JPWO2014200007A1 - 両親媒性ブロックポリマーを用いた分子集合体、及びそれを用いた物質搬送用キャリア - Google Patents

両親媒性ブロックポリマーを用いた分子集合体、及びそれを用いた物質搬送用キャリア Download PDF

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Abstract

医薬品、農薬、化粧品、食品、エレクトロニクス等の各分野において、その利用目的及び用途に応じて、種々のナノサイズの粒子径を有する分子集合体を提供する。前記種々のナノサイズの粒子径を有する分子集合体を用いた各種物質搬送用ナノキャリアを提供する。サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する非晶性疎水性ポリマーA2を含む分子集合体であって、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数の2倍を超えるものである分子集合体。

Description

本発明は、超分子化学、医工薬学連携領域、及びナノメディシンの分野に属する。本発明は、医薬品、農薬、化粧品、食品、エレクトロニクス(電池材料など)等に用いられる粒子径の小さな微粒子、例えば、ナノレベルの粒子径を有する分子集合体に関する。本発明のナノ分子集合体は、各種物質搬送用ナノキャリアとして用いることができる。
より詳しくは、本発明は、両親媒性ブロックポリマーを用いた分子集合体、及び前記分子集合体を用いた各種物質搬送用ナノキャリアに関する。前記分子集合体の大きさは、その用途及び目的に応じて制御される。さらに特別には、本発明は、両親媒性ブロックポリマーを用いた分子集合体、及び前記分子集合体を用いた薬剤又は標識剤搬送用ナノキャリアに関する。薬剤搬送用ナノキャリアは薬剤搬送システム(DDS)に用いることができ、標識剤搬送用ナノキャリアは分子イメージング用の分子プローブとして用いることができる。
特開2005−172522号公報に記載されているように、近年ナノテクノロジーへの関心が高まっており、ナノサイズ物質特有の性質を活かした新規機能性材料が開発されている。この新規機能性材料は、エネルギー、エレクトロニクス、及び医薬などの幅広い分野での応用が可能となっている。ナノテクノロジーは、なかでも、生体試料中の物質の検出、in vivo でのイメージングにおいて注目を浴びている。特に医薬の分野においては、リン脂質からなるナノ粒子であるリポソームなどが、薬剤搬送システム(ドラッグデリバリーシステム;DDS)における担体として用いられている。
医薬の分野においては、特開2005−220045号公報に記載されているように、病気の診断及び治療において、病気により生体内に引き起こされる器官・組織の形態及び機能変化を、当該病気の初期段階で、迅速かつ精密な、さらに簡便な方法で検出することが望まれる。特にがんの早期診断及び治療では、発がん初期に小さい病変部位を特定しその大きさを確定することが必要不可欠である。そのための診断方法として、内視鏡による生体検査、X線撮影、MRI及び超音波撮影などの画像診断が挙げられる。ただし、放射線を指示薬剤に使用する場合は、半減期の問題があるため、指示薬としての寿命が制限される。また、診断装置の価格も非常に高価なものとなる。
一方、蛍光や近赤外光などを用いた指示薬を使用した画像診断も挙げられる。この方法においては、指示薬自身の寿命に大きな制限が無く、診断用の測定器の価格も、放射線を利用する物ほど高価ではなくなる。さらに、光は生体を非侵襲的に診断できる手段である。
たとえば、腫瘍細胞の自家蛍光が、正常細胞の自家蛍光(450nmで励起、520nmで蛍光発生)よりも小さいことを利用した、内視鏡による自家蛍光観察法などが実用化されている。小動物を用いる場合には、化学発光を用いたがんの画像診断も行われている。化学発光とは、発光基質(ルシフェリン)が酵素(ルシフェラーゼ)の働きで酸化され不安定な過酸化物となり、次いでそれらが分解される過程で光が放出される現象である。
また、腫瘍部分に近赤外蛍光色素を集め、腫瘍部分をイメージングする近赤外蛍光撮影法も注目されている。この方法においては、励起光照射により近赤外領域に蛍光を放射する性質を持つ化合物を、造影剤として生体内に投与する。次に身体の外側から近赤外の波長である励起光を照射し、腫瘍部分に集まった蛍光造影剤から放射される蛍光を検出して、病変部位を確定するものである。その造影剤としてインドシアニングリーン誘導体を内包させたリポソームなどのナノ粒子が報告されている(特開2005−220045号公報参照)。
一方、より生体適合性が高いペプチド性のナノ粒子も知られている。例えば、特開2008−024816号公報及び米国特許出願公開US2008/0019908には、疎水性ブロックとしてポリグルタミン酸メチルエステルを有する両親媒性ブロックポリマーを用いた、ペプチドタイプのナノ粒子が開示されている。この公報には、両親媒性ブロックポリマーの鎖長を変化させることにより、ナノ粒子の粒子径を制御できることが記載されている。また、当該ナノ粒子ががん組織へ集積することを観察したことが示されている。
また、Chemistry Letters, vol.36, no.10,2007, p.1220-1221には、ポリ乳酸鎖とポリサルコシン鎖から構成される両親媒性ブロックポリマーを合成し、当該両親媒性ブロックポリマーの自己集合によって、DDSにおけるナノキャリアとしての利用可能性を有する粒径20〜200nmの分子集合体を調製したことが示されている。
国際公開第2009/148121号公報(米国特許出願公開US2011/0104056)及びバイオマテリアルズ(Biomaterials)、2009年、第30巻、p.5156−5160に、疎水性ブロックがポリ乳酸鎖、親水性ブロックがポリサルコシン鎖である直鎖型の両親媒性ブロックポリマーが、水溶液中において自己組織化し、高分子ミセル(ラクトソーム)を形成することが開示されている。ラクトソームの粒子径については、国際公開第2009/148121号公報の段落[0127]に10nm〜500nmが開示されているが、実際には、段落[0251]に30nm〜130nmが開示されているのみである。ラクトソームは、高い血中滞留性を有するほか、それまでに既に開発されていた高分子ミセルと比べて肝臓への集積量が著しく減少することが分かっている。このラクトソームは、血中に滞留している粒子径が数十〜数百nmのナノ粒子が癌疾に溜まりやすいという性質[Enhanced Permeation and Retention effect(EPR効果)]を利用することによって、癌疾部位を標的とした分子イメージング又は薬剤搬送用のナノキャリアとして適用可能である。
がん組織は正常組織よりも細胞の増殖が速く、細胞の増殖に必要な酸素やエネルギーを獲得するために、がん組織中に新生血管を誘導する。この新生血管はもろいため、ある程度大きな分子も当該血管外に漏れ出すことが知られている。さらに、がん組織では物質の排泄機構が未発達であるため、当該血管から漏れ出た分子がある程度がん組織中に滞留する。この現象がEPR効果として知られているものである。
国際公開第2012/176885号公報には、サルコシンを含む分岐した親水性ブロックと、ポリ乳酸を有する疎水性ブロックとを有する分岐型の両親媒性ブロックポリマーが、水溶液中において自己組織化し、粒径が10〜50nmの高分子ミセル(ラクトソーム)を形成することが開示されている。
特開2009−096787号公報には、血行促進剤及び生分解性高分子から構成される水分散可能なナノ粒子が開示され(請求項1,[0017])、前記ナノ粒子は疎水性の血行促進剤を内包すること([0017])、前記生分解性高分子はタンパク質であること(請求項7)、及び、前記ナノ粒子の平均粒子サイズは通常は1〜1000nm、好ましくは10〜1000nm、より好ましくは10〜500nm、特に好ましくは15〜400nmであること([0028])が開示されている。また、前記血行促進剤が、化粧品用成分、機能性食品用成分、医薬部外品用成分、又は医薬品成分であることが開示され(請求項5)、前記ナノ粒子を含む薬物送達剤が開示され(請求項13)、前記薬物送達剤は、経皮吸収剤、局所治療剤、経口治療剤、皮内注射剤、皮下、筋肉内注射剤、静脈注射剤、化粧品、医薬部外品、機能性食品、又はサプリメントとして使用されることが開示されている(請求項14)。
特開2005−172522号公報 特開2005−220045号公報 特開2008−024816号公報 米国特許出願公開US2008/0019908 WO2009/148121号公報 米国特許出願公開US2011/0104056 WO2012/176885号公報 特開2009−096787号公報
ケミストリ・レターズ (Chemistry Letters)、2007年、第36巻、第10号、p.1220−1221 バイオマテリアルズ(Biomaterials)、2009年、第30巻、p.5156−5160
内視鏡による生体検査、X線撮影、MRI及び超音波撮影などの画像診断は、それぞれ優れた特徴を有するが、被験者へ、心理的圧迫、痛みや苦痛、被爆を強いるなどの侵襲性を有する。
一方、非侵襲的な方法として、蛍光や化学発光を用いたがんの画像診断法が知られているが、特に化学発光を用いた方法は遺伝子改変を必要とするため、安全性の観点から人へ応用することは出来ない。
特開2005−220045号公報に記載された近赤外光を利用したリポソームは、血液中でマクロファージなどの免疫系の細胞に認識され排除される。そのためマクロファージ様の細胞が多く存在する肝臓や脾臓などの細網内皮系(RES)などにリポソームは捕捉され、血液中での滞留性が好適ではない。さらに、このようなリポソームは疎水部の組成が限定されるため、粒子サイズの制御が制約されるという問題もある。
特開2008−024816号公報に記載のナノ粒子は、ペプチドタイプの両親媒性ブロックポリマー(ペプトソーム)を用いている。このため、リポソームとは異なり、ナノ粒子作製の際、ペプチドタイプの両親媒性ブロックポリマーはクロロホルムなどの低沸点溶媒に溶解しない。このため、ペプチドタイプの両親媒性ブロックポリマーをトリフルオロエタノール(TFE)などに溶解させた後、水中に分散させる方法(すなわちインジェクション法)を用いてナノ粒子を作成しなければならない。しかしながら、TFE自体に毒性があるため、インジェクション法で調製したナノ粒子を生体に投与するためには、インジェクション法により用いたTFEをゲルろ過により厳密に除去する必要性が生じる。
また、同号公報には、このペプチドタイプのナノ粒子がEPR(enhancedpermeability and retention)効果によってがん組織へ集積することは示されている。しかしながら、このことは、がん組織周辺のみの蛍光観察によって判断されたものであって、例えば、同号公報において示されていないマウスの腹側からの観察を行うと、肝臓や脾臓といったがん以外の生体組織への薬剤の集積も観測される。このため、蛍光イメージングにおいては、上記組織周辺でのがん組織のイメージングが困難である。そのため、DDSに用いる場合には、患部への薬剤送達の割合が低くなる。
さらに、同号公報には、両親媒性ブロックポリマーの鎖長を変えることによって、ナノ粒子の粒子径を制御できることが記載されている。しかしながら、実際には、ブロック鎖の成分(構成単位)が同じで鎖長が互いに異なる2種類の両親媒性ブロックポリマーから、粒子径が互いに異なる2種類のナノ粒子が得られたこと、及び、ブロック鎖の成分(構成単位)及び鎖長のいずれもが互いに異なるいくつかの両親媒性ブロックポリマーから、粒子径が互いに異なるいくつかのナノ粒子が得られたことが証明されたに過ぎない。すなわち、両親媒性ブロックポリマーに関する物理量と、ナノ粒子の粒子径との対応関係は開示も示唆もされていない。このため、同号公報に記載の発明においては、粒子径を連続的に制御することができない。
Chemistry Letters, vol.36, no.10, 2007,p.1220-1221には、ポリ乳酸鎖を含む分子集合体として、DDSにおけるナノキャリアとしての利用可能性を有するものの示唆はあるが、生体内への投与などを行ったことは記載されていないため、無論、生体内における当該分子集合体の動態についても何ら記載されていない。さらに、前記特開2008−024816号公報における場合と同様、粒子径を連続的に制御することについても何ら記載されていない。
WO2009/148121号公報には、上述したように、ラクトソームの粒子径については、段落[0127]に10nm〜500nmが開示されているが、実際には、段落[0251]に30nm〜130nmが開示されているのみである。
医薬品、農薬、化粧品、食品、エレクトロニクス(電池材料など)等の各分野において、その利用目的及び用途に応じて、種々の粒子径を有するナノ粒子が要求される。
本発明の目的は、医薬品、農薬、化粧品、食品、エレクトロニクス(電池材料など)等の各分野において、その利用目的及び用途に応じて、種々のナノサイズの粒子径を有する分子集合体を提供することにある。本発明の目的は、前記各分野において、その利用目的及び用途に応じて、前記種々のナノサイズの粒子径を有する分子集合体を用いた各種物質搬送用ナノキャリアを提供することにある。
本発明の目的は、より特別には、生体に対する安全性が高く、粒子径制御及び調製法が容易である分子集合体を提供することにある。また、本発明の目的は、前記分子集合体を用いた薬剤又は標識剤搬送用ナノキャリアを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、ポリサルコシン/ポリ乳酸系の両親媒性ブロックポリマーと、ポリ脂肪族ヒドロキシ酸系の非晶性疎水性ポリマーとから、前記非晶性疎水性ポリマーの脂肪族ヒドロキシ酸単位の数が、両親媒性ブロックポリマーの乳酸単位の数の2倍を超えるようにして分子集合体を形成させることによって、上記本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
(1) サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び
脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する非晶性疎水性ポリマーA2
を含む分子集合体であって、
前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]ものである分子集合体。
ここで、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数をUA2で表し、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数をUA1とすると、UA2>2・UA1 である。また、構成単位の数すなわち重合度は平均重合度である。
「分子集合体」は、基本的に、両親媒性ブロックポリマー分子の凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ構造体をいう。乳酸単位を基本単位として有する疎水性ブロック鎖を含む両親媒性ブロックポリマーA1を含んで構成される分子集合体を、「ラクトソーム(lactosome)」と記載することがある。「サルコシン」とは、N−メチルグリシンである。
両親媒性ブロックポリマーA1の親水性ブロック鎖が有する「親水性」とは、当該親水性ブロック鎖が、乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖に対して、相対的に親水性が強い性質をいう。疎水性ブロック鎖が有する「疎水性」とは、当該疎水性ブロック鎖が、サルコシン単位を有する親水性ブロック鎖に対して、相対的に疎水性が強い性質をいう。疎水性ポリマーA2が有する「疎水性」とは、疎水性ポリマーA2が、両親媒性ブロックポリマーA1の親水性ブロック鎖に対して、相対的に疎水性が強い性質をいう。
(2) 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位は2〜300個である、上記(1)に記載の分子集合体。
(3) 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である、上記(1)又は(2)に記載の分子集合体。
(4) 前記非晶性疎水性ポリマーA2は、脂肪族ヒドロキシ酸単位として、乳酸単位及びグリコール酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一方を有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分子集合体。
(5) 前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位は35個以上である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の分子集合体。
(6) 前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位は200個以上である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の分子集合体。
(7) 前記非晶性疎水性ポリマーA2は、前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1として、0.1/1〜10/1の範囲で含まれる、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の分子集合体。
(8) 粒子径が10〜1000nmである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の分子集合体。
「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒子径、すなわち中心粒子径を意味する。
(9) 前記分子集合体は、以下の工程:
容器中に、前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程、
前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁に前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2とを含むフィルムを得る工程、及び
前記容器中に水又は水溶液を加え、前記フィルムを粒子状の分子集合体に変換して分子集合体の分散液を得る工程、
を含む調製方法によって得られたものである、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の分子集合体。
(10) 前記分子集合体は、以下の工程:
容器中に、前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程、
前記溶液を水又は水溶液中に分散させる工程、及び
前記有機溶媒を除去する工程、
を含む調製方法によって得られたものである、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の分子集合体。
(11) 上記(1)〜(10)のいずれかに記載の分子集合体を含む、物質搬送用ナノキャリア。
(2−1) サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び
脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する非晶性疎水性ポリマーA2
を含む分子集合体の粒子径を制御する方法であって、
前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超えるようにして変化させることにより、分子集合体の粒子径を制御する方法。
(2−2) 前記非晶性疎水性ポリマーA2の前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1を変化させることにより、上記(2−1)に記載の分子集合体の粒子径を制御する方法。
(2−3) 前記非晶性疎水性ポリマーA2の前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1を、0.1/1〜10/1の範囲で変化させることにより、上記(2−1)に記載の分子集合体の粒子径を制御する方法。
(2−4) 前記分子集合体を構成する全ての非晶性疎水性ポリマーA2中に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の総数(TUA2)を、同分子集合体を構成する全ての両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロック中に含まれる乳酸単位の総数(TUA1)に対して変化させることにより、上記(2−1)に記載の分子集合体の粒子径を制御する方法。
ここで、前記分子集合体を構成する全ての非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数をTUA2で表し、同分子集合体を構成する全ての両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数をTUA1とする。
(2−5) 前記分子集合体を構成する全ての非晶性疎水性ポリマーA2中に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の総数(TUA2)を、同分子集合体を構成する全ての両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロック中に含まれる乳酸単位の総数(TUA1)に対して、2倍以上となるように変化させることにより、上記(2−1)に記載の分子集合体の粒子径を制御する方法。[2<TUA2/TUA1
本発明の分子集合体は、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する非晶性疎水性ポリマーA2を含み、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]ものである。このラクトソーム分子集合体は、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2とから自己組織化によってミセルを形成していると考えられる。すなわち、両親媒性ブロックポリマーA1の親水性ブロック鎖がシェル部を形成し、疎水性ブロック鎖がコア部を形成し、疎水性ポリマーA2は、前記疎水性ブロック鎖との親和性により疎水性コア部に位置する。前記疎水性ポリマーA2は、それに含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)が、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]ものであり、A1の前記疎水性ブロックに比して長鎖の疎水性ポリマーである。前記疎水性ポリマーA2は、非晶性であるのでランダムコイル状に存在し、長鎖のポリマーでありながらも、前記疎水性コア部に安定して存在することができる。そのため、前記疎水性ポリマーA2は、前記疎水性コア部の体積を増大させ、それと共にミセルの粒子径を増大させる。ただし、ミセル以外のベシクル状、ロッド状の粒子も除外されない。
前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]ことを条件として変化させることにより、ランダムコイル状の疎水性ポリマーA2の体積を変化させることができる。そのため、前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を変化させること、すなわち前記疎水性ポリマーA2の長さを変化させることにより、前記疎水性コア部の体積を増大又は減少させ、それと共にミセルの粒子径を制御することができる。
このように本発明の分子集合体によれば、両親媒性ブロックポリマーA1、及び非晶性疎水性ポリマーA2の各構成単位の制御によって、より広範囲、例えば10〜1000nmの範囲での連続的な粒子径制御が可能となり、しかも、均一粒子径のラクトソーム粒子が得られる。
さらに、本発明の分子集合体によれば、同じ両親媒性ブロックポリマーA1を用いた場合であっても、両親媒性ブロックポリマーA1に対して、異なる非晶性疎水性ポリマーA2を用いること、すなわち前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を変化させることによって、連続的な粒子径制御が可能となる。合成的労力がより大きい両親媒性ブロックポリマーA1を固定しても、非晶性疎水性ポリマーA2の変化によって連続的な粒子径制御が可能となる利点は大きい。
本発明によれば、医薬品、農薬、化粧品、食品、エレクトロニクス(電池材料など)等の各分野において、その利用目的及び用途に応じて、種々のナノサイズの粒子径を有する分子集合体が提供される。前記各分野において、その利用目的及び用途に応じて、前記種々のナノサイズの粒子径を有する分子集合体を用いた各種物質搬送用ナノキャリアが提供される。例えば、化粧品などのDDSキャリアとしては、医療用途よりも一般に大きな粒子径の方が好ましいが、それに応じたナノサイズの粒子径を有する分子集合体も提供される。このように、本発明の分子集合体は、種々の用途に用い得る。
本発明によれば、より特別には、粒子径を制御することにより、がん組織以外への組織への集積性が低く、生体に対する安全性が高い分子集合体が提供され、また、前記分子集合体を用いた薬剤又は標識剤搬送用ナノキャリアが提供される。
さらに、本発明によれば、種々の粒子径の分子集合体を用いることにより、より幅広い体内動態の制御が可能となる。すなわち、ある粒子径の分子集合体は、ある組織(例えば、がん組織)についての滞留性は高いが、別の粒子径の分子集合体は、ある組織(例えば、がん組織)についての滞留性は低いというような場合、これら分子集合体を用いた薬剤又は標識剤搬送用ナノキャリアの用途や、投与経路の選択の幅が広がる。さらに、一般に、大きなナノサイズ粒子径の分子集合体では、薬剤の内包量も多くできるので、徐放性のコントロールにより、徐放性の薬剤搬送用ナノキャリアが提供される。
実施例1のNo.1のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 実施例1のNo.2のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 実施例1のNo.3のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 実施例1のNo.4のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 実施例1のNo.5のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 実施例1のNo.6のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 比較例1のNo.11のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 比較例1のNo.12のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 比較例1のNo.13のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 比較例1のNo.14のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 比較例1のNo.15のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 比較例1のNo.16のラクトソームナノ粒子のDLS測定結果である。 実施例1及び比較例1におけるラクトソームナノ粒子の粒子径の変化を表すグラフである。
本発明の分子集合体(ラクトソーム;Lactosome)は、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する非晶性疎水性ポリマーA2を含み、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]ものである。以下に説明する。
[1.両親媒性ブロックポリマーA1]
両親媒性ブロックポリマーA1は、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する。
[1−1.親水性ブロック鎖]
本発明において、親水性ブロック鎖が有する「親水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、親水性ブロック鎖の全体が、後述の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖に対して相対的に親水性が強い性質をいう。或いは、親水性ブロック鎖が疎水性ブロック鎖とコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性をいう。さらに或いは、両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、特に粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性をいう。
本発明において、両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロックにおいて直鎖構造を有していてもよいし、分岐した構造を有していてもよい。分岐構造の場合には、親水性ブロックの分岐それぞれにサルコシンが含まれる。
親水性ブロックにおいて、構成単位の種類及び比率は、ブロック全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定されるものである。例えば、前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の合計は2〜300個である。具体的には、直鎖型の場合、サルコシン単位の合計は、例えば、10〜300、20〜200、又は20〜100程度でありうる。構成単位数が上記範囲を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。上記範囲を下回ると、両親媒性ブロックポリマーとしての体をなさないか、又は、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
分岐型の場合、分岐全てに含まれるサルコシン単位の合計は、例えば、2〜200、2〜100、又は2〜10個でありうる。あるいは、複数の親水性ブロック全てに含まれるサルコシン単位の合計は、例えば、30〜200、又は50〜100個でありうる。1つの分岐当たりのサルコシン単位数の平均は、例えば、1〜60、1〜30、1〜10、又は1〜6でありうる。すなわち、親水性ブロックそれぞれは、サルコシン又はポリサルコシン鎖を含んで構成されることができる。構成単位数が上記範囲を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。上記範囲を下回ると、両親媒性ブロックポリマーとしての体をなさないか、又は、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
分岐型の場合、親水性ブロックにおける分岐は2以上であればよいが、分子集合体を形成する際に粒子形状のミセルを効率的に得る観点から、好ましくは3以上である。親水性ブロックにおける分岐の数の上限は特に限定されるものではないが、例えば27である。特に、本発明においては、親水性ブロックの分岐の数が3であることが好ましい。分岐構造は、当業者が適宜設計できる。
サルコシン(すなわちN−メチルグリシン)は水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドを有することから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらに、Cα炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するものである。このような構造を構成ブロックとして用いることは、当該ブロックに高い親水性の基本特性、又は、高い親水性と高い柔軟性とを併せ持つ基本特性が備わる点で非常に有用である。
さらに、親水性ブロックは、末端(すなわちリンカー部と反対側の末端)に親水性基(例えば水酸基に代表される)を有していることが好ましい。
なお、ポリサルコシン鎖においては、全てのサルコシン単位が連続していてもよいし、非連続であってもかまわないが、当該ポリペプチド鎖全体として上述の基本特性を損なわないように分子設計されたものであることが好ましい。
親水性ブロック鎖がサルコシン単位以外の他の構成単位を有する場合、そのような構成単位としては特に限定されないが、アミノ酸(親水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)とすることができる。なお、本明細書において「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの修飾及び/又は化学的変更による誘導体を含む概念で用いる。さらに、本明細書において、アミノ酸は、α−、β−、γ−アミノ酸を含む。好ましくは、αアミノ酸である。例えば、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
また、両親媒性ブロックポリマーA1は糖鎖やポリエーテルなどのさらなる基を有してよい。この場合は、両親媒性ブロックポリマーA1の親水性ブロックが糖鎖やポリエーテルなどを有するように分子設計されることが好ましい。
[1−2.疎水性ブロック]
本発明において、疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、疎水性ブロックが、上記の親水性ブロックの全体に対して相対的に疎水性が強い領域であり、当該親水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。
1本の両親媒性ブロックポリマー中に存在する疎水性ブロックは分岐していなくともよいし、分岐していてもよい。しかしながら、疎水性ブロックは分岐していない方が、疎水性コア部に対して、親水性分岐型シェル部の稠密度が増すので、より小さい粒径の安定したコア/シェル型分子集合体を形成し易いと考えられる。
本発明において、疎水性ブロックは乳酸単位を含むものである。疎水性ブロックにおいて構成単位の種類及び比率は、ブロック全体が上述したような疎水性となるように、当業者によって適宜決定されるものである。例えば、前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)は5〜400個である。具体的には、例えば疎水性ブロックが分岐していない場合、乳酸単位の数は、例えば5〜100、15〜60個、又は25〜45個でありうる。疎水性ブロックが分岐している場合は、分岐全てに含まれる乳酸単位の数の合計が、例えば10〜400、好ましくは20〜200個でありうる。この場合、1つの分岐当たりの乳酸単位数の平均は、例えば、5〜100、好ましくは10〜100個である。
構成単位数が上記範囲を上回ると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が上記範囲を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
疎水性ブロックが分岐する場合、分岐の数は特に限定されないが、分子集合体を形成する際に粒子形状のミセルを効率的に得る観点から、例えば、親水性ブロックにおける分岐数以下とすることができる。
ポリ乳酸は、以下の基本特性を有する。
ポリ乳酸は、優れた生体適合性及び安定性を有するものである。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用性という点で非常に有用である。
また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから代謝が早く、生体内においてがん組織以外への組織への集積性が低い。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、がん組織への特異的な集積性という点で非常に有用である。
そして、ポリ乳酸は、低沸点溶媒への溶解性に優れるものであることから、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から分子集合体を得る際に、有害な高沸点溶媒の使用を回避することが可能である。このため、このような分子集合体は、生体への安全性という点で非常に有用である。
なお、疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖(PLA)においては、全ての乳酸単位が連続していてもよいし、非連続であってもかまわないが、疎水性ブロック全体として上述の基本特性を損なわないように分子設計されたものであることが好ましい。
疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖(PLA)は、L−乳酸単位から構成されているポリL−乳酸鎖(PLLA)か、又は、D−乳酸単位から構成されているポリD−乳酸鎖(PDLA)のいずれであってもよい。また、L−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成されていてもよい。この場合において、L−乳酸単位とD−乳酸単位とは、交互配列、ブロック配列、又はランダム配列のいずれであってもよい。
疎水性ブロック鎖が乳酸単位以外の他の構成単位を有する場合、そのような構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような疎水性であることを満たせば特に限定されるものではないが、所望の諸特性を有するように分子設計されたものであることが好ましい。
疎水性ブロック鎖において、乳酸単位以外の構成単位を有する場合、そのような構成単位は、乳酸以外のヒドロキシ酸及びアミノ酸(疎水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)からなる群から選択することができる。ヒドロキシ酸としては、特に限定されないが、グリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸などが挙げられる。疎水性アミノ酸は、その多くが、脂肪族側鎖、芳香族側鎖などを有する。天然アミノ酸では、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、及びトリプトファンなどが挙げられる。非天然アミノ酸では、特に限定されないが、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸メチルエステル、アスパラギン酸エチルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステルなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。
[1−3.両親媒性ブロックポリマーA1の合成]
本発明において、両親媒性ブロックポリマーA1の合成法としては、特に限定されるものではなく、公知のペプチド合成法、ポリエステル合成法、及び/又はデプシペプチド合成法を用いることができる。
ペプチド合成は、例えば、アミンなどの塩基を開始剤として、N−カルボキシアミノ酸無水物(アミノ酸NCA)を開環重合することなどによって行うことができる。
ポリエステル合成は、例えば、アミンなどの塩基や金属錯体などを開始剤として、ラクチドを開環重合することなどによって行うことができる。ラクチドとしては、ブロック鎖の所望の光学純度を考慮して、当業者が適宜決定することができる。例えば、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド及びメソラクチドから適宜選択し、ブロック鎖の所望の光学純度に応じて当業者が適宜使用量を決定することができる。
デプシペプチド合成は、例えば、疎水性ブロックとしてポリ乳酸を先に合成し、その後、親水性ブロックとなるポリペプチド鎖を伸張する方法と、親水性ブロックとなるポリペプチド鎖を先に合成し、その後、疎水性ブロックとなるポリ乳酸を伸張する方法とが挙げられる。
本発明の分子集合体において、ポリ乳酸の鎖長を調整することができる。両親媒性ブロックポリマーA1の合成の際には、ポリ乳酸の鎖長をより自由に制御するという観点から、疎水性ブロックであるポリ乳酸を先に合成し、その後、親水性ブロック鎖となるポリペプチド鎖を伸張する方法を行う方が好ましい。また、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロック鎖としてのポリ乳酸は、親水性ブロック鎖としてのポリサルコシンに比べ重合度の制御をより容易に且つ正確に行うことができる。
両親媒性ブロックポリマーA1の構造及び合成については、WO2009/148121号公報(直鎖型)、及びWO2012/176885号公報(分岐型)を参照することができる。
[2.非晶性疎水性ポリマーA2]
疎水性ポリマーA2は、脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する疎水性脂肪族ポリマーであって、非晶性のものである。本明細書において、非晶性ポリマーとは、JIS K7121にて融点が観測されない高分子をいう。疎水性ポリマーA2が有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては特に限定されるものではないが、少なくとも、上記の両親媒性ポリマーA1の親水性ブロックに対して、相対的に疎水性が強い。
疎水性ポリマーA2を構成する脂肪族ヒドロキシ酸としては、特に限定されないが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸などが挙げられる。
前記疎水性ポリマーA2は、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロックとの相溶性の観点から、脂肪族ヒドロキシ酸単位として、乳酸単位及びグリコール酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一方を有することが好ましい。すなわち、前記疎水性ポリマーA2は、乳酸ホモポリマー、又は、乳酸とグリコール酸とのコポリマー(交互配列、ブロック配列、又はランダム配列)が好ましい。
前記疎水性ポリマーA2を構成するポリ乳酸鎖(PLA)は、非晶性とするために、L−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成されている。この場合において、L−乳酸単位とD−乳酸単位とは、交互配列、ブロック配列、又はランダム配列のいずれであってもよい。
前記疎水性ポリマーA2が、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸)とのコポリマーの場合には、乳酸単位は、L−乳酸のみか、あるいはD−乳酸のみであってもよい。また、乳酸とグリコール酸とのコポリマーの場合に、グリコール酸単位の比率が高くなると、有機溶剤への溶解性が低下する傾向にあるので、乳酸単位とグリコール酸単位との比率を考慮するとよい。
前記疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]。このことを条件として、前記疎水性ポリマーA2は、35個以上の脂肪族ヒドロキシ酸単位を有することが好ましく、60個以上の脂肪族ヒドロキシ酸単位を有することがより好ましい。また、200個以上の脂肪族ヒドロキシ酸単位を有することもある。
疎水性ポリマーA2の合成は、当業者に知られた重合法により行うことができる。例えば、非晶性ポリ乳酸の合成は、WO2009/148121号公報([0239]、[0241])を参照して、ラクチドの開環重合により行うとよい。あるいは、乳酸からの直接重合により行ってもよい。また、乳酸とグリコール酸との非晶性コポリマーの合成は、ラクチドとグリコリドとの開環重合により行うとよい。あるいは、乳酸及びグリコール酸からの直接重合により行ってもよい。
[3.A1/A2分子集合体]
分子集合体(ラクトソーム;Lactosome)において、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]。すなわち、前記疎水性ポリマーA2は、それに含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)が、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超えるものであり、A1の前記疎水性ブロックに比して長鎖の疎水性ポリマーである。前記疎水性ポリマーA2は、非晶性であるのでランダムコイル状に存在し、長鎖のポリマーでありながらも、前記疎水性コア部に安定して存在することができる。そのため、前記疎水性ポリマーA2は、前記疎水性コア部の体積を増大させ、それと共に分子集合体の粒子径を増大させる。脂肪族ヒドロキシ酸単位の数が、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数の2倍以下であれば、前記両親媒性ブロックポリマーA1によって形成されたミセルのコア部の体積を増大させる効果に乏しい。従って、前記両親媒性ブロックポリマーA1によって本来的に形成されるミセルの粒子径を制御する能力に乏しい。
このラクトソーム分子集合体は、前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記疎水性ポリマーA2とから自己組織化によってミセルを形成していると考えられる。すなわち、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記親水性ブロック鎖がシェル部を形成し、前記疎水性ブロック鎖がコア部を形成し、前記疎水性ポリマーA2は、前記疎水性ブロック鎖との親和性により疎水性コア部に位置する。前記両親媒性ブロックポリマーA1によって本来的に形成される(前記疎水性ポリマーA2不存在下での)ミセルの疎水性コア部の体積は、前記疎水性ブロック鎖の鎖長、すなわち、前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)に依存すると考えられる。つまり、前記疎水性ブロックの鎖長が長いほど、疎水性コア部の体積は大きくなり、前記疎水性ブロックの鎖長が短いほど、疎水性コア部の体積は小さくなると考えられる。そのため、前記疎水性コア部の体積を増大させるためには、前記疎水性ブロックの鎖長に応じて、長鎖の疎水性ポリマーA2を存在させる必要があると考えられる。このような理由により、本発明のラクトソーム分子集合体において、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]。
例えば、前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超え且つ10倍以下となるようにして変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御するとよい。
前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超えることを条件として変化させることにより、ランダムコイル状の疎水性ポリマーA2の体積を変化させることができる。そのため、前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を変化させること、すなわち前記疎水性ポリマーA2の長さを変化させることにより、前記疎水性コア部の体積を増大又は減少させ、それと共にミセルの粒子径を制御することができる。ただし、前記両親媒性ブロックポリマーA1によって本来的に形成される(前記疎水性ポリマーA2不存在下での)ミセルの疎水性コア部の体積が最小体積であり、ミセルの最小粒子径を与える。
さらに、前記非晶性疎水性ポリマーA2の前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1を変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御することもできる。
例えば、前記非晶性疎水性ポリマーA2の前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1を、0.1/1〜10/1の範囲で変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御するとよい。
さらに、前記分子集合体を構成する全ての非晶性疎水性ポリマーA2中に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の総数(TUA2)を、同分子集合体を構成する全ての両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロック中に含まれる乳酸単位の総数(TUA1)に対して変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御することもできる。
例えば、前記分子集合体を構成する全ての非晶性疎水性ポリマーA2中に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の総数(TUA2)を、同分子集合体を構成する全ての両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロック中に含まれる乳酸単位の総数(TUA1)に対して、2倍以上10倍以下となるように変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御するとよい。
このように本発明の分子集合体によれば、両親媒性ブロックポリマーA1、及び非晶性疎水性ポリマーA2の各構成単位の制御によって、より広範囲、例えば10〜1000nmの範囲での連続的な粒子径制御が可能となり、しかも、均一粒子径のラクトソーム粒子が得られる。WO2009/148121号公報には、ラクトソームの粒子径について、段落[0127]に10nm〜500nmが開示されているが、実際には、段落[0251]に30nm〜130nmが開示されているのみであり、広範囲での連続的な粒子径制御については開示されていない。
本発明の分子集合体の大きさを測定するための方法は特に限定されるものではなく、当業者によって適宜選択されるものである。例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察法や、動的光散乱(Dynamic Light Scattering;DLS)法などが挙げられる。DLS法においては、溶液中でブラウン運動している粒子の移動拡散係数を測定する。
[4.機能性構造を有する態様]
本発明の分子集合体は、分子イメージングシステムや薬剤搬送システムに用いられる場合に有用となる形態や機能などを持たせることができる機能性構造を備えることができる。これによって、本発明の分子集合体は、分子イメージングにおけるプローブとしてや、薬剤搬送システムにおける製剤として有用な構造体となる。また、化粧品等の他の用途についても同様である。
機能性構造を備える分子集合体の具体的態様としては、分子集合体を構成する両親媒性ブロックポリマー自体にシグナル基及びリガンド基からなる群から選ばれる機能性基が結合している態様、及び、分子集合体がシグナル剤及び薬剤からなる群から選ばれる機能性物質を内包する態様が挙げられる。
[4−1.機能性基の結合]
機能性基は例えば有機基であり、分子集合体の用途に応じて当業者によって適宜選択されるものである。機能性基としては、シグナル基及びリガンド基が挙げられる。
シグナル基は、検出によりイメージングを可能にする特性を有するものであればよい。例えば、蛍光基、放射性元素含有基、磁性基などが挙げられる。これらの基を検出する手段は、当業者によって適宜選択されるものである。
蛍光基としては、特に限定されないが、フルオレセイン系色素、インドシアニン色素などのシアニン系色素、ローダミン系色素、量子ドットなどに由来する基が挙げられる。本発明においては、近赤外蛍光基(例えばシアニン系色素、量子ドットなどに由来する基)を用いてもよい。
近赤外領域(700〜1300nm)では、水素結合を有する各置換基の吸収が存在するものの、その吸収は比較的小さい。このため、近赤外光は生体組織を透過しやすい特性を有する。このような近赤外光の特性を利用すれば、身体に無用の負荷を与えることなく体内の情報を得ることも可能であるといえる。特に、測定対象を小動物、体表面に近い部位に特定すると、近赤外蛍光は、有用な情報を与えることが可能になる。
近赤外蛍光基のより具体的な例としては、ICG(インドシアニングリーン)などのインドシアニン系色素、Cy7、DY776、DY750、Alexa790、Alexa750などに由来する基が挙げられる。本発明の分子集合体を、例えばがんを標的として用いる場合は、がんへの集積性という観点で、ICGなどのインドシアニン系色素に由来する基を用いることが好ましい場合がある。
放射性元素含有基としては、特に限定されないが、18Fなどの放射性同位体でラベルした、糖、アミノ酸、核酸などに由来する基が挙げられる。放射性元素含有基の導入方法の具体例の一つとしては、モノFmoc (9-fluorenylmethyloxycarbonyl) エチレンジアミンを用いてラクチドの重合を行う工程、末端OHをシリル保護基で保護する工程、ピペリジン処理でFmocを脱離する工程、サルコシン−N−カルボキシ無水物(SarNCA)の重合を行い、重合物末端をターミネーションする工程、シリル保護基を外し、スルホン酸エステル(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、パラトルエンスルホン酸エステルなど)に変換する工程、及び放射性元素含有基を導入する工程により行う方法が挙げられる。さらに、当該具体例は当業者によって適宜変更されて良い。
磁性基としては、特に限定されないが、フェリクロームなどの磁性体を有するものや、フェライトナノ粒子、ナノ磁性粒子などに見られるものが挙げられる。
リガンド基は、標的細胞に発現している生体分子に結合することによって、分子集合体の指向性を制御し、これにより分子集合体のターゲティング性を高めることができるものであればよい。例えば、抗体、細胞接着ペプチド、糖鎖、水溶性高分子などが挙げられる。
抗体の例としては、ターゲット部位の細胞に発現している抗原への特異的結合能を有するものが挙げられる。
細胞接着ペプチドの例としては、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)などの接着因子が挙げられる。
糖鎖の例としては、カルボキシルメチルセルロース、アミロースなどの安定剤や、ターゲット部位の細胞に発現しているタンパク質への特異的結合能を有するものが挙げられる。
水溶性高分子の例としては、ポリエーテル鎖、ポリビニルアルコール鎖などの高分子が挙げられる。
これらの基は、両親媒性ブロックポリマーの好ましくは親水性ブロック側の末端構成単位に結合することができる。このことによって、ミセルを形成した場合に、粒子が機能性基をその表面に保持する形態、すなわち機能性基による表面修飾の形態を有しうる。
[4−2.機能性物質の内包]
機能性物質は、シグナル剤及び薬剤からなる群から選ばれるものである。この物質は、疎水性化合物であり、分子集合体の疎水コア部に位置することによって内包される。
シグナル剤としては、上述のシグナル基を有する分子を用いることができる。その中でも、本発明においては、インドシアニングリーン系色素などの近赤外蛍光物質や、18Fなどの放射性同位体でラベルした、糖、アミノ酸、核酸などの放射性元素含有物質が好ましい場合がある。
薬剤としては、対象となる疾患に適したものが当業者によって適宜選択される。具体的には、抗がん剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、ステロイド剤、ホルモン剤、血管新生阻害剤などが挙げられる。これら薬剤分子は、単独で又は複数種の組み合わせで用いることができる。
内包されるべき機能性物質は、ポリ脂肪族ヒドロキシ酸基が結合しているものであってもよい。上記のポリ脂肪族ヒドロキシ酸基は、特に限定されないが、乳酸単位、グリコール酸単位、ヒドロキシイソ酪酸単位などを主たる構成成分とする基であり、好ましくは乳酸単位及び/又はグリコール酸単位を主たる構成成分とする基である。乳酸単位等の脂肪族ヒドロキシ酸単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。基本的に、脂肪族ヒドロキシ酸基の構造、鎖長及び光学純度は、上述の疎水性ブロックの分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、機能性物質と両親媒性ブロックポリマーの疎水性ブロックとの親和性に優れるという効果も得られる。
機能性物質の内包量としては特に限定されるものではないが、例えば、蛍光物質の場合、両親媒性ブロックポリマー及び蛍光色素の合計に対し、蛍光色素の量が0.5〜50mol%でありうる。その他の機能性物質(一例として放射性物質)の内包量としても、上記と同様とすることができる。
[5.分子集合体の作成]
分子集合体(ラクトソーム)の作成法は特に限定されず、所望する分子集合体の大きさ、特性、担持させる機能性構造の種類、性質、含有量などに応じて、当業者が適宜選択することができる。必要に応じ、下記のように分子集合体を形成した後に、得られた分子集合体に対して、公知の方法によって表面修飾を行っても良い。なお、粒子が形成されたことの確認は、電子顕微鏡観察によって行うと良い。
[5−1.フィルム法]
本発明における両親媒性ブロックポリマーA1及び非晶性疎水性ポリマーA2は、低沸点溶媒への溶解性を有するため、この方法を用いた分子集合体の調製が可能である。
フィルム法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えばガラス容器)中に、両親媒性ブロックポリマーA1と非晶性疎水性ポリマーA2と必要に応じて機能性物質とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程;前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁に前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2と必要に応じて機能性物質とを含むフィルムを得る工程;及び、前記容器中に水又は水溶液を加え、必要に応じて超音波処理を行い、前記フィルムを粒子状の分子集合体(必要に応じて機能性物質を内包する)に変換して分子集合体の分散液を得る工程、を含む。さらに、フィルム法は、前記の分子集合体の分散液を凍結乾燥処理に供する工程を含んでも良い。
また、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2と必要に応じて機能性物質とを有機溶媒中に含む溶液は、当業者によって適宜調製される。例えば、用いるべきポリマーA1、A2及び/又は必要に応じて機能性物質の全てを一度に混合することによって調製されてもよいし、用いるべきポリマーA1、A2及び/又は必要に応じて機能性物質のうちの一部(例えば、ポリマーA1)をあらかじめフィルムの状態で用意し、その後、用いるべき成分のうち他の成分(例えば、ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質)を含む溶液を加えることによって調製されてもよい。あらかじめ用意される一部のポリマーのフィルムの形成法は、後述する方法(すなわちポリマーA1、A2、及び/又は必要に応じて機能性物質を含むフィルムの形成法)に準じて行うことができる。
フィルム法に用いる有機溶媒としては、低沸点溶媒を用いることが好ましい。本発明における低沸点溶媒とは、1気圧における沸点が100℃以下、好ましくは90℃以下のものをいう。具体的には、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトニトリル、2−プロパノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ヘキサンなどが挙げられる。
ポリマーA1、A2及び/又は必要に応じて機能性物質の溶解にこのような低沸点溶媒を使用することによって、溶媒の除去が非常に簡単になる。溶媒の除去の方法としては特に限定されることなく、使用する有機溶媒の沸点などに応じ、当業者が適宜決定すればよい。例えば、減圧下における溶媒除去を行ってもよいし、自然乾燥による溶媒除去を行ってもよい。
有機溶媒が除去された後は、容器内壁に両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質とを含むフィルムが形成される。このフィルムが張り付いた容器中に、水又は水溶液を加える。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
水又は水溶液が加えられた後、20〜90℃、1〜60分の条件下で加温処理を行い、フィルムが容器内壁から剥がれる過程で分子集合体を形成する。処理終了時には、分子集合体(機能性物質を用いた場合には、機能性物質を内包する)が前記の水又は水溶液中に分散された分散液が容器中に調製される。その際、必要に応じて超音波処理を行ってもよい。
この分散液は、直接生体に投与されることが可能である。すなわち、無溶媒の分子集合体そのものの状態で保存される必要性がない。このため、例えば、半減期の短い薬剤を用いるPET(ポジトロン放出断層撮影)用分子プローブへの応用が非常に有用である。
また、得られた分散液を凍結乾燥処理に供する場合、その方法としては公知の方法を特に限定されることなく用いることができる。たとえば、上記のようにして得られた分子集合体の分散液を液体窒素などによって凍結させ、減圧下で昇華させることによって行うことができる。これにより、分子集合体の凍結乾燥処理物が得られる。すなわち、分子集合体を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水又は水溶液を加えて、分子集合体の分散液を得ることによって、分子集合体を使用に供することができる。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
ここで、凍結乾燥処理前の分散液中には、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質とから形成された本発明の分子集合体以外にも、そのような分子集合体を形成しなかった両親媒性ブロックポリマーA1、疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質が各々それ自体として残存しうる。このような分散液を凍結乾燥処理に供すると、溶媒が濃縮される過程で、本発明の分子集合体を形成せず残存していた両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質標識ポリマーBとから、さらに分子集合体を形成することが可能になる。従って、本発明の分子集合体の調製を効率的に行うことが可能になる。
[5−2.インジェクション法]
インジェクション法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えば試験管など)中に、両親媒性ブロックポリマーA1と非晶性疎水性ポリマーA2と必要に応じて機能性物質とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程;前記の溶液を水又は水溶液に分散させる工程;及び有機溶媒を除去する工程を含む。さらに、インジェクション法においては、有機溶媒を除去する工程の前に、適宜精製処理工程を行ってもよい。
インジェクション法に用いる有機溶媒としては、例えばトリフルオロエタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが用いられる。
水又は水溶液としては、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが用いられる。
精製処理としては、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心などの処理を行うことができる。
このようにして得られた分子集合体を生体内へ投与する場合であって、有機溶媒に生体に有害なものを用いた場合は、この有機溶媒の除去を厳密に行う必要がある。
分子集合体をベシクルとして調製する場合において、内包型のものを調製する場合は、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などの水系溶媒に、内包すべき物質を溶解又は懸濁させ、このようにして得られた水溶液又は懸濁液に、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質とを上記有機溶媒に溶解させて得られた溶液を分散させるとよい。
[6.分子プローブ]
本発明の分子集合体は、適宜、所望の分子を保持させることによって、分子イメージングシステム、及び薬剤搬送システムにおいて有用に用いられる。本明細書においては、このようなシステムに用いられることに向けられた分子集合体については、「分子プローブ」又は「ナノ粒子」と記載することがある。
[6−1.分子イメージング用分子プローブ]
本発明の分子集合体が、標識基及び/又は標識剤を有するものである場合、当該分子集合体は、分子イメージング用分子プローブとして有用に用いることができる。
標識基としては、上で述べたとおりである。標識基は、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
標識剤としては、上で述べたシグナル基を有する分子、及びリガンド基を有する分子を用いることができる。これらの分子は、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
例えば、この分子イメージング分子プローブは、標識剤が共有結合により導入されている形態、及びリガンドによって配位されたシグナル剤を有している形態を有しうる。
その他の場合において、この分子イメージング分子プローブは、ミセルの場合は内部に標識剤を含んでいる形態、ベシクルの場合は内部に標識剤を含んだ水相を有している形態を有しうる。
この分子イメージング分子プローブは、病変部位や疾患部位に特異的に上述の標識を集積することにより、当該部位のイメージングを行うことを可能にする。
分子イメージング用分子プローブの具体例としては、蛍光イメージング用分子プローブ、ポジトロン放出断層撮影(PET)用分子プローブ、及び核磁気共鳴イメージング(MRI)用分子プローブなどが挙げられる。
[6−2.薬剤搬送システム用分子プローブ]
本発明の分子集合体が、標識基として薬剤が配位したリガンド、及び/又は薬剤を有するものである場合、当該分子集合体は、薬剤搬送システム用分子プローブとして有用に用いることができる。
薬剤としては、対象疾患に適したものを特に限定することなく用いることができる。具体的には、抗がん剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、ステロイド剤、ホルモン剤、血管新生阻害剤などが挙げられる。これら薬剤分子は、単独で又は複数種の組み合わせで用いることができる。
より具体的には、抗がん剤の場合、カンプトテシン、エキサテカン(カンプトテシン誘導体)、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン、SN−38(イリノテカン活性代謝物)、5−FU、シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセルなどが挙げられる。
例えば、この薬剤搬送システム用分子プローブは、標識基として薬剤が配位したリガンドが共有結合により導入されている形態を有しうる。
その他の場合において、この薬剤搬送システム用分子プローブは、ミセルの場合は内部に薬剤を含んでいる形態、ベシクルの場合は内部に薬剤を含んだ水相を有している形態を有しうる。
この薬剤搬送システム用分子プローブは、病変部位や疾患部位に特異的に薬剤を集積することにより、当該部位の細胞に薬剤を作用させることを可能にする。
さらに、本発明の分子集合体は、薬剤とシグナル剤(或いはシグナル基)との両方を有するものであってもよい。この場合、当該ナノ粒子は、薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム両用の分子プローブとして有用に用いることができる。
本発明の分子集合体の調製において、前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数(UA1)の2倍を超える[UA2>2・UA1]ことを条件として変化させることにより、ランダムコイル状の疎水性ポリマーA2の体積を変化させることができる。そのため、前記疎水性ポリマーA2の脂肪族ヒドロキシ酸単位の数(UA2)を変化させること、すなわち前記疎水性ポリマーA2の長さを変化させることにより、前記疎水性コア部の体積を増大又は減少させ、それと共にミセルの粒子径を制御することができる。
さらに、前記非晶性疎水性ポリマーA2の前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1を、例えば0.1/1〜10/1の範囲で変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御することもできる。
さらに、前記分子集合体を構成する全ての非晶性疎水性ポリマーA2中に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の総数(TUA2)を、同分子集合体を構成する全ての両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロック中に含まれる乳酸単位の総数(TUA2)に対して、例えば2倍以上10倍以下となるように変化させることにより、ラクトソーム分子集合体の粒子径を制御することもできる。
これらによって、分子集合体の粒子径、形状、組織選択性、生体内での分解速度、内包する薬剤やシグナル剤の徐放性等を調整することができる。
[7.分子イメージングシステム及び薬剤搬送システム]
本発明の分子イメージングシステム及び薬剤搬送システムは、上記の分子集合体を生体内に投与することを含む。本発明のこれらシステムは、上記の分子プローブを用いることに特徴付けられており、その他の具体的な手順は、公知の分子イメージングシステム及び薬剤搬送システムに準じ、当業者が適宜決定することができる。
[7−1.分子プローブの投与]
生体内への投与の方法としては特に限定されず、投与ターゲット及び分子プローブの用途などに応じて、当業者が適宜決定することができる。従って、投与の方法としては、全身投与及び局所投与とを問わない。すなわち、分子プローブの投与は、注射(針有型、針無型)、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。
[7−2.投与ターゲット]
本発明の分子イメージングシステム及び薬剤搬送システムにおいて、投与ターゲットとしては特に限定されない。特に、本発明の分子集合体は、がん部への特異的集積性に優れたものである。本発明の分子集合体は、EPR (enhanced permeability and retention) 効果によりがん組織へ集積するため、その集積性はがんの種類によらない。従って、本発明の分子集合体の投与ターゲットとしてはがんであることが好ましい。投与ターゲットとなりうるがんは多岐に亘る。例えば、肝臓がん、すい臓がん、肺がん、子宮頸がん、乳がん、大腸がんなどが挙げられる。
また、本発明の分子集合体のがん部への特異的集積性は、特に、肝臓での代謝の早さの実現によるところが大きい。このため、肝臓がんや肝臓の周辺に存在しうるがんをターゲットとする場合に、本発明の分子集合体は非常に大きな効果を発揮する。
[7−3.分子プローブの検出]
本発明の分子イメージングシステムにおいては、投与された分子プローブを検出する工程をさらに含む。投与された分子プローブを検出することによって、体外から投与ターゲットの様子(特にがんなどの組織の位置・大きさ)を観測することができる。
検出方法としては、投与された分子プローブを可視化させることができるあらゆる手段を用いることができる。当該手段としては、分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤の種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。
例えば、蛍光イメージングなどの場合は、分子プローブを投与された生体を励起光照射し、体内の分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤に基づく蛍光などのシグナルを検出することができる。
励起波長や、検出すべき蛍光波長といったパラメーターは、投与される分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤の種類、及び投与ターゲットの種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。
ポジトロン放出断層撮影(PET)の場合は、γ線検出器を用いて、体内の分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤からの消滅γ線を検出することができる。
核磁気共鳴イメージング(MRI)の場合は、受信コイルを用いて、体内の分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤の磁性体によって生じる局所磁場歪をMRI信号の変化として検出することができる。
投与から検出開始までの時間は、投与される分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤の種類、及び投与ターゲットの種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。例えば、蛍光イメージングの場合は、投与後3〜48時間、PETやMRIの場合は、投与後1〜9時間とすることができる。上記範囲を下回ると、シグナルが強すぎ、投与ターゲットと他の部位(バックグラウンド)とを明確に分けることができない傾向にある。また、上記範囲を上回ると、分子プローブが投与ターゲットから排泄されてしまう傾向にある。
分子プローブの検出は、正確性の観点から、生体の一方向からではなく、複数の方向からの測定によって行うことが好ましい。具体的には、少なくとも3方向、より好ましくは少なくとも5方向からの測定を行うと良い。5方向からの測定を行う場合は、例えば、左右両腹側から、左右両体側から、及び背中側からの測定を行うことができる。
[7−4.ラクトソームの血中安定性]
本発明の分子プローブは血液中で優れた安定性を示す。
具体的には、従来から優れた特性を有するナノ粒子として知られている、水溶性高分子化合物ポリエチレングリコール(PEG)による修飾形態を有するナノ粒子と、少なくとも同等の血中滞留性を有している。血中ラクトソームの測定法も、分子プローブが有するシグナル基又はシグナル剤の種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
[両親媒性ブロックポリマーA1]
両親媒性ブロックポリマーA1の合成は、WO2009/148121号公報、WO2012/176885号公報に記載の方法を参照して行うことができる。
(PSar63-PLLA30)
以下の化学式に示すように、まず、L−ラクチド(化合物1)とN−カルボベンゾキシ−1,2−ジアミノエタン塩酸塩(化合物2)とを用いて、アミノ化ポリL−乳酸(a-PLLA)(平均重合度30)を合成した。
次に、サルコシン−NCA(Sar-NCA)とアミノ化ポリL−乳酸(a-PLLA)とを、グリコール酸、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用いて反応させ、サルコシン単位63個からなる親水性ブロックとL−乳酸単位30個からなる疎水性ブロックとを有する直鎖型両親媒性ブロックポリマー(PSar63-PLLA30)を合成した。
(PSar66-PLLA31)
サルコシン単位66個からなる親水性ブロックとL−乳酸単位31個からなる疎水性ブロックとを有する直鎖型両親媒性ブロックポリマー(PSar66-PLLA31)も同様の反応によって合成した。
[疎水性ポリマーA2]
疎水性ポリマーA2の合成については、例えば、WO2009/148121号公報([0235]〜[0243])を参照することができる。
(PLA0020)
DL−ラクチドの開環重合により、ポリDL−乳酸(LA/GA=100/0,重量平均分子量MW=20,000)を合成した。ここで、LAは、DL−乳酸単位(L−乳酸単位とD−乳酸単位とのラセミ体)を表し、GAは、グリコール酸を表し、LA/GAは、DL−乳酸単位とグリコール酸単位とのモル比率を表す。以下において同じである。
PLA0020中のDL−乳酸単位の数:278。
(PLGA5005)
DL−ラクチド及びグリコリドの開環重合により、DL−乳酸−グリコール酸コポリマー(LA/GA=50/50,重量平均分子量MW=5,000)を合成した。
PLGA5005中のDL−乳酸単位+グリコール酸単位の数:77。
(PLGA5010)
DL−ラクチド及びグリコリドの開環重合により、DL−乳酸−グリコール酸コポリマー(LA/GA=50/50,重量平均分子量MW=10,000)を合成した。
PLGA5010中のDL−乳酸単位+グリコール酸単位の数:154。
(Z-PLLA30:比較)
L−ラクチド(化合物1)とN−カルボベンゾキシ−1,2−ジアミノエタン塩酸塩(化合物2)とを用いて、Z-PLLAと表されるポリL−乳酸(平均重合度30,重量平均分子量MW=2,356)を合成した。Z-PLLA中のL−乳酸単位の数:30。
[DSC測定]
各疎水性ポリマーPLA0020、PLGA5005、PLGA5010、Z-PLLAについて、次のように示差走査熱量計(DSC)による分析を行った。
試料を2mg程度はかり取り、標準アルミニウム試料容器(アルミナクリンプセル)に入れ、蓋をかぶせ、シーラ・クリンパー(SSC-30)でクリンプし、密閉した。基準物質にはアルミナを用いた。測定にはDSC-60(島津製作所社製)を用いた。
試料を昇温速度10℃/minで30℃〜150℃まで昇温した。次に、150℃から30℃まで急冷した。Z-PLLAについては発熱ピークである結晶化温度(90℃付近)、及び吸熱ピークである融解温度(130℃付近)が観測された。Z-PLLAは結晶性のポリマーであった。一方、PLA0020、PLGA5005、及びPLGA5010はいずれもオイル状であり、吸熱反応も発熱反応も観察されなかった。これらは、いずれも非晶性のポリマーであった。
[実施例1]
表1に示す添加量の両親媒性ポリマーA1(PSar63-PLLA30、又はPSar66-PLLA31)、及び疎水性ポリマーA2(PLA0020、PLGA5005、又はPLGA5010)を試験管内に入れ、1mLのクロロホルムに溶解した。エバポレーターを用いて減圧留去により溶媒を除去し、試験管の内壁にフィルムを作製した。減圧留去は、湯浴40℃、45分間にて行った。更に、真空乾燥(室温、5−15Pa、2時間)を行い、その後、蒸留水2mLを加えて85℃で、20分間加温処理を行うことにより粒子化を行った。粒子化後、溶液が室温になるまで放冷した。このようにして、No.2〜6のA1/A2ラクトソームナノ粒子を得た。また、参考用として、疎水性ポリマーA2を用いなかった以外は、同様にして、No.1のラクトソームナノ粒子を調製した。
各ラクトソームナノ粒子の粒子径を、動的散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)を用いて測定した。測定には、動的光散乱測定装置(Malvern Instruments 社製、Zetasizer Nano)を用いた。
表1において、TUA2/TUA1は、ラクトソームナノ粒子を構成する全ての疎水性ポリマーA2中に含まれる乳酸単位+グリコール酸単位の総数(TUA2)の、全ての両親媒性ブロックポリマーA1中に含まれる乳酸単位の総数(TUA1)に対する比である。
[比較例1]
表2に示す添加量の両親媒性ポリマーA1(PSar63-PLLA30)、及び疎水性ポリマーA2(Z-PLLA)を試験管内に入れ、1mLのクロロホルムに溶解した。エバポレーターを用いて減圧留去により溶媒を除去し、試験管の内壁にフィルムを作製した。減圧留去は、湯浴40℃、45分間にて行った。更に、真空乾燥(室温、5−15Pa、2時間)を行い、その後、蒸留水2mLを加えて85℃で、15分間加温処理を行うことにより粒子化を行った。粒子化後、溶液が室温になるまで放冷した。このようにして、No.12〜16のラクトソームナノ粒子を得た。また、参考用として、疎水性ポリマーA2を用いなかった以外は、同様にして、No.11のラクトソームナノ粒子を調製した。各ラクトソームナノ粒子の粒子径を、実施例1と同様にして測定した。
実施例1におけるラクトソームナノ粒子のDLS測定結果(粒度分布; SizeDistribution by Intensity)を図1〜7に示す。比較例1におけるラクトソームナノ粒子のDLS測定結果(粒度分布)を図8〜12に示す。横軸は、粒子径(Size)(nm)を示し、縦軸は、強度(ntensity)(%)を示す。
図13は、実施例1及び比較例1におけるラクトソームナノ粒子の粒子径の変化を対比して表すグラフである。図13において、横軸は、ラクトソームナノ粒子を構成する全ての疎水性ポリマーA2中に含まれる乳酸単位+グリコール酸単位の総数(TUA2)の全ての両親媒性ブロックポリマーA1中に含まれる乳酸単位の総数(TUA1)に対する比(TUA2/TUA1)を示し、縦軸は、粒子径(nm)を示す。
図13から、実施例1においては、疎水性ポリマーA2中の乳酸単位+グリコール酸単位の総数(TUA2)を両親媒性ブロックポリマーA1中の乳酸単位の総数(TUA1)に対して、比(TUA2/TUA1)を0〜9.27の範囲で変化させることにより、粒子径を34.5nmから300nmまで連続的に制御できた。一方、比較例1においては、比(TUA2/TUA1)を0〜7の範囲で変化させたが、粒子径は30.7nmから122nmまでしか変化しなかった。
ここで、凍結乾燥処理前の分散液中には、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質とから形成された本発明の分子集合体以外にも、そのような分子集合体を形成しなかった両親媒性ブロックポリマーA1、疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質が各々それ自体として残存しうる。このような分散液を凍結乾燥処理に供すると、溶媒が濃縮される過程で、本発明の分子集合体を形成せず残存していた両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質とから、さらに分子集合体を形成することが可能になる。従って、本発明の分子集合体の調製を効率的に行うことが可能になる。
実施例1におけるラクトソームナノ粒子のDLS測定結果(粒度分布; Size Distribution by Intensity)を図1〜に示す。比較例1におけるラクトソームナノ粒子のDLS測定結果(粒度分布)を図〜12に示す。横軸は、粒子径(Size)(nm)を示し、縦軸は、強度(ntensity)(%)を示す。

Claims (11)

  1. サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び
    脂肪族ヒドロキシ酸単位を有する非晶性疎水性ポリマーA2
    を含む分子集合体であって、
    前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位の数は、前記両親媒性ブロックポリマーA1の前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数の2倍を超えるものである分子集合体。
  2. 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位は2〜300個である、請求項1に記載の分子集合体。
  3. 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である、請求項1又は2に記載の分子集合体。
  4. 前記非晶性疎水性ポリマーA2は、脂肪族ヒドロキシ酸単位として、乳酸単位及びグリコール酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一方を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の分子集合体。
  5. 前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位は35個以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の分子集合体。
  6. 前記非晶性疎水性ポリマーA2に含まれる脂肪族ヒドロキシ酸単位は200個以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の分子集合体。
  7. 前記非晶性疎水性ポリマーA2は、前記両親媒性ブロックポリマーA1に対するモル比A2/A1として、0.1/1〜10/1の範囲で含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載の分子集合体。
  8. 粒子径が10〜1000nmである、請求項1〜7のいずれかに記載の分子集合体。
  9. 前記分子集合体は、以下の工程:
    容器中に、前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程、
    前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁に前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2とを含むフィルムを得る工程、及び
    前記容器中に水又は水溶液を加え、前記フィルムを粒子状の分子集合体に変換して分子集合体の分散液を得る工程、
    を含む調製方法によって得られたものである、請求項1〜8のいずれかに記載の分子集合体。
  10. 前記分子集合体は、以下の工程:
    容器中に、前記両親媒性ブロックポリマーA1と前記非晶性疎水性ポリマーA2とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程、
    前記溶液を水又は水溶液中に分散させる工程、及び
    前記有機溶媒を除去する工程、
    を含む調製方法によって得られたものである、請求項1〜8のいずれかに記載の分子集合体。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の分子集合体を含む、物質搬送用ナノキャリア。
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