JPWO2011145548A1 - ジ(アリールアミノ)アリール化合物の結晶 - Google Patents

ジ(アリールアミノ)アリール化合物の結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】工業的生産において好適な性質を有する化合物Aの結晶を提供する。【解決手段】本発明者等は、EML4−ALK融合タンパク及び変異EGFRタンパクのキナーゼ活性の阻害活性を有する化合物Aの結晶の提供に関し鋭意研究した結果、化合物Aの結晶を見出した。さらには、これらの化合物Aの結晶のうち、意外にも、本発明の化合物AのA04型結晶が、医薬品原薬として好適な性質を有することを知見して、発明を完成した。【選択図】

Description

本発明は、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(以下、「化合物A」という。)の結晶に関する。
式(I)で示される化合物Aは、優れたEML4−ALK融合タンパク及び変異EGFRタンパクのキナーゼ活性の阻害活性を有し、癌治療用医薬組成物の有効成分として有用であることが報告(特許文献1)されている。
Figure 2011145548
特許文献1の実施例23には、融点が164〜165℃である化合物Aの結晶が記載されている。しかし、化合物Aが結晶多形を示すことについては、開示も示唆もない。
国際公開第WO2009/008371号パンフレット
医薬品原薬として好適であり、工業的生産において好適な性質を有する化合物Aの結晶を提供する。
医薬品の工業的生産においては、医薬品の均一な品質と安定な供給の確保が要求されることから、医薬品原薬として使用される化合物は、工業的生産に好適な性質を有し、取り扱いが容易な単一の形態であることが必要となる。
本発明者らは、化合物Aの結晶多形について鋭意研究した結果、意外にも、その詳細な製造条件の違いにより生成する結晶が変動し、化合物Aには少なくともA01型、A02型、A03型、A04型及びA05型の計5種の結晶が存在すること、及び化合物Aの水和物が存在することを見出した。また、本発明者らは、これらの化合物Aの結晶形のうち、意外にも、A04型結晶が、医薬品原薬として好適な性質を有することを知見したが、A04型結晶は、当初、安定性準位の近い結晶(特にA03結晶)や溶媒和物との混晶としてのみ得られ、単一な結晶として得ることが非常に困難であった。そこで、本発明者らは、A04型結晶の晶析条件について、数多くの試行錯誤を繰り返し、その結果、遂にA04型結晶を単一な結晶として得ることに成功して、発明を完成した。
即ち、本発明は、医薬品原薬として好適であり、工業的生産において好適な性質を有する化合物AのA04型結晶、及びその製造方法に関する。
また、本発明は、化合物AのA04型結晶を含有する医薬組成物に関する。
また、本発明は、化合物AのA04型結晶を含有する癌治療用医薬組成物に関する。
また、本発明は、癌治療用医薬組成物の製造のための化合物AのA04型結晶の使用、化合物AのA04型結晶の有効量を患者に投与することからなる癌治療方法、癌治療のための化合物AのA04型結晶、及び、癌治療のための化合物AのA04型結晶の使用に関する。
なお、上記の特許文献1の実施例23に記載された化合物Aの結晶は、融点が164〜165℃であり、下記図面に示された化合物Aの各結晶のDSCチャートにおける融解ピーク温度との比較から、A01型結晶、A02型結晶、又はそれらの混晶であったと考えられる。
本発明の化合物AのA04型結晶は、保存安定性に優れ、医薬品原薬として好適な性質を有し、また、単一な結晶として得ることができ、特にろ過性に優れ、工業的生産において好適な性質を有することから、化合物Aを医薬品原薬として使用する際の極めて有用な形態である。
なお、以下の「A01型結晶」、「A02型結晶」、「A03型結晶」、「A04型結晶」、及び「A05型結晶」とは、それぞれ、「化合物AのA01型結晶」、「化合物AのA02型結晶」、「化合物AのA03型結晶」、「化合物AのA04型結晶」、及び「化合物AのA05型結晶」を意味する。
図1は、定圧ろ過実験で得られたA02型結晶におけるRuthプロット(縦軸:Δθ/Δν、横軸:ν)を示す。 図2は、定圧ろ過実験で得られたA04型結晶におけるRuthプロット(縦軸:Δθ/Δν、横軸:ν)を示す。 図3は、A02型結晶、A03型結晶及びA04型結晶の50%含水アセトン中での溶解度グラフ(縦軸:溶解度、横軸:温度)を示す。 図4は、A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶及びA05型結晶における結晶多形間での安定性準位(縦軸:自由エネルギー、横軸:温度)を示す。 図5は、実施例2で製造されたA04型結晶の粉末X線回折パターンを示す。 図6は、実施例2で製造されたA04型結晶のDSCチャートを示す。 図7は、参考例1で製造されたA01型結晶とA02型結晶の混晶の粉末X線回折パターンを示す。 図8は、参考例1で製造されたA01型結晶とA02型結晶の混晶のDSCチャートを示す。 図9は、参考例2で製造されたA02型結晶の粉末X線回折パターンを示す。 図10は、参考例2で製造されたA02型結晶のDSCチャートを示す。 図11は、参考例3で製造されたA01型結晶の粉末X線回折パターンを示す。 図12は、参考例3で製造されたA01型結晶のDSCチャートを示す。 図13は、参考例4で製造されたA03型結晶の粉末X線回折パターンを示す。 図14は、参考例4で製造されたA03型結晶のDSCチャートを示す。 図15は、参考例5で製造されたA05型結晶の粉末X線回折パターンを示す。 図16は、参考例5で製造されたA05型結晶のDSCチャートを示す。 図17は、参考例6で製造された化合物Aの水和物の粉末X線回折パターンを示す。 図18は、参考例6で製造された化合物Aの水和物のDSCチャートを示す。
なお、上記図5〜18における分析の測定条件は、以下のとおりである。
DSC分析は、TA Instruments Q-2000、TA Instruments製 2910、又はTA Instruments製 Q1000を用い、測定温度範囲:室温〜220℃以上で適宜変更、昇温速度:10℃/min、窒素流量:50 mL/min、アルミニウム製サンプルパンの条件で測定した。
粉末X線回折の測定は、RINT-Ultima III又はMac Science製 MXP18TAHF22を用い、管球:Cu、管電流:40 mA又は200 mA、管電圧:40 kV、サンプリング幅:0.020°、走査速度:3°/min又は4°/min、波長:1.54056Å、測定回折角範囲(2θ):2.5〜40°又は3〜40°の条件で測定した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のA04型結晶は、単一な結晶として得ることができ、また、特にろ過性に優れ、溶解性、吸湿性、安定性及び/又は取り扱い上の面でも良好な性質を有し、さらに、A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶及びA05型結晶の中では、全温度領域において最安定形結晶であることから、本発明のA04型結晶は、化合物Aを医薬品原薬として使用する際の極めて有用な形態である。
なお、各種溶媒を用いて行った化合物Aの結晶スクリーニングにおいて、A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶、A05型結晶及び化合物Aの水和物以外の結晶は確認されていない。
また、化合物Aの各種塩、具体的には、1塩酸塩、3塩酸塩、1フマル酸塩、1硫酸塩、1メシル酸塩、1/2フマル酸塩、1トシル酸塩、1リン酸塩、2リン酸塩、3臭化水素酸塩、1酒石酸塩、1コハク酸塩、1リンゴ酸塩、1グルタミン酸塩の14種の塩の結晶を得て、それぞれ検討を行ったが、これらの塩の結晶からは、医薬品原薬として好適な性質を有する結晶は見出されなかった。
A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶、A05型結晶及び化合物Aの水和物の各結晶はそれぞれ粉末X線回折測定及び/又はDSC分析により区別される(図5〜18を参照)。
本発明のA04型結晶の物理化学的性質を以下に示す。
[1] DSC分析(昇温速度:10℃/min)で180℃付近に熱吸収ピークを有する。
[2] 粉末X線回折で2θ(°) =6.5、7.9、12.3、13.1、14.4、15.3、15.9、17.0、17.6、18.6、19.0、19.9、20.6、21.0、21.5、22.2、23.2、23.9、24.9、25.9、及び28.8付近にピークを有する。なお、特徴的なピークの例としては、2θ(°)=6.5、15.9、19.9、23.2、及び24.9付近のピークが挙げられる。また、2θ(°)=6.5付近のピークは、下記分析条件において、A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶、A05型結晶及び化合物Aの水和物の中では、A04型結晶のみに観察される特徴的なピークである。
上記分析の測定条件は、以下のとおりである。
DSC分析は、TA Instruments Q-2000を用い、測定温度範囲:室温〜220℃、昇温速度:10℃/min、窒素流量:50 mL/min、アルミニウム製サンプルパンの条件で測定した。
粉末X線回折の測定は、RINT-Ultima IIIを用い、管球:Cu、管電流:40 mA、管電圧:40 kV、サンプリング幅:0.020°、走査速度:3°/min、波長:1.54056Å、測定回折角範囲(2θ):3〜40°の条件で測定した。
ただし、粉末X線回折はデータの性質上、結晶の同一性認定においては、結晶格子間隔や全体的なパターンが重要であり、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件によって多少変わりうるものであるから、厳密に解されるべきではない。
また、「付近」の記載は、測定時の種々の誤差を考慮し、DSC分析においては、ある態様としては±3℃、別の態様としては±2℃を意味し、粉末X線回折においては、ある態様としては±2°、別の態様としては±1°を意味する。
(製造法)
A02結晶は、例えば、参考例2及びその別法に示す方法で製造することができる。
本発明のA04型結晶は、A02型結晶からの溶媒媒介転移により得ることができる。具体的には、A02型結晶を、加温下、ある態様としては40℃以上、別の態様としては50℃以上、さらに別の態様としては60℃以上で、溶媒中、懸濁撹拌することで、製造することができる。ここで挙げる溶媒の例としては特に限定されないが、50%含水アセトン、メチルエチルケトン、アセトン等、ある態様としては50%含水アセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
また、本発明のA04型結晶は、化合物Aを溶媒に加熱溶解後、加温下、ある態様としては40℃以上、別の態様としては60℃以上で、撹拌することで製造することができる。ここで挙げる溶媒の例としては特に限定されないが、50%含水エタノール、メチルエチルケトン等が挙げられる。
さらに、A04型結晶の種晶を添加することで、本発明のA04型結晶を効率的かつ再現良く製造することができる。
なお、化合物Aやその他の原料化合物は、特許文献1に記載の方法や当業者に自明な方法により製造できる。
本発明の化合物Aの結晶を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、化合物Aの結晶は、少なくとも1種の不活性な賦形剤と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えば滑沢剤や崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜30 mg/kg、更に好ましくは0.1〜10 mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回乃至複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100 mg/kgを1日1回乃至複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
本発明の化合物Aの結晶は、化合物Aが有効性を示すと考えられる疾患の種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。一般に、腫瘍、特に悪性腫瘍の化学療法において抗腫瘍剤を単独で投与する場合、副作用等の点からその効果には限界があり、十分な抗腫瘍効果が得られない場合が多い。そのため、臨床の場では作用機序の異なる2剤若しくは3剤以上を組み合わせた多剤併用療法が行なわれている。この併用療法は、作用機序の異なる抗腫瘍剤を組み合わせることにより、1)非感受性細胞集団を減少させる、2)薬剤耐性出現を予防若しくは遅延させる、3)毒性の異なる薬剤の組み合わせにより毒性を分散させる、等の副作用の軽減や抗腫瘍作用の増強を目的とする。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
併用しうる薬剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤等の化学療法剤、免疫療法剤、ホルモン療法剤、細胞増殖因子阻害剤を挙げることができ、具体的には、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、イリノテカン、ビノレルビン、ベバシズマブ等の薬剤を挙げることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、当業者に自明な方法によって適宜変更されうる。
更に、参考例1としてA01型結晶とA02型結晶の混晶、参考例2及びその別法としてA02型結晶、参考例3及びその別法としてA01型結晶、参考例4としてA03型結晶、参考例5及びその別法としてA05型結晶、及び参考例6として化合物Aの水和物の製造方法を示す。
なお、核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、重クロロホルム(CDCL3)中で、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を使用し、日本電子製 JNM-AL400を用いて測定した。
(実施例1)
A02型結晶5 gに、メチルエチルケトン50 mLを加え、懸濁下、約50℃で約5日間撹拌した。その後、25℃まで徐冷し、析出した固体を濾取して、メチルエチルケトン5 mLで洗浄後、乾燥して、A04型結晶3.88 gを得た。
(実施例2)
A02型結晶13 kgに予め約60℃に加熱しておいた50%含水アセトン78 L、A04型結晶13 g加えた後、懸濁下、約60℃で約2.5時間撹拌した。その後、50%含水アセトン26 Lを追加して、約21.5時間撹拌した。その後、25℃まで徐冷し、析出した固体を濾取して、50%含水アセトン78 Lで洗浄後、乾燥して、A04型結晶11.03 kgを得た。
1H-NMR(CDCL3, 400MHz)
δ(ppm)=1.31(d,6H,J=6.8Hz),1.58-1.80(m,4H),1.90-2.04(m,2H),2.16-2.84(m,12H),3.18-3.32(m,1H),3.66-3.76(m,2H),3.88(s,3H),6.48-6.60(m,2H),7.18-7.26(m,1H),7.50-7.72(m,2H),7.86-7.92(dd,1H,J=1.2Hz,J=7.6Hz),8.06-8.16(m,1H),8.28-8.48(m,1H),8.48-8.62(m,1H),9.28(s,1H)
(実施例3)
化合物A10.0 gにメチルエチルケトン200 mLを加え、加熱溶解させた後、約70℃でA04型結晶10 mgを添加し、約60℃で7時間撹拌した。その後、25℃まで徐冷し、析出した固体を濾取して、メチルエチルケトン20 mLにて洗浄後、乾燥して、A04型結晶を7.6 g得た。
(実施例4)
化合物A10.0 gにメチルエチルケトン210 mLを加え、加熱溶解させた後、メチルエチルケトン110 mL常圧濃縮して留去した。
約70℃でA04型結晶1 mgを添加し、約70℃で1時間撹拌した。約70℃でn-ヘプタン80 mLを加え30分間撹拌した後、25℃まで徐冷し、析出した固体を濾取して、メチルエチルケトン10 mLとn-ヘプタン10 mlの混合物にて洗浄後、減圧乾燥して、A04型結晶を9.15 g得た。
1H-NMR(CDCL3, 400MHz)
δ(ppm)=1.31(d,6H,J=6.8Hz),1.57-1.78(m,4H),1.90-2.00(m,2H),2.22-2.80(m,12H),3.20-3.33(m,1H),3.60-3.80(m,2H),3.88(s,3H),6.50-6.60(m,2H),7.18-7.30(m,1H),7.50-7.70(m,2H),7.80-7.92(dd,1H,J=0.8Hz,J=5.6Hz),8.00-8.20(m,1H),8.30-8.48(m,1H),8.48-8.60(m,1H),9.28(s,1H)
(参考例1)
4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン30.0 gおよびエタノール450 mLの混合物にメタンスルホン酸19 mLを加え室温で15分間撹拌した後に、2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン29.2 gを加え100℃で5時間撹拌した。反応液を放冷後、ジエチルエーテル900 mLを加え析出した固体を濾取した。得られた固体を水300 mLに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えpH8とした後に、酢酸エチル300 mLで3回抽出した。抽出液を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/濃アンモニア水=100/1/0→50/1/0→30/1/0→30/1/0.1→20/1/0.1)で精製後、得られた固体を濾取し、エタノールで洗浄して、A01型結晶とA02型結晶の混晶27.94 gを得た。
1H-NMR(CDCL3, 400MHz)
δ(ppm)=1.31(d,6H,J=8.0Hz),1.59-1.78(m,4H),1.90-2.01(m,2H),2.22-2.80(m,12H),3.19-3.33(m,1H),3.65-3.76(m,2H),3.88(s,3H),6.49-6.60(m,2H),7.17-7.30 (m,1H),7.50-7.70(m,2H),7.84-7.92(dd,1H,J=1.6Hz,J=8.0Hz),8.04-8.17(m,1H),8.30-8.48(m,1H),8.48-8.62(m,1H),9.28(s,1H)
(参考例2)
化合物A100 mgをアセトン約2 mLに加熱溶解し、放冷後、析出した固体を濾取して、A02型結晶65 mgを得た。
1H-NMR(CDCL3, 400MHz)
δ(ppm)=1.31(d,6H,J=8.0Hz),1.56-1.78(m,4H),1.91-2.02(m,2H),2.22-2.80(m,12H),3.18-3.33(m,1H),3.63-3.77(m,2H),3.88(s,3H),6.47-6.63(m,2H),7.17-7.32 (m,1H),7.50-7.73(m,2H),7.84-7.92(m,1H),8.04-8.17(m,1H),8.29-8.48(m,1H),8.48-8.65(m,1H),9.29(s,1H)
(参考例2の別法)
4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン29.34 kgを含むメチルエチルケトン溶液約400 Lに、2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩60.6 kgを加え、約65℃で約3時間撹拌した。その後、食塩19.1 kg、水酸化ナトリウム15.8 kg及び常水191 kgの混合物を加え、有機層を分取した。更に食塩38.1 kg及び常水191 kgの混合物で2回洗浄した後、得られた有機層を液量約56 Lになるまで、50℃で減圧濃縮した。アセトン75 kgを加え、液量約56 Lになるまで、50℃で減圧濃縮する操作を2回実施した。アセトン32 kgを加え、約40℃で1時間撹拌した後、同温付近で酢酸イソプロピル83 kgを加え、1時間撹拌した。その後、約0℃になるまで徐冷して、析出した固体を濾取し、アセトン15 kg及び酢酸イソプロピル17 kgの混合物、酢酸イソプロピル33 kgで洗浄後、乾燥して、A02型結晶を26.6 kg得た。
なお、参考例2の別法で使用した2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩は、当業者に自明な方法や、以下に記載の方法等で製造できる。
(2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩の製造)
1-[1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン-4-イル]-4-メチルピペラジン39.8 kg、10% パラジウム炭素6.0 kg、及びテトラヒドロフラン354.5 kgを混合した後、水素圧約0.1 MPaにて、約25℃で約5時間撹拌した。その後、昇温して約35℃でパラジウム炭素を濾去し、濾去物をテトラヒドロフラン68.0 kgで洗浄した。得られた濾液にトリフルオロ酢酸42.2 kgを加えた後、2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩の結晶4.0 gを添加し、約35℃で約1時間撹拌した後、約20℃でn-ヘプタン221 kgを加えた。析出した固体を濾取し、テトラヒドロフラン62.9 kg及びn-ヘプタン34.3 kgの混合物で洗浄後、乾燥して、2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩の結晶71.2 kgを得た。
1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz)
δ(ppm)=1.67(m,2H),2.06(m,2H),2.79(s,3H),2.8-3.9(m,18H),3.88(s,3H),6.62(d,1H,J=8.4Hz),6.79(s,1H),7.11(d,1H,J=8.4Hz)
(2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩の製造の別法)
2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン5.7 gにイソプロピルアルコール57 mLを加えて溶解した後、トリフルオロ酢酸6.62 gを加え、0℃になるまで冷却した。析出した固体を濾取し、乾燥して、2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン トリス(トリフルオロ酢酸)塩の結晶11.65 gを得た。
(参考例3)
A02型結晶をDSC炉内で約150℃まで10℃/minで加熱した後、室温まで10℃/minで冷却して、A01型結晶を調製した。
(参考例3の別法)
化合物A5.0 gにアセトニトリル200 mLを加え、加熱還流し溶解させた。室温まで急冷し、析出した固体を濾取し、乾燥して、A01型結晶1.56 gを得た。
(参考例4)
化合物A約50 mgにエタノール/水(9:1)2 mLを加え、加熱還流し溶解させた。放冷後、開放系で2日間撹拌した後、ふたをして更に3日間攪拌した。析出した固体を濾取して、A03型結晶21 mgを得た。
(参考例5)
化合物A10.0 gをエタノール65 mL、水35 mLの混媒を加え、約75℃で加熱溶解後、水30 mLを加え、放冷した。約30℃でA05型結晶10 mgを添加し、25℃まで冷却した後、析出した固体を濾取し、50%エタノール水20 mLで洗浄後、乾燥して、化合物Aの結晶6.9 g得た。この結晶1.0338 gを、50℃にて7日間減圧乾燥し、A05型結晶0.9760 gを得た。
(参考例5の別法)
化合物A500 mgにエタノール3.25 mLと水3.25 mLの混媒を加え、約80℃で加熱溶解後、放冷した。室温付近でA04型結晶を添加(スパチュラ1杯程度)し、一夜撹拌した後、濾取し、乾燥して、A05型結晶340 mgを得た。
(参考例6)
化合物A 10.0 gをエタノール65 mL、水35 mLの混媒を加え、約75℃で加熱溶解後、水30 mLを加え、放冷した。約30℃でA05型結晶10 mgを添加し、25℃まで冷却した後、析出した固体を濾取し、50%エタノール水20 mLで洗浄後、乾燥して、化合物Aの結晶6.9 g得た。この結晶0.8858 gを、水を入れたビーカーを同在させたデシケーター内で約7日間保管し、化合物Aの水和物 0.9441 gを得た。
以下に本発明のA04型結晶の効果を示す。なお、「R.H.」とは、相対湿度を示す。
(試験例1)保存安定性の評価
(i)長期安定性試験
A04型結晶を(1)40℃/75%R.H.、(2)60℃/なりゆき湿度、及び(3)25℃/なりゆき湿度/D65ランプ(1000 lux)照射下の各条件で3ヶ月間保存((3)の条件においては2カ月間)し、保存前後の試料について、粉末X線回折及びDSC分析を測定による結晶形の変化と、HPLC測定(測定条件は、以下に示すHPLC条件1、又はHPLC条件2)による純度の変化を確認した。
その結果、いずれの条件においても、結晶形及び純度の有意な変化は確認されず、A04結晶は、優れた物理的化学的安定性を有する結晶であることが確認された。
(HPLC条件1)移動相:(A液)0.8 g/L炭酸水素アンモニウム水溶液(アンモニア水(28)でpH 10に調整)、(B液)メタノール、グラジエント%B液:35%(0min)/ linear 70%(0-50min)/ 70%(50-70min)、カラム:XBridge Shield RP18、4.6x150 mm、 粒子経5μm(Waters製)、流速:1 mL/min、カラム温度:40℃、検出:UV 214 nm
(HPLC条件2)移動相:(A液)2.0 g/L炭酸水素アンモニウム水溶液(アンモニア水(28)でpH 9に調整)、(B液)メタノール、グラジエント%B液:30%(0min)/ linear 70%(0-50min)/ 70%(50-70min)、カラム:XBridge Shield RP18、4.6x150 mm、 粒子経5μm(Waters製)、流速:1 mL/min、カラム温度:30℃、検出:UV 214 nm
(ii)吸湿性試験A
A04型結晶約0.5gを質量既知の秤量瓶(開放)に量り取り、正確に質量を求めた後、この秤量瓶をKNO3飽和水溶液により相対湿度93%に調湿したデシケータに入れて、25℃で7日間保存した後、質量変化を測定した。
その結果、質量の有意な変化は確認されず、A04結晶は、吸湿性を示さないことが確認された。
また、保存前後の試料について、粉末X線回折及びDSC分析を測定を行うことにより結晶形の変化を、HPLC測定を行うことにより純度の変化を確認することもできる。
(iii)吸湿性試験B
A04型結晶について、水分平衡測定装置SGA-X100(VTI)を用いて、温度:25℃、測定範囲:5〜95%R.H.、測定間隔:5%の条件で吸脱水挙動を確認した。
その結果、5〜95%R.H.の湿度範囲における吸脱水による重量変化は0.1%未満であり、A04型結晶は、吸湿性を示さないことが確認された。
以上の試験例1の結果より、A04型結晶が、医薬品原薬として好適な性質を有し、化合物Aを医薬品原薬として使用する際の極めて有用な形態であることは明らかである。
(試験例2)ろ過性の評価
参考例2の別法と同様の方法で製造されたA02型結晶と、実施例2と同様の方法で製造されたA04型結晶の各結晶のスラリーを用いて、定圧ろ過実験を行い、式(1)に示すRuthの定圧ろ過式からケーク平均ろ過比抵抗αmを算出してろ過性を評価した。なお、本試験のスラリーは、各結晶の製造において、結晶をろ取する直前の晶析スラリーを使用した。
Figure 2011145548
ここで、θはろ過時間[sec]、νは単位ろ過面積当たりの積算ろ液量[m3/m2]、αmはケーク平均比抵抗[m/kg]、cは固形分懸濁密度[kg/m3]、μはろ液粘度[Pa・s]、xはろ液/スラリー体積比、ΔPは付加圧力[Pa]、Rmはろ材抵抗[m/m2]を示す。なお、ろ材抵抗Rmはろ過機に用いるろ布や焼結金網などろ材の抵抗値であり、同一のろ過条件であれば、ほぼ一定値を示す。
ケーク平均比抵抗αm[m/kg]の算出は、ν[m3/m2]とΔθ/Δν[sec/m]をプロット(Ruthプロット)し、得られた直線の傾きから、ろ過定数Bを求め、式(2)に表1のろ過条件の項に示した各パラメーターを代入して行った。
Figure 2011145548
A02型結晶及びA04型結晶における、ろ過条件、ろ過定数B及びケーク平均比抵抗αmを、それぞれ表1に示す。また、A02型結晶及びA04型結晶におけるRuthプロットの結果を、それぞれ図1及び図2に示す。
Figure 2011145548
ケーク平均比抵抗の値は、A02型結晶が1.31×1011 m/kgであったのに対して、A04型結晶は8.43×108 m/kgであり、A02型結晶はA04型結晶よりも約155倍大きい値であった。ここで、定圧ろ過を行う場合のろ過時間θは、式(3)から算出することができる。
Figure 2011145548
つまり、A02型及びA04型の各結晶について、同じ条件で定圧ろ過を行った場合は、ろ過時間はαmに比例するため、A02型結晶は、A04型結晶よりも約155倍のろ過時間が必要となることを意味する(ただし、ここでは各結晶のろ過性を評価するため、ろ過に使用したろ材にのみに依存するろ材抵抗Rmは無視するものとする)。
以上より、実施例2で製造されたA04型結晶は、参考例2の別法で製造されたA02型結晶と比較して、ろ過性が非常に優れた結晶であることが確認された。
ろ過時間は、製造量や使用するろ過機によっても変わるものであるから、一概には言えないが、特に数十〜数百kgスケールでの製造の場合、一般的には、ケーク平均比抵抗の値としては、108 m/kg程度以下であることが望ましい。従って、望ましいケーク平均比抵抗の値から100倍以上乖離した該A02型結晶を工業的生産に使用する場合、そのろ過性を改善する必要性は非常に高い。
結晶のろ過性を改善するためには、結晶を大きく成長させることが非常に効果的である。結晶を大きく成長させることを目的とした一般的な方法としては、高い温度で種結晶を添加し、時間をかけてゆっくり成長させる方法や、一旦析出させた後、再昇温し、微細結晶を選択的に溶解させる方法等が考えられる。しかし、A02型結晶は、A02型結晶として十分に成長する前に、結晶の一部が、A03型結晶や、最安定形結晶であるA04型結晶に容易に転移して、A03型結晶、A04型結晶、又はそれらの混晶となることが確認されており、A02型結晶を単一かつ大きな結晶で得ることは非常に困難と考えられる。
以上のことから、A02型結晶を単一かつ安定的に得るためには、少なくとも急激な核化が起こる条件で晶析させた後、転移しないうちに結晶を取得する必要がある。このような急激な核化が起こる条件では、結晶を十分に成長させ、大きな結晶を得ることはできないことから、ろ過性の良いA02型結晶を得ることは困難と考えられる。
また、結晶のろ過性が悪い場合は、溶媒による洗浄工程での洗浄効果も低くなることから、結晶への晶析母液の付着により不純物が混入して、純度が低下することが懸念される。
(試験例3)不純物量の確認
参考例2の別法と同様の方法で製造されたA02型結晶と、実施例2及び実施例4と同様の方法で製造されたA04型結晶について、不純物量を確認するため、HPLC測定(測定条件は、上記HPLC条件1又は以下に示すHPLC条件3)を行った。その結果、実施例2及び実施例4と同様の方法で製造されたA04型結晶の不純物の総量は1%未満であった。一方、参考例2の別法と同様の方法で製造されたA02型結晶の不純物の総量は、2.42%であり、該A04型結晶と比較して、多量の不純物を含有していることが確認された。
なお、工業的生産スケールでは、参考例2の別法以外の製法では、A02型結晶は単一かつ安定的には得られていないため、晶析母液中の不純物量もA02型結晶の制御に大きく関与していると考えられる(晶析母液中の不純物量が少ない場合は、上述したとおり、A03型結晶、A04型結晶、又はそれらの混晶へ容易に転移することが確認されている)。つまり、工業的生産スケールにおけるA02型結晶の単一かつ安定的な製造では、晶析母液中にある一定量の不純物が存在していることが必要であり、必然的にA02型結晶に含有する不純物量が多くなると考えられることから、工業的生産におけるA02型結晶は、不純物の多い結晶であると言わざる得ない。
(HPLC条件3)移動相:0.1%過塩素酸水溶液 / アセトニトリル=3:1(0-30min)、カラム:L-column2 ODS、4.6x150 mm、粒子経5μm(化学物質評価研究機構製)、流速:1 mL/min、カラム温度:40℃、検出:UV 225 nm
(試験例4)安定性準位の確認
(i)50%含水アセトン中での溶解度
50%含水アセトンにおけるA02型結晶、A03型結晶及びA04型結晶の溶解度を測定した。結果を表2及び図3に示す。各温度においてA04型結晶が最も溶解度が低いことが確認された。この結果から、室温付近における化合物Aの結晶の熱力学的安定性準位は、A04型結晶>A03型結晶>A02型結晶であることが明らかとなった。
Figure 2011145548
(ii)溶媒媒介転移検討
A05型結晶について、室温でのスラリー撹拌を行い、溶媒媒介転移の検討を行った。その結果、A05型結晶は、メチルエチルケトン中で室温で1分間撹拌後、A04型結晶に転移することが確認された。溶媒媒介転移ではより安定な形態に転移することから、室温における化合物Aの結晶の熱力学的安定性準位は、A04型結晶>A05型結晶であることが明らかとなった。
(iii)DSC分析
図に示したA01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶及びA05型結晶の各DSC分析結果から、以下が考察できる。
(a)図10のDSC分析結果で見られる142℃付近の吸熱はA02型結晶からA01型結晶への転移である。A01型結晶とA02型結晶は互変形の関係にあり、室温においてはA02型結晶の方が熱力学的に安定である。
(b)A01型結晶(融点:164℃、融解熱:81 J/g(図12))とA05型結晶(融点:89℃、融解熱:34 J/g(図16))との比較から、融解熱則により、A01型結晶とA05型結晶は、それぞれモノトロピックな関係にあり、全温度領域でA01型結晶がA05型結晶と比較して熱力学的に安定である。
(c)A04型結晶(融点:180℃、融解熱:95 J/g(図6))とA01型結晶(融点:164℃、融解熱:81 J/g(図12))との比較から、融解熱則により、A04型結晶とA01型結晶は、モノトロピックな関係にあり、全温度領域でA04型結晶がA01型結晶と比較して熱力学的に安定である。
従って、上記(a)〜(c)より、室温における熱力学的安定性は、A02型結晶>A01型結晶であり、さらに、A04型結晶>A01型結晶>A05型結晶である。
以上(i)〜(iii)の結果より、室温における熱力学的安定性準位は、A04型結晶>A03型結晶>A02型結晶>A01型結晶>A05型結晶である。この結果と、A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A04型結晶及びA05型結晶の各融解ピーク温度の比較から、A04型結晶は、A01型結晶、A02型結晶、A03型結晶、A05型結晶とは、モノトロピックな関係にあり、かつ、最も高い融解ピーク温度(A01型結晶:164℃、A02型結晶:A01型結晶への転移点142℃、A03型結晶:171℃、A04型結晶:180℃、A05型結晶:89℃)を示すことから、これらの化合物Aの結晶形の中では、全温度領域において最安定形結晶である。以上で得られた結果に基づく、各結晶間の安定性準位の相関を示す模式図を図4に示す。
医薬品原薬は、医薬品の均一な品質と安定な供給の確保の面から、最安定形結晶で供給することが望ましい場合がある。よく知られる例として、リトナビルのケースが挙げられる。リトナビルは準安定形結晶で市場に供給されていたが、ある時、突然により安定な結晶形が出現し、二度と準安定形結晶が実生産的に供給できなくなった。このようなリスクを回避するため、医薬品原薬を最安定形結晶で供給する必要度は極めて高くなっているのが現状である。
本発明のA04型結晶は、全温度領域で最安定形結晶と考えられることから、リトナビルで起こった、工業的生産における最安定形結晶の出現により、突如として所望の結晶形が得られなくなるといった製造上のリスクが低く、また、単一結晶として安定的に供給が可能であり、特にろ過性に優れ、工業的生産において好適な性質を有することから、化合物Aを医薬品原薬として使用する際の極めて有用な形態と言える。
一方、A01型結晶及びA02型結晶は、準安定形結晶であるため、これらの結晶を安定的に得るためには晶析条件の厳密な制御が必要になると考えられ、また、上述のリトナビルのケースのように、突如としてこれらの結晶形が得られなくなるといった製造上のリスクをも抱える結晶であると言わざるを得ない。
また、A02型結晶は、上述したとおり、該結晶を単一かつ安定的に得るためには、少なくとも急激な核化が起こる条件で晶析させた後、A04型結晶やA03型結晶に転移しないうちに結晶を取得する必要があることから、A04型結晶と比較して、結晶中に不純物を取り込みやすいと考えられる。
以上のとおり、A02型結晶は、結晶中に不純物を取り込みやすいうえ、上述したとおり、ろ過性の影響により洗浄工程での洗浄効果も低くなることから、A04結晶と比較して、不純物の混入を抑制することが非常に困難な結晶と考えられる。
本発明のA04型結晶は、保存安定性に優れ、医薬品原薬として好適な性質を有し、また、単一結晶が得ることができ、特にろ過性に優れ、工業的生産において好適な性質を有することから、化合物Aを医薬品原薬として使用する際の極めて有用な形態である。

Claims (11)

  1. DSC分析(昇温速度:10℃/min)で180℃付近に熱吸収ピークを有する、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンの結晶。
  2. 粉末X線回折(管球:Cu)で2θ(°) = 6.5付近にピークを有する、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンの結晶。
  3. 粉末X線回折(管球:Cu)で2θ(°) = 6.5、15.9、19.9、23.2、及び24.9付近にピークを有する、請求項2に記載の結晶。
  4. 粉末X線回折(管球:Cu)で2θ(°) = 6.5、7.9、12.3、13.1、14.4、15.3、15.9、17.0、17.6、18.6、19.0、19.9、20.6、21.0、21.5、22.2、23.2、23.9、24.9、25.9、及び28.8付近にピークを有する、請求項3に記載の結晶。
  5. 粉末X線回折(管球:Cu)で2θ(°) = 6.5付近にピークを有する、請求項1に記載の結晶。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶を有効成分として含有する医薬組成物。
  7. 癌治療用医薬組成物である、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 癌治療用医薬組成物の製造のための請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶の使用。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶の有効量を患者に投与することからなる癌治療方法。
  10. 癌治療のための請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶。
  11. 癌治療のための請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶の使用。
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