JPWO2011096438A1 - 腸疾患の治療方法及び治療用医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

炎症性サイトカインIL−1ファミリ−分子、IL−17ファミリ−分子の阻害剤、特にIL−17F阻害剤を含む腸疾患治療用医薬組成物が提供される。また、IL−17F阻害剤とIL−17A(IL−17)阻害剤を含む腸疾患治療用医薬組成物が提供される。大腸癌発症時における炎症性サイトカインIL−1ファミリ−分子やIL−17ファミリ−分子は腫瘍形成促進に働いており、これらのサイトカインを抑制することで腫瘍形成を抑制出来ることが見出された。

Description

本発明は腸疾患を治療するためのインタ−ロイキン(本明細書において、「IL」と略すことがある。)関連物質の使用に関する。特に、大腸ポリプ又は大腸癌の進行を抑制又は阻止するためのIL関連物質の使用に関する。とりわけ、抗IL−17F抗体に代表されるIL−17F阻害剤の、大腸ポリプ又は大腸癌の進行を抑制又は阻止するための使用に関する。本発明は、更に、上記疾患の治療用途のための医薬組成物に関する。
炎症性サイトカイン:
癌細胞の増殖、浸潤、転移などといった悪性化のプロセスは、癌細胞自体の持つ性質によってのみ決まると考えがちだが、実際には癌細胞と周囲の環境が深く関与している。生体で増殖する癌は、癌細胞のみで形成されているのではなく、様々な細胞と相互作用し癌細胞自身が増殖しやすい環境を作り出していると考えられている(非特許文献1)。その多くは骨髄・末梢血中から遊走される好中球、好酸球、マクロファ−ジ、樹状細胞などの炎症細胞、血管細胞、上皮細胞、線維芽細胞、などの間質細胞である。これらの癌環境と炎症性サイトカインとの関わりは近年注目されている。
サイトカインは炎症性サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−8、IL−17、IFNγ、G−CSFなど)と抗炎症性サイトカイン(IL−4、IL−10、IL−11、Il−13、TGFβなど)に分けられ、免疫細胞の活性化を起こし炎症の種類を決定させる。例えばIFNγが主体で産生されればTh1型の炎症を引き起こし、IL−4が産生されればTh2型の炎症を引き起こす(非特許文献2〜5)。このように炎症性サイトカインは免疫細胞、細胞障害性T細胞を活性化し異物を除去する機構を制御するため腫瘍を抑制するという報告とともに、炎症性サイトカインによって作り出された炎症環境が腫瘍を促進させているという、相反する報告がなされている(非特許文献6〜8)。
炎症性サイトカインによる腫瘍抑制効果は免疫系の活性化に依存している。免疫系は生体外から侵入した細菌、ウィルス等の外的物質のみならず、生体内で生じた内的異物を認識・排除することで生体の恒常性を維持している。このような機構には、多くの病原体がもつ共通の特徴を認識し、自己と非自己の区別により作用する自然免疫と広範囲にわたる病原体を認識する適応免疫の成立が欠かせない。これまで、適応免疫における免疫機構の制御にはCD4+T細胞が担っていることが知られていた。CD4+T細胞はナイ−ブT細胞が末梢リンパ節において抗原と相互作用することでTh1細胞、Th2細胞とTh17細胞といった代表的な3つのサブセットに分化する(非特許文献5及び9)。それぞれのサブセットに分化したCD4+T細胞はお互いに協調的、あるいは排他的に増殖していき免疫系の活性化を調節している。Th1細胞は炎症性サイトカインであるIFN−γ細胞の産生を介しCD8+T細胞やNK細胞などを活性化し、活性化したこれらの細胞は、細胞内寄生感染症に対する生体防御を担う。活性化したCD8+T細胞は自己細胞の変異によって生じた内的異物である腫瘍細胞を排除する機構としても作用している(非特許文献10)。
IFN−γなどの炎症性サイトカインによる腫瘍免疫の活性化はマウスを用いた実験から証明されてきた(非特許文献11及び12)。IFN−γは免疫細胞を活性化するだけでなく、腫瘍細胞そのものにも作用し、MHCクラスI、IIの発現を亢進させると同時に直接的な増殖抑制作用を持つことが知られている。このような細胞障害性T細胞による抗腫瘍効果は抗原性の高い悪性黒色腫などには有用であったが、そもそも腫瘍細胞は細菌などとは異なり、明らかに宿主と異なる抗原を有していることはまれである。腫瘍細胞は、抗原性が弱いだけでなく腫瘍細胞そのものが免疫応答を減衰させるTGF−βやIL−10を産生することから(非特許文献13)、生体内で腫瘍免疫が効果的に働いているとは言い難く、特に腸管における発癌過程で腫瘍免疫がどの程度働いているかはよく分かっていない。
一方、炎症性サイトカインによって作り出される炎症環境が腫瘍形成を促進させているという報告もある(非特許文献6)。家族性腫瘍で観察されるように発癌はゲノム異常に基づく疾患である。炎症性サイトカインによって遊走されてきた炎症細胞は活性酸素を産生し、この活性酸素はDNAの突然変異、DNAの切断、塩基修飾など直接DNA障害を引き起こすため発癌と深く関わっていることが知られている。また、炎症性サイトカインはVEGFAなどの血管形成因子を亢進させ、腫瘍環境に血管を新生させることにより細胞増殖や転移を促進させるという報告がなされるなど、炎症状態と腫瘍形成促進の報告は多い(非特許文献15〜17)。また、日本住血吸虫は大腸癌のリスク因子であり、C型肝炎ウィルスは肝臓癌、ピロリ菌が胃癌、といったように細菌感染による炎症が発癌のリスク因子であることも知られている。しかし、炎症性サイトカインはこれらの感染症防御にも働いているため(非特許文献5)、炎症性サイトカインと発癌の関りは複雑である。特に腸管では多数の腸内細菌が常在しており、これらの腸内細菌の中にはフロ−ラの変化によって炎症を誘導するような菌も存在しているため大腸癌発症機構における炎症性サイトカインの役割は、これまでにも予想が極めて困難であった。
IL−1ファミリ−分子:
IL−1ファミリ−分子はマクロファ−ジなど様々な免疫細胞から産生され、関節リウマチなどの炎症性疾患に重要な役割を果たしている(非特許文献18〜22)。また、その下流でシクロオキシダ−ゼ(COX)2の発現を制御している。COX2はプロスタグランジン(PG)H2からPGG2への代謝の律速酵素である。PGG2はPGE2へと代謝され血管新生やアポト−シス抑制を起こし腫瘍形成を促進させており、大腸癌や胃癌の発生にCOX2は大変重要な役割を担っている。大腸癌モデルマウスとCOX2の遺伝子ノックアウトマウスとの多重変異マウスの解析から、COX2を産生しないマウスでは劇的に腫瘍形成が抑制されることが分かっている(非特許文献23)。また、疫学的にもCOX1、COX2の阻害剤(アスピリン)常用者では大腸癌発症のリスクを抑えられることが知られている(非特許文献24)。
IL−17ファミリ−分子:
また、上記IL−1のシグナルは、下流でTh17分化調節を担っていることが知られている(非特許文献25)。特に、IL−17(一般に、「IL−17A」とも表記される。本明細書においても、「IL−17」と「IL−17A」の用語は互いに同義のものとして用いる。)は、Th17細胞から産生され、関節リウマチ、多発性硬化症といった炎症性疾患の重要な因子である。これらの炎症性疾患においてIL−17Aの発現亢進が認められており、ノックアウトマウスの解析ではコラ−ゲン誘導関節炎や実験的自己免疫性能脊椎炎の発症にきわめて重要であることが示されており、また、細菌や原虫の感染防御機構にも関与することが示されている(非特許文献26)。
一方、「IL−17F」は、6つのIL−17ファミリ−分子の中でIL−17Aとの相同性が最も高く、同じレセプタ−に結合するとされているものの(非特許文献27〜29)、IL−17AがT細胞から産生されるのに対し、IL−17FはT細胞以外でも産生されており、またその作用も免疫系においてIL−17Aと一致していないことが知られている(非特許文献26)。また、上記のように炎症性自己免疫疾患の発症にはIL−17Aは重要な働きを担っているが、ノックアウトマウスの解析からIL−17Fはほとんど関与していないことが明らかにされている(非特許文献26)。
しかし、石亀らの報告によりIL−17Fは粘膜組織での日和見感染症に関与していることが見出されている。つまり、IL17A/Fノックアウトマウスでは加齢と共に鼻部皮下に日和見感染菌である黄色ブドウ球菌の増殖による膿瘍が形成されるのに対し、IL−17A、IL−17Fそれぞれ単独のノックアウトマウスでは加齢しても感染を起こさないことからIL−17AとIL−17Fは同等に感染防御に重要な役割を果たしていることが示された(非特許文献26)。同様に、マウスの病原性大腸菌であるCitrobactor rodentiumの感染実験の結果、IL−17A、IL−17F、IL−17A/Fノックアウトマウスは野生型に比べ大腸菌に感染しやすくなっていることからも(非特許文献26)、IL−17ファミリ−分子と腸内フロ−ラの変動とそれに伴う炎症の関係は密接であり、腸管の恒常性を維持するためにも重要である。
このようにIL−17ファミリ−分子は炎症の重要な因子であるとともに、腸内フロ−ラの恒常性維持にも関っているため、腸管癌とIL−17ファミリ−分子との関りを容易に予想することは依然として困難である。
Apc Min/マウス:
本研究では、大腸癌モデルマウスとしてApc Min/マウスを使用した。Apcは代表的な大腸癌の癌抑制遺伝子として知られており、生体での作用は核内転写因子であるβ−カテニンを制御する働きをしている。β−カテニンはAPCによって捕捉され、捕捉されたβ−カテニンはリン酸化され、さらにユビキチン化されプロテアソ−ム分解されるため核内にβ−カテニンはほとんど存在しない(非特許文献30〜32)。しかし、Apc遺伝子に変異が起こりその機能が喪失するとβ−カテニンはリン酸化されず、結果として分解されないため核内に移行し転写因子として働く。その転写産物にcyclin Dなどの細胞増殖に関わる因子があるためApcの変異は癌の初期段階になる(日特許文献33〜35)。特に、大腸ではLoss of Heterozygosity(LOH)という片側アレルの喪失を頻繁に起こすためApc遺伝子の変異は一つだけであっても加齢と共に大腸癌を発症してしまう。そして大腸癌患者の約8割の人がこのApc遺伝子の変異を持っていることが知られている(非特許文献36)。そのため、Apc遺伝子のコ−ド領域にナンセンス点変異をもつApc Min/+ マウスは加齢と共に腸管全域にポリプを自然発症する家族性大腸腺腫症モデルマウスである。本明細書の実施例において使用したモデルマウスも、上記Apc Min/+ マウスとIl1rn −/− マウス(非特許文献37参照)、Il17a −/− (非特許文献38参照)、Il17f−/−、Il17a/f−/−マウス(非特許文献26及び該文献のSupplemental Data;「http://www.immunity.com/supplemental/S1074−7613(08)00554−2」参照)を交配することにより作製した多重変異マウスである。
大腸癌発症機構へのIL−17ファミリ−分子の関与:
これまでIL−17と発癌については相反する報告がなされてきた(非特許文献40)。とりわけ、腸管癌発症機構にIL−17が関与するのかという報告はヒト及びマウスにおいてあまり無い。最近Cynthia L.Searsらのグル−プによって、腸内細菌の一種であるentrotoxigenic Bacteroides flagilis(ETBF)を移植し定着させることで細菌が毒素を産生し慢性炎症が誘導され、Apc Min/+ マウスにおいて極めて短時間に大腸癌を誘導する系が確立された。この系において癌形成が抗IL−17A抗体によって抑制されることから、癌形成促進にTh17及び、それらから産生されるIL−17Aが重要だという報告がなされた(非特許文献41)。IL−17Aに拮抗するとされる抗ヒトIL−17(IL−17A)抗体は公知である(特許文献1)。
しかし、未だ、自己免疫疾患時には重要でないと知られていたIL−17Fと癌との関わりを示唆する報告はなく、従って、IL−17Fの癌形成時の作用メカニズムや自然発症時における腸管癌とこれらのサイトカインとの関わりについても調べられてはいなかった。
大腸癌抑制:
2004年、Dunn,G.Pらの免疫不全マウスを用いた発癌の実験により免疫系が癌から生体を守るという報告があり、細胞障害性T細胞による抗腫瘍免疫応答が注目されてきた(非特許文献42)。B16メラノ−マをIL−17(IL−17A)ノックアウトマウスに移植した実験の結果、腫瘍促進がみられ、CD8+T細胞の浸潤が抑制されていることが知られている(非特許文献43)。このことからもIL−17AによるCTLの活性化は抗原性の高い癌に有効ではあると考えられていた。本願の優先日後、IL−17AノックアウトマウスでApc Min/+ マウスの腸管ポリ−プ形成が抑制され、抗IL−17A抗体投与によっても抑制可能であることが報告された(非特許文献44)。
血管新生因子をタ−ゲットとした抗体医薬はすで効果をあげている。抗ヒトVEGFA中和抗体(アバスチン)は大腸癌患者への第III相臨床試験が行われ、著しい延命効果を示している(非特許文献45)。しかし、癌の血管新生阻害薬は万能ではなく、高血圧、腎障害、血栓形成などの重篤な副作用を示す報告もされている。従って、大腸などの腸管の上皮細胞において癌細胞局所的に発現が高い血管新生因子を特異的に阻害することは興味深い対象である。
また、例えば、CD4+T細胞サブセットの中には炎症を抑えるIL−10を産生する制御性T細胞(Treg)という細胞集団が存在する。2009年Khashayarsha Khazaieらの実験により大腸癌モデルマウスにTregを移植させた結果、腫瘍形成が抑制されることが分かった。しかし、驚くことに多くのTregが癌細胞局所に浸潤しているにも関わらず、浸潤していたTregは抗炎症性サイトカインであるIL−10を産生せず、IL−17Aを産生していた。移植されたTregも移植後しばらくはIL−10産生性Tregであったが、時間がたつにつれIL−17A産生性Tregに変化することがわかった(非特許文献46)。しかし、このIL−17A産生性Tregから産生されるIL−17Aが生体でどのように働いているのかは分かっていない。
腸内フロ−ラと大腸癌との関わりも重要である。前掲Cynthia L.Searsらのグル−プが用いている腸内細菌ETBFは、多くの大腸癌患者に存在しており、特に幼児期に感染すると大腸炎を起こすことが知られていることから着目された菌である(非特許文献41)。また、Ruslan Medzhitovらの実験結果から腸内細菌による刺激に対するセンサ−分子TLRの下流にあるシグナルアダプタ−分子Myd88ノックアウトマウスにおいて腫瘍形成が抑制されていることが示された(非特許文献47)。飼育環境下の違いによるに腸内フロ−ラに常在する菌種の違からIL−17産生を亢進させる菌がいることも分かってきた。2009年Dan R. Littmanらの実験によりJackson社で飼育されたC57BL/6JマウスとTaconic社で飼育されたC57BL/6Jマウスで腸管におけるTh17細胞の存在量が異なり、その原因としてTaconic社のマウスにはSegmented Filamentous Bacteriaという腸内細菌が常在しており、その菌がIL−17産生を亢進させることが分かった(非特許文献48)。これらの結果は、IL−17ファミリ−分子は腸内細菌の刺激により産生されており、産生されたIL−17ファミリ−分子によって腸内フロ−ラの恒常性が保たれていることを予想させる。
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国際公開第WO2007/117749号パンフレット
このように、大腸癌発症機構における炎症性サイトカインの役割は十分に解明されているとはいえない。そこで、本発明者らは、炎症の重要な因子(炎症性サイトカイン)であるIL−1ファミリ−遺伝子と大腸癌の関わりについて着目した。すなわち、IL−1α、βの内因性アンタゴニストとして働いるIL−1レセプタ−アンタゴニスト(RA)の遺伝子(Il1rn)をノックアウトすることによりIL−1シグナルが過剰となりCOX2の発現を亢進される事が予想されるマウスを用いてIL−1が引き起こす炎症状態と腫瘍形成に与える影響を評価した。
また、前記のとおり、IL−1ファミリ−分子は下流でIL−17産生性T細胞(Th17)分化の調節因子として働くことが知られており、よって、IL−17ファミリ−分子も炎症の重要な因子であるとともに、他方で腸内フロ−ラの恒常性維持にも関っているため、大腸癌とIL−17ファミリ−分子との関りを容易に予想することは、依然として困難である。そこで、本発明者らは、IL−17ファミリ−分子と大腸癌の関わりについても着目し、IL−17ファミリ−分子の遺伝子改変マウスを用いることでこれらの分子が大腸癌の腫瘍形成促進に働くのか抑制に働くのかを評価した。
具体的に、加齢と共に腸管全域にポリプを自然発症する家族性大腸腺腫症モデルマウスであるApc Min/+ マウスとIL−1、IL−17ファミリ−遺伝子(Il1rn −/− Il17a −/− Il17f −/− Il17a −/− /f −/− )欠損マウスを交配することにより多重変異マウスを作製した。そして、これらとApc Min/+ マウスに発生したポリプの大きさ、発生数を比較することでポリプ形成時に炎症性サイトカインが関与するのかを調べ、その作用メカニズムを解明した。
その結果、IL−1ファミリ−遺伝子及びIL−17ファミリ−分子と大腸癌の密接な関わりが示された。
つまり、IL−1レセプタ−アンタゴニスト(Il1rn −/− )欠損マウスにおいて有意にポリプの発生数、大きさ共に増加していることが示された。また、Apc Min/+ Il1rn −/− 多重変異マウスのポリプとApc Min/+ マウスのポリプを比較した結果、Apc Min/+ Il1rn −/− 多重変異マウスのIl17aIl17fの発現量が亢進していることが示された。さらにApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスではApc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスと比べ3mm以上の大きさのポリプ発生数が有意に減少しており、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスでは1mm以上の大きさポリプが減少していた。Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスではそれぞれの単独ノックアウトマウスに比べさらにポリプの発生数が減少しており、その原因としてIL−17、IL−17Fは線維芽細胞に作用し、血管新生を亢進させていることをつきとめた。従って、理論に拘束されるわけではないが、IL−17ファミリ−分子は血管新生を亢進させる事で細胞増殖を促し、腫瘍形成を促進させていることを示唆する。
また、腸管全域におけるポリプ発生数をApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスで比較したところ、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスにおいて有意にポリプ発生数が減少していることが示された。この結果は、ポリプ局所においてIL−17(IL−17A)は浸潤細胞のみが産生しているがIL−17Fは浸潤細胞に加え腸管上皮細胞自身も産生しているため、ポリプ局所的ではIL−17Fの産生がIL−17に比べ過多になっていることを示唆し得るであろう。
以上の結果から、腫瘍の治療方法である外科療法、化学療法、放射線療法、免疫療法、に続く第5の治療方法として期待されている抗体療法のタ−ゲットとして、IL−1ファミリ−分子及びIL−17ファミリ−分子、殊に、IL−17F分子を新たに加えることが出来るであろう。
従って、本発明の第1の局面では、IL−17F阻害剤を含む腸疾患治療用医薬組成物が提供される。
すなわち、これまでの多くの研究は、IL−17Aに比べIL−17Fは作用が弱いことを指し示していたが、実際の大腸癌発症機構において、IL−17Fは上皮細胞及び浸潤細胞からも産生されるため、腫瘍局所的にIL−17Fが過剰に産生されることで腫瘍形成に中心的な役割を果たしていると考え得る証拠が得られた。つまり、IL−17A及びIL−17Fは同様に線維芽細胞に作用し血管新生を亢進させているにも関らず、その発現量の低さから、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスではポリプの大きさが3mm以上と大きくならないと発生数に変化が見られないのに対し、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスではでは1mm以上の大きさのポリプ発生数においてさえその発生数に差が見られたのだと推論することは合理的であろう。以上のことから、大腸癌発症時における炎症性サイトカインIL−1ファミリ−分子や、IL−17ファミリ−分子は腫瘍形成促進に働いており、これらのサイトカイン、殊にIL−17Fを抑制することで腫瘍形成を抑制出来ると考えられる。
前記IL−17F阻害剤としての抗IL−17F抗体の使用及び効果を実施例に示した。従って、本発明の第2の局面では、前記IL−17F阻害剤が抗IL−17F抗体である、IL−17F阻害剤を含む腸疾患治療用医薬組成物が提供される。
次いで、本発明の第3の局面は、IL−17F阻害剤と組み合わせてIL−17A阻害剤を使用する腸疾患治療用医薬組成物が提供される。典型的なIL−17A阻害剤は、抗IL−17A抗体である。抗IL−17F抗体と抗IL−17A抗体の組合せた使用及び効果も実施例に示した。
更に、本発明の第4の局面では、IL−17F阻害剤により治療されるべき腸疾患が、腸管内のポリプ又は癌であり、当該腸管が大腸である腸疾患治療用医薬組成物が提供される。従って、本発明の有利な態様は、大腸癌の予防及び/又は治療薬ないし当該用途のための医薬組成物を包含する。
また、本発明の第5の局面では、その他のIL−17F阻害剤としてのIL−17F阻害活性を有するIL−17F模倣物、siRNA、及びアンチセンスRNAの前記目的のための使用が意図される。
そして、本発明は、IL−17F阻害剤を用いた腸疾患、典型的には腸管内のポリプ又は癌、より特定的には大腸癌患者を治療する方法を意図する。また、本発明は、腸疾患、典型的には腸管内のポリプ又は癌、より特定的には大腸癌患者を治療するための医薬組成物の製造のための、IL−17F阻害剤の使用を意図する。
Apc Min/+ マウスとApc Min/+ Il1rn −/− マウス(4.5ヶ月齢)における腸管の様子を示す。写真の上がApc Min/+ マウス、下がApc Min/+ Il1rn −/− マウスである。Apc Min/+ −Il1rn −/− マウスはApc Min/+ マウスに比べポリプの発生数が多いこと観察された。デ−タはどちらもn=6で観察し代表的な1サンプルの様子を記載した。 Apc Min/+ マウスとApc Min/+ Il1rn −/− マウスとのポリプ発生数の比較結果を示す。大腸、小腸部分に分けて比較を行ったところ、どちらの部位でもApc Min/+ Il1rn −/− マウスの方がポリプ発生数が多いことが観察された(a)。腸管全長で大きさごとに分類しポリプの発生数を調べたところ0.5mm〜1mmにおける発生数に変化は見られなかったがそれ以上大きくなると有意に増加している(b)。デ−タはApc Min/+ マウスとApc Min/+ Il1rn −/− マウスともにn=3で比較した。 Apc Min/+ マウスの非腫瘍部と腫瘍部におけるマイクロアレイ解析結果を示す。Apc Min/+ マウスの非腫瘍部(WT N)と腫瘍部(WT P)においてGSEAを用いて機能グル−プ解析を行ったところ炎症経路が有意に亢進していることが示された。 Apc Min/+ Il1rn −/− マウスの非腫瘍部と腫瘍部におけるマイクロアレイ解析結果を示す。Apc Min/+ Il1rn −/− マウスの非腫瘍部(RA N)と腫瘍部(RA P)においてGSEAを用いて機能グル−プ解析を行った(非特許文献39)ところ線維芽細胞の細胞周期に関わる経路が有意に亢進していることが示された。 定量的PCR法によるIl17ファミリ−分子の発現変動を示す。Apc Min/+ マウスにおいて非ポリプ部分とポリプ局所におけるIl17aの産生に差は見られ見られなかったが、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスにおいてはポリプ局所で有意に発現が増加していることが分かった。また、ポリプ局所同士を比較したところApc Min/+ Il1rn −/− マウスにおいて有意な発現上昇が見られた(a)。Apc Min/+ マウス、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスともにポリプ局所におけるIl17fの産生に差が見られた。またポリプ局所同士を比較したところApc Min/+ Il1rn −/− マウスにおいて有意な発現上昇が見られた(b)。 定量的PCR法によるCox2の発現変動を示す。定量的PCR法を用いてApc Min/+ マウスとApc Min/+ Il1rn −/− マウス腫瘍部同士におけるCox2の発現を調べたところ両者に有意な差は見られなかった。n=3でそれぞれ行った。 Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスにおけるポリプ発生数の様子を示す。(a)がApc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスにおける比較した様子を示した。(b)がApc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスを比較した様子を示した写真である。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスはn=7、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスはn=6、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスはn=5で比較したうちの代表的な写真を記載した。 Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスにおける部位ごとによるポリプ発生数の比較結果を示す。大腸ではApc Min/+ Il17a/f +/− マウスに比べApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスではポリプの発生数に有意な差は見られなかったのに対しApc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスでは有意にポリプの発生数が減少していることが示された(a)。小腸ではApc Min/+ Il17a/f +/− マウスに比べApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスともにポリプの発生数が減少していることが示された(b)。また、腸管全域におけるポリプ発生数はApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスに比べApc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスでは有意に減少していることが示された(c)。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスはn=7、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスはn=6、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスはn=5で比較した Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスと、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスにおける腸管全域でのポリプの大きさごとの比較を示す。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスを比較した結果、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスでは0.5mm〜3mmまでの部位でApc Min/+ Il17a/f +/− マウスに比べ有意なポリプの発生数の差は見られなかった[(a)及び(b)]が、3mm以上の場合ではポリプ発生数が有意に減少していることが確かめられた(c)。それに対し、Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスと比べた場合に、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスでは0.5mm〜1mmまででは有意な差は見られなかったが(a)、それ以上の大きさになるとポリプの発生数が有意に減少していることが確かめられた[(b)及び(c)]。Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスとApc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスを比較した場合は有意な差は見られなかった。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスはn=7で、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスはn=6で、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスはn=5で比較した。 ポリプ局所におけるIL−17A、IL−17F産生細胞の違いを示す。Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウスについてIL−17A、IL−17Fを免疫染色した結果、IL−17Aは浸潤細胞が産生し(a)、IL−17Fは浸潤細胞の他に上皮細胞が産生している(c)ことが示された。(b)及び(d)は、Apc Min/+ Il17a/f −/− マウスでそれぞれIL−17A、IL−17Fを免疫染色した結果である。デ−タは独立に4回行ったうちの代表的な一枚を記載した。 定量的PCR法を用いたMEFによるIL−17A、IL−17F刺激に対する血管新生因子の発現変動を示す。マウス胎児線維芽細胞(MEF)にIL−17A、IL−17F刺激した時の血管新生因子(Vegfacox2cxcl1)の発現変動を示した。IL−17A、IL−17F両者とも濃度依存的に血管新生因子の発現上昇が見られた。デ−タは独立に3回行った結果をまとめたものである。 定量的PCR法を用いたApcMin/+−Il17a/f+/−Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApcMin/+−Il17a/f−/−Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウススのポリプ局所におけるVegfa産生量の比較結果を示す。ApcMin/+−Il17a/f+/−マウスとApcMin/+−Il17a/f−/−マウスのポリプ局所におけるVegfa産生量を比較した結果、Apc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおいて有意に産生量が減少していることが示された。両マウスともn=4で行った。 Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウスポリプ局所におけるVEGFAによる免疫染色を示す。左図がVEGFA染色であり、右図が核染色である。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− マウスによる免疫染色の結果、VEGFA産生細胞は上皮細胞で無いことが確認された。また両者を比較したところApc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおいてVEGFA産生量が減少していることが示唆された。デ−タは両者n=4で行った。 Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスによるVIMENTINの免疫染色を示す。左図がVIMENTIN染色であり、右図が核染色である。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスで線維芽細胞のマ−カ−であるVIMENTINを染色した結果、ポリプを構成する間質細胞の大部分が線維芽細胞であることが分かった。デ−タはn=6で行い代表的な一枚を記載した。 TUNEL法によるアポト−シス細胞の比較結果を示す。TUNEL法によりアポト−シス細胞の検出を行った。左図がアポト−シス細胞であり、右図が核を示す。ApcMin/+−Il17a/f+/−Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウス(a)、ApcMin/+−Il17a/f−/−Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウスが(b)。両者に有意な差は見られなかった。両マウスともn=6で行った。 Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスと、Apc Min/+ Il17a/f −/− Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウスにおける増殖細胞の免疫染色法による比較結果を示す。左図が細胞周期のM期にある細胞で増殖中の細胞である。右図が核を示す。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスの結果が(a)及び(b)である。Apc Min/+ Il17a/f −/− マウスの結果が(c)及び(d)である。両者を比較した結果、Apc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおいて増殖細胞が有意に減少していることが確かめられた(e)。デ−タはn=6で行い代表的なサンプルを記載した。 免疫染色法によるApc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウスのポリプ局所における血管細胞の様子を示す。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− マウスを比較した結果、Apc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおいて血管量が減少していることが示された。デ−タは両者ともn=6で行い代表的な一種を記載した。 Apc Min/+ Il17a/f +/− Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− )マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− )マウス(6ヶ月齢)との比較結果を示す。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおけるポリプ形成の様子を示した(a)。写真はn=6で確認した結果の代表的な1サンプルの様子を示した。Apc Min/+ Il17a/f +/− マウスとApc Min/+ Il17a/f −/− マウスのポリプ形成を部位ごとに比較した結果、大腸、小腸の両部位でポリプ形成がApc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおいて抑制されていることが示された(b)。大きさごとに分類した結果、0.5mm〜1mmの大きさのポリプは有意な差が見られなかったのに対し、それ以上の大きさになるとApc Min/+ Il17a/f −/− マウスにおいて有意にポリプ形成が抑制されていることが分かった(c)。またApc Min/+ Il17a/f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス及びApc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスと比較した結果、それぞれのシングルノックアウトマウスに比べApc Min/+ Il17a/f −/− マウスでは小腸部分と3mm以上の大きさのポリプ発生数が有意に減少していることが分かった。デ−タはApc Min/+ Il17a/f +/− マウスはn=7、Apc Min/+ Il17a/f −/− マウスはn=6、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスはn=6、ApcMin/+−Il17a+/−/f−/−マウスはn=5で確認した。 2次スクリ−ニング後の抗IL−17F中和活性評価の結果を示す。各モノクロ−ナル抗体のrIL−17FによるMEFでのIL−6誘導阻害活性を示した。 2次スクリ−ニング後の抗IL−17A中和活性評価の結果を示す。各モノクロ−ナル抗体のrIL−17AによるMEFでのIL−6誘導阻害活性を示した。 精製抗IL−17F抗体(クロ−ンK13−4)のIL−17F中和活性を示す。rIL−17FによるMEFでのIL−6誘導阻害活性を示した。 精製抗IL−17A抗体(クロ−ンK15−2及びK33−4)のIL−17A中和活性を示す。rIL−17AによるMEFでのIL−6誘導阻害活性を示した。 4ヶ月例のApcMin/+マウス(C57BL/6J背景)に対して、マウスIgG(コントロ−ル)、抗マウスIL−17A抗体、抗マウスIL−17F抗体、及び抗マウスIL−17A抗体と抗マウスIL−17F抗体の両方を、1回/週腹腔内投与で6回投与した後の大腸における大きなポリプ(3mm以上)の発生数を示す。
前記のとおり、本発明は、IL−1ファミリ−分子、IL−17ファミリ−分子、特にIL−17Fをタ−ゲットとした腸疾患治療及びそのための医薬品を提供する。本発明以前には、IL−17Fと癌との関わりを示唆する報告はなく、従って、IL−17Fの癌形成時の作用メカニズムや自然発症時における大腸癌とこれらのサイトカインとの関わりについて調べられてはいなかった。
かくして、ILファミリ−分子、とりわけIL−17F分子を阻害することにより腸疾患の治療をする本発明の新規な方法は、IL−17F阻害剤、典型的にはIL−17Fレセプタ−とIL−17Fが結合することを抑制することができるIL−17F拮抗物質であるか、又は組織においてIL−17F又はIL−17Fレセプタ−の発現を阻害することができる物質の治療的に有効な量を含む組成物と、腸管内ポリプ又は癌が生じているか又はそれらが生じる危険性がある組織とを接触させることを含む。
A.IL−17F拮抗物質
IL−17F拮抗物質は、組織でのIL−17Fの生理学的作用を阻害するための薬剤として本発明で用いられ、それらは、天然のIL−17FとIL−17Fレセプタ−との機能的な相互作用を干渉するような態様でIL−17Fレセプタ−又はIL−17Fと相互に作用する化合物を含む種々の形態をとることができる。例示的な拮抗物質は、IL−17F又はIL−17Fレセプタ−のいずれかと免疫反応を生じるモノクロ−ナル又はポリクロ−ナル抗体、及びIL−17Fレセプタ−のリガンド結合反応に必要な構造領域を模倣するIL−17F又はIL−17Fレセプタ−のいずれかの模倣物を含む。
抗体:
一具体例で、本発明は、IL−17Fと免疫的に反応し、本明細書で述べるように天然のIL−17FとIL−17Fレセプタ−が結合するのを抑制するモノクロ−ナル抗体の形態をとるIL−17F拮抗物質を開示する。そのような抗体を産生する細胞株を作製する方法、およびこのモノクロ−ナル抗体を生成する方法は当業者にとって容易に実施可能であり、その好適な一態様を実施例においても示す。
なお、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の集団および/または免疫グロブリンの免疫学的に活性な部分(すなわち抗体結合部位またはパラト−プを含む分子)の集団を指す集合名詞として本明細書では用いられる。「抗体結合部位」とは、抗原と特異的に結合する重鎖および軽鎖の可変並びに超可変領域から構成される抗体分子の構造部分である。
本発明で使用する典型的な抗体は、完全な免疫グロブリン分子、実質的に完全な免疫グロブリン分子および、パラト−プを含む免疫グロブリン分子の部分(当分野でFab、Fab’、F(ab’)およびF(v)として知られ、また抗体フラグメントと称される部分を含む)である。例えば、抗体のFabおよびF(ab’)部分(フラグメント)は、周知の方法(例えば、Theofilopolous & Dixon,米国特許第4342566号を参照のこと)による実質的に完全な抗体のそれぞれパパインおよびペプシンによる蛋白分解反応によって調製される。Fab’抗体部分もまた周知であるが、2つの重鎖部分を連結するジスルフィド結合を例えばメルカプトエタノ−ルで還元し、生じた蛋白メルカプタンを例えばヨ−ドアセトアミドのような試薬でアルキル化してF(ab’)部分から生成される。その他の抗体関連阻害剤は、例えば、Morrison SL.:Two heads are better than one.、Nat.Biotechnol.、Vol.25(11):1233−4(2007)を参照することができる。
「モノクロ−ナル抗体」は、典型的にはただ1種の抗体分子を分泌(産生)するハイブリド−マと呼ばれる単一の細胞クロ−ンによって産生される抗体から成る。このハイブリド−マ細胞は、抗体産生細胞とミエロ−マまたは他の自己永続化細胞株とを融合させて形成される。そのような抗体の調製は、最初コ−ラ−とミルシュタイン(Kohler & Milstein,Nature 256:495−497(1975))によって記載された。また別の方法はゾ−ラ(Zola,“モノクロ−ナル抗体:術式の手引(Monoclonal Antibodies:A Manual of techniques)”CRC Press,Inc.(1987))によって記載されている。
ただしIL−17Fは内因性の分子であるので、抗マウスIL−17F抗体産生ハイブリド−マを形成する際には、「Ishigameら、Immunity、Vol.30、pp.108−119(2009)」(非特許文献26)及びそのSupplemental Data(http://www.immunity.com/supplemental/S1074−7613(08)00554−2)に作製法が詳細に記載されているIf17f −/− マウスを免疫動物として用いることにより、当該抗体産生細胞を効率的に取得することができる。
そして、そのように調製したハイブリド−マの上清をIL−17Fと免疫的に反応させ、さらに天然のIL−17Fレセプタ−へのIL−17F結合を抑制する中和抗体分子の存在についてスクリ−ニングすることができる。つまり、そのようにしてスクリ−ニングされた中和抗体は、本発明のIL−17F阻害剤として、天然のIL−17FとIL−17Fレセプタ−が結合するのを抑制するために用いることができる。
上記のような中和抗体スクリ−ニングの一具体例としては、マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)によるIL−6産生を指標とする方法が挙げられる。すなわち、MEFはIL−17F刺激によりIL−6を産生することが知られており(Hu Y,Ota N,Peng I,Refino CJ,Danilenko DM,Caplazi P,Ouyang W.:IL−17RC is required for IL−17A− and IL−17F−dependent signaling and the pathogenesis of experimental autoimmune encephalomyelitis.,J Immunol.,Vol.184(8):4307−16(2010))、従って、当該IL−6産生阻害について抗IL−17F抗体の中和活性をスクリ−ニングすることができる。当該スクリ−ニングの詳細は実施例に記載する。
なお、ヒト化(humanized)モノクロ−ナル抗体は、特に人間に治療的に使用する場合はマウスのモノクロ−ナル抗体より特別な利点を提供する。具体的には、ヒトの抗体は外来抗原のように急激に血液循環から排除されず、さらに外来抗原および外来抗体と同じ態様で免疫系を活性化させない。ヒト化抗体の調製方法は当分野で一般に周知であり、本発明の抗体に容易に応用できる。
模倣物:
典型的な本発明の「模倣物」は、IL−17Fとそのレセプタ−との相互作用に必要な領域にIL−17F自体またはIL−17Fレセプタ−のいずれかの特徴的なアミノ配列を有し、さらにIL−17F拮抗物質活性を示すポリペプチドであり得る。IL−17F模倣物のデザインは、当分野で既知の薬剤デザインのための様々な構造分析方法のいずれを用いても実施できる。これらの分析方法には、分子モデリング、二次元核磁気共鳴(2−DNMR)分析、X線結晶学、ペプチドのランダムスクリ−ニング、ペプチド類似体または他の化学ポリマ−ライブラリ−および同様な薬剤デザイン方法が含まれる。
IL−17Fに対して選択性をもつ好ましいIL−17F拮抗物質の識別は、例えば前記のMEFによるIL−6産生阻害アッセイで容易に明らかにできる。例えば、模倣物は、それが必要なアミノ酸配列を含むペプチドであり、さらに例えば本明細書で述べるようなアッセイでIL−17F拮抗物質として機能することができる限り、本発明の目的に使用できることは理解されよう。また、模倣物のポリペプチドは、ペプチド誘導体の種々の形態のいずれかをとることができ、これは、アミド、蛋白との共役物、重合ペプチド、フラグメント、化学修飾ペプチドおよび同様な誘導体を含む。「化学的修飾」とは、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導された1つまたは2つ以上の残基を有するポリペプチドを指す。そのような誘導分子は、例えば、遊離アミノ基が、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはフォルミル基を形成するように誘導された分子を含む。遊離カルボキシ基は、塩、メチルおよびエチルエステルもしくはエステルの他の種類を形成するように誘導することができる。遊離ヒドロキシ基は、o−アシルまたはo−アルキル誘導体を形成するように誘導することができる。化学誘導体として含まれるものはまた、20種の標準アミノ酸の天然に生じる1つまたは2つ以上のアミノ酸誘導体を含むペプチドである。
B.IL−17F又はIL−17Fレセプタ−の発現阻害物質
本発明のLF−17F阻害剤は、組織においてIL−17F又はIL−17Fレセプタ−の発現を阻害することができる物質を含む。典型的な当該発現阻害物質は、IL−17F(又はそのレセプタ−)を標的とするsiRNA分子或いはアンチセンスRNA分子であり得る。
siRNA分子:
本発明のsiRNA(short interfering RNA)は、好適にはIL−17F遺伝子の転写産物(mRNA)であって標的とする配列と相補的なRNA(アンチセンスRNA鎖)および当該RNAに相補的なRNA(センスRNA鎖)が結合した二重鎖RNAである。本発明のIL−17F遺伝子の転写産物の配列は当業者によく知られている。また、マウスIL−17F用のsiRNAは、SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY,INC.より「IL−17F siRNA(m):sc−146204」として入手可能である。
一般的にsiRNAが細胞に導入されると、RNAi現象が生じ、相同な配列を有するRNAが分解される。本発明のsiRNAには、siRNAそのもの(二重鎖RNA)の他、当該siRNAを生成するようなshRNA(short
hairpin RNA),dsRNA(double strand RNA)又はそれらを発現できる発現ベクタ−も含まれ、これらはRNAiを引き起こすことができればどのような形態のものでもよい。また、当該siRNAは、人工的に化学合成されたもの、修飾されたもの、生化学的に合成されたもの、又は生物体内で合成されたもの或いは約40塩基以上の二本鎖RNAが生体で分解されたものであり、10塩基対以上の二本鎖RNAである。siRNAの塩基数は、一般的には10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基である。また、当該siRNAは、通常、5‘−リン酸、3’−OHの構造を有しており、3‘末端は約2塩基突出していることが好ましい(Elbashir
SM, Harborth J, Lendeckel W, Yalcin A, Weber K, Tuschl T. Duplexes of 21−nucleotide
RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells. Nature. 2001 May 24;
411(6836): 494−8)。siRNAは一本鎖化し、一方の鎖(ガイド鎖)がタンパク質と共に、RISC(RNA−induced−silencing−complex)を形成する。RISCは、ガイド鎖と相補的な配列を有するmRNAを認識して結合し、siRNAの中央部でmRNAを切断する。斯様にして、siRNAは、その標的となる遺伝子のmRNAを分解することによりその発現を抑制することができる。
アンチセンスRNA:
「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコ−ドしている「センス」核酸に相補的な、例えば二本鎖cDNAのコ−ディング鎖に相補的な、またはmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は、全IL−17Fコ−ディング鎖に、またはそのフラグメントのみに相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50個のヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸は、化学合成および酵素ライゲ−ション反応を用いて、当該分野で公知の方法を用いて構築することができる。また、別法として、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配置でサブクロ−ンされている発現ベクタ−を用いて生物学的に製造することができる。
本発明のアンチセンスRNA分子は、典型的には、IL−17Fをコ−ドしている細胞内mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズまたは結合して、それにより、例えば、転写および/または翻訳を阻害することによりポリペプチドの発現を阻害する。
C.IL−17A阻害剤
前記のとおり、発明以前には、IL−17Fと癌との関わりを示唆する報告はなかった。また、これまでの多くの研究は、IL−17Aに比べIL−17Fは作用が弱いことを指し示していた。しかるに、本発明者らが、実際の大腸癌発症機構において、腫瘍局所的にIL−17Fが過剰に産生されることで、当該IL−17Fが腫瘍形成に中心的な役割を果たしていることを示唆する結果を得たことは驚嘆すべきことであった。いっぽうで、本発明者らは、IL−17Aも線維芽細胞に作用して血管新生を亢進させていることを確認した。また当該IL−17Aの阻害により大腸ポリプの発生数が減少すること、そしてその効果はIL−17F阻害との併用により更に増強されることを実証した。従って、ILファミリ−分子を阻害することにより腸疾患の治療をする本発明の新規な方法は、IL−17F阻害剤とIL−17A阻害剤を組み合わせて使用することを包含する。なお、本発明において「組み合わせて使用する」というときには、IL−17F阻害剤とIL−17A阻害剤を一緒に又は逐次に(すなわち別々の時間に)、同一の又は異なる投与経路で投与することを意図する。従って、両薬剤の剤形も特に限定されるものではなく、両者が同一の単位剤中に含まれていても、或いは別個の単位剤に含まれていてもよい。
本発明のIL−17A阻害剤については、IL−17F阻害剤について前記したことが全て適用可能である。すなわち、IL−17A阻害剤も、典型的にはIL−17Aレセプタ−とIL−17Aが結合することを抑制することができるIL−17A拮抗物質であるか、又は組織においてIL−17A又はIL−17Aレセプタ−の発現を阻害することができる物質である。IL−17A拮抗物質及び発現阻害物質についても、IL−17Fで説明したものが当て嵌まる。
IL−17A阻害剤の好適な例は、抗IL−17Aモノクロ−ナル抗体を含む。IL−17Aに拮抗するとされる抗ヒトIL−17(IL−17A)抗体は国際公開第WO2007/117749号パンフレット(特許文献1)により公知であるが、更にそのような抗体を産生する細胞株を作製する方法およびこのモノクロ−ナル抗体を生成する方法は当業者にとっても容易に実施可能であり、その好適な一態様を実施例においても示す。
つまり、当該モノクロ−ナル抗体の調製は、コ−ラ−とミルシュタイン(Kohler & Milstein,Nature 256:495−497(1975))によって記載された方法は、或いはゾ−ラ(Zola,“モノクロ−ナル抗体:術式の手引(Monoclonal Antibodies:A Manual of techniques)”CRC Press,Inc.(1987))に記載されている方法に基づけばよい。
ただしIL−17Aも内因性の分子であるので、抗マウスIL−17A抗体産生ハイブリド−マを形成する際には、「Nakaeら、Immunity、Vol.17、pp.375−387(2002)」(非特許文献38)に作製法が詳細に記載されているI17a −/− マウスを免疫動物として用いることにより、当該抗体産生細胞を効率的に取得することができる。
そして、そのように調製したハイブリド−マの上清をIL−17Aと免疫的に反応させ、さらに天然のIL−17Aレセプタ−へのIL−17A結合を抑制する中和抗体分子の存在についてスクリ−ニングすることができる。つまり、そのようにしてスクリ−ニングされた中和抗体は、本発明のIL−17A阻害剤として、天然のIL−17AとIL−17Aレセプタ−が結合するのを抑制するために用いることができる。
上記のような中和抗体スクリ−ニングの一具体例としては、マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)によるIL−6産生を指標とする方法が挙げられる。すなわち、MEFはIL−17F刺激によりIL−6を産生することが知られており(Hu Y,Ota N,Peng I,Refino CJ,Danilenko DM,Caplazi P,Ouyang W.:IL−17RC is required for IL−17A− and IL−17F−dependent signaling and the pathogenesis of experimental autoimmune encephalomyelitis.,J Immunol.,Vol.184(8):4307−16(2010))、従って、当該IL−6産生阻害について抗IL−17F抗体の中和活性をスクリ−ニングすることができる。当該スクリ−ニングの詳細は実施例に記載する。
D.腸疾患の治療方法及び腸疾患治療用医薬組成物
既に明らかなように、腸疾患治療のための本発明の新規な方法はIL−17F阻害剤の治療的に有効な量を含む医薬組成物と、腸管疾患が生じているか又はそれらが生じる危険性がある組織とを接触させることを含む。本発明の治療対象である腸疾患は、典型的には腸管内の腫瘍であり、当該腫瘍はポリプ及び癌を含む。また、本発明の方法および医薬組成物により治療される腫瘍は、典型的には大腸に存在し得る。当該大腸腫瘍としては、悪性上皮性腫瘍、カルチノイド腫瘍、非上皮性腫瘍、リンパ腫、転移性腫瘍、良性上皮性腫瘍、及び腫瘍性病変(過形成性ポリプなど)を含む。
本発明の医薬組成物を製造するにあたっては、活性成分であるIL−17F阻害剤(なお、ここでの全ての説明は、IL−17A阻害剤について当て嵌まる。)に、必要により製薬上許容される補助成分を添加して医薬組成物となすことが好ましい。ただし、通常の使用状況下でIL−17F阻害剤の薬学的効力を実質上、低下させるような相互作用がないように、補助成分の選択と活性成分との混合を適合させるのが好ましい。また薬学上許容される補助成分は勿論、ヒトへの投与に際して何ら安全上の問題が無いほど、充分に高い純度と充分に低い毒性とを兼ね備えていることが望ましい。薬学上許容される補助成分としては、例えば糖類、デンプン、セルロ−ス誘導体、ゼラチン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、植物油、ポリオ−ル類、アルギン酸、等張化剤、緩衝剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、保存剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、抗微生物剤などが挙げられる。
本発明の医薬組成物の薬剤形態としては、例えば注射剤、直腸吸収剤、経口投与剤などが挙げられるが、これらの具体的な投与形態については何ら限定されるものではない。
例えば、本発明の医薬組成物を注射剤として投与する場合には、好ましくは筋肉内投与または皮下投与または静脈内投与のためのものとして適合され得、また、直腸吸収剤として投与する場合には一般に坐薬の形態とされてよく、さらに経口投与剤として投与する場合にはリポソ−ム製剤、マイクロカプセル製剤などの経口用としての形態とすることもできる。
より具体的な例としては、本発明の医薬組成物を注射剤として処方する場合には、例えば抗IL−17F抗体を、緩衝剤、等張化剤およびpH調節剤を適量溶解した注射用蒸留水に溶解し、除菌フィルタ−を通して滅菌したものをアンプルに分注することによって、所望の注射剤を調製し得る。
また、本発明の医薬組成物を直腸吸収剤として処方する場合には、例えば抗IL−17F抗体を、ペクチン酸ナトリウムやアルギン酸ナトリウムなどのキレ−ト能を有する吸収促進剤および塩化ナトリウムやグルコ−スなどの高張化剤を適宜選択使用して、それらとともに蒸留水または油性溶媒に溶解または分散して坐剤となし得る(英国特許第2092002号明細書、同第2095994号明細書参照)。
さらに本発明の医薬組成物を経口投与剤として処方する場合には、例えば抗IL−17F抗体を、公知の薬学上許容される賦形剤、結合剤、滑沢剤、流動性促進剤、着色剤等の担体とともに、錠剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、カプセル剤となし得る。
本発明の医薬組成物に活性成分として含まれるIL−17F阻害剤、例えば抗IL−17F抗体の治療有効量は、年齢、体格、性別、対象者の健康度、投与されるIL−17F阻害剤の比活性、薬剤形態、投与頻度などによって異なるが、例えば体重キログラムあたり約0.05mgから約20mg、より通常は体重キログラムあたり約0.1mgから約5mgの投与量が例示される。投与頻度も、年齢、体格、性別、対象者の健康度、投与されるIL−17F阻害剤の比活性、投与量、薬剤形態などによって異なるが、1回/月〜3回/日の範囲であればいずれでもよく、好ましくは1回/週〜1回/日であり、さらに好ましくは1回/週または1回/日である。
本発明の医薬組成物の有効成分は他剤との相互作用もないため、対象者の都合に合わせて、様々な薬剤との併用が可能である。当該併用可能な薬剤の例としては、国際公開第WO2007/117749号パンフレット(特許文献1)に記載のものが挙げられる。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の例に限定されることはない。
実施例1:大腸癌発症機構におけるILファミリ−分子の役割
<材料と方法>
1)マウス
Apc Min/+ マウスはC57BL/6J背景のマウスをジャクソン研究所より購入した。
Il1rn −/− マウスは、「Horaiら、J. Exp. Med.、Vol.187、pp.1463−1475(1998)」(非特許文献37)に記載された方法により作製した。8世代以上のC57BL/6J(日本SLC株式会社)にバッククロスした個体を以下の実験に用いた。
Il17a −/− マウスは、「Nakaeら、Immunity、Vol.17、pp.375−387(2002)」(非特許文献38)に従い、ATG開始コドンを含むエキソン1−2をES細胞上でネオマイシン耐性遺伝子と置換することで作製された。8世代以上のC57BL/6J(日本SLC株式会社)にバッククロスした個体を以下の実験に用いた。
Il17f −/− マウスは、「Ishigameら、Immunity、Vol.30、pp.108−119(2009)」(非特許文献26)に従い、Il17 +/− ES細胞を用いて、ハイブロマイシンマイシン耐性遺伝子をエキソン2−3と置換することにより作製された。8世代以上のC57BL/6J(日本SLC株式会社)にバッククロスした個体を以下の実験に用いた。
以上のマウスを交配することで、Apc Min/+ Il1rn −/− マウス、ApcMin/+Il17a −/− マウス、Apc Min/+ Il17f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f +/マウスを作製した。なお、マウスは東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センタ−において、SPF環境下で維持した。全ての実験は、医科学研究所動物実験実地マニュアルと遺伝子組み換え生物等の使用に関する法律に沿って行った。
2)ポリプ形成の比較
Apc Min/+ マウス、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスは4.5ヶ齢で腸管を取り出し中性緩衝10%ホルマリン溶液で固定後、顕微鏡下で0.5mmから1mm、1mmから3mm、3mm以上の大きさに分類し、その個数を大腸、小腸、それぞれの部位に対しポリプ発生数を測定した。
Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスは6ヶ月齢で腸管を取り出し中性緩衝10%ホルマリン溶液で固定後、顕微鏡下で0.5mmから1mm、1mmから3mm、3mm以上の大きさに分類し、その個数を大腸、小腸、それぞれの部位に対しポリプ発生数を測定した。
3)mRNAの抽出
それぞれのマウスからポリプ部分、非ポリプ部分を採取し、セパゾ−ルRNA I Super(ナカライテスク株式会社)で抽出後、イソプロパノ−ル沈殿を行いmRNAを分離した。なおポリプの大きさは2mmから3mmの大きさに揃えて実験を行った。細胞株についても同様にセパゾ−ルRNA I Super(ナカライテスク株式会社)のプロトコルに沿って行った。なお細胞株(MEF)は1×10に調製後、3時間、抗生物質含有(ペニシリン、ストレプトマイシン)RPMI培地で培養し、その後IL−17A(R&D株式会社)、IL−17F(R&D株式会社)を、それぞれ、1ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、250ng/ml調製し添加後3時間で細胞を回収した。
4)細胞株
MEF(マウス胎児線維芽細胞)はC57CL/6Jマウスの胎児(14.5日)より作製した。DMEM(GIBCO社)に10%FCS、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を添加したもので培養し初代培養細胞を用いた。
5)DNAマイクロアレイ解析
上記3)で抽出したApc Min/+ マウスのポリプ部分と非ポリプ部分、及びApc Min/+ Il1rn −/− マウスのポリプ部分と非ポリプ部分の計4種類のmRNAに対して、Mouse Genome 430 2.0Array(AFFYMETRIX社)のチップを用いマイクロアレイ解析を行った。そして、Apc Min/+ マウスのポリプ部分と非ポリプ部分、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスのポリプ部分と非ポリプ部分に対して解析ソフト「GSEA」を用い機能グル−プ解析を行った(非特許文献39)。
6)定量的PCR法による解析
上記3)で抽出したmRNAを50ng/μlに調整後、High Capacity cDNA RT kit(Applied Biosystems社製)を用いcDNAへと転写した。その後、SYBRE kit(タカラバイオ社)を用い定量的PCRを行った。発現量はハウスキ−ピング遺伝子であるGapdhを用い補正した。
7)組織切片の作製
上記2)でサンプリングされたポリプを10%中性緩衝ホルマリン溶液で1時間固定後自動包埋機を用いパラフィン包埋を行った。その後5μmに薄切し組織切片を作製した。
8)TUNEL法によるアポト−シス細胞の検出
上記7)で作製された組織切片をキシレン、エタノ−ルを用い脱パラフィン化した後、アポト−シス検出kit(ロシュ社)を用いTUNEL法によりアポト−シス細胞の検出を行った。
9)免疫染色法による染色
上記7)で作製された組織切片に対し免疫染色を行った。キシレン、エタノ−ルによる脱パラフィン後、0.1Mクエン酸バッファ−(pH6)による抗原の賦活化を行った。ブロッキングは2%ヤギ血清(VECOTR社)/PBSで一時間行い、一次抗体は、Vegf alfa(abcam社)、Vimentin(abcam社)、phosphotilation Histn H(PH)3(abcam社)、CD31(abcam社)、IL−17A(Santa Cnuz Biotechnology社)、IL−17F(R&D社)、を用い一晩反応させた。二次抗体Alexa(Molecular Probe社)、Cy3(Jackson社)、ストレプトアビジン(Perkin Elmer社)を用い一時間反応させた。核染色はHoechest(Molecular Probe社)、DAB(ナカライテスク社)を用いた。なお観察は全て、BIOREVO(KEYENCE社)を用い、解析はBZ−II(KEYENCE社)を用いた。なおIL−17A、IL−17Fに関してはチラミド増幅法であるTSA system(Perkin Elmer社)を用い免疫染色を行った。
10)統計的評価
得られた結果は全てのstudent’s t検定により、統計学的に評価した。なお有意差は*;p<0.05、**;p<0.01、***;p<0.001とした。
<結果>
1. Apc Min/+ マウスとApc Min/+ Il1rn −/− マウス(4.5ヶ月齢)との比較
Apc Min/+ マウス、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスとのポリプ数を測定したところApc Min/+ Il1rn −/− マウスではApc Min/+ マウスに比べ優位にポリプ数が増加していた(図1及び図2)。またマイクロアレイ解析の結果Apc Min/+ マウスのポリプ部分において炎症性シグナル経路の亢進が見られた(図3)。またApc Min/+ Il1rn −/− マウスの非腫瘍部、腫瘍部をマイクロアレイ解析のデ−タと文献デ−タを比較した結果線維芽細胞の細胞周期に関わる因子が増加していることが示された(図4)。しかし定量的PCR法による解析の結果Cox2の発現はApc Min/+ マウス、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスとのポリプ部分を比較した結果有意な差は見られなかった(図6)。同様に定量的PCR法による解析の結果、Apc Min/+ マウスポリプ部分においてIl17fの産生が有意に亢進しており、さらにApc Min/+ Il1rn −/− マウスとApc Min/+ マウスのポリプ部分を比べたところIl17f産生が有意に亢進していることが分かった(図5a)。Il17aの産生量についてはApc Min/+ マウスではポリプ部分、非ポリプとも変動が見られなかったがApc Min/+ Il1rn −/− マウスとApc Min/+ マウスのポリプ部分を比べたところIl17a産生が有意に亢進していることが分かった(図5b)。
以上の結果から、IL−1ファミリ−分子による過剰な炎症状態はCOX2に非依存的な経路により大腸癌を増悪化させていることが示唆された。また、Apc Min/+ Il1rn −/− マウスのマイクロアレイによる遺伝子発現変動との比較は、線維芽細胞の細胞周期に関わる経路の発現変動とIL−1ファミリ−分子との関連を示した。
2. Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ −Il17a +/− /f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスとのポリプ形成(6ヶ月齢)の比較
Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスそれぞれのポリプ数、大きさを比較した結果、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスはApc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスに比べポリプの減少量は小さかったが、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスと比較して3mm以上ポリプ数は有意に減少していることが分かった(図7、8及び9)。また、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスでは1mmから3mmのポリプ数も減少していることが示された(図9)。Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウスとApc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスの腸管に発生した全ポリプ数を比較した結果、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスにおいてのみ有意なポリプ数減少が見られた(図8c)。
3. IL−17およびIL−17F産生細胞の特定
Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスの組織切片においてIL17、IL−17Fの産生細胞を特定するために免疫染色を行った結果、IL−17の産生細胞は主に浸潤細胞であるのに対し、IL−17Fの産生細胞は浸潤細胞の他に上皮細胞および癌細胞自身も産生していることが分かった(図10)。
4. マウス胎児線維芽細胞(MEF)による血管新生因子の測定
MEFにIL−17、IL−17Fを添加し、血管新生の因子であるVegfaCxcl1Cox2の発現を定量的PCR法を用いて測定した結果、IL−17、IL−17Fの濃度依存的に血管新生因子が増加していることが分かった(図11のa,b,c)。
これらの結果は、Il−17ファミリ−分子が血管新生を亢進させて腫瘍形成を促進していることを示している。そのメカニズムとしてIL−17A、IL−17Fは腫瘍環境下で線維芽細胞に作用し、VEGFA、CXCL1、COX2といった血管新生に関与する因子の発現を亢進させることにより癌局所に血管を作り、癌細胞が発育しやすい環境を作り出すことが原因であることを予測させる。
5. Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスにおけるポリプ環境の比較
定量的PCR法を用いてVegfaの発現を調べたところ、Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスのポリプ部分では、Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスのポリプ部分と比べ、Vegfaの発現量が減少していることが分かった(図12)。免疫染色法によるVEGFAの染色の結果、VEGFの産生は上皮細胞では無く浸潤細胞であることが確認された(図13)。そこでポリプ局所における浸潤細胞の種類を調べるため線維芽細胞のマ−カ−であるVimentinで染色を行った結果、浸潤細胞の大部分が線維芽細胞であることが分かった(図14)。
6. Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスマウスのポリプ環境下における増殖、アポト−シス応答
ポリプ環境下での増殖応答、細胞死を比較するためマウスの組織切片を用いてTUNEL法によるアポト−シス細胞数、免疫染色法によるpH3染色を行った。その結果アポト−シス細胞数に差が無いことが示唆され(図15)、増殖細胞がApc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスで有意に減少していることが分かった(図16e)。そこで免疫染色法によるCD31(血管のマ−カ−)の染色の結果、Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスのポリプ局所において血管が減少していることが分かった(図17)。
7. Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスとApc Min/+ −Il17a −/− /f −/− マウス(6ヶ月齢)との比較
Apc Min/+ Il17a +/− /f +/− マウスとApc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスとを比較した結果、Apc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスにおいて有意にポリプ形成が減少することがわかった(図18)。また、Apc Min/+ Il17a −/− /f +/− マウス、Apc Min/+ Il17a +/− /f −/− マウスそれぞれの単独ノックアウトマウスに比べApc Min/+ Il17a −/− /f −/− マウスでは有意にポリプの発生が減少していることが分かった(図18のb,c,e,f)。
以上の結果より、Il17a及びIl17fのシングルノックアウトマウスでは確かにポリプ形成の抑制が見られ、さらにIL−17Aに比べIL−17Fの寄与の方が大きいという結果が見られた。また、Il17a/fダブルノックアウトマウスはシングルノックアウトマウスに比べ有意にポリプ形成が抑制されることからも抗癌治療として抗IL−17F抗体投与、もしくは抗IL−17A、IL−17F抗体の併用がより効果的であると考えられる。
実施例2:抗IL−17F抗体及び抗IL−17A抗体による大腸癌抑制
(1)抗IL−17F抗体及び抗IL−17A抗体の作製
抗IL−17F抗体及び抗IL−17A抗体を作製するために、Il17f −/− マウス及びIl17a −/− マウスを、それぞれ、リコンビナントIL−17F及びIL−17Aにより免疫した。
具体的に、上記実施例1に記載の文献に準じて作製されたIl17f −/− マウス及びIl17a −/− マウスを免疫動物として用いた。抗原としてのリコンビナントマウスIL−17F及びIL−17Aは、市販(R&D Systems社製)のものを用いた。アジュバント(complete adjuvant (FREUND);三菱化学ヤトロン社製RM606−1)と1mg/mlの抗原溶液を混ぜ、エマルジョンにして、マウスに免疫した。計3回の免疫を行い、PEG法で細胞融合を行った。融合、播種の、3日後に培地を交換し、ハイブリド−マのコロニ−形成が確認された段階で(2〜3週間後)96穴プレ−トから培養上清をサンプリングし、次の1次スクリ−ニングを行った。
一次スクリ−ニングはELISA法により行った。まず、抗原(リコンビナントマウスIL−17F又はIL−17A)をPBSで1μg/mLに希釈後、感作用プレ−ト(NUNC社製;Cat No 468667)に50μL/wellで分注し、4℃ over nightで静置した。その後、抗原溶液を除去し、Blocking Bufferを100μL/wellで分注し、4℃ over nightで静置した。上記でサンプリングした各培養上清を50μL/wellで加え、室温で60分間反応させた。0.05% Tween 20 in PBSで3回洗浄後、Goat抗マウスIgG−POD標識(MBL社製;Code.330)を希釈Buffer(MBL製)で10,000倍希釈したものを50μL/wellで加え、室温で60分間反応させた。0.05% Tween 20 in PBSで3回洗浄後、発色液(MBL製)を50μL/wellで加え5分間発色させ、その後、1.5 mol/Lリン酸を50μL/wellで加えて反応を停止した。反応停止後、測定波長450nm、参照波長620nmで吸光度を測定した。
上記の1次スクリ−ニングで陽性と判断した培養上清に基づいて選択されたハイブリド−マに対して限界希釈法による単クロ−ン化の作業を行った。具体的に、対数増殖期に入った状態の良いハイブリド−マをパスツ−ルピペットでピペッティングした後採取し、培地で希釈後、1ウェルあたりの細胞数が1個から32,000個になるように細胞濃度をふって96穴プレ−トに播種した。ハイブリド−マのシングルコロニ−の形成が確認された段階で(1〜2週間後)96穴プレ−トから培養上清をサンプリングした。
次いで、単クロ−ンの確認(アイソタイプ確認)を、アイソタイピングキット(Iso Strip マウスモノクロ−ナル抗体アイソタイピングキット;Roche社製、Cat. No. 1−493−027)を用いて行った。すなわち、上記でサンプリングした培養上清をPBSで100倍希釈したものをディベロップメントチュ−ブに滴下し、着色ラテックスビ−ズを再懸濁した。チュ−ブに上記キットのアイソタイプ用ストリップを浸漬し、5分間おきに特定のサブクラス部分に検出されたバンドを確認した。この限界希釈法により単クロ−ン化されたハイブリド−マを96穴プレ−ト1穴から、48穴プレ−ト、24穴プレ−ト、12穴プレ−トまで継代培養した。1ウェルの細胞を遠心回収し、セルバンカ−500μLで懸濁し、ストックチュ−ブ1本に入れ−80℃で保存した。
(2)マウスIL−17FおよびIL−17Aに対する中和抗体の選択
上記でスクリ−ニングされた抗IL−17F抗体及び抗IL−17A抗体のマウスIL−17およびFIL−17Aに対する中和活性(in vitro)を、マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)をリコンビナントIL−17AあるいはIL−17F(R&D Systems)で刺激(24時間)したときのIL−6産生誘導を指標(ハイブリド−マ培養上清を1/3量添加したときの阻害活性)として評価した。
具体的に、マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)は以下のように調製した。まず、C57BL/6Jマウスの性成熟に達したオスとメスを同居させ、その後、毎朝、膣栓(plug)の確認を行い、確認のできた日の朝を0.5日とカウントし、14.5日に妊娠マウスを開腹し、胎仔を取り出した。胎仔は、冷PBS内にて頭部および臓器を取り除き、残りの部分をハサミにて細切した。その後、37℃インキュベ−タ−内にて0.05%トリプシン溶液で20分加温・撹拌した。トリプシン溶液にフィ−ダ−用培地(非必須アミノ酸/ピルビン酸ナトリウム添加DMEM、10% FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)を等量加え、トリプシンを失活させた後、ナイロンメッシュで濾過、1,000rpm、5分遠心後、上清を捨て、適当量のフィ−ダ−用培地に細胞を懸濁した。ゼラチンコ−ト済みの15cmディッシュに1x10個の細胞を播種し、37℃のCOインキュベ−タ−内で培養した。翌日あるいは翌々日に細胞が十分増殖したら継代し、さらに増殖させた後、凍結保存した。
次いで、前記の1次スクリ−ニングにより選択されたハイブリド−マ上清のin vitro中和活性測定を、以下のようにして行った。
48−wellプレ−トに上記で調製したMEFを1〜2x10cells/well(500μlフィ−ダ−用培地)となるように播種し、37℃のCO2インキュベ−タ−内で1日培養した。その培地を除去した後、新たな培地を100μl、ハイブリド−マ培養上清を100μl、及びリコンビナント(r)IL−17AまたはrIL−17F(R&D Systems社製)含有培地を100μl、その順番で培養MEFに加えた。このとき、rIL−17Fは終濃度が1.0−50ng/mlの範囲の希釈系列となるように、また、rIL−17Aは終濃度0.2−10ng/mlの範囲の希釈系列となるようにした。37℃のCOインキュベ−タ−内で24時間培養した後に培養上清を回収し、ELISA法{DuoSet
(登録商標): R&D Systemsを使用}にて培養上清中に含まれるIL−6の濃度を測定した。
上記の測定により中和活性が陽性と判定されたハイブリド−マは、再度、限界希釈法により単クロ−ン化し、更に上記と同様のIL−6産生誘導阻害を指標にしたスクリ−ニングを行って、好適な中和抗体を選択した。選択された幾つかのIL−17FおよびIL−17Aに対する中和抗体のIL−6産生誘導阻害活性を、それぞれ、図19および図20に示す。
上記のようにして選択した抗体のうちで、クロ−ンK13−4(抗IL−17F抗体)、並びにクロ−ンK15−2及びK33−4(抗IL−17A抗体)に関して、無血清培地(BD CellTM MAb Serum−Free Medium)で培養し、その上清から精製抗体(HiTrap Protein G HPカラムにて精製)を作製した。具体的に、ハイブリド−マは当初、血清入り培地(RPMI1640、15% FCS、100U/mlペニシリン。100μg/mlストレプトマイシン)で培養を行い、その後、継代時に血清入り培地に無血清培地{BD Cell(登録商標) MAb Serum−Free Medium、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン}を加えていき、無血清培地への馴化を図った。100%無血清培地での培養で増殖ができるようになった時点で、3x10細胞を専用培養槽CELLine(登録商標) CL−1000(BD社製)にて培養した。1週間毎にハイブリド−マの培養上清(〜15ml)を回収した。回収した培養上清について、Cleanascite(登録商標)(Biotech Support Group、LCC)を1/4量加えて10分間室温でやさしく震盪した後、2000rpmで遠心を行い、その上清を回収した。0.45μmフィルタ−で濾過した後、HiTrap Protein G HPカラム(GE社製)にて精製を行った。0.1M Glycine−HCl(pH2.7)にて溶出された抗体濃縮液は、Slide−A−Lyzer(登録商標) Dialysis Cassettes(PIERCE社製)にて透析(100倍量のPBS内にて、1時間x2、終夜x1)を行い、PBSに置換した。0.22μmフィルタ−で濾過滅菌を行った後、タンパク濃度をBCA Protein Assay(PIERCE社製)を用いて決定した。また、精製度については、SDS−PAGE法にて確認した。
クロ−ンK13−4(抗IL−17F抗体)、並びにクロ−ンK15−2及びK33−4(抗IL−17A抗体)の中和活性を、前記のIL−6産生誘導阻害を指標にして再評価した結果を、それぞれ、図21及び図22に示す。なお、以下の実験では、IL−17Aの中和抗体として、クロ−ンK15−2した。
(2)in vivo中和活性評価(腸管ポリ−プ形成阻害効果)
4ヶ月例のApcMin/+マウス(C57BL/6J背景)に対して、下記抗体を1回/週腹腔内投与を6回行い、最終投与1週間後に腸管を取り出しポリ−プ数を測定した。
・コントロ−ル・マウスIgG 0.5mg
・抗マウスIL−17A抗体(K15−2) 最初の2回0.4mg、その後0.2mg
・抗マウスIL−17F抗体(K13−4) 0.2mg
・抗マウスIL−17A抗体と抗マウスIL−17F抗体の両方
図23に示したとおり、抗IL−17F抗体を投与されたマウスでは、コントロ−ル・マウスに比べて3mm以上のポリ−プ数が減少していた。抗IL−17A抗体を投与した場合も同様な傾向が見られた。抗IL−17F抗体及び抗IL−17Aを組み合わせて投与した場合は、それぞれを単独で投与した場合よりも若干のポリ−プ数の減少が見られた。
ここにおいて、本発明者らは、大腸癌発症時における炎症性サイトカインIL−1ファミリ−分子や、IL−17ファミリ−分子は腫瘍形成促進に働いており、これらのサイトカインを抑制することで腫瘍形成を抑制出来ることを明らかにした。これらの結果から、癌の治療方法である外科療法、化学療法、放射線療法、免疫療法、に続く第5の治療方法として期待されている抗体療法のタ−ゲットとしてIL−1ファミリ−分子、IL−17ファミリ−分子、特にIL−17Fを新たに加えることが出来る。従って、本発明のIL−17F阻害剤を含む腸疾患治療用医薬組成物は、医薬品製造業分野等において利用可能である。

Claims (12)

  1. IL−17F阻害剤を含む腸疾患治療用医薬組成物。
  2. 前記IL−17F阻害剤が抗IL−17F抗体である、請求項1に記載の腸疾患治療用医薬組成物。
  3. IL−17A阻害剤と組み合わせて使用する、請求項1記載の腸疾患治療用医薬組成物。
  4. IL−17A阻害剤が抗IL−17A抗体であり、IL−17F阻害剤が抗IL−17F抗体である、請求項3に記載の腸疾患治療用医薬組成物。
  5. 前記腸疾患が、腸管内のポリプ又は癌である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の腸疾患治療用医薬組成物。
  6. 前記腸管内のポリプ又は癌が、大腸ポリプ又は大腸癌である、請求項5に記載の腸疾患治療用医薬組成物。
  7. 腸疾患を治療する方法であって、当該治療が必要な患者に対してIL−17F阻害剤の治療有効量を投与することを含む、腸疾患の治療方法。
  8. 前記IL−17F阻害剤が抗IL−17F抗体である、請求項7に記載の治療方法。
  9. 更に、IL−17A阻害剤の治療有効量と組み合わせてIL−17F阻害剤の治療有効量を投与することを含む、請求項7に記載の治療方法。
  10. IL−17A阻害剤が抗IL−17A抗体であり、IL−17F阻害剤が抗IL−17F抗体である、請求項9に記載の治療方法。
  11. 前記腸疾患が、腸管内のポリプ又は癌である、請求項7ないし10のいずれか一項に記載の治療方法。
  12. 前記腸管内のポリプ又は癌が、大腸ポリプ又は大腸癌である、請求項11に記載の治療方法。
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