JPWO2011080959A1 - 質量分析装置、質量分析装置の制御装置、および質量分析方法 - Google Patents

質量分析装置、質量分析装置の制御装置、および質量分析方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、飛行するイオンが減衰しても、該イオンの存在量を正確に測定可能な質量分析装置、質量分析装置の制御装置、および質量分析方法を提供する。本発明の一実施形態は、雰囲気ガス中の特定の成分の存在量を測定する質量分析装置(1007)であって、イオン発生源(31a、31b)と、四重極型質量分析器(34a、34b)と、イオン発生源(31a)からの飛行距離が第1の飛行距離L1でのイオン(35a)の第1のイオン電流を検出するコレクタ(33a)と、第1の飛行距離L1よりも長い第2の飛行距離L2でのイオン(35b)の第2のイオン電流を検出するコレクタ(33b)とを備える。このような構成を備える質量分析装置(1007)の制御部は、上記検出された第1および第2のイオン電流から特定のイオンの存在量を算出する。

Description

本発明は、測定すべき雰囲気ガス中の特定の成分の存在量を測定する質量分析装置、質量分析装置の制御装置、および質量分析方法に関するものである。
スパッタなどの真空プロセスにおいて、プロセス雰囲気ガス中の特定の成分の存在量を知ることは重要となっている。そのための質量分析装置では、雰囲気ガスをイオン源にてイオン化し、そのイオンを質量分析器にて質量を分別し、分別されたイオンをコレクタにて電流として計測する。このイオン電流が、測定すべき雰囲気の成分の存在量に対応することになる。
質量分析器では特殊な電磁界とした領域を持ち、その領域を特定のイオンのみが通過するようにして質量分別を行なう。代表的な質量分析器は四重極型質量分析器であり、4本の電極(ロッド)に高周波電界と直流電界が印加されている。四重極型質量分析器でのロッドの長さは質量分析器としての性能に関係するが、ある範囲では任意の長さとすることができる。図1Aは、従来の四重極型質量分析器の断面図である。
図1Aにおいて、四重極型質量分析器は、4つの電極(ロッド)4を有しており、イオン源1から放出されたイオン5が引き出し電極2に形成された開口を介して4つの電極4の間を通過して検出器3に入射する。このとき、4つの電極4のうち対向する(質量分析器の中心軸を間にして向き合う)電極を電気的に結合(導通)し、それぞれの電極セット間に直流電圧(DC)と高周波電圧(RF)を重畳した電圧を印加することにより、上記特殊な電磁界(四重極電界とも呼ぶ)が形成され、各電圧、周波数等に応じた質量数を有するイオンのみを、電極4の長手方向に通過させるようにしている。
さて、平均自由行程とは、イオンなどが雰囲気中を自由に飛行できる行程の平均値のことであり、スパッタプロセスで適用される圧力(1Pa)の雰囲気では7mm程度となる。そのため、もし四重極型質量分析器のロッド長が7mmとすると、雰囲気ガスとの衝突によりコレクタまで到達できるイオン電流は本来の1/e(0.37)程度に減衰してしまう。
実際、性能面からロッド長は10〜30mm程度が必要なので、スパッタプロセスではイオン電流の減衰は不可避となっている。イオン電流の減衰状況は、イオンの飛行距離(ロッド長)とその雰囲気での平均自由行程との関係で決められる。図1Bに飛行によりイオン数が減衰する状況の一例を示す。図1Bにおいて、符号6は、本来(減衰前)のイオン電流であり、符号7は、計測された(減衰後)のイオン電流である。
特開平11−31473号公報 特開2008−209181号公報 特開2004−349102号公報 特開2008−186765号公報
上述のように、成分の存在量に対応するイオン電流が減衰してしまうと、成分の正しい存在量を知ることは不可能となる。そこで従来では、雰囲気の圧力を別途手段によって測定し、計測されたイオン電流をその圧力値によって決められた換算式で補正して本来(減衰のない)のイオン電流を求めていた。しかし、上記換算式は装置や測定の諸条件によって変化するので補正の精度が悪く、また圧力を測定する手段も必要となり装置が複雑となっていた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、飛行するイオンが減衰しても、該イオンの存在量を正確に測定可能な質量分析装置、質量分析装置の制御装置、および質量分析方法を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明は、質量分析装置であって、イオン発生源と、前記イオン発生源で発生したイオンを通過させる第1の移動経路の終端で特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記第1の移動経路よりも長い、前記イオンを通過させる第2の移動経路の終端で前記特定のイオンの第2の電流値を検出する検出手段と、前記第1および第2の電流値から前記イオン発生源において発生した前記特定のイオンの存在量を算出する算出手段と前記第1の移動経路の少なくとも一部にて前記特定のイオンだけを通過させる第1の質量分別手段と、前記第2の移動経路の少なくとも一部にて前記特定のイオンだけを通過させる第2の質量分別手段とを備えることを特徴とする。
さらに、本発明は、特定のイオンの存在量を測定する質量分析方法であって、前記特定のイオンをイオン発生源から発生させる工程と、前記イオン発生源から第1の移動距離だけ移動し質量分別された前記特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記イオン発生源から第1の移動距離よりも長い第2の移動距離だけ移動し質量分別された前記特定のイオンの第2の電流を検出する工程と、前記検出された第1および第2の電流から前記特定のイオンの存在量を算出する工程とを有することを特徴とする。
本発明によれば、第1の飛行距離だけ飛行してきたイオンの電流と、第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離だけ飛行してきたイオンの電流とにより、衝突による減衰の無い本来のイオン電流を求めているので、飛行するイオンが減衰しても、該イオンの存在量を正確に測定可能である。
従来の四重極型質量分析器の断面図である。 飛行によりイオン数が減衰する状況の一例を示す図である。 本発明の原理を説明するための図である。 本発明の原理を説明するための図である。 本発明の第1の実施形態に係る平均自由行程を測定する質量分析装置を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る質量分析平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る質量分析平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第4の実施形態に係る質量分析平均自由行程を測定する装置を示す図である。 図6Aに示す四重極型質量分析器の断面図である。 本発明の第5の実施形態に係る質量分析平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第6の実施形態に係る質量分析平均自由行程を測定する装置を示す図である。 図8Aに示すTOF型の質量分析装置の断面図である。 本発明に係る、平均自由行程を測定する装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
雰囲気ガスとの衝突によるイオンの減衰の状況は、平均自由行程とイオン飛行距離とによって決められるので、もしイオンの飛行距離の異なる質量分析装置が同じ真空領域に設置されていれば、二つのイオン電流の変化は異なる指数関数となる。しかし、飛行距離による減衰状況以外の条件が同じであれば、その指数関数の仮数は同じとなり、指数のみが異なる二つの指数関数となる。これらの状況を図2A、2Bに示す。
図2Aは、本発明の一実施形態に係る質量分析装置の原理を説明するための図である。本発明の一実施形態では、同一の真空領域中において、2つの異なるイオンの飛行距離による質量分析を行う。よって、同一の真空領域中において、イオンの第1の飛行距離の少なくとも一部にて質量分別を行う第1の質量分析器(質量分別領域)と、該第1の飛行距離よりも長い、イオンの第2の飛行距離の少なくとも一部にて質量分別を行う第2の質量分析器(質量分別領域)とを設ける。
図2Aにおいて、飛行距離が相対的に短い第1の飛行距離に対応する第1の構成では、イオン源21a(イオン発生源)から第1の飛行距離L1だけ離間してコレクタ(検出器)23a(第1の検出器)が配置されており、引き出し電極22aとコレクタ23aとの間に質量分析器(質量分別領域)24aが配置されている。すなわち、イオン源21aと該イオン源21aから第1の飛行距離L1だけ離間して配置されたコレクタ23aとの間に、質量分析器24aが配置されているので、該質量分析器24aは、第1の飛行距離L1の少なくとも一部にて質量分別を行なうことになる。このように、イオン源21aにて発生したイオン25aをコレクタ23aにて検出しているので、イオン源21aとコレクタ23aとの間の領域が上記イオン25aを通過させる第1の移動経路として機能し、該第1の移動経路の終端(図2Aではコレクタ23a)にてイオン25aを検出することになる。
上記第1の移動経路の少なくとも一部にて特定のイオンだけを通過させるように構成された第1の質量分別手段としての該質量分析器24aは、例えば4つの電極(ロッド)を有する四重極型質量分析器とすることができる。このように、四重極型質量分析器を用いる場合は、4つの電極4のうち対向する(質量分析器の中心軸を間にして向き合う)電極を電気的に結合(導通)し、それぞれの電極セット間に直流電圧(DC)と高周波電圧(RF)を重畳した電圧を印加することにより、四重極電界を形成し、各電圧、周波数等に応じた質量数を有するイオンのみを、上記電極の長手方向に通過させるようにしている。よって、イオン源21aから放出されたイオン25aは、引き出し電極22aの開口を介して質量分析器24a中を飛行してコレクタ23aに入力される。このようにして、コレクタ23aにより、第1の飛行距離でのイオン25aの第1のイオン電流IL1(イオン電流値IL1(以下、イオン電流値を単に“イオン電流”と呼ぶこともある))を検出する。
同様に、上記第1の構成と同一の真空領域に配置される、飛行距離が相対的に長い第2の飛行距離に対応する第2の構成では、イオン源21b(イオン発生源)から第2の飛行距離L2だけ離間してコレクタ(検出器)23b(第2の検出器)が配置されており、引き出し電極22bとコレクタ23bとの間に質量分析器(質量分別領域)24bが配置されている。すなわち、イオン源21bと該イオン源21bから第2の飛行距離L2だけ離間して配置されたコレクタ23bとの間に、質量分析器24bが配置されているので、該質量分析器24bは、第2の飛行距離L2の少なくとも一部にて質量分別を行なうことになる。このように、イオン源21bにて発生したイオン25bをコレクタ23bにて検出しているので、イオン源21bとコレクタ23bとの間の領域が上記イオン25bを通過させる第2の移動経路として機能し、該第2の移動経路の終端(図2Aではコレクタ23b)にてイオン25bを検出することになる。
上記第2の移動経路の少なくとも一部にて特定のイオンだけを通過させるように構成された第2の質量分別手段としての該質量分析器24bは、例えば4つの電極(ロッド)を有する四重極型質量分析器とすることができる。イオン源21bから放出されたイオン25bは、引き出し電極22bの開口を介して質量分析器24b中を飛行してコレクタ23bに入力される。このようにして、コレクタ23bにより、第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離でのイオン25bの第2のイオン電流IL2を検出する。
なお、図2Aの構成では、第1の電流値であるイオン電流IL1および第2の電流値であるイオン電流IL2をそれぞれ、コレクタ23a、23bの測定結果から直接的に求めているが、本発明では、第1および第2の移動経路の終端の電流値を結果的に求めることができれば良い。従って、本発明の一実施形態では、第1および第2の電流値を間接的に求めても良い。
また、図2Bにおいて、符号26は、本来(減衰前)の、すなわち雰囲気ガスと無衝突と仮定した場合のイオン電流と圧力との関係を示すグラフであり、符号27は、減衰後のイオン電流であって、飛行距離が短い場合のイオン電流(コレクタ23aにて検出されるイオン電流)と圧力との関係を示すグラフであり、符号28は、減衰後のイオン電流であって、飛行距離が長い場合のイオン電流(コレクタ23bにて検出されるイオン電流)と圧力との関係を示すグラフである。
上述のように、第1および第2の飛行距離と該それぞれの飛行距離に対するイオン電流が分かると、減衰しなかった場合のイオン電流(本来のイオン電流)を算出することが可能となる。飛行距離はある程度の任意性があるが、その値は正確に知られていなければならない。なお、この計算には雰囲気の圧力は使われないので別途測定する必要はない。すなわち、従来のように、雰囲気の圧力を測定する必要が無く、さらに本来のイオン電流を求めるために、装置や測定の条件によって変化する、圧力による換算式を用いてイオン電流を補正する必要も無い。従って、装置や測定条件によらずに、正確に本来のイオン電流を測定することができる。
さて、本来のイオン電流をI0、平均自由行程をλ、二つの飛行距離をL1、L2、それぞれのイオン電流をIL1、IL2とすると、減衰式より
IL1=I0・exp(−L1/λ) ・・・(1)
IL2=I0・exp(−L2/λ) ・・・(2)
対数をとって整理すると、式(1)、(2)は
λ=−L1/Loge(IL1/I0) ・・・(3)
λ=−L2/Loge(IL2/I0) ・・・(4)
式(3)、(4)からλを消去すると、
L1/Loge(IL1/I0)=L2/Loge(IL2/I0) ・・・(5)
式(5)の本来のイオン電流I0以外の値はすべて既知(L1,L2:設定値、IL1、IL2:例えば、コレクタ23a、23bでの計測値)であるため、式(5)より本来のイオン電流I0が算出される。このように、式(5)では、平均自由行程λと無関係となり、さらに、正確に求められる設定値L1、L2、およびコレクタでの計測値IL1、IL2により計算できるので、従来のように別個に測定が必要な圧力によって決められた換算値による補正を行わなくても、高精度な測定を行うことができる。
しかし、上式では「飛行距離による減衰状況以外の条件が同じ」と仮定しているが、実際には条件は全く同じとはならない。そこで、圧力が低くて減衰がない、あるいは低い状態でのイオン電流の比率を測定しておき、これで実際の計測値を補正することが望ましい。これを「減衰なし補正」とする。
上記「減衰なし較正」について説明する。
上記減衰なし補正においてはまず、減衰が無視できるような良い圧力(低い圧力)の状態でそれぞれのコレクタ23a、23bでのイオン電流IL1-A、IL2-Aを測定し、その値を初期値(減衰なしの値)として設定しておく。そして、実際の測定では、コレクタ23a、23bの各々で実測したイオン電流IL1、IL2をこの初期値で割った値に規格化して計算すればよい。コレクタ23a、23bで検出された電流値が減衰なしでa対b、減衰ありでd対eの場合、IL1対IL2は(d/a)対(e/b)となる。
本明細書では、初期値を出すためのこのプロセスを「減衰なし較正」と呼ぶことにする。すなわち、減衰なし較正とは、第1の真空度(圧力)の状態(例えば、真空度の良い状態(圧力の低い状態))での、第1のコレクタおよび第2のコレクタにて検出された荷電粒子数の比率により、第2の真空度(圧力)の状態(例えば、第1の真空度よりも悪い真空度の状態(圧力の高い状態))での、第1のコレクタおよび第2のコレクタにて検出されたイオン電流の比率を較正することである。
後述する各実施形態にて説明する質量分析装置1007は、図9に示す制御部1000を内蔵することができる。また、該制御部を、インターフェースを介して接続するようにしても良い。
図9は、本発明の一実施形態に係る制御系の概略構成を示すブロック図である。
図9において、符号1000は質量分析装置1007全体を制御する制御手段としての制御部である。この制御部1000は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU1001、およびこのCPU1001によって実行される様々な制御プログラムなどを格納するROM1002を有する。また、制御部1000は、CPU1001の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM1003、およびフラッシュメモリやSRAM等の不揮発性メモリ1004などを有する。
また、この制御部1000には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力操作部1005、質量分析装置1007の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示部1006(例えば、ディスプレイ)が接続されている。
なお、本明細書において、「飛行距離」とは、用いる装置の構成、条件によって決まる距離であって、イオンを放出可能な部材のイオンを放出する面(例えば、イオン源のイオン放出面)から放出されたイオンが、所定のコレクタまで、振動しないで進むと仮定した際に実際に飛行する(進む)距離である。飛行距離の最も簡単な例としては、イオン源とコレクタを1つ設ける装置においては、イオン源のイオン発生面からコレクタのイオン捕捉面までの距離である。すなわち、イオンの飛行距離とは、イオンの移動経路(第1の移動経路や第2の移動経路)に沿ってイオンが移動した移動距離、すなわち、イオンの移動経路の長さである。よって、例えば、図2Aの構成では、イオン源21a(イオン源21b)から発生したイオン25a(イオン25b)は、第1の移動距離(第2の移動距離)移動し、途中で質量分別されて、質量分別された特定のイオンがコレクタ23a(23b)に入射する。
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る質量分析装置1007を示す図である。
本実施形態では、ロッド(電極)の長さが異なる二つの四重極型質量分析装置30a、30bが、同じ真空領域に設置されている。四重極型質量分析装置30a、30bは、それぞれイオン源31a、31b、引き出し電極32a、32b、4つの電極(ロッド)を有する四重極型質量分析器34a、34b、およびコレクタ33a、33bを備えている。
雰囲気ガス(中性分子)はイオン源31a、31bにてそれぞれのイオン(主に一価の正イオン)となる。イオン源31a、31bにて生成されたイオン35a、35bはそれぞれ引き出し電極32a、32bによる電界で引き出され、イオン源31a、31bとの電位差に対応するエネルギーで四重極型質量分析器34a、34bを飛行する。四重極型質量分析器34a、34bでは4本の電極(ロッド)に高周波電界と直流電界が印加されているので、特定なイオンのみが通過する。これにより質量分別された特定なイオンのみがコレクタ33a、33bに到達してイオン電流IL1、IL2として計測される。
イオン源31aからコレクタ33aまでの距離(第1の飛行距離)をL1、イオン源31bからコレクタ33bまでの距離(第2の飛行距離)をL2とする。本実施形態ではL1=10mm、L2=30mmとしている。
上述のような構成において、イオン源31aから放出されたイオン35aは、引き出し電極32aの開口を介して四重極型質量分析器34a中を飛行してコレクタ33aに入力される。このようにして、コレクタ33aにより、飛行距離L1だけ飛行したイオン35aのイオン電流IL1を検出する。本実施形態では、イオン源31aのイオン放出面とコレクタ33aのイオン検出面との間の領域であって、イオン源31aから発生したイオン35aが通過する領域が第1の移動経路となる。よって、四重極型質量分析装置30aは、該第1の移動経路の終端(コレクタ33a)でイオン電流IL1(検出すべきイオンの第1の電流値)を検出する。なお、第1の移動経路の長さが距離L1であることは言うまでも無い。
同様に、イオン源31bから放出されたイオン35bは、引き出し電極32bの開口を介して四重極型質量分析器34b中を飛行してコレクタ33bに入力される。このようにして、コレクタ33bにより、飛行距離L1よりも長い飛行距離L2だけ飛行したイオン35bのイオン電流IL2を検出する。本実施形態では、イオン源31bのイオン放出面とコレクタ33bのイオン検出面との間の領域であって、イオン源31bから発生したイオン35bが通過する領域が第2の移動経路となる。よって、四重極型質量分析装置30bは、第1の移動経路よりも長い第2の移動経路の終端(コレクタ33b)でイオン電流IL2(検出すべきイオンの第2の電流値)を検出する。なお、第2の移動経路の長さが距離L2であることは言うまでも無い。
実際の測定としては、例えば次のように行なえば良い。
まず、圧力が十分低い雰囲気において、特定の成分の存在量(例えば、特定のイオンの圧力、密度、濃度など様々な表現が可能)とイオン電流との関係を求めておく。すなわち、コレクタ電流をI、存在量をCとし、特定のイオン(測定対象のガスのイオン)について、予め次式のKなる比例係数(感度)Kを求めておく。
C=K×I ・・・(6)
つぎに「減衰なし補正」を行う場合は、該減衰なし補正のために、同じく圧力が十分低い雰囲気において、コレクタ33aとコレクタ33bとでの特定イオンのイオン電流を求め、これをIL1-A、IL2-Aとする。ここまでの予備測定を行なっておいてから実際の測定に移る。なお、十分に低い圧力の具体的な値としては、平均自由行程がロッド長(四重極型質量分析器の電極長)よりも十分に大きくなることが必要で、本実施形態では、例えば1000mm程度、圧力として7×10−3Pa程度の圧力であれば良い。
実際の測定では、圧力以外は予備測定と同じ条件として、コレクタ33aとコレクタ33bとでの特定のイオンのイオン電流を求めて、これをIL1-B、IL2-Bとする。
減衰のない本来のイオン電流を求めるため、計算を次のように行なう。
「減衰なし補正」を行わない場合は、式(5)のIL1に上記測定されたIL1-Bを、またIL2に上記測定されたIL2-Bを代入し、L1=10、L2=30を代入して本来のイオン電流I0を求める。このようにして計算されたI0をIとして式(6)から特定のイオンの存在量を求める。
また、「減衰なし補正」を行う場合は、下式(7)、(8)を用いて、第1および第2の飛行距離での特定のイオンの正しい(飛行距離による減衰以外の条件を同じにした場合の)イオン電流であるIL1-C、IL2-Cを求める。
IL1-C=IL1-B×{IL1-A/(IL1-A+IL2-A)} ・・・(7)
IL2-C=IL2-B×{IL2-A/(IL1-A+IL2-A)} ・・・(8)
このIL1-C、IL2-CをそれぞれIL1、IL2とし、またL1=10、L2=30として式(5)から特定イオンの本来のイオン電流であるI0を求める。さらに、このようにして計算されたI0をIとして式(6)から特定のイオンの存在量を求める。
具体的な式の展開は、式(5)にL1=10、L2=30を代入して、
10/Loge(IL1/I0)=30/Loge(IL2/I0)
∴ Loge(IL2/I0)/Loge(IL1/I0)=30/10=3
対数定理より
Log(IL1/I0)(IL2/I0)=3
すなわち、(IL1/I0)を底とした(IL2/I0)の対数が3であるので、
(IL1/I0) = IL2/I0
IL1/I0 = IL2/1
∴ I0 = IL1/IL2
∴ I0= (IL1/IL2)1/2 ・・・(5a)
このように、例えばL1=10、L2=30である場合は、式(5a)により、本来のイオン電流I0を求めることができる。
別の特定のイオンの存在量を求める方法も上記と同じである。また、上記の予備測定を毎回行なわずに過去のデータを使用することも可能である。
さらに、スパッタなどでは主成分(Ar)が決まっているので、Arの存在量をCAr、イオン電流をIArとして、下式(9)を(6)の代わりに使うことも出来る。
C=CAr×I/IAr ・・・(9)
ただし、IArも式、(5)(減衰なし補正を行う場合は式(7)、(8)も)を使用して計算する。CArは真空計による全圧の値を使用する。
以下に、本実施形態に係る質量分析装置による測定動作の一例を説明する。
まずは、式(6)の比例定数Kを求めるための予備測定を行う。本実施形態では、存在量として圧力を用いる例について説明する。
本実施形態では、圧力が十分に低い状態での存在量C1および該状態でのイオン電流I1を求める必要がある。そこで、上記イオン電流I1の測定に先立って、質量分析装置1007が配置される真空領域(例えば、チャンバ)に、特定のガス(測定対象のガス)を、圧力が十分に低い状態となるように導入し、その時の圧力を電離真空計により測定する。すなわち、制御部1000は、上記真空領域内の圧力を求めるように電離真空計を制御し、この電離真空計により測定された圧力を取得して、存在量C1としてRAM1003に格納する。
次いで、上記圧力が十分に低い状態において、イオン源31aからイオン(測定対象のガスのイオン)を発生させて四重極型質量分析器34aに入射し、四重極型質量分析器34aにて特定のイオン(測定対象のガスのイオン)を質量分別させて、該特定のイオンをコレクタ33aに入射させる。すなわち、制御部1000は、イオン源31aからイオン35aが発生し、四重極型質量分析器34a(高周波電源および直流電源など)が該イオン35aから特定のイオンを質量分別するように質量分別装置1007を制御する。さらに、制御部1000は、コレクタ33aにてイオンを検出するように質量分別装置1007を制御し、検出されたイオン電流I1を質量分別装置1007から取得し、RAM1003に格納する。
このように存在量C1とイオン電流I1とを取得すると、制御部1000は、RAM1003から存在量C1とイオン電流I1とを読み出し、式(6)に従って、特定のガスに対する比例定数Kを求め、不揮発性メモリ1004に格納する。
上記予備測定を完了すると、実際の測定を行う。
実際の測定ではまず、イオン源31a、31bにてイオン35a、35bを発生させ、該イオン35a、35bを四重極型質量分析器34a、34bに入力させる。すなわち、制御部1000は、イオン源31a、31bからイオン35a、35bが発生するように、質量分析装置1007を制御する。
つぎに、コレクタ33a、33bに入力されたイオンのイオン電流IL1-B、IL2-Bを計測する。すなわち、制御部1000は、コレクタ33a、33bにてイオン電流を検出するように質量分析装置1007を制御し、検出されたイオン電流IL1-B、IL2-Bを質量分析装置1007から取得し、RAM1003に格納する。
なお、例えば、不揮発性メモリ1004には、距離L1の値(=10mm)および距離L2の値(=30mm)を予め格納しておく。
制御部1000は、不揮発性メモリ1004から設定値であるL1およびL2の値を読み出し、さらにRAM1003から測定値であるイオン電流IL1-B、IL2-Bを読み出し、イオン電流IL1-B、IL2-BをそれぞれIL1、IL2として、式(5)に従って、本来のイオン電流I0を算出する。
上記本来のイオン電流I0を算出すると、制御部1000は、不揮発性メモリ1004から比例定数Kを読み出して、該比例定数Kおよび上記算出されたイオン電流I0から、式(6)に従って、上記特定のイオンの存在量を算出する。このように、本実施形態では、制御部1000は、コレクタ33a、33bにて計測された第1および第2の電流値であるイオン電流IL1−B、IL2−Bを減衰式である式(5)に代入する工程を実行して、上記特定のイオンの存在量を算出する。
本実施形態では、特定のイオンの存在量の算出の際に、「減衰なし補正」を行っても良い。「減衰なし補正」を行う場合は、圧力を十分に低い状態(例えば、7×10−3Paなど)にして、コレクタ33a、33bにてイオン電流IL1-A、IL2-Aを測定する。すなわち、圧力以外は実際の測定と同じ条件とし、コレクタ33a、33bでのイオン電流を減衰なしの初期値として設定する。そして、実測したイオン電流のそれぞれをこの初期値で割った値に規格化して計算に使用する。すなわち、減衰なし較正のための測定では、コレクタ33aがイオン電流IL1-Aを検出し、コレクタ33bがイオン電流IL2-Aを検出する。これら検出されたイオン電流IL1-A、IL2-Aはそれぞれ、不揮発性メモリ1004に記憶される。従って、制御部1000は、減衰なし較正を行う場合に、不揮発性メモリ1004に記憶された初期値としてのイオン電流IL1-A、IL2-Aを適宜読み出し、該読み出された初期値によって測定値を割った値に規格化して減衰なし較正を行う。
例えば、減衰なし補正を行う場合、制御部1000は、RAM1003から検出されたイオン電流IL1-B、IL2-Bを読み出し、さらに不揮発性メモリ1004から初期値としてのイオン電流IL1-A、IL2-Aを読み出し、式(7)、(8)に従って、減衰なし補正されたイオン電流IL1-C、IL2-Cを算出する。次いで、制御部1000は、該イオン電流IL1-C、IL2-C、および距離L1、L2を用いて、式(5)に従って、本来のイオン電流I0を算出し、該算出されたイオン電流I0および比例定数Kから式(6)を用いて存在量を算出する。
このように、本実施形態では、本来のイオン電流の取得に際して装置や測定方法に依存する圧力値によって決められた換算式で補正して求める必要が無く、正確に求めることができるイオンの飛行距離と、2つの異なるイオンの飛行距離でのイオン電流の計測値とにより、本来のイオン電流を正確に求めることができる。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る質量分析装置1007を示す図である。本実施形態では、一つのイオン源41、および一つの四重極型質量分析器44を持つ四重極型質量分析装置であるが、四重極型質量分析器の電極(ロッド)が長手方向で2分割になっており途中に別途コレクタ43aが設けられている。このコレクタ43aには開口が設けられており一部のイオンはここで捕捉されて検出されるが、他のイオンは通過して四重極型質量分析器44の後段に配置されたコレクタ43bで検出される。
図4において、四重極型質量分析器44は、第1の長さの4つの電極(ロッド)44aと、第2の長さの4つの電極(ロッド)44bとを有し、四重極型質量分析器44の長手方向において2分割された形態である。本実施形態では、4つの電極44aを有する質量分析器と、4つの電極44bを有する質量分別器との2つの質量分別器を備えているとも言える。
2分割の間(電極44aにより形成された質量分別領域と電極44bにより形成された質量分別領域との間)には、第1の飛行距離L1を飛行したイオン45を検出するためのコレクタ43aが設けられている。また、四重極型質量分析器44の後段には、第2の飛行距離L2を飛行したイオン45を検出するためのコレクタ43bが設けられている。
本実施形態では、イオン源41からコレクタ43aまでの距離L1(第1の飛行距離)を10mm、イオン源41からコレクタ43bまでの距離L2(第2の飛行距離)を30mmとしている。
本実施形態では、コレクタ43aは、少なくとも1つの開口を有するコレクタであり、一部のイオンは検出するが、残りのイオンはそのまま透過して、コレクタ43aよりも遠くに位置するコレクタ43bに進むように構成されている。コレクタ43aをこのように構成することにより、コレクタ43aとコレクタ43bとを直列に設置(同一のイオンの飛行軸上に二つのコレクタを配置)することができ、一つのイオン源41による測定を行うことができる。
上記コレクタ43aの構成としては、少なくとも1つの開口を有する構成の他に、メッシュ状、スリット状であってもよく、あるいは、導電性の部材を薄膜化したもの(例えば、シリコン薄膜)であっても良い。所定条件においては、導電性薄膜にイオンが入射すると、その一部は該導電性薄膜に捕捉され、他の一部はそのまま透過する。このように、本実施形態では、コレクタ43aとしては、入射されたイオンの一部を検出し、他の一部を透過させることができる部材であればいずれの部材を用いても良い。
上述のような構成において、イオン源41から放出されたイオン45は、引き出し電極42の開口を介して四重極型質量分析器44が有する電極44a中(第1の質量分別領域)を飛行してコレクタ43aに入力される。該コレクタ43aは、入力されたイオン45の一部を捕捉し、他の一部を透過させて質量型質量分析器44が有する電極44b(質量分別領域)へと入力する。このように、コレクタ43aにより、飛行距離L1だけ飛行したイオン45のイオン電流IL1を検出する。本実施形態では、イオン源41のイオン放出面とコレクタ43aのイオン検出面との間の領域であって、イオン源41から発生したイオン45が通過する領域が第1の移動経路となる。よって、本実施形態に係る質量分析装置1007は、該第1の移動経路の終端(コレクタ43a)でイオン電流IL1(検出すべきイオンの第1の電流値)を検出する。
上記コレクタ43aを透過したイオン45は四重極型質量分析器44が有する電極44b中を飛行してコレクタ43bに入力される。このようにして、コレクタ43bにより、飛行距離L1よりも長い飛行距離L2だけ飛行したイオン45のイオン電流IL2を検出する。このとき、4つの電極44aにより囲まれた領域および4つの電極44bにより囲まれた領域が、第2の飛行距離L2にて質量分別を行う第2の質量分別領域となる。本実施形態では、イオン源41のイオン放出面とコレクタ43bのイオン検出面との間の領域であって、イオン源41から発生したイオン45が通過する領域が第2の移動経路となる。よって、本実施形態に係る質量分析装置1007は、第1の移動経路よりも長い第2の移動経路の終端(コレクタ43b)でイオン電流IL2(検出すべきイオンの第2の電流値)を検出する。
なお、図4からも明らかなように、本実施形態では、コレクタ43aおよびコレクタ43bを直線的に配置し、単一のイオン源41から発生したイオン45を、イオン源41に相対的に近いコレクタ43aおよび相対的に遠いコレクタ43bの双方で検出しているので、第1の移動経路は、第2の移動経路の一部を構成している。
なお、本実施形態では、ロッドの分割以外は第1の実施形態と同じ構造であり、予備測定・実際の測定・計算などの方法もすべて第1の実施形態と同じである。
本実施形態ではイオン源を共用し、イオンの飛行領域も重なっているので、第1の実施形態に比べてより小型とすることができる。
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る質量分析装置1007を示す図である。本実施形態では、一つのイオン源51を持つ四重極型質量分析装置であるが、イオン源51はふたつの引き出し電極(切り換え電極)52a、52bによって、両側のいずれかにイオンを引き出されるようになっている。そして、二つの四重極型質量分析器(質量分別領域)54a、54bと二つのコレクタ53a、53bとがイオン源51の両側に設けられ、どちらかに引き出されたイオンの質量分別・検出が行なえるようになっている。
図5において、イオン源51の対向する一方側には、引き出し電極52a、四重極型質量分析器54a、およびイオン源51から距離L1だけ離間して配置されたコレクタ53aがこの順番で設けられている。また、イオン源51の対向する他方側には、引き出し電極52b、四重極型質量分析器54b、およびイオン源51から距離L2だけ離間して配置されたコレクタ53bがこの順番で設けられている。
このような構成において、引き出し電極52aに所定の電圧を印加すると、イオン源51からイオン55aが引き出し電極52a側に引き出され、引き出し電極52aの開口を介して四重極型質量分析器54a中を飛行してコレクタ53aに入力される。このようにして、コレクタ53aにより、飛行距離L1だけ飛行したイオン55aのイオン電流IL1を検出する。本実施形態では、イオン源51のコレクタ53a側のイオン放出面とコレクタ53aのイオン検出面との間の領域であって、イオン源51から発生したイオン55aが通過する領域が第1の移動経路となる。よって、本実施形態に係る質量分析装置1007は、該第1の移動経路の終端(コレクタ53a)でイオン電流IL1(検出すべきイオンの第1の電流値)を検出する。
同様に、引き出し電極52bに所定の電圧を印加すると、イオン源51からイオン55bが引き出し電極52b側に引き出され、引き出し電極52bの開口を介して四重極型質量分析器54b中を飛行してコレクタ53bに入力される。このようにして、コレクタ53bにより、飛行距離L1よりも長い飛行距離L2だけ飛行したイオン55bのイオン電流IL2を検出する。本実施形態では、イオン源51のコレクタ53b側のイオン放出面とコレクタ53bのイオン検出面との間の領域であって、イオン源51から発生したイオン55bが通過する領域が第2の移動経路となる。よって、本実施形態に係る質量分析装置1007は、第1の移動経路よりも長い第2の移動経路の終端(コレクタ53b)でイオン電流IL2(検出すべきイオンの第2の電流値)を検出する。
なお、本実施形態では、二つの引き出し電極(切り換え電極)以外は第2の実施形態と同じ構造であり、予備測定・実際の測定・計算などの方法はすべて第1の実施形態と同じである。
本実施形態ではイオン源の共用以外は独立しているので、第2の実施形態に比べてよりシンプルとなっている。
なお、質量分析装置の構成要素の共用という観点から、コレクタを共用するように構成しても良い。この場合は、例えば、図5において、第1のイオン検出面および該第1のイオン検出面とは異なる第2のイオン検出面を有するコレクタ(図5では、対向する2面をイオン検出面とするコレクタ)をイオン源51に変えて配置する。さらに、コレクタ53aおよび53bのそれぞれに変えて別個のイオン源を配置する。このような構成により、単一のコレクタにて、第1の飛行距離L1のイオンと、第2の飛行距離L2のイオンとの双方を検出することができる。
さて、第1〜第3の実施形態では、質量分析器としての四重極型質量分析器を直線状にしているが、四重極型質量分析器が有する4つの電極を非直線状にして、四重極型質量分析器を非直線状にしても良い。すなわち、第1の飛行距離での質量分別を行う第1の質量分別領域(第1〜第3の実施形態では、符号34a、44a、54a)、および第2の飛行距離での質量分別を行う質量分別領域(第1〜第3の実施形態では、符号34b、44b、54b)の少なくとも一方を非直線状にしても良い。
質量分析の際には、イオン源からコレクタにはイオンの他に真空紫外線が入射することがある。これは、真空紫外光(高エネルギーを持った光)がイオン源で発生するためである。また、四重極型質量分析器が有する電極にイオンが衝突することにより、軟X線(より高いエネルギーを持った光)が発生してコレクタに入射することもある。このような真空紫外線や軟X線、あるいは他の要因でコレクタに入射した高エネルギーを持った光を総じて「迷光」と呼ぶことにする。すなわち、四重極型質量分析器といった質量分別領域には、イオンと共に、迷光が入射、あるいは生成されることがある。
そこで、上述のように、質量分別領域としての質量分析器を非直線状に形成することにより、質量分析器に入射されたイオンは、質量分析器により形成された電界(四重極型質量分析器の場合は、四重極電界)により上記非直線状に進行するが、迷光は質量分析器の内部にて反射されたり、質量分析器に形成された隙間(四重極型質量分析器の場合は、電極間の領域)から外部へと透過していくことになる。よって、迷光がコレクタに入射するのを低減することができ、S/N比をさらに向上させることができる。
(第4の実施形態)
図6Aは、本発明の第4の実施形態に係る質量分析装置1007を示す図である。本実施形態では、一つのイオン源61を持つ四重極型質量分析装置であるが、イオン源61は二つの引き出し電極(切り換え電極)62a、62bによって、両側のいずれかにイオンが引き出されるようになっている。そして、二つの円弧状の電極(ロッド)を有する四重極型質量分析器(質量分別領域)64a、64bがイオン源61の両側に設けられ、どちらかに引き出されたイオンの質量分別が行なえるようになっている。しかし、ふたつの円弧状の電極(ロッド)の終端部は同じ位置となるので、コレクタ63はひとつとなっている。
通常四重極型質量分析器の電極(ロッド)は直線状であるが、直線であることは必ずしも絶対条件ではない。上記電極(ロッド)が非直線状(例えば、円弧状)であっても図6Bに示された断面形状になっていれば、基本的な質量分別の機能を保持している。このことは、上述のように、第1〜第3の実施形態にも同様のことが言える。
図6Aにおいて、対向するイオン源61の一方側から放出されたイオン65aを、コレクタ63の第1のイオン検出面63aにて検出し、対向するイオン源61の他方側から放出されたイオン65bを、コレクタ63の第1のイオン検出面と対向する第2のイオン検出面63bにて検出する。
上記イオン源61の一方側には引き出し電極62aが設けられており、該引き出し電極62aの後段には、円弧状の四重極型質量分析器64aが設けられている。該円弧状の四重極型質量分析器64aの後段には、コレクタ63が、該コレクタ63の第1のイオン検出面63aによりイオン65aを検出するように設けられている。すなわち、コレクタ63の第1のイオン検出面63aに第1の飛行距離L1のイオン65aが入射するように、四重極型質量分析器64aを非直線状(ここでは円弧状)に形成している。
一方、上記イオン源61の他方側には引き出し電極62bが設けられており、該引き出し電極62bの後段には、円弧状の四重極型質量分析器64bが設けられている。該円弧状の四重極型質量分析器64bの後段には、コレクタ63が、該コレクタ63の第2のイオン検出面63bによりイオン65bを検出するように設けられている。すなわち、コレクタ63の第2のイオン検出面63bに第2の飛行距離L2のイオン65bが入射するように、四重極型質量分析器64bを非直線状(ここでは円弧状)に形成している。
なお、上記四重極型質量分析器64a、64bを、同心の4つの円環状の電極を用いて構成することは、四重極型質量分析器が有する4つの電極を高い平行度で配置することができるので好ましい。すなわち、同心の4つの円環状の電極を用いると、該4つの電極を平行に配置する際の基準点(同心点)を設けることができるので、該基準点を基準に配置することにより、図6Bに示すような形態で、円弧状の4つの電極を高い平行度で配置することができる。
このような構成において、引き出し電極62aに所定の電圧を印加すると、イオン源61からイオン65aが引き出し電極62a側に引き出され、引き出し電極62aの開口を介して四重極型質量分析器64a中を第1の飛行距離L1だけ飛行してコレクタ63の第1のイオン検出面63aに入力される。このようにして、コレクタ63により、飛行距離L1だけ飛行したイオン65aのイオン電流IL1を検出する。本実施形態では、イオン源61の、第1のイオン検出面63aと対向する側のイオン放出面と第1のイオン検出面63aとの間の四重極型質量分析器64aの形状に沿った円弧状の領域であって、イオン源61から発生したイオン65aが通過する領域が第1の移動経路となる。よって、本実施形態に係る質量分析装置1007は、該第1の移動経路の終端(コレクタ63の第1のイオン検出面63a)でイオン電流IL1(検出すべきイオンの第1の電流値)を検出する。
同様に、引き出し電極62bに所定の電圧を印加すると、イオン源61からイオン65bが引き出し電極62b側に引き出され、引き出し電極62bの開口を介して四重極型質量分析器64b中を第2の飛行距離L2だけ飛行してコレクタ63の第2のイオン検出面63bに入力される。このようにして、コレクタ63により、飛行距離L1よりも長い飛行距離L2だけ飛行したイオン65bのイオン電流IL2を検出する。本実施形態では、イオン源61の、第2のイオン検出面63bと対向する側のイオン放出面と第2のイオン検出面63bとの間の四重極型質量分析器64bの形状に沿った円弧状の領域であって、イオン源61から発生したイオン65bが通過する領域が第2の移動経路となる。よって、本実施形態に係る質量分析装置1007は、第1の移動経路よりも長い第2の移動経路の終端(コレクタ63の第2のイオン検出面63b)でイオン電流IL2(検出すべきイオンの第2の電流値)を検出する。
本実施形態では、円弧状の電極(ロッド)および1つのコレクタの使用以外は第3の実施形態と同じ構造であり、予備測定・実際の測定・計算などの方法はすべて第1の実施形態と同じである。
本実施形態ではコレクタ、(およびそれに伴う検出系)はひとつなので、第3の実施形態に比べてよりシンプルとなっている。さらに、四重極型質量分析器64a、64bを円弧状といった非直線状に形成しているので、迷光のコレクタ63への入射を低減することができる。
なお、本実施形態では、四重極型質量分析器が有する電極を円弧状にすることが本質ではなく、装置をよりシンプルにするために、1つのコレクタにて、第1の飛行距離のイオン、および該第1の飛行距離のイオンと同一のイオン源から放出された第2の飛行距離のイオンを検出することを本質としている。このとき、単一のイオン源から放射される2つのイオンの軌道のうち、少なくとも一方のイオンの軌道を非直線状にすることにより、該2つのイオンを単一のコレクタに入射させることができる。すなわち、2つの質量分別領域(質量分析器)の少なくとも一方を非直線状にして少なくとも一方のイオンの軌道を曲げることにより、単一のコレクタへの、2つの飛行距離のイオンの入射を実現している。
なお、単一のコレクタは、第1のイオン検出面と該第1のイオン検出面とは異なる第2のイオン検出面との2つの面を少なくとも有するように構成しても良い。図6Aでは、第1のイオン検出面63aと第2のイオン検出面63bとを対向するように設け、第1の飛行距離L1だけ飛行したイオン65aが第1のイオン検出面63aに入射するように質量分別領域である四重極型質量分析器64aを構成し、第2の飛行距離L2だけ飛行したイオン65bが第2のイオン検出面63bに入射するように質量分別領域である四重極型質量分析器64bを構成している。
なお、第1のイオン検出面63aと第2のイオン検出面63bとは対向している必要は無い。例えば、図6Aにおいて、第2のイオン検出面63bを第1のイオン検出面63aの隣の面(図6Aの紙面垂直方向の面)に設けても良い。この場合は、引き出し電極62bを、イオン源61の、図6Aの紙面垂直方向側に設け、四重極型質量分析器64bを、図6Aの紙面垂直方向側に90°回転した形で配置すれば良い。このようにすれば、イオン源61から、図6Aの紙面垂直方向に放出されたイオン65bは、四重極型質量分析器64bを通過して、コレクタ63の、図6Aの紙面垂直方向の面に設けられた第2のイオン検出面63bに入射する。
このように、本実施形態では、第1の飛行距離L1にて質量分別を行う第1の質量分別領域(質量分析器)と、第2の飛行距離L2にて質量分別を行う第2の質量分別領域(質量分析器)との少なくとも一方を非直線状に形成しているので、単一のイオン源および単一のコレクタにて、第1の飛行距離L1のイオン電流IL1と、第2の飛行距離L2のイオン電流IL2を検出することができる。なお、非直線状の質量分別領域としては、円弧状の質量分別領域であることは、イオンの飛行距離を容易に求めることができるので、好ましい。
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態に係る質量分析装置1007を示す図である。本実施形態に係る質量分析装置1007は、一つのイオン源を持つTOF(Time of fly:飛行時間)型の質量分析装置であるが、コレクタ73aには開口が設けられており一部のイオンはここで捕捉されて検出されるが、他のイオンは通過してコレクタ73bで検出される。イオン源71からコレクタ73aまでの距離L1(第1の飛行距離)を10mm、イオン源71からコレクタ73bまでの距離L2(第2の飛行距離)を30mmとしている。
図7において、TOF型の質量分析装置1007は、イオン源71と、ブランキング電極としての引き出し電極72と、イオン源71から距離L1だけ離間して配置されたコレクタ73aと、イオン源71から距離L2だけ離間して配置されたコレクタ73bとを備える。
TOF型質量分析装置は、イオンを断続的に発生させて、イオンがある距離を飛行する時間から質量分別する。本実施形態では、イオン源71から飛行距離L1だけ飛行したイオンを検出するようにコレクタ73aが設けられているので、符号74aが、第1の飛行距離L1にて質量分別を行う質量分別領域となる。また、イオン源71から飛行距離L2だけ飛行したイオンを検出するようにコレクタ73bが設けられているので、符号74bが、第2の飛行距離L2にて質量分別を行う質量分別領域となる。
本実施形態では、イオン源71のイオン放出面とコレクタ73aのイオン検出面との間の領域であって、イオン源71から発生したイオンが通過する領域が第1の移動経路となる。また、イオン源71のイオン放出面とコレクタ73bのイオン検出面との間の領域であって、イオン源71から発生したイオンが通過する領域が第2の移動経路となる。よって、TOF型の質量分析装置1007は、該第1の移動経路の終端(コレクタ73a)でイオン電流IL1(検出すべきイオンの第1の電流値)を検出する。すなわち、質量分析装置1007は、コレクタ73aにて検出されたイオンの電流の測定結果から第1のイオン電流値であるイオン電流IL1を検出する。また、質量分析装置1007は、第1の移動経路よりも長い第2の移動経路の終端(コレクタ73b)でイオン電流IL2(検出すべきイオンの第2の電流値)を検出する。すなわち、質量分析装置1007は、コレクタ73bにて検出されたイオンの電流の測定結果から第2のイオン電流値であるイオン電流IL2を検出する。
イオンの断続発生には、引き出し電極72の電位を矩形波状で変化させる。直線飛行の場合には飛行空間は無電界となり電極は不要となる。
なお、本実施形態では、質量分析装置をTOF型に構成すること以外は第2の実施形態と同じ構造であり、予備測定・実際の測定・計算などの方法はすべて第1の実施形態と同じである。
本実施形態では電極(ロッド)が不要なので、第2の実施形態に比べてよりシンプルな構成となっている。
(第6の実施形態)
図8Aは、本発明の第6の実施形態に係る質量分析装置1007を示す図である。本実施形態に係る質量分析装置1007は、一つのイオン源81を持つTOF(Time of fly:飛行時間)型の質量分析装置であるが、イオンの飛行領域84は内外2組の偏向リング86a、86bによる円弧状となっている。本実施形態では、図8Bに示すように、内側の偏向リング86aと外側の偏向リング86bとには直流(DC)電源が接続されており、これら内側の偏向リング86aと外側の偏向リング86bとに所定の直流電圧を印加することにより、イオン85は、円弧状に飛行する。
また、イオン源81からのイオンは投入用の偏向電極87aによって円周軌道に入り、複数回の周回を行なった後、取り出し用の偏向電極87bによって円周軌道からはずれてコレクタ83にて検出される。周回の回数(すなわち、イオンの飛行距離(移動距離))は、取り出し用の偏向電極87bへの電圧印加のタイミングで任意に決定できる。すなわち、投入用の偏向電極87aおよび取り出し用の偏向電極87bへの印加電圧を制御することにより、イオンの飛行距離(イオンの軌道)を調節することができる。したがって、ひとつのイオン源、ひとつのコレクタにも関わらず、実質的に異なる飛行距離での質量分析を行なうことが出来る。
例えば、第1の飛行距離L1をイオン85が飛行領域84中を1回周回した時のイオンの飛行距離とし、第2の飛行距離L2をイオン85が飛行領域84中を3回周回した時のイオンの飛行距離とする。
このとき、第1の飛行距離L1だけ飛行したイオンのイオン電流を検出する際には、制御部1000は、投入用の偏向電極87aに所定の電圧を印加してイオン源81からイオン85が飛行領域84中に入射するように質量分析装置1007を制御する。次いで、制御部1000は、上記イオン85が飛行領域84中を1周回するタイミングで取り出し用の偏向電極87bに所定の電圧を印加して飛行領域84中のイオン85がコレクタ83に入射するように質量分析装置1007を制御する。このようにして、イオン源81から放出され、第1の飛行距離L1だけ飛行したイオン85がコレクタ83にて検出される。このとき、飛行領域84中をイオン85が第1の飛行距離L1だけ飛行してコレクタ83にて検出されるので、飛行領域84が、第1の飛行距離にて質量分別を行う第1の質量分別領域として機能することになる。本実施形態では、イオン源81から発生したイオン85が、イオンの進行方向を変化させるための、偏向リング86aおよび偏向リング86bの間の領域である円状の飛行空間84中を所定回数(本実施形態では1回)旋回してコレクタ83に入射する際にイオン85が辿る軌跡が第1の移動経路となる。TOF型の質量分析装置1007は、該第1の移動経路の終端(コレクタ83)でイオン電流IL1(検出すべきイオンの第1の電流値)を検出する。
一方、第2の飛行距離L2だけ飛行したイオンのイオン電流を検出する際には、制御部1000は、投入用の偏向電極87aに所定の電圧を印加してイオン源81からイオン85が飛行領域84中に入射するように質量分析装置1007を制御する。次いで、制御部1000は、上記イオン85が飛行領域84中を3周回するタイミングで取り出し用の偏向電極87bに所定の電圧を印加して飛行領域84中のイオン85がコレクタ83に入射するように質量分析装置1007を制御する。このようにして、イオン源81から放出され、第2の飛行距離L2だけ飛行したイオン85がコレクタ83にて検出される。このとき、飛行領域84中をイオン85が第2の飛行距離L2だけ飛行してコレクタ83にて検出されるので、飛行領域84が、第2の飛行距離にて質量分別を行う第2の質量分別領域として機能することになる。本実施形態では、イオン源81から発生したイオン85が、上記飛行空間84中を、第1の電流値測定時よりも多い回数(本実施形態では3回)旋回してコレクタ83に入射する際にイオン85が辿る軌跡が第2の移動経路となる。TOF型の質量分析装置1007は、該第2の移動経路の終端(コレクタ83)でイオン電流IL2(検出すべきイオンの第2の電流値)を検出する。
このように、本実施形態では、投入用の偏向電極87aおよび取り出し用の偏向電極87bへの電圧の印加タイミングによりイオン85の飛行距離を変化させて、第1の飛行距離および第2の飛行距離によるイオン電流の検出を行っている。
なお、本実施形態では、飛行距離の変更以外は第5の実施形態と同じ構造であり、予備測定・実際の測定・計算などの方法はすべて第1の実施形態と同じである。
本実施形態ではイオン源、ひとつのコレクタがひとつなので、第5の実施形態に比べてよりシンプルな構成となっている。
(その他の実施形態)
本発明は、本来のイオン電流の算出には上記実施形態での計算式に限定されることなく、この計算式を基本としながら経験的に得られた補正項(実験式)を加えた式を利用することも出来る。
理想的な状態からの“ずれ”は必ず発生するものであるが、関連する条件(イオン電流、イオンエネルギー、イオン種など)が同じであれば“ずれ”もほぼ同じであることが多い。そこで、実験的(経験的)にこの“ずれ”を測定し、これを補正するような計算式、すなわち実験式(補正項)を入れた計算式を求めておくことが出来る。さらに、補正項は関連する条件に依存するので、いくつかの条件での実験を行なうことにより、関連する条件を変数とした補正項の関数(例えば、実験式F、G)を求めることが可能となる。これを使用すると、さらに精度のよい測定を行うことができる。
本発明は、本装置が設置されている雰囲気ガスを測定対象とするだけでなく、本装置が設置されている雰囲気とは別の(独立した)領域の雰囲気ガスを測定対象とすることも出来る。このためには、被測定対象のガスを配管やキャピラリーで本装置のイオン源に導入すればよい。この場合では、イオン電流を減衰させる雰囲気は被測定対象ではないが、上記実施形態と同じ方法によって本来のイオン電流を算出することが出来る。
本発明は、中性となっているガスを測定対象とするだけでなく、最初から荷電しているイオンを測定対象とすることも出来る。例えば、プラズマなどにはイオンがそのままで存在しているので、プラズマなどのイオン密度を測定する場合がこの例となる。この場合には、質量分析装置側にイオン源を設置する必要はなく、プラズマなどのイオン発生の場所を上記実施形態でのイオン源の場所と考えれば良い。
(さらにその他の実施形態)
本発明は、複数の機器(例えばコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタ、質量分析装置1007など)から構成されるシステムに適用することも、1つの機器からなる装置に適用することも可能である。
前述した実施形態の制御部1000の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。
このような目的を達成するために、本発明は、質量分析装置であって、異なる2方向にイオンを放出するイオン発生源と、前記イオン発生源から前記異なる2方向の一方に放出された前記特定のイオンを通過させる第1の移動経路の終端で特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記第1の移動経路よりも長い第2の移動経路であって、前記イオン発生源から前記異なる2方向の他方に放出された前記特定のイオンを通過させる第2の移動経路の終端で前記特定のイオンの第2の電流値を検出する検出手段と、前記第1および第2の電流値から前記イオン発生源において発生した前記特定のイオンの存在量を算出する算出手段と、前記第1の移動経路の少なくとも一部にて前記特定のイオンだけを通過させる第1の質量分別手段と、前記第2の移動経路の少なくとも一部にて前記特定のイオンだけを通過させる第2の質量分別手段とを備え、前記第1の移動経路と前記第2の移動経路とが重なる領域を有さないことを特徴とする。
さらに、本発明は、特定のイオンの存在量を測定する質量分析方法であって、前記特定のイオンをイオン発生源から異なる2方向に発生させる工程と、前記イオン発生源から前記異なる2方向の一方に発生された前記特定のイオンであって、第1の移動経路中を第1の移動距離だけ移動し質量分別された前記特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記イオン発生源から前記異なる2方向の他方に発生された前記特定のイオンであって、前記第1の移動経路と重なる領域を有さない第2の移動経路中を前記第1の移動距離よりも長い第2の移動距離だけ移動し質量分別された前記特定のイオンの第2の電流を検出する工程と、前記検出された第1および第2の電流から前記特定のイオンの存在量を算出する工程とを有することを特徴とする。

Claims (16)

  1. イオン発生源と、
    前記イオン発生源で発生したイオンを通過させる第1の移動経路の終端で特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記第1の移動経路よりも長い、前記イオンを通過させる第2の移動経路の終端で前記特定のイオンの第2の電流値を検出する検出手段と、
    前記第1および第2の電流値から前記イオン発生源において発生した前記特定のイオンの存在量を算出する算出手段と、
    前記第1の移動経路の少なくとも一部にて前記特定のイオンだけを通過させる第1の質量分別手段と、
    前記第2の移動経路の少なくとも一部にて前記特定のイオンだけを通過させる第2の質量分別手段と
    を備えることを特徴とする質量分析装置。
  2. 前記イオン発生源は、雰囲気ガスをイオン化するイオン源であり、
    前記雰囲気ガスの存在量を測定することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  3. 同一の雰囲気ガス中に前記イオン源を2個備えることを特徴とする請求項2に記載の質量分析装置。
  4. 前記検出手段は、前記第1の電流値を検出する検出手段と前記第2の電流値を検出する検出手段とを兼用させた1つの検出手段であることを特徴とする請求項3に記載の質量分析装置。
  5. 前記第1の移動経路および第2の移動経路の少なくとも一方は、非直線状であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  6. 前記検出手段は、イオンを検出する検出器であり、前記第1の移動経路の終端でイオンが前記検出器に入射するように構成され、かつ、前記第2の移動経路の終端でイオンが前記検出器に入射するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  7. 前記検出器は、前記第1の電流値を検出する検出手段と前記第2の電流値を検出する検出手段とを兼用させた1つの検出手段であるとともに、第1のイオン検出面と該第1のイオン検出面とは異なる第2のイオン検出面とを有し、
    前記検出器は、前記第1の移動経路の終端でイオンが前記第1のイオン検出面に入射するように構成され、かつ前記第2の移動経路の終端でイオンが前記第2のイオン検出面に入射するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の質量分析装置。
  8. 前記第1の移動経路は、前記第2の移動経路の一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  9. 前記第1および第2の移動経路の各々は、円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  10. 前記円弧状である第1および第2の移動経路が、同じ直径と同じ中心点を有することを特徴とする請求項9に記載の質量分析装置。
  11. 前記検出手段は、
    前記特定のイオンを検出する検出器と、
    前記イオン発生源から前記検出器までの前記特定のイオンの移動距離を調整することにより、前記第1の移動経路の長さおよび前記第2の移動経路の長さを調整手段とを有し、
    前記調整手段により前記特定のイオンの移動距離を変化させることにより、前記検出器は前記第1および第2の電流値を検出することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  12. 前記検出手段は、
    前記第1の移動経路の終端でイオンを検出する第1の検出器と、
    前記第2の移動経路の終端でイオンを検出する第2の検出器とを有し、
    前記第1の検出器は、到達したイオンのうちその一部を検出するとともに、他の一部のイオンをそのまま通過させるように構成された検出器であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  13. 前記検出手段は、減衰しなかった場合のイオン電流をI0とし、前記第1の移動経路の長さをL1とし、前記第2の移動経路の長さをL2とし、前記第1の電流値をIL1とし、前記第2の電流値をIL2とする場合の、L1/Loge(IL1/I0)=L2/Loge(IL2/I0)という式に、前記第1および第2の電流値を代入する工程を実行して前記存在量を算出することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  14. 特定のイオンの存在量を測定する質量分析方法であって、
    前記特定のイオンをイオン発生源から発生させる工程と、
    前記イオン発生源から第1の移動距離だけ移動し質量分別された前記特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記イオン発生源から第1の移動距離よりも長い第2の移動距離だけ移動し質量分別された前記特定のイオンの第2の電流を検出する工程と、
    前記検出された第1および第2の電流から前記特定のイオンの存在量を算出する工程と
    を有することを特徴とする質量分析方法。
  15. コンピュータを、
    イオン発生源と、前記イオン発生源で発生したイオンを通過させる第1の移動経路の終端で特定のイオンの第1の電流値を検出し、前記第1の移動経路よりも長い、前記イオンを通過させる第2の移動経路の終端で前記特定のイオンの第2の電流値を検出する検出手段とを備える質量分析装置の制御装置であって、
    前記特定のイオンを発生させるように前記イオン発生源を制御して、前記検出手段にて前記第1および第2の電流値を検出させる手段と、
    前記第1の電流値および第2の電流値を取得する手段と、
    前記第1および第2の電流値から前記特定のイオンの存在量を算出する手段と
    を備える制御装置として機能させるコンピュータプログラム。
  16. コンピュータにより読み出し可能なプログラムを格納した記憶媒体であって、請求項15に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。
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