この発明に係る現像ローラは、軸体の外周面に形成された弾性層と、この弾性層の外周面に形成されたコート層とを備えてなる。このコート層が後述する第1コート層と、この第1コート層の間に、好ましくは第1コート層に接触するように形成された第2コート層とを備えていると、前記したようにこの発明の目的をよく達成することができる。この発明において、高湿環境とは、その環境の相対湿度が、例えば、70〜90%である環境をいい、低湿度環境とは、その環境の相対湿度が、例えば、20%以下である環境をいい、好ましくは、この発明の目的をよく達成できる点で15%以下である。
この発明に係る現像ローラを、その一例を挙げて、説明する。この発明に係る現像ローラの一例である現像ローラ1は、図1に示されるように、軸体2と弾性層3とコート層4とを備えている。
軸体2は、従来公知の現像ローラにおける軸体と基本的に同様である。この軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
弾性層3は、従来公知の現像ローラにおける弾性層と基本的に同様である。この弾性層3は、前記軸体2の外周面に後述する導電性組成物を硬化して成り、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度(JIS K6301)を有していると、現像ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。
弾性層3は、体積抵抗率が101〜107Ω・cmの範囲にあり、及び/又は、電気抵抗率が101〜109Ωの範囲にあるのが好ましい。弾性層3の体積抵抗率及び/又は電気抵抗率が前記範囲内にあると、現像ローラ1を画像形成装置に装着しときに、現像剤を所望のように担持、供給して所望の品質を有する画像を形成することに貢献できる。前記体積抵抗率はJIS K6911に規定された方法(印加電圧を100V)に準じて測定することができる。前記電気抵抗率は、例えば、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、現像ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、現像ローラ1の弾性層3全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を現像ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定することができる。
弾性層3は、現像ローラ1が画像形成装置に装着されたときに低湿度環境下においてもかぶりのない画像を形成することに貢献できる点で、300〜1200%の伸び及び3〜25MPaの破断強度の少なくとも一方の物性を満たしているのが好ましく、両方の物性を満たしているのが特に好ましい。前記伸びは、400〜800%であるのがより一層好ましく、500〜800%であるのが特に好ましい。弾性層3が前記範囲の伸びを有していると、感光ドラム等の被当接体との押し付け代が大きくなるように現像ローラ1を画像形成装置に装着しても、前記押し付け代を通過する現像剤にダメージを与えにくくなり、低湿度環境下においてもかぶりのない画像を形成することに大きく貢献できる。前記破断強度は、10〜25MPaであるのがより一層好ましく、15〜25MPaであるのが特に好ましい。弾性層3が前記範囲の破断強度を有していると、感光ドラム等の被当接体との押し付け代が大きくなるように現像ローラ1を画像形成装置に装着しても、現像ローラ1が破壊する程の負荷が現像ローラ1にかからなくなり、低湿度環境下においてもかぶりのない画像を形成することに大きく貢献できる。前記伸び及び前記破断強度は、現像ローラ1の弾性層3から切り出した試験片(10mm×50mm×厚さ40μm)、又は、弾性層3を形成しているゴム組成物で作製した試験片(10mm×50mm×厚さ40μm)を用いて、測定温度が25±2℃、引張速度が100mm/min、試験片のつかみ具間距離が50mmの条件下でJIS K7113に記載の測定方法に準拠して測定したときの値である。弾性層3の伸び及び破断強度を前記範囲に調整するには、例えば、後述する導電性組成物における充填材又は無機質充填剤の配合量を調整する方法、後述する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物における(D)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量を調整する方法等が挙げられる。
弾性層3は、被当接体との当接状態において被当接体と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる点で、その厚さは1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのが特に好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に弾性層3の厚さを厚くしすぎると弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると弾性層3の厚さは30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
コート層4は、図1及び図2に示されるように、弾性層3の外周面であって弾性層3の軸線方向両端側それぞれに形成された第1コート層4Aと、弾性層3の外周面であって第1コート層4Aの間に形成された第2コート層4Bとを有している。このように、弾性層3の軸線方向両端側それぞれに第1コート層4Aを有していると、高温下においても第1コート層4Aに付着する現像剤の物理的付着量が大幅に低減され、物理的に付着した現像剤が現像ローラ1から脱離して漏出することを効果的に防止できる。
第1コート層4Aそれぞれは、弾性層3の軸線方向両端側の外周面に形成されている。好ましくは、第1コート層4Aそれぞれは、図2に示されるように、現像装置に装着されたときに、少なくとも現像剤シール部材25に接触する領域を超えて中央側に向かって伸びるように、具体的には、自身の中央側端部4Cが、現像剤シール部材25を超えてこの現像剤シール部材25に並設された現像剤規制部材24の内側まで到達するように、弾性層3の外周面に形成されている。換言すると、第1コート層4Aそれぞれは、現像装置に装着されたときに、現像剤シール部材25と現像剤規制部材24とに接する弾性層3の外周面に形成されている。より具体的には、現像ローラ1の軸線長さにも依存するが、A3用紙(JIS)に画像を形成する画像形成装置に装着される場合には、第1コート層4Aそれぞれは、弾性層3の各端縁から中央側に向かって5〜15mmまでの外周面に形成される。一般に現像剤シール部材25と現像剤規制部材24との境界部分に現像剤が物理的に付着して現像剤漏れを発生しやすいと推測されるが、現像ローラ1は、第1コート層4Aが前記境界部分を超えて形成されているから、現像装置に装着されても、物理的に付着しやすい前記境界付近の現像剤量を大幅に低減することができ、現像剤漏れを高度に防止できる。
第1コート層4Aは、ポリオール及びシランカップリング剤が反応してなる樹脂、フッ素樹脂粒子及び導電性付与剤を含有し、後述するイオン液体を実質的に無含有である。ここで、この発明において「イオン液体を実質的に無含有」とは第1コート層4Aにイオン液体が積極的に含有されていないことを意味し、イオン液体が完全に存在しない場合に加えて、イオン液体が奏する効果を発揮しない含有量で含有されている場合をも含む概念である。イオン液体が奏する効果を発揮しない含有量で含有される場合として、例えば、第2コート層4Bのイオン液体が第1コート層4Aに侵入して第1コート層4A内に留まる場合が挙げられる。なお、イオン液体が奏する効果を発揮しない含有量は、例えば、ポリオール及びシランカップリング剤が反応してなる樹脂100質量部に対して0.1質量部以下である。
ポリオール及びシランカップリング剤が反応してなる樹脂(以下、単に樹脂と称することがある。)は第1コート層4Aに主成分として、例えば、第1コート層4Aの全質量に対して50質量部%以上の割合で含有されている。第1コート層4Aに主成分すなわちベースポリマーとしてこの樹脂が含有されていると、弾性層3の変形等に対する追従性が向上して第1コート層4Aがひび割れ又は剥離しにくくなることがある。この樹脂は、ポリオールとシランカップリング剤とが反応してなる樹脂であればよい。ポリオールは、各種のポリオールが挙げられるが、ウレタン樹脂を構成するポリオールと基本的に同様であるのが好ましく、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールであるのがより一層好ましい。
シランカップリング剤は、ポリオールの水酸基と反応する置換基、例えば、エポキシ基、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基を含む有機基とアルコキシ基とを有していればよく、例えば、γ−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤、ビニル基を有するシランカップリング剤、γ−メタクリロキシプロピル基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。このようなシランカップリング剤として、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記樹脂は、ポリオールの水酸基とシランカップリング剤の置換基とが反応して得られる樹脂である。ポリオールとシランカップリング剤との反応は、例えば、温度120℃〜160℃で実施することができる。
フッ素樹脂粒子はフッ素樹脂で形成される粒子である。この粒子を形成するフッ素樹脂は特に限定されず、通常用いられるフッ素樹脂、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂)、PVdF(ポリフッ化ビニリデン樹脂)、PVF(ポリフッ化ビニル)等が挙げられる。第1コート層4Aにフッ素樹脂粒子が含有されていると、耐久性が高いことに加えて、フッ素樹脂の小さな摩擦力及び高い滑り性によって現像剤の物理的吸着量を低減できるうえ、現像剤の静電吸着量を増大できるから、そもそも現像装置外で脱離する現像剤を少なくすることができ、さらに、現像剤を均一に帯電させて静電的に強固に吸着保持することができ、その結果、常温環境下はもとより高湿環境下においても現像装置外に現像剤が漏出することを防止できる。第1コート層4Aに含有されるフッ素樹脂粒子の粒径は、第1コート層4A内に均一に分散できる点で、0.1〜2μmであるのが好ましく、0.1〜1.5μmであるのが特に好ましい。前記粒径の測定方法は光散乱法である。フッ素樹脂粒子は、第1コート層4Aが潤滑性と柔軟性とを高い水準で両立できうえ、現像装置外に現像剤が漏出することを効果的に防止できる点で、樹脂100質量部に対して10〜50質量部含有されているのが好ましく、10〜47質量部含有されているのがより一層好ましく、23〜47質量部含有されているのが特に好ましい。
この発明においては、現像剤を効果的に静電吸着することにより高湿環境においても現像剤の漏れを効果的に防止できる点で、現像装置に収容される現像剤の帯電性と逆の帯電性を有するフッ素樹脂であるのが好ましい。例えば、現像装置に収容される現像剤がプラスに帯電するプラス帯電現像剤である場合には、フッ素樹脂はマイナスに帯電するマイナス帯電フッ素樹脂であるのが好ましい。このように、第1コート層4Aが現像剤の帯電性と逆の帯電性を有するフッ素樹脂で形成されていると、高湿度環境下においても現像剤の漏れを効果的に防止できる。その理由として、発明者らは、現像ローラ1に静電引力で吸着した現像剤が高湿度環境で自身の電荷が放出されて現像ローラ1から脱離しやすくなることがあるが、第1コート層4Aが現像剤の帯電性と逆の帯電性を有するフッ素樹脂で形成されているとフッ素樹脂が現像剤の電荷を補い静電引力による強固な吸着を維持できるためではないかと、推測している。
前記フッ素樹脂のうち、マイナス帯電フッ素樹脂としては、例えば、PTFE、PFA、PVdF、PVF等が挙げられ、プラス帯電フッ素樹脂としては、公知の各種樹脂が挙げられる。
第1コート層4Aは導電性付与剤を含有している。したがって、第1コート層4Aは第1導電性コート層とも称することができる。この導電性付与剤は、後述イオン液体ではなくかつ導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。第1コート層4Aが導電性付与剤を含有していると、低湿度環境下においても、第1コート層4Aにおけるかぶり、及び、第1コート層4Aと第2コート層4Bとの境界付近におけるかぶりの発生を効果的に防止できる。導電性付与剤は粒子であるのが好ましく、第1コート層4A中に均一に分散できる点で粒径は0.01〜1μmであるのが好ましい。前記粒径の測定方法は電子顕微鏡で観察して求めた算術平均粒径である。前記導電性付与剤は、第1コート層4Aが所望の導電性を発揮でき、低湿度環境下におけるかぶりの発生をより一層効果的に防止できる点で、ポリオール及びシランカップリング剤が反応してなる樹脂100質量部に対して5〜10質量部含有されているのが好ましい。
第1コート層4Aは、各種樹脂組成物、例えば各種樹脂組成物に通常用いられる各種添加剤等を含有していてもよい。このような添加剤として、例えばアクリルエマルジョン等が挙げられる。
第1コート層4Aは、通常、0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、0.1〜25μmの層厚を有しているのがより好ましい。
この第1コート層4Aがポリオール及びシランカップリング剤が反応してなる樹脂とフッ素樹脂粒子と導電性付与剤とを含有し、イオン液体を実質的に含有していないと、現像ローラ1における第2コート層4Bの外周面に過剰の現像剤が担持されたとしても担持された過剰な現像剤が第2コート層4Bから第1コート層4Aに移行しにくくなって、現像ローラ1の軸線方向端部からの現像剤の漏れを実質的に抑えることができる。
第2コート層4Bは、第1コート層4Aの間、すなわち、弾性層3の中央部に第1コート層4Aそれぞれに接するように形成されている。好ましくは、第2コート層4Bは、図2に示されるように、現像装置に装着されたときに、現像剤規制部材24の軸線方向の両端縁よりも内側になるように、弾性層3の外周面に形成されている。換言すると、第2コート層4Bは、画像形成装置に装着されたときに、像担持体における静電潜像が形成される潜像形成領域に対応する画像形成領域に形成されている。より具体的には、現像ローラ1の軸線長さにも依存するが、A3用紙(JIS)に画像を形成する画像形成装置に装着される場合には、第1コート層4Aそれぞれは、弾性層3の各端縁から中央側に向かって5〜15mmまでの境界に挟まれた外周面に形成される。第2コート層4Bがこのように形成されていると、現像剤漏れを高度に防止しつつ低湿度環境下においても高い画像品質を維持することができる。
第2コート層4Bは、ウレタン樹脂と、ピリジニウム系イオン液体及びアミン系イオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体と、導電性付与剤と、充填剤粒子とを含有する。前記ウレタン樹脂は、第2コート層4Bに主成分として、例えば、第2コート層4Bの全質量に対して50質量部%以上の割合で含有されている。第2コート層4Bに主成分すなわちベースポリマーとしてウレタン樹脂が含有されていると、弾性層3の変形等に対する追従性が向上して第2コート層4Bがひび割れ又は剥離しにくくなることがある。このウレタン樹脂は、公知のウレタン樹脂であればよく、通常、ポリオールとポリイソシアネートとから得られる。この発明の目的をよく達成できる点で、ポリオールはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールであるのが好ましい。このポリイソシアネートは、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
イオン液体は、ピリジニウム系イオン液体及びアミン系イオン液体より成る群から選択される少なくとも1種である。イオン液体はオニウム塩の1種であり、少なくとも室温付近の温度で液体状態にある高導電率を有する液体化合物であって「イオン性液体」とも称される。第2コート層4Bがピリジニウム系イオン液体及びアミン系イオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体を含有していると、少なくとも、低湿度環境下におけるかぶりの発生を実質的に抑えると共に長期間にわたって所望の印字濃度を維持でき、高品質の画像を形成することに貢献できる。
イオン液体は、ピリジニウム系イオン液体及びアミン系イオン液体より成る群から選択される少なくとも1種であるが、少なくとも、低湿度環境下におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができると共に長期間にわたって所望の印字濃度を維持できる点で、ピリジニウム系イオン液体から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
ピリジニウム系イオン液体は、陽イオンとして、ピリジン環を構成する窒素原子にアルキル基等が結合して成るピリジニウムイオンを基本骨格とするイオン液体である。前記アルキル基は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基であるのが特に好ましい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記ピリジン環は、その環を構成する炭素原子に結合する水素原子がアルキル基で置換されたアルキル基置換ピリジン環であってもよい。前記水素原子を置換するアルキル基は、1つでも複数でもよく、前記ピリジン環を構成する窒素原子に結合するアルキル基と基本的に同様であり、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基であるのが特に好ましい。水素原子を置換するアルキル基と窒素原子に結合するアルキル基とは同一でも異なっていてもよい。アルキル基置換ピリジン環として、具体的には、アルキル基として1つのメチルを有するα−ピコリン、β−ピコリン及びγ−ピコリン、アルキル基として1つのエチルを有するα−エチルピリジン、β−エチルピリジン及びγ−エチルピリジン、前記アルキル基として2つのメチルを有する2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン等が挙げられる。これらの中でもピリジン、γ−ピコリンであるのが好ましい。
前記ピリジニウム系イオン液体を構成する陰イオンは、特に限定されず、例えば、ハロゲンイオン、BF4 −、PF6 −、CF3SO3 −(トリフルオロメタンスルホニルイオン)、(CF3SO2)2N− (ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン:TFSI)等が挙げられる。これらの中でも、有機酸陰イオンであるBF4 −、PF6 −、CF3SO3 −及び(CF3SO2)2N−が好ましく、(CF3SO2)2N−が特に好ましい。
前記アルキル基で置換されていないピリジニウムイオンを陽イオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンを陰イオンとするピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、N−プロピルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−アリルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
また、前記アルキル基で置換されたピリジニウムイオンを陽イオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンを陰イオンとするピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、N−プロピル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−プロピル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−プロピル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。さらに、前記アルキル基で置換されたピリジニウムイオンを陽イオンとし、ヘキサフルオロホスファートイオンを陰イオンとするピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、1−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート、1−ノニル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート、1−デシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
前記アミン系イオン液体は、陽イオンとして、脂肪族系アミン化合物の窒素原子にアルキル基等が結合して成るアンモニウムイオンを基本骨格とする脂肪族のアミン系イオン液体である。前記アルキル基はピリジニウム系イオン液体における窒素原子に結合する前記アルキル基と基本的に同様である。
前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、脂環式アミン化合物、脂肪族アミン化合物等が挙げられる。これらのアミン化合物からなるアンモニウムイオンとしては、例えば、R1 4N+イオン(4つのR1は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であり、複数のR1が環を形成していてもよい。)等が挙げられる。
4つの前記アルキル基R1が同じアミン系イオン液体として、具体的には、例えば、N,N,N,N−テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラオクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラオクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
3つの前記アルキル基R1が同じアミン系イオン液体として、具体的には、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
イオン液体は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜20質量部含有されているのが好ましい。イオン液体の含有量が前記範囲内にあると、イオン液体の効果が十分に発揮され、現像ローラ1が画像形成装置に装着されたときに、低湿度環境下においてかぶりの発生を効果的に防止できると共に所望の印字濃度を長期間にわたって維持でき、さらに、ハーフトーン画像における濃度ムラの発生等も防止でき、その結果、高品質の画像を形成することに十分に貢献できる。高品質の画像を形成することに大きく貢献できる点で、イオン液体の含有量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して4〜19質量部であるのが好ましい。
第2コート層4Bは、導電性付与剤を含有している。したがって、第2コート層4Bは第2導電性コート層とも称することができる。この導電性付与剤は、前記イオン液体ではなくかつ導電性を有していれば特に限定されず、第1コート層4Aに含有される導電性付与剤と基本的に同様である。この導電性付与剤は、第2コート層4Bが所望の導電性を発揮でき、かぶりの発生をより一層効果的に防止できる点で、前記ウレタン樹脂100質量部に対して5〜10質量部含有されているのが好ましい。
第2コート層4Bは、充填剤粒子を含有している。この充填剤粒子は、例えば、シリカ等が挙げられる。特に限定されないが、シリカ系充填材を用いることができる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。充填剤粒子の平均粒子径は特に限定されないが、例えば1〜80μmであるのが好ましく、1〜40μmであるのが特に好ましい。充填剤粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
充填剤粒子は、現像ローラ1における物理的な現像剤の搬送量を長期間にわたって実質的同様に維持できる点で、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜20質量部含有されているのが好ましく、1〜15質量部含有されているのが特に好ましい。
第2コート層4Bは、第2コート層4Aに含有されるフッ素樹脂粒子を実質的に無含有である。ここで、この発明において、「フッ素樹脂粒子を実質的に無含有」とは第2コート層4Bにフッ素樹脂粒子が積極的に含有されていないことを意味し、フッ素樹脂粒子が完全に存在しない場合に加えて、フッ素樹脂粒子が奏する効果を発揮しない含有量で含有されている場合をも含む概念である。フッ素樹脂粒子が奏する効果を発揮しない含有量で含有される場合として、例えば、第1コート層4Aのフッ素樹脂粒子が第2コート層4Bに侵入して第2コート層4B内に留まる場合が挙げられる。なお、フッ素樹脂粒子が奏する効果を発揮しない含有量は、例えば、前記ウレタン樹脂100質量部に対してフッ素樹脂粒子は0.1質量部以下である。
第2コート層4Bは、通常0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜25μmの層厚を有しているのがより好ましい。この第2コート層4Bは第1コート層4Aよりも厚く形成されても薄く形成されてもよく、また、同じ厚さに形成されてもよい。現像ローラ1において第2コート層4Bは第1コート層4Aよりも厚く形成されている。
この第2コート層4Bがウレタン樹脂とピリジニウム系イオン液体及びアミン系イオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体と導電性付与剤と充填剤粒子とを含有し、フッ素樹脂粒子を実質的に含有していないと、第2コート層4Bの外周面に現像剤を所望のように担持でき、担持した現像剤の帯電量を調整できるから、前記したように、第2コート層4Bを備えた現像ローラ1は所定の帯電量に帯電させた現像剤を所定量像担持体に供給で、その結果、現像装置又は画像形成装置に装着されたときに高品質の画像を形成することに貢献できる。
コート層4は、前記のように弾性層3の軸線方向両端側それぞれに形成された第1コート層4Aとこの第1コート層4Aの間に形成された第2コート層4Bとを有していればよく、第1コート層4Aと第2コート層4Bとが隣接して重なることなく形成されていてもよく、また、一方が他方の外周面上に重ねて形成されていてもよい。例えば、この発明においてコート層は、弾性層3の外周面全体に第2コート層を配置し、第2コート層における軸線方向両端側それぞれに第1コート層を重ねて配置することもできる。この発明においては、後述するように、現像剤シール部材25は現像ローラ1に接する部分が弾性材料で形成されているから、一方が他方の外周面上に重ねて形成されていてもその段差を効果的に吸収することができる。なお、第1コート層4Aと第2コート層4Bとが重ねて形成される場合は、互いの密着性、及び、弾性層3との密着性等を考慮して、いずれが下側に形成されるかが決定される。
現像ローラ1は、軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にコート層4を形成して、製造される。現像ローラ1を製造するには、まず、軸体2が準備される。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は、弾性層3が形成される前にプライマーが塗布されてもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、弾性層3とコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
弾性層3は、導電性組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。導電性組成物としては、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。前記ゴムは、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。これらのゴムは、液状型であってもミラブル型であってもよい。前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
前記導電性組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等を好適に挙げることができる。
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。
RnSiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
前記(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個の前記アルケニル基を有することが好ましく、具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが好ましい。特に、後述する硬化剤として白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが通常使用される。
また、この(A)オルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。この(A)オルガノポリシロキサンは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。この(A)オルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。また、(A)オルガノポリシロキサンは、通常、その重合度は100以上であり、好ましくは3,000以上であり、その上限は、好ましくは100,000であり、さらに10,000が好ましい。
前記(B)充填材は、特に限定されないが、シリカ系充填材を用いることができる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。シリカ系充填材の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、11〜39質量部であるのが好ましく、15〜35質量部であるのが特に好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径としては、1〜80μmであるのが好ましく、2〜40μmであるのが特に好ましい。シリカ系充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
前記(C)導電性材料は、前記充填材(B)に属さない導電性材料であり、物理的化学的に同一材料からなるものであっても、充填材(B)として規定されたシリカ系充填材と形態及び状態等が異なる導電性材料は(C)導電性材料に属する。このような導電性材料は、導電性付与成分であり、例えば、前記導電性付与剤が挙げられ、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。導電性材料は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、添加剤等を含有してもよい。添加剤として、例えば、硬化剤、着色剤、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、アルコキシシラン、重合度がオルガノポリシロキサン(A)よりも低いジメチルシロキサンオイル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール、α,ω−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封鎖低分子シロキサンやシラン等の分散剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、架橋反応等を阻害しない硬化又は未硬化の各種オレフィン系エラストマー等が挙げられる。
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3である無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
前記(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
R1 aSiO(4−a)/2 (2)
ここで、前記平均組成式(2)におけるR1は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
前記R1は、前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物に含有されるオルガノポリシロキサン(A)のRで例示した、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基及びこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した炭化水素基等が挙げられる。R1の少なくとも2個はアルケニル基、特にビニル基であり、90%以上がメチル基であるのが好ましい。具体的には、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。
(D)オルガノポリシロキサンの重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。
前記(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(3)で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
R2 bHcSiO(4−b−c)/2 (3)
ここで、前記平均組成式(3)におけるR2は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
前記(F)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに重要な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3、好ましくは0.15〜0.45g/cm3である。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cm3より小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
このような無機質充填材(F)としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
(F)無機質充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。
前記(G)導電性付与剤は、前記導電性付与剤と同様であり、その配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
前記(H)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この(H)付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、25℃において5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。
弾性層3は、このような導電性組成物を用いて、例えば、公知の成形方法によって加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。導電性組成物の硬化方法は導電性組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、導電性組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、導電性組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。導電性組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、120〜250℃で2〜70時間程度の硬化条件で、二次加硫してもよい。また、導電性組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、このようにして形成された弾性層3は、ウレタンコート層4が形成される前にプライマー層が形成されてもよい。
コート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、第1コート層4Aを形成可能な第1樹脂組成物、及び、第2コート層4Bを形成可能な第2樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工された第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物を加熱硬化させて、形成される。ここで、第1コート層4Aと第2コート層4Bとが隣接して重なることなく形成されている場合には、第1コート層4A及び第2コート層4Bの一方が形成される弾性層3の外周面をマスキングして他方が形成される弾性層3の外周面に他方を形成可能な第2樹脂組成物又は第1樹脂組成物を塗工して硬化させた後に、一方を形成可能な第1樹脂組成物又は第2樹脂組成物を塗工して硬化させることにより、互いに隣接する第1コート層4Aと第2コート層4Bとを弾性層3の外周面に形成することができる。一方を他方の上に重ねて形成する場合には、弾性層3の外周面に他方を形成可能な第2樹脂組成物又は第1樹脂組成物を塗工して硬化させた後に、他方が形成される弾性層3の外周面に一方を形成可能な第1樹脂組成物又は第2樹脂組成物を塗工して硬化させることにより、コート層4を弾性層3の外周面に形成することができる。
具体的には、まず、第1コート層4Aを形成可能な第1樹脂組成物及び第2コート層4Bを形成可能な第2樹脂組成物を準備する。第1樹脂組成物は、前記樹脂を形成する前駆体であるポリオールとシランカップリング剤、フッ素樹脂粒子及び導電性付与剤、所望により充填剤等の各種添加剤を含有し、イオン液体を実質的に無含有の樹脂組成物である。したがって、第1コート層4Aは、ポリオールとシランカップリング剤、フッ素樹脂粒子、導電性付与及び所望により各種添加剤を含有する第1樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成されている。この第1樹脂組成物におけるポリオールとシランカップリング剤、フッ素樹脂粒子及び導電性付与の含有量は第1コート層4Aにおける各成分の前記含有量と基本的に同じであり、各種添加剤の含有量は適宜に調整される。第1樹脂組成物において、ポリオール、シランカップリング剤、フッ素樹脂粒子及び導電性付与剤等は前記した通りである。この発明において、「イオン液体を実質的に無含有」とは、第1樹脂組成物にイオン液体を積極的に含有させないことを意味し、第1樹脂組成物にイオン液体を完全に含有しない場合に加えて、イオン液体が奏する効果を発揮しない含有量で含有されている場合をも含む概念である。なお、イオン液体が奏する効果を発揮しない含有量は前記した通りである。
第2樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂を形成する前駆体であるウレタン調整成分と前記イオン液体と導電性付与剤と充填剤粒子と所望により各種添加剤とを含有し、フッ素樹脂粒子を実質的に無含有のウレタン樹脂組成物である。したがって、第2コート層4Bは、ウレタン調整成分とイオン液体と導電性付与剤と充填剤粒子と所望により各種添加剤とを含有する第2樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成されている。この第2樹脂組成物におけるウレタン調整成分、イオン液体、導電性付与剤及び充填剤粒子の含有量は第2コート層4Bにおける各成分の前記含有量と基本的に同じであり、各種添加剤の含有量は適宜に調整される。第2樹脂組成物において、イオン液体、充填剤粒子及び各種添加剤は前記した通りである。この発明において、「フッ素樹脂粒子を実質的に無含有」とは、第2樹脂組成物にイオン液体を積極的に含有させないことを意味し、第2樹脂組成物にフッ素樹脂粒子を完全に含有しない場合に加えて、フッ素樹脂粒子が奏する効果を発揮しない含有量で含有されている場合をも含む概念である。なお、フッ素樹脂粒子が奏する効果を発揮しない含有量は前記した通りである。
第2樹脂組成物に含有されるウレタン調整成分は公知のポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えばポリオールとイソシアネートとの混合物が挙げられる。
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、ヘキサンジオール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1400以上2000未満の数平均分子量を有するのが好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族イソシアネートであるのが好ましい。芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。前記誘導体としては、前記ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。前記ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。ただし、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して前記適正モル比の3〜4倍相当量を配合してもよい。
ウレタン調整成分には、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物(以下、これらを纏めて樹脂組成物と称することがある。)の塗工は、例えば、樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、前記塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、前記塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。
このようにして塗工された第1樹脂組成物は、各種の方法で硬化されることができ、例えば、熱風硬化、誘導過熱硬化、マイクロウエーブ硬化等が挙げられる。加熱硬化の条件として、加熱温度は、例えば、100〜180℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜90分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。また、塗工された第2樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、120〜160℃、特に130〜160℃、加熱時間は20〜60分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。
このようにして、弾性層3の外周面に、第1コート層4A及び第2コート層4Bからなるコート層4を形成して、現像ローラ1を製造することができる。
現像ローラ1は、第1コート層4A及び第2コート層4Bを有するコート層4を弾性層3の外周面に備えているから、現像装置に装着されたときに、通常の湿度(例えば、相対湿度50%程度)はもちろん高湿環境下においても現像剤の漏れを効果的に防止できると共に、通常の湿度はもちろん低湿度環境下におけるかぶりの発生等の画像品質に与える画像欠陥の発生を実質的に抑えることができると共に長期間にわたって所望の印字濃度を維持でき、さらにハーフトーン画像における濃度ムラの発生等も防止でき、その結果、高品質の画質を形成することに大きく貢献する。したがって、この現像ローラは、互いに相反する画像形成装置の特性である画質品質と現像剤の漏れとを高い水準で両立できる。
このように、現像ローラ1は、その周囲が高湿度であっても現像剤漏れを実質的に抑えることができるにもかかわらず、その周囲が低湿度であってもかぶりの発生を実質的に抑えることができるから、例えば、より高精細化された近年の画像形成装置、及び、このような画像形成装置に装着される現像装置の現像ローラとして、特に好適に用いられる。
次に、この発明に係る現像ローラ1を備えた現像装置(以下、この発明に係る現像装置又は現像カートリッジと称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図3を参照して、説明する。この画像形成装置10は、図3に示されるように、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。
現像装置20Bは、この発明に係る現像装置の一例であり、図3に示されるように、現像剤担持体23Bとしてこの発明に係る現像ローラと、現像剤22B、例えば、プラス帯電現像剤と、現像剤担持体23Bの両端部に当接して現像剤漏れを防止する現像剤シール部材25(図3に図示しない。)とを備えている。したがって、この画像形成装置10において、現像ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Y、すなわち、現像ローラとして装着されている。現像装置20Bは、具体的には、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23B例えば現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードと、現像剤担持体23Bの両端部に当接して現像剤漏れを防止する現像剤シール部材25(図3に図示しない。)とを備えてなる現像装置又は現像カートリッジである。現像装置20Bにおいて、現像剤担持体23B、現像剤量調節手段24B及び現像剤シール部材25の接触状態は、図2に示される現像ローラ1、現像剤規制部材24及び現像剤シール部材25の接触状態と基本的に同様であり、現像剤量調節手段24Bは現像剤担持体23Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、前記現像装置20Bは所謂「接触式現像装置」である。前記現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されている。
この現像装置20Bが備えている現像剤シール部材25は、図2に示されるように、現像ローラ1の外周面に接触する円弧状摺接面を有する公知の現像剤シール部材を用いることができ、例えば、特許文献2の「端部シール部材21」等が挙げられる。現像剤シール部材25は、少なくとも円弧状摺接面が例えばフェルト等の弾性部材で形成されており、この円弧状摺接面が現像ローラ1の第1コート層4Aの外周領域それぞれに当接又は圧接するように、現像装置に装着又は固定されている。具体的には、図2に示されるように、現像ローラ1は、第1コート層4Aの外周領域それぞれの端部側が現像剤シール部材25の円弧状摺接面に接触し、第1コート層4Aそれぞれの中央側及び第2コート層4Bが現像剤シール部材25に並設された現像剤規制部材24に接触するように、現像装置20Bに装着されている。このように、現像剤シール部材25は第1コート層4Aとほぼ同じ半径を有する円弧状当接面を有しており、図示しない後端部で現像装置20Bの筐体に固定されている。なお、現像剤シール部材25としては、特許文献2の「端部シール部材21」の他に、例えば、特開2007−140139号公報に記載の「トナーシール構成」、特開2009−265574号公報の「サイドシール部材」等を採用することもできる。
画像形成装置10において、現像装置20Bの現像剤担持体23Bは、その表面が像担持体11Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。前記現像装置20C、20M及び20Yも、前記現像装置20Bと同様に、その表面が現像剤担持体23C、23M及び23Yが像担持体11C、11M及び11Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置10は所謂「接触式画像形成装置」である。
定着手段30は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。転写搬送ベルト6は複数の支持ローラ42に巻回されている。
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。これらの現像剤22B、22C、22M及び22Yはいずれも、現像ローラ1の第1コート層4Aに含有されているフッ素樹脂の帯電性と逆の帯電性を有しているのが好ましく、この例においてはプラス帯電現像剤である。プラス帯電現像剤としては、例えば、正帯電性の非磁性1成分の重合現像剤が挙げられる。プラス帯電現像剤は、具体的に、アクリル酸、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体又はスチレン系単量体を重合又は共重合させて得られる結着樹脂、着色剤、荷電制御剤及びワックス等からなる現像剤粒子と各種の外添剤とを有する略球状の現像剤である。前記着色剤としては、黒、シアン、マゼンタ及び黄色の各着色剤が挙げられる。前記荷電制御剤としては、例えば、アンモニウム塩等のイオン性官能基を有するイオン性単量体と、スチレン系単量体、前記アクリル系単量体等のイオン性単量体と共重合可能な単量体との共重合によって得られる荷電制御樹脂が挙げられる。前記外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物の粉末、炭化物の粉末、金属塩の粉末等の無機粉末が挙げられる。なお、現像剤をプラスに帯電させるには、前記結着樹脂の種類、特性等を選択すればよく、前記結着樹脂を含有していると、現像剤はプラスに帯電する。
現像剤22B、22C、22M及び22Yの形状はいずれも通常球形であり、その体積平均粒径は5〜10μmである。前記体積平均粒径は細孔電気抵抗法を用いた測定方法による測定値である。例えば、ベックマンコールター社製コールターマルチサイザーII(アパーチャ径100μm)あるいは同等の装置等を用いて測定をすることができる。
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
このタンデム型画像形成装置10において、現像剤担持体23としてこの発明に係る現像ローラ1を用いると、周囲の環境によらずに、現像剤漏れを効果的に防止できると共にかぶりの発生等の画像品質に与える画像欠陥の発生を実質的に抑えることができると共に長期間にわたって所望の印字濃度を維持でき、さらにハーフトーン画像における濃度ムラの発生等も防止でき、その結果、高品質の画質を形成することに大きく貢献する。また、現像装置20B、20C、20M及び20Yはいずれも現像剤担持体23として現像ローラ1を備えている。したがって、この発明によれば、互いに相反する画像形成装置の特性である画質品質と現像剤の漏れとを高い水準で両立できる現像ローラ及び現像装置を提供できる。
さらに、画像形成装置10は現像剤担持体23として現像ローラ1を備えている。したがって、この発明によれば、互いに相反する特性である画質品質と現像剤の漏れとを高い水準で両立できる画像形成装置を提供できる。
この発明に係る現像ローラ、現像装置及び画像形成装置は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、現像ローラ1は、筒状をなしていればその形状は特に限定されず、図1及び図2に示されるように、その外径が軸線方向の一方の端部から他方の端部にかけて略同一とされる所謂ストレート形状とされてもよく、その軸線方向の中央部における外径がその両端部における外径よりも小さな所謂逆クラウン形状とされてもよく、また、その軸線方向の中央部における外径がその両端部における外径よりも大きな所謂クラウン形状とされてもよい。
この発明に係る現像ローラ1は、弾性層3とウレタンコート層4との間に、他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、弾性層3とウレタンコート層4とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、この発明に係る現像ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置10に用いられる現像剤22は一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
前記画像形成装置10は、所謂「接触式画像形成装置」であるが、この発明において、画像形成装置は現像剤担持体の表面が像担持体の表面に接触しないように間隙を有して配置される所謂「非接触式画像形成装置」であってもよい。
前記画像形成装置10における前記現像装置は、所謂「接触式現像装置」であるが、この発明において、現像装置は現像剤量調節手段が現像剤担持体の外周面に接触しないように間隙を有して配置される所謂「非接触式現像装置」であってもよい。
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cm3である珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により前記軸体2の外周面に成形した。液体射出成形において、前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を10分間150℃に加熱して硬化させた。この成形体を研磨して外径20mmの弾性層3を形成した。この弾性層3は、JIS A硬度、体積抵抗率及び電気抵抗率がいずれも前記範囲内にあった。
第1コート層4Aを形成可能な第1樹脂組成物として、下記組成を主として有し、帯電特性がマイナスである「Emralon 345 Black」(ヘンケルジャパン株式会社製)を準備した。
・ポリオールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとが反応してなる樹脂48質量部(反応時における混合比はポリオール43質量部とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部)
・フッ素樹脂(PTFE)粒子(粒径1μm)12質量部(前記樹脂100質量部に対して25質量部)
・導電性付与剤としてカーボンブラック3質量部(粒径0.7μm、前記樹脂100質量部に対して6質量部)
・純水40質量部
・イオン液体0質量部
第2コート層4Bを形成可能な第2樹脂組成物を調製した。
・ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)14質量部
・縮合系ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との混合モル比[COOH/OH]=12/13)28質量部(前記イソシアネートとポリエステルポリオールとのモル比[NCO/OH]=1.1/1)
・イオン液体として、ピリジニウム系イオン液体である「C5H5N+−C6H13[(CF3SO2)2N]− (N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(関東化学株式会社製)1質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して2.4質量部)
・導電性付与剤としてカーボンブラック(商品名「トーカブラック#4500」、東海カーボン株式会社製)3質量部(粒径40nm、ウレタン調整成分100質量部に対して7.1質量部)
・ジブチル錫ジラウレート(商品名「ジ−n−ブチルすずジラウレート」、昭和化学株式会社製)0.03質量部
・充填剤粒子としてシリカ(商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製、平均粒子径1.5μm)4質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して9.5質量部)
弾性層3の各端縁から中央側に向かって10mmまでの外周面以外の外周面にマスキング処理を施して、準備した第2樹脂組成物を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して層厚20μmの第2コート層4Bを形成した。次いで、第2コート層4Bの外周面にマスキング処理を施して、準備した第1樹脂組成物を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して層厚5μmの第1コート層4Aを形成した。このようにして実施例1の現像ローラを製造した。
(実施例2及び3)
第1樹脂組成物において、フッ素樹脂粒子の含有量を5質量部(前記樹脂100質量部に対して10質量部)及び20質量部(前記樹脂100質量部に対して42質量部)に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして実施例2及び3の現像ローラをそれぞれ製造した。
(実施例4〜6)
第2樹脂組成物において、前記イオン液体の含有量を2質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して4.8質量部)、4質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して9.5質量部)及び8質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して19.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして実施例4〜6の現像ローラをそれぞれ製造した。
(実施例7〜12)
前記ピリジニウム系イオン液体に代えてアミン系イオン液体である「(CH3)3N+C3H6[(CF3SO2)2N]− (N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)」、関東化学株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1〜6と基本的に同様にして実施例7〜12の現像ローラをそれぞれ製造した。
(実施例13)
前記第2樹脂組成物を前記弾性層3の外周面全体にスプレーコーティング法によって塗布して160℃で30分間加熱して層厚20μmの第2コート層4Bを形成し、第2コート層の各端縁から中央側に向かって10mmまでの外周面以外の外周面にマスキング処理を施した後に前記第1樹脂組成物を第2樹脂組成物の硬化物の外周面にスプレーコーティング法によって塗布して160℃で30分間加熱して層厚5μm(合計層厚25μm)の第1コート層4Aを形成したこと以外は実施例1と基本的に同様にして実施例13の現像ローラを製造した。
(比較例1)
前記ピリジニウム系イオン液体を含有させないこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例1の現像ローラを製造した。
(比較例2)
前記第1コート層4Aを形成しないこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例2の現像ローラを製造した。
(比較例3)
前記第1樹脂組成物にカーボンブラックを添加しなかったこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例3の現像ローラを製造した。
(比較例4)
前記ピリジニウム系イオン液体を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(アルドリッチ社製、融点:14.6℃)に変更し、また第1コート層を設けなかったこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例4の現像ローラを製造した。
(低湿度環境下におけるかぶり評価)
製造した各現像ローラを現像ローラとして非磁性一成分電子写真方式のプリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)に装着し、低湿度環境下(23℃、相対湿度10%)で24時間静置した。なお、このプリンターは「接触式画像形成装置」の1つであり、装着されている現像装置は所謂「接触式現像装置」であってプラス帯電現像剤が収容されている。その後、前記プリンターの用紙設定を「普通紙厚め」、印字品質を「標準」、カラー設定を「標準」に設定して、モノクロモードにて白べた画像を100枚連続して印刷した。その直後にカラーモードに設定変更して白べた画像を1枚印刷した。このカラーモードで印刷した白べた画像の汚れ具合を「低湿度環境下におけるかぶり」として目視にて評価した。評価は、白べた画像全面に汚れが皆無であった場合を「◎」、白べた画像に実用上問題がない程度にわずかに汚れが認められた場合を「○」、白べた画像のうち現像ローラの第2コート層4Bが接触する中央領域に汚れが皆無であったものの、白べた画像のうち現像ローラの第1コート層4Aが接触する両端部領域に実用上許容できないほど汚れが認められた場合を「○×」、白べた画像に実用上許容できないほど汚れが認められた場合を「×」とした。これらの評価結果を「低湿度環境下におけるかぶり評価」として第1表に示す。
(ハーフトーン画像における画質評価)
製造した各現像ローラを現像ローラとして装着した前記プリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)をパーソナルコンピュータに接続して、試験環境下(23℃、相対湿度10%)に24時間静置した。その後、前記プリンターの用紙設定を「普通紙厚め」、印字品質を「標準」、カラー設定を「標準」、その他の設定を「デフォルト」に設定して、18%グレイ同等の濃度のモノクロ全面画像を表計算ソフト「エクセル」(マイクロソフト社)でパーソナルコンピュータの画面上に作成し、このモノクロ全面画像をハーフトーン画像としてモノクロモードで1枚印刷した。印刷されたハーフトーン画像の均質度を目視にて評価した。評価は、ハーフトーン画像が濃度ムラのない均一な画像であった場合を「◎」、ハーフトーン画像に実用上問題がない程度にわずかに濃度ムラが認められた場合を「○」、ハーフトーン画像に実用上許容できないほど濃度ムラが認められた場合を「×」とした。これらの評価結果を「ハーフトーン画像における画質評価」として第1表に示す。
(耐久印字試験)
製造した各現像ローラを現像ローラとして前記プリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)に装着して以下の条件で耐久印字試験を行った後の画像の品質を評価した。すなわち、低湿度環境下(23℃、相対湿度10%)で24時間静置した後、プリンターの用紙設定を「普通紙厚め」、印字品質を「標準」、カラー設定を「標準」に設定して、A4用紙片面の全面積の5%に対して、黒ベタ印字を通算で10000枚印刷した。この耐久印字試験において、形成した多数の画像から2枚目、500枚目及び10000枚目の画像を選択して、これらの画像の印字濃度を定法で測定した。印字濃度の評価は、前記3枚の画像における印字濃度の差が0.2以下である場合を「◎」、前記差が0.2を超え0.3未満である場合を「○」、前記差が0.3以上0.4未満である場合を「○×」、前記差が0.4以上である場合を「×」とした。印字濃度の差が0.4以上になると実用上許容できなくなる。これらの評価結果を第1表に示す。
(高湿環境下における現像剤漏れ評価)
製造した各現像ローラそれぞれを5本準備し、図3に示される接触型カラー画像形成装置(商品名「TN−290」、ブラザー工業株式会社製)において、現像ローラとして、装着した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、この接触型カラー画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤規制部材を用いた。この現像剤の帯電特性はプラスであった。
各現像ローラを装着した前記接触型カラー画像形成装置内の環境を、温度30℃、相対湿度80%の高湿環境に調整して、カラー印刷モードにてA4用紙の片面全面に白べた画像を1000枚印刷し、画像形成装置を分解して現像装置から現像剤が外部に漏れているか否かを目視にて確認した。評価は、実施例及び比較例それぞれにおける現像ローラ5本すべてにおいて現像装置外に現像剤を確認できなかった場合を「◎」、実施例及び比較例それぞれにおける現像ローラ5本すべてにおいて現像装置の周囲にごく微量の現像剤が付着していた場合を「×」とした。その結果を第1表に示す。