JPWO2016010160A1 - 抗インフルエンザウイルス抗体及びその利用 - Google Patents

抗インフルエンザウイルス抗体及びその利用 Download PDF

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Abstract

A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント;抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含有する、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤;抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸及びベクター。

Description

本発明は、抗インフルエンザウイルス抗体及びその利用に関する。本願は、2014年7月18日に、日本に出願された特願2014−148329号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
抗体の最大の特徴は、標的である抗原にだけ強く結合し、それ以外には結合しないという抗原結合活性と特異性の高さである。抗体は、この抗原結合活性と特異性の総和により中和活性等の機能活性を有しており、抗体医薬、診断薬、生物学研究ツール等としてバイオ産業全般で幅広く利用されている。
近年、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体の大量製造系が確立され、抗体医薬は主要な医薬品の1つとなっている。しかしながら、ほとんどのモノクローナル抗体はIgG型であり、特に抗体医薬に関してはIgG型のみしか実用化されていない。
一方、抗体には、IgGの他にIgM、IgA、IgD、IgE等の様々なアイソタイプが存在しており、それぞれ生体内での機能が異なっている。例えば、IgGは生体内血液中の主たる抗体であるが、粘膜上皮を覆う粘液や分泌液中の主たる抗体はIgAであり、粘膜感染症における生体防御機構の最前線として機能していることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
また、IgAやIgM等の一部の抗体は、同一の可変領域を有する抗体同士が二量体や五量体などの多量体を形成し、生体内で機能していることが知られている。例えば、多発性骨髄腫の患者の血清、初乳や唾液等の分泌液中には、多量体IgAが存在することが知られている。
そして、多発性骨髄腫の患者血清中には、単量体、二量体、三量体、四量体のIgAが様々な割合で含まれていることが明らかにされている。また、分泌液中には、二量体と四量体が含まれることが報告されている。しかしながら、これらの多量体抗体の生理学的意義については、ほとんど分かっていない。
また、人為的に二量体IgAを作製する技術は既に報告されているが、その収率は悪く、IgGをIgA型に変換したことによる高機能化が達成された例はない。また、人為的に三量体以上の多量体IgAを作製する技術は知られていない。
Woof J.M. and Russell M.W., Structure and function relationships in IgA, Mucosal immunology, 4(6), 590-597, 2011
本発明は、複数の型のインフルエンザウイルスに対する中和活性を有する抗体又はそのフラグメントを提供することを目的とする。本発明はまた、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤、及び抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸及びベクターを提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
[1]A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[2](a1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H1と、
(b1)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
(c1)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H3と、
を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d1)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
(e1)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
(f1)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L3と、
を含む軽鎖可変ドメインを有する、[1]に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[3]配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H3と、を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有する、[2]に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[4]配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを有する、[2]又は[3]に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[5](a2)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H1と、
(b2)配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号10に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
(c2)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号11に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H3と、
を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d2)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
(e2)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
(f2)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L3と、
を含む軽鎖可変ドメインを有する、[1]に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[6]配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H1と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H2と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H3と、を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L1と、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L2と、配列番号14に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有する、[5]に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[7]配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを有する、[5]又は[6]に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[8]IgA型である、[1]〜[7]のいずれかに記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[9]多量体IgA型である、[1]〜[8]のいずれかに記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
[10][1]〜[9]のいずれかに記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含有する、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤。
[11][1]〜[8]のいずれかに記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸。
[12](g1)配列番号17に示される塩基配列からなる核酸、
(h1)配列番号17に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i1)配列番号17に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j1)配列番号17に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸。
[13](g2)配列番号18に示される塩基配列からなる核酸、
(h2)配列番号18に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i2)配列番号18に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j2)配列番号18に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸。
[14](g3)配列番号19に示される塩基配列からなる核酸、
(h3)配列番号19に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i3)配列番号19に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j3)配列番号19に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸。
[15](g4)配列番号20に示される塩基配列からなる核酸、
(h4)配列番号20に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i4)配列番号20に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j4)配列番号20に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸。
[16][11]〜[15]のいずれかに記載の核酸を発現ベクターに挿入してなる組換えベクター。
本発明によれば、複数の型のインフルエンザウイルスに対する中和活性を有する抗体又はそのフラグメントを提供することができる。本発明はまた、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤、及び抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸及びベクターを提供することができる。
発現及び精製した遺伝子組換えモノクローナルIgG1抗体の各クローンをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供し、Simply Blue(商標) Safe Stainで染色した結果を示す写真である。 発現及び精製した遺伝子組換えモノクローナルIgA1抗体の各クローンをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供し、Simply Blue(商標) Safe Stainで染色した結果を示す写真である。 J鎖非共発現下もしくはJ鎖共発現下で発現及び精製したIgA1抗体を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN−PAGE)に供し、染色液(0.02%クーマシーR−250,30%メタノール,10%酢酸)で染色した結果を示す写真である。 多量体IgA1抗体をサイズ分画したゲル濾過クロマトグラフィーのチャート及び各分画を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN−PAGE)に供し、染色液(0.02%クーマシーR−250,30%メタノール,10%酢酸)で染色した結果を示す写真である。 単量体IgG1型抗体のインフルエンザウイルス中和活性を1とした場合における、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体の中和活性比を示すグラフである。単位タンパク質量当たりの中和活性比を示す。 単量体IgG1型抗体のインフルエンザウイルス中和活性を1とした場合における、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体の中和活性比を示すグラフである。単位分子数あたりの中和活性比を示すグラフである。 CHO YA7細胞とcis−エレメント使用による多量体抗体の発現増強効果を確認するための未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN−PAGE)の結果を示す写真である。
<用語の説明>
IgA型抗体に関連して、従来用いられている用語について以下に説明する。
[単量体IgA(Monomeric IgA、mIgA)]
IgAは、血清中では、主に単量体IgAとして分子量17万前後で存在しており、IgA1が主要構成要素である。
[二量体IgA(Dimeric IgA、dIgA)]
二量体IgAとは、粘膜固有層に存在する形質細胞が産生する二量体IgAであって、重鎖:軽鎖:J鎖の割合が4:4:1である分子を指す。IgA2が約半分程度存在する。
[多量体IgA(Polymeric IgA、pIgA)]
従来、ポリメリックIg受容体により認識される二量体以上のIgAを総称して、多量体IgAという場合が多い。すなわち、重鎖:軽鎖:J鎖の構成比が4:4:1の複合体である二量体IgAが主成分で、抗体J鎖タンパク質(Joining chain)によりIgA二分子が結合し、分泌成分タンパク質(secretory component、SCタンパク質)を含む場合と含まない場合の両方について「多量体IgA」という用語が使用されている。
すなわち、形質細胞が分泌する多量体IgA(重鎖:軽鎖:J鎖の構成比が4:4:1の複合体)を指して「多量体IgA」という場合と、粘膜上皮細胞より分泌されるS−IgA(重鎖:軽鎖:J鎖:SCの構成比が4:4:1:1の複合体)を指して「多量体IgA」という場合、及びこれら両者を指す場合が散見され、厳密に区別されずに使用されている。電気泳動での移動度、ゲル濾過クロマトグラフィーでの挙動から二量体IgAより分子量が大きい成分も検出され、二量体以上であろうと予想されて多量体IgAと呼ばれている場合もあるが、凝集体との鑑別はなされていないため、分子構造の詳細は不明である。
[ポリメリックIg受容体(pIgR、多量体免疫グロブリン受容体)]
粘膜上皮細胞の基底膜側の細胞膜上に発現しているpIgRは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するI型の膜貫通型蛋白質で、細胞外ドメイン部分、膜貫通部、細胞質内領域からなる。pIgRは粘膜固有層に存在する形質細胞が産生したJ鎖を含む二量体/多量体型Ig分子を特異的に認識して結合し、上皮細胞中への取り込み後も結合したままアピカル側へ輸送される。上皮細胞内から粘膜面への放出には、pIgRの細胞外ドメイン部分と膜貫通部との間で切断が必要で、上皮細胞のタンパク質分解酵素による切断後に内腔側粘膜層へS−IgAとして分泌される。このpIgRの細胞外ドメイン部分がIgA複合体の構成成分となる事実に由来して、分泌成分タンパク質(secretory component、SCタンパク質)とも呼ばれている。pIgRは五量体IgMの取り込みにも同様にして機能している。
SCタンパク質はpIgRの細胞外ドメイン部分であり分子量約70kDaの高度に糖鎖修飾を受けたポリペプチドである。N末端から5つの免疫グロブリン様ドメインを持ち、それぞれD1からD5と名付けられており、このうちD1からD3までが二量体IgAとの結合に必要で、特にD1は免疫グロブリンの可変領域のcomplementarity−determining regions (CDRs)に類似した構造をもち二量体IgAとの結合に重要な役割を担う。この相互作用には、D1のCDR1中のThr27−Thr33が関与する。またD1のCDR2ループ中のGlu53−Gly54も寄与するとの報告もある。J鎖は分子量15kDaのポリペプチド鎖であり、N結合型糖鎖を持ち免疫グロブリン構造をとるように折りたたまれている。哺乳類と鳥類のJ鎖を比較した場合、一次構造や抗原認識の交差性において非常に高い相同性を持つため、それらの基本特性が生物間で保存されてきたと考えられている。J鎖は二量体IgAがpIgRと相互作用する上で必要不可欠である。J鎖を取り込んだ二量体IgAは、pIgRのD1とIgAのFc領域又はpIgRとJ鎖との間に相互作用を生じ、その後にIgACα2ドメイン中の311番目のcys残基とSCのD5の467番目のcys残基間にS−S結合が形成されると考えられている。(Mucosal immunology, 4(6), 590-597, 2011、清野宏(2010).臨床粘膜免疫学 株式会社シナジー)
[分泌型IgA(Secretory IgA、S−IgA)]
粘膜上皮細胞より分泌され、SCタンパク質を含んだ二量体以上のIgA複合体を指し、Secretory dimeric IgA(S−dIgA)の場合は重鎖:軽鎖:J鎖:SCの構成比が4:4:1:1である。
[多量体IgAと分泌型多量体IgAの違い]
粘膜固有層に存在する形質細胞が産生する多量体IgAの分子量等の性状解析は技術的に困難なため、分泌型多量体IgA形成の詳細な分子形成過程は不明である。すなわち、生体内で形質細胞が産生する主要な分泌型多量体IgAは、二量体、三量体、四量体等の多量体のうちどれが主であるか、多量体化は上皮細胞内で起こっているかどうか、粘膜部で生体防御に中心的役割を果たしているのがどの型かも不明である。生体内IgA及び組換え体でも二量体(440kDa付近)より大きいIgAも微量検出されているが、凝集体との鑑別はなされていない。
[本明細書での多量体IgAの定義]
本明細書においては、分泌成分タンパク質(SC)を分子内に有する多量体抗体を分泌型抗体という。また、次のように表記する場合がある。
・単量体抗体=mIgA
・二量体抗体=dIgA
・分泌型二量体抗体=S−dIgA
・分泌型三量体抗体=S−tIgA
・分泌型四量体抗体=S−qIgA
・四量体以上の分泌型多量体抗体=S−pIgA
・組換え単量体抗体=rmIgA
・組換え二量体抗体=rdIgA
・組換え分泌型二量体抗体=recombinant S−dIgA(rS−dIgA)
・組換え分泌型三量体抗体=recombinant S−tIgA(rS−tIgA)
・組換え分泌型四量体抗体=recombinant S−qIgA(rS−qIgA)
・四量体以上の組換え分泌型多量体抗体=recombinant S−pIgA(rS−pIgA)
ここでは、分泌成分タンパク質(SC)を分子内に有する場合に「S−」を分子名の頭に付記する。分子内にSCを有さない抗体は「S−」を付記しない。また、分子の会合状態を、IgAの前に略称を付記することにより表記する。単量体は「m」、二量体は「d」、三量体は「t」、四量体は「q」、四量体以上の多量体は「p」を付記する。また、単量体抗体と組換え単量体抗体を特に区別なく「monomer」と表記する場合がある。また、二量体抗体と分泌型二量体抗体、組換え二量体抗体、組換え分泌型二量体抗体を特に区別なく「dimer」と表記する場合がある。また、分泌型三量体抗体と組換え分泌型三量体抗体を特に区別なく「trimer」と表記する場合がある。また、分泌型四量体抗体と組換え分泌型四量体抗体を特に区別なく「tetramer」と表記する場合がある。また、四量体以上の分泌型抗体と四量体以上の組換え分泌型多量体抗体を特に区別なく「polymer」と表記する場合がある。
<抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント>
1実施形態において、本発明は、A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
抗原結合フラグメントとしては、Fab、F(ab’)、抗原を認識するために必要な最小単位である重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインをフレキシブルなペプチドリンカーで結合した単可変ドメインフラグメント等が挙げられる。単可変ドメインフラグメントとしては、例えばscFv抗体が挙げられる。
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方を中和することができる。
[第一実施形態]
本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、後述する抗体クローンF11に関連するものである。本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、(a1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H1と、
(b1)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
(c1)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H3と、
を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d1)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
(e1)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
(f1)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有する。
更に、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H3と、を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有することが好ましい。
更に、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを有することが好ましい。
本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する限り、上記(a1)〜(f1)の配列番号1〜6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよい。
ここで、欠失、置換又は付加されていてもよいアミノ酸の数としては1〜5個が好ましく、1〜2個がより好ましい。
[第2実施形態]
本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、後述する抗体クローンH5に関連するものである。本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、(a2)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H1と、
(b2)配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号10に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
(c2)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号11に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H3と、
を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d2)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
(e2)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
(f2)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有する。
更に、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H1と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H2と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H3と、を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L1と、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L2と、配列番号14に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有することが好ましい。
更に、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを有することが好ましい。
本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する限り、上記(a2)〜(f2)の配列番号9〜14に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよい。
ここで、欠失、置換又は付加されていてもよいアミノ酸の数としては1〜5個が好ましく、1〜2個がより好ましい。
[第三実施形態]
本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgA型であることが好ましい。本実施形態の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、更に、多量体IgA型であることが好ましい。
本実施形態の多量体IgA型遺伝子組換え抗体は、分子内に分泌成分タンパク質(SC)を含むことが好ましい。また、二量体以上であることが好ましく、三量体以上であることがより好ましく、四量体以上であることが更に好ましい。
粘膜上皮を覆う粘液や分泌液中の主たる抗体はIgAであり、粘膜感染症における生体防御機構の最前線として機能しているにもかかわらず、IgAは抗体医薬として実用化されていないのが現状である。
発明者らは、次世代インフルエンザワクチンとしてインフルエンザウイルス不活化全粒子抗原を用いた安全で簡便な接種を特徴とする経鼻不活化全粒子インフルエンザワクチンの開発研究を行ってきた。これまでに、動物を用いた基礎研究に加え健康成人ボランティアを募った臨床研究においても良い成績を得ており、実用化を見据えた臨床開発の段階に入りつつある。
この過程で、発明者らは、経鼻不活化インフルエンザワクチンを接種したヒトの呼吸器粘膜上でウイルス感染防御に重要な役割を果たすIgA抗体の中に二量体よりも大きい多量体抗体が存在し、インフルエンザウイルス中和活性が単量体、二量体抗体よりも高いことを見出した。
また、後述するように、発明者らは、多量体IgA型遺伝子組換え抗体を効率的に作製することに初めて成功し、多量体IgA型遺伝子組換え抗体が、単量体、二量体抗体よりも高いインフルエンザウイルス中和活性及びHAタンパク質結合活性を有することを明らかにした。
したがって、IgA型、特に多量体IgA型である抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対するより高い中和活性を有する。
<インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤>
1実施形態において、本発明は、上記の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含有する、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤を提供する。
本実施形態の治療又は予防剤は、A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対するより高い中和活性を有するため、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防効果が高い。
本実施形態の治療又は予防剤は、インフルエンザウイルスによる感染リスクが高い対象に対して、予防を目的として投与してもよい。あるいは、インフルエンザウイルスによる感染が認められた患者に対して、治療及びウイルス拡散防止を目的として投与してもよい。
本実施形態の治療又は予防剤は、粉剤、液剤等の剤型に製剤化して投与することができる。本実施形態の治療又は予防剤には、例えば、噴霧した抗体の滞留性を高める目的で、既に市販されているアレルギー性鼻炎に対する点鼻薬に通常含まれるような増粘剤を添加してもよい。
本実施形態の治療又は予防剤は、鼻腔粘膜上への噴霧による投与、ネブライザーを用いた下気道への吸入による投与等により投与することができる。
鼻腔粘膜上への噴霧による投与は、例えば、Ainai A, et al., Intranasal vaccination with an inactivated whole influenza virus vaccine induces strong antibody responses in serum and nasal mucus of healthy adults., Hum Vaccin Immunother. 9(9), 1962-1970, 2013. に記載された、経鼻全粒子不活化インフルエンザワクチンと同様にして行うことができる。
本実施形態の治療又は予防剤を、鼻腔粘膜上に噴霧により投与する場合、例えば、両側鼻孔に片鼻250μLずつ噴霧するとよい。また、投与抗体量は、接種1回(500μL)あたり、数百μg〜数mgであってもよい。噴霧には、例えば、経鼻不活化全粒子インフルエンザワクチンに使用される噴霧デバイスを使用すればよい。また、1日あたり2回(朝晩)〜4回(6時間ごとに1回)噴霧すればよい。投与期間としては、例えば1週間が挙げられる。
また、本実施形態の治療又は予防剤を、下気道への吸入により投与する場合、例えば、通常使用されるエアロゾルタイプの吸入器を使用するとよい。吸入抗体量は、例えば、1回の吸入あたり数mg〜数十mgであってもよい。また、1日あたり2回(朝晩)程度吸入すればよい。投与期間としては、例えば1週間が挙げられる。
本実施形態の治療又は予防剤は、ヒトを対象とするものであってもよく、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等の家畜;イヌ、ネコ等の愛玩動物;チンパンジー、ゴリラ、カニクイザル等の霊長類;マウス、ラット、モルモット等のげっ歯類等を対象とするものであってもよい。
本実施形態の治療又は予防剤において、IgA重鎖、IgA軽鎖、J鎖、分泌成分タンパク質(以下、「SC」という場合がある。)は、対象とする動物由来のアミノ酸配列を有している(対象とする動物型である)ことが好ましい。ここで、対象とする動物型であるとは、多量体抗体をコードするIgA重鎖、IgA軽鎖の定常領域が対象とする動物のIgA重鎖、IgA軽鎖の定常領域のアミノ酸配列を有していることを意味する。また、J鎖、分泌成分タンパク質が対象とする動物型であるとは、J鎖、分泌成分タンパク質が、対象とする動物のJ鎖、分泌成分タンパク質のアミノ酸配列を有していることを意味する。IgA重鎖、IgA軽鎖、J鎖、分泌成分タンパク質のアミノ酸配列は、目的とする抗原結合活性を有している限り変異を含んでいてもよい。
本実施形態の治療又は予防剤において、抗体はIgA型抗体と非IgA型抗体とのキメラであってもよい。本明細書において、IgA型抗体とは、少なくとも1部がIgA型抗体に由来するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。いい換えると、IgA型抗体とは、一般的な抗IgAポリクローナル抗体が反応するタンパク質であるということもできる。
<抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸>
1実施形態において、本発明は、上述した抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸を提供する。
本実施形態の核酸は、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントの製造に好適に用いることができる。
[第一実施形態]
本実施形態の核酸は、後述する抗体クローンF11に関連するものであり、具体的には、以下の(g1)〜(j2)のいずれかの核酸である。
以下の(g1)〜(j1)の核酸は、後述する抗体クローンF11の重鎖可変ドメインに関連する。
(g1)配列番号17に示される塩基配列からなる核酸、
(h1)配列番号17に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i1)配列番号17に示される塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j1)配列番号17に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸。
以下の(g2)〜(j2)の核酸は、後述する抗体クローンF11の軽鎖可変ドメインに関連する。
(g2)配列番号18に示される塩基配列からなる核酸、
(h2)配列番号18に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i2)配列番号18に示される塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j2)配列番号18に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸。
核酸としてはDNA、RNA、cDNA等が挙げられる。核酸は、非天然型の塩基配列を有していてもよく、遺伝子組換えされたものであってもよい。本明細書において、欠失、置換又は付加されてもよい塩基の数としては、1〜30個が好ましく、1〜15個がより好ましく、1〜10個が特に好ましく、1〜5個が最も好ましい。
また、本明細書において「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL SECOND EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。例えば、5×SSC(20×SSCの組成:3M塩化ナトリウム、0.3Mクエン酸溶液、pH7.0)、0.1重量%N−ラウロイルサルコシン、0.02重量%のSDS、2重量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬、及び50%ホルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファー中で、55〜70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1重量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1重量%SDS含有0.1×SSC溶液である。
[第二実施形態]
本実施形態の核酸は、後述する抗体クローンH5に関連するものであり、具体的には、以下の(g3)〜(j4)のいずれかの核酸である。
以下の(g3)〜(j3)の核酸は、後述する抗体クローンH5の重鎖可変ドメインに関連する。
(g3)配列番号19に示される塩基配列からなる核酸、
(h3)配列番号19に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i3)配列番号19に示される塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j3)配列番号19に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸。
以下の(g4)〜(j4)の核酸は、後述する抗体クローンH5の軽鎖可変ドメインに関連する。
(g4)配列番号20に示される塩基配列からなる核酸、
(h4)配列番号20に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、
(i4)配列番号20に示される塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
(j4)配列番号20に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸。
<組換えベクター>
1実施形態において、本発明は、上述した核酸を発現ベクターに挿入してなる組換えベクターを提供する。本実施形態のベクターは、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントの製造に好適に用いることができる。
本実施形態に用いられる発現ベクターとしては、宿主細胞に抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを発現させる細胞系ベクター;適当な細胞から抽出されたタンパク質合成能を有する成分からなるタンパク質翻訳系において抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを発現させる無細胞系ベクターが挙げられる。
細胞系ベクターとしては、宿主細胞に適した公知の発現ベクターが用いられる。例えば、大腸菌においてはpBR322誘導体に代表されるColE系プラスミド、p15Aオリジンを持つpACYC系プラスミド、pSC系プラスミド、Bac系等のF因子由来ミニFプラスミドが挙げられる。その他、trcやtac等のトリプトファンプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター等を有する発現ベクターも挙げられる。
核酸が組込まれた組換えベクターの宿主への導入は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、カルシウム処理された菌体を用いるコンピテント細胞法や、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、プラスミドベクター以外にもファージベクターを用いて、菌体内に感染させ導入する方法を用いてもよい。
宿主細胞としては、哺乳動物細胞、昆虫細胞等が挙げられる。哺乳動物細胞としては、293F細胞、CHO細胞、CHO YA7細胞等が挙げられ、特にCHO YA7細胞(受託番号NITE BP−01535)が好ましい。昆虫細胞としては、Sf9細胞株、Sf21細胞株等が挙げられる。
CHO YA7細胞株は、発明者らが樹立した細胞株であり、p180タンパク質及びSF3b4タンパク質を細胞内で構成的に発現している。
p180タンパク質及びSF3b4タンパク質を細胞中で発現させることにより、当該細胞内の小胞体膜上において、ポリソーム形成を促進することができる。ここで、ポリソームとは、細胞内の小胞体膜上に存在する複数のリボソームに対して、1分子のmRNAが結合したものである。ポリソーム形成の促進の結果として、タンパク質の合成能を亢進し、目的タンパク質の生産効率を向上させることができる。
細胞内のDNAから転写されたmRNA前駆体は、スプライシングによりイントロン部分が除去され、成熟型mRNAに変換される。この過程は、スプライソソームという核内低分子RNA(snRNA)−タンパク質からなる巨大複合体が担う。スプライソソームには、5種類の低分子リポ核タンパク質複合体(snRNP)が存在し、SF3b4タンパク質はこのうちのU2−snRNPの構成成分であり、RNA結合ドメインを有している。
発明者らは、SF3b4タンパク質が細胞質内の小胞体を含む膜画分で優位に増加し、それとともにmRNAと結合したSF3b4タンパク質が、p180タンパク質のcoiled−coilドメインと相互作用することにより、mRNAの小胞体への局在化を促進させ、その結果として細胞によるタンパク質の合成能又は分泌能が亢進されることを明らかにした。
したがって、p180タンパク質及びSF3b4タンパク質の発現が亢進された細胞において、目的タンパク質をコードする核酸を発現させると、当該核酸から転写されたmRNAがSF3b4タンパク質又はp180タンパク質と相互作用した結果、あるいは上記mRNAがSF3b4タンパク質と相互作用し、次いでp180タンパク質のcoiled−coilドメインとSF3b4タンパク質とが相互作用した結果、mRNAの小胞体への局在化を促進させ、この細胞内において目的タンパク質の合成能又は分泌能が亢進される。
発明者らは、更に、成熟mRNAの5’非翻訳領域に、配列モチーフGAN−(X)−ACN(nは3〜6の整数であり、N及びNは、それぞれ独立して、A、T、G、Cのいずれかである。)からなる塩基配列を1〜数個含むcis−エレメントが存在すると、当該cis−エレメントを認識するRRMタンパク質が当該cis−エレメントに結合し、分泌タンパク質の合成の場である小胞体の膜上へのmRNAの輸送/局在化を増強し、翻訳効率を上昇させる機能があることを見出している。
したがって、本実施形態の発現ベクターにおいて、プロモーターの下流、かつ上記の核酸の開始コドンの上流に、上記のcis−エレメントを導入すると、発現効率を高めることができる。
本実施形態に用いられる無細胞系ベクターとしては、細胞系ベクターにおいて挙げられたT7プロモーターを有する発現ベクターやT3プロモーターを有する発現ベクター;SP6プロモーター又はT7プロモーターを有するpEU系プラスミド等の小麦無細胞タンパク質合成用ベクター等が挙げられる。
無細胞系ベクターを用いたタンパク質合成においては、先ず、転写系を用いて、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントのDNAを転写して、mRNAを合成する。係る転写系としては、RNAポリメラーゼにより転写させる従来公知のものが挙げられる。RNAポリメラーゼとしては、例えばT7RNAポリメラーゼが挙げられる。
次いで、翻訳系である無細胞タンパク質合成系を用いて、mRNAを翻訳し、タンパク質を合成する。この系にはリボゾーム、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、解離因子、アミノアシルtRNA合成酵素等、翻訳に必要な要素が含まれている。このようなタンパク質翻訳系として、大腸菌抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液等が挙げられる。
更に、上記翻訳に必要な要素が独立に精製された因子のみからなる再構成型無細胞タンパク質合成系が挙げられる。
細胞系ベクター又は無細胞系ベクターを用いて合成されたタンパク質から抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを精製して用いることができる。精製方法としては、塩析法や各種クロマトグラフィーを用いた方法が挙げられる。発現ベクターが目的タンパク質のN末端又はC末端にヒスチジンタグ等のタグ配列を発現するように設計されている場合には、ニッケルやコバルト等、このタグに親和性を有する物質を用いたアフィニティーカラムによる精製方法が挙げられる。その他、イオン交換クロマトグラフィーやゲルろ過クロマトグラフィー等、適宜組み合わせて精製することにより、精製抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントの純度を高めることができる。
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1:経鼻不活化全粒子インフルエンザワクチンによりヒトに誘導される抗体可変領域遺伝子の単離及びそれを利用したモノクローナルIgG1抗体の作製]
(ワクチン接種と末梢血リンパ球の回収)
高病原性トリインフルエンザウイルスA/H5N1の不活化全粒子ワクチンを健康成人へ3週間隔で2回経鼻接種(片鼻250μL、計500μL)した。ワクチンとしては、45μgのヘマグルチニン(HA)を含有する不活化全粒子ワクチンを使用した。2回目のワクチン接種から7日後に末梢血を回収し、血球分離溶液Lymphoprep(商標)(AXIS−SHIELD社)を用いて末梢血リンパ球を回収した。
(抗体産生形質細胞の単離及びcDNA調製)
経鼻ワクチン接種により末梢血中に誘導された抗体産生形質細胞の単離は、FACS Aria (BD Bioscience社)を用いて実施した。細胞表面マーカーCD2、CD3、CD4、CD10、CD20、IgD、CD19low、CD27highかつCD38highの細胞集団を抗体産生形質細胞とし、単一細胞として分離・回収した。単一抗体産生形質細胞は、各ウェルに45ngのキャリアRNAを含む滅菌水9μLを分注した96穴プレートに回収した。cDNA調製は、T. Tillerら(J Immunol Methods, 329, 112-24, 2008)の報告に則り実施した。具体的には、細胞を回収した各ウェルにSuperscript III RT(ライフテクノロジーズ社)、Randam Hexamer(ライフテクノロジーズ社)、RNaseOUT(ライフテクノロジーズ社)、dNTP mix(キアゲン社)を含む6μLの混合液を添加し、50℃50分、85℃5分の反応を行うことでcDNAを調製した。
(抗体アイソタイプの決定)
調製したcDNAを2μL用いて、各ウェルに単離された抗体重鎖のアイソタイプをReal−time PCRにより決定した。IgG、IgAおよびIgMの各定常領域に対してTaqManプローブとプライマーを準備した。IgG、IgAおよびIgMに対するTaqManプローブは、それぞれFAM、HEXおよびCy5による標識とした。QuantiTect Multiplex PCR NoROX Master Mix(キアゲン社)を使用し、LightCycler480(ロシュ社)を用いて解析を行った。
(抗体可変領域遺伝子の増幅及びシークエンス)
抗体可変領域遺伝子の増幅は、T. Tillerら(J Immunol Methods, 329, 112-24, 2008)の報告に則り実施した。具体的には、調製したcDNA1μLに対して11.5μLのHotStarTaq DNA polymerase(キアゲン社)、dNTP mix及び各抗体可変領域遺伝子を増幅するプライマーセットの混合液を添加し、1回目のPCR反応を行った。更にこのPCR産物1μLに含まれる各遺伝子に対して更に内側に設計したプライマーセットを用いて2回目のPCR反応を行った。いずれのPCR反応においても、95℃15分、(94℃30秒、58℃20秒、72℃60秒)×43サイクル、72℃2分の条件で増幅を行った。また、PCR産物の塩基配列解析(シークエンス)を常法により行った。
(抗体可変領域遺伝子の発現ベクターへのクローニング)
抗体可変領域遺伝子のPCRはPrimeSTAR(登録商標)MAX DNA Polymerase(TaKaRa社)を使用して、説明書にしたがって実施した。鋳型として上述の1回目のPCR産物を使用し、プライマーとしては、上述の2回目のPCR産物のシークエンスの結果に基づいて、増幅する遺伝子座に適切なペアを選択した。PCR条件は98℃10秒、55℃5秒、72℃10秒で25サイクルとした。PCR産物の精製はMonoFas(登録商標)DNA精製キットI(ジーエルサイエンス社)を使用して、説明書にしたがって実施し、30μLのBuffer Cに溶出した。
精製されたPCR産物は全量30μLでAgeI−HF(全ての鎖)及びSalI−HF(重鎖)、BsiWI(κ鎖)又はXhoI(λ鎖)(以上、NEB社)を用いて、適切な条件で制限酵素処理した。各鎖に応じた発現ベクターγ1 HC(重鎖)、κ LC(κ鎖)、λ LC(λ鎖)も同様の酵素の組み合わせで制限酵素処理した。制限酵素産物の精製はMonoFas(登録商標)DNA精製キットI(ジーエルサイエンス社)を使用して、説明書にしたがって実施し、20μLのBuffer Cに溶出した。
制限酵素処理したDNAのライゲーションはDNA Ligation Kit <Mighty Mix>(TaKaRa社)を使用して、説明書にしたがって全量10μLで実施した。ライゲーション産物は、Competent Quick DH5α(TOYOBO社)へ42℃の加温により10μL形質転換した。プラスミド抽出は、PureYield(商標)Plasmid Miniprep System(プロメガ社)を使用して、説明書にしたがって実施した。
続いて、1遺伝子につき4クローンをシークエンスした。抽出したプラスミドのシークエンス反応はBigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ライフテクノロジーズ社)を使用して、説明書にしたがって実施した。反応産物はBigDye XTerminator(商標)Kit(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって精製し、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(ライフテクノロジーズ社)でシークエンスした。読まれた配列と2回目のPCR産物の配列のアラインメント解析を実施し、最も共通配列を保持するサンプルを選択した。
(遺伝子組換えモノクローナルIgG1抗体の発現)
遺伝子組換え抗体の作製にはExpi293(商標)Expression System(ライフテクノロジーズ社)を説明書にしたがって用いた。30mLの系を以下に例示する。
継代し維持しているExpi293F細胞の密度が3.0×10個/mL以上であり、生存率95%以上であり、細胞が凝集していないことを確認した。37℃に保温されたExpi293 Expression mediumを用いて、細胞数を2.9×10個/mLに調製した。使い捨てのベントフィルターキャップ付三角フラスコに、調製した細胞懸濁液を25.5mL移し、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。1.5mLのOpti−MEM I培地にプラスミドDNA30μg(IgG重鎖及び軽鎖各15μg)を添加した。別に用意した1.5mLのOpti−MEM I培地に80μLのExpiFectamine 293 Reagentを添加した。5分間、室温で静置した後、DNA溶液をExpiFectamine溶液へ全量加え、室温で20〜30分静置した。細胞へトランスフェクションミックスを添加した後、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクションの16〜18時間後、150μLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer1及び1.5mLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer2を加えた。細胞は37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクション後6日で上清を回収した。
(遺伝子組換えモノクローナルIgG1抗体の精製)
細胞のデブリを1000×g、10分間の遠心分離により取り除いた後、Millex−HV Filter Unit (ミリポア社)で上清の濾過を行った。遺伝子組換え抗体の精製はCaptureSelect(商標)human Fc affinity matrix(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって実施した。具体的には、カラムは10カラム容量のリン酸緩衝液(PBS)で平衡化し、サンプルをロードし、10カラム容量のPBSで洗浄し、5カラム容量の0.1M Glycine−HCl(pH3.0)により抗体を溶出し、1M Tris−HCl(pH9.0)で溶出液を中和した。カラムは10カラム容量のPBSで再平衡化した。抗体の濃度はNanoDrop(Thermo Scientific社)で測定した。抗体の濃縮はAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filter Devices(ミリポア社)を用いて、説明書にしたがって実施した。Zeba Desalt Spin Columns(Thermo Scientific社)で、説明書にしたがってPB(pH7.4)にバッファー交換した。バッファー交換後の濃度はNanoDropで測定した。
(遺伝子組換えモノクローナルIgG1抗体の確認)
精製した抗体の確認はNuPAGE(登録商標)Bis−Tris Gel(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがってSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を実施した。図1はSDS−PAGEの結果を示す写真である。抗体クローンG2、H10、D11、F9、F11、H5及びC1が、IgG1型化されたことが確認された。クローンによって発現量にばらつきが見られた。40mL培養系において、クローンB12は約40mg、クローンD11は約4mg、クローンF9は約1.5mg、クローンF11は約2.1mg、クローンH5は約1mgの抗体を作製することができた。
[実験例2:性状解析されたモノクローナルIgG抗体と同一の可変領域を保持するモノクローナルIgA抗体の作製]
IgA型遺伝子組換え抗体を以下の方法により作製した。実験例1で作製したIgG1抗体に限らず、配列が既知の抗体は全て以下の方法でIgA型化することができる。
(α1 HC発現ベクターの作製)
IgA1抗体定常領域遺伝子を含む発現ベクターα1 HCを作製した。IgA1抗体定常領域遺伝子のPCRは、PrimeSTAR(登録商標)MAX DNA Polymerase(TaKaRa社)を使用して、説明書にしたがって実施した。
具体的には、鋳型としてpFUSE−CHIg−hA1(InvivoGen社)を用い、IgA1抗体定常領域遺伝子を増幅した。PCR条件は、98℃10秒、55℃5秒、72℃30秒で30サイクルとした。PCR産物の精製はMonoFas(登録商標)DNA精製キットI(ジーエルサイエンス社)を使用して、説明書にしたがって実施し、30μLのBuffer Cに溶出した。精製したPCR産物及びγ1 HCプラスミドを、全量30μLでXhoI及びHindIII−HF(以上、NEB社)を用いて37℃で制限酵素処理した。制限酵素処理産物の精製はMonoFas(登録商標)DNA精製キットI(ジーエルサイエンス社)を使用して、説明書にしたがって実施し、20μLのBuffer Cに溶出した。制限酵素処理したDNAのライゲーションはDNA Ligation Kit <Mighty Mix>(TaKaRa社)を使用して、説明書にしたがって全量10μLで実施した。ライゲーション産物は、Competent Quick DH5αへ42℃の加温により10μL形質転換した。
プラスミド抽出は、PureYield(商標)Plasmid Miniprep System(プロメガ社)を使用して、説明書にしたがって実施した。抽出したプラスミドのシークエンス反応はBigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ライフテクノロジーズ社)を使用して、説明書にしたがって実施した。反応産物はBigDye XTerminator(商標)Kit(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって精製され、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(ライフテクノロジーズ社)でシークエンスした。
(抗体可変領域遺伝子のα1 HC発現ベクターへのPCRクローニング)
抗体可変領域遺伝子のPCRはPrimeSTAR(登録商標)MAX DNA Polymerase(TaKaRa社)を使用して、説明書にしたがって実施した。γ1 HC発現ベクターへクローニングした抗体遺伝子を鋳型として、リバースプライマーをα1 HC発現ベクター用のものに変更し、PCR条件は98℃10秒、55℃5秒、72℃5秒で25サイクルとした。
PCR産物の精製はMonoFas(登録商標)DNA精製キットI(ジーエルサイエンス社)を使用して、説明書にしたがって実施し、30μLのBuffer Cに溶出した。精製されたPCR産物及びα1 HC発現ベクターは全量30μLでAgeI−HF及びNheI−HF(以上、NEB社)を用いて、適切な条件で制限酵素処理した。制限酵素産物の精製はMonoFas(登録商標)DNA精製キットI(ジーエルサイエンス社)を使用して、説明書にしたがって実施し、20μLのBuffer Cに溶出した。制限酵素処理したDNAのライゲーションはDNA Ligation Kit <Mighty Mix>(TaKaRa社)を使用して、説明書にしたがって全量10μLで実施した。ライゲーション産物は、Competent Quick DH5α(TOYOBO社)へ42℃の加温により10μL形質転換した。
プラスミド抽出は、PureYield(商標)Plasmid Miniprep System(プロメガ社)を使用して、説明書にしたがって実施した。抽出したプラスミドのシークエンス反応はBigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ライフテクノロジーズ社)を使用して、説明書にしたがって実施した。反応産物はBigDye XTerminator(商標)Kit(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって精製し、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(ライフテクノロジーズ社)でシークエンスした。シークエンスの結果、γ1 HC発現ベクターへクローニングした抗体遺伝子と同一であることが確かめられた。
(遺伝子組換えモノクローナルIgA1抗体の発現)
遺伝子組換え抗体の作製にはExpi293(商標)Expression System(ライフテクノロジーズ社)を説明書にしたがって用いた。30mLの系を以下に例示する。
継代し維持しているExpi293F細胞の密度が3.0×10個/mL以上であり、生存率95%以上であり、細胞が凝集していないことを確認した。37℃に保温されたExpi293 Expression mediumを用いて、細胞数を2.9×10個/mLに調製した。使い捨てのベントフィルターキャップ付三角フラスコに、調製した細胞懸濁液を25.5mL移し、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。1.5mLのOpti−MEM I培地にプラスミドDNA30μg(IgA1重鎖及び軽鎖各15μg)を添加した。別に用意した1.5mLのOpti−MEM I培地に80μLのExpiFectamine 293 Reagentを添加した。5分間、室温で静置した後、DNA溶液をExpiFectamine溶液へ全量加え、室温で20〜30分静置した。細胞へトランスフェクションミックスを添加した後、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクションの16〜18時間後、150μLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer1及び1.5mLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer2を加えた。細胞は37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクション後6日で上清を回収した。
(遺伝子組換えモノクローナルIgA1抗体の精製)
細胞のデブリを1000×g、10分間の遠心分離により取り除いた後、Millex−HV Filter Unit (ミリポア社)で上清の濾過を行った。遺伝子組換え抗体の精製はCaptureSelect(商標)human IgA affinity matrix(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって実施した。具体的には、カラムは10カラム容量のリン酸緩衝液(PBS)で平衡化し、サンプルをロードし、10カラム容量のPBSで洗浄し、5カラム容量の0.1M Glycine−HCl(pH3.0)により抗体を溶出し、1M Tris−HCl(pH9.0)で溶出液を中和した。カラムは10カラム容量のPBSで再平衡化した。抗体の濃度はNanoDrop(Thermo Scientific社)で測定した。抗体の濃縮はAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filter Devices(ミリポア社)を用いて、説明書にしたがって実施した。Zeba Desalt Spin Columns(Thermo Scientific社)で、説明書にしたがってPB(pH7.4)にバッファー交換した。バッファー交換後の濃度はNanoDropで測定した。
(遺伝子組換えモノクローナルIgA1抗体の確認)
精製した抗体の確認はNuPAGE(登録商標)Bis−Tris Gel(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがってSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を実施した。図2はSDS−PAGEの結果を示す写真である。抗体クローンB12、D11、F9、F11及びH5が、IgA1型化されたことが確認された。
[実験例3:モノクローナルIgA抗体の二量体作製]
実験例2において作製したIgA1抗体発現コンストラクトを用いて、二量体IgA1型抗体を作製した。
(抗体J鎖のクローニング)
抗体J鎖は人工遺伝子合成サービス(オペロン バイオテクノロジー)を利用して、J鎖(GenBank accession no.NM_144646)のコード領域(CDS)の5’側にXhoI切断サイト及びKozak配列を付加し、3’側にNotI切断サイトを付加した人工遺伝子(配列番号23)を合成した。J鎖遺伝子をXhoI及びNotI−HF(以上、NEB社)を用いて、適切な条件で制限酵素処理した。同一の制限酵素で処理したpCXSNベクター(CMVプロモーターとSV40 polyAから構成される哺乳類細胞発現用ベクター)にクロ−ニングし、抗体J鎖の発現プラスミドであるpCXSN−hJCを得た。
(二量体IgA1型抗体の発現)
二量体IgA1型抗体の作製にはExpi293(商標)Expression System(ライフテクノロジーズ社)を説明書にしたがって用いた。30mLの系を以下に例示する。
継代し維持しているExpi293F細胞の密度が3.0×10個/mL以上であり、生存率95%以上であり、細胞が凝集していないことを確認した。37℃に保温されたExpi293 Expression mediumを用いて、細胞数を2.9×10個/mLに調製した。使い捨てのベントフィルターキャップ付三角フラスコに、調製した細胞懸濁液を25.5mL移し、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。1.5mLのOpti−MEM I培地にプラスミドDNA(J鎖発現群:IgA1重鎖及び軽鎖各12μg、J鎖6μg;J鎖非発現群:IgA1重鎖及び軽鎖各15μg)を添加した。
別に用意した1.5mLのOpti−MEM I培地に80μLのExpiFectamine 293 Reagentを添加した。5分間、室温で静置した後、DNA溶液をExpiFectamine溶液へ全量加え、室温で20〜30分静置した。細胞へトランスフェクションミックスを添加した後、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクションの16〜18時間後、150μLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer1及び1.5mLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer2を加えた。細胞は37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクション後6日で上清を回収した。
(発現させたIgA1抗体の精製)
細胞のデブリを1000×g、10分間の遠心分離により取り除いた後、Millex−HV Filter Unit (ミリポア社)で上清の濾過を行った。遺伝子組換え抗体の精製はCaptureSelect(商標)human IgA affinity matrix(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって実施した。具体的には、カラムは10カラム容量のリン酸緩衝液(PBS)で平衡化し、サンプルをロードし、10カラム容量のPBSで洗浄し、5カラム容量の0.1M Glycine−HCl(pH3.0)により抗体を溶出し、1M Tris−HCl(pH9.0)で溶出液を中和した。カラムは10カラム容量のPBSで再平衡化した。抗体の濃度はNanoDrop(Thermo Scientific社)で測定した。抗体の濃縮はAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filter Devices(ミリポア社)を用いて、説明書にしたがって実施した。Zeba Desalt Spin Columns(Thermo Scientific社)で、説明書にしたがってPB(pH7.4)にバッファー交換した。バッファー交換後の濃度はNanoDropで測定した。
(発現させたIgA1抗体の確認)
精製した抗体の確認は、未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(BN−PAGE、3−13%、Invitrogen社)により行った。図3はBN−PAGEの結果を示す写真である。J鎖非発現群(−J)では、単量体IgA型遺伝子組換え抗体のバンドが確認されたのに対し、J鎖発現群(+J)では、単量体のバンドに加えて、二量体IgA型遺伝子組換え抗体のバンドが確認された。
[実験例4:モノクローナルIgA抗体の多量体作製]
実験例2において作製したIgA1抗体発現コンストラクトを用いて、多量体IgA1型抗体を作製した。
(分泌成分(Secretory component、SC)のクローニング)
GeneArt(登録商標)Strings(商標)DNA Fragments(ライフテクノロジーズ社)を利用して、polymeric immunoglobulin receptor(GenBank accession no. NM_002644)の185〜2005残基の5’側にXhoI切断サイト及びKozak配列を付加し、3’側にHindIII切断サイト、thrombin切断サイト、ヒスチジンタグ及びNotI切断サイトを付加した人工DNAフラグメントを、中央付近で重複するように5’側フラグメントと3’側フラグメントの2本合成した。合成した2本のDNAフラグメントを鋳型に用いてPrimeSTAR(登録商標)MAX DNA Polymerase(TaKaRa社)を使用したoverlap PCRを行い、分泌成分(SC)をコードする遺伝子断片を増幅した(配列番号24)、XhoI及びNotIで制限酵素処理し、pCXSNベクターにクローニングし、分泌成分の発現プラスミドであるpCXSN−hSC−HisTagを得た。また、pCXSN−hSC−HisTagを鋳型としてインバースPCRを行い、3’側に付与したHindIII切断サイト、thrombin切断サイト、ヒスチジンタグを除去した分泌成分のみを発現するpCXSN−hSCを作製した。分泌成分としてどちらのプラスミドを用いても多量体抗体を作製することができた。
(多量体IgA1型抗体の発現)
多量体IgA1型抗体の作製にはExpi293(商標)Expression System(ライフテクノロジーズ社)を説明書にしたがって用いた。30mLの系を以下に例示する。
継代し維持しているExpi293F細胞の密度が3.0×10個/mL以上であり、生存率95%以上であり、細胞が凝集していないことを確認した。37℃に保温されたExpi293 Expression mediumを用いて、細胞数を2.9×10個/mLに調製した。使い捨てのベントフィルターキャップ付三角フラスコに、調製した細胞懸濁液を25.5mL移し、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。1.5mLのOpti−MEM I培地にプラスミドDNA(IgA1重鎖及び軽鎖各12μg、J鎖及び分泌成分各6μg)を添加した。
別に用意した1.5mLのOpti−MEM I培地に80μLのExpiFectamine 293 Reagentを添加した。5分間、室温で静置した後、DNA溶液をExpiFectamine溶液へ全量加え、室温で20〜30分静置した。細胞へトランスフェクションミックスを添加した後、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクションの16〜18時間後、150μLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer1及び1.5mLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer2を加えた。細胞は37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクション後6日で上清を回収した。
(発現させたIgA1抗体の精製)
細胞のデブリを1000×g、10分間の遠心分離により取り除いた後、Millex−HV Filter Unit (ミリポア社)で上清の濾過を行った。遺伝子組換え抗体の精製はCaptureSelect(商標)human IgA affinity matrix(ライフテクノロジーズ社)を用いて、説明書にしたがって実施した。具体的には、カラムは10カラム容量のリン酸緩衝液(PBS)で平衡化し、サンプルをロードし、10カラム容量のPBSで洗浄し、5カラム容量の0.1M Glycine−HCl(pH3.0)により抗体を溶出し、1M Tris−HCl(pH9.0)で溶出液を中和した。カラムは10カラム容量のPBSで再平衡化した。抗体の濃度はNanoDrop(Thermo Scientific社)で測定した。抗体の濃縮はAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filter Devices(ミリポア社)を用いて、説明書にしたがって実施した。Zeba Desalt Spin Columns(Thermo Scientific社)で、説明書にしたがってPB(pH7.4)にバッファー交換した。バッファー交換後の濃度はNanoDropで測定した。
(多量体IgA1型抗体のサイズ分画)
濃縮した多量体IgA1型抗体を、AKTA explorer10(GEヘルスケア社)を用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画した。カラムには、Superose6 10/300 GL (GEヘルスケア社)を用いた。DPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)を以下のプロトコールで流した。流速0.5mL/分、カラム平衡化1.5カラム容量、溶出0.5mL(計1.5カラム容量)。
溶出したサンプルをフラクションごとに回収し、IgAを含むフラクションをAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filter Devices(ミリポア社)を用いて濃縮した。Zeba Desalt Spin Columns(Thermo Scientific社)で、説明書にしたがってPB(pH7.4)にバッファー交換した。バッファー交換後の濃度はNanoDropで測定した。
続いて、各フラクションに含まれる抗体を、非還元条件下のBlue native PAGE(BN−PAGE)により確認した。図4は、ゲル濾過クロマトグラフィーのチャート及びフラクション19〜32に含まれる抗体のBN−PAGEの結果を示す写真である。発現させたIgA1型抗体には、四量体、二量体、単量体が含まれることが示された。この結果は、四量体IgA型遺伝子組換え抗体を作製した初めての結果である。
[実験例5:インフルエンザウイルス中和活性の検討]
実験例1において、インフルエンザウイルスに対するヒトIgG1抗体を作製し、実験例2において、当該IgG1抗体と同一の可変領域を有するIgA1抗体を作製した。また、実験例3及び4において多量体IgA1型抗体を作製した。これらの抗体を用いて、インフルエンザウイルス中和活性を検討した。
調製した各抗体の中和活性は、マイクロ中和試験による最小中和濃度測定により定量した。サンプルの2倍段階希釈系列を準備し、100 TCID50(50%組織培養感染量の100倍量)のウイルス液と混合後、30分間37℃にてインキュベーションした。その後、この混合液をMDCK細胞(イヌ腎臓由来株化細胞)に添加して4日間培養を行い、顕微鏡下でインフルエンザウイルスによる細胞変性効果が確認できないサンプル最大希釈倍率でサンプルの濃度を割った値を最少中和濃度とした。最少中和濃度が低いほどウイルス中和活性が高いことを示す。
(単量体遺伝子組換え抗体のインフルエンザウイルス中和活性)
抗体クローンG2、H10、D11、F9、F11、H5、B12及びC1の単量体IgG1型抗体及び単量体IgA1型抗体を用いて、インフルエンザウイルス中和活性を測定した。ウイルスにはA/H5N1株(clade 2.1)及びA/H1N1株を使用した。
表1に結果を示す。最少中和濃度が低いほどウイルス中和活性が高いことを示す。クローンF11及びH5の抗体は、H5N1株及びH1N1株の双方に対して良好な中和活性を示すことが明らかとなった。
(二量体IgA1型遺伝子組換え抗体のインフルエンザウイルス中和活性)
抗体クローンD11、F9、F11、H5及びB12の単量体IgA1型抗体及び二量体IgA1型抗体を用いて、上記と同様にしてインフルエンザウイルス中和活性を測定した。ウイルスにはA/H5N1株(clade 2.1)及びA/H1N1株を使用した。
表2に結果を示す。最少中和濃度が低いほどウイルス中和活性が高いことを示す。抗体の可変領域の構造は同じであるにもかかわらず、単量体抗体よりも二量体抗体の方が、ウイルス中和活性が高い傾向が示された。
(四量体IgA1型遺伝子組換え抗体のインフルエンザウイルス中和活性)
抗体クローンF9、F11及びH5の単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体を用いて、上記と同様にしてインフルエンザウイルス中和活性を測定した。ウイルスにはA/H5N1株(clade 2.1)を使用した。表3に結果を示す。最少中和濃度が低いほどウイルス中和活性が高いことを示す。
抗体の可変領域の構造は同じであるにもかかわらず、単量体抗体よりも二量体抗体の方がウイルス中和活性が高く、二量体抗体よりも四量体抗体の方がウイルス中和活性が高い傾向が示された。
(多量体化によるインフルエンザウイルス中和活性の増加)
抗体クローンF11及びH5について、単量体IgG1型抗体、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体の中和能の活性比較のため、図5A及び図5Bに単量体IgG1型抗体のウイルス中和活性を1とした場合における、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体の中和活性比を示した。ウイルスにはA/H5N1株(clade 2.1)を使用した。
図5Aは、単量体IgG1型抗体のウイルス中和活性を1とした場合における、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体の単位タンパク質量当たりの中和活性比を示すグラフである。
図5Bは、単量体IgG1型抗体のウイルス中和活性を1とした場合における、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体の単位分子数当たりの中和活性比を示すグラフである。
クローンF11及びH5共に、IgG1型からIgA1型に変換することによりウイルス中和活性の増加が認められ、更に、二量体化、四量体化することにより更なる中和活性の増加が認められた。また、抗体1モルあたりのウイルス中和活性は、四量体化することにより、単量体の100倍以上の上昇が認められた。
[実験例6:抗体の塩基配列及びアミノ酸配列の解析]
抗体クローンF11及びH5について、重鎖及び軽鎖の塩基配列及びアミノ酸配列をIGBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)にて解析した。また、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)をAndrew C.R. Martin博士らの方法(http://www.bioinf.org.uk/abs/)により決定した。配列表の配列番号と、各塩基配列及びアミノ酸配列との対応を表4に示す。クローンF11の軽鎖はκ鎖であった。また、クローンH5の軽鎖はλ鎖であった。
[実験例7:抗原結合活性の検討]
(遺伝子組換えインフルエンザウイルスHAタンパク質発現ベクターの作製)
インフルエンザウイルスのHAのエクトドメインをコードする配列のC末端側に三量体形成配列および精製用タグのコード配列(バクテリオファージT4フィブリチン三量体形成フォールドン配列、トロンビン切断部位(RSRSLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL、配列番号25)、タンパク質精製用の6×His tag配列(Stevens J. et al., Structure of the uncleaved human H1 hemagglutinin from the extinct 1918 influenza virus., Science 303, 1866-1870, 2004 を参照))を融合したアミノ酸配列をコードするDNA断片を合成し、哺乳類細胞発現用のベクターpCXSNにクローニングした。
(遺伝子組換えインフルエンザウイルスHAタンパク質の発現)
遺伝子組換えインフルエンザウイルスHAタンパク質の作製にはExpi293(商標)Expression System(ライフテクノロジーズ社)を説明書にしたがって用いた。30mL系を以下に例示する。
継代し維持しているExpi293F細胞の密度が3.0×10個/mL以上であり、生存率95%以上であり、細胞が凝集していないことを確認した。37℃に保温されたExpi293 Expression mediumを用いて、細胞数を2.9×10個/mLに調製した。使い捨てのベントフィルターキャップ付三角フラスコに、調製した細胞懸濁液を25.5mL移し、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。1.5mLのOpti−MEM I培地にプラスミドDNA30μgを添加した。別に用意した1.5mLのOpti−MEM I培地に80μLのExpiFectamine 293 Reagentを添加した。5分間、室温で静置した後、DNA溶液をExpiFectamine溶液へ全量加え、室温で20〜30分静置した。細胞へトランスフェクションミックスを添加した後、37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクションの16〜18時間後、150μLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer1及び1.5mLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer2を加えた。細胞は37℃、8%COに調整した細胞培養用インキュベーターに戻し、125rpmで振盪培養した。トランスフェクション後4−6日で上清を回収した。
(遺伝子組換えインフルエンザウイルスHAタンパク質の精製)
まず、回収した上清中の細胞のデブリを1000×g、10分間の遠心分離により取り除いた。続いて、Millex−HV Filter Unit(ミリポア社)を使用して上清をろ過した。続いて、AKTA explorer10(GEヘルスケア社)を用いたアフィニティー精製により遺伝子組換えインフルエンザウイルスHAタンパク質を精製した。カラムにはHisTrap excel(GEヘルスケア社)を用いた。より具体的には、平衡化溶液として20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH7.4を使用した。また、洗浄液として20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、10mMイミダゾール、pH7.4を使用した。また、溶出液として、20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、500mMイミダゾール、pH7.4を使用した。精製条件は、流速1mL/分、カラム平衡化10CV、カラム洗浄40CV、溶出1mL/フラクション(計50CV)、カラム再平衡化5CVとした。タンパク質を濃縮する場合には、Amicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filter Devicesを用いて、説明書にしたがって濃縮した。精製されたタンパク質の濃度はNanoDrop(Thermo SCIENTIFIC社)を用いた吸光測定により測定した。
抗体クローンB12及びF11について、単量体IgA1型抗体、二量体IgA1型抗体及び四量体IgA1型抗体を用いて、インフルエンザウイルスHAタンパク質に対する抗原結合活性を検討した。
96ウェルハーフプレートに50μLの遺伝子組換えHAタンパク質(A/H5N1株由来、1μg/mL)を添加し、4℃で一晩放置した後、ブロッキングを行った。
続いて、各抗体サンプルの2倍段階希釈系列を4℃で一晩反応させた。PBSTでの洗浄後、Goat anti−Human IgA Antibody Alkaline Phosphatase Conjugated(BETHYL LABORATORIES社)を2500倍希釈したものを、室温で1時間反応させた。続いて、Phosphatase Substrate(SIGMA社)を用いて発色反応を行い、690nmを基準波長として405nmの波長における吸光度を測定した。測定された吸光度に基づいて、各抗体のHAタンパク質に対する最少結合濃度を求めた。
結果を表5及び表6に示す。抗体クローンF11では、ワクチンと同クレードのウイルス(A/H5N1(clade 2.1)由来HAに対しては、二量体及び四量体で、単量体よりも結合活性の上昇が見られた。また、ワクチンと別クレードのウイルス(A/H5N1(clade 1)由来のHAに対しては、四量体で最も強い抗原結合活性が見られた。また、単量体の抗体で抗原結合活性を有するクローンは、多量体化することにより、抗原結合活性が向上することが示された。
[実験例8:CHO YA7細胞とcis−エレメント使用による多量体抗体の発現増強効果]
上述した抗体J鎖タンパク質の発現プラスミドであるpCXSN−hJCのプロモーターの下流かつJ鎖タンパク質の開始コドンの上流に、配列番号21に示すcis−エレメント#1を導入し、pCXSN−cis#1−hJCを得た。遺伝子配列解析によりcis−エレメントの向きが正しい挿入方向であることを確認した。
また、上述した分泌成分の発現プラスミドであるpCXSN−hSCのプロモーターの下流かつ分泌成分タンパク質の開始コドンの上流に、配列番号22に示すcis−エレメント#2を導入し、pCXSN−cis#2−hSCを得た。遺伝子配列解析によりcis−エレメントの向きが正しい挿入方向であることを確認した。
p180タンパク質とSF3b4タンパク質を共発現する細胞株である、CHO YA7細胞及び対照のCHO細胞それぞれ1×10個に対して、実験例2で構築したIgA1抗体重鎖発現プラスミド、軽鎖全長の発現プラスミド、pCXSN−cis#1−hJC及びpCXSN−cis#2−hSCの4種類の発現プラスミド各0.5μgずつを、リポフェクション法にてトランスフェクションした。
5%ウシ胎児血清0.5mLを含むDMEM培地中で24時間培養した後、培養上清各10μLを実験例3と同様にしてBN−PAGEにより分離し、PVDF膜へ転写後にぺルオキシダーゼ標識抗ヒトIgA抗体(Bethyl社)を使用して検出し、多量体IgA型抗体産生能を評価した。
図6は、BN−PAGEの結果を示す写真である。レーン1及び2は、CHO細胞で多量体IgA型抗体を発現させた結果であり、レーン3及び4は、CHO YA7細胞で多量体IgA型抗体を発現させた結果である。また、レーン1及び3は、対照として、cis−エレメントを有しない抗体J鎖タンパク質の発現プラスミド及びcis−エレメントを有しない分泌成分の発現プラスミドを使用した結果であり、レーン2及び4は、cis−エレメントを有する抗体J鎖タンパク質の発現プラスミド及びcis−エレメントを有する分泌成分の発現プラスミドを使用した結果である。矢印は四量体IgA型抗体のバンドを示す。
その結果、cis−エレメントを有しない発現プラスミドを用いた場合において、CHO YA7細胞の多量体IgA型抗体の分泌量がCHO細胞の約2倍に増加したことが示された。更に、cis−エレメントを有する発現プラスミドの使用により、CHO YA7細胞の多量体IgA型抗体の分泌量がCHO細胞の3.2倍に増加したことが示された。
以上の結果は、p180タンパク質及びSF3b4タンパク質を共発現することや、cis−エレメントを有する発現プラスミドを使用することにより、多量体IgA型抗体の高効率な発現及び分泌が可能であることを示す。
本発明によれば、本発明は、複数の型のインフルエンザウイルスに対する中和活性を有する抗体又はそのフラグメントを提供することができる。本発明はまた、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤、及び抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸及びベクターを提供することができる。

Claims (16)

  1. A/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する、抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  2. (a1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H1と、
    (b1)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
    (c1)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H3と、
    を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
    (d1)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
    (e1)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
    (f1)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L3と、
    を含む軽鎖可変ドメインを有する、請求項1に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  3. 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H3と、を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
    配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有する、請求項2に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  4. 配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを有する、請求項2又は3に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  5. (a2)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号9に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H1と、
    (b2)配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号10に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H2と、
    (c2)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号11に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−H3と、
    を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
    (d2)配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L1と、
    (e2)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L2と、
    (f2)配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR−L3と、
    を含む軽鎖可変ドメインを有する、請求項1に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  6. 配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H1と、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H2と、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するCDR−H3と、を含む重鎖可変ドメイン、及び/又は、
    配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L1と、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L2と、配列番号14に示されるアミノ酸配列を有するCDR−L3と、を含む軽鎖可変ドメインを有する、請求項5に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  7. 配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを有する、請求項5又は6に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  8. IgA型である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  9. 多量体IgA型である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含有する、インフルエンザウイルスによる感染症の治療又は予防剤。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗インフルエンザウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸。
  12. (g1)配列番号17に示される塩基配列からなる核酸、
    (h1)配列番号17に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、
    (i1)配列番号17に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
    (j1)配列番号17に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸。
  13. (g2)配列番号18に示される塩基配列からなる核酸、
    (h2)配列番号18に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、
    (i2)配列番号18に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
    (j2)配列番号18に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸。
  14. (g3)配列番号19に示される塩基配列からなる核酸、
    (h3)配列番号19に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、
    (i3)配列番号19に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
    (j3)配列番号19に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸。
  15. (g4)配列番号20に示される塩基配列からなる核酸、
    (h4)配列番号20に示される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、
    (i4)配列番号20に示される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸、又は、
    (j4)配列番号20に示される塩基配列からなる核酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列からなり、かつA/H5N1型のインフルエンザウイルス及びA/H1N1型のインフルエンザウイルスの双方に対する中和活性を有する抗体の軽鎖可変ドメインをコードする核酸。
  16. 請求項11〜15のいずれか一項に記載の核酸を発現ベクターに挿入してなる組換えベクター。
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