JPWO2015068781A1 - インフルエンザウイルスa型のグループ1に対して広域な中和活性を有する抗体 - Google Patents

インフルエンザウイルスa型のグループ1に対して広域な中和活性を有する抗体 Download PDF

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Abstract

H1N1pdmの感染者由来のPBMCから、H1N1pdm由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する3種のヒトモノクローナル抗体を取得した。さらに、これら抗体は、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有していることも見出した。一方、該グループ1に属しているが、H1N1pdm由来のHA2領域において、45位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ47位のアミノ酸がグリシンに置換されているH2サブタイプに対しては、前記3種の抗体は結合性のみならず、中和活性を示さないことも見出した。

Description

本発明は、インフルエンザウイルスA型のグループ1に対して広域な中和活性を有する抗体に関し、より詳しくは、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体に関する。
インフルエンザは、季節的に流行して世界中に広まるウイルス性の疾患である。そして、年間300万〜500万人が重度の疾病症例となり、約500000人が死に至る。また、世界的に流行した数年においては、インフルエンザによる死者の数が何百万人に至ったこともある。20世紀においては、インフルエンザの世界的な流行が3回生じたが、いずれもヒトに感染し易くなった新株の発生によるものであり、1千万の人を死に至らしめた。
時に、新型インフルエンザ株は、既存のインフルエンザウイルスが他の動物種からヒトに広まる際、または既存のヒトに感染ずるインフルエンザウイルス株が、通常トリ又はブタに感染するウイルスから新たな遺伝子を獲得した際に生じる。現に、新型のインフルエンザウイルス株として2009年4月に発生したブタ起源のパンデミックH1N1(2009)(H1N1pdm)は、ヒト、ブタ、トリに感染する各インフルエンザウイルスの遺伝子が組み合わさったものであった。そして、この遺伝子の組み合わせにより、H1N1pdmはヒトに感染する能力を獲得したため、世界中に迅速に広まることとなり、沢山の重度な症例を引き起こした。また、かかる当時のH1N1pdmのパンデミック発生の経緯を鑑みれば、1990年代のアジアにおいて発生した、H5N1と称される高病原性トリインフルエンザウイルス株についても、新たなインフルエンザパンデミックの要因となることが懸念され、常にH5N1由来のパンデミック発生の可能性について注意が払われている。
H1N1pdm及びH5N1等は、3属(A型、B型、C型)に分類されるインフルエンザウイルスにおいて、いずれもA型に属する。A型、B型及びC型の違いは、ウイルス粒子を構成するタンパク質のうち、M1タンパク質とNPタンパク質の抗原性の違いに基づく。また、同じA型であっても、エンベロープの表面上の分子である赤血球凝集素(ヘマグルチニン、以下、単に「HA」とも称する)やノイラミニダーゼ(NA)の抗原性の違いから、2つのグループに分類され、さらに複数のサブタイプ、複数の亜型、さらに複数の株(分離株)とに分類される。、具体的には、インフルエンザウイルスA型は、サブタイプ:H1、H2,H5、H6、H8、H9、H11、H12,H13及びH16からなるグループ1と、サブタイプ:H3、H4,H7、H10、H14及びH15からなるグループ2とに分類され、さらにこれらサブタイプにおいては、前述のH1N1及びH5N1の亜型等に分類される。
インフルエンザA型ウイルスのHAは、頭部領域(球状頭部領域、head region)と茎領域(stem region又はstalk region)という構造の異なる領域で構成され、領域はウイルスが標的細胞に結合するための受容体結合部位を含み、HAの血球凝集活性に関与し、茎領域はウイルスのエンベロープと細胞のエンドソーム膜間の膜融合に必要な融合ペプチドを含み、融合活性に関与していることが知られている。
また、このようなインフルエンザウイルス感染症に対する治療及び予防においては、いくつかの選択肢がある。例えば、初期のウイルス粒子(ビリオン)放出を阻害するノイラミニダーゼ阻害剤であるザナミビル(リレンザ)及びオセルタミブル(タミフル)、M2チャンネルのプロトン伝導性を阻害するアマンタジンといった、いくつかの低分子化合物がインフルエンザの治療には用いられている。
しかしながら、インフルエンザの治療及び予防における、低分子化合物投与の有効性は発症後48時間以内に限られている。さらに低分子化合物の過剰な使用は、エスケープ変異から驚くべきほど低い効果を示す耐性ウイルスの発生を招き、それによって、世界中への急速な感染拡大が引き起こされることになる。
インフルエンザの予防の別の選択肢としてワクチン接種がある。しかしながら、抗原連続変異として知られている、ウイルスの抗原変異の蓄積のため、その使用には重要な制限が課される。また、現在の季節性インフルエンザワクチンは、HAに対する抗体を主に誘導するものであり、HAの頭部領域を特異的に標的とし、その受容体結合機能を阻害するものである。これらの反応は通常、株特異的なウイルス中和反応であり、それ故、次のインフルエンザの季節に流行するであろうと予測されるウイルス抗原に基づき、毎年改質する必要がある。さらに、パンデミック状況下においては、現に流行中のウイルスを対象とした製剤化が必要となる。一方、ワクチンの開発、製造には時間を要するため、パンデミックに対する治療及び予防において、ワクチン戦略の有効性は乏しいものである。
以上の通り、インフルエンザウイルス、特に、H1N1pdm、H1N1sea及びH5N1等に対して鋭意研究は進められ、様々な治療法及び予防法が試みられているものの、未だ十分に対応できる方法は確立されておらず、それらの研究、開発が鋭意進められている。
かかる現状において、広域なウイルス株に対して、特異性を示すヒトモノクローナル抗体(HuMAb)は、血清中における長期安定性、高い特異性、低免疫原性といった極めて望ましい特性を有しているため、インフルエンザ等の予防薬及び治療薬として注目を集めている。特に、上記低分子化合物等の薬剤を用いた治療においては、発症後48時間を越えてしまうと、該化合物を投与してもその有効性は殆ど認められないが、かかる抗体による治療においては発症後48時間であってもその有効性が期待できる。さらに上述の低分子化合物による治療によって生じることが懸念されるエスケープ変異や、ワクチン戦略においては対応しきれない年々変化するウイルス抗原に大しても、その広域な保護範囲をもって対応することができる。
そのため、インフルエンザウイルスに対して広範囲な中和活性を示す抗体が注目され、様々な広域性抗インフルエンザウイルス抗体の研究・開発が進めされている。例えば、インフルエンザウイルスA型のグループ1に対する、ヒト及びマウス由来の抗体がにおいて報告されている(非特許文献1〜10)。また、インフルエンザウイルスA型のグループ2に対する抗体が非特許文献11〜14において報告されている。さらに、インフルエンザウイルスA型のグループ1及び2に対する抗体、並びにインフルエンザウイルスB型の山形系統及びビクトリア系統に対する抗体についても非特許文献11及び15〜18、並びに非特許文献19及び20において、各々報告されている。また、広域交差反応性を示す中和抗体HuMAbのいくつかは、HAの頭部を認識する抗体であるが(非特許文献7、8、14、21〜24及び26)、その殆どは、HAの茎領域を認識する抗体である(非特許文献1〜6、8、19及び25)。
このように、様々な広域交差反応性を示す中和抗体について、研究・開発が進めされているが、未だインフルエンザウイルス、特に近年パンデミックを引き起こしたH1N1pdmや、今後パンデミックを引き起こすことが懸念されるH5N1が属するインフルエンザウイルスA型のグループ1において広範囲に中和活性を示し、治療等に有効な抗体は依然開発されていないのが現状である。
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本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく、感染症におけるヒト抗体の有効性に着目した。具体的には、SARS−CoVの感染患者及びトリインフルエンザウイルスH5N1の感染患者に、これらウイルスに感染して既に回復している別の患者から採取した血清を輸血したところ、有意な治療効果が認められたという事例(Marasco WA,Sui J.(2007) The growth and potential of human antiviral monoclonal antibody therapeutics.Nat Biotechnol 25:1421−1434)を鑑み、インフルエンザウイルスA型のグループ1感染者由来のヒト抗体を調製することを試みた。すなわち、HIN1pdm感染者由来の血液から末梢血単核細胞(PBMC)を調製し、さらにフュージョンパートナー細胞であるSPYMEGと融合させることにより、ハイブリドーマを調製した。そして、調製したハイブリドーマからインフルエンザウイルスに特異的な抗体を産生する細胞を選抜した結果、ヒト由来の3種のモノクローナル抗体(HuMAb) H9N2、1H11、2H5及び5G2を得ることができた。そして、これら抗体について、その結合性を解析したところ、HIN1pdmのみならず、インフルエンザウイルスA型のグループ1に属する他の亜型(HIN1sea、H5N1、H9N2)に対しても結合性を示すことを見出した。一方、該グループ1に属するH2N1に対しては、これら3種のいずれの抗体も結合性を示すことはなかった。また、インフルエンザウイルスA型のグループ2に属する亜型(H3N2及びH7N7)に対しても、これら抗体はいずれも結合性を示すことはなかった。
次に、得られた3種のHuMAbにつき、インフルエンザウイルス感染症に対する治療及び予防の有効性を検証すべく、これら抗体の中和活性について分析した。その結果、前記3種のHuMAbのいずれにおいても、HIN1pdmのみならず、HIN1sea及びH5N1に対して中和活性を示すことが明らかになった。特に、1H11及び5G2は、さらにH9N2に対しても中和活性を示すことが明らかになった。また、H1N1pdmに関しては、2009年に分離された株、2011年に分離された株、いずれに対しても前記3種のHuMAbは中和活性を示したものの、2011年分離株に対する中和活性は2009年分離株に対するそれと比較して低いものであった。
次に、これら抗体のエピトープを同定すべく、プロテアーゼ処理及びそれに続く質量分析による、エピトープマッピング分析を行った結果、3種全てのHuMAbに共通したエピトープとして、ヘマグルチニン2(HA2)サブユニットの茎領域の、より短いα‐へリックス(40〜58位のアミノ酸からなる領域)に存在していることを見出した。また意義深いことに、全てのHuMAbは、トリプシン処理によるHA前駆体(HA0)の開裂、及び成熟HA1/HA2の分断、並びに低pH処理によるHA0の構造変化を阻害する活性を有していることも明らかになった。
さらに、インフルエンザウイルスに対して広域な中和活性を有する既存の抗体が認識することのできない、HAタンパク質のアミノ酸置換体として、HA2領域において、Q42G、D46T、T49N及びN52Dを伴うHAタンパク質のアミノ酸置換体、HA2領域において、D19N、W21F及びI45Vを伴うHAタンパク質のアミノ酸置換体、HA1領域において、G189R、G225D及びT318Kを伴うHAタンパク質のアミノ酸置換体等が知られている。そこで、これらHAタンパク質のアミノ酸置換体に対する、前記3種のHuMAbの結合性について解析した。その結果、いずれのHAタンパク質のアミノ酸置換体に対しても、これら3種のHuMAbはいずれも結合できることを見出し、今回得られたHuMAbは、既存のインフルエンザウイルスに対して広域な中和活性を有する抗体とは異なるエピトープを認識する抗体であることが明らかになった。
さらに、NCBIインフルエンザデータベースの>6000配列を遺伝的に解析した結果、HAタンパク質のHA2領域において、47位のアミノ酸がリジンであるH1N1pdmの数が年々増加していることが見出され、前述のH1N1pdm2011年分離株に対する低感受性は、2009年分離株における47位のアミノ酸がリジンからグルタミン酸への置換が要因であることを見出した。なお、上述の通り、H1N1pdmにおいて優位な集団となった47位のアミノ酸がリジンである変異体に対し、2009年分離株と比較して弱くなっているものの、前記3種のHuMAbはいずれも有効な中和活性を示す。したがって、これら3種のHuMAbは、近年のH1N1pdmに対しても依然有効であるとも言える。
さらに、H1N1pdmと同じグループ1に属しながら前記3種のHuMabが結合することができないH2N2に関しては、HAタンパク質のHA2領域において、47位のアミノ酸がリジンからグルタミン酸への置換されていることに加え、45位のアミノ酸がイソロイシンからフェニルアラニンに置換されていることから、これらアミノ酸置換も、前記3種のHuMAbの結合性に影響を与えていることを見出した。
実際、当該アミノ酸置換の結合性への影響を確認するため、H1N1pdmのHAタンパク質のHA2領域における、45位のアミノ酸をイソロイシンからフェニルアラニンヘ、47位のアミノ酸をグルタミン酸からリジン又はグリシンへ、また45位のアミノ酸及び47位のアミノ酸をイソロイシンからフェニルアラニンに、グルタミン酸からグリシンに各々アミノ酸置換を行った変異体を作製した。そして、これら変異体に対する前記3種のHuMAbの結合性を評価した結果、前記3種のHuMAbは45位、47位に個別にアミノ酸置換を入れたものには反応を示したが、45位、47位に同時に変異を入れた場合は反応を示さないことが確認され、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下に関する。
<1> インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体であって、下記(a)及び(b)の特徴を有する抗体
(a)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する
(b)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の45位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ47位のアミノ酸がグリシンに置換されているタンパク質には結合しない。
<2> 下記(c)〜(e)のうちのいずれか一に記載の特徴をさらに有する、<1>に記載の抗体。
(c)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の42位のアミノ酸がグリシンに置換されており、46位のアミノ酸がスレオニンに置換されており、49位のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、かつ52位のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されているタンパク質に結合する
(d)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の19位のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、21位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ45位のアミノ酸がバリンに置換されているタンパク質に結合する
(e)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA1領域中の189位のアミノ酸がアルギニンに置換されており、225位のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されており、かつ318位のアミノ酸がリシンに置換されているタンパク質に結合する。
<3> 下記(i)〜(iii)のうちのいずれか一に記載の特徴を有する、請求項1又は2に記載の抗体
(i) 配列番号:3〜5に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:8〜10に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(ii) 配列番号:13〜15に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:18〜20に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(iii) 配列番号:23〜25に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:28〜30に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する。
<4> 下記(i)〜(iii)のうちのいずれか一に記載の特徴を有する、請求項1又は2に記載の抗体
(i) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:7に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(ii) 配列番号:12に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:17に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する
(iii) 配列番号:22に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:27に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する。
<5> インフルエンザウイルスA型のグループ1のH9サブタイプに対する中和活性をさらに有する抗体である、<1>〜<4>のうちのいずれか一に記載の抗体。
<6> 前記インフルエンザウイルスA型のグループ1を50%中和するために必要とされる抗体の濃度が、30μg/ml以下である、<1>〜<5>のうちのいずれか一に記載の抗体。
<7> 下記(f)の特徴をさらに有する、<1>〜<6>に記載の抗体
(f)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の47位のアミノ酸がリシンに置換されているタンパク質に結合する。
<8> 下記(g)の特徴をさらに有する、<1>〜<7>に記載の抗体
(g) A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA1領域中の86位のアミノ酸がシステインに置換されているタンパク質には結合いない。
<9> ヒト抗体である、<1>〜<8>のうちのいずれか一に記載の抗体。
<10> <1>〜<9>のうちのいずれか一に記載の抗体をコードするDNA。
<11> <1>〜<9>のうちのいずれか一に記載の抗体を産生する、又は、<10>に記載のDNAを含む、細胞。
<12> <11>に記載の細胞を培養し、該細胞内又はその培養液から、産生された<1>〜<9>のうちのいずれか一に記載の抗体を回収する工程を含む、抗体の製造方法。
<13> <1>〜<9>のうちのいずれか一に記載の抗体を有効成分とする、医薬組成物。
本発明によれば、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体を提供することが可能となる。より具体的には、季節性インフルエンザであるH1N1seaのみならず、パンデミックを引き起こしたH1N1pdm、今後パンデミックを引き起こすことが想定されるH5N1に対しても、強い中和活性を示す抗体を提供することが可能である。さらに、近年のH1N1pdmにおいて、優位な集団となったHA2タンパク質の47位のアミノ酸がリシンである変異体に対しても中和活性を示す抗体を提供することが可能である。
HAコーディングプラスミドを導入した293T細胞と、インフルエンザウィルスA型に対する抗体3種とによる、免疫蛍光アッセイ(IFA)の結果を示す顕微鏡写真である。すなわち、野生型(A/Suita/1/2009由来)ヘマグルニチン(HA)タンパク質をコードするプラスミドが導入された293T細胞と、本発明の抗体3種(1H11、2H5及び5G2)とを反応させた結果を示す顕微鏡写真である。なお、陰性対照及び陽性対照として、抗体の代わりにPBSのみを添加した前記細胞及びC179MAbと反応させた前記細胞を各々用いた。 本発明のヒトモノクローナル抗体(HuMAb)1H11の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の推定アミノ酸配列、並びに前記各領域における相補性決定領域(CDR)の推定アミノ酸配列を示す図である。 本発明のヒトモノクローナル抗体(HuMAb)2H5の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の推定アミノ酸配列、並びに前記各領域における相補性決定領域(CDR)の推定アミノ酸配列を示す図である。 本発明のヒトモノクローナル抗体(HuMAb)5G2の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の推定アミノ酸配列、並びに前記各領域における相補性決定領域(CDR)の推定アミノ酸配列を示す図である。 本発明の3種のHuMAbの、H1N1pdm、H1N1sea、H5N1及びH9N2に対するウィルス中和活性を示すグラフである。すなわち、H1N1pdm(2009年分離株及び2011年分離株)、H1N1seaの2分離株と、H5N1の2分離株と、H9N2の1分離株とを、HuMAbのいくつかの希釈系列における中和反応に供した結果を示すグラフである。なお、陰性対照として、抗デング熱ウィルスHuMAbであるD23−1G7C2を用いた。 CV−1細胞を用いた融合阻害アッセイの結果を示す、顕微鏡写真である。すなわち、A/Suita/1/2009をCV−1細胞に感染させ、24時間インキュベーションした。さらに、図中に示す様々な濃度の本発明の3種の抗体(1H11、2H5及び5G2)と共に、37℃にて1時間インキュベートした。そして、PBS(pH5.5)に置き換え、5分間インキュベートした。洗浄後、細胞を更に3時間インキュベートし、次いでメタノールにて固定し、ギムザ染色を施して、観察した結果を示す図である。コントロールとして、抗インフルエンザウィルス抗体 HuMAbの代わりにC179MAbを用いた。また、HuMAbにて処理しておらず、未感染のCV−1細胞をモック(Mock/−)として用いた。また、HuMAbにて処理しておらず、A/Suita/1/2009感染CV−1細胞(ウィルスのみ)、または、デング熱に対するコントロールHuMAb200μg/mlにて処理したA/Suita/1/2009感染CV−1細胞(D23−1G7C2 (200μg/ml))も用いた。 還元(β−ME+)又は非還元状態(β−ME−)にあるHAタンパク質に対する、本発明の3種のHuMAbを用いたウェスタンブロッティングの結果を示す写真である。すなわち、A/Suita/1/2009を感染させたMDCK細胞を、β−メルカプトエタノール(β−ME)存在下又は非存在下におけるSDS−PAGEに供した。そして、SDS−PAGE後のゲルを、1H11、2H5若しくは5G2を用いた、又はコントロールとして5E4を用いた、ウェスタンブロッティングに供した結果を示す写真である。 H1N1pdm由来のHAタンパク質欠失体(a〜e)の構造(図中A)に対する、本発明3種のHuMAbの反応性をウェスタンブロッティングにより分析した結果を示す写真(図中B)である。 低pH下にてトリプシン処理したH1N1pdm HA0タンパク質に対する、ウェスタンブロッティングの結果を示す図である。図中Aは、低pHにてHA0タンパク質をトリプシン処理し、3種のHuMAb(1H11、2H5及び5G2)によるウェスタンブロッティングに供した結果を示す、概略図と写真である。なお、陰性対照として、抗H1N1pdm由来のHA0タンパク質の球状頭部を認識する抗体 5E4を用いた。図中Bは、HA0タンパク質を5E4(上部)又は1H11、2H5若しくは5G2(下部)にて先ず処理し、そして低pH下トリプシンにて処理し、5E4を用いたウェスタンブロッティングに供した結果を示す、概略図と写真である。 3種のHuMAb(1H11、2H5及び5G2)を各々固定化したカラムに結合させたHAタンパク質をトリプシンにて消化し、抗体と相互作用したペプチド断片を質量分析により分析し、それらの結果を、HA単量体の構造モデル上にマッピングした結果を示す図である。図中、高いスコアを示した2領域をボールで示す。なお、コントロールとして、HAタンパク質の茎領域と相互作用することが知られているマウスモノクローナル抗体C179を用いた。 抗インフルエンザウィルスA型の存在下、連続して10代継代したMDCK細胞において生じた、エスケープ突然変異体の有無を示す概略図である。すなわち、様々な濃度(0.0025,0.025,0.25及び2.5μg/ml)の1H11、2H5又は5G2の存在下、MDCK細胞において、A/Suita/1/2009を連続して10代継代したことを示す、概略図である。また、コントロールとして、5E4の存在下、A/Suita/1/2009をMDCK細胞と共に1回インキュベートした。そして、P1〜P10のプレートにおいて、細胞変性が確認されたウェルに色を付した。また、1番右端のP10のプレート(5E4に関しては、P1のプレート)において、色を付したウェルはゲノムシークエンシング解析に供した。そのシークエンシングの結果、変異体が同定されたウェルには星印を付した(5G2のプレートにおいては1ウェル、5E4noプレートにおいては2ウェルから、変異体が同定されたため、各々星印が、図中付してある)。 図11に示した、抗インフルエンザウィルスA型の存在下、継代したMDCK細胞において検出された、A/Suita/1/2009のHAタンパク質変異体のアミノ酸配列を示す図である。図中、「5G2_1_Esc.gpt」は、5G2の存在下検出されたエスケープ変異体の結果を示し、「5E4_1_Esc.gpt」及び「5E4_2_Esc.gpt」は、5E4の存在下検出されたエスケープ変異体2種の結果を示す。 H1N1pdm2009年分離株とH1N1pdm2011年分離株との、HAタンパク質の402位迄のアミノ酸配列を比較した結果を示す図である。 H1N1pdm2009年分離株とH1N1pdm2011年分離株との、HAタンパク質の403位以降のアミノ酸配列を比較した結果を示す図である。 本発明の3種のHuMAbと、HAタンパク質のアミノ酸置換体(HA2領域において、Q42G、D46T、T49N及びN52Dを伴うアミノ酸置換体、HA2領域において、D19N、W21F及びI45Vを伴うアミノ酸置換体)との反応性を、ウェスタンブロッティングにより分析した結果を示す、写真である。 インフルエンザウィルスA型の各亜型間における、HAタンパク質のHA2領域中の40〜58位のアミノ酸における変化を示す図である。
<インフルエンザウイルスA型のグループ1に対して広域な中和活性を有する抗体>
後述の実施例において示す通り、本発明者らは、H1N1pdm(A/Suita/1/200/2009株)由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する3種のヒトモノクローナル抗体(1H11、2H5及び5G2)を取得した。さらに、これら抗体は、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有していることも見出した。一方、該グループ1に属しているが、H1N1pdm(A/Suita/1/200/2009株)由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域において、45位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ47位のアミノ酸がグリシンに置換されているH2サブタイプに対しては、前記3種の抗体は結合性のみならず、中和活性を示さないことも見出した。
したがって、本発明は、インフルエンザウイルスA型のグループ1に対して広域な中和活性を有する、下記抗体を提供する。
インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体であって、下記(a)及び(b)の特徴を有する抗体
(a)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する
(b)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中において、45位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ47位のアミノ酸がグリシンに置換されているタンパク質に結合しない。
また、インフルエンザウイルスに対して広域な中和活性を有する既存の抗体が認識することのできない、ヘマグルニチン(HA)タンパク質のアミノ酸置換体として、HA2領域において、Q42G、D46T、T49N及びN52Dを伴うアミノ酸置換体、HA2領域において、D19N、W21F及びI45Vを伴うアミノ酸置換体、HA1領域において、G189R、G225D及びT318Kを伴うアミノ酸置換体等が知られている。これらHAタンパク質のアミノ酸置換体に対し、後述の実施例において示す通り、本発明の抗体は、いずれのHAタンパク質のアミノ酸置換体に対しても結合することができる。したがって、本発明の抗体のより好適な態様として、下記抗体が挙げられる。
下記(c)〜(e)のうちのいずれか一の特徴をさらに有する、前記本発明の抗体
(c)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の42位のアミノ酸がグリシンに置換されており、46位のアミノ酸がスレオニンに置換されており、49位のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、かつ52位のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されているタンパク質に結合する
(d)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の19位のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、21位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ45位のアミノ酸がバリンに置換されているタンパク質に結合する
(e)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA1領域中の189位のアミノ酸がアルギニンに置換されており、225位のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されており、かつ318位のアミノ酸がリシンに置換されているタンパク質に結合する。
なお、(e)に関しては、A/Suita/1/89(R)(H1−SU1/89R)株由来のヘマグルニチンタンパク質に結合することが、さらに好ましい態様として挙げられる(A/Suita/1/89(R)株由来のヘマグルニチンタンパク質については、後述の実施例参照のこと)。
また、後述の実施例において示す通り、(e)の特徴を有する抗体は、既存の広域性中和抗体であるC179では抑制することのできない、H1−SU1/89R株に対しても結合することができ、ひいては中和活性を示すことができ得る。
さらに、本発明の抗体においては、(c)〜(e)の特徴を全てさらに有していることがより好ましい。
また、後述の実施例において示す通り、NCBIインフルエンザデータベースの>6000配列を遺伝的に解析した結果、近年のH1N1pdmにおいて優位な集団である、ヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の47位のアミノ酸がリジンであるウイルス株に対しても、本発明の抗体は有効な中和活性を示す。したがって、本発明の抗体のより好適な態様として、下記抗体が挙げられる。
下記(f)の特徴をさらに有する、上記本発明の抗体
(f)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の47位のアミノ酸がリシンに置換されているタンパク質に結合する。
また、後述の実施例において示す通り、5G2の存在下で培養した10代目のウェルのインフルエンザウイルスにおいては、ヘマグルニチンタンパク質において、HA1領域中の86位のアミノ酸がシステインに置換されているエスケープ変異が同定されている。したがって、本発明の抗体、少なくとも後述の5G2は、かかる変異体と結合できないことが示唆されるため、下記態様もとり得る。
下記(g)の特徴をさらに有する、上記本発明の抗体
(g)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA1領域中の86位のアミノ酸がシステインに置換されているタンパク質には結合しない。
本発明の抗体が中和活性を示す「インフルエンザウイルスA型のグループ1」とは、オルトミクソウイルス科のA型インフルエンザウイルス属に分類されるウイルスのうちの1グループ(グループ1)を意味する。また、本発明の抗体が対象とするインフルエンザウイルスには、季節性(sea)インフルエンザのみならず、季節を問わず、また流行の規模が世界的かつ汎発的であるパンデミック型(pdm)インフルエンザも含まれる。
また、グループ1には、後述のへマルチニンタンパク質の構造の違いに基づきさらに分けられるサブタイプとて、H1、H2,H5、H6、H8、H9、H11、H12,H13及びH16が属しているが、前述の通り、本発明の抗体が対象とするのは、少なくともH1及びH5である。また、後述の実施例において示す通り、本発明においては、上記結合性を示すことにより、H9に対しても中和活性を示す抗体も得られている。したがって、本発明の抗体のより好ましい態様としては、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH9サブタイプに対する中和活性をさらに有する抗体が挙げられる。
また、これらサブタイプにおいては、該ウイルスが産生するノイラミニダーゼの種類に応じ、さらに亜型に分類される。かかる亜型としては、H1N1、H1N2、H1N3、H1N4、H1N5、H1N6、H1N7、H1N8、H1N9、H5N1、H5N2、H5N3、H5N4、H5N5、H5N6、H5N7、H5N8、H5N9、H9N1、H9N2、H9N3、H9N4、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8、H9N9が挙げられるが、これらの中で、H1N1、H5N1、H9N2が、本発明の抗体の好適な対象となり得る。
また、これらサブタイプにおいては、分離された場所、分離された順番、分離された年に応じて、さらに株(分離株)に分類される。かかる分離株としては、H1、H5又はH9に属する限り、特に制限はないが、A/Suita/1/2009(H1N1pdm−SU1/09)、A/Osaka/168/2009(H1N1pdm−OS68/09)、A/California/07/2009(H1N1pdm−07/09)、A/Suita/117/2011(H1N1pdm−SU17/11)、A/Suita/104/2011(H1N1pdm−SU04/11)、A/Suita/105/2011(H1N1pdm−SU05/11)、A/Brisbane/59/2007(H1N1sea−BR59/07)、A/PR/8/34(H1N1sea−PR8/34)、A/Duck/Egypt/DIBr12/2007(H5N1−CE12/07)、A/Chicken/Egypt/PIMD12−3/2008(H5N1−CE12/08)、A/Turkey/Wisconsin/1/1966(H9N2−TW1/66)が、本発明の抗体の好適な対象となり得る。
本発明において「中和活性」とは、前記インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染(侵入)及び/又は該細胞における増殖を抑制する活性を意味する。また「抑制」には完全な抑制(阻害)のみならず、部分的な抑制も含まれる。さらに「抑制」には、インフルエンザウイルスの増殖等の低減のみならず、予防、阻止、遅延も含まれる。また、抗体がインフルエンザウイルスに対する中和活性を有するか否かは公知の方法により判定することができる。かかる方法としては、例えば、後述の実施例において示すようなVNアッセイが挙げられる。また、当該アッセイにおいて、インフルエンザウイルスを50%中和するために必要とされる抗体の濃度(例えば、インフルエンザウイルスの増殖を50%阻害するために必要な抗体の最小濃度)、すなわちVN50は、通常100μg/ml未満であれば、該抗体は中和活性を有していると判定することができるが、本発明において、好ましくは30μg/ml以下であり、より好ましくは15μg/ml以下であり、さらに好ましくは7μg/ml以下、さらにより好ましくは3μg/ml以下であり、特に好ましくは1μg/ml以下である。
また、本発明においては、H1N1pdmの2009年分離株に対するVN50が、好ましくは3μg/ml以下であり、より好ましくは2μg/ml以下であり、特に好ましくは1μg/ml以下である。また、本発明においては、H5N1に対するVN50が、好ましくは15μg/ml以下であり、より好ましくは7μg/ml以下である。
本発明における「抗体」は、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスを含む。「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体が含まれ、また抗体の機能的断片の形態も含む意である。「ポリクローナル抗体」は、異なるエピトープに対する異なる抗体を含む抗体調製物である。「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体断片を含む)を意味し、抗原上の単一の決定基を認識するものである。本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。また、本発明の抗体は、自然環境の成分から分離され、及び/又は回収された(即ち、単離された)抗体である。
本発明の抗体が結合する「A/Suita/1/200/2009株由来のHAタンパク質」とは、ヒトを宿主とするインフルエンザウイルスA型のグループ1に属するH1N1pdmであって、日本国の大阪府吹田市において2009年に200番目に分離された株に由来するヘマグルチニン(HA)タンパク質を意味する。ヘマグルチニンは、インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染するために、該細胞表面のシアル酸に結合するタンパク質である。HAを構成する同一の3つのモノマーは中心部にαヘリックスを持っており、この頭部領域にシアル酸結合部位がある。またHAのモノマーはまず、HA1領域及びHA2領域を含む前駆体(HA0)として合成される。この前駆体は後にグリコシル化されて分裂され、HA1サブユニットとHA2サブユニット、これら2つのサブユニットになる。
なお、本発明において、ヘマグルチニンタンパク質のHA1領域又はHA2領域におけるアミノ酸の番号は、特に断りのない限り、Nobusawa E,Aoyama T,Kato H,Suzuki Y,Tateno Y,et al.(1991) Comparison of complete amino acid sequences and receptor−binding properties among 13 serotypes of hemagglutinins of influenza A viruses.Virology 182:475−485に記載に基づき、付けられる番号である。すなわち、インフルエンザウイルスH3サブタイプ(A/Aichi/2/68株)由来のヘマグルチニンタンパク質のHA1領域又はHA2領域を基準としたアミノ酸の番号である。
本発明にかかるA/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルチニンタンパク質は、典型的には、配列番号:32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(配列番号:31に記載のヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質)である。そのヘマグルチニンタンパク質(配列番号:32に記載のアミノ酸配列)において、HA1領域は、1〜326位のアミノ酸配列からなる領域(配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなる領域)であり、HA2領域は、327〜531位のアミノ酸配列(配列番号:34に記載のアミノ酸配列からなる領域)からなる領域である。
したがって、本発明にかかるHA1領域中の86位、189位、225位及び318位は、配列番号:33に記載のアミノ酸配列においては、各々77位、185位、221位及び315位に相当する。また、本発明にかかるHA2領域中の19位、21位、40位、42位、45位、46位、47位、49位、52位及び58位は、配列番号:34に記載のアミノ酸配列においては、各々19位、21位、40位、42位、45位、46位、47位、49位、52位及び58位に相当する。
なお、抗体が、前述のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する抗体であるかどうか、また上記(b)〜(f)に記載のHAタンパク質のアミノ酸置換体に結合する又はしない抗体であるかどうかは、当業者であれば、後述の実施例に示すような、プロテアーゼ処理後の質量分析、還元条件下又は非還元条件下におけるウェスタンブロッティング、免疫蛍光アッセイ(IFA)、トリプシン切断に対する阻害アッセイを利用して評価することができる。また、これら後述の実施例に記載の方法の他、公知の免疫学的解析手法(フローサイトメトリー、ELISA、免疫沈降等)を利用しても評価することができる。また、上記アッセイに用いられる、A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質は、後述の実施例において示す通り、当該株を入手することなく、当業者であれば、前記A/Suita/1/200/2009株由来のHAタンパク質の公知のアミノ酸配列情報に基づき、当該タンパク質をコードするベクターを構築し、細胞に導入することで、適宜発現、調製することができる。さらに、(b)〜(f)に記載のHAタンパク質のアミノ酸置換体は、当業者であれば、後述の実施例において示す通り、公知のA/Suita/1/200/2009株由来のHAタンパク質のアミノ酸配列情報に基づき、部位特異的変異導入法を利用して調製することができる。
また、本発明の抗体が結合するアミノ酸を含む部位、すなわち「エピトープ」は、前述のHA2領域中の40〜58位に存在する抗原決定基(抗体中の抗原結合ドメインが結合する抗原上の部位)を意味する。したがって、本発明におけるエピトープは、アミノ酸の一次配列中において連続する複数のアミノ酸からなるポリペプチド(線状エピトープ)であってもよく、アミノ酸の一次配列中において隣接していないアミノ酸が、ペプチド又はタンパク質の折り畳み等の三次元構造によって近傍にくることにより形成されるポリペプチド(不連続エピトープ、構造的エピトープ)であってもよい。
また、後述の実施例において示す通り、本発明の抗体は、ヘマグルチニンタンパク質の茎領域を構成する、HA2領域の40〜58アミノ酸からなるαヘリックス構造を認識し得るものである。したがって、本発明の抗体は、前記エピトープからなる高次構造(HA2領域の40〜58アミノ酸からなるαヘリックス構造)依存的に結合し得る抗体であることが好ましく、非還元状態下にあるヘマグルチニンタンパク質に中の前記エピトープに結合し得る抗体であることがより好ましく、βメルカプトエタノール非存在下にあるヘマグルチニンタンパク質中の前記エピトープに結合し得る抗体であることがさらに好ましい。
なお、本明細書においては、例えば、Ala/A、Leu/L、Arg/R、Lys/K、Asn/N、Met/M、Asp/D、Phe/F、Cys/C、Pro/P、Gln/Q、Ser/S、Glu/E、Thr/T、Gly/G、Trp/W、His/H、Tyr/Y、Ile/I、Val/Vと表されるように、アミノ酸を1文字コードまたは3文字コード、またはその両方で表記する。なお、本発明で記載されているアミノ酸配列に含まれるアミノ酸は翻訳後に修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、ユビキチン化、SUMO化、パルミトイル化、プレニル化、メチル化、アセチル化、ヒドロキシル化、アミド化)を受ける場合もあるが、そのようにアミノ酸が翻訳後修飾された場合であっても当然のことながら本発明で記載されているアミノ酸配列に含まれる。
本発明の抗体の他の好ましい態様としては、下記(i)〜(iii)のうちのいずれか一に記載の特徴を有する抗体が挙げられる。
(i) 配列番号:3〜5に記載のアミノ酸配列(後述の1H11の軽鎖可変領域におけるCDR1〜3)を保持する抗体又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:8〜10に記載のアミノ酸配列(後述の1H11の重鎖可変領域におけるCDR1〜3)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(ii) 配列番号:13〜15に記載のアミノ酸配列(後述の5G2の軽鎖可変領域におけるCDR1〜3)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:18〜20に記載のアミノ酸配列(後述の5G2の重鎖可変領域におけるCDR1〜3)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(iii) 配列番号:23〜25に記載のアミノ酸配列(後述の2H5の軽鎖可変領域におけるCDR1〜3)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:28〜30に記載のアミノ酸配列(後述の2H5の重鎖可変領域におけるCDR1〜3)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する。
また、本発明の抗体のより好ましい態様としては、下記(i)〜(iii)のうちのいずれか一に記載の特徴を有する抗体が挙げられる。
(i) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列(後述の1H11の軽鎖可変領域)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:7に記載のアミノ酸配列(後述の1H11の重鎖可変領域)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(ii) 配列番号:12に記載のアミノ酸配列(後述の5G2の軽鎖可変領域)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:17に記載のアミノ酸配列(後述の5G2の重鎖可変領域)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する
(iii) 配列番号:22に記載のアミノ酸配列(後述の2H5の軽鎖可変領域)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:27に記載のアミノ酸配列(後述の2H5の重鎖可変領域)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する。
また、上記特定のアミノ酸配列を保持する抗体においては、後述の実施例において示す通り、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH9サブタイプに対する中和活性をさらに有するという観点から、(i)に記載の特徴を有する抗体及び(ii)に記載の特徴を有する抗体がより好ましい。また、インフルエンザウイルスA型のグループ1に感染した細胞間の融合を低濃度にて阻害できるという観点から、(i)に記載の特徴を有する抗体及び(iii)に記載の特徴を有する抗体がより好ましい。さらに、これらの観点に加え、インフルエンザウイルスA型のグループ1においてエスケープ変異の発生をより強く抑制するという観点から、(i)に記載の特徴を有する抗体が特に好ましい。
本発明の抗体には、ヒト型化抗体(ヒト化抗体)、ヒト抗体、マウス抗体、キメラ抗体、及び、これら抗体の機能的断片が含まれる。本発明の抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、キメラ抗体、ヒト型化抗体、又はヒト抗体が望ましく、さらに、血清中における長期安定性、高い特異性、低免疫原性という観点から、ヒト抗体が特に望ましい。
本発明において、「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。ヒト抗体の作製においては、後述の実施例において示すように、ヒト、例えインフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症のヒト、例えば患者及び/又はワクチン接種を受けた人由来の末梢血単核球(PBMC)を、効率的な細胞融合を可能とする融合パートナー細胞と融合させることによってハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマから抗ヒトインフルエンザウイルスモノクローナル抗体を得る方法を利用することができる(例えば、WO2007/119808 参照)。また、ヒトB細胞より活性のある抗体の産生をスクリーニングする方法、ファージディスプレイ法、免疫することで、ヒト抗体のレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を利用すること等が可能である。ヒト抗体の作製手法は、公知である(例えば、Nature,362:255−258(1993)、Intern.Rev.Immunol,13:65−93(1995)、J.Mol.Biol,222:581−597(1991)、Nature Genetics,15:146−156(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:722−727(2000)、特開平10−146194号公報、特開平10−155492号公報、特許2938569号公報、特開平11−206387号公報、特表平8−509612号公報、特表平11−505107号公報 参照)。
本発明において「キメラ抗体」とは、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。キメラ抗体は、例えば、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(可変領域)を切り出して、ヒト骨髄由来の抗体定常部(定常領域)遺伝子と結合し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入して産生させることにより取得することができる(例えば、特開平8−280387号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報 参照)。
また、本発明において「ヒト型化抗体」とは、非ヒト由来の抗体の抗原結合部位(CDR)の遺伝子配列をヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体であり、その作製方法は、公知である(例えば、EP239400、EP125023、WO90/07861、WO96/02576参照)。
本発明において抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗原に結合するものを意味する。本発明にかかる抗体の「機能的断片」の態様としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、及びこれらの重合体が挙げられる。
ここで「Fab」とは、1つの軽鎖及び重鎖の一部からなる免疫グロブリンの一価の抗原結合断片を意味する。抗体のパパイン消化によって、また、組換え方法によって得ることができる。「Fab’」は、抗体のヒンジ領域の1つ又はそれより多いシステインを含めて、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端でのわずかの残基の付加によって、Fabとは異なる。「F(ab’)2」とは、両方の軽鎖と両方の重鎖の部分からなる免疫グロブリンの二価の抗原結合断片を意味する。
「可変領域断片(Fv)」は、完全な抗原認識及び結合部位を有する最少の抗体断片である。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が非共有結合により強く連結されたダイマーである。「一本鎖Fv(scFv)」は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在する。「sc(Fv)2」は、2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域をリンカー等で結合して一本鎖にしたものである。「ダイアボディー」とは、二つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であり、この断片は、同一ポリペプチド鎖の中に軽鎖可変領域に結合した重鎖可変領域を含み、各領域は別の鎖の相補的領域とペアを形成している。「多特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。例えば、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現により調製することができる。
本発明の抗体には、望ましい活性(抗原への結合活性、前記中和活性、他の生物学的特性)を減少させることなく、そのアミノ酸配列が修飾された抗体が含まれる。本発明の抗体のアミノ酸配列変異体は、本発明の抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、またはペプチド合成によって作製することができる。そのような修飾には、例えば、本発明の抗体のアミノ酸配列内の残基の置換、欠失、付加及び/又は挿入を含む。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域及びCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との結合親和性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法が公知である(PNAS,102:8466−8471(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:485−493(2008)、国際公開第2002/051870号、J.Biol.Chem.,280:24880−24887(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:345−351(2008))。
改変されるアミノ酸数は、好ましくは、10アミノ酸以内、より好ましくは6アミノ酸以内、さらに好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。
実際、後述の実施例において得られた1H11、2H5及び5G2は同様の抗原結合性及び中和活性を示すが、それらのCDRの配列を比較するに、軽鎖可変領域のCDR1においては、N末側より1位及び2位のアミノ酸は共にセリンであり、N末側より5位のアミノ酸はグリシンであり、並びにC末側より2位のアミノ酸はアスパラギンであるという共通の配列を有するが、残りの4〜5アミノ酸は異なっている。また、軽鎖可変領域のCDR2においては、N末側より1位のアミノ酸はアスパラギンであるという点においては共通しているが、残りの2アミノ酸は異なっている。また、軽鎖可変領域のCDR3においては、N末側より3位及び4位のアミノ酸は共にセリンであるという点においては共通しているが、残りの5〜6アミノ酸は異なっている。また、重鎖可変領域のCDR1においては、N末側より3位のアミノ酸のみ異なっている。また、重鎖可変領域のCDR2においては、C末側より1位のアミノ酸のみ異なっている。また、重鎖可変領域のCDR3においては、C末側より1位のアミノ酸のみ異なっている。以上の通り、CDRにおいてアミノ酸が相違していても、同様の抗原結合性及び中和活性を奏することはできるので、本発明の抗体には、CDR等のアミノ酸配列が修飾された抗体も含まれる。
アミノ酸の改変は、好ましくは、保存的な置換である。本発明において「保存的な置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。
また「同等の活性を有する」とは、抗原への結合活性、前記中和活性が対象抗体(代表的には、後述の実施例において示す、1H11、2H5又は5G2)と同等(例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)であることを意味する。抗原への結合活性は、上述の通り、免疫学的解析手法を利用することにより評価することができる。
また、本発明の抗体の改変は、例えば、グリコシル化部位の数又は位置を変化させる等の抗体の翻訳後プロセスの改変であってもよい。これにより、例えば、抗体のADCC活性を向上させることができる。抗体のグリコシル化とは、典型的には、N−結合又はO−結合である。抗体のグリコシル化は、抗体を発現するために用いる細胞に大きく依存する。グリコシル化パターンの改変は、糖生産に関わる特定の酵素の導入又は欠失等の公知の方法で行うことができる(特開2008−113663号公報、米国特許第5047335号、米国特許第5510261号、米国特許第5278299号、国際公開第99/54342号)。さらに、本発明においては、抗体の安定性を増加させる等の目的で脱アミド化されるアミノ酸若しくは脱アミド化されるアミノ酸に隣接するアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより脱アミド化を抑制してもよい。また、グルタミン酸を他のアミノ酸へ置換して、抗体の安定性を増加させることもできる。本発明は、こうして安定化された抗体をも提供するものである。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であれば、抗原(A/Suita/1/200/2009株由来のHAタンパク質、その部分ペプチド、又はこれらを発現する細胞等)で動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(例えば、塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィー等)によって、精製して取得することができる。
また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法や組換えDNA法によって作製することができる。
ハイブリドーマ法としては、代表的には、コーラー及びミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞は、前記抗原で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ、ニワトリ、ラクダ)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球などである。免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞又はリンパ球等に対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することが可能である。ミエローマ細胞としては公知の種々の細胞株を使用することが可能である。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、好ましくは、同一の動物種起源のものである。ハイブリドーマは、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する等に結合する抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から、取得することができる。
組換えDNA法は、本発明の抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、本発明の抗体を組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767−775(1990))。本発明の抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖又は軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで細胞を形質転換してもよく、重鎖及び軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで細胞を形質転換してもよい(国際公開第94/11523号公報 参照)。
本発明の抗体は、上記形質転換した細胞又は上記ハイブリドーマを培養し、これら細胞内又は培養液から回収(分離・精製)し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離・精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。
トランスジェニック動物作製技術を用いて、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等)を作製すれば、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。
したがって、本発明は、本発明の抗体をコードするDNA、本発明の抗体を産生する又は本発明の抗体をコードするDNAを含む細胞をも提供することができる。また、当該細胞を培養し、該細胞内又はその培養液から、産生された本発明の抗体を回収する工程を含む、抗体の製造方法を提供することもできる。
また、本発明の抗体においては、能的作用物質と複合体を形成して、イムノコンジュゲート(immunoconjugate)を形成することができる。機能的作用物質は、化学療法剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント)、若しくは放射性同位体(すなわちラジオコンジュゲート(radioconjugate))等の細胞毒性剤、抗生物質、核酸分解酵素、又はそれらの任意の組合せであり得る。化学療法剤、例えばメトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン若しくは他の挿入剤、核酸分解酵素等の酵素及び/又はそのフラグメント、抗生物質、並びに毒素、例えばそのフラグメント及び/又は変異体を含む、小分子毒素又は細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、並びに下記に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤をイムノコンジュゲートの生成に使用することができる。使用することができる酵素的に活性な毒素及びそのフラグメントとしては例えば、ジフテリア毒素A鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エクソトキシンA鎖(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来のもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaccaamericana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ツルレイシ(momordicacharantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、及びトリコセン(tricothenes)が挙げられる。当該技術分野で知られる又はそうでなければ入手可能な任意の適切な放射性ヌクレオチド又は放射性作用物質を、ラジオコンジュゲートを抱合する(radioconjugated)抗体を産生するのに使用することができる。
抗体と細胞毒性剤との複合体は、多様な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP);イミノチオラン(IT);イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCL等);活性エステル(スベリン酸ジサクシンイミジル等);アルデヒド(グルタルアルデヒド等);ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等);ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン等);ジイソシアネート(トリエン2,6−ジイソシアネート等);ビス活性(bis−active)フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン等);マレイミドカプロイル(MC);バリン−シトルリン、プロテアーゼ開裂リンカーにおけるジペプチド部位(VC);2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸PAB=p−アミノベンジルカルバモイル(リンカーの「自壊(self immolative)」部分)(シトルレン(Citrulene));N−メチル−バリンシトルリン(ここではリンカーペプチド結合が、カテプシンBによる開裂を防ぐように修飾されている)(Me);抗体のシステインに結合するマレイミドカプロイル−ポリエチレングリコール;N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP);及びN−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1 カルボキシレート(SMCC)を用いて作製することができる。例えば、免疫毒素であるリシンを、Vitetta et al., Science, 238: 1098 (1987)に記載のように調製することができる。14C(Carbon−14)で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(pentaacetic acid)(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドと抗体との複合体形成に関する例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照されたい。抗体は腫瘍の事前標的化に用いられる「受容体」(ストレプトアビジン等)と複合体を形成することができ、抗体−受容体複合体を被験体に投与した後、清澄剤を用いて、血液循環から結合していない複合体を除去して、それから細胞毒性剤(例えば放射性ヌクレオチド)と複合体形成する「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
本発明の抗体は、当該技術分野で既知の技法によって検出可能なマーカーと直接又は間接的に共役することができる。検出可能なマーカーは、例えば分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的な手段によって検出可能な作用物質である。有用な検出可能なマーカーとしては、蛍光色素、化学発光化合物、放射性同位体、高電子密度試薬、酵素、着色粒子、ビオチン又はジオキシゲニンが挙げられるが、これらに限定されない。検出可能なマーカーは、往々にして放射能、蛍光、色又は酵素活性等の測定可能なシグナルを発生する。検出可能な作用物質と複合体形成する抗体を診断目的又は治療目的に使用することができる。検出可能な作用物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射物質、各種陽電子放射断層撮影に用いられる陽電子放射金属、及び非放射常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、抗体と直接、又は例えば当該技術分野で既知のリンカー等の介在物(intermediate)を介して、当該技術分野で既知の技法を用いて間接的に共役するか又は複合体形成することができる。例えば診断用途の金属イオンと抗体との複合体形成を記載している米国特許第4,741,900号を参照されたい。好適な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族の複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例としてはルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としてはルシフェリン及びエクオリンが挙げられる。
抗体は二重特異性とすることができる。1つのタンパク質と特異的に結合するとともに、病状及び/又は治療に関連する他の抗原と特異的に結合する二重特異性抗体を、文献に記載されている標準的な手法を用いて産生、単離及び試験する(例えばPluckthun&Pack,Immunotechnology,3:83−105(1997)、Carter,et al.,J.Hematotherapy,4:463−470 (1995)、Renner&Pfreundschuh,Immunological Reviews,1995,No.145,pp.179−209、Pfreundschuhの米国特許第5,643,759号、Segal,et al.,J.Hematotherapy,4:377−382 (1995)、Segal,et al.,Immunobiology, 185:390−402(1992)、及びBolhuis,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,34:1−8(1991)を参照されたい)。
また、本発明の抗体を免疫リポソームとして配合することができる。抗体を含有するリポソームを、Epstein et al.,Proc.Natl. Acad.Sci.USA,82:3688(1985)、Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980)、並びに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されるような当該技術分野で既知の方法によって調製する。循環時間が向上したリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームはホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームを既定の孔径のフィルターへと押し出して、所望の直径のリポソームを得ることができる。本発明の抗体のFab’フラグメントは、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286−288 (1982)に記載のようにジスルフィド交換反応によってリポソームと複合体形成することができる。化学療法剤(ドキソルビシン等)が任意にリポソーム内に含まれる。Gabizon et al,J.National Cancer Inst.,81(19):1484(1989)を参照されたい。
<インフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症を予防又は治療する方法>
本発明は、ヒト被験体においてインフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症を予防又は治療する方法であって、ヒト被験体に治療的に有効な量の本発明の抗体を投与することを含む、方法を提供する。該方法は患者をインフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症と診断することを更に含み得る。本発明の抗体を、患者をインフルエンザ感染症と診断する前に、診断中に、及び/又は診断した後に投与することができる。
上記方法は、インフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症の少なくとも1つの症状の軽減をモニタリングすることを更に含み得る。例えば少なくとも1つの症状は、発熱、頭痛、疲労、悪寒、不快感、筋肉痛、関節痛、鼻閉、咽頭痛、咳、呼吸窮迫、胃痛、又はそれらの任意の組合せを含み得る。本発明の抗体は、インフルエンザA型、及び/又はB型インフルエンザ及び/又はC型インフルエンザ等の他のインフルエンザに関する1つ又は複数の更なる治療薬とともに投与される。その組合せはインフルエンザウイルスA型のグループ1を阻害又は治療するのに相乗的に作用することができる。1つ又は複数の更なる治療薬には、例えばノイラミニダーゼ阻害剤、血球凝集素阻害剤、抗炎症剤、又はそれらの任意の組合せが含まれ得る。ノイラミニダーゼ阻害剤には、例えばザナミビル、オセルタミビル、ペラミビル、ラニナミビル、それらの任意の薬学的に許容可能な塩、又はそれらの任意の組合せが含まれ得る。
本発明によれば、2つ以上のインフルエンザ拮抗薬を投与することができる。インフルエンザ拮抗薬の少なくとも1つがインフルエンザウイルスA型拮抗薬を含み得る。少なくとも1つのインフルエンザウイルスB型拮抗薬を1つ若しくは複数のインフルエンザウイルスA型拮抗薬及び/又は1つ若しくは複数のインフルエンザウイルスC型拮抗薬と組み合わせることができる。少なくとも1つのインフルエンザ拮抗薬を、インフルエンザウイルス感染症に関する1つ又は複数の更なる治療薬と組み合わせて投与することができる。1つ又は複数のインフルエンザ拮抗薬を含む2つ以上の治療薬の投与は同時投与、連続投与、又は併用投与であってもよい。したがって2つ以上の治療薬を投与する場合、同時に又は同じ方法で又は同じ用量で投与する必要はない。同時投与する場合、2つ以上の治療薬を同じ組成で又は異なる組成で投与してもよい。2つ以上の治療薬を、同じ投与経路又は異なる投与経路を用いて投与してもよい。別々に投与する場合、治療薬を互いの前又は後に投与してもよい。2つ以上の治療薬の投与の順序は変更することができる。1つ又は複数の治療薬のそれぞれの用量は経時的に変えることができる。1つ又は複数の治療薬の種類を経時的に変えることができる。複数回で(at separate times)投与する場合、2回以上の投与の間隔はどのような期間であってもよい。複数回投与する場合、期間の長さを変えることができる。2つ以上の治療薬の投与の間隔は、0秒、1秒、5秒、10秒、30秒、1分、5分、10分、15分、20分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、7.5時間、10時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、6週間、8週間、3ヶ月、6ヶ月、1年又はそれより長くすることができる。
2つ以上のインフルエンザウイルス拮抗薬は、インフルエンザ感染症又はその症状、例えば発熱を治療又は軽減するのに相乗的に作用することができる。インフルエンザウイルス拮抗薬は、1つ若しくは複数の抗インフルエンザウイルス抗体単独であるか、又は1つ若しくは複数の他のインフルエンザウイルス拮抗薬、例えば小型医薬品、若しくは他の抗インフルエンザウイルス治療薬と組み合わせたものとすることができる。2つ以上の抗インフルエンザウイルス抗体又は少なくとも1つの抗インフルエンザウイルス抗体及び1つ若しくは複数の更なる治療薬は、インフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症を治療又は軽減するのに相乗的に作用することができる。1つ又は複数の抗インフルエンザウイルス抗体を含む2つ以上の治療薬を相乗効果のある量で投与することができる。したがって、2つ以上の治療薬の投与は同時に、連続して、又は任意の組合せで投与されるかにかかわらず、インフルエンザ感染症の1つ又は複数の症状の軽減に対して相乗効果を有し得る。一次治療薬が二次治療薬を単独で用いた場合よりも二次治療薬の有効性を大きく増大させることができるか、又は二次治療薬が一次治療薬の有効性を増大させることができるか、又はその両方であり得る。2つ以上の治療薬の投与効果は、インフルエンザ感染症の1つ又は複数の症状の軽減に対する効果がそれぞれを単独で投与した場合の相加効果よりも大きくなるようなものであり得る。相乗効果のある量で与えた場合、その量の1つ又は複数の治療薬単独では、インフルエンザ感染症の1つ又は複数の症状に対して実質的な効果がなくとも、1つの治療薬がインフルエンザ感染症の1つ又は複数の症状の軽減に対する1つ又は複数の他の治療薬の有効性を高めることができる。相乗効果の測定及び算出は、Methods in Molecular Medicine, vol. 85: Novel Anticancer DrugProtocols, pp. 297−321 (2003)におけるTeicher, ”Assaysfor In Vitro and In Vivo Synergy,”に記載のように、及び/又はCalcuSynソフトウェアを用いて併用指数(combination index)(CI)を算出することによって行うことができる。
<インフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症を予防又は治療する薬剤の製造への本発明の抗体の使用>
本発明は、ヒト被験体におけるインフルエンザウイルスA型のグループ1の感染症を予防又は治療する薬剤の製造への本発明の抗体の使用を提供する。本発明はヒト被験体においてインフルエンザウイルスA型のグループ1を検出する方法も提供する。該方法はヒト被験体由来のサンプルを本発明の抗体と接触させることを含み得る。該方法は、抗体がインフルエンザウイルスA型のグループ1のHA2タンパク質に結合するか否かに基づき、ヒト被験体におけるインフルエンザウイルスA型のグループ1の有無を検出することを更に含み得る。
<本発明の抗体を有効成分とする医薬組成物>
本発明は、本発明の抗体を有効成分とする医薬組成物(本発明の抗体と、薬理学的に許容可能な担体とを含有する医薬組成物)を提供する。本発明は、本発明の抗体を備える、インフルエンザウイルスA型のグループ1の予防、治療及び検出の少なくとも1つのためのキットを更に提供する。該キットは医薬組成物及び/又は1つ若しくは複数の付加的なインフルエンザウイルス拮抗薬若しくは他の拮抗薬を備え得る。
正確な製剤設計、投与経路及び投与量は、患者の状態を鑑みて個々の医師が選択することができる(例えばFingl et. al.,in The Pharmacological Basis of Therapeutics,1975,Ch.1 p.I.を参照されたい)。担当医は毒性又は臓器機能不全に起因して、投与の終了、中断又は調整の時期を決定することができる。反対に担当医は、臨床応答が毒性の起こらない不十分なものであった場合に、治療をより高いレベルに調整することもできる。対象の障害の管理における投与用量(magnitude of an administrated dose)は治療対象の障害の重症度及び投与経路によって変わる。障害の重症度は、例えば標準的な予後評価法によって一部評価することができる。用量及び投与頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答に従って変えることができる。上述されるものと同等のプログラムを獣医学において使用することができる。
本発明の実施に対して開示された本明細書の化合物を全身投与に適した剤形(dosages)で配合するのに薬学的に許容可能な担体を使用することは本発明の範囲内である。適切な担体の選択及び好適な製造の実施によって、本発明に関連する組成物、特に溶液として配合されるものを静脈注射等により非経口投与することができる。該化合物は、当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体を用いて、経口投与に適した剤形で容易に配合することができる。かかる担体によって、本発明に関連する化合物を、治療対象の患者による経口摂取のために錠剤、丸薬、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、錠剤、糖衣錠、溶液剤、懸濁剤等として配合することが可能となる。
治療剤は、時間及び体内の場所に応じた、投与した体内への放出の制御が可能となるようにデポ形態で調製することができる(例えば米国特許第4,450,150号を参照されたい)。デポ形態の治療剤は、例えば治療剤と、ポリマー等の多孔質又は非多孔質の材料とを含有する埋め込み型組成物とすることができ、ここでは治療剤が該材料によってカプセル封入されているか、又は該材料にわたって及び/又は非多孔質材料の分解によって分散されている。次いでデポ剤を体内の所望の場所に埋め込み、治療剤を所定の速度でインプラントから放出させる。
本発明で使用される治療剤は、担体と治療化合物とを含有する医薬組成物等の組成物として形成することができる。治療剤を含有する医薬組成物には、2つ以上の治療剤が含まれていてもよい。代替的に、医薬組成物は治療剤を他の薬学的に活性な作用物質又は薬物とともに含有していてもよい。
担体は任意の好適な担体であり得る。例えば、担体は薬学的に許容可能な担体であり得る。医薬組成物に関して、担体は溶解性及び活性化合物(複数の場合もあり)に対する反応性の喪失等の物理化学的性質(considerations)、並びに投与経路を考慮して慣例的に使用されるもののいずれであってもよい。下記の医薬組成物に加えて又はその代わりに、本発明の方法の治療化合物をシクロデキストリン包接錯体等の包接錯体又はリポソームとして配合することができる。
本明細書に記載の薬学的に許容可能な担体、例えばビヒクル、アジュバント、賦形剤及び希釈剤は当業者に既知であり、一般に容易に入手可能である。薬学的に許容可能な担体は、活性剤(複数の場合もあり)に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有しないものであり得る。担体の選択は、特定の治療剤、及び治療化合物を投与するのに使用される特定の方法によって一部行うことができる。本発明の医薬組成物の多様な好適な配合物が存在する。経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、皮下投与、経皮投与、経粘膜投与、腸内投与、髄内注射、直接心室内投与、静脈内投与、鼻腔内投与、眼内投与、筋肉内投与、動脈内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、直腸投与及び膣内投与用の下記配合物は例示的なものであり、これらに限定されるものでは決してない。2つ以上の経路を、治療剤を投与するのに使用することができ、場合によっては、特定の経路によって、別の経路よりも迅速かつ効果的な応答がもたらされてもよい。治療対象の特定の障害に応じて、かかる作用物質を配合して、全身又は局所投与することができる。配合法及び投与法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton, Pa.(1990)に見ることができる。
経口投与に適した配合物は、(a)液体溶液、例えば水、生理食塩水又はオレンジジュース等の希釈剤に溶解させた有効量の阻害剤、(b)それぞれが固体又は顆粒として所定量の活性成分を含有する、カプセル剤、サシェ剤、錠剤、ロゼンジ剤及びトローチ剤、(c)粉末剤、(d)適切な液体の懸濁液、並びに(e)好適なエマルションを含み得る。液体配合物は、薬学的に許容可能な界面活性剤が添加された又は添加されていない、水並びにアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコール等の希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば界面活性剤、滑沢剤、並びにラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性フィラーを含有する、通常の硬殻又は軟殻ゼラチン型のものであり得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、並びに他の薬理学的に相溶性の賦形剤の内の1つ又は複数を含み得る。ロゼンジ形態は、風味剤、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント中に阻害剤と、不活性基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア、エマルション、ゲル等に阻害剤を含有する芳香錠とを含むことができ、さらに加えて当該技術分野で知られるような賦形剤を含むことができる。
口腔に使用することができる医薬製剤としては、ゼラチンでできた押し込み型カプセル、及びゼラチンとグリセロール又はソルビトール等の可塑剤とでできた密封型軟カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトース等のフィラー、デンプン等の結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、並びに任意に安定剤と混合して活性成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性化合物は脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコール等の好適な液体中に溶解又は懸濁し得る。それに加えて、安定剤を添加してもよい。
治療剤は、単独で又は他の好適な構成成分と組み合わせて、吸入投与用のエアロゾル配合物にすることができる。これらのエアロゾル配合物を、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の許容可能な高圧ガスに組み入れることができる。これらのエアロゾル配合物を、ネブライザ又はアトマイザ内のように非加圧製剤用の医薬品として配合することもできる。かかる噴霧配合物を粘膜へと噴霧するのに使用することもできる。局所配合物は当業者にとって既知である。かかる配合物は、本発明では皮膚への塗布に特に適している。
注射用配合物は本発明に準拠するものである。注射用組成物に効果的な医薬担体のパラメータは、当業者にとって既知である(例えばPharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel,4th ed.,pages 622 630(1986)を参照されたい)。注射では、本発明の作用物質を、水溶液中で、好ましくはハンクス液、リンガー液、又は生理食塩緩衝液等の生理学的に相溶性の緩衝液中で配合することができる。かかる経粘膜投与では、障壁に浸透するのに適した浸透剤を配合物に使用する。かかる浸透剤は当該技術分野において一般的に知られている。
非経口投与に適した配合物には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び溶質を含有し得る、配合物を対象となるレシピエントの血液に対して等張にする水性及び非水性の等張滅菌注射溶液と、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含み得る、水性及び非水性の滅菌懸濁液とが含まれ得る。治療剤を、薬学的に許容可能な界面活性剤、例えば石鹸若しくは洗浄剤、懸濁化剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース、又は乳化剤、及び他の薬学的アジュバントを添加して又は添加せずに、医薬担体中の生理学的に許容可能な希釈剤、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、アルコール、例えばエタノール若しくはヘキサデシルアルコール、グリコール、例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)400、グリセロール、ジメチルスルホキシド、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール等のケタール、エーテル、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドを含む、滅菌液又は液体混合物中で投与することができる。
非経口配合物に使用することができる油としては、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン(petrolatum)及び鉱油が挙げられる。非経口配合物での使用に適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが、好適な脂肪酸エステルの例である。
非経口配合物での使用に適した石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な洗浄剤としては、(a)例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド等のカチオン性洗浄剤と、(b)例えばアルキル、アリール及びオレフィンのスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリドの硫酸塩、並びにスルホコハク酸塩等のアニオン性洗浄剤と、(c)例えば脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー等の非イオン性洗浄剤と、(d)例えばアルキル−β−アミノプロピオネート及び2−アルキル−イミダゾリン第四級アンモニウム塩等の両親媒性洗浄剤と、(e)それらの混合物とが挙げられる。
非経口配合物は、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の薬物を含有し得る。防腐剤及び緩衝液を使用することができる。注射部位の炎症を最小限に抑える又は取り除くために、かかる組成物に、親水性親油性バランス(HLB)が約12〜約17の1つ又は複数の非イオン性界面活性剤が含有されていてもよい。かかる配合物中の界面活性剤の量は通常、約5重量%〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンオレイン酸モノエステルと、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される、エチレンオキシドと疎水性塩基との高分子量付加物とが挙げられる。非経口配合物は、アンプル及びバイアル等の単回用量又は複数回用量の密封容器内に与えることができ、使用の直前に注射するのに滅菌液体賦形剤、例えば水を添加することしか要求されないフリーズドライ(凍結乾燥)条件下で保存することができる。即席注射溶液及び懸濁液を、先に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
治療剤を乳化基剤又は水溶性基剤等の多様な基剤と混合することによって坐剤にすることができる。膣内投与に適した配合物を、活性成分の他に当該技術分野において適切であることが知られているような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡沫又は噴霧配合物として与えることができる。
細胞内投与用の作用物質を、当業者に既知の技法を用いて投与することができる。例えば、かかる作用物質をリポソーム内にカプセル封入することができる。リポソームは水性内部を備える球状脂質二重層である。リポソーム形成時に水溶液中に存在する分子が水性内部に組み込まれる。リポソーム内容物は外部の微小環境から保護されるとともに、リポソームが細胞膜と融合することにより、細胞質へと効率的に送達される。さらにその疎水性に起因して、有機小分子を細胞内に直接投与することができる。
また、本発明の抗体をインフルエンザウイルスA型のグループ1の検出に用いる場合、本発明の抗体は、標識したものであってもよい。標識としては、例えば、上述のような、検出可能なマーカーを用いることが可能である。本発明の抗体を検査薬として調剤するには、合目的な任意の手段を採用して任意の剤型でこれを得ることができる。例えば、精製した抗体についてその抗体価を測定し、適当にPBS等で希釈した後、0.1%アジ化ナトリウム等を防腐剤として加えることができる。また、例えば、ラテックス等に本発明の抗体を吸着させたものについて抗体価を求め、適当に希釈し、防腐剤を添加して用いることもできる。
また、本発明の検査薬を構成成分として含む、インフルエンザウイルスA型のグループ1を検出するためのキットもまた、本発明に含まれる。かかるキットには、本発明の検査薬の他に、例えば、抗原抗体反応(ELISA法、免疫組織化学染色法、フローサイトメトリー等)を実施するための種々の試薬(二次抗体、発色試薬、染色試薬、緩衝液、対照標品等)、反応容器、操作器具、及び/又は説明書を含めることができる。
<アプタマー>
インフルエンザ拮抗薬はインフルエンザウイルスA型のグループ1のHAタンパク質に結合するアプタマーを含み得る。アプタマーは本発明の抗体と同じ場所/エピトープで及び/又は他の場所/エピトープでHAに結合することができる。アプタマーは核酸、RNA、DNA及びアミノ酸の内の1つ又は複数を含有することができる。アプタマーは任意の好適な技法又はプロトコルを用いて選択及び作製することができる。例えば、18ヌクレオチド長〜50ヌクレオチド長の範囲の可変領域を有するオリゴヌクレオチドライブラリをランオフ転写反応の鋳型として使用して、RNAアプタマーのランダムプールを作製することができる。次いでこのアプタマープールを非複合体形成マトリクスに暴露して、非特異的な相互作用種を除去することができる。その後残存プールを、固定化した標的とともにインキュベートする。このプールにおけるアプタマー種の大部分は低い親和性を有し、マトリクスに結合したより小さく、より特異的なプールを残して標的を洗い流すことができる。次いでこのプールを溶出して、沈殿させ、逆転写して、ランオフ転写の鋳型として使用することができる。5回の選別後、クローニング及びシークエンシングするアリコートを取り出すことができる。同様の配列が再現性をもって回収されるまで、選別を継続することができる。
アプタマー作製を、ビーズベースの選別システムを用いて行うことができる。このプロセスでは、各ビーズが、天然ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドとで構成される同一の配列を有するアプタマー群でコーティングされているビーズのライブラリを作製する。100000000を超える固有の配列を含有し得るこのビーズライブラリを、蛍光色素等のタグと複合体形成する、血球凝集素(HA)タンパク質又はその一部、例えば細胞外ドメインに対応するペプチドとインキュベートすることができる。洗浄後、最大の結合親和性を示すビーズを単離することができ、続く合成のためにアプタマー配列を決定することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、本発明の抗体を取得するための材料及び方法、並びに取得した抗体についての評価方法を以下に示す。
<ヒトモノクローナル抗体(HuMAb)の調製>
抗インフルエンザウイルス抗体 HuMAbを産生するハイブリドーマを、フュージョンパートナー細胞であるSPYMEG(医学生物学研究所社製)を用いて作製した(Yasugi M,Kubota−Koketsu R,Yamashita A,Kawashita N,Du A,et al.(2013)Human monoclonal antibodies broadly neutralizing against influenza B virus.PLoS Pathog 9:e1003150.、及び、Yasugi M,Kubota−Koketsu R,Yamashita A,Kawashita N,Du A,et al.(2013)Emerging antigenic variants at the antigenic site Sb in pandemic(H1N1)2009 influenza virus in Japan detected by a human monoclonal antibody.PLoS One 8:e77892.参照)。
すなわち先ず、2009年10月にH1N1pdmに感染した患者から血液を取得した。なお、当該患者は、H1N1pdm由来のNPタンパク質を迅速に検出する、プライムチェックFlu(H1N1)2009(アルフレッサファーマ株式会社製)によって迅速に診断された患者である(Mizuike R,Sasaki T,Baba K,Iwamoto H,Shiba Y,et al.(2011)Development of two types of rapid diagnostic test kits to detect the hemagglutinin or nucleoprotein of the swine−origin pandemic influenza A virus H1N1. Clin Vaccine Immunol 18:494−499.、及び、Sasaki T,Kubota−Koketsu R,Takei M,Hagihara T,Iwamoto S,et al.(2012)Reliability of a newly−developed immunochromatography diagnostic kit for pandemic influenza A/H1N1pdm virus:Implications for drug administration.PLoS One 7:e50670.参照)。そして、末梢血単核血球(PBMC)を、発症後3、9、16及び23日目に採取した血液から、Ficoll−Paque Plus(GEHealthcare社製)を用いて、密度勾配遠心分離法により回収した、得られたPBMCは、ポリエチレングリコール♯1500(Roche社製)を用いて、SPYMEG細胞と融合させた。次いで、得られた融合細胞を、15%ウシ胎児血清及びピポキサンチン‐アミノプテリン‐チミジンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen社製)にて選択的に培養した。
次に、インフルエンザウイルスに対して特異的な抗体をスクリーニングするために、先ず免疫蛍光アッセイ(IFA)を行った。そして、得られた特異的MAb陽性細胞を限界希釈し、さらにIFAにより第2のスクリーニングを行うことにより、クローニングした。次いで、各ウェルあたりIFA陽性であった単一コロニーから採取したハイブリドーマ細胞を、ハイブリドーマ−SFM(Invitrogen社製)にて拡大培養した。
そして、100mlのハイブリドーマ培養上清から、ハイトラップ プロテインG HPカラム(GE Healthcare社製)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、MAbを精製した。次いで、スライド−A−ライザー透析カセット(Thermo Scientific社製)を用いて、PBSに透析した。なお、コントロールIgGとして、デング熱ウイルス血清型2を感染させた患者のPBMC由来のD23−1B3B9 HuMAbを用いた。
<ウイルス>
本実施例においては、6種のインフルエンザウイルスA型 H1N1pdm分離株(A/Suita/1/2009,A/Osaka/168/2009,A/California/07/2009,A/Suita/117/2011,A/Suita/104/2011,A/Suita/105/2011)、2種のインフルエンザウイルスA型 H1N1sea分離株(A/Brisbane/59/2007,A/PR8/1934)、1種のインフルエンザウイルスA型 H2N2分離株(A/Izumi/5/1965)、2種のインフルエンザウイルスA型 H3N2分離株(A/Aichi/2/1968,A/Uruguay/716/2007)、2種のインフルエンザウイルスA型 H5N1分離株(A/Duck/Egypt/DIBr12/2007,A/Chicken/Egypt/RIMD12−3/2008)、1種のインフルエンザウイルスA型 H7N7分離株(A/Tufted dunk/Shimane/124R/1980)、1種のインフルエンザウイルスA型 H9N2分離(A/Turkey/Wisconsin/1/1966)及び2種のインフルエンザウイルスB型分離株(B/Florida/4/2006,B/Malaysia/2506/04)を用いた。
また、本実施例において用いたウィルス株において、日本の大阪府吹田市(Suita)にて分離された株は、大阪大学微生物病研究所にて分離され、保管されている株である。また、A/Osaka/168/2009は、大阪府立公衆衛生研究所から譲り受けた株である。その他は、国立感染症研究所(日本)及びATCCより入手した株である。また、いずれの株も、当業者であれば、各機関に問い合わせることで入手することは可能である。
ウイルスは、MDCK細胞又は9日齢の孵化トリ卵にて増殖した。また、感染能に関し、フォーカス形成アッセイにて力価測定を行った。すなわち、96ウェプレートにて、連続的に10倍段階希釈したウイルスをMDCK細胞と共に37℃にて1時間培養した。そして、37℃にて12時間PBSにてインキュベーションすることにより細胞を洗浄した。次いで、細胞を固定し、インフルエンザA株に対する抗体C43(Okuno Y,Isegawa Y,Sasao F, Ueda S(1993) A common neutralizing epitope conserved between the hemagglutinins of influenza A virus H1 and H2 strains.J Virol 67:2552−2558 参照)及びインフルエンザA株に対する抗体5A7(Yasugi M,Kubota−Koketsu R,Yamashita A,Kawashita N,Du A,et al.(2013) Human monoclonal antibodies broadly neutralizing against influenza B virus.PLoS Pathog 9:e1003150. 参照)をプローブとして用い、IFAに供した。感染細胞は、4%ホルムアルデヒド含有PBSにおいて、20分間室温にて固定した。そして、適切に希釈した抗体又はハイブリドーマ培養上清において37℃にて1時間処理することにより反応させ、次いで、FITC結合抗ヒトIgGと共に37℃にて45分間インキュベーションした。
<ウェスタンブロッティング>
感染細胞又は遺伝子導入細胞を、βメルカプトエタノールの存在下又は非存在下にて、ローディングバッファーに回収した。そして、電気泳動し、PVDFメンブレンにブロットした。次に、ハイブリドーマ培養上清をプローブとして、前記PVDFメンブレンと共に37℃にて1時間培養し、次いで、HRP結合抗ヒトIgGと共に37℃にて1時間インキュベーションした。
<フォーカス形成アッセイ>
96ウェプレートにて、連続的に10倍段階希釈したウイルスをMDCK細胞と共に37℃にて1時間培養した。そして、37℃にて12時間PBSにてインキュベーションすることにより細胞を洗浄した。次いで、細胞を固定し、IFAに供した。そして、得られたフォーカス形成ユニット(FFU)を感染能とした。
<VNアッセイ>
VN試験は、Okuno Y,Tanaka K,Baba K,Maeda A,Kunita N,et al.(1990)Rapid focus reduction neutralization test of influenza A and B viruses in microtiter system.J Clin Microbiol 28:1308−1313.に記載の方法に若干の改良を加えて行った。すなわち、100μg/mlのHuMAbを最少必須培地(MEM、Life Technologies社製)にて連続的に2倍段階希釈し、200FFUのウイルスと共に37℃にて1時間培養した。そして、このようにして調製したウイルス及び抗体混合物を、37℃にて1時間インキュベーションすることにより、MDCK細胞に吸着させた。16時間のインキュベーション後、細胞を固定し、IFAに供した。ウイルス感染を50%に抑える抗体の濃度を、VN50として評価し、代表的なVN力価として用いた。
<HIアッセイ>
先ず、ウイルス力価を血球凝集反応アッセイにて測定した。すなわち、ウイルスをPBSにて連続的に2倍段階希釈し、0.7%(v/v)ヒトO型赤血球細胞と混合した。室温にて1時間インキュベーションした後、血球凝集単位(HAU)を算出した。次に、HI力価測定は以下のようにして行った。100μg/mlのHuMAbを連続的に2倍段階希釈し、50μlあたり8HAUのウイルスサンプルに混合した。37℃にて1時間インキュベーションした後、前記混合物を更に0.7%(v/v)ヒト赤血球細胞と共に、室温にて1時間インキュベーションした。そして、血球凝集を完全に阻害するHuMAbの最低濃度を、HI力価とした。
<融合阻害アッセイ>
細胞間の融合についてのアッセイは、Whittle JR,Zhang R,Khurana S,King LR,Manischewitz J,et al.(2011)Broadly neutralizing human antibody that recognizes the receptor−binding pocket of influenza virus hemagglutinin.Proc Natl Acad Sci USA 108:14216−14221.に記載の方法により行った。
すなわち、サル腎臓細胞株CV−1細胞に、A/Suita/1/2009を1.6MOIにて感染させた。そして、4%ウシ血清アルブミン(BSA)及び2.5μg/mlアセチル化トリプシン(Sigma社製)を添加したMEMにて24時間培養した後、MEMにて細胞を洗浄した。洗浄後、希釈HuMAbと共に30分間インキュベーションした。その後、細胞をPBS(pH5.5)にて37℃5分間処理した。洗浄により培地を完全に除いた後、細胞を3時間インキュベーションした。そして、細胞を純粋なメタノールにて固定し、ギムザ(Wako社製)にて染色した。
<エスケープ変異の選択>
Yasugi M,Kubota−Koketsu R,Yamashita A,Kawashita N,Du A,et al.(2013) Human monoclonal antibodies broadly neutralizing against influenza B virus.PLoS Pathog 9:e1003150.に記載の方法を若干改良して、HuMAbの存在下、A/Suita/1/2009を培養することによって、エスケープ変異を選択した。
すなわち、MDCK細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり30000細胞となるよう播種し、16時間培養した。次に、ウイルス(100FFU/ml)及び連続的に10倍段階希釈したHuMAb(0.0025,0.025,0.25及び2.5μg/ml)を混合し、37℃にて1時間インキュベーションした。そして、この混合物をMDCK細胞と反応させた。37℃にて1時間反応させた後、細胞をPBSにて洗浄し、0.4%ウシ血清アルブミン(BSA)、抗生物質及び2μg/mlアセチル化トリプシンを添加したDMEM/F−12+GlutaMAX−I 200μlを補充した。このようにして感染させてから72時間後、上清を回収して保存した。また、全てのウイルスのストックについて力価を測定し、新たに細胞を感染させるために用いた。そして、10代継代した後、培養上清中の混合群から、HA遺伝子の全長をダイレクトシークエンシングした。
<ダイレクトシークエンシング解析>
ウイルスのRNAは、QIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen社製)を用いて抽出し、下記HAプライマーセットを用いたワンステップRT−PCR(高忠実度プラチナTaqを備えたスーパースクリプトIIIワンステップRT−PCRシステム、Invitrogen社製)に供した。
フォワード:5’−TATTCGTCTCAGGGAGCAAAAGCAGGGG−3’(配列番号:43)
リバース:5’−ATATCGTCTCGTATTAGTAGAAACAAGGGTGTTTT−3’ (配列番号:44)。
得られたPCR産物はQiaクイックPCR精製キット(Qiagen社製)を用いて精製した。電気泳動後、分離したバンドをQiaクイックゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いて回収し、シークエンシング解析に供した。
<HuMAbの可変領域のシークエンシング>
トータルRNAをRNaseミニキット(Qiagen社製)を用いてハイブリドーマから回収し、オリゴ(dt)プライマー及びプライムスクリプトRT試薬キット(Takara社製)を用いたRT−PCRに供した。そして、HuMAbの重鎖及び軽鎖をコードする領域は、下記プライマーを用いたPCRにて増幅した。
5’−ATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGGTT−3’(重鎖フォワード、配列番号:45)及び5’−CTCCCGCGGCTTTGTCTTGGCATTA−3’(重鎖リバース、配列番号:46)、
5’−ATGGCCTGGRYCYCMYTCYWCCTM−3’(軽鎖フォワード、配列番号:47)及び5’−TGGCAGCTGTAGCTTCTGTGGGACT−3’(軽鎖リバース、配列番号:48)。
得られたPCR産物はQiaクイックPCR精製キット(Qiagen社製).を用いて精製した。電気泳動後、分離したバンドをQiaクイックゲル抽出キット(Qiagen社製)を用いて回収した。そして、それらの配列をBigDyeターミネーターv3.1サイクルシークエンシングキット及びABIプリズム3100ジェネテックアナライザー(Applied Biosystems社製)を用いて分析した。次いで、得られた配列を分析し、IgBLAST ソフトウェアを備えたNCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)での検索に供した。
<HAプラスミドの構築>
A/Suita/1/2009株のHA遺伝子はワンステップRT―PCRにて増幅し、pGEM−T Easyベクター(Promega社製)に挿入した。
野生型及びアミノ酸置換を加えた変異体のHA遺伝子は、pGEM−Teasyに挿入されたHA遺伝子を鋳型として、標準PCR(エクスパンド高忠実プラスPCRシステム、Roche社製)及び部位特異的変異導入PCR(ジーンテイラー部位特異的変異導入システム、Invitrogen社製)を各々用いて調製した。
各遺伝子は、発現ベクターpCAG PM2にサブクローニングした。そして、得られた発現プラスミドを、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用い、その添付の説明書に従って、ヒト腎臓由来の293T細胞に導入した。
<遺伝的解析>
インフルエンザウイルスA型全ての配列(全長、非重複、非研究用)は、NCBIインフルエンザウイルスリソース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html)よりダウンロードした。
ダウンロードした時点(2013年6月5日)で、データベースには16種全てのインフルエンザウイルスA型の配列は296197個あった。そして、8898個のパンデミックH1N1の配列、4378個の季節性H1N1の配列、2993個のH5の配列、995個のH9の配列は、BioEditプログラムを用いて、アライメントをかけた。
<IgGアイソタイピング>
ELISA用マイクロプレート(MaxiSorp、Nunc社製)に、ヤギ由来の抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories社製)を含有する0.05M 重炭酸ナトリウムバッファー(pH8.6)を添加し、4℃にて一晩かけインキュベーションし、該抗体にてプレートをコートした。次いで、0,1%Tween20を含むPBSにて洗浄した後、0.5%BSA含有PBSを添加し、37℃にて1時間インキュベーションすることにより、ブロッキング処理を施した。再度洗浄した後、ハイブリドーマの培養上清又はコントロールの血清を添加し、37℃にて2時間インキュベーションした。さらに洗浄した後、HRP結合抗IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4(SouthernBiotech社製)を添加し、37℃にて1時間インキュベーションした。次いで、5回洗浄した後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジンペルオキシダーゼの基質(KPL)を添加し、暗所にて室温下インキュベーションした。その20分後、2Nの硫酸溶液を添加して反応を停止させた。そして、発色現象をELISA光度計(Biotek ELISA リーダー、Biotek社製)にて波長450nmにおける吸光度として評価した。なお、全てのサンプルに対して3回ずつ解析を行った。
〈分子モデリング〉
A/Suita/1/2009及びA/California/07/2009の結晶構造に基づき、Cn3D及びPyMolを用いて、HAタンパク質の構造を構築した。
<プロテアーゼ感受性アッセイ>
バキュロウイルスにて発現させた不溶性H1 HA(A/Suita/1/2009由来)0.6μgを、融合後のHA凝集を防ぐために、250mMイミダゾール5mlと共にインキュベーションした。そして、各チューブあたり100μlになるよう4本のチューブに分注した。これらチューブに、900μlのプロテアーゼバッファー(250mMイミダゾール、20μg/ml トリプシン−EDTA、pH5.3)を添加し、37℃にて1時間インキュベーションした。インキュベーション後、混合物を遠心処理し、回収したペレットをウェスタンブロッティングに供した。このウェスタンブロッティングにおいて、一次抗体としてHuMAb 1H11、2H5及び5G2、そしてコントロールとしてH1N1pdmの頭部領域に結合するHuMAb 5E4を用いた。また、二次抗体としてHRP結合抗ヒトIgGを用いた。
<トリプシン切断に対する阻害アッセイ>
バキュロウイルスにて発現させた不溶性H1 HA(A/Suita/1/2009由来)0.6μgを250mMイミダゾール5mlと共にインキュベーションした。そして、各チューブあたり100μlになるよう4本のチューブに分注した。1のチューブはコントロールとして用い、6μgの5E4及び900μlのプロテアーゼバッファー(250mMイミダゾール、20μg/mlトリプシン−EDTA、pH5.3)を更に添加した。
残り3本の各チューブには、HuMAb(1H11、2H5又は5G2)を900mlのプロテアーゼバッファーと共に添加し、混合した。そして、37℃にて1時間反応させた。インキュベーション後、反応物を遠心処理し、回収したペレットをウェスタンブロッティングによる試験に供した。このウェスタンブロッティングにおいて、一次抗体として5E4を用いた。また、二次抗体としてHRP結合抗ヒトIgGを用いた。
<エピトープについての解析>
各HuMAbのエピトープ領域は、Przybylskiの方法(Macht M,Marquardt A,Deininger SO,Damoc E, Koh;mann M,et al.(2004)“Affinity−proteomics”:direct protein identification from biological material using mass spectrometric epitope mapping.Anal Bioanal Chem 378:1102−1111.)に従い、プロテアーゼ処理後の質量分析によって分析した。
すなわち、ハイトラップNHS活性化HPカラムにHuMAbを加えることにより、HuMAb固定カラムを調製した。2μg/ml組み換えHA(A/California/07/2009由来)(Protein Sciences社製)をカラムに通し、PBSにて洗浄した後、0.1mg/ml修飾トリプシン(Promega社製)を加え、37℃にて2時間インキュベーションした。PBSにて洗浄後、続いて超純水を通し、HuMAbに結合させたペプチド断片を0.1%トリフルオロ酢酸にて溶出させた。抽出物を濃縮し、MALDI ToF MSにてペプチド断片について解析した。
<エピトープ配列の調製>
インフルエンザの配列及び配列情報のファイル(各々、influenza.faa及びinfluenza_aa.dat,)は、インフルエンザウィルズリソース(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/genomes/INFLUENZA)より、2013年8月24日にダウンロードした。エピトープ領域は、blastpサーチを用い、ヘマグルチニン(HA)の完全配列から、E−valueのカットオフ値を1e−3として探索した(Altschul SF,Madden TL,Schaffer AA,Zhang J,Zhang Z,et al.(1997) Gapped BLAST and PSI−BLAST: a new generation of protein database search programs.Nucleic Acids Res 25:3389−3402 参照)。5アミノ酸以上のC末又はN末において類似性を示さなかった相同領域は、以降の解析において除外した。また、トリ、ヒト及びブタ由来のH1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N9及びH9N2の配列をinfluenza_aa.dat.に記載の情報に基づき選択した。
<H1N1pdm(2009)及び季節性H1N1の配列>
データベースからH1N1pdm(2009)及び季節性H1N1の配列を選択するため、H1N1 HAのアミノ酸全長、並びにJTTマトリックスベースドモデルに基づく最尤法(Jones DT,Taylor WR,Thornton JM(1992) The rapid generation of mutation data matrices from protein sequences.Com Appl Biosci 8:275−282.)を利用して、系統樹を構築した。なお、ギャップ及び欠失データを含む全位置は除外した。また、進化解析はMEGA5により行った(Tamura K,Peterson D,Peterson N,Stecher G,Nei M,et al.(2011) MEGA5:Molecular evolutionary genetics analysis using maximum likelihood, evolutionary distance, and maximum parsimony methods. Mol Biolo Evol 28:2731−2739. 参照)。
系統発生解析のための配列セットは、uclustプログラムにより1の代表配列との同一性が99%以上である非重複配列に置き換えることによって調製した。構築した系統樹から、2009年以降に採取されたヒトH1N1 HA配列を最も多く含む1の枝を、H1N1pdm(2009)株とみなした。そして、ヒトを宿主とするH1N1pdm(2009)株の配列及び99%の同一性を示す配列を、H1N1pdm(2009) HAの配列として用いた。同様に、季節性のHA配列セットは、2009年よりも前のヒトH1N1配列を最も多く含む1の枝から選択した。
<配列についての集団解析>
2009年、2010年、2011年、2012年及び2013年にヒトから採取したH1N1pdm、ヒトから採取したH1N1sea、H3N2、H2N2、H5N1、H7N9及びH9N2、トリから採取したH9N2、並びにブタから採取したH3N2に関し、エピトープの固有配列数を計測した。
以上の方法によって得られた結果を以下に示す。
(実施例1)
<インフルエンザウイルスA型に対するHuMAb(ヒトモノクローナル抗体)の作製>
インフルエンザ患者から、インフルエンザ発症から2、9、16及び23日目に採血し、それらの血液から末梢血単核細胞(PBMC)を調製した。なお、その患者はHIN1pdmに感染していたと診断されている。そして、前記PBMCをフュージョンパートナー細胞であるSPYMEGと融合させ、ハイブリドーマを調製した。
次に、調製したハイブリドーマに関し、免疫蛍光アッセイ(IFA)により、インフルエンザウイルスに特異的な抗体を産生する細胞を選抜した。次いで、特異的な抗体を有していると判定されたウェル上のハイブリドーマを限界希釈し、単一クローンとした。
以上の結果、発症後9日目の血液からは1H11及び5G2、発症後23日目の血液からは2H5、計3種のインフルエンザウイルスA型に対するHuMAbを産生するハイブリドーマを樹立することができた。
次に、H1N1pdm2009年分離株、H1N1pdm2011年分離株、H1N1sea分離株、H5N1分離株、H9N2分離株、H2N2分離株又はH3N2分離株を感染させた、マディン−ダービー−イヌ腎臓(MDCK)細胞を用い、前記3種のHuMAbのインフルエンザウイルスA型に対する交差反応性について試験した。得られた結果を表1に示す。なお、インフルエンザウイルスA型のNPに対するマウスモノクローナル抗体C43(Okuno Y,Isegawa Y,Sasao F,Ueda S(1993) A common neutralizing epitope conserved between the hemagglutinins of influenza A virus H1 and H2 strains.J Virol 67:2552−2558 参照)及びPBSは、各々陽性対照及び陰性対照として用いた。また、インフルエンザウィルスB型のヘマグルチニン(HA)タンパク質に対して、広域な反応性を示す抗体 5A7をコントロールとして用いた。
なお、表中の「nd」は未分析(not detemined)であることを示す(表3においても同じ)。
表1に示した結果から明らかなように、前記3種のHuMAb全て、H1N1pdm、H1N1sea、H5N1及びH9N2に対して反応性を示した。しかし、H2N2、H3N2、H7N7及びインフルエンザウイルスB型に対してはいずれも反応性を示さなかった。また、IFAによる染色パターンから、前記3種のHuMAbは、インフルエンザウイルスにおいて、そのHAタンパク質を認識していることが示唆される。
そこで、各HuMAbのH1N1pdmタイプのHAタンパク質に対する反応性を確認すべく、A/Suita/1/2009由来のHAタンパク質をコードするプラスミドが導入された293T細胞に対し、IFAを行った。その結果、図1に示す通り、前記3種のHuMab全て、293T細胞内のH1N1pdmのHAと反応していることが明らかになった。
また、前記3種のHuMAbについてアイソタイプを判定した結果、これら全てののHuMAbはIgG1であることが明らかになった(表2 参照)。さらに、HuMab3種のVH及びVL領域についてシークエンシング解析を行った結果、生殖細胞系列の重鎖IGVH1−69、IGDH3−10IGJH及びIGJH6同様の配列を有していることが明らかになった(図2〜4及び表2 参照)。
(実施例2)
<HuMAbの中和活性>
次に、前記3種のHuMAbについて、インビトロでのウイルス中和(VN)アッセイにより、インフルエンザウイルスに対する中和能を評価した。すなわち先ず、様々な濃度の抗体にて前処理したMDCK細胞に、H1N1pdm(2009又は2011分離株)、H1N1sea又はH9N2を感染させた。そして、感染した細胞の数を、免疫蛍光染色により計測することにより、前記3種のHuMAbの中和能を評価した。得られた結果を図5及び表1に示す。なお、本VNアッセイにおいて、デング熱ウイルスにグローバルな中和活性を示すHuMAbとして近年調製されたD23−1G7C2を陰性対照として用いた。
図5及び表1に示した結果から明らかなように、H1N1pdm、H1N1sea及びH5N1に対し、前記3種全てのHuMAbを中和活性を示した。
さらに、HuMAb 1H11及び5G2は、H9N2を中和することもできたが、HuMAb 2H5はH9N2を中和することができなかった。また、H9N2に対する中和活性は、HuMAb 1H11及び5G2の高濃度においてのみ見出された(図5)。
また、H1N1pdmに対し、前記3種全てのHuMAbにおける濃度に応じた中和プロファイルは同様のものであった。しかしながら、中和活性、特にそれらHuMAbの低濃度においては、2009年分離株と比較して、2011年分離株に対する中和活性は劣るものであった(図5及び表1)。
また、H1N1及びH5N1に対する前記HuMabの推定VN50は、H1N1pdm2011年分離株に対するそれらと同様であった(表1 参照)。しかしながら、低濃度範囲においては、前記HuMAb3種いずれのH1N1pdm2011年分離株、H1N1sea及びH5N1に対する中和プロファイルはかなり異なるものであった。
次に、前記3種のHuMabによる中和メカニズムを明らかにするため、ヘマグルチニン阻害(HI)及び融合阻害のアッセイを行った。得られた結果を表3に示す。また、融合阻害のアッセイに関しては、図6にも結果を示す。なお、コントロールとして、グループ1に属するHAに対して広域反応性を示すマウスMAbC179(Okuno Y,Isegawa Y,Sasao F,Ueda S(1993) A common neutralizing epitope conserved between the hemagglutinins of influenza A virus H1 and H2 strains.J Virol 67:2552−2558 参照)を用いた。また、陰性対照として前記D23−1G7C2を用いた。
なお、表3中、「Wt」は野生型のHAタンパク質を示す。
その結果、表3に示す通り、3種全てのHuMAbに関し、それらのHI活性は検出されなかった。
一方、融合阻害アッセイにおいては、図6及び表3に示した結果から明らかな通り、細胞と細胞との融合に対する阻害能は全ての抗体が有していることが認められていた。しかしながら、細胞間の完全に阻害するために要する抗体濃度は、5G2よりも、1H11、2H5及びC179の方が低かった。なお、陰性対照であるD23−1G7C2は、200μg/mlにおいてでさえも融合阻害活性を認められなかった。
(実施例3)
<HuMAbのエピトープマッピング>
上述の通り、前記3種のHuMAb全て、H1N1pdm由来のHAを発現させた293T細胞に対して反応性を示した(図1 参照)。そこで、これらHuMAbによって認識されるエピトープ領域のマッピングを試み、先ず、ウェスタンブロッティングにより、HA(A/Suita/1/2009)に対するHuMAbの反応性を試験した。得られた結果を図7に示す。なお、このウェスタンブロッティングにおいては、HAタンパク質の頭部領域を認識するHuMAb 5E4(Yasugi M,Kubota−Koketsu R,Yamashita A,Kawashita N,Du A,et al.(2013) Emerging antigenic variants at the antigenic site Sb in pandemic (H1N1) 2009 influenza virus in Japan detected by a human monoclonal antibody.PLoS One 8:e77892. 参照)をコントロールとして用いた。
図7に示す通り、コントロールである5E4を用いた場合には、還元条件下及び非還元条件下のいずれにおいても、HAモノマーを示す75kDaのバンドが検出された。また、前記3種全てのHuMAbは非還元条件下のみにおいてHAと反応した。しかしながら、HA1又はHA2を示す75kDa又はサブ75kDaのバンドを還元条件下において検出することはできなかった。したがって、前記3種のHuMAbのエピトープに対する反応は、構造依存的であることが想定された。
実際、前記3種のHuMAbと、H1N1pdm HAタンパク質のいくつかの断片とを用いてウェスタンブロッティングを行い、それらHA断片に対する前記3種のHuMAbの反応性を調べた結果、当該HuMAbはいずれもHA0の全長に対して反応性を示したが、調製した如何なる断片に対して反応することはなかった(図8 参照)。
次に、H1N1pdm HA0タンパク質を低pH下にてトリプシンにより処理した。そして、それらを前記3種のHuMAbを用いたウェスタンブロッティングに供した。その結果、前記3種全てのHuMAbは、HA2の3量体型(tHA2)に反応することが明らかになった(図9中のA 参照)。
次に、HA0タンパク質を、先ず前記3種のうちのいずれかのHuMAb又はコントロールとしてHAの頭部領域を認識する5E4にて処理し、その後、前記同様に低pHにてトリプシン処理した上で、5E4を用いたウェスタンブロッティングに供した。その結果、前記3種のうちのいずれかのHuMAbにて前処理したHA0においては、低pH下のトリプシン処理による、茎領域におけるHA1/HA2の切断が阻害されていることが明らかになった(図9中のB 参照)。
したがって、前記3種のHuMAbは、5E4とは異なり、HA1頭部を認識するものではなく、HA2の茎領域を認識する抗体であることが明らかになった。
さらに、前記3種のHuMAbが認識するエピトープ領域を同定するため、これらHuMAb及びHAタンパク質を、プロテアーゼ感受性アッセイに供し、プロテアーゼ処理後の質量分析によるエピトープマッピングを行った。得られた結果を図10に示す。
その結果、マスコットサーチにおいて、コントロールを除いて、3種のエピトープについて同様の結果が示された。すなわち、全ウイルスタンパク質の配列データベースにおいて、A/California/07/2009のHAタンパク質の配列と一致した。さらに、計算されたスコア閾値に基づき、よりスコアの高い67を有意と判定した(p<0.05)。そして、スコアの結果に基づき、HA2の40〜58位のアミノ酸からなる領域、すなわちA/Suita/1/200/2009 HA0の384〜402位のアミノ酸からなるポリペプチドが、前記3種のHuMAbのエピトープであることが明らかになった。なお、前記HA0タンパク質は、配列番号:26記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のN末に、シグナル配列を含む18アミノ酸を付加したタンパク質である。また、HA1及びHA2におけるアミノ酸の番号は、(Nobusawa E,Aoyama T,Kato H,Suzuki Y,Tateno Y,et al.(1991) Comparison of complete amino acid sequences and receptor−binding properties among 13 serotypes of hemagglutinins of influenza A viruses.Virology 182:475−485)の記載の通りである。
したがって、図10に示す通り、前記3種のHuMAbのエピトープは、いずれもHAタンパク質の茎領域を構成する、HA2の40〜58アミノ酸からなるαヘリックスにあることが明らかになった。
(実施例4)
<HuMAbによるエスケープ変異に対する抑制効果>
様々な濃度(0.0025〜2.5μg/ml)の前記HuMAb存在下、H1N1pdm(H1N1pdm−SU1/09)を感染させたMDCKを、連続して10代継代することにより、生じるエスケープ変異について分析した。なお、コントロールとして、H1N1pdmのHA抗原部位Sbに対するHuMAb 5E4を用いた。
図11に示した通り、1H11及び2H5共に連続して10代継代した後でさえ、エスケープ変異は生じなかった(図11)。特に、1H11においては、6代目にてH1N1pdmの細胞変性効果が消失していた。
一方、5G2及びコントロールである5E4を用いた場合には、いくつかのウェルにおいて、H1N1pdmの細胞変性効果が継続的に観察された。
そして、10代目のウェルからRNAをサンプリングし、それらRNAをRT−PCR及びそれに続くシークエンシングにより解析した結果、前記3種のHuMAbを用いた場合においては、5G2存在下で培養したいくつかのウェルを除いて、その殆どはオリジナルとしたウイルスと同じ配列であることが明らかになった。すなわち、図12に示す通り、5G2存在下で培養した10代目のウェルのインフルエンザウイルスにおいては、1アミノ酸の置換(Y86C)を伴うエスケープ変異が同定された。
また、コントロールとして5E4を用いた場合においては、以前このHuMAbに関し報告されたエスケープ変異(前記、Yasugi Mら、PLoS One、2013年、8:e77892.参照)と同様の部位が変異したものが、今回も検出された。
(実施例5)
<HuMAbが認識するエピトープ領域における配列変異>
次に、前記3種のHuMAbのエピトープ領域に対応する配列を、インフルエンザウイルスA型及びインフルエンザウイルスB型のいくつかのサブタイプ間で比較した。比較した配列の全長を図13及び14に分けて示す。また、比較した結果の概要を表4に示す。
表4に示す通り、注目すべきは、H1N1pdm2009年分離株における47位のアミノ酸はグルタミン酸であった。一方、H1N1pdm2011年分離株においては、リシンであった。このことから、前述のHuMAbのこれら分離株に対する中和活性の差を鑑みるに、当該47位のアミノ酸置換がHuMAbの中和活性に影響を与えていることが示唆される。
一方、H1N1seaにおいては、H1N1pdm2009年分離株を基準とした場合に、Asn46と共にGly47のアミノ酸置換も共通して検出された。また、H5N1及びH9N2においては、Gly47及びLys47は、各々他のいくつかの部位におけるアミノ酸置換と共に検出された。さらに、Glu47は、H3N2において大抵、他のいくつかの部位におけるアミノ酸置換と共に検出された。また、H2N2において、Gly47及びもう1つの他の置換 Phe45が同定され、前記3種のHuMAbの反応性において45位のアミノ酸が重要であることが見出された。なお、表4に示す通り、エピトープ領域の殆どにおいて、インフルエンザウイルスB型とはその配列はかなり異なっている。
インフルエンザウイルスA型に対してグローバルな中和活性を示すHuMAbに関し、HA茎領域において保存されたエピトープが報告されている(非特許文献1〜4、6及び25)。また、交差反応性を示す抗体として、HA頭部を認識する抗体も同定されている(非特許文献2、18、20〜24及び26)。
そこで、これら既存の抗体と、前記3種のHuMAbとが、エピトープにおいて共通しているか否かを解析すべく、非特許文献1〜4、6及び25に記載のHA茎領域を認識する既存の抗体が、認識することのできないHAエスケープ変異体2種(H1N1pdmHAから、Q42G、D46T、T49N及びN52Dのアミノ酸置換を伴う変異体、H1N1pdmHAから、D19N、W21F及びI45Vのアミノ酸置換を伴う変異体)を作製した。そして、これら変異体に対する前記3種のHuMAbの反応性を、ウェスタンブロッティングにより評価した。得られた結果を図15に示す。
図15に示した結果から明らかなように、既存の抗体のHAエスケープ変異2種に対し、前記3種のHuMAbの反応性が低下することはなかった。したがって、これら3種のHuMAbは、過去の報告例とは異なるエピトープを認識していることが明らかになった。
また、HA1のグループ1に対するグローバルマウス抗体(MAb)C179のエピトープも、HAの茎領域に同定されている(Dreyfus C,Laursen NS,Kwaks T,Zuijdgeest D,Khayat R,et al.(2012) highly conserved protective epitopes on influenza B viruses. Science 337:1343−1348)。また、広域中和活性を示す既存のHuMAb(CR6261、F10、CR9114及びFI6)も同様に、このHAの茎領域を認識する。そして、そのエピトープは、α−ヘリックスを含む、HA1のN末領域及びC末領域(38、40、42、291〜293及び318位のアミノ酸)、並びにHA2のN末部分(18〜21、38、41〜43、45、46、52及び56位のアミノ酸)からなる。
そこで、次に、G189R、G225D及びT318Kからなるエスケープ変異を伴うH1−SU1/89Rを用い、IFAにより、それに対する結合能を評価した。なお、この変異株と反応することができないことが明らかになっているC179を陰性対照として用いた。また、インフルエンザウイルスA型のNPに対するマウスモノクローナル抗体C43を陽性対照として用いた。得られた結果を表5に示す。
表5に示した結果から明らかなように、前記3種のHuMAbはいずれも、オリジナルである野生型(H1−SU1/89)同様に、エスケープ変異(H1−SU1/89R)に対しても反応した。したがって、HA1のグループ1に対するグローバルマウス抗体であり、HAの茎領域にエピトープが同定されているC179とも、前記3種のHuMAbはいずれも異なるエピトープに結合していることが明らかになった。また、既存の広域性中和抗体であるC179では抑制することのできない、H1−SU1/89R株に対しても、前記3種のHuMAbは結合することができ、ひいては中和活性を示すことが示唆された。
(実施例6)
<アミノ酸置換体を用いたエピトープの同定>
上述のように、45位及び47位のアミノ酸置換が前記3種のHuMAbの反応性に重要であることが明らかになったことから、それぞれの部位にアミノ酸置換を行った変異体を作製し、前記3種のHuMAbへの反応性を検討した。すなわち、H1N1pdmのHA2領域の45位のアミノ酸をイソロイシンからフェニルアラニンヘ、47位のアミノ酸をグルタミン酸からリジン又はグリシンへ、また45位のアミノ酸及び47位のアミノ酸をイソロイシンからフェニルアラニンに、グルタミン酸からグリシンに各々アミノ酸置換を行った変異体を作製し、それら変異体に対する前記3種のHuMAbの結合性を、IFAにより評価した。得られた結果を表3に示す。
その結果、陰性対照である5E4は全ての変異体に反応を示したが、前記3種のHuMAbは45位、47位に個別にアミノ酸置換を入れたものには反応を示したが、45位、47位に同時に変異を入れた場合は反応を示さなかった。
したがって、前記3種のHuMAbとHAタンパク質との結合においては、該タンパク質のHA2領域中の45位及び47位のアミノ酸が重要であることが確認された。
(実施例7)
<インフルエンザウイルスのデータベースにおけるエピトープ領域の比較>
前記3種のHuMAbが認識するエピトープ領域に関し、H1N1pdm、H1N1sea、H5N1、H9N2及びH2N2等のインフルエンザウイルスA型のグループ1、H3N2、H7N1及びH7N7等のインフルエンザウイルスA型のグループ2、並びにH7N9由来に対応するヌクレオチド配列を、NCBIのインフルエンザウイルスリソースから可能な限りダウンロードした。
その結果、利用することができたヒト感染例に由来するウイルスの配列数は、H1N1pdmに関し、2009年においてはn=6174であり、2010年においてはn=1139であり、2011年においてはn=763であり、2012年においてはn=232であり、2013年においてはn=48であった。また、H1N1seaに関してはn=1936であり、H5N1に関してはn=223であり、H9N2に関してはn=3であり、ヒトH2N2に関してはn=81であり、H3N2に関してはn=5821であり、H7N2に関してはn=1であり、H7N3に関してはn=2であり、H7N7に関してはn=4であり、H7N9に関してはn=15であった。なお、図16においては、個々のインフルエンザウイルスサブタイプの中でデータベースに由来する様々な配列において1%以上の割合を占める配列を、その割合と共に示してある。
図16に示す通り、H1N1pdmのアミノ酸配列を比較した結果、Lys47の配列は年々徐々に増加し、2010年において最大の集団となった(具体的には、2009年において13.7%、2010年において63.2%、2011年において86.1%、2012年において96.5%、2013年において100%、表6 参照)。このように、このLys47のアミノ酸変異はエスケープ変異となり得るものである。しかしながら、注目すべきは、上述の通り、このアミノ酸置換を有するインフルエンザウイルスに対しても、今回得られた3種のHuMabは中和活性を示す、有効な治療効果を奏することができる。
以上説明したように、本発明によれば、インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体を提供することが可能となる。より具体的には、季節性インフルエンザであるH1N1seaのみならず、パンデミックを引き起こしたH1N1pdm、今後パンデミックを引き起こすことが想定されるH5N1に対しても、強い中和活性を示す抗体を提供することが可能である。さらに、近年のH1N1pdmにおいて、優位な集団となったHA2タンパク質の47位のアミノ酸がリシンである変異体に対しても中和活性を示す抗体を提供することが可能である。
したがって、本発明の抗体は、インフルエンザウイルスA型のグループ1に関する感染症の治療及び予防において有用である。

Claims (11)

  1. インフルエンザウイルスA型のグループ1のH1サブタイプ及びH5サブタイプに対する中和活性を有する抗体であって、下記(a)及び(b)の特徴を有する抗体
    (a)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質のHA2領域中の40〜58位に存在するエピトープに結合する
    (b)A/Suita/1/200/2009株由来ののヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の45位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ47位のアミノ酸がグリシンに置換されているタンパク質に結合しない。
  2. 下記(c)〜(e)の特徴をさらに有する、請求項1に記載の抗体。
    (c)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の42位のアミノ酸がグリシンに置換されており、46位のアミノ酸がスレオニンに置換されており、49位のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、かつ52位のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されているタンパク質に結合する
    (d)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンタンパク質において、HA2領域中の19位のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、21位のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されており、かつ45位のアミノ酸がバリンに置換されているタンパク質に結合する
    (e)A/Suita/1/200/2009株由来のヘマグルニチンにおいて、HA1領域中の189位のアミノ酸がアルギニンに置換されており、225位のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されており、かつ318位のアミノ酸がリシンに置換されているタンパク質に結合する。
  3. 下記(i)〜(iii)のうちのいずれか一に記載の特徴を有する、請求項1又は2に記載の抗体
    (i) 配列番号:3〜5に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:8〜10に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
    (ii) 配列番号:13〜15に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:18〜20に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
    (iii) 配列番号:23〜25に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:28〜30に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する。
  4. 下記(i)〜(iii)のうちのいずれか一に記載の特徴を有する、請求項1又は2に記載の抗体
    (i) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:7に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
    (ii) 配列番号:12に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:17に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する
    (iii) 配列番号:22に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:27に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する。
  5. インフルエンザウイルスA型のグループ1のH9サブタイプに対する中和活性をさらに有する抗体である、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の抗体。
  6. 前記インフルエンザウイルスA型のグループ1を50%中和するために必要とされる抗体の濃度が、30μg/ml以下である、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の抗体。
  7. ヒト抗体である、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の抗体。
  8. 請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の抗体をコードするDNA。
  9. 請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の抗体を産生する、又は、請求項8に記載のDNAを含む、細胞。
  10. 請求項9に記載の細胞を培養し、該細胞内又はその培養液から、産生された請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の抗体を回収する工程を含む、抗体の製造方法。
  11. 請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の抗体を有効成分とする、医薬組成物。
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