JPWO2012101929A1 - 工具ホルダ及び工作機械 - Google Patents

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Abstract

加工部分に近い位置からのクーラントの噴射を可能にするとともに、工具内部に給油孔を設ける必要がなくクーラントを所望位置に供給できる工具ホルダ及び工作機械を提供することを目的とする。工具ホルダ1は、主軸Sに把持されるシャンク部2Aと、工具Tが挿入される挿入口4を先端面5に有する工具取付部2Bと、工具取付部2Bの外周を覆う筒状壁22および工具取付部2Bの先端面5を覆う底面24を有するカバー20と、カバー20の筒状壁22と工具取付部2Bとの間に設けられたベアリング30と、工具取付部2Bに伴うカバー20の共回りを防止するストッパー40とを備える。カバー20の底面24には、工具Tが貫通する貫通穴21と、該貫通穴21の周囲に配置され、工具Tに向けてクーラントを噴射する噴出口23とが設けられている。

Description

本発明は、例えばエンドミル、フェースミル、ドリル、タップ、リーマ等の工具を工作機械の主軸に装着するための工具ホルダ及びこれを用いた工作機械に関する。
従来から、工具の長寿命化を図るために、工作機械による機械加工中に切削油(クーラント)を工具に供給することが一般的に行われてきた。
切削油の供給方式は、元々、外部に設けたノズルから切削油を工具に向けて噴射する外部給油方式であった。ところが、外部給油方式では、ノズルから噴射された切削油が被加工物に遮られて加工部分に到達できない場合があり、切削油の効果的な供給が難しかった。また、被加工物とノズルとが干渉する懸念があるため、被加工物から遠く離れた位置にノズルを設ける必要があり、切削油を加工部分に精度良く供給することが困難であった。さらに、加工中にATC(自動工具交換装置)で工具を交換するマシニングセンタ等の工作機械が普及するにつれて、切削油の供給位置を工具ごとに変更する要請が出てきたが、ノズルの位置・向きが固定である外部給油方式はそのような要請に応えることができない。よって、外部給油方式は、後述の刃物スルー方式やスキマスルー方式に代替され、現在、工作機械に外部給油方式が採用されることは稀である。
これに対し、刃物スルー方式は、工具先端で開口する給油孔を工具内部に設け、この給油孔を介して加工部分に切削油を供給するというものである(特許文献1及び2参照)。
ところが、刃物スルー方式は、工具先端で給油孔を開口させるため、フェースミルやエンドミルのように工具外周面の刃部で被加工物を切削する工具では、刃部の潤滑と冷却を効率的に行うことができない。また、工具内部に給油孔を設ける必要があるため、工具が高価になってしまう。さらに、工具が小径である場合、工具内部に給油孔を形成すること自体が非常に困難である。
一方、スキマスルー方式は、工具ホルダの先端にスキマナットを取り付けて、スキマナットと工具外周との間の隙間から切削油を噴射するというものであり、給油孔を内部に有しない工具にも対応できる。
例えば、特許文献3には、スキマスルー方式に対応した工具ホルダが記載されている。この工具ホルダでは、内周側に螺旋溝が形成されたスキマナットが先端に取り付けられており、スキマナットと工具外周との間の隙間から切削油が噴射される。これにより、スキマナットの螺旋溝を通って噴射された切削油が、工具の逃げ面に沿って効率的に加工部分に供給される。
また、工具ホルダの給油方式に関するものではないが、特許文献4には、工作機械のスピンドルに連結された伝動軸体から入力された回転をトラクション伝動機構によって増速して主軸に伝達するトラクションドライブ方式のドライブスピンドルが記載されている。トラクション伝動機構は遊星ローラ及び太陽ローラの組合せからなっており、スピンドルとともに公転する遊星ローラから、主軸に連結された太陽ローラに回転を伝達するようになっている。このトラクション伝動機構を介して伝動軸体から回転が入力された主軸の先端には加工工具取付け部が設けられており、該加工工具取付け部に工具(例えば研削砥石)が取り付けられる。
また特許文献4に記載のドライブスピンドルは、トラクション伝動機構及び主軸軸受を冷却するための冷却装置が設けられている。この冷却装置は、トラクション伝動機構の外周及び主軸の軸受の外周に設けられた冷却ジャケットと、伝動軸体の外周箇所からトラクション伝動機構の冷却ジャケットを経て主軸の軸受の冷却ジャケットに至る冷却媒体通路とを有する。冷却媒体通路に流入した冷却媒体は、トラクション伝動機構の冷却ジャケットと、主軸軸受の冷却ジャケットを通過した後、主軸軸受の外輪を押圧するベアリング押え板に形成された吹き出し口から噴出されるようになっている。
特開2009−6435号公報 特開平4−176538号公報 特開2003−1545号公報 実開平3−123657号公報
しかしながら、スキマスルー方式では、噴射された切削油が遠心力によって広がってしまい、加工部分に切削油を効率的に供給することができない。特に、工具を高速回転させる場合、加工部分での発熱が大きく多量の切削油で冷却する必要があるが、遠心力の影響によって加工部分に十分な量の切削油を供給することが難しい。
なお、特許文献4に記載のトラクションドライブ方式のドライブスピンドルでは、主軸の外周に位置する吹き出し口から冷却媒体を噴出させるようになっているが、この吹き出し口は、主軸の先端側に位置する加工工具取付け部に取り付けられる工具から離れた位置に設けられる。これは、工作機械のスピンドル側から入力される回転を増速して主軸側に伝達するというトラクション伝達機構の役割を果たすには、トラクション伝達機構は、工作機械のスピンドルと、先端に工具が取り付けられる主軸との間に設けざるを得ないためである。したがって、工具からの距離が遠い吹き出し口からの冷却媒体を加工部分に精度良く供給することは難しい。
また、引用文献4に記載のドライブスピンドルでは、トラクション伝達機構内における遊星ローラから太陽ローラへの回転の伝達を可能にするために、遊星ローラの外周に設けられるハウジングの共回りを防止する必要がある。仮に、ハウジングの共回りが防止されていなければ、遊星ローラの公転とともにハウジングが回転してしまい、遊星ローラが太陽ローラの周囲を公転する際に太陽ローラにトルクが伝達されず、太陽ローラが回転することはない。そのため、特許文献4に記載のドライブスピンドルでは、ハウジングの上面に回り止めピンを挿入して、ハウジングの共回りを防止している。つまり、特許文献4においてハウジングの共回りを防止しているのは、トラクション伝達機構内における遊星ローラから太陽ローラへの回転の伝達を可能にするためであって、ベアリング押え板に形成された吹き出し口から噴出される冷却媒体に及ぼされる遠心力の影響を低減するためではない。
このように、特許文献4は、工作機械のスピンドルと、先端に工具が取り付けられる主軸との間にトラクション伝達機構を設けた場合に限って、このトラクション伝達機構の本来の役割を実現するためにハウジングの共回りを防止することを示唆している。したがって、加工部分に近い位置から切削油を噴射するとともに、遠心力の影響を受けずに切削油を所望位置に供給するための解決策は特許文献4には何ら記載されていない。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、加工部分に近い位置からのクーラントの噴射を可能にするとともに、工具内部に給油孔を設ける必要がなくクーラントを所望位置に供給できる工具ホルダ及び工作機械を提供することを目的とする。
本発明に係る工具ホルダは、工作機械の主軸に工具を装着するための工具ホルダであって、一端に設けられ、前記主軸に把持されるシャンク部と、他端に設けられ、前記工具が挿入される挿入口を先端面に有する工具取付部と、前記工具取付部の外周を覆う筒状壁、および、前記工具取付部の前記先端面を覆う底面を有するカバーと、前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられたベアリングと、前記工具取付部に伴う前記カバーの共回りを防止するストッパーとを備え、前記カバーの前記底面には、前記工具が貫通する貫通穴と、該貫通穴の周囲に配置され、前記工具に向けてクーラントを噴射する噴出口とが設けられることを特徴とする。
ここで、クーラントは、水溶性又は非水溶性の切削油であってもよいし、ミスト(気体中に含まれる液体微粒子)であってもよいし、エアーであってもよい。
この工具ホルダでは、工具取付部の外周及び先端面を覆うカバーを取り付け、ベアリング及びストッパーにより工具ホルダ(工具取付部)の回転に伴うカバーの共回りを防止し、このカバーの底面に設けた噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、噴射されたクーラントが遠心力の影響を受けることを大幅に抑制できる。よって、クーラントを所望の位置に供給できる。
また、カバーの底面に設けた噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、従来の刃物スルー方式とは異なり、工具内部に給油孔を設ける必要がない。
さらに、カバーの底面に工具が貫通する貫通穴を設け、この貫通穴の周囲に配置された噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、噴出口の位置を加工部分に近づけることができる。したがって、クーラントを精度良く加工部分に供給することができる。
また、上記工具ホルダにおいて、前記ベアリングは、前記クーラントの一部により潤滑され、冷却されることが好ましい。
このように、クーラントの一部を用いて、ベアリングの潤滑及び冷却を行うようにしたので、ベアリングの焼き付きを起こすことなく、工具の高速回転を実現することができる。
上記工具ホルダにおいて、前記シャンク部および前記工具取付部の内部に前記主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路が設けられ、該第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間にクーラントが導かれ、前記第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間に導かれたクーラントを前記ベアリングに向けて流す第2流路が、前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられ、前記ベアリングは、前記第2流路を介して供給されるクーラントによって潤滑され、冷却されることが好ましい。
このように主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路をシャンク部及び工具取付部の内部に設けることで、工具ホルダを主軸に装着するだけで、主軸からカバー底面の噴出口に至るまでのクーラントの流路が繋がる。よって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダの自動交換にも容易に対応できる。
また、第2流路を介してベアリングにクーラントを供給することで、ベアリングの潤滑及び冷却が可能になり、ベアリングの焼き付きを防止できる。これにより、工具を高速回転させる場合であっても、ベアリングの焼き付きを起こすことなく、安定した機械加工を行うことができる。実際、本発明者は、第2流路を介してベアリングに水溶性切削油を供給することで、工具回転数が20000rpm程度の条件下でもベアリングの焼き付きが起こらないことを確認している。
この場合、前記カバーの径方向外方に延びる連通孔と、該連通孔から外部に通じる排出孔とを含み、前記ベアリングを潤滑及び冷却した後のクーラントを排出する第3流路を前記カバーの内部に形成してもよい。
このように第3流路を設けて、ベアリングの冷却及び潤滑を行った後のクーラントの排出を促進することで、ベアリング周囲のクーラントのよどみを防止し、常に新鮮なクーラントをベアリングに供給して、冷却及び潤滑を効率的に行える。また、ベアリングから第3流路を介して外部に向かうクーラントの緩やかな流れが形成されるので、ベアリングの回転に伴う外部からの気泡の混入を防止するとともに、何らかの原因で異物がクーラントに混入してもこれを外部に確実に排出してベアリングの機能を妨げることがない。
上記工具ホルダにおいて、前記カバーの外周に凹部が設けられており、前記ストッパーは、前記凹部と係合して前記カバーの共回りを防止する回転止めピンを含んでいてもよい。
このようにカバー外周の凹部と係合する回転止めピンを含むストッパーを用いることで、簡単な構成でカバーの共回りを防止することができる。
この場合、前記回転止めピンが前記凹部に係合した状態における、前記凹部と前記回転止めピンとのカバー周方向の間隙(遊隙)は0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
このように係合状態におけるカバー外周の凹部と回転止めピンとのカバー周方向の間隙(遊隙)を0.1mm以上にすることで、回転止めピンを凹部に容易に挿し込める。一方、同間隙(遊隙)を0.5mm以下にすることで、タップ等の工具を逆回転させる際にカバーが回転してしまうことによって、クーラントが遠心力の影響を受けたり、回転止めピンと凹部の壁面との衝突に起因して衝撃が発生したりすることを抑制できる。
また、前記凹部が設けられた箇所における前記カバーの外径は、前記工具取付部の直径によらず略一定であってもよい。
これにより、工具取付部の直径によらず、同一のストロークで回転止めピンを移動させてカバー外周の凹部と係合させることができる。よって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダの自動交換にも容易に対応できる。
また、複数の前記凹部が前記カバーの全周に亘って設けられており、前記ストッパーは、前記回転止めピンを移動させるアクチュエータと、該アクチュエータと前記回転止めピンとの間に設けられたスプリングとをさらに含むことが好ましい。
このように、回転止めピンを移動させるアクチュエータと回転止めピンとの間にスプリングを設けることで、アクチュエータでカバー外周に押し付けられた回転止めピンが凹部の位置と多少ずれていても、スプリングがたわんで回転止めピンが凹部に入り込む。よって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダの自動交換にも容易に対応できる。
また、回転止めピンの過剰なストロークをスプリングが縮むことで吸収できるので、カバーのサイズによらず、アクチュエータによる回転止めピンの移動量を共通に設定することができる。
この場合、前記ストッパーは、前記アクチュエータの駆動力によって、工具軸心方向に対して斜め方向に進退するロッドをさらに含み、前記回転止めピンは、前記スプリングを介して前記ロッドに支持されていることが好ましい。
このように、アクチュエータの駆動力によって進退するロッドを工具軸心方向に対して斜めに配置することで、ストッパー(アクチュエータやロッド)が被加工物と干渉することを防止できる。
上記工具ホルダにおいて、前記シャンク部および前記工具取付部の内部に前記主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路が設けられ、該第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間にクーラントが導かれ、前記第1流路内の前記工具の後端面の上流側に、前記クーラントが前記工具の前記後端面の周縁と前記第1流路を形成する前記工具取付部の内壁面との間の隙間に向かって流れるように前記クーラントを整流する整流部材を設けてもよい。
このように、工具取付部の内部に設けた第1流路内の工具の後端面の上流側に整流部材を設けて、この整流部材によってクーラントを整流することで、クーラントが、工具後端面に衝突することなく、工具後端面の周縁と工具取付部の内壁面との隙間をスムーズに通過できる。したがって、クーラントの工具後端面への衝突に起因してクーラントの流れの勢いが失われることを防止できる。
特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、工具後端面との衝突によってクーラント(エアー)の流れは著しく勢いが落ちてしまう。そのため、上述した整流部材を設けることによって、クーラント(エアー)の流れの勢いを維持しうることは非常に有益である。
この場合、前記整流部材は、前記第1流路の断面積を減少させて前記クーラントの圧力を上昇させてもよい。
工具の回転数に応じて遠心力が変化するため、第1流路を流れるクーラントを工具後端面の周縁と工具取付部の内壁面との隙間に供給するのが難しく、工具後端面や第1流路の内壁面にクーラントが一部衝突してしまうことが考えられる。そこで、上述のように、整流部材によって第1流路の断面積を減少させてクーラントの圧力を上昇させることで、整流部材を通過したクーラントの所望位置(工具後端面の周縁と工具取付部の内壁面との隙間)への指向性を強めて、第1流路を流れるクーラントをより効果的に工具後端面の周縁と工具取付部の内壁面との隙間に導くことができる。
また、整流部材によって第1流路内を流れるクーラントの圧力を上昇させることで、高圧のクーラントを噴出口から勢いよく噴射させることができる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、工具の冷却に必要な量のクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、整流部材によるクーラントの圧力上昇によって、高圧のクーラントを噴出口から勢いよく噴射しうることは非常に有益である。
上記工具ホルダは、前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられて、前記クーラントを前記工具取付部の前記先端面に向けて押し出す羽根部をさらに備えていてもよい。
このように、カバーの筒状壁と工具取付部との間の羽根部によってクーラントを工具取付部の前記先端面に向けて押し出すことで、高圧のクーラントをカバー底面の噴出口から勢いよく噴射できる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、工具の冷却に必要なクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、上述した羽根部によって、高圧のクーラントを噴出口から勢いよく噴射しうることは非常に有益である。
この場合、前記工具取付部の外周に固定された前記ベアリングのインナーレースは、前記ベアリングのアウターレースによって覆われない延長部を、前記工具取付部の前記先端面側に有し、前記羽根部は、前記インナーレースの前記延長部に設けられていてもよい。
これにより、工具取付部の外周に固定されたインナーレースの回転に伴って、羽根部が回転し、クーラントを工具取付部の先端面に向けて押し出すことができる。したがって、羽根部を駆動するための動力源を設ける必要がない。また、羽根部をインナーレースの延長部に設けたので、部品点数の増加を抑制できる。
上記工具ホルダは、前記カバーと前記工具取付部との間の空間が加圧状態の前記クーラントで満たされるように、前記空間からの前記クーラントの流出を抑制する閉塞部をさらに備えていてもよい。
このように、カバーと工具取付部との間の空間からのクーラントの流出を閉塞部によって抑制することで、この空間に満たされた加圧状態のクーラントがダンパとして機能し、工具取付部の振動及びビビリを減衰し、加工精度の低下や工具の摩耗を防止できる。なお、カバーと工具取付部との間の空間に満たされたクーラントがダンパとして機能するのは、ストッパーによって工具取付部に伴うカバーの共回りが防止されてカバーが静止し、工具ホルダとカバーとが別個独立であるからである。
上記工具ホルダにおいて、前記噴出口は前記底面の貫通穴の周囲に複数設けられており、それぞれの噴出口の工具軸心方向に対する傾斜角が互いに異なることが好ましい。
このように工具軸心方向に対する傾斜角が異なる複数の噴出口を設けることで、クーラントを複数方向に噴射して、広範囲に亘るクーラントの供給が可能になる。このため、被加工物に遮られてクーラントを加工部分に供給しづらい場合であっても、いずれかの噴出口から噴射されたクーラントを加工部分に到達させることができる。
また、ドリルやタップを用いた機械加工では、被加工物に形成された穴の内部の加工部分に直接切削油を供給することができないため、被加工物の表面の穴周縁と工具との間の隙間に向けてクーラントを噴射し、該隙間を介して穴の内部にクーラントを供給する必要がある。ところが、工具がドリルやタップである場合、加工の進捗に伴い、工具ホルダが被加工物に徐々に接近するので、クーラントの被加工物への着弾位置は一定ではない。この点、工具軸心方向に対する傾斜角が異なる複数の噴出口を設ければ、いずれかの噴出口から噴射されたクーラントを常に被加工物の表面の穴周縁と工具との間の隙間に到達させることができる。よって、該隙間を介して穴内部にクーラントを常に供給して、穴内部の加工部分を冷却するとともに、切り屑(キリコ)の排出を促進することができる。
上記工具ホルダにおいて、前記噴出口は、円形部と、該円形部の直径よりも小さな幅を有し、前記貫通穴から離れる方向に前記円形部から延在する長穴部とを繋げた形状であり、前記長穴部の工具中心方向に対する傾斜角は、前記円形部の工具中心方向に対する傾斜角よりも大きくしてもよい。
このような形状の噴出口を用いることで、円形部から噴出されて比較的工具に沿って垂れ落ちていくクーラントの噴流を、長穴部から噴出されたクーラントによって工具に押し付けることで、広範囲にわたってクーラントを工具に供給できる。よって、噴出口の数を少なくすることができ、全噴射口の総開口面積を低減して、噴出口から噴射されるクーラントの圧力低下を抑制できる。
上記工具ホルダにおいて、前記カバーは、少なくとも前記底面が着脱自在に構成されていることが好ましい。
カバー底面の噴出口の位置や、直径や、工具軸心方向に対する傾斜角は、工具の寸法(特に工具の長さ)、工具の種類、加工条件等に応じて変えることが望ましい。よって、噴出口が設けられたカバーの底面を着脱自在に構成することで、相応しい噴出口を有するカバーを工具ホルダに装着して、加工部分に向けてクーラントをより効果的に供給することができる。
本発明に係る工作機械は、上述の工具ホルダを備えることを特徴とする。
この工作機械は、上述の工具ホルダを備えるから、噴射されたクーラントが遠心力の影響を受けることを大幅に抑制することができるとともに、工具内部に給油孔を設ける必要がない。
本発明によれば、工具取付部の外周及び先端面を覆うカバーを取り付け、ベアリング及びストッパーにより工具ホルダ(工具取付部)の回転に伴うカバーの共回りを防止し、このカバーの底面に設けた噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、噴射されたクーラントが遠心力の影響を受けることを大幅に抑制できる。よって、クーラントを所望の位置に供給できる。
また、カバーの底面に設けた噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、従来の刃物スルー方式とは異なり、工具内部に給油孔を設ける必要がない。
さらに、カバーの底面に工具が貫通する貫通穴を設け、この貫通穴の周囲に配置された噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、噴出口の位置を加工部分に近づけることができる。したがって、クーラントを精度良く加工部分に供給することができる。
第1実施形態に係る工具ホルダの構成例を示す図であり、(a)が工具ホルダ全体の断面図、(b)がベアリングを封入するための詳細構造を示す図である。 図1(a)のA−A断面図である。 切削油を噴射する噴出口の配置例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は図3(a)のB−B断面図、(c)は図3(a)のC−C断面図、(d)は図3(a)のD−D断面図である。 ベアリング周辺の切削油の流路構造を示す断面図である。 第3流路が設けられたアウターレースの構成例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図5(a)のE方向から視た図、(c)は図5(b)のF方向から視た図である。 ストッパーにより回転止めリングを拘束する様子を示す図である。 図6の符号Gで示した領域の拡大図である。 回転止めリングの外径とエアシリンダのストロークとの関係を説明するための図であり、(a)は工具取付部が小径の場合を示し、(b)は工具取付部が大径の場合を示す。 噴射口を有するカバーの他の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は図9(a)のH−H断面図である。 第2実施形態に係る工具ホルダの構成例を示す図であり、(a)が工具ホルダの概略を示す断面図、(b)が図10(a)のI部の拡大図である。 工具ホルダの第1流路内に設けられる整流部材の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は図11(a)のJ−J断面図である。 工具ホルダのカバーと工具取付部の外周との間に設けられる羽根部の構成例を示す斜視図である。
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る工具ホルダの構成例を示す図であり、図1(a)は工具ホルダ全体の断面図、図1(b)はベアリングを封入するための詳細構造を示す図である。図2は、図1(a)のA−A断面図である。図3は、切削油を噴射する噴出口の配置例を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のB−B断面図、図3(c)は図3(a)のC−C断面図、図3(d)は図3(a)のD−D断面図である。
図1(a)に示すように、工具ホルダ1は、主軸(スピンドル)Sに工具Tを装着するために用いられ、ミーリングチャック本体2、カバー20、ベアリング30及びストッパー40を有する。
ミーリングチャック本体2の基端側には、主軸Sによって把持されるシャンク部2Aが設けられている。シャンク部2Aは、いわゆるBT(ボトルグリップテーパ)シャンクであり、その端部にはプルスタッド3が螺着されている。また、主軸Sの内部には、その軸方向に移動可能なドローバー(不図示)が設けられている。そして、ドローバーの動作によってプルスタッド3が主軸S側に引き込まれることで、工具ホルダ1(ミーリングチャック本体2)が主軸Sに固定されるようになっている。
なお、シャンク部2Aは、BTシャンク以外にも、HSKシャンク、KMシャンク、NTシャンク等の任意の形状のものを用いることができる。
ミーリングチャック本体2の先端側には、ミーリングチャック本体2の先端面5で開口する挿入口4を有する工具取付部2Bが設けられている。工具取付部2Bの挿入口4には工具Tが挿入され、コレット6の締付力によって固定される。コレット6による工具Tの固定は、次のように行われる。
コレット6は、図2に示すように、複数のスリット7が設けられ、工具取付部2Bの挿入口4の内壁との当接面の一部がテーパ形状になっている(図1(a)参照)。このため、コレット6は、主軸S側への移動により縮径し、逆方向への移動により拡径するようになっている。
コレット6は、その一端に締付ボルト8が螺着されており、締付ボルト8と一体となっている。また、ミーリングチャック本体2の内部には、締付ナット10が締付ナット固定ボルト11によって固定されている。そして、締付ボルト8の雄ねじと締付ナット10の雌ねじとが、ねじ部12において螺合している。
工具Tをミーリングチャック本体2に取り付ける場合、締付ボルト8の端部に設けられた締付ボルト六角部14を専用の六角レンチで回転させて、締付ボルト8をその軸方向に後退(主軸S側に移動)させる。これにより、締付ボルト8とともにコレット6が主軸S側に移動し、コレット6が縮径して、工具Tが把持される。
一方、工具Tをミーリングチャック本体2から取り外す場合、締付ボルト六角部14を逆方向に回転させる。これにより、締付ボルト8とともにコレット6が主軸Sとは反対側に移動し、コレット6が拡径して、工具Tの把持が解除される。
カバー20は全体としてカップ形状に構成され、図1(a)に示すように、工具取付部2Bの外周を覆う筒状壁22と、工具取付部2Bの先端面5を覆う底面24とを有する。筒状壁22は、ベアリング30のアウターレース34を含んで円筒状に形成される。
カバー20の底面24には、工具Tが貫通する貫通穴21と、この貫通穴21の周囲に配置されて切削液Cを噴射する噴出口23とが設けられている。噴出口23は、主軸Sから離れるにつれ工具Tの外周面に近づくように工具軸心方向に対して傾斜しており、その傾斜角αは工具Tの所望の位置に切削油Cを供給できるように適宜調節されることが好ましい。
また、図3に示すように、噴出口23(23−1,23−2,・・・,23−6)を複数設けて、それぞれの噴出口23の工具軸心方向に対する傾斜角α(α1,α2,・・・,α6)を互いに異ならせてもよい。例えば、α1=45°、α2=40°、α3=35°、α4=30°、α5=25°、α6=20°にしてもよい。
このように工具軸心方向に対する傾斜角αが異なる複数の噴出口23(23−1,23−2,・・・,23−6)を設けることで、切削油Cを複数方向に噴射して、広範囲に亘る切削油Cの供給が可能になる。このため、被加工物に遮られて切削油Cを加工部分に供給しづらい場合であっても、いずれかの噴出口23から噴射された切削油Cを加工部分に到達させることができる。
なお、各噴出口23の傾斜角αは工具Tの長さに応じて調節することが好ましく、長さが異なる複数種の工具Tを取り扱う場合には各工具Tの長さに見合った傾斜角αの噴出口23を有するカバー20を予め用意しておくことが好ましい。
また、ドリルやタップを用いた機械加工では、被加工物に形成された穴の内部の加工部分に直接切削油を供給することができないため、被加工物の表面の穴周縁と工具との間の隙間に向けて切削油を噴射し、該隙間を介して穴の内部に切削油を供給する必要がある。ところが、工具Tがドリルやタップである場合、加工の進捗に伴い、工具ホルダ1(カバー20の底面24)が被加工物に徐々に接近するので、噴出口23から噴射された切削油Cの被加工物への着弾位置は一定ではない。この点、工具軸心方向に対する傾斜角αが異なる複数の噴出口23(23−1,23−2,・・・,23−6)を設ければ、いずれかの噴出口23から噴射された切削油Cを常に被加工物の表面の穴周縁と工具との間の隙間に到達させることができる。よって、該隙間を介して穴内部に切削油を常に供給して、穴内部の加工部分を冷却するとともに、切り屑(キリコ)の排出を促進することができる。
カバー20は、少なくとも底面24が着脱自在に構成されていることが好ましい。例えば、底面24および筒状壁22の一部(筒状壁22のうちアウターレース34以外)をねじ部38(図4参照)によってアウターレース34に螺着可能に構成してもよい。
底面24の噴出口23の位置や、直径や、工具軸心方向に対する傾斜角は、工具Tの寸法(特に工具Tの長さ)、工具Tの種類、加工条件等に応じて変えることが望ましい。よって、少なくとも底面24を着脱自在に構成することで、底面24を含むこの部分の交換により、各工具Tに相応しい噴出口23を有する底面24(及び筒状壁22の一部)を用いて、加工部分に向けて切削油Cをより効果的に供給することができる。
シャンク部2Aおよび工具取付部2Bの内部には第1流路16が形成されており、主軸S側から第1流路16を介して工具取付部2Bの先端面5とカバー20の底面24との間に切削油Cが導かれるようになっている。第1流路16は、図1の矢印で示すように、プルスタッド3および締付ボルト8の内部流路と、コレット6のスリット7(図2参照)とで構成される。なお、第1流路16を介して工具取付部2Bの先端面5とカバー20の底面24との間に導かれた切削油Cは、一部が噴出口23から工具Tに向けて噴射され、残りが後述の第2流路18を通ってベアリング30に供給される。
このように主軸S側から供給される切削油Cが流れる第1流路16をシャンク部2A及び工具取付部2Bの内部に設けることで、工具ホルダ1を主軸Sに装着するだけで、主軸Sから噴出口23に至るまでの切削油Cの流路が繋がる。よって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダ1の自動交換にも容易に対応できる。
ベアリング30は、工具取付部2Bの外周に固定されたインナーレース32と、カバー20の筒状壁22の一部を構成するアウターレース34との間に複数の玉を封入したボールベアリングである。ベアリング30のインナーレース32はミーリングチャック本体2とともに高速回転する。一方、ベアリング30のアウターレース34は、アウターレース34に取り付けられた回転止めリング26が後述のストッパー40によって拘束されるため、静止したままである。
ベアリング30の封入は次のようにして行う。最初に、アウターレース34のベアリング入口穴33に塞ぎボルト37を螺着した状態で、アウターレース34の内周側にR溝35を形成する。この後、塞ぎボルト37を取り外し、アウターレース34をインナーレース32に取り付けて、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35にベアリング入口穴33からベアリング30を投入する。そして、R溝35が先端に形成された塞ぎボルト37によってベアリング入口穴33を塞ぐ。これにより、ベアリング30が、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35に封入される。なお、塞ぎボルト37の雄ねじ及びこれに螺合するベアリング入口穴33の雌ねじは、塞ぎボルト37の基端側及びアウターレース34の外周側だけに設けられ、塞ぎボルト37のベアリング入口穴33へのねじ込み時に塞ぎボルト37の位置が規制されるようになっているので、ベアリング30と塞ぎボルト37のR溝35との間隙を高精度に調節できる。
また、筒状壁22と工具取付部2Bの外周との間には、第1流路16を介して工具取付部2Bの先端面5とカバー20の底面24との間に導かれた切削油Cの一部をベアリング30に向けて流す第2流路18が設けられている。第2流路18を介してベアリング30に供給された切削油Cは、ベアリング30を冷却するとともに潤滑し、焼き付きを防止する。
これにより、工具Tを高速回転させる場合であっても、ベアリング30の焼き付きを起こすことなく、安定した機械加工を行うことができる。実際、本発明者は、第2流路18を介してベアリング30に水溶性の切削油Cを供給することで、工具回転数が20000rpm程度の条件下でもベアリング30の焼き付きが起こらないことを確認している。
ここで、ベアリング30周辺の切削油Cの流れについて詳述する。図4は、ベアリング30周辺の切削油の流路構造を示す断面図である。
同図に示すように、インナーレース32とアウターレース34との間には、全周に亘って隙間36(36A,36B,36C)が設けられている。そして、筒状壁22と工具取付部2Bの外周との間の第2流路18を通過した切削油が隙間36(36A,36B,36C)を流れる途中で、ベアリング30の冷却及び潤滑が行われる。ベアリング30を冷却及び潤滑した後の切削油は、図4の矢印で示したように、第3流路50によって排出される。第3流路50は、ベアリング30が封入されたR溝から径方向外方に切削油を流す連通孔52と、隙間36Cを通過してアウターレース34の上面に達した切削油を径方向外方に流す上面溝53と、連通孔52及び上面溝53からの切削油を合流させて下方に排出する貫通孔54とからなる。
このように、第3流路50を設けて、ベアリング30の冷却及び潤滑を行った後の切削油Cの排出を促進することで、ベアリング30の周囲の切削油Cのよどみを防止し、常に新鮮な切削油Cをベアリング30に供給して、冷却及び潤滑を効率的に行える。また、ベアリング30から第3流路50を介して外部に向かう切削油Cの緩やかな流れが形成されるので、ベアリング30の回転に伴う外部からの気泡の混入を防止するとともに、何らかの原因で異物が切削油に混入してもこれを外部に確実に排出してベアリング30の機能を妨げることがない。
2列のベアリング30で挟まれた隙間36Bの幅は、他の隙間36A及び36Cの幅よりも大きくすることが好ましい。これにより、2列目のベアリング30(図4の上側のベアリング30)に切削油Cを安定して供給できる。また、2列目のベアリング30の直後の流路である隙間36Cの幅を、隙間36(36A,36B,36C)のうちで最も小さくして、十分な圧力で連通孔52に切削油を流すことで、ベアリング30のよどみを防止して冷却及び潤滑を効率化するとともに、気泡の混入防止や異物の排出促進を効果的に行うことができる。例えば、隙間36Bの幅を約0.5mmとし、隙間36Aの幅を約0.2mmとし、隙間36Cの幅を約0.05mmとしてもよい。
なお、連通孔52、上面溝53及び貫通孔54の幅(又は直径)は、1列目のベアリング30の直前の流路である隙間36Aの幅(すなわち、第3流路50の入口側の流路幅)よりも大きいことが好ましい。これにより、ベアリング30を冷却及び潤滑した後の切削油の排出を促進し、ベアリング30の周囲の切削油のよどみを防止し、常に新鮮な切削油をベアリング30に供給して、冷却及び潤滑をより効率的に行える。例えば、連通孔52の直径を0.3mm程度とし、上面溝53及び貫通孔54の幅(直径)を0.5mm程度にしてもよい。
また、アウターレース34と回転止めリング26とを別体として構成し、アウターレース34だけに第3流路50を形成してもよい。例えば、図4に示すように、第3流路50が予め形成されたアウターレース34の外周に、セットスクリュー29を用いて、回転止めリング26を着脱自在に取り付けてもよい。
アウターレース34を回転止めリング26とは別体とすることで、万が一、アウターレース34又は回転止めリング26が故障又は破損しても、故障又は破損した部品のみを選択的に交換することができる。
また、アウターレース34だけに第3流路50を形成することで、機械加工が容易になり、製作コストを低減できる。このことを、図5を用いて説明する。図5は、第3流路50が設けられたアウターレース34の構成例を示す図であり、図5(a)は断面図、図5(b)は図5(a)のE方向から視た図、図5(c)は図5(b)のF方向から視た図である。
連通孔52、上面溝53及び貫通孔54からなる第3流路50は周方向に複数(例えば60度おきに6箇所)設けられる。ベアリング30を案内するR溝35に連通する連通孔52は、アウターレース34の外周側からの穴あけ加工で容易に形成できる。また、上面溝53及び貫通孔54は、アウターレース34の上面又は外周面への切削加工により容易に形成できる。よって、一体的に設けられたアウターレース34及び回転止めリング26に対して第3流路50を形成する場合に比べて、第3流路50の機械加工が容易であり、製作コストを低減できる。
図1(a)に示すように、ストッパー40は、回転止めリング26の外周の凹部27と係合する回転止めピン42と、スプリング44を介して回転止めピン42を支持するピストンロッド46と、このピストンロッド46を進退させるエアシリンダ48とを有する。なお、エアシリンダ48は、工作機械側のZ軸に固定されていてもよい。
エアシリンダ48の駆動力によってピストンロッド46がその長手方向に移動して、回転止めピン42が回転止めリング26の凹部27に挿し込まれることで、回転止めリング26が係止される。なお、ピストンロッド46は、その長手方向が工具Tの軸心方向に対して斜めになるように回転止めリング26よりも上方に配置されているので、ピストンロッド46及びエアシリンダ48が被加工物と干渉することを防止できる。
図6は、ストッパー40により回転止めリング26を拘束する様子を示す図である。図7は、図6の符号Gで示した領域の拡大図である。
図6に示すように、回転止めリング26の外周には、多数の凹部27が回転止めリング26の全周に亘って設けられている。そして、回転止めリング26の周方向における凹部27の幅W(図7参照)は、内周側に比べて外周側が広くなっており、回転止めピン42を凹部27に挿し込みやすくなっている。また、回転止めピン42の基端側にはスプリング44が設けられているから、回転止めリング26の外周に押し付けられた回転止めピン42が凹部27の位置と多少ずれていても、スプリング44がたわんで回転止めピン42が凹部27に入り込む。しかも、回転止めピン42の先端は、球形状であるから、回転止めリング26の外表面に引っかからずにスムーズに凹部27に入り込む。したがって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダ1の自動交換にも容易に対応できる。
また、回転止めピン42が凹部27に係合した状態における、凹部27と回転止めピン42との周方向の間隙(すなわち、凹部27の幅Wと回転止めピン42の先端の直径Dとの差)は、0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
このように係合状態における回転止めリング26の凹部27と回転止めピン42との周方向の間隙を0.1mm以上にすることで、回転止めピン42を凹部27に容易に挿し込める。一方、同間隙を0.5mm以下にすることで、タップ等の工具を逆回転させる際に回転止めリング26が回転してしまうことによって、噴出口23から噴出される切削油Cが遠心力の影響を受けたり、回転止めピン42と凹部27の壁面28との衝突に起因して衝撃が発生したりすることを抑制できる。
また、凹部27が設けられた回転止めリング26の外径は、工具取付部2Bの直径によらず略一定としてもよい。
図8は回転止めリング26の外径とエアシリンダ48のストロークとの関係を説明するための図であり、図8(a)は工具取付部2Bが小径の場合を示し、図8(b)は工具取付部2Bが大径の場合を示している。
図8(a)及び(b)に示すように、工具取付部2Bの直径が異なる場合であっても、回転止めリング26の外径Dを略一定にすることで、同一のストロークLで回転止めピン42を移動させて回転止めリング26の凹部27と係合させることが可能になる。したがって、ATC(自動工具交換装置)によって工具ホルダ1を自動交換する場合であっても、工具ホルダ1毎にエアシリンダ48のストロークを変更する必要がないから、ATCによる工具ホルダ1の自動交換に容易に対応できる。
以上説明したように、本実施形態では、工具取付部2Bの外周及び先端面5を覆うカバー20を取り付け、ベアリング30及びストッパー40により工具ホルダ1(工具取付部2B)の回転に伴うカバー20の共回りを防止し、このカバー20の底面24に設けた噴出口23から切削油Cを噴射するようにしたので、噴射された切削油Cが遠心力の影響を受けることを大幅に抑制できる。よって、切削油Cを所望の位置に供給できる。
また、カバー20の底面24に設けた噴出口23から切削油Cを噴射するようにしたので、従来の刃物スルー方式とは異なり、工具Tの内部に給油孔を設ける必要がない。
さらに、カバー20の底面24に工具Tが貫通する貫通穴21を設け、この貫通穴21の周囲に配置された噴出口23から切削油を噴射するようにしたので、噴出口23の位置を加工部分に近づけることができる。したがって、切削油を精度良く加工部分に供給することができる。
なお、本実施形態では、エアシリンダ48のストロークを一定にするために工具取付部2Bの直径によらず回転止めリング26の外径を略一定にする例(図8(a)及び(b)参照)について説明したが、工具取付部2Bの直径に応じた外径を有する回転止めリング26を用いても、次のように、エアシリンダ48のストロークを変更する必要のない装置を実現できる。これにより、回転止めリング26のコンパクト化を図りながら、ATCによる工具ホルダ1の自動交換に容易に対応できる。
エアシリンダ48のストロークは、ATC(自動工具交換装置)で用いる工具ホルダのうち工具取付部2Bの直径が最も小さいもの(すなわち、外径が最も小さい回転止めリング26を有する工具ホルダ)に合わせて設定する。すなわち、外径が最も小さい回転止めリング26の凹部27に回転止めピン42が到達しうるように、エアシリンダ48のストロークを設定する。このストローク設定値は、ATC(自動工具交換装置)で用いる全ての工具ホルダで共通に使用する。工具取付部2Bの直径が最も大きい工具ホルダの場合には、エアシリンダ48が回転止めピン42を上記ストローク設定値だけ動かそうとしたときに、スプリング44が縮んで余分なストロークを吸収する。このとき、スプリング44が縮んでも、過剰な弾性力によって回転止めピン42と回転止めリング26の凹部27との係合が阻害されないように、スプリング44の自然長及び/又はばね定数を調節することが好ましい。
また、この場合、回転止めピン42と回転止めリング26の凹部27との接触時の衝撃を緩和する観点から、エアシリンダ48によるピストンロッド46の押出し速度が押出し動作中に段階的に小さくなるように構成してもよい。例えば、工具取付部2Bの直径が最も大きい工具ホルダの場合に回転止めピン42が凹部27に接触するストロークをL0としたとき、任意の閾値Lth(<L0)を境にピストンロッド46の押出し速度を変化させてもよい。すなわち、0<L<Lthのストローク範囲ではピストンロッド46の押出し速度を大きくし、Lth≦Lのストローク範囲ではピストンロッド46の押出し速度を小さくしてもよい。これにより、工具取付部2Bの直径が最も大きい工具ホルダの場合であっても、回転止めピン42が凹部27に接触する前(すなわち、ストロークが閾値Lthに達した時)にピストンロッド46の押出し速度が小さくなり、回転止めピン42と回転止めリング26の凹部27との接触時の衝撃が緩和される。
また、本実施形態では、カバー20の底面24に円形状の噴射口23(図3(a)参照)を形成する例について説明したが、噴射口23の形状はこの例に限定されず、任意の形状であってもよい。
図9は他の形状例の噴射口23を有するカバー20を示す図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のH−H断面図である。図9(a)及び(b)に示すように、円形部60と、工具Tが貫通する貫通穴21から離れる方向に円形部60から延在する長穴部62とを繋げた形状の噴出口23を用いてもよい。長穴部62の幅W2は、円形部60の直径D2よりも小さい。また、長穴部62の工具中心方向に対する傾斜角γ1,γ2は、円形部60の工具中心方向に対する傾斜角β1,β2よりも大きい。なお、カバー20の底面24に複数の噴出口23を設けて、各噴出口23の円形部60及び長穴部62の工具中心方向に対する傾斜角を互いに異ならせてもよい。
このように、円形部60及び長穴部62からなる噴出口23を用いることで、円形部60から噴出された後に工具Tに比較的沿って垂れ落ちていく切削油の噴流を、長穴部62から噴出された切削油の噴流によって工具T側に押し付けることで、広範囲にわたって切削油を工具Tに供給できる。よって、噴出口23の数を少なくすることができ、全噴射口23の総開口面積を低減して、噴出口23から噴射される切削油の圧力低下を抑制できる。
また、カバー20の底面24の内側面における長穴部62の周縁のうち貫通穴21から遠い領域を選択的に面取りして、C面63を形成することが好ましい。これにより、長穴部62から噴射される切削油がC面63に沿って流れる際に断面積減少によって圧力上昇するので、長穴部62から噴射される切削油の勢いを増すことができる。
また、本実施形態では、工具ホルダ1がATCによる自動交換に対応しやすい構成のストッパー40を備える例について説明したが、ストッパー40はカバー20の共回りを防止可能であれば特に限定されず、任意の構成のものを用いることができる。
また、本実施形態では、噴出口23から切削油を噴出する例について説明したが、切削油に替えてミストやエアー等の他のクーラントを用いてもよい。
また、本実施形態では、ベアリング30としてインナーレース32とアウターレース34との間に玉を封入したボールベアリングを例に挙げたが、工具取付部2Bの外周面に回転止めリング26を相対的に回転自在に支持しうる軸受であれば特に限定されず、任意の構成のものを用いることができる。
さらに、本実施形態では、回転止めピン42を移動させるためにエアシリンダ48を用いる例について説明したが、エアシリンダ48に替えて、油圧シリンダやモータ等の任意のアクチュエータを用いることができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る工具ホルダについて説明する。以下、第1実施形態の工具ホルダ1と共通する箇所には同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態の工具ホルダ1と異なる点を中心に本実施形態の工具ホルダについて説明する。
図10は第2実施形態に係る工具ホルダの構成例を示す図であり、図10(a)は本実施形態の工具ホルダの概要を示す断面図であり、図10(b)は図10(a)のI部の拡大図である。図11は工具ホルダの第1流路16内に設けられる整流部材の構成例を示す図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のJ−J断面図である。図12は工具ホルダのカバー20と工具取付部2Bの外周との間に設けられる羽根部の構成例を示す斜視図である。
図10(a)に示すように、本実施形態の工具ホルダ100では、締付ボルト8の端部に整流部材(圧力コントローラ)70が螺着されている。整流部材70は、図11(a)及び(b)に示すように、第1流路16におけるクーラント(切削油、ミスト、エアー等)の流れ方向に逆らって突出する突起部72を囲むように、第1流路16の一部を形成する一対の略環状の貫通孔74A,74Bが形成されている。また整流部材70は、全体として略円筒状に形成されており、その外周面には締付ボルト8の端部に形成された雌ねじに螺合する雄ねじ78が設けられている。各貫通孔74A,74Bの出口部76は、整流部材70の径方向外方に屈曲している。整流部材70の中心軸に対する出口部76の屈曲角度θは、工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面(具体的にはコレット6の内側表面、または、コレット6のスリット7に対応する位置における挿入穴4の壁面)との隙間に向かってクーラントが流れるように調節されている。
このように、整流部材70を第1流路16の工具Tの後端面71の上流側に設けることで、第1流路16内を流れるクーラントが整流されて、工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面との間の上記隙間に導かれる。そのため、クーラントが工具Tの後端面71に直接衝突することなく、工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面との間の上記隙間をスムーズに通過できる。したがって、工具Tの後端面71へのクーラントの衝突に起因して、クーラントの流れの勢いが失われることを防止できる。
特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、工具Tの後端面71との衝突によってクーラント(エアー)の流れは著しく勢いが落ちてしまう。そのため、上述した整流部材70を設けることによって、クーラント(エアー)の流れの勢いを維持しうることは非常に有益である。
また整流部材70の内部における第1流路16の断面積(すなわち貫通孔74A,74Bの総断面積)は、整流部材70の上流側における第1流路16の断面積に比べて小さい。具体的には、第1流路16の上流側から下流側に向かうに従って、第1流路16の断面積は、突起部72により徐々に減少して、最終的に貫通孔74A,74Bの総断面積となる。そのため、第1流路16内を流れるクーラントは、整流部材70を通過する際に圧力が上昇する。なお、整流部材70の突起部72は略円錐形状であるから、圧力損失の原因とならずに、クーラントを分流して各貫通孔74A,74Bにスムーズに導くことができる。
上述のように、整流部材70によって第1流路16を狭めてクーラントの圧力を上昇させることで、出口部76から流出するクーラントの所望位置(工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面との間の上記隙間)への指向性が向上する。よって、第1流路16を流れるクーラントを、工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面との間の上記隙間により効果的に導くことができる。したがって、クーラントの圧力を高く維持したまま噴出口23に供給し、噴出口23から勢いよくクーラントを噴射できる。
また、整流部材70によって第1流路16内を流れるクーラントの圧力を上昇させることで、高圧のクーラントを噴出口23から勢いよく噴射させることができる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、工具Tの冷却に必要な量のクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、整流部材70によるクーラントの圧力上昇によって、高圧のクーラントを噴出口23から勢いよく噴射しうることは非常に有益である。
なお、整流部材70は樹脂製であって、射出成形等の公知の手法によって作製されてもよい。これにより、整流部材70の製造コストを削減できる。そのため、貫通孔74A,74Bの大きさや、整流部材70の中心軸に対する出口部76の屈曲角度θが異なる複数品種の整流部材70を予め準備し、工具Tの種類に応じて適切な整流部材70を選択して使用してもよい。
また、工具ホルダ100では、図10(a)に示すように、カバー20の筒状壁22と工具取付部2Bの外周との間の第2流路18内には羽根部80を設けている。羽根部80は、図10(a)及び12に示すように、ベアリング30のインナーレース32と一体的に設けられている。具体的には、ベアリング30のインナーレース32を工具取付部2Bの先端面5側に延設し、アウターレース34によって覆われないインナーレース32の延長部81(図12参照)を形成し、この延長部81に羽根部80を設ける。羽根部80は、延長部81の外周を切り欠いて形成した凹部82と、この凹部82の境界に沿って延長部81の外周面に設けられた突出部84とで構成される。凹部82は、側壁面82A、上壁面82B及び傾斜面82Cによって形成される。傾斜面82Cは、工具取付部2Bの先端面5側に向かうに従って、インナーレース32の回転方向の逆方向にずれるように傾斜している。インナーレース32の中心軸に対する傾斜面82Cの傾斜角度は、例えば30度以上45度以下の範囲内で設定してもよい。なお、羽根部80は、延長部81の周方向に複数設けてもよい。
このように第2流路18内に羽根部80を設けることで、工具取付部2Bとともにインナーレース32が図12の矢印方向に回転すると、凹部82に流入したクーラントは傾斜面82Cによって工具取付部2Bの先端面5側に押し出される。そのため、高圧のクーラントをカバー20の底面24に形成した噴出口23から勢いよく噴射できる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、工具Tの冷却に必要な量のクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、上述した羽根部80によって、高圧のクーラントを噴出口23から勢いよく噴射しうることは非常に有益である。
また、工具Tによる加工中、羽根部80は工具取付部2Bとともに回転するから、羽根部80を駆動するための動力源を別途設ける必要がない。さらに、羽根部80をインナーレース32の延長部81に設けたので、羽根部80の採用に伴う部品点数の増加を抑制できる。
なお、第2流路18内には、羽根部80によって押し出されて工具取付部2Bの先端面5側に向かうクーラントの流れ以外にも、クーラントの流れが存在する。すなわち、第1流路16から工具取付部2Bの先端面5とカバー20の底面24との間に流入した後、噴射口23から噴出されなかったクーラントは、カバー20の底面24からの反動力によってベアリング30に向かうように変向される。さらに、羽根部80によって工具取付部2Bの先端面5側に押し出されたクーラントも、カバー20の底面24からの反動力によってベアリング30に向かうように変向される。そのため、第2流路18内のクーラントの流れは旋回流を含む複雑な流れであるが、第2流路18内のクーラントの流れがどうであれ、羽根部80を設けることで第2流路18内のクーラントの圧力が上昇することは明らかである。よって、第2流路18を介してベアリング30に十分な量のクーラントを供給することができ、ベアリング30の潤滑及び冷却を効果的に行うことができる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、ベアリング30の冷却に必要な量のクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、上述した羽根部80を設けて第2流路18内の圧力を高めることで、ベアリング30へのクーラントの供給を確実に行いうることは非常に有益である。
さらに、工具ホルダ100では、図10(a)に示すように、カバー20と工具取付部2Bの外周との間の空間91からのクーラントの流出を抑制する閉塞部90を設けている。この空間91は、カバー20の筒状壁22と工具取付部2Bの外周との間の第2流路18と、カバー20の回転止めリング26と工具取付部2Bの外周との間の空間とを含む領域である。
閉塞部90は、図10(a)及び(b)に示すように、回転止めリング26の上端部に設けられた内向きフランジ92と、この内向きフランジ92を覆うように工具取付部2Bの外周に取り付けられたリング部材94とで構成される。
また、内向きフランジ92の先端面と工具取付部2Bの外周との間には微小隙間96が形成され、リング部材94の下面と内向きフランジ92の上面との間には微小隙間98が形成されている。このように微小隙間96,98を設けるのは、工具取付部2B及びこれに取り付けられたリング部材94が回転止めリング26に接触しないようにして、両者の相対的な回転を可能にするためである。
なお、図10(a)には明示していないが、ベアリング30周辺のクーラントの流路構造は、図4を用いて説明した第1実施形態と同様に隙間36(36A,36B,36C)と第3流路50(具体的には、連通孔52,上面溝53及び貫通孔54)とで構成されている。
閉塞部90の微小間隙96,98は、隙間36(36A,36B,36C)よりも小さく設定されている。例えば、隙間36Bの幅を約0.5mmとし、隙間36Aの幅を約0.2mmとし、隙間36Cの幅を約0.05mmとする一方で、閉塞部90の微小間隙96,98は0.01mm以下に設定してもよい。これにより、隙間36(36A,36B,36C)を介してベアリング30を通過するクーラントの量を維持しながら、閉塞部90によって空間91からのクーラントの流出を効果的に抑制できる。
また、内向きフランジ92の先端面と工具取付部2Bの外周との間の微小隙間96と、リング部材94の下面と内向きフランジ92の上面との間の微小間隙98とで形成される流路は屈曲しているため、空間91内からのクーラントの流出がより一層抑制される。
このように、カバー20と工具取付部2Bの外周との間の空間91からのクーラントの流出を閉塞部90によって抑制することで、この空間91に満たされたクーラントを高圧に維持できる。そのため、空間91内の加圧状態のクーラントがダンパ(クッション)として機能し、工具取付部2Bの振動及びビビリを減衰して、加工精度の低下および工具Tの摩耗を防止できる。なお、カバー20と工具取付部2Bの外周との間の空間91に満たされたクーラントがダンパとして機能するのは、ストッパー40によって工具取付部2Bに伴うカバー20の共回りが防止されており、工具取付部2Bから独立してカバー20が静止しているからである。
本発明者が行った実験によれば、閉塞部90を設けてエンドミルによる切削加工を行った場合、閉塞部90を設けずに同一のエンドミルによる切削加工を行う場合に比べて、主軸負荷(%)を大幅に軽減できることが明らかになった。例えば、工具径が5mmの粗挽き用のエンドミル(パワーミル)について、閉塞部90の有無が主軸負荷(%)に及ぼす影響を調査したところ、閉塞部90を設けない場合の主軸負荷が約5%であったのに対し、閉塞部90を設けた場合の主軸負荷は約3%であった。この実験結果から、閉塞部90の採用により、工具取付部2Bの振動及びビビリを減衰できることが分かった。
また、閉塞部90を設けることで、異物の空間91内への侵入を防止できる。したがって、ベアリング30の機能が異物によって妨げられるといった事態を防止できる。
さらに、工具ホルダ100では、次に説明するように、ベアリング30の封入手法を第1実施形態の工具ホルダ1とは異ならせている。すなわち、工具ホルダ100では、塞ぎボルト37に替えて、雄ねじを有さない塞ぎピース37’を用いる点で第1実施形態と異なる。
工具ホルダ100においてベアリング30の封入を行う手順は次のとおりである。最初に、アウターレース34のベアリング入口穴33に塞ぎピース37’を挿入した状態で、塞ぎピース37’も含めたアウターレース34の内周側にR溝35を形成する。この後、塞ぎピース37’を取り外し、アウターレース34をインナーレース32に取り付けて、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35にベアリング入口穴33からベアリング30を投入する。そして、R溝35が形成された塞ぎピース37’によってベアリング入口穴33を塞ぐ。最後に、塞ぎピース37’をセットスクリュー102でアウターレース34に固定する。これにより、ベアリング30が、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35に封入される。
なお、図10(a)には上下2列のベアリング30のうち、上側列のベアリング30に対してのみ塞ぎピース37’及びセットスクリュー102を示しているが、下側列のベアリング30に対しても同様に塞ぎピース37’及びセットスクリュー102が設けられている。
上述のように塞ぎピース37’をセットスクリュー102で固定するのは、塞ぎピース37’を位置決めして、塞ぎピース37’のR溝35が形成する軌道面を、塞ぎピース37’以外のアウターレース34のR溝35が形成する軌道面に一致させるためである。
第1実施形態のように、塞ぎボルト37を用いてベアリング30を封入する場合、塞ぎボルト37のR溝35が形成する軌道面と、アウターレース34のR溝35が形成する軌道面とを一致させるのは困難である。そこで、塞ぎボルト37に替えて、雄ねじを有さない塞ぎピース37’によりベアリング入口穴33を塞ぐとともに、塞ぎピース37’をセットスクリュー102で位置決めすることで、塞ぎピース37’のR溝35が形成する軌道面とアウターレース34のR溝35が形成する軌道面とを容易に一致させることができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
例えば、第1実施形態で説明した内容と、第2実施形態で説明した内容とを適宜組み合わせてもよい。
1 工具ホルダ
2 ミーリングチャック本体
2A シャンク部
2B 工具取付部
3 プルスタッド
4 挿入口
5 先端面
6 コレット
7 スリット
8 締付ボルト
10 締付ナット
11 締付ナット固定ボルト
12 ねじ部
14 締付ボルト六角部
16 第1流路
18 第2流路
20 カバー
21 貫通穴
22 筒状壁
23 噴出口
24 底面
26 回転止めリング
27 凹部
28 壁面
29 セットスクリュー
30 ベアリング
32 インナーレース
33 ベアリング入口穴
34 アウターレース
35 R溝
36 隙間
37 塞ぎボルト
37’ 塞ぎピース
38 ねじ部
40 ストッパー
42 回転止めピン
44 スプリング
46 ピストンロッド
48 エアシリンダ
50 第3流路
52 連通孔
53 上面溝
54 貫通孔
60 円形部
62 長穴部
63 C面
70 整流部材(圧力コントローラ)
71 後端面
72 突起部
74A 貫通孔
74B 貫通孔
76 出口部
78 ねじ部
80 羽根部
81 延長部
82 凹部
82A 側壁面
82B 上壁面
82C 傾斜面
84 突出部
90 閉塞部
91 空間
92 内向きフランジ
94 リング部材
96 微小隙間
98 微小隙間
100 工具ホルダ
102 セットスクリュー
S 主軸
T 工具

Claims (18)

  1. 工作機械の主軸に工具を装着するための工具ホルダであって、
    一端に設けられ、前記主軸に把持されるシャンク部と、
    他端に設けられ、前記工具が挿入される挿入口を先端面に有する工具取付部と、
    前記工具取付部の外周を覆う筒状壁、および、前記工具取付部の前記先端面を覆う底面を有するカバーと、
    前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられたベアリングと、
    前記工具取付部に伴う前記カバーの共回りを防止するストッパーとを備え、
    前記カバーの前記底面には、前記工具が貫通する貫通穴と、該貫通穴の周囲に配置され、前記工具に向けてクーラントを噴射する噴出口とが設けられることを特徴とする工具ホルダ。
  2. 前記ベアリングは、前記クーラントの一部により潤滑され、冷却されることを特徴とする請求項1に記載の工具ホルダ。
  3. 前記シャンク部および前記工具取付部の内部に前記主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路が設けられ、該第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間にクーラントが導かれ、
    前記第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間に導かれたクーラントを前記ベアリングに向けて流す第2流路が、前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられ、
    前記ベアリングは、前記第2流路を介して供給されるクーラントによって潤滑され、冷却されることを特徴とする請求項2に記載の工具ホルダ。
  4. 前記カバーの径方向外方に延びる連通孔と、該連通孔から外部に通じる排出孔とを含み、前記ベアリングを潤滑及び冷却した後のクーラントを排出する第3流路を前記カバーの内部に形成したことを特徴とする請求項3に記載の工具ホルダ。
  5. 前記カバーの外周に凹部が設けられており、
    前記ストッパーは、前記凹部と係合して前記カバーの共回りを防止する回転止めピンを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  6. 前記回転止めピンが前記凹部に係合した状態における、前記凹部と前記回転止めピンとのカバー周方向の間隙は0.1mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の工具ホルダ。
  7. 前記凹部が設けられた箇所における前記カバーの外径は、前記工具取付部の直径によらず略一定であることを特徴とする請求項5又は6に記載の工具ホルダ。
  8. 複数の前記凹部が前記カバーの全周に亘って設けられており、
    前記ストッパーは、前記回転止めピンを移動させるアクチュエータと、該アクチュエータと前記回転止めピンとの間に設けられたスプリングとをさらに含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  9. 前記ストッパーは、前記アクチュエータの駆動力によって、工具軸心方向に対して斜め方向に進退するロッドをさらに含み、
    前記回転止めピンは、前記スプリングを介して前記ロッドに支持されていることを特徴とする請求項8に記載の工具ホルダ。
  10. 前記シャンク部および前記工具取付部の内部に前記主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路が設けられ、該第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間にクーラントが導かれ、
    前記第1流路内の前記工具の後端面の上流側に、前記クーラントが前記工具の前記後端面の周縁と前記第1流路を形成する前記工具取付部の内壁面との間の隙間に向かって流れるように前記クーラントを整流する整流部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  11. 前記整流部材は、前記第1流路の断面積を減少させて前記クーラントの圧力を上昇させることを特徴とする請求項10に記載の工具ホルダ。
  12. 前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられて、前記クーラントを前記工具取付部の前記先端面に向けて押し出す羽根部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  13. 前記工具取付部の外周に固定された前記ベアリングのインナーレースは、前記ベアリングのアウターレースによって覆われない延長部を、前記工具取付部の前記先端面側に有し、
    前記羽根部は、前記インナーレースの前記延長部に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の工具ホルダ。
  14. 前記カバーと前記工具取付部との間の空間が加圧状態の前記クーラントで満たされるように、前記空間からの前記クーラントの流出を抑制する閉塞部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  15. 前記噴出口は前記底面の貫通穴の周囲に複数設けられており、それぞれの噴出口の工具軸心方向に対する傾斜角が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  16. 前記噴出口は、円形部と、該円形部の直径よりも小さな幅を有し、前記貫通穴から離れる方向に前記円形部から延在する長穴部とを繋げた形状であり、
    前記長穴部の工具中心方向に対する傾斜角は、前記円形部の工具中心方向に対する傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  17. 前記カバーは、少なくとも前記底面が着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
  18. 請求項1乃至17のいずれか一項の工具ホルダを備える工作機械。
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