JPWO2013151026A1 - Pi3k阻害剤耐性がん細胞用診断マーカー及び診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 PI3K阻害剤によりがん患者を治療する際に、該がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断マーカー及び診断方法を提供する。【解決手段】 PI3K阻害剤に対して耐性(獲得耐性及び自然耐性の両方)のがん細胞においてはIGF1R遺伝子の発現量が高く、PI3K阻害剤に耐性でないがん細胞においてはIGF1R遺伝子の発現量が低いという関係があることを解明した。診断マーカーは、IGF1RのmRNA若しくはcDNA又はタンパク質から成る。がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量を指標として、この発現量が低い場合には、該患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性ではないと判定する。診断の結果、IGF1R遺伝子の発現量の低い患者に対してPI3K阻害剤を投与することが有効である。【選択図】 なし
Description
この発明は、がん細胞がPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断マーカー及び診断方法に関する。
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)は、生体膜に局在するイノシトールリン脂質の3位をリン酸化する酵素であり、発がんやがんの生存、増殖、転移などがんにとって重要な役割を果たすことからがん治療の有力な標的とされている。がん細胞ではPI3K経路が活性化しており、PI3Kを阻害することにより、がんの増殖を抑制することができる(非特許文献1、2など)。更に、このようなPI3K阻害剤からなる抗腫瘍剤が開発されている(特許文献1など)。
一方、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)遺伝子は、PI3遺伝子の上流に位置する遺伝子であり、PI3K活性は、IGF1Rの活性化と正に相関し、PI3K経路の活性化は、IGF1Rの活性化を評価することにより測定され、IGF1Rの活性化はPI3K経路の活性化を示すと報告されている(特許文献2)。更に、IGF1Rの阻害剤は抗腫瘍剤であることが知られている(非特許文献3)。
一方、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)遺伝子は、PI3遺伝子の上流に位置する遺伝子であり、PI3K活性は、IGF1Rの活性化と正に相関し、PI3K経路の活性化は、IGF1Rの活性化を評価することにより測定され、IGF1Rの活性化はPI3K経路の活性化を示すと報告されている(特許文献2)。更に、IGF1Rの阻害剤は抗腫瘍剤であることが知られている(非特許文献3)。
J. Nat. Can. Inst. vol.98, No.8, 545-556 (2006)
Cancer Res. vol.70, No.12, 4982-4994 (2010)
Nature Rev. Cancer vol.12, No.3, 159-169 (2012)
一般に、がんは多様性に富む疾患であるため、一つの抗がん剤がすべてのがんに効くことはありえず、がん患者によって効く場合と効かない場合がある。しかも多くの場合、薬を処方する時点、すなわち投薬前に当該薬の効果を予測することはできず、効果のほどは当該薬を使ってみるまでわからないという厳しい現実がある。効いた人はよいが、効かない人は副作用だけを被るという悲劇もありうる。
一方、PI3K阻害剤などの分子標的抗がん剤は、がんで異常のある標的分子を狙い撃ちするため、従来の抗がん剤とは異なり、その標的分子を発現するがんで著効を示すと考えられている。しかし、実際にはPI3K経路の正常がんでも異常がんでもPI3K阻害剤による治療の効果に有意な違いは認められず、PI3Kなどの遺伝子異常はPI3K阻害剤の治療適合性の診断マーカーとはならない。そのため、PI3K阻害剤の治療適合性を予測する診断マーカーを開発することが急務である。
そのため、本願は、がん細胞がPI3K阻害剤に対して耐性(治療抵抗性)か否かを判定するための診断マーカー及び診断方法を提供することを目的とする。このような診断マーカー及び診断方法により、患者にPI3K阻害剤からなる抗腫瘍剤を処方する前に、その薬が効くかどうかを事前に予測したり、PI3K阻害剤からなる抗腫瘍剤を投与した患者のがんが薬剤耐性を獲得したかどうかを判断することができる。
一方、PI3K阻害剤などの分子標的抗がん剤は、がんで異常のある標的分子を狙い撃ちするため、従来の抗がん剤とは異なり、その標的分子を発現するがんで著効を示すと考えられている。しかし、実際にはPI3K経路の正常がんでも異常がんでもPI3K阻害剤による治療の効果に有意な違いは認められず、PI3Kなどの遺伝子異常はPI3K阻害剤の治療適合性の診断マーカーとはならない。そのため、PI3K阻害剤の治療適合性を予測する診断マーカーを開発することが急務である。
そのため、本願は、がん細胞がPI3K阻害剤に対して耐性(治療抵抗性)か否かを判定するための診断マーカー及び診断方法を提供することを目的とする。このような診断マーカー及び診断方法により、患者にPI3K阻害剤からなる抗腫瘍剤を処方する前に、その薬が効くかどうかを事前に予測したり、PI3K阻害剤からなる抗腫瘍剤を投与した患者のがんが薬剤耐性を獲得したかどうかを判断することができる。
本発明者らは、PI3K阻害剤(ZSTK474)からなる抗がん剤の薬剤耐性細胞を作製し、耐性株と親株の遺伝子発現をGeneChipで比較して、耐性株で過剰発現している遺伝子を薬剤耐性マーカー候補として同定した。そして、この遺伝子についてsiRNAによる機能スクリーニングを行い、PI3K阻害剤の耐性に機能的に関与している遺伝子(IGF1R遺伝子)を同定した(データは省略する。)。このIGF1R遺伝子は、4種の獲得耐性株で共通して発現が上昇しており(後記の実施例1)、IGF1R遺伝子の発現の高いがん細胞には、PI3K阻害剤が効きにくいことが分かった。
更に、PI3K阻害剤未治療のがん細胞株のPI3K阻害剤に対する感受性とIGF1R発現量の関連を調べたところ、IGF1R遺伝子の発現量が高い細胞ほどPI3K阻害剤が効きにくい(自然耐性)という有意な関連が認められた(後記の実施例2)。
即ち、このような本発明者らの研究により、PI3K阻害剤に対して耐性(獲得耐性及び自然耐性の両方)のがん細胞においてはIGF1R遺伝子の発現量が高く、PI3K阻害剤に耐性でないがん細胞においてはIGF1R遺伝子の発現量が低いという関係があることが解明された。
更に、PI3K阻害剤未治療のがん細胞株のPI3K阻害剤に対する感受性とIGF1R発現量の関連を調べたところ、IGF1R遺伝子の発現量が高い細胞ほどPI3K阻害剤が効きにくい(自然耐性)という有意な関連が認められた(後記の実施例2)。
即ち、このような本発明者らの研究により、PI3K阻害剤に対して耐性(獲得耐性及び自然耐性の両方)のがん細胞においてはIGF1R遺伝子の発現量が高く、PI3K阻害剤に耐性でないがん細胞においてはIGF1R遺伝子の発現量が低いという関係があることが解明された。
即ち、本発明は、がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断マーカーであって、該診断マーカーがIGF1RのmRNA若しくはcDNA又はタンパク質から成り、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量により判定する診断マーカーである。
更に、本発明は、PI3K阻害剤によりがん患者を治療する際に、該がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断方法であって、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量により判定する診断方法である。
この診断方法は、下記工程から成ってもよい。
(i) がん患者から腫瘍サンプルを採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する工程、但し、細胞サンプルを入手したものについては、ヌードマウス皮下に移植して、取り出した腫瘍片(ゼノグラフト)を、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する工程、
(ii) コントロールとする腫瘍サンプルを(i)と同様に処理してコントロールの組織切片を作成する工程、
(iii) (i)及び(ii)で作成した組織切片を脱パラフィン後、IGF1Rタンパク質に特異的な一次抗体で処理した後、二次抗体で染色し、染色強度を定量化する工程、及び
(iv) がん患者の腫瘍サンプルから得た染色強度を、コントロールとした腫瘍サンプルから得た染色強度と比較することにより、該がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定する工程
更に、本発明は、PI3K阻害剤によりがん患者を治療する際に、該がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断方法であって、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量により判定する診断方法である。
この診断方法は、下記工程から成ってもよい。
(i) がん患者から腫瘍サンプルを採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する工程、但し、細胞サンプルを入手したものについては、ヌードマウス皮下に移植して、取り出した腫瘍片(ゼノグラフト)を、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する工程、
(ii) コントロールとする腫瘍サンプルを(i)と同様に処理してコントロールの組織切片を作成する工程、
(iii) (i)及び(ii)で作成した組織切片を脱パラフィン後、IGF1Rタンパク質に特異的な一次抗体で処理した後、二次抗体で染色し、染色強度を定量化する工程、及び
(iv) がん患者の腫瘍サンプルから得た染色強度を、コントロールとした腫瘍サンプルから得た染色強度と比較することにより、該がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定する工程
がんでは、主たるPI3KアイソフォームであるPI3Kαタンパク質をコードするPIK3CA遺伝子の機能獲得型変異やPI3Kと逆反応をするホスファターゼであるPTEN遺伝子の異常が高頻度に起こっている。実際、PI3K阻害剤はさまざまながんの増殖を抑制することができるが(非特許文献1など)、PIK3CAやPTENの異常がんでも正常がんでもPI3K阻害剤に対する治療反応性に有意な違いは認められず(非特許文献2)、PIK3CAやPTENの遺伝子異常がPI3K阻害剤の治療反応性の診断マーカーとはならない。また、がん細胞によってPI3K阻害剤が効く場合と効かない場合があり、更に、PI3K阻害剤が効くがん細胞であっても、投与とともに薬剤耐性を獲得する場合がある。
本願発明の診断マーカー及び診断方法は、このようながん細胞がPI3K阻害剤に対して耐性(獲得耐性及び自然耐性の両方)か否かを判定するものである。そのため、PI3K阻害剤によるがん治療において、本願発明の診断マーカー及び診断方法を使用してがん患者のIGF1R遺伝子の発現量を測ることにより、IGF1R遺伝子の発現量の低い患者に対してPI3K阻害剤を投与することが有効である。
本願発明の診断マーカー及び診断方法は、このようながん細胞がPI3K阻害剤に対して耐性(獲得耐性及び自然耐性の両方)か否かを判定するものである。そのため、PI3K阻害剤によるがん治療において、本願発明の診断マーカー及び診断方法を使用してがん患者のIGF1R遺伝子の発現量を測ることにより、IGF1R遺伝子の発現量の低い患者に対してPI3K阻害剤を投与することが有効である。
PI3K阻害剤としては、下記のような化合物が挙げられる。これらの化合物は、PI3Kを阻害することが確認されており、一方、PI3Kを阻害することによりがん細胞の増殖が抑制されることも確認されている(非特許文献1など)。
本願発明の診断マーカー及び診断方法が適用されるがんとしては、上記のように、特に制限はないが、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、卵巣がん、脳腫瘍、腎がん、前立腺がん、肝がん、膵臓がん、食道がん、中皮腫、メラノーマなどが挙げられる。
本願発明の診断マーカー及び診断方法を適用するためには、被験者(がん患者)からがん細胞又は組織(検体)を採取する。被験者の標的部位の組織細胞(がん細胞)をバイオプシー等により採取してもよいし、必要に応じて、レーザーマイクロダイセクションによりがん細胞だけを正確に分取してもよい。更に、免疫組織化学法で検出する場合は、被験者の腫瘍組織を採取し、パラフィン包埋してもよい。
本願発明の診断マーカー及び診断方法を適用するためには、被験者(がん患者)からがん細胞又は組織(検体)を採取する。被験者の標的部位の組織細胞(がん細胞)をバイオプシー等により採取してもよいし、必要に応じて、レーザーマイクロダイセクションによりがん細胞だけを正確に分取してもよい。更に、免疫組織化学法で検出する場合は、被験者の腫瘍組織を採取し、パラフィン包埋してもよい。
本発明においては、がんがPI3K阻害剤に対して耐性(獲得耐性及び自然耐性の両方)であるか否かを判定するために、がん細胞におけるIGF1R遺伝子の発現量を指標とする。
ヒトIGF1R遺伝子は、配列番号1の塩基配列(GenBank Accession NM_000875, NM_015883、そのコード領域は51〜4154番目の塩基配列である。)、又は、下記ヒトIGF1Rタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列から成る。
ヒトIGF1Rタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列(GenBank Accession AAI43722)から成る。
ヒトIGF1R遺伝子は、配列番号1の塩基配列(GenBank Accession NM_000875, NM_015883、そのコード領域は51〜4154番目の塩基配列である。)、又は、下記ヒトIGF1Rタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列から成る。
ヒトIGF1Rタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列(GenBank Accession AAI43722)から成る。
本願発明の診断において、IGF1R遺伝子の発現量が高い場合には、がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性と診断し、この発現量が低い場合には、がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性ではないと判定する。診断の結果、IGF1R遺伝子の発現量の低い患者に対してPI3K阻害剤を投与することが有効である。しかし、がんのIGF1R遺伝子の発現量がどの程度以下なら、PI3K阻害剤による治療が適しているか、という点については、特定の閾値はない。IGF1Rの発現がまったく認められないがんについては、PI3K阻害剤が適していると考えられるが、その他のIGF1Rの発現がある程度認められる患者については、適当な閾値を設け、患者の状況等により適宜判断すべきものといえる。
本発明の診断マーカーを用いてがんがPI3K阻害剤に対して耐性であるか否か(即ち、PI3K阻害剤に対する治療適合性が有るか否か)を判定する際には、このIGF1R遺伝子の発現量を、1細胞あたりの絶対量として測定してもよく、相対量として測定してもよい。この相対量は、基準とする遺伝子の発現量、または18SリボゾーマルRNAを用いて求めてもよい。内部基準の遺伝子として、例えば、βアクチン(GenBank Ac No. X00351)、GAPDH(NM_002046)等のPI3K阻害剤に対して耐性及び非耐性のがん細胞で同程度に発現することが期待される遺伝子を用いてもよい。
一方、高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプル、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルを用い、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量を、これら基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量と比較して該患者のがんのPI3K阻害剤に対する耐性を判定してもよい。また、このIGF1R遺伝子の発現量が、予め定めた一定値以下の場合には、該患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性ではないと判定し、それ以外の場合又は予め定めた一定値より大きい場合には、該患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性と判定してもよい。
このような基準細胞サンプルを、実施例2でIGF1R遺伝子を調べた39種類のヒトがん細胞株(表3)の中から選択してもよい。例えば、高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準として、表3のIGF1R発現量が1.5以上のもの、低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準として、表3のIGF1R発現量が0.5以下のものを選択してもよい。これらの中で、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能であって、各方法で比較的安定的に、高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルとして、NCI−H23細胞(ATCC No. CRL-5800)、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルとして、PC−3細胞(ATCC No. CRL-1435)を用いることが好ましい。
一方、高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプル、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルを用い、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量を、これら基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量と比較して該患者のがんのPI3K阻害剤に対する耐性を判定してもよい。また、このIGF1R遺伝子の発現量が、予め定めた一定値以下の場合には、該患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性ではないと判定し、それ以外の場合又は予め定めた一定値より大きい場合には、該患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性と判定してもよい。
このような基準細胞サンプルを、実施例2でIGF1R遺伝子を調べた39種類のヒトがん細胞株(表3)の中から選択してもよい。例えば、高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準として、表3のIGF1R発現量が1.5以上のもの、低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準として、表3のIGF1R発現量が0.5以下のものを選択してもよい。これらの中で、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能であって、各方法で比較的安定的に、高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルとして、NCI−H23細胞(ATCC No. CRL-5800)、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルとして、PC−3細胞(ATCC No. CRL-1435)を用いることが好ましい。
これら基準と検体のIGF1R遺伝子の発現量を同時に測定し、又は予め基準がん細胞のデータを取っておき、同じ条件で検体のIGF1R遺伝子の発現量測定することにより、これら基準がん細胞のIGF1R遺伝子の発現量に対する相対値として、検体のIGF1R遺伝子の発現量を評価してもよい。
この診断は、例えば、下記の比率X(%)を算出することにより行うことができる。
X=(A−C)/(B−C)x100
(式中、Aは検体のIGF1R遺伝子の発現量、Bは高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量、Cは低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量を表す。)
そして、Xが、例えば、20%以下、又は10%以下であれば、検体のがんがPI3K阻害剤に対して耐性ではない(PI3K阻害剤に対する治療適合性がある)と判定し、また、Xが、それ以外の場合、又は50%より高い、若しくは80%より高い場合には、検体のがんがPI3K阻害剤に対して耐性である(PI3K阻害剤に対する治療適合性がない、治療抵抗性である)と判断してもよい。
また、本発明の診断マーカーを用いた診断の経験を積めば、検査ごとにこのような基準を測定しなくとも、検体のIGF1R遺伝子の発現量を測定しただけで、PI3K阻害剤に対して耐性であるか否か(治療適合性の有無)をある程度判断することも可能である。
この診断は、例えば、下記の比率X(%)を算出することにより行うことができる。
X=(A−C)/(B−C)x100
(式中、Aは検体のIGF1R遺伝子の発現量、Bは高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量、Cは低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量を表す。)
そして、Xが、例えば、20%以下、又は10%以下であれば、検体のがんがPI3K阻害剤に対して耐性ではない(PI3K阻害剤に対する治療適合性がある)と判定し、また、Xが、それ以外の場合、又は50%より高い、若しくは80%より高い場合には、検体のがんがPI3K阻害剤に対して耐性である(PI3K阻害剤に対する治療適合性がない、治療抵抗性である)と判断してもよい。
また、本発明の診断マーカーを用いた診断の経験を積めば、検査ごとにこのような基準を測定しなくとも、検体のIGF1R遺伝子の発現量を測定しただけで、PI3K阻害剤に対して耐性であるか否か(治療適合性の有無)をある程度判断することも可能である。
IGF1R遺伝子発現の定量は、IGF1RのmRNA若しくはcDNAの発現量又はIGF1Rのタンパク質の発現量を測定することにより行うことができる。
(1) IGF1RのmRNA又はcDNAの発現量を測定は、例えば、以下のようにして行う:
mRNAの発現量を定量する方法としては、例えば、IGF1RのmRNA若しくはそのcDNAの塩基配列又はそれらの相補塩基配列の一部からなるオリゴヌクレオチドであって、IGF1RのmRNA又はcDNAに部位特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法が挙げられる。このプライマーやプローブは、上記オリゴヌクレオチドがIGF1RのmRNA又はそのcDNAと部位特異的塩基対を形成するものであれば、このmRNAを検出・定量するための様々な修飾がされたものでもよい。
標的部位の組織細胞(がん細胞)からのtotal RNAやmRNAの抽出は、公知の方法に基づいて実施することができる。total RNAを抽出する試薬キットはさまざまなメーカーから市販されており、例えば、RNeasy mini kit(Qiagen社)や、TRIzol(Invitrogen社)などを用いることができる。
IGF1RmRNAの発現量の検出は、例えば、RT-PCR法、Northern blot法、DNAチップ(アフィメトリクス社製等)など、任意の遺伝子発現定量法を用いることができる。
(1) IGF1RのmRNA又はcDNAの発現量を測定は、例えば、以下のようにして行う:
mRNAの発現量を定量する方法としては、例えば、IGF1RのmRNA若しくはそのcDNAの塩基配列又はそれらの相補塩基配列の一部からなるオリゴヌクレオチドであって、IGF1RのmRNA又はcDNAに部位特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法が挙げられる。このプライマーやプローブは、上記オリゴヌクレオチドがIGF1RのmRNA又はそのcDNAと部位特異的塩基対を形成するものであれば、このmRNAを検出・定量するための様々な修飾がされたものでもよい。
標的部位の組織細胞(がん細胞)からのtotal RNAやmRNAの抽出は、公知の方法に基づいて実施することができる。total RNAを抽出する試薬キットはさまざまなメーカーから市販されており、例えば、RNeasy mini kit(Qiagen社)や、TRIzol(Invitrogen社)などを用いることができる。
IGF1RmRNAの発現量の検出は、例えば、RT-PCR法、Northern blot法、DNAチップ(アフィメトリクス社製等)など、任意の遺伝子発現定量法を用いることができる。
RT-PCR法の1つであるリアルタイム定量PCR法は微量なDNAを高感度かつ定量的に検出できるという点で好ましい。RT-PCRでは、IGF1R遺伝子のmRNAを逆転写してfirst strand cDNAを作成し、これを鋳型に当該遺伝子に特異的なプライマーによりPCR増幅する。逆転写反応は、例えば、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems社)などを用いることができる。リアルタイム定量PCR法は、例えば、Applied Biosystems社が提供するTaqMan(登録商標) Gene Expression Assaysを利用することができる。増幅産物は、電気泳動等により分離し、定量することもできるが、Applied Biosystems社ABI PRISM 7000 Sequence Detection Systemなどのリアルタイム定量PCR機器を利用して定量することが正確かつ簡便で好ましい。
リアルタイム定量PCR以外に、様々な測定法(DNAアレイ、ノーザンブロット、ATAC-PCR法など)を用いて、IGF1R mRNAを定量することができる。
PCR用プライマーとしては、通常、配列番号1の塩基配列から成るポリヌクレオチドの少なくとも50塩基、好ましくは100〜1,000塩基のポリヌクレオチド部分を挟む約10〜30個程度の塩基配列からなる断片が用いられる。
プロ―ブとしては、通常、配列番号1の塩基配列から成るポリヌクレオチドの連続した少なくとも15個の塩基配列からなる断片が用いられる。プロ―ブの塩基配列は通常15〜30塩基、好ましくは20〜25塩基である。
IGF1RのmRNA若しくはcDNAの発現量を測定するために、DNAアレイやノーザンブロットを用いる場合には、上記プローブ、ATAC-PCR法などを用いる場合には、上記プライマー、リアルタイム定量PCR法を用いる場合には、上記プライマーと上記プローブが用いられている。
リアルタイム定量PCR以外に、様々な測定法(DNAアレイ、ノーザンブロット、ATAC-PCR法など)を用いて、IGF1R mRNAを定量することができる。
PCR用プライマーとしては、通常、配列番号1の塩基配列から成るポリヌクレオチドの少なくとも50塩基、好ましくは100〜1,000塩基のポリヌクレオチド部分を挟む約10〜30個程度の塩基配列からなる断片が用いられる。
プロ―ブとしては、通常、配列番号1の塩基配列から成るポリヌクレオチドの連続した少なくとも15個の塩基配列からなる断片が用いられる。プロ―ブの塩基配列は通常15〜30塩基、好ましくは20〜25塩基である。
IGF1RのmRNA若しくはcDNAの発現量を測定するために、DNAアレイやノーザンブロットを用いる場合には、上記プローブ、ATAC-PCR法などを用いる場合には、上記プライマー、リアルタイム定量PCR法を用いる場合には、上記プライマーと上記プローブが用いられている。
(2) IGF1Rタンパク質の発現量の測定は、例えば、以下のようにして行う:
IGF1Rタンパク質を定量する方法としては、例えば、IGF1Rタンパク質に特異的な抗体を用いた方法があげられ、具体的には、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、及びRIA法によって検出することができる。また、免疫組織化学法を行い、その発現量を定量化することもできる。
ELISA/RIA用試料は、例えば、回収した細胞抽出液又は血清をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット用(電気泳動用)試料は、例えば、細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用の2−メルカプトエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合したものを用いる。ドット/スロットブロット用試料は、例えば、回収した細胞抽出液又は血清そのもの、又は緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用するなどして、直接メンブレンへ吸着させたものを用いる。
IGF1Rタンパク質と反応する抗体として、例えば、Cell Signaling Technology社のIGF-I Receptor β (111A9) Rabbit mAbやSantaCruz社のIGF1Rβ(C20)(sc-713)等の市販の抗体を用いてもよいし、また適当な抗体を自作して用いてもよい。
抗体は、それを直接標識するか、又は該抗体を一次抗体とし、該一次抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で検出に用いられる。
この標識として、好ましくは、酵素(アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ等)、蛍光色素(Alexa680、IRDye800等)、又はビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)等が挙げられる。標識二次抗体(又は標識ストレプトアビジン)として、予め標識された抗体(又はストレプトアビジン)が、各種市販されている。なお、RIAの場合は125I等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
これら標識された酵素の活性、又は、レーザー光で励起した標識蛍光色素の蛍光強度等を測定することにより、抗原の発現量が定量される。
IGF1Rタンパク質を定量する方法としては、例えば、IGF1Rタンパク質に特異的な抗体を用いた方法があげられ、具体的には、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、及びRIA法によって検出することができる。また、免疫組織化学法を行い、その発現量を定量化することもできる。
ELISA/RIA用試料は、例えば、回収した細胞抽出液又は血清をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈したものを用いる。ウエスタンブロット用(電気泳動用)試料は、例えば、細胞抽出液をそのまま使用するか、緩衝液で適宜希釈して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用の2−メルカプトエタノールを含むサンプル緩衝液(シグマ社製等)と混合したものを用いる。ドット/スロットブロット用試料は、例えば、回収した細胞抽出液又は血清そのもの、又は緩衝液で適宜希釈したものを、ブロッティング装置を使用するなどして、直接メンブレンへ吸着させたものを用いる。
IGF1Rタンパク質と反応する抗体として、例えば、Cell Signaling Technology社のIGF-I Receptor β (111A9) Rabbit mAbやSantaCruz社のIGF1Rβ(C20)(sc-713)等の市販の抗体を用いてもよいし、また適当な抗体を自作して用いてもよい。
抗体は、それを直接標識するか、又は該抗体を一次抗体とし、該一次抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で検出に用いられる。
この標識として、好ましくは、酵素(アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ等)、蛍光色素(Alexa680、IRDye800等)、又はビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)等が挙げられる。標識二次抗体(又は標識ストレプトアビジン)として、予め標識された抗体(又はストレプトアビジン)が、各種市販されている。なお、RIAの場合は125I等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。
これら標識された酵素の活性、又は、レーザー光で励起した標識蛍光色素の蛍光強度等を測定することにより、抗原の発現量が定量される。
なお、本願発明の診断マーカー及び診断方法を臨床で使用する場合には、以下に示すような免疫組織化学法(IHC法)による測定法が有効である。
IHC法においては、被験者の腫瘍サンプルを採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する。細胞サンプルを入手したものについては、ヌードマウス皮下に移植して、腫瘍片(ゼノグラフト)を取り出して用いる。
この腫瘍切片を脱パラフィン後、IGF1Rタンパク質に特異的な適当な一次抗体で処理し、適当な二次抗体で染色し、染色強度を定量化する。IGF1Rタンパク質と反応する抗体としては上記の抗体を使用することができる。また、染色した切片(スライド)をAperio Technologies社のScanscope XTスライドスキャナ等を用いてデジタル画像化し、同社のSpectrumソフトウェア等を用いて染色強度を定量化してもよい。多種の腫瘍片を組織マイクロアレーとして作成し、1枚のスライドで同時に多サンプルの測定を行ってもよいし、別々のスライドで測定してもよい。その際は、比較すべきコントロールサンプルと同じ条件で染色工程を行う必要がある。得られた被験者由来のがんにおけるIGF1Rタンパク質の発現から、PI3K阻害剤の治療抵抗性を判定することができる。また、コントロール細胞の発現と比較することで、PI3K阻害剤の治療抵抗性を判定してもよい。
IHC法においては、被験者の腫瘍サンプルを採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する。細胞サンプルを入手したものについては、ヌードマウス皮下に移植して、腫瘍片(ゼノグラフト)を取り出して用いる。
この腫瘍切片を脱パラフィン後、IGF1Rタンパク質に特異的な適当な一次抗体で処理し、適当な二次抗体で染色し、染色強度を定量化する。IGF1Rタンパク質と反応する抗体としては上記の抗体を使用することができる。また、染色した切片(スライド)をAperio Technologies社のScanscope XTスライドスキャナ等を用いてデジタル画像化し、同社のSpectrumソフトウェア等を用いて染色強度を定量化してもよい。多種の腫瘍片を組織マイクロアレーとして作成し、1枚のスライドで同時に多サンプルの測定を行ってもよいし、別々のスライドで測定してもよい。その際は、比較すべきコントロールサンプルと同じ条件で染色工程を行う必要がある。得られた被験者由来のがんにおけるIGF1Rタンパク質の発現から、PI3K阻害剤の治療抵抗性を判定することができる。また、コントロール細胞の発現と比較することで、PI3K阻害剤の治療抵抗性を判定してもよい。
本発明の診断マーカーを用いてIGF1RのmRNA若しくはcDNAの発現量を定量するために使用するキットは、IGF1R遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマー及び熱耐性DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼなど)と、検出のため前記増幅産物に対合させるプローブとから成る。このキットに含まれてもよいその他の消耗試薬としては、例えば、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP, dCTP, dGTP, dTTP)、バッファー等が挙げられる。
また、本発明の診断マーカーを用いてIGF1Rのタンパク質の発現量を定量するために使用するキットは、例えば、IGF1Rタンパク質に特異的な一次抗体と、この一次抗体に特異的であって、適当な酵素又は化学物質で標識化された二次抗体とから成る。このキットに含まれてもよいその他の消耗試薬としては、例えば、タンパク質を定量するために必要な酵素、バッファー、反応試薬等が挙げられる。
また、本発明の診断マーカーを用いてIGF1Rのタンパク質の発現量を定量するために使用するキットは、例えば、IGF1Rタンパク質に特異的な一次抗体と、この一次抗体に特異的であって、適当な酵素又は化学物質で標識化された二次抗体とから成る。このキットに含まれてもよいその他の消耗試薬としては、例えば、タンパク質を定量するために必要な酵素、バッファー、反応試薬等が挙げられる。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
本実施例では、PI3K阻害剤(ZSTK474)耐性がん細胞を作製し、PI3K阻害剤耐性を獲得したがん細胞におけるPI3K阻害剤に対する耐性とIGF1R遺伝子の発現との関係を調べた。
ヒト脳腫瘍由来細胞株SF295、SNB-75、SNB-78及びヒト卵巣がん細胞株OVCAR3(以上、米国立がんセンターDevelopmental Therapeutics Programから入手)を1〜10μMのZSTK474(全薬工業株式会社)存在下で1年以上培養し、10μMのZSTK474存在下で増殖する細胞を得た。通常のがん細胞はZSTK474(PI3K阻害剤)存在下では増殖不可能であるので、これらの細胞はZSTK474に対する耐性を獲得したといえる。これらのZSTK474耐性がん細胞株を、それぞれSF295R、SNB-75R、SNB-78R、OVCAR3Rと呼ぶ。
次に、これら細胞を96ウェルプレートに撒き込み、翌日、これに10-8M、10-7M、10-6M、10-5M及び10-4Mの5種類の濃度のZSTK474を加え、さらに48時間培養後、細胞をトリクロロ酢酸で固定した。細胞増殖をsulforhodamine B (SRB)アッセイ(J Natl Cancer Inst. 1990 Jul 4;82(13):1107-12.)により測定し、GI50(細胞増殖を50%抑制するのに必要な薬剤濃度)を算出した。結果を下表に示す。
実施例1
本実施例では、PI3K阻害剤(ZSTK474)耐性がん細胞を作製し、PI3K阻害剤耐性を獲得したがん細胞におけるPI3K阻害剤に対する耐性とIGF1R遺伝子の発現との関係を調べた。
ヒト脳腫瘍由来細胞株SF295、SNB-75、SNB-78及びヒト卵巣がん細胞株OVCAR3(以上、米国立がんセンターDevelopmental Therapeutics Programから入手)を1〜10μMのZSTK474(全薬工業株式会社)存在下で1年以上培養し、10μMのZSTK474存在下で増殖する細胞を得た。通常のがん細胞はZSTK474(PI3K阻害剤)存在下では増殖不可能であるので、これらの細胞はZSTK474に対する耐性を獲得したといえる。これらのZSTK474耐性がん細胞株を、それぞれSF295R、SNB-75R、SNB-78R、OVCAR3Rと呼ぶ。
次に、これら細胞を96ウェルプレートに撒き込み、翌日、これに10-8M、10-7M、10-6M、10-5M及び10-4Mの5種類の濃度のZSTK474を加え、さらに48時間培養後、細胞をトリクロロ酢酸で固定した。細胞増殖をsulforhodamine B (SRB)アッセイ(J Natl Cancer Inst. 1990 Jul 4;82(13):1107-12.)により測定し、GI50(細胞増殖を50%抑制するのに必要な薬剤濃度)を算出した。結果を下表に示す。
更に、ZSTK474長期暴露により獲得された薬剤耐性が可逆的であるかどうかを検討するために、SF295R細胞(ZSTK474耐性細胞)をZSTK474非存在下で3日間(DF_day3)、14日間(DF_day14)、3ヶ月培養した際(DF∞)の耐性度の変化を測定した。その結果、元々親株の38倍程度だった耐性度が、経時とともに耐性度の低下が認められ、DF∞ではほぼ元の感受性に戻る(即ち、可逆的な耐性である)ことがわかった。結果を表2に示す。
次に、上記各種がん細胞を培養皿よりスクレーパーを用いて回収し、RNeasy mini kit(Qiagen社製)を用いて、キット添付のユーザーマニュアルに則り細胞からトータルRNAを抽出した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems社製)を用いて、このトータルRNA1μg分を20μlの逆転写反応溶液内で逆転写し、ファーストストランドcDNAを調製した。
得られたファーストストランドcDNAを1μl使用し、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社) Gene Expression Assays(Assay ID:Hs00609566_m1)及びApplied Biosystems社ABI PRISM 7000を用いて、IGF1R cDNA増幅のリアルタイムモニタリングを行った。PCR反応は、下記の反応条件で行い、PCR増幅反応に用いたプライマー(各々18塩基)の配列は非開示であるが、プローブ配列を含むアンプリコンを増幅するものである。プローブとして下記のIGF1Rプローブを用いられている。コントロールとして18SリボゾーマルRNAの発現量を同時に測定し、各サンプルでIGF1Rの発現量を18SリボゾーマルRNAの発現量でノーマライズした。さらに、ここで得られたSF295親株におけるIGF1Rの発現量で各耐性株サンプルのIGF1Rの発現量をノーマライズした値をIGF1R発現量(相対値)とした。
IGF1R用プローブ:
5'-FAM- CCATCTTCGTGCCCAGACCTGAAAG-TAMRA-3'
(*FAMは、6-carboxyfluorescein、TAMRAは、carboxytetramethylrhodamineを示す。なお、このプローブの塩基配列は配列番号1の2236〜2260番目に相当する。)
反応条件:
95℃ 10分 1 サイクル
95℃ 15秒 60℃ 1分 40 サイクル
得られたファーストストランドcDNAを1μl使用し、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社) Gene Expression Assays(Assay ID:Hs00609566_m1)及びApplied Biosystems社ABI PRISM 7000を用いて、IGF1R cDNA増幅のリアルタイムモニタリングを行った。PCR反応は、下記の反応条件で行い、PCR増幅反応に用いたプライマー(各々18塩基)の配列は非開示であるが、プローブ配列を含むアンプリコンを増幅するものである。プローブとして下記のIGF1Rプローブを用いられている。コントロールとして18SリボゾーマルRNAの発現量を同時に測定し、各サンプルでIGF1Rの発現量を18SリボゾーマルRNAの発現量でノーマライズした。さらに、ここで得られたSF295親株におけるIGF1Rの発現量で各耐性株サンプルのIGF1Rの発現量をノーマライズした値をIGF1R発現量(相対値)とした。
IGF1R用プローブ:
5'-FAM- CCATCTTCGTGCCCAGACCTGAAAG-TAMRA-3'
(*FAMは、6-carboxyfluorescein、TAMRAは、carboxytetramethylrhodamineを示す。なお、このプローブの塩基配列は配列番号1の2236〜2260番目に相当する。)
反応条件:
95℃ 10分 1 サイクル
95℃ 15秒 60℃ 1分 40 サイクル
結果を下表に示す。SF295R細胞をZSTK474非存在下で培養することにより、耐性度の低下に伴い、IGF1R mRNAの発現も低下していくことが分かる。
また、上記各種がん細胞を回収し、Lysis buffer(10 mmol/L Tris-HCl (PH 7.4), 50 mmol/L NaCl, 0.5% w/v NP40, 0.1% w/v SDS, 50 mmol/L sodium fluoride, 30 mmol/L sodium pyrophosphate, 50mmol/L sodium orthavanadate, 5 mmol/L EDTA, 0.1 trypsin inhibitor unit/ml aprotinin, 1 mmol/L phenylmethylsulfonyl fluoride)にサスペンドし、Diagenode社のBioruptorを用いて、氷中超音波処理をして細胞を破砕した。
細胞抽出液のタンパク質濃度を、Pierce社のprotein assay kitを用いて定量し、10μgタンパク質相当の細胞抽出液をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により展開した。結果を図1に示す。
即ち、4種類のがん細胞から作成したすべての耐性細胞株(Resistance)で、親株(Parent)に比べてIGF1Rタンパク質の過剰発現が認められた。また、SF295R細胞をZSTK474非存在下で培養することにより、耐性度の低下に伴い、IGF1Rタンパク質の発現も低下した。
以上の結果から、PI3K阻害剤に対する耐性(獲得耐性)はIGF1R発現量と関連しており、IGF1R遺伝子の発現量が高い細胞ほどPI3K阻害剤に対して耐性であるという有意な関連が認められた。
細胞抽出液のタンパク質濃度を、Pierce社のprotein assay kitを用いて定量し、10μgタンパク質相当の細胞抽出液をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により展開した。結果を図1に示す。
即ち、4種類のがん細胞から作成したすべての耐性細胞株(Resistance)で、親株(Parent)に比べてIGF1Rタンパク質の過剰発現が認められた。また、SF295R細胞をZSTK474非存在下で培養することにより、耐性度の低下に伴い、IGF1Rタンパク質の発現も低下した。
以上の結果から、PI3K阻害剤に対する耐性(獲得耐性)はIGF1R発現量と関連しており、IGF1R遺伝子の発現量が高い細胞ほどPI3K阻害剤に対して耐性であるという有意な関連が認められた。
実施例2
本実施例では、PI3K阻害剤未治療のがん細胞におけるZSTK474耐性(自然耐性)とIGF1R遺伝子の発現との関係を調べた。
PI3K阻害剤未治療のがんとして、39種類のヒトがん細胞株を準備し、それぞれのがん細胞株から、実施例1と同様の方法で細胞抽出液を作成し、GI50を測定した。
また、各細胞抽出液におけるIGF1Rの発現量を、一次抗体(SantaCruz社のIGF1Rβ(C20)(sc-713))と、Alexa488蛍光色素で標識された二次抗体を使用し、Licor社のOdysseyを用いて測定し、定量した。Odysseyは蛍光標識されたサンプルに励起光を供給し、蛍光色素から発せられた蛍光を検出した。ウェスタンブロット法によりIGF1Rの発現をAlexa488蛍光色素で標識したメンブレンをOdysseyによってスキャンした画像から、検出された各サンプルにおけるIGF1Rのバンドの蛍光強度を定量した。がん細胞株から得られたサンプルを同比で混合したものを基準サンプルとして、3回の独立して行った実験によって得られた定量値の中間値を各サンプルにおけるIGF1R発現量の最終的な定量値(相対値)とした。結果を下表と図2に示す。表中*印は基準とした細胞株を示す。
なお、この表は、がん細胞の種類ではなく、患者ごとのがん細胞によってPI3K阻害剤が効く場合と効かない場合があることも示している。
また、これらの発現量から、X(%)=(検体のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)/(NCI-H23細胞のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)x100を算出した。
本実施例では、PI3K阻害剤未治療のがん細胞におけるZSTK474耐性(自然耐性)とIGF1R遺伝子の発現との関係を調べた。
PI3K阻害剤未治療のがんとして、39種類のヒトがん細胞株を準備し、それぞれのがん細胞株から、実施例1と同様の方法で細胞抽出液を作成し、GI50を測定した。
また、各細胞抽出液におけるIGF1Rの発現量を、一次抗体(SantaCruz社のIGF1Rβ(C20)(sc-713))と、Alexa488蛍光色素で標識された二次抗体を使用し、Licor社のOdysseyを用いて測定し、定量した。Odysseyは蛍光標識されたサンプルに励起光を供給し、蛍光色素から発せられた蛍光を検出した。ウェスタンブロット法によりIGF1Rの発現をAlexa488蛍光色素で標識したメンブレンをOdysseyによってスキャンした画像から、検出された各サンプルにおけるIGF1Rのバンドの蛍光強度を定量した。がん細胞株から得られたサンプルを同比で混合したものを基準サンプルとして、3回の独立して行った実験によって得られた定量値の中間値を各サンプルにおけるIGF1R発現量の最終的な定量値(相対値)とした。結果を下表と図2に示す。表中*印は基準とした細胞株を示す。
なお、この表は、がん細胞の種類ではなく、患者ごとのがん細胞によってPI3K阻害剤が効く場合と効かない場合があることも示している。
また、これらの発現量から、X(%)=(検体のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)/(NCI-H23細胞のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)x100を算出した。
PI3K阻害剤ZSTK474の代わりに、他のPI3K阻害剤NVP-BEZ235及びLY294002を用いて同様の測定を行った。それらのPI3K阻害剤に対する耐性(GI50)とIGF1R遺伝子の発現量の関連を図3〜5に示す。これらの図から、IGF1R遺伝子の発現が高いほどPI3K阻害剤が効きにくい(即ち、PI3K阻害剤に対して耐性)という関連があることが分かる。また、Xが20%以下、特に10%以下のIGF1R発現量の細胞株については、GI50が低く、PI3K阻害剤に対する耐性が低いといえる。
実施例3
本実施例では、免疫組織化学法(IHC法)を用いて、in vivoの腫瘍サンプルのIGF1Rタンパク質の発現を検出し、in vivoにおけるZSTK474に対する耐性(抗腫瘍効果)との関連を検討した。このようなin vivoの試験は、試験管内で培養しているヒトがん細胞を用いた解析結果(実施例2)に比べ、より臨床サンプルに近い条件といえる。
実施例2のヒトがん細胞株39種のうち表4に示す21の細胞株をヌードマウスの皮下に移植して腫瘍(ゼノグラフト)を形成させ、ZSTK474(200mg/kg)をヌードマウスに毎日(月曜〜土曜)経口投与し、2週間投与後の腫瘍の縦(L)×横(W)を測定し、腫瘍のサイズ(TV)を以下の計算式により得た。
TV=L×W2/2
抗腫瘍効果は、T/C(薬剤処理群(Treated)の腫瘍のサイズ/薬剤未処理群(Control)の腫瘍のサイズ)(%)で示し、T/Cが小さいほど薬剤処理によって腫瘍が退縮した(即ち、抗腫瘍効果が高い)ことを示す。
一方、ZSTK474を投与前の腫瘍サンプルを摘出してホルマリンで固定し、パラフィン包埋させた。これらを組織マイクロアレー(TMA)として作成した。TMAは、1枚の切片(スライド)で同時に多サンプルの測定を可能にする技術である。TMAから腫瘍切片(4μM厚)を作成し、脱パラフィン後に一次抗体(SantaCruz社のIGF1Rβ(C20)(sc-713))で処理し、Dako社のEnvision+キットを用いて染色させた。切片(スライド)はAperio Technologies社のScanscope XTスライドスキャナでデジタル画像化し、同社のソフトウェア(Color Deconvolution Algorithm)を用いて染色強度(IGF1Rの発現量に相当する)を定量化した。
また、これらの染色強度から、X(%)=(検体のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)/(NCI-H23細胞のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)x100を算出した。
結果を下表と図6に示す。表中*印は基準とした細胞株を示す。
本実施例では、免疫組織化学法(IHC法)を用いて、in vivoの腫瘍サンプルのIGF1Rタンパク質の発現を検出し、in vivoにおけるZSTK474に対する耐性(抗腫瘍効果)との関連を検討した。このようなin vivoの試験は、試験管内で培養しているヒトがん細胞を用いた解析結果(実施例2)に比べ、より臨床サンプルに近い条件といえる。
実施例2のヒトがん細胞株39種のうち表4に示す21の細胞株をヌードマウスの皮下に移植して腫瘍(ゼノグラフト)を形成させ、ZSTK474(200mg/kg)をヌードマウスに毎日(月曜〜土曜)経口投与し、2週間投与後の腫瘍の縦(L)×横(W)を測定し、腫瘍のサイズ(TV)を以下の計算式により得た。
TV=L×W2/2
抗腫瘍効果は、T/C(薬剤処理群(Treated)の腫瘍のサイズ/薬剤未処理群(Control)の腫瘍のサイズ)(%)で示し、T/Cが小さいほど薬剤処理によって腫瘍が退縮した(即ち、抗腫瘍効果が高い)ことを示す。
一方、ZSTK474を投与前の腫瘍サンプルを摘出してホルマリンで固定し、パラフィン包埋させた。これらを組織マイクロアレー(TMA)として作成した。TMAは、1枚の切片(スライド)で同時に多サンプルの測定を可能にする技術である。TMAから腫瘍切片(4μM厚)を作成し、脱パラフィン後に一次抗体(SantaCruz社のIGF1Rβ(C20)(sc-713))で処理し、Dako社のEnvision+キットを用いて染色させた。切片(スライド)はAperio Technologies社のScanscope XTスライドスキャナでデジタル画像化し、同社のソフトウェア(Color Deconvolution Algorithm)を用いて染色強度(IGF1Rの発現量に相当する)を定量化した。
また、これらの染色強度から、X(%)=(検体のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)/(NCI-H23細胞のIGF1R遺伝子の発現量−PC-3細胞のIGF1R遺伝子の発現量)x100を算出した。
結果を下表と図6に示す。表中*印は基準とした細胞株を示す。
Claims (15)
- がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断マーカーであって、該診断マーカーがIGF1RのmRNA若しくはcDNA又はタンパク質から成り、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量により判定する診断マーカー。
- 高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプル、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルを用い、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量を、これら基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量と比較して該患者のがんのPI3K阻害剤に対する耐性を判定する請求項1に記載の診断マーカー。
- がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かの判定を下式の比率X(%)で行い、
X=(A−C)/(B−C)x100
(式中、Aは検体のIGF1R遺伝子の発現量、Bは高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量、Cは低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量を表す。)
Xが20%以下であれば、がんがPI3K阻害剤に対して耐性ではないと判定する、請求項2に記載の診断マーカー。 - 高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルとして、NCI−H23細胞(ATCC No. CRL-5800)、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルとして、PC−3細胞(ATCC No. CRL-1435)を用いる請求項2又は3に記載の診断マーカー。
- IGF1RのmRNA若しくはcDNAから成る請求項1に記載の診断マーカーであって、(i)配列番号1の塩基配列から成るポリヌクレオチドの少なくとも50塩基のポリヌクレオチド部分を挟む10〜30個の塩基配列からなる一対のプライマー、及び/又は(ii)配列番号1の51〜4154番目の塩基配列から成るポリヌクレオチドの連続した少なくとも15個の塩基配列からなるプローブを用いる診断マーカー。
- IGF1Rのタンパク質から成る請求項1に記載の診断マーカーであって、IGF1Rタンパク質に特異的な抗体を用いる診断マーカー。
- がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するための診断方法であって、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量により判定する診断方法。
- 高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプル、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルを用い、がん患者から採取したがん細胞又はがん組織におけるIGF1R遺伝子の発現量を、これら基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量と比較して該患者のがんのPI3K阻害剤に対する耐性を判定する請求項7に記載の診断方法。
- がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かの判定を下式の比率X(%)で行い、
X=(A−C)/(B−C)x100
(式中、Aは検体のIGF1R遺伝子の発現量、Bは高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量、Cは低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準細胞サンプルのIGF1R遺伝子の発現量を表す。)
Xが20%以下であれば、がんがPI3K阻害剤に対して耐性ではないと判定する、請求項8に記載の診断方法。 - 高いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準として、NCI−H23細胞(ATCC No. CRL-5800)、及び低いIGF1R遺伝子の発現量を示す基準として、PC−3細胞(ATCC No. CRL-1435)を用いる請求項8又は9に記載の診断方法。
- IGF1R遺伝子の発現量を示す指標としてIGF1RのmRNA若しくはcDNAの発現量を用いる請求項7に記載の診断方法であって、(i)配列番号1の塩基配列から成るポリヌクレオチドの少なくとも50bのポリヌクレオチド部分を挟む10〜30個の塩基配列からなる一対のプライマー、及び/又は(ii)配列番号1の51〜4154番目の塩基配列から成るポリヌクレオチドの連続した少なくとも15個の塩基配列からなるプローブを用いる診断方法。
- IGF1R遺伝子の発現量を示す指標としてIGF1Rのタンパク質の発現量を用いる請求項7に記載の診断方法であって、該タンパク質をIGF1Rタンパク質に特異的な抗体を用いて検出する診断方法。
- 請求項7に記載の診断方法であって、下記工程から成る方法。
(i) がん患者から腫瘍サンプルを採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する工程、但し、細胞サンプルを入手したものについては、ヌードマウス皮下に移植して、取り出した腫瘍片(ゼノグラフト)を、ホルマリン固定・パラフィン包埋後、組織切片を作成する工程、
(ii) コントロールとする腫瘍サンプルを(i)と同様に処理してコントロールの組織切片を作成する工程、
(iii) (i)及び(ii)で作成した組織切片を脱パラフィン後、IGF1Rタンパク質に特異的な一次抗体で処理した後、二次抗体で染色し、染色強度を定量化する工程、及び
(iv) がん患者の腫瘍サンプルから得た染色強度を、コントロールとした腫瘍サンプルから得た染色強度と比較することにより、該がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定する工程 - がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するため診断マーカー用キットであって、IGF1R遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマー及び熱耐性DNAポリメラーゼ、及び/又は該cDNA又はその増幅産物に対合させるプローブから成るキット。
- がん患者のがんがPI3K阻害剤に対して耐性か否かを判定するため診断マーカー用キットであって、IGF1Rタンパク質に特異的な一次抗体と、この一次抗体に特異的であって、標識化された二次抗体とから成るキット。
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