JPWO2013125687A1 - 炎症疾患治療剤 - Google Patents
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Abstract
Description
したがって、本発明は、炎症疾患に対する新規な治療剤の提供を目的とする。
本発明のハイブリドーマMouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3は、原寄託日を2010年8月17日として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(住所:日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8バイオテクノロジー本部)において、受託番号NITE BP-972のもと寄託されている。
本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、SSVLYGGPPSAA(配列番号1)で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドまたは該ペプチドと薬学上許容可能な担体との結合体と結合することを一つの特徴としている。かかるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、炎症疾患に対して優れた治療効果を奏することは意外な事実である。
また、免疫細胞としては、好ましくは脾細胞を使用する。
また、細胞融合温度は、好ましくは25〜37℃であり、より好ましくは30〜37℃である。
また、ミエローマ細胞と免疫細胞との混合比率は、好ましくは1:1〜1:10程度である。
また、所望によりジメチルスルホキシドなどの補助剤を培地に適宜添加することができる。
抗原物質の製造
抗原物質としては、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドおよびKLHの結合体を使用した。
免疫
PBS中に抗原物質を溶解させた溶液 0.8mL(抗原物質濃度:0.5mg/mL)とフロイトコンプリートアジュバンド(和光純薬株式会社製)0.8mLとを混合し、懸濁液(抗原濃度:0.25mg/mL)を得た。次に、この懸濁液0.2mLをBALB/cマウスに腹腔内投与した。さらに、この懸濁液を2週間毎に同量にてマウスに投与した。そして、投与開始から16週間後、PBS中抗原を溶解させた溶液 0.2mL(抗原濃度:600〜1000mg/mL)をマウス腹腔内へ最終投与した。なお、投与の際には、眼底静脈より採血を行ってELISAにより抗体価を測定した。最終投与の4日後、全採血を行い、得られた血液を遠心分離(2000rpm、20分)し、抗血清を得て以下の実験のコントロール抗血清として用いた。また、全採血後、ラットより脾臓を摘出し、得られた脾細胞を以下の細胞融合に用いた。
上記の脾細胞およびミエローマ細胞(P3X63-Ag.8.653)を脾細胞:ミエローマ細胞=10:1〜10にて混合して遠心分離(1500rpm,5分)した。遠心分離した後、アスピレーターを用いて上清を除去し、得られた細胞ペレットに37℃のポリエチレングリコール4000(50%PBS溶液)1mLを1分間かけて添加して混合液とした。この混合液を37℃にて1分間静置した後、37℃のIMDM培地(計9mL)を30秒毎に1 mLずつ加えた後、遠心分離(1500rpm、5分)した。遠心分離後、上清を吸引除去し、37℃の15%FCS(JRH BIOSCIENCES製)含有IMDM(GIBCO製)培地を適量添加した。得られた懸濁液を96ウェル培養プレートに100mLずつ分注を行い、37℃/5%CO2インキュベーターにて1日培養した。さらにHAT培地(HAT粉末(HAT MEDIA SUPPLEMENT(×50)、SIGMA製)を無血清IMDM培地10mLに溶かし、10%FCS含有IMDM培地にて50倍希釈したものである。)を100mL添加し、37℃/5%CO2インキュベーターにて培養した。HAT培地の交換は2〜3日毎に行い、10日後にはHT培地(HT粉末(HT MEDIA SUPPLEMENT、SIGMA製)を無血清IMDM培地10mLに溶かし、10%FCS含有IMDM培地にて50倍希釈したものである。)に切り替え、3日間、37℃/5%CO2インキュベーターにて培養を行った。以後2〜3日ごとに培地(HT培地)の交換を行った。細胞増殖を顕微鏡により確認した後、培養上清(約100 mL)を回収した。この培養上清を用いて、抗体価測定によるハイブリドーマのスクリーニングを行った。
抗体価測定
上記抗原物質(5mg)を含む緩衝液(Baicarbonate buffer:100 mM NaHCO3-NaOH、pH9.2〜9.5、ペプチド濃度:1μg/mL) を1ウェル当り50μLずつ96ウェル平底プレートへ添加し、室温にて2時間静置してコーティングした。プレートを洗浄バッファー(PBST)にて3回洗浄し、ブロッキングバッファー(3%スキムミルク1%BSA、PBS)を200〜250μL/ウェルにて加え、4℃にて一昼夜反応させた後、3回洗浄した。そして、ハイブリドーマの培養上清を100μL/ウェルにて加え、37℃にて4時間または4℃にて一昼夜反応させた。プレートを3回洗浄した後、希釈バッファー(10 mM Tris-HCl ( pH 8.0 )、0.9 % ( W/V ) NaCl、0.05 % ( W/V ) Tween20)にて10000倍希釈したビオチン標識抗マウスIgG(Biotion-labeled anti-mouse IgG 、SIGMA)を50μL/ウェルにて加え、室温にて2時間反応させた。その後6回洗浄した後、希釈バッファーにて1000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識ストレプタリジン(Streptaridin)を50μL/ウェルにて加え、室温にて1〜2時間反応させた。その後6回洗浄を行い、蛍光基質バッファー(Attophos substrate buffer、ロシュダイアグノスティックス社製)を50μL/ウェル加えてプレートを遮光し発色させた。蛍光強度はCytoFluorII(パーセプティブ社製)にて測定した。
上記抗体価測定にて陽性の結果を示したウェル(1×105細胞/mL)に15%FCS10%HCF(Hybridoma cloning factor、オリジン社製)含有IMDM培地を加えて、約200細胞/ウェル となるように96ウェル培養プレートに分注し、37℃5%CO2インキュベーターにて培養を行った。そして、上記と同様に抗体価測定を行い、抗体産生量の多いハイブリドーマを選択した。
ハイブリドーマMouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3は、15%FCS含有RPMI培地を用いて培養した(1×106細胞/mL)。次に、ハイブリドーマ培養液を回収し、死細胞片を除くためにフィルターでろ過した。次に、終濃度40%となるように、培養上清に硫酸アンモニウムを加え、40℃で1時間撹拌した。次に、遠心分離(3000g、30分、4℃)を行い、上清を捨て沈殿を回収した。この沈殿を上記培養上清の1/10量のPBSで溶解し、PBSを外液として一晩透析した。
次に、上記沈殿を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で2倍希釈し、1Mトリス-HCl緩衝液とともに、HiTrapNHS活性化カラムに添加した。さらに、0.1Mグリシン−HCl溶液(pH2.7)で抗体の溶出し、フラクションチューブに回収した。
実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)のアイソタイプを同定するため、Mouos Monoclonal Antibody Isotyping Reagents(シグマ)を用いたアイソタイプ同定試験を行った。
結果は、図1に示される通りであり、IgG1が最も高い値を示した。
図1およびSDS-PAGEの結果から、実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)のアイソタイプはIgG1であることが確認された。
WO2006/025580号公報には、免疫抑制に用いることができ、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドと結合する抗H1モノクローナル抗体として、ハイブリドーマ16G9(受託番号FERM BP−10413)の産生するモノクローナル抗体(16G9mAb)が報告されている。
そこで、WO2006/025580号公報に記載の抗体(16G9mAb)を参考例1とし、実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)との抗原に対する親和性の比較を行った。
抗原としては、参考例1(16G9mAb)の抗原であるヒストンH1、およびヒストンH1類似抗原であるコアヒストンH2A、H2B、H3およびH4を選択した。
96wellマイクロプレートをヒストンH1、H2A、H2B、H3またはH4でコートした。それぞれのヒストンは、100mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)に溶解させたものを用いた。そのプレートをPBS-tween20(0.05%)で洗浄し、3%スキムミルクと1%BSAで1時間ブロッキングした。SSVmAb 5μg/mLを各wellに添加し、1時間インキュベーションした。結合したSSVmAbをペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートanti mouse IgG1 Ab(シグマ)を用いて検出し、1時間インキュベーションした。結合したSSVmAbをABTS[2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-sulfonic acid) ]基質溶液を用いた検出し、Multiskan Ascent(Thermo Fisher Scientific Inc., Waltham, MA)を用いて405nmの吸光度を測定した。
図2に示される通り、実施例1(SSVmAb)では、ヒストンH1に対する親和性よりも、ヒストンH2A、H2B、H3またはH4に対する親和性が高かった。
一方、図3に示される通り、参考例1(16G9)では、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4に対する親和性よりも、ヒストンH1に対する親和性の方が高かった。
無処理のDAラット由来の脾臓リンパ球(応答細胞)およびマイトマイシンC(協和発酵工業株式会社製)処理を行ったLEWラット由来の脾臓リンパ球(刺激細胞)を用いた。応答細胞は10%FCS−RPMI培地にて5×105 細胞/mLに調整し、刺激細胞は10%FCS−RPMI培地にて8×106 細胞/mLに調整した。この応答細胞懸濁液および刺激細胞懸濁液をそれぞれ100μLを96穴丸底プレート(Nunc Brand Products社製)に播種した後、混合培養開始時に参考例1のモノクローナル抗体16G9mAb(0.1、2、4または6μg/mL/ウェル)または実施例1のモノクローナル抗体SSVmAb(4μg/mL/ウェル)を添加し、37℃,5%CO2/95% airの条件下にて3.5日以上培養した。また、陽性対照として、免疫抑制剤タクロリムス(FK506:藤沢薬品社製、1nM/ウェル)を添加した。さらに、培養終了15時間前にブロモデオキシウリジン(BrdU)10μLを添加した。そして、BrdUラベリング&ディテクションキットIII(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて、細胞内DNAに取り込まれたBrdU量を指標として、免疫抑制物質により処理された細胞の増殖能を測定し、免疫抑制レベルの指標とした。
実施例1(SSVmAb)では、BrdU量取り込みを示す吸光度は、参考例1(16G9mAb)およびタクロリムス(FK506)のそれより低かった。特に、実施例1(SSV mAb)の吸光度0.552±0.114(平均±S.E.)と、同添加量(4μg/mL/ウェル)の参考例1(16G9mAb)の吸光度1.351±0.389(平均±S.E.)とを比較すると、実施例1の平均値は、参考例1のそれの約41%程度であった。
以下の手法により、C57BL/6マウス(5週齢、メス、日本チャールズリバー社製)より脾臓を摘出し、全脾細胞を調製した。
まず、5 mlのRPMI1640培地(Sigma-Aldrich社製R-8758)を入れた5 ml培養ディッシュ(BD Bioscience社製FALCON 351007)中で脾臓を解剖用ハサミとピンセットにて良くほぐして脾細胞を懸濁後、15 ml遠心チューブ(BD Bioscience社製FALCON 352096)に移した。続いて5 mlディッシュ上をphosphate-buffered saline(PBS, Invitrogen社製20012-027)にて数回洗浄し、これらも先の細胞懸濁液に加えて静置後、上清を別の15 ml遠心チューブに回収した。さらに残渣の不溶性脾臓組織にも再びRPMI1640培地5 mlを加えて静置後上清のみを回収し、これと上記の細胞懸濁液を合わせて1,500 rpm, 5 minの遠心分離を行った。回収した細胞にlysis buffer(150 mM NH4Cl/15 mM NaHCO3/0.1 mM EDTA-Na2, pH 7.3)2 mlを加えてタッピングにより溶血後、PBS 10 mlを加えて1,500 rpm, 5 minにて3回遠心洗浄した細胞を全脾細胞とした。
まず、脾細胞をMACS buffer (0.5% bovine serum albumin (BSA, ナカライテスク社製08777-36)/PBS)にて 5 x 107 cells/200μlの割合で懸濁し、50μl Biotin-antibody cocktail / 5 x 107 cellsを添加して4 ℃, 10 minインキュベートした。これを150 μl MACS buffer / 5 x 107 cellsに懸濁後、100μl anti-biotin micro beads /5 x 107 cellsを添加して4 ℃, 15 minインキュベートした。これにMACS buffer(10 ml)を添加して1500 rpm, 5 min遠心洗浄後、回収細胞をMACS buffer 500μlに懸濁した。MACSカラム (MSカラム、Miltenyi Biotec社製130-042-201) をマグネット(MiniMACS separation Unit、Miltenyi Biotec社製130-090-312)にセットして500μl MACS bufferにてカラムを平衡化後、上述の細胞懸濁液を供した。素通り画分500μlおよびその後のMACS bufferによるカラム洗浄画分(1.5 ml)を回収して精製未刺激T細胞とした(純度約97%)。
まず、各T細胞サンプル(1 x 106 cells)を89μlのFACS buffer (0.5% FBS/PBS/0.02% NaN3)に懸濁後、1μgのanti-mouse CD16/32-blocks Fc binding(eBioscience社製14-0161-85)を加えて4℃, 20 minインキュベートした。これに1次抗体として16G9 mAbまたはSSV mAb (100μg/ml)10μlを加えて4℃, 60 minインキュベートした。FACS bufferにて細胞を2回遠心洗浄後、2次抗体(Biotin-conjugated rat anti-mouse IgM mAb(eBioscience社製13-5780-85)またはBiotin-conjugated rat anti-mouse IgG1 mAb(BD Biosciences社製553441)、各1μg/ml)を100μl加えて4℃, 30 minインキュベートした。再びFACS bufferにて細胞を2回遠心洗浄後、Streptavidin-PE-Cy7(BD Biosciences社製556463、 1μg/ml)を100μl加え、これにFITC-conjugated rat anti-mouse CD3 mAb(BD Biosciences社製553062)を終濃度1 μg/mlになるように添加して4℃, 30 minインキュベートした。FACS bufferにて2回遠心洗浄および40 μmセルストレーナー(BD Bioscience社製FALCON 352340)にてろ過処理後、各サンプルをFACSCaliburフローサイトメーターおよびCellQuestソフトウェア(BD Bioscience社製)に供して16G9 mAbまたはSSV mAb陽性/CD3陽性T細胞数を解析した。
参考例1(16G9 mAb)および実施例1(SSV mAb)を比較すると、CD3陽性T細胞に対する反応性に有意差は認められず、これら抗体は同等の反応性を示した(student t-test、p<0.05)。
実施例1(SSV mAb)によりダウンレギュレーションされる候補タンパク質をプロテオーム解析にて7種同定した。
そして、7種の候補タンパク質うち、ATP合成酵素が実施例1(SSV mAb)のターゲット抗原であることを以下の手法により確認した。
まず、サーモフィッシャー社のAccell siRNAキットを用いて、ミトコンドリアATP合成酵素のノックダウンされたBalb/cマウス由来のT細胞を取得した。
次に、試験例2の手法に準じて、得られたT細胞を用いて、実施例1(SSV mAb) を試験物質としてMLR試験を行った。
ここで、対照試薬としてはIsotype IgG1(eBioscience社)を用いた。また、コントロール試験として、ATP合成酵素をノックダウンしていないマウス由来のT細胞を用いた同様の試験を行った。
図6Aに記載の通り、ATP合成酵素をノックダウンしない場合には、実施例1(SSV mAb)は、Isotype IgG1と比較して有意に細胞増殖を阻害していた。
一方、図6Bに記載の通り、ATP合成酵素をノックダウンした場合には、細胞増殖の阻害に関し、実施例1(SSV mAb)とIsotype IgG1との間には有意差は認められなかった。
図6AおよびBでは、ATP合成酵素のノックダウンによりSSV mAbの免疫抑制活性が低下しており、SSV mAb が、免疫抑制の際に、ATP合成酵素活性をダウンレギュレーションしていることが示唆される。
ハイブリドーマcDNAの合成
FastPure RNA Kit(TaKaRa社製)を使って、試験例1で取得したハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3)1.6×107cellsからtotal RNAを調製した。Poly (A)+ Isolation Kit from Total RNA(NIPPON GENE製)を使って、240 μgのtotal RNAからmRNAを調製した。Etachinmate(NIPPON GENE社製)を使ってエタノール沈殿を行い、mRNAを沈殿した。75% エタノールで洗浄した後、mRNAを乾燥した。これにRNase free waterを10 μL加え、mRNAを溶解した。得られたmRNA溶液は-80℃で保存した。 SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社製)を使って、1 μgのSSVハイブリドーマmRNAから5’-RACE用のcDNAを合成した。得られたcDNA溶液は-20℃で保存した。
マウスIgG1 重鎖定常領域の塩基配列をもとに、プライマー 5’- CAC CAT GGA GTT AGT TTG GGC AGC AG -3’ (配列番号12)を作製した。マウス軽鎖κ定常領域の塩基配列をもとにプライマー 5’- CAC GAC TGA GGC ACC TCC AGA TG -3’(配列番号13)を作製した。それぞれのプライマーとUniversal Primer A Mix(SMARTer RACE cDNA Amplification Kit付属プライマー)を用いて、cDNAをテンプレートとした5'-RACEを行った。RACE反応はAdvantage2 PCR Kit(Clontech社製)を用いた。反応液をアガロース電気泳動し、約600 bpの重鎖5’-RACE産物および約550 bpの軽鎖5’-RACE産物を、E.Z.N.A. Gel Extraction Kit(OMEGA bio-tek社製)を用いてゲルから精製した。これをpGEM-T Easy Vector(Promega社製)に連結し、Competent high E.coli DH5α(TOYOBO社製)を形質転換した。得られた形質転換体から、E.Z.N.A. Plasmid Miniprep KitI(OMEGA bio-tek社製)を用いてプラスミドを調製した。調製したプラスミドをテンプレートとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いてサイクル反応を行った。
その結果、軽鎖可変領域の塩基配列は、配列番号5の第67番〜第384番で表されるものであった。
また、重鎖可変領域の塩基配列は、配列番号10の第58番〜第423番で表されるものであった。
なお、翻訳開始コドンとKabatらの方法により決定したFR(定常領域)1の位置に基づき、配列番号5の第1番〜第66番は軽鎖シグナルペプチドの塩基配列であり、および配列番号10の第1番〜第57番は重鎖のシグナルペプチドの塩基配列であると推定した。
また、軽鎖可変領域可変領域のアミノ酸配列のうち、CDR1はRASSSVSYMH(配列番号2)で表わされ、CDR2はATSNLAS(配列番号3)で表わされ、CDR3はQQWSSNPWT(配列番号4)で表わされることを確認した。
また、重鎖可変領域のアミノ酸配列のうち、CDR1はGYNMN(配列番号7)で表わされ、CDR2はNINPYYGSTSYNQKFKG(配列番号8)で表わされ、CDR3はSPYYSNYWRYFDY(配列番号9)で表わされることを確認した。
BALB/cマウス(実験開始時体重20g−30g、n=6)をSPF、恒温恒湿(22±1度、55±5%)にて、プラスティック製ケージ内で12時間明暗サイクルの条件下で飼育した。餌および水は自由摂取とした。実験的敗血症モデルとして一般的に用いられるリポポリサッカライド(LPS)誘発致死的敗血症をLPS40mg/kgの腹腔内投与により誘発した。生理食塩水に溶解したSSV mAbを腹腔内にLPS投与30分前、LPS投与6時間後、12時間後の3回、SSV mAb量として100μg/回で腹腔内に投与した。その後の動物個体の生存を調べた。なお、対照はSSV mAbの代わりに生理食塩水に溶解したIgG(SIGMA社製)を同様に投与した。
その結果を図7に示した。LPS投与(敗血症誘導)後70時間の生存率は対照群(IgG)が20%(累積生存割合0.2)であったのに対しSSV mAb投与群では70%(累積生存割合0.7)であった。LPS投与(敗血症誘導)後70時間の生存率は、SSV mAb投与群(SSV)が対照群(IgG)の約3.5倍であり、SSV mAb投与群の方が有意に高かった(p<0.05)。
8−1
BALB/cマウス(実験開始時体重20g−30g、n=10)をSPF、恒温恒湿(22±1度、55±5%)にて、プラスティック製ケージ内で12時間明暗サイクルの条件下で飼育した。餌および水は自由摂取とした。次に、マウスにLPS40mg/kgの腹腔内投与を行い、炎症疾患として、試験例7の同様にポポリサッカライド(LPS)誘発致死的敗血症を誘発した。生理食塩水に溶解したSSV mAbを腹腔内にLPS投与30分前、LPS投与6時間後、12時間後の3回、SSV mAb量として100μg/回で腹腔内に投与した。その後の動物個体の生存を調べた。なお、対照はSSV mAbの代わりに生理食塩水に溶解したIgG(SIGMA社製)を同様に投与した。
試験例8では、コントロール群およびSSV mAb投与群において、長谷川ら(Surg Res. 2012 May 1;174(1):136-41.)の行った手法に準じ、全身麻酔下にて心臓由来の血液または肺組織を取得した。得られたサンプルについてELISA法を用いた市販の測定キットによってヒストンH1、ヒストンH3およびH4の濃度を測定した。
SSV mAb投与群の血液サンプル中のヒストンH1濃度は試験中増加することなくほぼ一定に維持されていた。一方、コントロール群の血液サンプル中のヒストンH1濃度は、試験期間中増減が認められた。
また、炎症組織(肺)のヒストンH1濃度は、SSV mAb投与群の方が、コントロール群よりも有意に低下していることが確認された。
血液サンプルおよび炎症組織(肺)のヒストンH3濃度は、SSV mAb投与群の方が、コントロール群よりも低い傾向が認められた。
血液サンプルおよび炎症組織(肺)のヒストンH3濃度は、SSV mAb投与群の方が、コントロール群よりも低い傾向が認められた。
その結果、SSV mAbはインビトロにおいてヒストンH1、ヒストンH3およびヒストンH4と結合能を有することを確認した。
試験例8の試験終了後、コントロール群およびSSV mAb投与群のラットからそれぞれ肺組織切片を取得し、長谷川ら(Surg Res. 2012 May 1;174(1):136-41.)の行った手法に準じて、ヘマトキシリン・エオジン染色液(和光純薬製)を用いて染色した。次に、得られたサンプルの顕微鏡写真を撮影した。
参考として、健常ラットについても同様に、肺組織断片の写真を撮影した。
図12A(健常ラット)と、図12B(SSV mAb投与群)とは、肺中の炎症は観察されなかった。一方、図12C(コントロール群)では、肺に炎症が確認された。
試験例8の試験終了後、Murakamiらの手法(Shock, 18 (2002), p. 236)に準じて、鬱血、浮腫、炎症および出血スコアを評価した。具体的には、顕微鏡による24視野の拡大像を観測対象した。そして、SSV mAb投与群およびコントロール群における鬱血、浮腫および炎症の悪化度合いを、スコア0-4の5段階(4が最も悪化度が高い)で評価した。
鬱血、浮腫、炎症および出血のいずれにおいても、コントロール群よりも、SSV mAb投与群の方が有意に低い値を示した。
試験例8では、コントロール群およびSSV mAb投与群において、3時間ごとに静脈血から血清を取得した。そして、得られたサンプルについてELISA法を用いた市販の測定キットによって炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)と、抑制性サイトカイン(IL−10)の濃度を測定した。
図14A〜Cに示される通り、炎症性サイトカインTNF−α、IL−1βおよびIL−6に関しては、SSV mAb投与群の値が、コントロール群と比較して有意に低下した。
一方、図14Dに示される通り、抑制性サイトカインIL−10に関しては、SSV mAb投与群の値が、コントロール群と比較して有意に上昇した。
上記結果からも、SSV mAb投与群では、コントロール群と比較して炎症が抑制されていることが確認された。
Wistar系雄性ラット(n=4)に対して、全身麻酔下に右腎摘出後、左腎を血管クリップにて虚血再灌流させモデルを作成した。次に、SSV mAb投与群では、モデル作成30分前および再灌流直後にSSV mAbを10mg/kg投与した。また、コントロール群ではSSV mAbの代わりIgG(SIGMA社製)を同様に投与した。そして、モデル作成24時間後の血清中の尿素窒素(BUN)およびクレアチニン(Cr)を測定し、腎障害のレベルを評価した。また、試験終了後にラットの剖検を行い、組織学的評価を行った。
Wistar系雄性ラット(n=4〜6)を用い、SSV mAb投与群において、モデル作成30分前および再灌流から6時間後にSSV mAbを10mg/kg投与する以外、試験例10と同様に試験を行った。
また、対照はSSV mAbの代わりIgG(SIGMA社製)を同様に投与した。そして、モデル作成24時間後の血清中の尿素窒素(BUN)およびクレアチニン(Cr)濃度を測定し、腎障害のレベルを評価した。また、試験終了後にラットの剖検を行い、組織学的評価を行った。
Claims (18)
- SSVLYGGPPSAA(配列番号1)で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドまたは該ペプチドと薬学上許容可能な担体との結合体と結合する、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含んでなる、炎症疾患治療剤。
- 前記炎症疾患が、ヒストンの関与するものである、請求項1に記載の治療剤。
- 前記炎症疾患が、急性炎症疾患である、請求項1または2に記載の治療剤。
- 前記炎症疾患が、敗血症、腎虚血再灌流傷害および腎不全から選択されるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記炎症疾患が敗血症である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療剤。
- ヒストンH1、ヒストンH3およびヒストンH4と結合する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の治療剤。
- RASSSVSYMH(配列番号2)で表わされるアミノ酸配列からなるCDR1、ATSNLAS(配列番号3)で表わされるアミノ酸配列からなるCDR2、およびQQWSSNPWT(配列番号4)で表わされるアミノ酸配列からなるCDR3を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の敗血症治療剤。
- 前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域が、配列番号6の第23番〜第128番で表されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の治療剤。
- GYNMN(配列番号7)で表わされるアミノ酸配列からなるCDR1、NINPYYGSTSYNQKFKG(配列番号8)で表わされるアミノ酸配列からなるCDR2、およびSPYYSNYWRYFDY(配列番号9)で表わされるアミノ酸配列からなるCDR3を含んでなる重鎖可変領域を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域が、配列番号11の第20番〜第141番で表されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、前記ペプチドまたはペプチドと薬学上許容可能な担体に対するものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記薬学上許容可能な担体が、キーホールリンペットヘモシアニン、オボアルブミンまたはウシ血清アルブミンである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ATP合成酵素活性をダウンレギュレーションしうる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記モノクローナル抗体が、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記モノクローナル抗体が、ハイブリドーマMouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3により産生される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の治療剤。
- 前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、(Fab’)2、FvまたはscFvである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の治療剤。
- 請求項1〜16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片の有効量を被験体に投与することを含んでなる、炎症疾患の治療方法。
- 炎症疾患の治療剤の製造における、請求項1〜16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片の使用。
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