JPWO2016137013A1 - 放射線治療用の病変識別マーカーおよび放射線治療用の病変識別マーカーキット - Google Patents
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Abstract
X線吸収性のある金属の微粒子を体内の任意の部位に、放射線治療の種類、および、治療標的部位に適した任意の量で留置することが可能であり、かつ放射線治療装置で留置部位を特定できる、放射線治療用の病変識別マーカーを提供する。リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。
Description
本発明は、放射線治療用の病変識別マーカーおよび放射線治療用の病変識別マーカーキットに関する。
強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy(IMRT))、画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy(IGRT))、動体追跡放射線治療(Real−time Tumor−Tracking Radiation Therapy(RTRT))等の技術開発により、肺、前立腺、肝、副腎といった様々な臓器で高精度の放射線治療が可能になった(非特許文献1参照)。
本治療では、X線透視で正確な標的病変の位置情報を得るため、臓器に病変識別のための金属マーカーを埋設する(非特許文献1,2参照)。金属マーカーはX線透視画像で腫瘍の位置を示す指標となり、正常組織を可能な限り避け、効率的に病変へ放射線を照射することが可能になる。これによって、治療効果を高めるとともに、周囲の正常組織への放射線照射量を低減し、有害事象の発生のリスクを軽減することができる。
現在、本邦で承認されている放射線治療用マーカーとしては、iGold(登録商標)(メディキット)、VISICOIL(セティメディカルラボ)等がある。
前者は純金製の2mm径の球体で、X線透視での視認性が高く、あらゆる方向から同じ形状で認識可能で、正確な位置情報の把握に優れ、また気管内や消化管、膀胱粘膜への留置も可能である(非特許文献2,3,4,5および6参照)。しかし、経皮的留置の場合は2.55mm径のシースイントロデューサー(筒)を穿刺する必要があり、部位や臓器によっては安全な穿刺経路の確保ができない場合がある。
後者は細径(0.35〜1.10mm)、長さ10〜30mmのコイルで、19G(1.10mm)〜17G(1.25mm)の針で留置が可能であり、穿刺経路の選択は比較的容易である(非特許文献7参照)。しかし、細径のコイルであるため、方向によっては(特に正接方向)X線透視で認識できず、複数個のコイルを留置しなければ位置情報が得られない場合がある。複数回の穿刺は出血や臓器損傷などのリスクが高まるため、避けるべきである。
また、非特許文献8にも、金のナノ粒子を用いたX線マーカーの記載があるが、金粒子の量が少なく視認性が不十分であり、骨がある箇所での視認性も不十分である。
一方、リン酸カルシウムと放射線不透過材料との混合物を用いた技術として、リン酸カルシウムに金粉を約2重量%混合した事例が開示されているが(特許文献1参照)、放射線治療用の病変識別マーカーとしての目的のためには視認性が不十分であり、使用に耐えない。
特許文献2〜4、非特許文献9,10には、各種のリン酸カルシウム系の組成物の記載がある。
本治療では、X線透視で正確な標的病変の位置情報を得るため、臓器に病変識別のための金属マーカーを埋設する(非特許文献1,2参照)。金属マーカーはX線透視画像で腫瘍の位置を示す指標となり、正常組織を可能な限り避け、効率的に病変へ放射線を照射することが可能になる。これによって、治療効果を高めるとともに、周囲の正常組織への放射線照射量を低減し、有害事象の発生のリスクを軽減することができる。
現在、本邦で承認されている放射線治療用マーカーとしては、iGold(登録商標)(メディキット)、VISICOIL(セティメディカルラボ)等がある。
前者は純金製の2mm径の球体で、X線透視での視認性が高く、あらゆる方向から同じ形状で認識可能で、正確な位置情報の把握に優れ、また気管内や消化管、膀胱粘膜への留置も可能である(非特許文献2,3,4,5および6参照)。しかし、経皮的留置の場合は2.55mm径のシースイントロデューサー(筒)を穿刺する必要があり、部位や臓器によっては安全な穿刺経路の確保ができない場合がある。
後者は細径(0.35〜1.10mm)、長さ10〜30mmのコイルで、19G(1.10mm)〜17G(1.25mm)の針で留置が可能であり、穿刺経路の選択は比較的容易である(非特許文献7参照)。しかし、細径のコイルであるため、方向によっては(特に正接方向)X線透視で認識できず、複数個のコイルを留置しなければ位置情報が得られない場合がある。複数回の穿刺は出血や臓器損傷などのリスクが高まるため、避けるべきである。
また、非特許文献8にも、金のナノ粒子を用いたX線マーカーの記載があるが、金粒子の量が少なく視認性が不十分であり、骨がある箇所での視認性も不十分である。
一方、リン酸カルシウムと放射線不透過材料との混合物を用いた技術として、リン酸カルシウムに金粉を約2重量%混合した事例が開示されているが(特許文献1参照)、放射線治療用の病変識別マーカーとしての目的のためには視認性が不十分であり、使用に耐えない。
特許文献2〜4、非特許文献9,10には、各種のリン酸カルシウム系の組成物の記載がある。
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本発明の目的は、X線吸収性のある金属の微粒子を体内の任意の部位に、放射線治療の種類、および、治療標的部位に適した任意の量で留置することが可能であり、かつ放射線治療装置で留置部位を特定できる、放射線治療用の病変識別マーカーおよび放射線治療用の病変識別マーカーキットを提供することにある。
本発明は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。また、本発明は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。
本発明は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。また、本発明は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子と練和液との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記混合物における前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が約1:2以上であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記金属粒子を約5mg以上含むことが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記金属粒子が、金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記金粒子が、純度99重量%以上の純金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物と前記金属粒子と練和液との混合物の20℃における粘度が、104〜106mPa・sの範囲であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記練和液は、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および水を含む練和液、ならびに、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、および水を含む練和液のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
本発明は、金属粒子およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。また、本発明は、金属粒子、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、および練和液を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。
本発明は、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。また、本発明は、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、および練和液を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記金属粒子が、金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記金粒子が、純度99重量%以上の純金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記練和液は、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および水を含む練和液、ならびに、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、および水を含む練和液のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
本発明は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。また、本発明は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子と練和液との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む放射線治療用の病変識別マーカーである。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記混合物における前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が約1:2以上であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記金属粒子を約5mg以上含むことが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記金属粒子が、金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記金粒子が、純度99重量%以上の純金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物と前記金属粒子と練和液との混合物の20℃における粘度が、104〜106mPa・sの範囲であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーにおいて、前記練和液は、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および水を含む練和液、ならびに、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、および水を含む練和液のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
本発明は、金属粒子およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。また、本発明は、金属粒子、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、および練和液を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。
本発明は、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。また、本発明は、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、および練和液を含む放射線治療用の病変識別マーカーキットである。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記金属粒子が、金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記金粒子が、純度99重量%以上の純金粒子であることが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記放射線治療用の病変識別マーカーキットにおいて、前記練和液は、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および水を含む練和液、ならびに、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、および水を含む練和液のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
本発明では、X線吸収性のある金属の微粒子を体内の任意の部位に、放射線治療の種類、および、治療標的部位に適した任意の量で留置することが可能であり、かつ放射線治療装置で留置部位を特定できる、放射線治療用の病変識別マーカーおよび放射線治療用の病変識別マーカーキットを提供することができる。
図1は、純金粒子単独でブタ肝に注入した実験(実施例1)のX線透視画像(A,B,C)およびCT画像(D)である。Aは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約20mgのX線透視写真であり、Bは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約80mgのX線透視写真であり、Cは、粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子約80mgのX線透視写真であり、Dは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約80mgのコンピューター断層画像(CT)である。
図2は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、専用練和液、および純金粒子を混合した場合(実施例2)のX線透視画像(A,B)である。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を単独で注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合である。
図3は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、専用練和液、および純金粒子を混合した場合のX線吸収値の比較(実施例2)を示す図である。
図4は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、専用練和液、および純金粒子を混合した場合(実施例3)のX線透視画像である。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物1.8gと純金粒子1.8gと専用練和液との混合物を注入した場合である。
図5は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子を混合した場合のX線吸収値の比較(実施例3)を示す図である。
図6は、実施例4における、アクリル板厚さ10cmの場合のX線透視画像である。
図7は、実施例5における、胸部ファンム上でのX線透視画像の一例である。
図8は、実施例8における、ブタ肝臓に注入した純金粒子マーカーの胸部ファンム上でのX線透視画像である。
図9は、実施例9における、ブタ肝臓に注入した純金粒子マーカーの胸部ファントム上でのX線透視画像である。
図10は、実施例11における、粒子幅32μm以下の純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図11は、実施例11における、粒子幅33−53μmの純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図12は、実施例11における、粒子幅54−75μmの純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図13は、実施例11における、粒子幅76−150μmの純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図14は、実施例11における、純金粒子を含まないCPC練和物の20℃と5℃における粘度推移を示す図である。
図2は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、専用練和液、および純金粒子を混合した場合(実施例2)のX線透視画像(A,B)である。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を単独で注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合である。
図3は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、専用練和液、および純金粒子を混合した場合のX線吸収値の比較(実施例2)を示す図である。
図4は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、専用練和液、および純金粒子を混合した場合(実施例3)のX線透視画像である。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物1.8gと純金粒子1.8gと専用練和液との混合物を注入した場合である。
図5は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子を混合した場合のX線吸収値の比較(実施例3)を示す図である。
図6は、実施例4における、アクリル板厚さ10cmの場合のX線透視画像である。
図7は、実施例5における、胸部ファンム上でのX線透視画像の一例である。
図8は、実施例8における、ブタ肝臓に注入した純金粒子マーカーの胸部ファンム上でのX線透視画像である。
図9は、実施例9における、ブタ肝臓に注入した純金粒子マーカーの胸部ファントム上でのX線透視画像である。
図10は、実施例11における、粒子幅32μm以下の純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図11は、実施例11における、粒子幅33−53μmの純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図12は、実施例11における、粒子幅54−75μmの純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図13は、実施例11における、粒子幅76−150μmの純金粒子/CPC練和物の粘度推移を示す図である。
図14は、実施例11における、純金粒子を含まないCPC練和物の20℃と5℃における粘度推移を示す図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<放射線治療用の病変識別マーカー>
本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物を含む。本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む。また、本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子と練和液との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む。
本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを混合したもの、またはリン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液とを混合したものを、穿刺針等によって体内の任意の部位に留置、埋設することができるものである。
本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーにより、X線吸収性のある金属の微粒子を体内の任意の部位に、放射線治療の種類、および、治療標的部位に適した任意の量で留置することが可能であり、かつ放射線治療装置で留置部位を特定することができる。従来は使用不可能だったデリバリーシステムによる留置が可能で、従来の2mm径の純金マーカーに匹敵するまたはそれ以上の視認性を有する。体内のあらゆる部位に安全に留置できる病変識別マーカーとして、高精度放射線治療の適応をさらに拡大し、新たな癌治療への道を開拓することができる。本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーにより、従来よりも非常に細い穿刺器具で留置できるため、留置のときの穿刺による出血のリスクが低く、臓器への障害も極めて少ない。また、カテーテルのような細い管から留置することができるため、内視鏡を用いた消化管や気管、気管支内からの留置、尿道を経由した膀胱内への留置、膣を経由した子宮内への留置等も可能であり、侵襲性の面でも従来法より明らかに優れている。
本発明の実施形態に係る病変識別マーカーを体内の任意の部位に留置する方法としては、例えば、留置針の先端にコラーゲンスポンジ等の多孔質体を着装し、金属粒子をそこに充填したものを準備し、リン酸カルシウム系骨補強材含有物および練和液を混合した練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を適量充填したシリンジを着装し、リン酸カルシウム系骨補強材練和物で金属粒子塊を臓器内に押し出す方法や、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、金属粒子および練和液を混合して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製し、それをシリンジに移し、針を着装して、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを含む病変識別マーカーを臓器内に注入する方法等が挙げられる。
リン酸カルシウム系骨補強材練和物等を用いて金属粒子塊を押し出す方法は、少量の金属粒子で高い視認性を示すこと、およびリン酸カルシウム系骨補強材練和物と金属粒子との混合操作が不要という利点がある。
金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を使用する方法は、注入のときにペースト状であるため、針だけではなくカテーテル等からも注入可能であり、カテーテルを経由して消化管粘膜、膵臓、膀胱等へリン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを含む病変識別マーカーを留置することも可能である。
金属粒子としては、例えば、金粒子、プラチナ粒子、ニッケル粒子、銀粒子、チタン粒子、タンタル粒子、タングステン粒子、および酸化鉄粒子等の金属含有粒子、ナイチノール粒子等の金属合金含有粒子等が挙げられ、生体適合性が高い、視認性が良好等の点から、金粒子が好ましく、純度95重量%以上の純金粒子がより好ましく、純度99重量%以上の純金粒子、純度99.9重量%以上の純金粒子、純度99.99重量%以上の純金粒子が特に好ましい。
金属粒子は、球形状または異形状等を有しており、その粒子幅は、小さければ小さいほどよいが、例えば、1mm以下であり、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以下である。金属の微粒子を含む放射線マーカーにおいては、原理的に当該金属粒子の下限はないと考えられるが、強いてあげると、より好ましくは約0.1μmより大きく約0.15mm以下の範囲であり、さらに好ましくは数μm以上(例えば、1μm以上)で約0.15mm以下の範囲である。金属微粒子の粒子幅が視認性に大幅に影響することはほとんどないと考えられるが、金属粒子の粒子幅が1mmを超えると、18G(内径:約0.9mm)前後の注射針やカテーテル内で詰まりやすくなる場合がある。22G(内径:約0.48mm)前後の注射針やカテーテルを使用するのであれば、粒子幅は0.5mmを超えると詰まりやすくなる場合がある。なお、本明細書において、ニラコ社製(品番:AU−174015)以外の純金粒子は、例えば、下記の方法で調製したものを使用した。金属粒子の粒子幅は、下記(A),(C)に示すように、所定の目開き(JIS Z 8801)のフルイの通過および不通過によって決定したものである。
(A)[粒子幅約0.3〜約0.5mmの純金粒子]
(1)純金インゴットを例えば1150℃で加熱溶融する。
(2)カーボンノズルおよび石英ノズルのφ0.1mm孔から噴射させて回転、急冷して純金粒子を作製する。
(3)作製した純金粒子を目開き(JIS Z 8801)0.5mmのフルイにかける。
(4)目開き0.5mmのフルイを通過した純金粒子を目開き0.3mmのフルイにかける。
(5)目開き0.5mmのフルイを通過し、目開き0.3mmのフルイで止まった純金粒子を本明細書では粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子と呼ぶ。
(B)[粒子幅約0.6〜約0.8mmの純金粒子]
(1)純金インゴットを1000〜1200℃で熔解する。
(2)伸線加工にてφ0.5〜0.6mmの線材に加工する。
(3)直径0.7±0.1mmの球状粒子の重量になるように切断する。
(4)切断した金粒子をカーボン鋳型に整列させ、真空加熱炉にて例えば1150℃で加熱し、その後例えば100℃に冷却して約0.7±0.1mmの粒子にし、この得られた純金粒子を本明細書では粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子と呼ぶ。
(C)[粒子幅150〜76μm、75〜54μm、53〜33μm、および32μm以下の純金粒子]
(1)上記(A)とほぼ同じように、カーボンノズルおよび石英ノズルを有するアトマイザーから純金の加熱溶融物を噴霧、急冷して純金粒子を作製する。
(2)目開き(JIS Z 8801)150μm、75μm、53μm、および32μmのフルイをもちいて順に篩い分け、それぞれ150〜76μm、75〜54μm、53〜33μm、および32μm以下の純金粒子を得る。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物を病変識別マーカーとして体内の任意の部位に留置する場合、X線のマーカーとしては、約5mg以上の重量の金属粒子を含むことが好ましく、20mg以上の重量の金属粒子を含むことがより好ましく、40mg以上の重量の金属粒子を含むことがさらに好ましく、80mg以上の重量の金属粒子を含むことが特に好ましい。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、リン酸カルシウム系組成物であり、α型リン酸三カルシウム(例えば、特開2002−255603号公報参照)、リン酸四カルシウム(例えば、特開2002−291866号公報参照)、リン酸水素カルシウム(例えば、特開昭64−037445号公報参照)、もしくはβ型リン酸三カルシウム(例えば、特開2010−075247号公報参照)を主要成分として含むもの等が知られており、これらリン酸カルシウム系骨補強材は、生体内ではハイドロキシアパタイトに変換すると言われており、その化学式は、Ca10(PO4)6(OH)2で示される。
リン酸カルシウム系骨補強材もX線透視下で視認可能だが、放射線治療の際に必要なX線透視下での視認性を確保することが困難であるため、生体適合性の高い純金粒子等の金属粒子の十分量をリン酸カルシウム系骨補強材含有物にできるだけ均等に混合した病変識別マーカーを用いることにより、X線透視下での視認性を十分に確保することができる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、例えば、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含み、その他に、ハイドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、非晶質リン酸カルシウム、およびリン酸カルシウム系ガラス等のリン酸化合物、さらには、多糖、コラーゲン、リン酸カルシウム/コラーゲン複合体、骨形成タンパク質(BMP)、およびインシュリン様因子(IGF)等のうちから選択される少なくとも1つを含んでもよい。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、例えば、粉末形態である。リン酸カルシウム系骨補強材含有物としては、例えば、α型リン酸三カルシウム(75重量%)、リン酸四カルシウム(18重量%)、リン酸水素カルシウム(5重量%)、水酸アパタイト(2重量%)、およびリン酸マグネシウムを含有するバイオペックス−R(HOYA Technosurgical社製)や、リン酸四カルシウム、および無水リン酸水素カルシウムの混合組成物であるセラペースト(日本特殊陶業社製)等を用いることができる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物の練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を作製するための練和液として、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製するための練和液として、リン酸カルシウム系の骨補強材の練和液として用いられるものであればよく、特に制限はないが、例えば、易水溶性のハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩の単独または2種以上の混合液に水と酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、乳酸等)を使用する練和液(特開昭59−88351号公報参照)、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸)の単重合体または共重合体を含有する酸性溶液を用いる練和液(特開昭60−253454号公報参照)、抗菌剤(例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール等)および水溶性高分子(例えば、キチン、キトサン、溶性デンプン、コンドロイチン硫酸およびこれらの塩、カルボキシメチルセルロース等)を含有する練和液(特開平3−267067号公報参照)、コハク酸ナトリウム等の水溶性ナトリウム塩類を含有する練和液(特開平4−12044号公報参照)等が挙げられる。好ましくは、上記を組み合わせたコンドロイチン硫酸エステルナトリウム(コンドロイチン硫酸ナトリウム)、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、注射用水(日本薬局方)等の水等を含む練和液(特開2002−255603号公報参照)、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5(デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5)、注射用水等の水等を含む練和液(特開2002−291866号公報参照)、注射用水等の水からなる練和液等を用いればよい。練和液としては、例えば、コハク酸二ナトリウム無水物(12重量%)、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(5重量%)、亜硫酸水素ナトリウム、および、注射用水(83重量%)を含有する、バイオペックス−Rの専用練和液(HOYA Technosurgical社製)や、セラペーストの硬化液(組成:デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、注射用水)等を用いることができる。また、これら市販の練和液を適当量の注射用水で希釈して使用することもできるが、注射用水のみを練和液として使用すると、練和物の注入の際にシリンジ等の閉塞が起こる場合や、練和物の固化に時間が掛かりすぎる場合もある。
金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物の練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を作製するために使用する練和液の液量としては、当該リン酸カルシウム系骨補強材含有物で推奨されている使用量の1倍(容量比)から3倍(容量比)の範囲が好ましく、1.25倍(容量比)から2.5倍(容量比)の範囲がより好ましく、1.4倍(容量比)から約2倍(容量比)の範囲がさらに好ましい。例えば、バイオペックス−R粉末の30重量%〜50重量%の純金粒子を混合、練和する際にバイオペックス−Rの専用練和液を使用する場合は、バイオペックス−R粉末6gに対して専用練和液1.6mL(推奨使用量)〜4.8mL(約0.27mL/g〜0.8mL/g)の範囲の量が好ましく、2.0mL〜4.0mL(約0.33mL/g〜約0.67mL/g)の範囲の量がより好ましく、約2.2mL〜3.2mL(約0.37mL/g〜約0.53mL/g)の範囲の量が特に好ましい。なお、これらの専用練和液の使用範囲(例えば推奨されている使用量の1倍(容量比)から3倍(容量比))で混合したバイオペックス−R練和物、もしくは金属粒子/バイオペックス−R練和物は、水分含量が80重量%以上であるグルコマンナンを含むゲル状組成物(商品名:蒟蒻畑、株式会社マンナンライフ製)の中に注入した場合、35〜37℃で約1時間以内にいずれも固化することを確認しており、上記範囲の金属粒子を含むリン酸カルシウム系骨補強材含有物と練和液との混合物は、同様に体内でも容易に固化するものと考えられる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和した金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を病変識別マーカーとして用いることにより、留置前はペースト状で、穿刺針で注入可能であり、体内注入後にリン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを含む病変識別マーカーを球状等の固体として組織内等の体内に留まらせることができる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和した金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を病変識別マーカーとして使用する場合、金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物(粉末)との重量比は、1:4(金属粒子濃度:20重量%)以上の高濃度で金属粒子が含まれる練和物が好ましく、金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比は、1:4(金属粒子濃度:20重量%)から1:1(金属濃度:50重量%)の範囲のいずれかの濃度で金属粒子が含まれる練和物がより好ましく、約1:2(金属粒子濃度:30重量%)から1:1(金属濃度:50重量%)の範囲のいずれかの濃度で金属粒子が含まれる練和物がさらに好ましい。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和して得られる混合物である金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物の細い注射針からの排出性は、当該ペーストの粘度に関連する可能性がある。ちなみに、バイオペックス−Rの専用練和液を約1.5倍(容量比)使用した純金粒子/バイオペックス−R練和物を室温(約20℃)で取り扱った場合、練和開始後10〜30分後には22G前後の細い注射針から排出困難になるケースが多発していた。当該練和物を20℃で保持して粘度の推移を調べると、練和開始後10〜20分後には粘度が107〜109mPa・sに達していた。用いた金属粒子/バイオペックス−R練和物の室温(約20℃)で細い注射針から排出可能な時間帯における使用の際に粘度の測定値から判断して、例えば18G(内径:約0.9mm、外径:約1.20mm)〜22G(内径:約0.48mm、外径:約0.70mm)の針で金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を測定対象に注入するときに注入可能な粘度としては、104〜106mPa・sの範囲であり、好ましくは、1×104〜2×105mPa・sの範囲であり、より好ましくは、1.0×104〜1.5×105mPa・sの範囲である。当該練和物の粘度は、練和物の保持温度で粘度推移をコントロール可能であり、同一練和物でもより低温に保持することにより練和開始後の粘度を低く維持(約104mPa・sオーダー)し、排出可能時間を長くすることが可能である。なお、20℃、練和開始約5分後の粘度が104mPa・s未満である練和物は、練和物の硬化に時間がかかる場合や、均一な金属粒子の練和物が得難かったりする場合があり、一方、20℃、練和開始約5分後の練和物の粘度が107〜108mPa・sを超えると、測定対象への注入の際にシリンジ等の閉塞が起こる場合がある。これらの点から、20℃、練和開始約5分後の練和物の粘度が、104〜106mPa・sの範囲であることが好ましい。なお、粘度の測定方法は、実施例で示す通りであるが、実施例での粘度は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液とを混合して20℃で保持した場合の、2分後からの経時的な値である。
<放射線治療用の病変識別マーカーキット>
本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、金属粒子およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む。また、本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む。本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、必要に応じて、リン酸カルシウム系骨補強材含有物の練和物を作製するための、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製するための練和液をさらに含んでもよい。
体内の任意の部位への病変識別マーカーである金属粒子の留置に際して、キットに含まれるリン酸カルシウム系骨補強材含有物と練和液とを混合して、リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製すればよい。または、体内の任意の部位への病変識別マーカーである金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との練和物(金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物)の留置に際して、キットに含まれる金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物と練和液とを混合して、金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製すればよい。または、キットに含まれる金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との混合物とキットに含まれる練和液を、体内の任意の部位へ留置する直前に混合して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製してもよい。
本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、さらに、注入用シリンジ、穿刺針、カテーテル、ワイヤー、注入装置等を含んでもよい。
<放射線治療用の病変識別マーカー>
本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物を含む。本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む。また、本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子と練和液との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含む。
本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを混合したもの、またはリン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液とを混合したものを、穿刺針等によって体内の任意の部位に留置、埋設することができるものである。
本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーにより、X線吸収性のある金属の微粒子を体内の任意の部位に、放射線治療の種類、および、治療標的部位に適した任意の量で留置することが可能であり、かつ放射線治療装置で留置部位を特定することができる。従来は使用不可能だったデリバリーシステムによる留置が可能で、従来の2mm径の純金マーカーに匹敵するまたはそれ以上の視認性を有する。体内のあらゆる部位に安全に留置できる病変識別マーカーとして、高精度放射線治療の適応をさらに拡大し、新たな癌治療への道を開拓することができる。本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーにより、従来よりも非常に細い穿刺器具で留置できるため、留置のときの穿刺による出血のリスクが低く、臓器への障害も極めて少ない。また、カテーテルのような細い管から留置することができるため、内視鏡を用いた消化管や気管、気管支内からの留置、尿道を経由した膀胱内への留置、膣を経由した子宮内への留置等も可能であり、侵襲性の面でも従来法より明らかに優れている。
本発明の実施形態に係る病変識別マーカーを体内の任意の部位に留置する方法としては、例えば、留置針の先端にコラーゲンスポンジ等の多孔質体を着装し、金属粒子をそこに充填したものを準備し、リン酸カルシウム系骨補強材含有物および練和液を混合した練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を適量充填したシリンジを着装し、リン酸カルシウム系骨補強材練和物で金属粒子塊を臓器内に押し出す方法や、リン酸カルシウム系骨補強材含有物、金属粒子および練和液を混合して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製し、それをシリンジに移し、針を着装して、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを含む病変識別マーカーを臓器内に注入する方法等が挙げられる。
リン酸カルシウム系骨補強材練和物等を用いて金属粒子塊を押し出す方法は、少量の金属粒子で高い視認性を示すこと、およびリン酸カルシウム系骨補強材練和物と金属粒子との混合操作が不要という利点がある。
金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を使用する方法は、注入のときにペースト状であるため、針だけではなくカテーテル等からも注入可能であり、カテーテルを経由して消化管粘膜、膵臓、膀胱等へリン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを含む病変識別マーカーを留置することも可能である。
金属粒子としては、例えば、金粒子、プラチナ粒子、ニッケル粒子、銀粒子、チタン粒子、タンタル粒子、タングステン粒子、および酸化鉄粒子等の金属含有粒子、ナイチノール粒子等の金属合金含有粒子等が挙げられ、生体適合性が高い、視認性が良好等の点から、金粒子が好ましく、純度95重量%以上の純金粒子がより好ましく、純度99重量%以上の純金粒子、純度99.9重量%以上の純金粒子、純度99.99重量%以上の純金粒子が特に好ましい。
金属粒子は、球形状または異形状等を有しており、その粒子幅は、小さければ小さいほどよいが、例えば、1mm以下であり、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以下である。金属の微粒子を含む放射線マーカーにおいては、原理的に当該金属粒子の下限はないと考えられるが、強いてあげると、より好ましくは約0.1μmより大きく約0.15mm以下の範囲であり、さらに好ましくは数μm以上(例えば、1μm以上)で約0.15mm以下の範囲である。金属微粒子の粒子幅が視認性に大幅に影響することはほとんどないと考えられるが、金属粒子の粒子幅が1mmを超えると、18G(内径:約0.9mm)前後の注射針やカテーテル内で詰まりやすくなる場合がある。22G(内径:約0.48mm)前後の注射針やカテーテルを使用するのであれば、粒子幅は0.5mmを超えると詰まりやすくなる場合がある。なお、本明細書において、ニラコ社製(品番:AU−174015)以外の純金粒子は、例えば、下記の方法で調製したものを使用した。金属粒子の粒子幅は、下記(A),(C)に示すように、所定の目開き(JIS Z 8801)のフルイの通過および不通過によって決定したものである。
(A)[粒子幅約0.3〜約0.5mmの純金粒子]
(1)純金インゴットを例えば1150℃で加熱溶融する。
(2)カーボンノズルおよび石英ノズルのφ0.1mm孔から噴射させて回転、急冷して純金粒子を作製する。
(3)作製した純金粒子を目開き(JIS Z 8801)0.5mmのフルイにかける。
(4)目開き0.5mmのフルイを通過した純金粒子を目開き0.3mmのフルイにかける。
(5)目開き0.5mmのフルイを通過し、目開き0.3mmのフルイで止まった純金粒子を本明細書では粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子と呼ぶ。
(B)[粒子幅約0.6〜約0.8mmの純金粒子]
(1)純金インゴットを1000〜1200℃で熔解する。
(2)伸線加工にてφ0.5〜0.6mmの線材に加工する。
(3)直径0.7±0.1mmの球状粒子の重量になるように切断する。
(4)切断した金粒子をカーボン鋳型に整列させ、真空加熱炉にて例えば1150℃で加熱し、その後例えば100℃に冷却して約0.7±0.1mmの粒子にし、この得られた純金粒子を本明細書では粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子と呼ぶ。
(C)[粒子幅150〜76μm、75〜54μm、53〜33μm、および32μm以下の純金粒子]
(1)上記(A)とほぼ同じように、カーボンノズルおよび石英ノズルを有するアトマイザーから純金の加熱溶融物を噴霧、急冷して純金粒子を作製する。
(2)目開き(JIS Z 8801)150μm、75μm、53μm、および32μmのフルイをもちいて順に篩い分け、それぞれ150〜76μm、75〜54μm、53〜33μm、および32μm以下の純金粒子を得る。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物を病変識別マーカーとして体内の任意の部位に留置する場合、X線のマーカーとしては、約5mg以上の重量の金属粒子を含むことが好ましく、20mg以上の重量の金属粒子を含むことがより好ましく、40mg以上の重量の金属粒子を含むことがさらに好ましく、80mg以上の重量の金属粒子を含むことが特に好ましい。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、リン酸カルシウム系組成物であり、α型リン酸三カルシウム(例えば、特開2002−255603号公報参照)、リン酸四カルシウム(例えば、特開2002−291866号公報参照)、リン酸水素カルシウム(例えば、特開昭64−037445号公報参照)、もしくはβ型リン酸三カルシウム(例えば、特開2010−075247号公報参照)を主要成分として含むもの等が知られており、これらリン酸カルシウム系骨補強材は、生体内ではハイドロキシアパタイトに変換すると言われており、その化学式は、Ca10(PO4)6(OH)2で示される。
リン酸カルシウム系骨補強材もX線透視下で視認可能だが、放射線治療の際に必要なX線透視下での視認性を確保することが困難であるため、生体適合性の高い純金粒子等の金属粒子の十分量をリン酸カルシウム系骨補強材含有物にできるだけ均等に混合した病変識別マーカーを用いることにより、X線透視下での視認性を十分に確保することができる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、例えば、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含み、その他に、ハイドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、非晶質リン酸カルシウム、およびリン酸カルシウム系ガラス等のリン酸化合物、さらには、多糖、コラーゲン、リン酸カルシウム/コラーゲン複合体、骨形成タンパク質(BMP)、およびインシュリン様因子(IGF)等のうちから選択される少なくとも1つを含んでもよい。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、例えば、粉末形態である。リン酸カルシウム系骨補強材含有物としては、例えば、α型リン酸三カルシウム(75重量%)、リン酸四カルシウム(18重量%)、リン酸水素カルシウム(5重量%)、水酸アパタイト(2重量%)、およびリン酸マグネシウムを含有するバイオペックス−R(HOYA Technosurgical社製)や、リン酸四カルシウム、および無水リン酸水素カルシウムの混合組成物であるセラペースト(日本特殊陶業社製)等を用いることができる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物の練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を作製するための練和液として、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製するための練和液として、リン酸カルシウム系の骨補強材の練和液として用いられるものであればよく、特に制限はないが、例えば、易水溶性のハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩の単独または2種以上の混合液に水と酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、乳酸等)を使用する練和液(特開昭59−88351号公報参照)、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸)の単重合体または共重合体を含有する酸性溶液を用いる練和液(特開昭60−253454号公報参照)、抗菌剤(例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール等)および水溶性高分子(例えば、キチン、キトサン、溶性デンプン、コンドロイチン硫酸およびこれらの塩、カルボキシメチルセルロース等)を含有する練和液(特開平3−267067号公報参照)、コハク酸ナトリウム等の水溶性ナトリウム塩類を含有する練和液(特開平4−12044号公報参照)等が挙げられる。好ましくは、上記を組み合わせたコンドロイチン硫酸エステルナトリウム(コンドロイチン硫酸ナトリウム)、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、注射用水(日本薬局方)等の水等を含む練和液(特開2002−255603号公報参照)、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5(デキストラン硫酸ナトリウム イオウ5)、注射用水等の水等を含む練和液(特開2002−291866号公報参照)、注射用水等の水からなる練和液等を用いればよい。練和液としては、例えば、コハク酸二ナトリウム無水物(12重量%)、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(5重量%)、亜硫酸水素ナトリウム、および、注射用水(83重量%)を含有する、バイオペックス−Rの専用練和液(HOYA Technosurgical社製)や、セラペーストの硬化液(組成:デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、注射用水)等を用いることができる。また、これら市販の練和液を適当量の注射用水で希釈して使用することもできるが、注射用水のみを練和液として使用すると、練和物の注入の際にシリンジ等の閉塞が起こる場合や、練和物の固化に時間が掛かりすぎる場合もある。
金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物の練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を作製するために使用する練和液の液量としては、当該リン酸カルシウム系骨補強材含有物で推奨されている使用量の1倍(容量比)から3倍(容量比)の範囲が好ましく、1.25倍(容量比)から2.5倍(容量比)の範囲がより好ましく、1.4倍(容量比)から約2倍(容量比)の範囲がさらに好ましい。例えば、バイオペックス−R粉末の30重量%〜50重量%の純金粒子を混合、練和する際にバイオペックス−Rの専用練和液を使用する場合は、バイオペックス−R粉末6gに対して専用練和液1.6mL(推奨使用量)〜4.8mL(約0.27mL/g〜0.8mL/g)の範囲の量が好ましく、2.0mL〜4.0mL(約0.33mL/g〜約0.67mL/g)の範囲の量がより好ましく、約2.2mL〜3.2mL(約0.37mL/g〜約0.53mL/g)の範囲の量が特に好ましい。なお、これらの専用練和液の使用範囲(例えば推奨されている使用量の1倍(容量比)から3倍(容量比))で混合したバイオペックス−R練和物、もしくは金属粒子/バイオペックス−R練和物は、水分含量が80重量%以上であるグルコマンナンを含むゲル状組成物(商品名:蒟蒻畑、株式会社マンナンライフ製)の中に注入した場合、35〜37℃で約1時間以内にいずれも固化することを確認しており、上記範囲の金属粒子を含むリン酸カルシウム系骨補強材含有物と練和液との混合物は、同様に体内でも容易に固化するものと考えられる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和した金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を病変識別マーカーとして用いることにより、留置前はペースト状で、穿刺針で注入可能であり、体内注入後にリン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを含む病変識別マーカーを球状等の固体として組織内等の体内に留まらせることができる。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和した金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を病変識別マーカーとして使用する場合、金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物(粉末)との重量比は、1:4(金属粒子濃度:20重量%)以上の高濃度で金属粒子が含まれる練和物が好ましく、金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比は、1:4(金属粒子濃度:20重量%)から1:1(金属濃度:50重量%)の範囲のいずれかの濃度で金属粒子が含まれる練和物がより好ましく、約1:2(金属粒子濃度:30重量%)から1:1(金属濃度:50重量%)の範囲のいずれかの濃度で金属粒子が含まれる練和物がさらに好ましい。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和して得られる混合物である金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物の細い注射針からの排出性は、当該ペーストの粘度に関連する可能性がある。ちなみに、バイオペックス−Rの専用練和液を約1.5倍(容量比)使用した純金粒子/バイオペックス−R練和物を室温(約20℃)で取り扱った場合、練和開始後10〜30分後には22G前後の細い注射針から排出困難になるケースが多発していた。当該練和物を20℃で保持して粘度の推移を調べると、練和開始後10〜20分後には粘度が107〜109mPa・sに達していた。用いた金属粒子/バイオペックス−R練和物の室温(約20℃)で細い注射針から排出可能な時間帯における使用の際に粘度の測定値から判断して、例えば18G(内径:約0.9mm、外径:約1.20mm)〜22G(内径:約0.48mm、外径:約0.70mm)の針で金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を測定対象に注入するときに注入可能な粘度としては、104〜106mPa・sの範囲であり、好ましくは、1×104〜2×105mPa・sの範囲であり、より好ましくは、1.0×104〜1.5×105mPa・sの範囲である。当該練和物の粘度は、練和物の保持温度で粘度推移をコントロール可能であり、同一練和物でもより低温に保持することにより練和開始後の粘度を低く維持(約104mPa・sオーダー)し、排出可能時間を長くすることが可能である。なお、20℃、練和開始約5分後の粘度が104mPa・s未満である練和物は、練和物の硬化に時間がかかる場合や、均一な金属粒子の練和物が得難かったりする場合があり、一方、20℃、練和開始約5分後の練和物の粘度が107〜108mPa・sを超えると、測定対象への注入の際にシリンジ等の閉塞が起こる場合がある。これらの点から、20℃、練和開始約5分後の練和物の粘度が、104〜106mPa・sの範囲であることが好ましい。なお、粘度の測定方法は、実施例で示す通りであるが、実施例での粘度は、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液とを混合して20℃で保持した場合の、2分後からの経時的な値である。
<放射線治療用の病変識別マーカーキット>
本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、金属粒子およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む。また、本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物を含む。本実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、必要に応じて、リン酸カルシウム系骨補強材含有物の練和物を作製するための、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子とを練和して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製するための練和液をさらに含んでもよい。
体内の任意の部位への病変識別マーカーである金属粒子の留置に際して、キットに含まれるリン酸カルシウム系骨補強材含有物と練和液とを混合して、リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製すればよい。または、体内の任意の部位への病変識別マーカーである金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との練和物(金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物)の留置に際して、キットに含まれる金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物と練和液とを混合して、金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製すればよい。または、キットに含まれる金属粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との混合物とキットに含まれる練和液を、体内の任意の部位へ留置する直前に混合して金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製してもよい。
本発明の実施形態に係る放射線治療用の病変識別マーカーキットは、さらに、注入用シリンジ、穿刺針、カテーテル、ワイヤー、注入装置等を含んでもよい。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[純金粒子単独での留置]
(1)実験方法
三方コックに10mL容シリンジを2個着装し、それを用いてバイオペックス−R(スタンダードタイプ)(HOYA社)のリン酸カルシウム系骨補強材含有物(α型リン酸三カルシウム(約70重量%)、リン酸四カルシウム(約18重量%)、リン酸水素カルシウム(約5重量%)、ハイドロキシアパタイト、およびリン酸マグネシウムを含有する粉末)6gと、専用練和液(コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および注射用水を含有)約1.7mLとを混合することによりリン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製し、使用直前まで氷塊中で冷却した。プラスチック製留置針(18ゲージ)の先端にコラーゲンスポンジを着装し、それぞれに表1に記載の重量の純金粒子(純度99.99重量%以上)を充填したものを準備した。それぞれに上記リン酸カルシウム系骨補強材練和物を適量充填した1mL容シリンジを着装し、上記リン酸カルシウム系骨補強材練和物で純金粒子塊を後押しする方法でブタ肝臓に注入した。ただし、特に粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子では、注入途中で純金粒子が詰まり、注入できなかったものもあり、それらに関してはプラスチック留置針の純金粒子塊の部分をハサミで切り取り、ブタ肝臓に埋設した。それらの純金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis zee)を用いてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS)を用いてコンピューター断層画像(CT)を撮像し、純金粒子の留置重量の違いに由来するX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子塊の視認性を客観的に評価した。純金粒子塊の粒子径およびX線吸収値(CT値)は、DICOM(Digital Imaging and Commnication in Medicine)規格コンピューター断層画像(CT)データを用い、画像診断ワークステーション装置(ジェイマック社製、VOXBASE II)の長さ測定機能、X線吸収値(CT値)測定機能を用いて測定した。
図1にX線透視画像(A,B,C)およびCT画像(D)を示す。Aは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約20mgのX線透視写真であり、Bは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約80mgのX線透視写真であり、Cは、粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子約80mgのX線透視写真であり、Dは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約80mgのコンピューター断層画像(CT)である。
(2)結果
純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)約20mgを注入した場合、純金粒子塊の径が小さく、金属密度も低いため、放射線治療用マーカーとして使用する際に視認できない可能性があった(図1A)。純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)約80mgを注入した場合、同約20mgを注入した場合と比較して、純金粒子塊の径が大きく金属密度も高いため、良好な視認性が確保できた(図1B)。また、純金粒子(粒子幅約0.7±0.1mm)約80mgを注入した場合も、良好な視認性が確保できた(図1C)。純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)約80mgを注入した部分のCT画像では、高いX線吸収値(2861±419HU)を有する小結節をブタ肝の内部に認めた(図1D)。
すなわち、本方法で十分な視認性を確保するためには、約20mg以下の純金粒子では不十分な可能性があり、好ましくは約20mg超、より好ましくは約40mg以上の純金粒子、さらに好ましくは、約80mg以上の純金粒子が必要であることが示された。また、本方法では、小さな純金粒子塊でも視認性に問題ないことが判った(図1C)。粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子と粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子とで、同重量の純金粒子を使用した場合、視認性にはほとんど差異がなかった。ただし、特に粒子幅が大きい純金粒子に関しては、デリバリーの方法や、粒子径を安定させる方法については、今後の検討課題である。
<実施例2>
[リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子の練和物の留置(その1)]
(1)実験方法
三方コックに10mL容シリンジを2個着装し、それぞれに表2に記載したようにリン酸カルシウム系骨補強材含有物(バイオペックス−R(スタンダードタイプ)、HOYA社)と粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子(純度99.99重量%以上)を挿入し、さらに専用練和液(コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および注射用水を含有)を表2に示した量を添加後、十分に混合した。混合終了後、1mL容のシリンジに金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を移し、18ゲージの針を着装した。それをブタ肝臓の任意の部位に約0.1〜0.2mL注入した。それらの純金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)を撮像し、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)単独のマーカーと、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子と専用練和液とを混合して得られた金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物のマーカーのX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子の混合による視認性の向上を客観的に評価した。
図2に、X線透視画像(A,B)を示す。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)単独で注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gと専用練和液約1.2mLとの混合物(金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を注入した場合である。図3に、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)単独と、リン酸カルシウム系骨補強材と純金粒子と専用練和液とを混合した場合(金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物)のX線吸収値の比較をそれぞれ示す。
(2)結果
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物単独で注入した場合のX線透視では、視認性が極めて低く、放射線治療用マーカーとしては使用できないことが判った(図2A)。一方、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)1gと専用練和液との混合物を注入した場合、X線視認性が向上することが示された(図2B)。リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合のCTによるX線吸収値では、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物単独の場合と比較し、視認性が明らかに向上し、放射線治療でのマーカーとして使用が可能であることが判った(図3)。
<実施例3>
[リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子の練和物の留置(その2)]
(1)実験方法
二方コックに10mL容シリンジを2個着装し、シリンジの一方に表3に記載したようにリン酸カルシウム系骨補強材含有物(バイオペックス−R(スタンダードタイプ)、HOYA社)と粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子(純度99.99重量%以上)または粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子(純度99.99重量%以上)を入れ、十分に混合した後、専用練和液を表3に示した量を添加し、再度十分に練和した。練和終了後、1mL容のシリンジに金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を移し、18ゲージの針を着装した。それをブタ肝臓の任意の部位に約0.2mL注入した。それらの純金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)を撮像し、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物単独(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)のマーカーと、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子と専用練和液とを混合して得られた金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物のマーカーのX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子の混合による視認性の向上を客観的に評価した。
図4に、X線透視画像を示す。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物1.8gと純金粒子1.8gと専用練和液との混合物を注入した場合である。図5に、表3に示した各種比率でリン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子を混合した場合のX線吸収値の比較をそれぞれ示す。
(2)結果
全般的に、コントロール群(リン酸カルシウム系骨補強材単独群)と比較し、純金粒子混合群では優位に高いX線吸収量が認められた(図5)。ただし、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gの群(試験番号10)では、視認性が優れないものもあった(図5)。一方、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)1gの混合物を注入した場合(試験番号11)、X線透視での視認性は非常に良好で、ほぼ均等に純金粒子が分布する結節が作製されており、放射線治療用マーカーとして使用可能であった(図4A)。さらに、リン酸カルシウム系骨補強材含有物1.8gと純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)1.8gと専用練和液との混合物を注入した場合(試験番号12)は、試験番号11と同様にX線透視での視認性は非常に良好で、ほぼ均等に純金粒子が分布する結節が作製されており、放射線治療用マーカーとして使用可能であることが示された(図4B)。すなわち、X線マーカーとしての用途としては、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gの比率で混和した場合が、より好ましいと言える。また、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子でも粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子を用いた場合でもリン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gの比率で混和した場合、ほぼ同等のX線吸収が認められ(試験番号11および13)、粒子幅約0.4±0.1〜約0.7mm±0.1の純金粒子で十分な目的が達せられることが示された(表3,図4)。
(まとめ)
以上の結果より、以下のことがわかった。
・純金粒子担体単独で臓器内に留置する場合、X線のマーカーとしては、約20mg以下では不十分な可能性があった。約20mgより多いのが好ましく、約40mg以上がより好ましいが、約80mg以上の純金粒子を使用するのがさらに好ましいことがわかった。
・バイオペックス−R(スタンダードタイプ、HOYA社)のようなリン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子との練和物を約0.2mL臓器内に留置してX線マーカーとして使用する場合、純金粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比は、1:4以上の高濃度で純金粒子が含まれる練和物が好ましく、純金粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比は、1:2以上の高濃度で純金粒子が含まれる練和物がより好ましいことがわかった。
・本実験で実施したような方法で、18ゲージ径の穿刺針で臓器内へ留置可能であることが確認でき、この方法は、現行の2mmφの金粒子を留置する方法(2.55mm径のシースイントロデューサー(筒)を穿刺)と比較して、低侵襲性であった。
・特に、純金粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との練和物である金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を使用する方法は、これらマーカーは注入のときにペースト状であるため、針だけではなくカテーテルからも注入可能である。針だけではなくカテーテルからも注入可能であるため、カテーテルを経由して消化管粘膜、膵臓、膀胱等へ留置することが可能である。
・ただし、純金粒子担体単独で臓器内に留置する場合には、それをデリバリーする方法に関して、更なる検討が求められる。
<実施例4>
[画像認識性能確保に必要な純金粒子/CPC混合物中の純金濃度(重量%)と純金粒子量(mg)(その1)]
純金の微粒子を用いた純金粒子/CPC混合物のX線マーカーとしての画像認識性能を調べた。
(1)実験方法
1)純金粒子/CPC練和物の調製
バイオペックス−R(ロングタイプ)(HOYA Technosurgical社;医療機器承認番号:21300BZZ00274000)のリン酸カルシウム系骨補強材含有物(以下、CPCと称す。)約3gと、種々の重量の粉末金粒子(ニラコ社:粒径;1〜2μm、純度:99.99%(品番:AU−174015))、およびバイオペックス−Rの専用練和液約1mLとを付属のすり鉢にて混合することにより、ペースト状のリン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製した。調製した練和物は、表4に示すように、用いた純金粒子重量(g)とバイオペックス−Rの粉末重量(g)との比率の異なる4種の練和物[純金粒子重量(g):バイオペックス−R粉末重量(g)=0:1(純金粒子濃度:0重量%)、1:4(純金粒子濃度:20重量%)、1:2(純金粒子濃度:33重量%)、もしくは、1:1(純金粒子濃度:50重量%)]である。それらをマイクロピペットで、ほぼ一定容量(10、30、または100μL)をn=3〜4で96穴マイクロプレート(丸底)に注入した。それら金粒子/CPC練和物の各注入サンプル当たりの純金粒子の重量を算出するために、金粒子を練和したペーストについては、全ての注入サンプル毎に注入重量(mg)を計測し、当該注入箇所の純金粒子重量(mg)を算出した(表5参照)。なお、上記練和物調製に使用した専用練和液の重量(g)は、使用した液量(mL)に本実験時に求めた当該液の比重(1.1085)を乗じて算出した(表4参照)。上記のようにして調製したサンプルを、以下の画像認識性能試験に供した。
なお、バイオペックス−Rの粉末組成は、α型リン酸三カルシウム(75重量%)、リン酸四カルシウム(18重量%)、リン酸水素カルシウム(5重量%)、水酸アパタイト(2重量%)、およびリン酸マグネシウムを含有すること、また、その専用練和液は、コハク酸二ナトリウム無水物(12重量%)、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(5重量%)、亜硫酸水素ナトリウム、および、注射用水(83重量%)を含有することが報告されている(J.Soc.Inorganic Mat.Jap.,Vol.12,p.262(2005))。
2)画像認識性能の評価
上記の純金粒子/CPC混合物を注入、固化させた96穴プレートをアクリルファントムに載せ、X線透視装置(X線発生装置:島津製作所社製、UD150B−40、X線画像取得用フラットパネルディテクタ:バリアンメディカルシステムズ社製、PaxScan3030)によりX線透視画像を取得した。96穴プレートの各穴に充填した試料の純金粒子の重量および濃度を表6に示した。陽性コントロールとして、現在臨床で用いられている直径1.5mmおよび2.0mmの純金球形マーカー(iGold)を留置した。アクリル板の厚さを1cmから25cmまで段階的に変化させ、X線発生装置の管電圧を110kV、曝射時間を3msecで固定とし、管電流は状況に応じて50mA,80mA,160mAから選択し、各条件においてX線透視画像を100枚程度取得した。各条件で得られた純金粒子マーカーを含む96穴プレートのX線透視画像から、マーカーの視認性を客観的に評価した。また、各条件において、複数の画像のうちの1枚から評価対象とする純金粒子マーカーの画像を切り出してテンプレート画像を作成し、その他の画像に対して、あらかじめ作成したテンプレート画像との正規化相互相関によるテンプレートパターンマッチングを実施し、約100枚の画像に対するテンプレートパターンマッチングから得られる相関係数の平均値が0.3を超えている場合は画像認識可(○)、それ以下の場合には画像認識不可(×)と判定した。画像の階調処理とパターンマッチングには、画像処理ライブラリ(Matrox社製、Matrox Imaging Library 9)を利用した。
(2)結果
アクリル板厚さ10cmの場合のX線透視画像を図6に示した。純金粒子(粒径:1−2μm)とCPCの重量での混合比が1:2(純金濃度:33重量%)以上で、ペースト注入量30〜100μLの場合、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の視認性が認められた。また、その他の評価条件(アクリル厚さ、X線管電流)においても、その傾向は同様であった。言い換えると、純金粒子量が約20mg以上の場合は、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の視認性が認められた。また、テンプレートパターンマッチングによる評価においても、純金粒子量が約20mg以上の場合は、直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の画像認識性能を示した(表6参照)。
また、純金粒子含量を5.5mg、5.2mg、および5.7mg含む練和物(試験練和物の番号:P03)においては、アクリル板の厚さが15cm以下であれば、X線管電流が50mAおよび80mAのいずれの場合も画像認識性能を有することが示された(表6参照)。また、データの詳細を特に示さないが、試験練和物の番号がP02やP04の場合も同様に、純金粒子含量が約5mg以上で20mg未満の場合は、アクリル板の厚さが15cm以下であれば、X線画像認識性能を有することがわかった。
<実施例5>
[純金粒子/CPC混合物の画像認識による追跡性能検証]
(1)実験方法
実施例4にて調製した純金粒子/CPC混合物を含む96穴プレートを1次元駆動制御が可能な可動テーブルの上に載せ、胸部ファントム(京都科学社製、LUNGMAN)の上で呼吸運動を模擬して動作させ、X線透視装置(X線発生装置:島津製作所社製、UD150B−40、X線画像取得用フラットパネルディテクタ:バリアンメディカルシステムズ社製、PaxScan3030)によりX線透視画像を取得した。これにより、呼吸などにより肺の中で動く純金粒子マーカーの状況を再現した。X線発生装置の管電圧を110kV、曝射時間を3msec、撮像の繰り返し15回/秒、管電流を80mAとし、X線透視画像を400枚程度取得した。複数の画像のうちの1枚から評価対象とする純金粒子マーカーの画像を切り出してテンプレート画像を作成し、取得した約400枚の一連の画像に対して、あらかじめ作成したテンプレート画像との正規化相互相関によるテンプレートパターンマッチングを実施し、画像内で動く純金粒子マーカーを画像認識により追跡できるかどうかを確認した。画像の階調処理とパターンマッチングには、画像処理ライブラリ(Matrox社製、Matrox Imaging Library 9)を利用した。
(2)結果
X線透視画像の一例を図7に示した。実際の人体のX線透視のように不均質な画像においても、純金粒子(粒径:1−2μm)とCPCの重量での混合比が1:2(純金濃度:33重量%)以上で、ペースト注入量30〜100μLの場合、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の視認性が認められた。また、動的な追跡性能検証の結果、純金が約20mg以上含まれる純金粒子マーカーは、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの球状純金マーカーと同様に、動きに追従して追跡できるだけの追跡性能を有することを示した。
<実施例6>
[画像認識性能確保に必要な純金粒子/CPC混合物中の純金濃度(重量%)と純金粒子量(mg)(その2)]
金粒子濃度が30重量%、33重量%、または40重量%間で画像認識性能に有意な差があるか否かを調べた。また、金粒子の粒子幅の差異が画像認識性能に有意な差が有るか否かを調べた。
(1)実験方法
1)金粒子濃度の異なる金粒子/CPC練和物の調製
バイオペックス−R(ロングタイプ)(HOYA Technosurgical社)の粉末約3gと、ニラコ社の純金粒子(粒径:1〜2μm)およびバイオペックス−Rの専用練和液約1mLとを付属のすり鉢にて混合することにより、表7に示したように純金粒子含有比率の異なる3種の練和物(金粒子濃度:30重量%、33重量%、もしくは、40重量%)を調製した。それらをマイクロピペットで、ほぼ一定容量(30μL、または、100μL)をn=3で96穴マイクロプレート(丸底)に注入するとともに、実施例4と同様に当該注入箇所の金粒子含量(mg)を算出した(表8参照)。
2)金粒子幅の異なる金粒子/CPC練和物の調製
バイオペックス−R(ロングタイプ)(HOYA Technosurgical社)の粉末約2gと4種の粒子幅の異なる純金粒子(粒子幅32μm以下、33−53μm、54−75μm、および76−150μm)各約1gおよびバイオペックス−Rの専用練和液0.8mLとを付属のすり鉢にて混合することにより、表9に示したような4種のペースト状の練和物を調製した。それらをマイクロピペットで、ほぼ一定容量(30μL、または、100μL)をn=3で96穴マイクロプレート(丸底)に注入するとともに、実施例4と同様に当該注入箇所の金粒子含量を算出した(表10参照)。なお、用いた32μm以下、33−53μm、54−75μm、および76−150μmの純金粒子は、いずれも純度99.99重量%以上であり、加熱溶融させた純金をアトマイザーで噴霧させ得られた純金の微粒子を篩を用いて分画したものである。
3)画像認識性能の評価
上記の純金粒子/CPC混合物を含む96穴プレートをアクリルファントムに載せ、X線透視装置(X線発生装置:島津製作所社製、UD150B−40、X線画像取得用フラットパネルディテクタ:バリアンメディカルシステムズ社製、PaxScan3030)によりX線透視画像を取得した。96穴プレートの各穴に充填した試料の純金粒子(純度99.99重量%以上)の重量および濃度を表8および表10に示した。陽性コントロールとして、現在臨床で用いられている直径1.5mmおよび2.0mmの純金球形マーカー(iGold)を留置した。アクリル板の厚さを1cmから25cmまで段階的に変化させ、X線発生装置の管電圧を110kV、曝射時間を3msecで固定とし、管電流は状況に応じて50mA,80mA,160mAから選択し、各条件においてX線透視画像を100枚程度取得した。各条件において、複数の画像のうちの1枚から評価対象とする純金粒子マーカーの画像を切り出してテンプレート画像を作成し、その他の画像に対して、あらかじめ作成したテンプレート画像との正規化相互相関によるテンプレートパターンマッチングを実施し、約100枚の画像に対するテンプレートパターンマッチングから得られる相関係数の平均値が0.3を超えている場合は画像認識可(○)、それ以下の場合には画像認識不可(×)と判定した。画像の階調処理とパターンマッチングには、画像処理ライブラリ(Matrox社製、Matrox Imaging Library 9)を利用した。
(2)結果
ニラコ社製(粒径:1〜2μm)の純金粒子を使用した純金濃度30重量%、33重量%、40重量%の混合物に対する画像認識の可/不可の評価の結果(それぞれ表11,12,13参照)、純金濃度30−40重量%で、有意な差は認められなかった。粒子幅32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μmの純金粒子の混合物に対する画像認識の可/不可の評価の結果(それぞれ表14,15,16,17参照)、純金の粒子幅(150μm以下)による有意差は見られなかった。また、ニラコ社製(粒径:1〜2μm)および、粒子幅32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μmのいずれの純金粒子においても、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の画像認識性能が認められており、金粒子の粒径による画像認識性能の有意差は見られなかった。なお、表11〜表17中の球形マーカーは、直径1.5mmの純金球形マーカーの画像認識性能を示している。
(3)まとめ
以上の結果より、以下のことがわかった。
・ニラコ社製金粒子(粒径:1〜2μm)サンプルでの評価の結果、金粒子の濃度(30重量%−40重量%)による画像認識性能の大きな変化は見られなかった。
・金粒子の粒子幅(32μm以下、33−53μm、54−74μm、および75−150μm)による画像認識性能の大きな変化は見られなかった。
・各サンプル群において、金の含有量が多いほうが、少ないものと比較して、高い画像認識性能を示した。
・ただし、金の含有量が少ないサンプルにおいても、金の含有量が多いサンプルおよび陽性コントロール用の球形金マーカーと同等以上の画像認識性能を示すものがあった。
・これは、マーカーの形状によりX線の透過長が大きくなり、そのためX線の吸収が大きくなった結果、マーカー部と周辺部の画像のコントラストが高くなったことが1つの原因と考えられる。
・別途、X線画像のピクセル値からX線吸収の簡易評価を行った結果、球形金マーカーと同等の画像認識性能を示すものは、球形金マーカーと同等のX線吸収の程度を示していた。
・以上の結果、金濃度30−50重量%の純金/CPCペーストを、金含量にして約20mg以上注入し、好ましくは球形に近い塊とすれば、X線マーカーとして現在市販されているiGoldと同等の性能を有すると考えられる。
<実施例7>
[異なるCPCを用いた金粒子/CPC練和物をブタ肝臓へ注入した場合の視認性(その1)]
(1)試料の調製法
バイオペックス−Rのエクセレントタイプまたはロングタイプの粉末各約1gと、金粒子(ニラコ社製(粒径:1〜2μm)、または、粒子幅:76−150μm)各約0.5gを付属のすり鉢にて混合し、バイオペックス−Rの専用練和液約0.4−0.6mLとを混合することによって、リン酸カルシウム系骨補強材練和物を3種作製した(表18参照)。これら練和物を適量充填した1mL容シリンジを着装し、18G金属針を用いてブタ肝臓に注入した。それらの金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis Zee Celling)を用いてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS64)を用いてコンピューター断層画像(CT)を撮像し、純金粒子の留置重量の違いに由来するX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子/CPC混合物塊の視認性を評価した。X線吸収値(CT値)は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格コンピューター断層画像(CT)データを用いて測定した。
(2)結果
結果を表19に示す。
<実施例8>
[異なるCPCを用いた純金粒子/CPC練和物をブタ肝臓へ注入した場合の視認性(その2)]
(1)試料の調製法
バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末、またはセラペーストの粉末(組成:リン酸四カルシウム、無水リン酸水素カルシウム)各約1gと、純金粒子(粒子幅:33−53μm)約0.5gを付属のすり鉢にて混合し、それぞれの専用練和液と混合することにより純金粒子/CPC練和物を2種作製した(表20参照)。なお、専用練和液としては、CPC粉末としてバイオペックス−Rを使用した場合は、バイオペックス−Rの専用練和液を0.4mL、CPC粉末としてセラペースト(日本特殊陶業株式会社;医療機器承認番号:21700BZZ00231000)を使用した場合は、セラペーストの硬化液(組成:デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、注射用水)0.3mLと粘度調整水(組成:注射用水)0.2mLを使用した。調製したこれら練和物を適量充填した1mL容シリンジに21G金属針を着装し、ブタ肝臓に注入した。それらの金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis Zee Celling)を用いてX線透視を行った(図8参照)。さらに、コンピューター断層画像(CT)装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS64)を用いてコンピューター断層画像(CT)を撮像しX線吸収値(CT値)を測定、純金粒子/CPC混合物塊の視認性を評価した。X線吸収値(CT値)は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格コンピューター断層画像(CT)データを用いて、画像診断ワークステーション装置(OSIRIX)の長さ測定機能、X線吸収値(CT値)測定機能を用いて測定した。
(2)結果
結果を表21および図8に示す。
(3)まとめ
・約40mg以上の純金粒子を含む純金粒子/CPC練和物のマーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材(CPC)の種類によらず、もしくは、純金粒子の粒度によらず、ブタ肝臓内においても同様なX線視認性を示した。
<実施例9>
[純金粒子/CPC練和物をブタ肝臓へ少量注入した場合の視認性]
(1)試料の調製法
バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末約3gと、純金粒子(粒子幅:33−53μm)約1.5gを付属のすり鉢にて混合後、バイオペックス−Rの専用練和液1.2mLと練和することにより純金粒子/CPC練和物を調製した(表22参照)。調製したこれら練和物を適量充填した1mL容シリンジに21G金属針を着装しブタ肝臓に注入した。それらの金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓を実施例7と同様にヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis Zee Celling)を用いてX線透視を行った(図9参照)。さらに、コンピューター断層画像装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS64)を用いてコンピューター断層画像を撮像、X線吸収値(CT値)を測定、視認性を評価した。
(2)結果
結果を表23および図9に示す。
(3)まとめ
・純金粒子を4.4mg以上含む純金粒子/CPCマーカーは、約3000HUのCT値を示した。
・純金粒子を約20mg以上含む純金粒子/CPCマーカーは、ヒトX線ファントム上のいずれの部位においても十分な視認性が認められた。また、X線の透視を妨げる骨等がない部位においては、純金粒子を4.4mg以上含む純金粒子/CPCマーカーにおいても視認性が認められた(図9)。
・実施例1のように純金粒子を単独で留置した場合では、約20mgの純金粒子を留置した場合でも視認性が十分でなかったが、純金粒子をCPCとの練和物を留置する方法では、約5mg以上の純金粒子を含有する純金粒子/CPCマーカーは、十分な視認性を有することが確認された。
・なお、注入物No.5は、純金粒子/CPC練和物が脈管内に注入、拡散したために、視認性が低下したと考えられる。
<実施例10>
[細い注射針からの排出性試験]
暫定的に、練和開始から注射針から目的部位への注入時間を約5分以内と想定して、室温(約20℃)で練和開始から約5分以内の細い注射針からの排出性を調べた。
(1)試料の調製法
バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末約2gと純金粒子(粒子幅:32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μm)各約1gを付属のすり鉢にて混合し、バイオペックスの専用練和液と混合することにより、もしくは、セラペーストの粉末約1g、純金粒子(粒子幅:32μm以下)約0.5g、およびセラペーストの硬化液等を混合することにより純金粒子/CPC練和物を5種作製した(表24参照)。なお、専用練和液としては、CPC粉末としてバイオペックス−Rを使用した場合は、バイオペックス−Rの専用練和液を0.8mL、CPC粉末としてセラペーストを使用した場合は、セラペーストの硬化液0.3mLと粘度調整水(注射用水)0.2mLを使用した。調製したこれら練和物を適量充填した1mL容シリンジに22G金属針(針長:約4cm)を着装し、室温(約20℃)で練和後約5分以内での当該注射針からの排出性を調査した。
(2)結果
・上記の5種のペースト状練和物は、いずれも問題なく22G注射針から排出された。しかし、25Gでは排出不可能であった。バイオペックス−Rのロングタイプと33重量%の比率で混合された150μm以下の粒子幅の純金粒子とを専用練和液でペースト状にした練和物は、22Gの注射針から排出可能と言える。
・データの詳細を特に示さないが、ニラコ製の金粒子(粒径:1〜2μm、純品番:AU−174015)を、上記と同様にバイオペックス−R(ロングタイプ)との練和物を調製した場合、22G注射針からの排出が出来なかった。ただし、当該金粒子をメノー製乳鉢で再粉砕後、同様に練和物を調製し、22G注射針からの排出性を調べると、問題なく排出された。本実施例で使用したニラコ社製品(品番:AU−174015;粒径1−2μm)の乳鉢粉砕品の粒度分布をレーザー回折・散乱法を用いて測定したところ、粒子径約1μm前後の金粒子も含まれていたが、最小粒径の微粒子としては約0.1μmの粒子が認められた。また、当該乳鉢粉砕品においては、約10〜200μmの範囲にも約50%もの金粒子が存在していた。これらのことはニラコ社製の微小な金属粒子の場合、凝集塊が発生し易いことを示唆している。このような金属の微粒子は、取り扱いが難しく、少なくても数μm以上(例えば、1μm以上)の金属粒子が好ましいと考えられる。
<実施例11>
[純金粒子/CPC練和物の粘度]
(1)試験方法
実施例10で細い注射針からの排出性が確認された4種の純金粒子(粒子幅:32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μm)/CPC練和物について、それらの練和物の約0.6mLを用いて20℃での練和物の粘度を経時的に別途測定した。表25に記載の粉液比で30秒間練和(24℃)後、約0.6mL分取し、練和開始から2分経過後に粘度の測定を開始した(図10、11、12および13のグラフ中の0minは練和開始から2分経過後を示す)。測定中、レオメータの試料チャンバー温度は20℃に保持しながら粘度の測定を行った。試験数は試験条件ごと2検体とした。なお、粘度の測定には、Haake社製、RS−600レオストレスを使用した。
(2)結果
・表24に示す比率で純金粒子、バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末および専用練和液を混合、調製したペーストの20℃での粘度推移を、図10、図11、図12および図13に示す。いずれの場合も練和開始約5分後の粘度は、約6×104〜12×104mPa・sであったが、練和開始後、約10分後(20℃)では、いずれも約107〜109mPa・sに上昇していた。
・22Gの注射針からの排出困難が発生した事例(専用練和液の量が推薦容量の約1.26倍)の場合は、練和開始後5分の時点で、既に1×108mPa・sを超す粘度であった。
・参考までに、金粒子を含まないバイオペックス−R(ロングタイプ)と専用練和液を上記の表と同様の容量比(バイオペックス−R:6g、専用練和液:2.4mL)で練和したものも、20℃で保持した場合、練和開始5分後、および10−12分後の粘度は、それぞれ約8×104mPa・s、および108〜109mPa・sと、金粒子を含む場合(図10、11、12および13)と同様な粘度推移を示した。一方、当該練和物を5℃で保持した場合は、練和開始2分後から約12分後までの粘度は、約3〜5×104mPa・sの間で大幅な変化はなく、その後、急激な上昇が認められた(図14)。すなわち、バイオペックス−R練和物をより低温で保持した場合、練和物の粘度を低い状態で維持できる時間を長くすることができる。
・また、詳細データは特に示さないが、練和水を推薦容量の約1倍(容量比)の場合や約2倍(容量比)の場合においても、金粒子の有無による粘度推移の差異は、ほとんど認められなかった。
・さらに、金粒子を含まないバイオペックス−R(ロングタイプ)と専用練和液の練和物で、専用練和液の使用量が推薦容量の2.5倍(容量比)の場合の練和開始約5分後の20℃での粘度は、約1×104mPa・sであった。
<実施例1>
[純金粒子単独での留置]
(1)実験方法
三方コックに10mL容シリンジを2個着装し、それを用いてバイオペックス−R(スタンダードタイプ)(HOYA社)のリン酸カルシウム系骨補強材含有物(α型リン酸三カルシウム(約70重量%)、リン酸四カルシウム(約18重量%)、リン酸水素カルシウム(約5重量%)、ハイドロキシアパタイト、およびリン酸マグネシウムを含有する粉末)6gと、専用練和液(コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および注射用水を含有)約1.7mLとを混合することによりリン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製し、使用直前まで氷塊中で冷却した。プラスチック製留置針(18ゲージ)の先端にコラーゲンスポンジを着装し、それぞれに表1に記載の重量の純金粒子(純度99.99重量%以上)を充填したものを準備した。それぞれに上記リン酸カルシウム系骨補強材練和物を適量充填した1mL容シリンジを着装し、上記リン酸カルシウム系骨補強材練和物で純金粒子塊を後押しする方法でブタ肝臓に注入した。ただし、特に粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子では、注入途中で純金粒子が詰まり、注入できなかったものもあり、それらに関してはプラスチック留置針の純金粒子塊の部分をハサミで切り取り、ブタ肝臓に埋設した。それらの純金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis zee)を用いてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS)を用いてコンピューター断層画像(CT)を撮像し、純金粒子の留置重量の違いに由来するX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子塊の視認性を客観的に評価した。純金粒子塊の粒子径およびX線吸収値(CT値)は、DICOM(Digital Imaging and Commnication in Medicine)規格コンピューター断層画像(CT)データを用い、画像診断ワークステーション装置(ジェイマック社製、VOXBASE II)の長さ測定機能、X線吸収値(CT値)測定機能を用いて測定した。
図1にX線透視画像(A,B,C)およびCT画像(D)を示す。Aは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約20mgのX線透視写真であり、Bは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約80mgのX線透視写真であり、Cは、粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子約80mgのX線透視写真であり、Dは、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子約80mgのコンピューター断層画像(CT)である。
純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)約20mgを注入した場合、純金粒子塊の径が小さく、金属密度も低いため、放射線治療用マーカーとして使用する際に視認できない可能性があった(図1A)。純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)約80mgを注入した場合、同約20mgを注入した場合と比較して、純金粒子塊の径が大きく金属密度も高いため、良好な視認性が確保できた(図1B)。また、純金粒子(粒子幅約0.7±0.1mm)約80mgを注入した場合も、良好な視認性が確保できた(図1C)。純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)約80mgを注入した部分のCT画像では、高いX線吸収値(2861±419HU)を有する小結節をブタ肝の内部に認めた(図1D)。
すなわち、本方法で十分な視認性を確保するためには、約20mg以下の純金粒子では不十分な可能性があり、好ましくは約20mg超、より好ましくは約40mg以上の純金粒子、さらに好ましくは、約80mg以上の純金粒子が必要であることが示された。また、本方法では、小さな純金粒子塊でも視認性に問題ないことが判った(図1C)。粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子と粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子とで、同重量の純金粒子を使用した場合、視認性にはほとんど差異がなかった。ただし、特に粒子幅が大きい純金粒子に関しては、デリバリーの方法や、粒子径を安定させる方法については、今後の検討課題である。
<実施例2>
[リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子の練和物の留置(その1)]
(1)実験方法
三方コックに10mL容シリンジを2個着装し、それぞれに表2に記載したようにリン酸カルシウム系骨補強材含有物(バイオペックス−R(スタンダードタイプ)、HOYA社)と粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子(純度99.99重量%以上)を挿入し、さらに専用練和液(コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および注射用水を含有)を表2に示した量を添加後、十分に混合した。混合終了後、1mL容のシリンジに金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を移し、18ゲージの針を着装した。それをブタ肝臓の任意の部位に約0.1〜0.2mL注入した。それらの純金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)を撮像し、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)単独のマーカーと、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子と専用練和液とを混合して得られた金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物のマーカーのX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子の混合による視認性の向上を客観的に評価した。
図2に、X線透視画像(A,B)を示す。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)単独で注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gと専用練和液約1.2mLとの混合物(金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物)を注入した場合である。図3に、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)単独と、リン酸カルシウム系骨補強材と純金粒子と専用練和液とを混合した場合(金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物)のX線吸収値の比較をそれぞれ示す。
リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物単独で注入した場合のX線透視では、視認性が極めて低く、放射線治療用マーカーとしては使用できないことが判った(図2A)。一方、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)1gと専用練和液との混合物を注入した場合、X線視認性が向上することが示された(図2B)。リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合のCTによるX線吸収値では、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物単独の場合と比較し、視認性が明らかに向上し、放射線治療でのマーカーとして使用が可能であることが判った(図3)。
<実施例3>
[リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子の練和物の留置(その2)]
(1)実験方法
二方コックに10mL容シリンジを2個着装し、シリンジの一方に表3に記載したようにリン酸カルシウム系骨補強材含有物(バイオペックス−R(スタンダードタイプ)、HOYA社)と粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子(純度99.99重量%以上)または粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子(純度99.99重量%以上)を入れ、十分に混合した後、専用練和液を表3に示した量を添加し、再度十分に練和した。練和終了後、1mL容のシリンジに金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を移し、18ゲージの針を着装した。それをブタ肝臓の任意の部位に約0.2mL注入した。それらの純金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)を撮像し、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と専用練和液との練和物単独(リン酸カルシウム系骨補強材練和物)のマーカーと、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子と専用練和液とを混合して得られた金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物のマーカーのX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子の混合による視認性の向上を客観的に評価した。
図4に、X線透視画像を示す。Aは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gと専用練和液との混合物を注入した場合、Bは、リン酸カルシウム系骨補強材含有物1.8gと純金粒子1.8gと専用練和液との混合物を注入した場合である。図5に、表3に示した各種比率でリン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子を混合した場合のX線吸収値の比較をそれぞれ示す。
(2)結果
全般的に、コントロール群(リン酸カルシウム系骨補強材単独群)と比較し、純金粒子混合群では優位に高いX線吸収量が認められた(図5)。ただし、リン酸カルシウム系骨補強材含有物4gと純金粒子1gの群(試験番号10)では、視認性が優れないものもあった(図5)。一方、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)1gの混合物を注入した場合(試験番号11)、X線透視での視認性は非常に良好で、ほぼ均等に純金粒子が分布する結節が作製されており、放射線治療用マーカーとして使用可能であった(図4A)。さらに、リン酸カルシウム系骨補強材含有物1.8gと純金粒子(粒子幅約0.4±0.1mm)1.8gと専用練和液との混合物を注入した場合(試験番号12)は、試験番号11と同様にX線透視での視認性は非常に良好で、ほぼ均等に純金粒子が分布する結節が作製されており、放射線治療用マーカーとして使用可能であることが示された(図4B)。すなわち、X線マーカーとしての用途としては、リン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gの比率で混和した場合が、より好ましいと言える。また、粒子幅約0.4±0.1mmの純金粒子でも粒子幅約0.7±0.1mmの純金粒子を用いた場合でもリン酸カルシウム系骨補強材含有物2gと純金粒子1gの比率で混和した場合、ほぼ同等のX線吸収が認められ(試験番号11および13)、粒子幅約0.4±0.1〜約0.7mm±0.1の純金粒子で十分な目的が達せられることが示された(表3,図4)。
以上の結果より、以下のことがわかった。
・純金粒子担体単独で臓器内に留置する場合、X線のマーカーとしては、約20mg以下では不十分な可能性があった。約20mgより多いのが好ましく、約40mg以上がより好ましいが、約80mg以上の純金粒子を使用するのがさらに好ましいことがわかった。
・バイオペックス−R(スタンダードタイプ、HOYA社)のようなリン酸カルシウム系骨補強材含有物と純金粒子との練和物を約0.2mL臓器内に留置してX線マーカーとして使用する場合、純金粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比は、1:4以上の高濃度で純金粒子が含まれる練和物が好ましく、純金粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比は、1:2以上の高濃度で純金粒子が含まれる練和物がより好ましいことがわかった。
・本実験で実施したような方法で、18ゲージ径の穿刺針で臓器内へ留置可能であることが確認でき、この方法は、現行の2mmφの金粒子を留置する方法(2.55mm径のシースイントロデューサー(筒)を穿刺)と比較して、低侵襲性であった。
・特に、純金粒子とリン酸カルシウム系骨補強材含有物との練和物である金属粒子含有リン酸カルシウム系骨補強材練和物を使用する方法は、これらマーカーは注入のときにペースト状であるため、針だけではなくカテーテルからも注入可能である。針だけではなくカテーテルからも注入可能であるため、カテーテルを経由して消化管粘膜、膵臓、膀胱等へ留置することが可能である。
・ただし、純金粒子担体単独で臓器内に留置する場合には、それをデリバリーする方法に関して、更なる検討が求められる。
<実施例4>
[画像認識性能確保に必要な純金粒子/CPC混合物中の純金濃度(重量%)と純金粒子量(mg)(その1)]
純金の微粒子を用いた純金粒子/CPC混合物のX線マーカーとしての画像認識性能を調べた。
(1)実験方法
1)純金粒子/CPC練和物の調製
バイオペックス−R(ロングタイプ)(HOYA Technosurgical社;医療機器承認番号:21300BZZ00274000)のリン酸カルシウム系骨補強材含有物(以下、CPCと称す。)約3gと、種々の重量の粉末金粒子(ニラコ社:粒径;1〜2μm、純度:99.99%(品番:AU−174015))、およびバイオペックス−Rの専用練和液約1mLとを付属のすり鉢にて混合することにより、ペースト状のリン酸カルシウム系骨補強材練和物を作製した。調製した練和物は、表4に示すように、用いた純金粒子重量(g)とバイオペックス−Rの粉末重量(g)との比率の異なる4種の練和物[純金粒子重量(g):バイオペックス−R粉末重量(g)=0:1(純金粒子濃度:0重量%)、1:4(純金粒子濃度:20重量%)、1:2(純金粒子濃度:33重量%)、もしくは、1:1(純金粒子濃度:50重量%)]である。それらをマイクロピペットで、ほぼ一定容量(10、30、または100μL)をn=3〜4で96穴マイクロプレート(丸底)に注入した。それら金粒子/CPC練和物の各注入サンプル当たりの純金粒子の重量を算出するために、金粒子を練和したペーストについては、全ての注入サンプル毎に注入重量(mg)を計測し、当該注入箇所の純金粒子重量(mg)を算出した(表5参照)。なお、上記練和物調製に使用した専用練和液の重量(g)は、使用した液量(mL)に本実験時に求めた当該液の比重(1.1085)を乗じて算出した(表4参照)。上記のようにして調製したサンプルを、以下の画像認識性能試験に供した。
2)画像認識性能の評価
上記の純金粒子/CPC混合物を注入、固化させた96穴プレートをアクリルファントムに載せ、X線透視装置(X線発生装置:島津製作所社製、UD150B−40、X線画像取得用フラットパネルディテクタ:バリアンメディカルシステムズ社製、PaxScan3030)によりX線透視画像を取得した。96穴プレートの各穴に充填した試料の純金粒子の重量および濃度を表6に示した。陽性コントロールとして、現在臨床で用いられている直径1.5mmおよび2.0mmの純金球形マーカー(iGold)を留置した。アクリル板の厚さを1cmから25cmまで段階的に変化させ、X線発生装置の管電圧を110kV、曝射時間を3msecで固定とし、管電流は状況に応じて50mA,80mA,160mAから選択し、各条件においてX線透視画像を100枚程度取得した。各条件で得られた純金粒子マーカーを含む96穴プレートのX線透視画像から、マーカーの視認性を客観的に評価した。また、各条件において、複数の画像のうちの1枚から評価対象とする純金粒子マーカーの画像を切り出してテンプレート画像を作成し、その他の画像に対して、あらかじめ作成したテンプレート画像との正規化相互相関によるテンプレートパターンマッチングを実施し、約100枚の画像に対するテンプレートパターンマッチングから得られる相関係数の平均値が0.3を超えている場合は画像認識可(○)、それ以下の場合には画像認識不可(×)と判定した。画像の階調処理とパターンマッチングには、画像処理ライブラリ(Matrox社製、Matrox Imaging Library 9)を利用した。
(2)結果
アクリル板厚さ10cmの場合のX線透視画像を図6に示した。純金粒子(粒径:1−2μm)とCPCの重量での混合比が1:2(純金濃度:33重量%)以上で、ペースト注入量30〜100μLの場合、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の視認性が認められた。また、その他の評価条件(アクリル厚さ、X線管電流)においても、その傾向は同様であった。言い換えると、純金粒子量が約20mg以上の場合は、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の視認性が認められた。また、テンプレートパターンマッチングによる評価においても、純金粒子量が約20mg以上の場合は、直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の画像認識性能を示した(表6参照)。
また、純金粒子含量を5.5mg、5.2mg、および5.7mg含む練和物(試験練和物の番号:P03)においては、アクリル板の厚さが15cm以下であれば、X線管電流が50mAおよび80mAのいずれの場合も画像認識性能を有することが示された(表6参照)。また、データの詳細を特に示さないが、試験練和物の番号がP02やP04の場合も同様に、純金粒子含量が約5mg以上で20mg未満の場合は、アクリル板の厚さが15cm以下であれば、X線画像認識性能を有することがわかった。
[純金粒子/CPC混合物の画像認識による追跡性能検証]
(1)実験方法
実施例4にて調製した純金粒子/CPC混合物を含む96穴プレートを1次元駆動制御が可能な可動テーブルの上に載せ、胸部ファントム(京都科学社製、LUNGMAN)の上で呼吸運動を模擬して動作させ、X線透視装置(X線発生装置:島津製作所社製、UD150B−40、X線画像取得用フラットパネルディテクタ:バリアンメディカルシステムズ社製、PaxScan3030)によりX線透視画像を取得した。これにより、呼吸などにより肺の中で動く純金粒子マーカーの状況を再現した。X線発生装置の管電圧を110kV、曝射時間を3msec、撮像の繰り返し15回/秒、管電流を80mAとし、X線透視画像を400枚程度取得した。複数の画像のうちの1枚から評価対象とする純金粒子マーカーの画像を切り出してテンプレート画像を作成し、取得した約400枚の一連の画像に対して、あらかじめ作成したテンプレート画像との正規化相互相関によるテンプレートパターンマッチングを実施し、画像内で動く純金粒子マーカーを画像認識により追跡できるかどうかを確認した。画像の階調処理とパターンマッチングには、画像処理ライブラリ(Matrox社製、Matrox Imaging Library 9)を利用した。
(2)結果
X線透視画像の一例を図7に示した。実際の人体のX線透視のように不均質な画像においても、純金粒子(粒径:1−2μm)とCPCの重量での混合比が1:2(純金濃度:33重量%)以上で、ペースト注入量30〜100μLの場合、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の視認性が認められた。また、動的な追跡性能検証の結果、純金が約20mg以上含まれる純金粒子マーカーは、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの球状純金マーカーと同様に、動きに追従して追跡できるだけの追跡性能を有することを示した。
<実施例6>
[画像認識性能確保に必要な純金粒子/CPC混合物中の純金濃度(重量%)と純金粒子量(mg)(その2)]
金粒子濃度が30重量%、33重量%、または40重量%間で画像認識性能に有意な差があるか否かを調べた。また、金粒子の粒子幅の差異が画像認識性能に有意な差が有るか否かを調べた。
(1)実験方法
1)金粒子濃度の異なる金粒子/CPC練和物の調製
バイオペックス−R(ロングタイプ)(HOYA Technosurgical社)の粉末約3gと、ニラコ社の純金粒子(粒径:1〜2μm)およびバイオペックス−Rの専用練和液約1mLとを付属のすり鉢にて混合することにより、表7に示したように純金粒子含有比率の異なる3種の練和物(金粒子濃度:30重量%、33重量%、もしくは、40重量%)を調製した。それらをマイクロピペットで、ほぼ一定容量(30μL、または、100μL)をn=3で96穴マイクロプレート(丸底)に注入するとともに、実施例4と同様に当該注入箇所の金粒子含量(mg)を算出した(表8参照)。
バイオペックス−R(ロングタイプ)(HOYA Technosurgical社)の粉末約2gと4種の粒子幅の異なる純金粒子(粒子幅32μm以下、33−53μm、54−75μm、および76−150μm)各約1gおよびバイオペックス−Rの専用練和液0.8mLとを付属のすり鉢にて混合することにより、表9に示したような4種のペースト状の練和物を調製した。それらをマイクロピペットで、ほぼ一定容量(30μL、または、100μL)をn=3で96穴マイクロプレート(丸底)に注入するとともに、実施例4と同様に当該注入箇所の金粒子含量を算出した(表10参照)。なお、用いた32μm以下、33−53μm、54−75μm、および76−150μmの純金粒子は、いずれも純度99.99重量%以上であり、加熱溶融させた純金をアトマイザーで噴霧させ得られた純金の微粒子を篩を用いて分画したものである。
上記の純金粒子/CPC混合物を含む96穴プレートをアクリルファントムに載せ、X線透視装置(X線発生装置:島津製作所社製、UD150B−40、X線画像取得用フラットパネルディテクタ:バリアンメディカルシステムズ社製、PaxScan3030)によりX線透視画像を取得した。96穴プレートの各穴に充填した試料の純金粒子(純度99.99重量%以上)の重量および濃度を表8および表10に示した。陽性コントロールとして、現在臨床で用いられている直径1.5mmおよび2.0mmの純金球形マーカー(iGold)を留置した。アクリル板の厚さを1cmから25cmまで段階的に変化させ、X線発生装置の管電圧を110kV、曝射時間を3msecで固定とし、管電流は状況に応じて50mA,80mA,160mAから選択し、各条件においてX線透視画像を100枚程度取得した。各条件において、複数の画像のうちの1枚から評価対象とする純金粒子マーカーの画像を切り出してテンプレート画像を作成し、その他の画像に対して、あらかじめ作成したテンプレート画像との正規化相互相関によるテンプレートパターンマッチングを実施し、約100枚の画像に対するテンプレートパターンマッチングから得られる相関係数の平均値が0.3を超えている場合は画像認識可(○)、それ以下の場合には画像認識不可(×)と判定した。画像の階調処理とパターンマッチングには、画像処理ライブラリ(Matrox社製、Matrox Imaging Library 9)を利用した。
(2)結果
ニラコ社製(粒径:1〜2μm)の純金粒子を使用した純金濃度30重量%、33重量%、40重量%の混合物に対する画像認識の可/不可の評価の結果(それぞれ表11,12,13参照)、純金濃度30−40重量%で、有意な差は認められなかった。粒子幅32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μmの純金粒子の混合物に対する画像認識の可/不可の評価の結果(それぞれ表14,15,16,17参照)、純金の粒子幅(150μm以下)による有意差は見られなかった。また、ニラコ社製(粒径:1〜2μm)および、粒子幅32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μmのいずれの純金粒子においても、陽性コントロールの直径2mmまたは直径1.5mmの純金球形マーカーと同等もしくはそれ以上の画像認識性能が認められており、金粒子の粒径による画像認識性能の有意差は見られなかった。なお、表11〜表17中の球形マーカーは、直径1.5mmの純金球形マーカーの画像認識性能を示している。
以上の結果より、以下のことがわかった。
・ニラコ社製金粒子(粒径:1〜2μm)サンプルでの評価の結果、金粒子の濃度(30重量%−40重量%)による画像認識性能の大きな変化は見られなかった。
・金粒子の粒子幅(32μm以下、33−53μm、54−74μm、および75−150μm)による画像認識性能の大きな変化は見られなかった。
・各サンプル群において、金の含有量が多いほうが、少ないものと比較して、高い画像認識性能を示した。
・ただし、金の含有量が少ないサンプルにおいても、金の含有量が多いサンプルおよび陽性コントロール用の球形金マーカーと同等以上の画像認識性能を示すものがあった。
・これは、マーカーの形状によりX線の透過長が大きくなり、そのためX線の吸収が大きくなった結果、マーカー部と周辺部の画像のコントラストが高くなったことが1つの原因と考えられる。
・別途、X線画像のピクセル値からX線吸収の簡易評価を行った結果、球形金マーカーと同等の画像認識性能を示すものは、球形金マーカーと同等のX線吸収の程度を示していた。
・以上の結果、金濃度30−50重量%の純金/CPCペーストを、金含量にして約20mg以上注入し、好ましくは球形に近い塊とすれば、X線マーカーとして現在市販されているiGoldと同等の性能を有すると考えられる。
<実施例7>
[異なるCPCを用いた金粒子/CPC練和物をブタ肝臓へ注入した場合の視認性(その1)]
(1)試料の調製法
バイオペックス−Rのエクセレントタイプまたはロングタイプの粉末各約1gと、金粒子(ニラコ社製(粒径:1〜2μm)、または、粒子幅:76−150μm)各約0.5gを付属のすり鉢にて混合し、バイオペックス−Rの専用練和液約0.4−0.6mLとを混合することによって、リン酸カルシウム系骨補強材練和物を3種作製した(表18参照)。これら練和物を適量充填した1mL容シリンジを着装し、18G金属針を用いてブタ肝臓に注入した。それらの金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis Zee Celling)を用いてX線透視を行った。さらに、コンピューター断層画像(CT)装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS64)を用いてコンピューター断層画像(CT)を撮像し、純金粒子の留置重量の違いに由来するX線吸収値(CT値)を測定し、純金粒子/CPC混合物塊の視認性を評価した。X線吸収値(CT値)は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格コンピューター断層画像(CT)データを用いて測定した。
結果を表19に示す。
[異なるCPCを用いた純金粒子/CPC練和物をブタ肝臓へ注入した場合の視認性(その2)]
(1)試料の調製法
バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末、またはセラペーストの粉末(組成:リン酸四カルシウム、無水リン酸水素カルシウム)各約1gと、純金粒子(粒子幅:33−53μm)約0.5gを付属のすり鉢にて混合し、それぞれの専用練和液と混合することにより純金粒子/CPC練和物を2種作製した(表20参照)。なお、専用練和液としては、CPC粉末としてバイオペックス−Rを使用した場合は、バイオペックス−Rの専用練和液を0.4mL、CPC粉末としてセラペースト(日本特殊陶業株式会社;医療機器承認番号:21700BZZ00231000)を使用した場合は、セラペーストの硬化液(組成:デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、注射用水)0.3mLと粘度調整水(組成:注射用水)0.2mLを使用した。調製したこれら練和物を適量充填した1mL容シリンジに21G金属針を着装し、ブタ肝臓に注入した。それらの金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓をヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis Zee Celling)を用いてX線透視を行った(図8参照)。さらに、コンピューター断層画像(CT)装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS64)を用いてコンピューター断層画像(CT)を撮像しX線吸収値(CT値)を測定、純金粒子/CPC混合物塊の視認性を評価した。X線吸収値(CT値)は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格コンピューター断層画像(CT)データを用いて、画像診断ワークステーション装置(OSIRIX)の長さ測定機能、X線吸収値(CT値)測定機能を用いて測定した。
結果を表21および図8に示す。
・約40mg以上の純金粒子を含む純金粒子/CPC練和物のマーカーは、リン酸カルシウム系骨補強材(CPC)の種類によらず、もしくは、純金粒子の粒度によらず、ブタ肝臓内においても同様なX線視認性を示した。
<実施例9>
[純金粒子/CPC練和物をブタ肝臓へ少量注入した場合の視認性]
(1)試料の調製法
バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末約3gと、純金粒子(粒子幅:33−53μm)約1.5gを付属のすり鉢にて混合後、バイオペックス−Rの専用練和液1.2mLと練和することにより純金粒子/CPC練和物を調製した(表22参照)。調製したこれら練和物を適量充填した1mL容シリンジに21G金属針を着装しブタ肝臓に注入した。それらの金粒子マーカーの留置を行ったブタ肝臓を実施例7と同様にヒトX線ファントムに載せてX線透視装置(シーメンス社製、Artis Zee Celling)を用いてX線透視を行った(図9参照)。さらに、コンピューター断層画像装置(シーメンス社製、SOMATOM Definition AS64)を用いてコンピューター断層画像を撮像、X線吸収値(CT値)を測定、視認性を評価した。
結果を表23および図9に示す。
・純金粒子を4.4mg以上含む純金粒子/CPCマーカーは、約3000HUのCT値を示した。
・純金粒子を約20mg以上含む純金粒子/CPCマーカーは、ヒトX線ファントム上のいずれの部位においても十分な視認性が認められた。また、X線の透視を妨げる骨等がない部位においては、純金粒子を4.4mg以上含む純金粒子/CPCマーカーにおいても視認性が認められた(図9)。
・実施例1のように純金粒子を単独で留置した場合では、約20mgの純金粒子を留置した場合でも視認性が十分でなかったが、純金粒子をCPCとの練和物を留置する方法では、約5mg以上の純金粒子を含有する純金粒子/CPCマーカーは、十分な視認性を有することが確認された。
・なお、注入物No.5は、純金粒子/CPC練和物が脈管内に注入、拡散したために、視認性が低下したと考えられる。
<実施例10>
[細い注射針からの排出性試験]
暫定的に、練和開始から注射針から目的部位への注入時間を約5分以内と想定して、室温(約20℃)で練和開始から約5分以内の細い注射針からの排出性を調べた。
(1)試料の調製法
バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末約2gと純金粒子(粒子幅:32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μm)各約1gを付属のすり鉢にて混合し、バイオペックスの専用練和液と混合することにより、もしくは、セラペーストの粉末約1g、純金粒子(粒子幅:32μm以下)約0.5g、およびセラペーストの硬化液等を混合することにより純金粒子/CPC練和物を5種作製した(表24参照)。なお、専用練和液としては、CPC粉末としてバイオペックス−Rを使用した場合は、バイオペックス−Rの専用練和液を0.8mL、CPC粉末としてセラペーストを使用した場合は、セラペーストの硬化液0.3mLと粘度調整水(注射用水)0.2mLを使用した。調製したこれら練和物を適量充填した1mL容シリンジに22G金属針(針長:約4cm)を着装し、室温(約20℃)で練和後約5分以内での当該注射針からの排出性を調査した。
・上記の5種のペースト状練和物は、いずれも問題なく22G注射針から排出された。しかし、25Gでは排出不可能であった。バイオペックス−Rのロングタイプと33重量%の比率で混合された150μm以下の粒子幅の純金粒子とを専用練和液でペースト状にした練和物は、22Gの注射針から排出可能と言える。
・データの詳細を特に示さないが、ニラコ製の金粒子(粒径:1〜2μm、純品番:AU−174015)を、上記と同様にバイオペックス−R(ロングタイプ)との練和物を調製した場合、22G注射針からの排出が出来なかった。ただし、当該金粒子をメノー製乳鉢で再粉砕後、同様に練和物を調製し、22G注射針からの排出性を調べると、問題なく排出された。本実施例で使用したニラコ社製品(品番:AU−174015;粒径1−2μm)の乳鉢粉砕品の粒度分布をレーザー回折・散乱法を用いて測定したところ、粒子径約1μm前後の金粒子も含まれていたが、最小粒径の微粒子としては約0.1μmの粒子が認められた。また、当該乳鉢粉砕品においては、約10〜200μmの範囲にも約50%もの金粒子が存在していた。これらのことはニラコ社製の微小な金属粒子の場合、凝集塊が発生し易いことを示唆している。このような金属の微粒子は、取り扱いが難しく、少なくても数μm以上(例えば、1μm以上)の金属粒子が好ましいと考えられる。
<実施例11>
[純金粒子/CPC練和物の粘度]
(1)試験方法
実施例10で細い注射針からの排出性が確認された4種の純金粒子(粒子幅:32μm以下、33−53μm、54−75μm、または76−150μm)/CPC練和物について、それらの練和物の約0.6mLを用いて20℃での練和物の粘度を経時的に別途測定した。表25に記載の粉液比で30秒間練和(24℃)後、約0.6mL分取し、練和開始から2分経過後に粘度の測定を開始した(図10、11、12および13のグラフ中の0minは練和開始から2分経過後を示す)。測定中、レオメータの試料チャンバー温度は20℃に保持しながら粘度の測定を行った。試験数は試験条件ごと2検体とした。なお、粘度の測定には、Haake社製、RS−600レオストレスを使用した。
・表24に示す比率で純金粒子、バイオペックス−R(ロングタイプ)の粉末および専用練和液を混合、調製したペーストの20℃での粘度推移を、図10、図11、図12および図13に示す。いずれの場合も練和開始約5分後の粘度は、約6×104〜12×104mPa・sであったが、練和開始後、約10分後(20℃)では、いずれも約107〜109mPa・sに上昇していた。
・22Gの注射針からの排出困難が発生した事例(専用練和液の量が推薦容量の約1.26倍)の場合は、練和開始後5分の時点で、既に1×108mPa・sを超す粘度であった。
・参考までに、金粒子を含まないバイオペックス−R(ロングタイプ)と専用練和液を上記の表と同様の容量比(バイオペックス−R:6g、専用練和液:2.4mL)で練和したものも、20℃で保持した場合、練和開始5分後、および10−12分後の粘度は、それぞれ約8×104mPa・s、および108〜109mPa・sと、金粒子を含む場合(図10、11、12および13)と同様な粘度推移を示した。一方、当該練和物を5℃で保持した場合は、練和開始2分後から約12分後までの粘度は、約3〜5×104mPa・sの間で大幅な変化はなく、その後、急激な上昇が認められた(図14)。すなわち、バイオペックス−R練和物をより低温で保持した場合、練和物の粘度を低い状態で維持できる時間を長くすることができる。
・また、詳細データは特に示さないが、練和水を推薦容量の約1倍(容量比)の場合や約2倍(容量比)の場合においても、金粒子の有無による粘度推移の差異は、ほとんど認められなかった。
・さらに、金粒子を含まないバイオペックス−R(ロングタイプ)と専用練和液の練和物で、専用練和液の使用量が推薦容量の2.5倍(容量比)の場合の練和開始約5分後の20℃での粘度は、約1×104mPa・sであった。
Claims (15)
- リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子との混合物、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物を含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。
- リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子との混合物、または、リン酸カルシウム系骨補強材含有物と粒子幅0.5mm以下の金属粒子と練和液との混合物であって、前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が1:4以上である混合物を含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。
- 請求項1または2に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記混合物における前記金属粒子と前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物との重量比が約1:2以上であることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記金属粒子を約5mg以上含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記金属粒子が、金粒子であることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 請求項5に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記金粒子が、純度99重量%以上の純金粒子であることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物と前記金属粒子との混合物、または、前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物と金属粒子と練和液との混合物の20℃における粘度が、104〜106mPa・sの範囲であることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーであって、
前記練和液は、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および水を含む練和液、ならびに、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、および水を含む練和液のうちの少なくとも1つであることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカー。 - 金属粒子およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物、または、金属粒子、リン酸カルシウム系骨補強材含有物および練和液を含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカーキット。
- 粒子幅0.5mm以下の金属粒子、およびリン酸カルシウム系骨補強材含有物、または、粒子幅0.5mm以下の金属粒子、リン酸カルシウム系骨補強材含有物および練和液を含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカーキット。
- 請求項10または11に記載の放射線治療用の病変識別マーカーキットであって、
前記金属粒子が、金粒子であることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカーキット。 - 請求項12に記載の放射線治療用の病変識別マーカーキットであって、
前記金粒子が、純度99重量%以上の純金粒子であることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカーキット。 - 請求項10〜13のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーキットであって、
前記リン酸カルシウム系骨補強材含有物は、α型リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物または水和物)、およびβ型リン酸三カルシウムのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカーキット。 - 請求項10〜14のいずれか1項に記載の放射線治療用の病変識別マーカーキットであって、
前記練和液は、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、コハク酸二ナトリウム無水物、亜硫酸水素ナトリウム、および水を含む練和液、ならびに、デキストラン硫酸エステルナトリウム イオウ5、および水を含む練和液のうちの少なくとも1つであることを特徴とする放射線治療用の病変識別マーカーキット。
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