JPWO2016024634A1 - インプリンティング疾患の診断に有効な染色体機能異常の判定方法 - Google Patents

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Abstract

迅速、簡便、かつ高精度なインプリンティング疾患判定方法の提供。プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者から得られた検体の判定方法であって:(1)ヒト検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いてPCR増幅する工程;(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;(4)工程(3)で得られた検出シグナルのパターンにより、該検体をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないヒトから得られた検体であるか、プラダーウィリ候群患者から得られた検体であるか、アンジェルマン症候群患者から得られた検体であると判定する工程、を含む方法。

Description

本発明は、メチル化DNAの検出を利用した染色体機能異常の判定方法に関する。
近年、エピジェネティックが様々な生命現象に関与することが認識され、その解析に関わる研究が盛んに行われている。特に、DNAの異常なメチル化が遺伝子疾患に深く関与することが明らかになり、注目を集めている。異常なDNAメチル化により引き起こされる代表的な遺伝子疾患の1つに、ゲノムインプリンティングを原因とするインプリンティング疾患がある。ゲノムインプリンティング(遺伝子刷り込み、単にインプリンティングともいう)とは、特定の遺伝子について、定められた一方の親(父または母)から継承した遺伝子のみが選択的に機能し、他方の遺伝子は機能しないというアレル特異的発現が見られる現象である。インプリンティングは、哺乳類胎児の正常な発生、胎盤機能または神経行動学的発達において重要な役割を果たす。ゲノムインプリンティングを受ける遺伝子(インプリンティング遺伝子)は、2本あるアレル(対立遺伝子)のうち特定の片親由来のものが識別されて、片親性発現を示す。そしてこのようなインプリンティング遺伝子の片親性発現には、アレル特異的メチル化領域(differentially methylation region;DMR)でのDNAメチル化が必須であることが、これまでの研究から明らかになっている。DMRは遺伝子のプロモーター領域やイントロン等に多く存在し、特に、CpG部位(CpGジヌクレオチド、CG配列)が密集したCpGアイランドでのDNAメチル化がゲノムインプリンティングに重要な影響を及ぼすと考えられている。インプリンティング遺伝子のDMRにおけるメチル化異常は、様々な疾患、例えばインプリンティング疾患、発達異常、悪性腫瘍等に関連するとされている。
既に確立されたメチル化DNAの解析方法として、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、バイサルファイト、bisulfite)反応を利用した方法がある。この方法は、メチル化DNAの解析に最も汎用されている方法である。一本鎖DNAを亜硫酸水素塩で処理すると、非メチル化シトシンはスルホン化、加水脱アミノ化、脱スルホン化を経て、ウラシルに変換される。一方、メチル化されたシトシンは、最初に起こるスルホン化の反応速度が極めて遅いため、実際に行われる亜硫酸水素塩処理の反応時間の中ではシトシンのままである。従って、亜硫酸水素塩処理をしたDNAを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行うと、メチル化シトシンはシトシンのままであるが、非メチル化シトシンは、ウラシルからチミンに置き換わって増幅される。このPCR増幅産物の配列中に生じるシトシンとチミンという塩基の違いを利用してメチル化状態を解析する。これを基本原理として汎用されている方法が、特許文献1、非特許文献1に記載のMethylation−Specific PCR法(メチル化特異的PCR解析法)、および非特許文献2、3に記載のバイサルファイトシークエンス法である。
メチル化特異的PCR解析法は、DNAの亜硫酸水素塩処理後にメチル化配列特異的プライマーと非メチル化配列特異的プライマーを用いたPCR増幅、およびアガロースゲル電気泳動を順に行い、両プライマーによる増幅産物の有無により対象領域のDNAメチル化状態を判定する方法である。この方法は、特別な装置なしにメチル化DNAの定量的な解析ができるという点で、現在でも広く使用されるメチル化DNA解析方法であるが、解析に電気泳動法を利用する点で手間と時間がかかるという課題があった。
バイサルファイトシークエンス法は、DNAの亜硫酸水素塩処理後にメチル化DNAと非メチル化DNAに共通のプライマーを用いてPCR増幅し、得られたPCR産物をTOPO−cloning vector(Invitorogen)などにクローニングした後、シークエンス反応によりメチル化の有無を検出するものである。増幅した領域内の全てのCpG配列のメチル化の状態が分かるという利点があるが、解析に労力を要するので、多数の検体の解析には向いていない場合もある。
一方、生化学や医学等の分野における核酸、タンパク質、多糖類といった生体高分子の分離分析には、簡便かつ短時間に精度良く検出できる方法としてイオン交換クロマトグラフィーが汎用されている。核酸のPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーを用いて分離する場合、一般的には核酸分子中に含まれるリン酸のマイナス電荷を利用して分離するアニオン交換クロマトグラフィーが用いられる。カチオン性の官能基をイオン交換基として有するカラム充填剤が充填されたアニオン交換クロマトグラフィー用カラムは既に市販され、各種研究分野で使用されている。
さらに、カチオン性の官能基として強カチオン性基および弱カチオン性基の両方を有するカラム充填剤を充填したカラムを用いたイオン交換クロマトグラフィーにより、20merの非メチル化合成オリゴヌクレオチド間における一塩基の相違を分離分析できることが報告されている(特許文献2)。
インプリンティング疾患の診断に有用な染色体異常の判定方法として、メチル化特異的PCR解析法による染色体異常の判定方法が知られている。このメチル化特異的PCR解析法による染色体異常の判定方法は、診断対象者の遺伝子をPCRにより増幅して得られる電気泳動パターンを観察することにより、染色体上における所定の遺伝子がメチル化されているか否かを判定して、この判定結果に基づいて染色体機能異常の判定を行なう方法である(例えば、特許文献3および非特許文献4〜7参照)。
メチル化特異的PCR解析法により判定され得る染色体機能異常の例に、プラダーウィリ症候群(Prader−Willi syndrome、PWS)およびアンジェルマン症候群(Angelman syndrome、AS)がある。これらの疾患はどちらも、インプリンティング遺伝子の片親性発現が染色体の構造異常(欠失)または機能異常(片親性ダイソミー)により喪失していることで発症する疾患(インプリンティング疾患)である。プラダーウィリ症候群では、欠失例(母由来遺伝子がメチル化による刷り込みをうけて発現が抑制されている上に父由来遺伝子が欠失している場合)および非欠失例(片親性ダイソミーの場合)の両方で、父由来遺伝子の発現機能が喪失している。アンジェルマン症候群では、欠失例(父由来遺伝子が非メチル化による刷り込みをうけている上に母由来遺伝子が欠失している場合)および非欠失例(片親性ダイソミーの場合)の両方で、母由来遺伝子の発現機能が喪失している。
図1は、メチル化特異的PCR解析法によるプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群の判定方法の原理を示す図である。メチル化特異的PCR解析法により、正常者から得られる電気泳動パターンと患者から得られる電気泳動パターンとを比較することによって、患者がプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群に該当するか否かについての診断に有用な染色体機能異常の判定を行なうことができる。
すなわち、プラダーウィリ症候群の場合、正常者から得られる電気泳動パターンには、父方の染色体(p)上に存在するメチル化されていない遺伝子によるバンド(図1の場合、100bpバンド)と母方の染色体(m)に存在するメチル化された遺伝子(インプリンティング遺伝子)によるバンド(図1の場合、174bpバンド)とが観測される。これに対して、患者から得られる電気泳動パターンには、欠失例の場合、非欠失例の場合を問わず、メチル化されていない遺伝子によるバンド(100bp)が観測されず、母方の染色体(m)に存在するメチル化された遺伝子(インプリンティング遺伝子)によるバンド(174bp)のみが観測される。
また図1では、アンジェルマン症候群の場合、正常者から得られる電気泳動パターンには、父方の染色体(p)上に存在するメチル化されていない遺伝子(インプリンティング遺伝子)によるバンド(図1の場合、100bpバンド)と母方の染色体(m)に存在するメチル化された遺伝子によるバンド(図1の場合、174bpバンド)とが観測される。これに対して、患者から得られる電気泳動パターンには、欠失例の場合、非欠失例の場合を問わず、メチル化された遺伝子によるバンド(174bp)が観測されず、父方の染色体(p)に存在するメチル化されていない遺伝子(インプリンティング遺伝子)によるバンド(100bp)のみが観測される。
このため、メチル化特異的PCR解析法によるプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群の判定方法は、欠失例の場合、非欠失例の場合を問わず染色体機能異常の判定を行なうことができる優れた判定方法である。
米国特許第5786146号公報 国際公開公報第2012/108516号パンフレット 特開2005−124431号公報
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,98 21−9826(1996) Clark, S. J. et al., Nucleic acids Res (1994) 22, pp.2990-2997, "High sensitivity mapping of methylated cytosines" 新遺伝子工学ハンドブック改訂第4版(村松正實・山本雅編),羊土社,pp.99-106,2003 A. Kuwano et al., Hum Mol Genet (1992), 6, pp.417-425, "Molecular dissection of the Prader-Willi/ Angelman syndrome region (15q11-13) by YAC cloning and FISH analysis." T. Kubota et al., Hum Genet (1999), 104, pp.49-55, "A new assay for the analysis of X-chromosome inactivation based on methylation-specific PCR." T. Kubota et al., Nature Genet (1997) 16, pp.16-17, "Methylation-specific PCR simplifies imprinting analysis" T. Kubota et al., Cytogenet Genome Res (2002) 99, pp.276-284, "The proportion of cells with functional X disomy is associated with the severity of mental retardation in mosaic ring X Turner syndrome females" Mutirangura A. et al., Genomics. 1993 Dec;18(3), pp.546-552, "A complete YAC contig of the Prader-Willi/Angelman chromosome region (15q11-q13) and refined localization of the SNRPN gene." Zeschnigk M. et al., Hum Mol Genet. 1997 Mar;6(3), pp.387-95, "Imprinted segments in the human genome: different DNA methylation patterns in the Prader-Willi/Angelman syndrome region as determined by the genomic sequencing method."
上記したメチル化特異的PCR解析法による染色体異常の判定方法は、プラダーウィリ症候群患者およびアンジェルマン症候群患者のいずれの診断にも有用な染色体機能異常の判定を行なうことができる優れた染色体異常の判定方法である。しかしながら、メチル化配列特異的プライマーと非メチル化配列特異的プライマーを用いたPCR増幅の工程において、PCR増幅が十分に行われないことがあると、判定に誤りが生じる恐れがある。
具体的には、父方の染色体(p)上に存在するメチル化されていない遺伝子に対応する非メチル化配列特異的プライマー(以下、p用プライマーセットという)によるPCR増幅が十分に行われない場合には、本来PCR増幅される(p)上に存在するメチル化されていない遺伝子領域が増幅されず、メチル化されていない遺伝子によるバンド(100bp)が観測されないため、正常者であってもプラダーウィリ症候群と誤判定される恐れがある。
その逆に、母方の染色体(m)に存在するメチル化された遺伝子に対応するメチル化配列特異的プライマー(以下、m用プライマーセットという)によるPCR増幅が十分に行われない場合には、本来PCR増幅される(m)上に存在するメチル化された遺伝子領域が増幅されず、メチル化された遺伝子によるバンド(174bp)が観測されないため、正常者であってもアンジェルマン症候群と誤判定される恐れがある。すなわち、コントロール測定なしで被験者の染色体のみを測定に供すると、偽陽性を生む場合がある。なおPCR増幅が十分に行われない要因として、凍結融解を繰り返したことによるプライマーの分解、酵素の失活、試薬の劣化等が挙げられる。
このような判定の誤りを避けるためには、コントロールとして正常者の染色体を用いて、p用プライマーセットとm用プライマーセットとの両方のプライマーを用いたときにPCR産物のバンドが観測されることを必ず確認しなければならない。さらには、p用プライマーセットとm用プライマーセットの混合物を用いた場合にそれぞれのPCR産物の両方のバンドが観測されることを確認することが望ましい。このように、上記従来のメチル化特異的PCR解析法では、偽陽性を防止するためのコントロールの測定に余分な手間がかかっていた。また、当該測定毎に電気泳動用のアガロースゲルを調製しなければならず、測定者にアガロースゲル調製の手間がかかっていた。
そこで、本発明は、偽陽性を防止することができ、しかもコントロールの測定が不要な、迅速かつ簡便で信頼性の高いインプリンティング疾患の判定方法の提供を目的とする。
本発明者らは、亜硫酸水素塩で処理したDNAをPCRで増幅して得たPCR増幅産物を、イオン交換クロマトグラフィーによって分離することで、迅速かつ簡便にメチル化DNAを検出できることを見出した。さらに本発明者らは、該イオン交換クロマトグラフィーで得られるシグナルのパターンが、インプリンティング疾患の一種であるプラダーウィリ症候群患者およびアンジェルマン症候群患者から得られたDNAとで異なること、当該パターンの違いを解析することでインプリンティング疾患を判定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また本発明者らは、上記PCR増幅産物とイオン交換クロマトグラフィーを用いた判定方法によれば、(1)PCR増幅に用いるプライマーとして、DNAのメチル化によらず増幅させるプライマー、すなわち非メチル化DNAとメチル化DNAとの区別なく増幅させる1セットのプライマーを使用すればよく、メチル化特異的PCR解析法で一般的に使用されていたようなメチル化DNA特異的プライマーおよび非メチル化DNA特異的プライマーの2セットのプライマーを使用する必要がないこと、(2)メチル化特異的PCR解析法およびバイサルファイトシークエンス法に比べて、分析時間および解析時間を短縮できること、(3)コントロールを置くことなくPCR増幅の異常を判断でき、偽陽性が原理的に生じないこと、を見出した。
従って、本発明は以下を提供する。
〔1〕プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者から得られた検体の判定方法であって:
(1)ヒト検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該検体をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないヒトから得られた検体であると判定し、
(ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をプラダーウィリ候群患者から得られた検体であると判定し、
(iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をアンジェルマン症候群患者から得られた検体であると判定する、工程、
を含む方法。
〔2〕プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者の判定方法であって:
(1)被験者から採取された検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該被験者をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないと判定し、
(ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該被験者をプラダーウィリ候群患者であると判定し、
(iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該被験者をアンジェルマン症候群患者であると判定する、工程、
を含む方法。
〔3〕プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者を判定するための情報の取得方法であって:
(1)ヒト検体由来のゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)工程(3)で得られた検出シグナルのタイプを以下のいずれかに分類する工程、
(i)メチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰であるシグナル
(ii)メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰であるシグナル
(iii)非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰であるシグナル
を含む方法。
〔4〕上記イオン交換クロマトグラフィーがアニオン交換クロマトグラフィーである、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の方法。
〔5〕上記イオン交換クロマトグラフィーに用いるカラム充填剤が、表面に強カチオン性基および弱カチオン性基の両方を有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の方法。
〔6〕上記プライマーセットが、配列番号8で示される塩基配列のプライマーと配列番号9で示される塩基配列のプライマーからなるプライマーセットである、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の方法。
本発明は、迅速、簡便、かつ高精度なインプリンティング疾患判定方法を提供する。本発明によれば、メチル化特異的PCR解析法で生じる恐れのあった偽陽性を生じることなく遺伝子のメチル化状態を判定できる。また、従来では偽陽性の有無を確認するために設置していたコントロールを置く必要がなくなる。また、詳細は後述するが、PCR増幅に用いるプライマーセットが一組で済み、かつバイサルファイトシークエンス法より迅速、簡便に遺伝子のメチル化状態を判定することができる。したがって本発明は、インプリンティング疾患の迅速な臨床検査に貢献する。
従来法(メチル化特異的PCR解析法)によるプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群の判定方法を示す図。 正常者からの検体より得られたクロマトグラム。 プラダーウィリ症候群(PWS)患者からの検体より得られたクロマトグラム。 アンジェルマン症候群(AS)患者からの検体より得られたクロマトグラム。
本明細書において、「インプリンティング疾患」とは、母性または父性インプリンティング遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化異常に起因する疾患を意味するものであり、具体的にはプラダーウィリ症候群、アンジェルマン症候群等を例示できる。また、本明細書において、「検体」又は「ヒト検体」を採取される被験者としては、インプリンティング疾患に特徴的な臨床症状、例えば、発達の遅れ、言語障害、動作の異常等によってインプリンティング疾患の疑いがある被験者が挙げられる。
本明細書において、「DNAメチル化」とは、DNAにおいて、シトシンの5位の炭素がメチル化されている状態のことを意味する。また本明細書において、DNAの「メチル化を検出する」とは、当該DNA領域におけるメチル化DNAの存在の有無もしくは存在量、存在量の比、または当該DNAのメチル化率を測定することを意味する。本明細書において、「DNAメチル化率」とは、検出の対象とする特定のDNA領域においてCpGサイトのシトシンがメチル化されている割合を意味し、例えば、検出の対象とする特定のDNAのCpGアイランドにおける、全シトシン数(メチル化シトシンおよび非メチル化シトシン)に対するメチル化シトシン数の比率にて表すことができる。
本明細書において、「CpGサイト」とは、DNA中でシトシン(C)とグアニン(G)との間がホスホジエステル結合(p)している部位のことを意味する。また本明細書において、「CpG領域(またはCpGアイランド)」とは、ホスホジエステル結合(p)を介したシトシン(C)−グアニン(G)の2塩基配列(すなわちCpGサイト)が高頻度で出現する領域をいう。CpGアイランドは、遺伝子上流のプロモーター領域に存在することが多い。本明細書において、「(ある)遺伝子のCpG領域」とは、好ましくは、当該遺伝子のコード領域またはそれに近い領域に存在するCpG領域を意味し、または「(ある)遺伝子のCpGサイト」とは、好ましくは、当該遺伝子のコード領域またはそれに近い領域に存在するCpGサイト、より好ましくは上記CpG領域に含まれるCpGサイトを意味する。また好ましくは、「(ある)遺伝子のCpGサイトまたはCpG領域」とは、当該遺伝子のプロモーターおよびその周辺領域に存在するCpGサイトまたはCpG領域を意味する。本明細書において、「(ある)遺伝子のプロモーターおよびその周辺領域」とは、プロモーター領域とその下流に隣接するexon領域および当該exon領域に隣接するイントロン領域を意味する。特定の遺伝子のCpGサイトまたはCpG領域は、MassARRAY法、パイロシークエンシング等の方法に基づいて同定することができる。
本明細書において、「高メチル化DNA(または単にメチル化DNAともいう)を示すピーク」とは、測定の対象とされた遺伝子領域のDNAメチル化率が、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上であるときに得られる検出シグナルを意味する。また、「低メチル化DNA(または非メチル化DNAともいう)を示すピーク」とは、当該遺伝子領域のDNAメチル化率が、例えば20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であるときに得られる検出シグナルを意味する。なお、正常個体のゲノムDNAにおいては、15番染色体上のSNRPN遺伝子のCpG領域におけるDNAメチル化率がほぼ100%のアレルと、ほぼ0%のアレルが1:1で混在していることが知られている。一方、同じ遺伝子領域におけるDNAメチル化率が、プラダーウィリ症候群個体ではほぼ100%であること、またアンジェルマン症候群ではほぼ0%であること、が知られている。
本明細書において、「検出シグナル(またはそのピーク)が実質的に二峰である」、「検出シグナル(またはそのピーク)が実質的に一峰である」、「検出シグナル(またはそのピーク)が実質的に認められない」といった、ピークの「実質的な」判定は、JIS K 0127:2013 イオンクロマトグラフィー通則に従い、定量下限、好ましくは検出下限を求め、ピークを判定することを意味する。
本明細書において、「コントロール」とは、期待通りにPCR増幅が行われたことを確認するための対照試料(例えば、正常検体)を指す。
本発明は、以下、
プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者から得られた検体の判定方法であって:
(1)ヒト検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該検体をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないヒトから得られた検体であると判定し、
(ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をプラダーウィリ候群患者から得られた検体であると判定し、
(iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をアンジェルマン症候群患者から得られた検体であると判定する、工程、
を含む方法を提供する。
あるいは、本発明は、以下、
プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者の判定方法であって:
(1)被験者から採取された検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該被験者をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないと判定し、
(ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該被験者をプラダーウィリ候群患者であると判定し、
(iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該被験者をアンジェルマン症候群患者であると判定する、工程、
を含む方法を提供する。
さらに本発明は、以下、
プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者から得られた検体の同定方法であって:
(1)ヒト検体由来のゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該検体をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないヒトから得られた検体であると同定し、
(ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をプラダーウィリ候群患者から得られた検体であると同定し、
(iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をアンジェルマン症候群患者から得られた検体であると同定する、工程、
を含む方法を提供する。
さらに本発明は、以下、
プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者を判定するための情報の取得方法であって:
(1)ヒト検体由来のゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
(2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
(3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
(4)工程(3)で得られた検出シグナルのタイプを以下のいずれかに分類する工程、
(i)メチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰であるシグナル
(ii)メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰であるシグナル
(iii)非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰であるシグナル
を含む方法を提供する。
本発明の方法において、被験者から採取されたヒト検体としては、DNAを含む組織またはその細胞であればよく、例えば、血液、血球、皮膚線維芽細胞などの組織細胞、尿、糞便、唾液、その他体液や分泌液中に存在する細胞等が挙げられる。検体採取による被験者への侵襲を軽減させ、より効率よくDNAメチル化検出を行えるという観点からは、末梢血、リンパ球、リンパ芽球等を、胎児の遺伝子を診断するという観点からは、羊水細胞、絨毛組織を用いることが望ましい。
上記検体からゲノムDNAを調製する方法としては、特に制限はなく、公知の手法を適宜選択して用いることができる。ゲノムDNAを調製する公知の方法としては、フェノールクロロホルム法、または市販のDNA抽出キット、例えば後述するQIAamp DNA Mini kit(Qiagen社製)、Clean Columns(NexTec社製)、AquaPure(Bio−Rad社製)、ZR Plant/Seed DNA Kit(Zymo Research社製)、prepGEM(ZyGEM社製)、BuccalQuick(TrimGen社製)を用いるDNA抽出方法等が挙げられる。
次いで、抽出したゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する。DNAの亜硫酸水素塩処理の方法としては、特に制限はなく、公知の手法を適宜選択して用いることができる。亜硫酸水素塩処理のための公知の方法としては、例えば、後述するEpiTect Bisulfite Kit(48)(Qiagen社製)や、MethylEasy(Human Genetic Signatures Pty社製)、Cells−to−CpG Bisulfite Conversion Kit(Applied Biosystems社製)、CpGenome Turbo Bisulfite Modification Kit(MERCK MILLIPORE社製)などの市販のキットを用いる方法が挙げられる。
次いで、亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、PCRによって増幅する。PCR増幅の方法としては特に制限はなく、増幅対象のDNAの配列、長さ、量などに応じて、公知の手法を適宜選択して用いることができる。
プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群については、ヒト15番染色体領域のSNRPN遺伝子におけるDNAメチル化と関連していることが報告されている(非特許文献8)。したがって、本発明の方法においてPCR増幅される標的DNAは、好ましくは、SNRPN遺伝子を含む上記疾患の関連遺伝子におけるCpGサイトまたはCpG領域のDNAメチル化を検出できるように選択され、より好ましくは、SNRPN遺伝子のCpGサイトまたはCpG領域のDNAメチル化を検出できるように選択される。例えば、標的DNAは、上記疾患の関連遺伝子のいずれかのコード領域および/またはプロモーターとその周辺領域の一部または全部をコードするDNAである。好ましくは、上記疾患の関連遺伝子のいずれかのプロモーターとその周辺領域の一部または全部をコードするDNAである。より好ましくは、標的DNAは、SNRPN遺伝子のコード領域および/またはプロモーターとその周辺領域のCpGサイトまたはCpG領域の一部または全部をコードするDNAであり、さらに好ましくは、SNRPN遺伝子のプロモーターとその周辺領域のCpGサイトまたはCpG領域の一部または全部をコードするDNAである。
SNRPN遺伝子はRefSeq ID:NP_073716、NP_073717、NP_073718、またはNP_073719で特定されるタンパク質(small nuclear ribonucleoprotein−associated polypeptide N)をコードする遺伝子であり、NCBI GenBank Accession Number U41384にゲノム配列が示される。
表1には、SNRPN遺伝子のプロモーター領域、exon 1領域、およびintron 1領域を含むexon αの塩基配列(配列番号1;NCBI GenBank Accession Number L32702)を示す。本発明において、DNAメチル化の検出対象として好ましいCpGサイトとしては、配列番号1で示す配列上の、76〜77位、108〜109位、121〜122位、127〜128位、129〜130位、133〜134位、149〜150位、151〜152位、163〜164位、175〜176位、185〜186位、196〜197位、205〜206位、217〜218位、221〜222位、224〜225位、237〜238位、254〜255位、264〜265位、266〜267位、274〜275位、293〜294位、および327〜328位からなる群(23箇所)より選択される少なくとも1つの位置に存在するCpGサイトである。
従って、本発明の方法におけるPCR増幅に用いるPCRプライマーセットは、好ましくは、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅することができるプライマーセットである。より具体的には、メチル化されたSNRPN遺伝子CpG領域DNAの亜硫酸水素塩処理物と、メチル化されていないSNRPN遺伝子CpG領域DNAの亜硫酸水素塩処理物との両方を増幅することができるプライマーセットである。言い換えれば、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAであってCpG領域のシトシンがウラシルに変換されているDNAと、CpG領域のシトシンがそのまま保存されているSNRPN遺伝子のCpG領域のDNAとを、両方とも増幅することができるプライマーセットである。
上記プライマーセットの各プライマーの鎖長は、増幅すべき標的DNAの鎖長や、標的DNA中に含まれるCpGサイトの数に依存するが、好ましくは15〜35merである。
本発明の方法におけるPCR増幅に用いるPCRプライマーセットのより好ましい例としては、実施例1に示す、配列番号8で示される塩基配列のプライマーと配列番号9で示される塩基配列のプライマーからなるプライマーセットが挙げられる。
PCR増幅産物の鎖長は、PCRの増幅時間の短縮、ならびにイオン交換クロマトグラフィーでの分析時間の短縮や分離性能の維持等の要素を勘案して適宜選択することができる。例えば、CpGサイトが多いDNAの亜硫酸水素塩物を鋳型に用いる場合のPCR増幅産物の鎖長は、1000bp以下が好ましく、700bp以下がより好ましく、500bp以下がさらに好ましい。一方、CpGサイトが少ないDNAの亜硫酸水素塩物を鋳型に用いる場合のPCR増幅産物の鎖長は、好ましくは1000bp、より好ましくは700bp、さらに好ましくは500bpを上限とし、PCRにおける非特異的ハイブリダイズを避けられる15mer付近のプライマーを使用する場合のPCR増幅産物の鎖長である30〜40bpが下限となる。一方で、PCR増幅産物中におけるCpGサイトに相当する領域の含有率がリッチになるようにプライマーを設計するのが好ましい。例えば、CpGサイトのシトシンに由来する塩基の数が、PCR増幅産物の塩基数(鎖長)に対して2%以上含まれるのが好ましく、5%以上含まれるのがより好ましい。
続いて、得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかける。本発明で行われるイオン交換クロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーが好適である。本発明で行われるイオン交換クロマトグラフィーに用いるカラムの充填剤としては、表面に強カチオン性基を有する基材粒子であれば特に限定されないが、特許文献2に示される充填剤表面に強カチオン性基と弱カチオン性基の両方を有する基材粒子が好ましい。
本明細書において、上記強カチオン性基とは、pHが1から14の広い範囲で解離するカチオン性基を意味する。すなわち、上記強カチオン性基は、水溶液のpHに影響を受けず解離した(カチオン化した)状態を保つことが可能である。
上記強カチオン性基としては、4級アンモニウム基が挙げられる。具体的には例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルエチルアンモニウム基等のトリアルキルアンモニウム基等が挙げられる。また、上記強カチオン性基のカウンターイオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。
上記基材粒子の表面に導入される上記強カチオン性基量は、特に限定されないが、充填剤の乾燥重量あたりの好ましい下限は1μeq/g、好ましい上限は500μeq/gである。上記強カチオン性基量が1μeq/g未満であると、保持力が弱く分離性能が悪くなることがある。上記強カチオン性基量が500μeq/gを超えると、保持力が強くなり過ぎてPCR増幅産物を容易に溶出させることができず、分析時間が長くなりすぎる等の問題が生じることがある。
本明細書において、上記弱カチオン性基とは、pKaが8以上のカチオン性基を意味する。すなわち、上記弱カチオン性基は、水溶液のpHによる影響を受け、解離状態が変化する。すなわち、pHが8より高くなると、上記弱カチオン性基のプロトンは解離し、プラスの電荷を持たない割合が増える。逆にpHが8より低くなると、上記弱カチオン性基はプロトン化し、プラスの電荷を持つ割合が増える。
上記弱カチオン性基としては、例えば、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基等が挙げられる。なかでも、3級アミノ基であることが望ましい。
上記基材粒子の表面に導入される上記弱カチオン性基量は、特に限定されないが、充填剤の乾燥重量あたりの好ましい下限は0.5μeq/g、好ましい上限は500μeq/gである。上記弱カチオン性基量が0.5μeq/g未満であると、少なすぎて分離性能が向上しないことがある。上記弱カチオン性基量が500μeq/gを超えると、強カチオン性基と同様保持力が強くなり過ぎてPCR増幅産物を容易に溶出させることができず、分析時間が長くなりすぎる等の問題が生じることがある。
上記基材粒子表面の強カチオン性基または弱カチオン性基量は、アミノ基に含まれる窒素原子を定量することにより測定することができる。窒素を定量する方法として例えばケルダール法が挙げられる。後述の実施例に記載の充填剤の場合には、まず、重合後に強カチオン性基に含まれる窒素を定量し、次いで、弱カチオン性基を導入した後の強カチオン性基と弱カチオン性基に含まれる窒素を定量することにより、後から導入した弱カチオン性基量を算出することができる。このように定量することにより、充填剤を調製する際に、強カチオン性基量および弱カチオン性基量を上記範囲内に調整することができる。
上記基材粒子としては、例えば、重合性単量体等を用いて得られる合成高分子微粒子、シリカ系等の無機微粒子等を用いることができるが、合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体粒子であることが望ましい。
上記疎水性架橋重合体は、少なくとも1種の疎水性架橋性単量体と少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体を共重合して得られる疎水性架橋重合体、少なくとも1種の疎水性架橋性単量体と少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体と少なくとも1種の疎水性非架橋性単量体とを共重合して得られる疎水性架橋重合体のいずれであってもよい。
上記疎水性架橋性単量体としては、単量体1分子中にビニル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル若しくはテトラ(メタ)アクリル酸エステル、またはジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン等の芳香族系化合物が挙げられる。なお、本明細書において上記(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
上記反応性官能基を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記疎水性非架橋性単量体としては、疎水性の性質を有する非架橋性の重合性有機単量体であれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、メチルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。
上記疎水性架橋重合体が、上記疎水性架橋性単量体と上記反応性官能基を有する単量体とを共重合して得られるものである場合、上記疎水性架橋重合体における上記疎水性架橋性単量体に由来するセグメントの含有割合の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は20重量%である。
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤は、上記基材粒子の表面に、上記強カチオン性基と上記弱カチオン性基とを有する重合体層を有するものであることが好ましい。また、上記強カチオン性基と上記弱カチオン性基とを有する重合体において、上記強カチオン性基と上記弱カチオン性基とはそれぞれ独立した単量体に由来するものであることが好ましい。具体的には、本発明のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤は、上記疎水性架橋重合体粒子と、上記疎水性架橋重合体粒子の表面に共重合された強カチオン性基を有する親水性重合体の層とからなる被覆重合体粒子の表面に、弱カチオン性基が導入されたものであることが好適である。
上記強カチオン性基を有する親水性重合体は、強カチオン性基を有する親水性単量体から構成されるものであり、1種以上の強カチオン性基を有する親水性単量体に由来するセグメントを含有すればよい。すなわち、上記強カチオン性基を有する親水性重合体を製造する方法としては、強カチオン性基を有する親水性単量体を単独で重合させる方法、2種以上の強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合させる方法、強カチオン性基を有する親水性単量体と強カチオン性基を有しない親水性単量体を共重合させる方法等が挙げられる。
上記強カチオン性基を有する親水性単量体としては、4級アンモニウム基を有するものであることが好ましい。具体的には例えば、メタクリル酸エチルトリエチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アクリル酸エチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アクリル酸エチルトリエチルアンモニウムクロリド、アクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドエチルトリエチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドエチルジメチルエチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
上記被覆重合体粒子の表面に上記弱カチオン性基を導入する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には例えば、上記弱カチオン性基として3級アミノ基を導入する方法としては、グリシジル基を有する単量体に由来するセグメントを有する疎水性架橋重合体からなる疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合し、次いでグリシジル基に3級アミノ基を有する試薬を反応させる方法、イソシアネート基を有する単量体に由来するセグメントを有する疎水性架橋重合体からなる疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合し、次いで、イソシアネート基に3級アミノ基を有する試薬を反応させる方法、上記疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体と3級アミノ基を有する単量体とを共重合する方法、3級アミノ基を有するシランカップリング剤を用いて上記強カチオン性基を有する親水性重合体の層を有する被覆重合体粒子の表面に3級アミノ基を導入する方法、カルボキシ基を有する単量体に由来するセグメントを有する疎水性架橋重合体からなる疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合し、次いで、カルボキシ基と3級アミノ基を有する試薬とを、カルボジイミドを用いて縮合させる方法、エステル結合を有する単量体に由来するセグメントを有する疎水性架橋重合体からなる疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合し、エステル結合部を加水分解した後、次いで、加水分解によって生成したカルボキシ基と3級アミノ基を有する試薬とを、カルボジイミドを用いて縮合させる方法等が挙げられる。なかでも、グリシジル基を有する単量体に由来するセグメントを有する疎水性架橋重合体からなる疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合し、次いで、グリシジル基に3級アミノ基を有する試薬を反応させる方法や、イソシアネート基を有する単量体に由来するセグメントを有する疎水性架橋重合体からなる疎水性架橋重合体粒子の表面において上記強カチオン性基を有する親水性単量体を共重合し、次いで、イソシアネート基に3級アミノ基を有する試薬を反応させる方法が好ましい。
グリシジル基やイソシアネート基等の反応性官能基に反応させる上記3級アミノ基を有する試薬としては、3級アミノ基と反応性官能基に反応可能な官能基を有する試薬であれば、特に限定されない。上記3級アミノ基と反応性官能基に反応可能な官能基としては、例えば、1級アミノ基、水酸基等が挙げられる。なかでも、末端に1級アミノ基を有している基が好ましい。当該官能基を有する具体的な試薬としては、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルエチルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
上記強カチオン性基、好ましくは4級アンモニウム塩と、上記弱カチオン性基、好ましくは3級アミノ基との相対的な位置関係は、上記強カチオン性基が上記弱カチオン性基よりも基材粒子の表面から遠い位置、即ち外側にあることが好ましい。例えば、上記弱カチオン性基は基材粒子表面から30Å以内にあり、上記強カチオン性基は基材粒子表面から300Å以内で、かつ、弱カチオン性基よりも外側にあることが好ましい。
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤に用いられる上記基材粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は20μmである。上記平均粒子径が0.1μm未満であると、カラム内が高圧になりすぎて分離不良を起こすことがある。上記平均粒子径が20μmを超えると、カラム内のデッドボリュームが大きくなりすぎて分離不良を起こすことがある。なお、本明細書において上記平均粒子径は体積平均粒子径を示し、粒度分布測定装置(AccuSizer780/Particle Sizing Systems社製など)を用いて測定することができる。
本発明で行われるイオン交換クロマトグラフィーに用いる溶離液の組成としては、公知の条件を用いることができる。
上記溶離液に用いる緩衝液としては、公知の塩化合物を含む緩衝液類や有機溶媒類を用いることが好ましく、具体的には例えば、トリス塩酸緩衝液、トリスとEDTAからなるTE緩衝液、トリスとホウ酸とEDTAからなるTBA緩衝液等が挙げられる。
上記溶離液のpHは特に限定されないが、好ましい下限は5、好ましい上限は10である。この範囲に設定することで、上記弱カチオン性基も効果的にイオン交換基(アニオン交換基)として働くと考えられる。上記溶離液のpHのより好ましい下限は6、より好ましい上限は9である。
上記溶離液に含まれる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化物とアルカリ金属とからなる塩や、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化物とアルカリ土類金属とからなる塩や、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の無機酸塩等を用いることができる。また、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム等の有機酸塩を用いることもできる。上記塩は、いずれか単独または組み合わせて使用され得る。
上記溶離液の塩濃度としては、分析条件に合わせ適宜調整すればよいが、好ましい下限は10mmol/L、好ましい上限は2000mmol/Lであり、より好ましい下限は100mmol/L、より好ましい上限は1500mmol/Lである。
さらに、本発明のイオン交換クロマトグラフィーに用いる溶離液には、分離性能をさらに高めるためにアンチカオトロピックイオンが含まれている。アンチカオトロピックイオンは、カオロトピックイオンとは逆の性質を有し、水和構造を安定化させる働きがある。そのため、充填剤と核酸分子との間の疎水性相互作用を強める効果がある。本発明のイオン交換クロマトグラフィーの主たる相互作用は静電的相互作用であるが、加えて、疎水性相互作用の働きも利用することにより分離性能が高まる。
上記溶離液に含まれるアンチカオトロピックイオンとしては、リン酸イオン(PO4 3-)、硫酸イオン(SO4 2-)、アンモニウムイオン(NH4 +)、カリウムイオン(K+)、ナトリウムイオン(Na+)などが挙げられる。これらのイオンの組合せの中でも、硫酸イオンおよびアンモニウムイオンが好適に用いられる。上記アンチカオトロピックイオンは、いずれか単独または組み合わせて使用され得る。なお、上述のアンチカオトロピックイオンの一部には、上記溶離液に含まれる塩や緩衝液の成分が含まれる。このような成分を使用する場合、溶離液に含まれる塩としての性質または緩衝能と、アンチカオトロピックイオンとしての性質の両方を具備するので、本発明には好適である。
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液におけるアンチカオトロピックイオンの分析時の濃度は、分析対象物に合わせて適宜調整すればよいが、アンチカオトロピック塩として2000mmol/L以下であることが望ましい。具体的には、アンチカオトロピック塩の濃度を0〜2000mmol/Lの範囲でグラジエント溶出させる方法を挙げることができる。従って、分析開始時のアンチカオトロピック塩の濃度は0mmol/Lである必要はなく、また、分析終了時のアンチカオトロピック塩の濃度も2000mmol/Lである必要はない。上記グラジエント溶出の方法は、低圧グラジエント法であっても高圧グラジエント法であってもよいが、高圧グラジエント法による精密な濃度調整を行いながら溶出させる方法が好ましい。
上記アンチカオトロピックイオンは、溶出に用いる溶離液のうちの1種のみに添加してもよいが、複数種の溶離液に添加してもよい。また上記アンチカオトロピックイオンは、充填剤とPCR増幅産物との間の疎水性相互作用を強める効果または緩衝能と、PCR増幅産物をカラムから溶出させる効果の両方の役割を備えていても良い。
本発明で行われるイオン交換クロマトグラフィーでPCR増幅産物を分析する際のカラム温度は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。イオン交換クロマトグラフィーのカラム温度が30℃未満であると充填剤とPCR増幅産物との間の疎水性相互作用が弱くなり、所望の分離効果を得ることが難しくなる。イオン交換クロマトグラフィーのカラム温度が45℃未満である場合、メチル化DNAの亜硫酸水素塩処理物のPCR増幅産物(メチル化DNAサンプル)と非メチル化DNAの亜硫酸水素塩処理物のPCR増幅産物(非メチル化DNAサンプル)との保持時間の差が小さいことがある。さらに、カラム温度が55℃以上、好ましくは60℃以上では、メチル化DNAサンプルと非メチル化DNAサンプルの間の保持時間の差がさらに広がり、かつそれぞれのピークもより明瞭になるので、より精度のよいDNAのメチル化の検出が可能になる。
さらに、イオン交換クロマトグラフィーのカラム温度が高くなると、メチル化DNAサンプルと非メチル化DNAサンプルとが明瞭に分離されるので、サンプルDNA中のメチル化DNAと非メチル化DNAの存在比率に従って両者の保持時間のピーク面積またはピーク高さに差異が生じやすくなる。したがって、カラム温度を高くすれば、メチル化DNAサンプルと非メチル化DNAサンプルの間の保持時間のピークの面積または高さに基づいて、サンプルDNA中のメチル化DNAおよび非メチル化DNAそれぞれの存在量や存在比率を測定することがより容易になる。
一方、イオン交換クロマトグラフィーのカラム温度が90℃以上になると、PCR増幅産物中の核酸分子の二本鎖が乖離するため分析上好ましくない。さらに、カラム温度が100℃以上になると、溶離液の沸騰が生じる恐れがあるため分析上好ましくない。したがって、本発明で行われるイオン交換クロマトグラフィーでPCR増幅産物を分析する際のカラム温度は、30℃以上90℃未満であればよく、好ましくは40℃以上90℃未満であり、より好ましくは45℃以上90℃未満であり、さらに好ましくは55℃以上90℃未満であり、さらにより好ましくは55℃以上85℃以下であり、なお好ましくは60℃以上85℃以下である。
上記イオン交換クロマトグラフィーカラムへの試料注入量は、特に限定されずカラムのイオン交換容量および試料濃度に応じて適宜調整すればよい。流速は0.1mL/minから3.0mL/minが好ましく、0.5mL/minから1.5mL/minがより好ましい。流速が遅くなると分離の向上が期待できるが、遅くなりすぎると分析に長時間を要したり、ピークのブロード化による分離性能の低下を招く恐れがある。逆に流速が早くなると分析時間の短縮という面においてはメリットがあるが、ピークが圧縮されるため分離性能の低下を招く。よって、カラムの性能によって適宜調整されるパラメータではあるが、上記流速の範囲に設定することが望ましい。各サンプルの保持時間は、各サンプルについて予備実験を行うことによって予め決定することができる。送液方法はリニアグラジエント溶出法やステップワイズ溶出法など公知の送液方法を用いることができるが、本発明における送液方法としてはリニアグラジエント溶出法が好ましい。グラジエント(勾配)の大きさは溶出に用いる溶離液を0%から100%の範囲で、カラムの分離性能および分析対象物(ここではPCR増幅産物)の特性に合わせ適宜調整すればよい。
本発明においては、上述した手順で亜硫酸水素塩処理したDNAのPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけることによって、検体から調製したゲノムDNAにおけるDNAのメチル化を検出する。
DNAを亜硫酸水素塩処理した場合、当該DNA中の非メチル化シトシンはウラシルに変換されるが、メチル化シトシンはシトシンのままである。亜硫酸水素塩処理したDNAをPCR増幅すると、非メチル化シトシン由来のウラシルは、さらにチミンに置き換わるため、メチル化DNAと非メチル化DNAとの間で、シトシンとチミンの存在比率に差が生じる。したがって、PCR増幅産物中のDNAは、メチル化率に応じた異なる配列を有する。上記PCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけると、当該増幅産物中に含まれるDNAの塩基配列に応じて、異なるシグナルを示すクロマトグラムが得られる。
すなわち、検体から抽出したDNAがメチル化しているほど、上記PCR増幅産物から得られた検出シグナルのピークの保持時間は短くなり、逆にメチル化の程度が低ければ、検出シグナルのピークの保持時間は長くなる。また、各検出シグナルのピークの高さは、該ピークに相当するメチル化率のDNAの存在比率が高いことを表す。
SNRPN遺伝子は、正常者の場合、父方の染色体(p)に由来する非メチル化遺伝子と母方の染色体(m)に由来するメチル化遺伝子(インプリンティング遺伝子)とが存在する。従って、正常者(非プラダーウィリ症候群、非アンジェルマン症候群)から得られた上記PCR増幅産物から得られた検出シグナルのピークは、保持時間の長い非メチル化DNA由来のピークと保持時間の短いメチル化DNA由来のピークとの、実質的に二峰性になる。
一方、プラダーウィリ症候群患者では、欠失例(母方刷込の上に父由来遺伝子が欠失している場合)および非欠失例(片親性ダイソミーの場合)の両方で父由来の非メチル化SNRPN遺伝子が欠失しているため、母方の染色体(m)に由来するメチル化SNRPN遺伝子のみが存在する。したがって、上記PCR増幅産物から得られた検出シグナルのピークは、実質的に、保持時間の短いメチル化DNA由来のピークのみとなる。
また一方、アンジェルマン症候群患者では、欠失例(父方刷込の上に母由来遺伝子が欠失している場合)および非欠失例(片親性ダイソミーの場合)の両方で母由来のメチル化遺伝子が欠失しているため、父方の染色体(p)に由来する非メチル化SNRPN遺伝子のみが存在する。したがって、上記PCR増幅産物から得られた検出シグナルのピークは、実質的に、保持時間の長い非メチル化DNA由来のピークのみとなる。
本発明の方法において、クロマトグラフィーによる検出シグナルのピークの有無を判定する方法としては、既存のデータ処理ソフトウェア、例えばLCsolution(島津製作所)、GRAMS/AI(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、Igor Pro(WaveMetrics社)などを用いたピーク検出が挙げられる。LCsolutionを用いたピークの有無の判定方法を例示すると、具体的には、まずピークを検出させたい保持時間の区間を指定する。次に、ノイズなど不要なピークを除去するために、各種パラメータを設定する。例えば、パラメータ「WIDTH」を不要なピークの半値幅よりも大きくする、パラメータ「SLOPE」を不要なピークの立ち上り傾斜より大きくする、パラメータ「DRIFT」の設定を変えることにより分離度の低いピークを垂直分割するかベースライン分割するか選択する、などが挙げられる。パラメータの値は、分析条件、選択した遺伝子マーカーの種類、検体の量などにより、異なるクロマトグラムが得られるため、クロマトグラムに応じて適切な値を設定すればよい。
クロマトグラフィーにより得られた検出シグナルのピークの保持時間は、PCR増幅産物、クロマトグラフィーの条件などに依存して変動し得る。例えば、PCR増幅産物の長さや、クロマトグラフィーの条件を予め決定してメチル化DNAおよび非メチル化DNAのピークの保持時間を調べておくか、または同じ条件で調べた正常検体の結果とピークの保持時間を比較することにより、目的のピークがメチル化DNAに由来するか非メチル化DNAに由来するかをより正確に判断することができる。
本発明の方法においては、上記検体由来のPCR増幅産物のイオン交換クロマトグラフィーによる検出シグナルのパターンについて調べる。その結果、(i)メチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰が得られる場合には、該検体を、正常者(プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していない被験者)から得られた検体であると判定し、(ii)メチル化を示すピーク(保持時間の短いピーク)の実質的に一峰のみが得られる場合には、該検体を、プラダーウィリ症候群患者から得られた検体であると判定し、(iii)非メチル化を示すピーク(保持時間の長いピーク)の実質的に一峰のみが得られる場合には、該検体を、アンジェルマン症候群患者から得られた検体であると判定する。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔組織サンプル〕
2010年1月から2014年5月までに、計8検体についてインプリンティング疾患(プラダーウィリ症候群、アンジェルマン症候群)の診断依頼があった。検体は全て末梢血であった。なお、参考例1および実施例1で用いた検体はすべて、遺伝学的研究について同意を得た上で、入手時点で匿名化されていた検体である。
〔参考例1〕従来法によるインプリンティング疾患判定
従来法によるインプリンティング疾患判定は全て、非特許文献6に記載のメチル化特異的PCR解析法を用いたインプリンティング疾患の判定方法に従って行った。メチル化DNA判定方法の1つであるメチル化特異的PCR解析法にて、SNRPN遺伝子のプロモーター領域およびexon1領域のCpGサイト(表1)についてのDNAメチル化レベルを検出した。メチル化特異的PCR解析法は、DNAの亜硫酸水素塩処理後にメチル化配列特異的プライマーと非メチル化配列特異的プライマーを用いたPCR増幅、アガロースゲル電気泳動を順に行い、両プライマーによる増幅産物の有無により対象領域のDNAメチル化状態を判定する方法である。
まず、前記CpGサイトを含むCpGアイランドに対し、Methyl Primer Express(登録商標)ソフトウェア(Life Technologies社)を用いてメチル化配列特異的プライマーおよび非メチル化配列特異的プライマーのプライマー設計を行った。
続いて、前記検体である末梢血からリンパ球を得て、QIAamp blood kit(Qiagen)を用いて、製造者の指示説明書に従ってDNAを抽出した。そしてDNA(0.2〜2mg)を既報(Clark et al.,Nucl.Acids Res.,22,2990−2997,1994;Herman et al.,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,93,9821−9826,1996)に従って亜硫酸水素塩で処理した。すなわち、DNA(0.2〜2mg)を水酸化ナトリウムで変性させ、ヒドロキノン(Sigma)および亜硫酸水素ナトリウム(Sigma)と共に一晩55℃でインキュベートした。DNAはWizard DNA clean−up system(Promega)を用いて精製し、化学反応は水酸化ナトリウムにより終了させた。エタノール沈殿後、処理したDNAを50μL TE(10mM Tris,1mM EDTA,pH8.0)に再懸濁した。処理したDNAを鋳型として用いて、それぞれ、下記のように設計された2種のプライマーセットを用いてPCRを行った。
SNRPN遺伝子(Genbank登録番号L32702:exon α)のCpGアイランドについて、メチル化アレルの増幅のためにSNRPN−Mプライマーセット(SNRPN−M forおよびSNRPN−M rev)を、同様に、非メチル化アレルの増幅のためにSNRPN−Pプライマーセット(SNRPN−P forおよびSNRPN−P rev)を、亜硫酸水素ナトリウムで改変されたDNA配列に対して設計した(表2)。
本解析に用いたプライマーの配列(配列番号2〜5)と該プライマーのセットを用いて増幅されたPCR増幅産物の配列(配列番号6〜7)を、表2および3に示す。
PCRにおいて、ポリメラーゼは95℃で10分間活性化した。DNAは、パーキンエルマーモデル9600サーモサイクラーにより、94℃30秒、60℃30秒、および72℃30秒の35サイクル、次いで最後に72℃7分間の伸長という条件で行った。PCRは、鋳型DNA 30ng、1×PCR buffer(PerkinElmer社製)、200μmol/L dNTP、2.0mmol/L MgCl2,0.6U AmpliTaq Gold DNA Polymerase(PerkinElmer社製)、0.4μmol/L forwardおよびreverseプライマーを含んだ30μLの反応液で行った。ただし、duplex PCRにおいては、1.2μmol/L SNRPN−Mプライマーおよび0.4μmol/L SNRPN−Pプライマーの濃度で反応させた。サイズマーカーは、各試料の正確なバンドサイズを得るために内部コントロールとして使用した。PCR終了後、予めethidium bromideを添加した3%アガロースゲルに、反応液5μLにloading dye solution 1μLを混ぜた後アプライして電気泳動し、PCR増幅産物を観察して目的のPCR増幅産物が得られたことを確認した。
メチル化特異的PCR解析法の解析対象とした全ての領域に関し、前記CpGサイトのDNAメチル化レベルを検出することによって、依頼のあった8検体についてプラダーウィリ症候群と、アンジェルマン症候群とを判別した。測定に供した計8検体の内訳は、プラダーウィリ症候群と判定された検体が2検体、アンジェルマン症候群と判定された検体が1検体、正常パターンと判定された検体が5検体であった。
〔実施例1〕クロマトグラフィーによるDNAメチル化解析とインプリンティング疾患の判定
(1)サンプル調製
参考例1でインプリンティング疾患と判定された検体のうち、プラダーウィリ症候群と判定された2検体、アンジェルマン症候群と判定された1検体、正常パターンと判定された2検体とからゲノムDNAを調製した。
(2)アニオン交換カラムの調製
攪拌機付き反応器中の3重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2000mLに、テトラエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学工業社製)200g、トリエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学工業社製)100g、グリシジルメタクリレート(和光純薬工業社製)100gおよび過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。次に、強カチオン性基を有する親水性単量体として、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業社製)100gをイオン交換水に溶解した。これを同じ反応器に添加して、同様にして、攪拌しながら窒素雰囲気下にて80℃で2時間重合した。得られた重合組成物を水およびアセトンで洗浄することにより、4級アンモニウム基を有する親水性重合体の層を表面に有する被覆重合体粒子を得た。得られた被覆重合体粒子について、粒度分布測定装置(AccuSizer780/Particle Sizing Systems社製)を用いて測定したところ、平均粒子径は10μmであった。
得られた被覆重合体粒子10gをイオン交換水100mLに分散させ、反応前スラリーを準備した。次いで、このスラリーを撹拌しながら、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(和光純薬工業社製)を10mL加え、70℃で4時間反応させた。反応終了後、遠心分離機(日立製作所社製、「Himac CR20G」)を用いて上澄みを除去し、イオン交換水で洗浄した。洗浄後、遠心分離機を用いて上澄みを除去した。このイオン交換水による洗浄を更に4回繰り返し、基材粒子の表面に4級アンモニウム基と3級アミノ基とを有するイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を得た。上記イオン交換クロマトグラフィー用充填剤を液体クロマトグラフィーシステムのステンレス製カラム(カラムサイズ:内径4.6mm×長さ20mm)に充填した。
(3)亜硫酸水素塩処理およびPCR
(1)で得られたゲノムDNAを、参考例1と同様の手順で亜硫酸水素塩処理し、次いでPCR増幅した。PCRは、鋳型DNA 25ng、1×Ex Taq Buffer(20mM Mg2+plus)(TaKaRa BIO社製)、200μmol/L dNTP、1.25U TaKaRa Ex Taq HS(TaKaRa BIO社製)、ならびに0.2μmol/L forwardおよびreverseプライマー、を含んだ50μLの反応液で行った。ポリメラーゼは95℃で10分間活性化した。DNAは、appliedbiosystems社製Veritiサーマルサイクラーにより、94℃30秒、55℃30秒および72℃30秒の38サイクル、次いで最後に72℃7分間の伸長という条件で行った。PCR終了後、予めethidium bromideを添加した3%アガロースゲルに、反応液5μLにloading dye solution 1μLを混ぜた後アプライして電気泳動し、PCR増幅産物を観察して目的のPCR増幅産物が得られたことを確認した。
次いでPCR増幅産物を、バイオダイナミクス社製TAクローニングキットを使用し、クローニング、形質転換を行い、約20個のコロニーを回収した。各コロニーからプラスミドを抽出し、M13 reverse primerを用いてシークエンスし亜硫酸水素塩処理後のDNA配列を決定した。メチル化状態を確認するため、QUMA(http://quma.cdb.riken.jp/)を用いて解析した。
PCRでは、SNRPN遺伝子のプロモーター領域およびexon1領域を含む340bp領域を増幅した。本解析に用いたプライマーは、非特許文献9に開示されたプライマー(配列番号8および9)を用いた。各プライマーの配列を表4に、プライマー設計に用いたSNRPN遺伝子の推定配列(配列番号10)を表5に、PCR増幅産物の配列の例として、メチル化率0%の場合のPCR増幅産物の配列(配列番号11)と、メチル化率100%の場合のPCR増幅産物の配列(配列番号12)を表6に示す。
(4)HPLC分析
(2)で準備したアニオン交換カラムを用いて、以下の条件でイオン交換クロマトグラフィーを行い、(3)で得られた各PCR増幅産物を分離検出した。
システム:LC−20Aシリーズ(島津製作所社製)
溶離液:溶離液A 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶離液B 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
+1mol/L硫酸アンモニウム
分析時間:分析時間は15分
溶出法:以下のグラジエント条件により溶離液Bの混合比率を直線的に増加させた。
0分(溶離液B40%)→10分(溶離液B100%)
検体:(2)で得られたPCR増幅産物
流速:1.0mL/min
検出波長:260nm
試料注入量:5μL
カラム温度:70℃
正常パターン検体から得られたHPLCクロマトグラムを図2に、プラダーウィリ症候群検体から得られたHPLCクロマトグラムを図3に、アンジェルマン症候群検体から得られたHPLCクロマトグラムを図4に示す。
本実施例にて用いたSNRPN遺伝子プロモーター領域およびexon1領域の340bp領域においては、正常パターン検体の場合、図2に示されるように、父方の染色体(p)上に存在するメチル化されていない遺伝子によるピーク(7.45分付近)と母方の染色体(m)に存在するメチル化された遺伝子によるピーク(7.20分付近)とがクロマトグラム上に観測された。すなわち、正常パターン検体においては、父方染色体由来の非メチル化DNAの検出シグナルと、母方由来のメチル化DNAの検出シグナルとの、実質的に二峰のクロマトグラムが得られた。
プラダーウィリ症候群検体の場合、図3に示されるように、メチル化されていない遺伝子によるピーク(7.45分付近)は観測されず、メチル化された遺伝子によるピーク(7.20分付近)のみが観測された。すなわち、プラダーウィリ症候群検体においては、メチル化DNAの検出シグナルの、実質的に一峰のクロマトグラムが得られた。
アンジェルマン症候群検体の場合、図4に示されるように、メチル化されていない遺伝子によるピーク(7.45分付近)のみが観測され、メチル化された遺伝子によるピーク(7.20分付近)は観測されない。すなわち、アンジェルマン症候群検体においては、非メチル化DNAの検出シグナルの、実質的に一峰のクロマトグラムが得られた。
上記のようなクロマトグラフィーを用いた本発明の方法においては、PCR増幅が十分に行われない場合には、メチル化されていない遺伝子によるピーク、およびメチル化された遺伝子によるピークのいずれもクロマトグラム上に観測されない。すなわち、PCR増幅が十分に行われない場合には、実質的にピークの認められないクロマトグラムが得られる。そのため、本発明の方法においては、従来のメチル化特異的PCR解析法による疾患判定において問題となっていた、PCR増幅が十分に行われない場合の誤判定が生じない。また、同様に誤判定を生じないバイサルファイトシークエンス法が解析に数日程度かかるのに対し、本発明の方法では約10分でクロマトグラムが得られるので、迅速かつ容易に疾患判定を行うことができる。
このように、本発明の方法では、PCR増幅に非メチル化DNAの亜硫酸水素塩処理物とメチル化DNAの亜硫酸水素塩処理物とを区別なく増幅させるプライマーを使用し、得られる増幅産物をイオン交換クロマトグラフィー法にて分析し、クロマトグラムのパターンを解析することで、疾患判定において必要なプライマーセットを、メチル化特異的PCR解析法で一般的に使用されていたメチル化DNA特異的プライマーおよび非メチル化DNA特異的プライマーの2セットから、1セットに減らすことができる。また、メチル化特異的PCR解析法およびバイサルファイトシークエンス法に比べて、分析時間および解析時間を短縮することができる。さらに、本発明の方法では、コントロールを置くことなくPCR増幅の異常を判断でき、測定者の負担を軽減できる。さらに、メチル化特異的PCR解析法によるインプリンティング疾患判定において問題となっていた、偽陽性の発生を回避することができる。

Claims (10)

  1. プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者から得られた検体の判定方法であって:
    (1)ヒト検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
    (2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いてPCR増幅する工程;
    (3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
    (4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該検体をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないヒトから得られた検体であると判定し、
    (ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をプラダーウィリ候群患者から得られた検体であると判定し、
    (iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該検体をアンジェルマン症候群患者から得られた検体であると判定する、工程、
    を含む方法。
  2. 前記イオン交換クロマトグラフィーがアニオン交換クロマトグラフィーである、請求項1記載の方法。
  3. 前記イオン交換クロマトグラフィーに用いるカラム充填剤が、表面に強カチオン性基および弱カチオン性基の両方を有する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記プライマーセットが、配列番号8で示される塩基配列のプライマーと配列番号9で示される塩基配列のプライマーからなるプライマーセットである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者の判定方法であって:
    (1)被験者から採取された検体から調製されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
    (2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
    (3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
    (4)(i)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰である場合、該被験者をプラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群のいずれにも罹患していないと判定し、
    (ii)工程(3)で得られた検出シグナルがメチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該被験者をプラダーウィリ候群患者であると判定し、
    (iii)工程(3)で得られた検出シグナルが非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰である場合、該被験者をアンジェルマン症候群患者であると判定する、工程、
    を含む方法。
  6. 前記イオン交換クロマトグラフィーがアニオン交換クロマトグラフィーである、請求項5記載の方法。
  7. 前記イオン交換クロマトグラフィーに用いるカラム充填剤が、表面に強カチオン性基および弱カチオン性基の両方を有する、請求項5又は6記載の方法。
  8. 前記プライマーセットが、配列番号8で示される塩基配列のプライマーと配列番号9で示される塩基配列のプライマーからなるプライマーセットである、請求項5〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. プラダーウィリ症候群およびアンジェルマン症候群から選択される疾患を有する患者を判定するための情報の取得方法であって:
    (1)ヒト検体由来のゲノムDNAを亜硫酸水素塩で処理する工程;
    (2)工程(1)で得られた亜硫酸水素塩によって処理されたDNAを、SNRPN遺伝子のCpG領域のDNAを増幅するプライマーセットであって、メチル化された該DNAとメチル化されていない該DNAの両方の亜硫酸水素塩処理物を増幅することができるプライマーセットを用いて、PCR増幅する工程;
    (3)工程(2)で得られたPCR増幅産物をイオン交換クロマトグラフィーにかけ、検出シグナルを得る工程;
    (4)工程(3)で得られた検出シグナルのタイプを以下のいずれかに分類する工程、
    (i)メチル化DNAを示すピークと非メチル化DNAを示すピークの実質的に二峰であるシグナル
    (ii)メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰であるシグナル
    (iii)非メチル化DNAを示すピークの実質的に一峰であるシグナル
    を含む方法。
  10. 前記プライマーセットが、配列番号8で示される塩基配列のプライマーと配列番号9で示される塩基配列のプライマーからなるプライマーセットである、請求項9記載の方法。
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