実施の形態1.
<有機EL素子(1)>
図1は、本発明の第1実施形態の有機EL素子を概略的に示す断面図である。
図1に示す有機EL素子100は、画素回路が形成された基板である回路基板10と、回路基板10上に形成された第2平坦化膜20と、第2平坦化膜20上に複数行複数列に亘って配置された複数の有機EL部31からなる有機EL素子アレイ30と、有機EL素子アレイ30上に形成されたパッシベーション層40と、パッシベーション層40上に配置された波長変換部材50とを備えるアクティブマトリクス駆動方式の画像表示素子である。
そして、有機EL素子100において、有機EL素子アレイ30の有機EL部31は、後述するように白色光を発光することができる。有機EL素子アレイ30は、本発明の第1実施形態の有機EL素子100において発光部であり、少なくとも青色の光を含んで発する光源部を構成する。
また、有機EL素子100において、波長変換部材50は、発光部であって光源となる有機EL素子アレイ30の有機EL部31に対向配置されて有機EL部31からの光の波長を変換する波長変換部として、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bを有する。波長変換部材50の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bはそれぞれ、量子ドットを含有して構成される。
すなわち、有機EL素子100においては、波長変換部材50の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bがそれぞれ量子ドットを含有し、それぞれが波長変換部となる。そして、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bは、有機EL部31に対向配置されて、有機EL部31からの光を赤色光、緑色光または青色光に変換することができる。したがって、有機EL素子100は、波長変換部材50から出射される赤色光、緑色光および青色光の光量を制御することによりカラー画像を形成し、カラー表示を行うことが可能である。
以下、有機EL素子100の各構成要素を具体的に説明する。
回路基板10は、ガラスまたは樹脂等からなる基板11上に例えばスピンオングラス(SOG)からなるバッファ層12を介して形成された複数の画素回路を有する。個々の画素回路には、有機EL素子アレイ30を構成する複数の有機EL部31の各々毎に1つのスイッチング回路が形成されており、これらのスイッチング回路は、平面視上、複数行複数列に亘って行列状に配置されている。各スイッチング回路は、1つの選択用薄膜トランジスタ(以下、薄膜トランジスタを「TFT」と略記する。)と、1つの駆動用TFTと、1対のキャパシタ(保持容量)電極とを含む。図1においては、計4つの選択用TFT15と計4対のキャパシタ電極それぞれにおける一方のキャパシタ電極16とが表れており、駆動用TFTおよび計4対のキャパシタ電極それぞれにおける他方のキャパシタ電極は表れていない。
各選択用TFT15におけるソース13sおよびドレイン13dは、バッファ層12上に形成されたシリコン層13に形成され、これらの選択用TFT15におけるゲート14は、シリコン層13上にゲート絶縁膜(図示せず。)を介して形成される。また、1つの行を構成する各選択用TFT15のソース13sは、コンタクトプラグ17aによってデータライン19に接続され、これらの選択用TFT15それぞれのドレイン13dは、コンタクトプラグ17bによってデータライン19に接続されるとともに、対応する駆動用TFTのゲートと、対応する1対のキャパシタ電極における一方のキャパシタ電極16とに接続される。そして、これらの選択用TFT15それぞれのゲート14は、コンタクトプラグによって1つの選択ライン(いずれも図示せず。)に接続される。
一方、1つの列を構成する各駆動用TFTのソースは1つの電源ラインに接続され、これらの駆動用TFTそれぞれのドレインは、対応する有機EL部31の画素電極31aと、対応する1対のキャパシタ電極における他方のキャパシタ電極とに接続される。尚、各選択用TFT15および各駆動用TFTは、例えば、無機材料によって形成された第1平坦化膜18で覆われる。データライン19は、第1平坦化膜18上に形成される。選択ラインおよび電源ラインは、例えば、バッファ層12上に形成されて第1平坦化膜18により覆われる。
第2平坦化膜20は、無機材料または有機材料によって形成されて、データライン19を覆う。
有機EL素子アレイ30は、複数行複数列に亘って配置された複数の有機EL部31と、当該有機EL素子アレイ30を平面視したときに個々の有機EL部31を取り囲むようにして格子状に形成された隔壁部32とを有する。各有機EL部31は、第2平坦化膜20上に配置された画素電極31aと、画素電極31a上に積層された有機発光層31bと、各有機発光層31bの上面および隔壁部32の上部を覆う1つの共通電極31cにおける有機発光層31b上の領域とによって構成される。これらの有機EL部31は、共通電極31cの側から白色光を出射するトップエミッション型の発光素子である。
個々の有機発光層31bは、例えば、赤色光を出射する赤色有機発光層、緑色光を出射する緑色有機発光層、および青色光を出射する青色有機発光層を順不同で、かつ上下方向に隣り合う有機発光層同士の間に電荷発生層を介在させた状態で画素電極31a上に順次積層することによって形成可能である。あるいは、黄色光を出射する黄色有機発光層と青色有機発光層とを順不同で、かつ黄色有機発光層と青色有機発光層との間に電荷発生層を介在させた状態で画素電極31a上に順次積層することによって形成可能である。有機発光層31bは、上記の積層による各色有機発光層からの光を組み合わせて、白色光を発することができる。
また、有機EL素子アレイ30の隔壁部32は、例えば、樹脂層を形成した後に当該樹脂層をパターニングすることによって、あるいは樹脂材料をインクジェット法や印刷法で所定形状に塗工した後に硬化させることによって形成可能である。
パッシベーション層40は、例えば、透明有機材料によって形成されて、共通電極31cを覆う。
波長変換部材50は、透明無機材料または透明有機材料を用いて形成された基板51と、基板51上に規則的に配置された赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bとを有する。赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52Gおよび青色カラーフィルタ52Bは、有機EL素子100において、カラーフィルタを構成する。すなわち、有機EL素子100の有するカラーフィルタは、赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52Gおよび青色カラーフィルタ52Bを含んで構成される。
基板51は、例えば、ガラス、石英、または、透明樹脂(例えば、透明ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム等)等からなる。そして、赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bの各々は、公知の方法に従い、赤色、緑色、または青色に着色した樹脂材料によって形成されて、例えば、ストライプパターン、モザイクパターン、ベイヤーパターン等の所望パターンの下に配置される。
また、波長変換部材50は、基板51から見て赤色カラーフィルタ52R上に形成された赤色波長変換層53Rと、緑色カラーフィルタ52G上に形成された緑色波長変換層53Gと、青色カラーフィルタ52B上に形成された青色波長変換層53Bとを有する。
赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bは、後述する本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜であり、それぞれ量子ドットを含有して構成される。そして、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bは、それぞれが、有機EL部31からの白色光に含まれる、例えば、青色光等の所定波長範囲の光を、赤色光、緑色光、または青色光に変換する波長変換部となる。尚、以下、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bを、総称して、波長変換層53R,53G,53Bと言うことがある。
そして、例えば、赤色波長変換層53Rは励起光、具体的には有機EL部31からの励起光の照射を受けたときに赤色の蛍光を発する。すなわち、赤色波長変換層53Rは有機EL部31からの光を赤色光に変換する。また、緑色波長変換層53Gは励起光の照射を受けたときに緑色の蛍光を発する。すなわち、緑色波長変換層53Gは有機EL部31からの光を緑色光に変換する。そして、青色波長変換層53Bは励起光の照射を受けたときに青色の蛍光を発する。すなわち、青色波長変換層53Bは有機EL部31からの光を青色光に変換する。
波長変換部材50の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53Bの厚さはそれぞれ、100nm〜100μm程度が好ましく、1μm〜100μmがより好ましい。その厚さが100nm未満であると、励起光を十分吸収することができず、光変換効率が低下するために、表示素子の輝度が十分に確保できないといった問題が生じる。さらに、励起光の吸収を高め、表示素子の輝度を十分に確保するためには、厚さとして、1μm以上とすることが好ましい。
そして、これら赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色波長変換層53Bの各々は、平面視上、1つの有機EL部31と実質的に同じ大きさ、または1つの有機EL部31よりも若干大きな大きさを有し、1つの有機EL部31の上方に1つの波長変換層53R,53G,53Bが位置する。
すなわち、有機EL部31とそれと同様の大きさの波長変換層53R,53G,53Bのそれぞれとは、互いに対向配置され、有機EL部31からの光を赤色光、緑色光または青色光に変換する。そして、波長変換層53R,53G,53Bの側から、波長変換層53R,53G,53Bのそれぞれに対応する有機EL部31を平面視したとき、当該有機EL部31は、対応する波長変換層53R,53G,53Bの外方へは実質的に突出しない。同様に、カラーフィルタ側から、各カラーフィルタ52R,52G,52Bのそれぞれに対応する各波長変換層53R,53G,53Bを平面視したとき、当該波長変換層53R,53G,53Bは、各カラーフィルタ52R,52G,52Bの外方へは実質的に突出しない。そして、カラーフィルタは、有機EL部31と対向配置された波長変換層53R,53G,53Bの反有機EL素子側に設けられている。すなわち、カラーフィルタは、波長変換部の上部に設けられ、波長変換部を挟んで、有機EL部31を含む光源部が配置された側とは反対となる側に配置されている。
さらに、波長変換部材50は、遮光性を有する無機材料または有機材料によって基板51上に形成されたブラックマトリクス54を有する。当該ブラックマトリクス54は、平面視上、各カラーフィルタ52R,52G,52Bを取り囲むとともに、波長変換層53R,53G,53Bのそれぞれを取り囲む。ブラックマトリクス54は、公知の遮光性の材料を用い、公知の方法に従ってパターニングして形成することができる。尚、ブラックマトリクス54は、波長変換部材50において、必須の構成要素ではなく、波長変換部材50は、ブラックマトリクス54を設けない構成とすることも可能である。
この波長変換部材50は、例えば、当該波長変換部材50を単独で作成した後にパッシベーション層40上に貼り合わされる。あるいは、パッシベーション層40上に波長変換層53R,53G,53Bのそれぞれ、各カラーフィルタ52R,52G,52B、およびブラックマトリクス54を順次形成した後に、各カラーフィルタ52R,52G,52Bおよびブラックマトリクス54それぞれの上面上に基板51を貼り合わせることによって形成することができる。
そして、有機EL素子100では、有機EL素子アレイ30からの白色光を励起光とし、波長変換部材50の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色波長変換層53Bのそれぞれによって、その励起光を赤色光、緑色光、および青色光に変換することができる。また、有機EL素子100は、波長変換部材50の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色波長変換層53Bの各々から出射された赤色光、緑色光、および青色光を、各カラーフィルタ52R,52G,52Bを透過させることによって高色純度化することができる。
さらに、有機EL素子100においては、有機EL素子アレイ30の有機EL部31からの光が赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、または青色波長変換層53Bを透過し、波長変換されずに出射された場合に、波長変換部材50の各カラーフィルタ52R,52G,52Bを用いることにより、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、または青色波長変換層53Bを補助するように波長特性の調整を行うことができる。そして、有機EL素子100において、望まれない色の光が素子外に出射されるのを低減することができる。
上述した各構成要素を備えた有機EL素子100では、後述する本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物によって、量子ドットを含有する波長変換層53R,53G,53Bのそれぞれが形成されている。このため、波長変換層53R,53G,53Bはそれぞれ、量子ドットの含有により、優れた蛍光特性、具体的には波長変換効率を示す。また、波長変換層53R,53G,53Bそれぞれの形成時には残渣が生じ難いため、不所望の箇所に波長変換層53R,53G,53Bの残渣が生じたことに起因する画素間での混色も起こり難い。これらの結果として、有機EL素子100は輝度を高め易く、高輝度で高画質の画像表示を行うことができる有機EL装置の構成に用いることができる。
実施の形態2.
<有機EL素子(2)>
図2は、本発明の第2実施形態の有機EL素子を概略的に示す断面図である。
図2に示す第2実施形態の有機EL素子200は、青色光を励起光として用い、波長変換部材150が赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色拡散層151を含むこと以外、第1実施形態の有機EL素子100と同様の構造を有する。したがって、図2に示す第2実施形態の有機EL素子200においては、図1の有機EL素子100と共通する構成要素について同じ符号を付し、その説明を行うようにする。
図2に示す有機EL素子200は、画素回路が形成された回路基板10と、回路基板10上に形成された第2平坦化膜20と、第2平坦化膜20上に複数行複数列に亘って配置された複数の有機EL部131からなる有機EL素子アレイ130と、有機EL素子アレイ130上に形成されたパッシベーション層40と、パッシベーション層40上に配置された波長変換部材150とを備えるアクティブマトリクス駆動方式の画像表示素子である。
そして、有機EL素子200において、有機EL素子アレイ130の有機EL部131は、後述するように青色光を発光することができる。すなわち、有機EL素子アレイ130は、本発明の第2実施形態の有機EL素子200において発光部であり、青色の光を含んで発する光源部を構成する。
また、有機EL素子200において、波長変換部材150は、発光部であって光源となる有機EL素子アレイ130の有機EL部131に対向配置されて有機EL部131からの光の波長を変換する波長変換部として、赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gを有する。そして、さらに、波長変換部材150は、有機EL部131に対向配置されて有機EL部131からの光を拡散させて出射する光拡散層として青色拡散層151を有する。
波長変換部材150の赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gはそれぞれ、量子ドットを含有して構成される。すなわち、有機EL素子200においては、波長変換部材150の赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gがそれぞれ量子ドットを含有し、それぞれが波長変換部となる。そして、赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gは、有機EL部131に対向配置されて、有機EL部131からの青色光を赤色光または緑色光に変換することができる。
また、波長変換部材150の青色拡散層151は、有機EL部131からの青色光を波長変換することなく、同じ波長(色)特性のまま拡散させて出射させることができる。
したがって、有機EL素子200は、波長変換部材150から出射される赤色光、緑色光および青色光の光量を制御することにより、カラー画像を形成し、カラー表示を行うことが可能である。
以下、有機EL素子200の各構成要素を具体的に説明する。
回路基板10は、ガラスまたは樹脂等からなる基板11上に例えばスピンオングラス(SOG)からなるバッファ層12を介して形成された複数の画素回路を有する。個々の画素回路には、有機EL素子アレイ130を構成する複数の有機EL部131の各々毎に1つのスイッチング回路が形成されており、これらのスイッチング回路は、平面視上、複数行複数列に亘って行列状に配置されている。各スイッチング回路は、1つの選択用薄膜トランジスタ(以下、薄膜トランジスタを「TFT」と略記する。)と、1つの駆動用TFTと、1対のキャパシタ(保持容量)電極とを含む。図2においては、計4つの選択用TFT15と計4対のキャパシタ電極それぞれにおける一方のキャパシタ電極16とが表れており、駆動用TFTおよび計4対のキャパシタ電極それぞれにおける他方のキャパシタ電極は表れていない。
各選択用TFT15におけるソース13sおよびドレイン13dは、バッファ層12上に形成されたシリコン層13に形成され、これらの選択用TFT15におけるゲート14は、シリコン層13上にゲート絶縁膜(図示せず。)を介して形成される。また、1つの行を構成する各選択用TFT15のソース13sは、コンタクトプラグ17aによってデータライン19に接続され、これらの選択用TFT15それぞれのドレイン13dは、コンタクトプラグ17bによってデータライン19に接続されるとともに、対応する駆動用TFTのゲートと、対応する1対のキャパシタ電極における一方のキャパシタ電極16とに接続される。そして、これらの選択用TFT15それぞれのゲート14は、コンタクトプラグによって1つの選択ライン(いずれも図示せず。)に接続される。
一方、1つの列を構成する各駆動用TFTのソースは1つの電源ラインに接続され、これらの駆動用TFTそれぞれのドレインは、対応する有機EL部131の画素電極31aと、対応する1対のキャパシタ電極における他方のキャパシタ電極とに接続される。尚、各選択用TFT15および各駆動用TFTは、例えば、無機材料によって形成された第1平坦化膜18で覆われる。データライン19は、第1平坦化膜18上に形成される。選択ラインおよび電源ラインは、例えば、バッファ層12上に形成されて第1平坦化膜18により覆われる。
第2平坦化膜20は、無機材料または有機材料によって形成されて、データライン19を覆う。
有機EL素子アレイ130は、複数行複数列に亘って配置された複数の有機EL部131と、当該有機EL素子アレイ130を平面視したときに個々の有機EL部131を取り囲むようにして格子状に形成された隔壁部32とを有する。各有機EL部131は、第2平坦化膜20上に配置された画素電極31aと、画素電極31a上に積層された有機発光層131bと、各有機発光層131bの上面および隔壁部32の上部を覆う1つの共通電極31cにおける有機発光層131b上の領域とによって構成される。これらの有機EL部131は、共通電極31cの側から白色光を出射するトップエミッション型の発光素子である。
個々の有機発光層131bは、青色光を出射する青色有機発光層を画素電極31a上に積層することによって形成可能である。また、隔壁部32は、例えば、樹脂層を形成した後に当該樹脂層をパターニングすることによって、あるいは樹脂材料をインクジェット法や印刷法で所定形状に塗工した後に硬化させることによって形成可能である。
パッシベーション層40は、例えば、透明有機材料によって形成されて、共通電極31cを覆う。
波長変換部材150は、透明無機材料または透明有機材料を用いて形成された基板51と、基板51上に規則的に配置された赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bとを有する。赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52Gおよび青色カラーフィルタ52Bは、有機EL素子200において、カラーフィルタを構成する。すなわち、有機EL素子200のカラーフィルタは、赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52Gおよび青色カラーフィルタ52Bからなる。
基板51は、ガラス、石英、または、透明樹脂(例えば、透明ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム等)等からなる。そして、赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bの各々は、公知の方法に従い、赤色、緑色、または青色に着色した樹脂材料によって形成されて、例えば、ストライプパターン、モザイクパターン、ベイヤーパターン等の所望パターンの下に配置される。
また、波長変換部材150は、基板51から見て赤色カラーフィルタ52R上に形成された赤色波長変換層53Rと、緑色カラーフィルタ52G上に形成された緑色波長変換層53Gと、青色カラーフィルタ52B上に形成された青色拡散層151とを有する。
波長変換部材150の赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gは、後述する第3実施形態の硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜であり、それぞれ量子ドットを含有して構成される。青色拡散層151は、例えば、母材となる樹脂中に光散乱粒子を分散することによって形成することができる。
そして、波長変換部材150の赤色波長変換層53Rは、励起光、具体的には有機EL部131からの励起光(青色光)の照射を受けたときに、その波長を変換して赤色の蛍光を発し、緑色波長変換層53Gは励起光(青色光)の照射を受けたときに、その波長を変換して緑色の蛍光を発する。そして、青色拡散層151は、有機EL部131からの青色光の照射を受けたときに、その青色光を拡散させて出射させることができる。
波長変換部材150の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色拡散層151の厚さはそれぞれ、100nm〜100μm程度が好ましく、1μm〜100μmがより好ましい。赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gの厚さが100nm未満であると、励起光を十分吸収することができず、光変換効率が低下するために表示素子の輝度が十分に確保できないといった問題が生じる。さらに、励起光の吸収を高め、表示素子の輝度を十分に確保するためには、赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gの厚さとして、1μm以上とすることが好ましい。そして、青色拡散層151は、有機EL素子131からの青色光を効率良く拡散させて出射させることができるように、上記範囲の厚さを有することが好ましい。
そして、これら赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151の各々は、平面視上、1つの有機EL部131と実質的に同じ大きさ、または1つの有機EL部131よりも若干大きな大きさを有し、1つの有機EL部131の上方に1つの波長変換層53R,53Gまたは青色拡散層151が位置する。すなわち、有機EL部131とそれと同様の大きさの波長変換層53R,53Gのぞれぞれとは、互いに対向配置され、有機EL部131からの青色光の波長を変換する。
また、有機EL部131とそれと同様の大きさの青色拡散層151とが対向配置され、有機EL部131からの青色光を拡散させる。
青色拡散層151は、上述したように、成分である樹脂中に光散乱粒子となる透明粒子が分散されて構成されることが好ましい。
青色拡散層151に使用される樹脂としては、従来公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、光透過性を有するものが好ましい。そして、後述する第3実施形態の硬化性樹脂組成物において、量子ドットに代えて、光散乱粒子となる透明粒子を用いて添加し、分散させて使用することが好ましい。そして、その透明粒子を含有する硬化性樹脂組成物を用い、後述する本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法と同様の方法に従い、青色拡散層151を形成することが好ましい。
青色拡散層151に含有される透明粒子としては、有機EL部131からの光を散乱、透過させることができるものであれば特に限定されず、例えば、平均粒径25μm、粒度分布の標準偏差1μmのポリスチレン粒子等を使用することができる。また、青色拡散層151中の透明粒子の含有量は、適宜変更可能であり、特に限定されない。
有機EL素子200において、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151の側から各々に対応する有機EL部131を平面視したとき、当該有機EL部131は、対応する赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151の外方へは実質的に突出しない。同様に、カラーフィルタ側から、各カラーフィルタ52R,52G,52Bのそれぞれに対応する赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151を平面視したとき、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151は、当該各カラーフィルタ52R,52G,52Bの外方へは実質的に突出しない。そして、カラーフィルタは、有機EL部131と対向配置された波長変換層53R,53Gおよび青色拡散層151のそれぞれの反有機EL素子側に設けられている。すなわち、カラーフィルタは、波長変換部の上部に設けられ、波長変換部を挟んで、有機EL部131を含む光源部が配置された側とは反対となる側に配置されている。
さらに、波長変換部材150は、遮光性を有する無機材料または有機材料によって基板51上に形成されたブラックマトリクス54を有する。当該ブラックマトリクス54は、平面視上、各カラーフィルタ52R,52G,52Bを取り囲むとともに、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151を取り囲む。ブラックマトリクス54は、公知の遮光性の材料を用い、公知の方法に従ってパターニングして形成することができる。尚、ブラックマトリクス54は、波長変換部材150において、必須の構成要素ではなく、波長変換部材150は、ブラックマトリクス54を設けない構成とすることも可能である。
この波長変換部材150は、例えば、当該波長変換部材150を単独で作成した後にパッシベーション層40上に貼り合わされる。あるいは、パッシベーション層40上に、赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、青色拡散層151、各カラーフィルタ52R,52G,52B、およびブラックマトリクス54を順次形成した後に、各カラーフィルタ52R,52G,52Bおよびブラックマトリクス54それぞれの上面上に基板51を貼り合わせることによって形成することができる。
そして、有機EL素子200では、有機EL素子アレイ130からの青色光を励起光とし、波長変換部材150の赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gの各々によって、その励起光を赤色光および緑色光に変換することができる。そして、青色拡散層151によって、有機EL素子アレイ130からの青色光を拡散させて出射させることができる。
また、有機EL素子200は、波長変換部材150の赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色拡散層151の各々から出射された赤色光、緑色光、および青色光を、各カラーフィルタ52R,52G,52Bを透過させることによって高色純度化することができる。
さらに、有機EL素子200においては、有機EL素子アレイ130の有機EL部131からの青色光が赤色波長変換層53Rまたは緑色波長変換層53Gを透過し、波長変換されずに出射された場合に、波長変換部材150の各カラーフィルタ52R,52Gを用いることにより、赤色波長変換層53Rまたは緑色波長変換層53Gを補助するように波長特性の調整を行うことができる。そして、有機EL素子アレイ130からの青色光が赤色波長変換層53Rまたは緑色波長変換層53Gで波長変換されずに透過し、素子外に出射されるのを低減することができる。
上述した各構成要素を備えた有機EL素子200では、後述する本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物によって赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gが形成されている。このため、赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gは、優れた蛍光特性、具体的には波長変換効率を示す。また、赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gの形成時には残渣が生じ難いため、不所望の箇所に波長変換層53R,53Gの残渣が生じたことに起因する画素間での混色も起こり難い。これらの結果として、有機EL素子200は輝度を高め易く、高輝度で高画質の画像表示を行うことができる有機EL装置の構成に用いることができる。
実施の形態3.
<硬化性樹脂組成物>
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]同一または異なる重合体分子中に、(a1)酸性基を含む構成単位と(a2)炭素数4〜20の有機基を含む構成単位とを有する重合体(以下、[A]重合体または単に[A]成分とも言う。)、並びに、[B]量子ドット(以下、単に[B]成分とも言う。)を含有してなる硬化性の樹脂組成物である。
そして、上述した[A]重合体の(a2)炭素数4〜20の有機基を含む構成単位は、上述した(a1)酸性基を含む構成単位以外の、炭素数4〜20の有機基を含む構成単位であることが好ましい。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]重合体を含有し、塗布等による膜や層の簡便な形成に好適な樹脂組成物となる。
そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]成分とともに[B]成分の量子ドットを含有することで、[B]量子ドットの含有量を多くしながら[B]量子ドットの良好な分散状態を実現することができる。
一般に量子ドットは、樹脂成分や溶剤等とともに用いられて組成物を構成する場合、組成物中で凝集する傾向があって、良好な分散状態の実現が難しい。量子ドットにおいて、凝集は、その蛍光特性を損なわせることになる。したがって、量子ドットを含有する組成物では、通常、量子ドットを多い量で含有することができない。
そのため、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物では、[B]量子ドットを多く含有しながら、その良好な分散状態を実現するように、樹脂成分である[A]成分が選択されて含有されている。
その結果、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[B]量子ドットを多く含有しながら[B]量子ドットの良好な分散状態が実現された樹脂組成物を形成することができる。そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、塗布等の簡便な形成方法を利用して、[B]量子ドットを多く含有するとともに、それらが分散された層や膜を形成することができる。
また、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は感放射線性を有することができる。そのために、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[C]重合性開始剤(以下、単に[C]成分とも言う。)を含有することが好ましく、さらに、[D]重合性不飽和化合物(以下、単に[D]成分とも言う。)を含有することが好ましい。そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、その感放射線性に基づき、例えば、フォトリソグラフィ法等を利用したパターニングが可能である。
尚、本発明において、露光に際して照射される「放射線」には、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線および荷電粒子線等が含まれる。
また、フォトリソグラフィ法には、加工や処理を受ける基材の表面に、所謂レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程、光や電子線を照射して所定のレジストパターンを露光することによりレジストパターン潜像を形成する露光工程、必要に応じ加熱処理する工程、次いでこれを現像して所望の微細パターンを形成する現像工程、および、この微細パターンをマスクとして基板に対してエッチング等の加工を行う工程等が含まれる。
そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、必要な場合にパターニングが施されて、所望形状にパターニングされた硬化膜を形成することができる。したがって、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部材の波長変換部である赤色波長変換層、緑色波長変換層、および青色波長変換層を形成することができる。本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部材が有する各波長変換層は、樹脂中に[B]量子ドットが含まれて構成される。
以下、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]成分および[B]量子ドットを含有する。そして、本発明の実施形態3の硬化性樹脂組成物は、[B]量子ドットを含有するとともに、[B]量子ドットの良好な分散状態が実現された樹脂組成物を形成することができる。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述したように、塗布等の方法を利用することにより、[B]量子ドットを含有して優れた蛍光発光(波長変換)機能(以下、単に、蛍光性または蛍光特性等とも言う。)を備えた波長変換層を形成し、波長変換部を構成することができる。
また、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は感放射線性を有することができる。そのため、上述したように、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、さらに、[C]重合性開始剤を含有することが好ましく、またさらに、[D]重合性不飽和化合物を含有することが好ましい。
また、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]成分および[B]量子ドット等とともに、[E]安定剤(以下、単に[E]成分とも言う。)を含有することができ、安定した蛍光特性を備えた硬化膜を形成することができ、各波長変換層を形成することができる。
そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、後述するその他の任意成分を含有することができる。
以下で、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の各含有成分についてより詳しく説明する。
〔[A]重合体〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]重合体を含有する。
[A]重合体は、上述したように、同一または異なる重合体分子中に、(a1)酸性基を含む構成単位(以下、単に構成単位(a1)とも言う。)と(a2)炭素数4〜20の有機基を含む構成単位(以下、単に構成単位(a2)とも言う。)とを有しており、必要に応じてその他の構成単位を有していてもよい。
そして、上述したように、[A]重合体の構成単位(a2)は、上述の構成単位(a1)以外の、炭素数4〜20の有機基を含む構成単位であることが好ましい。
すなわち、[A]重合体の態様としては特に限定されず、
(i)同一の重合体分子中に構成単位(a1)および構成単位(a2)の両方を有しており、[A]重合体中に1種の重合体分子が存在する場合;
(ii)一の重合体分子中に構成単位(a1)を有し、それとは異なる重合体分子中に構成単位(a2)の両方を有しており、[A]重合体中に2種の重合体分子が存在する場合;
(iii)一の重合体分子中に構成単位(a1)および構成単位(a2)の両方を有し、それとは異なる重合体分子中に構成単位(a1)を有し、これらとはさらに異なる重合体分子中に構成単位(a2)を有しており、[A]重合体中に3種の重合体分子が存在する場合;
(iv)(i)〜(iii)に規定の重合体分子に加え、[A]重合体中にさらに別の1種または2種以上の重合体分子を含む場合等が挙げられる。
構成単位(a1)に含まれる酸性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホ基を挙げることができ、カルボキシル基が好ましい。
構成単位(a1)に含まれる有機基としては、炭素数4〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、炭素数が20以下の芳香族炭化水素基、並びにこれらの脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の1つ以上の水素原子が、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトリル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、メルカプト基、スルホ基で置換された基を挙げることができる。
上記の脂肪族炭化水素基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖状アルキル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
また、上記の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル、シクロオクチル、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
また、上記の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
そして、構成単位(a1)に含まれる有機基としては、炭素数4〜20の脂肪族炭化水素基およびその脂肪族炭化水素基の1つ以上の水素原子が、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトリル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、メルカプト基、スルホ基で置換された基が好ましい。
[A]重合体は、構成単位(a1)を与える単量体、構成単位(a2)を与える単量体、その他の構成単位を与える単量体のラジカル共重合により製造できる。同一の重合体分子に構成単位(a1)および構成単位(a2)の両方を含む[A]重合体を製造する場合は、少なくとも構成単位(a1)を与える単量体と構成単位(a2)を与える単量体とを含む混合物を用いて共重合させればよい。一方、一の重合体分子に構成単位(a1)を有し、かつそれとは異なる重合体分子に構成単位(a2)を有する[A]重合体を製造する場合は、少なくとも構成単位(a1)を与える単量体を含む重合性溶液をラジカル重合させて構成単位(a1)を有する重合体分子を得ておき、別途少なくとも構成単位(a2)を与える単量体を含む重合性溶液をラジカル重合させて構成単位(a2)を有する重合体分子を得て、最後に両者を混合して[A]重合体とすればよい。
[A]重合体における構成単位(a1)の含有量としては、一の重合体分子に構成単位(a1)と構成単位(a2)とを含む場合、[A]重合体に含まれる全構成単位に対して、単量体仕込み比で、5質量%〜70質量%が好ましく、10質量%〜60質量%がより好ましく、20質量%〜50質量%が特に好ましい。
一方、一の重合体分子に構成単位(a1)を有し、かつ別の一の重合体分子に構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a1)を有する一の重合体分子における構成単位(a1)の含有量としては、その重合体分子に含まれる全構造単位に対して、単量体仕込み比で、40質量%〜99質量%が好ましく、50質量%〜98質量%以下がより好ましく、55質量%〜95質量%が特に好ましい。
また、[A]重合体における構成単位(a2)の含有量としては、一の重合体分子に構成単位(a1)と構成単位(a2)とを含む場合、[A]重合体に含まれる全構成単位に対して、単量体仕込み比で、10質量%以上60質量%以下が好ましく、15質量%以上55質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下が特に好ましい。
一方、一の重合体分子に構成単位(a1)を有し、かつ別の一の重合体分子に構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a2)を有する一の重合体分子における構成単位(a2)の含有量としては、その重合体分子に含まれる全構成単位に対して、単量体仕込み比で、10質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上70質量%以下がより好ましく、25質量%以上60質量%以下が特に好ましい。
以上で説明した[A]重合体は、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有されて、溶解または分散される。本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]成分とともに後述する[B]成分の量子ドットを含有し、[B]量子ドットの含有量を多くしながら[B]量子ドットの良好な分散状態を実現することができる。そして、塗布等の簡便な形成方法を利用して、[B]量子ドットを含む層や膜を得るための樹脂組成物を形成することができる。
[A]重合体は硬化性樹脂組成物の全質量中5質量%以上含むことが望ましく、10質量%以上含むことがより好ましい。[A]重合体が硬化性樹脂組成物の全質量中5質量%より少ない場合は、硬化性樹脂組成物から得られる塗膜の厚さを十分に確保できなくなる。
〔[B]量子ドット〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の必須の成分である[B]量子ドットは、半導体材料を用いて構成された半導体量子ドットであることが好ましい。そして、[B]量子ドットは、CdやPbを構成成分とせず、例えば、In(インジウム)やSi(珪素)等を構成成分として構成された、安全な材料からなる量子ドットであることが好ましい。
したがって、[B]量子ドットは、2族元素、11族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素および16族元素で示される元素の群から選ばれる少なくとも2種以上の元素を含む化合物からなる、量子ドットであることが好ましい。
そして、より具体的には、人に対する安全性について懸念の大きい、例えば、PbおよびCd等の元素が除外され、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Cu(銅)、Ag(銀)、金(Au)、亜鉛(Zn)、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Tl(タリウム)、C(炭素)、Si(珪素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(錫)、N(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)、O(酸素)、S(硫黄)、Se(セレン)、Te(テルル)およびPo(ポロニウム)よりなる群から選ばれる少なくとも2種以上の元素を含む化合物からなる、量子ドットであることが好ましい。
このとき、[B]量子ドットが500nm〜600nmの波長領域に蛍光極大を有する化合物(a)および/または600nm〜700nmの波長領域に蛍光極大を有する化合物(b)からなることが好ましい。
[B]量子ドットは、このような蛍光発光特性を有する化合物(a)および/または化合物(b)からなることで、500nm〜600nmの波長領域、および/または、600nm〜700nmの波長領域に蛍光極大を有することができる。その結果、[B]量子ドットを含有する本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、可視域の光を出射するCCM方式の有機EL素子における各波長変換層を形成することができる。
すなわち、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物では、所望とする蛍光発光特性を有する[B]量子ドットを含有させることで、例えば、上述した本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子100,200の波長変換部材50,150の波長変換部である赤色波長変換層53Rを形成するための硬化性樹脂組成物や、緑色波長変換層53Gを形成するための硬化性樹脂組成物や、青色波長変換層53Bを形成するための硬化性樹脂組成物として使用することができる。
そしてさらに、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[B]量子ドットが、Inを構成成分として含む化合物からなる量子ドットであることがより好ましい。またほかに、[B]量子ドットとしては、SiまたはSi化合物を挙げることができる。
[B]量子ドットとして、SiまたはSi化合物のうち、Siが特に好ましい。
[B]量子ドットの成分構成を上述のようにすることで、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、安全で、より優れた蛍光特性を有する硬化膜を形成することができ、さらには、安全で、より優れた蛍光特性を有する、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子100,200の波長変換部材50,150の波長変換部である各波長変換層53R、53G、53Bを形成することができる。
また、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[B]量子ドットは、1種の化合物からなる均質構造型、および、2種以上の化合物からなるコアシェル構造型から選ばれる少なくとも一方の構造型の量子ドットであることが好ましい。
コアシェル構造型の[B]量子ドットは、1つの種類の化合物でコア構造を形成し、別の化合物でコア構造の周囲を被覆して構成される。例えば、エネルギーバンドギャップのより大きい半導体でコアの半導体を被覆することにより、光励起によって生成された励起子(電子−正孔対)はコア内に閉じ込められる。その結果、量子ドット表面での無輻射遷移の確率が減少し、発光の量子収率および[B]量子ドットの蛍光特性の安定性が向上する。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[B]量子ドットは、成分構成と構造を考慮した場合、コアシェル構造型量子ドットであるInP/ZnS、CuInS2/ZnS、および(ZnS/AgInS2)固溶体/ZnS、並びに、均質構造型量子ドットであるAgInS2およびZnドープAgInS2よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
以上より、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[B]量子ドットは、InP/ZnS化合物、CuInS2/ZnS化合物、AgInS2化合物、(ZnS/AgInS2)固溶体/ZnS化合物、ZnドープAgInS2化合物およびSi化合物の群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
以上で例示した[B]量子ドットにより、それを含有する本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、安全で、優れた蛍光特性を有する硬化膜を形成することができる。そして、優れた蛍光特性を備えた、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部材の波長変換部である各波長変換層を形成することができる。
また、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[B]量子ドットは、平均粒径が0.5nm〜20nmであることが好ましく、1.0nm〜10nmであることがより好ましい。平均粒径が0.5nm未満である場合には、[B]量子ドットを調製することが難しく、調製ができたとしても、[B]量子ドットの蛍光特性が不安定になる場合がある。[B]量子ドットの平均粒径が20nmを超える場合には、量子ドットの大きさによる量子閉じ込め効果が得られない場合があって、所望とする蛍光特性が得られず、望ましくない。
また、[B]量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であっても良い。量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[B]量子ドットを得る方法としては、配位性有機溶媒中で有機金属化合物を熱分解する公知の方法を利用することができる。また、コアシェル構造型の量子ドットは、反応により均質なコア構造を形成した後、反応系内に、コア表面にシェルを形成するための前駆体を添加し、シェル形成の後、反応を停止し、溶媒から分離することで得ることができる。尚、市販されているものを利用することも可能である。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物における[B]量子ドットの含有量としては、上述した[A]成分100質量部に対して、好ましくは、0.1質量部〜100質量部、より好ましくは0.2質量部〜50質量部である。[B]量子ドットの含有量を上述の範囲とすることで、優れた蛍光特性を有する硬化膜を形成し、その結果、優れた蛍光特性を備えた波長変換部材の波長変換部である各波長変換層を形成することができる。[B]量子ドットの含有量が、[A]成分100質量部に対して、0.1質量部より少ないと、形成される硬化膜において所望とする蛍光特性を得ることができず、所望とする特性の波長変換部材の波長変換層を形成することができない。また、[A]成分100質量部に対して、100質量部より多いと、形成される硬化膜の安定性が損なわれ、有機EL素子において、安定な各波長変換層を形成することができない。
〔[C]重合開始剤〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、さらに[C]重合開始剤を含有することができる。本実施形態の[C]重合開始剤は、放射線に感応して重合性基を有する化合物の重合を開始しうる活性種を生じるものが好ましい。したがって、本実施形態の[C]重合開始剤は、感放射線性の重合開始剤、すなわち、感放射線性重合開始剤が好ましい。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[C]重合開始剤を含有することで、感放射線性を高め、パターニング性を向上させることができる。そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、フォトリソグラフィ法等の公知のパターニング方法を利用して、パターニングされた硬化膜を形成することができ、有機EL素子の波長変換部材の波長変換部である各波長変換層を簡便に形成することができる。また、[C]重合開始剤は、後述する[D]重合性不飽和化合物とともに用いられ、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有されることが好ましい。それによって、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、架橋反応性をより向上させることができ、この硬化性樹脂組成物から形成される波長変換部材の各波長変換層の強度および基材との密着性をさらに高めことができる。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物において、[C]重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。尚、[C]重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記オキシムエステル化合物としては、例えば、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9H−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等のO−アシルオキシム化合物等が挙げられる。
上述した中で、オキシムエステル化合物としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
上記アセトフェノン化合物としては、例えば、α−アミノケトン化合物挙げられる。
上記α−アミノケトン化合物としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
上記アセトフェノン化合物としては、α−アミノケトン化合物が好ましく、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンがより好ましい。
上記ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。これらの中では、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールがより好ましい。
[C]重合開始剤としては、市販品を使用してもよく、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)907)、2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア379)、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](イルガキュア(登録商標)OXE01)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(イルガキュア(登録商標)OXE02)(以上、BASFジャパン社製)等が挙げられる。
さらに、[C]重合開始剤は、分子中に窒素原子を有さない重合開始剤であることが好ましい。このような構造を備えた[C]重合開始剤とすることで、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、蛍光特性のより優れた、有機EL素子の波長変換層を簡便に形成することができる。
このような分子中に窒素原子を有さない重合開始剤の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(登録商標)651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(登録商標)184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)1173)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)2959)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(Darocur(登録商標)MBF)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(LUCIRIN(登録商標)TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア(登録商標)819)等が挙げられる。
[C]重合開始剤の含有量としては、[A]成分100質量部に対して、0.1質量部〜40質量部が好ましく、0.5質量部〜20質量部がより好ましい。[C]重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、低露光量の場合でも良好なパターニング性を示し、また、十分な表面硬度および密着性を有する硬化膜を形成して、有機EL素子の波長変換層を提供することができる。
〔[D]重合性不飽和化合物〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、さらに[D]重合性不飽和化合物を含有することができる。本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有される[D]重合性不飽和化合物は、重合性の不飽和構造を有する化合物である。本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物が[D]重合性不飽和化合物を含有することで架橋反応性を高めることができる。そして、この硬化性樹脂組成物から形成される、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部材の波長変換部である各波長変換層において、強度および基材との密着性を向上させることができる。その場合、[D]重合性不飽和化合物は、上述した[C]重合開始剤とともに用いられ、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物に含有されることが好ましい。
このような[D]重合性不飽和化合物としては、重合性が良好であり、得られる硬化膜の強度が向上するという観点から、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
上述した単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックスM−101、同M−111、同M−114、同M−5300(以上、東亞合成社製);KAYARAD TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬社製);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業社製)等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成社製);KAYARAD(登録商標)HDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬社);ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社製);ライトアクリレート(登録商標)1,9−NDA(共栄社化学社製)等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの他、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基とを有し、かつ3個、4個または5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亞合成社製);KAYARAD(登録商標)TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DPEA−12(以上、日本化薬社);ビスコート(登録商標)295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業社製);多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品としては、ニューフロンティア(登録商標)R−1150(第一工業製薬社製)、KAYARAD(登録商標)DPHA−40H(日本化薬社製)等が挙げられる。
これらの[D]重合性不飽和化合物のうち、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートや、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品等が好ましい。
上述した[D]重合性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物における[D]重合性不飽和化合物の使用割合としては、[A]成分100質量部に対して、30質量部〜250質量部が好ましく、50質量部〜200質量部がより好ましい。[D]重合性不飽和化合物の使用量が30質量部〜250質量部の場合、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の感度および得られる硬化膜の耐熱性がより良好となり、ひいては、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部である各波長変換層において、耐熱性がより良好となる。
〔[E]安定剤〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、さらに、[E]安定剤を含有することができる。本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物が、[A]成分や[B]成分等の必須の成分に加え、さらに[E]安定剤を含有することで、それを用いて得られる本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部である各波長変換層において、光変換効率を向上させることできる。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の成分として好ましい[E]安定剤としては、ホスファイト系酸化防止剤を挙げることができる。ホスファイト系酸化防止剤は、ホスファイト構造を有する化合物からなる。またその他に、[E]安定剤としては、ホスフィン化合物、フェノール化合物、ヒンダードフェノール構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物およびチオエーテル構造を有する化合物等を挙げることができる。
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等を挙げることができる。市販品としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)PEP−36、同PEP−4C、同PEP−8、同PEP−8F、同PEP−8W、同PEP−11C、同PEP−24G、同HP−10、同2112、同260、アデカスタブ(登録商標)P、アデカスタブ(登録商標)QL、同522A、同329K、同1178、同1500、アデカスタブ(登録商標)C、同135A、同3010、アデカスタブ(登録商標)TPP、(以上、アデカ社製)、Irgafos(登録商標)38、Irgafos(登録商標)168、Irgafos(登録商標)P−EPQ(以上、いずれもBASFジャパン社製)等を挙げることができる。
ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリス(2,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン等を挙げることができる。市販品としては、例えば、TPP、DPCP、TOTP、TMTP、TPTP、(以上、いずれも北興化学社製)等を挙げることができる。
これらのうち、特に下記式で示されるような芳香族を有するホスファイト系酸化防止剤あるいはホスフィン化合物が好ましい。
上記式中、RAは、単結合または酸素原子を示す。RBは、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基を示す。RCは炭素数1〜30の炭化水素基を示す。nは1〜3の整数を示し、mは0〜5の整数を示す。
上記式のRBとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
上記式のRCとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基に由来する炭化水素基を挙げることができる。
上述したフェノール化合物としては、例えば、4−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール等が挙げられる。
上述したヒンダードフェノール構造を有する化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、3,3’,3’’,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。
上述のヒンダードフェノール構造を有する化合物の市販品としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)AO−20、同AO−30、同AO−40、同AO−50、同AO−60、同AO−70、同AO−80、同AO−330(以上、アデカ社製)、sumilizer(登録商標)GM、同GS、同MDP−S、同BBM−S、同WX−R、同GA−80(以上、住友化学社製)、IRGANOX(登録商標)1010、同1035、同1076、同1098、同1135、同1330、同1726、同1425WL、同1520L、同245、同259、同3114、同565、IRGAMOD(登録商標)295(以上、BASFジャパン社製)、ヨシノックス(登録商標)BHT、同BB、同2246G、同425、同250、同930、同SS、同TT、同917、同314(以上、エーピーアイコーポレーション社製)等が挙げられる。
ヒンダードアミン構造を有する化合物の市販品としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)LA−52、同LA57、同LA−62、同LA−67、同LA−63P、同LA−68LD、同LA−77、同LA−82、同LA−87(以上、アデカ社製)、sumilizer(登録商標)9A(住友化学社製)、CHIMASSORB(登録商標)119FL、同2020FDL、同944FDL、TINUVIN(登録商標)622LD、同144、同765、同770DF(以上、BASFジャパン社製)が挙げられる。
チオエーテル構造を有する化合物の市販品としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)AO−412S、同AO−503(以上、アデカ社製)、sumilizer(登録商標)TPL−R、同TPM、同TPS、同TP−D、同MB(以上、住友化学社製)、IRGANOX(登録商標)PS800FD、同PS802FD(以上、BASFジャパン社製)、DLTP、DSTP、DMTP、DTTP(以上、エーピーアイコーポレーション社製)等が挙げられる。
[E]安定剤は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物における[E]安定剤の含有量としては、[A]成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部、より好ましくは0.2質量部〜5質量部である。[E]安定剤の含有量を上記の範囲とすることで、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物から得られる本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部である各波長変換層において、光変換効率をより向上させることできる。
〔その他の任意成分〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]成分および[B]量子ドットを必須の成分として含有するとともに、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有することができる。その他の任意成分としては、例えば、溶剤、硬化促進剤および熱酸発生剤等を挙げることができる。
硬化促進剤は、本実施形態の硬化性樹脂組成物により形成される膜の硬化を促進する機能を果たす化合物である。
熱酸発生剤は、熱をかけることによって樹脂を硬化させる際の触媒として作用する酸性活性物質を放出することができる化合物である。
さらに、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、界面活性剤、保存安定剤、接着助剤、耐熱性向上剤等のその他の任意成分を含有できる。これらの各任意成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
〔硬化性樹脂組成物の調製方法〕
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物は、[A]重合体および[B]量子ドットを均一に混合することによって調製される。また、含有させることが任意の[C]成分や[D]成分や[E]成分を含有させる場合、[A]成分および[B]成分とともに、必要に応じて[C]成分や[D]成分や[E]成分を均一に混合することによって調製される。
さらに、上述したその他の任意成分を必要に応じて選択し、それらを含有させる場合、[A]成分および[B]成分等とともに、当該その他の任意の成分を均一に混合することによって調製される。
そして、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物を調製するにあたり、分散液状態の硬化性樹脂組成物を調製するため、有機溶剤を用いることができる。
有機溶剤の機能としては、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の粘度等を調節して、例えば、基材等への塗布性を向上させることや、操作性や成形性を向上させること等が挙げられる。
本実施形態の硬化性樹脂組成物に使用可能な有機溶剤としては、それ以外の含有成分を溶解または分散させるとともに、それ以外の含有成分と反応しないものを挙げることができる。このような有機溶剤としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、炭化水素類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。
これらの有機溶剤としては、
アルコール類として、例えば、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等;
エーテル類として、例えば、テトラヒドロフランや、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジn−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジn−ヘキシルエーテル等のジアルキルエーテル等;
ジエチレングリコールアルキルエーテル類として、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類として、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテル類として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等;
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等;
エステル類として、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロチル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等がそれぞれ挙げられる。
量子ドットの分散性の観点から炭化水素溶剤が好ましい。炭化水素としては、芳香族炭化水素溶剤と脂肪族炭化水素溶剤が挙げられる。芳香族炭化水素溶剤としては、トルエン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、ナフタレン、ジメチルナフタレン、シメン、テトラリン、ビフェニル、メシチレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ピナン、デカリン、イソオクタン、イソドデカン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ジペンテン、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM((株)小倉興産製)、テレピン油、デカヒドロナフタリン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、ベンジン、キョーワゾールC−800、シェルゾール、アイソゾール、リグロイン(ゴードー工業(株)社製)等が挙げられる。
これらの有機溶剤の中でも、溶解性が優れていること、各成分と非反応性であること、並びに塗膜形成の容易性の観点から、ジアルキルエーテル等のエーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ケトン類およびエステル類が好ましく、特に、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチルが好ましい。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して用いることができる。
上記した有機溶剤に加え、さらに必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の高沸点溶媒を併用することもできる。
本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、粘度等も考慮して適宜決めることができる。すなわち、本実施形態の硬化性樹脂組成物の固形分濃度(硬化性樹脂組成物溶液中に占める溶剤成分以外の成分)は、使用目的や所望の膜厚等に応じて任意に設定することができるが、好ましくは5質量%〜50質量%、より好ましくは10質量%〜40質量%、さらに好ましくは15質量%〜35質量%である。
このようにして調製された本実施形態の硬化性樹脂組成物は、液状である場合、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタ等を用いて濾過した後に、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部である各波長変換層の形成に使用することが好ましい。
実施の形態4.
<波長変換部の形成方法>
本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法によって得られる波長変換部は、例えば、図1および図2に示した本発明の第1実施形態の有機EL素子100および本発明の第2実施形態の有機EL素子200の波長変換部材50,150の波長変換部であり、具体的には、各波長変換層53R,53G,53Bとなる。
すなわち、図1の本発明の第1実施形態の有機EL素子100の波長変換部材50が有する赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53G、および青色波長変換層53Bは、本実施形態の波長変換部の形成方法に従って形成することができる。同様に、図2の本発明の第2実施形態の有機EL素子200の波長変換部材150が有する赤色波長変換層53R、および緑色波長変換層53Gは、本実施形態の波長変換部の形成方法に従って形成することができる。
以下で、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法について説明する。
本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法では、基材上に、上述した本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物を塗布し、必要な場合にパターニングをした後、露光による硬化を行って、パターニングされた硬化膜を形成する。そして、得られた硬化膜を、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子の波長変換部材が有する波長変換部とすることができ、より具体的には、各波長変換層とすることができる。このとき、基材としては、図1および図2に示したように、基板51上に赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bを規則的に配置して有するものを使用することができる。
そして、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法では、上述の基材上に所望とする形状と配置の波長変換部が形成されるように、少なくとも下記の工程(1)〜工程(4)を下記の順で含むことが好ましい。
(1)本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の塗膜を基材上に形成する塗膜形成工程。
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する放射線照射工程。
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する現像工程。
(4)工程(3)で現像された塗膜を露光する硬化工程。
そして、図3〜図6は、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法の一例を説明する図である。
図3は、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法における塗膜形成工程の一例を説明する基材の断面図である。
図4は、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法における放射線照射工程の一例を模式的に説明する断面図である。
図5は、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法における現像工程の一例を説明する基板の断面図である。
図6は、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法における硬化工程の一例を説明する硬化膜および基板の断面図である。
尚、図3〜図6中の基材2は、上述したように、基板51上に赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bを規則的に配置して有するものであるが、図3〜図6では、便宜上、赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bの図示を省略し、基材2として示している。
以下、上述の工程(1)(塗膜形成工程)〜工程(4)(硬化工程)についてそれぞれ説明する。
[工程(1)]
本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法の工程(1)である、塗膜形成工程では、図3に例示するように、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の塗膜1を基材2上に形成する。
このとき、上述の工程(1)〜工程(4)によって硬化膜を形成し、波長変換部として、図1および図2に示した本発明の第1実施形態の有機EL素子100および本発明の第2実施形態の有機EL素子200の赤色波長変換層53Rを形成しようとする場合、上述した硬化性樹脂組成物には、励起光を赤色の光に変換する量子ドットが選択されて含有されている。また、緑色波長変換層53Gを形成しようとする場合、上述した硬化性樹脂組成物には、励起光を緑色の光に変換する量子ドットが選択されて含有され、青色波長変換層53Bを形成しようとする場合に、上述した硬化性樹脂組成物に、励起光を青色の光に変換する量子ドットが選択されて含有されている。
すなわち、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法では、有機EL素子の波長変換部材の赤色波長変換層、緑色波長変換層および青色波長変換層を形成しようとする場合、異なる発光特性の量子ドットを含む、例えば、3種の第3実施形態の硬化性樹脂組成物が準備される。そして、上述した工程(1)〜工程(4)を含む本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法が繰り返されて、一つの基材上に、赤色波長変換層および緑色波長変換層、そして必要な場合に、青色波長変換層を順次形成することができる。そして、一つの基材上に各波長変換層を形成して波長変換部を構成し、有機EL素子の波長変換部材を得ることができる。
工程(1)において、塗膜1を形成する基材2は、上述したように、図1の基板51上に赤色カラーフィルタ52R、緑色カラーフィルタ52G、および青色カラーフィルタ52Bを規則的に配置して有するものである。このとき、基板51として、ガラス、石英、シリコン、または、樹脂(例えば、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、環状オレフィンの開環重合体およびその水素添加物等)等からなる基板を用いることができる。また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を施しておくこともできる。
基材2において、一方の面に、本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物が塗布された後、プレベークを行い、その硬化性樹脂組成物に含有される有機溶剤等の成分が蒸発し、塗膜1の形成が行われる。
本工程における本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法またはスピンナ法と称されることもある。)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法)、バー塗布法、インクジェット塗布法等の適宜の方法が採用できる。これらのうち、均一な厚みの膜を形成できる点から、スピンコート法またはスリット塗布法が好ましい。
上述のプレベークの条件は、硬化性樹脂組成物を構成する各成分の種類、配合割合等によって異なるが、70℃〜120℃の温度で行うのが好ましく、時間は、ホットプレートやオーブン等の加熱装置によって異なるが、おおよそ1分間〜15分間程度である。
[工程(2)]
次いで、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法の工程(2)である、放射線照射工程では、図4に例示するように、工程(1)で基材2上に形成された塗膜1の少なくとも一部に放射線4を照射する。このとき、塗膜1の一部にのみ、放射線4aを照射するには、例えば、所望の形状の形成に対応するパターンのフォトマスク3を介して行う。このフォトマスク3を用いることにより、照射された放射線4の一部がフォトマスクを透過し、その一部の放射線4aが、塗膜1に照射される。
照射に使用される放射線4としては、可視光線、紫外線、遠紫外線等が挙げられる。このうち波長が200nm〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
放射線4の照射量(露光量)は、放射線4の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、10J/m2〜10000J/m2とすることができ、100J/m2〜5000J/m2が好ましく、200J/m2〜3000J/m2がより好ましい。
[工程(3)]
次に、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法の工程(3)である、現像工程では、図5に例示するように、放射線照射後の図4の塗膜1を現像して不要な部分を除去し、所定の形状にパターニングされた塗膜1aを得る。
現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリや、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩や、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の水溶液が使用できる。上述のアルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を適当量添加して使用することもできる。さらに、界面活性剤をそれのみで、または、上述の水溶性有機溶媒の添加とともに、適当量添加して使用することもできる。
現像方法は、液盛り法、ディッピング法、シャワー法、スプレー法等のいずれでもよく、現像時間は、常温で5秒間〜300秒間とすることができ、好ましくは常温で10秒間〜180秒間程度である。現像処理に続いて、例えば、流水洗浄を30秒間〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって、所定の形状にパターニングされた塗膜1aが得られる。
[工程(4)]
次に、本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法の工程(4)である、硬化工程では、図5に例示されたパターニングされた塗膜1aを、露光装置を用いた露光によって硬化(ポスト露光ともいう)する。これにより、図6に例示するように、基材2上に形成された硬化膜5が得られる。硬化膜5は、上記の工程によって、所望の形状となるようにパターニングされたものとなる。
本発明の第4実施形態の波長変換部の形成方法において、硬化膜5の形成には、上述した本発明の第3実施形態の硬化性樹脂組成物を用いており、本工程では、その塗膜の一部に放射線を照射する。具体的には、工程(1)で形成され、工程(2)および工程(3)でパターニングされた塗膜に対し、所定の放射線を照射する。このときに用いられる放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。
上述の紫外線としては、例えば、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)等が挙げられる。遠紫外線としては、例えば、KrFエキシマレーザー光等が挙げられる。X線としては、例えば、シンクロトロン放射線等が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば、電子線等が挙げられる。これらの放射線のうち、紫外線の使用が好ましく、紫外線の中でもg線、h線およびi線のうちの少なくとも一つを含む放射線がより好ましい。放射線の露光量としては、0.1J/m2〜30000J/m2が好ましい。
以上の工程(1)〜工程(4)によって形成された硬化膜は、樹脂成分中に[B]量子ドットを含んで構成され、[B]量子ドットに基づく蛍光発光(波長変換)機能を有する。したがって、形成された硬化膜は、図1および図2に示した、本発明の第1実施形態の有機EL素子100の波長変換部材50が有する赤色波長変換層53R、緑色波長変換層53Gおよび青色波長変換層53B、並びに、第2実施形態の有機EL素子200の波長変換部材150が有する赤色波長変換層53Rおよび緑色波長変換層53Gを構成することができる。すなわち、以上の工程(1)〜工程(4)により、本発明の第1実施形態および第2実施形態の有機EL素子100,200の波長変換部材50,150に含まれて励起光と異なる波長の蛍光を発光する波長変換部として、各波長変換層53R,53G,53Bを形成することができる。
そのため、工程(1)〜工程(4)によって形成された硬化膜は、光の利用効率を高めることができるように、それを構成する樹脂において、厚さ0.1mmでの全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75%〜95%であり、より好ましくは78%〜95%であり、さらに好ましくは80%〜95%である。全光線透過率がこのような範囲であれば、得られる硬化膜は優れた光利用効率の各波長変換層53R,53G,53Bを形成することができ、波長変換部を構成することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<[A]重合体([A]成分)>
本実施例においては、上述した[A]重合体の例として、重合体(A−1)を用いた。以下に、重合体(A−1)の合成例を示す。
合成例1
[重合体(A−1)の合成]
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150質量部を仕込んで窒素置換した。80℃に加熱して、同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸30質量部、ベンジルメタクリレート10質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート60質量部および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6質量部の混合溶液を2時間かけて滴下し、この温度を保持して1時間重合した。その後、反応溶液の温度を90℃に昇温させ、さらに1時間重合することにより、重合体(A−1)を得た。重合体(A−1)は、重合体溶液(固形分濃度=33質量%)の状態で得られ、Mw=11000、Mn=6100、Mw/Mn=1.80であった。これを重合体(A−1)溶液とする。
<[B]量子ドット([B]成分)>
本実施例で用いた量子ドットを次に示す。
量子ドットA:InP/ZnSコアシェル型量子ドット
そして、下記実施例で用いた量子ドットA:InP/ZnSコアシェル型量子ドットは、一般的に知られている方法で合成することができる。
例えば、量子ドットA:InP/ZnSコアシェル型量子ドットに関しては技術文献「Journal of American Chemical Society. 2007, 129, 15432−15433」に記載されている方法を参照して合成することができる。
以上の[A]重合体([A]成分)および[B]量子ドットを用い、さらに、[C]重合開始剤([C]成分)、[D]重合性不飽和化合物([D]成分)を用いて、実施例の硬化性樹脂組成物を調製した。次いで、それらを用いて実施例の硬化膜を形成し、硬化膜の評価を行った。
実施例1
[硬化性樹脂組成物(β−I)の調製]
重合体(A−1)溶液90質量部にメチルシクロヘキサン40質量部を加えて溶解させた後、量子ドットAを10質量部混合して均一な溶液を作製し、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン社製 イルガキュア(登録商標)OXE01)10質量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート70質量部を混合し、硬化性樹脂組成物(β−I)を調製した。
実施例2
[硬化性樹脂組成物(β−I)を用いた硬化膜の形成]
無アルカリガラス基板上に、実施例1で調製した硬化性樹脂組成物(β−I)をスピンナにより塗布した後、80℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより塗膜を形成した。
次に、所定のパターンを備えたフォトマスクを介し、得られた塗膜に高圧水銀ランプを用いて露光量700J/m2として放射線照射を行いた。次いで、0.04質量%の水酸化カリウム水溶液にて23℃、60秒間現像を行った。
次に、得られたパターンに、高圧水銀ランプを用いて露光量10000J/m2として放射線照射を行い、所定の形状にパターニングされた硬化膜を形成した。
次に、パターニングされた硬化膜の端部分を光学顕微鏡で観察し、現像残渣がなく、パターンの直線部分が直線状に形成されている場合にパターニング性良好と判断した。
その結果、硬化性樹脂組成物(β−I)を用い、パターニングして形成された硬化膜のパターニング性は良好であった。
実施例3
[蛍光特性の評価]
実施例2の形成方法による硬化膜について、さらに、絶対PL量子収率測定装置(C11347−01、浜松ホトニクス社)を用いて、25℃における蛍光量子収率を調べた。蛍光量子収率は38%であり、蛍光特性は良好と判断した。
したがって、実施例2の形成方法による硬化膜は量子ドットを含有する。そして、実施例2の形成方法による硬化膜は、有機EL素子に適用されて、その波長変換部材の波長変換部として、赤色波長変換層を構成することができ、有機EL素子の高輝度化を実現することができる。