JPWO2012101929A1 - 工具ホルダ及び工作機械 - Google Patents
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Abstract
Description
ところが、刃物スルー方式は、工具先端で給油孔を開口させるため、フェースミルやエンドミルのように工具外周面の刃部で被加工物を切削する工具では、刃部の潤滑と冷却を効率的に行うことができない。また、工具内部に給油孔を設ける必要があるため、工具が高価になってしまう。さらに、工具が小径である場合、工具内部に給油孔を形成すること自体が非常に困難である。
例えば、特許文献3には、スキマスルー方式に対応した工具ホルダが記載されている。この工具ホルダでは、内周側に螺旋溝が形成されたスキマナットが先端に取り付けられており、スキマナットと工具外周との間の隙間から切削油が噴射される。これにより、スキマナットの螺旋溝を通って噴射された切削油が、工具の逃げ面に沿って効率的に加工部分に供給される。
また特許文献4に記載のドライブスピンドルは、トラクション伝動機構及び主軸軸受を冷却するための冷却装置が設けられている。この冷却装置は、トラクション伝動機構の外周及び主軸の軸受の外周に設けられた冷却ジャケットと、伝動軸体の外周箇所からトラクション伝動機構の冷却ジャケットを経て主軸の軸受の冷却ジャケットに至る冷却媒体通路とを有する。冷却媒体通路に流入した冷却媒体は、トラクション伝動機構の冷却ジャケットと、主軸軸受の冷却ジャケットを通過した後、主軸軸受の外輪を押圧するベアリング押え板に形成された吹き出し口から噴出されるようになっている。
また、引用文献4に記載のドライブスピンドルでは、トラクション伝達機構内における遊星ローラから太陽ローラへの回転の伝達を可能にするために、遊星ローラの外周に設けられるハウジングの共回りを防止する必要がある。仮に、ハウジングの共回りが防止されていなければ、遊星ローラの公転とともにハウジングが回転してしまい、遊星ローラが太陽ローラの周囲を公転する際に太陽ローラにトルクが伝達されず、太陽ローラが回転することはない。そのため、特許文献4に記載のドライブスピンドルでは、ハウジングの上面に回り止めピンを挿入して、ハウジングの共回りを防止している。つまり、特許文献4においてハウジングの共回りを防止しているのは、トラクション伝達機構内における遊星ローラから太陽ローラへの回転の伝達を可能にするためであって、ベアリング押え板に形成された吹き出し口から噴出される冷却媒体に及ぼされる遠心力の影響を低減するためではない。
このように、特許文献4は、工作機械のスピンドルと、先端に工具が取り付けられる主軸との間にトラクション伝達機構を設けた場合に限って、このトラクション伝達機構の本来の役割を実現するためにハウジングの共回りを防止することを示唆している。したがって、加工部分に近い位置から切削油を噴射するとともに、遠心力の影響を受けずに切削油を所望位置に供給するための解決策は特許文献4には何ら記載されていない。
ここで、クーラントは、水溶性又は非水溶性の切削油であってもよいし、ミスト(気体中に含まれる液体微粒子)であってもよいし、エアーであってもよい。
また、カバーの底面に設けた噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、従来の刃物スルー方式とは異なり、工具内部に給油孔を設ける必要がない。
さらに、カバーの底面に工具が貫通する貫通穴を設け、この貫通穴の周囲に配置された噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、噴出口の位置を加工部分に近づけることができる。したがって、クーラントを精度良く加工部分に供給することができる。
また、第2流路を介してベアリングにクーラントを供給することで、ベアリングの潤滑及び冷却が可能になり、ベアリングの焼き付きを防止できる。これにより、工具を高速回転させる場合であっても、ベアリングの焼き付きを起こすことなく、安定した機械加工を行うことができる。実際、本発明者は、第2流路を介してベアリングに水溶性切削油を供給することで、工具回転数が20000rpm程度の条件下でもベアリングの焼き付きが起こらないことを確認している。
また、回転止めピンの過剰なストロークをスプリングが縮むことで吸収できるので、カバーのサイズによらず、アクチュエータによる回転止めピンの移動量を共通に設定することができる。
特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、工具後端面との衝突によってクーラント(エアー)の流れは著しく勢いが落ちてしまう。そのため、上述した整流部材を設けることによって、クーラント(エアー)の流れの勢いを維持しうることは非常に有益である。
また、整流部材によって第1流路内を流れるクーラントの圧力を上昇させることで、高圧のクーラントを噴出口から勢いよく噴射させることができる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、工具の冷却に必要な量のクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、整流部材によるクーラントの圧力上昇によって、高圧のクーラントを噴出口から勢いよく噴射しうることは非常に有益である。
また、ドリルやタップを用いた機械加工では、被加工物に形成された穴の内部の加工部分に直接切削油を供給することができないため、被加工物の表面の穴周縁と工具との間の隙間に向けてクーラントを噴射し、該隙間を介して穴の内部にクーラントを供給する必要がある。ところが、工具がドリルやタップである場合、加工の進捗に伴い、工具ホルダが被加工物に徐々に接近するので、クーラントの被加工物への着弾位置は一定ではない。この点、工具軸心方向に対する傾斜角が異なる複数の噴出口を設ければ、いずれかの噴出口から噴射されたクーラントを常に被加工物の表面の穴周縁と工具との間の隙間に到達させることができる。よって、該隙間を介して穴内部にクーラントを常に供給して、穴内部の加工部分を冷却するとともに、切り屑(キリコ)の排出を促進することができる。
また、カバーの底面に設けた噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、従来の刃物スルー方式とは異なり、工具内部に給油孔を設ける必要がない。
さらに、カバーの底面に工具が貫通する貫通穴を設け、この貫通穴の周囲に配置された噴出口からクーラントを噴射するようにしたので、噴出口の位置を加工部分に近づけることができる。したがって、クーラントを精度良く加工部分に供給することができる。
図1は第1実施形態に係る工具ホルダの構成例を示す図であり、図1(a)は工具ホルダ全体の断面図、図1(b)はベアリングを封入するための詳細構造を示す図である。図2は、図1(a)のA−A断面図である。図3は、切削油を噴射する噴出口の配置例を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のB−B断面図、図3(c)は図3(a)のC−C断面図、図3(d)は図3(a)のD−D断面図である。
なお、シャンク部2Aは、BTシャンク以外にも、HSKシャンク、KMシャンク、NTシャンク等の任意の形状のものを用いることができる。
一方、工具Tをミーリングチャック本体2から取り外す場合、締付ボルト六角部14を逆方向に回転させる。これにより、締付ボルト8とともにコレット6が主軸Sとは反対側に移動し、コレット6が拡径して、工具Tの把持が解除される。
このように工具軸心方向に対する傾斜角αが異なる複数の噴出口23(23−1,23−2,・・・,23−6)を設けることで、切削油Cを複数方向に噴射して、広範囲に亘る切削油Cの供給が可能になる。このため、被加工物に遮られて切削油Cを加工部分に供給しづらい場合であっても、いずれかの噴出口23から噴射された切削油Cを加工部分に到達させることができる。
なお、各噴出口23の傾斜角αは工具Tの長さに応じて調節することが好ましく、長さが異なる複数種の工具Tを取り扱う場合には各工具Tの長さに見合った傾斜角αの噴出口23を有するカバー20を予め用意しておくことが好ましい。
底面24の噴出口23の位置や、直径や、工具軸心方向に対する傾斜角は、工具Tの寸法(特に工具Tの長さ)、工具Tの種類、加工条件等に応じて変えることが望ましい。よって、少なくとも底面24を着脱自在に構成することで、底面24を含むこの部分の交換により、各工具Tに相応しい噴出口23を有する底面24(及び筒状壁22の一部)を用いて、加工部分に向けて切削油Cをより効果的に供給することができる。
このように主軸S側から供給される切削油Cが流れる第1流路16をシャンク部2A及び工具取付部2Bの内部に設けることで、工具ホルダ1を主軸Sに装着するだけで、主軸Sから噴出口23に至るまでの切削油Cの流路が繋がる。よって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダ1の自動交換にも容易に対応できる。
ベアリング30の封入は次のようにして行う。最初に、アウターレース34のベアリング入口穴33に塞ぎボルト37を螺着した状態で、アウターレース34の内周側にR溝35を形成する。この後、塞ぎボルト37を取り外し、アウターレース34をインナーレース32に取り付けて、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35にベアリング入口穴33からベアリング30を投入する。そして、R溝35が先端に形成された塞ぎボルト37によってベアリング入口穴33を塞ぐ。これにより、ベアリング30が、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35に封入される。なお、塞ぎボルト37の雄ねじ及びこれに螺合するベアリング入口穴33の雌ねじは、塞ぎボルト37の基端側及びアウターレース34の外周側だけに設けられ、塞ぎボルト37のベアリング入口穴33へのねじ込み時に塞ぎボルト37の位置が規制されるようになっているので、ベアリング30と塞ぎボルト37のR溝35との間隙を高精度に調節できる。
これにより、工具Tを高速回転させる場合であっても、ベアリング30の焼き付きを起こすことなく、安定した機械加工を行うことができる。実際、本発明者は、第2流路18を介してベアリング30に水溶性の切削油Cを供給することで、工具回転数が20000rpm程度の条件下でもベアリング30の焼き付きが起こらないことを確認している。
同図に示すように、インナーレース32とアウターレース34との間には、全周に亘って隙間36(36A,36B,36C)が設けられている。そして、筒状壁22と工具取付部2Bの外周との間の第2流路18を通過した切削油が隙間36(36A,36B,36C)を流れる途中で、ベアリング30の冷却及び潤滑が行われる。ベアリング30を冷却及び潤滑した後の切削油は、図4の矢印で示したように、第3流路50によって排出される。第3流路50は、ベアリング30が封入されたR溝から径方向外方に切削油を流す連通孔52と、隙間36Cを通過してアウターレース34の上面に達した切削油を径方向外方に流す上面溝53と、連通孔52及び上面溝53からの切削油を合流させて下方に排出する貫通孔54とからなる。
このように、第3流路50を設けて、ベアリング30の冷却及び潤滑を行った後の切削油Cの排出を促進することで、ベアリング30の周囲の切削油Cのよどみを防止し、常に新鮮な切削油Cをベアリング30に供給して、冷却及び潤滑を効率的に行える。また、ベアリング30から第3流路50を介して外部に向かう切削油Cの緩やかな流れが形成されるので、ベアリング30の回転に伴う外部からの気泡の混入を防止するとともに、何らかの原因で異物が切削油に混入してもこれを外部に確実に排出してベアリング30の機能を妨げることがない。
なお、連通孔52、上面溝53及び貫通孔54の幅(又は直径)は、1列目のベアリング30の直前の流路である隙間36Aの幅(すなわち、第3流路50の入口側の流路幅)よりも大きいことが好ましい。これにより、ベアリング30を冷却及び潤滑した後の切削油の排出を促進し、ベアリング30の周囲の切削油のよどみを防止し、常に新鮮な切削油をベアリング30に供給して、冷却及び潤滑をより効率的に行える。例えば、連通孔52の直径を0.3mm程度とし、上面溝53及び貫通孔54の幅(直径)を0.5mm程度にしてもよい。
アウターレース34を回転止めリング26とは別体とすることで、万が一、アウターレース34又は回転止めリング26が故障又は破損しても、故障又は破損した部品のみを選択的に交換することができる。
連通孔52、上面溝53及び貫通孔54からなる第3流路50は周方向に複数(例えば60度おきに6箇所)設けられる。ベアリング30を案内するR溝35に連通する連通孔52は、アウターレース34の外周側からの穴あけ加工で容易に形成できる。また、上面溝53及び貫通孔54は、アウターレース34の上面又は外周面への切削加工により容易に形成できる。よって、一体的に設けられたアウターレース34及び回転止めリング26に対して第3流路50を形成する場合に比べて、第3流路50の機械加工が容易であり、製作コストを低減できる。
エアシリンダ48の駆動力によってピストンロッド46がその長手方向に移動して、回転止めピン42が回転止めリング26の凹部27に挿し込まれることで、回転止めリング26が係止される。なお、ピストンロッド46は、その長手方向が工具Tの軸心方向に対して斜めになるように回転止めリング26よりも上方に配置されているので、ピストンロッド46及びエアシリンダ48が被加工物と干渉することを防止できる。
図6に示すように、回転止めリング26の外周には、多数の凹部27が回転止めリング26の全周に亘って設けられている。そして、回転止めリング26の周方向における凹部27の幅W(図7参照)は、内周側に比べて外周側が広くなっており、回転止めピン42を凹部27に挿し込みやすくなっている。また、回転止めピン42の基端側にはスプリング44が設けられているから、回転止めリング26の外周に押し付けられた回転止めピン42が凹部27の位置と多少ずれていても、スプリング44がたわんで回転止めピン42が凹部27に入り込む。しかも、回転止めピン42の先端は、球形状であるから、回転止めリング26の外表面に引っかからずにスムーズに凹部27に入り込む。したがって、ATC(自動工具交換装置)による工具ホルダ1の自動交換にも容易に対応できる。
このように係合状態における回転止めリング26の凹部27と回転止めピン42との周方向の間隙を0.1mm以上にすることで、回転止めピン42を凹部27に容易に挿し込める。一方、同間隙を0.5mm以下にすることで、タップ等の工具を逆回転させる際に回転止めリング26が回転してしまうことによって、噴出口23から噴出される切削油Cが遠心力の影響を受けたり、回転止めピン42と凹部27の壁面28との衝突に起因して衝撃が発生したりすることを抑制できる。
図8は回転止めリング26の外径とエアシリンダ48のストロークとの関係を説明するための図であり、図8(a)は工具取付部2Bが小径の場合を示し、図8(b)は工具取付部2Bが大径の場合を示している。
図8(a)及び(b)に示すように、工具取付部2Bの直径が異なる場合であっても、回転止めリング26の外径Dを略一定にすることで、同一のストロークLで回転止めピン42を移動させて回転止めリング26の凹部27と係合させることが可能になる。したがって、ATC(自動工具交換装置)によって工具ホルダ1を自動交換する場合であっても、工具ホルダ1毎にエアシリンダ48のストロークを変更する必要がないから、ATCによる工具ホルダ1の自動交換に容易に対応できる。
また、カバー20の底面24に設けた噴出口23から切削油Cを噴射するようにしたので、従来の刃物スルー方式とは異なり、工具Tの内部に給油孔を設ける必要がない。
さらに、カバー20の底面24に工具Tが貫通する貫通穴21を設け、この貫通穴21の周囲に配置された噴出口23から切削油を噴射するようにしたので、噴出口23の位置を加工部分に近づけることができる。したがって、切削油を精度良く加工部分に供給することができる。
エアシリンダ48のストロークは、ATC(自動工具交換装置)で用いる工具ホルダのうち工具取付部2Bの直径が最も小さいもの(すなわち、外径が最も小さい回転止めリング26を有する工具ホルダ)に合わせて設定する。すなわち、外径が最も小さい回転止めリング26の凹部27に回転止めピン42が到達しうるように、エアシリンダ48のストロークを設定する。このストローク設定値は、ATC(自動工具交換装置)で用いる全ての工具ホルダで共通に使用する。工具取付部2Bの直径が最も大きい工具ホルダの場合には、エアシリンダ48が回転止めピン42を上記ストローク設定値だけ動かそうとしたときに、スプリング44が縮んで余分なストロークを吸収する。このとき、スプリング44が縮んでも、過剰な弾性力によって回転止めピン42と回転止めリング26の凹部27との係合が阻害されないように、スプリング44の自然長及び/又はばね定数を調節することが好ましい。
また、この場合、回転止めピン42と回転止めリング26の凹部27との接触時の衝撃を緩和する観点から、エアシリンダ48によるピストンロッド46の押出し速度が押出し動作中に段階的に小さくなるように構成してもよい。例えば、工具取付部2Bの直径が最も大きい工具ホルダの場合に回転止めピン42が凹部27に接触するストロークをL0としたとき、任意の閾値Lth(<L0)を境にピストンロッド46の押出し速度を変化させてもよい。すなわち、0<L<Lthのストローク範囲ではピストンロッド46の押出し速度を大きくし、Lth≦Lのストローク範囲ではピストンロッド46の押出し速度を小さくしてもよい。これにより、工具取付部2Bの直径が最も大きい工具ホルダの場合であっても、回転止めピン42が凹部27に接触する前(すなわち、ストロークが閾値Lthに達した時)にピストンロッド46の押出し速度が小さくなり、回転止めピン42と回転止めリング26の凹部27との接触時の衝撃が緩和される。
図9は他の形状例の噴射口23を有するカバー20を示す図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のH−H断面図である。図9(a)及び(b)に示すように、円形部60と、工具Tが貫通する貫通穴21から離れる方向に円形部60から延在する長穴部62とを繋げた形状の噴出口23を用いてもよい。長穴部62の幅W2は、円形部60の直径D2よりも小さい。また、長穴部62の工具中心方向に対する傾斜角γ1,γ2は、円形部60の工具中心方向に対する傾斜角β1,β2よりも大きい。なお、カバー20の底面24に複数の噴出口23を設けて、各噴出口23の円形部60及び長穴部62の工具中心方向に対する傾斜角を互いに異ならせてもよい。
このように、円形部60及び長穴部62からなる噴出口23を用いることで、円形部60から噴出された後に工具Tに比較的沿って垂れ落ちていく切削油の噴流を、長穴部62から噴出された切削油の噴流によって工具T側に押し付けることで、広範囲にわたって切削油を工具Tに供給できる。よって、噴出口23の数を少なくすることができ、全噴射口23の総開口面積を低減して、噴出口23から噴射される切削油の圧力低下を抑制できる。
また、本実施形態では、噴出口23から切削油を噴出する例について説明したが、切削油に替えてミストやエアー等の他のクーラントを用いてもよい。
また、本実施形態では、ベアリング30としてインナーレース32とアウターレース34との間に玉を封入したボールベアリングを例に挙げたが、工具取付部2Bの外周面に回転止めリング26を相対的に回転自在に支持しうる軸受であれば特に限定されず、任意の構成のものを用いることができる。
さらに、本実施形態では、回転止めピン42を移動させるためにエアシリンダ48を用いる例について説明したが、エアシリンダ48に替えて、油圧シリンダやモータ等の任意のアクチュエータを用いることができる。
次に、第2実施形態に係る工具ホルダについて説明する。以下、第1実施形態の工具ホルダ1と共通する箇所には同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態の工具ホルダ1と異なる点を中心に本実施形態の工具ホルダについて説明する。
図10は第2実施形態に係る工具ホルダの構成例を示す図であり、図10(a)は本実施形態の工具ホルダの概要を示す断面図であり、図10(b)は図10(a)のI部の拡大図である。図11は工具ホルダの第1流路16内に設けられる整流部材の構成例を示す図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のJ−J断面図である。図12は工具ホルダのカバー20と工具取付部2Bの外周との間に設けられる羽根部の構成例を示す斜視図である。
このように、整流部材70を第1流路16の工具Tの後端面71の上流側に設けることで、第1流路16内を流れるクーラントが整流されて、工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面との間の上記隙間に導かれる。そのため、クーラントが工具Tの後端面71に直接衝突することなく、工具Tの後端面71の周縁と工具取付部2Bの内壁面との間の上記隙間をスムーズに通過できる。したがって、工具Tの後端面71へのクーラントの衝突に起因して、クーラントの流れの勢いが失われることを防止できる。
特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、工具Tの後端面71との衝突によってクーラント(エアー)の流れは著しく勢いが落ちてしまう。そのため、上述した整流部材70を設けることによって、クーラント(エアー)の流れの勢いを維持しうることは非常に有益である。
また、整流部材70によって第1流路16内を流れるクーラントの圧力を上昇させることで、高圧のクーラントを噴出口23から勢いよく噴射させることができる。特に、クーラントとしてエアーを用いる場合、他の種類のクーラントに比べて、工具Tの冷却に必要な量のクーラント(エアー)を供給するのが容易ではないため、整流部材70によるクーラントの圧力上昇によって、高圧のクーラントを噴出口23から勢いよく噴射しうることは非常に有益である。
また、工具Tによる加工中、羽根部80は工具取付部2Bとともに回転するから、羽根部80を駆動するための動力源を別途設ける必要がない。さらに、羽根部80をインナーレース32の延長部81に設けたので、羽根部80の採用に伴う部品点数の増加を抑制できる。
また、内向きフランジ92の先端面と工具取付部2Bの外周との間には微小隙間96が形成され、リング部材94の下面と内向きフランジ92の上面との間には微小隙間98が形成されている。このように微小隙間96,98を設けるのは、工具取付部2B及びこれに取り付けられたリング部材94が回転止めリング26に接触しないようにして、両者の相対的な回転を可能にするためである。
また、内向きフランジ92の先端面と工具取付部2Bの外周との間の微小隙間96と、リング部材94の下面と内向きフランジ92の上面との間の微小間隙98とで形成される流路は屈曲しているため、空間91内からのクーラントの流出がより一層抑制される。
本発明者が行った実験によれば、閉塞部90を設けてエンドミルによる切削加工を行った場合、閉塞部90を設けずに同一のエンドミルによる切削加工を行う場合に比べて、主軸負荷(%)を大幅に軽減できることが明らかになった。例えば、工具径が5mmの粗挽き用のエンドミル(パワーミル)について、閉塞部90の有無が主軸負荷(%)に及ぼす影響を調査したところ、閉塞部90を設けない場合の主軸負荷が約5%であったのに対し、閉塞部90を設けた場合の主軸負荷は約3%であった。この実験結果から、閉塞部90の採用により、工具取付部2Bの振動及びビビリを減衰できることが分かった。
工具ホルダ100においてベアリング30の封入を行う手順は次のとおりである。最初に、アウターレース34のベアリング入口穴33に塞ぎピース37’を挿入した状態で、塞ぎピース37’も含めたアウターレース34の内周側にR溝35を形成する。この後、塞ぎピース37’を取り外し、アウターレース34をインナーレース32に取り付けて、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35にベアリング入口穴33からベアリング30を投入する。そして、R溝35が形成された塞ぎピース37’によってベアリング入口穴33を塞ぐ。最後に、塞ぎピース37’をセットスクリュー102でアウターレース34に固定する。これにより、ベアリング30が、インナーレース32とアウターレース34との間のR溝35に封入される。
なお、図10(a)には上下2列のベアリング30のうち、上側列のベアリング30に対してのみ塞ぎピース37’及びセットスクリュー102を示しているが、下側列のベアリング30に対しても同様に塞ぎピース37’及びセットスクリュー102が設けられている。
第1実施形態のように、塞ぎボルト37を用いてベアリング30を封入する場合、塞ぎボルト37のR溝35が形成する軌道面と、アウターレース34のR溝35が形成する軌道面とを一致させるのは困難である。そこで、塞ぎボルト37に替えて、雄ねじを有さない塞ぎピース37’によりベアリング入口穴33を塞ぐとともに、塞ぎピース37’をセットスクリュー102で位置決めすることで、塞ぎピース37’のR溝35が形成する軌道面とアウターレース34のR溝35が形成する軌道面とを容易に一致させることができる。
例えば、第1実施形態で説明した内容と、第2実施形態で説明した内容とを適宜組み合わせてもよい。
2 ミーリングチャック本体
2A シャンク部
2B 工具取付部
3 プルスタッド
4 挿入口
5 先端面
6 コレット
7 スリット
8 締付ボルト
10 締付ナット
11 締付ナット固定ボルト
12 ねじ部
14 締付ボルト六角部
16 第1流路
18 第2流路
20 カバー
21 貫通穴
22 筒状壁
23 噴出口
24 底面
26 回転止めリング
27 凹部
28 壁面
29 セットスクリュー
30 ベアリング
32 インナーレース
33 ベアリング入口穴
34 アウターレース
35 R溝
36 隙間
37 塞ぎボルト
37’ 塞ぎピース
38 ねじ部
40 ストッパー
42 回転止めピン
44 スプリング
46 ピストンロッド
48 エアシリンダ
50 第3流路
52 連通孔
53 上面溝
54 貫通孔
60 円形部
62 長穴部
63 C面
70 整流部材(圧力コントローラ)
71 後端面
72 突起部
74A 貫通孔
74B 貫通孔
76 出口部
78 ねじ部
80 羽根部
81 延長部
82 凹部
82A 側壁面
82B 上壁面
82C 傾斜面
84 突出部
90 閉塞部
91 空間
92 内向きフランジ
94 リング部材
96 微小隙間
98 微小隙間
100 工具ホルダ
102 セットスクリュー
S 主軸
T 工具
Claims (18)
- 工作機械の主軸に工具を装着するための工具ホルダであって、
一端に設けられ、前記主軸に把持されるシャンク部と、
他端に設けられ、前記工具が挿入される挿入口を先端面に有する工具取付部と、
前記工具取付部の外周を覆う筒状壁、および、前記工具取付部の前記先端面を覆う底面を有するカバーと、
前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられたベアリングと、
前記工具取付部に伴う前記カバーの共回りを防止するストッパーとを備え、
前記カバーの前記底面には、前記工具が貫通する貫通穴と、該貫通穴の周囲に配置され、前記工具に向けてクーラントを噴射する噴出口とが設けられることを特徴とする工具ホルダ。 - 前記ベアリングは、前記クーラントの一部により潤滑され、冷却されることを特徴とする請求項1に記載の工具ホルダ。
- 前記シャンク部および前記工具取付部の内部に前記主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路が設けられ、該第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間にクーラントが導かれ、
前記第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間に導かれたクーラントを前記ベアリングに向けて流す第2流路が、前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられ、
前記ベアリングは、前記第2流路を介して供給されるクーラントによって潤滑され、冷却されることを特徴とする請求項2に記載の工具ホルダ。 - 前記カバーの径方向外方に延びる連通孔と、該連通孔から外部に通じる排出孔とを含み、前記ベアリングを潤滑及び冷却した後のクーラントを排出する第3流路を前記カバーの内部に形成したことを特徴とする請求項3に記載の工具ホルダ。
- 前記カバーの外周に凹部が設けられており、
前記ストッパーは、前記凹部と係合して前記カバーの共回りを防止する回転止めピンを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の工具ホルダ。 - 前記回転止めピンが前記凹部に係合した状態における、前記凹部と前記回転止めピンとのカバー周方向の間隙は0.1mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の工具ホルダ。
- 前記凹部が設けられた箇所における前記カバーの外径は、前記工具取付部の直径によらず略一定であることを特徴とする請求項5又は6に記載の工具ホルダ。
- 複数の前記凹部が前記カバーの全周に亘って設けられており、
前記ストッパーは、前記回転止めピンを移動させるアクチュエータと、該アクチュエータと前記回転止めピンとの間に設けられたスプリングとをさらに含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の工具ホルダ。 - 前記ストッパーは、前記アクチュエータの駆動力によって、工具軸心方向に対して斜め方向に進退するロッドをさらに含み、
前記回転止めピンは、前記スプリングを介して前記ロッドに支持されていることを特徴とする請求項8に記載の工具ホルダ。 - 前記シャンク部および前記工具取付部の内部に前記主軸側から供給されるクーラントが流れる第1流路が設けられ、該第1流路を介して前記工具取付部の前記先端面と前記カバーの前記底面との間にクーラントが導かれ、
前記第1流路内の前記工具の後端面の上流側に、前記クーラントが前記工具の前記後端面の周縁と前記第1流路を形成する前記工具取付部の内壁面との間の隙間に向かって流れるように前記クーラントを整流する整流部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の工具ホルダ。 - 前記整流部材は、前記第1流路の断面積を減少させて前記クーラントの圧力を上昇させることを特徴とする請求項10に記載の工具ホルダ。
- 前記カバーの前記筒状壁と前記工具取付部との間に設けられて、前記クーラントを前記工具取付部の前記先端面に向けて押し出す羽根部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
- 前記工具取付部の外周に固定された前記ベアリングのインナーレースは、前記ベアリングのアウターレースによって覆われない延長部を、前記工具取付部の前記先端面側に有し、
前記羽根部は、前記インナーレースの前記延長部に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の工具ホルダ。 - 前記カバーと前記工具取付部との間の空間が加圧状態の前記クーラントで満たされるように、前記空間からの前記クーラントの流出を抑制する閉塞部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
- 前記噴出口は前記底面の貫通穴の周囲に複数設けられており、それぞれの噴出口の工具軸心方向に対する傾斜角が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
- 前記噴出口は、円形部と、該円形部の直径よりも小さな幅を有し、前記貫通穴から離れる方向に前記円形部から延在する長穴部とを繋げた形状であり、
前記長穴部の工具中心方向に対する傾斜角は、前記円形部の工具中心方向に対する傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の工具ホルダ。 - 前記カバーは、少なくとも前記底面が着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の工具ホルダ。
- 請求項1乃至17のいずれか一項の工具ホルダを備える工作機械。
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