JPWO2013094136A1 - 空気ばね - Google Patents

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Abstract

上面板および下面板と、前記上面板および下面板のそれぞれの面板に、それぞれの端部を気密に連結した筒状可撓膜体とを具え、内部に、大気圧以上の圧力の加圧気体を封入してなり、前記上面板および下面板の面板の相互の対向面の少なくとも一方に、重量平均分子量200万以上のポリエチレン樹脂の摺動板を設けてなることを特徴とする。

Description

本発明は、鉄道車両、産業機械、自動車等に用いることのできる空気ばねに関するものである。
従来技術
上面板および下面板と、これらのそれぞれの面板に、それぞれの端部を気密に連結した筒状可撓膜体とを具え、内部に、大気圧以上の加圧気体、例えば加圧空気を封入してなる空気ばね装置において、特許文献1には、この空気ばねの上面板側もしくは下面板側に、垂直方向の入力によって主には剪断変形される、ゴムを主体とする剪断ばね手段、例えば円錐台状ばね手段を配設してなる車両用懸架装置が開示されている。
このような車両用懸架装置では、エアが供給されない状態(パンク状態)での水平方向変位を許容するため、上面板と下面板の相互を面接触させながら水平摺動可能としている。
これがため、特許文献1には、上面板の下面側に形成される摺動面に当接する、フッ素樹脂製の滑り板を下面板に配設するとともに、前記摺動面に、燐酸亜鉛処理してからフッ素樹脂または二硫化モリブデンを塗装してなる塗膜を形成して、上面板と下面板とが相対摺動する際の摩擦を軽減させる技術が提案されている。
特開2010−127350号公報
本発明は、面板の摩擦力をより有効に低減させることのできる空気ばねを提案するものである。
本発明にかかる空気ばねは、上面板および下面板と、前記上面板および下面板のそれぞれの面板に、それぞれの端部を気密に連結した筒状可撓膜体とを具え、内部に、大気圧以上の圧力の加圧気体を封入してなるものであって、前記上面板および下面板の面板の相互の対向面の少なくとも一方に、重量平均分子量200万以上のポリエチレン樹脂の摺動板を設けてなることを特徴とするものである。
この空気ばねでは、上面板および下面板の面板の相互の対向面の少なくとも一方に、重量平均分子量200万以上のポリエチレン樹脂の摺動板を設けることで、特にパンク時等において、上面板および下面板の相互が水平摺動する場合、それらの摺動面間に作用する摩擦力を、従来技術のそれに比してより有効に低減させることができる他、高分子量のポリエチレン樹脂に固有の特性に基づき高い耐摩耗性を発揮することができる。
すなわち、重量平均分子量200万未満では、空気ばねそれ自体を軽量化することができるが、十分小さい摩擦係数を得ることや、十分な耐摩耗性を得ることができないおそれがある。また、上面板等の射出成形が困難となり、それらを生産することが困難になるおそれがある。
この発明の空気ばねの実施の形態を、積層ゴムを取り付けた状態で示す縦断面図である。 図1の空気ばねの下面板に設けた溝を示す、下面板の平面図である。 実施例の空気ばね装置の下面板を示す縦断面図である。 実施例及び比較例の摩擦係数測定試験の結果を示すグラフである。
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1中1は、空気ばね装置の全体を、2は、例えば水平姿勢で車体側に取付けられる上面板を、また3は下面板を、そして4は、それらの両面板2、3にそれぞれの端部を気密に連結した、図ではセルフシール構造の筒状可撓膜体をそれぞれ示し、これらの部材2,3,4は、その内部に形成される空間に、空気、不活性ガス等とすることができる所定の圧力の気体を封入して、該空間を気体室とすることで空気ばね5を構成する。
ここでは、この空気ばね5の上面板2に、流路絞り部としてのボス2aを設ける。
図に示すところでは、空気ばね5の下面板3の下面に、環状のゴム板と環状剛性板との、所要の枚数の交互の水平積層構造になる積層ゴム6を接合させて設け、そして、下面板3の中央部に形成した気体流路3aを、積層ゴム6の、中央貫通穴6aおよび、台車側への取付けボス6bに形成した気体流路6cを介して、台車側に配設される図示しない補助タンクに連通させることで、その気体流路3a,6cで、垂直方向の入力に対する気体減衰機構を構成する。
また、積層ゴム6の内径及び外径は図では全て等しく設定されているが、特に限定されない。
なおここでは、空気ばね5の下面板3に、このような積層ゴム6を設けてなる装置の全体を、空気ばね装置1としている。
さらに、図示のこの空気ばね5では、上面板2の、図では上側の面に上端支持部材7が取り付けられており、また積層ゴム6の、図では下側の面に、ばね下側(台車)等に取り付けて固定するための下側のボス6bを有する下端支持部材8が取り付けられている。
そして、空気ばね装置1において、上面板2および下面板3の面板の相互の対向面の少なくとも一方、図では両方に、重量平均分子量200万以上、好ましくは200万〜300万のポリエチレン樹脂の摺動板2d,3dを設ける。
また、図面では上面板2および下面板3のそれぞれと、摺動板2dおよび3dのそれぞれとは一体に形成されているが、上面板2および下面板3と、摺動板とは別部品で形成しても良く、上面板2または下面板3の一方と摺動板とを一体に形成してもよい。また摺動板は上面板または下面板のいずれかにのみに形成してもよい。
このような空気ばね装置1は、気体流路2bを経て、所定の圧力の、空気、不活性ガス等の気体を、空気ばね5および補助タンク内へ充填封入することで、空気ばね5に所要のばね機能を発揮させることができ、そして、空気ばね5に作用する荷重の変動、空気ばね5への振動入力等に対しては、封入気体を、気体流路6cを経て、空気ばね5と補助タンクとの間で流動変位させることで、その気体流路3aによる、加圧気体の摩擦、拡散等に基づいて空気ばね5に所要の減衰機能を発揮させることができる。
また、空気ばね装置1を鉄道車両等に装着した場合、空気ばね5は、鉄道車両等の振動を吸収し、鉄道車両等からの荷重による垂直方向への変形を抑制しながら、水平方向への入力に対し、その入力と同一の方向に撓み変形する。また、積層ゴム6も前後方向の入力によって大きく剪断変形するので、空気ばね装置全体として水平方向への変形量を大きく確保することが可能となる。それらのことから、空気ばね5により振動を吸収して乗車時の乗り心地性を向上させつつも、空気ばね装置1を前後方向に充分に変形させることが可能となる。これにより、ある程度の荷重までは小さいばね定数による柔らかいばね特性を持つ状態にできるとともに、大荷重が作用する場合には大きいばね定数による硬いばね特性を持つ状態にできる。
これらの面板2,3は、垂直方向の大きな荷重の作用または、空気ばね5のパンク等に起因して、両面板が当接した場合には、摺動板2d,3dが、面板2,3の水平面内での摺動変位を十分円滑なものとするべく機能する。さらに、前後方向の大変位は、摺動板2d,3dの作用に基づく滑り変位によって吸収されることになる。
従来の空気ばねでは、面板に使用されていた材質はフッ素樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)が大多数であったが、フッ素樹脂の摩擦係数は0.15程度である。
それに対し、本発明では、摺動板2d,3dを200万〜300万のポリエチレン樹脂で構成することにより、例えば摩擦係数0.1〜0.15の摺動特性が向上した面板を得ることができる。
すなわち、300万を超えると成形性や加工性が悪くなるため、摺動板が平滑にならずに、反ってしまうことで、摩擦係数が増加するおそれがある。また、重量平均分子量が200万より小さいと、摺動板に充分な硬さが得られず、摺動板自体が変形するため、摩擦係数が0.15以上となり、摩耗が大きくなる。
ところで、上面板2および下面板3の少なくとも一方の対向面に設けた摺動板2d,3dの、気体室に望む面に、図2に例示するような、その摺動板の中心から放射状に延びる一本以上の溝3eを配設することが好ましく、この構成により、空気ばね5に空気等の気体が封入される際の流路を確保することができる。なお、摺動板のみに溝を形成することができるとともに、上面板2及び/または下面板3まで及ぶ深さの溝を形成することもできる。
ここで、溝3eは直線状の形態のみならず、ジグザグ形状、波線形状、湾曲形状、クランク状等で延在させることもできる。
そしてまた、上面板2および下面板3の少なくとも一方と、摺動板2d,3dを一体に形成するときは、上面板2および下面板3のそれぞれと、摺動板2dおよび3dのそれぞれとを接着等する必要がないため、生産工数を削減して生産性を向上させることができるとともに、上面板が対向する下面板に当接した状態で摺動したときに、摺動板を一体形成した上面板および下面板の少なくとも一方からの、摺動板の剥離のおそれがない。また、摺動板が、摺動板と一体形成した上面板及び/または下面板に対して、特に摺動板の径方向に、位置ずれすることを抑制することができる。これにより、面板同士の摺動変位をより安定化させることができる。
そして、摺動板と、上面板2及び/または下面板3とを別個に形成し、上述したように上面板2及び/または下面板3まで及ぶ深さの溝が形成されている場合には、摺動板の位置ずれによって、摺動板と、上面板2及び/または下面板3との境界で、溝にずれが生じて気体の流れが妨げられるおそれがあるのに対し、摺動板と、上面板2及び/または下面板3とを一体形成することで、上面板2及び/または下面板3が大きく変位した際にも、溝による気体の流れを確保することができる。
さらに、金属材料等を上面板2および下面板3に用いることがないため、空気ばねの軽量化が可能となる。
次に、図1〜3に示すような構造を有し、下面板を分子量200万のポリエチレン樹脂(Ticona社 GUR UHMW-PE 5113)とした実施例空気ばね装置と、下面板をポリテトラフルオロエチレン樹脂(日本ピラー工業(株)ピラフロンG4)とした比較例空気ばね装置1と、下面板を分子量10万のポリエチレン樹脂((株)プライムポリマー HI-ZEX 2100J)とした比較例空気ばね装置2とをそれぞれ試作し、それぞれにつき摩擦係数を評価した。なお、上記の実施例空気ばね装置及び、比較例空気ばね装置1,2では、上面板を金属材料で構成し、また、下面板を摺動板と一体形成して、下面板それ自体を摺動板とした。
本発明では、上面板および下面板以外の空気ばね装置の構造については改変を要しないため、従来の空気ばね装置の構造とほぼ同様とした。
実施例空気ばね装置および比較例空気ばね装置1、2のそれぞれを、垂直荷重50KNを負荷した状態で、水平方向に各速度で加振して、摩擦係数を測定した。その結果を図4に示す。
図4の結果から明らかなように、実施例空気ばね装置は、比較例空気ばね装置1、2に対して、摩擦係数を低減することができた。
1 空気ばね装置
2 上面板
2a ボス
2b 気体流路
2d,3d 摺動板
3e 溝
3 下面板
3a 気体流路
4 筒状可撓膜体
5 空気ばね
6 積層ゴム
6a 中央貫通穴
6b 取付けボス
6c 気体流路
7 上端支持部材
8 下端支持部材

Claims (3)

  1. 上面板および下面板と、前記上面板および下面板のそれぞれの面板に、それぞれの端部を気密に連結した筒状可撓膜体とを具え、内部に、大気圧以上の圧力の加圧気体を封入してなる空気ばねにおいて、
    前記上面板および下面板の面板の相互の対向面の少なくとも一方に、重量平均分子量200万以上のポリエチレン樹脂の摺動板を設けてなることを特徴とする空気ばね。
  2. 前記ポリエチレン樹脂からなる前記摺動板に、該摺動板の中心から放射状に延びる一本以上の溝を配設してなる請求項1に記載の空気ばね。
  3. 前記上面板及び前記下面板の少なくとも一方と、前記摺動板とを一体に形成してなる、請求項1または2に記載の空気入りばね。






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