JPWO2012086346A1 - 抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1.採取した生体検体中の抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、慢性炎症性疾患の検査方法。
2.抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するPD-1 (Programmed Cell Death protein 1)であり、抗PD-1抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
3.抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するBTLA (B and T lymphocyte attenuator)であり、抗BTLA抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
4.抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するCTLA-4 (Cytotoxic T-Lymphocyte Antigen 4)であり、抗CTLA-4抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
5.抑制性補助刺激分子に対する抗体として、抗PD-1抗体及び抗BTLA抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
6.抑制性補助刺激分子に対する抗体として、さらに抗CTLA-4抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、前項4又は5に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
7.前記慢性炎症性疾患が、自己免疫性疾患、ウイルス性慢性疾患又は生体成分移植後の慢性拒絶反応である、前項1〜6のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
8.前記自己免疫性疾患が、自己免疫性肝炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎及び原発性胆汁性肝硬変より選択されるいずれかである、前項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
9.前記ウイルス性慢性疾患が、B型慢性肝炎又はC型慢性肝炎である、前項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
10.前記生体成分移植後の慢性拒絶反応が、臓器、組織及び/又は細胞の移植後の慢性拒絶反応である、前項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
11.慢性炎症性疾患が、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であり、以下の工程を含む、前項1、2及び5〜10のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗PD-1抗体価を測定する工程;
2)上記測定した抗PD-1抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
12.さらに以下の工程を含む、前項11に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗BTLA抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗BTLA抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
13.さらに以下の工程を含む、前項11又は12に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗CTLA-4抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗CTLA-4抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
14.PD-1抗原を少なくとも含み、抗PD-1抗体検出用デバイスを含む、前項1、2及び5〜13のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
15.さらに、BTLA抗原及び/又はCTLA-4抗原と、各抗原に対する抗体検出用デバイスを含む、前項14に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
カットオフ値よりも高い値を示すと考えられる疾患としては、クローン病、サルコイドーシス、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合性結合組織病、Basedow病、慢性甲状腺炎、I型糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、多発性硬化症など、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変への合併が報告されている自己免疫性疾患や、慢性ウイルス性感染症、例えばB型慢性肝炎、C型慢性肝炎や慢性活動性EBウイルス感染症が挙げられる。
1)採取した検体中に存在する抗PD-1抗体価を測定する工程;
2)上記測定した抗PD-1抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
1)採取した検体中に存在する抗BTLA抗体の抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗BTLA抗体の抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
1)採取した検体中に存在する抗CTLA-4抗体の抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗CTLA-4抗体の抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
以下の表1に示す各患者より採血を行い、通常の臨床検査に用いる処理を行って血清を取得した。
1)抗原として、1μg/mlの遺伝子組み換えPD-1(H00005133-Q01:Avnova社、台湾)を96穴マイクロプレートの各ウェルに100μl加え、1時間放置し、抗原を固相化した。
2)1%のウシ血清アルブミン(BSA)を300μl加えてブロッキングを行った。
3)患者の血清試料を1% BSA-PBST(0.02% Tween-20)で20倍に希釈したものを100μl加え、1時間、室温で反応させた。
4)PBST(0.05% Tween-20)で各ウェルを洗浄後、1μg/mlのペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体を100μl加え、1時間、室温で反応させた。
5)PBST(0.05% Tween-20)で各ウェルを洗浄後、発色基質液(2,2'-azino-bis [3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonate]:ABTS)を100μl加え、10分間、室温で反応させた。
6)ELISAリーダー(Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories社)を用いて、630nmの吸光度を測定した。
自己免疫性肝炎の患者33名について、ステロイド製剤であるプレドニゾロン(PSL)を用いて内服治療した。治療前及び寛解後の各患者の血清試料について、実施例1に示す方法と同手法により抗PD-1抗体価を測定した。
実施例1の表1に示す各患者の血清試料について、抗CTLA-4抗体価を測定した。抗CTLA-4抗体価の測定は、PD-1抗原をCTLA-4抗原(Avnova社製)に変更した以外は、実施例1に示すELISA法と同手法により行った。
実施例1の表1に示す各患者のうち、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎の各患者血清試料について、抗BTLA抗体価を測定した。抗BTLA抗体価の測定は、PD-1抗原をBTLA抗原(Avnova社製)に変更した以外は、実施例1に示すELISA法と同手法により行った。
実施例1の表1に示す各患者より採血を行い、通常の臨床検査に用いる処理を行って得た血清試料について、免疫沈降法及びウエスタンブロッティング法により、血清中の抗PD-1抗体を検出した。測定は、以下の手順で行った。
2)常法に従いプロテインGを洗浄した後、プロテインGを含む溶液を調製した。
3)抗原として、遺伝子組換えPD-1(H00005133-Q01: Avnova社、台湾)を2.5μg/mlとなるようにプロテインGを含む溶液に加えて1時間処理し、プロテインGに非特異的に吸着された血清中IgGとPD-1抗原とを反応させた。血清中に抗PD-1抗体が存在する場合にPD-1抗原との間で抗原抗体反応が生じ、プロテインG-IgG-PD-1抗原の複合体が形成される。
4)常法に従い洗浄後、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)でプロテインGに吸着したタンパク質を溶出させた。溶出液中には、IgG、血清中に抗PD-1抗体が存在する場合はPD-1抗原が含まれる。
5)溶出したタンパク質の溶液に、2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4%SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 12% メルカプロエタノール, 0.004% BPB (Bromophenol blue))を添加した後、常法に従ってSDS-PAGEによる電気泳動を行った。
6)泳動したタンパク質を常法に従ってPVDFメンブレンにブロッティングさせ、1時間のブロッキング処理後、一次抗体としてのマウス抗PD-1抗体(H00005133-A01 : Avnova社、台湾)を1時間処理し、泳動したタンパクのうち、PD-1抗原とマウス抗PD-1抗体の抗原抗体反応を起こさせた。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗マウスIgG抗体(RPN2124: GE Healthcare社、UK)を二次抗体として1時間反応させた。さらに洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。
各種疾患患者について、実施例1に記載のELISA法により測定した抗PD-1抗体価測定結果と、各疾患に対する感度及び特異度を調べた。その結果、抗PD-1抗体についてカットオフ値(健常人における平均値+2SD)よりも高い場合の、感度及び特異度は、表5に示す如くであり、健常人との識別が可能であることが確認された。
各種疾患患者について、実施例3に記載のELISA法により測定した抗CTLA-4抗体価測定結果と、各疾患に対する感度及び特異度を調べた。その結果、抗CTLA-4抗体価についてカットオフ値(健常人における平均値+2SD)よりも高い場合の、感度及び特異度は、表6に示す如くであり、健常人との識別が可能であることが確認された。
各種疾患患者について、実施例4に記載のELISA法により測定した抗BTLA抗体価測定結果と、各疾患に対する感度及び特異度を調べた。その結果、抗BTLA抗体価についてカットオフ値(健常人における平均値+2SD)よりも高い場合の、感度及び特異度は、表7に示す如くであり、健常人との識別が可能であることが確認された。
実施例6〜8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせにより自己免疫性肝炎と薬物性肝障害の鑑別を行った。
その結果、表8に示すように抗PD-1抗体の測定により優れた特異度を示すことが確認された。また、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体のいずれもが(+)の場合、あるいは抗PD-1抗体と抗BTLA抗体のいずれもが(+)の場合にも、高い特異度を示すことが確認された。一方、抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体のいずれかが(+)、あるいは抗PD-1抗体又は抗BTLA抗体のいずれかが(+)の場合は、感度はややすぐれた値を示すが、特異度は高くなかった。
実施例6〜8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせにより自己免疫性肝炎と原発性硬化性胆管炎の鑑別を行った。
その結果、表9に示すように抗BTLA抗体の測定により優れた特異度を示すことが確認された。また、抗BTLA抗体と抗CTLA-4抗体のいずれもが(+)の場合、あるいは抗BTLA抗体と抗PD-1抗体のいずれもが(+)の場合にも、高い特異度を示すことが確認された。一方、抗BTLA抗体又は抗CTLA-4抗体のいずれかが(+)、あるいは抗BTLA抗体又は抗PD-1抗体のいずれかが(+)の場合は、感度はややすぐれた値を示すが、特異度は高くなかった。
実施例6〜8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせにより慢性B型肝炎と急性B型肝炎の鑑別を行った。
その結果、表10に示すように抗PD-1抗体の測定により優れた特異度を示すことが確認された。また、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体のいずれもが(+)の場合、あるいは抗PD-1抗体と抗BTLA抗体のいずれもが(+)の場合にも、高い特異度を示すことが確認された。一方、抗PD-1抗体又は抗BTLA抗体のいずれかが(+)の場合は、感度はすぐれた値を示すが、特異度は高くなかった。
実施例6〜8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせによりクローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別を行った。
その結果、表11に示すように、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体及び抗BTLA抗体が(+)の場合に、高い特異度を示したが、特に抗BTLA抗体の測定によりクローン病に対して優れた特異度を示すことが確認された。さらに、上記各種抗体について、いずれか2種以上の抗体が(+)の場合に、クローン病に対してより優れた特異度を示すことが確認された。
自己免疫性肝患者について、実施例1に記載のELISA法により測定した抗PD-1抗体価とアラニンオキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(Alanine Aminotransferase: ALT, GPT)ともいう。)又はIgGとの相関性について確認した(図10、11参照)。ALTは、AST(GOT)と共に肝細胞に障害を受けると上昇するマーカーであるが、特にALTの大部分は肝細胞に含まれるので肝臓病の疾患が疑われる。図10及び図12の結果より、自己免疫性肝疾患患者の抗PD-1抗体価に関し、IgGに比べるとALTのほうが相関性が高いことが確認された。これにより、抗PD-1抗体は、疾患活動性と相関が認められるものと考えられた。慢性炎症性疾患では、血清中IgGの上昇が非特異的に認められるが、血清中のIgGの測定により、抑制性の補助刺激分子に対する抗体価を評価することはできないものと考えられた。
**:P<0.01
***:P<0.001
****:P<0.0001
Claims (15)
- 採取した生体検体中の抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、慢性炎症性疾患の検査方法。
- 抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するPD-1 (Programmed Cell Death protein 1)であり、抗PD-1抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、請求項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するBTLA (B and T lymphocyte attenuator)であり、抗BTLA抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、請求項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するCTLA-4 (Cytotoxic T-Lymphocyte Antigen 4)であり、抗CTLA-4抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、請求項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 抑制性補助刺激分子に対する抗体として、抗PD-1抗体及び抗BTLA抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、請求項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 抑制性補助刺激分子に対する抗体として、さらに抗CTLA-4抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、請求項4又は5に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 前記慢性炎症性疾患が、自己免疫性疾患、ウイルス性慢性疾患又は生体成分移植後の慢性拒絶反応である、請求項1〜6のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 前記自己免疫性疾患が、自己免疫性肝炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎及び原発性胆汁性肝硬変より選択されるいずれかである、請求項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 前記ウイルス性慢性疾患が、B型慢性肝炎又はC型慢性肝炎である、請求項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 前記生体成分移植後の慢性拒絶反応が、臓器、組織及び/又は細胞の移植後の慢性拒絶反応である、請求項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
- 慢性炎症性疾患が、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であり、以下の工程を含む、請求項1、2及び5〜10のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗PD-1抗体価を測定する工程;
2)上記測定した抗PD-1抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。 - さらに以下の工程を含む、請求項11に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗BTLA抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗BTLA抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。 - さらに以下の工程を含む、請求項11又は12に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗CTLA-4抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗CTLA-4抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。 - PD-1抗原を少なくとも含み、抗PD-1抗体検出用デバイスを含む、請求項1、2及び5〜13のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
- さらに、BTLA抗原及び/又はCTLA-4抗原と、各抗原に対する抗体検出用デバイスを含む、請求項14に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
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