本願発明者らは、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおける正面の色味変化を抑制すべく、まず、この原因の究明を行った。
そこで、まず、本発明について説明する前に、図25を参照して、横電界駆動方式を用いた従来の垂直配向型の液晶パネル300の概略構成について以下に説明する。
〔液晶パネル300〕
図25は、横電界駆動方式を用いた従来の垂直配向型の液晶パネル300の要部の概略構成を示す断面図である。
図25に示すように、液晶パネル300は、基板60(アレイ基板)と、基板70(対向基板)との間に液晶層50が挟持された構成を有している。
基板60は、ガラス基板11上に、櫛歯電極14・15、配向膜16が、この順に積層された構成を有している。
櫛歯電極14・15は、櫛歯の歯にあたる、各櫛歯電極14・15の枝電極14A(14A1、14A2、…14Am;mは1以上の整数)と枝電極15A(15A1、15A2、…15An;nは1以上の整数)とが互いに噛み合うように交互に配置されている。
上記櫛歯電極14・15のうちの一方の櫛歯電極14(第1の電極)は共通電極であり、他方の櫛歯電極15(第2の電極)は画素電極である。
また、配向膜16は、電界無印加時に液晶層の液晶分子を基板面に垂直に配向させるいわゆる垂直配向膜である。配向膜16は、ガラス基板11上に、櫛歯電極14・15を覆うように設けられている。
また、基板70は、ガラス基板21上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色のカラーフィルタ22およびブラックマトリクス23、配向膜26が、この順に設けられた構成を有している。
各画素6(つまり、1画素)は、R、G、Bの3つのサブ画素6R・6G・6B(ドット)で構成されている。各サブ画素6R・6G・6Bには、図25に示すように、R、G、Bのそれぞれの波長の光を透過する、R、G、Bの各色のカラーフィルタ22が形成されている。
以下に、検証に用いた液晶パネル300の製造方法について、具体的に説明する。
まず、図25に示すように、ガラス基板11上に、ITOからなる櫛歯電極14・15を、厚み=1000Å、電極幅L=4μm、電極間隔S=4μmにて形成した。
次いで、上記ガラス基板11上に、上記櫛歯電極14・15を覆うように、JSR社製の配向膜塗料「JALS−204」(商品名、固形分5wt.%、γ−ブチロラクトン溶液)を、スピンコート法にて塗布した。その後、200℃にて2時間焼成することにより、液晶層50との対向面となる表面に、垂直配向膜である配向膜16が設けられた基板60を形成した。
一方、ガラス基板21上に、常用の方法で、厚み1.2μmのカラーフィルタ22およびブラックマトリクス23を形成した。さらにその上に、配向膜16と同じ材料、同じプロセスにて、配向膜26として垂直配向膜を形成した。これにより、ガラス基板21上に、カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23、配向膜26が、この順に設けられた基板70を形成した。また、このようにして形成した配向膜16・26の乾燥膜厚は1000Å(=0.1μm)であった。
その後、上記基板60・70のうち一方の基板上に、スペーサとして、直径3.25μmの樹脂ビーズ「ミクロパールSP20325」(商品名、積水化学工業株式会社製)を分散させた。一方、上記基板に対峙する他方の基板上に、シール剤として、シール樹脂「ストラクトボンドXN−21S」(商品名、三井東圧化学工業株式会社製)を印刷した。
次に、上記基板60・70を貼り合わせ、135℃で1時間焼成した。
その後、上記基板60・70間に、液晶材料としてメルク株式会社製のポジ型液晶材料(Δε=20、Δn=0.15)を真空注入法にて封入することにより、一対の基板60・70間に液晶層50が挟持された液晶セル301を作製した。
続いて、上記液晶セル301の表裏面に、偏光板35・36を、偏光板35・36の透過軸が直交し、かつ櫛歯電極14・15における各枝電極14A・15Aの延伸方向と偏光板35・36の透過軸とが45゜の角度をなすように貼合した。これにより、図25に示す液晶パネル300を作製した。
図26に、図25に示す、横電界駆動方式を用いた従来の垂直配向型の液晶パネル300における、正面(極角0度)の各サブ画素6R・6G・6BでのVTカーブを示す。なお、図26中、横軸は印加電圧を示し、縦軸は、透過率を規格化した、規格化透過率(透過率比)を示す。
また、図26に示す、各サブ画素6R・6G・6Bにおける印加電圧と規格化透過率との関係を、表1に示す。
図26に示すように、R(赤)色のサブ画素6RおよびG(緑)色のサブ画素6Gでは同形状のVTカーブが得られるが、B(青)色のサブ画素6Bでは、サブ画素6R・6Gよりも低電圧側でVTカーブが最大値を示し、その後、サブ画素6R・6Gよりも低下する。
このため、上記液晶パネル300では、RGBの3色の合成である白の色味が、B成分(青色成分)が少なくなるため、黄色味掛かる。これが、横電界駆動方式を用いた従来の垂直配向型の液晶パネル300における正面の色味変化の理由である。
したがって、電圧の印加に付随して色味が変化しないようにするためには、各色のサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブの形状が同形状であることが望ましい。
そこで、本願発明者らは、各色のサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブの形状を揃えるべく、まず、駆動画素内のV−T特性を部分的に変化させ、異なる2つ以上のV−T特性を持たせる(以下、「マルチVT化」と記す)ことを試みた。
液晶表示装置は、各種表示装置のなかでも薄型で軽量かつ消費電力が小さいといった利点を有する一方、視野角特性が狭いという課題を有している。この要因としては、液晶表示装置は、表示特性が視角により変化することが挙げられる。
液晶表示装置は、液晶層に電界を印加して液晶セル内の液晶分子を動作(回転)させることで液晶セルを透過する光量を制御して表示を行う。ところが、液晶分子は棒状であるため、例えば液晶表示装置における液晶パネルを正面方向から見た場合と斜め方向から見た場合とでは複屈折の状態が異なる。このため、視角によってV(電圧)−T(透過率)特性が変化する。
この結果、例えば斜め方向から見た場合の白浮き現象が生じ、液晶パネルに表示されている内容が斜め方向から見づらくなるという問題が生じる。なお、斜め方向から見た場合の白浮き現象とは、電圧印加時の黒表示における斜め視角方向の透過率が十分に小さくならず、表示が白く浮いた状態になる現象(輝度浮き)を示す。
そこで近年、このような問題点を解決すべく、マルチVT化によって、液晶パネルを正面から見た場合と斜めから見た場合とでのV−Tのずれを平均化し、視野角特性を改善する技術が幾つか提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
図28は、特許文献2に記載の液晶表示装置における要部の概略構成を示す平面図である。
図28に示すように、特許文献2に記載の液晶表示装置は、IPSモードのように、電界無印加時に液晶分子404が基板面に平行な方向に配向する水平配向型の液晶セルに、一方の基板401に設けられた駆動電極402・403(画素電極および共通電極)間に発生する横電界を印加することで表示を行う水平配向−横電界駆動型の液晶表示装置である。
このような水平配向−横電界駆動型の液晶表示装置において駆動電極402・403に屈曲部402a・403aを設け、これら屈曲部402a・403aを結ぶA−A線でこれら駆動電極の形状が線対称となるようにこれら駆動電極を形成してマルチVT化すると、上記A−A線によって分割されるこれら駆動電極間の2つの領域で、電界が各々異なった方向に発生する。
このため、このような水平配向−横電界駆動型の液晶表示装置においてこれら駆動電極に上記したように屈曲部402a・403aを設けると、白表示状態において斜め方向から見たときに、2つの領域で異なる色の色付きが生じ、それらが互いに補償し合うことで色付きが低減する。
しかしながら、このような液晶表示装置においては、画素領域の開口率を大きく保つように駆動電極402・403を形成する必要がある。このため、両電極を密集して形成することはできず、印加電圧が小さいと電界が小さくなるため、応答に時間がかかる。
そこで、特許文献2では、図28に示すように、さらに、駆動電極402の屈曲角度と駆動電極403の屈曲角度とを互いに異ならせることで、画素内における駆動電極402・403間の電極間隔を徐々に変化させ、これにより画素内における電極幅と電極間隔との比を徐々に変化させている。
これにより、特許文献2では、斜め方向から見たときの色付きの低減を図る一方、電極間隔が広い部分では、大きい電圧を印加すると電界強度が大きくなるようにし、電極間隔が狭い部分では、小さい電圧で大きな電界が加わるようにして中間調表示の応答の改善を図っている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、角度差が大きくなりすぎると画素内の駆動電極の占める面積が大きくなり、開口率を低下させる。このため、特許文献2のように駆動電極402・403に屈曲部402a・403aを設けてマルチVT化する方法は、何れにしても開口率による規制が大きい。
また、図29は、特許文献3に記載の液晶表示装置における要部の概略構成を示す断面図である。
特許文献3に記載の液晶表示装置は、図29に示すように、一対の基板501・511が、互いに同一方向にラビングされた配向膜502・512を有する水平配向型の液晶セル520を備え、該液晶セル520に、一方の基板501に設けられた画素電極503と共通電極504との間に発生する横電界を印加することで表示を行う、水平配向−横電界駆動型の液晶表示装置である。
特許文献3には、図29に示すように、上記他方の基板511に、互いに透過波長が異なる、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色の色層513〜515を設け、各色層513〜515における透過波長に応じて画素内のセル厚dR、dG、dBをそれぞれ異ならせてマルチVT化することで、どの方向からみても全く色つきのない液晶表示装置を得ることができることが開示されている。
しかしながら、特許文献3に記載の技術は、上記したように各色層513〜515における透過波長に応じて画素内のセル厚dR、dG、dBを変化させる必要がある。このため、セル厚の設定に技術的な規制が大きく、しかも製造プロセスが複雑化するという問題点がある。
図30の(a)・(b)および図31は、それぞれ、特許文献4に記載の液晶表示装置における要部の概略構成を示す断面図である。
特許文献4に記載の液晶表示装置は、図30の(a)・(b)および図31に示すように、一対の基板(図示せず)にそれぞれ駆動電極601・602を設け、上記一対の基板間に挟持された液晶層603に上記駆動電極601・602間に発生する縦電界を印加することで表示を行う縦電界駆動型(垂直配向−縦電界駆動型または水平配向−縦電界駆動型)の液晶表示装置である。
図30の(a)に示す例では、一対の基板のうち一方の基板の駆動電極601上に絶縁層604を設けることでマルチVT化している。また、図30の(b)に示す例では、両基板に設けられた駆動電極601・602上に、それぞれ絶縁層604を設けることでマルチVT化している。
特許文献4によれば、図30の(a)・(b)および図31に示すように縦電界駆動方式を用いた液晶表示装置において、少なくとも一方の駆動電極上に、縦電界を印加したときに画素領域での電界の向きを異ならせる絶縁層604を設けると、例えば図30の(a)・(b)に破線で示すように、電気力線が、絶縁層604によって駆動電極601・602に垂直な方向に対して傾斜する。
さらに、図31に示す例では、一方の基板の駆動電極601上に絶縁層604を一様に形成し、その後、絶縁層604の一部に紫外線を照射して、紫外線を照射した領域604aの比誘電率を、紫外線を照射しない領域604bの比誘電率よりも減少(ε>3)させることでマルチVT化している。なお、図31に示す例では、絶縁層604並びに他方の駆動電極602上には、垂直配向膜605・606がそれぞれ設けられている。
しかしながら、図30の(a)・(b)に示す技術は、垂直方向に電界駆動するVA方式において効果を発揮するものである。
一方、図31に記載の技術に関し、本願発明者らが、後述する図25に示す、垂直配向(VA)タイプの垂直電界型の液晶パネル200を用いて、その視野角特性について検証を行った結果、視野角特性を十分に改善することはできなかった。
したがって、従来、様々な表示方式におけるマルチVT化の検討はなされているものの、本発明が目的とする、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルおよび液晶表示装置における正面での色味変化の改善は勿論のこと、斜め方向から見たときの白浮き現象が少なく、視野角特性に優れ、かつ、特別なセル厚変更や駆動電極の設計を必要とせず、簡素な工程で製造が可能な液晶パネル並びに液晶表示装置は、未だ知られていない。
そこで、本願発明者らは、正面の色味変化が少ない、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルおよび液晶表示装置を提供することを第1の目的とし、さらに、正面での色味変化の低減に加え、斜め方向から見たときの白浮き現象が少なく、視野角特性に優れ、かつ、特別なセル厚変更や駆動電極の設計を必要とせず、簡素な工程で製造が可能な液晶パネル並びに液晶表示装置について、鋭意検討を行った。
すなわち、液晶パネル正面の色調の黄変は、各色のVTカーブが異なるためであり、この問題を解決するには、マルチVT化する必要がある。また、斜め方向から見たときの白浮きの改善には、マルチVT化が有効である。
そこで、本願発明者らが鋭意検討した結果、本願発明者らは、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、1つの画素内に、比誘電率が異なる絶縁層からなる少なくとも2つの領域を設けることで、斜めから見たときの白浮きがなく、高速応答が可能でかつ簡素な工程で製造が可能な液晶パネルを形成することができることを見出した。
前記したように特許文献4には、絶縁層に比誘電率が異なる領域を設けることで、VAタイプの液晶表示装置のマルチVT化が可能となることが開示されている。しかしながら、VAタイプの液晶表示装置では、これによって十分な視野角特性の改善は望めない。
しかしながら、本願発明者らがさらに検討を行った結果、驚くべきことに、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、少なくとも一方の基板に絶縁層を設けるとともに、該絶縁層の比誘電率を部分的に変更し、1つの画素内に、比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を設けると、容易にマルチVT化が可能であるのみならず、斜めから見たときの白浮きを十分に改善することができることが判った。
このように横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、1つの画素内に、比誘電率が異なる絶縁層からなる少なくとも2つの領域を設けると、液晶パネルにおける、各絶縁層に対応した領域に、それぞれ形状の異なる等電位線が形成されることで、画素内の電界条件が部分的に変更され、画素内に、異なる電圧−透過率カーブ(以下、「VTカーブと記す」)を有する少なくとも2つの電界領域が形成される。これにより、簡素な工程で、斜め方向から見たときの白浮きが改善される。
しかも、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルは、電界の印加によりセル内に弓なり状(ベンド状)の液晶配向分布が形成されることから、ベンド配向に基づく高速応答性、自己補償型配列による広視野角、垂直配向に起因する高コントラストを得ることができる。
しかしながら、上記したようにマルチVT化しただけでは、色味変化の問題は解決されない。
そこで、本願発明者らは、この液晶パネル正面の色調の黄変を改善すべく、さらに鋭意検討を行った。
この結果、本願発明者らは、各色のサブ画素における絶縁層の比誘電率を、各色のVTカーブの形状が近似するように組み合わせることで、液晶パネル正面の色味を調整することができることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち、本願発明者らは、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、一対の基板のうち少なくとも一方の基板に絶縁層を設けるとともに、各色のサブ画素における領域の絶縁層の比誘電率を、特定の範囲内に設定することで、階調反転が生じず、しかも、各サブ画素におけるVTカーブの形状を近似させることができ、この結果、正面での色味変化が少ない液晶パネルを提供することができることを見出した。
また、本願発明者らは、同時に、色味変化のみを問題とした場合、上記液晶パネルの絶縁層のεが3の場合は、必ずしも各色のサブ画素における絶縁層のεが異なる領域を有している必要はないことを見出した。
すなわち、電圧の印加に付随して色味が変化しないようにするためには、階調反転が生じず、かつ、各色のサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブの形状ができるだけ近似(望ましくは同形状)していればよいことが判った。
また、本願発明者らは、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、各色のカラーフィルタ層を有する複数のサブ画素からなる1つの画素内に、比誘電率が異なる絶縁層からなる少なくとも2つの領域を設けることで等電位線の形状が異なる少なくとも2つの電界領域を設けてマルチVT化するとともに、各色のVTカーブの形状が近似するように各色のサブ画素における絶縁層の比誘電率を設定することで、正面での色味変化が少なく、かつ、視野角特性に優れるとともに、簡素な工程で製造が可能な液晶パネルを提供することができることを見出した。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図20に基づいて説明すれば以下の通りである。
まず、本実施の形態にかかる液晶パネル並びに液晶表示装置の概略構成について以下に説明する。
図3は、本実施の形態にかかる液晶表示装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
本実施の形態にかかる液晶表示装置1は、図3に示すように、液晶パネル2(液晶表示パネル、液晶表示素子)、駆動回路3、およびバックライト4(照明装置)を備えている。上記駆動回路3およびバックライト4の構成は従来と同じである。したがって、これらの構成については、その説明を省略する。
図1は、上記液晶パネル2の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。また、図2は、上記液晶パネル2の櫛歯電極と、等電位線の形状が異なる電界領域との関係を示す平面図である。
本実施の形態にかかる液晶パネル2は、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルである。
図1および図3に示すように、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、液晶セル5と、偏光板35・36と、必要に応じて位相差板37・38とを備えている。
上記液晶セル5は、アレイ基板および対向基板として、互いに対向して配置された一対の基板10・20を備え、これら一対の基板10・20間に、液晶層50が挟持された構成を有している。
また、上記一対の基板10・20のうち少なくとも一方の基板(つまり、少なくとも観察者側の基板)は、絶縁基板(液晶層保持部材、ベース基板)として、ガラス基板等の透明基板を備えている。以下、本実施の形態では、絶縁基板として、それぞれガラス基板を用いた場合を例に挙げて説明するが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
上記基板10・20としては、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)基板等のアレイ基板や、CF(カラーフィルタ)基板等を用いることができる。
なお、以下の説明では、表示面側(観察者側)の基板を上側の基板とし、他方の基板を下側の基板として説明するとともに、下側の基板10としてアレイ基板を使用し、上側の基板20として対向基板を使用した場合を例に挙げて説明する。しかしながら、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
ここで、まず、液晶セル5における各構成について説明する。はじめに、基板10(第1の基板、アレイ基板)の構成について説明する。
基板10は上記したようにアレイ基板であり、スイッチング素子として、例えば、図示しないTFTを備えている。
基板10は、図1に示すように、例えば、ガラス基板11上に、ベタ電極12(第3の電極)、絶縁層13(アレイ側絶縁層)、櫛歯電極14・15(第1および第2の電極、図2参照)、配向膜16が、この順に積層された構成を有している。
上記ベタ電極12および櫛歯電極14・15は、横電界発生用の電極である。
ベタ電極12は共通電極であり、ガラス基板11上に、基板10における表示領域(シール剤で囲まれた領域)を覆うように、ガラス基板11における基板20との対向面のほぼ全面に渡ってベタ状に形成されている。
また、絶縁層13は、ベタ電極12を覆うように、基板10における表示領域全体にベタ状に形成されている。
上記絶縁層13上に形成された櫛歯電極14・15は、櫛歯状の電極であり、幹電極(幹ライン)と、幹電極から延びる枝電極14A・15A(分岐ライン)とで構成されている。
これら櫛歯電極14・15は、図1および図2に示すように、櫛歯の歯にあたる、各櫛歯電極14・15の枝電極14A(14A1、14A2、…14Am;mは1以上の整数)と枝電極15A(15A1、15A2、…15An;nは1以上の整数)とが互いに噛み合うように交互に配置されている。
なお、1つの画素内に設けられる櫛歯電極14・15の歯(枝電極14A・15A)の数(m、n)は特に限定されず、画素ピッチとの関係等において決定される。例えば、上記画素ピッチが100μmであり、櫛歯電極14・15の電極幅L(すなわち、電極ラインとなる各枝電極14A・15Aの幅)が4μm、櫛歯電極14・15間の電極間隔S(すなわち、スペースとなる各枝電極14A・15A間の距離)が4μmである場合には、1個の画素内に各櫛歯電極14・15における枝電極14A・15Aを、それぞれ6本ずつ、計12本設けることができる。
上記櫛歯電極14・15のうちの一方の櫛歯電極14(第1の電極)は共通電極であり、ベタ電極12と同電位(主に0V)となっている。また、他方の櫛歯電極15(第2の電極)は画素電極であり、図示しないドレイン電極で、信号線およびTFT等のスイッチング素子に接続されており、映像信号に応じた信号が印加される。
また、配向膜16は、電界無印加時に液晶層の液晶分子を基板面に垂直に配向させるいわゆる垂直配向膜である。なお、上記「垂直」には、「略垂直」も含まれる。配向膜16は、ガラス基板11上に、櫛歯電極14・15を覆うように設けられている。
上記したように、基板10は、共通電極と画素電極とが絶縁層を介して重畳配置される、いわゆるFFS(Fringe Field Switching)モードの表示方式を用いた液晶パネルにおける電極基板(アレイ基板)の電極構成に類似の構成を有している。したがって、以下、上記構成を有する基板を、「FFS構造」の基板と称する。
但し、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、単に基板10の電極構成に上記したFFS構造を採用しているにすぎず、いわゆるFFSモードの液晶パネルとは異なるものである。
FFSモードは、電圧無印加時に、一対の基板間に挟まれた液晶分子の長軸方向が基板面に平行なホモジニアス配向している。これに対し、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、電圧無印加時に、一対の基板10・20間に挟まれた液晶分子52の長軸方向が基板面に垂直なホメオトロピック配向を示している。このため、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、FFSモードとは、液晶分子52の挙動が全く異なっている。
また、櫛歯電極の電極幅をLとし、電極間距離をSとし、セルギャップ(液晶層の厚み)をDとすると、FFSモードでは、電極間隔Sを電極幅LやセルギャップDよりも小さくしていわゆるフリンジ電界を生じさせることで表示を行っている。
しかしながら、本実施の形態では、後述する実施例に示すように、電極間隔SをセルギャップDよりも大きく設定している。但し、本発明において、液晶セル5全体の透過率とセルギャップDとの間に必ずしも相関はない。このため、セルギャップDは、特に限定されない。
次に、基板20(第2の基板、CF基板)の構成について説明する。
基板20は、ガラス基板21上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色のカラーフィルタ22およびブラックマトリクス23、ベタ電極24(第4の電極)、絶縁層25(CF側絶縁層)、配向膜26が、この順に設けられた構成を有している。
各画素6(つまり、1画素)は、R、G、Bの3つのサブ画素6R・6G・6B(ドット)で構成されている。各サブ画素6R・6G・6Bには、図1に示すように、R、G、Bのそれぞれの波長の光を透過する、R、G、Bの各色のカラーフィルタ22が形成されている。
なお、図1および図2では、図示並びに説明の便宜上、櫛歯電極14・15の隣り合う枝電極15A・14A間に対応して各サブ画素6R・6G・6Bが設けられているものとする。しかしながら、上記したように、枝電極14A・15Aの数(m、n)は、実際には、例えば各櫛歯電極14・15の電極幅Lおよび電極間隔Sと画素ピッチとの関係において決定され、各サブ画素6R・6G・6B内に複数の枝電極15A・14Aが設けられていてもよいことは、説明するまでもない。
また、ベタ電極24は共通電極であり、カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23を覆うように、基板20における表示領域(すなわち、図示しないシール剤で囲まれた領域)全体にベタ状に形成されている。
絶縁層25は、ベタ電極24を覆うように、基板20における表示領域全体にベタ状に形成されている。絶縁層25は、1つの画素6内に、比誘電率(比誘電率)が異なる絶縁層からなる少なくとも2つの領域を有し、オーバーコート層(平坦化層)として機能する一方、等電位線の形状が異なる少なくとも2つの電界領域を形成するマルチVT層として機能する。
配向膜26は、配向膜16同様、いわゆる垂直配向膜である。配向膜26は、上記絶縁層25を覆うようにベタ状に設けられている。
次に、上記基板10・20における各層の材料並びにその形成方法について説明する。
上記櫛歯電極14・15およびベタ電極12・24としては、少なくとも観察者側の基板に設けられたベタ状電極が透明な電極材料にて形成されていれば、特に限定されるものではない。これら電極は、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)等の透明電極材料からなっていてもよく、アルミニウム等の金属からなっていてもよい。また、これら電極は、互いに同じ電極材料にて形成されていてもよく、それぞれ異なる電極材料にて形成されていもよい。
これら電極を形成(積層)する方法は特に限定されるものではなく、スパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD法等、従来公知の各種方法を適用することができる。また、これら電極のうち櫛歯電極14・15をパターン形成する方法も特に限定されるものではなく、フォトリソグラフィ等の公知のパターニング方法を用いることができる。
これら電極の膜厚は特に限定されるものではないが、好適には、100Å〜2000Åの範囲内において設定される。
また、絶縁層13・25としては、アクリル系樹脂等の有機絶縁材料、窒化シリコン(SiN)等の無機絶縁材料等、各種絶縁材料を用いることができる。
本実施の形態では、絶縁層13は、1層、すなわち、絶縁層13の形成領域全体に渡って同じ絶縁材料(1種の絶縁材料)にて形成されている。
一方、絶縁層25には、1つの画素6内に、比誘電率が異なる絶縁材料からなる少なくとも2つの領域(すなわち、少なくとも2種類の絶縁層)が設けられている。
各サブ画素6R・6G・6Bには、それぞれ異なる比誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁層25が形成されていてもよく、各画素6を構成するこれら3つのサブ画素6R・6G・6Bのうち何れか2つのサブ画素における絶縁層25に対し、比誘電率が同じ絶縁材料(例えば同じ絶縁材料)が共通して用いられていてもよい。したがって、1つの画素6内には、絶縁層25として、それぞれ比誘電率が異なる絶縁材料からなる3種類の絶縁層が形成されていてもよく、2種類の絶縁層が形成されていてもよい。
図1は、一例として、櫛歯電極14・15の各枝電極15A・14Aの中央部を境界とする、枝電極15A1・14A1間、枝電極14A1・15A2間、枝電極15A2・14A2間に対応する、絶縁層25における各領域を、それぞれ領域25A・25B・25Cとすると、サブ画素6R・6Gに対応する領域25A・25Bの比誘電率が同じであり、サブ画素6Bに対応する領域25Cの比誘電率が他とは異なっている例を示している。
このため、図1および図2に示すように、液晶パネル2における、櫛歯電極14・15の各枝電極15A・14Aの中央部を境界とする、枝電極15A1・14A1間、枝電極14A1・15A2間、枝電極15A2・14A2間に対応する電界領域をそれぞれ電界領域31〜33とすると、サブ画素6R・6Gに対応する電界領域31・32とサブ画素6Bに対応する電界領域33とでは、図1に示すように等電位線の形状が異なっている。
言い換えれば、図1に示す例では、1つの画素6内に、互いに等電位線の形状が異なる、電界領域31・32からなる第1の電界領域と、電界領域33からなる第2の電界領域との2つの電界領域が設けられている。
但し、図1に示す例はあくまでも実施の一形態であり、上記液晶パネル2には、1つの画素6内に、互いに等電位線の形状が異なる3つの電界領域が設けられていてもよい。また、第1の電界領域と第2の電界領域との組み合わせ、つまり、等電位線の形状が同じサブ画素と異なるサブ画素との組み合わせは、特に限定されない。
すなわち、領域25A〜25Cのうち互いに隣り合う領域(すなわち、互いに隣り合う絶縁層形成領域)には、前記したように、絶縁層25として、それぞれ異なる比誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁層が形成されていてもよく、何れか2つの領域に、他の1つの領域とは異なる比誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁層が形成されていてもよい。
また、何れかのサブ画素6R・6G・6B内にも、比誘電率が異なる領域が少なくとも2つ設けられていてもよい。すなわち、上記液晶パネル2において1つの画素6内に形成される電界領域の数は2以上の複数であれば特に限定されるものではなく、画素ピッチや、1つの画素6内に形成される櫛歯電極14・15の歯にあたる枝電極14A・15Aの数に応じて、適宜設定が可能である。
なお、上記絶縁層25の厚さは、電界を効率よく曲げるためには、例えば1μm以上、5.0μm以下の範囲内であることが好ましく、2.3μm以上、5.0μm以下の範囲内であることがより好ましい。
また、隣り合う第1の電界領域における絶縁層25の比誘電率(ε)と第2の電界領域における絶縁層25の比誘電率(ε)との差は、電界を効率よく曲げる観点からすれば、2〜4.5の範囲内が好ましい。
また、絶縁層13・25には、同じ絶縁材料を共通して用いてもよく、互いに異なる絶縁材料を用いてもよい。
これら絶縁層13・25を形成(積層)する方法は、特に限定されるものではなく、スパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD、塗布等、用いる絶縁材料等に応じて、従来公知の各種方法を適用することができる。
また、絶縁層25の比誘電率を部分的に変更する方法としては、例えば、絶縁層25に用いる何れか1種の絶縁材料を、表示領域全体にベタ状に成膜した後、該ベタ状の絶縁層の一部をフォトリソグラフィにより抜き取り、この絶縁層を抜き取った部分に、比誘電率が異なる絶縁材料からなる絶縁層を成膜する方法が挙げられる。なお、この場合、絶縁層を抜き取った部分に後から成膜する絶縁層は、好適には、抜き取った絶縁層と同膜厚となるように成膜される。
また、ベタ状に形成された絶縁層25に、部分的に紫外線照射等を行うことによっても、絶縁層25の比誘電率を部分的に変更することが可能である。
このように、上記絶縁層25の厚さを、比誘電率に拘らず一定とすることで、画素6内で複数のセル厚(液晶層50の厚さ)を制御する必要がなく、製造が容易になる。
また、液晶分子52のダイレクタが対称になるような領域を画素6内に設ける場合、画素6内における上記セル厚が均一であると、上記ダイレクタの対称性が崩れ難くなるため、視野角特性をより改善することができる。
また、配向膜16・26の材料並びに形成方法も特に限定されるものではない。上記配向膜16・26は、例えば、上記櫛歯電極14・15あるいはカラーフィルタ22およびブラックマトリクス23上に、垂直配向規制力を有する公知の配向膜材料を塗布することで形成することができる。
上記液晶パネル2における液晶セル5は、上記基板10と基板20とを、図示しないスペーサを介して図示しないシール剤によって貼り合わせ、両基板10・20間の空隙に、液晶材料を含む媒質を封入することにより形成される。
上記液晶材料としては、液晶分子52の比誘電率異方性Δεが正のp(ポジ)型液晶材料、液晶分子52の比誘電率異方性Δεが負のn(ネガ)型液晶材料の何れを用いることもできる。
上記p型液晶材料としては、具体的には、例えば、ネマチック液晶材料が挙げられる。また、上記n型液晶材料としては、例えば、バナナ(BANANA)型の液晶材料が挙げられる。なお、本実施の形態では、上記液晶材料として、p型液晶材料を用いた場合を例に挙げて説明するが、p型液晶材料を用いる場合とn型液晶材料を用いる場合との相違点は、ベンド配列(ベンド配向)の向きが異なる点のみであり、本発明は、これによって何ら限定されるものではない。
液晶パネル2は、図1および図3に示すように、上記液晶セル5に、偏光板35・36および必要に応じて位相差板37・38を貼り合わせることにより形成される。
偏光板35・36は、図1および図3に示すように、基板10・20における液晶層50との対向面とは反対側の面にそれぞれ設けられる。また、位相差板37・38は、図3に示すように、例えば、基板10・20と偏光板35・36との間に、必要に応じて設けられる。なお、位相差板37・38は、液晶パネル2の一方の面にのみ設けられていてもよい。また、正面透過光のみを利用する表示装置の場合には、位相差板37・38は必ずしも必須ではない。
偏光板35・36は、例えば、偏光板35・36の透過軸が互いに直交し、かつ、枝電極14A・15Bがそれぞれ延伸される方向と偏光板35・36の透過軸とが45゜の角度をなすように配置される。
次に、上記液晶パネル2の表示方式(垂直配向横電界モード)について、図1を参照して以下に説明する。
上記液晶パネル2は、基板10・20の表面に、前記したように、配向膜16・26として、垂直配向膜が設けられた構成を有している。このため、上記液晶パネル2において、液晶分子52は、電界無印加時に、基板面に垂直に配向している。
上記液晶パネル2において、表示は、上記基板10における画素電極と共通電極との間に電位差が与えられることで行われる。すなわち、上記液晶パネル2の表示は、上記一対の櫛歯電極14・15間並びに櫛歯電極15とベタ電極12との間に電位差が与えられることで行われる。この電位差により、櫛歯電極14・15間並びに櫛歯電極15とベタ電極12との間に横電界が発生し、櫛歯電極14・15間の電気力線が半円状に湾曲する。液晶分子52は、液晶セル5内の電界強度分布、および界面からの束縛力に応じて配列する。
これにより、p型液晶材料を用いた場合、液晶分子52が、図1に示すように、基板厚み方向に弓なりにベンド配列する。なお、n型液晶材料を用いた場合には、液晶分子52は、基板面内方向に弓なりにベンド配列する。これにより、何れの場合にも、基板面に垂直な方向に進行する光に対して複屈折性を示す。
このように、上記液晶パネル2においては、櫛歯電極14・15間に発生する横電界により液晶分子52を回転させることで、液晶パネル2を透過する光量を制御して表示が行われる。
液晶分子52は、電圧印加により、ホメオトロピック配向からベンド配列へと連続的に変化する。この結果、通常の駆動においては、液晶層50は、図1に示すように常にベンド配列を呈し、階調間応答で高速応答が可能となる。
また、本モードでは、このように、垂直配向による高コントラスト性を保ちながら横電界駆動することで液晶分子52の配向方位を規定している。このため、MVAモードのような突起物による配向制御が不要であり、単純な画素構成で優れた視野角特性を有している。
また、上記したように垂直配向モードにおいて横電界駆動を行うことで、電界印加によりベンド状(弓なり状)の電界が形成され、隣り合う櫛歯電極14・15間に、互いにダイレクタ方位が略180度異なる2つのドメインが形成されるとともに、これに伴い、広い視野角特性を得ることができる。
したがって、上記液晶パネル2は、ベンド配向に基づく高速応答性、自己補償型配列による広視野角、垂直配向に起因する高コントラストを得ることができるという利点を有するとともに、構造がシンプルであり、製造が容易で、安価に製造することができるという利点を有している。
しかも、上記液晶パネル2は、上記したようにFFS構造を有していることで、櫛歯電極14・15間のみならず、櫛歯電極14・15上の液晶分子52も駆動される。このため、ベタ電極12を設けない場合と比較して、開口率を大きくすることができるという利点を有している。
次に、上記液晶パネル2の製造方法について、後述する検証に用いた各サンプル(液晶パネル(1)〜(3))の製造方法を例に挙げて具体的に説明するとともに、上記液晶パネル2の効果について検証した結果について、以下に説明する。
但し、以下の説明における各構成要素の具体的な寸法、材質、製造方法等は、上記したように検証に用いた一条件に過ぎず、以下の説明によって本発明の範囲が限定解釈されるべきではない。また、以下の製造方法について、特に言及しない限りは、各サンプルにおける製造条件は、同一とした。
〔液晶パネル(1)〜(3)〕
まず、図1に示すように、ガラス基板11上に、スパッタリング法により、ITOを、厚み1000Åで全面に成膜した。これにより、ガラス基板11の表示領域全面を覆うベタ電極12を形成した。
次に、スパッタリング法により、上記ベタ電極12全面を覆うように、ε=3.7のアクリル系の絶縁材料(第1の絶縁材料)を、厚さ1〜3μmでスピンコート法で塗布・製膜することにより、アレイ側絶縁層として、各サンプルでそれぞれ厚みの異なる絶縁層13を形成した。
続いて、上記絶縁層13上に、上層電極として、ITOからなる櫛歯電極14・15を、厚み=1000Å、電極幅L=4μm、電極間隔S=4μmにて形成した。
次いで、上記絶縁層13上に、上記櫛歯電極14・15を覆うように、JSR社製の配向膜塗料「JALS−204」(商品名、固形分5wt.%、γ−ブチロラクトン溶液)を、スピンコート法にて塗布した。その後、200℃にて2時間焼成することにより、液晶層50との対向面となる表面に、垂直配向膜である配向膜16が設けられた基板10を形成した。
一方、ガラス基板21上に、常用の方法で、厚み1.2μmのカラーフィルタ22およびブラックマトリクス23を形成した。さらにその上に、スパッタリング法により、ITOを、厚み1000Åで全面に成膜した。これにより、ガラス基板21の表示領域全面を覆うベタ電極24を形成した。
次に、上記ベタ電極24上に、部分的に比誘電率が異なる絶縁層25を形成すべく、まず、ε=3.7のアクリル系の上記絶縁材料(第1の絶縁材料)を、厚さ1〜3μmで、上記ベタ電極24上に、その全面に渡って、スピンコート法で塗布・成膜した。
その後、比誘電率が異なる領域を形成するために、上記第1の絶縁材料からなる絶縁層の一部をフォトリソグラフィにより抜き取り、この絶縁層を抜き取った部分に、ε=6.9のSiN(第2の絶縁材料)を、スパッタリング法で、抜き取った絶縁層と同膜厚となるように形成した。これにより、CF側絶縁層として、前記したように1画素内に比誘電率が異なる2つの領域を有するとともに、各サンプルでそれぞれ厚みの異なる絶縁層25を形成した。
次に、配向膜16と同じ材料、同じプロセスにて、上記絶縁層25上に、配向膜26として垂直配向膜を形成することで、基板20を形成した。このようにして形成した配向膜16・26の乾燥膜厚は1000Å(=0.1μm)であった。
その後、上記基板10・20のうち一方の基板上に、スペーサとして、直径3.25μmの樹脂ビーズ「ミクロパールSP20325」(商品名、積水化学工業株式会社製)を分散させた。一方、上記基板に対峙する他方の基板上に、シール剤として、シール樹脂「ストラクトボンドXN−21S」(商品名、三井東圧化学工業株式会社製)を印刷した。
次に、上記基板10・20を貼り合わせ、135℃で1時間焼成した。
その後、上記基板10・20間に、液晶材料としてメルク株式会社製のポジ型液晶材料(Δε=20、Δn=0.15)を真空注入法にて封入することにより、一対の基板10・20間に液晶層50が挟持された液晶セル5を作製した。
続いて、上記液晶セル5の表裏面に、偏光板35・36を、偏光板35・36の透過軸が直交し、かつ櫛歯電極14・15における各枝電極14A・15Aの延伸方向と偏光板35・36の透過軸とが45゜の角度をなすように貼合した。これにより、図1に示す液晶パネル2(液晶表示素子)として、絶縁層13・25の厚みがそれぞれ異なる液晶パネル(1)〜(3)を作製した。
次に、上記液晶パネル2の効果を検証すべく、比較に用いた液晶パネルの構造について、その製造方法と併せて以下に説明する。
なお、以下の説明では、主に、上記液晶パネル2との相違点について説明するものとする。また、前記した液晶パネル2・300における各構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
〔液晶パネル100〕
図4は、比較に用いた液晶パネル100の要部の概略構成を示す断面図である。
図4に示す比較用の液晶パネル100は、基板20に代えて、ベタ電極24およびCF側絶縁層である絶縁層25が設けられていない基板70を備えている点で、図1に示す液晶パネル2と異なっている。
基板70は、ベタ電極24およびCF側絶縁層である絶縁層25が設けられていない点を除けば、図1に示す基板20と同じ構成を有している。
以下に、検証に用いた、図4に示す構造を有する液晶パネル100の各サンプル(液晶パネル(A)〜(C))の製造方法について具体的に説明する。なお、以下の製造方法においても、特に言及しない限りは、各サンプルにおける製造条件は、同一とした。
〔液晶パネル(A)〜(C)〕
まず、液晶パネル(1)〜(3)における基板10の製造方法と同じ材料、同じプロセスにて、液晶パネル(1)〜(3)における基板10と同じ構造を有する基板10をそれぞれ形成した。
一方、ベタ電極24および絶縁層25を形成しなかったことを除けば、液晶パネル(1)〜(3)における基板20の製造方法と同じ材料、同じプロセスにて、各液晶パネル(A)〜(C)に用いる基板70を形成した。
具体的には、ガラス基板21上に、液晶パネル(1)〜(3)と同じ材料、同じプロセスで、カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23を形成した。
次いで、上記カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23上に、配向膜16と同じ材料、同じプロセスにて、配向膜26として垂直配向膜を形成した。これにより、ガラス基板21上に、カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23、配向膜26が、この順に設けられた基板70を形成した。また、このようにして形成した配向膜16・26の乾燥膜厚は1000Å(=0.1μm)であった。
その後、上記基板10・70のうち一方の基板上に、スペーサとして、直径3.25μmの樹脂ビーズ「ミクロパールSP20325」を分散させた。一方、上記基板に対峙する他方の基板上に、シール剤として、シール樹脂「ストラクトボンドXN−21S」を印刷した。
次に、上記基板10・70を貼り合わせ、135℃で1時間焼成した。
その後、上記基板10・70間に、液晶材料としてメルク株式会社製のポジ型液晶材料(Δε=20、Δn=0.15)を真空注入法にて封入することにより、一対の基板10・70間に液晶層50が挟持された液晶セル101を作製した。
続いて、上記液晶セル101の表裏面に、液晶パネル(1)〜(3)と同様にして偏光板35・36を貼合した。これにより、図4に示す比較用の液晶パネル100(液晶表示素子)として、絶縁層13の厚みがそれぞれ異なる液晶パネル(A)〜(C)を作製した。
次に、比較に用いた他の液晶パネルの構造について、その製造方法と併せて以下に説明する。
なお、以下の説明では、主に、上記液晶パネル2との相違点について説明するものとする。また、前記した液晶パネル2・100・300における各構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
〔液晶パネル200〕
図5は、比較に用いた液晶パネル200の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、液晶パネル200は、垂直配向(VA)タイプの垂直電界型の液晶パネルであり、液晶パネル2とは表示方式が異なっている。
液晶パネル200は、図5に示すように、基板210(アレイ基板)と、基板220(対向基板)との間に液晶層50が挟持された構成を有している。
基板210は、ガラス基板211上に、ベタ電極からなるアレイ電極212(画素電極)、絶縁層213、配向膜214がこの順に設けられた構成を有している。
基板220は、ガラス基板221上に、カラーフィルタ222およびブラックマトリクス223、ベタ電極からなる対向電極224(共通電極)、配向膜225がこの順に設けられた構成を有している。
配向膜214・225は垂直配向膜であり、液晶層50における液晶分子52は、電圧無印加時に、各基板210・220に対して垂直に配向している。
絶縁層213には、1つの画素6内に、比誘電率が異なる絶縁材料からなる2つの領域が設けられている。すなわち、上記液晶パネル200では、部分的に比誘電率が異なる絶縁層213が、アレイ基板である基板210側のベタ電極であるアレイ電極212上に設けられている。
図5は、一例として、絶縁層213におけるサブ画素6R・6Gに対応する領域213A・213Bの比誘電率が同じであり、サブ画素6Bに対応する領域213Cの比誘電率が他とは異なっている例を示している。
以下に、検証に用いた、図5に示す構造を有する液晶パネル200の各サンプル(液晶パネル(D)〜(E))の製造方法について具体的に説明する。なお、以下の製造方法においても、特に言及しない限りは、各サンプルにおける製造条件は、同一とした。
〔液晶パネル(D)〜(E)〕
まず、図5に示すように、ガラス基板211上に、スパッタリング法により、ITOを、厚み1000Åで全面に成膜した。これにより、ガラス基板211の表示領域全面を覆うベタ状のアレイ電極212を形成した。
次に、上記アレイ電極212上に、部分的に比誘電率が異なる絶縁層213を形成すべく、まず、比誘電率ε=3.7のアクリル系の絶縁材料(第1の絶縁材料)を、厚さ1〜3μmで、上記アレイ電極212上に、その全面に渡って、スピンコート法で塗布・成膜した。
その後、比誘電率が異なる領域を形成するために、上記第1の絶縁材料からなる絶縁層の一部をフォトリソグラフィにより抜き取り、この絶縁層を抜き取った部分に、比誘電率ε=6.9のSiN(第2の絶縁材料)を、スパッタリング法で、抜き取った絶縁層と同膜厚となるように形成した。これにより、アレイ側絶縁層として、各画素6内に比誘電率が異なる2つの領域を有するとともに、各サンプルでそれぞれ厚みの異なる絶縁層213を形成した。
次いで、上記絶縁層213上に、液晶パネル(1)〜(3)の配向膜16と同じ材料、同じプロセスにて、配向膜214として垂直配向膜を形成した。これにより、ガラス基板211上に、アレイ電極212、絶縁層213、配向膜214が、この順に設けられた基板210を形成した。
一方、ガラス基板221上に、液晶パネル(1)〜(3)と同じ材料、同じプロセスで、カラーフィルタ222およびブラックマトリクス223を形成した。さらにその上に、スパッタリング法により、ITOを、厚み1000Åで全面に成膜した。これにより、ガラス基板221の表示領域全面を覆う対向電極224を形成した。
次いで、上記対向電極224上に、液晶パネル(1)〜(3)の配向膜16と同じ材料、同じプロセスにて、配向膜525として垂直配向膜を形成した。これにより、ガラス基板221上に、カラーフィルタ222およびブラックマトリクス223、対向電極224、配向膜225が、この順に設けられた基板220を形成した。なお、このようにして形成した配向膜214・225の乾燥膜厚は1000Å(=0.1μm)であった。
その後、上記基板210・220のうち一方の基板上に、スペーサとして、直径3.25μmの樹脂ビーズ「ミクロパールSP20325」を分散させた。一方、上記基板に対峙する他方の基板上に、シール剤として、シール樹脂「ストラクトボンドXN−21S」を印刷した。
次に、上記基板210・220を貼り合わせ、135℃で1時間焼成した。
その後、上記基板210・220間に、液晶材料としてメルク株式会社製のネガ型液晶材料(Δε=−3、Δn=0.1)を真空注入法にて封入することにより、一対の基板210・220間に液晶層50が挟持された液晶セル201を作製した。
続いて、上記液晶セル201の表裏面に、液晶パネル(1)〜(3)と同様にして偏光板35・36を貼合した。これにより、図5に示す比較用の液晶パネル200(液晶表示素子)として、絶縁層213の厚みがそれぞれ異なる液晶パネル(D)〜(E)を作製した。
次に、上記液晶パネル2の効果について、上記比較用の液晶パネル100・200・300を用いて検証した結果について、以下に説明する。
まず、正面の色味変化の改善について説明する前に、マルチVT化による、液晶パネル2の視野角特性の改善効果について説明する。
〔視野角特性〕
まず、本実施の形態にかかる液晶パネル2の視野角特性を、液晶パネル100との比較により検証した結果について説明する。
なお、以下の説明では、各電界領域におけるV−T特性として、各電界領域における、全体の平均の複屈折に対応するV−T特性(具体的には、白状態におけるV−T特性)について論じるものとし、色別のV−T特性についてはここでは検証しない。色別のV−T特性については、後述する、正面の色味変化に対する考察において検証するものとする。
(等電位線の形状)
本実施の形態にかかる液晶パネル2は、前記したように、1つの画素6内に、等電位線の形状が異なる電界領域を2つ有している。
そこで、まず、上述した各製造方法に記載の材料物性値およびセル構成をもとに作製した液晶パネル2・100に、それぞれ電圧を印加したときの液晶セル5・101内の電界分布と該液晶セル5・101内の液晶ダイレクタ分布とをシミュレーションにより計算した結果を、それぞれ図6および図7に示す。
なお、上記シミュレーションには、シンテック社製の「LCD−MASTER」を用いた。また、上記シミュレーションでは、電極幅L=4μm、電極間隔S=6μmとした。
図6に示す例では、櫛歯電極14における各枝電極14Aを中心として、電界のまとまりが2個形成されている。つまり、液晶セル5には、互いに隣り合う、第1の電界領域と第2の電界領域とにそれぞれ電界のまとまりが形成されている。図6に示すように、第1の電界領域における電界のまとまりと第2の電界領域における電界のまとまりとは、互いに異なっている。これは、各電界領域における電界のまとまりにおける等電位線の形状(曲がり方)が異なっていることを意味する。
図6に示すように、第1および第2の何れの電界領域においても、これら電界領域における各電界のまとまりにおける等電位線は、それぞれの領域内で閉じられた形状を有している。
しかしながら、各電界のまとまりの形状から判るように、第1の電界領域と第2の電界領域とでは、閉じられた等電位線の形状が異なっている。すなわち、図6中、左側の電界領域(第1の電界領域)における等電位線は、図6中、右側の電界領域(第2の電界領域)における等電位線よりも歪んだ形状を有している。
具体的には、第1の電界領域の等電位線は、第2の電界領域の等電位線に比べて、基板10近傍の間隔が狭くなっており、他方、基板20近傍では、間隔が広くなっている。
また、上記したように第1の電界領域と第2の電界領域とで等電位線の形状が異なることで、第1の電界領域と第2の電界領域とでは液晶分子52の配向方向(ダイレクタ)が異なっている。
このように各電界領域で液晶分子52の配向の方向が異なることで、第1の電界領域と第2の電界領域とではVT特性(VTカーブ)が異なるものとなっている。すなわち、上記液晶パネル2は、いわゆるマルチVT化されている。
一方、比較用の液晶パネル100を用いた場合にも、図7に示すように、液晶セル101内には、櫛歯電極14における各枝電極14Aを中心として、電界のまとまりが2個形成されている。しかしながら、形成される2個の電界のまとまりはほぼ同形状であり、各電界のまとまりにおける等電位線の形状はほぼ同じである。また、各電界のまとまりにおける等電位線の形状は、何れも開いた形状となっている。
図7に示すように、比較用の液晶パネル100を用いた場合には、各電界のまとまりにおける等電位線の曲がり方が同じである。このことは、比較用の液晶パネル100では、櫛歯電極14・15の各枝電極14A・15Aの中央部を境界とする、各枝電極14A・15A間に対応する各電界領域における液晶分子52の配向方向(ダイレクタ)が同じであることを意味する。言い換えれば、比較用の液晶パネル100における各電界領域におけるVT特性(VTカーブ)は同じであり、比較用の液晶パネル100は、第1の電界領域に対して等電位線の形状が異なる第2の電界領域を備えていない。
次に、液晶分子52のダイレクタの向きと複屈折との関係、液晶パネル2におけるVTカーブ、階調輝度比について、順に説明する。
(液晶分子52のダイレクタの向きと複屈折との関係)
図8の(a)、図8の(b)、図8の(c)は、それぞれ、(a)電圧OFF時、(b)中間電圧ON時、(c)通常の電圧ON時の液晶分子52のダイレクタの方向と光の進行方向との関係を示している。また、各矢印は、光の進行方向、具体的には、それぞれ正面方向の光(正面0度)、極角20度方向の光(20度)、極角60度方向の光(60度)を示している。
まず、液晶分子52の傾きと複屈折との関係について説明する。
図8の(a)〜(c)に示すように、棒状の液晶分子52に電界を印加(例えば、OFF→中間→ON)すると、液晶分子52のダイレクタの向きが変化する。この変化の際、特に液晶分子52に中間電圧付近の電圧が印加された際、特に斜め方向(極角20度〜60度)の光に対して液晶分子52の長手方向に対する光路が長くなる。
複屈折は、屈折率差Δnと距離dとの積である。したがって、液晶分子52に中間電圧付近の電圧が印加された際には、液晶分子52の複屈折が大きくなる。このとき、複屈折は、上記斜め方向に生じるため、液晶パネル2の正面に対しては透過率が上昇する。このため、中間電圧付近では、液晶パネル2の正面と斜め方向との輝度差が大きくなる。
以上のように、液晶分子52のダイレクタの回転により複屈折が変化し、それにより透過率が変化する。
本実施の形態にかかる液晶パネル2では、上記したように、第1の電界領域と第2の電界領域とで、等電位線の形状が異なるため、第1の電界領域と第2の電界領域とで、液晶分子52のダイレクタの向きが異なっている。
次に、中間電圧が印加された場合を例に挙げて、液晶分子52のダイレクタの向きと複屈折との関係について説明する。
(中間電圧)
図9の(a)、図9の(b)、図9の(c)は、それぞれ、(a)液晶パネル2における第1の電界領域、(b)液晶パネル2における第2の電界領域、(c)液晶パネル100における電界領域における、電源中間(中間電圧)ON時の液晶分子52のダイレクタの方向と光の進行方向との関係を示している。なお、液晶パネル100では、先に説明した通り、各電界領域における液晶分子のダイレクタは同じである。
複屈折は、光線と、液晶分子52のダイレクタの短軸とが直交する場合に最小になる。
本実施の形態にかかる液晶パネル2では、図9の(a)に示すように、中間電圧印加時に第1の電界領域における液晶分子52による複屈折が最小になる。
これに対して、第2の電界領域では、図9の(b)に示すように、中間電圧印加時に、第1の電界領域における液晶分子52による複屈折よりも大きな複屈折が生じる。なお、第2の電界領域における液晶分子52によって生じる複屈折の大きさは、図9の(c)に示す液晶パネル100で生じる複屈折の値よりも大きくなる。
しかしながら、上記液晶パネル2では、図9の(a)に示す、第1の電界領域で生じる複屈折と、図9の(b)に示す、第2の電界領域で生じる複屈折とを合成した複屈折が全体の複屈折の平均となる。この全体の平均の複屈折は、図9の(c)に示す、液晶パネル100で生じる複屈折よりも小さくなる。
このため、後述するように、本実施の形態にかかる液晶パネル2では、比較用の液晶パネル100に比べて、斜め方向に対する透過率の浮きが小さくなる。
具体的には、本実施の形態における、上記全体の平均の複屈折に対応するVTカーブは、以下のようになる。
(液晶パネル2におけるVTカーブ)
第1の電界領域と第2の電界領域とでは、図9の(a)・(b)に示すように、同じ電界が印加された場合、液晶分子52のダイレクタの向きが異なる。これは、第1の電界領域と第2の電界領域とで絶縁層25の比誘電率が異なるためである。
第1の電界領域と第2の電界領域とでは、上記したように液晶分子52のダイレクタの向きが異なるため、VTカーブが異なる。
図10に、液晶パネル2において、第1絶縁材料および第2絶縁材料として、ε=3およびε=7の、比誘電率が異なる2種類の絶縁材料を用いたときの、各電界領域(第1の電界領域、第2の電界領域)における正面方向でのVTカーブ並びにこれらVTカーブを合成したVTカーブ(合成VT)を示す。
なお、図10中、細線の実線にて示す曲線が、ε=3の絶縁層25が設けられた第1の電界領域におけるVTカーブであり、太線の実線にて示す曲線が、ε=7の絶縁層25が設けられた第2の電界領域におけるVTカーブである。また、図10中、点線で示す曲線が、これらVTカーブを合成して得られたVTカーブ(合成VT)である。
本実施の形態にかかる液晶パネル2では、この合成VTカーブに基づいて各階調電圧が設定される。図10に示す合成VTカーブに基づけば、例えば中間階調の電圧(中間電圧)は4Vとなり、ε=3の絶縁層25およびε=7の絶縁層25を介して得られる透過率は、それぞれ、基準に対して35%および60%になる。
(階調輝度比)
次に、階調輝度比について、図11および図12に基づいて以下に説明する。
図11は、本実施の形態にかかる液晶パネル2の正面階調に対する斜め方向の階調を示すグラフである。また、図12は、液晶パネル100の正面階調に対する斜め方向の階調を示すグラフである。
なお、図11は、本実施の形態にかかる液晶パネル2として、絶縁層13・25の厚さが3μmであり、絶縁層25に、ε=3、ε=7の2種類の絶縁材料を使用し、絶縁層13にε=3の絶縁材料を用いた液晶パネルを用いたときの、正面階調に対する斜め方向の階調を示している。また、図12は、液晶パネル100として、絶縁層13の厚さが3μmであり、絶縁層13にε=3の絶縁材料を用いた液晶パネルを用いたときの、正面階調に対する斜め方向の階調を示している。
ここで、「正面階調」とは、液晶パネル2・100を、その法線方向(方位角0度、極角0度)から見た場合の階調を意味する。また、「斜め方向の階調」とは、偏光板35・36の吸収軸から45度ずれた方位角(方位角45度)において、液晶パネル2・100の法線方向に対して傾斜した方向から液晶パネル2・100を見た場合の階調を意味する。
また、図11および図12は、上記法線方向からの傾斜角度である極角を、0度(正面(法線)方向)、20度、40度、60度とした場合の階調を示している。具体的には、図11および図12において、実線は極角0度(正面)を示し、点線は極角20度、一点鎖線は極角40度、二点差線は極角60度を示している。
また、図11および図12では、階調幅を256階調として示している。上記液晶パネル2には、液晶セル5内に異なる2種のVTカーブが生じる。このため、図11は、上記液晶パネル2における、上記した2つの電界領域におけるVTカーブを合成した上で、各階調電圧毎に輝度比として、階調を指標として表したものである。
すなわち、図11に示す液晶パネル2における正面階調に対する斜め方向の階調は、図10に示す合成VTに基づいて求められている。
一方、図12に示す、比較用の液晶パネル100における正面階調に対する斜め方向の階調は、液晶パネル100で得られるVTカーブが1種類であるので、合成VTではなく、図10に示すε=3の場合の、1種類のVTカーブに基づいて求められている。
図11および図12に示すように、液晶パネル2・100の何れにおいても、極角が大きくなるにつれて、正面に対する輝度比の浮きが大きくなる。
しかしながら、図11と図12とを対比すると、液晶パネル2では、液晶パネル100に比べて、正面に対する輝度比の浮きの程度が、大幅に低減されていることが判る。すなわち、液晶パネル2では、液晶パネル100よりも、視角依存性が小さい。
これは、液晶パネル2では、前記したようにマルチVT化されているのに対して、液晶パネル100では、平行電界は発生しているものの、マルチVT化されていないためである。
すなわち、液晶パネル100では、電界の制御が、櫛歯電極14・15が設けられた基板10(アレイ基板)のみで行われるので、1つの画素6内に、異なるVT特性を有する領域を形成することができない。このため、正面の階調輝度比に対する極角方向の輝度比は浮いた状態となる。
これに対して、液晶パネル2では、1つの画素6内に、比誘電率が異なる絶縁層25が設けられている領域が少なくとも2つある。このため、1つの画素6内に、異なるVT特性を有する領域が少なくとも2つ形成される。すなわち、マルチVT化されているため、斜め方向に対する輝度比の浮きの程度を低減することができる。
なお、図10では、上記したように、絶縁層25に、第1絶縁材料および第2絶縁材料として、ε=3、ε=7の2種類の絶縁材料を使用するとともに、絶縁層13・25の厚みを3μmとしたときの視野角特性を示した。しかしながら、本実施の形態は、これに限定されるものではない。
(輝度浮き)
次に、上記斜め方向に対する輝度浮き(輝度比の浮き)の程度を低減するための好ましい絶縁材料の比誘電率差並びに絶縁層厚について、順に説明する。
(比誘電率差)
図13に、液晶パネル2で絶縁層25に用いる絶縁材料の比誘電率をシミュレーションにより種々変更したときのVTカーブをまとめて示す。なお、上記シミュレーションには、シンテック社製の「LCD−MASTER」を使用した。
上記液晶パネル2をTV(テレビジョン)等に用いるに際し、MPD(マルチピクセルドライブ)とする場合、異なるVT領域におけるVT差(ΔV)は、0.8V以上とすることが好ましく、1.0V以上とすることがより好ましい。
このように、1つの画素6内に、中間調電位が0.8V以上異なる領域を形成することで、上記各領域間で、視野角特性を改善するために十分な程度、液晶分子52の配向方向を異ならせることができる。この結果、視野角特性を、より確実に改善することができる。なお、上記中間調とは、全階調範囲の中での中央の階調値を意味する。
なお、ΔV=1.0は、例えば、一方の絶縁材料の比誘電率(比誘電率ε)をε=3程度とした場合、他方の絶縁材料の比誘電率(比誘電率ε)をε=7として、Δε=4とすることで、達成することができる。このためには、例えば、一方の絶縁材料に、ε≒3のアクリル系樹脂等を使用し、他方の絶縁材料に、ε≒7のSiN等を使用すればよい。
なお、ε=9の絶縁材料を用いたときのVTカーブと、ε=7の絶縁材料を用いたときのVTカーブとには、大きな差異は見られなかった。
また、一方の絶縁材料として、ε=3未満の絶縁材料を用いた場合、上記したように一方の絶縁材料にε=3の絶縁材料を用いた場合と比べてΔVを大きくとることが容易になる。しかしながら、εの値を小さくすると、印加電圧が上昇するため、消費電力が大きくなる。
したがって、マルチVT化するにあたり、隣り合う絶縁層に用いられる絶縁材料の比誘電率差(Δε)は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。
また、一方の絶縁材料として、ε=3未満の材料を用いた場合、上記のように一方の絶縁材料にε=3の材料を用いた場合に比べて、ΔV(VT差)を大きくとることが容易になるが、εの値を小さくすると、印加電圧が上昇するため、消費電力が多くなる場合が考えられる。
以上のように、マルチVT化するにあたり、好ましい比誘電率差(隣接して設けられる絶縁層に用いられる比誘電率、Δε)は2以上、より好ましくは3以上であると考えられる。
(絶縁層厚)
次に、液晶パネル2・100・200・300として、液晶パネル(1)〜(3)・(A)〜(F)・300を用いて、各液晶パネルの絶縁層厚を種々変更したときの視野角レベルについて検証する。
図14に、液晶パネル2において絶縁層13・25の厚さを2μmとしたときの、正面(極角0度)と斜め方向(極角10度、20度、30度、40度、60度)とにおける階調輝度比を示す。つまり、上記階調輝度比の測定には、液晶パネル2として、液晶パネル(2)を用いた。また、図14において、方位角は、図11と同様に、偏光板35・36の吸収軸から45度ずれた方向とした。
また、図27に、図25に示す液晶パネル300における、正面(極角0度)と斜め方向(極角10度、20度、30度、40度、60度)とにおける階調輝度比を示す。なお、図27でも、方位角は、偏光板35・36の吸収軸から45度ずれた方向とした。
また、上記した各液晶パネル(1)〜(3)・(A)〜(F)・300をバックライトにのせ、ELDIM社製の「Ez−contrast」(商品名)で、正面の電圧透過率変化と、偏光軸から斜め45度ずれた方位の極角方向の電圧透過率変化とを測定し、正面の曲線に対する斜め視角のレベル変化を確認した。
このようにして図14および図27に両矢印にて示すように正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)を、液晶パネル(1)〜(3)・(A)〜(F)・100それぞれについて測定した結果を、表2に示す。
なお、液晶パネル(1)〜(3)において、絶縁層25における、異なる絶縁材料を用いた各領域の厚みは、前記したように何れも同じ厚みとし、このときの絶縁層13の厚さは、絶縁層25と同じ厚みに設定した。また、液晶パネル(A)〜(F)において、絶縁層13・213における、異なる絶縁材料を用いた各領域の厚みも、前記したように何れも同じ厚みとした。なお、液晶層厚は何れも3.4μmとした。
図14および表2に示すように、絶縁層13・25の厚さを2μmとした液晶パネル(2)では、上記差分(視野角レベル)は26%であり、目視で、輝度浮きの少ない良好な視野角特性が得られた。なお輝度浮きは、一般的に、極角が大きくなるにしたがって大きくなる。極角60度は、本実施の形態において、従来からの輝度浮き改善が多く見られた角度である。正面階調128は、正面の輝度が最大輝度の50%となる階調である。これにより、輝度浮きを、正面の中間階調輝度の浮きで評価した。
また、絶縁層25の厚さを3μmとした液晶パネル(3)では、上記差分(視野角レベル)は、表1に示すように25%であり、目視で、より良好な視野角特性が得られた。
絶縁層25の厚さを1μmとした液晶パネル(1)では、上記差分(視野角レベル)は、表1に示すように30%であり、この場合にも、目視で、良好な視野角特性が得られた。
これに対して、液晶パネル(A)〜(C)では、表2に示すように、絶縁層25の厚さに拘らず、上記差分(視野角レベル)は、51%あるいは52%あり、何れも、目視で、良好な視野角特性を得ることはできなかった。
また、表2に示すように、液晶パネル(D)〜(F)では、上記差分(視野角レベル)が、何れも38%を超えていた。特に、絶縁層213の厚さを3μmとした液晶パネル(F)では、上記差分(視野角レベル)は、表2に示すように48%と、良好な視野角特性を得ることはできなかった。
また、表2に示すように、液晶パネル300は、上記差分(視野角レベル)が53%と大きく、目視における視野角レベル(視野角特性)も良くなかった。
以上の検証結果から、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、比較用の液晶パネル100・200・300と比べて、視野角特性が改善されていることが判る。なお、上記視野角特性の改善は、液晶セル5内の電界の曲がり方、すなわち等電位線の形状の相違によるものである。
次に、上記液晶パネル2における各サブ画素6R・6G・6Bの絶縁層25の比誘電率と正面の色味変化との関係について検証した結果について、以下に説明する。
〔正面の色味変化〕
白色の色味は、各色の合成によって決定される。液晶パネル正面の色調の黄変は、図26に示したように各色のVTカーブが異なるためであり、RおよびGのサブ画素6R・6GにおけるVTカーブが互いに類似した形状のVTカーブを示すのに対し、Bのサブ画素6Bでは、低電圧側で透過率が極大値をとり、VTカーブが反転する。このため、合成色が黄色味を帯びる。
このため、電圧の印加に付随して色味が変化しないようにするためには、各色のサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブの形状ができるだけ近似している(好ましくは同形状である)ことが望ましい。
そこで、まず、各サブ画素6R・6G・6Bでの正面の色味変化を抑制するため、液晶パネル2の各サブ画素6R・6G・6Bでの絶縁層25における比誘電率εの違いによる正面方向でのVTカーブの変化を、シミュレーションにより求めた。この結果を、図15〜17に示す。
図15は、液晶パネル2のサブ画素6Bにおける絶縁層25の比誘電率εを種々変化したときのVTカーブを示すグラフである。また、図16および図17は、それぞれ、液晶パネル2のサブ画素6G、サブ画素6Rにおける絶縁層25の比誘電率εを種々変化したときのVTカーブを示すグラフである。
なお、シミュレーションには、シンテック社製の「LCD−MASTER」を用いた。また、図15〜17でも、横軸は印加電圧を示し、縦軸は、規格化透過率(透過率比)を示す。
また、このときの各サブ画素6R・6G・6Bにおける印加電圧と透過率との関係を、それぞれ表3〜5に示すとともに、各サブ画素6R・6G・6Bにおける印加電圧と規格化透過率との関係を、表3〜8に示す。
図15〜17および表3〜8から判るように、横電界が印加される、櫛歯電極14・15における各枝電極14A・15A間の何れかの領域に絶縁層25が設けられている場合、絶縁層25の比誘電率εの値に応じてVTカーブの形状が変化する。
そこで、次に、正面方向でのRGBの各色のVTカーブを合成した白状態(白表示時)のVTカーブ(合成VT)を求めた。得られた合成VTを図18に示す。また、このときの印加電圧と透過率との関係を、表9に示す。
図9に示すように、絶縁層25を設けない場合、VTカーブの形状は、6V付近を頂点(最大値)として低下する。これは、青(B)色のVTカーブの形状の影響を受けている。
一方、絶縁層25を設けた場合には、絶縁層25を設けない場合に見られる、VTカーブが頂点(最大値)を迎え、その後、低下する現象は見られない。しかしながら、図9から判るように、ε=1の場合は極端に高電圧化するため、消費電力の観点から使用が難しい。このため、比誘電率εは2以上であることが好ましい。
また、各色のサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブの形状が近似すればするほど、白の色味のバランスは電圧毎にシフトしないため、正面からの色味変化は少なくなる。
したがって、各色のサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブの形状が近似するように各色のサブ画素6R・6G・6Bにおける絶縁層25の比誘電率の組み合わせを選択することで、正面からの色味変化を最低限にまで抑えることができる。
そこで、次に、比誘電率の最適な組み合わせについて検討した結果について以下に説明する。
図19は、各色のサブ画素6R・6G・6Bにおける比誘電率εを種々変更したときのVTカーブを示すグラフであり、表6〜8に示す印加電圧と規格化透過率との関係を一部抜粋して、VTカーブとしてまとめて示したものである。なお、図19において、R、G、Bの値は、それぞれ、サブ画素6R・6G・6Bにおける比誘電率εの値を示す。また、表6〜8から判るように、図19中、記載のない比誘電率εを用いたVTカーブは、その前後の比誘電率εを用いた、対応するサブ画素6R・6G・6BにおけるVTカーブ間に位置する。
本願発明者らは、比誘電率の最適な組み合わせを決定するに際し、まず、青色のサブ画素6Bに注目した。
各色のサブ画素6R・6G・6Bのうち、唯一、青色のサブ画素6BではVTカーブが反転(つまり、最大値を境に透過率が低下)する。RGBの3色の合成である白の色味の変化は、このVTカーブの反転により青色成分が少なくなることに由来する。
表3〜8から判るように、サブ画素6Bにおける絶縁層25の比誘電率εが1〜3の範囲内では、サブ画素6R・6Gと同様に、階調間で反転のないVTが得られる。
しかしながら表3〜8および図15〜17および図19から判るように、サブ画素6Bにおける絶縁層25の比誘電率εが2以下の場合は、サブ画素6R・6GでVTカーブが同形状の立ち上がりを見せる比誘電率εはない。
具体的には、図19から判るように、サブ画素6Bにおける絶縁層25の比誘電率εが2の場合は、サブ画素6R・6Gにおける他のVTカーブと比較して立ち上がりが急峻であり、サブ画素6R・6Gに、同形状の立ち上がりを見せる比誘電率εはない。
また、図15〜17および図19から判るように、サブ画素6Bにおける絶縁層25の比誘電率εが1の場合は、サブ画素6R・6GでVTカーブが同形状の立ち上がりを見せる比誘電率εはなく、また、ε=1の場合は極端に高電圧化するため、消費電力の観点から使用が難しい。
また、絶縁層13・25を有していない、横電界駆動方式を用いた従来の垂直配向型の液晶パネル300でも、図26に示すように低階調側(4V以内)では、青色のサブ画素6Bにおいても、サブ画素6R・6G同様、階調の反転は見られず、色味変化は少ない。
そこで、この絶縁層13・25を有していない液晶パネル300における、4Vでの規格化透過率差の最大値を比較値として設定した。
上記液晶パネル300における、4Vでの規格化透過率差の最大値は、図26および表1から、89%(サブ画素6Bでの4V印加時の規格化透過率)−63%(サブ画素6Rでの4V印加時の規格化透過率)=26%となる。
また、各色のサブ画素6R・6G・6BのVTカーブが近似した形状をとる各サブ画素6R・6G・6Bの合成色は、黒→グレー→白の色味変化がきわめて少ない。
そこで、各色別のVTカーブが同形状で立ち上がり、かつ、規格化透過率を用いた各色のVTカーブの形状が近似し、そのずれ量が小さくなるように、サブ画素6Bにおける絶縁層25のεを3に固定し、サブ画素6R・6Gにおける絶縁層25のεを種々変更して、4V〜6Vの各電圧の規格化透過率の平均値が26%以内になる、サブ画素6R・6Gにおける絶縁層25のεについて調べた。
各色のサブ画素6R・6Gにおける絶縁層25のεを種々変更したときに、ε=3としたサブ画素6Bに対し、規格化透過率によるVTカーブが同形状で立ち上がるVTカーブを図20に示すとともに、各色のサブ画素6R・6G・6Bにおける4V〜6Vの各電圧の規格化透過率の平均値とεとの関係を表10に示す。
なお、表10および図20において、R、G、Bの値は、それぞれ、サブ画素6R・6G・6Bにおける比誘電率εの値を示す。また、表10では、小数点以下1桁の値を示しているが、表10に記載の値は、小数点以下2桁にて計算した値である。
図20および表10に示す結果から、サブ画素6Bにおける絶縁層25の比誘電率(ε=3)を基準とすると、サブ画素6Gにおける絶縁層25の比誘電率は0以上、4以下(つまり、ε=3〜7)、サブ画素6Rにおける絶縁層25の比誘電率は1以上、4以下(つまり、ε=4〜7)のときに、4V〜6Vの各電圧の規格化透過率の平均値が26%以内になる。
したがって、本実施の形態によれば、上記したように、サブ画素6Bにおける絶縁層25のεを3とし、サブ画素6Gにおける絶縁層25のεを3〜7とし、サブ画素6Rにおける絶縁層25のεを4〜7とすることで、階調反転が生じず、しかも、各サブ画素におけるVT(電圧−透過率)カーブの形状を近似させることができる。このため、印加電圧に拘らず、正面での色味変化の少ない液晶パネル2を提供することができる。
このため、色味変化のみを問題とした場合、上記液晶パネル2の絶縁層13・25のεが3の場合は、必ずしも絶縁層13・25のεが異なる領域を有している必要はない。
しかしながら、上記したように、絶縁層25が、1つの画素6内に、比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を有している場合、1つの画素6内に、横電界を発生させたときに等電位線の形状が異なる少なくとも2つの電界領域が形成される。このため、この場合、前記したように、斜めの白浮きが改善され、視野角特性が向上する。
したがって、絶縁層25が、1つの画素6内に、比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ、上記したように、サブ画素6Bにおける絶縁層25のεを3とし、サブ画素6Gにおける絶縁層25のεを3〜7とし、サブ画素6Rにおける絶縁層25のεを4〜7とすることで、正面での色味変化が少なく、かつ、視野角特性に優れた液晶パネル2を提供することができる。
次に、本発明にかかる液晶パネル2のさらに他の変形例について、検討した結果を以下に示す。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の他の形態について、図21および図22に基づいて説明すれば、以下の通りである。
なお、以下の説明では、主に、実施の形態1にかかる液晶パネル2との相違点について説明するものとし、前記実施の形態1で説明した各構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
図21は、本実施の形態にかかる液晶パネル2の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
図21に示すように、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、基板10に代えて、ベタ電極12およびアレイ側絶縁層である絶縁層13が設けられていない基板60を備えている点で、図1に示す液晶パネル2と相違する。すなわち、本実施の形態の液晶パネル2は、FFS構造を有してない。
基板60は、ベタ電極12およびアレイ側絶縁層である絶縁層13が設けられていない点を除けば、図1に示す基板10と同じ構成を有している。
以下に、図21に示す構造を有する液晶パネル2の概略構成について、具体的な検証に用いた各サンプル(液晶パネル(4)〜(6))の製造方法を例に挙げて具体的に説明する。なお、以下の製造方法においても、特に言及しない限りは、各サンプルにおける製造条件は、同一とした。
〔液晶パネル(4)〜(6)〕
まず、図21に示すように、ガラス基板11上に、ITOからなる櫛歯電極14・15を、厚み=1000Å、電極幅L=4μm、電極間隔S=4μmにて形成した。
次いで、上記ガラス基板11上に、上記櫛歯電極14・15を覆うように、JSR社製の配向膜塗料「JALS−204」(商品名、固形分5wt.%、γ−ブチロラクトン溶液)を、スピンコート法にて塗布した。その後、200℃にて2時間焼成することにより、液晶層50との対向面となる表面に、垂直配向膜である配向膜16が設けられた基板60を形成した。
一方、液晶パネル(1)〜(3)における基板20の製造方法と同じ材料、同じプロセスにて、液晶パネル(4)〜(6)における基板20と同じ構造を有する基板20をそれぞれ形成した。
なお、本実施の形態においても、このようにして形成した配向膜16・26の乾燥膜厚は1000Å(=0.1μm)であった。
その後、上記基板60・20のうち一方の基板上に、スペーサとして、直径3.25μmの樹脂ビーズ「ミクロパールSP20325」を分散させた。一方、上記基板に対峙する他方の基板上に、シール剤として、シール樹脂「ストラクトボンドXN−21S」を印刷した。
次に、上記基板60・20を貼り合わせ、135℃で1時間焼成した。
その後、上記基板60・20間に、液晶材料としてメルク株式会社製のポジ型液晶材料(Δε=20、Δn=0.15)を真空注入法にて封入することにより、一対の基板60・20間に液晶層50が挟持された液晶セル5を作製した。
続いて、上記液晶セル5の表裏面に、液晶パネル(1)〜(3)と同様にして偏光板35・36を貼合した。これにより、図21に示す液晶パネル2(液晶表示素子)として、絶縁層25の厚みがそれぞれ異なる液晶パネル(4)〜(6)を作製した。
(輝度浮き)
図22に、図21に示す液晶パネル2において絶縁層25の厚さを1μmとしたときの、正面(極角0度)と斜め方向(極角10度、20度、30度、40度、60度)とにおける階調輝度比を示す。つまり、上記階調輝度比の測定には、液晶パネル(4)を用いた。また、図22でも、方位角は、偏光板35・36の吸収軸から45度ずれた方向とした。
また、上記した各液晶パネルをバックライトにのせ、ELDIM社製の「Ez−contrast」(商品名)で、正面の電圧透過率変化と、偏光軸から斜め45度ずれた方位の極角方向の電圧透過率変化とを測定し、正面の曲線に対する斜め視角のレベル変化を確認した。
このようにして図22に両矢印にて示す正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)を液晶パネル(4)〜(6)それぞれについて測定した結果を、前記表2に示す。
表2に示すように、上記液晶パネル(4)〜(6)は、正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)が、最大でも34%であり、液晶パネル300における差分(視野角レベル)よりも小さいことは勿論のこと、VAタイプの液晶パネル200における差分(視野角レベル)である38%よりも小さく、視野角特性が大幅に改善されていた。また、目視確認を行った結果、良好な視野角特性が得られた。
〔正面の色味変化〕
また、上記液晶パネル2において、厚みが3μmの絶縁層25を使用し、該絶縁層25のεを種々変化させたときのサブ画素6Bにおける印加電圧と透過率との関係を、表11に示す。すなわち、表11には、上記液晶パネル2として、液晶パネル(6)を用いたときの印加電圧と透過率との関係を示している。
表11から判るように、本実施の形態にかかる液晶パネル2においても、ε=4でサブ画素6BにおけるVTカーブが反転(つまり、階調反転)するとともに、液晶パネル2と同様の挙動を示すことが判った。
また、液晶パネル(4)・(5)においても、前記実施の形態1にかかる液晶パネル(1)〜(3)および上記液晶パネル(6)と同様の結果が得られた。
したがって、本実施の形態にかかる液晶パネル2もまた、前記実施の形態1にかかる液晶パネル2と同様に、サブ画素6Bにおける絶縁層25のεを3とし、サブ画素6Gにおける絶縁層25のεを3〜7とし、サブ画素6Rにおける絶縁層25のεを4〜7とすることで、正面での色味変化を改善することができる。また、本実施の形態でも、上記液晶パネル2が、1つの画素6内に、比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を有し、上記したようにマルチVT化されていることで、正面での色味変化が少なく、かつ、視野角特性に優れた液晶パネル2を提供することができる。
〔実施の形態3〕
本発明の実施のさらに他の形態について、図23および図24に基づいて説明すれば、以下の通りである。
なお、以下の説明では、主に、実施の形態1にかかる液晶パネル2との相違点について説明するものとする。また、前記実施の形態1、2で説明した各構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
図23は、本実施の形態にかかる液晶パネル2の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
図23に示すように、本実施の形態にかかる液晶パネル2は、基板80(アレイ基板)と、基板70(対向基板)との間に液晶層50が挟持された構成を有している。
基板80は、図23に示すように、ガラス基板11上に、ベタ電極12(第3の電極)、絶縁層13(アレイ側絶縁層)、櫛歯電極14・15(第1および第2の電極)、配向膜16が、この順に積層された構成を有している。
基板80は、絶縁層13が、1つの画素6内に、比誘電率が異なる絶縁層からなる少なくとも2つの領域を有し、等電位線の形状が異なる少なくとも2つの電界領域を形成するマルチVT層として機能する点で、基板10と相違している。すなわち、本実施の形態では、部分的に比誘電率が異なる絶縁層13が、アレイ基板である基板80側のベタ電極12上に設けられている。
図23は、一例として、櫛歯電極14・15の各枝電極15A・14Aの中央部を境界とする、枝電極15A1・14A1間、枝電極14A1・15A2間、枝電極15A2・14A2間に対応する、絶縁層13における各領域を、それぞれ領域13A・13B・13Cとすると、サブ画素6R・6Gに対応する領域13A・13Bの比誘電率が同じであり、サブ画素6Bに対応する領域13Cの比誘電率が他とは異なっている例を示している。
しかしながら、本実施の形態でも、領域13A〜13Cのうち互いに隣り合う領域(すなわち、互いに隣り合う絶縁層形成領域)に、絶縁層13として、それぞれ異なる比誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁層が形成されていてもよく、何れか2つの領域に、他の1つの領域とは異なる比誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁層が形成されていてもよい。
また、基板70は、ガラス基板21上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色のカラーフィルタ22およびブラックマトリクス23、配向膜26が、この順に設けられた構成を有している。
すなわち、基板70は、前記したように、ベタ電極24およびCF側絶縁層である絶縁層25が設けられていない点を除けば、図1に示す液晶パネル2における基板10と同じ構成を有している。
以下に、図23に示す構造を有する液晶パネル2の概略構成について、具体的な検証に用いた各サンプル(液晶パネル(7)〜(9))の製造方法を例に挙げて具体的に説明する。なお、以下の製造方法においても、特に言及しない限りは、各サンプルにおける製造条件は、同一とした。
〔液晶パネル(7)〜(9)〕
まず、図23に示すように、ガラス基板11上に、ITOからなる櫛歯電極14・15を、厚み=1000Å、電極幅L=4μm、電極間隔S=4μmにて形成した。
次に、部分的に比誘電率が異なる絶縁層13を形成すべく、まず、上記ガラス基板11上に、櫛歯電極14・15を覆うように、比誘電率ε=3.7のアクリル系の絶縁材料(第1の絶縁材料)を、厚さ1〜3μmで、ガラス基板11の表示領域全面に渡って、スピンコート法で塗布・成膜した。
その後、比誘電率が異なる領域を形成するために、上記第1の絶縁材料からなる絶縁層の一部をフォトリソグラフィにより抜き取り、この絶縁層を抜き取った部分に、比誘電率ε=6.9のSiN(第2の絶縁材料)を、スパッタリング法で、抜き取った絶縁層と同膜厚となるように形成した。これにより、アレイ側絶縁層として、各画素6内に比誘電率が異なる2つの領域を有するとともに、各サンプルでそれぞれ厚みの異なる絶縁層13を形成した。
続いて、上記絶縁層13上に、上層電極として、ITOからなる櫛歯電極14・15を、厚み=1000Å、電極幅L=4μm、電極間隔S=4μmにて形成した。
次いで、上記絶縁層13上に、上記櫛歯電極14・15を覆うように、JSR社製の配向膜塗料「JALS−204」(商品名、固形分5wt.%、γ−ブチロラクトン溶液)を、スピンコート法にて塗布した。その後、200℃にて2時間焼成することにより、液晶層50との対向面となる表面に、垂直配向膜である配向膜16が設けられた基板80を形成した。
一方、ガラス基板21上に、液晶パネル(1)〜(3)と同じ材料、同じプロセスで、カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23を形成した。さらにその上に、配向膜16と同じ材料、同じプロセスにて、配向膜26として垂直配向膜を形成した。これにより、ガラス基板21上に、カラーフィルタ22およびブラックマトリクス23、配向膜26が、この順に設けられた基板70を形成した。また、このようにして形成した配向膜16・26の乾燥膜厚は1000Å(=0.1μm)であった。
その後、上記基板80・70のうち一方の基板上に、スペーサとして、直径3.25μmの樹脂ビーズ「ミクロパールSP20325」を分散させた。一方、上記基板に対峙する他方の基板上に、シール剤として、シール樹脂「ストラクトボンドXN−21S」を印刷した。
次に、上記基板80・70を貼り合わせ、135℃で1時間焼成した。
その後、上記基板80・70間に、液晶材料としてメルク株式会社製のポジ型液晶材料(Δε=20、Δn=0.15)を真空注入法にて封入することにより、一対の基板80・70間に液晶層50が挟持された液晶セル5を作製した。
続いて、上記液晶セル5の表裏面に、液晶パネル(1)〜(3)と同様にして偏光板35・36を貼合した。これにより、図23に示す液晶パネル2(液晶表示素子)として、絶縁層13の厚みがそれぞれ異なる液晶パネル(7)〜(9)を作製した。
(輝度浮き)
図24に、図23に示す液晶パネル2において絶縁層25の厚さを1μmとしたときの、正面(極角0度)と斜め方向(極角10度、20度、30度、40度、60度)とにおける階調輝度比を示す。つまり、上記階調輝度比の測定には、液晶パネル(7)を用いた。また、図24でも、方位角は、偏光板35・36の吸収軸から45度ずれた方向とした。
また、上記した各液晶パネルをバックライトにのせ、ELDIM社製の「Ez−contrast」(商品名)で、正面の電圧透過率変化と、偏光軸から斜め45度ずれた方位の極角方向の電圧透過率変化とを測定し、正面の曲線に対する斜め視角のレベル変化を確認した。
このようにして図24に両矢印にて示す正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)を液晶パネル(7)〜(9)それぞれについて測定した結果を、前記表2に示す。
表2に示すように、上記液晶パネル(7)〜(9)は、正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)は、絶縁層13の厚さが1μmの場合には42%、2μmの場合は40%、3μmの場合は36%と、実施の形態2・3にかかる液晶パネル2よりは視野角レベルが低いものの、従来の構成に比べれば、視野角レベルが改善されることが判る。
特に、絶縁層13の厚さが3μmの場合には、上記差分(視野角レベル)が36%と、上記したように従来の液晶パネル100における差分(視野角レベル)よりも小さいことは勿論のこと、比較例2におけるVAタイプの液晶パネル300における差分(視野角レベル)である38%よりも小さく、視野角特性の改善効果が高く、目視確認においても、良好な視野角特性が得られた。
また、表2に示す結果から、本発明にかかる液晶パネル2によれば、液晶パネル100・200・300とは逆に、絶縁層13・25の何れに比誘電率が異なる領域を設けるかに拘らず、絶縁層厚が厚いほど、視野角レベルが向上することが判る。
また、表2に示す結果から、視野角特性の改善の観点からは、CF側絶縁層である、ベタ電極24上の絶縁層25に、比誘電率が異なる領域を設けることがより好ましいことが判る。
〔正面の色味変化〕
また、上記液晶パネル2において、厚みが3μmの絶縁層25を使用し、該絶縁層25のεを種々変化させたときのサブ画素6Bにおける印加電圧と透過率との関係を、前記表11に示す。すなわち、表11には、上記液晶パネル2として、液晶パネル(9)を用いたときの印加電圧と透過率との関係を示している。
表11から判るように、本実施の形態にかかる液晶パネル2においても、ε=4でサブ画素6BにおけるVTカーブが反転(つまり、階調反転)するとともに、液晶パネル2と同様の挙動を示すことが判った。
また、液晶パネル(7)・(8)においても、前記実施の形態1、2にかかる液晶パネル(1)〜(6)および上記液晶パネル(9)と同様の結果が得られた。
また、液晶パネル100・200・300についても、同様に、絶縁層のεを種々変化させたときのサブ画素6Bにおける印加電圧と透過率との関係を調べた。この結果を、表12に示す。なお、表12には、上記液晶パネル100として、液晶パネル(C)を用いたときの印加電圧と透過率との関係を示している。また、上記液晶パネル200として、液晶パネル(F)を用いたときの印加電圧と透過率との関係を示している。
上記測定結果から、本実施の形態にかかる液晶パネル2もまた、前記実施の形態1、2にかかる液晶パネル2と同様に、サブ画素6Bにおける絶縁層25のεを3とし、サブ画素6Gにおける絶縁層25のεを3〜7とし、サブ画素6Rにおける絶縁層25のεを4〜7とすることで、正面での色味変化を改善することができる。また、本実施の形態でも、上記液晶パネル2が、1つの画素6内に、比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を有し、上記したようにマルチVT化されていることで、正面での色味変化が少なく、かつ、視野角特性に優れた液晶パネル2を提供することができる。
また、階調反転は、何れの液晶パネルにおいても、ε=4において生じることが判る。
したがって、液晶パネル正面の色味変化は、上記したように、B(青)色のカラーフィルタ22からなるサブ画素6Bにおける、絶縁層のεが3のときのVTカーブを基準として各色のVTカーブの形状が近似するように組み合わせることで改善することができることが判る。
また、上記説明から判るように、上記液晶パネル2は、上記したように、サブ画素6Bにおける絶縁層25のεが3であり、サブ画素6Gにおける絶縁層25のεが3〜7であり、サブ画素6Rにおける絶縁層25のεが4〜7であれば、正面での色味変化を改善することができる。
したがって、上記した各実施の形態では、一対の基板のうち何れか一方の基板に、上記したように部分的に比誘電率が異なる領域を有する絶縁層を設けた場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、上記液晶パネル2は、一対の基板のうち少なくとも一方の基板に絶縁膜が設けられているとともに、該絶縁膜のうち少なくとも一方の絶縁膜が、上記したように比誘電率が異なる領域を有していればよい。また、このとき、電極、特にベタ状電極に接して設けられた絶縁膜が上記したように比誘電率が異なる領域を有していることで、正面での色味変化が少なく、かつ、視野角特性に優れた液晶パネルを、確実に提供することができる。
また、上記した各実施の形態では、スペーサとして樹脂ビーズを用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スペーサとして、上記樹脂ビーズに代えて、あるいは、樹脂ビーズと併せて、櫛歯電極14・15に対応する位置に、基板10・20間のギャップを制御するための柱状スペーサを設けてもよい。
上記液晶パネル2は、該液晶パネル2を表示部として用いて、液晶TVやモバイル端末等、種々の液晶表示装置に好適に用いることができる。
以上のように、本発明にかかる液晶パネルは、少なくとも第1および第2の電極が設けられた第1の基板と、上記第1の基板に対向配置された第2の基板と、上記第1の基板と第2の基板との間に挟持された液晶層とを備え、上記液晶層を、上記第1の基板に設けられた電極間に発生する横電界で駆動するとともに、電界無印加時に、上記液晶層における液晶分子が、上記第1および第2の基板に垂直に配向する、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルであって、赤色、緑色、青色の3つのサブ画素からなる1つの画素内に、上記横電界を発生させたときに等電位線の形状が異なる少なくとも2つの領域が形成されるように、1つの画素内に比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を有する第1の絶縁層が、上記第1および第2の基板のうち少なくとも一方の基板に設けられており、上記青色のサブ画素における領域の第1の絶縁層の比誘電率は3であり、緑色のサブ画素における領域の第1の絶縁層の比誘電率は3〜7であり、赤色のサブ画素における領域の第1の絶縁層の比誘電率は4〜7である構成を有している。
また、以上のように、本発明にかかる液晶パネルは、少なくとも第1および第2の電極が設けられた第1の基板と、上記第1の基板に対向配置された第2の基板と、上記第1の基板と第2の基板との間に挟持された液晶層とを備え、上記液晶層を、上記第1の基板に設けられた電極間に発生する横電界で駆動するとともに、電界無印加時に、上記液晶層における液晶分子が、上記第1および第2の基板に垂直に配向する、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルであって、上記第1および第2の基板のうち少なくとも一方の基板に絶縁層が設けられており、各画素は、赤色、緑色、青色の3つのサブ画素からなり、青色のサブ画素における領域の上記絶縁層の比誘電率は3であり、緑色のサブ画素における領域の上記絶縁層の比誘電率は3〜7であり、赤色のサブ画素における領域の上記絶縁層の比誘電率は4〜7である構成を有している。
上記の各構成によれば、上記したように横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、第1および第2の基板のうち少なくとも一方の基板に絶縁層が設けられており、青色、緑色、赤色色の各サブ画素における領域の上記絶縁層(第1の絶縁層)が、上記比誘電率を有することで、階調反転が生じず、しかも、各サブ画素におけるVT(電圧−透過率)カーブの形状を近似させることができる。このため、上記の各構成によれば、上記液晶パネルにおける正面での色味変化が少ない液晶パネルを提供することができる。
また、上記の各構成によれば、絶縁層(第1の絶縁層)の比誘電率を部分的に変更するだけで容易にマルチVT化することができる。
したがって、上記したように、上記液晶パネルが、1つの画素内に、絶縁層の比誘電率が異なる領域を少なくとも2つ備えている場合、正面での色味変化が少なく、かつ、視野角特性に優れるとともに、簡素な工程で製造が可能な液晶パネルを提供することができる。しかも、上記液晶パネルは、横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルであり、このような液晶パネルにおいては、横電界の印加によりセル内に弓なり状(ベンド状)の液晶配向分布が形成されることから、ベンド配向に基づく高速応答性、自己補償型配列による広視野角、垂直配向に起因する高コントラストを得ることができる。
上記液晶パネルにおいて、上記第2の基板には、さらに電極が設けられているとともに、上記第1の絶縁層が、上記第2の基板に設けられた電極上に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、絶縁層(第1の絶縁層)の比誘電率が異なる領域に形成される等電位線の形状を効率良く異ならせることができ、正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)を、従来と比較して大幅に小さくすることができる。このため、視野角特性の改善効果が高く、良好な視野角特性を得ることができる。
また、上記第1および第2の電極は櫛歯電極であり、上記第1の基板には、さらに第3の電極が設けられており、上記第1および第2の電極は、比誘電率が3の第2の絶縁層を介して上記第3の電極の上層に設けられていることが好ましい。
また、上記第1および第2の電極は櫛歯電極であり、上記第1の基板には、さらに第3の電極が設けられており、上記第1および第2の電極は、上記第1の絶縁層を介して上記第3の電極の上層に設けられていることが好ましい。
上記の各構成によれば、上記液晶パネルが、第3の電極上に絶縁層(第1または第2の絶縁層)を介して櫛歯電極(第1および第2の電極)が設けられたFFS(Fringe Field Switching;フリンジフィールドスイッチング)構造を有していることで、開口率を高くすることができる。したがって、透過率を高くすることができる。
また、特に、上記第2の基板に設けられた電極上に、比誘電率が異なる少なくとも2つの領域を有する絶縁層(第1の絶縁層)が設けられているとともに、上記液晶パネルが上記したFFS構造を有している場合、正面階調が128のときの正面(極角0度)と極角60度とにおける階調輝度比の差分(視野角レベル)を、何れか一方の基板にのみ上記絶縁層(第1の絶縁層)が設けられている場合よりもさらに小さくすることができる。したがって、この場合、開口率を向上させることができるのみならず、極めて良好な視野角特性を得ることができる。
また、上記絶縁層の厚さは、比誘電率に拘らず一定であることが好ましい。
上記の構成によれば、上記絶縁層の厚さは、比誘電率に拘らず一定であることから、画素内で複数のセル厚(液晶層の厚さ)を制御する必要がなく、製造が容易である。
また、液晶分子のダイレクタが対称になるような領域を画素内に設ける場合、画素内における上記セル厚が均一であると、上記ダイレクタの対称性が崩れ難くなるため、視野角特性をより改善することができる。
また、上記比誘電率が異なる絶縁層間の比誘電率は、2以上異なることが好ましい。
上記の構成によれば、比誘電率が異なる各絶縁層に対応した領域に形成される等電位線の形状を、上記各領域における液晶分子の配向方向が十分に相違する程、異ならせることができる。そのため、視野角特性をより確実に改善することができる。
また、上記液晶パネルは、中間調を表示する際に、上記液晶分子に印加される電位が、上記等電位線の形状が異なる領域間で、0.8V以上異なることが好ましい。
上記の構成によれば、1つの画素内に、中間調電位が0.8V以上異なる領域が形成される。このため、そのため、上記各領域間で、視野角特性を改善するために十分な程度、液晶分子の配向方向を異ならせることができる。したがって、上記の構成によれば、視野角特性を、より確実に改善することができる。なお、上記中間調とは、全階調範囲の中での中央の階調値を意味する。
本発明にかかる液晶表示装置は、本発明にかかる上記液晶パネルを備えていることで、上記液晶表示装置における液晶パネル正面での色味変化が少ない液晶表示装置を提供することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
上記の各構成によれば、上記したように横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、第1および第2の基板のうち少なくとも一方の基板に絶縁層が設けられており、青色、緑色、赤色の各サブ画素における領域の上記絶縁層(第1の絶縁層)が、上記比誘電率を有することで、階調反転が生じず、しかも、各サブ画素におけるVT(電圧−透過率)カーブの形状を近似させることができる。このため、上記の各構成によれば、上記液晶パネルにおける正面での色味変化が少ない液晶パネルを提供することができる。
また、このときの各サブ画素6R・6G・6Bにおける印加電圧と透過率との関係を、それぞれ表3〜5に示すとともに、各サブ画素6R・6G・6Bにおける印加電圧と規格化透過率との関係を、表6〜8に示す。
上記の各構成によれば、上記したように横電界駆動方式を用いた垂直配向型の液晶パネルにおいて、第1および第2の基板のうち少なくとも一方の基板に絶縁層が設けられており、青色、緑色、赤色の各サブ画素における領域の上記絶縁層(第1の絶縁層)が、上記比誘電率を有することで、階調反転が生じず、しかも、各サブ画素におけるVT(電圧−透過率)カーブの形状を近似させることができる。このため、上記の各構成によれば、上記液晶パネルにおける正面での色味変化が少ない液晶パネルを提供することができる。