以下、図面を用いながら、開示の無線通信システム、無線端末、無線基地局および無線通信方法の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
[問題の所在]
まず、各実施形態を説明する前に、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
上述したように、端末間通信の導入により、MTCデバイス同士が基地局を一々経由することなく通信を行うことが可能となるため、基地局に接続する端末数が相対的に減少する。したがって、MTCデバイス等の端末数の増大に基づく基地局の処理負荷の増大は、端末間通信を導入することである程度軽減することができる。言い換えれば、端末間通信は、MTCデバイス等の端末数の増大に基づく基地局の処理負荷の増大を抑制するための有力な解決策となりうると考えられる。なお、本願においては、端末間通信に対する用語として、無線端末と無線基地局との間の無線通信をセルラー通信と称することがある。
ところで、MTCデバイス間で端末間通信を行う無線通信システムにおいて、世の中の全てのMTCデバイス間で垣根なく端末間通信を行えるようにするのは安全性や管理上の観点から現実的ではないと考えられる。そのため端末間通信には、例えば特定のMTCデバイス間でのみ通信を行えるといったような、何らかの制限が設けられる必要があると考えられる。
ここで、そのような制限を比較的容易に実現する方法の一つとして、端末のグループ化(グルーピング)を導入することが考えられる。すなわち、任意の単位でMTCデバイスをグループ化しておき、同じグループに属するMTCデバイス間のみで端末間通信を可能とすることができる。これにより、異なるグループに属するMTCデバイス間の端末間通信に対する制限を、比較的容易に実現することができる。他方、例えば、MTCデバイスそれぞれにおいて端末間通信を許可する他のMTCデバイスを登録しておくことも考えられるが、特に端末数が増えた場合に登録や管理の手間が膨大となるため、グループ化と比較して導入は困難と考えられる。
MTCデバイスをグループ化する際の単位としては、種々の例が考えられる。一例としては、あるビル内に設定された各種防犯センサー装置であるMTCデバイスを1つのグループとすることができる。また、他の一例としては、ある町内の各家屋に設置された電気メーター装置であるMTCデバイスを1つのグループとすることが可能である。これらの例でも分かるように、MTCデバイスのグループ化は、現実世界におけるMTCデバイスの利用態様に馴染みやすい合理的な仕組みであると考えられる。これらの例に限らず、MTCデバイスのグループ化は、任意の単位に基づいて行うことができることは言うまでもない。
さて、以上のようにMTCデバイスにグループ化に基づく端末間通信を適用することにより、同じグループ内でのMTCデバイス間の通信については、基地局の処理負荷を抑制することができる。しかしながら、あるグループ内のMTCデバイスが他のグループ内のMTCデバイスと通信を行いたい場合や、あるグループ内のMTCデバイスがどのグループにも属さない端末や装置と通信を行いたい場合には、依然として基地局を経由する必要がある(すなわちセルラー通信を使用する必要がある)。ここで、MTCデバイスの通信相手となる端末や装置については、MTCデバイスと同じ基地局の配下にある場合と、異なる基地局の配下にある場合とがあるが、いずれにしてもMTCデバイスは自分の属する基地局を経由する必要があることには変わりない。
例えば、あるグループに属するMTCデバイスであるセンサー装置が、どのグループにも属さない遠隔地のサーバ装置に測定データ等を送信したい場合、このような送信は基地局を経由しなければ行うことができない。以下では便宜上、このような、あるグループに属するMTCデバイスが当該グループの外の端末や装置と行う通信を「グループ外通信」と呼ぶことにする。
MTCデバイスによるグループ外通信が基地局を経由する必要があるのは、原理的にやむを得ないと考えられる。しかしながら、例えばあるグループに属する大量のセンサー装置であるMTCデバイスが、それぞれ個別に、遠隔地のサーバ装置に測定データ等を送信しようとするのは問題が大きいと考えられる。MTCデバイスによる個別のグループ外通信それぞれに対し、基地局は制御信号等を送信したり状態を把握する等の各種管理を行う必要があるため、やはり基地局の処理負荷が大きくなるという問題が残ってしまうためである。また、基地局における同時接続可能な端末数の制限の問題もあるためである。
これらの問題を解消するため、次のような方式を考える。基地局がMTCデバイスのグループにおいて一つのMTCデバイスを選択する。そして、この選択されたMTCデバイスに、他のMTCデバイスによるグループ外通信を中継させるのである。こうすると、MTCデバイスのグループにおいて基地局と無線通信を行うのは、選択されたMTCデバイスのみとなる。そのため、基地局が制御信号等を送信したり管理を行う必要のあるMTCデバイスが1つに限定され、前記の処理負荷の問題は軽減されると考えられる。同時接続可能な端末数の制限の問題も解消されることは言うまでもない。さらに、選択されたMTCデバイス以外は基地局と無線通信を行う必要が無くなるため、特に基地局が離れている場合には、消費電力抑制の効果も得られる。
以降は、基地局がMTCデバイスのグループから選択するMTCデバイスを「ヘッドデバイス」または「ヘッド」と称することとする。ヘッドは便宜上の呼称であり、代わりに選択端末、代表端末等と呼ぶこととしても良い。
なお、無線基地局はMTCデバイスのグループからヘッドを選ぶ際、当該無線基地局との間の無線品質が良好なMTCデバイスを選ぶのが望ましい。ヘッドと無線基地局との間の無線品質が悪いと、グループ内の全てのMTCデバイスによるグループ外通信の通信効率が確保できなくなるため、グループ全体のスループットが落ちてしまうからである。ここで無線基地局はヘッドを選ぶ際の無線品質として、上り信号の無線品質と下り信号の少なくともいずれかを用いることができる。基地局は上り信号の無線品質を、例えば、上りの帯域全体に跨って配置される測定用信号であるSRS(Sounding Reference Signal)を用いて測定することができる。また、基地局は下り信号の受信品質を、例えば、端末からフィードバックされるCQI(Channel Quality Indicator)から取得することができる。無線基地局は、グループに属する各MTCデバイスにおけるSRSやCQIに基づいて無線品質を比較し、例えば無線品質が最良のMTCデバイスをヘッドとして選ぶことができる。
以上で説明したように、MTCデバイスのグループにヘッドを導入することにより、稼働中のMTCデバイスの数が多い場合であっても、基地局の処理負荷を抑制しつつグループ外通信を行うことが可能となる。
ところで、以上で説明した無線通信システムにおいては、もしヘッドと基地局との間の通信が不通となった場合、グループに属する全てのMTCデバイスによるグループ外通信が行えなくなる。ここで、不通の原因としては、例えば無線品質の著しい悪化(劣化)、ヘッドの正常終了または異常終了等が考えられるが、これらに限られない。また、不通までは至らなくとも、ヘッドと基地局との間の通信が不調となった場合であっても、グループに属する全てのMTCデバイスによるグループ外通信が効率よく行えなくなる。通信の不調の原因としては、無線品質の悪化や通信の輻輳等が考えられるが、これらに限られない。
このようにヘッドと基地局との間の通信が不通または不調となった場合、そのままではグループ外通信を行うのに支障をきたす。そこで、このような場合には、グループに属するMTCデバイスのうちでヘッド以外のMTCデバイスから、新たなヘッドを選び直す必要がある。このとき、以上で説明した無線通信システムにおいては、以下で述べるような問題を内包している。
図1は、問題を有する無線通信システムの処理シーケンスを示す図である。なお、本願で述べる技術はMTCデバイスに限定されるものではないため、図1及び以降の説明においては、MTCデバイスの上位概念に相当する概念である無線端末に基づいて説明を行う。特に断りのない限り、説明中の無線端末をMTCデバイスと適宜読み変えても構わない。
図1において、3台の無線端末20a〜cは同一のグループに属しているとする。また3台の無線端末20a〜cは無線基地局10のセル内に存在するものとする。なお、以下では特に断りのない限り、3台の無線端末20a〜cを無線端末20と総称することとする。
S101で各無線端末20は、無線基地局10との間の無線接続を確立する。これは無線端末20が無線基地局10に対しランダムアクセスを行って同期を取った後に、無線基地局10から無線通信に関する各種の設定情報を含むRRCシグナリングの受信等を行うことで実現される。無線端末20が無線基地局10との接続を確立した状態は、LTEシステムにおいてはRRC_CONNECTED状態と呼ばれる。
S102で各無線端末20は、SRSを無線基地局10に送信する。SRSの送信タイミングや送信パターン等は、S101で受信したRRCシグナリングから得ることができる。
S103で無線基地局10は、無線端末20が送信したSRSに基づいて、上りの無線品質が最良の無線端末20をヘッドとして決定する。図1の例では、無線基地局10は無線端末20aをヘッドとして選択したものとする。S104で無線基地局10は、決定したヘッドを通知する信号を各無線端末20に送信する。S104の信号を、ここでは便宜上、ヘッド指定通知と呼ぶ。
S105で無線端末20aは、S104のヘッド指定通知の受信に応じ、ヘッドとしての動作を開始する。図1では一例として、S106で無線端末20aは、無線端末20cによる上り(外向き)のグループ外通信を中継している。また、S107で無線端末20aは、無線端末20c宛の下り(内向き)のグループ外通信を中継している。
S108で無線基地局10は、ヘッド20aの不通または不調を検出したとする。ヘッド20aの不通または不調は、例えばヘッド20aの状態が前述したRRC_CONNECTED状態でなくなったかどうかによって検出することができる。これはヘッド20aが無線基地局10との接続を失ったことを意味する。無線基地局10は、これ以外の方法でヘッド20aの不通・不調を検出しても良い。
S109で各無線端末20は、S102と同様にSRSを送信する。なお、SRSを送信するためには、無線端末20は無線基地局10との接続を確立している必要がある。そのためS109では、既に接続を失っているヘッド20a等はSRSを送信することができない。
S110で無線基地局10は、S102と同様に、無線端末20が送信したSRSに基づいて、上りの無線品質が最良の無線端末20を新たなヘッドとして決定する。図1の例では、無線基地局10は無線端末20bを新たなヘッドとして選択したものとする。S111で無線基地局10は、決定した新たなヘッドを通知するヘッド指定通知を各無線端末20に送信する。
S112で無線端末20bは、S111のヘッド指定通知の受信に応じ、ヘッドとしての動作を開始する。図1では一例として、S113で無線端末20bは、無線端末20cによる外向きのグループ外通信を中継している。また、S114で無線端末20bは、無線端末20c宛の内向きのグループ外通信を中継している。
以上で図1に基づいて説明したように、無線基地局10はヘッドを選び直す際に、ヘッドを最初に選ぶ場合と同様に、グループに属する各MTCデバイスにおけるSRSやCQIに基づいて無線品質を比較し、例えば無線品質が最良のMTCデバイスを新たなヘッドとして選ぶことになる。しかしながら、これを行おうとすると、無線基地局10がヘッドとの間の不通や不調を検出してから、グループ内の各MTCデバイスからSRSやCQIを受信し、それらを解析・比較する必要がある。特にグループ内のMTCデバイスが多い場合には、このような一連の処理には秒単位の時間がかかることも想定される。そのため、ヘッドの選び直しの為の処理を行っている最中に、グループ外通信の瞬断が秒単位で発生することになり、通信の安定性の観点で好ましくない。
なお、以上の説明は例としてMTCデバイスに基づいて行ったが、上記の問題は必ずしもMTCデバイスに限られるものではない。上記の問題は、例えばMTCデバイスと同様なもしくは類似した形態で利用される通常の携帯電話端末についても起こりうるものであると考えられる。
以上をまとめると、多数のMTCデバイス(無線端末)が稼働する状況において、MTCデバイス(無線端末)をグループ化してグループ内で端末間通信を許可するとともに、グループ毎にヘッドを決めてグループ外通信を中継させることで、無線基地局10の処理負荷を抑制することができる、しかしながら、係る方式は、ヘッドと無線基地局10との間の通信が不通や不調となった場合に、ヘッドの選び直しに伴う秒単位の瞬断が発生しうるため、好ましくないという問題が残っている。前述したようにこの問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものである。以降では、この問題を解決するための本願の各実施形態を説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態は、無線基地局10とヘッドの間が不通や不調となった場合に、予め選択しておいたサブヘッドがヘッドとなることでグループ内の無線端末20がグループ外通信を引き続き行うことができるようにしたものである。言い換えれば、第1実施形態は、複数無線端末20のうちで選択された選択無線端末20以外の前記複数無線端末20と通信を行う場合に前記選択無線端末20を介する無線基地局10を備える無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記無線基地局10は、前記選択無線端末20である第1無線端末20以外の前記複数無線端末20から、所定の場合に前記選択無線端末20となる第2無線端末20を選択し、前記無線基地局10は、前記第2無線端末20が前記選択無線端末20となることを示す第1無線信号を前記複数無線端末20に送信する無線通信方法を行うものである。
図2は、第1実施形態に係る無線通信システムの処理シーケンスを示す図である。
ここで、本願においてはこれまでは主としてMTCデバイスに焦点を当てて問題点等を説明してきたが、前述したように、本願発明は必ずしもMTCデバイスに限られるものではない。前記の問題点は、例えばMTCデバイスと同様なもしくは類似した形態で利用される通常の携帯電話端末についても起こりうるものであると考えられる。そのため以降は、MTCデバイスの上位概念に相当する無線端末20に基づいて説明を行う。特に断りのない限り、説明中の無線端末20をMTCデバイスと適宜読み変えても構わない。
図2に示される無線通信システムの前提を述べる。3台の無線端末20a〜cはグループ化されているものとする。グループ化は任意の方法で行い、各無線端末20a〜cがグループの存在を認識しているものとする。グループ化は例えば、各無線端末20a〜cに予めオフラインで設定しておくことで実現されても良い。また、各無線端末20a〜cから収集した情報等に基づいて、無線基地局10がグループ化を行うこととしても良い。なお、以下では特に断りのない限り、3台の無線端末20a〜cを無線端末20と総称することとする。
また、図2に示される無線通信システムにおいては、同じグループに属する無線端末間で(具体的には無線端末20a〜cの間で相互に)端末間通信を行えるものとする。端末間通信は任意の方式で行って良く、例えば無線基地局10から予め割当てられた端末間通信用の無線リソースを用いて、各MTCデバイスがキャリアセンス方式に基づいて通信を行うことができる。また、無線基地局10から割当てられた端末間通信用の無線リソースから、ヘッドが各MTCデバイスにリソースを再配分することとしてもよい(いわゆる分散スケジューリング)。あるいは、端末間通信を無線LANであるWiFi(登録商標)等の他無線通信技術に基づいて行うこととしても良い。
図2のS201で各無線端末20は、無線基地局10との無線接続を確立する。具体的には、各無線端末20は、無線基地局10との接続が確立されていない状態であるRRC_IDLE状態から、無線基地局10との接続が確立された状態であるRRC_CONNECTED状態に移行する。無線端末20がRRC_CONNECTED状態に移行するためには、無線端末20は無線基地局10から同期信号の受信、報知情報の受信、ランダムアクセスの実行、および無線通信の設定等の為の上位信号であるRRCシグナリングの送受信等を行うが、ここでは詳細は割愛する。RRC_CONNECT状態の無線端末20は、無線基地局10との上りおよび下りの同期が取れており、無線基地局10との間で上りおよび下りのデータ通信を行うことができる状態であると言える。
図2のS202で各無線端末20は、無線基地局10に対しSRSを送信する。SRSは上りの参照信号(測定用の信号)の一つであり、一般的には上りのスケジューリング(上り送信に割当てる無線リソースの選択)に用いられる。SRSは上り帯域の全体に渡って配置される。SRSは、S201におけるRRCシグナリングで通知されるパラメータに基づいて送信される。SRSに関するパラメータとしては、SRSの送信タイミングを指定するものや、SRSの送信パターンを指定するもの等があるが、ここでは詳細は割愛する。
一方、S202で無線基地局10は、各無線端末20から送信されたSRSを受信及び測定する。そして、SRSの測定結果により、無線基地局10は各無線端末20との間の上りの無線品質を得ることができる。前述したように、SRSは上り帯域の全体に渡って配置されるため、無線基地局10は上り帯域内の周波数毎(リソースブロック単位)に無線品質を得ることができる。無線基地局10は例えば、ある無線端末20に対して周波数毎に得られた無線品質の平均を求めることで、当該無線端末20との間の上りの無線品質とすることができる。
図2のS203で無線基地局10は、S202で得られた各無線端末20との間の上りの無線品質に基づいて、ヘッドおよびサブヘッドを決定する。ここで、サブヘッドとは、ヘッドと無線基地局10との間の通信が不通や不調になった場合等において、グループ内の無線端末20によるグループ外通信を中継する無線端末20のことである。サブヘッドは、所定の場合にヘッドの代理を行う無線端末20、あるいは所定の場合にヘッドとなる無線端末20ということもできる。S203において、例えば無線基地局10は、グループに属する全ての無線端末20のうちで、当該無線基地局10との間の無線品質が最良のものをヘッドとし、2番目のものをサブヘッドとして選択することができる。図2の例では、無線基地局10は無線端末20aをヘッドとして選択するとともに、無線端末20bをサブヘッドとして選択したものとする。
図2のS204で無線基地局10は、グループ内の各無線端末20に対し、S203で選択したヘッドおよびサブヘッドを示す情報を通知する信号を送信する。S204の通知を、ここでは便宜上、ヘッド・サブヘッド指定通知と呼ぶ。ヘッド・サブヘッド指定通知は、例えばDCI(Downlink Control Information)により実現することができる。DCIは下りの制御情報であり、下り制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHannel)を介して送受信される。
図3Aに、第1実施形態におけるヘッド・サブヘッド指定通知に対応するDCIの一例を示す。図3Aでは、既存のDCIに新たに設定した領域に、ヘッドを示す情報(ヘッド識別子)とサブヘッドを示す情報(サブヘッド識別子)を格納している。ヘッド識別子や、サブヘッド識別子としては、無線端末20を一意に識別可能な任意の情報を用いることができ、例えばC-RNTIやMACアドレス等を用いることができる。
一方、図2のS204で各無線端末20(ヘッドやサブヘッドも含む)は、ヘッド・サブヘッド指定通知を含む信号を受信する。これにより、各無線端末20は、どの無線端末20がヘッドおよびサブヘッドなのかを認識することができる。
S205で無線端末20aは、S204のヘッド・サブヘッド指定通知の受信に応じ、ヘッドとしての動作を開始する。また、S205で無線端末20bは、S204のヘッド・サブヘッド指定通知の受信に応じ、サブヘッドとしての動作を開始する。
これにより、S205以降においては、グループ内のヘッド20a以外の無線端末20(サブヘッドも含む)は、ヘッド20aを経由してグループ外通信を行うことが可能となる。ここで、グループ外通信には上りと下りの2種類がある。上りのグループ外通信は、外向きのグループ外通信に相当するものである。また、下りのグループ外通信は、内向きのグループ外通信に相当するものである。
図2では一例として、S206でヘッドである無線端末20aは、無線端末20cによる上りのグループ外通信を中継している。ヘッド20a以外の無線端末20cが無線基地局10に対して上りのグループ外通信を行う場合、無線基地局10に対する無線信号で情報を送信せず、ヘッド20aに対する無線信号で情報を送信する。このときヘッド20a以外の無線端末20cとヘッド20aとの間では端末間通信が行われる。その後ヘッド20aは、ヘッド20a以外の無線端末20cから受信した無線信号に含まれる情報を、無線基地局10に対する上りの無線信号に載せて送信する。このときの上りの無線信号は、送信する情報がデータである場合は上り共有チャネル(PUSCH: Physical Uplink Shared CHnnel)を介して送信され、送信する情報が制御情報である場合は上り制御チャネル(PUCCH: Physical Uplink Control CHnnel)を介して送信される。S206の処理において、ヘッド20aは、ヘッド20a以外の無線端末20cと無線基地局10との間の通信を中継する役割を担っていることが分かる。
また、図2では一例として、S207でヘッドである無線端末20aは、無線端末20c宛の下りのグループ外通信を中継している。無線基地局10がヘッド20a以外の無線端末20cに対して下りのグループ外通信を行う場合、ヘッド20a以外の無線端末20cに対する下りの無線信号で情報を送信せず、ヘッド20aに対する下りの無線信号で情報を送信する。このときの下りの無線信号は、送信する情報がデータである場合は下り共有チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared CHnnel)を介して送信され、送信する情報が制御情報である場合は下り制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHnnel)を介して送信される。その後ヘッドは、無線基地局10から受信した下りの無線信号に含まれる情報を、ヘッド20a以外の無線端末20cに対する無線信号に載せて送信する。このときヘッド20aとヘッド以外の無線端末20cとの間では端末間通信が行われる。S207の処理において、ヘッド20aは、ヘッド20a以外の無線端末20cと無線基地局10との間の通信を中継する役割を担っていることが分かる。
このように、ヘッド20aは、ヘッド20a以外の無線端末20cによるグループ外通信においては中継装置の役割を担う。一方、ヘッド20a自身がグループ外通信を行う場合もある(不図示)。例えば、ヘッド20a自身もセンサー装置であり、ヘッド20a自身が測定したデータを遠隔地のサーバに送りたい場合には、ヘッド20aは上りのグループ外通信を行う。この場合、ヘッド20aは中継装置ではなく、始端装置として、情報を上りの無線信号に載せて無線基地局10に送信すれば良い。一方、無線基地局10がヘッド20aに対して下りのグループ外通信を行う場合、無線基地局10は情報を下りの無線信号に載せてヘッド20aに送信すれば良い。そしてヘッド20aは、中継装置として振る舞うことなく、終端装置として情報を受信すれば良い。
図2の説明に戻って、S208で無線基地局10は、ヘッド20aとの間の通信の不通や不調を検出する。例えば、無線基地局10は配下の無線端末20の状態を常時監視し、ヘッド20aの状態が前述したRRC_CONNECTED状態ではなくなった(あるいはRRC_IDLE状態となった)ことを検出した場合に、ヘッド20aとの間の通信が不通や不調となったと判断する。無線基地局10はこれ以外の方法によってヘッド20aとの間の通信の不通や不調を検出しても良い。例えば、ヘッド20aとの間の通信における復号・復調の失敗の発生頻度や往復遅延時間(RTT: Round Trip Time)等に基づいて、不通や不調を検出することとしてもよい。
図2のS209で無線基地局10は、S208におけるヘッド20aとの通信不通や不調の検出に応じて、サブヘッド20bをヘッドとする旨の通知を行う信号を、グループ内の各無線端末20に対して送信する。この通知を、ここでは便宜上、ヘッド昇格通知と称する。ヘッド昇格通知は、例えば下りの制御情報であるDCIにより実現することができる。
図3Bに、第1実施形態におけるヘッド昇格通知に対応するDCIの一例を示す。図3Bでは、既存のDCIに新たに設定した領域に、サブヘッド2bがヘッドとなる(サブヘッド2bがヘッドに昇格する)こと示す情報(ヘッド昇格情報)を格納している。ヘッド昇格情報は1ビットで表すこともできるが、複数ビットで表すこととしても良い。
図2のS209で各無線端末20(サブヘッド2bも含む)は、ヘッド昇格通知を含む信号を受信する。これにより、各無線端末20は、S204で認識したサブヘッド2bがヘッドとなることを認識する。
なお、図2のS204においては、ヘッド・サブヘッド指定通知が無線基地局10から各無線端末20に無線送信(セルラー通信に基づく)されている例を示している。しかしながら、ヘッド・サブヘッド指定通知の送信に端末間通信を利用することとしてもよい。この場合、無線基地局10はヘッド・サブヘッド指定通知をサブヘッド2bのみに無線送信(セルラー通信に基づく)する。ヘッドは不通または不調だからである。そして、サブヘッド2bが、他の無線端末20cに対し、端末間通信に基づいてヘッド・サブヘッド指定通知を送信することができる。
S210で無線端末20bは、S209のヘッド昇格通知の受信に応じ、ヘッドとしての動作を開始する。これにより、S209以降においては、グループ内の新たなヘッド2b以外の無線端末20cは、新たなヘッドである無線端末20bを経由してグループ外通信を行うことが可能となる。図2では一例として、S211で無線端末20bは、無線端末20cによる外向きのグループ外通信を中継している。また、S212で無線端末20bは、無線端末20c宛の内向きのグループ外通信を中継している。新たなヘッド2bを経由してのグループ外通信は、(元の)ヘッド2aを経由したグループ外通信と同様に行えばよいため、説明は割愛する。
以上説明したように、図2に示す第1実施形態に係る無線通信システムによれば、無線基地局10とヘッド2aの間が不通や不調となった場合に、予め選択しておいたサブヘッド20bがヘッドとなることでグループ内の無線端末20がグループ外通信を引き続き行うことができる。これにより、無線基地局10とヘッド20aの間が不通や不調となった場合に発生する、グループ外通信における瞬断を低減することが可能となる。
なお、S204において各無線端末20がヘッドとサブヘッドを認識した後、サブヘッドである無線端末20bはS204以降も無線基地局10との接続を維持する(言い換えればRRC_CONNECTED状態を維持する)のが望ましい。そうすることにより、サブヘッド20bはS206のヘッド昇格通知を無線基地局10から受信すると直ちに、他無線端末20cによるグループ外通信の中継を開始することができるからである。しかしながら、サブヘッド20bはS204以降に無線基地局10との接続を維持しない(言い換えればRRC_CONNECTED状態を維持しない)こととしても構わない。その場合であっても、サブヘッド20bを予め選んでいることには変わりがないため、ヘッド20aの不通や不調時におけるヘッドの選び直しに伴う瞬断は低減されるからである。ただしこの場合、サブヘッド20bはS206のヘッド昇格通知を無線基地局10から受信してから、ランダムアクセス等を行って無線基地局10に接続する必要があるため、ヘッド20aの不通や不調時における瞬断の低減の効果は薄くなる。
ところで、S204において各無線端末20がヘッドとサブヘッドを認識した後、ヘッド20aとサブヘッド20b以外の無線端末20cの無線基地局10に対する処理としては次の2通りが考えられる。
1つ目の方式は、ヘッド20aとサブヘッド20b以外の無線端末20cも、S204以降も無線基地局10との接続を維持する(言い換えればRRC_CONNECTED状態を維持する)ものである。この方式では、各無線端末20(ヘッド20aとサブヘッド20bも含む)が定期的にSRSを無線基地局10に送信する。そして、無線基地局10は各無線端末20から受信したSRSに基づいて、必要に応じて、ヘッドやサブヘッドを選択し直し(更新し)、各無線端末20に通知する。こうすることで、最新の無線品質を踏まえてヘッドやサブヘッドを選択することが可能となる。ただし、1つ目の方式によれば、無線基地局10が情報の送受信を行うのはヘッド20aのみであるためデータ通信等に伴う処理負荷は軽減されるものの、全ての無線端末20との接続を維持することになる。そのため、1つ目の方式によれば無線基地局10に無線端末20の管理負担が掛かるとともに、無線基地局10の接続可能無線端末数に制限がある場合等はこの方式は採用が困難なことも考えられる。
これに対し、2つ目の方式は、ヘッド20aとサブヘッド20b以外の無線端末20cは、S204以降は無線基地局10との接続を維持しない(言い換えればRRC_CONNECTED状態を維持しない)ものである。この場合、1つ目の方式のように最新の無線品質を踏まえてヘッドやサブヘッドを選択することはできない。しかしながら、2つ目の方式によれば、無線基地局10が接続を維持するのはヘッド20aとサブヘッド20bのみで良い。そのため、2つ目の方式によれば、無線基地局10に無線端末20の管理負担が掛からないとともに、無線基地局10の接続可能無線端末数に制限がある場合等も容易に採用することができる。
以上説明した第1実施形態に係る無線通信システムによれば、無線基地局10とヘッド20aの間が不通や不調となった場合に、予め選択しておいたサブヘッド20bがヘッドとなることでグループ内の無線端末20がグループ外通信を引き続き行うことができる。これにより、無線基地局10とヘッド20aの間が不通や不調となった場合に発生する、グループ外通信における瞬断を低減することが可能となる。
[第2実施形態]
第1実施形態では、上りの無線信号の品質(具体的にはSRSの測定結果が示す品質等)に基づいてヘッドとサブヘッドの選択が行われていた。これに対し、第2実施形態は、下りの無線信号の品質(具体的にはCQIの示す品質等)に基づいてヘッドとサブヘッドの選択を行うものである。
図4に、第2実施形態に係る無線通信システムの処理シーケンスの一例を示す。図4に示される第2実施形態は、図2に示される第1実施形態と共通する点が多い。以下では第2実施形態において第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
まず、図4のS301は、図2のS201と同様の処理であるため、ここでの説明は割愛する。
次に図4のS302において無線基地局10は、下りの参照信号(RS: Reference Signal)を送信する。下りのRSは測定用の信号であり、セル毎に異なるパターンを有するが詳細はここでは割愛する。一方、S302において、無線端末20は無線基地局10が送信した下りRSに基づいて、下りの無線品質を測定する。そして無線端末20は、測定結果に基づいて、下りの無線品質を示す情報であるCQI(Channel Quality Indicator)を生成する。
次に図4のS303において無線端末20は、S302で生成したCQIを無線基地局10に送信(フィードバック)する。CQIの送信タイミングは、S301で受信したRRCシグナリングにより無線基地局10から指定されるが、ここでは詳細は割愛する。一方S303で無線基地局10は、無線端末20が送信したCQIを受信する。
そして図4のS304において無線基地局10は、S303で受信したCQIに基づいて、ヘッドとサブヘッドを決定する。図4のS304は図2のS203とほぼ同様の処理に相当するが、図2のS203ではSRSの測定結果に基づいてヘッドとサブヘッドを決定するのに対し、CQIに基づいてヘッドとサブヘッドを決定する点が異なる。別の言い方をすれば、図2のS203では上りの無線品質に基づいてヘッドとサブヘッドを決定するのに対し、図4のS304では下りの無線品質に基づいてヘッドとサブヘッドを決定している。
図4のS305〜S313は、図2のS204〜S212とそれぞれ同様の処理であるため、ここでの説明は割愛する。
以上説明した第2実施形態に係る無線通信システムによれば、第1実施形態に係る無線通信システムと同様に、無線基地局10とヘッド2aの間が不通や不調となった場合に、予め選択しておいたサブヘッド20bがヘッドとなることでグループ内の無線端末20がグループ外通信を引き続き行うことができる。これにより、無線基地局10とヘッド20aの間が不通や不調となった場合に発生する、グループ外通信における瞬断を低減することが可能となる。
[サブヘッドの再決定に関する変形例]
以下では上述した各実施形態につき、いくつか変形例(バリエーション)を説明する。
第1および第2実施形態においては、サブヘッド20bが新たなヘッドとしての動作を開始すると、サブヘッドが存在しなくなる。そのため、新たなヘッド20b(元のサブヘッド)が不通または不調となると、次にヘッドに昇格すべきサブヘッドが存在しないため、グループ外通信が途切れてしまうことになる。
そこで、無線基地局10は、例えばヘッド昇格通知を各無線端末20に送信した後に、新たなサブヘッドを決定し、当該サブヘッドを各無線端末20に通知することができる。これにより、新たなヘッド20b(元のサブヘッド)が不通または不調となった場合であっても、新たなサブヘッドが次のサブヘッドになれるため、グループ外通信が途切れなく行えるようになる。ここで、新たなサブヘッドの決定は、第1実施形態のように上りの無線品質(SRS)に基づいて決定しても良いし、第2実施形態のように下りの無線品質(CQI)に基づいて決定しても良い。なお、無線基地局10は、ヘッド2aの不通または不調を検出してから、ヘッド昇格通知を各無線端末20に送信する前に、新たなサブヘッドを決めることも一応は可能である。しかし、そうするとヘッド昇格通知の送信が遅れてグループ外通信の瞬断が大きくなり、本願発明の効果が得られなくなるので好ましくない。
[サブヘッドの決定規則に関する変形例]
第1および第2実施形態においては、一例として、無線基地局10は上りまたは下りの無線品質が2番目の無線端末20bをサブヘッドと決定している。しかしながら、無線基地局10によるサブヘッドの決定規則はこれに限られるものではない。
例えば、無線基地局10は、ヘッドが不通または不調になった場合にそれと一緒に不通または不調になる可能性が低い無線端末20を、サブヘッドとして決定することができる。これは例えば、無線基地局10が無線端末20の位置情報を取得および使用することで実現できる。具体的には、まず、各無線端末20がGPS機能等により測定した自らの位置を示す位置情報を無線基地局10に送信する。そして無線基地局10は、無線品質に基づいてヘッドを決定した後に、各無線端末20から収集した位置情報を用いて、ヘッドから最も距離が遠い無線端末20をサブヘッドとして決定することができる。2つの無線端末20間の距離が離れるほど、2つの無線端末20における無線品質の特性の差が大きくなるため、こうして決定されたサブヘッドはヘッドと一緒に不通または不調になりにくいと考えられる。
[サブヘッドの動作に関する変形例]
第1および第2実施形態においては、サブヘッド20bはヘッドに昇格して初めて、同じグループの他の無線端末20cによるグループ外通信の中継を行うようになる。言い換えれば、サブヘッド20bはヘッドに昇格する前は、他の無線端末20cによるグループ外通信の中継を行わない。しかしながら、サブヘッド20bはヘッドに昇格する前も他の無線端末20cによるグループ外通信の中継を行うようにすることもできる。
例えば、上り(外向き)のグループ外通信の場合は次のようにすることができる。グループ外通信を行いたい他の無線端末20cは、ヘッド20aとサブヘッド20bの両方に上りデータを送信する。そして、ヘッド20aとサブヘッド20bは、受信した上りデータを無線基地局10に中継するために、当該上りデータを同じ無線リソース(周波数・時間)を用いて無線基地局10に送信する。このときのヘッド20aとサブヘッド20bによる無線基地局10への送信は、LTE-Aシステムにおける多地点協調(CoMP: Coordinated Multi Point)の共同送信(JT: Joint Transmission)の技術に基づいて実現することができる(ここでは詳細は割愛する)。このようにすることで、無線基地局10にとってサブヘッド20bによる送信信号が希望信号となるため、信号強度が強化されるという効果が得られる。また、もしヘッドが不通または不調になった場合、サブヘッド20bがヘッドに昇格しなくとも、いわゆるソフトハンドオーバーと同様の原理により、グループ外通信を瞬断なく行うことが可能となる。
一方、下り(内向き)のグループ外通信の場合は次のようにすることができる。無線基地局10は、他の無線端末20c(グループ内のヘッド20aとサブヘッド20b以外の無線端末20c)に対する下りデータをヘッド20aとサブヘッド20bの両方に対して送信する。ここでのヘッド20aとサブヘッド20bに対する送信においては、別々の無線リソース(周波数・時間)を用いて行っても良いし、同じ無線リソースを用いることもできる。そしてヘッド20aとサブヘッド20bは、受信した下りデータを、端末間通信により他の無線端末20cに送信する。このとき他の無線端末20cは、LTEシステムにおけるHARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)と同様の原理に基づき、ヘッド20aから受信した下りデータとサブヘッド20bから受信した下りデータを合成することとしても良い(詳細は割愛する)。また、上りの場合と同様に、もしヘッド20aが不通または不調になった場合、サブヘッド20bがヘッドに昇格しなくとも、いわゆるソフトハンドオーバーと同様の原理により、グループ外通信を瞬断なく行うことが可能となる。
[その他の変形例]
以上で説明した各実施形態においては、ヘッド・サブヘッド指定通知やヘッド昇格通知を下りの制御情報であるDCIにより実現している。しかしながら、ヘッド・サブヘッド指定通知やヘッド昇格通知はこれ以外の情報により実現することとしても良い。例えば、ヘッド・サブヘッド指定通知やヘッド昇格通知は、上位レイヤの制御信号であるRRC信号により実現することができる。その場合、ヘッド・サブヘッド指定通知やヘッド昇格通知は下りのRRC信号となり、下り共有チャネル(PDSCH)を介して送受信される。
以上で説明した第1実施形態においては上りの無線品質に基づいてヘッドおよびサブヘッドを決定しており、第2実施形態においては下りの無線品質に基づいてヘッドおよびサブヘッドを決定している。しかしながら、ヘッドおよびサブヘッドの決定は、これらに限られるわけではなく、例えばこれらを組み合わせることとしてもよい。例えば、ヘッドおよびサブヘッドの決定を、上りの無線品質と下りの無線品質とを統合した指標に基づいて行うことができる。また、ヘッドおよびサブヘッドを、上り通信と下り通信とで別のものとすることも可能である。その場合、上り通信用のヘッドおよびサブヘッドは上りの無線品質に基づいて決定し、下り通信用のヘッドおよびサブヘッドは下りの無線品質に基づいて決定することができる。
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に図5に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。図5に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10(eNB: evolved Node B)と、無線端末20(UE: User Equipment)とを有する。無線基地局10は、セルを形成している。図5に示す例では、無線基地局10aが形成するセルに無線端末20a〜eが存在している。また、無線基地局10bが形成するセルに無線端末20f〜gが存在している。
無線基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。無線基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の無線基地局とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
無線基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理および制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理および制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、無線基地局10は、マクロ無線基地局、ピコ無線基地局等の小型無線基地局(マイクロ無線基地局、フェムト無線基地局等を含む)の他、様々な規模の無線基地局であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信およびその制御)も本願の無線基地局10に含まれることとしてもよい。
一方、無線端末20は、無線基地局10と無線通信(便宜上、セルラー通信と呼ぶ)を行う。また、無線端末20は、他の無線端末と無線通信(便宜上、端末間通信と呼ぶ)を行う。セルラー通信は、例えばLTEやLTE−Aに基づいて実現される。また、端末間通信は、例えばLTEやLTE−Aに基づいて実現することもできるし、WiFi(登録商標)やWiMAX(登録商標)等の無線LAN、Bluetooth(登録商標)、GPS、Zigbee(登録商標)、GSM(登録商標、Global System for Mobile communications)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等を用いることもできる。
図5に示されるように、本願においては、無線端末20がグループ化されている。図5に示す例では、無線端末20a〜cの3つがグループを形成している。また、無線端末20のグループにおいては、ヘッドとサブヘッドとなる端末が1つずつ決定される。図5では、例えば無線端末20aがヘッドであり、無線端末20bがサブヘッドであるとする。
そして、無線端末は同一のグループ内の他の無線端末との間でのみ、端末間通信を行うことができる。図5の例では、例えば無線端末20a、20b、20cの間でそれぞれ端末間通信を行うことができる。これに対し、例えば無線端末20bと無線端末20dとの間や、無線端末20cと無線端末20fとの間では端末間通信を行うことはできない。
一方、グループに属する無線端末が当該グループに属さない無線端末等と通信(グループ間通信)を行いたい場合、ヘッドおよび無線基地局を介して通信を行う。例えば、無線端末20bと無線端末20dが通信を行う場合は、ヘッド20aと無線基地局10aを経由して通信を行う。また、無線端末20cと無線端末20gが通信を行う場合は、ヘッド20a、無線基地局10a、および無線基地局10bを経由して通信を行う。
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線基地局10との送受信およびその制御)も本願の無線端末20に含まれることとしてもよい。
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
なお、無線基地局10、無線端末20の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、無線基地局10、無線端末20の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、図6〜図7に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。
図6は、無線基地局10の構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、無線基地局10は、送信部11と、受信部12と、制御部13とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介してセルラー通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部11は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を送信する。下りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続状態の無線端末20に個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20に個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)シグナリングを含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
送信部11が送信する信号の具体例としては、図2または図4において無線基地局10により送信される各信号が挙げられる。具体的には、送信部11は、図2または図4における接続確立のための各種信号(下り信号のみ)、ヘッド・サブヘッド指定通知、下りRS、下りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)、ヘッド昇格通知を送信しうる。
受信部12は、無線端末20から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介してセルラー通信で受信する。受信部12は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を受信する。上りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続状態の無線端末20から個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20から個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)シグナリングを含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
受信部12が受信する信号の具体例としては、図2または図4において無線基地局10により受信される各信号が挙げられる。具体的には、受信部12は、図2または図4における接続確立のための各種信号(上り信号のみ)、SRS、CQI、上りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)を受信しうる。
制御部13は、送信するデータや制御情報を送信部11に出力する。制御部13は、受信されるデータや制御情報を受信部12から入力する。制御部13は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の無線基地局からデータや制御情報を取得する。制御部13はこれら以外にも送信部11が送信する各種の送信信号や受信部12が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。
制御部13が制御する処理の具体例としては、図2または図4において無線基地局10において実行される各種処理が挙げられる。具体的には、制御部13は、図2または図4における接続確立のための各種信号の送受信、SRSの受信、下りRSの送信、CQIの受信、ヘッド・サブヘッドの決定、ヘッド・サブヘッド指定通知の送信、上りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)の受信、下りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)の送信、ヘッド不通・不調の検出、ヘッド昇格通知の送信の各処理を制御しうる。
図7は、無線端末20の構成を示す機能ブロック図である。図7に示すように、無線端末20は、送信部21A,21Bと、受信部22A,22Bと、制御部23A,23Bと、を備える。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
送信部21Aは、データ信号や制御信号を、アンテナを介してセルラー通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部21Aは、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を送信する。上りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPUSCHを含む。また、上りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPUCCHを含む。送信する信号は例えば、接続中の無線基地局10へ個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続中の無線基地局10へ個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)シグナリングを含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
送信部21Aが送信する信号の具体例としては、図2または図4において各無線端末20により無線基地局10へ送信される各信号が挙げられる。具体的には、送信部21Aは、図2または4における接続確立のための各種信号(上り信号のみ)、SRS、CQI、上りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)を送信しうる。
受信部22Aは、無線基地局10から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介してセルラー通信で受信する。受信部22Aは、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を受信する。下りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPDSCHを含む。また、下りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPDCCHを含む。受信する信号は例えば、接続中の無線基地局10から個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続中の無線基地局10から個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)シグナリングを含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。
受信部22Aが受信する信号の具体例としては、図2または図4において無線基地局10から各無線端末20により受信される各信号が挙げられる。具体的には、受信部22Aは、図2または図4における接続確立のための各種信号(下り信号のみ)、ヘッド・サブヘッド指定通知、下りRS、下りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)、ヘッド昇格通知を受信しうる。
制御部23Aは、送信するデータや制御情報を送信部21Aに出力する。制御部23Aは、受信されるデータや制御情報を受信部22Aから入力する。制御部23Aはこれら以外にも送信部21Aが送信する各種の送信信号や受信部22Aが受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。
制御部23Aが制御する処理の具体例としては、図2または図4において各無線端末20において実行される各種処理で端末間通信に係るもの以外の処理が挙げられる。具体的には、制御部23Aは、図2または図4においては、接続確立のための各種信号の送受信、SRSの送信、下りRSの受信、CQIの送信、ヘッド・サブヘッド指定通知の受信、ヘッド又はサブヘッドの開始、上りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)の送信、下りデータ(無線基地局と無線端末20aや20bとの間)の受信、ヘッド昇格通知の受信の各処理を制御しうる。
送信部21Bは、データ信号や制御信号を、アンテナを介して端末間通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部21Bが送信する信号の具体例としては、図2または図4において各無線端末20により端末間通信で送信される各信号が挙げられる。具体的には、送信部21Bは、図2または4における上りデータ(無線端末20cから無線端末20aや20bへの間)や下りデータ(無線端末20aや20bから無線端末20cへの間)を送信しうる。
受信部22Bは、無線基地局から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して端末間通信で受信する。受信部22Bが受信する信号の具体例としては、図2または図4において各無線端末20により端末間通信で受信される各信号が挙げられる。具体的には、送信部22Bは、図2または4における上りデータ(無線端末20cから無線端末20aや20bへの間)や下りデータ(無線端末20aや20bから無線端末20cへの間)を受信しうる。
制御部23Bは、送信するデータや制御情報を送信部21Bに出力する。また、制御部23Bは、受信部22Bから受信されるデータや制御情報を入力する。
制御部23Bが制御する処理の具体例としては、図2または図4において各無線端末20において実行される各種処理で端末間通信に係る処理が挙げられる。具体的には、制御部23Bは、図2または図4においては、上りデータ(無線端末20cから無線端末20aや20bへの間)の送受信や下りデータ(無線端末20aや20bから無線端末20cへの間)の送受信の各処理を制御しうる。
また、端末間通信は任意の方式で行って良く、例えば無線基地局10から予め割当てられた端末間通信用の無線リソースを用いて、無線端末がキャリアセンス方式に基づいて通信を行うことができる。あるいは、端末間通信を無線LANであるWiFi(登録商標)等の他無線通信技術に基づいて行うこととしても良い。端末間通信を実現するための他無線通信技術としては、ブルートゥース(登録商標、Bluetooth)、Zigbee(登録商標)、GSM(登録商標、Global System for Mobile communications)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、赤外線通信等を用いることもできる。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図8〜図9に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。
図8は、無線基地局10のハードウェア構成を示す図である。図8に示すように、無線基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ31を備えるRF(Radio Frequency)回路32と、CPU(Central Processing Unit)33と、DSP(Digital Signal Processor)34と、メモリ35と、ネットワークIF(Interface)36とを有する。CPUは、スイッチ等のネットワークIF36を介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。メモリ35は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。送信部11および受信部12は、例えばRF回路32、あるいはアンテナ31およびRF回路32により実現される。制御部13は、例えばCPU33、DSP34、メモリ35、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
図9は、無線端末20のハードウェア構成を示す図である。図9に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ41A,41Bをそれぞれ備えるRF回路42A,42Bと、CPU43A,43Bと、メモリ44A,44Bとを有する。さらに、無線端末20は、CPU43A,43Bに接続されるLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を有してもよい。メモリ44A,44Bは、例えばSDRAM等のRAM、ROM、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。送信部21Aおよび受信部22Aは、例えばRF回路42A、あるいはアンテナ41AおよびRF回路42Aにより実現される。制御部23Aは、例えばCPU43A、メモリ44A、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC、FPGA、LSI等が挙げられる。同様に、送信部21Bおよび受信部22Bは、例えばRF回路42B、あるいはアンテナ41BおよびRF回路42Bにより実現される。制御部23Bは、CPU43B、メモリ44B、不図示のデジタル電子回路等により実現される。
なお、図9に示す例では無線端末20はアンテナ、RF回路、CPUを2個ずつ備えているが、これらの全部または一部は1個であっても構わない。一例として、アンテナを1個とし、アンテナ41Aと41Bの両方を兼ねるようにすることができる。RF回路、CPUについても同様である。