10の領域):5'-TGTGGGGGAGACTGTACTGG-3'(配列番号2)
<プライマーセット2>
フォォワードプライマー(MEF2Dのエクソン5〜6にまたがる領域):5'-GGCGCTATGGGTCAACTGTC-3'(配列番号3)
リバースプライマー(BCL9のエクソン10の領域):5'-CGTCCTTGAGGTACCATCGG-3'(配列番号4)
<プライマーセット3>
フォワードプライマー(MEF2Dのエクソン6の領域):5'-GCCCGTGTCCAATCAGAGC-3'(配列番号5)
リバースプライマー(BCL9のエクソン10の領域):5'-CCGGGCATTGTAGATTGTGC-3'(配列番号6)
(2)結果
症例1についての結果を図2上段に示す。診断時の検体と再発時の検体の両方について、918 bpのPCR産物が確認できた(プライマーセット3を使用)。健常人骨髄検体由来のcDNAについては、PCR産物は確認されなかった。ダイレクトシーケンスによって、MEF2Dのエクソン7とBCL9のエクソン10が接合した産物であることを確認した。症例4についての結果を図2下段に示す。再発時の検体については1,353 bpのPCR産物が確認されたが(プライマーセット3を使用)、寛解期の検体については観察されなかった。PCR産物をダイレクトシーケンスし、MEF2Dのエクソン7とBCL9のエクソン9が接合した産物であることを確認した。
(3)考察
RNAシーケンスによって検出されたMEF2D-BCL9融合遺伝子の存在が、RT-PCR法によっても確認された。健常人の検体を対照にすることで、RT-PCR法の特異性が確認できた。尚、初発の急性白血病115例(B前駆細胞性ALL 100例、T細胞性ALL 4例、急性骨髄性白血病 10例、混合形質性急性白血病 1例、急性混合性白血病 1例)でMEF2D-BCL9融合遺伝子のスクリーニングを行ったが、新たにMEF2D-BCL9融合遺伝子が検出される症例は認めなかった。
3.ゲノムDNAにおける切断点の検出
(1)方法
MEF2D-BCL9が検出された患者について、白血病細胞を含む骨髄から抽出したDNAを鋳型として、MEF2DとBCL9の配列に対応する以下のプライマーセットとPrimeSTAR(登録商標) GXL DNAポリメラーゼを用いてPCRを行った。PCR産物をBigDye(登録商標) Terminater 3.1 (ライフテクノロジーズ社)を用いてダイレクトシーケンス解析した。
<プライマーセット4>
フォワードプライマー(MEF2Dのエクソン2の領域):5'-AGGCTGTGCAGAAGGTATCC-3'(配列番号7)
リバースプライマー(BCL9のエクソン10の領域):5'-GTGCAACACATGACCGATGG-3'(配列番号8)
<プライマーセット5>
フォワードプライマー(MEF2Dのエクソン5の領域):5'-TTCTGTGGGCCAGAAATGGA-3'(配列番号9)
リバースプライマー(BCL9のエクソン10の領域):5'-GGGACCCCATGAGGAGGTAT-3'(配列番号10)
(2)結果
プライマーセット4を用いてPCRを行った結果を図3上段左に示す。症例1と3について陽性のバンドが確認された。プライマーセット5を用いてPCRを行った結果を図3上段右に示す。症例2、3、4について陽性のバンドが確認された。それぞれのPCR産物をダイレクトシーケンスし、各症例におけるゲノムの切断点を決定した結果を図3下段に示す。症例1はMEF2Dイントロン7とBCL9イントロン9で、症例2はMEF2Dイントロン6とBCL9イントロン9で、それぞれ染色体が接合していることが確認された。症例3と4については、由来不明の挿入配列が接合部位(症例3ではMEF2Dイントロン7とBCL9イントロン9が挿入配列を介して接合、症例4ではMEF2Dイントロン7とBCL9エクソン8が挿入配列を介して接合)に生じていることを確認した。
(3)考察
RNAシーケンスによって検出されたMEF2D-BCL9融合遺伝子の存在が、ゲノムにおける切断点の存在によって裏付けられた。また、ゲノムを鋳型としたPCRによって、この融合遺伝子を検出できることが確認された。尚、初発の急性白血病115例(B前駆細胞性ALL 100例、T細胞性ALL 4例、急性骨髄性白血病 10例、混合形質性急性白血病 1例、急性混合性白血病 1例)でMEF2D-BCL9融合遺伝子のスクリーニングを行ったが、新たにMEF2D-BCL9融合遺伝子が検出される症例は認めなかった。
4.発現プロファイル解析
(1)方法
RNAシーケンス解析によって得られたシーケンスデータから、TophatソフトウエアとCufflinksソフトウエアを用い、発現量の指標であるFPKM(Fragments per kilobase of exon per million mapped sequence reads)値を算出した。Spearmanの相関係数に基づいて、サンプルをクラスタリングした。
(2)結果
MEF2D-BCL9融合遺伝子を有する症例由来のサンプルは、小さなクラスターに集積することが確認された(図4)。
(3)考察
MEFD-BCL9融合遺伝子が白血病細胞の発現プロファイルに主要な影響を及ぼし、4症例において類似の発現プロファイルを構築したと考えられる。類似の発現プロファイルが認められた事実は、これらの症例の白血病細胞が類似の生物学的特性を備えることを示唆する。すなわち、これらの症例については、類似した薬剤感受性等の特徴が存在することが示唆される。尚、MEF2D-BCL9陽性の4例は、B前駆細胞性の免疫表現型(CD19陽性、CD20陰性、CD3陰性、CD13陰性、CD33陰性)、10歳以上と比較的年齢の高い発症、治療中に再発、予後不良(全例死亡)、という点で共通した臨床的特徴も有していた。また、MEF2D-BCL9陽性の4例の白血病細胞は、(i)中〜大型の芽球、(ii)好塩基性の強い細胞質、(iii)著明な空胞形成、という点において、典型的なB前駆細胞性と異なる形態学的特徴を有していた。これらは、成熟B細胞性白血病に類似した所見であるが、CD20や免疫グロブリンなどの細胞表面マーカー、IGH-MYC融合遺伝子の有無などから鑑別される。
5.MEF2D-BCL9融合遺伝子の機能解析
(1)方法
MEF2D-BCL9陽性例と陰性例におけるHDAC9の発現レベルを、Taqman(登録商標) Gene Expression Assay (Cat no #4331182、Applied Biosystem社)とABI Prism(登録商標) 7000 (ライフテクノロジーズ社)を用いた定量的RT-PCRで測定した。また、ALL細胞株であるNALM-6と、レンチウィルスを用いてNALM-6にMEF2D-BCL9融合遺伝子を強制発現したものを培養し、同様にHDAC9の発現レベルを測定した。測定にはBD FACSCaliburTM (BD社)とCountBrightTM Absolute Counting Beads (ライフテクノロジーズ社)を使用した。
(2)結果
MEF2D-BCL9陽性例ではHDAC9発現レベルが陰性例に比べて統計学的有意差をもって高かった(図5A)。また、NALM-6にMEF2D-BCL9融合遺伝子を導入すると、HDAC9の発現レベルが上昇し(図5B)、細胞増殖スピードも上昇した(図5C)。
(3)考察
MEF2D-BCL9陽性ALLにおけるHDAC9の高発現が、MEF2D-BCL9融合遺伝子が発現した結果であることが示された。また、MEF2D-BCL9融合遺伝子は細胞増殖を促進することが示された。これらの結果は、MEF2D-BCL9融合遺伝子が、白血病細胞におけるドライバー遺伝子として機能していることを示唆する。
6.分子標的薬の効果
(1)方法
MEF2D-BCL9陽性の患者白血病細胞から樹立した初代培養細胞を用いて、ボリノスタット(vorinostat)、キシノスタット(quisinostat)、ボルテゾミブ(bortezomib)に対するin vitroの薬剤感受性試験を行った。各薬剤濃度に設定した培養液200μLに2.5×104個の白血病細胞を入れ、24時間又は48時間インキュベーションした後、AnnevinV-FITCと7-AADで染色を行いフローサイトメーターで生細胞数を測定した。結果はDMSOコントロールに対する割合(%)で示した。
(2)結果(図6)
ボリノスタット(A)、キシノスタット(B)、ボルテゾミブ(C)のいずれも、治療濃度域と考えられる濃度で抗白血病細胞作用を示した。それぞれの薬剤における50%増殖阻害濃度(IC50)は、ボリノスタットが1.91μM、キシノスタットが43.3 nM、ボルテゾミブが27.1 nMであった。
(3)考察
HDAC阻害剤であるボリノスタット及びキシノスタットがMEF2D-BCL9陽性ALLの治療に有効である可能性が示唆された。また、近年、再発難治ALLに対して他剤との組み合わせで効果が期待されているプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブも、in vitroで細胞増殖阻害活性を示した。これは、MEF2D-BCL9陽性患者4例のうち1例の再発治療で、ボルテゾミブ併用化学療法により第3寛解が得られたという臨床での経験と一致したものであった。
ALLの予後予測や治療方針の決定等に有用な新たな融合遺伝子(MEF2D-BCL9融合遺伝子)の同定に成功した。ALLの治療においては、様々な指標を利用して予後を予測することで症例を層別化し、各症例に最適な治療方針を決定する。本発明は、症例の層別化に有用な新たな指標を提供するものであり、ALLの治療方針の最適化、治療効果の最大化に貢献する。MEF2D-BCL9融合遺伝子は分子標的治療の標的としても有用である。従って、本発明には、ALLの新たな治療戦略の確立への貢献も期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
配列番号1:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号2:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号3:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号4:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号5:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号6:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号7:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号8:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号9:人工配列の説明:フォワードプライマー
配列番号10:人工配列の説明:リバースプライマー
配列番号21:人工配列の説明:MEF2D遺伝子のエクソン1、2、3、4、5、6のcDNA
配列番号22:人工配列の説明:cDNA, exon 10 of BCL9遺伝子のエクソン10のcDNA
配列番号23:人工配列の説明:MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードするcDNA
配列番号24:人工配列の説明:MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードするcDNA
配列番号25:人工配列の説明:MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードするcDNA
配列番号26:人工配列の説明:MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードするcDNA
配列番号27:人工配列の説明:MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードするcDNA
配列番号28:人工配列の説明:MEF2D-BCL9融合タンパク質をコードするcDNA

Claims (33)

  1. 以下のステップ(1)〜(3)を含む、急性リンパ性白血病の検査方法:
    (1)急性リンパ性白血病患者から単離した白血病細胞を含む検体を用意するステップ;
    (2)前記検体における、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子又は該融合遺伝子がコードする融合タンパク質の存否を検出するステップ;
    (3)前記融合遺伝子又は前記融合タンパク質が検出された場合に予後不良又は治療困難と判定するステップ。
  2. MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって前記融合遺伝子が形成される、請求項1に記載の検査方法。
  3. ステップ(2)における前記融合遺伝子の検出が、RT-PCR法、PCR法、PCR-RFLP、PCR-SSCP法、RNAシーケンス解析、ターゲットシーケンス解析、FISH法及び全ゲノム解析からなる群より選択されるいずれかの検出法によって行われ、ステップ(2)における前記融合タンパク質の検出が免疫学的測定法によって行われる、請求項1又は2に記載の検査方法。
  4. 前記急性リンパ性白血病患者が小児である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査方法。
  5. 以下のステップ(4)又は(4')を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査方法:
    (4)前記ステップ(3)の判定に基づき、前記急性リンパ性白血病患者が属するリスク群を特定し、治療方針を決定又は変更するステップ;
    (4')前記ステップ(3)の判定と、他の検査の結果に基づき、前記急性リンパ性白血病患者が属するリスク群を特定し、治療方針を決定又は変更するステップ。
  6. 前記リスク群が高リスク群である、請求項5に記載の検査方法。
  7. 前記ステップ(4)又は(4')で変更した後の治療方針が、変更前よりも強化された療法を含む、請求項5又は6に記載の検査方法。
  8. 前記ステップ(4)又は(4')で決定した又は変更した後の治療方針が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤の投与による処置を含む、請求項5又は6に記載の検査方法。
  9. 前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がヒストン脱アセチル化酵素9阻害剤である、請求項8に記載の検査方法。
  10. 前記ステップ(4)又は(4')で決定した又は変更した後の治療方針が、造血幹細胞移植の適応を含む、請求項5又は6に記載の検査方法。
  11. 前記造血幹細胞移植が第1寛解期に実施される、請求項10に記載の検査方法。
  12. 請求項5〜11のいずれか一項に記載の検査方法で決定した又は変更した後の治療方針に従って前記急性リンパ性白血病患者を処置することを含む、急性リンパ性白血病の治療方法。
  13. ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤を含む、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる急性リンパ性白血病患者を治療するための医薬。
  14. 前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がヒストン脱アセチル化酵素9阻害剤である、請求項13に記載の医薬。
  15. MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる急性リンパ性白血病患者に対して、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及び/又はプロテアソーム阻害剤を含む医薬を治療上有効量投与することを含む、急性リンパ性白血病の治療方法。
  16. 前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がヒストン脱アセチル化酵素9阻害剤である、請求項15に記載の治療方法。
  17. MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって形成される、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の転写産物であるmRNAに相補的なDNAを特異的に増幅できるように設計したフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセット。
  18. MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって形成される、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を特異的に増幅できるように設計したフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセット。
  19. 請求項17又は18に記載のプライマーセットを含む、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる遺伝学的異常の検出用キット。
  20. 前記プライマーセットとして以下のプライマーセットを含む、請求項19に記載の検出用キット:
    MEF2D遺伝子のエクソン1〜6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット
  21. 前記プライマーセットとして以下の(a1)〜(a3)の中の一つ以上を含む、請求項19に記載の検出用キット:
    (a1)MEF2D遺伝子のエクソン3〜4の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット;
    (a2)MEF2D遺伝子のエクソン5〜6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット;
    (a3)MEF2D遺伝子のエクソン6の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット。
  22. 前記プライマーセットとして以下の(b1)及び/又は(b2)を含む、請求項19に記載の検出用キット:
    (b1)MEF2D遺伝子のエクソン2の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット;
    (b2)MEF2D遺伝子のエクソン5の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるフォワードプライマーと、BCL9遺伝子のエクソン10の領域の一部分であって13塩基以上からなる部分に相補的な配列からなるリバースプライマーからなるプライマーセット。
  23. 以下のステップ(i)〜(iii)を含む、MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子の形成で特徴付けられる急性リンパ性白血病患者の治療に有効な物質のスクリーニング方法:
    (i)MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子を発現する細胞を用意するステップ;
    (ii)試験物質の存在下、前記細胞を培養するステップ;
    (iii)細胞の生存数を測定し、前記試験物質の有効性を判定するステップ。
  24. MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子。
  25. MEF2D遺伝子ではイントロン6又は7に切断点が存在し、BCL9遺伝子ではエクソン8又はイントロン9に切断点が存在する染色体逆位によって生ずる、請求項24に記載の融合遺伝子。
  26. MEF2D遺伝子のエクソン1〜6とBCL9遺伝子のエクソン10又はその一部を含む、請求項25に記載の融合遺伝子。
  27. 配列番号11の配列と配列番号12の配列を含む、請求項26に記載の融合遺伝子。
  28. 請求項24〜27のいずれか一項に記載の融合遺伝子がコードする融合タンパク質。
  29. 配列番号13の配列と配列番号14の配列を含む、請求項28に記載の融合タンパク質。
  30. 請求項24〜27のいずれか一項に記載の融合遺伝子の転写産物であるmRNAに相補的なDNA。
  31. 配列番号15の配列と配列番号16の配列を含む、請求項30に記載のDNA。
  32. MEF2D遺伝子とBCL9遺伝子との融合遺伝子がコードする融合タンパク質を認識する抗体。
  33. 前記融合タンパク質が、請求項28又は29に定義される融合タンパク質である、請求項32に記載の抗体。
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