JPWO2012096238A1 - 銅又は銅合金の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ベルト&ホイール鋳造機が開発された初期においては、導電率60%IACS以上の純銅系合金の鋳造を鉄製の鋳造リングを使用して行っていた。鉄製の鋳造リングは導電率が17%IACSであり、銅製の鋳造リングと比較して熱伝達率が小さいために冷却能力が弱く、鋳造速度を上げることが困難であった。また、鉄の脆性によってリング表面に割れ欠陥が発生し、長時間の鋳造作業を行うことはできなかった。
さらに、Cu−Mg合金の製造においては鋳塊温度が低下しやすく圧延負荷が高くなり機械トラブルや加工割れを招く。そこで奪熱量を低下させて鋳塊温度を高くさせるために鋳型導電率が20〜50%IACSの導電率の低い鋳造リングを使用している(特許文献3参照)。
一般にCu−Ag合金(EC:92%IACS)やCu−Cr−Zr合金(EC:80%IACS)を用いた銅合金製鋳造リングは、溶湯が鋳型に接触した直後は熱伝導が良いため強冷されることにより、凝固初期スキンが凝固収縮することによるエアーギャップで冷却が阻害されてしまう。そのため凝固開始後の冷却が不均一になり凝固シェルの厚さにバラつきが生じ、脆弱な箇所で割れが発生する。特に導電率が低く熱伝導が悪い合金を鋳造する場合には凝固シェル内で温度勾配が生じやすく、凝固時の冷却条件によって鋳塊品質が大きく影響を受ける。
また、特許文献2や特許文献3のように低導電率の鋳造リングを使用して奪熱量を大きく低減した場合、エアーギャップの生成は抑制できるが鋳造リングが大きな熱抵抗となってしまう。そのため、奪熱量が小さすぎると凝固シェルが薄く脆弱な時間帯が長くなるため、凝固割れを発生しやすくなるという問題点がある。この微細割れは圧延工程を経て荒引線となったときに表面欠陥として現れ、伸線工程で断線する等深刻な問題を引き起こす原因となる。また、この表面欠陥部分を除去するために圧延後に皮ムキすることで歩留も低下してしまう。さらに奪熱量が小さいと鋳塊中央部にシュリンケージが残存しやすく、圧延により圧着できなかった場合には伸線工程で断線を招くことがある。特に、熱伝導が悪い合金は冷却されにくいために凝固が遅れ凝固割れやシュリンケージが発生しやすい。シュリンケージが発生しないようにするために鋳造速度を低下させることが考えられるが、生産性が著しく低下してしまう。
このように極細線まで伸線可能な高歩留の線材を製造するためには鋳塊の表面、内部品質を向上させる必要があり、そのためには合金の熱伝導に適した冷却条件で鋳造することが重要である。特に熱伝導が悪い合金では冷却条件の影響を受けやすい。ここで言及している鋳造合金の熱伝導とは凝固直後の状態のものを示しており、例えば析出型合金であれば固溶状態の熱伝導のことである。
本発明は、鋳塊品質に優れ、かつ高い冷却能力を持ち生産性に優れた銅又は銅合金の連続鋳造方法を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、以下の解決手段を提供するものである。
d≦r×0.1 (I)
d:荒引線表面欠陥の深さ(mm)
r:荒引線の半径(mm)
(2)ベルト&ホイール法での銅又は銅合金の鋳造において、鋳造リングとして、鋳造される銅又は銅合金の導電率a1(%IACS)に対し下記の式(II−1)を満足する導電率b(%IACS)を有する材料を使用する(1)記載の連続鋳造方法。
0.25×a1+15≦b<0.25×a1+35 (II−1)
a1:鋳造される銅又は銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS)
(3)固溶状態の導電率が60%IACS以下の銅合金のベルト&ホイール法での鋳造において、鋳造リングとして、鋳造される銅合金の導電率a2(%IACS)に対し下記の式(II−2)を満足する導電率b(%IACS)を有する材料を使用する(1)又は(2)記載の連続鋳造方法。
0.25×a2+15≦b<0.25×a2+35 (II−2)
a2:鋳造される銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS)
(4)前記ベルト&ホイール法が、タンディッシュ内の溶湯を注湯ノズルから、ターンロールにより回動するベルトとホイールにより構成されたベルト&ホイール鋳造機内に注入し、冷却凝固させて鋳塊とし、該鋳塊を前記鋳型から連続的に引き出す鋳造方法であり、前記ホイールを構成する鋳造リングとして、鋳造される銅又は銅合金に対して前記の式(II−1)の関係の導電率を有する鋳造リングを用いることを特徴とする(2)に記載の連続鋳造方法。
(5)前記ベルト&ホイール法が、タンディッシュ内の溶湯を注湯ノズルから、ターンロールにより回動するベルトとホイールにより構成されたベルト&ホイール鋳造機内に注入し、冷却凝固させて鋳塊とし、該鋳塊を前記鋳型から連続的に引き出す鋳造方法であり、前記ホイールを構成する鋳造リングとして、鋳造される銅合金に対して前記の式(II−2)の関係の導電率を有する鋳造リングを用いることを特徴とする(3)に記載の連続鋳造方法。
図1は本発明の連続鋳造法によって得る鋳塊を得、これをさらに線材とする全工程の一例を示す説明図である。この銅(又は銅合金)線材の製造方法において、例えば図1に示すように、電気銅の地金等を、シャフト炉1を用いて還元性雰囲気で溶解して溶銅を得て、該溶銅を樋2を経てタンディッシュ3内に連続的に導く。該タンディッシュ3内の溶湯5を注湯ノズル(スパウト)4から、ターンロールにより回動するベルト6とホイール7により構成されたベルト&ホイール鋳造機8内に注入し、冷却凝固させて鋳塊9とし、鋳塊9を前記鋳型から連続的に引き出す。同図で区別して示していないが、前記ホイール7は鋳造リングとホイール本体とからなる。この凝固した鋳塊9の温度をできるだけ低下させない状態(好ましくは800℃以上)で、連続圧延機10(2方ロール方式、又は3方ロール方式)で所定の線径まで圧延を行い、荒引線材11とする。その荒引線材11はそのまま巻き取られるか、または図1に示される伸線圧延機12で更に圧延し、伸線材13としパレット14上に巻き取られる。図1において、伸線圧延機12の設置は任意である。
移動鋳型式であるベルト&ホイール鋳造機は、ホイール本体21、駆動ロール24で可動する冷却作用をもつ鋳造ベルト22およびホイール本体21の外周に設けられた鋳造リング23を有する。上記ベルト22は炭素鋼またはステンレスが適用されている。ホイール本体21には炭素鋼またはステンレスが適用されている。鋳造リング23には後述する特定の導電率を有する材料が適用されている。注湯ノズル25から金属溶湯(銅又は銅合金の溶湯、以下単に金属溶湯とも言う。)26をホイール21の外周の鋳造リング23へ注湯する。注湯された金属溶湯26は回転移動する鋳造リング内で冷却し、徐々に凝固し鋳塊27を形成する。図2では溶湯が凝固し、鋳塊を形成する様子を模式的に示している。鋳造速度は、好ましくは、通常の操業において実用化されている6〜15m/分(100〜250mm/秒、あるいは、10〜50ton/時)であり、鋳塊断面積は好ましくは1930mm2〜6450mm2である。
本発明の方法においては、ベルト&ホイール法で製造される銅又は銅合金荒引線の表面欠陥の深さが下記(I)式を満たすようにするのが好ましい。
d≦r×0.1 (I)
d:荒引線表面欠陥の深さ(mm)
r:荒引線の半径(mm)
この式を満たすことにより、鋳塊または/および荒引線の表面欠陥に起因する伸線工程での断線を低減することができ、極細線まで伸線可能な高歩留の線材を製造できる。荒引線の半径rは特に制限はないが、通常2〜12mmとする。dの測定方法は荒引線を渦流探傷器で走査し、渦流探傷器の出力とダミー欠陥の深さとの相関から算出した。
dが大きすぎると、伸線工程において断線が発生しやすくなり、欠陥部分を除去するために皮ムキを多く行わなければならなくなり生産性が著しく低下してしまう。
この様な銅又は銅合金荒引線とする製造方法を以下に説明する。
(導電率)
図5から図7に、鋳造リングの導電率と鋳塊からの奪熱との関係の模式図を示す。鋳造リングの導電率が高い場合を図5に、低い場合を図6に、本発明の範囲内である場合を図7にそれぞれ示す。矢印が大きいほうが、奪熱速度が大きいことを示す。従来のベルト&ホイール法での連続鋳造では、周知のDC鋳造や水平横型連続鋳造方式に比較して圧倒的に鋳造速度が速いために、固液共存領域は鋳造方向に長く存在し、銅や銅合金において最終凝固部位にも凝固シェルの厚さのバラつきが発生しやすくなる。そして、高導電率の鋳造リングは溶湯がリングに接触した直後は熱伝導が良いため強冷されることにより、すぐに凝固収縮によるエアーギャップが発生し冷却が阻害され、冷却が不均一となり、凝固シェルの厚さが一定しないことが分かった。特に、熱伝導が悪い合金では熱伝導が良い銅又は銅合金と比較して凝固シェル内の温度分布が生じやすく、凝固シェルの厚さの不均一や凝固収縮と熱収縮による局所的な応力集中が発生し鋳塊表面において凝固割れが起きる。
また、鋳造リングの導電率が低すぎる場合はエアーギャップの生成は抑制することができるが、鋳造リングが熱抵抗となってしまうため全体的な冷却能力は小さくなる。そのため、凝固シェルの成長が遅くなりシェルの強度が脆弱な時間帯が長くなってしまうために凝固割れが発生しやすくなる。また、凝固が遅れて最終凝固部が注湯部の高さに近づくと押し湯の効果が弱くなりシュリンケージが発生する。熱伝導が悪い合金では特に冷却しにくいためにより顕著に悪影響が現れる。これらの原因により鋳塊の表面と内部欠陥が発生し、荒引線の欠陥となり伸線での断線を招くものとなる。
導電率の異なる各種の純銅又は銅合金を用いて検討した結果、鋳造リングの導電率(%IACS)は、鋳造されて得られるものが純銅であるのかあるいは銅合金であるのかに応じて、下記(II−1)式又は下記(II−2)式の範囲に設定することが好ましいことが明らかとなった。この関係を図4に示す。
0.25×a1+15≦b<0.25×a1+35 (II−1)
a1:鋳造される銅又は銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS)
0.25×a2+15≦b<0.25×a2+35 (II−2)
a2:鋳造される銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS)
すなわち本発明の好ましい実施態様では、特定の導電率の銅合金製鋳造リングを使用することで注湯直後のエアーギャップの生成を極めて効果的に抑制することができる。そのため凝固初期のエアーギャップによる熱伝達の阻害が緩和され安定した冷却をすることができ、その結果脆弱な箇所のない性質の均一な安定した凝固シェルを形成することができる。エアーギャップを抑制し、さらに一定値以上の導電率の鋳造リングで冷却することで十分な冷却速度を得ることができ、シュリンケージの発生も防ぐことができる。また、過冷却が大きくなることで核生成頻度が高くなり、鋳塊表面近傍の鋳塊組織を微細化することができる。これらの効果により鋳塊の表面品質を向上させることができ、鋳塊表面の割れを抑制することができる。さらに、鋳塊品質の改善によって荒引線の表面欠陥を抑制することができ、荒引線の高品質化とともに歩留向上を実現することができる。
リング表面に塗布する離型材の量によっても鋳塊と鋳造リング間の熱伝達を変えることができるが、細かな制御が難しく安定した操業には不向きであり、鋳造リングの導電率でコントロールする方が簡単かつ安定した鋳造が可能である。
特に熱伝導が悪い導電率の低い合金を製造する場合は冷却条件が品質に大きく影響を及ぼすため本発明方法による効果は顕著である。
上記のような点を考慮すると、鋳造リングを構成する合金材料としては、Cu−Cr−Zr−Al合金、Cu−Cr合金、Cu−Be合金、りん青銅、コルソン合金、Cu−Zn合金、Cu−Ni−Sn合金などの銅合金が好ましい。それぞれの銅合金について代表的な成分組成の好ましいものを下記に記載する。
・Cu−Cr(−Zr−Al)合金
Cr 0.2質量%〜2.0質量%(好ましくは0.3質量%〜1.5質量%、より好ましくは0.5質量%〜1.5質量%)
Zr 0質量%〜0.5質量%(好ましくは0.08質量%〜0.30質量%)
Al 0質量%〜3.0質量%(好ましくは0.3質量%〜2.0質量%)
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Be合金
Be 0.3質量%〜3.0質量%(好ましくは0.5質量%〜2.0質量%)
Co 0.1質量%〜1.0質量%(好ましくは0.2質量%〜0.6質量%)
残部銅及び不可避不純物
・りん青銅
Sn 1質量%〜8質量%(好ましくは1質量%〜6質量%)
P 0.03質量%〜0.4質量%(好ましくは0.03質量%〜0.1質量%)
残部銅及び不可避不純物
・コルソン合金
Ni 1質量%〜5質量%(好ましくは1.1質量%〜5質量%)
Si 0.2質量%〜1.3質量%(好ましくは0.3質量%〜1.3質量%)
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Zn合金
Zn 10質量%〜50質量%(好ましくは20質量%〜45質量%)
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Ni−Sn合金
Ni 0.1質量%〜5質量%(好ましくは1質量%〜2質量%)
Sn 0.1質量%〜1質量%(好ましくは0.3質量%〜0.5質量%)
残部銅及び不可避不純物
上記のようなベルト&ホイール法における特性及びその鋳造時の現象を考慮し、本発明の鋳造リングを適用した鋳造方法においては、下記のような純銅、例えばタフピッチ銅若しくは無酸素銅を鋳造することが好ましい。
・銀含有タフピッチ銅若しくは無酸素銅
Ag 0.03〜0.20質量%
・スズ含有タフピッチ銅若しくは無酸素銅
Sn 0.05〜0.70質量%
上記のようなベルト&ホイール法における特性及びその鋳造時の現象を考慮し、本発明の鋳造リングを適用した鋳造方法においては、下記のような組成の銅合金を鋳造することが特に効果的であり好ましい。
・Cu−Sn合金
Sn 0.2質量%〜8質量%
残部銅及び不可避不純物
・コルソン合金
Ni 1.0質量%〜5.0質量%
Si 0.2質量%〜1.3質量%
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Cr合金
Cr 0.1質量%〜1.5質量%
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Cr−Zr合金
Cr 0.1質量%〜1.5質量%
Zr 0.01質量%〜0.5質量%
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Cr−Sn合金
Cr 0.1質量%〜1.5質量%
Sn 0.01質量%〜0.5質量%
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Zr合金
Zr 0.01質量%〜2.0質量%
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Fe−P合金
Fe 0.1質量%〜1.5質量%
P 0.01質量%〜0.5質量%
残部銅及び不可避不純物
・Cu−Ni−Sn合金
Ni 0.2質量%〜2.5質量%
Sn 0.01質量%〜1.0質量%
残部銅及び不可避不純物
[実施例1]
表1〜9に示すように、各15〜80%IACSの導電率を有する鋳塊断面積3220mm2の鋳造リングを使用した。この鋳造リングを構成する合金材の成分組成は以下の実施例・比較例と併せ最後にまとめて記載する。鋳造速度20ton/時でΦ8mmの0.03%Ag含有のタフピッチ銅(TPC)(表1参照)、0.15%Sn含有のタフピッチ銅(表2参照)、0.3%Sn含有のタフピッチ銅(表3参照)、0.7%Sn含有のタフピッチ銅(表4参照)、Cu−0.3%Cr−0.3%Sn(表5参照)、Cu−0.5%Cr合金(表6参照)、Cu−1.5%Ni−1.0%Sn(表7参照)、Cu−2.5%Ni−0.6%Siコルソン合金(表8参照)およびCu−1.0%Fe−0.3%P(表9参照)の銅又は銅合金荒引線をSCR法で製造し、Φ0.1mmまで伸線を行った。表1〜9に、荒引線製造時の渦流探傷器の検出結果と鋳塊縦断面を観察した時のポロシティ量、荒引線皮ムキしての伸線した時の断線の有無により製品の良否判定を行った結果を示す。
鋳造リングの導電率はGEインスペクション・テクノロジーズ社製のAutoSigma3000(商品名)を使用して鋳造リングの研磨面を測定した。
センターポロシティは鋳塊を長さ1m採取して中央部縦断面を観察し、幅0.5mm以上のポロシティの延べ長さを測定した。また、皮ムキ量と断線判定は、Φ8mm荒引線5000kgを表示のように片側0〜0.2mm厚さで皮ムキをしてΦ0.1mmまで伸線した時、断線したものを「×(不可)」、断線しなかったものを「○(可)」と評価した。
表1〜9の最右欄の「評価」において、片側の皮ムキが0mmのときに断線しなかったものを「◎(優)」、片側の皮ムキが0mmのときに断線し、片側の皮ムキが0.1mmのときに断線しなかったものを「○(良)」、片側の皮ムキが0.1mmのときに断線し、片側の皮ムキが0.2mmのときに断線しなかったものを「△(可)」、片側の皮ムキが0.2mmのときに断線したものを「×(不可)」と評価した。
0.25×a+15≦b<0.25×a+35 (II)
a:鋳造される銅又は銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS)
いずれの合金も式(II)(つまり式(II−1)と式(II−2))の条件を満たす鋳造リングを使ったとき最大欠陥深さが式(I)を満たし、探傷結果、断線判定ともに優れた結果となった。また、導電率が下限未満の鋳造リングを使った場合は冷却能力が不十分であったため鋳塊中心部への溶湯供給が足りず、これが大きなシュリンケージとなって断線不良の原因となった。導電率が上限を越えない鋳造リングでは、前述のように鋳塊表面に微細割れが発生し表面品質が悪化することが防がれるため好ましいことが分かる。また、式(II)を満たさない領域に関して、鋳造合金の導電率が60%IACSより高い合金は、鋳造リングの導電率が極端に低すぎることがなければ、皮ムキによって断線を免れることができたが、60%IACS以下の合金は片側0.2mmの皮ムキでも断線しており、本発明は鋳造合金導電率が60%IACS以下の合金に対して特に有効であることが分かる。
鋳造速度を変化させたときの実施例である。
Cu−2.5%Ni−0.6%Siのコルソン合金を鋳塊断面積3220mm2で、表11に示す導電率を有する各種の鋳造リング(鋳型)を使用し、鋳造速度を変更し、それ以外は実施例1と同様に鋳造した。
80%IACSの鋳造リングで通常の鋳造速度V0(200mm/秒)を基準とし、実施した鋳造速度Vにより、相対速度である鋳造速度Vrを評価した。Vr=V/V0である。
鋳造速度が冷却速度に対して速すぎると鋳塊温度が高くなりすぎて鋳塊強度が低下して割れが生じたり、鋳塊中心部に大きなシュリンケージが残存したりして断線の原因となる。そこで、実施結果の良否判定はΦ8mmの荒引線5000kgを片側0.1mm皮ムキして伸線した時に断線しなかったものを「○(可)」、断線したものを「×(不可)」と評価した。
結果を表11に示した。
各種の銅又は銅合金を導電率の異なる鋳造リングを使用して実施例1と同様に鋳造、圧延、伸線を行なった。鋳塊の結晶粒径(μm)を鋳塊表面から2mmの場所の結晶粒の成長方向と垂直方向に交線法で測定した。また、実施例1と同様に評価を行った。なお、鋳造リングの式(II)(つまり式(II−1)と式(II−2))の上限値は60%IACS、下限値は16%IACSである。
得られた結果を表12に示した。
2 樋
3 タンディッシュ
4 スパウト
5 溶湯
6 ベルト
7 ホイール
8 ベルト&ホイール鋳造機
9 鋳塊
10 連続圧延機
11 荒引線材
12 伸線圧延機
13 伸線材
14 パレット
21 ホイール
22 ベルト
23 鋳造リング
24 駆動ロール
25 注湯ノズル
26 溶湯
27 鋳塊
Claims (5)
- ベルト&ホイール法で製造する銅又は銅合金荒引線の表面欠陥の深さd(mm)が下記の式(I)を満たす銅又は銅合金の連続鋳造方法。
d≦r×0.1 (I)
d:荒引線表面欠陥の深さ(mm)
r:荒引線の半径(mm) - ベルト&ホイール法での銅又は銅合金の鋳造において、鋳造リングとして、鋳造される銅又は銅合金の導電率a1(%IACS)に対し下記の式(II−1)を満足する導電率b(%IACS)を有する材料を使用する請求項1記載の連続鋳造方法。
0.25×a1+15≦b<0.25×a1+35 (II−1)
a1:鋳造される銅又は銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS) - 固溶状態の導電率が60%IACS以下の銅合金のベルト&ホイール法での鋳造において、鋳造リングとして、鋳造される銅合金の導電率a2(%IACS)に対し下記の式(II−2)を満足する導電率b(%IACS)を有する材料を使用する請求項1又は2記載の連続鋳造方法。
0.25×a2+15≦b<0.25×a2+35 (II−2)
a2:鋳造される銅合金の導電率(%IACS)
b:鋳造リングの導電率(%IACS) - 前記ベルト&ホイール法が、タンディッシュ内の溶湯を注湯ノズルから、ターンロールにより回動するベルトとホイールにより構成されたベルト&ホイール鋳造機内に注入し、冷却凝固させて鋳塊とし、該鋳塊を前記鋳型から連続的に引き出す鋳造方法であり、前記ホイールを構成する鋳造リングとして、鋳造される銅又は銅合金に対して前記の式(II−1)の関係の導電率を有する鋳造リングを用いることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造方法。
- 前記ベルト&ホイール法が、タンディッシュ内の溶湯を注湯ノズルから、ターンロールにより回動するベルトとホイールにより構成されたベルト&ホイール鋳造機内に注入し、冷却凝固させて鋳塊とし、該鋳塊を前記鋳型から連続的に引き出す鋳造方法であり、前記ホイールを構成する鋳造リングとして、鋳造される銅合金に対して前記の式(II−2)の関係の導電率を有する鋳造リングを用いることを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造方法。
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