次に、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。各実施の形態は、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下にする第1〜第12の実施の形態の説明のうち、第1〜第6の実施の形態の説明においては、便宜上、各図面の下部電極28D側から上部電極28U側に至る方向を上方(上方向)、その逆を下方(下方向)と定義する。同様に、第7〜第12の実施の形態の説明においては、便宜上、各図面の多孔質電極5D側から緻密電極5U側に至る方向を上方、その逆を下方と定義する。
また、面直方向とは、限界電流式ガスセンサの平面パターンに対して、平面視において実質的に鉛直方向をいう。また、面内方向とは、限界電流式ガスセンサの平面パターンに対して、実質的に同一の平面方向をいう。
(第1〜第6の実施の形態)
本実施の形態は、限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPの構造に応じて、例えば、第1〜第6の実施の形態に大別される。
第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPは、図29(a)に模式的に示すように、被測定ガスGSを取込むガス導入路となるポーラス酸化膜(多孔質膜)51と、ポーラス酸化膜51上に配置された下部電極28Dと、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第2の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPは、図29(b)に模式的に示すように、被測定ガスGSを取込むガス導入路となるポーラスPt膜(多孔質膜)61と、ポーラスPt膜61上に配置された下部電極28Dと、ポーラスPt膜61および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPは、図29(c)に模式的に示すように、被測定ガスGSを取込むガス導入路となるガス拡散路MP上に配置された下部電極28Dと、下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第4の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPは、図29(d)に模式的に示すように、被測定ガスGSを取込むガス導入路となるガス拡散路MP上に配置されたポーラス酸化膜(多孔質膜)71と、ポーラス酸化膜71上に配置された下部電極28Dと、ポーラス酸化膜71および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPは、図29(e)に模式的に示すように、被測定ガスGSを取込むガス導入路(図示省略)とガス導入路上に配置された柱状膜(柱状部)とからなるガス取込部303と、ガス取込部303上に配置された下部電極28Dと、ガス取込部303および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPは、図29(f)に模式的に示すように、被測定ガスGSを取込むガス導入路(図示省略)とガス導入路上に配置された多孔質膜(柱状部)とからなるガス取込部305と、ガス取込部305上に配置された下部電極28Dと、ガス取込部305および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
以下に、各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサへの適用例について、より具体的に説明する。
(第1の実施の形態)
(概略構成)
第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの模式的平面パターン構成は、図1(a)に示すように表され、図1(a)のIA−IA線に沿うガスセンサ1Aの模式的断面構造は、図1(b)に示すように表される。
まず、構成の概略について説明すると、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図1(a)および図1(b)に示すように、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造を備える基板(例えば、Si)12上に設けられた、マイクロヒータMH、センサ部分SP、ヒータ接続部21・22、端子電極接続部23・24、および開口部45などを備える。
センサ部分SPは、活性領域(後述する)に対応する基板12上に、SiN膜201を介して配置されたポーラス酸化膜(多孔質膜)51と、ポーラス酸化膜51上に配置された下部電極28Dと、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極(例えば、Pt膜)28Uとを備える。ポーラス酸化膜51は、ガス導入路として機能するものであって、ガス取込口51Gを有する。
下部電極28Dは、Pt膜とTi膜との積層膜であるPt/Ti電極によって、例えば、約100nmの厚さで形成することができる。Ti膜は、ポーラス酸化膜51との接合を密にし、より強固にするために用いられる。
固体電解質層30は、約1μmの厚さのYSZ膜で形成することができる。薄いと、上下の電極28U・28D間が導通してしまうためである。例えば、固体電解質層30は、下部電極28Dの周囲を覆うようにして配置され、上下の電極28U・28D間の導通が防がれる。
なお、平面視において、基板12の活性領域が方形状を有していることから、センサ部分SPのポーラス酸化膜51、下部電極28D、固体電解質層30、および上部電極28Uは、いずれも方形状を有していても良いし、それ以外の形状であっても良い。また、センサ部分SPを構成するポーラス酸化膜51、下部電極28D、固体電解質層30、および上部電極28Uは、偏心がない状態でセンサ表面の中心に配置するのが望ましいが、マイクロヒータMH上であれば、偏心した状態で配置されていても良い。
平面視において、ヒータ接続部21・22は、センサ部分SPを中心とした図示左右方向(図1(b)の断面に沿う面内方向)に対向するようにして配置されている。ヒータ接続部21は、接続用パット211、配線部212、および端子部213を有し、ヒータ接続部22は、接続用パット221、配線部222、および端子部223を有する。端子電極接続部23・24は、センサ部分SPを中心とし、ヒータ接続部21・22と直交する、図示上下方向に対向するようにして配置されている。端子電極接続部23は、接続用パット(検出端子)231および配線部232を有し、端子電極接続部24は、接続用パット(検出端子)241および配線部242を有する。
ヒータ接続部21・22および端子電極接続部23・24は、SiN膜201上に設けられ、例えば、20nm厚のTi膜と100nm厚のPt膜との積層膜(Pt/Ti積層膜)によって形成することができる。
ヒータ接続部21・22の端子部213・223は、マイクロヒータMHと接続され、端子電極接続部23の配線部232は、センサ部分SPの方向に延出されて下部電極28Dの延出端28D1と接続され、端子電極接続部24の配線部242は、センサ部分SPの方向に延出されて上部電極28Uの延出端28U1と接続される。
ここで、端子電極接続部23・24の接続用パット231・241には、被測定ガス内における所定のガス濃度を限界電流式で検出する検出回路が接続される。詳細については後述するが、図106に示すように、固体電解質層106の上部電極105Uと多孔質電極(ポーラス電極)105Dとに検出用の電圧Vを供給することにより、検出回路107は、限界電流に基づいて酸素濃度を検出することができる。また、検出回路107は、限界電流に基づいて水蒸気濃度を検出することができる。
ヒータ接続部21・22の端子部213・223は、平面視において、センサ部分SPの外周部を取り囲むように配置されたSiN膜26によって覆われている。SiN膜26と端子部213・223との間には、SiO2 膜25が埋め込まれている。
開口部45は、平面視において、SiN膜26の外側で、かつヒータ接続部21・22および端子電極接続部23・24を除く、基板12の各隅部に対応する活性領域と非活性領域(後述する)との境界部分にそれぞれL字型に配置される。開口部45は、舟型構造のキャビティ部(Cavity:空洞)Cを形成する際に開口されるものであって、L字型以外の形状、例えばストレート状(I字型)などであっても良い。
マイクロヒータMHは、絶縁層18を構成する第1・第2絶縁層(例えば、SiO2 膜)181・182間に設けられる。マイクロヒータMHは、例えば、0.2μmの厚さのポリシリコン層(ポリシリコンヒータ)であって、イオン注入法によってp型不純物であるB(ボロン)が高濃度(例えば、4×1019cm-3)に注入されて、抵抗値が300Ω程度とされる。マイクロヒータMHの熱伝導率は、例えば、80W/mK程度が望ましい。
第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、マイクロヒータMHは、例えば、固体電解質層30の下方に方形状を有して配置されると共に、固体電解質層30よりも大面積を有して形成されるのが望ましい。
ここで、マイクロヒータMHは、固体電解質層30を加熱するためのもので、例えば、第2絶縁層201および第2絶縁膜182に開口された開口部37内に形成される端子部213・223から、配線部212・222を介して、接続用パット211・221に印加される所定電圧が供給される。
なお、マイクロヒータMHは、基板12上の第1・第2絶縁層181・182間に配置される場合に限らず、基板12の下部に配置されていても良いし、基板12の内部に埋め込まれていても良い。もしくは、基板12の表面に、ポリシリコンで形成されたマイクロヒータMHを含む、SiO2 膜/SiN膜の積層膜(図示省略)が形成された構成としても良い。
また、マイクロヒータMHは、印刷により形成されたPtヒータなどによっても形成可能である。
ガスセンサ1Aのサイズ(スケール)にもよるが、マイクロヒータMHに限らず、センサ部分SPよりも大面積を有していればナノサイズのヒータの適用も可能である。
センサ部分SPを上方とした図1(b)の断面構造において、マイクロヒータMHの下方の基板12には、開口部45につながる舟型構造のキャビティ部Cが形成されている。キャビティCとキャビティCに対応する第1絶縁層181との界面には、SiON膜からなる絶縁層16が設けられ、基板12と基板12の非活性領域に対応する第1絶縁層181との界面には、絶縁層16およびSiO2 膜からなる絶縁層14が設けられる。
MEMS梁構造の基板12は、例えば、10μm程度の厚さを有し、キャビティ部CがマイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように形成されて、メンブレンからの熱の逃げを防ぐようになっている。キャビティ部Cの平面形状は特に限定されないが、センサ部分SPやマイクロヒータMHなどと同様に、方形状に形成するのが望ましい。
なお、MEMS梁構造としては、平面視において、基板12がセンサ部分SPを取り囲むように配置された開放型構造(図18参照)を有して形成されても良い。また、キャビティ部Cは、基板12を貼り合わせることによって形成される構造とすることもできる。よって、基板12としては、Siに限らず、エポキシ樹脂やセラミックスなどを用いることも可能である。
すなわち、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、基板12と、基板12上に第1絶縁層181を介して配置されたヒータMHと、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して配置され、被測定ガスを取り込むガス導入路51と、ガス導入路51上に配置された下部電極28Dと、下部電極28D上に配置された固体電解質層30と、固体電解質層30上の、下部電極28Dに対向する面に配置された上部電極28Uと、基板12に、ヒータMHよりも実質的に大きく形成されたキャビティ部Cとを備える。
要するに、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図1(a)および図1(b)に示すように、キャビティ部Cが舟型構造を有するMEMS梁構造の基板12を有し、マイクロヒータMHの加熱に伴って、ポーラス酸化膜51のガス取込口51Gを介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分SPの固体電解質層30内へと導入するように構成されている。すなわち、被測定ガスは、ガス取込口51Gよりポーラス酸化膜51中に取り込まれ、下部電極28Dを介して固体電解質層30内へと導入された後、加熱により固体電解質層30内に拡散される。被測定ガスの固体電解質層30内への導入は、吸引動作を伴うものであっても良い。
このように、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、マイクロヒータMHの加熱を伴うものの、MEMS構造を有する梁構造(舟型構造)を基本構造とすることによって、センサ部分SPの熱容量を低減化し、センサ感度の向上を図っている。
なお、ガス取込口51Gは、平面視において、端子電極接続部23に沿う方向に延出するように、ポーラス酸化膜51と同一材料により一体的に形成可能であり、その体積や厚さ、または幅などを調整することにより、被測定ガスの取込量を変化させることが可能である。ガス取込口51Gは、ポーラス酸化膜51とは別体として形成することも可能であり、また平面視において、端子電極接続部23に沿う方向以外の、例えば端子電極接続部23に沿う方向またはヒータ接続部21・22に沿う方向に延出するように配置しても良い。
また、図1(a)に示した限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、ヒータ接続部21・22は水平方向に配置され、これと直交するように、端子電極接続部23は垂直方向の下端側に、端子電極接続部24は垂直方向の上端側に、それぞれ配置されているが、端子電極接続部23・24の位置を入れ替えたり、ヒータ接続部21・22の位置を入れ替えたりもできる。
次に、ポーラス電極の形成方法の一例について説明する。
ポーラス電極の形成方法は、図2(a)〜図2(c)に示すように表される。ポーラス電極とは、例えば、ナノサイズの多孔質膜であるポーラス酸化膜51と、そのポーラス酸化膜51上に形成されたPt/Ti積層膜(Pt/Ti電極)からなる下部電極28Dとで構成される。
ポーラス電極の形成は、まず、図2(a)に示すように、例えば、スパッタ法によって基板120上に70vol %〜50vol %のYSZ粒子511と30vol %〜50vol %のSiO2 512とを含むYSZ−SiO2 膜(ポーラス形成膜)510を形成する。
次いで、図2(b)に示すように、例えば、フッ酸(HF)エッチング処理によりYSZ−SiO2 膜510中のSiO2 512だけを除去し、YSZ粒子511のみが残留するポーラス酸化膜51を形成する。
この後、図2(c)に示すように、ポーラス酸化膜51におけるYSZ粒子511上に、例えば、スパッタ法によってPt/Ti積層膜を形成して、ポーラス酸化膜51と下部電極28Dとから構成されるポ−ラス電極を形成する。
ポーラス酸化膜51は、酸化物であるYSZ−SiO2 膜510のスパッタリングによる成膜とエッチング処理とにより、簡単に形成可能である。特に、高い熱安定性を有し、10nm径程度の孔の形成も可能であり、ガス絞り性能に優れる。
なお、ポーラス酸化膜51を形成する工程としては、上記の一例に限らず、例えば、Al2 O3 またはSiO2 またはYSZを含み、スピンコート法によってゾル・コーティングされたポーラス形成膜を焼成処理することによっても形成できる。
また、ポーラス酸化膜51は、例えば、70vol %のAl2 O3 と30vol %のSiO2 とを含むポーラス形成膜(Al2 O3 −SiO2 膜)または70vol %のYSZと30vol %のAl2 O3 とを含むポーラス形成膜(YSZ−Al2 O3 膜)をHFエッチング処理することによっても、同様に形成できる。
なお、ポ−ラス電極としては、ポーラスPt膜やポーラスPt/Ti膜からなるものであっても良い。
ここで、ポーラス膜の温度特性について説明する。
ナノサイズポーラス膜の場合、電流値は、温度Tの−a乗に比例する(電流値∝T-a)。a値は、ポーラス膜構造により調整可能である。つまり、ポーラス膜の孔が小さいと、a値は大きくなる。
ポーラス酸化膜51は、このような温度特性を有するポーラス膜によって形成されるため、温度依存性を有し、高温になるにつれ、電流値が低下する。すなわち、ポーラス酸化膜51は、図3に示すように、高温になるにつれ、孔の中央部の間隔Lnm(例えば、100nm)はほとんど変わらないものの、両端部の間隔がHWからHSへと変化する。両端部の間隔が狭くなる(HW>HS)と、そこを通過するガスの流量が制限されて減少し、その結果として電流値が低下する(電流値∝ガス流量)。
ポーラス酸化膜51における温度Tと飽和電流Isat との関係は、図4に示すように表される。温度Tが、T1℃(例えば、400℃)の場合と、T2℃(例えば、450℃)の場合と、T3℃(例えば、500℃)の場合と、T4℃(例えば、700℃)の場合とを比べると、温度Tが高くなるほど、飽和電流Isat は小さくなる。
これに対し、マイクロ流路をガス導入路とした場合、クヌーセン(Knudsen)拡散では、電流値が温度Tの約0.5乗に比例し(電流値∝T0.5)、通常拡散では、電流値が温度Tの約0.75乗に比例する(電流値∝T0.75)。すなわち、マイクロ流路の場合は、高温になるにつれ、通過するガスの流量が増加し、それに伴って電流値が上昇する。
そこで、ポーラス酸化膜51を採用する第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、キャビティ部Cによって熱容量の低減化を図ることで、センサ特性の改善が可能となる。
(製造方法)
次に、図1(a)および図1(b)に示した第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法について説明する。
製造方法の説明に先立って、まずは、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造に適用されるウェーハ100について簡単に説明する。
第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造に適用されるウェーハ100の模式的平面構成は、図5(a)に示すように表され、図5(a)のIA0−IA0線に沿うウェーハ100模式的断面構造は、図5(b)に示すように表される。
ウェーハ100は、図5(a)および図5(b)に示すように、素子分離領域102によって複数の素子領域104が画定されると共に、ガスセンサ1Aの製造工程の終盤において、素子分離領域102に沿ってダイシングされる。これにより、ウェーハ100は、ガスセンサ1Aごとに分割される。
なお、図5(b)において、WC1は、キャビティ部Cの形成領域CAの断面方向の幅を示し、WS1は、センサ部分SPの形成領域SAの断面方向の幅を示し、AA1は、活性領域AAの断面方向の幅を示し、CA1は、素子領域104の断面方向の幅を示す。素子領域104中より活性領域AAを除外した部位が、非活性領域となる。
また、製造方法の説明において、Siは、半導体材料であるシリコン、Ptは、多孔質材料としての白金(Platinum)であり、Tiは、電極材料としてのチタン(Titanium)であり、YSZは、固体電解質材料としてのイットリウム安定化ジルコニア(Yttria-Stabilized Zirconia)である。
ここで、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、基板12上に第1絶縁層181を介してヒータMHを形成する工程と、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して配置され、被測定ガスを取り込むガス取込口51Gを備えたガス導入路51を形成する工程と、ガス導入路51上に下部電極28Dを形成する工程と、下部電極28D上に固体電解質層30を形成する工程と、固体電解質層30上の、下部電極28Dに対向する面に上部電極28Uを形成する工程と、基板12に、ヒータMHよりも実質的に大きなキャビティ部Cを形成する工程とを有する。
すなわち、図1(a)および図1(b)に示した第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図6〜図17に示される。
なお、本来は、ウェーハ100上に複数のガスセンサが一括して製造されるものであるが、説明の便宜上、ここでは基板12上に限界電流式ガスセンサ1Aを形成する場合について説明する。
(a)まず、図6(a)および図6(b)に示すように、例えば、10μm厚のSi製のウェーハ100の表面の、ダイシングラインに沿って格子状に形成された素子分離領域102の絶縁膜を除去し、基板12上に、活性領域AAに対応する面12aと、それ以外の非活性領域に対応する面12bとを形成する。素子分離領域102の絶縁膜の除去は、例えばLOCOS(Local Oxidation of Silicon)技術による選択エッチングにより行われる。素子分離領域102の形状から、基板12の上面は、活性領域AAに対応する面12aと非活性領域に対応する面12bとの間の周辺部分に傾斜面12cが設けられた形状となる。
(b)次いで、図7(a)および図7(b)に示すように、基板12の上面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより約0.5μm厚のSiO2 膜を形成した後、傾斜面12cおよび活性領域AAに対応する面12a上のSiO2 膜を選択的にエッチングして除去することにより、非活性領域に対応する面12bに対してのみ、SiO2 膜からなる絶縁層14を形成する。
続いて、基板12の上面にプラズマCVD(P−CVD)法などにより、約0.5μm厚のSiON膜からなる絶縁層16を一様に形成する。
なお、絶縁層14は、素子分離領域102の絶縁膜の一部を残存させることによって形成することとしても良い。
(c)次いで、図8(a)および図8(b)に示すように、CVD法などにより絶縁層16上に0.5μm程度の厚さのSiO2 膜からなる第1絶縁層181を形成した後、さらにその上面に、減圧CVD法などにより0.2μm程度の厚さのポリシリコン層を形成すると共に、そのポリシリコン層をエッチングなどによりパターニングして、テーパ部分Htを有するマイクロヒータMHを形成する。
マイクロヒータMHは、活性領域AAに対応する面12a上に、例えば、300μm角程度の大きさで形成される。また、マイクロヒータMHは、イオン注入(I/I)法によりBが高濃度にインプラされて抵抗値が300Ωとされる。
(d)次いで、図9(a)および図9(b)に示すように、P−CVD法などにより全面に約0.5μm厚のSiON膜(第2絶縁層)182を形成する。
(e)次いで、図10(a)および図10(b)に示すように、P−CVD法などにより全面に約0.5μm厚のSiN膜201を形成した後、さらに、SiN膜201および第2絶縁層182を選択的にエッチングして、例えば活性領域AAに対応する面12aの端部付近において、マイクロヒータMHにつながる、ヒータ接続部21・22の端子部213・223を形成するための開口部37を開口する。
(f)次いで、図11(a)および図11(b)に示すように、Pt/Ti積層膜を約0.5μmの厚さとなるようにスパッタ法などによりデポすると共に、そのPt/Ti積層膜をエッチングによりパターニングして、ヒータ接続部21・22の接続用パット211・221、配線部212・222、および端子部213・223を形成する。
同時に、Pt/Ti積層膜をエッチングによりパターニングして、ヒータ接続部21・22と直交する方向に、端子電極接続部23・24の接続用パット231・241および配線部232・241を形成する。
(g)次いで、図12(a)および図12(b)に示すように、CVD法などにより、開口部37内を埋め込むようにSiO2 膜25を形成すると共に、SiN膜26を形成した後、例えば、SiO2 膜25とSiN膜26とを選択的にエッチングし、センサ部分SPの周囲を囲むようにパターニングする。
(h)次いで、図13(a)および図13(b)に示すように、スパッタリングおよびエッチングにより、ポーラス酸化膜51と、被測定ガスを取り込むためのガス取込口51Gとを形成する。
(i)次いで、図14(a)および図14(b)に示すように、スパッタ法などによりポーラス酸化膜51上に100nm厚程度のPt/Ti積層膜からなる下部電極28Dを形成すると共に、下部電極28Dの延出端28D1を端子電極接続部23の配線部232と接続させる。
(j)次いで、図15(a)および図15(b)に示すように、ポーラス酸化膜51および下部電極28D上を被覆するように、スパッタ法によりYSZ膜からなる固体電解質層30を約1μmの厚さで形成する。固体電解質層30は、下部電極28Dの延出端28aを除き、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dの周囲を全体的に被覆する。
(k)次いで、図16(a)および図16(b)に示すように、上部電極28Uとして、スパッタ法により固体電解質層30上の下部電極28Dに対向する面に100nm厚程度のPt膜を形成し、かつ上部電極28Uの延出端28U1を端子電極接続部24の配線部232と接続させる。
(l)次いで、図17(a)および図17(b)に示すように、MEMS梁構造として、舟型構造のキャビティ部Cを形成するための開口部431を有する保護用SiO2 膜(エッチングマスク)43を全面に形成する(デポ+パターニング)。そして、その保護用SiO2 膜43をマスクに、活性領域AAに対応する面12aの基板12を選択的に深掘りエッチングして、開口部45につながるMEMS梁構造の基板12として、400μm角程度の舟型構造のキャビティ部Cを形成する。
最後に、保護用SiO2 膜43をエッチングによって除去することにより、図1(a)および図1(b)に示した構成を有する、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aが得られる。
以上のように、上述した限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、キャビティ部CがマイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように形成することによって、熱容量の低減化と共に、マイクロヒータMHによる加熱がセンサ周辺にまで無駄に拡がるのを簡単に抑制できる。
特に、ポーラス酸化膜51は高い熱安定性を有するため、ガス絞り性能が高い。しかも、ガス取込口51Gのサイズを調整することのみで被測定ガスの取込量を簡単に制御でき、センサ特性にも優れた限界電流式ガスセンサ1Aとすることができる。
また、ポーラス酸化膜51を採用したことにより、ガス拡散路MPが不要となるため、製造が容易であり、高圧スパッタ装置のような特別な設備なども必要としないことから、より安価に製造できる。
したがって、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、しかも、製造が容易で、より安価に製造できる。
(第1の実施の形態の第1変形例)
第1の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Bの模式的平面パターン構成は、図18(a)に示すように表され、図18(a)のIB−IB線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ1Bの模式的断面構造は、図18(b)に示すように表される。
すなわち、第1の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Bは、MEMS梁構造として、平面視において、基板12がセンサ部分SPを取り囲むように配置された開放型構造のキャビティ部Cを有して形成されても良い。開放型構造のキャビティ部Cは、例えば、舟型構造のキャビティ部Cを形成した後に、基板12を裏面側より深掘りエッチングすることによって簡単に形成できる。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
このような構成によっても、上述した限界電流式ガスセンサ1Aと同様に、センサ特性に優れた限界電流式ガスセンサ1Bとすることができる。
(第1の実施の形態の第2変形例)
第1の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Cの模式的平面パターン構成は、図19(a)に示すように表され、図19(a)のIC−IC線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ1Cの模式的断面構造は、図19(b)に示すように表される。
すなわち、第1の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Cは、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図るようにしたものである。
より具体的には、例えば、図1(a)および図1(b)に示した舟型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高いノンドープまたは低濃度ドープポリシリコン層(例えば、140W/mK)300を挿入するようにしたのが、第1の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Cである。
第1の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Cにおいて、低濃度ドープポリシリコン層300は、ポリシリコン層にBやAs(ヒ素)またはP(リン)などの不純物イオンを低濃度(例えば、1018/cm3 以下)にドープ、またはアンドープすることによって形成される。
ここで、図20(a)〜図20(c)を参照して、低濃度ドープポリシリコン層300の形成方法の一例について説明する。例示する低濃度ドープポリシリコン層300の形成は、例えば、図8(a)および図8(b)に示した工程にほぼ準じたものとなる。
まず、図20(a)に示すように、第1絶縁層181の上面に、例えば、減圧CVD法などにより0.6μm厚程度のポリシリコン層301を形成する。
次いで、図20(b)に示すように、Bをインプラする際の加速エネルギーとドーズ量とを制御して、例えば、ポリシリコン層301の下層側に0.4μm厚の低濃度層LCが、上層側に0.2μm厚の高濃度層HCが、それぞれ形成されるようにする。
この後、図20(c)に示すように、ポリシリコン層301をエッチングなどによりパターニングして、加熱エリアL1を有する高濃度層HCからなるマイクロヒータMHと、加熱エリアL1と同サイズの低濃度層LCからなる低濃度ドープポリシリコン層300とを形成する。エッチングの条件を変えることによって、マイクロヒータMHの外周部のみをテーパ形状に形成することも可能である。
なお、低濃度ドープポリシリコン層300としては、図21(a)〜図21(e)および図22(a)〜図22(e)に示すように、様々なサイズや形状により形成することができる。
例えば、低濃度ドープポリシリコン層300は、図21(a)に示すように、マイクロヒータMHと同サイズとし、かつ、その外周部をテーパ形状に形成しても良いし、図21(b)に示すように、それぞれの外周部を垂直形状に形成しても良い。
また、低濃度ドープポリシリコン層300は、図21(c)に示すように、マイクロヒータMHよりも大きく形成しても良いし、図21(d)に示すように、マイクロヒータMHよりも小さく形成しても良い。
また、低濃度ドープポリシリコン層300は、図21(e)に示すように、それぞれの上面が同一面となるようにマイクロヒータMHを表面に埋め込むような形状に形成しても良いし、図22(a)に示すように、マイクロヒータMHを内部に収納するように形成しても良い。
また、低濃度ドープポリシリコン層300は、図22(b)に示すように、内部に収納するマイクロヒータMHの一部が露出するように形成しても良いし、図22(c)に示すように、内部に収納するマイクロヒータMHの全体が露出するように形成しても良い。
また、低濃度ドープポリシリコン層300は、図22(d)に示すように、マイクロヒータMHの上下面に積層するように形成しても良いし、図22(e)に示すように、マイクロヒータMHの下半分を埋め込むように形成しても良い。
なお、低濃度ドープポリシリコン層300は、例えば0.6μm程度の厚さで形成することにより、熱伝導率を、低濃度ドープポリシリコン層300を設けない場合の6.25倍とすることができる。
このような構成によれば、低濃度ドープポリシリコン層300は高抵抗なので、マイクロヒータMHのヒータ特性に影響を及ぼすことなく、より温度特性が良好で、センサ特性に優れた限界電流式ガスセンサ1Cとすることができる。
(第1の実施の形態の第3変形例)
第1の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Dの模式的平面パターン構成は、図23(a)に示すように表され、図23(a)のID−ID線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ1Dの模式的断面構造は、図23(b)に示すように表される。
すなわち、図18(a)および図18(b)に示した開放型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ1Bの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入するようにしたのが、第1の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Dである。
このような構成によっても、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図ることが可能となり、より温度特性が良好で、センサ特性に優れた限界電流式ガスセンサ1Dとすることができる。
(第1の実施の形態の第4変形例)
第1の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Eの模式的平面パターン構成は、図24(a)に示すように表され、図24(a)のIE−IE線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ1Eの模式的断面構造は、図24(b)に示すように表される。
第1の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサ1Eは、図24(a)および図24(b)に示すように、平面視において、基板12の各隅部に対応して配置される開口部45がI字型を有している。開口部45は、それぞれの長手方向が基板12の各辺に沿うように配置されると共に、それぞれの短手方向が基板12の各辺に接する二辺のうちの一方の辺に沿うように配置される。そして、ガスセンサ1Eは、基板12上の、開口部45によって規定される枠部分121と、この枠部分121に対して、開口部45間のアーム部分31によって支持された中央部分33に、ポーラス酸化膜51と下部電極28Dと固体電解質層30と上部電極28Uとからなるセンサ部分SPやSiN膜26などが配置される。
また、ガスセンサ1Eは、面内のメンブレン内部に、マイクロヒータMHと低濃度ドープポリシリコン層300とが設けられる。さらに、MEMS梁構造の基板12は、面内のメンブレンに対応してキャビティ部Cが形成された開放型構造となっている。
中央部分33およびアーム部分31は、平面視において、開口部45の長手方向にそれぞれ沿って設けられ、中央部分33の各辺の片側端部がアーム部分31によって支持されている。そのため、アーム部分31の枠部分121との接続部および中央部分33との接続部において、応力による変形に対し、より強固に接続可能である。
ここで、0.2μm厚の高濃度層HCからなるマイクロヒータ(4×1019cm-3)MHと0.4μm厚の低濃度層LCからなる低濃度ドープポリシリコン層(1×1018cm-3以下)300とを備えた限界電流式ガスセンサ1Eの温度均一性について、シミュレーションを行った際の結果について説明する。
限界電流式ガスセンサ1Eのシミュレーション結果は、図25(a)に示すように表され、対比のために示す、0.2μm厚の高濃度層HCからなるマイクロヒータMHだけを備えた比較例の限界電流式ガスセンサ1Fのシミュレーション結果は、図25(b)に示すように表される。ただし、シミュレーションには、実際のガスセンサ1E・1Fをより簡略化したものを用いた。
図25(a)および図25(b)からも明らかなように、低濃度ドープポリシリコン層300を備えたことによって、限界電流式ガスセンサ1Eは、限界電流式ガスセンサ1Fよりも面内の温度均一性を改善できた。
図26は、低濃度ドープポリシリコン層300におけるB、As、Pそれぞれの不純物濃度と熱伝導率との関係を示すものである。
図26に示すように、いずれの不純物の場合にも、例えば、ドープ濃度を1018/cm3 以下に抑える(または、アンドープする)ことによって、熱伝導率が140W/mK程度の低濃度ドープポリシリコン層300を形成できる。
図27は、限界電流式ガスセンサ1Eの面内における温度分布と、限界電流式ガスセンサ1Fの面内における温度分布とを対比して示すものである。
図28は、低濃度ドープポリシリコン層300の形成に用いられる低濃度層LCの厚さと面内の温度分布との関係を示すものである。
図27および図28から明らかなように、限界電流式ガスセンサ1Fに設けられる低濃度ドープポリシリコン層300の厚さを例えば、約0.4μmとした場合に、面内の温度分布を約7%、限界電流式ガスセンサ1Fよりも改善できることが分かった。
(第2の実施の形態)
(概略構成)
第2の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aの模式的平面パターン構成は、図30(a)に示すように表され、図30(a)のIIA−IIA線に沿う、MEMS梁構造を備えるガスセンサ2Aの模式的断面構造は、図30(b)に示すように表される。なお、第2の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aは、上述した限界電流式ガスセンサ1Aのポーラス酸化膜51をポーラスPt膜(多孔質膜)61に変更するようにしたものであって、それ以外の構成は基本的に同一なので重複する説明はできるだけ省略し、特徴的な部分の構成についてより詳しく説明する。
すなわち、第2の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aは、図30(a)および図30(b)に示すように、キャビティ部Cが船型構造を有するMEMS梁構造の基板(例えば、Si)12と、基板12上の活性領域AA内に配置されたガス導入路としてのポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、ポーラスPt膜61および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極(例えば、Pt膜)28Uとを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ2Aは、図30(a)および図30(b)に示すように、方形状の基板12上に第1・第2絶縁層(例えば、SiO2 膜)181・182からなる絶縁層18を有し、マイクロヒータMHの加熱に伴って、SiN膜201上に配置されたポーラスPt膜61のガス取込口61Gを介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分SPの固体電解質層30内へと導入するように構成されている。すなわち、被測定ガスは、ポーラス酸化膜51に代わる、ガス取込口61GよりポーラスPt膜61中に取り込まれ、下部電極28Dを介して固体電解質層30内へと導入された後、加熱により固体電解質層30内に拡散される。被測定ガスの固体電解質層30内への導入は、吸引動作を伴うものであっても良い。
なお、ガス取込口61Gは、平面視において、端子電極接続部23に沿う方向に延出するように、ポーラスPt膜61と同一材料により一体的に形成可能であり、その体積や厚さ、または幅などを調整することにより、被測定ガスの取込量を変化させることが可能である。ガス取込口61Gは、ポーラスPt膜61とは別体として形成することも可能であり、また平面視において、端子電極接続部23に沿う方向以外の、例えば端子電極接続部23に沿う方向またはヒータ接続部21・22に沿う方向に延出するように配置しても良い。
また、平面視において、センサ部分SPのポーラスPt膜61、下部電極28D、固体電解質層30、および上部電極28Uは、偏心がない状態でセンサ表面の中心に配置するのが望ましいが、マイクロヒータMH上であれば、偏心した状態で配置されていても良い。
なお、ポーラスPt膜61は、上述した限界電流式ガスセンサ1Aを製造する際のポーラス酸化膜51の形成工程に代えて、スパッタリングおよびエッチングにより形成すれば良い。
以上のように、ポーラスPt膜61を適用した限界電流式ガスセンサ2Aの場合においても、上述した限界電流式ガスセンサ1Aの場合と同様に、キャビティ部CがマイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように形成することによって、熱容量の低減化と共に、マイクロヒータMHによる加熱がセンサ周辺にまで無駄に拡がるのを簡単に抑制できる。
特に、ポーラスPt膜61は高い熱安定性を有するため、ガス絞り性能が高い。しかも、ガス取込口61Gのサイズを調整することのみで被測定ガスの取込量を簡単に制御でき、センサ特性にも優れた限界電流式ガスセンサ2Aとすることができる。
また、ポーラスPt膜61を採用したことにより、ガス拡散路MPが不要となるため、製造が容易である。
特に、この限界電流式ガスセンサ2Aは、ポーラスPt膜61を下部電極28Dとしても利用できるため、Pt/Ti積層膜を省略することも可能である。
したがって、第2の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、しかも、容易に製造できる。
(第2の実施の形態の第1変形例)
第2の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Bの模式的平面パターン構成は、図31(a)に示すように表され、図31(a)のIIB−IIB線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ2Bの模式的断面構造は、図31(b)に示すように表される。
すなわち、第2の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Bは、MEMS梁構造として、平面視において、基板12がセンサ部分SPを取り囲むように配置された開放型構造のキャビティ部Cを有して形成されても良い。開放型構造のキャビティ部Cは、例えば、舟型構造のキャビティ部Cを形成した後に、基板12を裏面側より深掘りエッチングすることによって簡単に形成できる。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ2Aと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
このような構成によっても、上述した限界電流式ガスセンサ2Aと同様に、センサ特性の改善が容易に可能な限界電流式ガスセンサ2Bとすることができる。
(第2の実施の形態の第2変形例)
第2の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Cの模式的平面パターン構成は、図32(a)に示すように表され、図32(a)のIIC−IIC線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ2Cの模式的断面構造は、図32(b)に示すように表される。
すなわち、第2の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Cは、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図るようにしたものである。
より具体的には、例えば、図30(a)および図30(b)に示した舟型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ2Aにおいて、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層(例えば、約140W/mK)300を挿入するようにしたのが、第2の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Cである。
このような構成によれば、より温度特性が良好で、センサ特性に優れた限界電流式ガスセンサ2Cとすることができる。
(第2の実施の形態の第3変形例)
第2の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Dの模式的平面パターン構成は、図33(a)に示すように表され、図33(a)のIID−IID線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ2Dの模式的断面構造は、図33(b)に示すように表される。
すなわち、図31(a)および図31(b)に示した開放型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ2Bの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入するようにしたのが、第2の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ2Dである。
このような構成によっても、より温度特性が良好で、センサ特性に優れた限界電流式ガスセンサ2Dとすることができる。
(第3の実施の形態)
(概略構成)
第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aの模式的平面パターン構成は、図34(a)に示すように表され、図34(a)のIIIA−IIIA線に沿う、MEMS梁構造を備えるガスセンサ3Aの模式的断面構造は、図34(b)に示すように表される。なお、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、ガス拡散路の構成が、上述した第1・第2の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサのそれとは異なり、それ以外の構成は基本的に同一である。
まず、構成の概略について説明すると、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、図34(a)および図34(b)に示すように、基板(例えば、Si)12上のセンサ表面に、SiN層20を構成するSiN膜(第3・第4絶縁膜)201・202、センサ部分SP、ガス拡散路(ガス導入路)MPのガス取込口(開口部)47、SiN膜26、ヒータ接続部21・22、端子電極接続部23・24、および開口部45などが設けられる。
センサ部分SPは、平面視において、基板12上の中央付近の活性領域内に配置されたガス拡散路MPと、ポーラス電極である下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28Dと、下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極(例えば、Pt膜)28Uとを備える。なお、基板12(活性領域)、下部電極28D、固体電解質層30、および上部電極28Uは、いずれも方形状またはそれ以外の形状であっても良い。
ガス拡散路MPは、SiN膜202を介して、下部電極28Dの下方に配置される。ガス拡散路MPのガス取込口47は、平面視において、センサ部分SPの一方向(例えば、図34(b)の断面に沿う方向の左端側)に対応する活性領域内のSiN膜26の近傍に配置される。SiN膜26は、センサ部分SPの外周部であって、センサ部分SPとの間に所定の距離を保持しつつ、センサ部分SPの周囲を四角枠状に囲むように配置される。
SiN膜26の外側であって、基板12上の活性領域と非活性領域との間には、各隅部に対応するようにして、4つの開口部45がL字型に配置される。開口部45は、舟型構造のキャビティ部Cを形成する際に形成される。なお、開口部45は、L字型以外の形状、例えばストレート状(I字型)などであっても良い。
また、開口部45のさらに外側の基板12上の縁部(センサ表面の周端部)には、平面視において、各開口部45間に対応するように、ヒータ接続部21・22の接続用パット211・221と端子電極接続部23・24の接続用パット231・241とが配置される。接続用パット211・221は、センサ部分SPの方向に向かって引き出された配線部212・222をそれぞれ介して、SiN膜26の直下において、端子部213・223と接続される。接続用パット231は、センサ部分SPの方向に向かって引き出された配線部232を介して、センサ部分SPの下部電極28Dの延出端28D1と接続され、接続用パット241は、センサ部分SPの方向に向かって引き出された配線部242を介して、センサ部分SPの上部電極28Uの延出端28U1と接続される。
一方、センサ部分SPの下方に対応する絶縁層18を構成する第1・第2絶縁層(例えば、SiO2 膜)181・182間には、センサ部分SPよりも大面積のマイクロヒータMHが設けられると共に、さらに、その下方には、マイクロヒータMHよりも大面積を有して、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部(舟型構造)Cが形成されている。
以下に、より具体的に説明すると、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、図34(a)および図34(b)に示すように、基板12上の第1・第2絶縁層181・182間に配置されたマイクロヒータMHを有し、センサ部分SPにおいて、上層の第2絶縁層182と下部電極28Dとの間に中空構造を有して形成されたガス拡散路MPを介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)を固体電解質層30内へと導入するように構成されている。すなわち、被測定ガスは、マイクロヒータMHの加熱に伴って、ガス取込口47よりSiN膜202の直下のガス拡散路MP内に取り込まれ、ガス流路(マイクロ流路)42を経て、ガス導入口(開口部)41の下部電極28Dから固体電解質層30内へと導入された後、固体電解質層30内に拡散される。被測定ガスの固体電解質層30内への導入は、吸引動作を伴うものであっても良い。
なお、下部電極28D、および固体電解質層30は、ガス取込口47に対向する側(例えば、図34(b)の断面に沿う方向の右端側)が、ガス拡散路MPの側壁部の一部を覆うようにして配置されている。
下部電極28Dは、ポーラスPt膜とTi膜との積層膜であるポーラスPt/Ti膜によって、例えば、約100nmの厚さで形成される。Ti膜は、ポーラスPt膜と下層のSiN膜202との接合を密にし、より強固にするために用いられる。
ここで、下部電極28Dは、ガス拡散路MPのガス導入口41となる部分より一部が流路42内に突出するようにして配置され、後述する金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路を有する(図示省略)。
例えば、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aにおいては、下部電極28Dそれ自体をナノ構造に形成している。すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)を混ぜたPtを焼結し、最後にCNTを焼き飛ばして微細ガス導入路を形成した金属粒子焼結層(緻密Pt)を下部電極28Dとして適用しても良い。CNTの代わりに、カーボンナノ粒子を適用しても良い。
なお、下部電極28Dにおける微細ガス導入路は、例えば、金属粒子焼結層に含有されるナノメートルスケールを有するナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子などの熱処理工程もしくは熱処理工程と組み合わせたエッチング処理工程によって形成可能である。ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子は、例えば、炭素(C)、酸化亜鉛(ZnO)などによって形成可能である。
すなわち、下部電極28Dにおける金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成される微細ガス導入路については、ここでの詳細な説明は省略するが、金属粒子焼結層は、ナノワイヤを備えていても良い。ナノワイヤは、CNTもしくはZnOを備えていても良い。また、金属粒子焼結層は、カーボンナノチューブもしくはカーボンナノ粒子を備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼により、カーボンナノチューブもしくはカーボンナノ粒子が燃焼されることによって形成されていても良い。また、金属粒子焼結層は、ZnOを備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼後、ウェットエッチングによりZnOがエッチングされることによって形成されていても良い。
さらには、金属粒子焼結層の金属粒子は、Pt、Ag、Pd、Au、もしくはRuのいずれかを備えていても良い。また、金属粒子焼結層は、金属粒子焼結層中に閉じ込められ、大気中での燃焼により、燃焼されないナノワイヤを備えていても良い。ナノワイヤもしくはナノ粒子は、直径が約0.1μm以下を備える。また、ナノワイヤの長さは、例えば、約10μm以下である。ナノワイヤを使用するメリットは、ナノワイヤの形状(径、長さ)によりガス透過量制御が可能であり、また、ナノワイヤの割合によりガス透過量制御が可能なことである。
このように、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、下部電極28Dの微細ガス導入路の形状によりガス透過量を制御可能である。また、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、下部電極28Dの微細ガス導入路の含有割合によりガス透過量を制御可能である。
固体電解質層30は、約1μmの厚さのYSZ膜で形成される。薄いと、上下の電極28U・28D間が導通してしまうためである。例えば、固体電解質層30は、下部電極28Dの周囲を覆うようにして配置され、上下の電極28U・28D間の導通が防がれる。
ガス拡散路MPは、被測定ガスを取り込むガス取込口47からガス導入口41までのマイクロ流路42の流路長と流路断面積との比に応じて、被測定ガスの流量制御が可能である。例えば、「流路長/断面積=100μm-1(アスペクト比)」となるように、ガス拡散路MPを、幅(W)=30μm、深さ(D)=0.1μm、長さ(L)=300μmで形成することにより、アスペクト比が「3」以上となって限界電流特性が良好となる。
なお、ガス拡散路MPは、センサ表面の中心に対して偏心された状態で配置されていても良く、平面視において、ガス導入口41が基板12上の中央付近に配置されるのが望ましい。これに対し、下部電極28D、固体電解質層30、および上部電極28Uは、ガス導入口41を中心にして、ガス導入口41上に積層されていれば良い。すなわち、センサ部分SPを構成するガス拡散路MP、下部電極28D、固体電解質層30、および上部電極28Uは、マイクロヒータMH上であれば、センサ表面の中心に対して、互いに異なる方向に偏心した状態で配置されていても良い。
第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、ガス拡散路MPのアスペクト比に応じて被測定ガスの流量制御が可能であり、アスペクト比を大きくできることによりセンサ特性を改善できると共に、ガス拡散路MPの形成の精度を高めることによって、センサ特性をより安定化させることができる。
MEMS梁構造の基板12は、例えば、10μm程度の厚さを有し、キャビティ部CがマイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように形成されて、メンブレンからの熱の逃げを防ぐようになっている。
MEMS梁構造としては、平面視において、基板12がセンサ部分SPを取り囲むように配置された開放型構造(図44参照)を有して形成されても良い。また、キャビティ部Cは、基板12を貼り合わせることによって形成される構造とすることもできる。
このように、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、MEMS構造を有する梁構造(舟型構造)を基本構造とすることによって、センサ部分SPの熱容量を低減化し、センサ感度の向上を図っている。
要するに、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、基板12と、基板12上に第1絶縁層181を介して配置されたヒータMHと、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して配置され、被測定ガスを取り込むガス導入路MPと、ガス導入路MP上に配置された下部電極28Dと、下部電極28D上に配置された固体電解質層30と、固体電解質層30上の、下部電極28Dに対向する面に配置された上部電極28Uと、基板12に、ヒータMHよりも実質的に大きく形成されたキャビティ部Cとを備える。
なお、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aにおいて、マイクロヒータMHは、センサ部分SPである基板12上の第1・第2絶縁層181・182間に配置される場合に限らず、基板12の下部に配置されていても良いし、基板12の内部に埋め込まれていても良い。もしくは、基板12の表面に、ポリシリコンで形成されたマイクロヒータMHを含む、SiO2 膜/SiN膜の積層膜(図示せず)が形成された構成としても良い。
(製造方法)
第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aの製造方法は、基板12上に第1絶縁層181を介してヒータMHを形成する工程と、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して下部電極28Dを形成する工程と、下部電極28D上に固体電解質層30を形成する工程と、固体電解質層30上の、下部電極28Dに対向する面に上部電極28Uを形成する工程と、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して配置され、被測定ガスを導入するガス導入路MPを形成する工程と、基板12に、ヒータMHよりも実質的に大きなキャビティ部Cを形成する工程とを有する。
図34(a)および図34(b)に示した第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aの製造方法は、図35〜図43に示すように表される。なお、図10(a)および図10(b)に示した、P−CVD法などにより約0.5μm厚のSiN膜201を形成するまでの工程は、第1の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの場合と同様なので、それ以降の工程について説明する。
(a)図35(a)および図35(b)に示すように、例えば、第2絶縁層182上にSiN膜201を形成した後、さらに、ガス拡散路MPを形成するための流路形成層35を予め形成(デポ+パターニング)する。
流路形成層35は、SiN膜201・202とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばポリシリコン膜を用いて形成される。また、流路形成層35は、ガス拡散路MPのアスペクト比が、例えば「流路長/流路断面積=100μm-1」となるように、長さ(L)が300μm、幅(W)が30μm、厚さ(深さ(D))が0.1μmで形成される。
ここで、ガス拡散路MPの所定のアスペクト比は、ガス拡散路MPの流路長を長くしたり、ガス拡散路MPの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、容易に大きくでき、ガス拡散路MPのアスペクト比を大きくすることによって、センサ特性の改善が可能である。
(b)次いで、図36(a)および図36(b)に示すように、P−CVD法などにより全面に流路形成層35とはエッチングの選択比が異なる、約0.5μm厚のSiN膜202を形成した後、さらに、SiN膜201・202および第2絶縁層182を選択的にエッチングして、マイクロヒータMHにつながる、ヒータ接続部21・22の端子部213・223を形成するための開口部37を形成する。
(c)次いで、図37(a)および図37(b)に示すように、Pt/Ti積層膜を約0.5μmの厚さとなるようにスパッタ法などによりデポすると共に、そのPt/Ti積層膜をエッチングによりパターニングして、ヒータ接続部21・22の接続用パット211・221、配線部212・222、および端子部213・223を形成する。
同時に、Pt/Ti積層膜をエッチングによりパターニングして、ヒータ接続部21・22と直交する方向に、端子電極接続部23・24の接続用パット231・241および配線部232・241を形成する。
こうして、ヒータ接続部21・22と端子電極接続部23・24とが、互いに直交するように配置される。
(d)次いで、図38(a)および図38(b)に示すように、CVD法などにより、開口部37内を埋め込むようにSiO2 膜25を形成すると共に、SiN膜26を形成した後、例えば、SiO2 膜25とSiN膜26とを選択的にエッチングし、センサ部分SPの周囲を囲むようにパターニングする。
また、SiO2 膜25およびSiN膜26のパターニングと同時、または前後して、流路形成層35上のSiN膜202を選択的にエッチングして除去し、流路形成層35が露出するように被測定ガスの導入口41となる開口部を形成する。
(e)次いで、図39(a)および図39(b)に示すように、スパッタ法などにより100nm厚程度のポーラスPt/Ti膜からなる下部電極28Dを形成すると共に、下部電極28Dの延出端28D1を端子電極接続部23の配線部232と接続させる。
(f)次いで、図40(a)および図40(b)に示すように、下部電極28D上を被覆するように、スパッタ法によりYSZ膜からなる固体電解質層30を約1μmの厚さで形成する。固体電解質層30は、下部電極28Dの延出端28D1を除き、下部電極28Dの周囲を全体的に被覆する。
(g)次いで、図41(a)および図41(b)に示すように、上部電極28Uとして、スパッタ法により固体電解質層30上の下部電極28Dに対向する面に100nm厚程度のPt膜を形成し、かつ上部電極28Uの延出端28U1を端子電極接続部24の配線部242と接続させる。
(h)次いで、図42(a)および図42(b)に示すように、MEMS梁構造として、舟型構造のキャビティ部Cを形成するための開口部431を有する保護用SiO2 膜(エッチングマスク)43を全面に形成する(デポ+パターニング)。
(i)次いで、図43(a)および図43(b)に示すように、保護用SiO2 膜43をマスクに、基板12を選択的に深掘りエッチングして開口部45を形成すると共に、MEMS梁構造の基板12として、舟型構造のキャビティ部Cを形成する。
キャビティ部Cとしては、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aのサイズにもよるが、マイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように、400μm角程度が望ましい。
また、保護用SiO2 膜43をエッチングによって除去した後、流路形成層35上のSiN膜202をさらにエッチングによって選択的に除去し、流路形成層35が露出するように被測定ガスのガス取込口47となる開口部を形成する。
(j)この後、ガス拡散路MPを形成するための、例えば、流路形成層35を構成するポリシリコン膜をウェットエッチングによって選択的に除去することにより、図34(a)および図34(b)に示した構成を有する、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aが得られる。
なお、ガス拡散路MPを形成する工程は、キャビティ部Cを形成する工程の前に行うようにしても良いし、キャビティ部Cを形成する工程と同時に行うようにしても良い。
以上のように、キャビティ部CがマイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように形成することによって、熱容量の低減化と共に、マイクロヒータMHによる加熱がセンサ周辺にまで無駄に拡がるのを簡単に抑制できる。
また、ガス拡散路MPのアスペクト比は、ガス拡散路MPのマイクロ流路42の流路長を長くしたり、断面積を小さくすることによって、簡単に大きくできる。
特に、下部電極28Dを構成するポーラスPt/Ti膜は高い熱安定性を有するため、ガス絞り性能が高い。
したがって、第3の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能となる。
(第3の実施の形態の第1変形例)
第3の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Bの模式的平面パターン構成は、図44(a)に示すように表され、図44(a)のIIIB−IIIB線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ3Bの模式的断面構造は、図44(b)に示すように表される。
すなわち、第3の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Bは、MEMS梁構造として、平面視において、基板12がセンサ部分SPを取り囲むように配置された開放型構造のキャビティ部Cを有して形成されても良い。開放型構造のキャビティ部Cは、例えば、舟型構造のキャビティ部Cを形成した後に、基板12を裏面側より深掘りエッチングすることによって簡単に形成できる。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ3Aと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
このような構成によっても、上述した限界電流式ガスセンサ3Aと同様に、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサ3Bとすることができる。
(第3の実施の形態の第2変形例)
第3の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Cの模式的平面パターン構成は、図45(a)に示すように表され、図45(a)のIIIC−IIIC線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ3Cの模式的断面構造は、図45(b)に示すように表される。
すなわち、第3の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Cは、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図るようにしたものである。
より具体的には、例えば、図34(a)および図34(b)に示した舟型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ3Aにおいて、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層(例えば、140W/mK)300を挿入するようにしたのが、第3の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Cである。
このような構成によれば、より温度特性が良好で、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサ3Cとすることができる。
(第3の実施の形態の第3変形例)
第3の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Dの模式的平面パターン構成は、図46(a)に示すように表され、図46(a)のIIID−IIID線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ3Dの模式的断面構造は、図46(b)に示すように表される。
すなわち、図44(a)および図44(b)に示した開放型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ3Bの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入するようにしたのが、第3の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Dである。
このような構成によっても、より温度特性が良好で、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサ3Dとすることができる。
(第3の実施の形態の第4変形例)
第3の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Eの模式的平面パターン構成は、図47(a)に示すように表され、図47(a)のIIIE−IIIE線に沿う、MEMS梁構造が舟型構造に形成されるセンサ3Eの模式的断面構造は、図47(b)に示すように表される。
すなわち、第3の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Eは、図47(a)および図47(b)に示すように、平面視において、例えばセンサ部分SPのガス拡散路MPに2つの開口部(複数のガス取込口)471・472を設けた構成となっている。
この限界電流式ガスセンサ3Eの場合、ガス拡散路MPを形成する工程において、2つの開口部471・472を用いることによって、例えば、流路形成層35を構成するポリシリコン膜を効率良くウェットエッチングすることが可能である。
したがって、第3の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、しかも、ガス拡散路を、より容易に形成することが可能となる。
なお、この限界電流式ガスセンサ3Eの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入したり、MEMS梁構造を開放型構造に形成することも容易である。
(第3の実施の形態の第5変形例)
第3の実施の形態の第5変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Fの模式的平面パターン構成は、図48(a)に示すように表され、図48(a)のIIIF−IIIF線に沿う、MEMS梁構造が舟型構造に形成されるガスセンサ3Fの模式的断面構造は、図48(b)に示すように表される。
すなわち、第3の実施の形態の第5変形例に係る限界電流式ガスセンサ3Fは、図48(a)および図48(b)に示すように、ガス拡散路MPが備える複数の開口部471・472のいずれか(例えば、ガス取込口472)を、ガス拡散路MPの形成後に、ガラスフリットやSiN膜またはSiO2 膜などの蓋部材49によって閉塞させた構成となっている。
この限界電流式ガスセンサ3Fの場合も、ガス拡散路MPを形成する工程においては、2つのガス取込口471・472を用いることにより、ガス拡散路MPを容易に形成可能となる。
しかも、ガス拡散路MPの形成後に、ガス取込口471・472のいずれかを蓋部材49によって閉塞させることにより、被測定ガスの導入量が増加し過ぎるのを抑制できる。
したがって、第3の実施の形態の第5変形例に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、しかも、ガス拡散路を、より容易に形成できると共に、ガス導入量の増加に伴って、ガス絞り性能が低下するといった不具合を解消できる。
なお、この限界電流式ガスセンサ3Fの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入したり、MEMS梁構造を開放型構造に形成することも容易である。
(第4の実施の形態)
(概略構成)
第4の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ4Aの模式的平面パターン構成は、図49(a)に示すように表され、図49(a)のIVA−IVA線に沿う、MEMS梁構造を備えるガスセンサ4Aの模式的断面構造は、図49(b)に示すように表される。なお、第4の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ4Aは、上述した限界電流式ガスセンサ3Aの下部電極28Dの下層に、さらにポーラス酸化膜71を配置するようにしたものであって、それ以外の構成は基本的に同一なので重複する説明はできるだけ省略し、特徴的な部分の構成についてより詳しく説明する。
第4の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ4Aは、図49(a)および図49(b)に示すように、センサ部分SPとして、基板12上の活性領域内に配置されたガス導入路としてのガス拡散路MPと、ポーラス酸化膜(多孔質膜)71と、ポーラス酸化膜71上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、ポーラス酸化膜71および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極(例えば、Pt膜)28Uとを備える。
すなわち、限界電流式ガスセンサ4Aにおいて、被測定ガス(例えば、O2 ガス)は、マイクロヒータMHの加熱に伴って、中空構造を有して形成されたガス拡散路MPよりセンサ部分SPに取り込まれ、ガス導入口41のポーラス酸化膜71と下部電極28Dとを介して固体電解質層30内へと導入された後、固体電解質層30内に拡散される。被測定ガスの固体電解質層30内への導入は、吸引動作を伴うものであっても良い。
なお、ポーラス酸化膜71の形成は、上述した限界電流式ガスセンサ3Aを製造する際の下部電極28Dの形成工程の前工程において、スパッタリングおよびエッチングにより、ポーラス酸化膜71を形成すれば良い。
以上のように、ポーラス酸化膜71を追加した限界電流式ガスセンサ4Aの場合においても、上述した限界電流式ガスセンサ3Aの場合と同様に、キャビティ部CがマイクロヒータMHよりも実質的に大きくなるように形成することによって、熱容量の低減化と共に、マイクロヒータMHによる加熱がセンサ周辺にまで無駄に拡がるのを簡単に抑制できる。
特に、ポーラス酸化膜71は高い熱安定性を有するため、ガス絞り性能が高く、センサ特性にも優れた限界電流式ガスセンサ4Aとすることができる。
しかも、ガス拡散路MPのアスペクト比は、ガス拡散路MPのマイクロ流路42の流路長を長くしたり、断面積を小さくすることによって、簡単に大きくできるので、ポーラス膜がもつ温度依存性を相殺することが可能である。
したがって、第4の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能となる。
(第4の実施の形態の第1変形例)
第4の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Bの模式的平面パターン構成は、図50(a)に示すように表され、図50(a)のIVB−IVB線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ4Bの模式的断面構造は、図50(b)に示すように表される。
すなわち、第4の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Bは、MEMS梁構造として、平面視において、基板12がセンサ部分SPを取り囲むように配置された開放型構造のキャビティ部Cを有して形成されても良い。開放型構造のキャビティ部Cは、例えば、舟型構造のキャビティ部Cを形成した後に、基板12を裏面側より深掘りエッチングすることによって簡単に形成できる。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ4Aと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
このような構成によっても、上述した限界電流式ガスセンサ4Aと同様に、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサ4Bとすることができる。
(第4の実施の形態の第2変形例)
第4の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Cの模式的平面パターン構成は、図51(a)に示すように表され、図51(a)のIVC−IVC線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ4Cの模式的断面構造は、図51(b)に示すように表される。
すなわち、第4の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Cは、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図るようにしたものである。
より具体的には、例えば、図49(a)および図49(b)に示した舟型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ4Aにおいて、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層(例えば、140W/mK)300を挿入するようにしたのが、第4の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Cである。
このような構成によっても、上述した限界電流式ガスセンサ4Aと同様に、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサ4Cとすることができる。
(第4の実施の形態の第3変形例)
第4の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Dの模式的平面パターン構成は、図52(a)に示すように表され、図52(a)のIVD−IVD線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ4Dの模式的断面構造は、図52(b)に示すように表される。
すなわち、図50(a)および図50(b)に示した開放型構造のキャビティ部Cを備えた限界電流式ガスセンサ4Bの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入するようにしたのが、第4の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Dである。
このような構成によっても、上述した限界電流式ガスセンサ4Bと同様に、センサ特性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサ4Dとすることができる。
(第4の実施の形態の第4変形例)
第4の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Eの模式的平面パターン構成は、図53(a)に示すように表され、図53(a)のIVE−IVE線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ4Eの模式的断面構造は、図53(b)に示すように表される。
すなわち、第4の実施の形態の第4変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Eは、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層(例えば、140W/mK)300を挿入し、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図るようにしたものであって、低濃度ドープポリシリコン層300をマイクロヒータMHよりも大きく形成するようにした場合の例である。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ4Cと基本的に同一であり、重複する説明は省略する。
(第4の実施の形態の第5変形例)
第4の実施の形態の第5変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Fの模式的平面パターン構成は、図54(a)に示すように表され、図54(a)のIVF−IVF線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ4Fの模式的断面構造は、図54(b)に示すように表される。
すなわち、第4の実施の形態の第5変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Fは、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層(例えば、140W/mK)300を挿入し、面内のメンブレン内部における熱伝導率を高めて、温度の均一化を図るようにしたものであって、低濃度ドープポリシリコン層300をマイクロヒータMHよりも大きく形成するようにした場合の例である。メンブレン内部のみの熱伝導率が高まり、ビームを伝播して逃げる熱は変化しないため、全面にシリコンがある場合のような消費電力の増大は発生しない。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ4Dと基本的に同一であり、重複する説明は省略する。
(第4の実施の形態の第6変形例)
第4の実施の形態の第6変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Gの模式的平面パターン構成は、図55(a)に示すように表され、図55(a)のIVG−IVG線に沿う、MEMS梁構造が舟型構造に形成されるガスセンサ4Gの模式的断面構造は、図55(b)に示すように表される。
すなわち、第4の実施の形態の第6変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Gは、図55(a)および図55(b)に示すように、平面視において、例えばセンサ部分SPの左端側と右端側とに、ガス拡散路MPの開口部(ガス取込口)471・472を備えた構成となっている。
この限界電流式ガスセンサ4Gの場合、ガス拡散路MPを形成する工程において、2つの開口部471・472を用いることによって、例えば、流路形成層35を構成するポリシリコン膜を効率良くウェットエッチングすることが可能である。
したがって、第4の実施の形態の第6変形例に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、しかも、ガス拡散路を、より容易に形成することが可能となる。
なお、この限界電流式ガスセンサ4Gの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入したり、MEMS梁構造を開放型構造に形成することも容易である。
(第4の実施の形態の第7変形例)
第4の実施の形態の第7変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Hの模式的平面パターン構成は、図56(a)に示すように表され、図56(a)のIVH−IVH線に沿う、MEMS梁構造が舟型構造に形成されるガスセンサ4Hの模式的断面構造は、図56(b)に示すように表される。
すなわち、第4の実施の形態の第7変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Hは、図56(a)および図56(b)に示すように、ガス拡散路MPが備える複数の開口部471・472のいずれか一方(例えば、ガス取込口472)を、ガス拡散路MPの形成後に、ガラスフリットやSiN膜またはSiO2 膜などの蓋部材49によって閉塞させた構成となっている。
この限界電流式ガスセンサ4Hの場合も、ガス拡散路MPを形成する工程においては、2つのガス取込口471・472を用いることにより、ガス拡散路MPを容易に形成可能となる。
しかも、ガス拡散路MPの形成後に、ガス取込口471・472の一方を蓋部材49によって閉塞させることにより、被測定ガスの導入量が増加し過ぎるのを抑制できる。
したがって、第4の実施の形態の第7変形例に係る限界電流式ガスセンサによれば、センサ特性の改善が容易に可能であり、しかも、ガス拡散路を、より容易に形成できると共に、ガス導入量の増加に伴って、ガス絞り性能が低下するといった不具合を解消できる。
なお、この限界電流式ガスセンサ4Hの構造において、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入したり、MEMS梁構造を開放型構造に形成することも容易である。
(第5の実施の形態)
(概略構成)
第5の実施の形態は、図29(e)に模式的に示したように、限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPにおいて、ガス取込部303を設けた構成とすることによって、上述したポーラス膜の温度依存性を改善するようにしたものである。
要するに、第5の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサは、基板12と、基板12上に第1絶縁層181を介して配置されたヒータMHと、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して配置されたガス取込部303と、ガス取込部303上に配置された下部電極28Dと、下部電極28D上に配置された固体電解質層30と、固体電解質層30上の、下部電極28Dに対向する面に配置された上部電極28Uと、基板12に、ヒータMHよりも実質的に大きく形成されたキャビティ部Cとを備え、ガス取込部303は、被測定ガスを取り込むガス導入路と、ガス導入路上に配置され、面直方向のガス絞り構造を備えた柱状膜(柱状部)とから構成される。
(第5の実施の形態の第1実施例)
第5の実施の形態の第1実施例として、まず、センサ部分SPのガス取込部303を、ガス導入路となるガス拡散路MP1と柱状膜53・57とで構成する場合について説明する。
ここで、ガス拡散路MP1は、面内方向のガス絞り構造を備え、柱状膜53・57は、面直方向のガス絞り構造を備える。
第5の実施の形態の第1実施例に係る限界電流式ガスセンサ5A1の模式的平面パターン構成は、図57(a)に示すように表され、図57(a)のVA1−VA1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5A1の模式的断面構造は、図57(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第1実施例に係る限界電流式ガスセンサ5A1のセンサ部分SPは、図57(a)および図57(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置された柱状酸化膜(柱状膜)53と、柱状酸化膜53を覆うように配置されたポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第1実施例に係る限界電流式ガスセンサ5A1の場合、ポーラス酸化膜51と下部電極28Dとによってポーラス電極が構成され、ガス拡散路MP1と柱状酸化膜53とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図57(b)に示す限界電流式ガスセンサ5A1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図58(a)および図58(b)に示す限界電流式ガスセンサ5A2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第1実施例の変形例1)
第5の実施の形態の第1実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5B1の模式的平面パターン構成は、図59(a)に示すように表され、図59(a)のVB1−VB1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5B1の模式的断面構造は、図59(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第1実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5B1のセンサ部分SPは、図59(a)および図59(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置された柱状酸化膜(柱状膜)53と、柱状酸化膜53を覆うように配置された下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28DAと、下部電極28DAを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DAに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第1実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5B1の場合、下部電極28DAによってポーラス電極が構成され、ガス拡散路MP1と柱状酸化膜53とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図59(b)に示す限界電流式ガスセンサ5B1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図60(a)および図60(b)に示す限界電流式ガスセンサ5B2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第1実施例の変形例2)
第5の実施の形態の第1実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5C1の模式的平面パターン構成は、図61(a)に示すように表され、図61(a)のVC1−VC1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5C1の模式的断面構造は、図61(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第1実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5C1のセンサ部分SPは、図61(a)および図61(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置された柱状Pt/Ti膜(柱状膜)57と、柱状Pt/Ti膜57を覆うように配置されたポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第1実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5C1の場合、ポーラス酸化膜51と下部電極28Dとによってポーラス電極が構成され、ガス拡散路MP1と柱状Pt/Ti膜57とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図61(b)に示す限界電流式ガスセンサ5C1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図62(a)および図62(b)に示す限界電流式ガスセンサ5C2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第1実施例の変形例3)
第5の実施の形態の第1実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5D1の模式的平面パターン構成は、図63(a)に示すように表され、図63(a)のVD1−VD1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5D1の模式的断面構造は、図63(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第1実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5D1のセンサ部分SPは、図63(a)および図63(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置された柱状Pt/Ti膜(柱状膜)57と、柱状Pt/Ti膜57を覆うように配置された下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28DAと、下部電極28DAを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DAに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第1実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5D1の場合、下部電極28DAによってポーラス電極が構成され、ガス拡散路MP1と柱状Pt/Ti膜57とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図63(b)に示す限界電流式ガスセンサ5D1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図64(a)および図64(b)に示す限界電流式ガスセンサ5D2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第2実施例)
第5の実施の形態の第2実施例として、まず、センサ部分SPのガス取込部303を、ガス導入路となるポーラス酸化膜51と柱状膜53・57とで構成する場合について説明する。
ここで、ポーラス酸化膜51は、面内方向のガス絞り構造を備え、柱状膜53・57は、面直方向のガス絞り構造を備える。
第5の実施の形態の第2実施例に係る限界電流式ガスセンサ5E1の模式的平面パターン構成は、図65(a)に示すように表され、図65(a)のVE1−VE1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5E1の模式的断面構造は、図65(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第2実施例に係る限界電流式ガスセンサ5E1のセンサ部分SPは、図65(a)および図65(b)に示すように、ガス導入路となる第1のポーラス酸化膜51Aと、第1のポーラス酸化膜51A上に配置された柱状酸化膜(柱状膜)53と、柱状酸化膜53を覆うように配置された第2のポーラス酸化膜51Bと、第2のポーラス酸化膜51B上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、第2のポーラス酸化膜51Bおよび下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第2実施例に係る限界電流式ガスセンサ5E1の場合、第2のポーラス酸化膜51Bと下部電極28Dとによってポーラス電極が構成され、第1のポーラス酸化膜51Aと柱状酸化膜53とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図65(b)に示す限界電流式ガスセンサ5E1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図66(a)および図66(b)に示す限界電流式ガスセンサ5E2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第2実施例の変形例1)
第5の実施の形態の第2実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5F1の模式的平面パターン構成は、図67(a)に示すように表され、図67(a)のVF1−VF1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5F1の模式的断面構造は、図67(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第2実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5F1のセンサ部分SPは、図67(a)および図67(b)に示すように、ガス導入路となるポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置された柱状酸化膜(柱状膜)53と、柱状酸化膜53を覆うように配置された下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28DAと、下部電極28DAを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DAに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第2実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5F1の場合、下部電極28DAによってポーラス電極が構成され、ポーラス酸化膜51と柱状酸化膜53とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図67(b)に示す限界電流式ガスセンサ5F1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図68(a)および図68(b)に示す限界電流式ガスセンサ5F2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第2実施例の変形例2)
第5の実施の形態の第2実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5G1の模式的平面パターン構成は、図69(a)に示すように表され、図69(a)のVG1−VG1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5G1の模式的断面構造は、図69(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第2実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5G1のセンサ部分SPは、図69(a)および図69(b)に示すように、ガス導入路となる第1のポーラス酸化膜51Aと、第1のポーラス酸化膜51A上に配置された柱状Pt/Ti膜(柱状膜)57と、柱状Pt/Ti膜57を覆うように配置された第2のポーラス酸化膜51Bと、第2のポーラス酸化膜51B上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、第2のポーラス酸化膜51Bおよび下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第2実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5G1の場合、第2のポーラス酸化膜51Bと下部電極28Dとによってポーラス電極が構成され、第1のポーラス酸化膜51Aと柱状Pt/Ti膜57とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図69(b)に示す限界電流式ガスセンサ5G1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図70(a)および図70(b)に示す限界電流式ガスセンサ5G2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第2実施例の変形例3)
第5の実施の形態の第2実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5H1の模式的平面パターン構成は、図71(a)に示すように表され、図71(a)のVH1−VH1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5H1の模式的断面構造は、図71(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第2実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5H1のセンサ部分SPは、図71(a)および図71(b)に示すように、ガス導入路となるポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置された柱状Pt/Ti膜(柱状膜)57と、柱状Pt/Ti膜57を覆うように配置された下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28DAと、下部電極28DAを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DAに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第2実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5H1の場合、下部電極28DAによってポーラス電極が構成され、ポーラス酸化膜51と柱状Pt/Ti膜57とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図71(b)に示す限界電流式ガスセンサ5H1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図72(a)および図72(b)に示す限界電流式ガスセンサ5H2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第3実施例)
第5の実施の形態の第3実施例として、まず、センサ部分SPのガス取込部303を、ガス導入路となるポーラスPt膜61と柱状膜53・57とで構成する場合について説明する。
ここで、ポーラスPt膜61は、面内方向のガス絞り構造を備え、柱状膜53・57は、面直方向のガス絞り構造を備える。
第5の実施の形態の第3実施例に係る限界電流式ガスセンサ5J1の模式的平面パターン構成は、図73(a)に示すように表され、図73(a)のVJ1−VJ1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5J1の模式的断面構造は、図73(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第3実施例に係る限界電流式ガスセンサ5J1のセンサ部分SPは、図73(a)および図73(b)に示すように、ガス導入路となるポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置された柱状酸化膜(柱状膜)53と、柱状酸化膜53を覆うように配置されたポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第3実施例に係る限界電流式ガスセンサ5J1の場合、ポーラス酸化膜51と下部電極28Dとによってポーラス電極が構成され、ポーラスPt膜61と柱状酸化膜53とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図73(b)に示す限界電流式ガスセンサ5J1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図74(a)および図74(b)に示す限界電流式ガスセンサ5J2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第3実施例の変形例1)
第5の実施の形態の第3実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5K1の模式的平面パターン構成は、図75(a)に示すように表され、図75(a)のVK1−VK1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5K1の模式的断面構造は、図75(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第3実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5K1のセンサ部分SPは、図75(a)および図75(b)に示すように、ガス導入路となるポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置された柱状酸化膜(柱状膜)53と、柱状酸化膜53を覆うように配置された下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28DAと、下部電極28DAを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DAに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第3実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ5K1の場合、下部電極28DAによってポーラス電極が構成され、ポーラスPt膜61と柱状酸化膜53とによってガス取込部303が構成される。
ポーラスPt膜61は、Ptの粒径φが、下部電極28DAのPtの粒径φよりも大きくなるように調整される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図75(b)に示す限界電流式ガスセンサ5K1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図76(a)および図76(b)に示す限界電流式ガスセンサ5K2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第3実施例の変形例2)
第5の実施の形態の第3実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5L1の模式的平面パターン構成は、図77(a)に示すように表され、図77(a)のVL1−VL1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5L1の模式的断面構造は、図77(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第3実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5L1のセンサ部分SPは、図77(a)および図77(b)に示すように、ガス導入路となるポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置された柱状Pt/Ti膜(柱状膜)57と、柱状Pt/Ti膜57を覆うように配置されたポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、ポーラス酸化膜51および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第3実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ5L1の場合、ポーラス酸化膜51と下部電極28Dとによってポーラス電極が構成され、ポーラスPt膜61と柱状Pt/Ti膜57とによってガス取込部303が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図77(b)に示す限界電流式ガスセンサ5L1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図78(a)および図78(b)に示す限界電流式ガスセンサ5L2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第5の実施の形態の第3実施例の変形例3)
第5の実施の形態の第3実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5M1の模式的平面パターン構成は、図79(a)に示すように表され、図79(a)のVM1−VM1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ5M1の模式的断面構造は、図79(b)に示すように表される。
すなわち、第5の実施の形態の第3実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5M1のセンサ部分SPは、図79(a)および図79(b)に示すように、ガス導入路となるポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置された柱状Pt/Ti膜(柱状膜)57と、柱状Pt/Ti膜57を覆うように配置された下部電極(ポーラスPt/Ti膜)28DAと、下部電極28DAを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DAに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第5の実施の形態の第3実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ5M1の場合、下部電極28DAによってポーラス電極が構成され、ポーラスPt膜61と柱状Pt/Ti膜57とによってガス取込部303が構成される。
ポーラスPt膜61は、Ptの粒径φが、下部電極28DAのPtの粒径φよりも大きくなるように調整される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図79(b)に示す限界電流式ガスセンサ5M1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図80(a)および図80(b)に示す限界電流式ガスセンサ5M2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
いずれの構成によっても、ポーラス膜の温度依存性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサとすることができる。
なお、いずれの構成の場合も、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入することも可能である。
また、ポーラスPt膜61に代えて、ポーラスPt/Ti膜を適用するようにしても良い。
(第6の実施の形態)
(概略構成)
第6の実施の形態は、図29(f)に模式的に示したように、限界電流式ガスセンサのセンサ部分SPにおいて、ガス取込部305を設けた構成とすることによって、上述したポーラス膜の温度依存性を改善するようにしたものである。
要するに、第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサは、基板12と、基板12上に第1絶縁層181を介して配置されたヒータMHと、ヒータMH上に第2絶縁層182を介して配置されたガス取込部305と、ガス取込部305上に配置された下部電極28Dと、下部電極28D上に配置された固体電解質層30と、固体電解質層30上の、下部電極28Dに対向する面に配置された上部電極28Uと、基板12に、ヒータMHよりも実質的に大きく形成されたキャビティ部Cとを備え、ガス取込部305は、被測定ガスを取り込むガス導入路と、ガス導入路上に配置され、面内方向のガス拡散構造を備えた多孔質膜(柱状部)とから構成される。
(第6の実施の形態の第1実施例)
第6の実施の形態の第1実施例として、まず、センサ部分SPのガス取込部305を、ガス導入路となるガス拡散路MP1と多孔質膜51・61とで構成する場合について説明する。
ここで、ガス拡散路MP1は、面内方向のガス絞り構造を備え、多孔質膜51・61は、面内方向のガス拡散構造を備える。
第6の実施の形態の第1実施例に係る限界電流式ガスセンサ6A1の模式的平面パターン構成は、図81(a)に示すように表され、図81(a)のVIA1−VIA1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6A1の模式的断面構造は、図81(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第1実施例に係る限界電流式ガスセンサ6A1のセンサ部分SPは、図81(a)および図81(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置されたポーラス酸化膜(多孔質膜)51と、ポーラス酸化膜51を覆うように配置された柱状酸化膜53と、柱状酸化膜53上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、柱状酸化膜53および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第1実施例に係る限界電流式ガスセンサ6A1の場合、柱状酸化膜53と下部電極28Dとによって柱状電極が構成され、ガス拡散路MP1とポーラス酸化膜51とによってガス取込部305が構成される。
ここで、柱状電極は、面直方向のガス絞り構造を備える。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図81(b)に示す限界電流式ガスセンサ6A1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図82(a)および図82(b)に示す限界電流式ガスセンサ6A2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第1実施例の変形例1)
第6の実施の形態の第1実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6B1の模式的平面パターン構成は、図83(a)に示すように表され、図83(a)のVIB1−VIB1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6B1の模式的断面構造は、図83(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第1実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6B1のセンサ部分SPは、図83(a)および図83(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置されたポーラス酸化膜(多孔質膜)51と、ポーラス酸化膜51を覆うように配置された下部電極(柱状Pt/Ti膜)28DBと、下部電極28DBを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DBに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第1実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6B1の場合、下部電極28DBによって柱状電極が構成され、ガス拡散路MP1とポーラス酸化膜51とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図83(b)に示す限界電流式ガスセンサ6B1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図84(a)および図84(b)に示す限界電流式ガスセンサ6B2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第1実施例の変形例2)
第6の実施の形態の第1実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6C1の模式的平面パターン構成は、図85(a)に示すように表され、図85(a)のVIC1−VIC1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6C1の模式的断面構造は、図85(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第1実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6C1のセンサ部分SPは、図85(a)および図85(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置されたポーラスPt膜(多孔質膜)61と、ポーラスPt膜61を覆うように配置された柱状酸化膜53と、柱状酸化膜53上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、柱状酸化膜53および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第1実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6C1の場合、柱状酸化膜53と下部電極28Dとによって柱状電極が構成され、ガス拡散路MP1とポーラスPt膜61とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図85(b)に示す限界電流式ガスセンサ6C1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図86(a)および図86(b)に示す限界電流式ガスセンサ6C2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第1実施例の変形例3)
第6の実施の形態の第1実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6D1の模式的平面パターン構成は、図87(a)に示すように表され、図87(a)のVID1−VID1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6D1の模式的断面構造は、図87(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第1実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6D1のセンサ部分SPは、図87(a)および図87(b)に示すように、中空構造を有するガス拡散路(ガス導入路)MP1と、ガス拡散路MP1上に配置されたポーラスPt膜(多孔質膜)61と、ポーラスPt膜61を覆うように配置された下部電極(柱状Pt/Ti膜)28DBと、下部電極28DBを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DBに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第1実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6D1の場合、下部電極28DBによって柱状電極が構成され、ガス拡散路MP1とポーラスPt膜61とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図87(b)に示す限界電流式ガスセンサ6D1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図88(a)および図88(b)に示す限界電流式ガスセンサ6D2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第2実施例)
第6の実施の形態の第2実施例として、まず、センサ部分SPのガス取込部305を、ガス導入路となるポーラス酸化膜51と多孔質膜51・61とで構成する場合について説明する。
ここで、多孔質膜51・61は、面内方向のガス絞り構造を備える。
第6の実施の形態の第2実施例に係る限界電流式ガスセンサ6E1の模式的平面パターン構成は、図89(a)に示すように表され、図89(a)のVIE1−VIE1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6E1の模式的断面構造は、図89(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第2実施例に係る限界電流式ガスセンサ6E1のセンサ部分SPは、図89(a)および図89(b)に示すように、ガス導入路となる第1のポーラス酸化膜51Aと、第1のポーラス酸化膜51A上に配置された第2のポーラス酸化膜(多孔質膜)51Bと、第2のポーラス酸化膜51Bを覆うように配置された柱状酸化膜53と、柱状酸化膜53上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、柱状酸化膜53および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第2実施例に係る限界電流式ガスセンサ6E1の場合、柱状酸化膜53と下部電極28Dとによって柱状電極が構成され、第1のポーラス酸化膜51Aと第2のポーラス酸化膜51Bとによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図89(b)に示す限界電流式ガスセンサ6E1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図90(a)および図90(b)に示す限界電流式ガスセンサ6E2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第2実施例の変形例1)
第6の実施の形態の第2実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6F1の模式的平面パターン構成は、図91(a)に示すように表され、図91(a)のVIF1−VIF1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6F1の模式的断面構造は、図91(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第2実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6F1のセンサ部分SPは、図91(a)および図91(b)に示すように、ガス導入路となる第1のポーラス酸化膜51Aと、第1のポーラス酸化膜51A上に配置された第2のポーラス酸化膜(多孔質膜)51Bと、第2のポーラス酸化膜51Bを覆うように配置された下部電極(柱状Pt/Ti膜)28DBと、下部電極28DBを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DBに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第2実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6F1の場合、下部電極28DBによって柱状電極が構成され、第1のポーラス酸化膜51Aと第2のポーラス酸化膜51Bとによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図91(b)に示す限界電流式ガスセンサ6F1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図92(a)および図92(b)に示す限界電流式ガスセンサ6F2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第2実施例の変形例2)
第6の実施の形態の第2実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6G1の模式的平面パターン構成は、図93(a)に示すように表され、図93(a)のVIG1−VIG1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6G1の模式的断面構造は、図93(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第2実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6G1のセンサ部分SPは、図93(a)および図93(b)に示すように、ガス導入路となるポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置されたポーラスPt膜(多孔質膜)61と、ポーラスPt膜61を覆うように配置された柱状酸化膜53と、柱状酸化膜53上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、柱状酸化膜53および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第2実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6G1の場合、柱状酸化膜53と下部電極28Dとによって柱状電極が構成され、ポーラス酸化膜51とポーラスPt膜61とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図93(b)に示す限界電流式ガスセンサ6G1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図94(a)および図94(b)に示す限界電流式ガスセンサ6G2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第2実施例の変形例3)
第6の実施の形態の第2実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6H1の模式的平面パターン構成は、図95(a)に示すように表され、図95(a)のVIH1−VIH1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6H1の模式的断面構造は、図95(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第2実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6H1のセンサ部分SPは、図95(a)および図95(b)に示すように、ガス導入路となるポーラス酸化膜51と、ポーラス酸化膜51上に配置されたポーラスPt膜(多孔質膜)61と、ポーラスPt膜61を覆うように配置された下部電極(柱状Pt/Ti膜)28DBと、下部電極28DBを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DBに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第2実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6H1の場合、下部電極28DBによって柱状電極が構成され、ポーラス酸化膜51とポーラスPt膜61とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図95(b)に示す限界電流式ガスセンサ6H1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図96(a)および図96(b)に示す限界電流式ガスセンサ6H2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第3実施例)
第6の実施の形態の第3実施例として、まず、センサ部分SPのガス取込部305を、ガス導入路となるポーラスPt膜61と多孔質膜51・61とで構成する場合について説明する。
ここで、多孔質膜51・61は、面内方向のガス拡散構造を備える。
第6の実施の形態の第3実施例に係る限界電流式ガスセンサ6J1の模式的平面パターン構成は、図97(a)に示すように表され、図97(a)のVIJ1−VIJ1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6J1の模式的断面構造は、図97(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第3実施例に係る限界電流式ガスセンサ6J1のセンサ部分SPは、図97(a)および図97(b)に示すように、ガス導入路となるポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置されたポーラス酸化膜(多孔質膜)51と、ポーラス酸化膜51を覆うように配置された柱状酸化膜53と、柱状酸化膜53上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、柱状酸化膜53および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第3実施例に係る限界電流式ガスセンサ6J1の場合、柱状酸化膜53と下部電極28Dとによって柱状電極が構成され、ポーラスPt膜61とポーラス酸化膜51とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図97(b)に示す限界電流式ガスセンサ6J1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図98(a)および図98(b)に示す限界電流式ガスセンサ6J2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第3実施例の変形例1)
第6の実施の形態の第3実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6K1の模式的平面パターン構成は、図99(a)に示すように表され、図99(a)のVIK1−VIK1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6K1の模式的断面構造は、図99(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第3実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6K1のセンサ部分SPは、図99(a)および図99(b)に示すように、ガス導入路となるポーラスPt膜61と、ポーラスPt膜61上に配置されたポーラス酸化膜(多孔質膜)51と、ポーラス酸化膜51を覆うように配置された下部電極(柱状Pt/Ti膜)28DBと、下部電極28DBを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DBに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第3実施例の変形例1に係る限界電流式ガスセンサ6K1の場合、下部電極28DBによって柱状電極が構成され、ポーラスPt膜61とポーラス酸化膜51とによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図99(b)に示す限界電流式ガスセンサ6K1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図100(a)および図100(b)に示す限界電流式ガスセンサ6K2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第3実施例の変形例2)
第6の実施の形態の第3実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6L1の模式的平面パターン構成は、図101(a)に示すように表され、図101(a)のVIL1−VIL1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6L1の模式的断面構造は、図101(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第3実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6L1のセンサ部分SPは、図101(a)および図101(b)に示すように、ガス導入路となる第1のポーラスPt膜61Aと、第1のポーラスPt膜61A上に配置された第2のポーラスPt膜(多孔質膜)61Bと、第2のポーラスPt膜61Bを覆うように配置された柱状酸化膜53と、柱状酸化膜53上に配置された下部電極(Pt/Ti積層膜)28Dと、柱状酸化膜53および下部電極28Dを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28Dに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第3実施例の変形例2に係る限界電流式ガスセンサ6L1の場合、柱状酸化膜53と下部電極28Dとによって柱状電極が構成され、第1のポーラスPt膜61Aと第2のポーラスPt膜61Bとによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図101(b)に示す限界電流式ガスセンサ6L1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図102(a)および図102(b)に示す限界電流式ガスセンサ6L2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
(第6の実施の形態の第3実施例の変形例3)
第6の実施の形態の第3実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6M1の模式的平面パターン構成は、図103(a)に示すように表され、図103(a)のVIM1−VIM1線に沿う、MEMS梁構造に形成されるガスセンサ6M1の模式的断面構造は、図103(b)に示すように表される。
すなわち、第6の実施の形態の第3実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6M1のセンサ部分SPは、図103(a)および図103(b)に示すように、ガス導入路となる第1のポーラスPt膜61Aと、第1のポーラスPt膜61A上に配置された第2のポーラスPt膜(多孔質膜)61Bと、第2のポーラスPt膜61Bを覆うように配置された下部電極(柱状Pt/Ti膜)28DBと、下部電極28DBを覆うように配置された固体電解質層30と、下部電極28DBに対向する固体電解質層30上に配置された上部電極28Uとを備える。
第6の実施の形態の第3実施例の変形例3に係る限界電流式ガスセンサ6M1の場合、下部電極28DBによって柱状電極が構成され、第1のポーラスPt膜61Aと第2のポーラスPt膜61Bとによってガス取込部305が構成される。
それ以外の構成は、限界電流式ガスセンサ1Aなどと基本的に同一なので、重複する説明は省略する。
なお、図103(b)に示す限界電流式ガスセンサ6M1のように、MEMS梁構造の基板12のキャビティ部Cは舟型構造に限らず、図104(a)および図104(b)に示す限界電流式ガスセンサ6M2のような開放型構造のキャビティ部Cとしても良い。
いずれの構成によっても、ポーラス膜の温度依存性の改善が容易に可能であり、センサ特性をより安定化させることが可能な限界電流式ガスセンサとすることができる。
なお、いずれの構成の場合も、マイクロヒータMHの下方に熱伝導率の高い低濃度ドープポリシリコン層300を挿入することも可能である。
また、ポーラスPt膜61・61A・61Bに代えて、ポーラスPt/Ti膜を適用するようにしても良い。
(動作原理)
ここで、限界電流式ガスセンサの動作原理について簡単に説明する。
―ガス濃度を検出する動作―
まず、ジルコニア固体電解質を数百度に加熱し、ジルコニア固体電解質に電圧を印加すると、触媒電極でイオン化した酸素イオンが、固体電解質の一方の側から他の側へ伝導する。このとき、小孔や多孔質などを利用して電解質に吸入する酸素ガス量を制限すると、電圧を増加しても電流が一定値になる飽和現象が現れる。この電流は限界電流と呼ばれ、周囲の酸素濃度に比例する。そのため、一定の電圧を印加すれば、流れる電流値から酸素濃度を検出することができる。印加する電圧を切り替えれば、同様の原理で水蒸気の濃度を検出することも可能である。
限界電流式ガスセンサによるガス濃度を検出する動作を示すフローチャートは、図105に示すように表される。また、限界電流式ガスセンサにおいて、ガス濃度検出動作におけるYSZ温度と時間との関係は、模式的に図106に示すように表され、動作原理を説明する模式的断面構造は、図107に示すように表される。
図107において、固体電解質層106を、マイクロヒータMHによって、数百℃、例えば500℃程度に加熟し、上部電極(陰極)105U・多孔質電極(陽極)105D間に電圧Vを印加して電流Iを流すと、上部電極105Uでは、O2 +4e- ⇔2O2-の電気化学反応によって固体電解質層106中へ酸素イオン(O2-)の注入が起こる。
一方、多孔質電極105Dでは、2O2-⇔O2 +4e- の反応によって酸素ガス(O2 ガス)の放出が生じる。
固体電解質層106中において、酸素イオン(O2-)は、ホッピング伝導に基づいて伝播される。ここで、酸素イオン(O2-)のホッピング伝導を説明するエネルギーダイアグラムは、図108に示すように模式的に表される。固体電解質層106に電界Exが印加されると、その効果によって、伝導体の底は−eExだけ傾くことになる。その分だけ、酸素イオン(O2-)の伝導障壁の高さが低下するため、熱励起と共に酸素イオン(O2-)のホッピング伝導が実施される。
固体電解質層106に吸入する酸素ガス量を制限すると、電圧を増加しても、電流が一定値になる飽和現象が現れる。限界電流式ガスセンサにおいて、電流―電圧特性における限界電流は、図109に示すように模式的に表される。すなわち、図109において、期間T2 で現れる電流が酸素ガスに対する限界電流IO を表し、期間T3 で現れる電流が水蒸気に対する限界電流IW を表す。
この限界電流IO ・IW は、周囲の酸素濃度・水蒸気濃度に比例するため、限界電流IO ・IW の値と酸素濃度・水蒸気濃度の値とを予め対応付けて検出回路107に登録しておく。このようにすれば、限界電流IO ・IW の値を測定することにより、それに対応する酸素濃度・水蒸気濃度を検出することができる。
また、上部電極105U・多孔質電極105D間に印加する電圧を切り替えれば、酸素濃度だけでなく、水蒸気濃度を検出することも可能である。
限界電流式ガスセンサを用いてガス濃度を検出する動作を、図105および図106を参照して説明する。
図106において、Tonはヒータオン期間、Toff はヒータオフ期間に相当する。ヒータオン期間Tonに投入される加熱電力は、例えば、約5mWである。
(a)まず、マイクロヒータを用いて、室温から測定温度(例えば、500℃)までセンサを加熱する(図105:ステップS1→S2:NO→S1→・・・)。図106に示すように、例えば、時間t=0〜t=0.1秒の間にYSZ温度Tは、0℃〜約500℃まで上昇する。
(b)測定温度に達したら(図105:ステップS2:YES)、安定するまで一定時間待機する(図105:ステップS3)。図106に示すように、例えば、時間t=0.1秒〜t=0.3秒の待機期間TW にYSZ温度Tは、約500℃に保持される。
(c)次に、上部電極105U・多孔質電極105D間に電圧を印加する(図105:ステップS4)。図106に示すように、例えば、時間t=0.3秒〜t=0.5秒の測定期間TM にYSZ温度Tは、約500℃に保持される。
(d)次に、限界電流の値を測定し、その限界電流に対応するガス濃度を検出する(図105:ステップS5)。
(e)次に、マイクロヒータをオフにして、センサを冷却する。図106に示すように、例えば、時間t=0.5秒〜にYSZ温度Tは、約500℃から室温まで冷却される。
上記に説明した温度サイクルは、例えば、約1分間に1回程度のサイクルで加熱・待機・測定・冷却を繰り返しても良い。
(電気化学反応)
限界電流式ガスセンサにおいて、イオン伝導を説明する模式的断面構造は、図110に示すように表される。
図109および図110を参照して、限界電流式ガスセンサにおける電気化学反応について説明する。
(a)固体電解質層106を、マイクロヒータによって、例えば500℃程度に加熟し、陰極105U・陽極105D間に電圧Vを印加して電流Iを流すと、図109の期間T1 において、電流Iは増加し、限界電流IO に到達する。
図109の期間T1 においては、O2 +4e- ⇔2O2-の電気化学反応によって、固体電解質層106中において、酸素イオンO2-が拡散する。この時、酸素ガスO2 のフロー量の方が酸素イオンO2-が拡散する量よりも大きい。
(b)限界電流IO が保持される図109の期間T2 においては、酸素ガス分子の電気分解反応が実施され、図110に示すように、陰極105Uと固体電解質層106との界面では、O2 +4e- ⇔2O2-の電気化学反応によって固体電解質層106中へ酸素イオンO2-の注入が起こる。
一方、陽極105Dと固体電解質層106との界面では、2O2-⇔O2 +4e- の反応によって、酸素ガスO2 の放出が生じる。
(c)固体電解質層106の温度Tを、例えば500℃程度に保持し、さらに電圧Vを増加すると、電流Iは増加し、図109の期間T3 において、限界電流IW に到達する。
(d)限界電流IW が保持される図109の期間T3 においては、吸着酸素ガスOadの電気分解反応と水蒸気(H2 O)の電気分解反応とが実施される。
ここで、図110に示すように、陰極105Uと固体電解質層106との界面では、O2 +4e- ⇔2O2-の電気化学反応によって固体電解質層106中へ酸素イオンO2-の注入が起こる。また、H2 O+2e- ⇔H2 +O2-の電気化学反応によって、水素の放出が生じる。すなわち、水蒸気(H2 O)が電気分解されて、酸素イオンO2-が固体電解質層106内をホッピング伝導により移動していく。
一方、陽極105Dと固体電解質層106との界面では、吸着酸素ガスOadの電気分解により、2O2-⇔O2 +4e- の反応によって酸素ガスO2 の放出が生じる。同様に、水蒸気(H2 O)の電気分解により、2O2-⇔O2 +4e- の反応によって酸素ガスO2 の放出が生じる。
(e)固体電解質層106の温度Tを、例えば500℃程度に保持し、さらに電圧Vを増加すると、電流Iは増加し、図109の期間T4 において、吸着酸素ガスOadの電気分解反応と水蒸気(H2 O)の電気分解反応とが実施される。さらに、固体電解質層106の電気分解が始まる。
ここで、図110に示すように、陰極105Uと固体電解質層106との界面では、O2 +4e- ⇔2O2-の電気化学反応によって固体電解質層106中へ酸素イオンO2-の注入が起こる。また、H2 O+2e- ⇔H2 +O2-の電気化学反応によって水素の放出が生じる。すなわち、水蒸気(H2O)が電気分解されて、酸素イオンO2−がホッピング伝導により固体電解質層106内を移動していく。
一方、陽極105Dと固体電解質層106との界面では、吸着酸素ガスOadの電気分解により、2O2-⇔O2 +4e- の反応によって酸素ガスO2 の放出が生じる。同様に、水蒸気(H2 O)の電気分解により、2O2-⇔O2 +4e- の反応によって酸素ガスO2 の放出が生じる。
さらに、固体電解質層106の電気分解によって、酸素空孔濃度は、次式OO x ⇔1/2・O2 (g)+VO ..+2e’に基づき、雰囲気酸素分圧との平衡にも依存する。この式は、電子的伝導率は固体と平衡する酸素分圧に依存し、高温では生成系のエントロピーがより大きいことから、高温では反応が右に偏るので温度にも依存することを示している。
(パッケージ)
各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを収容するパッケージの蓋131を示す模式的鳥瞰構成は、図111に示すように表される。図111に示すように、パッケージの蓋131には、ガスは通過可能であるが異物は通さない多数の貫通穴132が形成されている。パッケージの蓋131には、メタルメッシュ、小孔開きメタル、ポーラスセラミックなどを適用可能である。
各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを収容するパッケージの本体141を示す模式的鳥瞰構成は、図112に示すように表される。図112に示すように、パッケージの本体141には、複数の端子を備えた限界電流式ガスセンサのチップ142が収容され、複数のボンディングワイヤ143により電気的に接続されている。パッケージの本体141の上部に蓋131を被せ、半田によりプリント基板などに実装する。
(エナジーハーベスタ電源を用いたセンサノードの構成例)
各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ(センサノード)は、図113に示すように、センサ類151と、無線モジュール152と、マイコン153と、エナジーハーベスタ電源154と、蓄電素子155とを備える。
センサ類151の構成は、各実施の形態として説明した通りである。
無線モジュール152は、無線信号を送受信するRF回路などを備えたモジュールである。
マイコン153は、エナジーハーベスタ電源154のマネジメント機能を備え、エナジーハーベスタ電源154からの電力をセンサ類151に投入する。このとき、マイコン153は、センサ類151における消費電力を省電力化するヒータ電力プロファイルに基づいて電力を投入しても良い。
例えば、相対的に大きな電力である第1の電力を第1の期間T1だけ投入した後、相対的に小さな電力である第2の電力を第2の期間T2だけ投入しても良い。また、第2の期間T2にデータを読み取り、第2の期間T2が経過した後、第3の期間T3だけ電力の投入を停止しても良い。
エナジーハーベスタ電源154は、太陽光や照明光、機械の発する振動、熱などのエネルギーを採取し、電力を得る。
蓄電素子155は、電力を蓄電することが可能なリチウムイオン蓄電素子などである。
以下、このようなセンサノードの動作について説明する。
まず、図113中の(1)に示すように、エナジーハーベスタ電源154からの電力がマイコン153に供給される。これにより、マイコン153は、図113中の(2)に示すように、エナジーハーベスタ電源154からの電圧を昇圧する。
次に、図113中の(3)に示すように、蓄電素子155の電圧を読み取った後、図113中の(4)・(5)に示すように、蓄電素子155への電力供給や、蓄電素子155からの電力引き出しを行う。
次に、図113中の(6)に示すように、ヒータ電力プロファイルに基づいてセンサ類151に電力を投入し、図113中の(7)に示すように、センサ抵抗値およびPt抵抗値などのデータを読み取る。
次に、図113中の(8)に示すように、無線モジュール152に電力を供給し、図113中の(9)に示すように、センサ抵抗値およびPt抵抗値などのデータを無線モジュール152に送る。
最後に、図113中の(10)に示すように、無線モジュール152によってセンサ抵抗値およびPt抵抗値などのデータが無線送信される。
(センサパッケージ:ブロック構成)
各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを搭載するセンサパッケージ96の模式的ブロック構成は、図114に示すように表される。
各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを搭載するセンサパッケージ96は、図114に示すように、温度センサ用のサーミスタ部90と、湿度・酸素センサ用のYSZセンサ部92と、サーミスタ部90・YSZセンサ部92からのアナログ情報SA2 ・SA1 を受信し、またサーミスタ部90・YSZセンサ部92への制御信号S2・S1を供給するAD/DA変換部94と、外部からのディジタル入出力信号DI・DOとを備える。
サーミスタ部90は、例えば、NTCサーミスタ、PTCサーミスタ、セラミックPTC、ポリマーPTC、CTRサーミスタなどを適用可能である。
YSZセンサ部92には、各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを適用可能である。YSZセンサ部92においては、絶対湿度(Absolute Humidity)や相対湿度(RH:Relative Humidity)も測定可能であるが、特に相対湿度(RH)の検出では、温度が基準になるため、サーミスタ部90で検出した温度情報が必要となる。
(センサネットワーク)
各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを適用したセンサネットワークシステムの模式的ブロック構成は、図115に示すように表される。
図115に示すように、センサネットワークとは、多数のセンサを相互に接続したネットワークである。すでに、工場、医療/ヘルスケア、交通、建設、農業、環境管理など、様々な分野でセンサネットワークを利用した新しい取り組みが始まっている。
これらの分野では、高耐久性と共に、応答速度の速いセンサを使用することが望まれるため、各実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを、例えば湿度センサとして適用するのが望ましい。このような湿度センサは、ジルコニアを使用しているため、耐久性に優れている。そのため、信頼性の高いセンサネットワークを提供することが可能である。
(第7〜第9の実施の形態)
(第7の実施の形態)
(概略構成)
第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aのセンサ部分の模式的平面パターン構成は、図116(a)に示すように表され、図116(a)のIA−IA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ部分の模式的断面構造は、図116(b)に示すように表される。
すなわち、第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図116(a)および図116(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(Ti/Pt電極)5Dと、多孔質電極5D上に形成されたPt+YSZ混粒膜(粒子混合層)11と、Pt+YSZ混粒膜11を囲うように配置された固体電解質層(YSZ薄膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(Pt電極)5Uとを備える。
なお、Ptは、多孔質材料としての白金(Platinum)であり、Tiは、電極材料としてのチタン(Titanium)であり、YSZは、固体電解質材料としてのイットリウム安定化ジルコニア(Yttria-Stabilized Zirconia)である。
また、この限界電流式ガスセンサ1Aは、図116(a)および図116(b)に示すように、少なくともセンサ部分の、多孔質電極5D、Pt+YSZ混粒膜11、固体電解質層4、および緻密電極5Uを覆うようにして配置された多孔質膜(多孔質層)13を備える。多孔質膜13は、例えば、5μm程度の厚さとなるように、Al2 O3 -SiO2 などを用いて形成される。
さらに、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図116(a)および図116(b)に示すように絶縁層3を有し、この絶縁層3にパターニングされた開口部3b・3bにおいて、多孔質電極5Dの延出端側が一方の検出端子2bに接続され、緻密電極5Uの延出端(第2の緻密電極部)側が他方の検出端子2bに接続されている。絶縁層3は、例えばSiON膜(シリコン膣化膜)が1μmの厚さで形成される。
検出端子2b・2bは、400nm程度の厚さのポリシリコン層であって、イオン注入によって後述するマイクロヒータ2よりも高濃度に形成される。
ここで、緻密電極5Uは、センサ部分における固体電解質層4のPt+YSZ混粒膜11に対向する面を第1の緻密電極部とし、この第1の緻密電極部の一部を部分的に含み、第1の緻密電極部の一部より延出する延出部分を第2の緻密電極部とし、第1の緻密電極部をPt(第1の電極材料)によって、第2の緻密電極部をTi(第2の電極材料)/Ptの積層膜によって形成するようにしても良い。
多孔質電極5Dは、Ti/Ptの積層膜によって、例えば、厚さは約0.1μm以上で形成される。薄いと、Ptが凝集して絶縁化するためである。なお、多孔質電極5Dの形成には、孔径数μm程度のポーラスPtを用いることも可能である。
固体電解質層4は、厚さ約0.3μm以上のYSZで形成される。薄いと、上下の電極5D・5U間が導通してしまうためである。例えば、固体電解質層4は、Pt+YSZ混粒膜11の外周部と、Pt+YSZ混粒膜11が形成された側の多孔質電極5Dの端部とを覆うようにして配置され、Pt+YSZ混粒膜11を含む、上下の電極5D・5U間の導通が防がれる。
Pt+YSZ混粒膜11は、固体電解質層4と多孔質電極5Dとの界面に配置され、例えば、厚さは約10nm〜1000nmで形成される。Pt+YSZ混粒膜11は、Pt粒子とYSZ粒子とが互いに粒子の形状を保ったまま混在することで、例えば、固体電解質層4および多孔質電極5D間のセンサ部分でのガス濃度検出時における酸素(O)の応答速度の改善が可能である(詳細については、後述する)。
MEMS梁構造の基板12は、平面視において、センサ部分を取り囲むように配置されており、例えば、約2μm厚のSiON膜などで形成される。
ここで、緻密電極5Uは、固体電解質層4の多孔質電極5DおよびPt+YSZ混粒膜11に対向する面に接触して配置され、図示せぬ金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路(図示せず)を有する。
例えば、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、電極5D・5U自体をナノ構造に形成している。すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)を混ぜたPtを焼結し、最後にCNTを焼き飛ばして微細ガス導入路を形成した金属粒子焼結層(緻密Pt)を緻密電極5Uとして適用しても良い。CNTの代わりに、カーボンナノ粒子を適用しても良い。
緻密Ptで形成された緻密電極5Uの厚さは、例えば、約0.1μm以上である。薄すぎると、Ptが凝集して絶縁化するためである。
なお、緻密電極5Uにおける微細ガス導入路は、例えば、金属粒子焼結層に含有されるナノメートルスケールを有するナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子などの熱処理工程もしくは熱処理工程と組み合わせたエッチング処理工程によって形成可能である。ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子は、例えば、炭素(C)、酸化亜鉛(ZnO)などによって形成可能である。
すなわち、緻密電極5Uにおける金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成される微細ガス導入路については、ここでの詳細な説明は割愛するが、金属粒子焼結層は、ナノワイヤを備えていても良い。ナノワイヤは、CNTもしくはZnOを備えていても良い。また、金属粒子焼結層は、カーボンナノチューブもしくはカーボンナノ粒子を備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼により、カーボンナノナノチューブもしくはカーボンナノ粒子が燃焼されることによって形成されていても良い。また、金属粒子焼結層は、ZnOを備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼後、ウェットエッチングによりZnOがエッチングされることによって形成されていても良い。
さらには、金属粒子焼結層の金属粒子は、Pt、Ag、Pd、Au、もしくはRuのいずれかを備えていても良い。また、金属粒子焼結層は、金属粒子焼結層中に閉じ込められて大気中での燃焼により、燃焼されないナノワイヤを備えていても良い。ナノワイヤもしくはナノ粒子は、直径が約0.1μm以下を備える。また、ナノワイヤの長さは、例えば、約10μm以下である。ナノワイヤを使用するメリットは、ナノワイヤの形状(径、長さ)によりガス透過量制御が可能であり、また、ナノワイヤの割合によりガス透過量制御が可能なことである。
このように、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、緻密電極5Uの微細ガス導入路の形状によりガス透過量制御可能である。
また、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、緻密電極5Uの微細ガス導入路の含有割合によりガス透過量制御可能である。
一方、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図116(a)および図116(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12上に配置された絶縁層(例えば、1μm厚のSiON膜)1aをさらに備え、少なくともセンサ部分の絶縁層1aと絶縁層3との間には、検出端子2b・2bと同層において、加熱用のマイクロヒータ2が埋め込まれている。マイクロヒータ2は、400nm程度の厚さのポリシリコン層(ポリシリコンヒータ)であって、イオン注入により抵抗値が300Ω程度とされる。マイクロヒータ2は、電極層2a・2aにつながるヒータ用電極部(Ti/Pt積層膜)9・9間に所定電圧が印加されることによって、固体電解質層4を加熱する。なお、マイクロヒータ2は、印刷により形成されたPtヒータなどによっても形成可能である。
本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、両持梁構造のMEMS素子構造を基本構造とすることによって、センサ部分の熱容量を低減化し、センサ感度の向上を図っている。
本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、マイクロヒータ2は、基板12の上部である基板12と多孔質電極5Dとの相互間に絶縁層1a・3を介して配置される場合に限らず、多孔質電極5Dの形成面側に対向する絶縁層1aの下面、または基板12の下部に配置されていても良い。また、マイクロヒータ2は、基板12の内部に埋め込まれていても良い。もしくは、基板12の表面に、ポリシリコンで形成されたマイクロヒータ2を含むシリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜103が形成された構成としても良い(例えば、図148参照)。
本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、図116(a)および図116(b)に示すように、例えば、緻密電極5Uと多孔質電極5Dとに供給する検出用の電圧を検出端子2b・2b間に印加することにより、被測定ガス内における所定のガス濃度を限界電流式で検出する検出回路107が接続される。
検出回路107は、限界電流に基づいて酸素濃度を検出することができる。また、検出回路107は、限界電流に基づいて水蒸気濃度を検出することができる。
なお、検出端子2b・2bとヒータ用電極部9・9とは、互いの延出方向がほぼ直交するように配置されている。
本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、多孔質電極5Dと固体電解質層4との相互間にPt+YSZ混粒膜11を配置したことにより、センサ部分でのガス濃度検出時における酸素ガス(O2 )中の酸素の応答速度の改善が可能である。
(基本構造)
第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの要部の基本的な断面構造は、図117に示すように表される。
すなわち、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aのセンサ部分の基本構成は、図117に示すように、シリコン基板12と、シリコン基板12上にPtとTiの積層膜を用いて形成されたTi/Pt電極5Dと、Ti/Pt電極5Dの上面部に、YSZを用いて形成されたYSZ薄膜4と、YSZ薄膜4とTi/Pt電極5Dとの間の界面に配設されたPt+YSZ混粒膜(粒子混合層)11と、YSZ薄膜4の、少なくともPt+YSZ混粒膜11に対向する面に配置されたPt電極5Uとを備える。
また、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aのセンサ部分の基本構成としては、図117に示すように、Pt電極5Uの、少なくともYSZ薄膜4およびPt+YSZ混粒膜11に対向する面を覆うようにして配置されたAl2 O3 -SiO2 膜13を備えるようにしても良い。
Pt+YSZ混粒膜11の基本的な模式的断面構造、および、Pt+YSZ混粒膜11の一部(図中の丸印の部分)を拡大して示す模式的断面構造は、図118(a)に示すように表される。
Pt+YSZ混粒膜11は、図118(a)に示すように、Ptが粒子の形状を保ったまま主に存在する層(Pt領域)11aと、YSZが粒子の形状を保ったまま主に存在する層(YSZ領域)11bとが入れ子の状態で混在する領域であって、層11aと層11bとが接する境界部分においては、Pt粒子とYSZ粒子とが隣接した状態となっている。
理想的には、図118(b)に示すように、層11aのPt粒子と層11bのYSZ粒子とが相互により多く混在し、混在する面積がより向上するように、YSZ薄膜4とTi/Pt電極5Dとが積層される。なお、層11bとしては、図118(c)に示すように、層11a側に突出した先端部分が折り返す構造や、突出した層11bの一部が枝状に分岐した構造などを有していても良い。
要するに、Pt+YSZ混粒膜11は、YSZ薄膜4とTi/Pt電極5Dとの間に層11aと層11bとを積層させることによって形成されるものであって、層11aと層11bとが混在する面積をより向上させることで、より高精度なセンシングが可能となる。
また、層11aおよび層11bの積層によって形成されるものに限らず、積層されたYSZ薄膜4とTi/Pt電極5Dとをアニール処理することによっても、入れ子の状態を形成可能である。
さらに説明すると、上記のような構成を有するPt+YSZ混粒膜11の基本的な機能は、図119(a)に示すように表される。なお、図119(b)は、比較のために、Pt粒子とYSZ粒子とが隣接した状態で存在しない場合を模式的に示すものである。
図119(a)に示すように、Pt粒子とYSZ粒子とが隣接して存在する場合にPt粒子とYSZ粒子との間を移動する酸素(O)の移動距離LCは、図119(b)に示すように、Pt粒子とYSZ粒子とが隣接しない場合にPt粒子とYSZ粒子との間を移動する酸素(O)の移動距離LNよりも短くなる。
すなわち、Pt粒子とYSZ粒子とが隣接して存在するPt+YSZ混粒膜11の場合、YSZ粒子と接するPt粒子が増加することによって、酸素(O)の移動時間の短縮化が可能となるため、より高精度なセンシングを実現できる。
図120は、第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1AにおけるPt+YSZ混粒膜11の基本特性を説明するために、マイクロヒータ2の測定温度を550℃とした場合の、時間(Time)とアノード(A)/カソード(K)間を流れる電流値(1時間後の電流値I/It=3600)との関係を対比して示すものである。
図120からも明らかなように、Pt+YSZ混粒膜11を設けない場合(WO11)に比較して、Pt+YSZ混粒膜11を設けた場合(W11)の方が、電流値が「1」に収束するまでの時間の短縮化が可能である。
したがって、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、Pt+YSZ混粒膜11を設けたことによって、固体電解質層4および多孔質電極5D間のセンサ部分でのガス濃度検出時における酸素の応答速度の向上が可能であり、限界電流式ガスセンサ1Aとしての応答速度を改善できる。
(製造方法)
第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、センサ部分に対応するシリコン基板12上にPtとTiの積層膜を用いてTi/Pt電極5Dを形成する工程と、Ti/Pt電極5D上の少なくともセンサ部分に、Ptの粒子およびYSZの粒子が混在するPt+YSZ混粒膜(粒子混合層)11を形成する工程と、少なくともPt+YSZ混粒膜11を覆うように、Ti/Pt電極5D上にYSZ薄膜4を形成する工程と、YSZ薄膜4の上面部を含んで、少なくともPt+YSZ混粒膜11に対向する面にPt電極5Uを形成する工程とを有する。
より詳しくは、図116(a)および図116(b)に示した第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図121〜図128に示すように表される。
(a)まず、図121(a)および図121(b)に示すように、約10μm厚のシリコン基板12を用意し、そのシリコン基板12の上面にプラズマCVD(P−CVD)法により約1μm厚のSiON膜1aを形成する。
(b)次いで、図122(a)および図122(b)に示すように、SiON膜1a上に400nm程度の厚さのポリシリコン層を形成すると共に、そのポリシリコン層をエッチングなどによりパターニングして、検出端子2b・2bとマイクロヒータ2とマイクロヒータ2につながる電極層2a・2aとを互いに直交する方向に形成する。また、イオン注入法により、マイクロヒータ2は、電極層2a・2a間の抵抗値が300Ωとなるように設定され、検出端子2b・2bおよび電極層2a・2aは、マイクロヒータ2よりも高濃度に形成される。
(c)次いで、図123(a)および図123(b)に示すように、全面にP−CVD法により約1μm厚のSiON膜3を形成する。そして、そのSiON膜3をパターニングして開口部3a・3bを形成し、検出端子2b・2bおよびマイクロヒータ2につながる電極層2a・2aの一部を選択的に露出させる。
(d)次いで、図124(a)および図124(b)に示すように、スパッタ法などにより500nm厚のTi/Pt電極5Dおよびヒータ用電極部9・9を形成し、センサ部分より延びるTi/Pt電極5Dの延出端はSiON膜3の開口部3bに露出する一方の検出端子2bに、ヒータ用電極部9・9はSiON膜3の開口部3aに露出する電極層2a・2aに、それぞれ接続させる。
(e)次いで、図125(a)および図125(b)に示すように、スパッタ法により2nm厚のYSZ膜と2nm厚のPt膜の積層膜を形成した後、1000℃でアニール処理を行って、センサ部分のTi/Pt電極5D上にPt+YSZ混粒膜11を形成する。
なお、Pt+YSZ混粒膜11は、YSZ粒子とPt粒子の混合ペーストを用い、印刷および焼結の処理を行うことによっても形成することが可能である。
(f)次いで、図126(a)および図126(b)に示すように、リフトオフ工程によりYSZ薄膜4を0.5μmの厚さで形成し、YSZ薄膜4によってセンサ部分のTi/Pt電極5DおよびPt+YSZ混粒膜11の周囲を被覆する。
(g)次いで、図127(a)および図127(b)に示すように、緻密電極5Uとして、スパッタ法によりセンサ部分におけるYSZ薄膜4のPt+YSZ混粒膜11に対向する面(第1の緻密電極部)にPt膜5Ptを形成した後、このPt膜5Ptの一部を含んで、SiON膜3の開口部3bに露出する他方の検出端子2bに接続される延出端(第2の緻密電極部)をTi/Ptの積層膜5Tiによって形成する。緻密電極5Uは、Pt膜5PtおよびTi/Ptの積層膜5Tiの膜厚が100nm程度となるように形成される。
なお、緻密電極5Uは、Ti/Ptの積層膜5Tiを形成した後に、Pt膜5Ptの形成を行うことによって形成するようにしても良い。
(h)次いで、図128(a)および図128(b)に示すように、センサ部分に対応するシリコン基板12を選択的にエッチングし、MEMS梁構造の基板12を構成するキャビティC(Cavity:空洞)を形成する。キャビティCとしては、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aのサイズにもよるが、300μm×300μm程度が望ましい。
(i)この後、センサ部分を覆うように、5μm程度の厚さのポーラス膜(例えば、Al2 O3 -SiO2 膜)13を印刷によって形成することにより、図116(a)および図116(b)に示した構成を有する、第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aが完成する。
以上のように、第7の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、Pt+YSZ混粒膜11を配置したことにより、ガス濃度検出時の応答速度を改善できる。
(第8の実施の形態)
(概略構成)
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの模式的平面パターン構成は、図129に示すように表され、要部の拡大された模式的平面パターン構成は、図130に示すように表され、図130のIIA−IIA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ部分の模式的断面構造は、図131に示すように表される。
すなわち、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図129〜図131に示すように、MEMS梁構造の基板12と、基板12上に配置された多孔質電極5Dと、多孔質電極5D上に形成されたPt+YSZ混粒膜(粒子混合層)11と、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に配置された固体電解質層4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置され、図示せぬ金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路(図示せず)を有する緻密電極5Uとを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ1Aは、図131に示すように、多孔質電極5D上にPt+YSZ混粒膜11を介して配置された絶縁膜8を有し、この絶縁膜8にパターニングされた開口部7のPt+YSZ混粒膜11上および開口部7を取り囲む絶縁膜8上に固体電解質層4が配置されている。
また、この限界電流式ガスセンサ1Aは、図131に示すように、基板12上に配置された絶縁層3を備え、多孔質電極5Dは絶縁層3上に配置されていても良い。
多孔質電極5Dは、多孔質材料である、孔径数μm程度のポーラスPtで形成され、例えば、厚さは約1μm以上であり、Ptが凝集して絶縁化するのを防ぐ。なお、多孔質電極5Dは、Ti/Ptの積層膜によって形成することもできる。
固体電解質層4は、固体電解質材料である、厚さ約4μm以上のYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia)で形成される。薄いと、上下の電極5D・5U間が導通してしまうためである。
MEMS梁構造の基板12は、例えば、約10μm厚のシリコン基板で形成される。
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、電極5D・5U自体をナノ構造に形成している。すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)を混ぜたPtを焼結し、最後にCNTを焼き飛ばして微細ガス導入路を形成した金属粒子焼結層(緻密Pt)を緻密電極5Uとして適用する。CNTの代わりに、カーボンナノ粒子を適用しても良い。
緻密Ptで形成された緻密電極5Uの厚さは、例えば、約1μm以上である。薄すぎると、Ptが凝集して絶縁化するためである。
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、緻密電極5Uにより酸素ガスの取り込みを制御可能であるため、良好な限界電流特性が得られ、検出感度の向上した限界電流式ガスセンサを提供することができる。
ここで、緻密電極5Uとなる金属粒子焼結層は、CNTもしくはカーボンナノ粒子を備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼により、CNTもしくはカーボンナノ粒子が燃焼されることによって形成されていても良い。
また、金属粒子焼結層は、酸化亜鉛(ZnO)を備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼後、ウェットエッチングによりZnOがエッチングされることによって形成されていても良い。
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、微細ガス導入路の形状によりガス透過量制御可能である。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、微細ガス導入路の含有割合によりガス透過量制御可能である。
金属粒子焼結層の金属粒子は、Pt、Ag、Pd、Au、もしくはRuのいずれかを備えていても良い。
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図129に示すように、緻密電極5Uと多孔質電極5Dとの間に電圧を印加することにより、被測定ガス内における所定のガス濃度を限界電流式で検出する検出回路107を備える。ここで、検出回路107は、限界電流に基づいて酸素濃度を検出することができる。また、検出回路107は、限界電流に基づいて水蒸気濃度を検出することができる。
しかも、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、Pt+YSZ混粒膜11を設けたことによって、ガス濃度検出時における酸素の応答速度の向上が可能であり、限界電流式ガスセンサ1Aとしての応答速度を改善できる。
なお、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図129〜図131に示すように、緻密電極5U上に配置された第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U)と、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に配置された第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D)と、固体電解質層4上に配置された第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)とを備えていても良い。
また、本実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図129〜図131に示すように、平面視において、第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U)と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、緻密電極5U上に配置された第1反り抑制用多孔質絶縁膜10(5U)と、平面視において、第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D)と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、多孔質電極5D上にPt+YSZ混粒膜11を介して配置された第2反り抑制用多孔質絶縁膜10(5D)とを備えていても良い。
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図129〜図131に示すように、両持梁構造のMEMS素子構造を基本構造として備える。詳細構造は後述するが、中央部にはセンサ部分が配置され、両持梁構造の梁部分には、センサ部分に接続された多孔質電極5Dと緻密電極5Uとが配置され、多孔質電極5D・緻密電極5U間には、検出回路107が接続されている。
中央部のセンサ部分には、加熱用のマイクロヒータ2が埋め込まれており、両持梁構造のMEMS素子構造を基本構造とすることによって、中央部のセンサ部分の熱容量を低減化し、センサ感度の向上を図っている。
この第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、基板12は、図131に示すように、マイクロヒータ2を備える。マイクロヒータ2は、基板12の上部もしくは基板12の下部に配置されていても良い。また、マイクロヒータ2は、図131に示すように、基板12の内部に埋め込まれていても良い。マイクロヒータ2は、例えば、印刷により形成されたPtヒータ、またはポリシリコンヒータで形成可能である。また、基板12の表面には、ポリシリコンで形成されたマイクロヒータ2を含むシリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜103が形成されていても良い(例えば、図148参照)。
多孔質電極5D・緻密電極5Uは、多孔質のPt電極で形成可能である。多孔質のPt電極は、印刷、蒸着、もしくはスパッタにより形成可能である。多孔質電極5D・緻密電極5Uの厚さは、例えば、約0.1μm〜10μm程度である。
絶縁膜8は、Al2 O3 、Al2 O3 −SiO2 、YSZ−SiO2 、もしくはYSZ−Al2 O3 のいずれかで形成可能である。絶縁膜8は、印刷工程、もしくはスパッタリング工程により形成可能である。絶縁膜8の厚さは、例えば、約1.0μm〜10μm程度である。
固体電解質層4は、YSZ、YSZ−SiO2 、もしくはYSZ−Al2 O3 の少なくとも一つが含まれる安定化ジルコニア(YSZ)膜で形成可能である。固体電解質層4は、印刷工程もしくはスパッタリング工程により形成可能である。固体電解質層4の厚さは、例えば、約0.1μm〜10μm程度である。
応力緩和用低熱膨張膜6は、検出するガス量によって、膜密度を調整可能である。この応力緩和用低熱膨張膜6は、緻密膜、多孔質膜、もしくは緻密膜と多孔質膜の複合膜のいずれかで形成可能である。
また、応力緩和用低熱膨張膜6は、SiO2 、Al2 O3 、YSZ、もしくはムライトの少なくとも一種類を含む材料で形成されていても良い。また、応力緩和用低熱膨張膜6は、印刷工程もしくはスパッタリング工程により形成可能である。応力緩和用低熱膨張膜6の厚さは、例えば、約1.0μm〜5.0μm程度である。
反り抑制用多孔質絶縁膜10は、SiO2 、Al2 O3 、YSZ、もしくはムライトの少なくとも一種類を含む材料で形成されていても良い。また、反り抑制用多孔質絶縁膜10は、印刷工程もしくはスパッタリング工程により形成可能である。反り抑制用多孔質絶縁膜10の厚さは、例えば、約1.0μm〜5.0μm程度である。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、基板12は、MEMS梁構造を備えていても良い。基板12は、厚さ10μm以下、望ましくは2μm以下のシリコン基板で形成可能である。MEMSを応用すれば、基板12の厚さを2μm以下にすることができるため、熱容量が小さくなり、マイクロヒータ2での消費電力を低減することが可能である。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図129〜図131に示すように、基板12に形成されたキャビティC(Cavity:空洞)上に両持ちの梁構造体として形成されている。梁構造体は、MEMSにより形成された厚さ10μm以下、望ましくは2μm以下の梁構造体である。
絶縁層3は、Al2 O3 、Al2 O3 −SiO2 、YSZ−SiO2 、もしくはYSZ−Al2 O3 のいずれかが含まれる多孔質膜で形成可能である。絶縁層3は、ガス取り込み膜として機能し、印刷工程もしくはスパッタリング工程により形成可能である。ここで、絶縁層3の厚さは、例えば、約0〜10μm程度である。絶縁層3は、必ずしも備えていなくても良い。その場合には、多孔質のPt電極で形成可能な多孔質電極5Dをガス取り込み膜として利用することができる。
このような限界電流式ガスセンサ1Aは、MEMS以外の方法により製造されても良い。この場合のシリコン基板12の厚さは、例えば600μm程度である。
(製造方法)
第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図132〜図136に示すように、基板12上に多孔質電極(ポーラスPt)5Dを形成する工程と、多孔質電極5D上にPt粒子およびYSZ粒子が混在するPt+YSZ混粒膜(粒子混合層)11を形成する工程と、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に絶縁膜8を形成する工程と、絶縁膜8をパターニングして開口部7を形成する工程と、開口部7のPt+YSZ混粒膜11上および開口部7を取り囲む絶縁膜8上に固体電解質層(YSZ薄膜)4を形成する工程と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に緻密電極(Pt電極)5Uを形成する工程とを有する。
図示していないが、緻密電極5Uは、金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路を備える。
なお、Pt+YSZ混粒膜11は、例えば、開口部7に対応する多孔質電極5Dの少なくとも一部にのみ選択的に形成されるものであっても良い。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図137に示すように、緻密電極5U上に第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U)を形成し、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D)を形成し、固体電解質層4上に第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)を形成する工程を有する。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図138に示すように、平面視において、第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U)と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、緻密電極5U上に第1反り抑制用多孔質絶縁膜10(5U)を形成する工程と、平面視において、第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D)と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に第2反り抑制用多孔質絶縁膜10(5D)を形成する工程とを有する。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図139に示すように、基板12を図示矢印方向にエッチングして、基板12に形成されたキャビティC上に両持ちの梁構造体を形成する工程を有する。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、基板12の上部もしくは基板12の下部にマイクロヒータ2を形成する工程を有していても良い。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、基板12の内部に埋め込まれたマイクロヒータ2を形成する工程を有していても良い。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、基板12上に絶縁層3を形成する工程を有し、絶縁層3上に多孔質電極5Dを形成しても良い。
また、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法において、マイクロヒータ2、絶縁層3、多孔質電極5D、緻密電極5U、絶縁膜8、固体電解質層4、応力緩和用低熱膨張膜6(6(4)・6(5U)・6(5D))、反り抑制用多孔質絶縁膜10(10(5U)・10(5D))、およびPt+YSZ混粒膜11は、印刷工程により形成可能である。
次に、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法について、図132〜図139を参照して説明する。
(a)まず、図132(a)および図132(b)に示すように、マイクロヒータ2を埋め込んだ基板12上に絶縁層3を形成する。ここで、絶縁層3は、多孔質膜であることから、ガスの通り道となる。なお、絶縁層3の形成を省略しても良い。
(b)次に、図133(a)および図133(b)に示すように、絶縁層3および基板12上に多孔質電極5Dを形成する。多孔質電極5Dは、例えば、ポーラスPt電極によって形成されるため、このポーラスPt電極中をガスが通るようにしても良い。
また、多孔質電極5Dを形成した後、例えば、その上面にPt+YSZ混粒膜11を形成する。Pt+YSZ混粒膜11は、例えば、スパッタ法により2nm厚のYSZ膜と2nm厚のPt膜の積層膜を形成した後に、1000℃でアニール処理を行うか、もしくはYSZ粒子とPt粒子の混合ペーストを用い、印刷および焼結の処理を行うことによって形成することができる。
(c)次に、図134(a)および図134(b)に示すように、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に絶縁膜8を形成した後、絶縁膜8をパターニングして開口部7を形成する。
ここで、多孔質電極5Dの上面の一部分にPt+YSZ混粒膜11を形成するようにした場合、絶縁膜8を形成することによって、安定化ジルコニア(固体電解質層4)/ポーラスPt電極(多孔質電極5D)間の接触面積の安定化を図り、安定化ジルコニア(固体電解質層4)の端面とポーラスPt電極(多孔質電極5D)との接触をなくし、また、ポーラスPt電極(多孔質電極5D)とPt電極(緻密電極5U)との間の電流リーク成分を除去することができる。
(d)次に、図135(a)および図135(b)に示すように、開口部7のPt+YSZ混粒膜11上および開口部7を取り囲む絶縁膜8上に固体電解質層4を形成する。固体電解質層4は、例えば、ここではYSZで形成される。
(e)次に、図136(a)および図136(b)に示すように、固体電解質層4上に、多孔質電極5Dに対向し、基板12に対して実質的に縦方向に緻密電極5Uを形成する。緻密電極5Uは、図136(a)に示すように、絶縁膜8・絶縁層3・基板12上にも延伸して形成される。緻密電極5Uは、例えば、ポーラスPt電極によって形成される。
(f)次に、図137(a)および図137(b)に示すように、緻密電極5U上に第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U)を形成し、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D)を形成し、固体電解質層4上に第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)を形成する。応力緩和用低熱膨張膜6は、検出するガス量によって、膜密度を調整可能である。
また、応力緩和用低熱膨張膜6は、緻密膜、多孔質膜、もしくは緻密膜と多孔質膜との複合膜のいずれかで形成可能である。また、応力緩和用低熱膨張膜6は、SiO2 、Al2 O3 、YSZ、もしくはムライトの少なくとも一種類を含む材料で形成される。
また、応力緩和用低熱膨張膜6は、印刷工程もしくはスパッタリング工程により形成可能である。応力緩和用低熱膨張膜6は、低熱膨張係数の絶縁膜であり、応力緩和用低熱膨張膜6を形成することによって、加熱時の応力を緩和することができる。
(g)次に、図138(a)および図138(b)に示すように、第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U)と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、緻密電極5U上に第1反り抑制用多孔質絶縁膜10(5U)を形成すると共に、第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D)と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、多孔質電極5D上に第2反り抑制用多孔質絶縁膜10(5D)を形成する。反り抑制用多孔質絶縁膜10は、SiO2 、Al2 O3 、YSZ、もしくはムライトの少なくとも一種類を含む材料で形成される。
また、反り抑制用多孔質絶縁膜10は、印刷工程もしくはスパッタリング工程により形成可能である。反り抑制用多孔質絶縁膜10を形成することによって、加熱時の梁構造の反りを小さくし、耐久性を向上することができる。
(h)次に、図139に示すように、基板12を裏面から図示矢印方向にエッチングする。これにより、図129〜図131に示すように、基板12に形成されたキャビティC上に両持ちの梁構造体が形成される。このように、梁構造を形成することによって、センサ部分の熱容量を低減し、かつ熱伝導を低減することができる。結果として、加熱時の低消費電力化が可能である。
以上のように、第8の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによっても、第7の実施の形態と同様に、Pt+YSZ混粒膜11を配置したことにより、ガス濃度検出時の応答速度を改善できる。
(第9の実施の形態)
(概略構成)
第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの模式的平面パターン構成は、図140に示すように表わされる。図129に示した第8の実施の形態においては、両持梁構造の4本のアームの内、片側2本のアームの一方のアームにのみ多孔質電極5D・多孔質電極5Uを配置した例を示した。
これに対し、第9の実施の形態においては、図140に示すように、両持梁構造の4本のアームの内、片側2本のアームの両方のアームに多孔質電極5D1 ・5D2 ・緻密電極5U1 ・5U2 を配置している。また、多孔質電極5D1 ・5D2 は、互いに電気的に接続されている。同様に、緻密電極5U1 ・5U2 も互いに電気的に接続されている。
第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図140に示すように、基板12と、基板12上に配置された多孔質電極5D1 ・5D2 と、少なくともセンサ部分の多孔質電極5D上に形成されたPt+YSZ混粒膜(粒子混合層)11と、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に配置された絶縁膜8(図示省略)と、絶縁膜8にパターニングされた開口部7(図示省略)のPt+YSZ混粒膜11上および開口部7を取り囲む絶縁膜8上に配置された固体電解質層4と、多孔質電極5D1 ・5D2 に対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置され、金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路を備える緻密電極5U1 ・5U2 とを備える。
また、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図140に示すように、緻密電極5U1 ・5U2 と多孔質電極5D1 ・5D2 との間に電圧を印加することにより、被測定ガス内における所定のガス濃度を限界電流式で検出する検出回路107を備える。ここで、検出回路107は、限界電流に基づいて酸素濃度を検出することができる。また、検出回路107は、限界電流に基づいて水蒸気濃度を検出することができる。
しかも、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、Pt+YSZ混粒膜11を設けたことによって、ガス濃度検出時における酸素の応答速度の向上が可能であり、限界電流式ガスセンサ1Aとしての応答速度を改善できる。
なお、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図140に示すように、緻密電極5U1 ・5U2 上に配置された第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U1 )・6(5U2 )と、多孔質電極5D1 ・5D2 上に配置された第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D1 )・6(5D2 )と、固体電解質層4上に配置された第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)とを備えていても良い。
また、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図140に示すように、平面視において、第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U1 )・6(5U2 )と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、緻密電極5U1 ・5U2 上に配置された第1反り抑制用多孔質絶縁膜10(5U1 )・10(5U2 )と、平面視において、第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D1 )・6(5D2 )と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、多孔質電極5D1 ・5D2 上に配置された第2反り抑制用多孔質絶縁膜10(5D1 )・10(5D2 )とを備えていても良い。
また、基板12上に配置された絶縁層3を備え、絶縁層3上に多孔質電極5D1 ・5D2 を配置しても良い。
その他の構成は、第8の実施の形態と同様である。
(製造方法)
第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図141〜図144に示すように、基板12上に多孔質電極5D・5D1 ・5D2 を形成する工程(図141)と、多孔質電極5D上にPt+YSZ混粒膜11を形成する工程と、Pt+YSZ混粒膜11が形成された多孔質電極5D上に絶縁膜8を形成する工程と、絶縁膜8をパターニングして開口部7を形成する工程(図142)と、開口部7のPt+YSZ混粒膜11上および開口部7を取り囲む絶縁膜8上に固体電解質層4を形成する工程(図143)と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に、金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路を備える緻密電極5U・5U1 ・5U2 を形成する工程(図144)とを有する。
また、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図145に示すように、緻密電極5U1 ・5U2 上に第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U1 )・6(5U2 )を形成し、多孔質電極5D1 ・5D2 上に第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D1 )・6(5D2 )を形成し、固体電解質層4上に第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)を形成する工程を有する。
また、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図146に示すように、平面視において、第1応力緩和用低熱膨張膜6(5U1 )・6(5U2 )と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、緻密電極5U1 ・5U2 上に第1反り抑制用多孔質絶縁膜10(10(5U1 )・10(5U2 ))を形成する工程と、平面視において、第2応力緩和用低熱膨張膜6(5D1 )・6(5D2 )と第3応力緩和用低熱膨張膜6(4)との間に跨って、多孔質電極5D1 ・5D2 上に第2反り抑制用多孔質絶縁膜10(10(5D1 )・10(5D2 ))を形成する工程とを有する。
また、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図140に示すように、基板12をエッチングして、基板12に形成されたキャビティC上に両持ちの梁構造体を形成する工程を有する。
また、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図140に示すように、基板12上に絶縁層3を形成する工程を有し、絶縁層3上に多孔質電極5D・5D1 ・5D2 を形成しても良い。
第9の実施の形態においては、図140に示すように、両持梁構造の4本のアームの内、片側2本のアームの両方のアームに多孔質電極5D1 ・5D2 ・緻密電極5U1 ・5U2 を配置している構造のみが第8の実施の形態(例えば、図129参照)と異なるため、各部の詳細な製造工程のほとんどは第8の実施の形態と同様である。
以上のように、第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによっても、第7・第8の実施の形態と同様に、Pt+YSZ混粒膜11を配置したことにより、ガス濃度検出時の応答速度を改善できる。
以下に、限界電流式ガスセンサ1Aの概略について、さらに説明する。
(梁構造)
第7〜第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法の一工程(梁構造形成工程)を示す模式的断面構造は、図147(a)に示すように表わされ、第7〜第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法の一工程(別の梁構造形成工程)は、図147(b)に示すように表わされる。
特に、第8・第9の実施の形態の構成において、MEMS構造を有する梁構造には、図147(a)に示すように、空洞Cを基板12の底部に開放構造に形成する開放型構造と、図147(b)に示すように、空洞Cを基板12の内部に形成する船型構造とが可能である。いずれも、例えばシリコン基板の異方性エッチングなどを適用可能である。
なお、図147(a)および図147(b)の各構造においては、いずれも薄層化された基板12の一部分にマイクロヒータが形成されているが、ここでの図示は省略する。また、デバイス加熱部200によって、限界電流式ガスセンサ1Aの縦型センサ構造が表わされている。
すなわち、第8・第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの梁構造のレイアウト図(上面図)は、図148(a)に示すように表わされ、図148(a)のIIIA−IIIA線に沿う模式的断面構造は、図148(b)に示すように表わされる。
この構造例の場合、基板12として(100)面を有するシリコン基板を使用し、異方性エッチングにより、デバイス加熱部200の底部には、底面が(100)面、側面が(111)面のキャビティCが形成されている。
この基板12の表面には、ポリシリコンで形成されたマイクロヒータを含むシリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜103が形成されている。デバイス加熱部200の面積は、例えば、約0.1mm2 である。
図148(a)および図148(b)に示す構造例では、縦型センサ構造のデバイス加熱部200の底部には、マイクロヒータを含む積層膜103が形成されており、基板12は除去されている。すなわち、この構造例のように、第8・第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにあっては、薄層化された基板12を除去し、マイクロヒータを含む積層膜103のみが形成されていても良い。
(マイクロヒータ)
第8・第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、マイクロヒータ2は、以下のプロセスフローにより形成することができる。
まず、シリコン基板12上に3μm厚のPSG(Phosphorus Silicon Glass)膜を形成し、その上にSiN膜を形成した後、SiN膜のパターニングを行う(高濃度にドープする部分はSiN膜除去)。
次に、ポリシリコン層を形成し、例えば約1000℃程度の熱処理により、ポリシリコン層へP(リン)を拡散して高濃度ドープポリシリコン層にする。SiN膜がある部分は低濃度ドープポリシリコン層になる。
さらに、縦型センサ構造を形成し、BHF(5:1)でPSGエッチチングして梁構造を形成する。
以上のように、第8・第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、キャビティC上に梁構造のマイクロヒータ2を容易に形成することができる。
また、第8・第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、図148(a)および図148(b)の積層膜103の部分に配置されるマイクロヒータ2は、以下のプロセスフローにより形成するようにしても良い。
まず、Si(100)基板12上にSiO2 /SiN/SiO2 の多層絶縁膜である積層膜103を形成し、その上にPtヒータ(マイクロヒータ2)を形成する。
次に、マイクロヒータ2上にデバイス加熱部200を形成する。
さらに、TMAH溶液を用いてシリコン基板12を異方性エッチングすることにより、キャビティCを形成する。
以上のように、このような工程によっても、キャビティC上に梁構造のマイクロヒータ2を容易に形成することができる。
なお、動作原理に関して、第7〜第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサにおいて、ガス濃度を検出する動作は、前述した通り、第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、電気化学反応の説明に関しても、前述した通り、第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、パッケージに関しても、前述した通り、第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、エナジーハーベスタ電源を用いたセンサノードの構成例としては、前述した第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、第7〜第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサにおいて、センサパッケージの模式的ブロック構成は、前述した第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
さらに、第7〜第9の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを適用したセンサネットワークシステムの模式的ブロック構成は、前述した第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
(第10〜第12の実施の形態)
(第10の実施の形態)
(概略構成)
第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの模式的平面パターン構成は、図149(a)に示すように表され、図149(a)のIA−IA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ1Aの模式的断面構造は、図149(b)に示すように表される。
すなわち、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図149(a)および図149(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(ポーラスPt電極)5Dと、多孔質電極5Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(ポーラスPt電極)5Uとを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ1Aは、ほぼ全面に絶縁層3を有し、絶縁層3の上層部に所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路15を介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分に向けて導入するように構成されている。
要するに、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、基板12と、基板12上のセンサ部分の領域に絶縁層3を介して配置された多孔質電極5Dと、多孔質電極5Dの上面部に配置された固体電解質層4と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に配置された緻密電極5Uと、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路15とを備える。
ガス拡散路15は、被測定ガスを取り込むガス取込口15b、被測定ガスを導入するガス導入口15c、およびガス導入口15cとガス取込口15bとをつなぐガス流路(マイクロ流路)15aを有し、アスペクト比(マイクロ流路の流路長と流路断面積との比)に応じて、被測定ガスの流量制御が可能となっている。
実際には、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、ガス拡散路15のアスペクト比が、例えば「流路長/断面積=100μm-1(所定のアスペクト比)」となるように、ガス流路15aが、幅(W)=30μm、深さ(D)=0.1μm、長さ(L)=300μmで形成される(アスペクト比は、3以上で限界電流特性が良好となる)。
すなわち、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、ガス流路15aのアスペクト比に応じて被測定ガスの流量制御が可能であり、アスペクト比を大きくできることによりセンサ特性を改善できると共に、ガス拡散路15の形成の精度を高めることによって、センサ特性をより安定化させることができる。
なお、ガス拡散路15のガス取込口15bは、絶縁層3の上層部側の非センサ部分の領域に対応して上方に開口状態で設けられ、ガス導入口15cは、絶縁層3の上層部側のセンサ部分の領域に対応して上方に開口状態で設けられ、ガス流路15aは、絶縁層3の上層部内部にほぼ水平方向に埋め込み形成される。
また、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、絶縁層3にパターニングされた開口部3a・3a内を埋め込むヒータ用電極部(Pt/Ti積層膜)9a・9aを介して、電極層2a・2aにつながるマイクロヒータ2に、固体電解質層4を加熱するための所定電圧が印加される。
また、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、絶縁層3における開口部3b・3bに、例えばPt/Ti積層膜が埋め込まれた一方・他方の検出端子9b・9bと、絶縁層3における開口部3c・3cに、例えばPt/Ti積層膜が埋め込まれた一方・他方の接続端子9c・9cと、をさらに備える。一方・他方の検出端子9b・9bと一方・他方の接続端子9c・9cとの間は、それぞれ、電極層2a・2aと同層の電極層2b・2bを介して接続されている。
そして、一方・他方の検出端子9b・9bには、被測定ガス内における所定のガス濃度を限界電流式で検出する検出回路107が接続される。また、一方の検出端子9bにつながる一方の接続端子9cには、多孔質電極5Dの延出端が、他方の検出端子9bにつながる他方の接続端子9cには、緻密電極5Uの延出端が、それぞれ接続されている。
なお、Ptは、多孔質材料としての白金(Platinum)であり、Tiは、電極材料としてのチタン(Titanium)であり、YSZは、固体電解質材料としてのイットリウム安定化ジルコニア(Yttria-Stabilized Zirconia)である。
ここで、絶縁層3は、例えばSiON膜(シリコン膣化膜)が1.0μm以上の厚さで形成される。
電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは、0.3μm程度の厚さのポリシリコン層であって、イオン注入によってマイクロヒータ2よりも高濃度に形成される。
ヒータ用電極部9a・9a、検出端子9b・9b、および接続端子9c・9cは、例えば、20nm厚のTi膜と100nm厚のPt膜との積層膜によって形成される。
多孔質電極5Dは、ポーラスPt膜によって、例えば、約100nmの厚さで形成される。なお、多孔質電極5Dの形成には、孔径数μm程度のTi/Ptの積層膜を用いることも可能である。
固体電解質層4は、約1μmの厚さのYSZ膜で形成される。薄いと、上下の電極5D・5U間が導通してしまうためである。例えば、固体電解質層4は、多孔質電極5Dの周囲を覆うようにして配置され、上下の電極5D・5U間の導通が防がれる。
MEMS梁構造の基板12は、平面視において、センサ部分を取り囲むように配置された開放型構造を有しており、例えば、約10μm厚のシリコン基板などで形成される。
ここで、多孔質電極5Dは、ガス拡散路15のガス導入口15cに対向する面に配置され、後述する金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成された微細ガス導入路(図示せず)を有する。
例えば、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、電極5D・5U自体をナノ構造に形成している。すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)を混ぜたPtを焼結し、最後にCNTを焼き飛ばして微細ガス導入路を形成した金属粒子焼結層(緻密Pt)を多孔質電極5Dとして適用しても良い。CNTの代わりに、カーボンナノ粒子を適用しても良い。
なお、多孔質電極5Dにおける微細ガス導入路は、例えば、金属粒子焼結層に含有されるナノメートルスケールを有するナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子などの熱処理工程もしくは熱処理工程と組み合わせたエッチング処理工程によって形成可能である。ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子は、例えば、炭素(C)、酸化亜鉛(ZnO)などによって形成可能である。
すなわち、多孔質電極5Dにおける金属粒子焼結層および金属粒子焼結層に形成される微細ガス導入路については、ここでの詳細な説明は割愛するが、金属粒子焼結層は、ナノワイヤを備えていても良い。ナノワイヤは、CNTもしくはZnOを備えていても良い。また、金属粒子焼結層は、カーボンナノチューブもしくはカーボンナノ粒子を備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼により、カーボンナノナノチューブもしくはカーボンナノ粒子が燃焼されることによって形成されていても良い。また、金属粒子焼結層は、ZnOを備え、微細ガス導入路は、金属粒子焼結層の大気中での燃焼後、ウェットエッチングによりZnOがエッチングされることによって形成されていても良い。
さらには、金属粒子焼結層の金属粒子は、Pt、Ag、Pd、Au、もしくはRuのいずれかを備えていても良い。また、金属粒子焼結層は、金属粒子焼結層中に閉じ込められて大気中での燃焼により、燃焼されないナノワイヤを備えていても良い。ナノワイヤもしくはナノ粒子は、直径が約0.1μm以下を備える。また、ナノワイヤの長さは、例えば、約10μm以下である。ナノワイヤを使用するメリットは、ナノワイヤの形状(径、長さ)によりガス透過量制御が可能であり、また、ナノワイヤの割合によりガス透過量制御が可能なことである。
このように、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、多孔質電極5Dの微細ガス導入路の形状によりガス透過量制御可能である。また、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、多孔質電極5Dの微細ガス導入路の含有割合によりガス透過量制御可能である。
一方、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、図149(a)および図149(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12上に配置された絶縁層(例えば、0.5μm厚のSiON膜)1aをさらに備え、少なくともセンサ部分の絶縁層1aと絶縁層3との間には、電極層2a・2aと同層において、加熱用のマイクロヒータ2が埋め込まれている。マイクロヒータ2は、0.3μm程度の厚さのポリシリコン層(ポリシリコンヒータ)であって、イオン注入により抵抗値が300Ω程度とされる。
マイクロヒータ2は、ヒータ用電極部9a・9a間に所定電圧が印加されることによって、固体電解質層4を加熱する。なお、マイクロヒータ2は、印刷により形成されたPtヒータなどによっても形成可能である。
第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aは、MEMS構造を有する梁構造(開放型構造)を基本構造とすることによって、センサ部分の熱容量を低減化し、センサ感度の向上を図っている。
なお、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいて、マイクロヒータ2は、センサ部分である基板12と多孔質電極5Dとの相互間に絶縁層1a・3を介して配置される場合に限らず、多孔質電極5Dの形成面側に対向する絶縁層1aの下面、または基板12の下部に配置されていても良い。また、マイクロヒータ2は、基板12の内部に埋め込まれていても良い。もしくは、基板12の表面に、ポリシリコンで形成されたマイクロヒータ2を含むシリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜(図示せず)が形成された構成としても良い。
第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aにおいては、図149(a)および図149(b)に示すように、例えば、緻密電極5Uと多孔質電極5Dとに供給する検出用の電圧を検出端子9b・9b間に印加することにより、被測定ガス内における所定のガス濃度を限界電流式で検出する検出回路107が接続される。
検出回路107は、限界電流に基づいて酸素濃度を検出することができる。また、検出回路107は、限界電流に基づいて水蒸気濃度を検出することができる。
なお、ヒータ用電極部9a・9aと検出端子9b・9bとは、互いの方向がほぼ直交するように配置されている。
第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、ガス拡散路15のアスペクト比を大きくできることにより、センサ特性の改善が容易に可能である。
(製造方法)
第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、センサ部分に対応する基板12上の領域に絶縁層3を介して多孔質電極5Dを形成する工程と、多孔質電極5Dの上面部に固体電解質層4を形成する工程と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に緻密電極5Uを形成する工程と、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路15を絶縁層3の上層部に形成する工程とを有する。
より詳しくは、図149(a)および図149(b)に示した第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの製造方法は、図150〜図161に示すように表される。ここでは、ガス流路15aのアスペクト比が100(所定のアスペクト比)となるように、幅(W)=30μm、深さ(D)=0.1μm、長さ(L)=300μmのガス流路15aを形成する場合について説明する。
(a)まず、図150(a)および図150(b)に示すように、約10μm厚のシリコン製の基板12を用意し、その基板12の上面にプラズマCVD(P−CVD)法により約0.5μm厚のSiON膜からなる絶縁層1aを形成する。
(b)次いで、図151(a)および図151(b)に示すように、絶縁層1a上に0.3μm程度の厚さのポリシリコン層を形成すると共に、そのポリシリコン層をエッチングなどによりパターニングして、マイクロヒータ2およびマイクロヒータ2につながる電極層2a・2aと電極層2b・2bとを形成する。電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは互いに直交する位置に形成される。マイクロヒータ2は、電極層2a・2a間における幅が約300μmとなるように形成される。
また、イオン注入法により、マイクロヒータ2は、電極層2a・2a間の抵抗値が300Ωとなるように濃度設定され、電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは、マイクロヒータ2よりも高濃度に形成(インプラ)される。
(c)次いで、図152(a)および図152(b)に示すように、全面にP−CVD法により約0.5μm厚のSiON膜(第1絶縁膜)31を形成する。
(d)次いで、図153(a)および図153(b)に示すように、SiON膜31の上面のガス拡散路15を形成する部位に、ガス流路15aを形成するための流路形成膜19aを成膜(デポ+パターニング)する。
流路形成膜19aは、絶縁層3を構成するSiON膜31とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばポリシリコン膜を用いて形成される。また、流路形成膜19aは、ガス流路15aのアスペクト比が、例えば「流路長/流路断面積=100(所定のアスペクト比)」となるように、ガス取込口15bおよびガス導入口15cを含む長さ(L)が400μm、幅(W)が30μm、厚さ(深さ(D))が0.1μmで形成される。
ここで、ガス拡散路15の所定のアスペクト比は、ガス流路15aの流路長を長くしたり、ガス流路15aの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、容易に大きくでき、ガス拡散路15のアスペクト比を大きくすることによって、センサ特性の改善が可能である。
(e)次いで、図154(a)および図154(b)に示すように、流路形成膜19aの一端部側に重なるように、ガス取込口15bを形成するための取込口形成膜19bを約0.5μmの厚さとなるようにデポすると共に、流路形成膜19aの他端部側に重なるように、ガス導入口15cを形成するための導入口形成膜19cを約0.5μmの厚さとなるようにデポする。取込口形成膜19bおよび導入口形成膜19cは、共に、絶縁層3を構成するSiON膜31とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばポリシリコン膜を用いて形成される。
すなわち、取込口形成膜19bおよび導入口形成膜19cを、例えば直径が50μm程度の円形状とし、流路形成膜19aの両端部にそれぞれ重なるように形成することで、長さ(L)が300μmのガス流路15aを形成することが可能である。
これらガス拡散路15を形成するための、流路形成膜19a、取込口形成膜19b、および導入口形成膜19cの形成は、多孔質電極5Dを形成する前に行われる。
(f)次いで、図155(a)および図155(b)に示すように、取込口形成膜19bおよび導入口形成膜19cの上面と同じ高さとなるように、ポリシリコン膜とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばSiON膜(第2絶縁膜)32により流路形成膜19a上を埋め込む。
つまり、絶縁層3を構成するSiON膜32は、P−CVD法により約0.6μmの厚さとなるように全面的にデポされる。
(g)次いで、図156(a)および図156(b)に示すように、絶縁層3を選択的に除去し、電極層2a・2aにつながる開口部3a・3aと、電極層2b・2bにつながる開口部3b・3bおよび開口部3c・3cと、を開口する。
(h)次いで、図157(a)および図157(b)に示すように、開口部3a・3a、開口部3b・3b、および開口部3c・3cの内部を、例えばPt/Ti積層膜により埋め込み、Ti膜とPt膜との積層膜からなるヒータ用電極部9a・9a、検出端子9b・9b、および接続端子9c・9cを形成する。
なお、ヒータ用電極部9a・9a、検出端子9b・9b、および接続端子9c・9cとしては、例えば、側壁と底部とに沿って20nm厚のTi膜を形成し、一部が絶縁層3上に突出および絶縁層3上を被覆するように、その内部に100nm厚のPt膜が埋め込まれた構成としても良い。
(i)次いで、図158(a)および図158(b)に示すように、スパッタ法などにより100nm厚程度のポーラスPt膜からなる多孔質電極5Dを約200μmの幅(ガス拡散路15に沿う方向の長さ)で形成し、絶縁層3の表面に露出する導入口形成膜19cの上面を塞ぐと共に、センサ部分より延びる多孔質電極5Dの延出端を一方の接続端子9cに接続させる。
(j)次いで、図159(a)および図159(b)に示すように、スパッタ法によりYSZ膜からなる固体電解質層4を約1μmの厚さで形成する。固体電解質層4を、例えば250μm程度の幅(ガス拡散路15に沿う方向の長さ)で形成することによって、センサ部分の一方の接続端子9cに接続される多孔質電極5Dの延出端側を除く、多孔質電極5Dの周囲を被覆する。
(k)次いで、図160(a)および図160(b)に示すように、緻密電極5Uとして、スパッタ法によりセンサ部分における固体電解質層4上の多孔質電極5Dに対向する面に100nm厚程度のポーラスPt膜を形成し、かつセンサ部分より延びるポーラスPt膜の延出端を他方の接続端子9cに接続させる。
(l)次いで、図161(a)および図161(b)に示すように、センサ部分に対応する基板12を選択的に深掘りエッチングし、MEMS梁構造の基板12を、キャビティC(Cavity:空洞)を開放構造に形成した開放型構造に形成する。キャビティCとしては、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aのサイズにもよるが、ガス拡散路15に直交する方向の長さ×ガス拡散路15に沿う方向の長さとして、500μm×400μm程度が望ましい。
(m)この後、ガス拡散路15を形成するための、流路形成膜19a、取込口形成膜19b、および導入口形成膜19cを構成するポリシリコン膜を、例えばウェットエッチングによって選択的に除去することにより、図149(a)および図149(b)に示した構成を有する、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aが得られる。
以上のように、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、ガス流路15aの流路長を長くしたり、ガス流路15aの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、ガス拡散路15のアスペクト比を簡単に大きくできるようになるため、センサ特性の改善が容易に可能となる。
しかも、第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aによれば、アスペクト比の大きなガス拡散路15を正確(精密)に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
なお、ガス導入口15cは、センサ部分のほぼ中心部に配置されるが、ガス取込口15bは、非センサ部分の領域ならばどこへでも自由に配置することが可能であり、所望の流路長を有するガス流路15aの形成が容易である。
(第11の実施の形態)
(概略構成)
第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aの模式的平面パターン構成は、図162(a)に示すように表され、図162(a)のIIA−IIA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ2Aの模式的断面構造は、図162(b)に示すように表される。
図162(a)および図162(b)に示すように、第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aは、MEMS梁構造の基板12が、上述した第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aのそれとは異なり、それ以外の構成は同一なので重複する説明はできるだけ省略し、製造方法についてより詳しく説明する。
すなわち、第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aは、図162(a)および図162(b)に示すように、キャビティCが船型構造を有するMEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(ポーラスPt電極)5Dと、多孔質電極5Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(ポーラスPt電極)5Uとを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ2Aは、ほぼ全面に絶縁層3を有し、絶縁層3の上層部に所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路15を介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分に向けて導入するように構成されている。
第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aによっても、ガス拡散路15のアスペクト比を大きくできることにより、センサ特性の改善が容易に可能であり、またガス拡散路15を正確に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
(製造方法)
第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aの製造方法は、図163〜図173に示すように表される。
(a)まず、図163(a)および図163(b)に示すように、約10μm厚のシリコン製の基板12を用意し、その上面の、船型構造のキャビティCを形成する部位に応じて、例えば基板12とはエッチングの選択比が異なるポリシリコン膜1bを0.1μm程度の厚さとなるようにデポする。
その後、P−CVD法により、例えばポリシリコン膜1bとはエッチングの選択比が異なるSiON膜をデポし、基板12の上面に0.5μm程度の厚さの絶縁層1aを形成する。
(b)次いで、図164(a)および図164(b)に示すように、絶縁層1a上に0.3μm程度の厚さのポリシリコン層を形成すると共に、そのポリシリコン層をエッチングなどによりパターニングして、マイクロヒータ2およびマイクロヒータ2につながる電極層2a・2aと、電極層2b・2bとを形成する。電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは互いに直交する位置に形成される。
また、イオン注入法により、マイクロヒータ2は、電極層2a・2a間の抵抗値が300Ωとなるように濃度設定され、電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは、マイクロヒータ2よりも高濃度に形成(インプラ)される。
(c)次いで、図165(a)および図165(b)に示すように、全面にP−CVD法により約0.5μm厚のSiON膜(第1絶縁膜)31を形成する。
(d)次いで、図166(a)および図166(b)に示すように、SiON膜31の上面のガス拡散路15を形成する部位に、ガス流路15aを形成するための流路形成膜19aを成膜(デポ+パターニング)する。
流路形成膜19aは、SiON膜31とはエッチングの選択比が異なるポリシリコン膜などの膜形成部材を用いて形成される。また、流路形成膜19aは、例えばアスペクト比が「流路長/流路断面積=100(所定のアスペクト比)」となるように、ガス取込口15bおよびガス導入口15cを含む長さ(L)が400μm、幅(W)が30μm、厚さ(深さ(D))が0.1μmで形成される。
ここで、ガス拡散路15の所定のアスペクト比は、ガス流路15aの流路長を長くしたり、ガス流路15aの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、容易に大きくでき、ガス拡散路15のアスペクト比を大きくすることによって、センサ特性の改善が可能である。
(e)次いで、図167(a)および図167(b)に示すように、流路形成膜19aの一端部側に重なるように、例えば直径が50μm程度の円形状のガス取込口15bを形成するための取込口形成膜19bを約0.5μmの厚さとなるようにデポすると共に、流路形成膜19aの他端部側に重なるように、例えば直径が50μm程度の円形状のガス導入口15cを形成するための導入口形成膜19cを約0.5μmの厚さとなるようにデポする。取込口形成膜19bおよび導入口形成膜19cは、共に、絶縁層3を構成するSiON膜31とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばポリシリコン膜を用いて形成される。
上述した第10の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1Aの場合と同様に、長さ(L)が300μmのガス流路15aを有するガス拡散路15を形成するための、流路形成膜19a、取込口形成膜19b、および導入口形成膜19cの形成は、多孔質電極5Dを形成する前に行われる。
(f)次いで、図168(a)および図168(b)に示すように、取込口形成膜19bおよび導入口形成膜19cの上面と同じ高さとなるように、P−CVD法により、ポリシリコン膜とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばSiON膜(第2絶縁膜)32を約0.6μmの厚さで全面的にデポし、流路形成膜19a上を埋め込む。
(g)次いで、図169(a)および図169(b)に示すように、絶縁層3を選択的に除去し、電極層2a・2aにつながる開口部3a・3aと、電極層2b・2bにつながる開口部3b・3bおよび開口部3c・3cと、を開口する。
また、絶縁層3を選択的に除去し、ポリシリコン膜1bに達する深さの開口部17を4個程度、形成する。開口部17は、後述するウェットエッチングを効率良く行うために、例えば、ポリシリコン膜1bの四隅のより近傍に形成するのが望ましい。
(h)次いで、図170(a)および図170(b)に示すように、開口部3a・3a、開口部3b・3b、および開口部3c・3cの内部を、例えばPt/Ti積層膜により埋め込み、20nm厚のTi膜と100nm厚のPt膜との積層膜からなるヒータ用電極部9a・9a、検出端子9b・9b、および接続端子9c・9cを形成する。
(i)次いで、図171(a)および図171(b)に示すように、スパッタ法などにより100nm厚程度のポーラスPt膜からなる多孔質電極5Dを形成し、絶縁層3の表面に露出する導入口形成膜19cの上面を塞ぐと共に、センサ部分より延びる多孔質電極5Dの延出端を一方の接続端子9cに接続させる。
(j)次いで、図172(a)および図172(b)に示すように、スパッタ法によりYSZ膜からなる固体電解質層4を約1μmの厚さで形成し、センサ部分の一方の接続端子9cに接続される多孔質電極5Dの延出端側を除く、多孔質電極5Dの周囲を被覆する。
(k)次いで、図173(a)および図173(b)に示すように、緻密電極5Uとして、スパッタ法によりセンサ部分における固体電解質層4上の多孔質電極5Dに対向する面に100nm厚程度のポーラスPt膜を形成し、かつセンサ部分より延びるポーラスPt膜の延出端を他方の接続端子9cに接続させる。
(l)この後、例えばウェットエッチングによって、ガス拡散路15を形成するための、流路形成膜19a、取込口形成膜19b、および導入口形成膜19cを構成するポリシリコン膜を選択的に除去すると共に、開口部17を介して、ポリシリコン膜1bとその下層の基板12とを選択的に除去することにより、図162(a)および図162(b)に示した構成を有する、第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aが得られる。
すなわち、第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aは、絶縁層3の上層部に、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路15を備えると共に、MEMS梁構造の基板12として、センサ部分に対応する基板12にキャビティC(Cavity:空洞)が船型に形成された船型構造を有して形成される。
以上のように、第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aによっても、ガス流路15aの流路長を長くしたり、ガス流路15aの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、ガス拡散路15のアスペクト比を簡単に大きくできるようになるため、センサ特性の改善が容易に可能となる。
しかも、第11の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ2Aによれば、アスペクト比の大きなガス拡散路15を正確に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
なお、ガス導入口15cは、センサ部分のほぼ中心部に配置されるが、ガス取込口15bは、非センサ部分の領域ならばどこへでも自由に配置することが可能であり、所望の流路長を有するガス流路15aの形成が容易である。
(第12の実施の形態)
(概略構成)
第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aの模式的平面パターン構成は、図174(a)に示すように表され、図174(a)のIIIA−IIIA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ3Aの模式的断面構造は、図174(b)に示すように表される。ここでも、重複する説明はできるだけ省略し、特徴的な部分についてより詳しく説明する。
すなわち、第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、図174(a)および図174(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(ポーラスPt電極)5Dと、多孔質電極5Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(ポーラスPt電極)5Uと、センサ部分の領域を囲むようにして基板12上に設けられる蓋体110とを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ3Aは、蓋体110に所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路115を介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分に向けて導入するように構成されている。
なお、この限界電流式ガスセンサ3Aの場合、蓋体110を備えたことにより、センサ部分に導入された被測定ガスは、基板12側の絶縁層1a・3などに設けられるガス導出路40を介してキャビティC側へと導出される。
要するに、第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、基板12と、基板12上のセンサ部分の領域に絶縁層3を介して配置された多孔質電極5Dと、多孔質電極5Dの上面部に配置された固体電解質層4と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に配置された緻密電極5Uと、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路115とを備え、このガス拡散路115が、さらに備える蓋体110に形成された構成となっている。
ガス拡散路115は、被測定ガスを取り込むガス取込口115b、被測定ガスを導入するガス導入口115c、およびガス導入口115cとガス取込口115bとをつなぐガス流路(マイクロ流路)115aを有し、アスペクト比(マイクロ流路の流路長と流路断面積との比)に応じて、被測定ガスの流量制御が可能となっている。
蓋体110は、絶縁層3上のヒータ用電極部9a・9aおよび検出端子9b・9bを露出させるように形成されると共に、センサ部分の領域に応じて設けられた空間領域(Cavity:空洞)CAaを有している。
ガス拡散路115において、ガス導入口115cは、蓋体110内の空間領域CAaの天井部分に設けられ、ガス取込口115bは、蓋体110の上面部の非センサ部分の領域に設けられている。そして、ガス取込口115bとガス導入口115cとの間が、例えばコ字状に内包する、直線状の複数のガス流路115a(115a-1・115a-2・115a-3)を介してほぼ水平方向に接続されている。
実際には、第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aにおいて、ガス拡散路115のアスペクト比が、例えば「流路長/流路断面積=100(所定のアスペクト比)」となるように、ガス流路115a(115a-1・115a-2・115a-3)が、幅(W)=30μm、深さ(D)=0.1μm、長さ(L)=300μmで形成される。
ガス導出路40は、センサ部分のほぼ中心部の絶縁層3、マイクロヒータ2、および絶縁層1aに対し、MEMS梁構造の基板12のキャビティCに達する深さで開孔された開孔構造であって、例えば大径の第1開孔部40aと小径の第2開孔部40bとから構成されている。
第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aは、MEMS梁構造の基板12上に貼り合わせにより取り付けられる蓋体110に、所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路115を備えるようにしたものであって、ガス拡散路115のアスペクト比を大きくできることにより、センサ特性の改善が容易に可能であり、またガス拡散路115を正確に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
(製造方法)
第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aの製造方法は、センサ部分に対応する基板12上の領域に絶縁層3を介して多孔質電極5Dを形成する工程と、多孔質電極5Dの上面部に固体電解質層4を形成する工程と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に緻密電極5Uを形成する工程と、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路115を備えると共に、センサ部分の領域を囲む蓋体110を別途形成し、それを絶縁層3の上層部に貼り合わせる工程とを有する。
まず、図174(a)および図174(b)に示した第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aの製造方法において、センサ部分の製造方法が、図175〜図185に示される。
(a)図175(a)および図175(b)に示すように、約10μm厚のシリコン製の基板12を用意し、その基板12の上面にプラズマCVD(P−CVD)法により約0.5μm厚のSiON膜からなる絶縁層1aを形成する。
(b)次いで、図176(a)および図176(b)に示すように、絶縁層1a上に0.3μm程度の厚さのポリシリコン層を形成すると共に、そのポリシリコン層をエッチングなどによりパターニングして、マイクロヒータ2およびマイクロヒータ2につながる電極層2a・2aと、電極層2b・2bとを形成する。電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは互いに直交する位置に形成される。マイクロヒータ2は、電極層2a・2a間における幅が約300μmとなるように形成される。
また、イオン注入法により、マイクロヒータ2は、電極層2a・2a間の抵抗値が300Ωとなるように濃度設定され、電極層2a・2aおよび電極層2b・2bは、マイクロヒータ2よりも高濃度に形成(インプラ)される。
また、マイクロヒータ2の、例えばセンサ部分のほぼ中心部に、直径が50μm程度の円形状の開孔部40Aを、絶縁層1aに達する深さで形成する。
(c)次いで、図177(a)および図177(b)に示すように、全面にP−CVD法により約0.5μm厚のSiON膜からなる絶縁層3を一様に形成し、開孔部40A内の絶縁層1a上に絶縁層3を埋設させて、その上面上に、ガス導出路40の第1開孔部40aとなる凹部を形成する。第1開孔部40aの深さは、ポリシリコン層(マイクロヒータ2)の厚さに応じて、約0.3μmとなる。
(d)次いで、図178(a)および図178(b)に示すように、第1開孔部40aの底面に埋設されている絶縁層3とその下層の絶縁層1aとをエッチングにより除去し、ガス導出路40の第2開孔部40bとなる、例えば直径が30μm程度の円形状の開孔を基板12に達する深さで形成する。第2開孔部40bの深さは、絶縁層1a・3の厚さに応じて、約1μmとなる。
(e)次いで、図179(a)および図179(b)に示すように、第1開孔部40a内および第2開孔部40b内を、絶縁層1a・3とはエッチングの選択比が異なる、例えば約1.3μm厚のポリシリコン膜27により埋め込む。
(f)次いで、図180(a)および図180(b)に示すように、絶縁層3を選択的に除去し、電極層2a・2aにつながる開口部3a・3aと、電極層2b・2bにつながる開口部3b・3bおよび開口部3c・3cと、を開口する。
(g)次いで、図181(a)および図181(b)に示すように、開口部3a・3a、開口部3b・3b、および開口部3c・3cの内部を、例えばPt/Ti積層膜により埋め込み、Ti膜とPt膜との積層膜からなるヒータ用電極部9a・9a、検出端子9b・9b、および接続端子9c・9cを形成する。
なお、ヒータ用電極部9a・9a、検出端子9b・9b、および接続端子9c・9cとしては、例えば、側壁と底部とに沿って20nm厚のTi膜を形成し、一部が絶縁層3上に突出および絶縁層3上を被覆するように、その内部に100nm厚のPt膜が埋め込まれた構成としても良い。
(h)次いで、図182(a)および図182(b)に示すように、スパッタ法などにより100nm厚程度のポーラスPt膜からなる多孔質電極5Dを形成し、絶縁層3の表面に露出するポリシリコン膜27の上面を塞ぐと共に、センサ部分より延びる多孔質電極5Dの延出端を一方の接続端子9cに接続させる。
(i)次いで、図183(a)および図183(b)に示すように、スパッタ法によりYSZ膜からなる固体電解質層4を約1μmの厚さで形成し、センサ部分の一方の接続端子9cに接続される多孔質電極5Dの延出端側を除く、多孔質電極5Dの周囲を被覆する。
(j)次いで、図184(a)および図184(b)に示すように、緻密電極5Uとして、スパッタ法によりセンサ部分における固体電解質層4上の多孔質電極5Dに対向する面に100nm厚程度のポーラスPt膜を形成し、かつセンサ部分より延びるポーラスPt膜の延出端を他方の接続端子9cに接続させる。
(k)次いで、図185(a)および図185(b)に示すように、センサ部分に対応する基板12を選択的に深掘りエッチングし、MEMS梁構造の基板12を、キャビティC(Cavity:空洞)を開放構造に形成した開放型構造に形成する。
(l)次いで、第1開孔部40a内および第2開孔部40b内に埋め込まれたポリシリコン膜27を、例えばウェットエッチングによって選択的に除去することにより、ガス導出路20を形成する。
(m)この後、後述するように、別途形成される蓋体110を絶縁層3上に接着剤などを用いて貼り合わせることによって、図174(a)および図174(b)に示した構成を有する、第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aが得られる。
(第12の実施の形態の第1変形例)
(概略構成)
第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aの模式的平面パターン構成は、図186(a)に示すように表され、図186(a)のIVA−IVA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ4Aの模式的断面構造は、図186(b)に示すように表される。
すなわち、第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aは、図186(a)および図186(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(ポーラスPt電極)5Dと、多孔質電極5Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(ポーラスPt電極)5Uと、センサ部分の領域を囲むようにして基板12上に設けられる蓋体112とを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ4Aは、蓋体112に所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路116を介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分に向けて導入するように構成されている。
要するに、第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aは、基板12と、基板12上のセンサ部分の領域に絶縁層3を介して配置された多孔質電極5Dと、多孔質電極5Dの上面部に配置された固体電解質層4と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に配置された緻密電極5Uと、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路116とを備え、このガス拡散路116が、さらに備える蓋体112に形成された構成となっている。
第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aの場合は、蓋体112に設けられるガス拡散路116が、被測定ガスを取り込むガス取込口116a、被測定ガスを導入するガス導入口116b、およびガス導入口116bとガス取込口116aとをつなぐガス流路(マイクロ流路)116cを有し、アスペクト比(マイクロ流路の流路長と流路断面積との比)に応じて、被測定ガスの流量制御が可能となっている。
また、ガス拡散路116において、ガス導入口116bは、蓋体112内の空間領域CAaの天井部分に設けられ、ガス取込口116aは、蓋体112の上面部の非センサ部分の領域に設けられている。そして、ガス取込口116aとガス導入口116bとの間が、例えば直線状の1つのガス流路116cを介してほぼ水平方向に接続されている。
それ以外の構成は、上述した第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ3Aと同一なので重複する説明はできるだけ省略すると共に、蓋体112を例に、その製造方法について説明する。
(製造方法)
第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aにおいて、蓋体112の製造方法は、図187〜図192に示すように表される。
(a)まず、図187(a)および図187(b)に示すように、約10μm厚のシリコン製の基板(第1蓋部材)112aを用意し、その表面側の、ガス拡散路116を形成する部位に、ガス流路116cを形成するための流路形成膜112bを成膜(デポ+パターニング)する。
例えば、流路形成膜112bの一端は、非センサ部分の領域に対応され、他端は、センサ部分のほぼ中心部に対応される。
流路形成膜112bは、基板112aを構成するSiとはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばシリコン酸化(SiO2 )膜を用いて形成される。また、流路形成膜112bは、ガス流路116cのアスペクト比が、例えば「流路長/流路断面積=100(所定のアスペクト比)」となるように、ガス取込口116aおよびガス導入口116bを含まない長さ(L)が300μm、幅(W)が30μm、厚さ(深さ(D))が0.1μmで形成される。
ここで、ガス拡散路116の所定のアスペクト比は、ガス流路116cの流路長を長くしたり、ガス流路116cの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、容易に大きくでき、ガス拡散路116のアスペクト比を大きくすることによって、センサ特性の改善が可能である。
(b)次いで、図188(a)および図188(b)に示すように、SiO2 膜とはエッチングの選択比が異なる膜形成部材、例えばポリシリコン膜(第2蓋部材)112cを全面にデポし、流路形成膜112bを埋め込む。
(c)次いで、図189(a)および図189(b)に示すように、ポリシリコン膜112cをエッチングにより選択的に除去し、流路形成膜112bの一端側を開口して、ガス拡散路116のガス取込口116aを形成する。
(d)次いで、図190(a)および図190(b)に示すように、基板112aの裏面(下部)側を選択的にエッチングし、センサ部分を収納する空間領域CAaを形成する。
(e)次いで、図191(a)および図191(b)に示すように、基板112aの裏面側をさらにエッチングにより選択的に除去し、流路形成膜112bの他端側を開口して、空間領域CAaの天井部分にガス拡散路116のガス導入口116bを形成する。
ここで、ガス取込口116aおよびガス導入口116bは、例えば直径が50μm程度の円形状とされ、流路形成膜112bの両端に、ガス流路116cの流路長が300μmとなるように形成される。
(f)次いで、図192(a)および図192(b)に示すように、HF(フッ酸)エッチングにより、流路形成膜112bを形成するSiO2 膜を選択的に除去し、ガス取込口116aおよびガス導入口116bにつながるガス流路116cを形成することによって、第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aの蓋体112が得られる。
(g)この後、形成された蓋体112を絶縁層3上に接着剤などを用いて貼り合わせることによって、図186(a)および図186(b)に示した構成を有する、第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aが得られる。
以上のように、第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aによっても、ガス流路116cの流路長を長くしたり、ガス流路116cの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、ガス拡散路116のアスペクト比を簡単に大きくできるようになるため、センサ特性の改善が容易に可能となる。
しかも、第12の実施の形態の第1変形例に係る限界電流式ガスセンサ4Aによれば、アスペクト比の大きなガス拡散路116を正確に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
(第12の実施の形態の第2変形例)
(概略構成)
第12の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ5Aの模式的平面パターン構成は、図193(a)に示すように表され、図193(a)のVA−VA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ5Aの模式的断面構造は、図193(b)に示すように表される。
すなわち、第12の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ5Aは、図193(a)および図193(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(ポーラスPt電極)5Dと、多孔質電極5Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(ポーラスPt電極)5Uと、センサ部分の領域を囲むようにして基板12上に設けられる蓋体113とを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ5Aは、蓋体113に所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路117を介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分に向けて導入するように構成されている。
要するに、第12の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ5Aは、基板12と、基板12上のセンサ部分の領域に絶縁層3を介して配置された多孔質電極5Dと、多孔質電極5Dの上面部に配置された固体電解質層4と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に配置された緻密電極5Uと、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路117とを備え、このガス拡散路117が、さらに備える蓋体113に形成された構成となっている。
第12の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ5Aの場合は、蓋体113に設けられるガス拡散路117が、被測定ガスを取り込むガス取込口117a、被測定ガスを導入するガス導入口117b、およびガス導入口117bとガス取込口117aとをつなぐガス流路(マイクロ流路)117cを有し、アスペクト比(マイクロ流路の流路長と流路断面積との比)に応じて、被測定ガスの流量制御が可能となっている。
また、ガス拡散路117は、例えばセンサ部分のほぼ中心部の、蓋体113内の空間領域CAaの天井部分にほぼ垂直方向に設けられ、ガス取込口117aとガス導入口117bとの間がガス流路117cを介して一直線上に接続されている。ガス拡散路117のアスペクト比は、例えば、ガス流路117cの径(流路形成膜の径)と流路長(ポリシリコン膜の厚さ)とを調整することによって、簡単に制御できる。
第12の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ5Aによっても、ガス流路117cの流路長を長くしたり、ガス流路117cの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、ガス拡散路117のアスペクト比を簡単に大きくできるようになるため、センサ特性の改善が容易に可能となる。
しかも、第12の実施の形態の第2変形例に係る限界電流式ガスセンサ5Aによれば、アスペクト比の大きなガス拡散路117を正確に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
(第12の実施の形態の第3変形例)
(概略構成)
第12の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ6Aの模式的平面パターン構成は、図194(a)に示すように表され、図194(a)のVIA−VIA線に沿う、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)梁構造に形成されるセンサ6Aの模式的断面構造は、図194(b)に示すように表される。
すなわち、第12の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ6Aは、図194(a)および図194(b)に示すように、MEMS梁構造の基板12と、中央部のセンサ部分にそれぞれ対応して、基板12上に配置された多孔質電極(ポーラスPt電極)5Dと、多孔質電極5Dを覆うように配置された固体電解質層(YSZ膜)4と、多孔質電極5Dに対向する固体電解質層4上に、基板12に対して実質的に縦方向に配置された緻密電極(ポーラスPt電極)5Uと、センサ部分の領域を囲むようにして基板12上に設けられる蓋体114とを備える。
また、この限界電流式ガスセンサ6Aは、蓋体114に所定のアスペクト比を有して形成されたガス拡散路118を介して、被測定ガス(例えば、O2 ガス)をセンサ部分に向けて導入するように構成されている。
要するに、第12の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ6Aは、基板12と、基板12上のセンサ部分の領域に絶縁層3を介して配置された多孔質電極5Dと、多孔質電極5Dの上面部に配置された固体電解質層4と、固体電解質層4上の、多孔質電極5Dに対向する面に配置された緻密電極5Uと、所定のアスペクト比を有し、被測定ガスをセンサ部分に向けて導入するガス拡散路118とを備え、このガス拡散路118が、さらに備える蓋体114に形成された構成となっている。
第12の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ6Aの場合は、蓋体114に設けられるガス拡散路118が、被測定ガスを取り込むガス取込口118a、被測定ガスを導入するガス導入口118b、およびガス導入口118bとガス取込口118aとをつなぐガス流路(マイクロ流路)118cを有し、アスペクト比(マイクロ流路の流路長と流路断面積との比)に応じて、被測定ガスの流量制御が可能となっている。
また、ガス拡散路118において、ガス導入口118bは、蓋体114内の空間領域CAaの天井部分に設けられ、ガス取込口118aは、蓋体114の側面部に設けられている。そして、ガス取込口118aとガス導入口118bとの間が、例えば直線状の1つのガス流路118cを介してほぼ水平方向に接続されている。
第12の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ6Aによっても、ガス流路118cの流路長を長くしたり、ガス流路118cの断面積(流路断面積)を小さくすることによって、ガス拡散路118のアスペクト比を簡単に大きくできるようになるため、センサ特性の改善が容易に可能となる。
しかも、第12の実施の形態の第3変形例に係る限界電流式ガスセンサ6Aによれば、アスペクト比の大きなガス拡散路118を正確に形成できるので、センサ特性をより安定させることができる。
なお、ガス拡散路118は、蓋体114の四隅に対応する斜め方向のいずれかに引き出すように形成することもできる。
また、第10〜第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1A〜6Aの製造方法は、基板12の上部もしくは基板12の下部にマイクロヒータ2を形成する工程を有していても良い。
また、第10〜第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1A〜6Aの製造方法は、基板12の内部に埋め込まれたマイクロヒータ2を形成する工程を有していても良い。
また、第10〜第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサ1A〜6Aの製造方法において、マイクロヒータ2、絶縁層3、多孔質電極5D、緻密電極5U、固体電解質層4は、印刷工程により形成可能である。
なお、動作原理に関して、第10〜第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサにおいて、ガス濃度を検出する動作は、前述した通り、第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、電気化学反応の説明に関しても、前述した通り、第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、パッケージに関しても、前述した通り、第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、エナジーハーベスタ電源を用いたセンサノードの構成例としては、前述した第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
また、第10〜第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサにおいて、センサパッケージの模式的ブロック構成は、前述した第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、詳しい説明は省略する。
さらに、第10〜第12の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサを適用したセンサネットワークシステムの模式的ブロック構成は、前述した第1〜第6の実施の形態に係る限界電流式ガスセンサの場合と実質的に同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、センサ特性を改善できると共に、センサ特性をより安定化できる限界電流式ガスセンサを提供することができる。
また、本実施の形態によれば、応答速度を改善できる限界電流式ガスセンサを提供することができる。
また、本実施の形態によれば、エッチングの選択比を利用して、アスペクト比の大きなガス拡散路を容易に、かつ精密に形成することが可能となる結果、センサ特性を改善できると共に、センサ特性をより安定化できる限界電流式ガスセンサを提供することができる。
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態を記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、各実施の形態を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
このように、各実施の形態は、ここでは記載していない様々な態様を含む。例えば、ジルコニアを他の材料に置き換えたり、いくつかの材料を組み合わせることで、二酸化炭素の濃度を検出することが可能である。