JPWO2016017464A1 - 光架橋型膜製造装置 - Google Patents

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Abstract

光架橋型材料で膜を製造する際に、光照射により光架橋がどの程度進行しているかをオンラインで把握できる光架橋型膜製造装置を提供する。光学基材の表面に形成された光架橋型材料からなる膜に、光照射して光架橋反応を行わせる光照射用光源と、前記光学基材に計測光を入射させ、前記光学基材と前記膜との界面で全反射させる計測光源と、前記光学基材から出射した計測光を分光分析する赤外分光分析機を備え、赤外分光分析機は、予め、前記光学基材から出射した計測光の吸光度スペクトルを分析して光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が減少する特定波長x1、および吸光度が増加する特定波長x2を求めておき、予め求めていた特定波長x1、x2における吸光度Ax1、Ax2の比Ax2/Ax1を演算し、当該比の値により前記光照射用光源を制御することを特徴とする。

Description

本発明は、光架橋型膜製造装置に関し、特に、光照射条件をオンライン制御可能にした光架橋型膜製造装置に関する。
従来、絶縁膜などの機能性膜の材料のひとつとして光架橋型材料が知られており、例えばエレクトロニクスデバイスでは、印刷法や塗布法を利用した素子形成時に必要となる絶縁膜の材料の有力な候補のひとつである(非特許文献1〜3、特許文献1〜2参照)。
特開2010−128317号公報 特開2012−103688号公報
Polymer International 43, 1997, 310-316. Journal of Materials Chemistry 2011, 21, 15637-15642. Chemistry of Materials 2004, 16, 5141-5148.
しかしながら、光架橋型材料で絶縁膜などの機能性膜を製造する際には、光照射により光架橋がどの程度進行しているかをオンラインで把握することが困難であった。機能性膜として絶縁膜の製造を一例にとれば、基材表面に印刷あるいは塗布された絶縁体前駆体膜表面への光照射時に光架橋がどの程度進行しているかを把握し光照射条件を最適化するためには、膨大なデータ取得が必要となり、最適化条件の探索の効率化が課題となっている。
したがって、本発明の解決しようとする課題は、光架橋型材料で機能性膜を製造する際に、光照射により光架橋がどの程度進行しているかをオンラインで把握し光照射条件を最適化する光架橋型膜製造装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、光学基材の表面に形成された光架橋型材料からなる膜に、光照射して光架橋反応を行わせる光照射用光源と、前記光学基材に計測光を入射させ、前記光学基材と前記膜との界面で全反射させる計測光源と、前記光学基材から出射した計測光を分光分析する赤外分光分析機を備えた光架橋型膜製造装置であって、
前記赤外分光分析機は、
予め、前記光学基材から出射した計測光の吸光度スペクトルを分析して前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が減少する特定波長x1、および前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が増加する特定波長x2を求めておき、
前記予め求めていた特定波長x1、x2における吸光度Ax1、Ax2の比Ax2/Ax1を演算し、当該比の値により前記光照射用光源を制御することを特徴とする。
また、本発明は、上記光架橋型膜製造装置において、前記計測光源からの計測光は1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域中の波長の光を用いることを特徴とする。
また、本発明は、上記光架橋型膜製造装置において、前記光照射用光源からの光照射は波長300nmから2μmまでの帯域の光を照射し、前記光架橋型材料は波長300nmから2μmまでの帯域の光で光架橋するものであることを特徴とする。
また、本発明は、上記光架橋型膜製造装置において、前記光学基材は、1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域で複素屈折率の実数部が前記光架橋型材料よりも大きく、虚数部が10-3以下であることを特徴とする。
また、本発明は、上記光架橋型膜製造装置において、前記光照射用光源の制御は、前記比の値が一定の値に達しない場合は、一定の値に達するまで前記光照射を行い続けることを特徴とする。
また、本発明は、上記光架橋型膜製造装置において、前記計測光の光学基材への入射および出射は、光学基材端面のカット面または光学基材に密着させたプリズムを介して行うことを特徴とする。
また、本発明は、上記光架橋型膜製造装置において、前記光架橋型膜は絶縁膜であることを特徴とする。
また、本発明は、光学基材の表面に形成された光架橋型材料からなる膜に、光照射して光架橋反応を行わせ、前記光学基材と前記膜との界面で全反射するように、計測光を光学基材に入射し、光学基材から出射した計測光を赤外分光分析機で分光分析する光架橋型膜製造方法であって、
予め、計測光の吸光度スペクトルを分析して前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が減少する特定波長x1、および前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が増加する特定波長x2を求めておき、前記予め求めていた特定波長x1、x2における吸光度Ax1、Ax2の比Ax2/Ax1を用いて前記光照射を制御することを特徴とする。
本発明では、計測系として、全反射光学系を利用することにより、光架橋用照射光源の干渉を受けることなく、基材の裏面側に計測系を組むことが可能である。
また、光架橋用照射光源と計測系で用いられる光源は、波長帯域が異なるため、計測時に光架橋用照射光からのノイズはフィルタの導入などでカットしやすく、光架橋のための光照射の最中に連続的な計測が可能である。
計測光の強度は、光架橋反応を促進させないような大きさが望ましいところ、本発明では、例えば、1[mW]以下の強度でも検出器の感度を上げれば計測は十分可能である。
図1は、本発明の光架橋型膜製造装置の一実施例を示した全体構成図であって、この実施例では、光学基材の端面が30°〜60°の間の角度でカットされており、当該カット部分から計測光を光学基材に入射する装置構成である。 図2は、本発明の光架橋型膜製造装置の他の実施例を示した全体構成図であって、この実施例では、光学基材の端面が90°の角度でカットされており、光学プリズムを用いて計測光を光学基材に入射する装置構成である。 図3は、ポリビニルシンナメートの光架橋反応を表示した図である。 図4は、ポリビニルシンナメートを用いた場合の、キセノンフラッシュランプの照射前(照射エネルギー総量0[J/cm2])および照射後(照射エネルギー総量334[J/cm2]、668[J/cm2]、735[J/cm2]、1138[J/cm2]、4551[J/cm2])の光架橋型絶縁体材料のFTIR(フーリエ変換赤外分光分析機)による吸光度スペクトルである。 図5は、図4のFTIRスペクトルから求めた、照射エネルギー総量(横軸)と全反射光学系で計測された光架橋に関与する特定の2波長1711[cm-1]および1721[cm-1]における振動吸収量(吸光度)の比(縦軸)との関係を示したものである。
図1および図2に本発明の光架橋型膜製造装置の全体図を示す。本発明では、計測のための光学系に全反射光学系を利用し、光架橋のための光照射用光源から光照射を行っている最中に架橋状態を解析する。光照射ユニット内に、材料塗布あるいは印刷される光学基材を置き、光学基材と材料界面で全反射が起こるような条件で計測光を光学基材の一方の端面から入射する。計測光は、赤外領域の1000[cm-1]から4000[cm-1]の波長帯域にあり、光学基材の一方の端面から入射されると上面と下面で全反射を繰り返しながら進行し、もう一方の端面がら出射される。光架橋型の絶縁膜材料の多くは、赤外領域に化学結合状態を表す振動吸収があり、光照射による光架橋前後で特定の振動吸収帯における吸収量が変化する。光学基材に入射された計測光は、塗布あるいは印刷された光架橋型絶縁膜材料が存在する部分と光学基材との界面で全反射する際に、絶縁膜材料側にエバネセント場を生じ、絶縁膜材料に吸収される。このうち、光架橋に起因する吸収量変化を出射してくる計測光の光量から解析することによって、光架橋状態を把握することが出来る。
計測のための光学系は、光学基材の裏面側に組むことができるため、塗布膜表面へ光照射を行う光照射ユニットの干渉を受けることなく、塗布膜には非接触で計測できるため、光照射中の計測にも適している。
ここで、[cm-1]は単位長さ当たりに含まれる波の数(すなわち波数)を表すもので分光分野においてよく用いられているが、波長が一定であれば波数は波長の逆数に等しくなるので、1000[cm-1]は波長10μm、4000[cm-1]は波長2.5μmに等しくなる。なお、本発明では波長が一定であるものとして扱っても差し支えないから、以下の説明では波数の単位[cm-1]を波長に換算した波長の意味で用いている場合もある。
計測光は、光学基材と同素材から成る光学プリズムを光学基材に密着させ、光学プリズムを介して光学基材に入射してもよい(図2参照)。波長範囲は、1000[cm-1]から4000[cm-1]であり、全光あるいは特定波長の2波長だけでもよい。
光学基材および光学プリズムは、ゲルマニウム、シリコン、ZnSe、KRS―5などが望ましいが、1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域で複素屈折率の実数部が前記光架橋型絶縁体材料よりも大きく、虚数部が10-3以下であればよい。光学基材の向かい合う2つの端面は30°〜60°にカットされていることが望ましい(図1参照)。この場合、光学プリズムを介さずに計測光を一方の端面から入射しもう一方の端面から出射させることができる。
検出器には赤外分光分析機を用い、1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域中の波長の光を検出することが可能であり、且つ同帯域中の2つの特定波長x1、x2におけるそれぞれの振動吸収量(吸光度)の比を検出および計算し出力するものである。
印刷法や塗布法により光学基材表面に形成された光架橋型材料からなる膜(図中のサンプル参照)は、300nmから2μmまでの帯域の光照射によって光架橋し、これによって計測光の1000[cm-1](波長10μm)から4000[cm-1](波長2.5μm)における帯域中の2つの特定波長x1、x2は、一方の波長x2における振動吸収量が増加し、もう一方の波長x1における振動吸収量が減少するものに限定される。また、膜厚は概ね2μmより小さいことが望ましい。
光照射ユニットは、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、近紫外レーザー、可視レーザー、近赤外レーザー、赤外レーザー、近紫外LED、可視LED、近赤外LEDのいずれか、あるいは複数を含み、300nmから2μmの波長帯域よりも短波長側および長波長側を含む場合は、フィルタにより300nmから2μmの範囲外の光をカットする。これは、計測光の波長1000[cm-1]〜4000[cm-1](波長10μm〜2.5μm)と異なる波長帯域を用いることで計測系に影響を及ぼさないようにするためである。
上記の光架橋型膜製造装置は、製造工程中に光橋架型膜製造工程を有する製造ライン、例えば、エレクトロニクスデバイス等の製造ラインにおいて、基板の材質が特定波長に吸収を持たない、あるいは、吸収があるとしてもこの吸収量をベースラインとして、特定波長における吸光度の比をとることができれば、光橋架型材料で絶縁膜等の機能性膜を製造するような場合には、光橋架型膜製造工程の製造装置として製造ライン中に組み込むことができ、シリコンウエハーやゲルマニウムウエハーを用いてエレクトロニクスデバイスを製造する製造ライン中の、絶縁膜製造工程の装置としても適用できる。
光架橋型材料としてポリビニルシンナメートを用いて絶縁膜を製造する場合を以下に説明する。ポリビニルシンナメートの光架橋反応は、図3に示すとおりである。
2[wt.%]のポリビニルシンナメートのクロロホルム溶液を60°に端面がカットされたゲルマニウム光学基材表面に膜厚が500[nm]になるよう塗布し、ホットプレート上で100℃、5分間の熱処理によりクロロホルムを蒸発させた後、塗布面に向けてキセノンフラッシュランプ(SINTERON 2010-L Photonic Curing R&D System、XENON社製、240nm以下の波長をカット)を用いて光照射による光架橋を行う。また、計測光として1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域の赤外光をゲルマニウム光学基材端面から入射し、反対側から出射した光を分光分析することによって、ポリビニルシンナメート塗布膜の振動吸収を観察した。
出射した計測光の吸光度スペクトルを図4に示す。光照射前(照射エネルギー総量0J)には、カルボニル基由来の振動吸収が1711[cm-1]に現れている。光照射を行うと、照射総エネルギー(照射エネルギー総量334[J/cm2]、334[J/cm2]、668[J/cm2]、735[J/cm2]、1138[J/cm2]、4551[J/cm2])が増えるにつれて1711[cm-1]の振動吸収が減少し、代わりに1721[cm-1]の振動吸収が増加している。これは、1721[cm-1]における振動吸収は、ビニル基が架橋したために隣のカルボニル基の振動エネルギーが1711[cm-1]から1721[cm-1]に増大したためである。
この2つの波長x1(=1711[cm-1])、x2(=1721[cm-1])における吸光度Ax1、Ax2の比Ax2/Ax1を照射総エネルギー[J/cm2]に対してプロットしたのが図5である。図5から吸光度の比の変化は、光照射開始時には大きく増大するが照射総エネルギーの増加につれて次第に変化率は小さくなり、照射総エネルギーがある値を超えたところからあまり変化しなくなる。したがって、この吸光度の比を利用すれば、光架橋型膜製造装置における光照射の制御が行えることがわかる。すなわち、図5のポリビニルシンナメートの例でいえば、吸光度の比Ax2/Ax1が略1.08を越えるころ(照射総エネルギーでいえば略1100[J/cm2]を越えたころ)から吸光度の比はあまり変化しなくなり、言い換えれば光架橋反応があまり行われなくなり、この時点で光架橋のための光照射を終了させて良いことがわかる。
つまり、予め、赤外分光分析によって吸光度スペクトルを解析して、光照射用光源から光照射を行って光架橋型材料の光架橋が行われることにより振動吸収量が減少するすなわち吸光度が減少する特定波長x1、光架橋型材料の光架橋が行われることにより振動吸収量が増加するすなわち吸光度が増加する特定波長x2を求めておき、膜製造時には予め求めていた当該特定波長x1、x2における吸光度Ax1、Ax2を検出しその比Ax2/Ax1の値により光照射用光源の光照射の終了を制御する。なお、光照射の終了を制御する比Ax2/Ax1の値は、予め特定波長x1、x2を求める際に同時に求めておいてもよいし、製造時に検出している比Ax2/Ax1の値の変化が小さくなったら光照射の終了を行うように制御しても良い。
印刷エレクトロニクスは近年発展著しい分野であるが、印刷法や塗布法を利用したアクティブ素子製造時に必要となる絶縁膜材料には光架橋型の材料も多く存在するので、印刷エレクトロニクスデバイスの製造ラインに本発明の光架橋型膜製造装置を利用することができる。
また、上記説明では、光架橋型の材料による機能性膜の一例として絶縁膜で説明したが、絶縁膜以外の機能性膜の製造装置であっても、光架橋型材料による膜であれば適用できることは言うまでもない。

Claims (8)

  1. 光学基材の表面に形成された光架橋型材料からなる膜に、光照射して光架橋反応を行わせる光照射用光源と、
    前記光学基材に計測光を入射させ、前記光学基材と前記膜との界面で全反射させる計測光源と、
    前記光学基材から出射した計測光を分光分析する赤外分光分析機を備えた光架橋型膜製造装置であって、
    前記赤外分光分析機は、
    予め、前記光学基材から出射した計測光の吸光度スペクトルを分析して前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が減少する特定波長x1、および前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が増加する特定波長x2を求めておき、
    前記予め求めていた特定波長x1、x2における吸光度Ax1、Ax2の比Ax2/Ax1を演算し、当該比の値により前記光照射用光源を制御することを特徴とする光架橋型膜製造装置。
  2. 前記計測光源からの計測光は1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域中の波長の光を用いることを特徴とする請求項1記載の光架橋型膜製造装置。
  3. 前記光照射用光源からの光照射は波長300nmから2μmまでの帯域の光を照射し、
    前記光架橋型材料は波長300nmから2μmまでの帯域の光で光架橋するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の光架橋型膜製造装置。
  4. 前記光学基材は、1000[cm-1]から4000[cm-1]の帯域で複素屈折率の実数部が前記光架橋型材料よりも大きく、虚数部が10-3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光架橋型膜製造装置。
  5. 前記光照射用光源の制御は、前記比の値が一定の値に達しない場合は、一定の値に達するまで前記光照射を行い続けることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光架橋型膜製造装置。
  6. 前記計測光の光学基材への入射および出射は、光学基材端面のカット面または光学基材に密着させたプリズムを介して行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光架橋型膜製造装置。
  7. 前記光架橋型膜は絶縁膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光架橋型膜製造装置。
  8. 光学基材の表面に形成された光架橋型材料からなる膜に、光照射して光架橋反応を行わせ、
    前記光学基材と前記膜との界面で全反射するように、計測光を光学基材に入射し、光学基材から出射した計測光を赤外分光分析機で分光分析する光架橋型膜製造方法であって、
    予め、計測光の吸光度スペクトルを分析して前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が減少する特定波長x1、および前記光架橋型材料の光架橋反応の進展にともない吸光度が増加する特定波長x2を求めておき、
    前記予め求めていた特定波長x1、x2における吸光度Ax1、Ax2の比Ax2/Ax1を用いて前記光照射を制御することを特徴とする光架橋型膜製造方法。
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