JPWO2013094623A1 - 風力エネルギー回収装置及び風力発電装置 - Google Patents
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Abstract
カイトの牽引力から連続的に回転力を抽出することができ、カイトの牽引力を効率的に回転力に変換することができる、風力エネルギー回収装置及び風力発電装置を提供する。
風力を受けて上空に浮揚するカイト2と、カイト2を牽引する主索3と、カイト2の運動を制御する操縦索4と、操縦索4の張力を制御する操縦ユニット5と、操縦ユニット5に接続され往復回動可能なパワーレバー6と、パワーレバー6に連結され往復回動を回転運動に変換して出力する動力出力手段7と、を有し、操縦ユニット5により操縦索4の張力を制御することによりカイト2の運動を制御し、カイト2を略円弧状の軌跡を描くように左右に往復動させることにより、パワーレバー6を駆動させて動力を出力するようにした。
風力を受けて上空に浮揚するカイト2と、カイト2を牽引する主索3と、カイト2の運動を制御する操縦索4と、操縦索4の張力を制御する操縦ユニット5と、操縦ユニット5に接続され往復回動可能なパワーレバー6と、パワーレバー6に連結され往復回動を回転運動に変換して出力する動力出力手段7と、を有し、操縦ユニット5により操縦索4の張力を制御することによりカイト2の運動を制御し、カイト2を略円弧状の軌跡を描くように左右に往復動させることにより、パワーレバー6を駆動させて動力を出力するようにした。
Description
本発明は、風力エネルギー回収装置及び風力発電装置に関し、特に、翼型カイトの運動特性を利用した風力エネルギー回収装置及び風力発電装置に関する。
風力エネルギーによる発電装置としては、プロペラ翼の回転を利用したプロペラ式のものが一般的に実用化されている。一方、空中を浮揚する翼型カイトによる牽引力を利用する発電装置も考案されているが(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、カイトの牽引力を連続的な回転力に効率的に変換することが不十分であり、実用化には至っていない。
例えば、特許文献1に記載された発電装置では、遊泳体(カイト)が基地体から離反するときに巻上機が回転して発電し、巻上機を電動機で回転することによって遊泳体(カイト)を基地体に接近させるようにしている。また、特許文献2に記載された発電装置は、翼様部材(カイト)が上昇するときにウインチが回転して発電し、ウインチをモータで回転することによって翼様部材(カイト)を下降させるようにしている。
上述したように、再生自然エネルギーである風力の利用は、プロペラ式風力発電装置として既に実用化されているが、装置の製造コストを発電量単価により比較すると、一般的に他の発電装置(例えば、火力発電装置、原子力発電装置等)よりも相対的に高いのが現状である。また、装置を大型化することによりスケールメリットが出るものの、付帯設備の建設コストも大きくなり、やはり火力発電等の化石燃料発電には経済性で敵わない。
一方、上述したように、空中を浮揚する翼型カイトが受ける風力エネルギーを利用した発電装置も既に提案されているが、カイトに繋がれた索体(ロープ、制御紐、係留索等)の一方向の牽引力を如何に効率的に回転力に変換するかが課題となる。特に、特許文献1や特許文献2に記載された発電装置のように、カイトの牽引力の仕事時に引き出された索体を再び電動機等で巻き戻す方法は、回収したエネルギーの一部を放出することになるとともに、連続した回転力の抽出を阻害し、エネルギーの回収効率を低下させる要因となっていた。
また、翼型カイトを布製とすれば製造コストも安く、カイトの翼面積を大きくすれば空中を浮揚するカイトの受ける風力エネルギーは相当大きくなり、カイトの牽引力を効率的に回転力に変換することができれば、経済性の高い風力発電装置を得ることができる。
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、カイトの牽引力から連続的に回転力を抽出することができ、カイトの牽引力を効率的に回転力に変換することができる、風力エネルギー回収装置及び風力発電装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、風力を受けて上空に浮揚するカイトと、該カイトを牽引する主索と、前記カイトの運動を制御する操縦索と、該操縦索の張力を制御する操縦ユニットと、該操縦ユニットに接続され往復回動可能なパワーレバーと、該パワーレバーに連結され往復回動を回転運動に変換して出力する動力出力手段と、を有し、前記操縦ユニットにより前記操縦索の張力を制御することによって前記カイトの運動を制御し、前記カイトを略円弧状の軌跡を描くように左右に往復動させることにより、前記パワーレバーを駆動させて動力を出力する、ことを特徴とする風力エネルギー回収装置が提供される。
前記操縦索は、前記カイトの左側に接続された左側操縦索と、前記カイトの右側に接続された右側操縦索と、を有し、前記操縦ユニットは、前記左側操縦索及び前記右側操縦索を交互に引き込み又は繰り出しを行うことにより前記カイトの左右の移動方向を制御し、前記左側操縦索及び前記右側操縦索を同時に引き込み又は繰り出しを行うことにより前記カイト全体の迎角を調整して上下の移動方向を制御するように構成されていてもよい。
また、前記風力エネルギー回収装置は、前記主索上に配置された発信器と、前記パワーレバーに配置された受信器と、を備えたカイト位置計測手段を有し、前記発信器からの信号を前記受信器により受信して前記カイトの位置を計測し、この計測結果を前記操縦ユニットに送信することによって前記操縦索を制御するようにしてもよい。
また、前記風力エネルギー回収装置は、前記パワーレバー及び前記動力出力手段を支持する架台を有し、該架台は風向に応じて回転可能に配置され、前記パワーレバー及び前記動力出力手段を風速に応じて傾斜角度変更可能に支持するようにしてもよい。
また、前記動力出力手段は、前記パワーレバーにより回転される第一歯車と、該第一歯車に噛合された第二歯車及び第三歯車と、該第二歯車及び第三歯車に連結された出力軸と、を有し、前記第二歯車及び前記第三歯車はクラッチ機構を内蔵し、前記第二歯車は前記第一歯車の正転時に回転可能かつ逆転時にスリップ可能に構成され、前記第三歯車は前記第一歯車の逆転時に回転可能かつ正転時にスリップ可能に構成された動力変換手段を有していてもよい。
また、前記パワーレバーは、内蔵された油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された油圧モータと、前記油圧ポンプのピストンを内方に付勢する弾性体と、を有し、前記油圧ポンプのピストンの先端に前記主索が接続されており、前記カイトの揚力と前記弾性体の付勢力とのバランスによって前記ピストンを移動させることにより、前記油圧モータを駆動させて動力を出力するようにしてもよい。
また、前記風力エネルギー回収装置は、前記操縦ユニットよりも上方の前記主索及び前記操縦索を把持可能かつ引き込み可能に構成されたカイト回収手段を有していてもよいし、前記カイトの一部を把持した状態で上方に持ち上げ可能に構成されたカイト浮上補助手段を有していてもよい。
また、前記カイト、前記主索、前記操縦索、前記操縦ユニット及び前記パワーレバーにより構成される複数のカイトユニットを有し、該カイトユニットはそれぞれ前記動力出力手段に接続されていてもよい。
また、本発明によれば、上述した前記風力エネルギー回収装置を備え、前記動力出力手段に接続された発電機を有する、ことを特徴とする風力発電装置が提供される。該風力発電装置は、前記発電機に接続された蓄電池を有していてもよい。
上述した本発明に係る風力エネルギー回収装置及び風力発電装置によれば、カイトを積極的に左右に往復運動させることにより、パワーレバーを左右に往復回動させることができ、かかる往復回動を回転運動に変換することにより、風力から動力を抽出することができる。したがって、カイトの牽引力から連続的に回転力を抽出することができ、カイトの牽引力を効率的に回転力に変換することができる。
また、布製の翼型カイトは、翼面積の拡大に伴う構造強度上の制約がほとんどなく、大型化のコストも安く抑えることができる。そして、カイト翼面積を大型化することにより、より大きな牽引力を得ることができ、それに比例して発電機の駆動力も大きくなり、発電コストを大幅に低減することができる。また、一般に、風速は地上高度に比例して速くなることから、カイトの主索を延長してカイトの浮揚高度を高くすることにより、大きな風力エネルギーを容易に回収することができる。
さらに、プロペラ式風力発電装置では、プロペラの風切り音等による騒音や低周波振動が問題となっているが、一般に、カイトからの騒音は、プロペラの風切り音と比較すれば格段に小さく、近隣住民や周辺環境に与える影響を低減することができる。
以下、本発明に係る風力エネルギー回収装置及び風力発電装置の実施形態について、図1〜図15を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る風力エネルギー回収装置を示す概略構成図であり、(a)は風上方向を背にした正面図、(b)は側面図、を示している。なお、図1(b)では、説明の便宜上、操縦索及び操縦ユニットの図を省略してある。
本発明の第一実施形態に係る風力エネルギー回収装置1は、風力を受けて上空に浮揚するカイト2と、カイト2を牽引する主索3と、カイト2の運動を制御する操縦索4と、操縦索4の張力を制御する操縦ユニット5と、操縦ユニット5に接続され往復回動可能なパワーレバー6と、パワーレバー6に連結され往復回動を回転運動に変換して出力する動力出力手段7と、を有し、操縦ユニット5により操縦索4の張力を制御することによりカイト2の運動を制御し、カイト2を略円弧状の軌跡を描くように左右に往復動させることにより、パワーレバー6を駆動させて動力を出力するようにしたものである。
本実施形態に係る風力エネルギー回収装置1は、風力によりカイト2に生ずる揚力と抗力との合成力によって主索3の牽引力が形成されるところ、天空方向(上方)に作用する主索3の牽引力を連続的に利用するために、図1(a)に示すように、カイト2の運動特性を活かし、上空のカイト2を左右に大きく振ることにより、主索3の牽引力の方向を大きく変化させ、扇形状の軌跡を描き往復回動するパワーレバー6で牽引力を受け、動力に変換して出力することに特徴がある。また、動力出力手段7に発電機を接続することにより、容易に風力発電装置を構成することができる。
ここで、図2は、カイトを示す斜視図である。カイト2は、図2に示したように、例えば、左右対称の翼型形状を有し、化学繊維等の丈夫な布で製作する。カイト2には、例えば、マリンスポーツであるカイトサーフィン等で使われている翼型布製のカイトを利用することができる。かかるカイト2は、エアチューブにより構成される前縁部21と、前縁部21に略直角に配置されるエアチューブにより構成される縦骨22と、前縁部21及び縦骨22に展張されたシート23と、により構成される。前縁部21及び縦骨22はカイト2の骨格を形成し、シート23は風を受ける受圧面を形成する。かかる構成により、軽量かつ耐久性の高い柔軟構造のカイト2を作製することができる。なお、カイト2の前縁部21には、湾曲した形状を維持するための形状維持索24が接続されていてもよい。
また、カイト2には、主索3及び操縦索4が接続されている。主索3は、例えば、一端が形状維持索24の左右両端部にそれぞれ接続され、他端が操縦ユニット5に接続される。なお、図1では、説明の便宜上、主索3を一本の線で概念的に図示している。操縦索4は、例えば、一端が、カイト2の後端部に接続された固定端41と、カイト2の左右両側部に配置された滑車25を介して主索3に接続された可動端42と、を有し、他端が操縦ユニット5に接続される。また、操縦索4は、カイト2の左側に接続された左側操縦索4Lと、カイト2の右側に接続された右側操縦索4Rと、を有する。
かかる構成により、カイト2は、形状維持索24、主索3及び操縦索4の張力によって気流内で適正な翼型形状を維持することができる。また、操縦索4(左側操縦索4L及び右側操縦索4R)を繰り出し又は引き込むことにより、操縦索4の張力を任意に調整することができ、カイト2の形状を変化させることによって風の受け方を変更することができ、カイト2を左右上下に移動させることができる。なお、主索3及び操縦索4は、鋼製ワイヤーやナイロン製線材等により構成され、カイト2の面積に応じて発生する牽引力に耐え得る充分な強度を持たせるようにする。
例えば、片方の操縦索4を引くことによりカイト2の風を受ける迎角に左右で違いが生じ、操縦索4の引かれた方向にカイト2が大きく移動する。操縦索4を引き込む長さと速度の違いによりカイト2の動く速さと方向に違いが生じ、風速に応じた最大限のカイト牽引力が得られるように操縦ユニット5で自動操縦する。また、例えば、両方の操縦索4を同時に引き込むことによりカイト2の迎角を大きくすることができ、両方の操縦索4を同時に繰り出すことによりカイト2の迎角を小さくすることができる。そこで、風速に応じて、風を受ける迎角を調整し、最大限のカイト牽引力が得られるように、操縦ユニット5で自動操縦する。
ここで、図3は、操縦ユニットを示す概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、を示している。操縦ユニット5は、図3に示したように、両端に操縦索4(左側操縦索4L及び右側操縦索4R)が接続された略半円形状の操縦板51と、操縦板51を回動させる回動モータ52と、操縦板51及び回動モータ52を支持する昇降台53と、昇降台53を昇降させる昇降モータ54と、これらを収容するケーシング55と、を有する。ケーシング55の頂部には、主索3が接続される結合金具56が配置されている。
操縦板51は、昇降台53に回動可能に接続されており、回動モータ52とウォーム歯車機構を介して接続されている。したがって、回動モータ52を駆動させることにより、操縦板51を振り子状に左右に移動させることができ、片側の操縦索4(例えば、左側操縦索4L)を引き込み、片側の操縦索4(例えば、右側操縦索4R)を繰り出すことができる。また、昇降台53は、昇降モータ54とボールねじ機構を介して接続されており、昇降モータ54を駆動させることにより、ケーシング55の内側で昇降台53をスライド移動させることができる。したがって、操縦索4(左側操縦索4L及び右側操縦索4R)を同時に引き込んだり繰り出したりすることができ、カイト2全体の迎角を調整することができる。
すなわち、操縦索4は、カイト2の左側に接続された左側操縦索4Lと、カイト2の右側に接続された右側操縦索4Rと、を有し、操縦ユニット5は、左側操縦索4L及び右側操縦索4Rを交互に引き込み又は繰り出しを行うことによりカイト2の左右の移動方向を制御し、左側操縦索4L及び右側操縦索4Rを同時に引き込み又は繰り出しを行うことによりカイト2全体の迎角を調整して上下の移動方向を制御するように構成されている。
例えば、カイト2が中央に位置する状態、すなわち、左側操縦索4L及び右側操縦索4Rがニュートラルにある状態から、カイト2を右旋回させる場合には、右側操縦索4Rを引き込んだ状態を一定時間保持し、パワーレバー6が右端に移動する前に右側操縦索4Rをニュートラルの状態に戻す。そして、パワーレバー6が右端に到達したとき又は到達する直前に左側操縦索4Lを瞬間的に引き込んでカイト2を方向転換させ、ニュートラルの状態に戻す。カイト2は風を受けて自然に中央の位置へと移動する。
次に、カイト2を左旋回させる場合には、左側操縦索4Lを引き込んだ状態を一定時間保持し、パワーレバー6が左端に移動する前に左側操縦索4Lをニュートラルの状態に戻す。そして、パワーレバー6が左端に到達したとき又は到達する直前に右側操縦索4Rを瞬間的に引き込んでカイト2を方向転換させ、ニュートラルの状態に戻す。カイト2は風を受けて自然に中央の位置へと移動する。
上述した右旋回及び左旋回の操作を繰り返すことにより、カイト2は左右に往復運動することになる。上述した操縦索4(左側操縦索4L及び右側操縦索4R)の操作は、設置環境に応じたシミュレーションによりプログラミングに従って自動操縦するようにしてもよいし、風速を計測してフィードバック制御により操縦するようにしてもよい。
なお、操縦板51及び昇降台53の駆動機構は、図示したものに限定されず、例えば、歯車機構を使用しない電動アクチュエータにより操縦板51又は昇降台53を操作するようにしてもよいし、左右独立して引き込み又は繰り出し可能なアクチュエータに接続して個別に操縦及び迎角調整の操作をするようにしてもよい。
また、操縦ユニット5は、連結ロッド57を介してパワーレバー6に接続されている。連結ロッド57は、操縦ユニット5の下端から中心線延長上に配置されており、例えば、ユニバーサルジョイント58を介してパワーレバー6に接続される。ユニバーサルジョイント58は、各ジョイント部で180°の自由度を確保し、カイト2の運動時に支障のないように作用するように構成されるとともに、摩耗損傷の少ない材質により構成される。なお、連結ロッド57は、主索3や操縦索4と同じ素材により構成するようにしてもよく、この場合にはユニバーサルジョイント58を省略するようにしてもよい。
また、カイト2の操縦に際しては、パワーレバー6の位置とカイト2の位置を正確に把握する必要がある。そこで、主索3上に配置された発信器59sと、パワーレバー6に配置された受信器59rと、を備えたカイト位置計測手段59を設置し、発信器59sからの信号を受信器59rにより受信してカイト2の相対的な位置を計測し、この計測結果を操縦ユニット5に送信することによって操縦索4を制御するようにしてもよい。例えば、発信器59sは操縦ユニット5のケーシング55の背面に配置され、受信器59rはパワーレバー6の先端部に配置される。なお、図示しないが、操縦ユニット5には操縦板51及び昇降台53の駆動を制御する制御基盤が配置されている。
ここで、図4は、動力出力手段を示す概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、を示している。動力出力手段7は、例えば、パワーレバー6を回動可能に支持するハウジング71と、パワーレバー6に接続された扇形歯車72と、扇形歯車72に連結された歯車列により構成される動力変換手段73と、動力変換手段73に接続された発電機74と、を有する。このように、動力出力手段7が発電機74を有する場合、風力エネルギー回収装置1は、いわゆる風力発電装置として機能する。
ハウジング71は、パワーレバー6及び動力出力手段7を支持する部材であり、ハウジング71は、床面に配置される架台8上に一端側が回動可能に接続されるとともに、他端側がアクチュエータ81により上下移動可能に支持されている。したがって、ハウジング71は、傾斜角度を変更できるように構成されており、例えば、主索3の延伸方向とパワーレバー6の回動面の方向とが一致するように傾斜角度が調整される。
扇形歯車72は、回動中心をパワーレバー6の回動中心と一致するように固着され、その中心線はパワーレバー6の軸線と一致するように配置されている。扇形歯車72は、円弧状の外周面に歯が切られており、図4(a)に示した破線と実線との間で往復運動する歯車を構成している。なお、パワーレバー6の回動角度は、扇形歯車72がハウジング71内で可動できる範囲、例えば、90°〜100°程度の範囲内に設定される。
ここで、図5は、動力変換手段を示す歯車機構の概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は第一歯車の左回転時における側面図、(c)は図5(b)におけるC−C断面のクラッチ機構図、(d)は第一歯車の右回転時における側面図、(e)は図5(d)におけるE−E断面のクラッチ機構図、を示している。動力出力手段7は、例えば、パワーレバー6により回転される第一歯車731と、第一歯車731に噛合された第二歯車732及び第三歯車733と、第二歯車732及び第三歯車733に連結された出力軸736と、を有し、第二歯車732及び第三歯車733はクラッチ機構737を内蔵し、第二歯車732は第一歯車731の正転時に回転可能かつ逆転時にスリップ可能に構成され、第三歯車733は第一歯車731の逆転時に回転可能かつ正転時にスリップ可能に構成された動力変換手段73を有している。かかるクラッチ機構737は、いわゆるワンウェイクラッチであるが、クラッチ機構737は、歯車の回転を一方向に制限可能な構成であれば、これに限定されるものではない。
第一歯車731は、扇形歯車72と噛み合う第一小歯車731sと、第一小歯車731sと一体に構成され同一方向に回転する第一大歯車731bと、を有する。また、第二歯車732は、第一大歯車731bと噛み合う第二小歯車732sと、第二小歯車732sとクラッチ機構737を介して連結された第二大歯車732bと、を有する。また、第三歯車733は、第一大歯車731bと噛み合う第三小歯車733sと、第三小歯車733sとクラッチ機構737を介して連結された第三大歯車733bと、を有する。
いま、図5(b)に示したように、第一歯車731が一定の方向に回転(例えば、左回転)しているものとする。このとき、第一大歯車731bと噛み合う第二小歯車732s及び第三小歯車733sは、第一歯車731と反対方向に回転(右回転)することとなる。そして、図5(c)に示したように、第三歯車733のクラッチ機構737は、スリップするように構成されていることから、第三大歯車733bには力を伝達しない。一方、第二歯車732のクラッチ機構737は、ロックするように構成されていることから、第二大歯車732bは第二小歯車732sと同一方向に回転(右回転)する。さらに、第二大歯車732bは、第四歯車734と噛み合っており、第四歯車734は第五歯車735と噛み合うように構成されている。したがって、第二歯車732の回転に伴って、第四歯車734は反対方向に回転(左回転)し、第五歯車735は同一方向に回転(右回転)し、出力軸736を右回りに回転させることとなる。このとき、第三大歯車733bは、第五歯車735と噛み合っているが、クラッチ機構737はスリップする状態になっていることから、第三歯車733が出力軸736の回転を阻害することがない。
次に、図5(d)に示したように、第一歯車731が反対の方向に回転(例えば、右回転)しているものとする。このとき、第一大歯車731bと噛み合う第二小歯車732s及び第三小歯車733sは、第一歯車731と反対方向に回転(左回転)することとなる。そして、図5(e)に示したように、第三歯車733のクラッチ機構737は、ロックするように構成されていることから、第三大歯車733bは第三小歯車733sと同一方向に回転(左回転)する。さらに、第三大歯車733bは、第五歯車735と噛み合うように構成されており、第三歯車733の回転に伴って、第五歯車735は反対方向に回転(右回転)し、出力軸736を右回りに回転させることとなる。一方、第二歯車732のクラッチ機構737は、スリップするように構成されていることから、第二大歯車732bには力を伝達しない。このとき、第五歯車735は、第四歯車734を介して第二大歯車732bと連結されているが、クラッチ機構737はスリップする状態になっていることから、第二歯車732が出力軸736の回転を阻害することがない。
上述した歯車列を有する動力変換手段73によれば、扇形歯車72がパワーレバー6と連動して往復運動した場合であっても、出力軸736を常に一定の方向に回転させることができ、往復回動運動から連続した一方向の回転運動を抽出することができる。また、複数の歯車を介することによって、回転数を増幅することができ、発電機74の発電に適した回転数を容易に得ることができる。
ところで、パワーレバー6の回動方向反転直前時には、回動速度が低下し反転時は一時的に停止することから、出力軸736から出力される回転運動は脈動したものとなる。ただし、クラッチ機構により空転する歯車及び発電機74の回転子の慣性力が作用することから、出力軸736の回転速度は滑らかに変化することになる。また、図4(b)に示したように、発電機74に電気的に接続された蓄電池75を架台8に配置しておくことにより、一時的に電気を貯蔵して安定した電力供給を行うようにすることもできる。
ここで、図6は、架台8を示す概略構成図である。架台8は、床面に対して回転可能となるように中心軸82が設定され、床面に敷設されたレール83上を回転できるように構成されている。具体的には、架台8は、底面部に配置されレール83上を転動可能な車輪84と、車輪84を駆動させる回転モータ85と、を有している。また、図4(b)に示したように、架台8上には、パワーレバー6及び動力出力手段7が配置されており、動力出力手段7(ハウジング71)はアクチュエータ81により傾斜角度が調整できるように構成されている。なお、図6において、動力出力手段7及びアクチュエータ81の図を省略してある。
また、架台8の周辺には、図4(b)に示したように、風向・風速計9が配置されており、風向及び風速を定期的に観測している。計測された風向や風速は、一定時間(例えば、10〜15分ごと)の平均値に換算され、かかる風向及び風速の平均値に基づいて、架台8を回転させたり、動力出力手段7(ハウジング71)を傾斜させたりすることにより、カイト2を風に対して正対させたり、パワーレバー6と主索3との水平角度を略一致させたりすることができる。すなわち、本実施形態に係る風力エネルギー回収装置1は、パワーレバー6及び動力出力手段7を支持する架台8を有し、架台8は風向に応じて回転可能に配置され、パワーレバー6は往復回動可能かつ風速に応じて傾斜角度変更可能に架台8に支持されている。なお、上述した風向及び風速の平均値の算出時間は、上述した時間に限定されるものではなく、設置環境等により適宜設定することができる。
次に、上述した風力エネルギー回収装置1の作用について説明する。ここで、図7は、カイトの運動状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)はカイトに生じる力の配置図、を示している。また、図8は、カイトの牽引力とパワーレバーの位置関係を示す図であり、(a)は右旋回時における正面図、(b)は側面図、(c)は左旋回時における正面図、(d)はパワーレバーの回転モーメントと発電機の回転速度との関係を示す図、である。
図7(a)〜(c)に示したように、カイト2は、操縦索4の操縦により、主索3の下端部を中心とする風下側の仮想球面V上を移動することとなる。図7(d)に示したように、上空に浮揚するカイト2は迎角θを有し、カイト2及び索体(主索3及び操縦索4)には、カイト自重Gk、索体自重Gr、揚力L、抗力D、合成力R及び牽引力Fの力が作用している。いま、カイト2が、仮想球面V上の上方の位置P1から位置P2、位置P3と順に下方に向って下降する場合を想定する。このとき、カイト2が位置P1から位置P2、位置P3と移動するにつれて、迎角θが大きくなり、牽引力Fも増大する。したがって、カイト2が下方に下降した場合の牽引力Fをパワーレバー6に効率よく伝達するために、アクチュエータ81を作動させてパワーレバー6の往復回動面を風下方向に、例えば、鉛直線からの角度φが45°〜60°の範囲内となるように傾斜させる。この傾斜角度の最適値は、風速により変化するものであり、風向・風速計9の計測結果に基づいて適宜設定される。
図8(a)及び(b)に示したように、パワーレバー6の右旋回時には、パワーレバー6が左端に倒れた状態から右端に移動するまでの間に、パワーレバー6に作用する回転モーメントを生じさせる主索3の牽引力Fの回転方向成分Fmは、Fm1→Fm2→Fm3→Fm4→Fm5のように大きさ及び方向が変化する。そして、右端に移動したパワーレバー6は、図8(c)に示したように、右端に倒れた状態から左端に移動するまでの間(左旋回する間)に、パワーレバー6に作用する牽引力Fの回転方向成分Fmは、Fm6→Fm7→Fm8→Fm9→Fm10のように大きさ及び方向が変化する。すなわち、パワーレバー6が左右に倒れた状態(Fm1,Fm6が作用している状態)から垂直に立ち上がる状態(Fm3,Fm8が作用している状態)に至る間に最も大きな回転モーメントが作用し、その後、回転モーメントは徐々に減少し、折り返す瞬間にゼロとなる。
したがって、回転モーメントの大きさは、図8(d)に示したような波形を描くこととなる。ここで、図8(d)に示したグラフは、横軸が時間を示し、実線が回転モーメントを示し、破線が発電機74の回転速度を示している。時間t1〜t10は、それぞれ牽引力Fの回転方向成分Fm1〜Fm10に対応している。また、上述したように、発電機74は、動力変換手段73により一方向に回転され、その慣性力等により回転速度は回転モーメントよりも滑らかな波形を描くこととなる。
続いて、本発明の第二実施形態に係る風力エネルギー回収装置について、図9及び図10を参照しつつ説明する。ここで、図9は、本発明の第二実施形態に係る風力エネルギー回収装置を示す図であり、(a)は動力出力手段の正面図、(b)は動力出力手段の側面図、(c)は油圧ポンプのピストン詳細図、を示している。また、図10は、第二実施形態におけるカイトの牽引力とパワーレバーの位置関係を示す図であり、(a)は右旋回時における軸方向成分の変化、(b)は左旋回時における軸方向成分の変化、(c)は右旋回時における回転方向成分の変化、(d)は左旋回時における回転方向成分の変化、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図9及び図10に示した第二実施形態は、パワーレバー6を伸縮可能に構成し、カイト2による主索3の牽引力Fをさらに回収して、エネルギー回収率を向上させたものである。具体的には、パワーレバー6は、内蔵された油圧ポンプ61と、油圧ポンプ61に接続された油圧モータ62と、油圧ポンプ61のピストン61pを内方に付勢する弾性体63と、を有し、油圧ポンプ61のピストン61pの先端に主索3が接続されており、カイト2の牽引力Fの軸方向成分Fsと弾性体63の付勢力とのバランスによってピストン61pを移動させることにより、油圧モータ62を駆動させて動力を出力するようにしたものである。
図9(a)に示したように、パワーレバー6に作用する主索3の牽引力Fは、パワーレバー6に回転モーメントを与える回転方向成分Fmと、パワーレバー6の軸線上に作用する軸方向成分Fsと、にベクトル分解することができる。回転方向成分Fmは、上述した第一実施形態に係る風力エネルギー回収装置1によりエネルギー回収することができる。第二実施形態に係る風力エネルギー回収装置1では、上述した油圧ポンプ61等を利用して、さらに軸方向成分Fsによってもエネルギー回収しようとするものである。
例えば、図9(a)及び(b)に示したように、パワーレバー6に内蔵されたピストン61pの先端は、パワーレバー6の先端から突出するように構成されており、ピストン61pの先端に主索3が接続されている。したがって、主索3がカイト2により引っ張られると、ピストン61pは、弾性体63の付勢力に打ち勝って弾性体63を圧縮させながら、パワーレバー6の軸方向に引き上げられる。このとき、ピストン61pは、油圧ポンプ61内で油圧を発生させ、油圧モータ62を回転させる。油圧モータ62は、例えば、増幅器を介して第二発電機64に接続されており、油圧モータ62の回転により第二発電機64を駆動させて発電することができる。
ピストン61pは、例えば、図9(c)に示したように、油圧ポンプ61内で摺動するヘッド部に逆止弁61vが配置されており、ピストン61pがパワーレバー6の軸方向上方に移動する際には逆止弁61vが閉鎖されて昇圧可能となり、ピストン61pがパワーレバー6の軸方向下方に移動する際には逆止弁61vが開放されて無負荷となるように構成される。なお、油圧ポンプ61は、パワーレバー6を外筒としてもよいし、パワーレバー6の内部に作動油を封入する筒部材を配置するようにしてもよい。
図10(a)及び(b)に示したように、パワーレバー6の右旋回時及び左旋回時において、牽引力Fの軸方向成分Fsは、パワーレバー6が折り返し点に向かうにつれて増大するが、パワーレバー6が折り返し点に到達してカイト2が方向転換を終了した時点では略ゼロの大きさとなる。したがって、ピストン61pは、パワーレバー6の折り返し点において、弾性体63(例えば、コイルスプリング)の復元力により軸方向下方に押し戻されることとなる。すなわち、ピストン61pは、パワーレバー6の往復回動ごとに伸縮を繰り返すこととなる。なお、図10(c)及び(d)に示したように、パワーレバー6の右旋回時及び左旋回時において、牽引力Fの回転方向成分Fmは、パワーレバー6が折り返し点に向かう中間点で増大し、折り返し点に到達した時点では略ゼロの大きさとなる。
かかる構成により、パワーレバー6の右旋回運動又は左旋回運動ごとに油圧ポンプ61で油圧を発生させ、第二発電機64で発電することができる。したがって、本実施形態では、牽引力Fの回転方向成分Fmによる発電(エネルギー回収)に加え、牽引力Fの軸方向成分Fsによっても発電(エネルギー回収)することができ、風力エネルギーの回収効率を向上させることができる。なお、第二発電機64による発電も脈動するものとなることから、第一実施形態と同様に、蓄電池75に貯蔵するようにしてもよい。
次に、上述した本発明の第一実施形態に係る風力発電装置の信号及び電力系統について、図11を参照しつつ説明する。ここで、図11は、本発明の第一実施形態に係る風力発電装置の信号及び電力系統を示す全体構成図である。
図示した風力発電装置は、発電機74及び第二発電機64を備えた風力エネルギー回収装置1である。図11では、説明の便宜上、操縦ユニット5、パワーレバー6、動力出力手段7(ハウジング71)、架台8、発電機74、第二発電機64の構成要素ごとに分離した状態を図示している。図示したように、風力エネルギー回収装置1は、制御部10を有し、制御部10から各構成要素に制御信号を送信している。かかる制御部10は、例えば、架台8に搭載されていてもよいし、風力エネルギー回収装置1から離隔した場所に配置されて有線又は無線で接続されていてもよい。
そして、カイト2の位置信号s2は、カイト位置計測手段59により計測され制御部10に送信される。また、パワーレバー6の位置信号s6は、ロータリエンコーダ等の位相計測手段(図示せず)により計測され制御部10に送信される。また、風向・風速計9により計測された風向信号s91及び風速信号s92は制御部10に送信される。
制御部10は、送信された信号s2,s6,s91,s92に基づいて、予め設定されたプログラムにより又は過去のデータを学習可能なプログラムにより、制御対象の各機器に対して制御信号を発信する。例えば、制御部10は、操縦ユニット5に搭載された回動モータ52及び昇降モータ54に制御信号s52,s54を発信する。また、制御部10は、動力出力手段7(ハウジング71)の傾斜角度を調整するアクチュエータ81に制御信号s81を発信するとともに、架台8の向きを調整する回転モータ85に制御信号s85を発信する。
また、発電機74及び第二発電機64により発電された電力は蓄電池75に貯蔵される。蓄電池75に貯蔵された電力は、大部分が所望の施設等に外部供給されるとともに、一部は上述した制御機器(回動モータ52、昇降モータ54、アクチュエータ81、回転モータ85)等の駆動電力として利用される。
次に、カイト回収手段について、図12及び図13を参照しつつ説明する。ここで、図12は、カイト回収手段を示す図であり、(a)は回収開始時の状態、(b)は回収完了時の状態、を示している。また、図13は、図12に示したカイト回収手段のヘッド部を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、を示している。なお、風力エネルギー回収装置1は、上述した第一実施形態と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
図12に示したように、風力エネルギー回収装置1は、操縦ユニット5よりも上方の主索3及び操縦索4を把持可能かつ引き込み可能に構成されたカイト回収手段11を有していてもよい。カイト回収手段11は、例えば、自走式アーム車111により構成され、自走式アーム車111は、昇降可能なアーム112と、主索3及び操縦索4を把持可能なヘッド部113と、を有する。
図12(a)に示したように、カイト2の回収開始時には、自走式アーム車111を所定の位置に移動させた後、自走式アーム車111をアンカー114に固定し、アーム112を上昇させる。このとき、操縦索4を操作してカイト2の迎角を小さくし、揚力を小さくしておくことにより、カイト2の回収時における抵抗力を低減することができる。そして、ヘッド部113で主索3及び操縦索4を把持した後、これらの索体を摩擦力等により下方に引き込み、架台8に配置されたバケット115等の容器に回収した索体を収容する。そして、カイト2を地上に降ろしても大丈夫な程度まで索体(主索3及び操縦索4)を回収した後、アーム112を折り畳んで下降させ、カイト2を回収する。なお、カイト回収手段11は、図示した構成に限定されるものではなく、自走式アーム車111は一般的に入手可能な高所作業車であってもよいし、手動で移動可能なアーム車であってもよい。
ヘッド部113は、図13(a)及び(b)に示したように、例えば、ヘッド部113の筐体に回転可能に支持された二本の下部ローラ131と、ヘッド部113の筐体に回動可能に配置された一本の上部ローラ132と、を有している。下部ローラ131及び上部ローラ132のローラ表面は、ゴム等の軟らかい材質で摩擦抵抗の大きなものを使用することが好ましい。また、一方の下部ローラ131は、駆動モータ133に接続されて回転駆動可能に構成されており、他方の下部ローラ131は、ベルト・プーリ等の動力伝達機構134により追従して回転駆動可能に構成されている。
上部ローラ132は、ヘッド部113の筐体に回動可能に支持された回動アーム136に回転可能に配置されており、回動アーム136は、ヘッド部113に内蔵されたアクチュエータ135により回動される。したがって、アクチュエータ135を作動させることによって、上部ローラ132を下部ローラ131に対して接近又は離隔することができる。上部ローラ132は、下部ローラ131に圧接することにより摩擦抵抗で回転される。ヘッド部113が索体(主索3及び操縦索4)を把持する際には、上部ローラ132は下部ローラ131から離隔した位置に回動し、上部ローラ132と下部ローラ131との間に主索3を挟み込むことができる隙間が形成される。そして、上部ローラ132と下部ローラ131との間に索体が挿入された後、上部ローラ132を回動させて下部ローラ131に接近させ、圧接する。
また、ヘッド部113は、索体の横方向の移動を規制する固定ガイドロール137及び可動ガイドロール138を有している。固定ガイドロール137は、下部ローラ131から上部ローラ132に渡る長さを有し、これらの間に挟み込まれた索体(主索3及び操縦索4)が側面から抜けないように規制する。可動ガイドロール138は、電動モータ等より傾倒可能に構成されており、索体を挟み込むときには寝た状態になっており、索体を挟み込んだ後に起立して、固定ガイドロール137と同様に、挟み込まれた索体が側面から抜けないように規制する。
続いて、カイト浮上補助手段について、図14及び図15を参照しつつ説明する。ここで、図14は、カイト浮上補助手段を示す図である。また、図15は、図14に示したカイト浮上補助手段のヘッド部を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図、を示している。なお、風力エネルギー回収装置1は、上述した第一実施形態と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
図14に示したように、風力エネルギー回収装置1は、カイト2の一部を把持した状態で上方に持ち上げ可能に構成されたカイト浮上補助手段12を有していてもよい。カイト浮上補助手段12は、カイト回収手段11と類似する構成を有し、例えば、自走式アーム車121により構成され、自走式アーム車121は、昇降可能なアーム122と、カイト2を係止可能なヘッド部123と、を有する。
ヘッド部123は、図15に示したように、例えば、図13(c)に示したヘッド部113の外周部にカイト係止部124を配置したものである。カイト係止部124は、カイト2の前縁部21に配置された環状部21aに係止可能なフック部124fと、係止したカイト2の前縁部21を保持するガイド部材124gと、を有する。フック部124fは、電動モータ等により回動可能に構成されており、環状部21aに係止又は離脱可能に構成されている。ガイド部材124gは、空気を封入した状態の前縁部21を挿入可能な凹部を有している。なお、図15において、カイト2の一部(前縁部21)のみを図示し、他の部分の図を省略している。
カイト2をカイト浮上補助手段12に把持させるには、まず、アーム122を地上付近に下ろした状態で、ヘッド部123のガイド部材124gにカイト2の前縁部21を環状部21aが内側となるように宛がい、フック部124fを回動させて環状部21aにフック部124fを係止させる。このとき、フック部124fを引き込み可能に構成して、前縁部21をガイド部材124gに押し付けるようにしてもよい。この状態で、自走式アーム車121を所定の位置に移動させ、カイト2が風を孕んで揚力を発生するまでアーム122を上昇させる。カイト2が浮上可能なことを確認した後、フック部124fを環状部21aから離脱させて、カイト2の係止状態を解除する。
上述したように、カイト回収手段11のヘッド部113にカイト係止部124を配置することにより、カイト回収手段11とカイト浮上補助手段12とを兼用することができる。また、カイト浮上補助手段12のヘッド部123からカイト回収手段11のヘッド部113を除外して、専用のカイト浮上補助手段12としてもよいことは勿論である。
既存のプロペラ翼を用いた水平軸型風力発電装置や垂直翼を利用した垂直軸型風力発電装置は、いずれも大型化に伴って高層のタワーや支柱の建設が必要となり、基部の土木工事を含めた建設コスト、組立てコストが多大となる。また、プロペラブレードやタワー等は長尺の部品となり設置場所への運搬についても多大なコストを要する。
一方、上述した本発明は、大型化しても、カイト2は構造強度的制約が少なく、容易に安価で大型のものが製作可能であるとともに、折り畳み可能なため運搬に要するコストも低減することができる。また、発電装置本体(パワーレバー6、動力出力手段7等)も高層にはならず、建設コストや組立てコストも安価に抑えることができる。さらに、カイト2の主索3及び操縦索4を長くすることで高空の強い風力エネルギーを容易に回収することができ、高いコストパーフォマンスを期待することができる。
また、プロペラ式風力発電装置と異なり、カイト2からは騒音や低周波振動はほとんど生じず、周辺地域への騒音等の問題が発生し難く、野鳥の衝突等の発生も起こり難くいことから、環境アセスメント面での課題も少ない。また、カイト2が地上に落下したとしても自重は軽く地上物への被害も軽微である。さらに、カイト2の索体のいずれかが破断した場合、カイト2は翼形状を保つことができずに浮遊しながら落下することになるが、少なくとも一本の索体が繋がれている限り、遠方に飛び去ってしまうという事態は生じない。したがって、設置場所の制約が相対的に低く、その地理的利用範囲を拡大することができる。
また、本発明に係る風力エネルギー回収装置及び風力発電装置は、カイト2が移動し得る仮想球面上の範囲内に障害物が存在しない環境であれば、海岸、高原、山地等の地上への設置に限定されるものではなく、大洋航海中の船舶、海洋上の浮体構造物、ビル等の建造物の屋上にも設置することができる。例えば、船尾上甲板上に発電装置本体(パワーレバー6、動力出力手段7等)を据え付け、正面又は斜め正面の向かい風を航行中の船舶において利用すれば、本発電装置の特性からカイト2の主索3の牽引力が船尾方向に働く力は弱く、船舶の推進に与えるマイナス影響を大きく補う発電量を確保することができる。
最後に、本発明の第三実施形態に係る風力エネルギー回収装置について、図16を参照しつつ説明する。ここで、図16は、本発明の第三実施形態に係るエネルギー回収装置を示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はカイトの操作方法を示す概念図、(c)はカイトの操作方法の変形例を示す概念図、である。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
本発明の第三実施形態に係る風力エネルギー回収装置1は、図16(a)に示したように、カイト2a,2b、主索3a,3b、操縦索4a,4b、操縦ユニット5a,5b及びパワーレバー6a,6bにより構成される二つのカイトユニット20a,20bを有し、カイトユニット20a,20bをそれぞれ動力出力手段7に接続したものである。かかる構成によれば、複数のカイト2を一つの風力エネルギー回収装置1に配置することができ、エネルギーの回収効率を向上させることができる。
図示した実施形態では、一つの動力出力手段7から動力伝達機構(歯車機構)を介して動力を分配し、二つのパワーレバー6a,6bを回動させるようにしているが、カイトユニット20a,20bのそれぞれに動力出力手段7を配置するようにしてもよい。なお、カイトユニット20a,20bは二つに限定されるものではなく、カイト2a,2bの衝突や主索3a,3bの絡まりを生じない限りにおいて三つ以上であってもよい。
カイト2a,2bは、図16(a)に示したように、空中浮揚時の高さが異なるとともに、主索3a,3bの対地角度が異なっている場合には、パワーレバー6a,6bをそれぞれ任意の位相で回動させてカイト2a,2bを旋回させた場合であっても、カイト2a,2bの衝突や主索3a,3bの絡まりが生じる可能性は十分に低い。また、カイト2a,2bの高さは、カイト2bの主索3bの長さを短くする(又はカイト2aの主索3aの長さを長くする)ことにより調節することができることから、設置環境に応じて主索3a,3bの長さを調節するようにしてもよい。カイト2a,2bに高低差を付与することによって、カイト2a,2bをさらに効果的に離隔することができる。
ここで、カイト2a,2bが右旋回及び左旋回を一回ずつ行う軌道(八の字を描く軌道)を一周期とした場合、カイト2a,2bは、例えば、図16(b)に示したように、1/4周期だけずらして旋回される。このように周期をずらすことによって、カイト2a,2bは、天頂と右端又は左端との間の軌道で、図16(a)に示した位置関係となり、互いに距離を保ってすれ違うことができ、カイト2a,2bの衝突や主索3a,3bの絡まりを効果的に抑制することができる。
カイト2a,2bの周期のずれは、1/4周期に限定されるものではなく、例えば、主索3a,3bの長さ調整により、上側のカイト2aの高さを下側のカイト2bの高さよりも高く調整するとともに、操縦索4a,4bによる操縦により、上側の主索3aの対地角度を下側の主索3bの対地角度よりも大きくなるように調整しておけば、図16(c)に示したように、1/2周期であってもよい。なお、図16(b)及び(c)では、説明の便宜上、カイト2a,2bの位置を同一軌道上で表現している。
本発明は上述した実施例及び実施形態に限定されず、例えば、動力出力手段7の出力軸736は必ずしも連続して一方向に回転させなくてもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
Claims (11)
- 風力を受けて上空に浮揚するカイトと、該カイトを牽引する主索と、前記カイトの運動を制御する操縦索と、該操縦索の張力を制御する操縦ユニットと、該操縦ユニットに接続され往復回動可能なパワーレバーと、該パワーレバーに連結され往復回動を回転運動に変換して出力する動力出力手段と、を有し、
前記操縦ユニットにより前記操縦索の張力を制御することによって前記カイトの運動を制御し、前記カイトを略円弧状の軌跡を描くように左右に往復動させることにより、前記パワーレバーを駆動させて動力を出力する、ことを特徴とする風力エネルギー回収装置。 - 前記操縦索は、前記カイトの左側に接続された左側操縦索と、前記カイトの右側に接続された右側操縦索と、を有し、前記操縦ユニットは、前記左側操縦索及び前記右側操縦索を交互に引き込み又は繰り出しを行うことにより前記カイトの左右の移動方向を制御し、前記左側操縦索及び前記右側操縦索を同時に引き込み又は繰り出しを行うことにより前記カイト全体の迎角を調整して上下の移動方向を制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記主索上に配置された発信器と、前記パワーレバーに配置された受信器と、を備えたカイト位置計測手段を有し、前記発信器からの信号を前記受信器により受信して前記カイトの位置を計測し、この計測結果を前記操縦ユニットに送信することによって前記操縦索を制御する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記パワーレバー及び前記動力出力手段を支持する架台を有し、該架台は風向に応じて回転可能に配置され、前記パワーレバー及び前記動力出力手段を風速に応じて傾斜角度変更可能に支持する、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記動力出力手段は、前記パワーレバーにより回転される第一歯車と、該第一歯車に噛合された第二歯車及び第三歯車と、該第二歯車及び第三歯車に連結された出力軸と、を有し、前記第二歯車及び前記第三歯車はクラッチ機構を内蔵し、前記第二歯車は前記第一歯車の正転時に回転可能かつ逆転時にスリップ可能に構成され、前記第三歯車は前記第一歯車の逆転時に回転可能かつ正転時にスリップ可能に構成された動力変換手段を有する、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記パワーレバーは、内蔵された油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された油圧モータと、前記油圧ポンプのピストンを内方に付勢する弾性体と、を有し、前記油圧ポンプのピストンの先端に前記主索が接続されており、前記カイトの揚力と前記弾性体の付勢力とのバランスによって前記ピストンを移動させることにより、前記油圧モータを駆動させて動力を出力するようにした、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記操縦ユニットよりも上方の前記主索及び前記操縦索を把持可能かつ引き込み可能に構成されたカイト回収手段を有する、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記カイトの一部を把持した状態で上方に持ち上げ可能に構成されたカイト浮上補助手段を有する、ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置。
- 前記カイト、前記主索、前記操縦索、前記操縦ユニット及び前記パワーレバーにより構成される複数のカイトユニットを有し、該カイトユニットはそれぞれ前記動力出力手段に接続されている、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置。
- 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の風力エネルギー回収装置を備え、前記動力出力手段に接続された発電機を有する、ことを特徴とする風力発電装置。
- 前記発電機に接続された蓄電池を有する、ことを特徴とする請求項10に記載の風力発電装置。
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