JPWO2014057999A1 - 細胞内アセチル化のイメージング試薬 - Google Patents

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Abstract

細胞内で進行するアセチル化反応、例えばミトコンドリア内においてアセチルCoAの作用により進行するアセチル化反応を高感度かつ効率的にイメージングするための試薬であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含む試薬。

Description

本発明は細胞内で進行するアセチル化を高精度かつ簡便にイメージングすることができる試薬に関する。
従来、カルシウムイオンなどのイオン種、一酸化窒素、又は活性酸素種などの測定対象物と反応して生体内に存在する測定対象物をイメージングすることができる蛍光プローブが種々提案され実用化されている(例えばカルシウムイオン検出用の蛍光プローブとしてFluo-4などが汎用されている)。これらの蛍光プローブは測定対象物の非存在下においては実質的に無蛍光性又は弱蛍光性であり、測定対象物を特異的に捕捉し、あるいは測定対象物と特異的に反応することにより強い蛍光を発することを特徴としている。また、生体内に存在するペプチダーゼと反応して加水分解を受けることにより強い蛍光を発する蛍光プローブも提案されており、がんの診断にも応用されている(国際公開WO 2011/87000)。
蛍光プローブを構成する蛍光発色団としては、例えば、フルオレセイン骨格やローダミン骨格、又はインダセン骨格(特開平10-338695号公報及び特開平11-5796号公報などを参照のこと)などの母核構造が利用されている。ローダミンはフルオレセインと同様に古くから知られる蛍光色素であり、水中で高い蛍光量子収率を持つことから、蛍光性の標識剤として広く生物学の領域で利用されている。ローダミン骨格を持つ蛍光プローブとしては、例えば、一酸化窒素検出用蛍光プローブ(国際公開WO1999/001447)や次亜塩素酸検出用蛍光プローブ(国際公開WO2007/100061)などが提案されている。
一方、細胞内における重要なアセチル化反応の一例としてヒストンのアセチル化反応を典型的な例として挙げることができるが、このアセチル化ではミトコンドリア内でトリカルボン酸サイクルにおいて産生されるアセチルCoAが触媒的アシル化剤として使用されている。ミトコンドリアは細胞代謝のエネルギー源としてのATPを産生する細胞内小器官であり、電子伝達系システムを有することから、様々の酸化還元色素で染色することができることが知られている。特に正電荷を帯びた低分子の有機色素は迅速に細胞膜を通過してミトコンドリア膜を染色できることが知られており、このような色素の染色強度がミトコンドリア膜電位に依存することを利用して細胞内のミトコンドリアの機能評価に使用されている。このように正電荷を帯びた有機色素として例えばローダミン123を挙げることができるが、ローダミン123は細胞膜を容易に透過してミトコンドリアに蓄積され、ミトコンドリアの膜電位(ATP生成能を反映する)に依存して吸収及び励起発光スペクトルが変化する。従って、ローダミン123によりミトコンドリアでのATP産生量を推定することができるとされている(Biochim. Biophys. Acta, 850, 436-448, 1986)。
しかしながら、従来、細胞内で進行するアセチル化反応、特にエネルギー産生に関与しているミトコンドリア内で産生されているアセチルCoAによるアセチル化反応を高感度かつ効率的にイメージングする技術は開発されておらず、この技術の開発が切望されている。なお、生体内や細胞内において蛍光プローブを人工的な触媒又は反応促進剤と組み合わせて生体内や細胞内で進行する各種の反応、例えば細胞内アセチル化反応をイメージングした例は知られていない。
国際公開WO1999/001447 国際公開WO2007/100061 Biochim. Biophys. Acta, 850, 436-448, 1986
本発明は細胞内で進行するアセチル化反応、例えばミトコンドリア内においてアセチルCoAの作用により進行するアセチル化反応を高感度かつ効率的にイメージングする手段を提供することを課題としている。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体を蛍光プローブとして用い、この蛍光プローブをトリブチルホスフィンなどのアシル化触媒又はアシル化反応促進剤と組み合わせて用いることにより、細胞内のアセチル化を極めて高感度かつ短時間に測定することができ、例えばミトコンドリア内においてアセチルCoAの作用により進行するアセチル化反応を簡便にイメージングできることを見出した。本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明により、細胞内のアセチル化反応を可視化するための試薬であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含む試薬が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、細胞内のアセチル化反応がアセチルCoAにより進行するアセチル化反応である上記の試薬;細胞内のミトコンドリアで産生されるアセチルCoAによるアセチル化反応を可視化するための上記の試薬が提供される。
本発明の別の好ましい態様により、細胞内のアセチルCoAを測定するための試薬であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含む試薬、及び細胞内のアセチルCoAを可視化するための試薬であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含む試薬が提供される。
別の観点からは、本発明により、細胞内のアセチル化反応を可視化するためのキットであって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含むキット、及び細胞内のアセチルCoAを測定するためのキットであって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含むキットが提供される。
また、細胞内のアセチル化反応を可視化するためにアシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤と組み合わせて用いるためのローダミン誘導体であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体、及び細胞内のアセチル化反応を可視化するために、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と組み合わせて用いるためのアシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤が本発明により提供される。
さらに別の観点からは、本発明により、細胞内のアセチル化反応を可視化する方法であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを細胞内に導入する工程、及びアセチル化された該ローダミン誘導体の蛍光を測定する工程を含む方法、及び細胞内のアセチルCoAを測定する方法であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを細胞内に導入する工程、及びアセチル化された該ローダミン誘導体の蛍光を測定する工程を含む方法が提供される。
生体内でアセチル化反応は、たとえばタンパク質の翻訳後のアセチル化や遺伝子発現を制御するヒストンのアセチル化など種々の生体内物質を対象として行われているが、これらのアセチル化はアセチルCoAが関与する酵素触媒反応によって行われている。生体内のアセチルCoAはミトコンドリアで産生され、TCAサイクルに関与していることから、生体内でのアセチル化反応を可視化することによりアセチルCoAのイメージングが可能になる。アセチルCoAをイメージングしてその分布や局在を確認することにより、例えば、細胞レベルでの動脈硬化や高脂血症などの疾患の発症原因や病態の進行などについて病理学的及び生理学的な解明が可能になる。
ローダミン誘導体として化合物3(1μM)に対してアシル化触媒としてトリブチルホスフィン(10 mM)を混合し、1分後にアセチル化剤として化合物6を添加して経時的にアセチル化の進行を測定した結果を示した図である。 化合物6の濃度と化合物6添加後1分における蛍光強度増加との相間を示した図である。 HeLa細胞をローダミン誘導体である化合物3及びシアン蛍光タンパク(CFP)により二重染色した結果を示した図である。左はCFP単独(励起光:440 nm/蛍光:460-500 nm)、中央は化合物3(RH-NH2)単独(励起光:559 nm/蛍光:570-670 nm)、右は重ね合わせた図である。 HeLa細胞内で化合物3(10μM)によりアセチル化を可視化した結果を示した図である。(a)37℃でHeLa細胞内においてトリブチルホスフィン(5 mM)をアシル化触媒とするアセチル化により経時的に蛍光が増強される様子を示す。アシル化触媒は2分の時点で添加し、アセチル化剤としてN-メトキシジアセトアミド(NMD, 10 mM)を7分の時点で添加し、蛍光強度の増強(F/F0)は励起波長を550 nm、蛍光波長を575 nmとして5個の細胞から得た結果の平均値として算出した。 (b)HeLa細胞の蛍光像であり、スケールバーは10μmを示す。(c)は1分後、(d)は5分後、及び(e)は10分後のHeLa細胞のカラーイメージである。
本発明において用いられるローダミン誘導体は、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体であればよく、その化学構造は特に限定されることはない。本明細書において、ローダミン誘導体の用語は、3位と6位に2個のアミノ基を有し(これらのうちの1つは4級アミノ基である)、9位にフェニル基を有するキサンテンを基本骨格とする化合物、又は該キサンテンの酸素原子をジアルキル置換されたケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子に置き換えた化合物を意味しているが、その範囲は当業者に容易に理解されよう。アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発する性質については、R1が置換するアミノ基をアセチル化した化合物を調製し、アセチル化の前後における蛍光スペクトルを測定することにより、本発明の目的に適するローダミン誘導体であるか否かを容易に判定することができる。
本発明において使用可能なローダミン誘導体の好ましい一例として、例えば、以下の一般式(I):
(式中、R1は水素原子又はC1-6アルキル基を示し;R2は水素原子、C1-6アルキル基、又はカルボキシル基を示し;R3及びR5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又はC1-6アルキル基を示し;R4及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はC1-6アルキル基を示し;R7及びR8はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示すが、R7が示すアルキル基とR3が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく、及び/又はR8が示すアルキル基とR4が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく;R9及びR10はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示すが、R9が示すアルキル基とR5が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく、及び/又はR10が示すアルキル基とR6が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく;X-は対イオンを示し;Yは酸素原子又はM(R11)(R12)(Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示し;R11及びR12はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示す)を示す) で表されるローダミン誘導体を挙げることができるが、本発明に使用可能なローダミンは上記の特定のローダミン誘導体に限定されることはない。
上記一般式(I)において、アルキル基の用語は直鎖、分枝鎖、及び環状のアルキル基、及びそれらの組み合わせからなるアルキル基を包含する。ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれであってもよい。
-NHR1がベンゼン環に結合する位置は特に限定されず、ベンゼン環上で置換可能な位置であれば任意の位置に結合することができるが、R2に対してメタ位又はパラ位であることが好ましく、R2に対してメタ位であることが特に好ましい。R1が水素原子であることが好ましいが、R1がメチル基又はエチル基などであることも好ましい場合がある。
R2は水素原子、C1-6アルキル基、又はカルボキシル基を示すが、カルボキシル基はそのエステルであってもよい。例えばR2がC1-8アルコキシカルボニル基又はC1-8アルコキシアルコキシカルボニル基などであってもよい。好ましくはR2はカルボキシル基を示す。この場合にはXで示される対イオンが存在せず、分子内対イオンとなることがある。R2が水素原子又はカルボキシル基であることが好ましく、R2が水素原子であることがさらに好ましい。
R3及びR5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又はC1-6アルキル基を示す。ハロゲン原子としてはフッ素原子又は塩素原子が好ましい。R3及びR5が水素原子である場合が好ましい。R4及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はC1-6アルキル基を示すが、R4及びR6が水素原子である場合が好ましい。
R7及びR8はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示す。R7及びR8がともにメチル基又はエチル基である場合が好ましい。R7が示すアルキル基はR3が示すアルキル基と結合して5ないし7員環を形成していてもよい。また、R8が示すアルキル基はR4が示すアルキル基と結合して5ないし7員環を形成していてもよい。R9及びR10はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示す。R9及びR10がともにメチル基又はエチル基である場合が好ましい。R9が示すアルキル基はR5が示すアルキル基と結合して5ないし7員環を形成していてもよい。また、R10が示すアルキル基はR6が示すアルキル基と結合して5ないし7員環を形成していてもよい。
X-は対イオンを示す。対イオンの種類は特に限定されず、窒素原子上の陽電荷と釣り合う電荷を有するものであれば任意の対イオンを使用することができる。例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンのほか、有機酸イオンなどを用いてもよい。R2がカルボキシル基である場合には対イオンが存在しない場合もある。Yは酸素原子又はM(R11)(R12)を示す。Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示すが、ケイ素原子であることが好ましい。R11及びR12はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示すが、R11及びR12がともにメチル基である場合などが好ましい。
一般式(I)で表されるローダミン誘導体の好ましい態様として、R1が水素原子又はC1-6アルキル基であり;R2が水素原子、C1-6アルキル基、又はカルボキシル基であり;R3及びR5が水素原子であり;R4及びR6が水素原子であり;R7及びR8がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;R9及びR10がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;X-は対イオンであり;Yが酸素原子であるローダミン誘導体を挙げることができ、さらに好ましいローダミン誘導体として、R1が水素原子であり;R2が水素原子であり;R3及びR5が水素原子であり;R4及びR6が水素原子であり;R7及びR8がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;R9及びR10がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;X-は対イオンであり;Yが酸素原子であるローダミン誘導体を挙げることができる。
特に好ましいローダミン誘導体として、R1が水素原子であり;R2が水素原子であり;R3、R4、R5、及びR6が水素原子であり;R7、R8、R9、及びR10がメチル基であり;X-は対イオンであり;Yが酸素原子であるローダミン誘導体を挙げることができ、その一例として、実施例に開示されたN-(9-(4-アミノフェニル)-6-(ジメチルアミノ)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-メチルメタンアミニウム塩(化合物3)を挙げることができるが、本発明で使用可能なローダミン誘導体は上記の特定のローダミン誘導体に限定されることはない。
多様なローダミン誘導体が報告されているので、本発明に用いるローダミン誘導体は出発原料や試薬を適宜選択することにより公知の方法で当業者に容易に製造することが可能である。YがSi(R11)(R12)であるローダミン誘導体、及びその蛍光プローブとしての利用については、Best, Qら、Pacifichem, 2010, 演題番号2335、2010年12月19日、及び小出裕一郎ら、第4回日本分子イメージング学会, 演題番号P8-9, 2009年5月14日などに報告されており、YがM(R11)(R12)(Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子)であるローダミン誘導体の製造方法及び蛍光プローブとしての利用については、国際公開WO 2012/111818に記載されているので、この刊行物を参照することにより、YがM(R11)(R12)(Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子)であるローダミン誘導体も当業者に容易に製造することが可能である。上記国際公開WO 2012/111818の開示の全てを参照により本明細書の開示に含める。
アシル化触媒又はアシル化反応促進剤としては、一般的には、エステル、アミド、カルボン酸ハロゲン化物、又はカルボン酸無水物などのアシル化合物が求核剤と反応してアシル化合物を与える求核アシル置換反応を触媒又は反応促進することができるものであれば、任意のアシル化触媒又はアシル化反応促進剤を使用することができ、アシル化触媒又はアシル化反応促進剤の種類は特に限定されることはない。本発明の試薬を用いて細胞内のアセチルCoAによるアセチル化を測定する場合には、アシル化合物としてアセチルCoAが求核剤として作用するローダミン誘導体のベンゼン環上のアミノ基と反応して、該アミノ基がアセチル化されるが、この反応を効率的に触媒および反応促進することができるアシル化触媒又はアシル化反応促進剤を好適に使用することができる。アシル化触媒又はアシル化反応促進剤としては一般的には低分子有機化合物のアシル化触媒又はアシル化反応促進剤を用いることができるが、不斉アシル化触媒又はアシル化反応促進剤として知られている各種のアシル化触媒又はアシル化反応促進剤を使用することもできる(例えば、Vedejs E. SYNLETT, 10, 1499-1505, 2001. 及びここに引用されているすべての文献など)。アシル化触媒とアシル化反応促進剤は適宜組み合わせて用いることができる。また、アシル化触媒がアシル化反応促進作用を有する場合、あるいはアシル化反応促進剤がアシル化触媒作用を有する場合も本発明の範囲に包含される。このような場合については、便宜上、アシル化反応促進作用を有するアシル化触媒を単に「アシル化触媒」と呼び、アシル化触媒作用を有するアシル化反応促進剤を単に「アシル化反応促進剤」と呼ぶ場合がある。
例えば、アセチル化反応に汎用されているジメチルアミノピリジン(DMAP)などのジアルキルアミノピリジン類、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)や1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU) などの環状3級有機アミン類、あるいはトリアルキルホスフィン類、例えばトリブチルホスフィンやトリアリールホスフィン類、例えばトリフェニルホスフィンなどのホスフィン類などを好ましく使用することができるが、これらに限定されることはない。アシル化触媒又はアシル化反応促進剤は、使用するローダミン誘導体及びアシル化合物に対しての触媒活性又は反応促進活性や細胞内移行性、あるいは細胞毒性などのほか、例えばミトコンドリア内のアセチルCoAによるアセチル化を測定する場合にはミトコンドリア内への移行性などの観点から適宜選択すべきである。
本発明の試薬におけるローダミン誘導体とアシル化触媒又はアシル化反応促進剤との比率は特に限定されず、可視化する対象となるアセチル化反応の種類、アセチル化剤の存在部位、使用するローダミン誘導体及びアシル化触媒又はアシル化反応促進剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、ローダミン誘導体に対して100倍から1,000,000倍程度の量のアシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤を使用することができる。例えば、ローダミン誘導体としてN-(9-(4-アミノフェニル)-6-(ジメチルアミノ)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-メチルメタンアミニウム塩を用い、アシル化触媒又はアシル化反応促進剤としてトリアルキルホスフィン化合物、例えばトリブチルホスフィンを用いてミトコンドリア内のアセチルCoAを測定する場合には、ローダミン誘導体に対してアシル化触媒又はアシル化反応促進剤を1,000〜100,000倍程度の濃度、好ましくは5,000〜50,000倍程度、特に好ましくは10,000倍程度の濃度で使用することができるが、濃度は上記の特定の範囲に限定されることはない。
本発明の試薬は細胞内のアセチル化反応を可視化するために用いることができる。本発明の試薬により可視化できる細胞内アセチル化反応の種類は特に限定されないが、例えば、アセチルCoAにより進行するアセチル化反応、例えばアセチルCoAによるヒストンのアセチル化反応などを好適な対象とすることができる。例えば、アセチルCoAがアセチル化剤として作用するアセチル化反応を可視化するために本発明の試薬を特に好適に使用することができる。また、別の態様として、ミトコンドリア内において産生されるアセチルCoAを本発明の試薬により測定することができる。本明細書において用いられる「測定」という用語は、定量、定性、又は診断などの目的で行われる測定、検査、検出などを含めて、最も広義に解釈しなければならない。
本発明の試薬を用いてアセチル化反応を可視化するには、細胞内にローダミン誘導体及びアシル化触媒又はアシル化反応促進剤を導入し、細胞内でアセチル化された該ローダミン誘導体の蛍光を測定すればよい。同様にして細胞内、好ましくはミトコンドリアにおけるアセチルCoAを測定することができる。アセチル化反応の可視化の具体例を本明細書の実施例に具体的に示した。当業者は本明細書の実施例の具体的な説明を参酌しつつ、対象となるアセチル化の種類に応じて適宜の試薬及び条件を選択してイメージングを行うことにより、細胞内におけるアセチル化反応を容易に可視化することができる。
例えば、生理食塩水や緩衝液などの水性媒体、又はエタノール、アセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに本発明の試薬を溶解し、細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、添加の前後において蛍光スペクトルによるイメージングを行うことができる。可視化のための試薬としてローダミン誘導体とアシル化触媒又はアシル化反応促進剤とを含む試薬を用いる場合には、それらを含む単独の溶液を調製して使用することができるが、ローダミン誘導体とアシル化触媒又はアシル化反応促進剤とを別々の溶液として調製し、これらの溶液を別々に細胞や組織と接触させることにより可視化を行うこともできる。この場合、2種類の溶液を同時に細胞や組織と接触させてもよいが、2種類の溶液をそれぞれ異なる時間に細胞や組織と接触させて可視化を行うこともできる。蛍光の測定は通常の方法で行うことができ、インビトロで蛍光スペクトルを測定する方法や、バイオイメージングの手法を用いてインビボで蛍光スペクトルを測定する方法などを採用することができる。例えば、定量を行う場合には、常法に従って予め検量線を作成しておくことが望ましい。
本発明の試薬は、必要に応じて細胞や組織に対する適用を目的とした試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
アセチル化によって蛍光増大をする蛍光プローブ分子の設計を行った。アミノフルオレセインとアセチルアミノフルオレセインを比較すると、光電子移動(PET)型のメカニズムによりアセチルアミノフルオレセインのほうが強い蛍光を発することが知られている。しかしながら、フルオレセインを用いるとフェノール性水酸基もアセチル化される可能性があり、それにより蛍光強度が低下することが予想される。そこで、ローダミン骨格を蛍光団として選択した。ローダミンは570nm付近に蛍光を有する水系でも明るい蛍光団として知られている。そこで、ローダミンのベンゼン部分にアミンを有するRH-NH2を設計し、以下の方法により合成を行った。
(a)6,6'-((4-ニトロフェニル)メチレン)ビス(3-(ジメチルアミノ)フェノール)(S1)
3-(ジメチルアミノ)フェノール(825.8 mg, 6.22 mmol, 2.6 equiv)、p-トルエンスルホン酸(51 mg, 300 μmol, 0.1 equiv)、及び酢酸(20 mL)を4-ニトロベンズアルデヒド(356.3 mg, 2.36 mmol, 1 equiv)に加え、この混合物を60℃で14 時間攪拌した。反応混合物を室温に戻して濃縮した。残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてジクロルメタンで抽出した。有機相を合わせて生理食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して溶媒留去した。粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロルメタン/メタノール=30/1 to 20/1)で精製してオレンジ色の固形物として目的物S1を得た(942 mg, 2.31 mmol, 98%)。
1H-NMR (500 MHz, CD3OD): δppm 2.85 (s, 12H), 6.00 (s, 1H), 6.21 (dd, 2H, J = 8.6 Hz, 2.3 Hz), 6.28 (d, 2H, J = 2.3 Hz), 6.55 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.23 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 8.06 (d, 2H, J = 8.6 Hz)
13C-NMR (125 MHz, CD3OD): δppm 41.2, 43.7, 101.7, 105.9, 120.0, 123.8, 131.0, 131.7, 147.1, 152.3, 155.9, 156.5
LR-ESI-MS: 408 (MH+)
(b)N-(6-(ジメチルアミノ)-9-(4-ニトロフェニル)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-メチルメタンアミニウム・トリフルオロ酢酸塩(S2)
2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)(247.8 mg, 1.09 mmol, 2 equiv)をベンゼン/酢酸(1/1 v/v, 12 mL)中でS1 (210.8 mg, 0.517 mmol)に加え、混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロルメタン/メタノール/トリフルオロ酢酸=10/1/0.01)に付して粗成績体を得た(197.6 mg)。逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール)で精製して目的物S2 を紫色固体として得た(187.3 mg, 0.374 mmol, 72%)。
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz): δppm 3.23 (s, 12H), 7.00 (d, 2H, J = 2.3 Hz), 7.11 (dd, 2H, J = 9.2 Hz, 2.3 Hz), 7.30 (d, 2H, J = 9.7 Hz), 7.77 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 8.53 (d, 2H, J = 8.6 Hz)
13C-NMR (125 MHz, CD3OD): δppm 41.1, 97.8, 102.2, 114.3, 114.6, 115.9, 125.0, 130.2, 132.2, 132.3, 140.3, 150.4, 152.8, 159.0
LR-ESI-MS: 388 [M-CF3COO]+
HR-ESI-MS: calced for C23H22N3O3 +[M-CF3COO]+ 388.1656, found 388.1674.
(c)N-(9-(4-アミノフェニル)-6-(ジメチルアミノ)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-メチルメタンアミニウム・トリフルオロ酢酸塩(3)
S2 (80.1 mg, 0.160 mmol)を10 mLのエタノールにアルゴン雰囲気下で溶解して10% Pd/C(43.1 mg)を加えて水素ガスを導入した。混合物を室温で2時間攪拌した後、反応混合物をセライトで濾過し、濃縮して粗成績体を得た。逆相カラムクロマトグラフィー(60% メタノールから100% メタノール) で精製して紫色固体として目的物3を得た(50.5 mg, 0.107 mmol, 67%)。
1H-NMR (500 MHz, CD3OD): δppm 3.34 (s, 12H), 6.85-6.92 (m, 4H), 7.06 (dd, 2H, J = 9.6 Hz, 2.8 Hz), 7.26 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.63 (d, 2H, J = 9.6 Hz)
13C-NMR (125 MHz, CD3OD): δppm 40.8, 97.5, 114.4, 115.0, 115.2, 120.9, 125.0, 132.2, 132.3, 133.2, 133.4, 152.7, 158.6, 161.1
LR-ESI-MS 358 [M-CF3COO]+
HR-ESI-MS: calced for C23H24N3O+ [M-CF3COO]+358.1914, found 358.1915
(d)N-(9-(4-アセトアミドフェニル)-6-(ジメチルアミノ)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-メチルメタンアミニウム・酢酸塩(4)
無水酢酸(0.5 mL)及びトリエチルアミン(TEA, 50μL)を化合物3(2.7 mg, 5.72 μmol)に加え、この混合物を室温で5時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール)で精製して紫色固体として目的物4を得た(2.6 mg, 5.66 μmol, 99 %)。
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz): δppm 2.14 (s, 3H), 2.27 (s, 3H), 3.24 (s, 12H), 6.85-6.70 (m, 2H), 7.00-7.05 (m, 2H), 7.38-7.42 (m, 4H), 7.79-7.82 (m, 2H)
13C-NMR (CD3OD, 125 MHz): δppm 20.0, 24.0, 40.9, 97.6, 114.2, 114.6, 115.5, 115.9, 120.9, 131.8, 132.3, 132.9, 158.9, 159.3, 169.8, 172.1
LR-ESI-MS: 400 [M-CH3COO]+
HR-ESI-MS: calced for C25H26N3O2 +[M-CH3COO]+ 400.2020, found 400.2028
得られた化合物3(RH-NH2)はPBS中で546 nmに吸収極大(ε=71400 M-1cm-1)を有しており、550 nmの光で励起すると570 nmに蛍光極大を示し、PBS中でローダミンBを対照とした蛍光量子収率は4.9×10-4であった。アセチル化された化合物4(RH-NHAc)は553 nmに吸収極大(ε=35500 M-1cm-1)を有しており、550 nmの光で励起すると572 nmに蛍光極大を示し、蛍光量子収率は0.12であった。
例2
化合物3(1μM)及びアシル化触媒又はアシル化反応促進剤(10 mM)をPBS(pH 7.4, 1% DMSO添加)に溶解し、アセチル化剤としてN-メトキシジアセトアミド(NMD, 0.1M)を1分後に添加して25℃で経時的な蛍光変化を測定した。アシル化触媒又はアシル化反応促進剤としてジメチルアミノピリジン(DMAP)又はトリブチルホスフィン(PBu3)を添加するとアシル化触媒又はアシル化反応促進剤無添加の場合と比べて経時的な蛍光強度の増加が認められた。トリブチルホスフィンでは添加後5分で無添加の場合と比べて約5倍の蛍光強度を与えたが、この結果は触媒および反応促進剤無添加における反応開始時の反応速度に比べてトリブチルホスフィン添加により約5.5倍の反応速度増加が達成されたことを意味しており、トリブチルホスフィンが水系において化合物3に対して有効なアシル化触媒又はアシル化反応促進剤として作用することが示された。
例3
アセチルCoAのアナログ化合物として3-(アセチルチオ)プロパン-1-スルホン酸ナトリウム塩(6)を以下の方法で合成した。この化合物はアセチルCoAと同様にチオエステルの交換によってアセチル化剤として機能すると考えられる。
3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩(1.38 g, 7.72 mmol)にMgBr2エーテルコンプレックス(131 mg, 0.50 mmol, 0.07 eq.)、無水酢酸(6 mL)、及びジオキサン(6 mL)を加え、得られた混合物を 17時間攪拌した。メタノール及び水を順次加えて反応を停止して減圧濃縮した後、得られた固体をメタノールに懸濁して沈殿物を濾去した。濾液を濃縮して化合物6をほぼ純粋な白色固体として得た(1.63 g, 7.41 mmol, 96 %)。
1H-NMR (500 MHz, D2O): δppm 1.90-1.95 (m, 2H), 1.99 (s, 3H), 2.56 (t, 3H, J = 6.9 Hz), 2.92 (t, 3H, J= 8.0 Hz)
13C-NMR (125 MHz, D2O) δppm 21.1, 23.2, 29.0, 50.1, 177.3.
化合物3(1μM)に対してアシル化触媒又はアシル化反応促進剤としてトリブチルホスフィン(10 mM)を混合し、1分後に化合物6を添加して例2と同様にしてPBS(pH 7.4, 1% DMSO)中で25℃の条件で経時的にアセチル化の進行を測定した。550 nmの励起光により575 nmの蛍光を測定した。アシル化触媒又はアシル化反応促進剤の効果によって速やかな蛍光増大が得られた(図1)。アセチル化剤の添加後1分における蛍光強度とアセチル化剤の濃度との間には相関が認められた(図2)。この結果から、この反応系を用いることにより、反応時間1分の時点においてミリモルレベルのアセチル化剤を検出可能であることが示され、化合物3とトリブチルホスフィンとの組み合わせにより生体条件でのアセチル化反応の観測が可能であると考えられた。
例4
細胞内でのアセチル化反応の可視化を目的としてローダミン誘導体として化合物3を用いて以下の実験を行った。陽電荷を有するテトラメチルローダミンなどのローダミン誘導体骨格は細胞内に移行してミトコンドリアに局在化することが知られている(J. Circ. Res., 95, pp.239-252, 2004; J. Biol. Chem., 264, pp.8171-8178, 1989; Plos. One., 6, e23684, 2011; 特に5-アミノローダミン誘導体のミトコンドリア局在化についてはGB2283744; US5686261を参照のこと)。ハンクス平衡塩溶液(HBSS: NaCl, 137 mM; KCl, 5.4 mM; CaCl2, 1.3 mM; MgCl2, 0.5 mM; MgSO4, 0.4 mM; Na2HPO4, 0.3 mM; KH2PO4, 0.4 mM; NaHCO3, 4.2 mM; D-グルコース, 5.6 mM; HEPES, 5 mM, NaOHでpH 7.4に調整)中で HeLa細胞に化合物3(10μM)を37℃で30分作用させ、HBSSで細胞を2回洗浄してから蛍光を測定したところ、ミトコンドリア局在を示す細胞内の不均一な染色像を得た。
HeLa細胞内のミトコンドリアの局在はシアン蛍光タンパクであるTagCFP-Mitoを発現させることにより可視化して確認した。リポフェクタミンLTX(Invitrogen)を用いてpTagCFP-Mitoベクター(Evrogen)をHeLa細胞にトランスフェクトし、24時間以降に蛍光を測定した。化合物3については559 nmで励起して580-680 nmの蛍光を測定し、TagCFP-Mitoについては440 nmの励起光により460 nm-500 nmの蛍光を測定した。蛍光イメージはFluoView(Olympus)を用いて分析し、蛍光強度は各細胞の細胞体を含む所定の目的部位(ROI)における平均強度として算出した。結果を図3に示す。化合物3の蛍光像はミトコンドリアで発現させたシアン蛍光タンパクの蛍光像とよく一致していた。
HeLa細胞に37℃で化合物3を添加してもアシル化触媒又はアシル化反応促進剤の非存在下では経時的な蛍光強度増強は認められなかったが、トリブチルホスフィン(5 mM)を培地に添加すると細胞内の蛍光強度増強が認められた(図4a、c、及びd)。例3におけるモデルアセチル化の結果を参酌すると細胞内の蛍光強度増強はミトコンドリア内部において生理的アセチルCoAにより進行するアセチル化に由来するものであると考えられた。アセチル化剤としてN-メトキシジアセトアミド(10 mM)を7分の時点で細胞に添加すると蛍光強度がさらに増強された(図4a、e)。従って、化合物3に対して生理的アセチルCoA及び追加で添加したアセチル化剤により細胞内でアセチル化が進行する様子を可視化することができた。ミトコンドリア内のアセチルCoA濃度は細胞内の平均アセチルCoA濃度よりも高いことが知られているが(J. Gen., Microbiol., 134, pp.2249-2253, 1988)、上記の結果はこの知見と合致するものである。
本発明の試薬を用いてアセチルCoAをイメージングしてその分布や局在を確認することにより、例えば、細胞レベルでの動脈硬化や高脂血症などの疾患の発症原因や病態の進行などについて病理学的及び生理学的な解明が可能になる。

Claims (9)

  1. 細胞内のアセチル化反応を可視化するための試薬であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含む試薬。
  2. 細胞内のアセチル化反応がアセチルCoAにより進行するアセチル化反応で請求項1に記載の試薬。
  3. 細胞内のアセチルCoAを測定するための試薬であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体と、アシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを含む試薬。
  4. ローダミン誘導体が以下の一般式(I):
    (式中、R1は水素原子又はC1-6アルキル基を示し;R2は水素原子、C1-6アルキル基、又はカルボキシル基を示し;R3及びR5はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又はC1-6アルキル基を示し;R4及びR6はそれぞれ独立に水素原子又はC1-6アルキル基を示し;R7及びR8はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示すが、R7が示すアルキル基とR3が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく、及び/又はR8が示すアルキル基とR4が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく;R9及びR10はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示すが、R9が示すアルキル基とR5が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく、及び/又はR10が示すアルキル基とR6が示すアルキル基とが結合して5ないし7員環を形成していてもよく;X-は対イオンを示し;Yは酸素原子又はM(R11)(R12)(Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示し;R11及びR12はそれぞれ独立にC1-6アルキル基を示す)を示す) で表されるローダミン誘導体である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の試薬。
  5. R1が水素原子又はC1-6アルキル基であり;R2が水素原子、C1-6アルキル基、又はカルボキシル基であり;R3及びR5が水素原子であり;R4及びR6が水素原子であり;R7及びR8がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;R9及びR10がそれぞれ独立にC1-6アルキル基であり;X-は対イオンであり;Yが酸素原子である請求項4に記載の試薬。
  6. R1が水素原子であり;R2が水素原子であり;R3、R4、R5、及びR6が水素原子であり;R7、R8、R9、及びR10がメチル基であり;X-は対イオンであり;Yが酸素原子である請求項4に記載の試薬。
  7. アシル化触媒又はアシル化反応促進剤がジアルキルアミノピリジン類、環状3級有機アミン類、及びホスフィン類からなる群から選ばれるアシル化触媒又はアシル化反応促進剤である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の試薬。
  8. アシル化触媒又はアシル化反応促進剤がジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、又はトリブチルホスフィンである請求項6に記載の試薬。
  9. 細胞内のアセチル化反応を可視化する方法であって、アセチル化前には実質的に無蛍光であり、かつアセチル化された後には強い蛍光を発するローダミン誘導体とアシル化触媒及び/又はアシル化反応促進剤との組み合わせを細胞内に導入する工程、及びアセチル化された該ローダミン誘導体の蛍光を測定する工程を含む方法。
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