JPWO2011129371A1 - 5−FU単独及びIFN−α/5−FU併用時の抗腫瘍効果を増強する遺伝子群 - Google Patents
5−FU単独及びIFN−α/5−FU併用時の抗腫瘍効果を増強する遺伝子群 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2011129371A1 JPWO2011129371A1 JP2012510675A JP2012510675A JPWO2011129371A1 JP WO2011129371 A1 JPWO2011129371 A1 JP WO2011129371A1 JP 2012510675 A JP2012510675 A JP 2012510675A JP 2012510675 A JP2012510675 A JP 2012510675A JP WO2011129371 A1 JPWO2011129371 A1 JP WO2011129371A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gene
- amino acid
- fluorouracil
- mutant
- acid sequence
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K31/00—Medicinal preparations containing organic active ingredients
- A61K31/70—Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
- A61K31/7088—Compounds having three or more nucleosides or nucleotides
- A61K31/713—Double-stranded nucleic acids or oligonucleotides
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K31/00—Medicinal preparations containing organic active ingredients
- A61K31/33—Heterocyclic compounds
- A61K31/395—Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
- A61K31/495—Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with two or more nitrogen atoms as the only ring heteroatoms, e.g. piperazine or tetrazines
- A61K31/505—Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim
- A61K31/513—Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim having oxo groups directly attached to the heterocyclic ring, e.g. cytosine
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K31/00—Medicinal preparations containing organic active ingredients
- A61K31/70—Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
- A61K31/7088—Compounds having three or more nucleosides or nucleotides
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K31/00—Medicinal preparations containing organic active ingredients
- A61K31/70—Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
- A61K31/7088—Compounds having three or more nucleosides or nucleotides
- A61K31/7105—Natural ribonucleic acids, i.e. containing only riboses attached to adenine, guanine, cytosine or uracil and having 3'-5' phosphodiester links
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P35/00—Antineoplastic agents
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P43/00—Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6876—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
- C12Q1/6883—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
- C12Q1/6886—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material for cancer
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/106—Pharmacogenomics, i.e. genetic variability in individual responses to drugs and drug metabolism
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/158—Expression markers
Abstract
5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する遺伝子群を見出す。5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子をコードするヌクレオチド断片を含む、増感剤。
Description
本発明は、抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子のスクリーニング方法、5−フルオロウラシル感受性増感剤、それを含む抗癌剤キット、5−フルオロウラシル感受性を判定するための診断薬、5−フルオロウラシル感受性抑制剤に関する。
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma,HCC)は世界中で増加している悪性腫瘍の一種であり、日本における癌死亡者数の第3位を占めている。このHCCに対しては、近年の様々な診断・治療法の開発及び進歩によって、治療成績は向上している。しかし、その一方で、HCC患者の多くが、肝炎等の慢性肝疾患を経た発癌であるため、治療後に再発する症例が極めて多く、高度進行型症例の増加が問題となっている。この高度進行型HCCは、既存の治療法の奏功率が極めて低く、より治療効果の高い新規治療法の開発が望まれていた。
これに対して、近年、抗ウイルス活性を有するサイトカインinterferon−α(IFN−α)と抗癌剤5−fluorouracil(5−FU)を併用するIFN−α/5−FU併用療法が、高い有効性を示すとの結果が複数の施設から報告され、進行型HCCに対する新規治療法として期待されている。
IFN−α/5−FU併用療法の感受性に関する遺伝子についての研究は幾つか行われている。例えば、非特許文献1は、遺伝子解析からIFN−α/5−FU併用療法の効果予測を行おうとする論文である。また、非特許文献2は、肝癌細胞の5−FUに対する感受性遺伝子を報告している。
また、特許文献1には、癌患者の悪性度や化学療法に対する応答を予測するシステムが説明されている。さらに、特許文献2には、癌の進行、転帰および予後を診察するマーカーが説明されている。そして、特許文献3には、アンチセンスRNAと5FUとの併用による癌治療について説明されている。
黒川 幸典 他、「6.肝細胞癌・化学療法感受性予測−IFN/5−FU併用療法の効果予測」、肝臓、46巻、10号、(2005)、35−39頁
Hoshida Y et al., "Identification of genes associated with sensitivity to 5-fluorouracil and cisplatin in hepatoma cells.", J Gastroenterol. 2002 Nov;37 Suppl 14:92-5.
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、進行型HCC治療法として、注目されているIFN−α/5−FU併用療法であるが、高度進行型HCCに対する奏功率は約50%である(S obi, et al. Cancer. 2006. 106, 1990-7.)。そのため、この治療法を用いても、約半数の患者においては治療効果が得られず、全てのHCC患者に対して好ましい効果を期待できるわけではなく、より治療効果の高い新規治療法の開発が望まれる。
第一に、進行型HCC治療法として、注目されているIFN−α/5−FU併用療法であるが、高度進行型HCCに対する奏功率は約50%である(S obi, et al. Cancer. 2006. 106, 1990-7.)。そのため、この治療法を用いても、約半数の患者においては治療効果が得られず、全てのHCC患者に対して好ましい効果を期待できるわけではなく、より治療効果の高い新規治療法の開発が望まれる。
第二に、非特許文献1〜2では、IFN−α/5−FU併用療法の感受性に関する遺伝子を網羅的に見つけることは困難であり、未だIFN−α/5−FU併用療法の感受性との関係が未解明の遺伝子が多く存在すると想定される。なお、非特許文献1〜2では、実際に後述する実施例で示す遺伝子を発見できていない。
第三に、特許文献3〜4でも、IFN−α/5−FU併用療法の感受性に関する遺伝子を網羅的に見つけることは困難であり、未だIFN−α/5−FU併用療法の感受性との関係が未解明の遺伝子が多く存在すると想定される。なお、特許文献3では、遺伝子としてEXT1、薬剤として5−FU、癌として肝癌を例に挙げているが、実際にはEXT1が5−FUの感受性を高めるかどうか実験していない。なお、特許文献4では、癌の進行、転帰および予後を診断するマーカーとしてTGFBR2、癌として肝臓癌、アジュバント化学療法として5FUを例に挙げているが、実際にはTGFBR2が5−FUの感受性を高めるかどうか実験していない。
第四に、特許文献5では、5−FUの感受性に関する遺伝子をそもそも探索すらしていない。そのため、特許文献5では、後述する実施例で示す遺伝子には特に触れていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する遺伝子群を見出すことを目的とする。
本発明によれば、5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子をコードするヌクレオチド断片を含む、増感剤が提供される。
この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかをコードするヌクレオチド断片を含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
また、本発明によれば、5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子を発現するベクターを含む、増感剤が提供される。
この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかを発現するベクターを含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
また、本発明によれば、5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のコードする蛋白質を含む、増感剤が提供される。
この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のコードする蛋白質を含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
また、本発明によれば、抗癌剤キットであって、上記の増感剤と、5−フルオロウラシルと、を含む、キットが提供される。
この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子を用いた増感剤を含むため、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が増強されて優れた抗腫瘍効果が得られる。
また、本発明によれば、5−フルオロウラシル感受性抑制剤であって、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含む、抑制剤が提供される。
この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含むため、抑制剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制する効果が得られる。
また、本発明によれば、5−フルオロウラシル感受性を判定するための診断薬であって、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現量を測定するための試薬を含む、診断薬が提供される。
この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定するための試薬を含むため、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定することで、被験者が5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が効きやすい体質であるかどうか判定するための診断薬として利用できる。
また、本発明によれば、抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子のスクリーニング方法であって、(m)哺乳動物の所定の癌細胞株にリボザイムライブラリーを導入する工程と、(n)リボザイムライブラリーが導入された癌細胞を所定の抗癌剤で処理する工程と、(o)抗癌剤で処理された癌細胞のうち生存細胞からリボザイムを回収して新規なリボザイムライブラリーを得る工程と、を含み、リボザイムライブラリーが、標的認識配列特異的にmRNAを切断し、遺伝子発現を抑制する複数のリボザイムを含み、各リボザイムが認識する標的認識配列がランダム化された複数の配列である、ランダム化リボザイムライブラリーであり、(p)(m)、(n)および(o)の工程を複数回繰り返して得られるリボザイムライブラリーが認識する標的認識配列を検出する工程と、(q)検出された標的認識配列に対応する遺伝子情報をゲノムデータベースから抽出する工程と、 をさらに含む、スクリーニング方法が提供される。
この方法によれば、リボザイムライブラリーが、標的認識配列特異的にmRNAを切断し、遺伝子発現を抑制する複数のリボザイムを含むため、上記の工程を複数回繰り返して得られるリボザイムライブラリーには、抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子の発現を抑制するリボザイムが濃縮されて多く含まれていることになる。そのため、こうして得られるリボザイムライブラリーが認識する標的認識配列を検出して、検出された標的認識配列に対応する遺伝子情報をゲノムデータベースから抽出すれば、抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子を高確率で見出すことが可能である。
本発明によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強するRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子またはそれらの遺伝子がコードする蛋白質を用いて、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強することができる。また、本発明によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強するRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを用いて、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制することができる。
また、本発明によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強するPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定するための試薬を用いて、被験者が5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が効きやすい体質であるかどうか判定することができる。また、本発明によれば、標的認識配列特異的にmRNAを切断し、遺伝子発現を抑制する複数のリボザイムを用いて、抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子を高確率で見出すことが可能である。
<用語の説明>
(1)相同性
本明細書において、「相同性」とは、2つもしくは複数間のアミノ酸配列の同一のアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。また、いかなる保存的置換も同一と考えない。また、最適に整列した状態において、オーバーラップするアミノ酸を含めた全アミノ酸残基に対する、同一のアミノ酸数の割合を意味する。整列のための方法、割合の算定方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られており、一般的な配列分析プログラム(例えば、GENETYX、GeneChip Sequence Analysisなど)を使用して測定することができる。また「相同性」は、2つもしくは複数間のDNA鎖、または2つもしくは複数間のRNA鎖において、同一の塩基の割合を、上記と同様に当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。
(1)相同性
本明細書において、「相同性」とは、2つもしくは複数間のアミノ酸配列の同一のアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。また、いかなる保存的置換も同一と考えない。また、最適に整列した状態において、オーバーラップするアミノ酸を含めた全アミノ酸残基に対する、同一のアミノ酸数の割合を意味する。整列のための方法、割合の算定方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られており、一般的な配列分析プログラム(例えば、GENETYX、GeneChip Sequence Analysisなど)を使用して測定することができる。また「相同性」は、2つもしくは複数間のDNA鎖、または2つもしくは複数間のRNA鎖において、同一の塩基の割合を、上記と同様に当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。
(2)ストリンジェントな条件
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば(1)洗浄のための低イオン強度と高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いる、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いる、または(3)42℃において50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%のデキストラン硫酸と、42℃において0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中での洗浄および55℃のホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1×SSCにてストリンジェントな洗浄を含む条件であっても良い。また中程度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中において、37℃で一晩インキュベーション、次いで1×SSC中37〜50℃でのフィルターの洗浄のような条件である。なお、ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、当業者によって容易に決定でき、一般的にプローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する。一般に、長いプローブは適当なアニーリングのために高温を必要とし、短いプローブは低温を必要とする。また一般に、ストリンジェンシーは塩濃度に逆比例する。
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば(1)洗浄のための低イオン強度と高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いる、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いる、または(3)42℃において50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%のデキストラン硫酸と、42℃において0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中での洗浄および55℃のホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1×SSCにてストリンジェントな洗浄を含む条件であっても良い。また中程度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中において、37℃で一晩インキュベーション、次いで1×SSC中37〜50℃でのフィルターの洗浄のような条件である。なお、ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、当業者によって容易に決定でき、一般的にプローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する。一般に、長いプローブは適当なアニーリングのために高温を必要とし、短いプローブは低温を必要とする。また一般に、ストリンジェンシーは塩濃度に逆比例する。
(3)ハイブリダイズ
また、本明細書において、ポリヌクレオチドに適用される場合の「ハイブリダイズ」とは、ヌクレオチドの塩基間の水素結合等によってヌクレオチド間の対ができる性質のことを表す。塩基対はワトソン・クリック型塩基対、フーグスティーン型塩基対、または任意の他の配列特異的な形で生じうる。
また、本明細書において、ポリヌクレオチドに適用される場合の「ハイブリダイズ」とは、ヌクレオチドの塩基間の水素結合等によってヌクレオチド間の対ができる性質のことを表す。塩基対はワトソン・クリック型塩基対、フーグスティーン型塩基対、または任意の他の配列特異的な形で生じうる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<ヌクレオチド断片を含む5−フルオロウラシル感受性増感剤>
本実施形態における5−フルオロウラシル感受性増感剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子をコードするヌクレオチド断片を含む、増感剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかをコードするヌクレオチド断片を含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
<ヌクレオチド断片を含む5−フルオロウラシル感受性増感剤>
本実施形態における5−フルオロウラシル感受性増感剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子をコードするヌクレオチド断片を含む、増感剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかをコードするヌクレオチド断片を含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
ここで、この5−フルオロウラシル感受性増感剤は、5−フルオロウラシルを投与した場合の癌細胞の死亡率を向上させる(生存率を低下させる)ものであればよく、特に限定するものではないが、例えば母集団が正規分布に従うと仮定できる場合にはパラメトリック検定であるスチューデントのt検定(Student's t−test)において有意差があれば好ましい。すなわち、スチューデントのt検定において片側検定でp<0.05となればよく、より好ましくは片側検定でp<0.03となればよく、最も好ましくは片側検定でp<0.01となればよい。なお、スチューデントのt検定は特に片側検定に限定するわけではなく、両側検定で行っても良い。さらに、母集団が正規分布に従うと仮定できない場合には、ノンパラメトリック検定として、マン・ホイットニーのU検定などを行って有意差の有無を検定しても良い。
(i)PRAKG2遺伝子
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるPRAKG2遺伝子は、哺乳動物のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニット(protein kinase,AMP−activated,gamma 2 non−catalytic subunit)をコードする遺伝子であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型PRAKG2遺伝子(Entrez Gene ID:51422の5'−AMP−activated protein kinase subunit gamma−2 isoform a[Homo sapiens]をコードする遺伝子)などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型PRAKG2遺伝子に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるPRAKG2遺伝子は、哺乳動物のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニット(protein kinase,AMP−activated,gamma 2 non−catalytic subunit)をコードする遺伝子であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型PRAKG2遺伝子(Entrez Gene ID:51422の5'−AMP−activated protein kinase subunit gamma−2 isoform a[Homo sapiens]をコードする遺伝子)などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型PRAKG2遺伝子に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
もっとも、本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるPRAKG2遺伝子は、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ヒト野生型PRAKG2遺伝子との相同性の高い遺伝子であれば、ヒト野生型PRAKG2遺伝子と同様に哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる可能性が高いからである。ここで、変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。
具体的には、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型PRAKG2遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(すなわちヒト野生型PRAKG2遺伝子の塩基配列の縮重配列)からなる変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の縮重配列からなる変異型遺伝子がコードするアミノ酸配列は野生型遺伝子がコードするアミノ酸配列と同じであるため、この変異型遺伝子から発現される蛋白質の機能は野生型遺伝子から発現される蛋白質と同じだからである。なお、どのような塩基配列が縮重配列にあたるかは、ユニバーサルコドンの対応表を用いて当業者であれば容易に理解することが可能である。
また、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型PRAKG2遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、変異型遺伝子の塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して塩基の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
なお、この変異型遺伝子の塩基配列のコードするアミノ酸配列が、ヒト野生型PRAKG2遺伝子のコードするアミノ酸配列に対して1または数個の置換がある場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、および、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸同士の置換は保存的置換と総称される。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加、または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci U SA. 1984Sep; 81(18): 5662-5666., Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25; 10(20): 6487-6500., Wang et al., Science. 1984 Jun 29; 224 (4656): 1431-1433.)。
また、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型PRAKG2遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、異型遺伝子の塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
また、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型PRAKG2遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子は、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いため、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
(ii)TGFBR2遺伝子
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるTGFBR2遺伝子は、哺乳動物のTGF−β2型受容体(transforming growth factor,beta receptor II)をコードする遺伝子であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型TGFBR2遺伝子(Entrez Gene ID:7048のtransforming growth factor, beta receptor II(70/80kDa)[Homo sapiens]をコードする遺伝子)などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型TGFBR2遺伝子に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるTGFBR2遺伝子は、哺乳動物のTGF−β2型受容体(transforming growth factor,beta receptor II)をコードする遺伝子であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型TGFBR2遺伝子(Entrez Gene ID:7048のtransforming growth factor, beta receptor II(70/80kDa)[Homo sapiens]をコードする遺伝子)などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型TGFBR2遺伝子に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
もっとも、本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるTGFBR2遺伝子は、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ヒト野生型TGFBR2遺伝子との相同性の高い遺伝子であれば、ヒト野生型TGFBR2遺伝子と同様に哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる可能性が高いからである。ここで、変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。
具体的には、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型TGFBR2遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(すなわちヒト野生型TGFBR2遺伝子の塩基配列の縮重配列)からなる変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の縮重配列からなる変異型遺伝子がコードするアミノ酸配列は野生型遺伝子がコードするアミノ酸配列と同じであるため、この変異型遺伝子から発現される蛋白質の機能は野生型遺伝子から発現される蛋白質と同じだからである。なお、どのような塩基配列が縮重配列にあたるかは、ユニバーサルコドンの対応表を用いて当業者であれば容易に理解することが可能である。
また、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型TGFBR2遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、変異型遺伝子の塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して塩基の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
なお、この変異型遺伝子の塩基配列のコードするアミノ酸配列が、ヒト野生型TGFBR2遺伝子のコードするアミノ酸配列に対して1または数個の置換がある場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。アミノ酸側鎖の性質についての説明は既に行ったので繰り返さない。
また、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型TGFBR2遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、異型遺伝子の塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
また、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型TGFBR2遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子は、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いため、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
(iii)EXT1遺伝子
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるEXT1遺伝子は、哺乳動物の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素(endoplasmic reticulum−resident type II transmembrane glycosyltransferase)をコードする遺伝子であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型EXT1遺伝子(Entrez Gene ID:2131のEXT1 exostoses (multiple)1[Homo sapiens]をコードする遺伝子)などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生EXT1遺伝子に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるEXT1遺伝子は、哺乳動物の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素(endoplasmic reticulum−resident type II transmembrane glycosyltransferase)をコードする遺伝子であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型EXT1遺伝子(Entrez Gene ID:2131のEXT1 exostoses (multiple)1[Homo sapiens]をコードする遺伝子)などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生EXT1遺伝子に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記遺伝子に関する塩基配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
なお、このEXT1遺伝子にコードされている哺乳動物の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素は、ヘパラン硫酸の生合成における糖鎖延長反応に関係している(involved in the chain elongation step of heparan sulfate biosynthesis)。
もっとも、本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるヌクレオチド断片にコードされるEXT1遺伝子は、ヒト野生型EXT1遺伝子の変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ヒト野生型EXT1遺伝子との相同性の高い遺伝子であれば、ヒト野生型EXT1遺伝子と同様に哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる可能性が高いからである。ここで、変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。
具体的には、ヒト野生型EXT1遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型EXT1遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(すなわちヒト野生型EXT1遺伝子の塩基配列の縮重配列)からなる変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ヒト野生型EXT1遺伝子の縮重配列からなる変異型遺伝子がコードするアミノ酸配列は野生型遺伝子がコードするアミノ酸配列と同じであるため、この変異型遺伝子から発現される蛋白質の機能は野生型遺伝子から発現される蛋白質と同じだからである。なお、どのような塩基配列が縮重配列にあたるかは、ユニバーサルコドンの対応表を用いて当業者であれば容易に理解することが可能である。
また、ヒト野生型EXT1遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型EXT1遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、変異型遺伝子の塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して塩基の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
なお、この変異型遺伝子の塩基配列のコードするアミノ酸配列が、ヒト野生型EXT1遺伝子のコードするアミノ酸配列に対して1または数個の置換がある場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。アミノ酸側鎖の性質についての説明は既に行ったので繰り返さない。
また、ヒト野生型EXT1遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型EXT1遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、異型遺伝子の塩基配列が、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いほど、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
また、ヒト野生型EXT1遺伝子の変異型遺伝子は、ヒト野生型EXT1遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子であってもよい。なぜなら、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子は、野生型の遺伝子の塩基配列に対して相同性が高いため、野生型の遺伝子の塩基配列をコードする遺伝子に近い特性を有していることになるからである。
<ベクターを含む5−フルオロウラシル感受性増感剤>
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性増感剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子を発現するベクターを含む、増感剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかを発現するベクターを含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性増感剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子を発現するベクターを含む、増感剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかを発現するベクターを含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
具体的には、本実施形態に用いる発現ベクターは、ベクターと、そのベクターに作動可能に連結されてなるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子と、を備える。このベクターは、後述する実施例で示すように、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子(およびその遺伝子のコードする蛋白質)を好適に発現することが可能である。
(i)アデノウイルスベクター
ここで、このベクターとしては、特に限定されず、一般的な哺乳動物細胞に導入可能なベクターを利用可能であるが、例えば、後述する実施例で用いられているアデノウイルスベクターを好適に用いることができる。アデノウイルスは最もよく研究されているウイルスのひとつであり、現在汎用されているアデノウイルスベクターはE1遺伝子を欠損しているため、E1遺伝子を持続的に発現している特殊な細胞(293細胞)でのみ増殖することができ、通常の細胞には感染することは可能であるが増殖することはないため、アデノウイルスベクターは安全かつ高効率なベクターとして、遺伝子機能解析などの基礎研究から遺伝子治療の分野まで広く利用されている。アデノウイルスベクターを用いれば、以下のような利点が得られる。1)高力価のウイルスを得ることができる。108〜109PFU/ml程度のウイルス液を容易に得ることができる。さらに1011PFU/ml程度まで濃縮することも可能である。そのため、接着性の細胞ではほぼ100%の細胞に遺伝子導入することが可能である。2)広い動物種に用いることができる。3)増殖細胞だけではなく静止期の細胞にも感染・発現できる。4)神経系を含む多くの分化・未分化動物培養細胞をターゲットにすることができ、さらに動物個体への直接注入・投与による遺伝子発現が可能である。
ここで、このベクターとしては、特に限定されず、一般的な哺乳動物細胞に導入可能なベクターを利用可能であるが、例えば、後述する実施例で用いられているアデノウイルスベクターを好適に用いることができる。アデノウイルスは最もよく研究されているウイルスのひとつであり、現在汎用されているアデノウイルスベクターはE1遺伝子を欠損しているため、E1遺伝子を持続的に発現している特殊な細胞(293細胞)でのみ増殖することができ、通常の細胞には感染することは可能であるが増殖することはないため、アデノウイルスベクターは安全かつ高効率なベクターとして、遺伝子機能解析などの基礎研究から遺伝子治療の分野まで広く利用されている。アデノウイルスベクターを用いれば、以下のような利点が得られる。1)高力価のウイルスを得ることができる。108〜109PFU/ml程度のウイルス液を容易に得ることができる。さらに1011PFU/ml程度まで濃縮することも可能である。そのため、接着性の細胞ではほぼ100%の細胞に遺伝子導入することが可能である。2)広い動物種に用いることができる。3)増殖細胞だけではなく静止期の細胞にも感染・発現できる。4)神経系を含む多くの分化・未分化動物培養細胞をターゲットにすることができ、さらに動物個体への直接注入・投与による遺伝子発現が可能である。
組換えアデノウイルスを作成するには、「完全長DNA導入法」あるいは「COS−TPC法」のいずれの方法を用いても良い。完全長DNA導入法とは、制限消化処理した組換えコスミドを293細胞にtransfectionすることにより、組換えアデノウイルスを取得する方法である。完全長DNA導入法では、細胞内での相同組換えが必要ないため、親ウイルスの混入はなく、得られる組換えアデノウイルスのほとんどが目的ウイルスである。「COS−TPC法」とは、組換えコスミド およびAdenovirus genome DNA−TPCを293細胞にco−transfectionし、293細胞内でおこる相同組換えを利用することにより、組換えアデノウイルスを作製する方法である。Adenovirus genome DNA−TPCには、本来アデノウイルスゲノムDNAの両末端に結合している末端タンパク質(TP; Terminal Protein)が結合している。そのため、高効率に組換えアデノウイルスを作製することができ、ほぼ確実に目的ウイルスを得ることができる。
<蛋白質を含む増感剤>
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性増感剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のコードする蛋白質を含む、増感剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質を含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性増感剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のコードする蛋白質を含む、増感剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質を含むため、増感剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果が得られる。
このPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質を得る場合には、その蛋白質は人工的に化学合成されてもよいが、細胞培養を用いる生産方法によって得ることが安価かつ大量に生産可能であるため好ましい。具体的には、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質を大量生産した上で分離・精製するために、上記のアデノウイルスベクターを感染させた哺乳動物細胞からPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質を分離・精製するための一般的な方法を用いることができる。具体的には、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質を大量生産した大哺乳動物細胞を破壊後、通常用いられる分離精製手段を用いることにより行うことができる。哺乳動物細胞の破壊には、例えば、超音波処理、高圧ホモジナイザー処理、浸透圧ショック法などが好適に用いられる。RAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質の分離精製手段には、例えば塩析、ゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて用いることができる。
(i)PRAKG2遺伝子のコードするAMP活性化蛋白質キナーゼ
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるPRAKG2遺伝子のコードする蛋白質は、哺乳動物のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニット(protein kinase,AMP−activated,gamma 2 non−catalytic subunit)であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニット(5'−AMP−activated protein kinase subunit gamma−2 isoform a[Homo sapiens])などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに関するアミノ酸配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるPRAKG2遺伝子のコードする蛋白質は、哺乳動物のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニット(protein kinase,AMP−activated,gamma 2 non−catalytic subunit)であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニット(5'−AMP−activated protein kinase subunit gamma−2 isoform a[Homo sapiens])などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに関するアミノ酸配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
もっとも、本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるAMP活性化蛋白質キナーゼは、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットの変異型蛋白質であってもよい。なぜなら、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットとの相同性の高い蛋白質であれば、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットと同様に哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる可能性が高いからである。ここで、変異型とは、個体間のアミノ酸配列の差異に起因するものを含む。
具体的には、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットの変異型蛋白質は、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットのアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、変異型蛋白質のアミノ酸配列が、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに近い特性を有していることになるからである。
なお、この変異型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットのアミノ酸配列が、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットのアミノ酸配列に対して1または数個の置換がある場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。なお、アミノ酸側鎖の性質について既に説明したので繰り返さない。
また、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットの変異型蛋白質は、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットのアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、変異型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットのアミノ酸配列が、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性が高いほど、野生型のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに近い特性を有していることになるからである。
また、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットの変異型蛋白質は、ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットをコードする遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされるアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。なぜなら、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされるアミノ酸配列からなる変異型AMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットは、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性が高いため、野生型のAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットに近い特性を有していることになるからである。
(ii)TGFBR2遺伝子のコードするTGF−β2型受容体
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるTGFBR2遺伝子のコードする蛋白質は、哺乳動物のTGF−β2型受容体(transforming growth factor,beta receptor II)であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型TGF−β2型受容体(transforming growth factor, beta receptor II(70/80kDa)[Homo sapiens])などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型TGF−β2型受容体に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記TGF−β2型受容体に関するアミノ酸配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるTGFBR2遺伝子のコードする蛋白質は、哺乳動物のTGF−β2型受容体(transforming growth factor,beta receptor II)であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型TGF−β2型受容体(transforming growth factor, beta receptor II(70/80kDa)[Homo sapiens])などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型TGF−β2型受容体に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記TGF−β2型受容体に関するアミノ酸配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
もっとも、本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれTGF−β2型受容体は、ヒト野生型TGF−β2型受容体の変異型蛋白質であってもよい。なぜなら、ヒト野生型TGF−β2型受容体との相同性の高い蛋白質であれば、ヒト野生型TGF−β2型受容体と同様に哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる可能性が高いからである。ここで、変異型とは、個体間のアミノ酸配列の差異に起因するものを含む。
具体的には、ヒト野生型TGF−β2型受容体の変異型蛋白質は、ヒト野生型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、変異型蛋白質のアミノ酸配列が、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型のTGF−β2型受容体に近い特性を有していることになるからである。
なお、この変異型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列が、ヒト野生型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列に対して1または数個の置換がある場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。なお、アミノ酸側鎖の性質について既に説明したので繰り返さない。
また、ヒト野生型TGF−β2型受容体の変異型蛋白質は、ヒト野生型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、変異型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列が、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性が高いほど、野生型のTGF−β2型受容体に近い特性を有していることになるからである。
また、ヒト野生型TGF−β2型受容体の変異型蛋白質は、ヒト野生型TGF−β2型受容体をコードする遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされるアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。なぜなら、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされるアミノ酸配列からなる変異型TGF−β2型受容体は、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性が高いため、野生型のTGF−β2型受容体に近い特性を有していることになるからである。
(iii)EXT1遺伝子のコードする小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるEXT1遺伝子のコードする蛋白質は、哺乳動物の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素(endoplasmic reticulum−resident type II transmembrane glycosyltransferase)であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素(EXT1 exostoses (multiple)1[Homo sapiens])などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に関するアミノ酸配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれるEXT1遺伝子のコードする蛋白質は、哺乳動物の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素(endoplasmic reticulum−resident type II transmembrane glycosyltransferase)であればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素(EXT1 exostoses (multiple)1[Homo sapiens])などを好適に用いることができる。なぜなら、このヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する効果があることは、後述の実施例で実証されているからである。なお、上記小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に関するアミノ酸配列等の詳細は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBankで確認することができる。
なお、このEXT1遺伝子にコードされている哺乳動物の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素は、ヘパラン硫酸の生合成における糖鎖延長反応に関係している(involved in the chain elongation step of heparan sulfate biosynthesis)。
もっとも、本実施形態の5−フルオロウラシル感受性増感剤に含まれる小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素は、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素の変異型蛋白質であってもよい。なぜなら、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素との相同性の高い蛋白質であれば、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素と同様に哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる可能性が高いからである。ここで、変異型とは、個体間のアミノ酸配列の差異に起因するものを含む。
具体的には、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素の変異型蛋白質は、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。また上記「1若しくは数個」は好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、好ましくは4個以下であり、より好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個である。なぜならば、変異型蛋白質のアミノ酸配列が、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換若しくは付加が少ないほど、野生型の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に近い特性を有していることになるからである。
なお、この変異型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列が、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列に対して1または数個の置換がある場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。なお、アミノ酸側鎖の性質について既に説明したので繰り返さない。
また、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素の変異型蛋白質は、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。ここで上記「80%以上」は好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。なぜならば、変異型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列が、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性が高いほど、野生型の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に近い特性を有していることになるからである。
また、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素の変異型蛋白質は、ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素をコードする遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされるアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。なぜなら、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされるアミノ酸配列からなる変異型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素は、野生型の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性が高いため、野生型の小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素に近い特性を有していることになるからである。
<5−フルオロウラシル/インターフェロンαへの感受性増感剤>
これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤は、いずれも5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαの併用時における5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαへの感受性を増強する、増感剤としても活用できる。後述する実施例で、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればPRAKG2遺伝子にも5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があると想定できるためである。
これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤は、いずれも5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαの併用時における5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαへの感受性を増強する、増感剤としても活用できる。後述する実施例で、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればPRAKG2遺伝子にも5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があると想定できるためである。
また、後述する実施例で、TGFBR2遺伝子のコードするTGF−β2型受容体およびEXT1遺伝子のコードする小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればPRAKG2遺伝子のコードするAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットにも5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があると想定できるためである。
<投与形態および剤形>
これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤を生体に投与する際の投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、眼内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、全身または局部的に投与することができる。投与経路は、好ましくは静脈内投与をあげることができる。また、投与経路は、5−フルオロウラシルまたはインターフェロンαの投与経路と同一である必要はない。
これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤を生体に投与する際の投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、眼内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、全身または局部的に投与することができる。投与経路は、好ましくは静脈内投与をあげることができる。また、投与経路は、5−フルオロウラシルまたはインターフェロンαの投与経路と同一である必要はない。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。さらに、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤は、受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつこの増感剤を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。この担体としては具体的には乳糖、グリセリンなどが例示できる。このインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤と、用いる担体の性質により、エアロゾル、ライパウダーなどの製剤化が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
また、上記増感剤は、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
また、投与方法は患者の年齢、症状、対象臓器等などにより適宜選択することができる。この増感剤の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重、併用する抗癌剤の種類および量などにより異なる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。また、別の適切な化学療法薬と併用で投与してもよい。
<抗癌剤キット>
本実施形態の抗癌剤キットは、これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤と、5−フルオロウラシルと、を含む、キットである。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子(またはこれら遺伝子のコードする蛋白質)を用いた増感剤を含むため、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が増強されて優れた抗腫瘍効果が得られる。
本実施形態の抗癌剤キットは、これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤と、5−フルオロウラシルと、を含む、キットである。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子(またはこれら遺伝子のコードする蛋白質)を用いた増感剤を含むため、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が増強されて優れた抗腫瘍効果が得られる。
ここで、本明細書において、「5−フルオロウラシル」(5−fluorouracil)とは、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤であり、抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)として用いられる化合物を含む。この化合物は、ウラシルの5位水素原子がフッ素原子に置き換わった構造をしている。この化合物は、1956年にDushinskyらによって合成され、その後Heidelbergerらを中心として基礎および臨床にわたる広範な研究で抗悪性腫瘍剤としての評価が確立された。代表商品としては、「5−FU協和」(協和発酵キリン)シリーズが市販されている。
また、本実施形態に係る抗癌剤キットは、これまで説明してきた上記の実施形態の増感剤と、5−フルオロウラシルと、にくわえて、さらにインターフェロンαを含む、キットであってもよい。後述する実施例で、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればPRAKG2遺伝子にも5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があると想定できるためである。
また、後述する実施例で、TGFBR2遺伝子のコードするTGF−β2型受容体およびEXT1遺伝子のコードする小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればPRAKG2遺伝子のコードするAMP活性化蛋白質キナーゼγ2非触媒サブユニットにも5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があると想定できるためである。
ここで、本明細書において、「インターフェロン」(Interferon、略号:IFN)とは、動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質を含む。この蛋白質は、ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをする。また、この蛋白質は、サイトカインの一種である。この蛋白質は、医薬品としてはC型肝炎・多発性骨髄腫等の悪性腫瘍の治療に用いられている。
また、本明細書において、「インターフェロンα」(Interferon−α、略号:IFN−α)とは、IFN−α:13種類(1,2,4,5,6,7,8,10,13,14,16,17,21)を含む。IFNαを用いた医薬品としては、例えば、スミフェロン(R):腎癌・多発性骨髄腫・慢性骨髄性白血病・ヘアリー細胞白血病・亜急性硬化性全脳炎・HTLV−1脊髄症・B型肝炎・C型肝炎、オーアイエフ(R):慢性骨髄性白血病・B型肝炎・C型肝炎などが市販されている。なお、本明細書において、「インターフェロンα」には、IFNα2bを用いた市販薬であるイントロンA(R):B型肝炎・C型肝炎、PEG−IFNα2aを用いた市販薬であるペガシス(R):C型肝炎、PEG−IFNα2bを用いた市販薬であるペグイントロン(R):C型肝炎、C−IFNαを用いた市販薬であるアドバフェロン(R):C型肝炎なども含まれる。
<5−フルオロウラシル感受性抑制剤>
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性抑制剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含む、抑制剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含むため、抑制剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制する効果が得られる。
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性抑制剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含む、抑制剤である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含むため、抑制剤自体としても5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制する効果が得られる。
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性抑制剤を用いれば、例えば経口または静脈注射などで全身または広範囲に5−フルオロウラシルを投与した場合に、癌巣が存在しない部位に注射剤などで5−フルオロウラシル感受性抑制剤を注入することができる。このようにすれば、癌巣が存在しない部位において5−フルオロウラシルによる深刻な副作用が発生する可能性を低減することができる。また、癌巣が存在しない部位に注射剤などで5−フルオロウラシル感受性抑制剤を注入し、一方で癌巣には注射剤などで5−フルオロウラシル感受性増感剤を注入すれば、癌巣が存在しない部位において5−フルオロウラシルによる深刻な副作用が発生する可能性を低減しつつも、癌巣では5−フルオロウラシルによる抗腫瘍作用を増強することができる。
ここで、この5−フルオロウラシル感受性抑制剤は、5−フルオロウラシルを投与した場合の癌細胞の死亡率を低下させる(生存率を向上させる)ものであればよく、特に限定するものではないが、例えば母集団が正規分布に従うと仮定できる場合にはパラメトリック検定であるスチューデントのt検定(Student's t−test)において有意差があれば好ましい。すなわち、スチューデントのt検定において片側検定でp<0.05となればよく、より好ましくは片側検定でp<0.03となればよく、最も好ましくは片側検定でp<0.01となればよい。なお、スチューデントのt検定は特に片側検定に限定するわけではなく、両側検定で行っても良い。さらに、母集団が正規分布に従うと仮定できない場合には、ノンパラメトリック検定として、マン・ホイットニーのU検定などを行って有意差の有無を検定しても良い。
なお、上記の抑制剤は、いずれも5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαの併用時における5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαへの感受性を抑制する、抑制剤としても活用できる。後述する実施例で、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればTGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子の発現を抑制すれば、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を抑制する効果があると想定できるためである。また、当業者であればPRAKG2遺伝子の発現を抑制すれば、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を抑制する効果があることも同様に想定できるためである。
(i)siRNA
siRNA(small interfering RNA)とは21−23塩基対から成る低分子二本鎖RNAである。siRNAはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
siRNA(small interfering RNA)とは21−23塩基対から成る低分子二本鎖RNAである。siRNAはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
そのため、本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性抑制剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の塩基配列の一部分に対応する21−23塩基対を含む二本鎖RNAからなるsiRNAを含むことが好ましい。このような二本鎖RNAからなるsiRNAであれば、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を効果的に抑制することができ、その結果5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制する効果が得られる。
(ii)shRNA
shRNA(small hairpin RNA)とは21−23塩基対から成る低分子二本鎖RNAが1つのループ構造を介して一本鎖としてつながった形のRNA分子である。shRNAもRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
shRNA(small hairpin RNA)とは21−23塩基対から成る低分子二本鎖RNAが1つのループ構造を介して一本鎖としてつながった形のRNA分子である。shRNAもRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
そのため、本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性抑制剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の塩基配列の一部分に対応する21−23塩基対を含む二本鎖RNAが1つのループ構造を介して一本鎖としてつながった形のshRNAを含むことが好ましい。このようなヘアピン構造を有するshRNAであれば、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を効果的に抑制することができ、その結果5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制する効果が得られる。
(iii)アンチセンスRNA(アンチセンスDNA)
アンチセンスRNAとは、標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスRNAである。このように標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスRNAを、標的mRNAにハイブリダイズさせると、標的mRNAが翻訳されることを妨げるので、標的mRNAの発現を抑制することになる。なお、同様の現象は、標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスDNAでも実現可能である。
アンチセンスRNAとは、標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスRNAである。このように標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスRNAを、標的mRNAにハイブリダイズさせると、標的mRNAが翻訳されることを妨げるので、標的mRNAの発現を抑制することになる。なお、同様の現象は、標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスDNAでも実現可能である。
そのため、本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性抑制剤は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の塩基配列の少なくとも一部分(全部でもよい)に対応するアンチセンスRNAを含むことが好ましい。このようなアンチセンスRNAであれば、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を効果的に抑制することができ、その結果5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を抑制する効果が得られる。なお、アンチセンスRNAの代わりにアンチセンスDNAを用いても良い。
<診断薬>
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性を判定するための診断薬は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現量を測定するための試薬を含む、診断薬である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定するための試薬を含むため、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定することで、被験者が5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が効きやすい体質であるかどうか判定するための診断薬として利用できる。
本実施形態に係る5−フルオロウラシル感受性を判定するための診断薬は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現量を測定するための試薬を含む、診断薬である。この構成によれば、5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが後述する実施例において実証されているPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定するための試薬を含むため、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を測定することで、被験者が5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が効きやすい体質であるかどうか判定するための診断薬として利用できる。
ここで、診断薬の使用方法は特に限定しないが、例えば、被験者の生体内における細胞、血液、血清、体液、または病理切片等と、標準的な細胞等において、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量を検査、比較することで診断が可能である。例えば、これらの発現量が所定の閾値を超えていれば、被験者が5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が効きやすい体質であると判定することができる。一方、これらの発現量が所定の閾値を下回れば、被験者が5−フルオロウラシルの抗腫瘍効果が効きにくい体質であると判定することができる。この閾値は、例えば健常者の発現量の平均値の1.5倍以上に設定してもよく、2倍以上に設定してもよく、5倍以上に設定してもよく、10倍以上に設定してもよい。また、この閾値は、例えば健常者の発現量の平均値よりも標準偏差の2倍以上大きい場合に設定してもよく、標準偏差の5倍以上大きい場合に設定してもよく、標準偏差の10倍以上大きい場合に設定してもよい。
あるいは、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量が、例えば健常者の発現量に比べて有意差が認められるほど大きいかどうかで判定してもよい。有意差があるかどうかの判定としては、例えば母集団が正規分布に従うと仮定できる場合にはパラメトリック検定であるスチューデントのt検定(Student's t−test)において有意差があれば好ましい。すなわち、スチューデントのt検定において片側検定でp<0.05となればよく、より好ましくは片側検定でp<0.03となればよく、最も好ましくは片側検定でp<0.01となればよい。なお、スチューデントのt検定は特に片側検定に限定するわけではなく、両側検定で行っても良い。さらに、母集団が正規分布に従うと仮定できない場合には、ノンパラメトリック検定として、マン・ホイットニーのU検定などを行って有意差の有無を検定しても良い。
なお、上記の診断薬は、いずれも被験者が5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαの併用時における5−フルオロウラシルおよびインターフェロンの抗腫瘍効果が効きやすい体質であるかどうか判定するためのする、診断薬としても活用できる。後述する実施例で、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子には、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における抗腫瘍作用を増強する効果があることが実証されているため、当業者であればTGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子の発現量を測定すれば、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における被験者の感受性を判定するために活用できると想定できるためである。また、当業者であればPRAKG2遺伝子の発現量を測定すれば、5−フルオロウラシル/インターフェロンαの併用時における被験者の感受性を判定するために活用できると想定できるためである。
被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量の測定のための試薬は、特に限定するものではないが、例えば、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列を含むプローブを用いて測定することができる。この方法を用いれば、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかのmRNAの発現量を好適に測定することができる。また、これらのプローブは、蛍光色素または放射性同位元素で標識されていることが好ましい。このように標識すれば簡便な方法で感度良くこれらのmRNAの発現量を測定することができる。
もっとも、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかの発現量の測定のための試薬は、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子がコードする蛋白質の発現量を測定するための試薬であってもよい。具体的には、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のコードする蛋白質に特異的に結合する抗体を好適に用いることができる。この方法を用いれば、被験者の生体内におけるPRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子またはEXT1遺伝子のいずれかがコードする蛋白質の発現量を好適に測定することができる。また、これらの抗体は、蛍光色素または放射性同位元素で標識されていることが好ましい。このように標識すれば簡便な方法で感度良くこれらの蛋白質の発現量を測定することができる。
<スクリーニング方法>
本実施形態に係る抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子のスクリーニング方法は、哺乳動物の所定の癌細胞株にリボザイムライブラリーを導入する工程と、リボザイムライブラリーが導入された癌細胞を所定の抗癌剤で処理する工程と、抗癌剤で処理された癌細胞のうち生存細胞からリボザイムを回収して新規なリボザイムライブラリーを得る工程と、を含む。すなわち、本実施形態に係る遺伝子のスクリーニング方法は、いわば「改変型ランダムリボザイム法」と言えるものである。
本実施形態に係る抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子のスクリーニング方法は、哺乳動物の所定の癌細胞株にリボザイムライブラリーを導入する工程と、リボザイムライブラリーが導入された癌細胞を所定の抗癌剤で処理する工程と、抗癌剤で処理された癌細胞のうち生存細胞からリボザイムを回収して新規なリボザイムライブラリーを得る工程と、を含む。すなわち、本実施形態に係る遺伝子のスクリーニング方法は、いわば「改変型ランダムリボザイム法」と言えるものである。
この「改変型ランダムリボザイム法」では、基質認識部位をランダマイズしたリボザイムライブラリーを用いて、有用な遺伝子を機能の面から探索できる方法(ジーンディスカバリーシステム)である。この「改変型ランダムリボザイム法」の概要としては、リボザイムライブラリーを細胞内で機能させ、ある着目した細胞の表現型(癌細胞への抗癌剤の感受性が抑制されるなど)が現れた細胞を回収して、そこで発現しているリボザイムの標的認識配列を解析すると、その着目した表現型と細胞内でリボザイムに切断された遺伝子の配列との関係を知ることができる。
そのため、本実施形態に係るスクリーニング方法で用いるリボザイムライブラリーとしては、標的認識配列特異的にmRNAを切断し、遺伝子発現を抑制する複数のリボザイムを含み、各リボザイムが認識する標的認識配列がランダム化された複数の配列である、ランダム化リボザイムライブラリーを用いている。本実施形態に係るスクリーニング方法では、このようなランダム化リボザイムライブラリーを用いて、上記の工程を複数回繰り返して得られるリボザイムライブラリーが認識する標的認識配列を検出する工程と、こうして検出された標的認識配列に対応する遺伝子情報をゲノムデータベースから抽出する工程と、をさらに含むため、癌細胞への抗癌剤の感受性を抑制するリボザイムライブラリーが濃縮されることになる。そして、そのリボザイムライブラリーには、癌細胞への抗癌剤の感受性を増強する遺伝子を認識する標的認識配列が含まれているので、その標的認識配列に対応する遺伝子は、まさに、癌細胞への抗癌剤の感受性を増強する遺伝子であるということになるわけである。
なお、この「改変型ランダムリボザイム法」では、各リボザイムに標識された各標的認識配列に特異的な波長を有する蛍光色素を検出する形で各リボザイムを検出してもよい。このようにすれば、蛍光色素の波長を検出するだけで、各リボザイムに標識された各標的認識配列を同定することができ、簡単に感度良くスクリーニングを行うことができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態では、ヒト野生型PRAKG2遺伝子、ヒト野生型TGFBR2遺伝子およびヒト野生型EXT1遺伝子、そしてそれらの変異型遺伝子を中心に説明したが、特にヒト由来遺伝子に限定する趣旨ではない。すなわち、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子の由来は特に限定せず、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーであっても良い。好ましくは、マウス、ラット、サル、チンパンジー、およびヒトであり、特に好ましくはヒトである。なぜならば、ヒトであればヒトの疾患の治療や、治療薬等の開発に利用できるためである。また、マウス、ラット、サル、およびチンパンジーは、世界中で研究用のモデル動物として汎用され多くの特性が明らかになっているため、これらの生物の上記遺伝子の発現を制御することで、治療薬等の開発のために特に有用な情報が得られる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<材料と方法>
(i)使用した試薬
DMEM: Dulbecco's Modified Eagle's Medium粉末、10 mL 10% NaOHCO3、
5 mL 100×glucose、10 mL 50×glutamine
PBS(-): 137 mM NaCl、8.10 mM Na2HPO4・12H2O、2.68 mM KCl、1.47 mM KH2PO4
Trypsin/EDTA solution: Nacalai Tesque、0.25% Trypsin、1 mM EDTA
IFN-α: 300万U/mL イントロンA(Schering-Plough Corporation)
5-FU: 協和発酵工業株式会社
TetraColor ONE: TetraColor ONE(SEIKAGAKU CORPORATION)
Solution I: 50 mM glucose、25 mM Tris pH8.0、10 mM EDTA
Solution II: 0.2 N NaOH、1% SDS
Solution III: 5 M acetic acid:5 M potassium acetate=2:3
フェノール/クロロホルム: TE飽和フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール
=25:24:1
LB培地: Nacalai Tesque
LB寒天培地: Lennox、Becton Dickinson
SOB(Mg-)培地: 10 g Bacto Tryptone、2.5 g Yeast Extract、5 mL 5% NaCl、5 mL 250 mM KCl
SOC培地: SOB(Mg-)50 mL、1 M MgCl2 500 mL、2 M MgSO4 250 μL、
1 M glucose 1 mL
RIPA Buffer: 50mM Tris-HCl(pH7.9)、150mM NaCl、1%NP-40、
0.5% Sodium Deoxycholate、0.1% SDS、
protease inhibitor(Complete: Roche)、
phosphatase inhibitor(Phos stop: Roche)
1次抗体: rabbit anti-V5 antibody(MBL)
2次抗体: horse radish peroxidase(HRP)標識 donkey anti-Rabbit IgG
(GEヘルスケア)
ウエスタン検出試薬: ECL Western Blotting Detection Reagents(GEヘルスケア)
(i)使用した試薬
DMEM: Dulbecco's Modified Eagle's Medium粉末、10 mL 10% NaOHCO3、
5 mL 100×glucose、10 mL 50×glutamine
PBS(-): 137 mM NaCl、8.10 mM Na2HPO4・12H2O、2.68 mM KCl、1.47 mM KH2PO4
Trypsin/EDTA solution: Nacalai Tesque、0.25% Trypsin、1 mM EDTA
IFN-α: 300万U/mL イントロンA(Schering-Plough Corporation)
5-FU: 協和発酵工業株式会社
TetraColor ONE: TetraColor ONE(SEIKAGAKU CORPORATION)
Solution I: 50 mM glucose、25 mM Tris pH8.0、10 mM EDTA
Solution II: 0.2 N NaOH、1% SDS
Solution III: 5 M acetic acid:5 M potassium acetate=2:3
フェノール/クロロホルム: TE飽和フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール
=25:24:1
LB培地: Nacalai Tesque
LB寒天培地: Lennox、Becton Dickinson
SOB(Mg-)培地: 10 g Bacto Tryptone、2.5 g Yeast Extract、5 mL 5% NaCl、5 mL 250 mM KCl
SOC培地: SOB(Mg-)50 mL、1 M MgCl2 500 mL、2 M MgSO4 250 μL、
1 M glucose 1 mL
RIPA Buffer: 50mM Tris-HCl(pH7.9)、150mM NaCl、1%NP-40、
0.5% Sodium Deoxycholate、0.1% SDS、
protease inhibitor(Complete: Roche)、
phosphatase inhibitor(Phos stop: Roche)
1次抗体: rabbit anti-V5 antibody(MBL)
2次抗体: horse radish peroxidase(HRP)標識 donkey anti-Rabbit IgG
(GEヘルスケア)
ウエスタン検出試薬: ECL Western Blotting Detection Reagents(GEヘルスケア)
(ii)細胞培養
HCC細胞株は、10cm細胞培養皿(FALCON)上にて、10%ウシ胎児血清(EQUITECH−BIO,INC)を含むDMEMを用いて、5%CO2、37℃、100%湿度下において培養した。70〜90%コンフルエントになった状態でTrypsin/EDTA Solution 200μLを加えて細胞を剥がし、1000rpm、5min、4℃で遠心し細胞を回収、1dish分を4dishに分けて継代した。
HCC細胞株は、10cm細胞培養皿(FALCON)上にて、10%ウシ胎児血清(EQUITECH−BIO,INC)を含むDMEMを用いて、5%CO2、37℃、100%湿度下において培養した。70〜90%コンフルエントになった状態でTrypsin/EDTA Solution 200μLを加えて細胞を剥がし、1000rpm、5min、4℃で遠心し細胞を回収、1dish分を4dishに分けて継代した。
(iii)WST assay
「細胞培養」に示した方法によって、70〜90%コンフルエントになったHCC細胞株を回収し、96穴プレート(FALCON)の各wellに100μLずつ捲いた。24時間後に5−FU及びIFN−αを加えて37℃でインキュベートした。薬剤処理3日後に10% TetraColor ONE 100μLを加え、37℃、2時間インキュベートし、96穴用Micro Plate Reader(MRP−A4i、TOSOH)を用いて吸光度(測定波長450nm/対照波長600nm)を測定した。測定結果は、試薬のみの吸光度との差をとり、細胞のみの吸光度とし、これを生細胞数とした。
「細胞培養」に示した方法によって、70〜90%コンフルエントになったHCC細胞株を回収し、96穴プレート(FALCON)の各wellに100μLずつ捲いた。24時間後に5−FU及びIFN−αを加えて37℃でインキュベートした。薬剤処理3日後に10% TetraColor ONE 100μLを加え、37℃、2時間インキュベートし、96穴用Micro Plate Reader(MRP−A4i、TOSOH)を用いて吸光度(測定波長450nm/対照波長600nm)を測定した。測定結果は、試薬のみの吸光度との差をとり、細胞のみの吸光度とし、これを生細胞数とした。
(iv)アルカリ溶菌法
37℃、オーバーナイトで振盪培養した大腸菌液(DH5α)1.5mLを15,000rpm、5分、室温で遠心分離した。上清を除去し、ペレットに100μL Solution Iを加えてボルテックスで攪拌した後、150μL Solution IIを加えて転倒混和した。次に、200μL Solution IIIを加えて転倒混和後、15,000rpm、5分、4℃で遠心分離した。上清回収後、300μLフェノール/クロロホルムを加えてボルテックスで攪拌し、15,000rpm、5分、4℃で遠心分離した。上清に1mL 100%エタノールを加えて転倒混和した後、15,000rpm、5分、4℃で遠心した。上清除去後1mL 70%エタノールを加えて洗い、15,000rpm、5分、4℃で遠心した。最後に上清を除き、風乾後に滅菌水50μLに溶かした。
37℃、オーバーナイトで振盪培養した大腸菌液(DH5α)1.5mLを15,000rpm、5分、室温で遠心分離した。上清を除去し、ペレットに100μL Solution Iを加えてボルテックスで攪拌した後、150μL Solution IIを加えて転倒混和した。次に、200μL Solution IIIを加えて転倒混和後、15,000rpm、5分、4℃で遠心分離した。上清回収後、300μLフェノール/クロロホルムを加えてボルテックスで攪拌し、15,000rpm、5分、4℃で遠心分離した。上清に1mL 100%エタノールを加えて転倒混和した後、15,000rpm、5分、4℃で遠心した。上清除去後1mL 70%エタノールを加えて洗い、15,000rpm、5分、4℃で遠心した。最後に上清を除き、風乾後に滅菌水50μLに溶かした。
(v)ランダムリボザイムライブラリーの構築
(v−1)attB1−tRNAVal−RRz−attB2の構築
以下の方法でtRNAValプロモーター下流にRRzを挿入した(図1)。
(v−1)attB1−tRNAVal−RRz−attB2の構築
以下の方法でtRNAValプロモーター下流にRRzを挿入した(図1)。
(v−1−1)
ランダムな塩基配列をそれぞれ8、7塩基有したRRz1、RRz2プライマーを20pmolずつ用いてPCRによってアニーリングし、RRz遺伝子を合成した(図1A)。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃10秒で20サイクル行った。
ランダムな塩基配列をそれぞれ8、7塩基有したRRz1、RRz2プライマーを20pmolずつ用いてPCRによってアニーリングし、RRz遺伝子を合成した(図1A)。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃10秒で20サイクル行った。
(v−1−2)
合成したRRz遺伝子をテンプレートとして、RRz3、RRz4プライマー(表1)を30pmolずつ用いてPCRを行った。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、61℃30秒、68℃10秒で20サイクル行った。この反応によって下流にattB2配列を有するRRz遺伝子を合成した(図1A)。
合成したRRz遺伝子をテンプレートとして、RRz3、RRz4プライマー(表1)を30pmolずつ用いてPCRを行った。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、61℃30秒、68℃10秒で20サイクル行った。この反応によって下流にattB2配列を有するRRz遺伝子を合成した(図1A)。
(v−1−3)
100pg piGENE tRNA pur(iGENE Therapeutics, Inc.)をテンプレートとして、RRz5、RRz6プライマー(表1)を10pmolずつ用いてPCRを行った。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃10秒で26サイクル行った。この反応によって上流にattB1配列を有するtRNAValプロモーターを合成した(図1B)。
100pg piGENE tRNA pur(iGENE Therapeutics, Inc.)をテンプレートとして、RRz5、RRz6プライマー(表1)を10pmolずつ用いてPCRを行った。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃10秒で26サイクル行った。この反応によって上流にattB1配列を有するtRNAValプロモーターを合成した(図1B)。
(v−1−4)
(v−1−2)、(v−1−3)の生成物をテンプレートに、RRz4、RRz5プライマー(表1)を10pmol用いてPCRを行った。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃10秒で25サイクル行った。この反応によって上流にattB1配列、下流にattB2を有するtRNAVal−RRzを合成した(図1C)。
(v−1−2)、(v−1−3)の生成物をテンプレートに、RRz4、RRz5プライマー(表1)を10pmol用いてPCRを行った。PCRにはKOD Plus(TOYOBO)を使用し、94℃2分で1サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃10秒で25サイクル行った。この反応によって上流にattB1配列、下流にattB2を有するtRNAVal−RRzを合成した(図1C)。
(v−1−5)
(v−1−4)のPCR終了後、PCR反応液を電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて、ゲルからDNAを抽出した。その後、NAP−5 Column(Amersham Biosciences)を用いて再度DNAを生成し、これをattB1−tRNAVal−RRz−attB2とした。
(v−1−4)のPCR終了後、PCR反応液を電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて、ゲルからDNAを抽出した。その後、NAP−5 Column(Amersham Biosciences)を用いて再度DNAを生成し、これをattB1−tRNAVal−RRz−attB2とした。
(vi)pENTR−RRzの構築
30ng attB1−tRNAVal−RRz−attB2、300ng pDONR221(Invitrogen)、2μL BP Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen)を混合し、25℃、18時間反応させた。これによって、attB1−tRNAVal−RRz−attB2に含まれるattB1及びattB2とpDONR221に含まれるattP1及びattP2との配列間で組換え反応を行った(図1D)。その後、2μg proteinase Kを添加し、37℃で10分反応させた。この反応によって作成したattB1−tRNAVal−RRz−attB2を有するプラスミドをpENTR−RRzとした。
30ng attB1−tRNAVal−RRz−attB2、300ng pDONR221(Invitrogen)、2μL BP Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen)を混合し、25℃、18時間反応させた。これによって、attB1−tRNAVal−RRz−attB2に含まれるattB1及びattB2とpDONR221に含まれるattP1及びattP2との配列間で組換え反応を行った(図1D)。その後、2μg proteinase Kを添加し、37℃で10分反応させた。この反応によって作成したattB1−tRNAVal−RRz−attB2を有するプラスミドをpENTR−RRzとした。
(vii)RRzライブラリーの構築
構築したpENTR−RRz 2μLを200μLのelectrocompitent E. coliに、エレクトロポレーション(2,500V、25μF、201kΩ)によって導入した。遺伝子導入後、SOC培地を加え、2mLの大腸菌液を37℃で1時間振盪培養した。この大腸菌液のうち4μLは50倍希釈して、30μg/mLカナマイシンを加えたLB寒天培地(Lennox、Becton Dickinson)にまき、37℃で24時間インキュベートし、コロニー数を数え、総量2mL中の大腸菌数を求めた。残りの大腸菌液は3,500rpm、15分、4℃で遠心し、ペレットを20%グリセロールを含む500μLのLB培地に懸濁し、グリセロールストックとして−80℃で保存した。この作業を大腸菌数の総計が約600万個に達するまで繰り返し行った。その後、保存していた全てのグリセロールストックを30μg/mLカナマイシンを含むLB培地1Lに加え、12時間以上十分な濁度が得られるまで振盪培養した。この大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出した。抽出したプラスミドDNAは1μg/μLとなるようにTE(10mM Tris、1mM EDTA)バッファーに溶解し、これをRRzライブラリーとした。
構築したpENTR−RRz 2μLを200μLのelectrocompitent E. coliに、エレクトロポレーション(2,500V、25μF、201kΩ)によって導入した。遺伝子導入後、SOC培地を加え、2mLの大腸菌液を37℃で1時間振盪培養した。この大腸菌液のうち4μLは50倍希釈して、30μg/mLカナマイシンを加えたLB寒天培地(Lennox、Becton Dickinson)にまき、37℃で24時間インキュベートし、コロニー数を数え、総量2mL中の大腸菌数を求めた。残りの大腸菌液は3,500rpm、15分、4℃で遠心し、ペレットを20%グリセロールを含む500μLのLB培地に懸濁し、グリセロールストックとして−80℃で保存した。この作業を大腸菌数の総計が約600万個に達するまで繰り返し行った。その後、保存していた全てのグリセロールストックを30μg/mLカナマイシンを含むLB培地1Lに加え、12時間以上十分な濁度が得られるまで振盪培養した。この大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出した。抽出したプラスミドDNAは1μg/μLとなるようにTE(10mM Tris、1mM EDTA)バッファーに溶解し、これをRRzライブラリーとした。
(viii)シークエンス解析
構築したRRzライブラリーから100個のコロニーを選択し、アルカリ溶菌法によって、リボザイムプラスミドを回収した後、RRz4、RRz5プライマー(表1)を用いてリボザイム配列を調べた。解析には、Terminator Ready Mixを使用し、95℃ 10秒、50℃ 5秒、60℃ 2分30秒で40サイクル反応させた。
構築したRRzライブラリーから100個のコロニーを選択し、アルカリ溶菌法によって、リボザイムプラスミドを回収した後、RRz4、RRz5プライマー(表1)を用いてリボザイム配列を調べた。解析には、Terminator Ready Mixを使用し、95℃ 10秒、50℃ 5秒、60℃ 2分30秒で40サイクル反応させた。
(ix)スクリーニング
RRzライブラリーを、HepG2に一過性に導入し、5μg/mL 5−FU処理を3日間行った。その後、細胞からプラスミドを回収し、再度HepG2へと導入した。これを1サイクルとして10回のサイクルを繰り返した(図2B)。
RRzライブラリーを、HepG2に一過性に導入し、5μg/mL 5−FU処理を3日間行った。その後、細胞からプラスミドを回収し、再度HepG2へと導入した。これを1サイクルとして10回のサイクルを繰り返した(図2B)。
(x)プラスミドの導入
6穴プレートに細胞を3.0×105cells/wellずつ捲き、37℃ CO2インキュベーター内で、24時間インキュベートした。インキュベート後、54μL FuGENE6(Roche)を使用し、2μgのプラスミドDNAを導入した。また、6cm細胞培養皿、96穴プレートの場合は細胞数(5.0×103cells/well、3.5×105cells/well)、FuGENE6量(0.05μL、7μL)、プラスミドDNA量(0.15μL、2μL)を変更して行った。
6穴プレートに細胞を3.0×105cells/wellずつ捲き、37℃ CO2インキュベーター内で、24時間インキュベートした。インキュベート後、54μL FuGENE6(Roche)を使用し、2μgのプラスミドDNAを導入した。また、6cm細胞培養皿、96穴プレートの場合は細胞数(5.0×103cells/well、3.5×105cells/well)、FuGENE6量(0.05μL、7μL)、プラスミドDNA量(0.15μL、2μL)を変更して行った。
(xi)siRNAの導入
96穴プレートに細胞を5.0×103cells/wellずつ捲き、37℃CO2インキュベーター内で、24時間インキュベートした。インキュベート後、0.2μL Lipofectamin 2000(Invitrogen)を使用し、4pmolのsiRNAを導入した。
96穴プレートに細胞を5.0×103cells/wellずつ捲き、37℃CO2インキュベーター内で、24時間インキュベートした。インキュベート後、0.2μL Lipofectamin 2000(Invitrogen)を使用し、4pmolのsiRNAを導入した。
(xii)Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction(RT−PCR)
TRIzol Reagent(Invitrogen)を用いてTotal RNAを抽出した。RT反応には、SuperScript First−Stand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用した。0.5μgのtotal RNAをテンプレートとして使用し、oligo dTをプライマーとして、65℃ 5分で1サイクル、42℃ 120分、70℃ 10分で1サイクル反応させ、cDNAを合成した。反応後のcDNAは20倍希釈してReal−Time PCRに用いた。
TRIzol Reagent(Invitrogen)を用いてTotal RNAを抽出した。RT反応には、SuperScript First−Stand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用した。0.5μgのtotal RNAをテンプレートとして使用し、oligo dTをプライマーとして、65℃ 5分で1サイクル、42℃ 120分、70℃ 10分で1サイクル反応させ、cDNAを合成した。反応後のcDNAは20倍希釈してReal−Time PCRに用いた。
(xiii)Real Time PCR
Real−Time PCR反応には、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche)を使用した。RT−PCRによって合成したcDNA 5μLをテンプレートとして使用し、各遺伝子に対するプライマーを用いて反応させた。
Real−Time PCR反応には、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche)を使用した。RT−PCRによって合成したcDNA 5μLをテンプレートとして使用し、各遺伝子に対するプライマーを用いて反応させた。
(xv)Western Blot
(xv−1)タンパク質回収
HCC細胞株(HLF、HuH7、HepG2)を3.5×105cells/6cm−dish(Becton Dickinson)ずつ捲き、24時間後に遺伝子導入を行った。遺伝子導入48時間後に1×PBS(−)で2回washし、RIPA Bufferを加え、セルスクレイパー(住友ベークライト)で細胞を回収した。回収した細胞を15,000rpm、10分、4℃で遠心し、上清をsodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis(SDS−PAGE)に使用した。
(xv−1)タンパク質回収
HCC細胞株(HLF、HuH7、HepG2)を3.5×105cells/6cm−dish(Becton Dickinson)ずつ捲き、24時間後に遺伝子導入を行った。遺伝子導入48時間後に1×PBS(−)で2回washし、RIPA Bufferを加え、セルスクレイパー(住友ベークライト)で細胞を回収した。回収した細胞を15,000rpm、10分、4℃で遠心し、上清をsodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis(SDS−PAGE)に使用した。
(xv−2)SDS−PAGE
回収した上清に含まれるタンパク質をSDS−PAGE(7.5% acrylamide)により分離した。泳動条件は、20mAで2時間行った。泳動後のゲルは、セミドライ式トランスファー装置を用いて、100mA、1時間反応させ、polyvinylidene difluorideメンブレンに転写した。
回収した上清に含まれるタンパク質をSDS−PAGE(7.5% acrylamide)により分離した。泳動条件は、20mAで2時間行った。泳動後のゲルは、セミドライ式トランスファー装置を用いて、100mA、1時間反応させ、polyvinylidene difluorideメンブレンに転写した。
(xv−3)Western Blot
5%スキムミルク(雪印)/TBS−0.1%Tでブロッキングを行った後、抗V5抗体(1:3,000)を用いて室温で1時間、1次抗体反応を行った。反応終了後、メンブレンをTBS−0.1%Tで3回washした。次に、HRP標識 anti−rabbit IgG抗体(1:5,000)を使用して室温で1時間、2次抗体反応を行った。反応終了後、TBS−0.1%Tで3回washした。その後、ECL Western Blotting Detection Reagents及びLAS−1000 system(FUJI FILM)を用いて、バンドを検出した。
5%スキムミルク(雪印)/TBS−0.1%Tでブロッキングを行った後、抗V5抗体(1:3,000)を用いて室温で1時間、1次抗体反応を行った。反応終了後、メンブレンをTBS−0.1%Tで3回washした。次に、HRP標識 anti−rabbit IgG抗体(1:5,000)を使用して室温で1時間、2次抗体反応を行った。反応終了後、TBS−0.1%Tで3回washした。その後、ECL Western Blotting Detection Reagents及びLAS−1000 system(FUJI FILM)を用いて、バンドを検出した。
<実施例1:5−FU感受性の増感遺伝子のスクリーニング>
本実施例では、より奏功率の高い新規治療法開発によるHCC患者の長期予後改善を目的とし、高度進行型HCC患者におけるIFN−α/5−FU併用療法感受性増強による治療効果増強を目指し、IFN−α/5−FU併用療法感受性に寄与する遺伝子の同定を行った。その結果、複数の感受性増強遺伝子を同定した。
本実施例では、より奏功率の高い新規治療法開発によるHCC患者の長期予後改善を目的とし、高度進行型HCC患者におけるIFN−α/5−FU併用療法感受性増強による治療効果増強を目指し、IFN−α/5−FU併用療法感受性に寄与する遺伝子の同定を行った。その結果、複数の感受性増強遺伝子を同定した。
感受性増強遺伝子のスクリーニングには、標的認識配列特異的にmRNAを切断し、遺伝子発現を抑制するRNA酵素であるリボザイム(図2A)によるライブラリーを使用した。このライブラリーはリボザイムの認識配列をランダムに600万通り有しており、網羅的な遺伝子発現抑制が可能である(図2B)。
構築したライブラリーを用いて以下のスクリーニングを行った(図2C)。ヒトHepG2細胞株において、作製したリボザイムライブラリー導入後に5−FU単剤で処理を行い、50%増殖抑制濃度での5−FUへの抵抗性の増強を指標にスクリーニングを行った。3日間の薬剤処理後、生存細胞からリボザイムを回収し、HepG2細胞への再導入を繰り返した。最終的に得られたリボザイムの認識配列から、BLASTを用いて候補遺伝子を抽出した。同定した遺伝子については、アデノウイルスによる強制発現系を用いて、5−FU単独、及びIFN−α/5−FU感受性増強作用を検討した。10回のスクリーニングを行い、5−FUへの抵抗性は回を増す毎に増加した(図3)。
このライブラリー中のリボザイムが有する標的認識配列をもとに、BLASTによって5−FU感受性に寄与する遺伝子を5遺伝子(表1:PRKAG2、TGFBR2、EXT1、POLR4J2、FOXP2)に絞り込んだ。
このうち、偽遺伝子であるPOLR2J4、および発現が確認できなかったFOXP2を除外し、残りの3遺伝子(PRKAG2、TGFBR2、EXT1)についてさらに検討した。
<実施例2:5−FU感受性の確認およびIFN−α/5−FU感受性の検討>
PRKAG2、TGFBR2、EXT1のsiRNAを作成した。
PRKAG2、TGFBR2、EXT1のsiRNAを作成した。
これらのsiRNAを用いてPRKAG2、TGFBR2、EXT1の遺伝子発現を抑制すると、5−FUに対する感受性が3遺伝子全てで有意に減少した(図4A)。なぜなら、PRKAG2、TGFBR2、EXT1を標的とするsiRNAを投与すると、PRKAG2、TGFBR2、EXT1の遺伝子発現が抑制されて、その結果5−FUに対する感受性が抑制されるためである(図4B)。
また、PRKAG2、TGFBR2、EXT1の強制発現用のアデノウイルスベクターおよびコントロールアデノウイルスベクターをそれぞれ作成した(図5、図6)。これらのベクターを用いて3遺伝子の強制発現を行うことにより、HepG2細胞中にPRKAG2、TGFBR2、EXT1の遺伝子がコードする蛋白質がそれぞれ過剰発現した(図7)。
また、これらのベクターを用いて3遺伝子の強制発現を行うことにより、5−FUへの感受性は有意に増加した(図8A)。なぜなら、PRKAG2、TGFBR2、EXT1を過剰発現するアデノウイルスベクターを投与すると、PRKAG2、TGFBR2、EXT1の遺伝子発現が過剰発現されて、その結果5−FUに対する感受性が増強されるためである(図4B)。さらに、これらのうち2遺伝子(TGFBR2、EXT1)はIFN−α/5−FU併用時においても、IFN−α/5−FUへの感受性を有意に増強した(図8B)。
<実施例3:IFN−α/5−FU感受性のin vivoでの確認>
以下の条件でマウスにTGFBR2の強制発現用のアデノウイルスベクターを腹腔内注射することによって投与し、IFN−α/5−FUの感受性の変化を観察した(図9)。
以下の条件でマウスにTGFBR2の強制発現用のアデノウイルスベクターを腹腔内注射することによって投与し、IFN−α/5−FUの感受性の変化を観察した(図9)。
Mouse: male BALB/cAJcl-nu/nu
Xenograft cell line: HepG2 (5×106 cells)
Drug concentration: 15 mg/kg/day 5-FU (i.p.)
10,000 units/body IFN-α (s.c.)
Administration time: 1 time/3 days
Tumor volume (TV) calculation: measure 1/week using calipers
(TV=Length×(Width)2/2)
Adenovirus: 2×108 pfu 1 time/5 days
Xenograft cell line: HepG2 (5×106 cells)
Drug concentration: 15 mg/kg/day 5-FU (i.p.)
10,000 units/body IFN-α (s.c.)
Administration time: 1 time/3 days
Tumor volume (TV) calculation: measure 1/week using calipers
(TV=Length×(Width)2/2)
Adenovirus: 2×108 pfu 1 time/5 days
<実施例4:TGFBR2,EXT1過剰発現による5−FU及びIFN−α/5−FU誘導性アポトーシスの増強の確認>
(4−1)ヘキスト染色
TGFBR2,EXT1過剰発現による5−FU及びIFN−α/5−FU誘導性アポトーシスの増強を確認するために、以下の手順でヘキスト染色を行った。まず、HepG2へのアデノウイルス感染によるLacZ、TGFBR2、EXT1遺伝子過剰発現後、5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。48時間後、10μM Hoechst33258を添加し、1時間後に蛍光顕微鏡による観察を行った。観察結果として、蛍光顕微鏡写真を図10aに示す。
(4−1)ヘキスト染色
TGFBR2,EXT1過剰発現による5−FU及びIFN−α/5−FU誘導性アポトーシスの増強を確認するために、以下の手順でヘキスト染色を行った。まず、HepG2へのアデノウイルス感染によるLacZ、TGFBR2、EXT1遺伝子過剰発現後、5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。48時間後、10μM Hoechst33258を添加し、1時間後に蛍光顕微鏡による観察を行った。観察結果として、蛍光顕微鏡写真を図10aに示す。
この実験では、ヘキスト染色でクロマチンの凝集の様子を観察し、クロマチンの凝集が見られればアポトーシスが亢進していると解釈する。図10aの実験結果を見ると、明らかに、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2又はEXT1を過剰発現させた場合には、クロマチンの凝集が見られるためアポトーシスが亢進していることが明らかである。
(4−2)カスパーゼ3/7活性化測定
TGFBR2,EXT1過剰発現による5−FU及びIFN−α/5−FU誘導性アポトーシスの増強を確認するために、以下の手順でカスパーゼ3/7活性化測定を行った。まず、LacZ、TGFBR2、EXT1発現細胞(HepG2)に対して5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。48時間後にCapsapse−Glo3/7 assay kit (Promega)付属のマニュアルに従い、カスパーゼ3及び7活性を測定した。測定結果をグラフにまとめて図10bに示す。
TGFBR2,EXT1過剰発現による5−FU及びIFN−α/5−FU誘導性アポトーシスの増強を確認するために、以下の手順でカスパーゼ3/7活性化測定を行った。まず、LacZ、TGFBR2、EXT1発現細胞(HepG2)に対して5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。48時間後にCapsapse−Glo3/7 assay kit (Promega)付属のマニュアルに従い、カスパーゼ3及び7活性を測定した。測定結果をグラフにまとめて図10bに示す。
この実験では、アポトーシスを起こすカスパーゼカスケードにおけるエフェクターであるカスパーゼ3とカスパーゼ7の活性を測定し、カスパーゼ3とカスパーゼ7の活性が上昇すればアポトーシスが亢進していると解釈する。図10bの実験結果を見ると、明らかに、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2又はEXT1を過剰発現させた場合には、カスパーゼ3とカスパーゼ7の活性が有意に上昇しているためアポトーシスが亢進していることが明らかである。
なお、図10の*印は、t検定(n=3)においてp<0.05(両側検定)であることを意味している。また、図10の+印は、対応するコントロールの測定結果に対してt検定(n=3)においてp<0.05(両側検定)であることを意味している。さらに、図10の++印は、対応するコントロールの測定結果に対してt検定(n=3)においてp<0.01(両側検定)であることを意味している。これらの*、+、++の意味は、図11〜図13でも同様である。また、n=3であることは、図11〜図13でも同様である。
<実施例5:TGFBR2過剰発現によるTGF−βシグナル活性化及びアポトーシス関連タンパク発現の変化の確認>
(5−1)Reverse Transcription(RT) Reaction
TGFBR2過剰発現によるTGF−βシグナル活性化について検討するために、以下の手順でcDNA合成を行った。まず、LacZ、TGFBR2発現細胞(HepG2)に対して5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。薬剤処理48時間後にTRIzol Reagent(Invitrogen)を用いてTotal RNAを抽出した。RT反応には、SuperScript First−Stand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用した。0.5μgのtotal RNAをテンプレートとして使用し、oligo dTをプライマーとして、65℃5分で1サイクル、42℃120分、70℃10分で1サイクル反応させ、cDNAを合成した。反応後のcDNAは20倍希釈してReal−Time PCRに用いた。
(5−1)Reverse Transcription(RT) Reaction
TGFBR2過剰発現によるTGF−βシグナル活性化について検討するために、以下の手順でcDNA合成を行った。まず、LacZ、TGFBR2発現細胞(HepG2)に対して5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。薬剤処理48時間後にTRIzol Reagent(Invitrogen)を用いてTotal RNAを抽出した。RT反応には、SuperScript First−Stand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用した。0.5μgのtotal RNAをテンプレートとして使用し、oligo dTをプライマーとして、65℃5分で1サイクル、42℃120分、70℃10分で1サイクル反応させ、cDNAを合成した。反応後のcDNAは20倍希釈してReal−Time PCRに用いた。
(5−2)Real Time PCR
次いで、Real−Time PCR反応には、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche)を使用した。RT−PCRによって合成したcDNA 5μLをテンプレートとして使用し、TGFβ1の遺伝子に対するプライマーを用いて、反応を行った。測定結果をグラフにまとめて図11aに示す。
次いで、Real−Time PCR反応には、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche)を使用した。RT−PCRによって合成したcDNA 5μLをテンプレートとして使用し、TGFβ1の遺伝子に対するプライマーを用いて、反応を行った。測定結果をグラフにまとめて図11aに示す。
この実験では、アポトーシスを起こすTGFβ1のmRNA発現量を測定し、TGFβのmRNA発現量が上昇すればTGF−βが関係するシグナル伝達経路を介してアポトーシスが亢進していると解釈している。実験結果を見ると、対応するコントロールの測定結果に比べて、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した場合にはTGFβ1のmRNA発現量が有意に上昇している。このことから、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUによる薬剤処理によって、TGF−βが関係するシグナル伝達経路を介してアポトーシスが亢進していることが明らかである。しかしながら、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2を過剰発現させた場合にも特に、TGFβ1のmRNA発現量が有意には上昇していない。そのため、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2を過剰発現させた場合にTGF−βが関係するシグナル伝達経路を介してアポトーシスがさらに亢進されるかどうかは不明である。
なお、図11の*印は、t検定(n=3)においてp<0.05(両側検定)であることを意味している。また、図11のN.S.印は、t検定(n=3)において有意差なし(not significantの略)であることを意味している。この*、N.S.の意味は、図12〜図13でも同様である。
(5−3)Luciferase Assay
TGFBR2過剰発現によるTGF−βシグナル活性化について検討するために、以下の手順でLuciferase Assayを行った。まず、レポーター遺伝子p3TP−Lux及び内部コントロール遺伝子としてphRL−TKをFuGENE6により一過性に導入したHepG2細胞に対し、5FUSGs過剰発現アデノウイルス感染させた。感染24時間後にDMSO; Negative Control(NC)、5μg/mL 5−FU、200U/mL IFN−αでそれぞれ処理し、薬剤処理48時間後にLuciferase蛍光を検出した。グラフの各数値は、内部コントロールで補正した上で、薬剤未処理LacZ過剰発現群の値を1としている。測定結果をグラフにまとめて図11bに示す。
TGFBR2過剰発現によるTGF−βシグナル活性化について検討するために、以下の手順でLuciferase Assayを行った。まず、レポーター遺伝子p3TP−Lux及び内部コントロール遺伝子としてphRL−TKをFuGENE6により一過性に導入したHepG2細胞に対し、5FUSGs過剰発現アデノウイルス感染させた。感染24時間後にDMSO; Negative Control(NC)、5μg/mL 5−FU、200U/mL IFN−αでそれぞれ処理し、薬剤処理48時間後にLuciferase蛍光を検出した。グラフの各数値は、内部コントロールで補正した上で、薬剤未処理LacZ過剰発現群の値を1としている。測定結果をグラフにまとめて図11bに示す。
この実験では、アポトーシスを起こすTGF−βのレポーターベクターであるp3TP−Luxから発現するホタルルシフェラーゼの活性を測定し、ホタルルシフェラーゼの活性が上昇すれば、TGF−βの転写活性が上昇しており、TGF−βが関係するシグナル伝達経路を介してアポトーシスが亢進していると解釈している。ここで、p3TP−Lucレポータープラスミドは、TGF−βによって選択的に誘導されるPAI−1プロモーターの−740/−636領域にヒトコラゲナーゼ遺伝子由来の三つのTREエレメント(Smadを介して活性化されるTGF−βファミリーの一つactivin経路に特異的なエレメント)を結合させた配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子が接続されている。そのため、TGF−βの転写活性が上昇すると、p3TP−Lucレポータープラスミドからのホタルルシフェラーゼの過剰発現が誘導されるためである。実験結果を見ると、明らかに、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2を過剰発現させた場合には、ホタルルシフェラーゼの活性が有意に上昇しているため、TGF−βの転写活性が上昇していることが明らかである。すなわち、TGF−βが関係するシグナル伝達経路を介してアポトーシスが亢進していることが明らかである。
(5−4)Western Blot
TGFBR2過剰発現によるアポトーシス関連タンパク質の発現の変化について検討するために、以下の手順でWestern Blotを行った。
TGFBR2過剰発現によるアポトーシス関連タンパク質の発現の変化について検討するために、以下の手順でWestern Blotを行った。
<タンパク質回収>
HepG2を1×106cells/6cm−dishずつ捲き、5時間後にアデノウイルスによるTGFBR2の遺伝子導入を行った。遺伝子導入19時間後に5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。48時間後、1×PBS(−)で2回washし、RIPA Bufferを加え、セルスクレイパーで細胞を回収した。回収した細胞を15,000rpm、10分、4℃で遠心し、上清をsodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis(SDS−PAGE)に使用した。
HepG2を1×106cells/6cm−dishずつ捲き、5時間後にアデノウイルスによるTGFBR2の遺伝子導入を行った。遺伝子導入19時間後に5μg/mL 5−FU及び200U/mL IFN−α処理を行った。48時間後、1×PBS(−)で2回washし、RIPA Bufferを加え、セルスクレイパーで細胞を回収した。回収した細胞を15,000rpm、10分、4℃で遠心し、上清をsodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis(SDS−PAGE)に使用した。
<SDS−PAGE>
回収した上清に含まれるタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。泳動条件は、20mAで2時間行った。泳動後のゲルは、セミドライ式トランスファー装置を用いて、100mA、1時間反応させ、polyvinylidene difluorideメンブレンに転写した。
回収した上清に含まれるタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。泳動条件は、20mAで2時間行った。泳動後のゲルは、セミドライ式トランスファー装置を用いて、100mA、1時間反応させ、polyvinylidene difluorideメンブレンに転写した。
<Western Blot>
5%スキムミルク/TBS−0.1%Tでブロッキングを行った後、BAX、BCL2、BCLxL、ACTの各遺伝子のコードするタンパク質に対する抗体を用いて4℃でオーバーナイト、1次抗体反応を行った。反応終了後、メンブレンをTBS−0.1%Tで3回washした。次に、各1次抗体に対するHRP標識2次抗体(1:3,000)を使用して室温で1時間、2次抗体反応を行った。反応終了後、TBS−0.1%Tで3回washした。その後、ECL Western Blotting Detection Reagents、ECL Plus Western Blotting Detection Regents及びLAS−4000 systemを用いて、BAX、BCL2、BCLxL、ACTのバンドを検出した。測定結果を電気泳動写真として図11cに示す。
5%スキムミルク/TBS−0.1%Tでブロッキングを行った後、BAX、BCL2、BCLxL、ACTの各遺伝子のコードするタンパク質に対する抗体を用いて4℃でオーバーナイト、1次抗体反応を行った。反応終了後、メンブレンをTBS−0.1%Tで3回washした。次に、各1次抗体に対するHRP標識2次抗体(1:3,000)を使用して室温で1時間、2次抗体反応を行った。反応終了後、TBS−0.1%Tで3回washした。その後、ECL Western Blotting Detection Reagents、ECL Plus Western Blotting Detection Regents及びLAS−4000 systemを用いて、BAX、BCL2、BCLxL、ACTのバンドを検出した。測定結果を電気泳動写真として図11cに示す。
この実験では、BAXの発現量が増大しており、BCL2、BCLxLの発現量が減少していれば、アポトーシスが亢進していると解釈している。ここで、Baxは細胞質に存在するが、deathシグナルに従ってミトコンドリアへと移動し、そこでシトクロムcの放出を促進し、アポトーシスを誘導する。また、BCL2、BCLxLは、ミトコンドリア外壁に存在し、シトクロムcの放出を抑制して、アポトーシスを抑制する。そのため、BAXの発現量が増大しており、BCL2、BCLxLの発現量が減少していれば、アポトーシスが亢進していると解釈できる。実験結果を見ると、明らかに、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2を過剰発現させた場合には、BAXの発現量が増大しており、BCL2、BCLxLの発現量が減少しているため、アポトーシスが亢進していることが明らかである。なお、コントロールであるACT(アクチン)の発現量は特に変化が見られない。
<実施例6:EXT1過剰発現によるアポトーシス亢進に対するERストレスの関与の確認>
(6−1)Real−Time RT−PCR
EXT1過剰発現によるアポトーシス亢進に対するERストレスの関与について検討するために、実施例5の場合と同様の手法でReal−Time RT−PCRを行った。測定結果をグラフにまとめて図12aおよび図12bに示す。
(6−1)Real−Time RT−PCR
EXT1過剰発現によるアポトーシス亢進に対するERストレスの関与について検討するために、実施例5の場合と同様の手法でReal−Time RT−PCRを行った。測定結果をグラフにまとめて図12aおよび図12bに示す。
この実験では、アポトーシスを引き起こすERストレスに応答して発現量が増大することが知られているDDIT3(CHOP)のmRNA発現量およびHSPA5(BIP)のmRNA発現量を測定し、DDIT3(CHOP)およびHSPA5(BIP)のmRNA発現量が上昇すればアポトーシスを引き起こすERストレスが増大していると解釈している。実験結果を見ると、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、EXT1を過剰発現させた場合、DDIT3(CHOP)およびHSPA5(BIP)のmRNA発現量が有意に上昇している。そのため、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、EXT1を過剰発現させた場合にアポトーシスを引き起こすERストレスが増大していることが明らかである。
(6−2)Western Blot
EXT1過剰発現によるアポトーシス関連タンパク質の発現の変化について検討するために、実施例5の場合と同様の手法でWestern Blotを行った。測定結果を電気泳動写真として図12cに示す。
EXT1過剰発現によるアポトーシス関連タンパク質の発現の変化について検討するために、実施例5の場合と同様の手法でWestern Blotを行った。測定結果を電気泳動写真として図12cに示す。
この実験では、アポトーシスを引き起こすERストレスに応答して発現量が増えるATF4の発現量を測定し、ATF4の発現量が上昇すればアポトーシスを引き起こすERストレスが増大していると解釈する。実験結果を見ると、明らかに、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、EXT1を過剰発現させた場合には、ATF4の発現量が増大しているため、アポトーシスを引き起こすERストレスが増大していることが明らかである。なお、コントロールであるACT(アクチン)の発現量は特に変化が見られない。
<実施例7:TGFBR2、EXT1過剰発現によるヒト肝癌モデルマウスへの効果>
TGFBR2、EXT1過剰発現によるヒト肝癌モデルマウスへの効果を確認するために、以下の手順でIn Vivo実験を行った。まず、NOD/SCIDマウス皮下にヒト肝癌細胞株(HepG2;6.8×106個/マウス)を移植した。移植約3週後に、腫瘍部へLacZ、TGFBR2、EXT1遺伝子をアデノウイルスを用いて直接導入した。アデノウイルス感染後1日後から、20,000U/body/day IFN−αを皮下注射、30mg/kg/day 5−FUを腹腔内注射によって投与した。また、アデノウイルス、薬剤処理は3日ごとに行い、腫瘍径は、7日ごとにデジタルノギスを用いて長径と単径を測定し、以下の計算式によって求めた。腫瘍径(TV)=長径×(短径)2/2。実験結果をまとめてグラフとして図13に示す。
TGFBR2、EXT1過剰発現によるヒト肝癌モデルマウスへの効果を確認するために、以下の手順でIn Vivo実験を行った。まず、NOD/SCIDマウス皮下にヒト肝癌細胞株(HepG2;6.8×106個/マウス)を移植した。移植約3週後に、腫瘍部へLacZ、TGFBR2、EXT1遺伝子をアデノウイルスを用いて直接導入した。アデノウイルス感染後1日後から、20,000U/body/day IFN−αを皮下注射、30mg/kg/day 5−FUを腹腔内注射によって投与した。また、アデノウイルス、薬剤処理は3日ごとに行い、腫瘍径は、7日ごとにデジタルノギスを用いて長径と単径を測定し、以下の計算式によって求めた。腫瘍径(TV)=長径×(短径)2/2。実験結果をまとめてグラフとして図13に示す。
この実験では、in vivoでヒト肝癌モデルマウスに投与した場合に、腫瘍サイズの増加を抑制できれば、肝癌に対する抗腫瘍効果が得られていることを示す薬理データであると解釈する。実験結果を見ると、明らかに、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2およびEXT1を過剰発現させた場合には、腫瘍サイズの増加が有意に抑制されており、抗腫瘍効果が実証されている。
<実施例8:肝癌患者におけるPRKAG2、TGFBR2、EXT1の発現>
HCC患者におけるPRKAG2、TGFBR2、EXT1のmRNA発現を検討するために、以下の手順でmRNA発現の解析を行った。まず、非B非C、B型、C型のHCC患者の癌部、非癌部それぞれ7、7、27症例より採取した組織よりRNAを回収した。次いで、これらのRNAのサンプルを用いて、上記の実施例5および実施例6と同様の手法によって、Real−Time RT−PCR法によりPRKAG2、TGFBR2、EXT1のmRNA発現を解析した。
HCC患者におけるPRKAG2、TGFBR2、EXT1のmRNA発現を検討するために、以下の手順でmRNA発現の解析を行った。まず、非B非C、B型、C型のHCC患者の癌部、非癌部それぞれ7、7、27症例より採取した組織よりRNAを回収した。次いで、これらのRNAのサンプルを用いて、上記の実施例5および実施例6と同様の手法によって、Real−Time RT−PCR法によりPRKAG2、TGFBR2、EXT1のmRNA発現を解析した。
この実験では、非B非C、B型、C型の肝癌患者の癌部、非癌部でのPRKAG2、TGFBR2およびEXT1のmRNA発現量を測定した結果、B型の肝癌患者の癌部では非癌部に比べて有意にTGFBR2のmRNA発現量が減少していることが判明した。また、非B非C型の肝癌患者の癌部では非癌部に比べて有意にEXT1のmRNA発現量が減少していることが判明した。なお、図14の*印は、対応のあるt検定(Paired−t−test)においてp<0.05(両側検定)であることを意味している。また、図14の**印は、対応のあるt検定(Paired−t−test)においてp<0.01(両側検定)であることを意味している。
そのため、B型の肝癌患者の癌部において、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、TGFBR2を過剰発現させた場合には、特に抗腫瘍効果が増大する可能性が示唆される。また、非B非C型の肝癌患者の癌部において、5−Fu単独又はIFN−a/5−FUを添加した上で、EXT1を過剰発現させた場合には、特に抗腫瘍効果が増大する可能性が示唆される。
<結果の考察>
以上の結果より、ランダムリボザイムライブラリーを用いたファンクショナルスクリーニングによって同定した5−FU感受性寄与遺伝子(5FUSGs:PRKAG2、TGFBR2、EXT1)の強制発現によって、5−FU感受性を増強されたことが分かる。すなわち、本研究で同定した3遺伝子(PRKAG2、TGFBR2、EXT1)は、5−FU単独及びIFN−α/5−FU併用時の感受性を増強することが示された。
以上の結果より、ランダムリボザイムライブラリーを用いたファンクショナルスクリーニングによって同定した5−FU感受性寄与遺伝子(5FUSGs:PRKAG2、TGFBR2、EXT1)の強制発現によって、5−FU感受性を増強されたことが分かる。すなわち、本研究で同定した3遺伝子(PRKAG2、TGFBR2、EXT1)は、5−FU単独及びIFN−α/5−FU併用時の感受性を増強することが示された。
また、TGFBR2、EXT1のアデノウイルスベクターによる過剰発現は、HepG2細胞のIFN−α/5−FU併用療法の感受性をin vitroにおいて増強した。さらに、TGFBR2のアデノウイルスベクターによる過剰発現は、マウスの腫瘍組織のIFN−α/5−FU併用療法への感受性をin vivoにおいて増強した。そのため、これらの遺伝子を使用することによって、5−FU単独、IFN−α/5−FU併用療法が適応されている種々の悪性腫瘍患者の長期予後改善が期待される。
また、5−FUおよびIFN−α/5−FUは、種々の悪性腫瘍に使用されている抗がん剤であるため、PRKAG2、TGFBR2、EXT1の3種類の遺伝子は、進行型肝細胞癌のみでなく、他の悪性腫瘍に対しても抗癌剤の増感剤として有効である可能性が期待される。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
Claims (29)
- 5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、
PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子をコードするヌクレオチド断片を含む、増感剤。 - 請求項1記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記PRAKG2遺伝子が、
(a)ヒト野生型PRAKG2遺伝子、および
(b)(a)の遺伝子の変異型遺伝子であって、哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる遺伝子、
を含む、増感剤。 - 請求項2記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記変異型遺伝子が、
(b−1)(a)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子、
(b−2)(a)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子、
(b−3)(a)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする基配列からなる変異型遺伝子、
(b−4)(a)の遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子、
を含む、増感剤。 - 請求項1記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記TGFBR2遺伝子が、
(c)ヒト野生型TGFBR2遺伝子、および
(d)(c)の遺伝子の変異型遺伝子であって、哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる遺伝子、
を含む、増感剤。 - 請求項4記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記変異型遺伝子が、
(d−1)(c)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子、
(d−2)(c)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子、
(d−3)(c)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする基配列からなる変異型遺伝子、
(d−4)(c)の遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子、
を含む、増感剤。 - 請求項1記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記EXT1遺伝子が、
(e)ヒト野生型EXT1遺伝子、および
(f)(e−1)の遺伝子の変異型遺伝子であって、哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる遺伝子、
を含む、増感剤。 - 請求項6記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記変異型遺伝子が、
(f−1)(e)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子、
(f−2)(e)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる変異型遺伝子、
(f−3)(e)の遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする基配列からなる変異型遺伝子、
(f−4)(e)の遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる変異型遺伝子、
を含む、増感剤。 - 5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、
PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子を発現するベクターを含む、増感剤。 - 請求項8記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記ベクターが、アデノウイルスベクターである、
増感剤。 - 5−フルオロウラシル感受性増感剤であって、
PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のコードする蛋白質を含む、増感剤。 - 請求項10記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記PRAKG2遺伝子のコードするAMP活性化蛋白質キナーゼが、
(g)ヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼ、および
(h)(g)の変異型キナーゼであって、哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させるキナーゼ、
を含む、増感剤。 - 請求項11記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記変異型キナーゼが、
(h−1)(g)のヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼのアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列からなる変異型キナーゼ、
(h−2)(g)のヒト野生型AMP活性化蛋白質キナーゼのアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる変異型キナーゼ、
(h−3)(a)の遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列からなる変異型キナーゼ、
を含む、増感剤。 - 請求項10記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記TGFBR2遺伝子のコードするTGF−β2型受容体が、
(i)ヒト野生型TGF−β2型受容体、および
(j)(i)の変異型受容体であって、哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる受容体、
を含む、増感剤。 - 請求項13記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記変異型受容体が、
(j−1)(i)のヒト野生型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列からなる変異型受容体、
(j−2)(i)のヒト野生型TGF−β2型受容体のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる変異型受容体、
(j−3)(c)の遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列からなる変異型受容体、
を含む、増感剤。 - 請求項10記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記EXT1遺伝子のコードする小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素が、
(k)ヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素、および
(l)(k)の変異型糖転移酵素であって、哺乳動物細胞における5−フルオロウラシル感受性を増強させる糖転移酵素、
を含む、増感剤。 - 請求項15記載の5−フルオロウラシル感受性増感剤において、
前記変異型糖転移酵素が、
(l−1)(k)のヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列のうち1若しくは数個のアミノ酸残基を欠失・置換・付加してなるアミノ酸配列からなる変異型糖転移酵素、
(l−2)(k)のヒト野生型小胞体内在性II型膜貫通糖転移酵素のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる変異型糖転移酵素、
(l−3)(e)の遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列からなる変異型糖転移酵素、
を含む、増感剤。 - 請求項1に記載の増感剤において、
5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαの併用時における5−フルオロウラシルおよびインターフェロンαへの感受性を増強する、増感剤。 - 請求項1に記載の増感剤において、
注射剤である、増感剤。 - 抗癌剤キットであって、
請求項1に記載の増感剤と、
5−フルオロウラシルと、
を含む、キット。 - 請求項19記載の抗癌剤キットであって、
さらにインターフェロンαを含む、キット。 - 5−フルオロウラシル感受性抑制剤であって、
PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNAまたはアンチセンスRNAを含む、抑制剤。 - 5−フルオロウラシル感受性を判定するための診断薬であって、
PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子の発現量を測定するための試薬を含む、診断薬。 - 請求項22記載の診断薬において、
前記試薬が、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列を含むプローブである、診断薬。 - 請求項23記載の診断薬において、
前記プローブが蛍光色素または放射性同位元素で標識されている、診断薬。 - 5−フルオロウラシル感受性を判定するための診断薬であって、
PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子がコードする蛋白質の発現量を測定するための試薬を含む、診断薬。 - 請求項25記載の診断薬において、
前記試薬が、PRAKG2遺伝子、TGFBR2遺伝子およびEXT1遺伝子からなる群から選ばれる1以上の遺伝子のコードする蛋白質に特異的に結合する抗体である、診断薬。 - 請求項26記載の診断薬において、
前記抗体が蛍光色素または放射性同位元素で標識されている、診断薬。 - 抗癌剤の感受性増強作用を有する遺伝子のスクリーニング方法であって、
(m)哺乳動物の所定の癌細胞株にリボザイムライブラリーを導入する工程と、
(n)前記リボザイムライブラリーが導入された癌細胞を所定の抗癌剤で処理する工程と、
(o)前記抗癌剤で処理された癌細胞のうち生存細胞からリボザイムを回収して新規なリボザイムライブラリーを得る工程と、
を含み、
前記リボザイムライブラリーが、標的認識配列特異的にmRNAを切断し、遺伝子発現を抑制する複数のリボザイムを含み、各リボザイムが認識する標的認識配列がランダム化された複数の配列である、ランダム化リボザイムライブラリーであり、
(p)前記(m)、(n)および(o)の工程を複数回繰り返して得られるリボザイムライブラリーが認識する標的認識配列を検出する工程と、
(q)前記検出された標的認識配列に対応する遺伝子情報をゲノムデータベースから抽出する工程と、
をさらに含む、スクリーニング方法。 - 請求項28記載のスクリーニング方法において、
前記(p)の工程が、各リボザイムに標識された各標的認識配列に特異的な波長を有する蛍光色素を検出する工程を含む、
スクリーニング方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010092869 | 2010-04-14 | ||
JP2010092869 | 2010-04-14 | ||
PCT/JP2011/059192 WO2011129371A1 (ja) | 2010-04-14 | 2011-04-13 | 5-FU単独及びIFN-α/5-FU併用時の抗腫瘍効果を増強する遺伝子群 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2011129371A1 true JPWO2011129371A1 (ja) | 2013-07-18 |
Family
ID=44798742
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012510675A Pending JPWO2011129371A1 (ja) | 2010-04-14 | 2011-04-13 | 5−FU単独及びIFN−α/5−FU併用時の抗腫瘍効果を増強する遺伝子群 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPWO2011129371A1 (ja) |
WO (1) | WO2011129371A1 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3639854A4 (en) | 2017-06-16 | 2021-03-03 | The Doshisha | MTOR INHIBITIVE MEDICINAL PRODUCT FOR THE TREATMENT OR PREVENTION OF OPHTHALMIC SYMPTOMS, DISORDERS, OR DISEASES AND USE THEREOF |
US20200386744A1 (en) * | 2017-06-16 | 2020-12-10 | The Doshisha | Novel screening method for tgf-beta inhibitor |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001136979A (ja) * | 1999-09-01 | 2001-05-22 | Sankyo Co Ltd | 癌化学療法剤効果増強遺伝子 |
US20040248830A1 (en) * | 2001-05-14 | 2004-12-09 | Richard Tritz | Agents that regulate apoptosis |
JP2007037508A (ja) * | 2005-08-05 | 2007-02-15 | Juntendo | 肝星細胞のアポトーシスに関連するタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびその発現を抑制するリボザイム |
JP5279235B2 (ja) * | 2007-11-05 | 2013-09-04 | 国立大学法人 岡山大学 | 抗癌剤耐性癌において抗癌剤増強作用を有する癌細胞死誘導剤 |
-
2011
- 2011-04-13 JP JP2012510675A patent/JPWO2011129371A1/ja active Pending
- 2011-04-13 WO PCT/JP2011/059192 patent/WO2011129371A1/ja active Application Filing
Non-Patent Citations (6)
Title |
---|
JPN6011023979; GRADY, William M. et al.: 'TGF-beta receptor type II reconstitution sensitizes colon cancer to 5-fluorouracil.' Proc. Amer. Assoc. Cancer. Res. Vol. 41, 2000, p. 531, #3383 * |
JPN6015010721; Br.J.Cancer Vol.97, 2007, p.1532-1537 * |
JPN6015010722; Liver Int. Vol.25, 2005, p.148-152 * |
JPN6015010723; Clin.Cancer Res. Vol.10, 2004, p.7884-7895 * |
JPN6015010724; Proc.Amer.Assoc.Cancer Res. Vol.45, 2004, p.1201,#5209 * |
JPN6015010725; Toxicol.Pathol. Vol.29,No.6, 2001, p.705-706 * |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2011129371A1 (ja) | 2011-10-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Aguayo-Mazzucato et al. | Acceleration of β cell aging determines diabetes and senolysis improves disease outcomes | |
Tavora et al. | Tumoural activation of TLR3–SLIT2 axis in endothelium drives metastasis | |
Guccini et al. | Senescence reprogramming by TIMP1 deficiency promotes prostate cancer metastasis | |
Tan et al. | Gasdermin-E-mediated pyroptosis participates in the pathogenesis of Crohn’s disease by promoting intestinal inflammation | |
Miyake et al. | Expression of CXCL1 in human endothelial cells induces angiogenesis through the CXCR2 receptor and the ERK1/2 and EGF pathways | |
Wu et al. | Circular RNA circPDE4D protects against osteoarthritis by binding to miR-103a-3p and regulating FGF18 | |
Martignoni et al. | Role of mononuclear cells and inflammatory cytokines in pancreatic cancer-related cachexia | |
EP2412825A1 (en) | Leukemia stem cell markers | |
Lu et al. | The role of the miR‑21‑5p‑mediated inflammatory pathway in ulcerative colitis | |
JP7328641B2 (ja) | 悪性リンパ腫又は白血病の罹患の有無の判別方法並びに白血病の治療及び/又は予防のための薬剤 | |
US20230295736A1 (en) | Compositions and methods comprising digital signatures to predict response and resistance to targeted therapy and immunotherapy | |
Wang et al. | LncRNA SNHG7 promotes cardiac remodeling by upregulating ROCK1 via sponging miR-34-5p | |
Yan et al. | Ubp43 regulates BCR-ABL leukemogenesis via the type 1 interferon receptor signaling | |
Xing et al. | Tumor cell-specific blockade of CXCR4/SDF-1 interactions in prostate cancer cells by hTERT promoter induced CXCR4 knockdown: A possible metastasis preventing and minimizing approach | |
JP2020143123A (ja) | マクロファージ活性化の主要制御因子としてのparp9およびparp14 | |
EP2454372B1 (en) | Managing the treatment of inflammatory or autoimmune disorders using hom-1 expression | |
Ribatti et al. | Angiogenesis in a human neuroblastoma xenograft model: mechanisms and inhibition by tumour-derived interferon-γ | |
Bi et al. | Deletion of Irf5 protects hematopoietic stem cells from DNA damage-induced apoptosis and suppresses γ-irradiation-induced thymic lymphomagenesis | |
US20120034226A1 (en) | Diagnostic method of skin inflammatory disease | |
Dong et al. | Long non-coding RNA TPTEP1 exerts inhibitory effects on hepatocellular carcinoma by impairing microRNA-454-3p-mediated DLG5 downregulation | |
WO2011129371A1 (ja) | 5-FU単独及びIFN-α/5-FU併用時の抗腫瘍効果を増強する遺伝子群 | |
Du et al. | Exosomal circRNA-001264 promotes AML immunosuppression through induction of M2-like macrophages and PD-L1 overexpression | |
Xu et al. | Role of mammary serine protease inhibitor on the inflammatory response in oral lichen planus | |
Li et al. | circBGN accelerates gastric cancer cell proliferation and invasion via activating IL6/STAT3 signaling pathway | |
Xu et al. | MiR-3188 regulates the proliferation and apoptosis of hepatocellular carcinoma cells by targeting CXCL14 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20140314 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20150324 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20150721 |