JPWO2017073600A1 - mRNAの設計方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 以下の工程を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法であって、当該miRNA応答配列を2以上含有するmRNAが、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAである、方法;
(1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの翻訳抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、
(2)前記工程(1)の測定結果に基づき、各対象細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、
(3)前記工程(2)で算出された値に基づき、前記2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になる、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。
[2] 前記工程(1)と工程(2)の間に、前記工程(1)の測定結果に基づき、前記工程(2)の算出に使用するmiRNA応答配列の種類を、多変量解析を用いて限定する工程をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記工程(2)の翻訳抑制効果が、前記2以上のmiRNA応答配列のそれぞれの翻訳抑制効果-log(ρ)を、miRNAの数だけ合算して得られるものであり、前記それぞれの翻訳抑制効果-log(ρ)が、下記式
(式中、ρは、miRNAによる翻訳抑制効果を表し、
d [nt]は、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離 を表し、
ξは、-0.576を表し、
ρ0 はそれぞれのmiRNAについて距離0 [nt] の時の仮想的な翻訳抑制効果を表す)
に基づいて算出される、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記工程(3)が、各対象細胞におけるマーカー遺伝子の翻訳量の分散を最大にする、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程を含む、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法でmRNAを設計する工程と、
前記設計されたmRNAを、遺伝子工学的手法により合成する工程と
を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAの製造方法。
[6] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法で設計されたmRNAを用いて、マーカー遺伝子の翻訳量を指標として2以上の対象細胞を分離する方法。
[7] 前記mRNAが、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法で設計された、マーカー遺伝子配列及び5’UTRの配列がそれぞれ異なる4種のmRNAである、[6]に記載の方法。
(1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、
(2)前記工程(1)の測定結果から、各細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、
(3)前記工程(2)で算出された値より、2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になるmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。
(a)miRNA応答配列を2以上含有するmRNAによる翻訳抑制効果は、各スロットのmiRNA標的配列単独による翻訳抑制効果の積算値となる。
(b)各スロットのmiRNA標的配列単独による翻訳抑制効果は、miRNAの種類に関わらず一般に、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離の 定数乗、具体的には-0.576 乗に比例する。
されない。このような検出装置は、マーカー蛋白質及び判別の態様により、当業者が適したものを用いることができる。例えば、マーカー蛋白質が、蛍光蛋白質又は発光蛋白質の場合には、フローサイトメーター、イメージングサイトメーター、蛍光顕微鏡、CCDカメラといった検出装置を用いてマーカー蛋白質の定量が可能であり、マーカー蛋白質が、蛍光、発光又は呈色を補助する蛋白質の場合には、発光顕微鏡、CCDカメラ、ルミノメーターといった検出装置を用いたマーカー蛋白質の定量方法が可能であり、マーカー蛋白質が、膜局在蛋白質の場合には、抗体などの細胞表面蛋白質特異的な検出試薬と、上記の検出装置を用いたマーカー蛋白質の定量方法が可能である。マーカー蛋白質が蛍光蛋白質の場合は、フローサイトメトリーを用いて、個々の細胞において翻訳されたマーカー蛋白質である、蛍光蛋白質、発光酵素が発する光の強度を定量的に得ることができるため好ましい。
工程(1)は、前述の式(b)の原理、すなわち、各スロットのmiRNA標的配列単独による翻訳抑制効果は、miRNAの種類に関わらず一般に、開始コドンからmiRNA標的配列までの距離の 定数乗、具体的には-0.576 乗に比例する、という発見に基づき、1-slot mRNAの翻訳感度を調節する方法に関する発明ということもできる。すなわち、1つのmiRNA応答配列を有するmRNAにおいて、miRNA応答配列の開始コドンからの距離を変化させることにより、同じmiRNA応答配列を持つmRNAであっても、翻訳抑制効率を変化させる、すなわちチューニングすることができる。このようなmRNAを用いることにより、多様な細胞の分離が可能になるといえる。
工程(1)
1-slot mRNAを用いて、各細胞におけるmiRNA活性を具体的に測定する。ここではmiRNA応答mRNAの発現量として考えるため、発現量が小さいものほど活性は高くなる。また、以後の計算のため対数で考える。そのため、全く活性がない場合が0、発現量を1/10まで抑制する場合が-1、1/100まで抑制する場合が-2と負の数字が小さいほど抑制力が高い。細胞 A, B, C, D を対象に解析して、以下のような結果を得たとする。
上記工程で、それぞれの細胞ごとにmiRNAの活性がわかれば、複数のmiRNA標的配列を含むあるmRNAを作って細胞に導入した時に、各細胞における発現量を予想することができる。このとき、予想値は k x 上記対数の和で与えられる。kの値はスロットのAUGからの距離 (d[nt]) で決まり、k=d-0.576で求まる。ただし、以下の例では簡単のため直接 k を与える(そういうdのところにスロットがあるmRNAだとする)。
a = 0.1 x 0 + 0.4 x -1 = -0.4 (このmRNAの発現量は 10-0.4= 0.398 と計算される。)
b = 0.1 x -0.5 + 0.4 x -0.1 = -0.09
c = 0.1 x -1 + 0.4 x -0.8 = -0.42
d = 0.1 x -2 + 0.4 x -0.2 = -0.28
あるmRNAを使用した時の細胞の分離具合を、そのmRNAを使用した時のそのmRNAの発現量の対数の分散を指標として計算する。
スロットの構成が、5’側から順に「空/miR-1/空/miR-2/空」のmRNAの場合、発現量の対数値は (A, B, C, D) = (-0.4, -0.09, -0.42, -0.28) なので、このmRNA(を用いた場合の対象細胞)の標本分散は 0.0172と計算できる。例えば、「空/miR-1/空/miR-2/空」と「miR-3/ miR-4/miR-4/空/miR-3」のmRNAを使った場合、「miR-3/ miR-4/miR-4/空/miR-3」の発現量は以下のとおり。
e = (0.05+0.8) x -2 + (0.1+0.2) x -0.5 = -1.85
f = (0.05+0.8) x -2 + (0.1+0.2) x -0 = -1.7
g = (0.05+0.8) x -0.4 + (0.1+0.2) x -2 = -0.94
h = (0.05+0.8) x -1.2 + (0.1+0.2) x -0.1 = -1.05
このmRNAの標本分散は 0.156と計算できる。また、これら2つの値で細胞を分類しようとする場合、{A, B, C, D} = {(-0.4, -1.85), (-0.09,-1.7), (-0.42,-0.94), (-0.28,-1.05)} となる。そこで2変数の相関係数を計算すると -0.320 となる。例えば、標本分散および相関係数を2パラメータのばらつきの指標として用いることができる。
本実施例で使用した5-slot mRNAの5’ UTR 配列は、表3の配列番号2〜115に、1-slot mRNA の5’ UTR 配列は、表5の配列番号122〜391に示す。
蛍光蛋白質 hmAG1, hmKO2, hdKRed および tagBFP の蛋白質コード領域は、プラスミドDNA: pFucci-S/G2/M Green (Amargaam)、pFucci-G1 Orange (Amargaam)、pAM-tagBFP (参考文献 [Miki, K., et al, Cell Stem Cell, 2015])、およびpNP-hdKeima-Red (Amargaam)からそれぞれ表6に示す適当なプライマーセット(Fwd/Rev hmAG1 (配列番号392/393)、Fwd/Rev hmKO2 (配列番号394/395)、Fwd/Rev tagBFP (配列番号396/397)、Fwd/Rev hdKeimaRed (配列番号398/399))を用いて PCR 増幅した。PCR産物中のプラスミドDNAを制限酵素Dpn I (Toyobo)を用いて、37 °Cで30分消化し、MinElute PCR purification kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製した。3’UTR配列はオリゴヌクレオチドtemp3UTR(配列番号 405)を鋳型にしてFwd3UTR(配列番号 403)及びRev3UTR(配列番号 404)をプライマーに用いてPCR増幅した。コントロールmRNAの5’UTR配列は、オリゴヌクレオチドtemp5UTR(配列番号 402)を鋳型にしてT7Fwd5UTR(配列番号 400)及びRev5UTR(配列番号 401)をプライマーに用いてPCR増幅した。これらのPCR産物は、MinElute PCR purification kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製した。
mRNA合成鋳型を生成するために、マーカー蛋白質コード領域のPCR増幅断片(最終濃度 0.2 ng/μL)、3’UTRのPCR増幅断片(最終濃度 10 nM) および 5’ UTR配列を含むオリゴヌクレオチド(最終濃度 10 nM)を混合し、表7に示したT7Fwd及びRev120Aのプライマーセットを用いてPCR増幅して、連結した。1-slot mRNAの合成鋳型には1本の、5-slot mRNAの合成鋳型には2本のオリゴヌクレオチドを用いた。ただしコントロールmRNAを作成する場合には、5’UTR配列はオリゴヌクレオチドの代わりに、精製したPCR断片を最終濃度10 nM で用いた。PCR産物は、MinElute PCR purification kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製した。最終的に合成される5-slot mRNAの5’UTR配列は表3に、1-slot mRNAの5’UTR配列は表5に、蛍光タンパク質のORF配列(配列番号117,118,119,120、及び3' UTR配列(配列番号121、すべてのmRNAに共通)は表4に示した。5-slot コントロールmRNAの5’UTR配列(配列番号1)は表3に、1-slotコントロールmRNAの5’UTR配列(配列番号116)は表4に示した。
miRNA応答性mRNAは、修正されたプロトコル(下記の参考文献[Miki, K., et al, Cell Stem Cell, 2015]を参照)において、MegaScript T7 kit (Ambion)を用いて調製した。この反応にいて、ウリジン三リン酸及びシチジン三リン酸に替えて、シュードウリジン-5’-三リン酸及び5-メチルシチジン-5’-三リン酸(TriLink BioTechnologies)をそれぞれ用いた。IVT(mRNA合成)反応の前に、グアノシン-5’-三リン酸は、Anti Reverse Cap Analog (New England Biolabs)で5倍希釈した。反応混合液を37度で4時間インキュベートして、TURBO DNase (Ambion)を添加した後、37度でさらに30分インキュベートした。得られたmRNAは、FavorPrep Blood / Cultured Cells total RNA extraction column (Favorgen Biotech)で精製し、Antarctic Phosphatase (New England Biolabs)を用いて、37度で30分インキュベートした。その後、RNeasy MiniElute Cleanup Kit (QIAGEN)により、さらに精製した。
表8に記載の条件に従って、StemFect (Stemgent)を用いて、製造者の指示に従って 24-well フォーマットの培養プレートにて、リバーストランスフェクションを行った。ただし、ヒトiPS細胞の経時変化を追跡する場合には、フォワードトランスフェクションを行った。
トランスフェクションの24時間後に細胞を培養皿から分離し、メッシュを通して、FACSAria II (BD Biosciences) 用いたフローサイトメトリーにより分析した。hmAG1、hmKO2、tagBFP及びhdKRedは、青色レーザー(488 nm)とFITCフィルター(530/30 nm)、緑色レーザー(561 nm)とPE フィルター(585/42 nm)、紫色レーザー(405 nm)とPacific Blue フィルター(450nm/40 nm)、及び紫色レーザー(405 nm)とQdot 605 フィルター(610/20 nm)によりそれぞれ検出した。死細胞及びデブリは、前方及び側方光散乱の値に基づいて除外した。
hmAG1、hmKO2、tagBFP及びhdKRedの4種類の蛍光蛋白質を同時に検出した場合には、同時に、hmAG1、hmKO2、tagBFPまたはhdKRedのmRNAのみをトランスフェクションした細胞を解析して、実際とは異なる蛍光蛋白質として検出される蛍光値を補正した(参考文献:[Endo, K. and Saito, H. Methods in Molecular Biology, 2014])。
フローサイトメトリーの解析により、レポーター mRNA から発現するhmAG1の蛍光強度を、共導入したコントロールmRNAから発現する tagBFP の蛍光強度で割り、その解析した細胞集団における相乗平均値をレポーターmRNAの蛍光比率 (Fluorescence ratio) とした。各mRNA配列について、レポーターmRNAが応答するmiRNAの阻害剤存在下における蛍光比率を基準として、miR-1 の阻害剤存在下(目的のmiRNA活性状態)の蛍光比率の相対値を “Relative expression” として定義した。2種類のmiRNA応答配列を含む mRNA の場合は、一方のmiRNA阻害剤存在下で、それぞれ “Relative expression” 値を測定し、測定した2値を積算したものを “Estimated expression” とした。3種類のmiRNA応答配列を含む mRNA の場合は、3種類中2種類のmiRNA阻害剤存在下で、それぞれ “Relative expression” 値を測定し、測定した3値を積算したものを “Estimated expression” とした。
1分子で多数のmiRNAに応答し、かつ個々のmiRNAへの応答の程度(検出感度)を任意に調節プローブ (= mRNA) の設計方法を開発し、細胞内の多因子情報を線形モデルで抽出することに成功した。RNA Synthetic Device はmRNAと転写後・翻訳段階の制御を基本としているため、mRNAに作用するmiRNA が細胞内部のマーカー分子として用いられている。マイクロアレイや次世代シーケンシングなどの high-throuput analysisの場合は、まず、(1) miRNA を網羅的に定量検出し、その後で、(2) 多変量解析などにより膨大な数の変数から取り扱いが容易な数の合成変数を抽出し、それに基づいて細胞の状態を区別している (図1a左図)。一方で、非侵襲的に(細胞を殺さずに)同時に検出可能なシグナルの数は限られており、1対1に対応した検出プローブでは対応できない。そこで、生細胞内の多因子の情報を検出するために、多因子の情報を先に要約してから、その結果合成されたパラメータを検出する戦略をとる (図1a右図)。すると、同時に検出可能な、限られたシグナル数でも、多数の生細胞内因子の定量情報に由来し、そのエッセンスを抽出した合成パラメータを直接検出できる。我々は、1つのmRNAが複数のmiRNAを可算的に検出できること、各miRNAへの検出感度をmRNA上のmiRNA標的配列の位置で調節できることを発見した。
複数種類のmiRNAに応答するmRNAを作成するため、これまでは1カ所のみmiRNA標的配列を含んでいたmRNA (1-slot mRNA, 図6a, Miki, K. et al, Cell Stem Cell, 2015, 国際公開WO2015/105172) を拡張し、5’ UTR に連続に5カ所のmiRNA標的配列挿入部位 (スロット) を設計した (5-slot mRNA, 図2a)。細胞内因子の例としては、HeLa 細胞内で弱い活性を示すmiRNAの例として miR-34a-5p、強い活性の例として miR-17-5p と miR-92a-3p、さらに非常に強い活性の例として miR-21-5p の4種類を選んだ。5カ所のスロットに2 または3 種類の異なるmiRNA標的配列が挿入され、マーカー蛋白質としてhmAG1をコードするmRNAをランダムに12種類設計し、mRNAを合成した (図2a, 表3)。合成した 5-slot mRNAを、それぞれ、mRNA導入のコントロールとして蛍光蛋白質 tagBFPをコードした mRNAおよび 5-slot mRNAが応答するmiRNAに対する阻害剤 (miRVana miRNA inhibitor, Invitrogen) とともにHeLa細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に、フローサイトメーターを用いてマーカータンパク質の蛍光強度を定量し、Relative expression 値を解析した。
5カ所のスロットのうち、1、2または3カ所が同一のmiRNA標的配列で占められている一連の 5-slot mRNAを、miR34a-5p, miR-92a-3p, miR17-5p または miR-21-5p の4種類のmiRNAについて、それぞれ設計し、mRNAを合成した (Fig 2d, 表3)。合成した5-slot mRNAを、それぞれ、mRNA導入のコントロールとして蛍光蛋白質 tagBFPをコードした mRNAおよび 5-slot mRNAが応答するmiRNAに対する阻害剤とともにHeLa細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に、フローサイトメーターを用いてマーカータンパク質の蛍光強度を定量し、Relative expression 値を解析した。ただし、miR-21-5p の解析においては、マーカー遺伝子の発現が強く抑制され、細胞の自家蛍光の影響が高くなるため、tagBFPの蛍光値が 10,000 以下の細胞を除去してmRNA導入量の高い細胞群で評価した。
このとき、d は開始コドンからの距離 ([nt]) を、ρ0 はそれぞれのmiRNAについて距離 0 [nt] の時の仮想的な応答感度を示す。ξ はmiRNAの種類に関わらず共通する変数を示す。(つまりρ(d) = {ρ0}k(d)= ρ0^dξ となる。)
このモデルを実証するため、複数種類のヒト正常細胞を生きたまま、miRNA活性プロファイルに従って分類、分離することを試みた(図3)。
した (図7b)。これにより細胞間にあるバイアスは補正され、散布図を作成すると各1-slot mRNAは対角線上に分布したが、hmAG1、tagBFPおよびhdKRedの蛍光比率の分布は一致していない。これはマーカーとして用いた蛍光蛋白質の違いによるバイアスがあることを示す。そこでさらに、各蛍光比率の分布を平均0.5、標準偏差0.15に標準化した (図7c)。標準化した蛍光比率についてNHDFとhiPSCの比較を図3cに示す。これらの細胞間には大きなmiRNA活性の差があると期待されるが、実際に、miRNA活性を示す図中の各点は対角線に対して直行する方向に広がって分布しており、かつこの分布は用いた蛍光蛋白質によらず均等に分布している。この補正値を細胞ごとのmiRNA活性プロファイルとし、線形モデルの例として主成分分析により解析した。主成分分析には統計パッケージRのprcomp関数を用いた。第一主成分を横軸、第二主成分を縦軸にとると、8 種類の細胞条件は分類された(図3d)。このことは1-slot mRNA を用いた探索解析によって得られたmiRNA活性プロファイルに従って、これらの細胞を統計解析上は分類できることを示している。
さらに、ヒトiPS細胞が分化能を失う過程を経時的に追跡して、工程(1)で探索する細胞の違いにより、得られるmRNAセットの分離能の違いを検証した(図4)。まず、270のmiRNA活性を探索的に定量した結果(図3c)から hiPSC とbFGF非存在下で部分的に分化させた hiPSC (iPSC 14d) の間で差の大きかった 54 のmiRNAを選択した(図4a)。これらのmiRNAを対象として、hiPSCがbFGF非存在下で部分的に分化する過程におけるmiRNA活性の経時変化を追跡するため、二次的な探索解析を実施した (図4b)。hiPSCをbFGF非存在下で培養し、培養開始当日(day 0) および1(day 1)、3(day 3)、6(day 6)、9(day9 )、または14日後(day 14)に、異なるmiRNA標的配列が挿入されたhmAG1、tagBFP、およびhdKRedをコードする1-slot mRNAを各1種類と、mRNA導入のコントロールとして用いたhmKO2 mRNAの計4種類のmRNAを混合し、トランスフェクションした。このとき一次的な探索解析(図3a)で用いた6種類のコントロールと同一のトランスフェクションを実施した。すなわち、各培養条件において24種類のトランスフェクションを実施した(図4a)。
各培養条件の細胞はトランスフェクションから24時間にフローサイトメトリーで解析した。一時的な探索解析の結果(図7a)と異なり、これらの培養条件間では、蛍光比率に大きなバイアスは見られなかった(図4c)ことから、蛍光比率の値をそのまま以後の解析に用いた。miRNA活性のプロファイルを主成分分析し、第一主成分を横軸、第二主成分を縦軸にとって、これらの培養条件にある細胞を分類した(図4d)。
測定された蛍光比率に対して主成分分析とクラスター分析(ウォード法)を行い54のmiRNAを23クラスターに分離し、各クラスターで第一成分または第二成分への寄与が最も高いmiRNAを選んだ。クラスター分析にはこれまでと同様に統計パッケージRのdist関数及びhclust関数を用いた。選ばれた23 miRNAのみで再び主成分分析を行い、第一成分または第二成分への寄与が高い11のmiRNAを選別した。これらの11 miRNAを用いて、一次的な探索解析(図3e, f)と同様の計算を実施して得られた5-slot mRNAのセットを図4eに、このmRNAセットをトランスフェクションした場合の、各培養条件の細胞の分布の推測結果を図4fに示す。また、実際にこの4 本の5-slot mRNAs を各培養条件の細胞にトランスフェクションし、フローサイトメトリーを実施した結果を図4gに示す。電子ティープロット上で細胞集団は時間変化にしたがって移動しており、8 種類のmiRNA活性から線形モデルで抽出した 2 つのパラメータを用いて、ヒトiPS細胞内部情報の経時的な変化を生きたまま追跡することができた。多種類の細胞を分類したプローブセット (図3e) と比べて、hiPSCの変化をより広い範囲に分離することができた (図9)。このことは細胞を分類している2つの合成パラメータを、mRNAのデザインにより任意に変更できることを示している。
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Claims (7)
- 以下の工程を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを設計する方法であって、当該miRNA応答配列を2以上含有するmRNAが、2以上のmiRNA応答配列とそれと機能的に連結したマーカー遺伝子配列を含むmRNAである、方法;
(1)1つのmiRNA応答配列を有するmRNAの翻訳抑制効果を2以上の対象細胞で測定する工程、
(2)前記工程(1)の測定結果に基づき、各対象細胞でのmiRNA応答配列を2以上含有するmRNAの翻訳抑制効果を算出する工程、
(3)前記工程(2)で算出された値に基づき、前記2以上の対象細胞間における翻訳抑制効果の差が最大になる、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程。 - 前記工程(1)と工程(2)の間に、前記工程(1)の測定結果に基づき、前記工程(2)の算出に使用するmiRNA応答配列の種類を、多変量解析を用いて限定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(3)が、各対象細胞におけるマーカー遺伝子の翻訳量の分散を最大にする、
miRNA応答配列を2以上含有するmRNAを選択する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法でmRNAを設計する工程と、
前記設計されたmRNAを、遺伝子工学的手法により合成する工程と
を含む、miRNA応答配列を2以上含有するmRNAの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で設計されたmRNAを用いて、マーカー遺伝子の翻訳量を指標として2以上の対象細胞を分離する方法。
- 前記mRNAが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で設計された、マーカー遺伝子配列及び5’UTRの配列がそれぞれ異なる4種のmRNAである、請求項6に記載の方法。
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MIKI K., ET AL.: "Efficient Detection and Purification of Cell Populations Using Synthetic MicroRNA Switches", CELL STEM CELL, vol. 16, JPN6017001536, 4 June 2015 (2015-06-04), pages 699 - 711, XP055225629, ISSN: 0004390291, DOI: 10.1016/j.stem.2015.04.005 * |
三木健嗣、他: "Efficient detection and purification of cells by synthetic microRNA switches", 再生医療 日本再生医療学会雑誌, vol. 14, JPN6017001538, 1 February 2015 (2015-02-01), pages 188 - 04, ISSN: 0004390292 * |
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