JPWO2015159971A1 - 有機発光素子 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 孤立電子対とπ電子軌道を有する化合物を含む有機発光素子であって、
前記化合物は、その孤立電子対を構成する電子の少なくとも一部がnπ*遷移によって励起三重項状態3nπ*に励起されたとき、励起三重項状態3nπ*から励起一重項状態1nπ*に逆項間交差し、その励起一重項状態1nπ*から基底状態に戻る際、蛍光を放射することを特徴とする有機発光素子。
[2] 前記化合物は、nπ*遷移による励起三重項状態3nπ*のエネルギー準位の方が、ππ*遷移による励起三重項状態3ππ*のエネルギー準位よりも低いことを特徴とする[1]に記載の有機発光素子。
[3] 前記化合物は、前記励起三重項状態3nπ*と前記励起一重項状態1nπ*のエネルギーの差の方が、前記励起三重項状態3nπ*と基底状態のエネルギーの差よりも小さいことを特徴とする[1]または[2]に記載の有機発光素子。
[4] 前記化合物は、窒素原子を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[5] 前記化合物は、窒素原子を含有するヘテロ芳香環を有することを特徴とする[4]に記載の有機発光素子。
[6] 前記化合物は、ヘプタジンの誘導体であることを特徴とする[5]に記載の有機発光素子。
[7] 前記化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする[6]に記載の有機発光素子。
[8] 一対の電極と、前記一対の電極同士の間に設けられた発光層を含む有機層を有し、
前記化合物は、少なくとも前記発光層に含まれていることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[9] 前記発光層には、発光ドーパント、アシストドーパントおよびホストが含まれており、前記アシストドーパントとして前記化合物を使用することを特徴とする[8]に記載の有機発光素子。
[11] 前記一般式(1)のR1〜R5のいずれか1つのみと、R6〜R10のいずれか1つのみと、R11〜R15のいずれか1つのみが、各々独立にハロゲン原子であり、R1〜R5の他のいずれか1つのみと、R6〜R10の他のいずれか1つのみと、R11〜R15の他のいずれか1つのみが、各々独立にアルキル基であることを特徴とする[10]に記載の有機発光素子。
[12] 前記アルキル基のベンゼン環における置換位置は、前記ハロゲン原子の置換位置に対するオルト位であることを特徴とする[10]または[11]に記載の有機発光素子。
[13] 前記一般式(1)のR3とR8とR13が、各々独立にハロゲン原子であることを特徴とする[10]〜[12]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[14] 前記一般式(1)のR2とR7とR12が、各々独立にアルキル基であることを特徴とする[13]に記載の有機発光素子。
[15] 前記ハロゲン原子は、フッ素原子であることを特徴とする[10]〜[14]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[16] 前記アルキル基は、メチル基であることを特徴とする[10]〜[15]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[17] R1〜R15のうちのハロゲン原子またはアルキル基以外は、水素原子であることを特徴とする[10]〜[16]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[18] 遅延蛍光を放射することを特徴とする[10]〜[17]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[19] 有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする[10]〜[18]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[20] 一対の電極と、前記一対の電極同士の間に設けられた発光層を含む有機層を有し、
前記一般式(1)で表される化合物は、少なくとも前記発光層に含まれていることを特徴とする[19]に記載の有機発光素子。
[21] 前記化合物の蛍光発光寿命が1μs以下であることを特徴とする[1]〜[20]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
本発明の有機発光素子には、孤立電子対とπ電子軌道を有する化合物を用いる。本発明で用いる孤立電子対とπ電子軌道を有する化合物は、その孤立電子対を構成する電子の少なくとも一部がnπ*遷移によって励起三重項状態3nπ*に励起されたとき、励起三重項状態3nπ*から励起一重項状態1nπ*に逆項間交差し、その励起一重項状態1nπ*から基底状態に戻る際に蛍光を放射する点に特徴がある。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成して発光させるものである。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用である。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として遅延蛍光が観察される。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。本発明は、nπ*遷移によって励起三重項状態3nπ*に励起されたとき、励起三重項状態3nπ*から励起一重項状態1nπ*に逆項間交差し、その励起一重項状態1nπ*から基底状態に戻る際に効率よく蛍光を放射するものである。
本発明で用いる化合物は、孤立電子対とπ電子軌道を有する化合物であって、nπ*遷移によって励起三重項状態3nπ*に励起されたとき、励起三重項状態3nπ*から励起一重項状態1nπ*に逆項間交差し、その励起一重項状態1nπ*から基底状態に戻る際に蛍光を放射する化合物である。以下では、便宜上このような化合物をnπ*性化合物と称して説明する。本発明で用いるnπ*性化合物は、上記の性質を有する化合物である限り、その構造は特に制限されない。
nπ*性化合物の励起三重項状態3nπ*と励起一重項状態1nπ*のエネルギー差(ΔE)は、0,3eV未満であることが好ましく、0.2eV未満であることがより好ましく、0,15eV未満であることがさらに好ましく、0,1eV未満であることが特に好ましい。nπ*性化合物の励起一重項状態1nπ*と基底状態のエネルギー差は、波長が360〜800nmの蛍光放射が可能なエネルギー差であることが好ましい。例えば、波長が360〜540nmの蛍光放射が可能なエネルギー差を有する化合物や、波長が500〜540nmの蛍光放射が可能なエネルギー差を有する化合物などを適宜採用することができる。
また、R1〜R15が表す置換基を、ハメットのσp値が−0.2〜0.2の範囲内にある原子又は原子団の中から選択することも好ましい。この場合は、R1〜R15が表す置換基の種類は特に制限されない。
前記一般式(1)の他の好ましい一態様として、R1〜R5のいずれか1つのみと、R6〜R10のいずれか1つのみと、R11〜R15のいずれか1つのみが、各々独立にハロゲン原子であり、R1〜R5の他のいずれか1つのみと、R6〜R10の他のいずれか1つのみと、R11〜R15の他のいずれか1つのみが、各々独立にアルキル基である態様を挙げることもできる。
前記一般式(1)の各ベンゼン環には、ハロゲン原子とアルキル基以外の置換基が置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。例えば、各ベンゼン環にはハロゲン原子とアルキル基のみが置換されていて、その他は水素原子が結合していてもよい。
本発明の有機発光素子は、孤立電子対とπ電子軌道を有するnπ*性化合物を含む。nπ*性化合物は、上記のように、孤立電子対を構成する電子の少なくとも一部がnπ*遷移によって励起三重項状態3nπ*に励起されたとき、励起三重項状態3nπ*から励起一重項状態1nπ*に逆項間交差し、その励起一重項状態1nπ*から基底状態に戻る際、蛍光を放射する化合物である。
本発明の有機発光素子は、nπ*性化合物から放射される蛍光をそのまま外部へ放出するように構成することができる。すなわち、nπ*性化合物を発光材料として使用することができる。このとき、有機発光素子に含まれるnπ*性化合物は、逆項間交差により1nπ*から基底状態へ戻る際の蛍光発光効率が著しく向上している。このため、従来は特に20℃以上の温度条件下において1nπ*から基底状態へ戻る際の蛍光を実際的な発光強度で観測することはできなかったが、本発明により高い発光効率で1nπ*から基底状態へ戻る際の蛍光を放射することができるようになった。本発明によれば、例えば外部量子効率が3%以上、5%以上、あるいは6%以上の有機エレクトロルミネセンス素子の提供が可能である。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、nπ*性化合物の1種または2種以上を用いることが可能である。本発明の有機発光素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子において、発光は発光層に含まれる発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含み得る。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
一方、りん光については、通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
Ar雰囲気のグローブボックス中で化合物1のトルエン溶液(濃度10-5mol/L)と化合物1のアセトニトリル溶液(濃度10-5mol/L)を調製した。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度4×10-4Pa以下の条件にて化合物1とDPEPOとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物1のトルエン溶液およびアセトニトリル溶液について、紫外可視吸収スペクトルおよび450nm励起光による発光スペクトルを室温で測定した結果を図1に示す。化合物1のDFT(density functional theory)によるGaussian 09 programを用いて求めたHOMOとLUMOの空間分布を図2に示し、励起一重項エネルギー準位S1(1nπ*)、S2(1ππ*)および励起三重項エネルギー準位T1(3nπ*)、T2(3ππ*)を図3に示す。また、化合物1のトルエン溶液および化合物1とDPEPOの薄膜について、過度減衰曲線を室温で測定した結果を図4に示す。
また、化合物1のトルエン溶液は、フォトルミネッセンス量子効率ΦFが0.26、蛍光寿命τFが252nsであり、これらの測定値から算出した蛍光放射率定数kF(=ΦF/τF)が1.0×10-6s-1であった。こうした低い蛍光放射率定数と吸収係数は、nπ*遷移を生じる分子に見られる特徴的な特性である。
これらのことから、化合物1はnπ*遷移を生じる発光材料であることを確認することができた。
また、この電子軌道の空間分布に基づいてエネルギー準位を計算した結果を図3に示す。S1遷移(HOMO→LUMO)では、振動子強度(f)が0.0002で垂直遷移エネルギーが2.8256eV(439nm)であり、S2遷移(HOMO−1→LUMO)では、振動子強度(f)が0.4590で垂直遷移エネルギーが3.4924eV(355nm)であった。S1準位(1nπ*)とT1準位(3nπ*)のエネルギー差は0.165eVと非常に小さい値であった。また、ππ*遷移の一重項−三重項のエネルギー差は、nπ*遷移の一重項−三重項エネルギー差に比べて非常に大きいが、T2準位(3ππ*)とT1準位(3nπ*)のエネルギー差は0.24eVであった。
図4の過渡減衰曲線から、化合物1のトルエン溶液は、発光寿命が空気存在下で252nsであり、無酸素環境下で長寿命領域の発光強度が増大することがわかった。無酸素環境下での発光強度の増大は遅延蛍光の放射に由来するものであり、こうした現象から、化合物1が遅延蛍光を放射することを確認することができた。また、化合物1とDPEPOの薄膜では、化合物1のトルエン溶液に比べて、長寿命領域においてより高い発光強度を得ることができた。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-4Pa以下で積層し、図5に示す有機エレクトロルミネッセンス素子を製造した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに蒸着して正孔輸送層を形成し、その上に、mCPを10nmの厚さに蒸着して電子阻止層を形成した。次に、化合物1とDPEPOを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、DPEPOを10nmの厚さに蒸着して正孔阻止層を形成し、その上に、TPBIを40nmの厚さに蒸着して電子輸送層を形成した。さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nmの厚さに蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
Claims (22)
- 孤立電子対とπ電子軌道を有する化合物を含む有機発光素子であって、
前記化合物は、その孤立電子対を構成する電子の少なくとも一部がnπ*遷移によって励起三重項状態3nπ*に励起されたとき、励起三重項状態3nπ*から励起一重項状態1nπ*に逆項間交差し、その励起一重項状態1nπ*から基底状態に戻る際、蛍光を放射することを特徴とする有機発光素子。 - 前記化合物は、nπ*遷移による励起三重項状態3nπ*のエネルギー準位の方が、ππ*遷移による励起三重項状態3ππ*のエネルギー準位よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
- 前記化合物は、前記励起三重項状態3nπ*と前記励起一重項状態1nπ*のエネルギーの差の方が、前記励起三重項状態3nπ*と基底状態のエネルギーの差よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
- 前記化合物は、窒素原子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 前記化合物は、窒素原子を含有するヘテロ芳香環を有することを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
- 前記化合物は、ヘプタジンの誘導体であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光素子。
- 前記化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。
- 一対の電極と、前記一対の電極同士の間に設けられた発光層を含む有機層を有し、
前記化合物は、少なくとも前記発光層に含まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光素子。 - 前記発光層には、発光ドーパント、アシストドーパントおよびホストが含まれており、前記アシストドーパントとして前記化合物を使用することを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
- 下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする有機発光素子。
- 前記一般式(1)のR1〜R5のいずれか1つと、R6〜R10のいずれか1つと、R11〜R15のいずれか1つが、各々独立にハロゲン原子であり、R1〜R5の他のいずれか1つと、R6〜R10の他のいずれか1つと、R11〜R15の他のいずれか1つが、各々独立にアルキル基であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
- 前記アルキル基のベンゼン環における置換位置は、前記ハロゲン原子の置換位置に対するオルト位であることを特徴とする請求項10または11に記載の有機発光素子。
- 前記一般式(1)のR3とR8とR13が、各々独立にハロゲン原子であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 前記一般式(1)のR2とR7とR12が、各々独立にアルキル基であることを特徴とする請求項13に記載の有機発光素子。
- 前記ハロゲン原子は、フッ素原子であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 前記アルキル基は、メチル基であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- R1〜R15のうちのハロゲン原子またはアルキル基以外は、水素原子であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 遅延蛍光を放射することを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 一対の電極と、前記一対の電極同士の間に設けられた発光層を含む有機層を有し、
前記一般式(1)で表される化合物は、少なくとも前記発光層に含まれていることを特徴とする請求項19に記載の有機発光素子。 - 前記化合物の蛍光発光寿命が1μs以下であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
- 請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物からなるアシストドーパント。
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