JPWO2017073600A1 - mRNAの設計方法 - Google Patents

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Abstract

生細胞を生きたまま、高精度で判別することができるmRNAを設計する方法。以下の工程を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法であって、当該miRNA応答配列を2以上含有するmRNAが、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAである、方法;(1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの翻訳抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、(2)前記工程(1)の測定結果に基づき、各対象細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、(3)前記工程(2)で算出された値に基づき、前記2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になる、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。

Description

本発明は、mRNAの設計方法に関する。
多細胞生物の組織や器官は、多種類の細胞で構成されている。ヒトは、60兆(6x1013)個もの細胞から構成され、その種類は、成熟細胞だけでも約400種程度にも及ぶ。これらの細胞については、個々の細胞の機能を解析するだけでなくて、医療応用のための細胞調製において、細胞種を判別したり、同定したりする技術が重要になってきている。
細胞を同定するためには、特異的に発現した細胞表面のマーカー因子を、抗体で検出する手法が一般的に知られている。しかし、抗体で細胞内の情報を検出するためには、対象細胞を固定・膜透過させる必要があり、生細胞の分取には応用することができないという問題があった。また、細胞表面に必ずしも細胞の特定が可能なレセプターが存在するものではない。また、抗体による細胞のマーカー因子検出のような、一因子を、positive/negative(陰性または陽性)の2つに分類する手法は、細胞を定性的に分類する手法となり、精密な分類が難しいという問題がある。
細胞をより精密に分類する方法、すなわち細胞を定量的に分類する方法としては、例えば、マイクロアレイや次世代シーケンシングなどを用いた多変量の測定に基づく細胞のプロファイリングが知られている。これらの方法では、タンパク質やRNAなどの細胞内分子について、多種類の分子を同時に定量測定し、また多変量解析などの統計解析を用いるなどして、定量的に細胞を分類することが可能である。しかし、測定をなされた細胞は破壊されてしまうため、細胞を生存させた状態では測定できないという問題がある。
そこで、所望の細胞に特異的に発現するマイクロRNA(以下、miRNAと指称する)を利用して、マーカーの遺伝子発現を抑制するという点に着目し、当該システムを利用した細胞分離方法が、提案されている(特許文献1)。
国際公開WO2015/105172
特許文献1の方法では、着目する所望の細胞によっては、細胞を分類するための適切なmiRNAが選択できないこともあり、当該システムの改良が望まれている。
本発明者らは、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAについて、1つのmRNAが複数のmiRNAを可算的に検出できること、各miRNAへの検出感度をmRNA上のmiRNA標的配列の位置で調節できることを発見した。すなわち、多因子の情報を先に要約してから、その結果合成されたパラメータを検出することで、同時に検出可能な、限られたシグナル数でも、多数の生細胞内因子の定量情報に由来し、そのエッセンスを抽出した合成パラメータを直接検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の課題は以下の手段により解決することができる。
[1] 以下の工程を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法であって、当該miRNA応答配列を2以上含有するmRNAが、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAである、方法;
(1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの翻訳抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、
(2)前記工程(1)の測定結果に基づき、各対象細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、
(3)前記工程(2)で算出された値に基づき、前記2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になる、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。
[2] 前記工程(1)と工程(2)の間に、前記工程(1)の測定結果に基づき、前記工程(2)の算出に使用するmiRNA応答配列の種類を、多変量解析を用いて限定する工程をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記工程(2)の翻訳抑制効果が、前記2以上のmiRNA応答配列のそれぞれの翻訳抑制効果-log(ρ)を、miRNAの数だけ合算して得られるものであり、前記それぞれの翻訳抑制効果-log(ρ)が、下記式
Figure 2017073600

(式中、ρは、miRNAによる翻訳抑制効果を表し、
d [nt]は、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離 を表し、
ξは、-0.576を表し、
ρ0 はそれぞれのmiRNAについて距離0 [nt] の時の仮想的な翻訳抑制効果を表す)
に基づいて算出される、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記工程(3)が、各対象細胞におけるマーカー遺伝子の翻訳量の分散を最大にする、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程を含む、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法でmRNAを設計する工程と、
前記設計されたmRNAを、遺伝子工学的手法により合成する工程と
を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAの製造方法。
[6] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法で設計されたmRNAを用いて、マーカー遺伝子の翻訳量を指標として2以上の対象細胞を分離する方法。
[7] 前記mRNAが、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法で設計された、マーカー遺伝子配列及び5’UTRの配列がそれぞれ異なる4種のmRNAである、[6]に記載の方法。
本発明によれば、所望の細胞をより高精度で分離することが可能な、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法が提供される。当該mRNAは、1分子で多数のmiRNAに応答し、かつ個々のmiRNAへの応答の程度(検出感度)を任意に調節可能なプローブとして機能する。すなわち、本発明により、細胞内の多因子情報を線形モデルで抽出することに成功した。従来技術では、非侵襲的に(細胞を殺さずに)同時に検出可能なシグナルの数は限られており、1対1に対応した検出プローブでは対応できなかったが、本発明の設計方法により、同時に検出可能な、限られたシグナル数でも、多数の生細胞内因子の定量情報に由来し、そのエッセンスを抽出した合成パラメータを直接検出することができるようになった。
図1は、生細胞内で多変量計算を実行するスキームを示す。図1aは、旧来の方法(左)では、個々の細胞内情報(今回の場合はmiRNA情報)を個別に検出し、そのあとで多変量解析により情報を抽出していることを示し、本発明(右)ではあらかじめ細胞内で多変量の計算を行い、その結果を直接検出することを示す。図1bは、多数のmiRNAに応答するmRNAを用いた線形多変量計算を示す。mRNAが複数のmiRNA活性に対して独立に応答し、かつ個々のmiRNAへの応答性能を調節できればよい。2つのmRNAを用いて、その比率を算出すれば、多数のmiRNAに任意の比重をつけた線形計算を実現できる。 図2は、合成mRNAは複数miRNAへ独立で、調節可能な応答を実現できることを示す。図2aは、5つのスロットを持つmRNAの5’UTRのデザインを示す。各スロットはmiRNAに相補的な配列を挿入する。AUGはマーカータンパク質 (hmAG1) の開始コドン。下部は4種類のmiRNAに応答するmRNAシリーズ。灰, miR-34a-5p; 青,miR-17-5p; 緑, miR-21-5p; 赤, miR-92a-3pへの応答配列を示す。図2bは、miR-17-5p とmiR-92a-3p に応答するmRNAの例を示す。上部に5’ UTR の設計を示す。Relative expression は双方の存在下のマーカーの平均発現量に対する比率で示す。一方のみのmiRNA阻害剤存在下での Relative expression の積をEstimated expression とした。図2cは、実験的に測定された Relative expression値(Observed relative expression) とEstimated Expression の比較を示す。ランダムに設計した12種類について、独立した3回の実験結果をプロットした。図2dは、同じmiRNAへの応答配列を複数含むmRNAシリーズを示す。各mRNAは1〜5箇所に miRNA応答配列を含む。mRNAの発現量は各スロットにおける抑制効果 (ρ, rho) の積算値となると予測される。図2eは、実験的に測定された Relative expression値(Observed relative expression)と推測値の比較を示す。4種類のmiRNAについてそれぞれ比較した。図2fは、各スロットにおける抑制効果とスロットの開始コドンからの距離のプロットを示す。各スロットにおける抑制効果は、miRNAごとに e のデータから最小二乗法によるフィッティングで算出した。エラーバーは3回の解析結果の平均±標準偏差を示す。 図3は、複数miRNA活性の線形計算に基づく生細胞の分類を示す。図3aは、スクリーニングのスキームを示す。異なるmiRNA (a, b, c) に応答して異なる蛍光タンパク質 (hmAG1, tagBFP, hdKRed) を発現する 3 種類のmRNA (1-slot mRNA) と、miRNAに応答しないhmKO2の1-slot コントロールmRNAを同時に導入した。270種類のmiRNAはコントロールを含めて96種類のトランスフェクションになる。フローサイトメトリーで解析し、様々な細胞におけるmiRNA活性のプロファイルを得た。図3bは、ヒトiPS細胞(hiPS)を用いた、独立した2回のスクリーニング結果の比較を示す。緑, hmAG1; 青, tagBFP; 紫, hdKRed をマーカータンパク質として用いたmRNAの発現量を示す。図3cは、標準化したデータセットの細胞間比較を示す。正常ヒト皮膚線維芽細胞 (NHDF) と hiPSCの比較を例として示す。図3dは、主成分分析による細胞の分類。8種類の細胞と条件についてスクリーニングした結果を標準化して主成分分析を実施した結果を示す。第一成分(Component 1)と第二成分(Component 2) によるプロットを示した。図3eは、細胞間の分散を最大化するmRNAセットを示す。標準化後のデータセットをもとに、hmAG1 とhmKO2 の比率とtagBFP と hdKRed の比率をパラメータとして、細胞間の分散を最大化するmRNAセットを計算して設計した。図3fは、図3e のmRNAセットによる5種類の細胞の計算上の分類を示す。図3gは、mRNAセットによる生きた細胞の分類を示す。フローサイトメトリーの結果を、蛍光比率の2次元の密度プロットとして示した。赤字で示された細胞は赤の、その他の4種類の細胞を黒の密度として示した。 図4は、複数miRNA活性の線形計算に基づくhiPS細胞の変化の追跡を示す。図4aは、二次スクリーニングのスキームを示す。図3のスクリーニングの結果から、hiPSC と hiPSC (14d) の差が大きかった54 miRNAを選び、24トランスフェクションの二次スクリーニングとした。図4bは、経時変化の追跡スキームを示す。hiPSCをbFGFの非存在下で多能性を失わせて自然に(ランダムに)分化させた。示された日数培養後、mRNAセットをトランスフェクションし、24時間後にフローサイトメトリーで解析した。図4cは、miRNA活性の経時的変化の比較を示す。測定した蛍光比率について、day 1 と day 3 の比較を例として示す。図4dは、スクリーニング結果の主成分分析の結果を示す。第一成分(Component 1)と第二成分(Component 2) によるプロットを示した。また、bFGF 存在下で 1-3 日培養した細胞を青で示した。図4eは、hiPSCをbFGFの非存在下で多能性を失わせて分化させた際の、細胞間の分散を最大化するmRNAセットを示す。細胞間の分散を最大化するmRNAセットを計算して設計した。図4fは、図4eのmRNAセットによる細胞の計算上の分類を示す。図4gは、mRNAセットによる生きた細胞の分類。フローサイトメトリーの結果を、蛍光比率の2次元の密度プロットとして示した。赤字で示された細胞は赤の、その他の4種類の細胞を黒の密度として示した。 図5は、miRNA 阻害剤によるmiRNA活性測定への影響を示す。図5aは、本実施例で使用したmiRNA阻害剤の独立性を確認した結果を示す。miRNAに応答するmRNAそれぞれについて、5種類のmiRNA阻害剤を細胞に導入した。各条件における発現量は、mRNAの応答するmiRNA阻害剤存在下での発現量を基準にした比率で示す。エラーバーは3回の実験の平均±標準偏差を示す。各miRNA阻害剤はクロストークしないことが確認された。図5bは、miRNA阻害剤の合計導入量の影響を確認した結果を示す。図5a と同様の実験を miR-1 阻害剤を 2 pmol または 4 pmol 加えて行った。 “w/o” の条件は図5a の “miR-1 (n.c.)” に相当する。当該条件では、無関係のmiRNA阻害剤の有無によって検出されるmiRNAの活性は変動しない。 図6は、標的配列の位置によるmiRNA検出力の違いを示す。図6aは、5-slot mRNA と1-slot mRNAの 5’ UTR の構造を示す。図6bは、各スロットにおける抑制効果を示す。miRNAごとに 図3e のデータから最小二乗法によるフィッティングで算出した。エラーバーは3回の解析結果の平均±標準偏差を示す。右のパネルは 1-slot mRNAの結果。1-slot mRNA は slot-5 に近い挙動を示す。 図7は、スクリーニング結果の標準化を示す。上図は、HeLa 細胞と正常ヒト肺線維芽細胞 (NHLF)の結果を示し、下図は、 HeLa 細胞とヒトiPS細胞 (hiPSC) の比較結果を示す。緑色プロットはhmAG1、青色プロットはtagBFP、および紫色プロットはhdKRed をマーカータンパク質として用いた際のmRNAの発現量を示す。図7aは、観察されたexpression 値の比較を示す。細胞ごとのバイアスが見られる。図7bは、細胞間のバイアスの標準化を示す。蛍光タンパク質ごとの細胞間の発現蛍光の違いを、HeLa細胞の結果を基準にして標準化した。しかし、蛍光タンパク質ごとに分布する位置が異なっている。図7cは、蛍光タンパク質間のバイアスの標準化を示す。蛍光タンパク質ごとに分布を標準化した。 図8は、異なるmRNAセットによる細胞の分類結果を示す。図3gと同様の実験を異なるmRNAセットで行った。フローサイトメトリーの結果を、蛍光比率の2次元の密度プロットとして示した。赤字で示された細胞は赤の、その他の4種類の細胞を黒の密度として示した。図8aは、miRNAに応答しないコントロールmRNAのセットを用いた結果を示す。図8bは、活性のばらつきが大きかったmiRNAに応答する1-slot mRNAのセットを用いた結果を示す。図8cは、hiPSCの変化を追跡した時のmRNAセット(図4e)を用いた結果を示す。 図9は、異なるmRNAセットによる hiPSC の追跡結果を示す。図4gと同様の実験を行い、フローサイトメトリーの結果を蛍光比率の2次元の密度プロットとして示した。赤字で示された細胞は赤の、その他の8種類の細胞を黒の密度として示した。図9aは、その他の培養条件の結果を示す。図4e〜4g のmRNAセットを用いて、異なる培養条件の細胞を分離した。図9bは、他のmRNAセットを用いた実験の結果を示す。細胞種を分類した時のmRNAセット (図3e) を使用した。
以下に、本発明を、実施形態を挙げて詳細に説明する。以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
本発明は、第1実施形態によれば、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法であって、当該miRNA応答配列を2以上含有するmRNAが、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAである、方法に関する。本実施形態による方法は、以下の工程を含む。
(1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、
(2)前記工程(1)の測定結果から、各細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、
(3)前記工程(2)で算出された値より、2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になるmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。
本発明は、2以上のmiRNAの応答配列(以下、miRNA応答配列、あるいはmiRNA標的配列ともいう)とこれに機能的に連結したマーカー遺伝子を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が、各miRNA応答配列個別の翻訳抑制効果の積算値に翻訳抑制効果を備え、かつ、各miRNA応答配列個別の翻訳抑制効果は、各miRNA応答配列の開始コドンからの距離に反比例するという発見に基づく。
本発明において、2以上のmiRNAの応答配列とマーカー遺伝子が機能的に連結するとは、マーカー遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ただし、開始コドンを含む。)の5’UTR内に、2以上のmiRNA応答配列を備えることを意味する。このようなmRNAは、細胞内での対応するmiRNAの発現を指標として、細胞種を分離することができる。さらに詳細には、細胞内に対応するmiRNAが発現していると、その発現量に応じて、マーカー遺伝子の翻訳が抑制される。ここでいう、「miRNAの発現」とは、成熟miRNAが、所定の複数の蛋白質と相互作用して、RNA-induced silencing complex(RISC)を形成した状態にあるmiRNAが存在していることをいうものとする。「成熟miRNA」は、一本鎖RNA(20〜25塩基)であり、核外でDicerによる切断によってpre-miRNAから生じ、「pre-miRNA」は、Droshaと呼ばれる核内酵素による部分切断によって、DNAから転写された一本鎖RNAであるpri-mRNAから生じる。本発明におけるmiRNAとは、少なくとも10,000種類以上のmiRNAから選択することができる。詳細には、データベースの情報(例えば、http://www.mirbase.org/又はhttp://www.microrna.org/)に登録されたmiRNA、及び/または当該データベースに記載されている文献情報に記載されたmiRNAより選択することができ、市販のライブラリのmiRNAより選択することもできる。すなわち、本発明においては、指標となるmiRNAは特定のmiRNAに限定されるものではない。
本実施形態による設計方法に用いる、上記のようなmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAを本明細書中で、miRNA応答性mRNA、n-slot mRNA(nは2以上の整数)、あるいはレポーターmRNAとも指称する。このようなmiRNA応答性mRNAの基本的な構造について説明する。
本実施形態において設計するmRNAの模式的な構造を、図2aの上図に例示する。図2aに示すmRNAは、5’末端から、5’から3’の向きに、Cap構造(7メチルグアノシン5’リン酸)、miRNAの応答配列を挿入可能な5つのスロット、マーカー遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム、並びに、ポリAテイルを備える。
ここで、「スロット」とは、miRNA標的配列を挿入可能な部分を概念的に示すものであって、各スロットは、miRNA標的配列、またはmiRNAの標的ではない配列(空スロットともいう)から構成される。ただし、5つのスロットのうち、2以上には、同一もしくは異なるmiRNA標的配列が挿入される。各スロットに挿入されるmiRNA標的配列、またはmiRNAの標的ではない配列の塩基数は、同一であってもよく異なっていてもよいが、概ね20〜25塩基である。スロット間には、任意の数の塩基が存在してもよく、存在しなくてもよい。また、3以上のスロットを含むmRNAにおいては、各スロット間の塩基数及び配列が同じであっても異なっていてもよい。
miRNA標的配列は、指標となるmiRNAに特異的に結合可能な配列をいう。miRNA標的配列は、例えば、指標となるmiRNAに完全に相補的な配列であることが好ましい。あるいは、当該miRNA標的配列は、miRNAにおいて認識され得る限り、完全に相補的な配列との不一致(ミスマッチ)を有していても良い。当該miRNAに完全に相補的な配列からの不一致は、所望の細胞において、通常にmiRNAが認識し得る不一致であれば良く、生体内における細胞内の本来の機能では、40〜50% 程度の不一致があっても良いとされている。このような不一致は、特に限定されないが、1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、若しくは10塩基又は全認識配列の1%、5%、10%、20%、30%、若しくは40%の不一致が例示される。また、特には、細胞が備えている mRNA 上の miRNA 標的配列のように、特に、シード領域以外の部分に、すなわち miRNA の 3’ 側 16 塩基程度に対応する、標的配列内の 5’ 側の領域に、多数の不一致を含んでもよく、シード領域の部分は、不一致を含まないか、1塩基、2塩基、若しくは3塩基の不一致を含んでもよい。また、開始コドンとなりうるAUG配列が含まれることのないように、miRNA標的配列を選択することが好ましい。
スロットに挿入され得るmiRNAの標的ではない配列(以下、非標的配列ともいう)は、特に限定されるものではないが、miRNA標的配列との類似性が低く、かつ、AUGを配列として含まないものであることが好ましい。類似性が低いとは、例えば、60%以上、70%以上、あるいは80%以上が不一致の配列であってもよいが、これらには限定されない。同一のmiRNA応答性mRNA上に、2以上の空スロットが存在する場合には、それぞれの空スロット挿入される非標的配列は、同一でも異なっていてもよい。また、特定の対象細胞の分離を指標に設計された複数種のmiRNA応答性mRNAのセットにおいて、異なるmiRNA応答性mRNAの空スロット挿入される非標的配列も、同一でも異なっていてもよい。
miRNA応答性mRNAにおいて、Cap構造と最も5’側に位置するスロット(図2においては、slot-1)と間の塩基数及び塩基の種類は、開始コドンとなるAUGを含まず、かつステム構造や立体構造を構成しない限り、任意であってよい。例えば、Cap構造とmiRNA標的配列と間の塩基数には、特に限定はなく、目的及び用途に合わせた塩基数となるように設計することができるが、例えば、1000塩基以下、好ましくは500塩基以下、さらに好ましくは250塩基以下の範囲で設計することができる。また、最も開始コドンに近接するスロット(図2においてはslot-5)と開始コドンと間の塩基数及び塩基の種類は、ステム構造や立体構造を構成しない限り、任意であってよい。したがって、最も開始コドンに近接するスロットと開始コドンと間の塩基数にも特に上限はなく、例えば、1000塩基以下、好ましくは500塩基以下、さらに好ましくは250塩基以下の範囲で、例えば、2〜20塩基、好ましくは3〜20塩基となるように設計することができる。
マーカー遺伝子は、細胞内で翻訳されて、マーカーとして機能し、細胞種の判別を可能にする任意の蛋白質をコードする遺伝子である。細胞内で翻訳されてマーカーとして機能しうる蛋白質としては、一例としては、蛍光、発光、呈色、若しくは蛍光、発光又は呈色を補助することなどにより、視覚化し、定量化することができる蛋白質であってよい。蛍光蛋白質としては、Sirius、EBFPなどの青色蛍光蛋白質;mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFPなどのシアン蛍光蛋白質;TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green (例えば、hmAG1)、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、などの緑色蛍光蛋白質;TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBananaなどの黄色蛍光蛋白質;KusabiraOrange (例えば、hmKO2)、mOrangeなどの橙色蛍光蛋白質;TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、などの赤色蛍光蛋白質;TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、HcRed、KeimaRed(例えば、hdKeimaRed)、mRasberry、mPlumなどの近赤外蛍光蛋白質が挙げられるが、これらには限定されない。
発光蛋白質としては、イクオリンを例示することができるが、これに限定されない。また、蛍光、発光又は呈色を補助する蛋白質として、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、βラクタマーゼなどの蛍光、発光又は呈色前駆物質を分解する酵素を例示することができるが、これらには限定されない。ここで本発明において、蛍光、発光又は呈色を補助する蛋白質をマーカー遺伝子として使用する場合、所望の細胞の判別において、対応する前駆物質と細胞を接触させること、又は細胞内に対応する前駆物質を導入することによって行われ得る。
また、細胞内でマーカーとして機能しうる蛋白質の別の例としては、細胞の機能に直接影響を与える蛋白質類が挙げられる。細胞増殖蛋白質、細胞死滅蛋白質、細胞シグナル因子、薬剤耐性遺伝子、転写制御因子、翻訳制御因子、分化制御因子、リプログラミング誘導因子、RNA結合タンパク質因子、クロマチン制御因子、膜タンパク質を例示することができるが、これらには限定されない。例えば、細胞増殖蛋白質は、それを発現した細胞のみを増殖させ、増殖した細胞を特定することでマーカーとして機能する。細胞死滅蛋白質は、それを発現した細胞の細胞死を引き起こすことで、特定のmiRNAを含有、もしくは含有しない細胞自体を死滅させ、細胞の生死を示すマーカーとして機能する。細胞シグナル因子は、それを発現した細胞が、特定の生物学的信号を発し、この信号を特定することでマーカーとして機能する。
本発明において、マーカー遺伝子は、局在化シグナルをコードする遺伝子を備えていてもよい。局在化シグナルとしては、核局在化シグナル、細胞膜局在化シグナル、ミトコンドリア局在化シグナル、タンパク質分泌シグナル等を挙げることができ、具体的には、古典的核移行配列(NLS)、M9配列、ミトコンドリア標的配列(MTS)、小胞体移行配列を挙げることができるが、これらには限定されない。このような局在化シグナルは、後述するイメージングサイトメトリー等で、本発明の方法における判別工程を、画像上で行うときに特に有利である。
miRNA応答性mRNAは、通常のウリジン、シチジンに替えて、シュードウリジン、5−メチルシチジンなどの修飾塩基を含んでいることが好ましい。細胞毒性を低減させるためである。修飾塩基の位置は、ウリジン、シチジンいずれの場合も、独立に、全てあるいは一部とすることができ、一部である場合には、任意の割合でランダムな位置とすることができる。
図示する概念図においては、スロットの総数が5であるが、スロットの総数は2以上であればよく、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいはそれ以上であってもよい。本実施形態においては、説明の簡略化のために、スロットの総数が5のmiRNA応答性mRNAを例示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2a上図に示す基本的構造を備えるmRNAは、以下の特性(a)、(b)を備える。
(a)miRNA応答配列を2以上含有するmRNAによる翻訳抑制効果は、各スロットのmiRNA標的配列単独による翻訳抑制効果の積算値となる。
Figure 2017073600

(b)各スロットのmiRNA標的配列単独による翻訳抑制効果は、miRNAの種類に関わらず一般に、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離の 定数乗、具体的には-0.576 乗に比例する。
Figure 2017073600
(a)の式において、各スロットに挿入されるmiRNA応答配列を、slot-1から順に、それぞれ、miRNA(1)、miRNA(2)、miRNA(3)、miRNA(4)、miRNA(5)とした場合について考える。slot-1に挿入されたmiRNA(1)単独による翻訳抑制効果(ρslot-1)は、miRNA(1)を含めた全ての応答配列に対する阻害剤を添加した系での実測の翻訳抑制効果を1とした場合の、miRNA(1)以外の全ての応答配列に対する阻害剤を添加した系での実測の翻訳抑制効果で表される。slot-2に挿入したmiRNA(2)についての翻訳抑制効果(ρslot-2)、slot-3に挿入したmiRNA(3)についての翻訳抑制効果(ρslot-3)についても同様にして得ることができ、それらの積算値が、複数のスロットを備えるmRNAの予測翻訳抑制効果となる。なお、上記数式のように、ρの対数で考える場合には、合算値が予測翻訳抑制効果の対数となる。
(b)の式において、各スロットの開始コドン(AUG)からの距離dとは、開始コドンAUGのAから5’側に、各スロットを構成するmiRNA応答配列の3’末端の塩基までの塩基数(nt)をいうものとする。また、ρは、距離dが0の場合の仮想的な翻訳抑制効果の値をいうものとする。(a)及び(b)式の導出及び実験によるサポートは、実施例に示す。
本実施形態に係る設計方法は、上記特性を備えるmiRNA応答性mRNAの基本構造に対して、各スロットに挿入するmiRNA応答配列の種類及び数(ただし、2以上)を選択する方法に関する。上記工程(1)に先立って、任意選択的な前工程として、スロットに挿入しうる候補miRNA標的配列をスクリーニングする工程を実施することができる。候補となり得るmiRNA応答配列は、上述の通り、あらゆるmiRNAに対する応答配列であってよい。したがって、本出願時において特定されているmiRNAには限定されず、今後、その存在及び機能が特定されるあらゆるmiRNAを含むものとする。この中から、複数の候補miRNA標的配列間で、類似の配列がなく、また、開始コドンに相当しうるAUGを含まないmiRNA応答配列とすることが好ましい。ここで、類似の配列とは、例えば、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上の配列相同性を有する配列をいうものとする。候補miRNA標的配列をスクリーニングする工程は、一例としては、後述する分離方法を用いて分離する細胞種の特性に応じて指標となるmiRNAを適宜選択することができる。また、特には、分離すべき複数の細胞中で、ある細胞では高発現(高活性)であり、別の細胞では低発現(低活性)であるような、miRNAの組み合わせを選択することができる。分離の精度をより高くするためである。
工程(1)は、1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの抑制効果を、2以上の対象細胞で測定する工程である。工程(1)で用いる1つのmiRNA応答配列を有するmRNAを、1-slot mRNAとも指称する。この工程では、任意選択的に前工程で選択した、複数種類の候補miRNA標的配列にそれぞれ対応する、1-slot mRNAを合成する。何種類の1-slot mRNAの翻訳抑制効果を測定するかは、当業者が目的と用途に応じて適宜決定することができ、理論上の上限及び下限は存在しない。例えば、20種以上、50種以上、70種以上、100種以上の1-slot mRNAの翻訳抑制効果を測定することができる。
各1-slot mRNAは、5’末端から、5’から3’の向きに、Cap構造(7メチルグアノシン5’リン酸)、1つのmiRNAの応答配列、マーカー遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム、並びに、ポリAテイルを備える。すなわち、図2aに示すmiRNA応答性mRNAのスロットを1つだけにしたものといえ、1-slot mRNAの翻訳抑制効果を測定可能であれば、5'UTRにおける、スロットの5’側や3’側の塩基数や塩基の種類は、任意であってよい。1-slot mRNAは、実験的に上記(b)式における、ρを導出するために用いられるためである。
対象細胞とは、本実施形態において、miRNA応答性mRNAを設計するための指標となる細胞であって、2種以上、例えば、3種、4種、5種、6種、7種、または8種以上であってもよく、理論上、対象細胞の種類は限定されるものではない。
対象細胞は、後述する細胞の分離方法において、想定される使用状況において分離対象とする複数の細胞種をいうことができるが、これらには限定されない。分離の対象とする細胞の一例としては、同一の多能性幹細胞から分化した細胞であって、分化の程度が異なる複数種の細胞であってもよい。あるいは、別の例としては、生物個体、臓器、および組織から分取された細胞、あるいはその培養細胞であって、複数種類の細胞が含まれる細胞群、あるいは所望ではない細胞の混入が疑われる細胞群に含まれる細胞が挙げられる。しかしながら、対象細胞は、その細胞内の特徴(miRNA活性)を反映してmiRNA応答性mRNAを設計する指標になるものであればよく、使用状況において実際に分離する細胞と同一種の細胞には限定されない。また、いずれの場合であっても、異なる細胞の種類をおおまかに分類したいのか、類似した細胞の種類の中で細かく分類したいのかなど、分離の目的等によってどのような指標が有効になるのかは異なり、当業者が適宜決定することができる。
分離対象とする細胞は、多細胞生物種から採取した細胞群に含まれる細胞であってもよく、単離された細胞を培養することによって得られる細胞群に含まれる細胞であってもよい。当該細胞は、特には、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、サル、ブタ、ラット等)採取した細胞、若しくは哺乳動物より単離された細胞又は哺乳動物細胞株を培養することによって得られる細胞であってよい。体細胞としては、例えば、角質化する上皮細胞(例、角質化表皮細胞)、粘膜上皮細胞(例、舌表層の上皮細胞)、外分泌腺上皮細胞(例、乳腺細胞)、ホルモン分泌細胞(例、副腎髄質細胞)、代謝・貯蔵用の細胞(例、肝細胞)、境界面を構成する内腔上皮細胞(例、I型肺胞細胞)、内鎖管の内腔上皮細胞(例、血管内皮細胞)、運搬能をもつ繊毛のある細胞(例、気道上皮細胞)、細胞外マトリックス分泌用細胞(例、線維芽細胞)、収縮性細胞(例、平滑筋細胞)、血液と免疫系の細胞(例、Tリンパ球)、感覚に関する細胞(例、桿細胞)、自律神経系ニューロン(例、コリン作動性ニューロン)、感覚器と末梢ニューロンの支持細胞(例、随伴細胞)、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞(例、星状グリア細胞)、色素細胞(例、網膜色素上皮細胞)、およびそれらの前駆細胞 (組織前駆細胞) 等が挙げられる。細胞の分化の程度や細胞を採取する動物の齢などに特に制限はなく、未分化な前駆細胞 (体性幹細胞も含む) であっても、最終分化した成熟細胞であっても、同様に本発明における体細胞の起源として使用することができる。ここで未分化な前駆細胞としては、たとえば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)が挙げられる。本発明において、体細胞を採取する由来となる哺乳動物個体は特に制限されないが、好ましくはヒトである。また、好ましい細胞は、前期体細胞を採取後に人為的な操作を加えた細胞群であり、所望しない細胞を含む可能性があり、及び/または不均質な可能性がある細胞群である。例えば、前記体細胞から調製したiPS細胞を含んでなる細胞群であり、あるいはES 細胞やiPS細胞などによって例示される多能性幹細胞を分化させた後に得られる細胞群であって、所望する細胞以外に分化された細胞を含み得る細胞群である。本実施形態において、判別対象の細胞群は、生存状態にあることが好ましい。本発明において、細胞が生存状態にあるとは、代謝能を維持した状態の細胞を意味する。本発明は、細胞を本発明の方法に供し、分離方法の終了後においても、その生来の特性を失うことなく、生存状態のまま、特に分裂能を維持したまま、続く用途に用いることができる点で有利である。
対象細胞における翻訳抑制効果の測定は、1-slot mRNAを細胞に導入する工程と、マーカー遺伝子の翻訳量に基づいて、1-slot mRNAの翻訳抑制効果を得る工程とにより実施することができる。
本発明において、1-slot mRNAを細胞に導入する工程(以下、導入工程と指称する)は、リポフェクション法、リポソーム法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃法などを用いて、1種以上の1-slot mRNAを直接、細胞群に含まれる細胞に導入する。場合により50以上、100以上、200以上の異なるmiRNA応答配列について、1-slot mRNAの抑制効果を測定する場合には、miRNA応答配列及びマーカー遺伝子が異なる2種、3種あるいは4種以上のmiRNA応答性mRNAと、コントロールmRNAを、対象細胞に共導入することができる。コントロールmRNAとは、miRNA標的部位を有さず、1-slot mRNAがコードするマーカー遺伝子とは異なるマーカー遺伝子をコードするmRNAをいう。共導入した2以上のmRNAから発現するマーカー蛋白質の活性比は、細胞集団内において一定である。また、この時の導入量は、導入される細胞群、導入するmRNA、導入方法および導入試薬の種類により異なり、所望の翻訳量を得るために当業者は適宜これらを選択することができる。コントロールmRNAの導入量もまた、所望の翻訳量を得るために当業者は適宜これらを選択することができる。
miRNA応答性mRNAが細胞に導入されると、細胞内では、細胞に所定のmiRNAがRISCとして存在する場合、miRNA応答性mRNAがコードするマーカー遺伝子の翻訳量が制御、例えば翻訳量が抑制される。そして、翻訳量の制御は、miRNA活性に応じて定量的になされる。一方、細胞に所定のmiRNAが存在しない場合、もしくは所定のmiRNAがRISCとして存在しない場合、miRNA応答性mRNAがコードするマーカー遺伝子の翻訳量が抑制されることはない。したがって、所定のmiRNAがRISCとして存在する細胞と、存在しない細胞との間で、マーカー遺伝子の翻訳量が異なる。なお、本明細書において、所定のmiRNAがRISCとして存在する場合を、「miRNA活性が存在する場合」とも指称する。一方、コントロールmRNAは、miRNA活性に関係なくマーカー蛋白質を発現する。導入されても、miRNA標的配列が存在しないため、miRNA発現量に応じて翻訳制御されることがないためである。
本実施形態においては2以上の対象細胞の全てにおいて、1-slot mRNAの翻訳抑制効果を測定する。
マーカー遺伝子の翻訳量は、所定の検出装置を用いて、マーカー蛋白質からの信号を検出することにより得ることができる。検出装置としては、フローサイトメーター、イメージングサイトメーター、蛍光顕微鏡、発光顕微鏡、CCDカメラ等が挙げられるが、これらには限定
されない。このような検出装置は、マーカー蛋白質及び判別の態様により、当業者が適したものを用いることができる。例えば、マーカー蛋白質が、蛍光蛋白質又は発光蛋白質の場合には、フローサイトメーター、イメージングサイトメーター、蛍光顕微鏡、CCDカメラといった検出装置を用いてマーカー蛋白質の定量が可能であり、マーカー蛋白質が、蛍光、発光又は呈色を補助する蛋白質の場合には、発光顕微鏡、CCDカメラ、ルミノメーターといった検出装置を用いたマーカー蛋白質の定量方法が可能であり、マーカー蛋白質が、膜局在蛋白質の場合には、抗体などの細胞表面蛋白質特異的な検出試薬と、上記の検出装置を用いたマーカー蛋白質の定量方法が可能である。マーカー蛋白質が蛍光蛋白質の場合は、フローサイトメトリーを用いて、個々の細胞において翻訳されたマーカー蛋白質である、蛍光蛋白質、発光酵素が発する光の強度を定量的に得ることができるため好ましい。
なお、1-slot mRNAの翻訳抑制効果の測定方法は、上記した特定の方法のみには限定されず、他の任意の方法で実施することができる。例えば、マイクロアレイを使用する方法や、次世代シーケンシングによる方法を用いて、miRNAと相互作用しているmRNAを定量することによる、1-slot mRNAの翻訳抑制効果の測定が可能であり、これらの方法を用いて測定した場合も本発明を構成するものとする。
工程(1)は、前述の式(b)の原理、すなわち、各スロットのmiRNA標的配列単独による翻訳抑制効果は、miRNAの種類に関わらず一般に、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離の 定数乗、具体的には-0.576 乗に比例する、という発見に基づき、1-slot mRNAの翻訳感度を調節する方法に関する発明ということもできる。すなわち、1つのmiRNA応答配列を有するmRNAにおいて、miRNA応答配列の開始コドンからの距離を変化させることにより、同じmiRNA応答配列を持つmRNAであっても、翻訳抑制効率を変化させる、すなわちチューニングすることができる。このようなmRNAを用いることにより、多様な細胞の分離が可能になるといえる。
工程(2)は、前記工程(1)の測定結果に基づき、各対象細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程である。この工程では、前述の特性(a)、(b)に基づき、各細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を、計算により得る。より具体的には、前記工程(1)の測定値から得られる、dが0の際の仮想的な翻訳抑制率を、d-0.576乗したもの(dは、マーカー遺伝子の開始コドンからのmiRNA応答配列の距離)を、miRNA応答配列の数だけ積算することによって算出する。
前記工程(1)の測定結果から、それぞれの1-slot mRNAについて、AUGからの距離d(nt)における翻訳抑制効果ρ(d)の実測値を得ることができる。そして、式(b)に基づき、ρ(d)の実測値、並びに位置dにおけるtuning factor k値から、特定のmiRNAの仮想の翻訳抑制効果であるρ(0)を得ることができる。なお、dは、工程(1)で設計したそれぞれの1-slot mRNAの間で、同一であってもよく、異なっていても、同じようにρ(0)の値を導出することが可能である。本発明においては、式(a)及び(b)の示す原理に基づいて所望の翻訳抑制効果を測定することができればよく、例えば工程(1)の試験条件(1-slot mRNAの設計条件等)によっては、ρ(0)の値を直接的に算出する必要が無い場合もある。
そうすると、AUGから異なる距離dにある、あるmiRNA応答配列の単独で翻訳抑制効果は、ρ(0)^d-0.576で表される。そして、式(a)に基づいて、miRNA応答配列の数だけこの値を積算することで、mRNAの翻訳抑制効果予測値(計算値)が得られる。なお、式(a)において、空スロットの翻訳抑制効果は1である(翻訳抑制しない)。この方法によれば、5のスロットを備えるmiRNA応答性mRNAの翻訳抑制効果を、例えば選択したすべてのmiRNA応答配列について、網羅的に計算することができる。
ただし、miRNA応答配列には20塩基程度の長さがあるため、miRNA標的配列が重なるような位置にスロットを設計することはできない。また、式(a)、(b)による計算上は、1以下のmiRNA標的配列を含むmRNAを原理的には排除しない。
上記の工程(1)の後であって、(2)の前には、前記工程(1)の測定結果に基づき、前記工程(2)の算出に使用するmiRNA応答配列の種類を、多変量解析、例えば、主成分分析やクラスター分析を用いて限定する工程をさらに含んでもよい。この工程を本明細書で、「限定工程」とも指称する。前記工程(1)では、例えば測定する1-slot mRNAを、100種以上、200種以上とする場合があり、工程(1)で探索した全てのmiRNAについて、あらゆる組み合わせのmRNAを設計して探索すると、その組み合わせが膨大になることある。したがって、工程(1)で得られた細胞ごとのmiRNA活性のプロファイルを、主成分分析およびクラスター分析などの多変量解析を実施し、細胞の分離に有効なmiRNAを限定することができる。主成分分析においては、寄与率の高い主成分に対して、それぞれ主成分負荷量の絶対値が高いmiRNAを、細胞の分離に有用なmiRNAとして選択できる。またクラスター分析においては、同一クラスターに分類されるmiRNA群から代表的なmiRNAを選択することによって、細胞分離への有用性が低いと期待されるその他のmiRNAを排除することができる。本発明の実施例では、270種のmiRNA応答配列から、この段階で26miRNA応答配列にまで絞ってから、工程(2)を実施している。これらの多変量解析によって、工程(2)において算出するmRNAの構成を1、あるいはそれ以上の数に限定することができる。
また、この段階で、miRNA応答配列の種類のみならず、スロットの数や位置などを、ある程度固定したmRNAの構成を設計することができる。図2a及び後述する実施例では、5-slotのmRNA、slot間距離2nt、最も開始コドンに近いslotと開始コドンの距離2nt、という構成に固定して工程(2)を実施している。このようなslotの位置及び数構成は、当業者が適宜決定することができる。そして、このような設計において、細胞の分離のために2種以上のmiRNA応答性mRNAを設計しようとするとき、2種以上のmiRNA応答性mRNAのセットでは、スロットの位置や数が互いに同じであっても異なっていてもよく、miRNA応答性mRNAの5'UTRの全長も、互いに同じであっても異なっていてもよい。いずれもこの段階で適宜設計することができる。
この限定工程は、工程(2)で網羅的な計算をすることが可能な場合は、原理的には必須ではなく、任意選択的に行ってよい工程である。
工程(3)は、前記工程(2)で算出された値より、2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になるmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程である。この工程では、翻訳抑制効果の差が最大になるように、各スロットに挿入されるmiRNA応答配列及び非miRNA応答配列を選択する。
工程(2)において、それぞれAUGから任意の塩基数離れた場所にある、任意の数のスロットをもつmRNAを設計することができ、設計されたmRNAを目的の細胞に導入したときの、各細胞における発現量は計算して得ることができる。すなわち、任意に設計したmRNAを細胞に導入した結果は推測することができる。工程(2)において多種類のmRNAを設計し、細胞に導入したときの各細胞における推測値を計算すれば、そのなかから、任意の条件を設定して目的に応じた効果を持つmRNAを得ることができる。例えば、対象とする複数種類の細胞に導入した場合に細胞を分離する能力の高いmRNAを得たい場合、設計したmRNAごとの各細胞における発現量の分散を指標として、最も分散が大きいmRNAを、細胞分離能が最も高いと期待されるmRNAとして選択することができる。2種類以上の設計mRNAを同時に細胞に導入した場合であっても、それぞれのmRNAの各細胞における発現量が計算で得られるため、任意の条件を設定して目的に応じた効果を持つmRNAの組み合わせを得ることができる。例えば、4種類のmRNAを細胞に導入して、2種類のmRNAずつの発現量の比率を指標にして細胞を分類しようとする場合、4種類のmRNAごとの各細胞における発現量が工程(2)で得られているため、それらの比率を計算し、4種類のmRNAひとセットごとに各細胞における2つの蛍光比率をパラメータとして得ることができる。任意のmRNAを4種類選んだ任意のmRNAセットについて、得られた2パラメータのばらつき、任意の2つの細胞間の差、あるいはその差の積算値が最大となるmRNAセットを計算結果から探索することができる。
工程(3)において探索の対象となるmRNAの数は、限定工程でどの程度まで、スロットに挿入するmiRNA候補数や、スロット数を絞るかにより異なる。例えば、限定工程で、計算により単一のmRNA、あるいは4種類のmRNAひとセットにまで絞った場合には、実質的に工程(3)は、工程(2)で翻訳抑制効果を計算した単一のmRNA、あるいは4種類のmRNAひとセットを、そのまま選択するだけとなる場合もある。
また、工程(3)においては、分散、複数パラメータのばらつき、任意の2つの細胞間の差、あるいはその差の積算値の計算結果のみに基づいて、最終的な単一のmRNA、あるいは2〜4種類のmRNAひとセットを選択することもできるし、さらに実験的手法で翻訳抑制効果を測定し、分散、複数パラメータのばらつき、任意の2つの細胞間の差、あるいはその差の積算値の計算結果と合せて、最終的な単一のmRNA、あるいは2〜4種類のmRNAひとセットを選択することもできる。すなわち、工程(2)で翻訳抑制効果を計算した全てのmRNAについて、あるいは工程(2)で翻訳抑制効果を計算したmRNAのうち、工程(3)で分散、複数パラメータのばらつき、任意の2つの細胞間の差、あるいはその差の積算値の計算結果からある程度絞り込んだmRNAについて、実際に遺伝子工学的手法により、これらのmRNAを調製し、対象細胞に導入して分離方法を試験する。その結果、実際に対象細胞の分散、複数パラメータのばらつき、任意の2つの細胞間の差、あるいはその差の積算値が最大となるmRNAを選択して、本発明の設計を完了することもできる。
次に、工程(1)〜(3)を例に基づき説明する。
工程(1)
1-slot mRNAを用いて、各細胞におけるmiRNA活性を具体的に測定する。ここではmiRNA応答mRNAの発現量として考えるため、発現量が小さいものほど活性は高くなる。また、以後の計算のため対数で考える。そのため、全く活性がない場合が0、発現量を1/10まで抑制する場合が-1、1/100まで抑制する場合が-2と負の数字が小さいほど抑制力が高い。細胞 A, B, C, D を対象に解析して、以下のような結果を得たとする。
Figure 2017073600
工程(2)
上記工程で、それぞれの細胞ごとにmiRNAの活性がわかれば、複数のmiRNA標的配列を含むあるmRNAを作って細胞に導入した時に、各細胞における発現量を予想することができる。このとき、予想値は k x 上記対数の和で与えられる。kの値はスロットのAUGからの距離 (d[nt]) で決まり、k=d-0.576で求まる。ただし、以下の例では簡単のため直接 k を与える(そういうdのところにスロットがあるmRNAだとする)。
Figure 2017073600

a = 0.1 x 0 + 0.4 x -1 = -0.4 (このmRNAの発現量は 10-0.4= 0.398 と計算される。)
b = 0.1 x -0.5 + 0.4 x -0.1 = -0.09
c = 0.1 x -1 + 0.4 x -0.8 = -0.42
d = 0.1 x -2 + 0.4 x -0.2 = -0.28
例えば、miRNA 100 個を解析対象としていて、あらかじめAUGからの距離が固定されている5つのスロットを含むmRNA(たとえば5つのスロットの距離を105 nt, 80 nt ,65 nt , 40 nt, 15ntとする)は、各スロットにはmiRNA標的配列100種類または空配列の101種類が入ることができる。作成可能な5-slot mRNAは 101 x 101 x 101 x 101 x 101 = 10,510,100,501 種類の mRNA(ただし、このうち1種類は全て空)を作ることができ、そのmRNAを各細胞に導入した場合の発現量が計算できる。このmRNAとはスロットの距離が違う値に固定されたmRNAも同様の計算で10,510,100,501種類設計できる。たとえば5つのスロットの距離が106 nt, 80 nt ,65 nt , 40 nt, 15ntのものも10,510,100,501 種類できるし、104 nt, 80 nt ,65 nt , 40 nt, 15nt のものも、106 nt, 83 nt ,62 nt , 41 nt, 13nt のものも10,510,100,501 種類できる。スロット数を5以外にした場合も同様で、それぞれAUGから任意の塩基数離れた場所にある、任意の数のスロットをもつmRNAを設計でき、そのmRNAをこれらの細胞に導入した場合の、各細胞における発現量を計算によって得ることができる。
工程(3)
あるmRNAを使用した時の細胞の分離具合を、そのmRNAを使用した時のそのmRNAの発現量の対数の分散を指標として計算する。
スロットの構成が、5’側から順に「空/miR-1/空/miR-2/空」のmRNAの場合、発現量の対数値は (A, B, C, D) = (-0.4, -0.09, -0.42, -0.28) なので、このmRNA(を用いた場合の対象細胞)の標本分散は 0.0172と計算できる。例えば、「空/miR-1/空/miR-2/空」と「miR-3/ miR-4/miR-4/空/miR-3」のmRNAを使った場合、「miR-3/ miR-4/miR-4/空/miR-3」の発現量は以下のとおり。
e = (0.05+0.8) x -2 + (0.1+0.2) x -0.5 = -1.85
f = (0.05+0.8) x -2 + (0.1+0.2) x -0 = -1.7
g = (0.05+0.8) x -0.4 + (0.1+0.2) x -2 = -0.94
h = (0.05+0.8) x -1.2 + (0.1+0.2) x -0.1 = -1.05
このmRNAの標本分散は 0.156と計算できる。また、これら2つの値で細胞を分類しようとする場合、{A, B, C, D} = {(-0.4, -1.85), (-0.09,-1.7), (-0.42,-0.94), (-0.28,-1.05)} となる。そこで2変数の相関係数を計算すると -0.320 となる。例えば、標本分散および相関係数を2パラメータのばらつきの指標として用いることができる。
miRNA応答性mRNAは、上記工程(1)〜(3)に従って設計され、その配列が決定されれば、遺伝子工学的に既知の任意の方法により当業者が合成することができる。特には、プロモーター配列を含むテンプレートDNAを鋳型として用いたin vitro転写合成法により、得ることができる。
したがって、本発明は、上記工程(1)〜(3)を含む設計の工程と、合成工程とを含む、mRNAの製造方法とも捉えることができる。製造したmRNAは、第2実施形態において詳述する分離方法において、好適に用いることができる。
本発明は、第2実施形態によれば、2以上の対象細胞を分離する方法に関する。当該方法は、第1実施形態の方法で設計され、合成されたmiRNA応答性mRNAを用いて、マーカー遺伝子の翻訳量を指標として2以上の対象細胞を分離する。miRNA応答性mRNAで測定するのは、第1実施形態の方法において用いた対象細胞内の特徴を反映したなにかしらの指標といえるので、設計したmRNAあるいはmRNAのセットをどのような細胞、細胞の混合物に導入することもできる。ただし、mRNAを設計したときに根拠となった対象細胞の組み合わせをなるべくよく分類しようとするような指標となっている。
本実施形態による分離方法では、第1実施形態により設計され、合成されたmRNAを用いる。したがって、第1実施形態により設計され、合成された1種類のmiRNA応答性mRNAを用いることもでき、2種類、3種類、4種類以上のmiRNA応答性mRNAを用いることもできる。2種類以上のmiRNA応答性mRNAを用いる場合には、第1実施形態により、細胞の分離を最大にするように設計された5’UTRの配列及びマーカー遺伝子がそれぞれ異なる2種類以上のmiRNA応答性mRNAのセットを用いる。特には、5’UTRの配列及びマーカー遺伝子がそれぞれ異なる4種類のmiRNA応答性mRNAから構成されるセットを用いることがより好ましい。
具体的な方法としては、4種類のmiRNA応答性mRNAを、対象細胞を含む細胞群に共導入し、マーカー遺伝子の翻訳量を指標として対象細胞を分離することができ、詳細な実験手順及び測定法は、第1実施形態の工程(1)と概ね同様である。したがって、測定は種々の方法で可能であるが、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合であって、フローサイトメトリーで測定する場合を例として説明する。4種類のmiRNA応答性mRNAから測定される蛍光強度をそれぞれ、FL1、FL2、FL3、FL4とした場合に、FL1/FL2、FL3/FL4の蛍光強度比をそれぞれX軸、Y軸とした場合のドットプロットで、細胞を分離することができる。あるいは、6種類のmiRNA応答性mRNAから測定される蛍光強度を、同様にして、2種類ずつの蛍光強度比とし、それぞれX軸、Y軸、Z軸とした場合のドットプロットで、細胞を分離することもでき、理論上の上限はない。
このような分離はまた、イメージアナライザーを用いたイメージングサイトメトリーでも実施することができる。イメージアナライザーは、細胞内のマーカー遺伝子の翻訳量の経時変化の情報を得ることができ、また、画像化、視覚化の点で優れており、単位時間あたりの解析量を向上できるほか、細胞の形態情報や位置情報を包含した解析、培養容器に接着した状態の細胞や、平面的あるいは立体的に組織化された細胞群を対象にした細胞の同定といった応用が可能となる点で有利である。
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。以下の実施例は本発明を限定するものではない。
mRNAの配列
本実施例で使用した5-slot mRNAの5’ UTR 配列は、表3の配列番号2〜115に、1-slot mRNA の5’ UTR 配列は、表5の配列番号122〜391に示す。
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蛍光蛋白質コード領域及び3’UTR断片の構築
蛍光蛋白質 hmAG1, hmKO2, hdKRed および tagBFP の蛋白質コード領域は、プラスミドDNA: pFucci-S/G2/M Green (Amargaam)、pFucci-G1 Orange (Amargaam)、pAM-tagBFP (参考文献 [Miki, K., et al, Cell Stem Cell, 2015])、およびpNP-hdKeima-Red (Amargaam)からそれぞれ表6に示す適当なプライマーセット(Fwd/Rev hmAG1 (配列番号392/393)、Fwd/Rev hmKO2 (配列番号394/395)、Fwd/Rev tagBFP (配列番号396/397)、Fwd/Rev hdKeimaRed (配列番号398/399))を用いて PCR 増幅した。PCR産物中のプラスミドDNAを制限酵素Dpn I (Toyobo)を用いて、37 °Cで30分消化し、MinElute PCR purification kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製した。3’UTR配列はオリゴヌクレオチドtemp3UTR(配列番号 405)を鋳型にしてFwd3UTR(配列番号 403)及びRev3UTR(配列番号 404)をプライマーに用いてPCR増幅した。コントロールmRNAの5’UTR配列は、オリゴヌクレオチドtemp5UTR(配列番号 402)を鋳型にしてT7Fwd5UTR(配列番号 400)及びRev5UTR(配列番号 401)をプライマーに用いてPCR増幅した。これらのPCR産物は、MinElute PCR purification kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製した。
Figure 2017073600
mRNA合成鋳型DNAの構築
mRNA合成鋳型を生成するために、マーカー蛋白質コード領域のPCR増幅断片(最終濃度 0.2 ng/μL)、3’UTRのPCR増幅断片(最終濃度 10 nM) および 5’ UTR配列を含むオリゴヌクレオチド(最終濃度 10 nM)を混合し、表7に示したT7Fwd及びRev120Aのプライマーセットを用いてPCR増幅して、連結した。1-slot mRNAの合成鋳型には1本の、5-slot mRNAの合成鋳型には2本のオリゴヌクレオチドを用いた。ただしコントロールmRNAを作成する場合には、5’UTR配列はオリゴヌクレオチドの代わりに、精製したPCR断片を最終濃度10 nM で用いた。PCR産物は、MinElute PCR purification kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製した。最終的に合成される5-slot mRNAの5’UTR配列は表3に、1-slot mRNAの5’UTR配列は表5に、蛍光タンパク質のORF配列(配列番号117,118,119,120、及び3' UTR配列(配列番号121、すべてのmRNAに共通)は表4に示した。5-slot コントロールmRNAの5’UTR配列(配列番号1)は表3に、1-slotコントロールmRNAの5’UTR配列(配列番号116)は表4に示した。
Figure 2017073600
mRNAの合成及び精製
miRNA応答性mRNAは、修正されたプロトコル(下記の参考文献[Miki, K., et al, Cell Stem Cell, 2015]を参照)において、MegaScript T7 kit (Ambion)を用いて調製した。この反応にいて、ウリジン三リン酸及びシチジン三リン酸に替えて、シュードウリジン-5’-三リン酸及び5-メチルシチジン-5’-三リン酸(TriLink BioTechnologies)をそれぞれ用いた。IVT(mRNA合成)反応の前に、グアノシン-5’-三リン酸は、Anti Reverse Cap Analog (New England Biolabs)で5倍希釈した。反応混合液を37度で4時間インキュベートして、TURBO DNase (Ambion)を添加した後、37度でさらに30分インキュベートした。得られたmRNAは、FavorPrep Blood / Cultured Cells total RNA extraction column (Favorgen Biotech)で精製し、Antarctic Phosphatase (New England Biolabs)を用いて、37度で30分インキュベートした。その後、RNeasy MiniElute Cleanup Kit (QIAGEN)により、さらに精製した。
mRNAトランスフェクション
表8に記載の条件に従って、StemFect (Stemgent)を用いて、製造者の指示に従って 24-well フォーマットの培養プレートにて、リバーストランスフェクションを行った。ただし、ヒトiPS細胞の経時変化を追跡する場合には、フォワードトランスフェクションを行った。
Figure 2017073600
フローサイトメトリー
トランスフェクションの24時間後に細胞を培養皿から分離し、メッシュを通して、FACSAria II (BD Biosciences) 用いたフローサイトメトリーにより分析した。hmAG1、hmKO2、tagBFP及びhdKRedは、青色レーザー(488 nm)とFITCフィルター(530/30 nm)、緑色レーザー(561 nm)とPE フィルター(585/42 nm)、紫色レーザー(405 nm)とPacific Blue フィルター(450nm/40 nm)、及び紫色レーザー(405 nm)とQdot 605 フィルター(610/20 nm)によりそれぞれ検出した。死細胞及びデブリは、前方及び側方光散乱の値に基づいて除外した。
フローサイトメトリーで検出した蛍光値の補正解析
hmAG1、hmKO2、tagBFP及びhdKRedの4種類の蛍光蛋白質を同時に検出した場合には、同時に、hmAG1、hmKO2、tagBFPまたはhdKRedのmRNAのみをトランスフェクションした細胞を解析して、実際とは異なる蛍光蛋白質として検出される蛍光値を補正した(参考文献:[Endo, K. and Saito, H. Methods in Molecular Biology, 2014])。
Relative expressionの算出
フローサイトメトリーの解析により、レポーター mRNA から発現するhmAG1の蛍光強度を、共導入したコントロールmRNAから発現する tagBFP の蛍光強度で割り、その解析した細胞集団における相乗平均値をレポーターmRNAの蛍光比率 (Fluorescence ratio) とした。各mRNA配列について、レポーターmRNAが応答するmiRNAの阻害剤存在下における蛍光比率を基準として、miR-1 の阻害剤存在下(目的のmiRNA活性状態)の蛍光比率の相対値を “Relative expression” として定義した。2種類のmiRNA応答配列を含む mRNA の場合は、一方のmiRNA阻害剤存在下で、それぞれ “Relative expression” 値を測定し、測定した2値を積算したものを “Estimated expression” とした。3種類のmiRNA応答配列を含む mRNA の場合は、3種類中2種類のmiRNA阻害剤存在下で、それぞれ “Relative expression” 値を測定し、測定した3値を積算したものを “Estimated expression” とした。
結果
1分子で多数のmiRNAに応答し、かつ個々のmiRNAへの応答の程度(検出感度)を任意に調節プローブ (= mRNA) の設計方法を開発し、細胞内の多因子情報を線形モデルで抽出することに成功した。RNA Synthetic Device はmRNAと転写後・翻訳段階の制御を基本としているため、mRNAに作用するmiRNA が細胞内部のマーカー分子として用いられている。マイクロアレイや次世代シーケンシングなどの high-throuput analysisの場合は、まず、(1) miRNA を網羅的に定量検出し、その後で、(2) 多変量解析などにより膨大な数の変数から取り扱いが容易な数の合成変数を抽出し、それに基づいて細胞の状態を区別している (図1a左図)。一方で、非侵襲的に(細胞を殺さずに)同時に検出可能なシグナルの数は限られており、1対1に対応した検出プローブでは対応できない。そこで、生細胞内の多因子の情報を検出するために、多因子の情報を先に要約してから、その結果合成されたパラメータを検出する戦略をとる (図1a右図)。すると、同時に検出可能な、限られたシグナル数でも、多数の生細胞内因子の定量情報に由来し、そのエッセンスを抽出した合成パラメータを直接検出できる。我々は、1つのmRNAが複数のmiRNAを可算的に検出できること、各miRNAへの検出感度をmRNA上のmiRNA標的配列の位置で調節できることを発見した。
複数のmiRNA応答は積算される
複数種類のmiRNAに応答するmRNAを作成するため、これまでは1カ所のみmiRNA標的配列を含んでいたmRNA (1-slot mRNA, 図6a, Miki, K. et al, Cell Stem Cell, 2015, 国際公開WO2015/105172) を拡張し、5’ UTR に連続に5カ所のmiRNA標的配列挿入部位 (スロット) を設計した (5-slot mRNA, 図2a)。細胞内因子の例としては、HeLa 細胞内で弱い活性を示すmiRNAの例として miR-34a-5p、強い活性の例として miR-17-5p と miR-92a-3p、さらに非常に強い活性の例として miR-21-5p の4種類を選んだ。5カ所のスロットに2 または3 種類の異なるmiRNA標的配列が挿入され、マーカー蛋白質としてhmAG1をコードするmRNAをランダムに12種類設計し、mRNAを合成した (図2a, 表3)。合成した 5-slot mRNAを、それぞれ、mRNA導入のコントロールとして蛍光蛋白質 tagBFPをコードした mRNAおよび 5-slot mRNAが応答するmiRNAに対する阻害剤 (miRVana miRNA inhibitor, Invitrogen) とともにHeLa細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に、フローサイトメーターを用いてマーカータンパク質の蛍光強度を定量し、Relative expression 値を解析した。
例えば、miR-17-5p の標的配列を slot-2 に、miR-92a-3p の標的配列を slot-4 に持つmRNAの場合 (図2b)、両方のmiRNAに対する阻害剤を導入した時の 5-slot mRNA の発現量は、どちらのmiRNAの活性にも影響されていない場合の発現量を示すと考えられ、これを5-slot mRNAごとの発現量の基準値 (=1) とした。どちらか一方のmiRNA阻害剤 (miR-17-5p または miR-92a-3p) を導入した時の発現量は、それぞれ、もう一方のmiRNA活性 (miR-92a-3p または miR-17-5p) のみを反映していると考えられる。また、miRNA阻害剤の非存在下 (実際には、mock として用いたmiRNA-1 に対する inhibitor の存在下) の発現量は、両方のmiRNAの活性を反映していると考えられる。この両方のmiRNA活性を反映した Relative expression値は、個々のmiRNA活性への応答した Relative expression値の積算値(これを予測発現量, estimated expressionとする)に近い値を示した。
そこで、ランダムに作成した12種類の 5-slot mRNA それぞれについて、miRNA阻害剤非存在下の Relative expression 値 (observed relative expression) と、応答する複数のmiRNAのうち1種類のみのmiRNA活性に応答したRelative expression値の積算値(estimated expression)を比較すると、非常に高い相関を示した (図2c)。このことは複数のmiRNA標的配列を持つ合成mRNAを用いることによって、複数のmiRNA活性を積算的に検出できることを示す。
miR34a-5p, miR-92a-3p, miR17-5p または miR-21-5p に応答する1-slot mRNAを合成し、mRNA導入のコントロールとなる tagBFP mRNA および 4種類のmiRNA阻害剤とともにHeLa 細胞に導入して Relative expression を求めたところ、mRNAが応答するmiRNA 以外のmiRNA阻害剤を導入しても Relative expression の値は影響を受けなかった。よって今回の実験条件においては、これらのmiRNA阻害剤は目的としない他の3種類のmiRNA活性を阻害しないことが確認された (図5a)。一方、複数のmiRNA阻害剤を挿入する場合には、細胞に導入するmiRNA阻害剤の総量が変動してしまう。ネガティブコントロールとして使用したmiR-1 に対するmiRNA阻害剤の量を増加させても、測定されるRelative expression の値は影響を受けなかったことから、今回の実験条件においては、miRNA inhibitor の導入総量の影響は無視できることが確認された。
スロットの位置により応答感度を調節できる
5カ所のスロットのうち、1、2または3カ所が同一のmiRNA標的配列で占められている一連の 5-slot mRNAを、miR34a-5p, miR-92a-3p, miR17-5p または miR-21-5p の4種類のmiRNAについて、それぞれ設計し、mRNAを合成した (Fig 2d, 表3)。合成した5-slot mRNAを、それぞれ、mRNA導入のコントロールとして蛍光蛋白質 tagBFPをコードした mRNAおよび 5-slot mRNAが応答するmiRNAに対する阻害剤とともにHeLa細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に、フローサイトメーターを用いてマーカータンパク質の蛍光強度を定量し、Relative expression 値を解析した。ただし、miR-21-5p の解析においては、マーカー遺伝子の発現が強く抑制され、細胞の自家蛍光の影響が高くなるため、tagBFPの蛍光値が 10,000 以下の細胞を除去してmRNA導入量の高い細胞群で評価した。
このとき、各 5-slot mRNAの発現量 (Relative expression) は、各スロットにおけるmiRNA応答性 (ρ) の積算値だと考えられる (Fig. 2d, bottom)。そこで、実験的に測定した Relative expression 値 (observed relative expression) のデータセットから、最小二乗法に基づいたフィッティングにより、各スロットにおけるmiRNA応答性 (ρ) を4種類のmiRNAそれぞれについて算出した。この解析で求められた各スロットにおけるmiRNA応答性の積算値を、5-slot mRNA それぞれの予測発現量 (estimated expression) とした。
4種類全てのmiRNAについて、予測発現量は、実験的に測定されたRelative expression 値 (observed relative expression) とよく一致した (Fig. 2e)。このことは、5-slot mRNAの挙動が各スロットにおけるmiRNA応答性 (Local relative expression, ρ) で説明できていることを示唆する。4種類のmiRNAのうちいずれにおいても、スロット番号の小さい5’側のslot ほど応答感度が低く、3’側のslot ほど応答感度が高かった (図2fおよび図6)。
一方、miR34a-5p, miR-92a-3p, miR17-5p または miR-21-5p に応答する1-slot mRNA についても Relative expression 値を解析すると、どのmiRNAにおいても 1-slot mRNA はslot-5 に近い値を示した(図6b)。1-slot mRNA のmiRNA標的配列は、mRNAの5’末端から~20 nt, AUG から23 nt に位置している (図6a) ことから、この結果は、miRNA標的配列が、5’末端ではなく開始コドンにより近いほど、mRNAの応答感度が高くなること、開始コドンからの距離に依存して応答感度が低くなることを示唆する。
解析した4種類のmiRNAに固有のパラメータではなく、これらのmiRNAに共通するパラメータとして、miRNA標的配列の位置とmiRNA応答性の関係を求めるため、活性の異なる 4種類のmiRNAの解析で得られた各スロットの応答感度を、下記の指数関数モデルに同時にフィッティングした (図2f)。フィッティングは対数値に対して最小二乗法を用いて実施した。
Figure 2017073600

このとき、d は開始コドンからの距離 ([nt]) を、ρ0 はそれぞれのmiRNAについて距離 0 [nt] の時の仮想的な応答感度を示す。ξ はmiRNAの種類に関わらず共通する変数を示す。(つまりρ(d) = {ρ0}k(d)= ρ0^dξ となる。)
フィッティング解析の結果、miRNAによる翻訳抑制効果 (local repression, -log(ρ)) は、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離 (d [nt]) と miRNAの種類に関わらない変数ξを用いてよく説明できた。今回の解析では、共通変数ξの値として -0.576 を得た。すなわち、5’UTR にmiRNA標的配列を含むmRNAを設計する場合、miRNAによる翻訳抑制効果は、miRNAの種類に関わらず一般に、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離の -0.576 乗に比例すると考えられる。
多種類の細胞の分類
このモデルを実証するため、複数種類のヒト正常細胞を生きたまま、miRNA活性プロファイルに従って分類、分離することを試みた(図3)。
まず細胞種ごとのmiRNA 活性を探索的に定量した。5’ UTR で標的配列が AUG になるのを防ぐため、CAUを含まないmiRNA を 270 抽出した(図3a、表4)。このとき、過去の文献から様々な細胞で比較的発現量の高いものを選別し(参考文献 [Neveu, P., et al, Cell Stem Cell, 2010])、かつ配列に類似性の高いmiRNAは除いた。選別した270のmiRNA のうち90はhmAG1を、別の90はtagBFPを、残る90はhdKRedをマーカーの蛍光蛋白質としてコードする1-slot mRNA を合成した。作成したmRNAの5’UTR配列を表5 に示す。異なるmiRNA標的配列が挿入されたhmAG1、tagBFP、およびhdKRedをコードする1-slot mRNAを各1種類と、mRNA導入のコントロールとして用いたhmKO2 mRNAの計4種類のmRNAを混合し、解析対象の細胞にトランスフェクションした。すなわち、計90種類の組み合わせで 1-slot mRNAをトランスフェクションした。また、解析上のコントロールとして、mRNAを含まない水、miRNAに応答しないコントロールのhmAG1、tagBFP、hdKRedおよびhmKO2の4種類のmRNAの混合、またはこれら4種類のmRNAのうちそれぞれ1種類のみ、の6種類のトランスフェクションを行った。すなわち、各細胞について96種類のトランスフェクションを実施して1セットの探索解析とした。解析対象の細胞としては、HeLa 細胞のほか、ヒト正常皮膚線維芽細胞(NHDF)、ヒト正常肺線維芽細胞(NHLF)、ヒト正常表皮ケラチノサイト(NHEK)、人腎臓上皮細胞(HRE)の初代培養細胞4種類、マウス線維芽細胞 (MEF) 、ヒト上皮線維芽細胞由来のiPS細胞(hiPSC)、およびhiPSCをbFGF非存在下で部分的に分化させた細胞 (hiPSC 14d) を用いた。
フローサイトメトリー後、補正された蛍光強度を用いて、解析した細胞ごとにhmAG1、tagBFPおよびhdKRedの蛍光強度をhmKO2の蛍光強度で割り、蛍光比率を求め、解析した細胞における相乗平均をもとめて各1-slot mRNAの蛍光比率 (Fluorescence ratio) とした。探索解析を同じ細胞に対して2度実施し、得られた蛍光比率の比較を図3bに示す。これらの解析結果は高い相関を示したことから、この解析系は安定していることが示唆される。
一般に、定量検出されるmiRNAのうち約1/3程度しか翻訳抑制活性を持たないことが知られている(参考文献[Mullokandov, G. et al, Nature Methods, 2013])。本解析で用いた270のmiRNAについても約2/3程度はmiRNA活性に左右されないと考えられるため、1-slot mRNAの蛍光比率は全体として対角線上に分布すると考えられる。しかし、細胞間の探索解析結果を比較すると、HeLa細胞とNHLFの比較では、観察された蛍光比率は対角線からずれてプロットされている(図7a)。これは細胞ごとに、蛍光蛋白質の合成効率や安定性などに違いがあるため、結果として発現量の分布にバイアスがかかっていると考えられる。そこで細胞間の蛍光蛋白質発現量を、HeLa細胞を基準に用いて標準化した。具体的には、各細胞の蛍光比率とHeLa細胞の蛍光比率の散布図を作成し、蛍光蛋白質ごとに直線回帰を行って、傾きが1となるようそれぞれに線形補正を実施
した (図7b)。これにより細胞間にあるバイアスは補正され、散布図を作成すると各1-slot mRNAは対角線上に分布したが、hmAG1、tagBFPおよびhdKRedの蛍光比率の分布は一致していない。これはマーカーとして用いた蛍光蛋白質の違いによるバイアスがあることを示す。そこでさらに、各蛍光比率の分布を平均0.5、標準偏差0.15に標準化した (図7c)。標準化した蛍光比率についてNHDFとhiPSCの比較を図3cに示す。これらの細胞間には大きなmiRNA活性の差があると期待されるが、実際に、miRNA活性を示す図中の各点は対角線に対して直行する方向に広がって分布しており、かつこの分布は用いた蛍光蛋白質によらず均等に分布している。この補正値を細胞ごとのmiRNA活性プロファイルとし、線形モデルの例として主成分分析により解析した。主成分分析には統計パッケージRのprcomp関数を用いた。第一主成分を横軸、第二主成分を縦軸にとると、8 種類の細胞条件は分類された(図3d)。このことは1-slot mRNA を用いた探索解析によって得られたmiRNA活性プロファイルに従って、これらの細胞を統計解析上は分類できることを示している。
主成分分析で得られた成分は270のmiRNA活性の線形結合として表現される。一方、細胞内の複数のmiRNA活性は、複数の標的配列を持つ1つのmRNAにより、定量的に積算して測定でき、かつmiRNA活性の検出感度は標的配列と開始コドン間の距離によって調節できた。従ってマーカータンパク質の発現量の対数をとると、複数のmiRNA活性を線形モデルで集約されることになる (図1b)。ただし、miRNA活性にかかる係数 (k = d-0.576) は常に正になる。そこで、異なる蛍光タンパク質を発現する2 種類のmiRNA応答mRNAを用いて、2種類の蛍光値の比をとることによって、各miRNAに対して正負任意の重み付けを実現できる (図1b)。すなわち、細胞内の多種類のmiRNA活性プロファイルは、2種類のmiRNA応答mRNAを設計することによって、多変量を1つの蛍光値の比として集約できることになる。そこで、主成分分析と同様に、対象細胞で測定される値の分散が最大化されるようなmRNAを用いれば、対象の細胞を生きたまま分類することができると考えられる。
ここでは簡単のため4種類の5-slot mRNAを用いることとした。異なる細胞の種類を分類するため、270のmiRNA活性プロファイルから、細胞の分離能の高いと考えられるmiRNAを選別した。スクリーニング解析で得たmiRNA活性プロファイルに対して主成分分析とクラスター分析(ウォード法)を行い 270 のmiRNAを49クラスターに分離し、各クラスターで第一成分または第二成分への寄与が最も高いmiRNAを選んだ。クラスター分析には統計パッケージRのdist関数及びhclust関数を用いた。選ばれた49 miRNAのみで再び主成分分析を行い、第一成分または第二成分への寄与が高い26のmiRNAを選別した。26 miRNAの標的配列を含む 5-slot mRNAの8種類の細胞における発現量の予測値を計算し、いずれかの細胞で発現量が極めて小さくなるmRNA(Estimated expression < 0.05) を除外した。残りのmRNAについて8細胞における予測発現量の分散を計算し、分散が最大化するmRNAを5-slot mRNA #1 (hmAG1) とした。次に、5-slot mRNA #1と予測発現量の比率を計算し、その値が8細胞の分散を最大化するmRNAを5-slot mRNA #2 (hmKO2) とした。さらに、5-slot mRNA #1 と 5-slot mRNA #2 の比率と、新たなmRNAの予測発現量の相関係数が 0.3 以下となり、かつこれらの2次元のデータにおいて8細胞の分散を最大化するmRNAを求め、5-slot mRNA #3 (tagBFP) とした。最後に 5-slot mRNA #1 と #2 の比率、5-slot mRNA #3 と #4 の比率の2次元データにおいて8細胞の分散を最大化する5-slot mRNA #4 (hdKRed) を求めた。一連の計算上の探索により得られた1 セットの 5-slot mRNA を図3eに示す。また、このmRNAセットをトランスフェクションした場合の、8細胞の分布の推測結果を図3fに示す。
設計された4 本の5-slot mRNAを混合し、HeLa細胞、NHEK、NHDF、hiPSC及びhiPSC 14dにトランスフェクションし、24時間後にフローサイトメトリーを行った。蛍光補正後、解析された細胞ごとにhmAG1/hmKO2及びtagBFP/hdKRedの2つの蛍光比率を求め、細胞の分布を密度プロットで示した(図3g)。これらの5種類の細胞は、同一の5-slot mRNAセットを用いてそれぞれ異なる場所に分布した。この結果から、6 種類のmiRNA活性から線形モデルで抽出した 2 つのパラメータを、4 本の 5-slot mRNAを用いて直接測定し、これに基づいて5種類の細胞を生きたまま分離することが可能となった。また、miRNAに応答しないmRNAのセットや、1-slot のmiRNA-responsive mRNA のセットでも同様の実験を実施したが、これらの細胞種は分離できなかった (図8) 。
同一細胞(種)の時間変化の追跡
さらに、ヒトiPS細胞が分化能を失う過程を経時的に追跡して、工程(1)で探索する細胞の違いにより、得られるmRNAセットの分離能の違いを検証した(図4)。まず、270のmiRNA活性を探索的に定量した結果(図3c)から hiPSC とbFGF非存在下で部分的に分化させた hiPSC (iPSC 14d) の間で差の大きかった 54 のmiRNAを選択した(図4a)。これらのmiRNAを対象として、hiPSCがbFGF非存在下で部分的に分化する過程におけるmiRNA活性の経時変化を追跡するため、二次的な探索解析を実施した (図4b)。hiPSCをbFGF非存在下で培養し、培養開始当日(day 0) および1(day 1)、3(day 3)、6(day 6)、9(day9 )、または14日後(day 14)に、異なるmiRNA標的配列が挿入されたhmAG1、tagBFP、およびhdKRedをコードする1-slot mRNAを各1種類と、mRNA導入のコントロールとして用いたhmKO2 mRNAの計4種類のmRNAを混合し、トランスフェクションした。このとき一次的な探索解析(図3a)で用いた6種類のコントロールと同一のトランスフェクションを実施した。すなわち、各培養条件において24種類のトランスフェクションを実施した(図4a)。
各培養条件の細胞はトランスフェクションから24時間にフローサイトメトリーで解析した。一時的な探索解析の結果(図7a)と異なり、これらの培養条件間では、蛍光比率に大きなバイアスは見られなかった(図4c)ことから、蛍光比率の値をそのまま以後の解析に用いた。miRNA活性のプロファイルを主成分分析し、第一主成分を横軸、第二主成分を縦軸にとって、これらの培養条件にある細胞を分類した(図4d)。
測定された蛍光比率に対して主成分分析とクラスター分析(ウォード法)を行い54のmiRNAを23クラスターに分離し、各クラスターで第一成分または第二成分への寄与が最も高いmiRNAを選んだ。クラスター分析にはこれまでと同様に統計パッケージRのdist関数及びhclust関数を用いた。選ばれた23 miRNAのみで再び主成分分析を行い、第一成分または第二成分への寄与が高い11のmiRNAを選別した。これらの11 miRNAを用いて、一次的な探索解析(図3e, f)と同様の計算を実施して得られた5-slot mRNAのセットを図4eに、このmRNAセットをトランスフェクションした場合の、各培養条件の細胞の分布の推測結果を図4fに示す。また、実際にこの4 本の5-slot mRNAs を各培養条件の細胞にトランスフェクションし、フローサイトメトリーを実施した結果を図4gに示す。電子ティープロット上で細胞集団は時間変化にしたがって移動しており、8 種類のmiRNA活性から線形モデルで抽出した 2 つのパラメータを用いて、ヒトiPS細胞内部情報の経時的な変化を生きたまま追跡することができた。多種類の細胞を分類したプローブセット (図3e) と比べて、hiPSCの変化をより広い範囲に分離することができた (図9)。このことは細胞を分類している2つの合成パラメータを、mRNAのデザインにより任意に変更できることを示している。
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Efficient Detection and Purification of Cell Populations Using Synthetic MicroRNA Switches.
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Cell Stem Cell, 16(6):699-711, 2015

Engineering protein-responsive mRNA switch in Mammalian cells.
Endo K., Saito H.
Methods Mol Biol, 1111:183-96, 2014

High-throughput assessment of microRNA activity and function using microRNA sensor and decoy libraries.
Mullokandov G., Baccarini A., Ruzo A., Jayaprakash AD., Tung N., Israelow B., Evans MJ., Sachidanandam R., Brown BD.
Nat Methods, 9(8):840-6, 2012

Claims (7)

  1. 以下の工程を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法であって、当該miRNA応答配列を2以上含有するmRNAが、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAである、方法;
    (1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの翻訳抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、
    (2)前記工程(1)の測定結果に基づき、各対象細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、
    (3)前記工程(2)で算出された値に基づき、前記2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になる、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。
  2. 前記工程(1)と工程(2)の間に、前記工程(1)の測定結果に基づき、前記工程(2)の算出に使用するmiRNA応答配列の種類を、多変量解析を用いて限定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(2)の翻訳抑制効果が、前記2以上のmiRNA応答配列のそれぞれの翻訳抑制効果-log(ρ)を、miRNAの数だけ合算して得られるものであり、前記それぞれの翻訳抑効果-log(ρ)が、下記式
    Figure 2017073600

    (式中、ρは、miRNAによる翻訳抑制効果を表し、
    d [nt]は、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離 を表し、
    ξは、-0.576を表し、
    ρ0 はそれぞれのmiRNAについて距離0 [nt] の時の仮想的な翻訳抑制効果を表す)に基づいて算出される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記工程(3)が、各対象細胞におけるマーカー遺伝子の翻訳量の分散を最大にする、
    miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法でmRNAを設計する工程と、
    前記設計されたmRNAを、遺伝子工学的手法により合成する工程と
    を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAの製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で設計されたmRNAを用いて、マーカー遺伝子の翻訳量を指標として2以上の対象細胞を分離する方法。
  7. 前記mRNAが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で設計された、マーカー遺伝子配列及び5’UTRの配列がそれぞれ異なる4種のmRNAである、請求項6に記載の方法。
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三木健嗣、他: "Efficient detection and purification of cells by synthetic microRNA switches", 再生医療 日本再生医療学会雑誌, vol. 14, JPN6017001538, 1 February 2015 (2015-02-01), pages 188 - 04, ISSN: 0004390292 *

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