以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図2は、本実施の形態における画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
画像符号化装置1000は、符号化処理部1100と符号化制御部1200とを備える。
符号化処理部1100は、動画像をブロックごとに符号化することによって符号化ストリームを生成する。このような符号化処理部1100は、減算器1101、直交変換部1102、量子化部1103、エントロピー符号化部1104、逆量子化部1105、逆直交変換部1106、加算器1107、デブロッキングフィルタ1108、メモリ1109、面内予測部1110、動き補償部1111、動き検出部1112、およびスイッチ1113を備える。
減算器1101は、動画像を取得するとともに、スイッチ1113から予測画像を取得する。そして、減算器1101は、その動画像に含まれる符号化対象ブロックから予測画像を減算することによって差分画像を生成する。
直交変換部1102は、減算器1101によって生成された差分画像に対して例えば離散コサイン変換などの直交変換を行うことによって、その差分画像を複数の周波数係数からなる係数ブロックに変換する。量子化部1103は、その係数ブロックに含まれる各周波数係数を量子化することによって、量子化された係数ブロックを生成する。
エントロピー符号化部1104は、量子化部1103によって量子化された係数ブロックと、動き検出部1112によって検出された動きベクトルとをエントロピー符号化(可変長符号化)することによって符号化ストリームを生成する。
逆量子化部1105は、量子化部1103によって量子化された係数ブロックを逆量子化する。逆直交変換部1106は、その逆量子化された係数ブロックに含まれる各周波数係数に対して逆離散コサイン変換などの逆直交変換を行うことによって、復号差分画像を生成する。
加算器1107は、スイッチ1113から予測画像を取得し、その予測画像と、逆直交変換部1106によって生成された復号差分画像とを加算することによって局所復号画像を生成する。
デブロッキングフィルタ1108は、加算器1107によって生成された局所復号画像のブロック歪みを除去し、その局所復号画像をメモリ1109に格納する。
面内予測部1110は、加算器1107によって生成された局所復号画像を用いて符号化対象ブロックに対して面内予測を行うことによって予測画像を生成する。
動き検出部1112は、動画像に含まれる符号化対象ブロックに対して動きベクトルを検出し、その検出された動きベクトルを動き補償部1111とエントロピー符号化部1104に出力する。
動き補償部1111は、メモリ1109に格納されている画像を参照画像として参照するとともに、動き検出部1112によって検出された動きベクトルを用いることによって、符号化対象ブロックに対して動き補償を行う。動き補償部1111は、このような動き補償によって符号化対象ブロックに対する予測画像を生成する。
スイッチ1113は、符号化対象ブロックが面内予測符号化される場合には、面内予測部1110によって生成された予測画像を減算器1101および加算器1107に出力する。一方、スイッチ1113は、符号化対象ブロックが画面間予測符号化される場合には、動き補償部1111によって生成された予測画像を減算器1101および加算器1107に出力する。
符号化制御部1200は、符号化処理部1100を制御する。具体的には、符号化制御部1200は、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納される処理単位と、その処理単位がある場所を特定するための階層深さ情報とを決定する。適応動きベクトル解像度切換フラグは、動き補償部1111および動き検出部1112による画面間予測(動き検出および動き補償)に用いられるフラグである。本実施の形態における処理単位は階層化され、何れかの階層の処理単位が上述のブロックに相当する。階層深さ情報は、例えば、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている処理単位がある階層を特定するためのパラメータである。符号化制御部1200は、エントロピー符号化部1104に対して、適応動きベクトル解像度切換フラグを上述の決定された処理単位に格納するように指示するとともに、階層深さ情報を符号化ストリームのヘッダ(例えばシーケンスヘッダまたはピクチャヘッダ)に格納するように指示する。
図3は、本実施の形態における画像復号装置の構成を示すブロック図である。
画像復号装置2000は、復号処理部2100と復号制御部2200とを備える。
復号処理部2100は、符号化ストリームをブロックごとに復号することによって復号画像を生成する。このような復号処理部2100は、エントロピー復号部2101、逆量子化部2102、逆直交変換部2103、加算器2104、デブロッキングフィルタ2105、メモリ2106、面内予測部2107、動き補償部2108、およびスイッチ2109を備える。
エントロピー復号部2101は、符号化ストリームを取得し、その符号化ストリームをエントロピー復号(可変長復号)する。
逆量子化部2102は、エントロピー復号部2101によるエントロピー復号によって生成された、量子化された係数ブロックを逆量子化する。逆直交変換部2103は、その逆量子化された係数ブロックに含まれる各周波数係数に対して逆離散コサイン変換などの逆直交変換を行うことによって、復号差分画像を生成する。
加算器2104は、スイッチ2109から予測画像を取得し、その予測画像と、逆直交変換部2103によって生成された復号差分画像とを加算することによって復号画像を生成する。
デブロッキングフィルタ2105は、加算器2104によって生成された復号画像のブロック歪みを除去し、その復号画像をメモリ2106に格納するとともに、その復号画像を出力する。
面内予測部1110は、加算器2104によって生成された復号画像を用いて復号対象ブロックに対して面内予測を行うことによって予測画像を生成する。
動き補償部2108は、メモリ2106に格納されている画像を参照画像として参照するとともに、エントロピー復号部2101によるエントロピー復号によって生成された動きベクトルを用いることによって、復号対象ブロックに対して動き補償を行う。動き補償部2108は、このような動き補償によって復号対象ブロックに対する予測画像を生成する。
スイッチ2109は、復号対象ブロックが面内予測符号化されている場合には、面内予測部2107によって生成された予測画像を加算器2104に出力する。一方、スイッチ2109は、復号対象ブロックが画面間予測符号化されている場合には、動き補償部2108によって生成された予測画像を加算器2104に出力する。
復号制御部2200は、復号処理部2100を制御する。具体的には、復号制御部2200は、エントロピー復号部2101によるエントロピー復号の結果に基づいて、符号化ストリームのヘッダ(例えばシーケンスヘッダまたはピクチャヘッダ)に格納されている階層深さ情報を解析する。そして、復号制御部2200は、その階層深さ情報に基づいて、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている処理単位の階層を特定し、その階層にある処理単位に含まれる適応動きベクトル解像度切換フラグを解析する。復号制御部2200は、その解析された適応動きベクトル解像度切換フラグを用いた画面間予測(動き補償)を動き補償部2108に指示する。
図4は、階層化された処理単位(多階層ブロック構造)を説明するための説明図である。
符号化処理部1100は、動画像を処理単位ごとに符号化し、復号処理部2100は、符号化ストリームを処理単位ごとに復号する。この処理単位は、複数の小さな処理単位に分割され、その小さな処理単位がさらに複数のより小さな処理単位に分割されるように、階層化されている。なお、処理単位が小さいほど、その処理単位がある階層は深く、下位にあり、その階層を示す値は大きい。逆に、処理単位が大きいほど、その処理単位がある階層は浅く、上位にあり、その階層を示す値は小さい。
処理単位には、符号化単位(CU)と予測単位(PU)と変換単位(TU)とがある。CUは、最大128×128画素からなるブロックであり、従来のマクロブロックに相当する単位である。PUは、画面間予測の基本単位である。TUは、直交変換の基本単位であり、そのTUのサイズはPUと同じか、PUよりも一階層小さいサイズである。CUは、例えば4つのサブCUに分割され、そのうちの1つのサブCUは、そのサブCUと同じサイズのPUおよびTUを含む(この場合、PUとTUは互いに重なった状態にある)。例えば、そのPUはさらに4つのサブPUに分割され、TUもさらに4つのサブTUに分割される。なお、処理単位が複数の小さい処理単位に分割される場合、その小さい処理単位をサブ処理単位という。例えば、処理単位がCUの場合では、サブ処理単位はサブCUであり、処理単位がPUの場合では、サブ処理単位はサブPUであり、処理単位がTUの場合では、サブ処理単位はサブTUである。
具体的には、以下のとおりである。
ピクチャはスライスに分割される。スライスは最大符号化単位のシーケンスである。最大符号化単位の位置は、最大符号化単位アドレスlcuAddrによって示される。
最大符号化単位を含むそれぞれの符号化単位は、4つの符号化単位に分割される。その結果、符号化単位の大きさの四分木分割が構成される。符号化単位の位置は、最大符号化単位の左上端のサンプル(画素または係数)を起点とした符号化単位インデックスcuIdxによって示される。
符号化単位の分割が許可されていない場合、その符号化単位は予測単位として扱われる。符号化単位と同様に、予測単位の位置は、最大符号化単位の左上端のサンプルを起点とした予測単位インデックスpuIdxによって示される。
予測単位は複数のパーティション(予測単位パーティションまたはサブPU)を含んでいてもよい。予測単位パーティションは、予測単位の左上端のサンプルを起点とした予測単位パーティションインデックスpuPartIdxによって示される。
予測単位は複数の変換単位を含んでいてもよい。符号化単位と同様に、変換単位は4つの小さいサイズの変換単位(サブ変換単位)に分割されてもよい。このことは、残差信号の四分木分割を許可する。変換単位の位置は、予測単位の左上端のサンプルを起点とした変換単位インデックスtuIdxによって示される。
ここで、各処理単位の定義は以下のとおりである。
CTB(coding tree block):正方形領域の四分木分割を特定するための基本単位。CTBは正方形の多様なサイズを有する。
LCTB(largest coding tree block):スライスにおいて許可される最も大きいサイズのCTB。スライスは重複しない複数のLCTBからなる。
SCTB(smallest coding tree block):スライスにおいて許可される最も小さいサイズのCTB。SCTBをより小さいCTBに分割することは許可されていない。
PU(prediction unit):予測処理を特定するための基本単位。PUのサイズは、分割が許可されていないCUのサイズと同じである。CUでは、CUを4つの正方形領域に分割することが許可されているのに対して、PUでは、PUを任意の形状の複数のパーティションに分割することができる。
TU(transform unit):変換および量子化を特定するための基本単位。
CU(coding unit):CTBと同一。
LCU(largest coding unit):最も大きいCTBと同一。
SCU(smallest coding unit):最も小さいCTBと同一。
図5は、HEVC規格において検討されている符号化ストリームの構成を示す図である。
HEVC規格において検討されている符号化ストリームでは、適応動きベクトル解像度切換フラグは各PUに格納される。例えば、図5に示すように、LCUは4つのサブCUに分割され、それぞれのサブCUはPUとTUを有する。PUは、さらに4つのサブPUに分割される。このような場合、4つのサブPUのそれぞれに適応動きベクトル解像度切換フラグ(mvres)が格納される。つまり、画像符号化装置は、適応動きベクトル解像度切換フラグをPUごとに常に画像復号装置に送信しなければならない。その結果、オーバーヘッドが多くなり、すなわち、符号化ストリームの符号量が多く、符号化効率が低下してしまう。
そこで、本実施の形態の画像符号化装置1000によって生成され、画像復号装置2000によって復号される符号化ストリームでは、最下位のPUよりも浅い上位の階層にある処理単位に、その処理単位に共通の適応動きベクトル解像度切換フラグが格納される。
図6は、本実施の形態における符号化ストリームの構成を示す図である。
符号化ストリームでは、例えば図6に示すように、LCUが4つのサブCUに分割され、それぞれのサブCUはPUとTUを有する。PUは、さらに4つのサブPUに分割される。このような場合、本実施の形態における符号化ストリームでは、最下位のサブPUには適応動きベクトル解像度切換フラグ(mvres)が格納されておらず、そのサブPUよりも浅い上位の階層にある例えばサブCUに、そのサブCUに共通の適応動きベクトル解像度切換フラグが格納される。これにより、本実施の形態では、オーバーヘッドを少なくして符号化効率の向上を図ることができる。
なお、サブCUに格納される適応動きベクトル解像度切換フラグは、そのサブCUに含まれる各サブPUに共通の1つの適応動きベクトル解像度切換フラグではなく、各サブPUのそれぞれの4つの適応動きベクトル解像度切換フラグのセットであってもよい。これにより、各サブPUのそれぞれの適応動きベクトル解像度切換フラグがまとめて一括で同じ場所に格納されるため、画像復号装置2000による復号処理の容易化を図ることができる。また、処理単位(サブCU)内において適応動きベクトル解像度切換フラグが格納される位置は、その処理単位の先頭であっても終端であってもよい。
さらに、本実施の形態における符号化ストリームでは、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている最下位の処理単位の階層を示す階層深さ情報(maximum hierarchy depth)が、シーケンスヘッダなどのヘッダに格納される。例えば、maximum hierarchy depth=2である。
画像符号化装置1000は、このような符号化ストリームを生成して出力する。一方、画像復号装置2000は、符号化ストリームのシーケンスヘッダなどのヘッダに格納されている階層深さ情報(maximum hierarchy depth)を解析することによって、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている処理単位(2階層目にあるサブCU)を特定し、その処理単位に格納されている適応動きベクトル解像度切換フラグを解析する。そして、画像復号装置2000は、その適応動きベクトル解像度切換フラグを、その適応動きベクトル解像度切換フラグを格納しているサブCUに含まれる各PUに適用することによって、画面間予測を行う。
図7Aおよび図7Bは、階層深さ情報(maximum hierarchy depth)の格納位置を示す図である。
階層深さ情報(maximum hierarchy depth)D300は、図7Aに示すように、シーケンスヘッダに格納されている。または、階層深さ情報(maximum hierarchy depth)D302は、図7Bに示すように、ピクチャヘッダに格納されている。
図8は、本実施の形態における画像復号装置2000による復号を示すフローチャートである。
画像復号装置2000は、まず、ピクチャヘッダに格納されている階層深さ情報(maximum hierarchy depth)を解析し(ステップS1)、CUのフラグを解析する(ステップS2)。次に、画像復号装置2000は、その解析されたフラグに基づいてCUをより小さい複数のサブCUに分割する(ステップS3)。そして、画像復号装置2000は、そのサブCUの階層を決定し(ステップS4)、その決定された階層が、階層深さ情報(maximum hierarchy depth)によって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS5)。
ここで、一致すると判別すると(ステップS5のYes)、画像復号装置2000は、そのサブCUに格納されている適応動きベクトル解像度切換フラグを解析し(ステップS6)、その解析された適応動きベクトル解像度切換フラグを用いた画面間予測を行うことによって、そのサブCUである処理単位を復号する(ステップS7)。
一方、ステップS5で一致しないと判別すると(ステップS5のNo)、画像復号装置2000は、そのサブCUを4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述の解析されたフラグに基づいて判別する(ステップS8)。ここで、できると判別すると(ステップS8のNo)、画像復号装置2000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS9)、その選択されたサブCUに対してステップS4からの処理を実行する。
一方、ステップS8において、できないと判別すると(ステップS8のYes)、画像復号装置2000は、そのサブCU、すなわちPUの分割シンタックスエレメントを解析する(ステップS10)。この分割シンタックスエレメントは、PUが複数のサブPUに分割される際における、そのサブPUの数と、そのサブPUのサイズとを示す。さらに、画像復号装置2000は、その解析された分割シンタックスエレメントに基づいて、サブCU、すなわちPUをより小さいPU(サブPU)に分割する(ステップS11)。そして、画像復号装置2000は、サブPUのそれぞれに対する適応動きベクトル解像度切換フラグを解析し(ステップS12)、ステップS7の処理を実行する。
図9は、本実施の形態における画像符号化装置1000による符号化を示すフローチャートである。
画像符号化装置1000は、まず、ピクチャヘッダに階層深さ情報(maximum hierarchy depth)を書き込み(ステップS21)、CUを分割するための最適なサイズを決定する(ステップS22)。次に、画像符号化装置1000は、その決定されたサイズの処理単位にCUを分割するためのフラグをそのCUに書き込む(ステップS23)。そして、画像符号化装置1000は、符号化対象の処理単位(CUまたはサブCU)の階層を決定し(ステップS24)、その決定された階層が、先に書き込まれた階層深さ情報(maximum hierarchy depth)によって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS25)。
ここで、一致すると判別すると(ステップS25のYes)、画像符号化装置1000は、その処理単位(CUまたはサブCU)に適応動きベクトル解像度切換フラグを書き込み(ステップS26)、その書き込まれた適応動きベクトル解像度切換フラグを用いた画面間予測を行うことによって、その処理単位を符号化する(ステップS27)。さらに、画像符号化装置1000は、その書き込まれた適応動きベクトル解像度切換フラグを用いた画面間予測を行うことによって、その符号化された処理単位を復号する(ステップS28)。
一方、ステップS25で一致しないと判別すると(ステップS25のNo)、画像符号化装置1000は、その処理単位を4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述のフラグに基づいて判別する(ステップS29)。ここで、できると判別すると(ステップS29のNo)、画像符号化装置1000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS30)、その選択されたサブCUに対してステップS24からの処理を実行する。
一方、ステップS29において、できないと判別すると(ステップS29のYes)、画像符号化装置1000は、その処理単位(CUまたはサブCU)、すなわちPUに分割シンタックスエレメントを書き込む(ステップS31)。この分割シンタックスエレメントは、PUが複数のサブPUに分割される際における、そのサブPUの数と、そのサブPUのサイズとを示す。さらに、画像符号化装置1000は、その書き込まれた分割シンタックスエレメントに基づいて、処理単位、すなわちPUをより小さいPU(サブPU)に分割する(ステップS32)。そして、画像符号化装置1000は、サブPUのそれぞれに適応動きベクトル解像度切換フラグを書き込み(ステップS33)、ステップS27からの処理を実行する。
このように本実施の形態における画像符号化装置1000は、ピクチャヘッダなどのヘッダに階層深さ情報(maximum hierarchy depth)を含めて送信する。そして、最下位のCU(サブCU)の階層がmaximum hierarchy depthにより示される階層よりも浅ければ、画像符号化装置1000は、そのCU(サブCU)に含まれるPUのそれぞれに対する適応動きベクトル解像度切換フラグを個別に送信する。一方、最下位のCU(サブCU)の階層がmaximum hierarchy depthにより示される階層と等しいか、maximum hierarchy depthにより示される階層よりも深ければ、画像符号化装置1000は、maximum hierarchy depthにより示される階層のCU(サブCU)に対してcombined mvresを送信する。このcombined mvresは、そのCU(サブCU)に含まれる全てのPUに対して適用される適応動きベクトル解像度切換フラグである。
なお、本実施の形態における画像符号化装置1000は、上述のように、最下位のCUの階層がmaximum hierarchy depthにより示される階層と等しいか、maximum hierarchy depthにより示される階層よりも深ければ、画像符号化装置1000は、maximum hierarchy depthにより示される階層のCU(サブCU)に対して適応動きベクトル解像度切換フラグを書き込むが、その階層よりも浅い上位のCU(サブCU)に適応動きベクトル解像度切換フラグを書き込んでもよい。この場合には、画像復号装置2000は、そのmaximum hierarchy depthにより示される階層よりも浅い上位のCU(サブCU)に格納されている適応動きベクトル解像度切換フラグを解析する。
このように本実施の形態における画像符号化方法では、同じ適応動きベクトル解像度切換フラグを、小さい複数の予測単位のそれぞれに繰り返し書き込むことなく、それらの予測単位よりも上位の階層にあって、それらの予測単位を含む大きな処理単位に、適応動きベクトル解像度切換フラグが1つだけ書き込まれる。したがって、適応動きベクトル解像度切換フラグの冗長性を排除し、符号化効率の向上を図ることができる。また、画像復号装置2000は、階層深さ情報を解析することによって、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている処理単位のある階層を特定するため、適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている処理単位を検索する処理負担を軽減することができ、かつ、画像符号化装置1000によって生成された符号化ストリームを適切に復号することができる。
(変形例1)
本実施の形態における第1の変形例に係る画像符号化装置1000は、ピクチャヘッダなどのヘッダに第1のフラグを含めて送信する。この第1のフラグは、最下位のCU(サブCU)にcombined mvresが格納されているか否かを示す。つまり、画像符号化装置1000は、combined mvresの格納が第1のフラグによって示されている場合には、そのCU(サブCU)に対してcombined mvresを送信する。つまり、そのCU(サブCU)のサイズに関わらず、そのCU(サブCU)に含まれる全てのPUに対して共通のcombined mvresが送信される。一方、combined mvresの格納が第1のフラグによって示されていない場合には、画像符号化装置1000は、そのCU(サブCU)に含まれるPUのそれぞれに対する適応動きベクトル解像度切換フラグを個別に送信する。つまり、各PUのサイズに関わらず、PUのそれぞれに対して個別の適応動きベクトル解像度切換フラグが送信される。
図10は、本実施の形態における第1の変形例に係る画像復号装置2000による復号を示すフローチャートである。
画像復号装置2000は、まず、ピクチャヘッダに格納されている第1のフラグを解析し(ステップS41)、さらに、CUに格納されている第2のフラグを解析する(ステップS42)。次に、画像復号装置2000は、その解析された第2のフラグに基づいてCUをより小さい複数のサブCUに分割する(ステップS43)。そして、画像復号装置2000は、そのサブCUを4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述の解析された第2のフラグに基づいて判別する(ステップS44)。ここで、できると判別すると(ステップS44のNo)、画像復号装置2000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS45)、その選択されたサブCUに対してステップS43からの処理を実行する。一方、できないと判別すると(ステップS44のYes)、画像復号装置2000は、さらに、ステップS41で解析された第1のフラグが最下位のCU(サブCU)における適応動きベクトル解像度切換フラグの解析を示しているか否かを判別する(ステップS46)。
ここで、適応動きベクトル解像度切換フラグの解析を示していると判別すると(ステップS46のYes)、画像復号装置2000は、最下位のCU(サブCU)に対する適応動きベクトル解像度切換フラグを解析し(ステップS47)、その解析された適応動きベクトル解像度切換フラグを用いた画面間予測を行うことによって、そのCU(サブCU)である処理単位を復号する(ステップS48)。
一方、ステップS46において、適応動きベクトル解像度切換フラグの解析を示していないと判別すると(ステップS46のNo)、画像復号装置2000は、その最下位のCU(サブCU)、すなわちPUの分割シンタックスエレメントを解析する(ステップS49)。この分割シンタックスエレメントは、PUが複数のサブPUに分割される際における、そのサブPUの数と、そのサブPUのサイズとを示す。さらに、画像復号装置2000は、その解析された分割シンタックスエレメントに基づいて、最下位のCU(サブCU)、すなわちPUをより小さいPU(サブPU)に分割する(ステップS50)。そして、画像復号装置2000は、サブPUのそれぞれに対する適応動きベクトル解像度切換フラグを解析し(ステップS51)、ステップS48の処理を実行する。
(変形例2)
上記実施の形態における画像符号化装置1000は、複数のサブPUを含む上位の階層の処理単位(例えばCUまたはサブCU)に、各サブPUに対して適用される適応動きベクトル解像度切換フラグを格納する。また、上記実施の形態における画像復号装置2000は、その上位階層の処理単位に格納されている適応動きベクトル解像度切換フラグを解析し、その適応動きベクトル解像度切換フラグを上述の各サブPUに適用する。
これに対して、本変形例に係る画像符号化装置1000は、複数のサブPUを含む上位の階層の処理単位に、各サブPUに対して適用される適応動きベクトル解像度切換フラグを格納するとともに、各サブPUに対して適用される参照インデックス(ref_idx)を格納する。また、本変形例に係る画像復号装置2000は、その上位階層の処理単位に格納されている参照インデックスおよび適応動きベクトル解像度切換フラグを解析し、その参照インデックスおよび適応動きベクトル解像度切換フラグを上述の各サブPUに適用する。なお、参照インデックスは、参照フレームインデックスとも呼ばれ、画面間予測において参照される参照画像を示すインデックスである。
図11は、本変形例に係る画像復号装置2000によるPUの復号を示すフローチャートである。
まず、画像復号装置2000は、PUのシンタックスエレメントを解析し、予測モードを導出する(ステップS61)。そして、画像復号装置2000は、その予測モードが画面間予測であるか否かを判別する(ステップS62)。ここで、画面間予測ではないと判別すると(ステップS62のNo)、画像復号装置2000は、その予測モードに関連するシンタックスエレメントを解析する(ステップS63)。一方、画面間予測であると判別すると(ステップS62のYes)、画像復号装置2000は、シンタックスを解析して、そのPUに含まれるPU(サブPU)の数(numPUParts)と、各PUのサイズ(currPUSize[numPUParts])を導出する(ステップS64)。
次に、画像復号装置2000は、導出れた数のPUのそれぞれに対してステップS66〜S71の処理を実行する。具体的には、画像復号装置2000は、マージフラグ(merge_flag[i], merge_left_flag[i])および/またはinter_pred_idc[i]を解析し(ステップS66)、PUがマージされておらず(PUをさらに分割できない)、PUのサイズがMinRefIdxUnitよりも小さいか否かを判別する(ステップS67)。ここで、PUがマージされておらず、PUのサイズがMinRefIdxUnitよりも小さいと判別すると(ステップS67のYes)、画像復号装置2000は、そのPUに格納されている参照インデックス(ref_idx_l0[i], ref_idx_l1[i])を解析する(ステップS68)。さらに、画像復号装置2000は、PUがマージされておらず、PUのサイズがMinMVResUnitよりも小さいか否かを判別する(ステップS69)。ここで、PUがマージされておらず、PUのサイズがMinMVResUnitよりも小さいと判別すると(ステップS69のYes)、画像復号装置2000は、そのPUに格納されている適応動きベクトル解像度切換フラグ(mvres_l0[i], mvres_l1[i])を解析する(ステップS70)。さらに、画像復号装置2000は、差分動きベクトル(mvd_l0[i], mvd_l1[i])およびmvp_idx(mvp_idx_l0[i], mvp_idx_l1[i])を解析する(ステップS71)。
次に、画像復号装置2000は、復号対象のCUのサイズ(currCUSize)がMinRefIdxUnit以上であって、少なくとも1つのPUがマージされていないか否かを判別する(ステップS72)。ここで、MinRefIdxUnit以上であって、マージされていないと判別すると(ステップS72のYes)、画像復号装置2000は、復号対象CUの参照インデックス(cu_ref_idx_l0, cu_ref_idx_l1)を解析する(ステップS73)。さらに、画像復号装置2000は、復号対象のCUのサイズがMinMVResUnit以上であって、少なくとも1つのPUがマージされていないか否かを判別する(ステップS74)。ここで、MinMVResUnit以上であって、マージされていないと判別すると(ステップS74のYes)、画像復号装置2000は、復号対象CUの適応動きベクトル解像度切換フラグ(cu_mvres_l0, cu_mvres_l1)を解析する(ステップS75)。
以上、本発明の画像復号方法および画像符号化方法について、上記実施の形態およびその変形例を用いて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態1およびその変形例における画像復号方法では、図8のステップS2およびS4などの処理を含んでいるが、本発明はそれらの処理がなくても、上述の効果を奏することができる。
図12Aは、本発明の画像復号方法を示すフローチャートである。
本発明の画像復号方法は、画面間予測を伴って動画像を符号化することによって生成された、複数の処理単位と、その複数の処理単位に対するヘッダとを含む符号化ストリームを復号する画像復号方法である。ここで、その複数の処理単位のうち少なくとも1つの処理単位は、複数のより小さい処理単位に分割されて、上位から下位に向かって処理単位がより小さくなるように階層化されており、最上位の階層には最も大きい処理単位として符号化単位があり、その最上位の階層よりも深い下位の階層には符号化単位よりも小さい処理単位として予測単位がある。この画像復号方法では、まず、最も小さい予測単位がある最下位の階層よりも上位の階層を示す、上述のヘッダに格納されている階層深さ情報を解析することによって、その階層深さ情報により示される階層またはその階層よりも上位の階層であって、復号に必要な適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている予測単位のある階層を特定する(ステップS101)。次に、特定された階層にある予測単位に格納されている適応動きベクトル解像度切換フラグを用いて、その予測単位を復号する(ステップS102)。
このような、ステップS101およびS102の処理を行うことによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の処理は本発明において必須の処理ではない。また、本発明の画像復号装置は、ステップS101およびS102のそれぞれの処理を実行する構成要素を備えることによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の構成要素は本発明において必須の構成要素ではない。なお、実施の形態1の画像復号装置2000では、復号制御部2200がステップS101の処理を実行し、復号処理部2100がステップS102の処理を実行する。
また、上記実施の形態1およびその変形例における画像符号化方法では、図9のステップS22などの処理を含んでいるが、本発明はそのような処理がなくても、上述の効果を奏することができる。
図12Bは、本発明の画像符号化方法を示すフローチャートである。
本発明の画像符号化方法は、画面間予測を伴って動画像を符号化することにより、複数の処理単位と、その複数の処理単位に対するヘッダとを含む符号化ストリームを生成する画像符号化方法である。ここで、その複数の処理単位のうち少なくとも1つの処理単位は、複数のより小さい処理単位に分割されて、上位から下位に向かって処理単位がより小さくなるように階層化されており、最上位の階層には最も大きい処理単位として符号化単位があり、その最上位の階層よりも深い下位の階層には符号化単位よりも小さい処理単位として予測単位がある。この画像符号化方法では、まず、画面間予測を伴って動画像を符号化する(ステップS111)。次に、復号に必要な適応動きベクトル解像度切換フラグが格納されている予測単位のある階層を特定するための情報であって、最も小さい予測単位がある最下位の階層よりも上位の階層を示す階層深さ情報を、上述のヘッダに書き込む(ステップS112)。次に、階層深さ情報により示される階層またはその階層よりも上位の階層にある予測単位に、その予測単位に適用される適応動きベクトル解像度切換フラグを書き込む(ステップS113)。
このような、ステップS111〜S113の処理を行うことによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の処理は本発明において必須の処理ではない。また、本発明の画像符号化装置は、ステップS111〜S113のそれぞれの処理を実行する構成要素を備えることによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の構成要素は本発明において必須の構成要素ではない。なお、実施の形態1の画像符号化装置1000では、符号化制御部1200による制御に基づいてエントロピー符号化部1104がステップS111〜S113の処理を実行する。
なお、本発明に関連するヘッダのシンタックスは、図13A〜図13Cに示すとおりであり、本発明に関連する処理単位(CU、PUおよびTU)のシンタックスは、図14A〜図14Cに示すとおりである。
図13Aは、シーケンスヘッダのシンタックスを示す図である。このシーケンスヘッダでは、例えば、参照し得る最大の参照フレーム数(max_num_ref_frames)、およびピクチャのサイズ(pic_widht_in_luma_samples, pic_height_in_luma_samples)などが規定されている。
図13Bは、ピクチャヘッダのシンタックスを示す図である。このピクチャヘッダでは、シンタックスの一部d1に示すように、参照方向(前方向および後方向)ごとに参照インデックスを保持し得る数が規定されているとともに、初期QP(初期QPから26を引いた数)が規定されている。
図13Cは、スライスヘッダのシンタックスを示す図である。このスライスヘッダは、シンタックスの一部d2に示すように、上述の参照インデックスの保持し得る数をスライスごとに書き換え可能に構成されている。また、このスライスヘッダには、シンタックスの他の部分d3に示すように、上述のピクチャヘッダに規定された初期QPからのQPの差分値が規定されている。
図14Aは、CUのシンタックスを示す図である。このCUでは、シンタックスの一部d4およびd5に示すように、そのCUに対するPUおよびTUが規定されている。
図14Bは、PUのシンタックスを示す図である。このPUは、シンタックスの一部d6およびd8に示すように、参照方向ごとに参照インデックスを有し、さらに、シンタックスの他の部分d7およびd9に示すように、参照方向ごとに適応動きベクトル解像度切換フラグ(mvres)を有している。
図14Cは、TUのシンタックスを示す図である。このTUは、シンタックスの一部d10に示すように、差分画像が直交変換されて量子化された係数(変換係数)を有する。
(実施の形態2)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法または画像復号方法の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
さらにここで、上記各実施の形態で示した画像符号化方法や画像復号方法の応用例とそれを用いたシステムを説明する。
図15は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
しかし、コンテンツ供給システムex100は図15のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号処理して再生する。
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
また、これら符号化・復号処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、図16に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも画像符号化装置または画像復号装置のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した画像符号化方法により符号化されたデータである。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号して再生する。
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した画像復号装置または画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に画像復号装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に画像復号装置を組み込んでもよい。
図17は、上記各実施の形態で説明した画像復号方法および画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305を有する信号処理部ex306と、復号した音声信号を出力するスピーカex307、復号した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号方法を用いて復号する。復号した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を図18に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
図19に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば図17に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
図20Aは、上記実施の形態で説明した画像復号方法および画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
さらに、携帯電話ex114の構成例について、図20Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した画像符号化方法によって圧縮符号化し、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した画像符号化方法に対応した画像復号方法によって復号することにより映像信号を復号し、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
このように、上記各実施の形態で示した画像符号化方法あるいは画像復号方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
図21は、多重化データの構成を示す図である。図21に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
図22は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
図23は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。図23における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。図23の矢印yy1,yy2, yy3, yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
図24は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには図24下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
図25はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
多重化データ情報ファイルは、図26に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
多重化データ情報は図26に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
ストリーム属性情報は図27に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
また、本実施の形態における画像復号方法のステップを図28に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した画像復号方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した画像符号化方法または装置、または、画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法および装置、画像復号方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、図29に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。図30は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、図29のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、図29の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態3で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態3で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、図32のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
図31は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
(実施の形態6)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を図33Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキングフィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
また、処理を一部共有化する他の例を図33Bのex1000に示す。この例では、本発明に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
このように、本発明の画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。