JPWO2011096408A1 - 複合体微粒子およびその製造方法、ならびに該複合体微粒子を用いた薬学組成物 - Google Patents

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Abstract

生体内でその構造を非常に安定的に維持することができる複合体微粒子が提供される。本発明の複合体微粒子は、カチオン性ポリマーおよび核酸を含むコア粒子と;シリカで構成された、該コア粒子を被覆する被覆層と;を有する。好ましくは、コア粒子の直径に対する複合体微粒子の直径の比は、100%を超えて150%以下であり、かつ、中性のpH環境における複合体微粒子表面のζ電位は、−10mV〜−25mVである。

Description

本発明は、複合体微粒子およびその製造方法、ならびに該複合体微粒子を用いた薬学組成物に関する。
ポリカチオンと核酸とにより形成されるポリイオンコンプレックス(PIC)は、核酸を分解酵素から保護して細胞への取り込み効率を向上させることから、生体内での核酸デリバリーへの応用が広く検討されている(例えば、特許文献1)。しかし、このようなPICは、ポリカチオンの正電荷に起因して生体成分との非特異的相互作用を生じることがあり、その結果、PICが生体内でその構造を安定的に維持できない場合が多い、および、血餅または血栓を発生させることがあるという問題がある。
国際公開第2006/085664号パンフレット
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、生体内でその構造を非常に安定的に維持することができ、かつ、血餅または血栓の発生を顕著に抑制し得る複合体微粒子を提供することにある。
本発明の複合体微粒子は、カチオン性ポリマーおよび核酸を含むコア粒子と;シリカで構成された、該コア粒子を被覆する被覆層と;を有する。
好ましい実施形態においては、上記カチオン性ポリマーは、ポリアルギニン(PArg)、ポリリジン(PLys)、グアニジン化ポリリジン(PLys(G))、ポリ{N−[N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]アスパルタミド}(PAsp(DET))、ポリオルニチンおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される。
好ましい実施形態においては、上記核酸は、プラスミドDNA、アンチセンスDNAおよびsiRNAからなる群から選択される。
好ましい実施形態においては、上記被覆層の厚みは3nm〜25nmである。
好ましい実施形態においては、上記複合体微粒子の直径は50nm〜500nmである。
好ましい実施形態においては、上記複合体微粒子は、中性のpH環境における表面のζ電位が0mVより小さく−30mVまでである。
好ましい実施形態においては、上記コア粒子の直径に対する複合体微粒子の直径の比は、100%を超えて150%以下であり、かつ、複合体微粒子の中性のpH環境における表面のζ電位は−10mV〜−25mVである。
本発明の別の局面によれば、複合体微粒子の製造方法が提供される。当該製造方法は、カチオン性ポリマーと核酸とを混合し、コア粒子となる複合体を形成すること、および、該複合体とケイ酸塩溶液とを混合し、該複合体の表面にシリカで構成される被覆層を形成することを含む。
好ましい実施形態においては、上記核酸のアニオン性リン酸基に対する上記カチオン性ポリマーのカチオン性基のモル比は1より大きい。
好ましい実施形態においては、上記ケイ酸塩溶液の濃度は5mM〜60mMである。
本発明のさらに別の局面によれば、薬学組成物が提供される。当該薬学組成物は、上記の複合体微粒子と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、哺乳動物細胞への核酸の送達方法が提供される。当該方法は、上記の複合体微粒子を哺乳動物の細胞に接触させることを含む。
本発明によれば、カチオン性ポリイオンコンプレックスのコア粒子の表面にシリカで構成される被覆層を形成することにより、生体内でその構造を非常に安定的に維持することができ、かつ、血餅または血栓の発生を顕著に抑制し得る複合体微粒子を得ることができる。さらに、このような複合体微粒子は、細胞毒性が低く、トランスフェクション効率に優れているので、生体内の使用に好適であり得る。
本発明の好ましい実施形態による複合体微粒子の模式断面図である。 実施例の複合体微粒子調製後の時間に対するモノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの濃度の関係を示すグラフである。 実施例の複合体微粒子調製後の時間に対する相対光散乱強度の関係を示すグラフである。 実施例の複合体微粒子についてSi濃度に対する流体力学径の関係を示すグラフである。 実施例の複合体微粒子についてSi濃度に対するζ電位の関係を示すグラフである。 生理学的塩の状況下に置かれた実施例の複合体微粒子および比較例のポリイオンコンプレックスについて、時間に対する流体力学径の関係を示すグラフである。 実施例の複合体微粒子および比較例のポリイオンコンプレックスについて、アガロースゲル電気泳動の結果を示す画像である。 実施例の複合体微粒子について透析時間と電気泳動の結果との関係を示す画像である。 実施例の複合体微粒子および比較例のポリイオンコンプレックスについて、ルシフェラーゼ遺伝子発現の時間プロファイルを示すグラフである。 フローサイトメトリーの結果をCy5蛍光強度に対する細胞数の度数分布としてプロットしたグラフである。 比較例のポリイオンコンプレックスを添加してから24時間後に得られた細胞内分布の共焦点蛍光画像である。 実施例の複合体微粒子を添加してから24時間後に得られた細胞内分布の共焦点蛍光画像である。 図11Aおよび図11Bにおいて、遺伝子と後期エンドソームまたはリソソームが共局在化した割合について実施例と比較例とを比較して示すグラフである。 実施例の複合体微粒子についてpHとζ電位との関係を示すグラフである。 カチオン性ポリマーが異なるそれぞれの複合体微粒子とそれに対応するポリイオンコンプレックスについて、ルシフェラーゼ発現量を比較して示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、本明細書は、本願の優先権主張の基礎となる米国仮出願61/300,547号の明細書に記載の内容を包含する。さらに、本明細書において示されるすべての文書および刊行物は、その全体が本明細書に参考として援用される。
A.複合体微粒子の全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態による複合体微粒子の模式断面図である。複合体微粒子100は、コア粒子10とコア粒子10を被覆する被覆層20とを有する。コア粒子10は、カチオン性ポリマー11および核酸12を含む。代表的には、コア粒子10は、核酸とカチオン性ポリマーとの静電相互作用により形成されたポリイオンコンプレックス(PIC)である(以下、コア粒子をポリイオンコンプレックスとも称する場合がある)。コア粒子10においては、核酸は、好ましくはカチオン性ポリマーに内包されている。被覆層20は、シリカで構成されている。好ましくは、被覆層20は、コア粒子10の実質的に表面全体を被覆する。
複合体微粒子の直径は、好ましくは50nm〜500nmであり、さらに好ましくは50nm〜150nmである。複合体微粒子の直径がこのような範囲であれば、生体内において悪影響を与えることなく核酸を所望の部位に良好に送達することができる。複合体微粒子の直径は、コア粒子の直径および被覆層の厚みを調整することにより制御することができる。コア粒子の直径は、カチオン性ポリマーの分子量や濃度等を調整することにより制御することができる。被覆層の厚みは、後述の製造方法において、被覆層形成材料であるケイ酸塩の濃度を調整することにより制御され得る。
複合体微粒子表面のζ電位は、中性のpH環境(例えば、pH=7)において、好ましくは0mVより小さく−30mVまでであり、より好ましくは−5mV〜−25mVであり、さらに好ましくは−10mV〜−25mVであり、特に好ましくは−15mV〜−22mVである。言い換えれば、本発明の複合体微粒子は、その表面がアニオン性を有する。これは、(シリカで構成される)被覆層の性質に主として起因する。複合体微粒子表面がアニオン性を有することにより、生体内で微粒子の構造(形状)を安定的に維持することができる。より詳細には、生体内において、生理学的塩の存在に起因する凝集、および、アニオン性生体高分子(例えば、血清蛋白質)との相互作用による解離を顕著に抑制することができる。
1つの実施形態においては、複合体微粒子は、コア粒子の直径に対する複合体微粒子の直径の比が好ましくは100%を超えて150%以下であり、かつ、中性のpH環境における表面のζ電位が好ましくは−10mV〜−25mVである。直径の比は、さらに好ましくは107%〜120%である。ζ電位は、さらに好ましくは−15mV〜−22mVである。このような構成であれば、生体内で微粒子の構造(形状)をきわめて安定的に維持することができ、加えて、細胞内に良好に取り込まれ得る。
B.コア粒子
B−1.カチオン性ポリマー
上記カチオン性ポリマーとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて、正電荷(代表的には、カチオン性基)を有する任意の適切なポリマーが採用され得る。本発明に用いられ得るカチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリ(アミノ酸)、多糖類、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンまたはビニルポリマーをベースとする主鎖と、当該主鎖に直接結合または連結基を介して結合した式−NH−(CH−(NH(CH−NHで表される基(ここで、aおよびeはそれぞれ独立して1〜5の整数である)を含む側鎖とを有するポリマーあるいはその塩が挙げられる。本明細書において、「ポリ(アミノ酸)をベースとする主鎖」とは、天然もしくは合成のアミノ酸からのペプチド結合を介して形成されるポリアミノ酸の主鎖を意味する。「多糖類をベースとする主鎖」とは、例えば、DEAE−デキストラン、キトサンまたはポリガラクトサミンのような糖連鎖を意味する。「ビニルポリマーをベースとする主鎖」とは、不飽和エチレン性重合性モノマーの重合により形成される重合鎖を意味する。上記側鎖は、主鎖がポリ(アミノ酸)をベースとする場合には、例えば、ベーターまたはガンマー位に存在するカルボキシル基、ε−位のアミノ基等を介して主鎖に結合しており;主鎖が多糖類をベースとする場合には、糖部分のヒドロキシ基、アミノ基またはカルボキシル基を介して主鎖に結合しており;主鎖がビニルポリマーをベースとする場合には、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(アクリルアミド)、またはポリ(メタクリル酸)等のヒドロキシ基、アミド基またはカルボキシル基を介して主鎖に結合している。カチオン性ポリマーにおける主鎖と側鎖とは,例えば、炭素原子数22個までのアルキレン鎖を含む連結基(この連結基は1〜10個の酸素または硫黄で中断されていてもよい)を介して結合することができる。側鎖は、高分子反応により導入されてもよく、それ以外の反応により導入されてもよい。側鎖を導入する反応の代表例としては、ハロゲンに対する置換反応、カルボキシル基またはアミノ基を利用した縮合反応、エステルに対するエステル交換反応、あるいはアミノリシスが挙げられる。カチオン性ポリマーの別の代表例としては、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリシンデンドリマーまたはそれらの塩が挙げられる。
なお、本明細書においては、コア粒子を形成するという文脈における用語「カチオン性ポリマー」は、カチオン性の高分子物質のみならず、カチオン性脂質をも包含する。カチオン性脂質を用いる場合には、コア粒子はいわゆるリポプレックスとして形成される。PICおよびリポプレックスはいずれもカチオン性ナノ粒子であるので、両者ともに本発明の複合微粒子のコア粒子として良好に機能し得る。カチオン性脂質の代表例としては、〔N-[1-(2,3-Dioleoyloxy)propyl]-N, N, N-trimethylammonium
methyl-sulfate〕(DOTAP)が挙げられる。
カチオン性ポリマーとして塩を用いる場合、当該塩を形成する対イオンとしては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、任意の適切な陰イオンを採用することができる。対イオンとしては、例えば、Cl、Br、I、(1/2SO、NO3、(1/2CO、(1/3PO、CHCOO、CFCOO、CHSO 、またはCFSO が挙げられる。
カチオン性ポリマーの分子量としては、本発明の目的を達成できる限り任意の適切な分子量を設定できる。カチオン性ポリマーの分子量は、代表的には1000〜200000である。
本発明に用いられるカチオン性ポリマーは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記のカチオン性ポリマー由来のセグメントと非イオン性親水性ポリマー由来のセグメントとを有するブロックコポリマーであってもよい。非イオン性親水性ポリマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)およびポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)が挙げられる。なお、これらの非イオン性親水性ポリマーと上記のようなカチオン性ポリマーとのブロック共重合は当業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。
1つの実施形態においては、カチオン性ポリマーは、下記一般式(I)で表されるポリ(アミノ酸)をベースとする主鎖を有するポリマーまたはその塩である。
式(I)において、R10は、水酸基、オキシベンジル基または−NH−R11基を表し、ここでR11は未置換または置換された直鎖もしくは分枝のC1−20アルキル基を表し;R2aおよびR2bは、それぞれ独立して、メチレン基またはエチレン基を表し;Rは、水素原子、保護基、疎水性基または重合性基を表し;R5aおよびR5bは、それぞれ独立して、水酸基、オキシベンジル基、または−NH−(CH−X基を表し、ここでaは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミンまたは四級アンモニウム塩の内の一種類または二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基であるが、R5aとR5bの総数のうち、−NH−(CH−X基であり、かつXが(NH(CH−NH(eは1〜5の整数である)であるものが少なくとも2つ以上存在し;R6aは、それぞれ独立して、水素原子または保護基であり、ここで保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基またはトリフルオロアセチル基であり;pは1〜5の整数、より好ましくは3〜4の整数であり;nは2〜1,000の整数であり、yは0〜1,000の整数であり、zは0〜1,000の整数であるが、y+zはn以下である。また、上記の一般式における各繰り返し単位の配列順序は便宜上ブロック共重合体の形態で示しているが、各繰り返し単位の配列順序は特に限定されず、ブロック共重合体の形態であってもよく、交互共重合体の形態であってもよく、ランダム共重合体の形態であってもよい。
上記式(I)において、R11のC1−20アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基またはイコサニル基が挙げられる。当該アルキル基が置換された場合の置換基としては、例えば、アセタール化ホルミル基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−7アシルアミド基、同一もしくは異なるトリ−C1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基またはシリルアミノ基が挙げられる。ここで、アセタール化とは、ホルミル基のカルボニル部分とアルカノールの2分子またはアルキレンジオールとの反応によりアセタール部分を形成することを意味し、当該カルボニル部分の保護方法でもある。アルカノールとしては、例えば、炭素数1〜6個のアルカノールが挙げられる。アルキレンジオールとしては、例えば、炭素数2〜6個の直鎖状または分岐状のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、置換基がアセタール化ホルミル基であるときは、酸性の温和な条件下で加水分解して他の置換基であるホルミル基(−CHO:またはアルデヒド基)に転化できる。ホルミル基、あるいはカルボキシル基またはアミノ基は、これらの基を介して、抗体またはその特異結合性を有する断片(例えば、F(ab′)、F(ab))を結合し、標的指向性およびその他の種々の機能性をカチオン性ポリマーに付与するのに利用できる。
上記式(I)において、R5aとR5bの総数のうち、−NH−(CH−X基であり、かつXが(NH(CH−NH(eは1〜5の整数である)であるものは、好ましくは50%以上、さらに好ましくは85%以上存在する。また、上記式(I)において、R5aおよびR5bのすべてまたは一部が−NH−(CH−X基であり、aが2であり、かつeが1であるポリマーが好ましい。さらに、上記式(I)において、R2aおよびR2bがメチレン基であるポリマーも好ましい。
1つの実施形態においては、上記式(I)のR5aおよび/またはR5bにおけるXは、好ましくは以下の化学式で表される基である:
ここで、Xは、水素原子あるいはC1−6アルキル基またはアミノC1−6アルキル基を表し;R7a、R7bおよびR7cは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;d1、d2およびd3は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;e1、e2およびe3は、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し;fは0〜15の整数を表し;R8aおよびR8bは、それぞれ独立して、水素原子または保護基を表し、ここで保護基はR6aについて上述したとおりであり;gは0〜15の整数を表す。この場合、より好ましくは、式(I)中のzは0(ゼロ)であり、および/または、Rはアセチル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
特に好ましいカチオン性ポリマーの具体例としては、ポリアルギニン(PArg)、ポリリジン(PLys)、グアニジン化ポリリジン(PLys(G))、ポリ{N−[N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]アスパルタミド}(PAsp(DET))、ポリオルニチンまたはポリエチレンイミンが挙げられる。
B−2.核酸
本発明に用いられる核酸としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な核酸または核酸関連物質が採用され得る。より具体的には、カチオン性ポリマーとともにコア粒子(実質的にはPICまたはリポプレックス)を形成することができ、動物細胞に送達された際に細胞に対して何らかの作用を及ぼし得る核酸または核酸関連物質が採用され得る。化学構造により分類すると、オリゴマーまたはポリマーの範疇に属するDNA、RNAおよび核酸アナログ(例えば、ペプチド核酸、核酸のリン酸部が例えばホスホロチオエート、メチルホスホナート、ホスフェートトリエステル、ホスホロアミデート等に改変されている核酸アナログ)が包含される。機能により分類すると、遺伝情報を担うものまたはアンチセンスの範疇に属するあらゆる分子が包含される。本発明に用いられる核酸の好ましい具体例としては、プラスミドDNA、アンチセンスDNAまたはsiRNAが挙げられる。
コア粒子中の核酸の含有量は、カチオン性ポリマー中のカチオンと核酸分子内のリン酸基との比率(N/P比)で表すことができる。N/P比は、次式によって定義される:
N/P比=〔カチオン性ポリマー中のカチオンの総数〕/〔核酸中のリン酸基の総数〕
本発明においては、N/P比は、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.1〜20である。N/P比を1より大きくすることにより(すなわち、カチオンを過剰とすることにより)、表面が正電荷を有するコア粒子(PICまたはリポプレックス)を安定して形成することができる。その結果、コア粒子表面でのケイ酸の縮合反応、すなわちシリカの形成を促進することができる。一方で、N/P比が大きすぎると、溶液中にフリーで(すなわち、核酸と結合せずに)存在するカチオン性ポリマー量が増大し、これがケイ酸の縮合反応を促進した場合、溶液がゲル化して複合体微粒子が得られない場合がある。N/P比は、後述の製造方法において、核酸とカチオン性ポリマーとを混合する際に、核酸のアニオン性リン酸基とカチオン性ポリマーのカチオン性基とのモル比を調整することにより制御することができる。
B−3.コア粒子の全体的特徴
コア粒子(代表的には、PICまたはリポプレックス)は、上記カチオン性ポリマーと上記核酸とを混合することにより、これらの静電相互作用により自発的に形成され得る。上記所定のN/P比に設定することにより、特別な物理的および/または化学的な処理を行うことなく、コア粒子を良好に形成することができる。
コア粒子の直径は、好ましくは20nm〜500nmであり、さらに好ましくは40nm〜150nmである。コア粒子の直径がこのような範囲であれば、上記所望の直径を有する複合体微粒子を得ることができる。上記のとおり、コア粒子の直径は、カチオン性ポリマーの分子量等を調整することにより制御することができる。
コア粒子表面のζ電位は、中性のpH環境(例えば、pH=7)において、好ましくは5mV〜40mVである。言い換えれば、コア粒子は、その表面がカチオン性を有する。このような性質を有することにより、コア粒子がPICとして簡便かつ安定的に形成され得る。
C.被覆層
被覆層20は、上記のとおりシリカで構成される。より詳細には、被覆層は、−Si−O−結合による網目構造を有する。被覆層を形成することにより、コア粒子のカチオン性ポリマーの露出を防止することができる。さらに、被覆層を構成するシリカの静電的性質に起因して、複合体微粒子表面をアニオン性とすることができる。その結果、複合体微粒子と生体成分との非特異的相互作用を防止し、生体内で微粒子の構造(形状)を安定的に維持することができる。より詳細には、生体内において、生理学的塩の存在に起因する凝集、および、アニオン性生体高分子(例えば、血清蛋白質)との相互作用による解離を顕著に抑制することができる。
一方で、被覆層を構成するシリカは、以下の平衡状態を有する:
SiO + 2HO ⇔ Si(OH)
ここで、生体内においては、遊離のケイ酸(Si(OH))が実質的に存在しない。このことに起因して、被覆層を構成するシリカ(SiO)の上記平衡状態は、生体内では右側にずれてシリカが徐々にケイ酸となる。したがって、生体内の投与前および投与後の血液中で維持されていたシリカの網目構造が細胞内に代表される希釈環境下では崩壊し、被覆層は徐々に消失する。その結果、本発明の複合体微粒子は、血液中では核酸を内包した形態を安定して維持することができ、かつ、細胞に取り込まれた後は、核酸を徐々に放出することができる。
被覆層20の厚みは、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは3nm〜25nmであり、さらに好ましくは5nm〜15nmである。被覆層の厚みが3nm未満である場合には、コア粒子の表面全体を被覆できず、コア粒子の表面の一部が露出する場合がある。その結果、露出したカチオン性ポリマーの正電荷による生体成分との非特異的相互作用を生じる場合があり、微粒子の構造を生体内で安定的に維持できない場合がある。被覆層の厚みは、後述の製造方法において、被覆層形成材料であるケイ酸塩の濃度を調整することにより制御され得る。また、被覆層20の厚みは、上記コア粒子の直径に対して、好ましくは1%〜50%であり、さらに好ましくは3%〜20%である。
D.薬学組成物
本発明の薬学組成物は、上記A項〜C項に記載の複合体微粒子と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む。薬学的に許容可能なキャリアとしては、目的とする投与形式に応じて任意の適切なキャリアが採用され得る。具体例としては、希釈剤、賦形剤、精製水、脱イオン水、等張剤、pH調整剤、緩衝液、単糖、オリゴ糖、糖アルコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。投与形式の具体例としては、標的細胞または組織の近傍または組織内への直接導入または移植,静脈内注入、動脈内注入、筋肉内注入、経口投与、経肺投与が挙げられる。薬学組成物中の複合体微粒子の含有量は、目的、キャリアの種類、投与形式等に応じて適切に設定され得る。
E.複合体微粒子の製造方法
本発明の複合体微粒子の製造方法は、カチオン性ポリマーと核酸とを混合し、コア粒子となる複合体を形成すること、および、該複合体とケイ酸塩溶液とを混合し、該複合体の表面にシリカで構成される被覆層を形成することを含む。本発明の製造方法においては、まず、コア粒子となる複合体(代表的には、PICまたはリポプレックス)を形成する。上記B項に記載のカチオン性ポリマーと核酸とを混合することにより、これらの静電相互作用によりコア粒子が自発的に形成され得る。混合は、代表的には、核酸およびカチオン性ポリマーがHepes緩衝液中の希薄溶液の状態で行われる。核酸およびカチオン性ポリマーを希薄溶液の状態で(すなわち、低濃度で)混合することにより、静電相互作用を介してナノ−マイクロスケールのコア粒子が得られる。混合の際の核酸のアニオン性リン酸基に対するカチオン性ポリマーのカチオン性基のモル比は、好ましくは1より大きく、さらに好ましくは1.1〜20である。リン酸基に対するカチオン性基のモル比を1より大きくすることにより(すなわち、カチオンを過剰とすることにより)、特別な物理的および/または化学的な処理を行うことなく、表面が正電荷を有するコア粒子(PIC)を安定して形成することができる。なお、当該モル比は、コア粒子のN/P比に対応する。
次に、形成されたコア粒子(PIC)とケイ酸塩溶液とを混合する。当該混合により、以下に模式的に示すケイ酸塩の縮合反応によって、シリカの網目構造が形成される。特に、ケイ酸塩のケイ酸イオン(アニオン)とコア粒子の表面の電荷(カチオン)との静電相互作用および水素結合に起因した局所(コア粒子表面での)濃縮を通じて、当該縮合反応は、主としてコア粒子表面で進行する。したがって、シリカの網目構造は、主としてコア粒子表面に形成され、結果として、被覆層がコア粒子表面に形成される。
シリカ源のケイ酸塩としては、シリカ網目構造を有する被覆層が適切に形成される限りにおいて任意の適切なケイ酸塩が用いられ得る。ケイ酸塩の代表例としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムが挙げられる。
コア粒子とケイ酸塩(実質的には、ケイ酸イオン)との混合もまた、代表的には、Hepes緩衝液中の希薄溶液の状態で行われる。当該混合の際のケイ酸塩溶液の濃度(すなわち、Si濃度)は好ましくは0.1mM〜60mMであり、さらに好ましくは5mM〜30mMである。このように非常に薄い濃度領域で混合することにより、縮合反応が非常に良好に進行し、かつ、所望の厚みの被覆層が得られ得る。さらに、このような濃度領域においては、得られる複合体微粒子表面のζ電位がSi濃度によらず所望の値でほぼ一定となる。溶液中のSi濃度が低すぎると、コア粒子の表面の一部が露出し、生体内で複合体微粒子の形状が安定的に維持できない場合がある。また、溶液中のSi濃度が5mM未満である場合には、Si濃度に依存して複合体微粒子表面のζ電位が変化し得る。この場合、複合体微粒子表面のζ電位がゼロ(ニュートラル)となるSi濃度が存在し得る。ζ電位がゼロ近辺の複合体微粒子は、静電反発の減少により凝集を起こす場合がある。一方で、溶液中のSi濃度が高すぎると、コア粒子の存在とは関係なくケイ酸塩溶液がゲル化する場合がある。
以上のように、本発明の複合体微粒子の製造方法によれば、特別な物理的および/または化学的な処理を行うことなく、単純な混合操作のみで複合体微粒子を製造することができる。上記から明らかなように、本発明の複合体微粒子は、通常、液状組成物の形態で得られ得る。得られた複合体微粒子は、任意の適切な単離・精製方法により反応系から回収されてもよい。単離・精製方法の具体例としては、限外濾過、ダイアフィルトレーション、透析が挙げられる。上記単離および精製された複合体微粒子は、例えば、溶液状態のまま滅菌処理し、必要に応じて任意の適切な注射剤用助剤を添加して注射剤としてもよく、溶液を濃縮後、例えば凍結乾燥して、固体状の微小粉体としてもよい。複合体微粒子を微小粉体とする場合には、薬学的に許容されるキャリアと配合して、種々の投与形式に適合する剤形に加工することができる。本発明の複合体微粒子を用いた薬学組成物は、上記D項で説明したとおりである。
F.哺乳動物細胞への核酸の送達方法
本発明の哺乳動物細胞への核酸の送達方法は、上記本発明の複合体微粒子を哺乳動物の細胞に接触させることを含む。すなわち、本発明の複合体微粒子または当該複合体微粒子を含む組成物が、細胞または組織と接触し得る状態におかれればよい。このような接触としては、複合体微粒子の存在下で細胞を培養してもよく、細胞の培養物中に複合体微粒子を添加してもよい。また、生体内の細胞または組織と複合体微粒子の接触は、遺伝療法等の当該技術分野で常用されている投与方法により、複合体微粒子(実質的には核酸)の導入を必要とする個体に投与すればよい。このような個体としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタ、鳥類が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
<材料>
実施例で用いた材料は以下のとおりである:
ポリアルギニン(PArg、Mw=5,000〜15,000)、ケイ酸ナトリウム溶液(試薬グレード)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、およびトリプシン−エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)溶液は、Sigma−Aldrich社から購入した。
Hepes緩衝液は、殺菌された1Mのもの(pH=7.3)をAmresco社から購入し、蒸留水で希釈して用いた。
プラスミドDNA(pDNA)は、理化学研究所から購入し、E.Coli DH5αコンピテントセル中で増幅し、次いで、HiSpeed Plasmid Maxi Kit(QIAGEN Science社製)を用いて精製して用いた。用いたpDNAは、レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ、プロモーターとしてCAG配列が組み込まれている。
デキストラン硫酸ナトリウム(Mw=5000)およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、和光純薬から購入した。
すべての培養プレートおよび培養皿は、Becton Dickinson Labwareから購入した。
Huh−7細胞は、理化学研究所Cell Bankから得た。
ウシ胎児血清(FBS)は、大日本住友製薬から購入した。
ルシフェラーゼの基質としてのルシフェリンは、住商ファーマインターナショナルから購入した。
<実施例1:複合体微粒子の調製>
ヌクレオチドのリン酸骨格に対して高い親和性を有し、かつ、静電相互作用および水素結合によりケイ酸ナトリウムに対して高い縮合能力を有するという理由で、pArgをカチオン性ポリマーとして選択した。ポリアルギニン(PArg)を、5mg/mLの濃度で、10mMのHepes緩衝液(pH=7.3)中に溶解した。このポリマー溶液を0.23mg/mLまで希釈した後、10mMのHepes中の130μg/mLのpDNA溶液と混合し、最終のpDNA濃度を86.7μg/mLとした。リン酸ユニットに対するArgユニットのモル比(N/P比)を1.5に調整することにより、わずかに過剰のカチオン性電荷を有するコア粒子(ポリイオンコンプレックス:PIC)が得られた。動的光散乱(DLS)およびζ電位測定によれば、得られたPICは約100nmの直径で、10mM Hepes緩衝液(pH=7.3)中で約30mVの正のζ電位を有していた。このPICは、10mM Hepes緩衝液(pH=7.3)中で十分なコロイド安定性を有していた。調製から30分後、PIC溶液を、10mMのHepes緩衝液(pH=7.3)中でケイ酸ナトリウム溶液(Si濃度=0.5mM)と混合し、43.3μg/mLの最終pDNA濃度を得た。このようにして、コア粒子がシリカ被覆層で被覆された複合体微粒子を得た。
<実施例2〜8:複合体微粒子の調製>
ケイ酸ナトリウム溶液のSi濃度を、それぞれ、1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、30mMおよび60mMとしたこと以外は実施例1と同様にして、コア粒子がシリカ被覆層で被覆された複合体微粒子を得た。
<比較例1:ポリイオンコンプレックスの調製>
実施例1で得られたPICをケイ酸ナトリウム溶液と混合することなくそのまま用いた。
なお、簡略化のため、以下の記載においては、実施例のシリカ被覆された複合体微粒子をSCポリプレックス(例えば、Si濃度=5mM)と略記し、比較例のシリカ被覆されていないポリイオンコンプレックスをNSCポリプレックスと略記する場合がある。
<評価>
A.被覆層形成の確認
(1)モノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの定量
得られたSCポリプレックス(Si濃度=30mM)溶液について、モリブデン黄色法(molybdosilication method)を用いて、溶液中のモノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーを定量した。この方法においては、黄色に着色したケイモリブデン酸(HSi(Mo)の形成により、モノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの量を決定することができる。具体的には、調製後の異なる時点で、SCポリプレックス(Si濃度=30mM)の溶液20μLを、180μLの10mM Hepes緩衝液(pH=7.3)で希釈した。希釈した溶液を直ちに0.1g/mLのヘプタモリブデン酸(10μL)および1M塩酸(10μL)と混合した。混合物を30分間放置した後、ND−1000分光光度計(NanoDrop Technologies社製)を用いて400nmで吸光度測定を行った。光学密度(OD)を、ポリプレックスを有さないケイ酸ナトリウム溶液の初期ODに対する値に変換し、モノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの濃度とした。調製後の時間に対するモノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの濃度の関係を示すグラフを図2に示す。
図2から明らかなように、モノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの濃度は、混合から時間が経過するにつれて減少し、混合後約4時間(240分)でプラトー状態に達した。このことから、コア粒子のPIC溶液と希釈ケイ酸ナトリウム溶液とを混合することにより、ケイ酸ナトリウム溶液の主要成分であるモノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーは、カチオン性ポリマーの存在下で効率的に縮合し、不溶性の(網目構造を有する)シリカを形成していることが示唆される。
(2−1)静的光散乱(SLS)
Zetasizer Nanoseries(Malvern Instruments社製)を用いて、検出角度173°および温度25℃でSLS測定を行った。入射ビームとしてHe−Neレーザー(633nm)を用いた。調製後の異なる時点で、SCポリプレックス(Si濃度=30mM)の溶液(43.3μg/mLのpDNA)を小さなガラスキュベット(容量12μL、ZEN2112、Malvern Instruments社製)に加えた。各試料から得られた光子計数を、初期値に対する相対光散乱強度(SLI)に変換した。調製後の時間に対する相対光散乱強度の関係を示すグラフを図3に示す。図3から明らかなように、相対SLIは粒子サイズに対応するところ、混合から2時間にわたって徐々に増加し、図2に示すケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーの濃度と大まかな相関関係を示す。この結果からも、所定の厚みの被覆層が形成されていることが示唆される。図2および図3の結果から、被覆層の形成は、SCポリプレックス調製後2〜4時間で飽和状態となることが示唆される。
(2−2)動的光散乱(DLS)
SLSと同じ装置を用いてDLS測定を行った。調製から2〜3時間後、pDNA濃度が43.3μg/mLで、実施例で得られた異なるSi濃度を有するSCポリプレックス溶液および比較例で得られたNSCポリプレックス溶液を、SLS測定と同様にして上記のキュベットに加え、次いで測定した。光子相関関数における減衰レートから得られたデータをキュムラント法により分析し、次いで、Stokes−Einsteinの式により、ポリプレックスの流体力学径を計算した。塩誘導されたポリプレックスの凝集をモニターするために、各々のポリプレックス溶液を等体積の300mM NaCl溶液(10mM Hepes緩衝液(pH=7.3)中)と混合し、混合直後にDLS測定を行った(最終pDNA濃度:21.7μg/mL)。Si濃度に対する流体力学径の関係を示すグラフを図4に示す。
次に、実施例で得られたSCポリプレックス(Si濃度=10mM、20mMおよび30mM)について、DLS測定を行い、粒子の直径を調べた。結果を後述のζ電位測定の結果と併せて表1に示す。
(3)ζ電位測定
実施例で得られた異なるSi濃度のSCポリプレックスおよび比較例で得られたNSCポリプレックスについて、Zetasizer Nanoseriesを用いて、検出角度173°および温度25℃でζ電位測定を行った。入射ビームとしてHe−Neレーザー(633nm)を用いた。各々のポリプレックス溶液を、ζ電位測定用キャピラリーセル(Malvern Instruments社製)に注入した。下記のSmoluchowskiの式により、得られた電気泳動移動度からζ電位を計算した。
ζ=4πην/ε
ここで、ηは溶媒の粘度であり、νは電気泳動移動度であり、εは溶媒の誘電定数である。Si濃度に対するζ電位の関係を示すグラフを図5に示す。
表1ならびに図4および5から、コア粒子表面にアニオン性の被覆層が形成されていることがわかる。より詳細には、表1および図5から明らかなように、Si濃度が5mMまでは濃度が増加するにつれてζ電位は劇的に減少し、それ以上の濃度では約−20mVという負の値で一定化している。上記のとおりコア粒子としてのPIC(NSCポリプレックスに相当する)のζ電位は約+30mVであるから、このような負のζ電位は、コア粒子表面がアニオン性のシリカ層で被覆されたことを示している。さらに、表1および図4から明らかなように、Si濃度が5mMを超えると、SCポリプレックスは、NSCポリプレックスに比べて粒子径が8〜10nm大きくなっている。このことから、形成された被覆層の厚みは4〜5nm程度であることがわかる。なお、Si濃度が0.5〜2mMのSCポリプレックスについては、粒子径が劇的に増大している。これは、このような濃度範囲においてSi濃度が変化することによりSCポリプレックスのζ電位が正からゼロ(ニュートラル)へと変化することに伴い、SCポリプレックス間の静電反発が減少することにより凝集が誘発されたと推定される。
B.複合体微粒子の安定性
(4)コロイド安定性試験
SCポリプレックス(Si濃度=30mM)およびNSCポリプレックスについて、塩誘導凝集に対するコロイド安定性を調べた。具体的には、150mM NaClの生理学的塩の状況下でDLS測定を行い、流体力学径を調べた。時間に対する流体力学径の関係を示すグラフを図6に示す。図6から明らかなように、NSCポリプレックス(○)は時間とともに徐々に凝集した。凝集は、塩の存在によりNSCポリプレックス間の静電反発が減少したことによることが明らかである。一方、SCポリプレックス(□)は凝集が完全に防止され、生理学的塩の状況下で高いコロイド安定性を示した。このような優れたコロイド安定性は、複合体微粒子を生体内に適用した場合に血液中などでの凝集を防止し、結果として、血餅および血栓の発生を抑制し得る。このことから、SCポリプレックス(本発明の複合体微粒子)は、in vivo用途において有望であり得ることが示唆される。
(5)アガロースゲル電気泳動
ポリアニオンに誘発されるポリプレックスの解離に対する被覆層の抑制能力を調べた。具体的には、SCポリプレックスの安定性を、ポリアニオンとしてのデキストラン硫酸(Mw=5000)との交換反応に起因するポリプレックスからのpDNAの放出により評価した。SCポリプレックス溶液(5μL)をデキストラン硫酸溶液(170μg/mL、15μL)と混合し、室温で終夜放置した。217ngのpDNAを含む各試料溶液を、1.7mMの酢酸ナトリウムを含む3.3mM Tris−酢酸の電気泳動用緩衝液に浸した0.9wt%アガロースゲル上で、100Vで1時間電気泳動した。臭化エチジウム(EtBr;0.5mg/L)を含む蒸留水にゲルを浸漬することにより、移動したpDNAを視覚化した。結果を図7に示す。図7から、シリカ被覆層を形成することにより、ポリアニオンの添加によって誘発されるpDNAの放出(ポリプレックスの解離)が抑制されていることが明らかである。より詳細には、pDNAの放出が、Si濃度5mM以上で完全に抑制されている。この結果は、図5の結果とも整合性が取れている。このことから、シリカ被覆層を形成する場合には、シリカ源としてのケイ酸塩溶液のSi濃度は5mM以上であることが好ましいと推定される。
C.複合体微粒子の生物学的性能
(6)透析と拡散放出特性との関係
透析されたSCポリプレックスの核酸放出特性を調べた。すなわち、透析によりモノマー性ケイ酸および分子量の小さいシリカオリゴマーを除去してシリカ被覆層の脱被覆(ポリプレックスの解離)を促進し、そのような状態での核酸放出特性を調べた。ここで、水和シリカとケイ酸との間には平衡(SiO + 2HO ⇔ Si(OH))が存在するので、透析により遊離ケイ酸(コア粒子を被覆するシリカ層から生成される)を除去することにより、シリカの脱被覆プロセス(シリカ被覆層の消失)が促進される。具体的には、調製から2時間後のSCポリプレックス(Si濃度=30mM)溶液を、Spectra/Por Biotech Cellulose Ester Dialysis Membrane(MWCO=10,000、Spectrum Laboratories社製)透析膜を用いて、500倍の過剰体積の10mM Hepes緩衝液(pH=7.3)に対して時間を変化させて透析した。透析によるシリカの脱被覆プロセスを確認するために、ポリアニオン添加によるポリプレックスの解離挙動評価(ゲル電気泳動)、モリブデン黄色法およびζ電位測定を上記と同様の手順で行った。ゲル電気泳動の結果を図8に示す(対照として、透析しないNSCポリプレックスの結果を併せて示す)。図8から、長時間の透析により、SCポリプレックスからのpDNAの放出が促進されることがわかる。より詳細には、24時間の透析後には、SCポリプレックスは、NSCポリプレックスに類似したpDNA放出を示した。一方、透析時間が4時間未満である場合には、pDNAの放出は認められなかった。この結果は、モリブデン黄色法により決定された遊離ケイ酸/分子量の小さいシリカオリゴマー濃度(図2)と整合性が取れている。4時間の透析後、透析前に溶液中に存在した遊離ケイ酸/分子量の小さいシリカオリゴマーのうちの50%は溶液中に残っていたが;終夜の透析後には透析前の5%以下にまで減少した。上記の結果から、SCポリプレックス(本発明の複合体微粒子)は、細胞内で被覆層が効率的に崩壊して核酸を放出し、効率的な遺伝子発現を実現し得ることが示唆される。
(7)In vitroトランスフェクション効率
SCポリプレックスの生物学的性能を決定するために、SCポリプレックスのIn vitroトランスフェクション効率の時間依存性を、AB−2550 Kronos Dio(アトー社製)を用いて測定した。この装置は、ルシフェラーゼが導入された細胞からの発光を10分毎に測定できる。Huh−7細胞を35mmシャーレに播種した(10%FBSを含むDMEM 2mL中に20000細胞/ウェル)。24時間培養した後、培地を、10%FBSおよび100μMルシフェリンを含む新鮮な培地(基質)と交換した。次いで、5μgのpDNAを含み、Si濃度が異なるSCポリプレックス溶液(調製から2時間後)をそれぞれ細胞に加え、続いて、Kronos装置を用い、製造者のプロトコルにしたがって発光測定を行った。図9は、Si濃度が異なるSCポリプレックスおよびNSCポリプレックスを用いたルシフェラーゼ遺伝子発現の時間プロファイルを示す。NSCポリプレックスを用いた場合、ルシフェラーゼ発現はNSCポリプレックス投与から4時間後に検出され、当該発現は投与後12時間でプラトー状態に到達した。すべてのSCポリプレックスはトランスフェクション活性を示した。このことから、媒体および/または細胞内部でシリカ被覆層の脱被覆(網目構造の崩壊による被覆層の消失)が起こり、そのことにより、内包されたpDNAがポリプレックスから放出されたことが示唆される。Si濃度が5mM以上のシリカ被覆層を形成することにより、Si濃度に依存してポリプレックスのトランスフェクション効率が明らかに改善されている。Si濃度30mMのSCポリプレックスは、NSCポリプレックスに比べて1けた以上大きいトランスフェクション効率を示した。Si濃度が低い(0.5mM〜2mM)SCポリプレックスについては、トランスフェクション効率はNSCポリプレックスより低くなっている。これは、図4に示すような大きな凝集体(>1μm)の形成に関連すると推定される。なお、SCポリプレックスは、Si濃度にかかわらず、被覆層の形成によりその構造の安定化に寄与できる。
(8)細胞による複合体微粒子の取り込み(フローサイトメトリー)
細胞によるポリプレックスの取り込みを、フローサイトメーターLSR II(Becton Dickinson Labware社製)とCy5標識化されたpDNAとを用いて決定した。Label IT Cy5 Labeling Kit Full Sizeを用い、製造者プロトコルにしたがって、pDNAをCy5で標識化した。Huh−7細胞を6ウェル培養プレートに播種し(10%FBSを含むDMEM 2mL中に100000細胞/ウェル)、続いて終夜インキュベートした。NSCポリプレックスおよびSC(Si濃度=30mM)ポリプレックスを、それぞれ、上記と同様にして標識化されたpDNAを用いて調製した(最終Cy5−pDNA濃度:43.3μg/mL)。調製から2時間後、5μgのpDNAを含む各ポリプレックスを、培養されたHuh−7細胞に添加した。1時間インキュベートした後、培地を取り除き、細胞をPBSで3回洗浄した。細胞をトリプシン−EDTA溶液でさらに洗浄し、37℃で数分間インキュベートした後、PBS中で懸濁した。He−Neレーザー(633nm)を備えたLSR IIを用いて、各細胞を分析した。5000個の細胞について得られた結果をCy5蛍光強度に対する細胞数の度数分布としてプロットしたグラフを図10に示す。興味深いことに、トランスフェクション効率が高いにもかかわらず、SCポリプレックスのCy5蛍光強度(3つの試料の平均値:2400±400)はNSCポリプレックス(3つの試料の平均値:8400±600)よりも低い。このことは、ポリプレックスの細胞内取り込みがシリカ被覆層の形成により減少したことを示している。シリカ層の負電荷により、ポリプレックスを形成するポリカチオンと細胞膜との静電相互作用が抑制され、細胞内取り込みが減少したと考えられる。一方、SCポリプレックスが細胞内取り込みは少ないにもかかわらずルシフェラーゼ発現を促進したという事実は、このようなルシフェラーゼ発現が細胞内に取り込まれた後の細胞内動態に関連することを示唆している。
(9)共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)による複合体微粒子の細胞内分布の観察
NSCおよびSC(Si濃度:30mM)ポリプレックスの細胞内動態(特にエンドソーム脱出)をCLSMにより比較した。具体的には、pDNAをCy5(赤色)で標識化し、後期エンドソーム/リソソームをLysoTRacker(緑色)で染色した。したがって、後期エンドソーム/リソソームと共に局在化したpDNAは黄色として観察される。詳細な実験手順は以下のとおりである。Huh−7細胞(50000細胞)を35mmガラスシャーレに播種し、10%FBSを含むDMEM 2mL中で終夜培養した。翌日、培地を新鮮な培地(2mL)と交換し、Cy5で標識化されたpDNA 5μgを含むポリプレックス溶液を、ガラスシャーレに添加した。24時間培養した後、培地を取り除き、細胞をPBSで3回洗浄した。酸性後期エンドソームおよびリソソームをLysoTracker Green(Molecular Probes社製)で染色した後、ポリプレックスの細胞内分布をCLSMにより観察した。CLSM観察は、63倍対物レンズ(C−Apochromat、Carl Zeiss社製)を備えたLSM510(Carl Zeiss社製)を用いて、LysoTracker Green(緑色)については励起波長488nm(Arレーザー)で、Cy5(赤色)については励起波長633nm(He−Neレーザー)でそれぞれ行った。図11Aおよび図11Bは、それぞれ、NSCおよびSC(Si濃度:30mM)ポリプレックスを添加してから24時間後に得られた共焦点蛍光画像を示す。図11Aに比べて、図11Bは黄色の領域が顕著に少なく、ほとんど観察されなかった。このことは、シリカ被覆層の形成により後期エンドソーム/リソソームに取り込まれたポリプレックス画分が減少したことを示している。さらに、蛍光画像を定量的に分析し、共に局在化した割合を以下のように計算した:
共に局在化した割合(%)=(黄色の画像数/赤色および黄色の画像数)×100
結果を図11Cに示す。図11Cに示すように、SCポリプレックスは、NSCポリプレックスと比較して、顕著に低い後期エンドソーム/リソソームとの共局在化を示す。この結果は、シリカ被覆層の形成がポリプレックスのエンドソーム脱出を促進し、トランスフェクション効率を高めることを強く示唆している。エンドソーム脱出が促進されるにもかかわらずSCポリプレックスにおいて遺伝子発現の開始の遅延(図9)が見られたことから、細胞内でのポリプレックス表面のシリカ層の崩壊に要する時間に対応し、SCポリプレックスからのpDNAの放出には時間がかかり得ることが示唆される。
エンドソームの酸性環境においては、シリカ層はプロトン化されて以下の平衡状態にあると推定される:
SiO + H ⇔ SiOH
実際、図12は、pH(シリカのプロトン化に対応する)が減少するにしたがってSCポリプレックスのζ電位が増加することを明確に示している。エンドソームでのシリカのプロトン化により、エンドソーム膜を介したナトリウムイオンの放出と塩化物イオンを伴うプロトンの流入とが誘導され、その結果、エンドソーム内浸透圧が増大し、エンドソーム膜を崩壊させると推定される(プロトンスポンジ効果)。
(10)細胞毒性アッセイ
NSCおよびSC(Si濃度=30mM)ポリプレックス溶液について、種々の時間での細胞生存率を調べることにより細胞毒性を評価した。可溶性テトラゾリウム塩(WST−8)を含むCell Counting Kit−8(同仁化学研究所社製)を用いた定量比色アッセイにより、各ポリプレックスの細胞毒性を評価した。Huh−7細胞(20000細胞)を24ウェル培養プレートに播種し、10%FBSを含むDMEM 400μL中で終夜培養した。次いで、培地を、10%FBSと1μgのpDNAを含む各ポリプレックス溶液とを含む新鮮な培地(400μL)と交換した。6時間、22時間および44時間培養した後、培地を、10%FBSおよび10%WST−8を含む培地(400μL)と交換し、37℃で2時間培養した。450nmフィルター(Model 680、Bio−Rad社製)を備えたマイクロプレートリーダーを用いて、WST−8の還元により生成したホルマザンの吸光度を各ウェルについて測定した。得られた値(n=4)から細胞生存率を、ポリプレックスを有さないコントロールウェルの百分率として計算した。NSCおよびSCポリプレックスの両方について、44時間で、ポリプレックスを有さないコントロール細胞に対して90%以上の細胞生存率が維持された。このことは、SCポリプレックスの細胞毒性が低いことを示している。
<実施例9〜12:複合体微粒子の調製>
以下のカチオン性ポリマーを用いて実施例1と同様にしてコア粒子(PIC)を形成し、当該PICから、Si濃度30mMで、実施例1と同様にして複合体微粒子(SCポリプレックス)を調製した:
・グアニジン化ポリリジン(PLys(G))(PLys(G)のDP=50、N/P=2)
・ポリエチレングリコール(PEG)−PLys(G)ブロック共重合体(PEGの分子量=12,000、PLys(G)のDP=43、N/P=2)
・PEG−PLysブロック共重合体(PEGの分子量=12,000、PLysのDP=43、N/P=2)
・1,2−ジアミノメタン側鎖を有するPEG−ポリアスパルタミド誘導体(PEG−PAsp(DET))(PEGの分子量=12,000、PAsp(DET)のDP=68、N/P=8)
それぞれのSCポリプレックスおよび対応するNSCポリプレックスのIn vitroトランスフェクション効率を、Huh−7細胞についてLuciferase Assay Kit(Promega社製)およびルミノメーター(Berthold社製)を用いるルシフェラーゼアッセイにより決定した。Huh−7細胞を24ウェル皿に播種した(10%FBSを含むDMEM 400μL中に20000細胞/ウェル)。24時間培養した後、培地を、10%FBSと1μgのpDNAを含むポリプレックス溶液(シリカ被覆から2時間後)とを含む新鮮な培地と交換した。細胞をポリプレックスで48時間インキュベートし、続いてルシフェラーゼアッセイを行った。それぞれのSCポリプレックスおよび対応するNSCポリプレックスについて、ルシフェラーゼ発現量を比較して示すグラフを図13に示す。白い棒がNSCポリプレックスの結果であり、グレーの棒がSCポリプレックスの結果である。図13から明らかなように、いずれのポリプレックスについても、シリカ被覆層を形成することによりトランスフェクション効率が格段に増大する。カチオン性ポリマーがPLys(G)であるSCポリプレックスのトランスフェクション効率が最も高いことが示された。
本発明の複合体微粒子および薬学組成物は、製薬、医療等の分野で好適に用いられ得る。


Claims (12)

  1. カチオン性ポリマーおよび核酸を含むコア粒子と、
    シリカで構成された、該コア粒子を被覆する被覆層と
    を有する、複合体微粒子。
  2. 前記カチオン性ポリマーが、ポリアルギニン(PArg)、ポリリジン(PLys)、グアニジン化ポリリジン(PLys(G))、ポリ{N−[N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]アスパルタミド}(PAsp(DET))、ポリオルニチンおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される、請求項1に記載の複合体微粒子。
  3. 前記核酸が、プラスミドDNA、アンチセンスDNAおよびsiRNAからなる群から選択される、請求項1または2に記載の複合体微粒子。
  4. 前記被覆層の厚みが3nm〜25nmである、請求項1から3のいずれかに記載の複合体微粒子。
  5. 直径が50nm〜500nmである、請求項1から4のいずれかに記載の複合体微粒子。
  6. 中性のpH環境における表面のζ電位が0mVより小さく−30mVまでである、請求項1から5のいずれかに記載の複合体微粒子。
  7. 前記コア粒子の直径に対する複合体微粒子の直径の比が、100%を超えて150%以下であり、かつ、中性のpH環境における表面のζ電位が−10mV〜−25mVである、請求項1から6のいずれかに記載の複合体微粒子。
  8. カチオン性ポリマーと核酸とを混合し、コア粒子となる複合体を形成すること、および
    該複合体とケイ酸塩溶液とを混合し、該複合体の表面にシリカで構成される被覆層を形成すること
    を含む、複合体微粒子の製造方法。
  9. 前記核酸のアニオン性リン酸基に対する前記カチオン性ポリマーのカチオン性基のモル比が1より大きい、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記ケイ酸塩溶液の濃度が5mM〜60mMである、請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 請求項1から7のいずれかに記載の複合体微粒子と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む、薬学組成物。
  12. 請求項1から7のいずれかに記載の複合体微粒子を哺乳動物の細胞に接触させることを含む、哺乳動物細胞への核酸の送達方法。
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