JPWO2010001584A1 - インスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents

インスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法、及びコンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 インスリン抵抗性に関する生体情報を推定するために必要となる被験者の負担を、従来に比して少なくすることが可能なインスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法、及びコンピュータプログラムを提供する。【解決手段】インスリン抵抗性評価支援システム1は、被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を受け付ける入出力インタフェース11fと、入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定するCPU11aと、推定されたグルコース取込速度を出力する画像出力インタフェース11gとを備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、被験者のインスリン抵抗性の評価を支援するインスリン抵抗性評価支援システム、その方法、及びコンピュータをインスリン抵抗性評価支援システムとして機能させるコンピュータプログラムに関する。
インスリン抵抗性は、糖尿病の病態の一つであり、またメタボリックシンドロームの重要な背景因子として知られている。従来、インスリン抵抗性の評価には、グルコースクランプ試験が用いられている。このグルコースクランプ試験は、人工膵臓を用いてインスリンを被験者の静脈に注射し、血糖値を一定に保つようにグルコースの注入速度を調節するものであり、被験者への侵襲度が高く、被験者の負担が大きい検査方法である。
特許文献1には、「空腹時インスリン値」、「食後2時間血糖値」、「HOMA−IR」及び「インスリンOGTT頂値」を入力値に含み、これらの入力値のそれぞれについて、予め与えられた判定基準値と比較してスコア値を求める末梢のインスリン抵抗性判定処理を実行することにより、糖尿病及びメタボリックシンドロームの疾患リスクを分析する診断支援システムが開示されている。
特開2006−304833号公報
しかしながら、特許文献1に記載の診断支援システムでは、経口糖負荷試験(OGTT:Oral Glucose Tolerance Test)の検査結果を入力情報として必要とする。OGTT は、口からブドウ糖を摂取して、所定時間経過後に数回採血して血糖値と血中インスリン濃度を測定する試験であり、グルコースクランプに比べると、被験者への負担が少ないが、試験時間として数時間を必要とする。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができるインスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様のインスリン抵抗性評価支援システムは、被験者のインスリン抵抗性の評価を支援するためのインスリン抵抗性評価支援システムであって、被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定する推定手段と、を備える。
この態様において、前記推定手段は、血中のインスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、グルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定する第1推定手段と、前記第1推定手段によって推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、グルコース取込速度を推定する第2推定手段と、を備えることが好ましい。
また、この場合においては、前記第1推定手段が、血中の遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度を推定する第3推定手段と、血中のインスリン濃度及び前記第1推定手段によって推定された脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度に基づいて、グルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定する第4推定手段と、を備える構成とすることが好ましい。
また、この場合においては、前記推定手段が、前記第2推定手段によって推定されたグルコース取込速度に基づいて、細胞内のピルビン酸の濃度を推定する第5推定手段と、前記第3推定手段によって推定された脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度と、前記第5推定手段によって推定されたピルビン酸の濃度とに基づいて、細胞内のアセチル補酵素の濃度を推定する第6推定手段と、前記第6推定手段によって推定されたアセチル補酵素の濃度に基づいて、脂肪酸アシル−補酵素A複合体から生成されるアセチル補酵素の生成速度を調整する調整手段と、を更に備え、前記第6推定手段は、前記調整手段による調整後のアセチル補酵素の生成速度に基づいて、アセチル補酵素の濃度を再度推定するように構成されていることが好ましい。
また、上記態様においては、前記入力手段が、被験者の筋肉量に関する情報の入力をさらに受け付けるように構成されており、前記第2推定手段が、前記第1推定手段によって推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、被験者の単位筋肉量当たりのグルコース取込速度を推定するように構成されており、前記推定手段が、前記第2推定手段によって推定された被験者の単位筋肉量当たりのグルコース取込速度と、前記入力手段によって入力を受け付けた被験者の筋肉量に関する情報とに基づいて、被験者の単位重量当たりのグルコース取込速度を推定するように構成されていることが好ましい。
また、上記態様においては、前記推定手段が、生体内におけるグルコースからピルビン酸への変化に関連する複数の物質の生成反応において、生成反応前の各物質の濃度に基づいて、各物質の一定時間あたりの生成量を取得し、それぞれの物質について、前記生成反応前の物質の濃度にその物質の前記生成量を反映させることにより、前記一定時間後の各物質の濃度を取得し、取得された各物質の濃度に基づいて、グルコース取込速度を推定する処理を、繰り返し実行するように構成されていることが好ましい。
また、この場合においては、前記推定手段が、グルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定し、グルコース取込速度が定常状態に至ったと判定されるまで、前記各物質の濃度を取得する処理を繰り返し実行するように構成されていることが好ましい。
また、上記態様においては、前記入力手段が、被験者の空腹時における血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を受け付けるように構成されており、前記推定手段が、前記入力手段によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、空腹時における各物質の濃度を取得し、取得された各物質の濃度に基づいて、空腹時におけるグルコース取込速度を推定する第1グルコース取込速度推定手段と、前記第1グルコース取込速度推定手段によって取得された空腹時における各物質の濃度に基づいて、インスリン濃度が所定値の場合における各物質の濃度を取得し、取得された各物質の濃度に基づいて、インスリン濃度が所定値の場合におけるグルコース取込速度を推定する第2グルコース取込速度推定手段と、を備えることが好ましい。
また、上記態様においては、前記推定手段によって推定されたグルコース取込速度を出力する出力手段をさらに備える構成とするか、又は、前記推定手段によって推定されたグルコース取込速度に関する情報に基づいて、被験者のインスリン抵抗性を推定するインスリン抵抗性推定手段と、前記インスリン抵抗性推定手段による推定結果を出力する出力手段と、をさらに備える構成とすることが好ましい。
本発明の一の態様のインスリン抵抗性評価支援方法は、入力装置を備えるコンピュータにより、被験者のインスリン抵抗性の評価を支援するためのインスリン抵抗性評価支援方法であって、被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を前記入力装置により受け付けるステップと、前記入力装置によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、前記コンピュータにより被験者のグルコース取込速度を推定するステップと、を有する。
この場合においては、前記被験者のグルコース取込速度を推定するステップが、血中のインスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、前記演算部によりグルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定するステップと、推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、前記コンピュータによりグルコース取込速度を推定するステップと、を含むことが好ましい。
本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、入力装置を備えるコンピュータに、被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を前記入力装置により受け付けるステップと、前記入力手段によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度、並びに被験者の血中のグルコース濃度に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定するステップと、を実行させる。
この場合においては、前記被験者のグルコース取込速度を推定するステップにおいて、前記コンピュータに、血中のインスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、グルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定するステップと、推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、グルコース取込速度を推定するステップと、を実行させることが好ましい。
本発明に係るインスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法、及びコンピュータプログラムによれば、インスリン抵抗性に関する生体情報を推定するために必要となる被験者の負担を、従来に比して少なくすることが可能となる。
実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムの構成を示すブロック図。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムの機能的な構成を示す概念図。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムにおける仮想的な物質の反応の流れを示す概念図。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援プログラムの処理の流れを示すフローチャート。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムの入力画面の一例を示す模式図。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムの第1グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャート。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムの第2グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャート。 実施の形態1に係るインスリン抵抗性評価支援システムの出力画面の一例を示す模式図。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの構成を示すブロック図。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムにおける仮想的な物質の反応の流れを示す概念図。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援プログラムの処理の流れを示すフローチャート。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの入力画面の一例を示す模式図。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの第1グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャート。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの第2グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャート。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの評価実験におけるシミュレーション結果表示画面を示す図。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの評価実験における血中グルコース濃度のシミュレーション結果を示すグラフ。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの評価実験における血中インスリン濃度のシミュレーション結果を示すグラフ。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの評価実験における血中脂肪酸濃度のシミュレーション結果を示すグラフ。 実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システムの評価実験におけるグルコース取込速度のシミュレーション結果を示すグラフ。 文献中の実測値とシミュレーションの結果との比較結果を示すグラフ。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態は、被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、遊離脂肪酸濃度に関する情報、並びに骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量及び二酸化炭素産生量の入力を受け付け、入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、遊離脂肪酸濃度に関する情報、骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量、骨格筋の単位時間あたりの二酸化炭素産生量に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定し、推定されたグルコース取込速度に基づいて、被験者のインスリン抵抗性を推定し、推定結果を出力するインスリン抵抗性評価支援システムである。
[インスリン抵抗性評価支援システムの構成]
図1は、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システム1は、コンピュータ1aによって実現される。図1に示すように、コンピュータ1aは、本体11と、画像表示部12と、入力部13とを備えている。本体11は、CPU11aと、ROM11b、RAM11c、ハードディスク11d、読出装置11e、入出力インタフェース11f、及び画像出力インタフェース11gを備えており、CPU11a、ROM11b、RAM11c、ハードディスク11d、読出装置11e、入出力インタフェース11f、および画像出力インタフェース11gは、バス11iによって接続されている。
CPU11aは、RAM11cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなインスリン抵抗性評価支援プログラム14aを当該CPU11aが実行することにより、コンピュータ1aがインスリン抵抗性評価支援システム1として機能する。
ROM11bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU11aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
RAM11cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM11cは、ハードディスク11dに記録されているインスリン抵抗性評価支援プログラム14aの読み出しに用いられる。また、CPU11aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU11aの作業領域として利用される。
ハードディスク11dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム等、CPU11aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述するインスリン抵抗性評価支援プログラム14aも、このハードディスク11dにインストールされている。
読出装置11eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体14に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体14には、コンピュータをインスリン抵抗性評価支援システムとして機能させるためのインスリン抵抗性評価支援プログラム14aが格納されており、コンピュータ1aが当該可搬型記録媒体14からインスリン抵抗性評価支援プログラム14aを読み出し、当該インスリン抵抗性評価支援プログラム14aをハードディスク11dにインストールすることが可能である。
なお、前記インスリン抵抗性評価支援プログラム14aは、可搬型記録媒体14によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ1aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記インスリン抵抗性評価支援プログラム14aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ1aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク11dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク11dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援プログラム14aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。なお、インスリン抵抗性評価支援プログラム14aの構成の詳細については後述する。
入出力インタフェース11fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース11fには、キーボードおよびマウスからなる入力部13が接続されており、ユーザが当該入力部13を使用することにより、コンピュータ1aにデータを入力することが可能である。
画像出力インタフェース11gは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部12に接続されており、CPU11aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部12に出力するようになっている。画像表示部12は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
[インスリン抵抗性評価支援システムの機能的な構成]
次に、インスリン抵抗性評価支援プログラム14aについて更に詳細に説明する。図2は、インスリン抵抗性評価支援プログラム14aにより実現されるインスリン抵抗性評価支援システムの機能的な構成を示す概念図であり、図3は、当該インスリン抵抗性評価支援システムにおける仮想的な物質の反応の流れを示す概念図である。インスリン抵抗性評価支援プログラム14aは、被験者の体重、骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量、二酸化炭素生成量、骨格筋率、空腹時の血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度、及び血中遊離脂肪酸濃度の各生体情報を入力とし、被験者の末梢組織(骨格筋)の糖取込速度(糖取込率)の推定値を出力とする。かかるインスリン抵抗性評価支援プログラム14aは、身体の糖取込に関連する生体器官(機能)を機能別に分けたそれぞれの機能を仮想的に再現する4つのブロック21〜24を含んでいる。それぞれのブロック21〜24は、複数のパラメータを含んでおり、グルコースの取込に関連する物質の生成の反応速度を演算するように構成されている。また、インスリン抵抗性評価支援プログラム14aは、上記の反応速度から、グルコースの取込に関連する物質の生成速度(一定時間あたりの生成量)を演算し、この演算によって得られた一定時間後の生成量を反映した、一定時間後の物質濃度を演算するように構成されている。
以下に、各ブロックの詳細な構成について説明するが、その説明に先立って、各ブロックにおける演算の基礎となる一般的な代謝反応速度の概念について説明する。生体器官における一般的に不可逆な酵素反応は次式のように表される。
X+Y+E→V+W+E …(1)
ここで、X,Yは代謝される基質濃度を、V,Wは生成される基質濃度を示しており、E ,E はATP,ADP若しくはADP,ATP、及び/又は、NADH,NAD又はNAD,NADHを示している。
式(1)によって表される酵素反応は、次の式(2)のように表すこともできる。
Figure 2010001584
上記の酵素反応の反応速度fX+Y→V+Wは、以下の式(3)で求められる。
Figure 2010001584
ただし、VX+Y→V+Wは飽和最大速度を、C ,C は基質X,Yの濃度を、PSはATP/ADPを、PSはADP/ATPを、RSはNADH/NADを、RSはNAD/NADHをそれぞれ示しており、K ,K ,μ±,ν±は反応過程におけるミカエリスメンテン定数又は代謝制御に関するモデルパラメータを示している。
なお、以下の各ブロック21〜24及び補足演算処理の説明における物質の反応速度、生成速度、及び濃度は、特に断りのない限り単位重量当たりの反応速度(mmol/kg/min)、生成速度(mmol/kg/min)、及び濃度(mM)とする。
<脂肪酸代謝ブロック>
脂肪酸代謝ブロック21は、生体器官の脂肪酸代謝機能を仮想的に再現する機能ブロックである。身体の脂肪酸代謝機能は、血中の遊離脂肪酸(FFA)を細胞内に取り込んでジアシルグリセロール(DAG)を介して中性脂肪(TG)を生成し、これとともに、遊離脂肪酸から脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)を生成する。脂肪酸代謝ブロック21は、かかる身体の脂肪酸代謝機能を模したものであり、当該脂肪酸代謝ブロック21をCPU11aが実行することにより、細胞内遊離脂肪酸濃度に基づいて、遊離脂肪酸が中性脂肪に変換される反応速度fFFA→TG、遊離脂肪酸から脂肪酸アシル−補酵素A複合体が生成される反応速度fFFA→FAC、中性脂肪から遊離脂肪酸が生成される反応速度fTG→FFAが演算され、また、一定時間経過後の細胞内の遊離脂肪酸濃度、中性脂肪濃度、及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体濃度が演算される。
以下に、生体器官の脂肪酸代謝機能に関連する化学反応と、それに基づいた脂肪酸代謝ブロック21の具体的な演算処理について説明する。なお、以下の式における遊離脂肪酸、中性脂肪、ATP、ADP、脂肪酸アシル−補酵素A複合体、及びリン酸の細胞内濃度は、それぞれ所定の初期値が与えられており、1度目の演算では初期値が用いられ、その後の演算では更新された値が用いられる。まず、血中の遊離脂肪酸は細胞内に取り込まれるが、このときの血液から組織(細胞)への受動的な遊離脂肪酸の流入速度fFFAは、以下の式(4)で表される。
Figure 2010001584
ただし、fO2は組織内での酸素の消費速度を示しており、入力された骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量と骨格筋率とによって求められる。また、fCO2は組織内での二酸化炭素の生成速度を示しており、入力された骨格筋の単位時間あたりの二酸化炭素産生量と骨格筋率とによって求められる。
上記の遊離脂肪酸の流入速度(組織への取込速度)fFFAは、次式(5)によっても表すことができる。
Figure 2010001584
ただし、CFFAbは血中遊離脂肪酸濃度を、CFFAは細胞内の遊離脂肪酸濃度を、λFFAは膜透過性を含むFFAの膜輸送の係数を、σFFAはFFAに関する分配係数をそれぞれ示す。CPU11aにより、上記の式(4)で求めたfFFAと、入力された血中遊離脂肪酸濃度とを式(5)に適用することで、細胞内の遊離脂肪酸濃度FFAを演算する。
次に、細胞内に取り込まれた遊離脂肪酸(FFA)は、ジアシルグリセロールを介して中性脂肪(TG)に変換される。
3FFA+6ATP→TG+6ADP …(6)
この反応の速度は、次式(7)で示される。
Figure 2010001584
また、遊離脂肪酸(FFA)と補酵素A(CoA)から、脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)が生成される。
FFA+CoA+2ATP→FAC+2ADP+2Pi …(8)
また、この反応の速度は、次式(9)で示される。
Figure 2010001584
更に、中性脂肪は、次式(10)の通り、分解されて遊離脂肪酸となる。
TG→3FFA …(10)
この反応の速度は、次式(11)で示される。
Figure 2010001584
上記の式(8)の反応により生成された脂肪酸アシル−補酵素A複合体は、ミトコンドリアに与えられる。また、脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度情報は、下記のように更新される。
脂肪酸代謝ブロック21では、CPU11aにより、上記の式(7),(9),(11)で表されるfFFA→TG,fFFA→FAC,fTG→FFAの各反応速度が演算される。
また、脂肪酸代謝ブロック21では、CPU11aにより、下式(12)で表される遊離脂肪酸の生成速度、下式(13)で表される中性脂肪の生成速度、下式(14)で表される脂肪酸アシル−補酵素A複合体の生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
ただし、式(12)において、反応速度fFAC→ACoAは、後述する式(30)で表され、ミトコンドリアブロック24において算出される。ミトコンドリアブロック24の演算が一度も行われていないときには、反応速度fFAC→ACoAの初期値が用いられる。
さらに脂肪酸代謝ブロック21では、CPU11aにより、上記のようにして得られた遊離脂肪酸、中性脂肪、及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体の生成速度から、一定時間に生成される遊離脂肪酸、中性脂肪、及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体の量がそれぞれ演算され、その時点での遊離脂肪酸濃度、中性脂肪濃度、脂肪酸アシル−補酵素A複合体濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内の遊離脂肪酸濃度、中性脂肪酸濃度、脂肪酸アシル−補酵素A複合体濃度が演算される。なお、本実施の形態ではこの一定時間は定数とされるが、ユーザが設定可能とすることもできる。
また、脂肪酸代謝ブロック21は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、脂肪酸代謝ブロック21を用いることにより、空腹時における細胞内の遊離脂肪酸濃度、中性脂肪酸濃度、脂肪酸アシル−補酵素A複合体濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、脂肪酸代謝ブロック21を用いることにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
<インスリンシグナルブロック>
インスリンシグナルブロック22は、生体器官のグルコーストランスポータ(GLUT4)の発現量調整機能を仮想的に再現する機能ブロックである。生体のGLUT4発現量調整機能は、インスリン受容体に結合したインスリン量と、脂肪酸代謝の代謝生成物である脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度及びジアシルグリセロールの濃度に応じてGLUT4の発現量を調整する。本実施の形態に係るインスリンシグナルブロック22は、かかる身体のGLUT4発現量調整機能を模したものであり、当該インスリンシグナルブロック22をCPU11aが実行することにより、血漿インスリン濃度(PI)とFAC濃度とに基づいて、GLUT4の発現量に応じた数値が演算される。
以下に、生体器官のGLUT4発現量調整機能に基づいたインスリンシグナルブロック22の具体的な演算処理について説明する。生体器官のGLUT4発現量調整機能は、血漿インスリン濃度の上昇に従い、GLUT4の発現量が増加し、FAC濃度及びDAG濃度の上昇に従い、GLUT4の発現量が抑制されるという特徴を有している。かかる特徴を考慮し、インスリンシグナルブロック22においては、下式(15)に従って、入力された血漿インスリン濃度と、脂肪酸代謝ブロック21の演算で得られたFAC濃度とを用いて、GLUT4の発現量に応じた数値であるグルコースの取込率(GLUT)が演算される。なお、本実施の形態においては、DAG濃度を考慮せずにグルコースの取込率を演算することとしている。
Figure 2010001584
ただし、Vmaxは所定の係数、nPI及びnFACは定数である。なお、グルコース取込率GLUTは、GLUT4の発現量に比例する実数である。
また、インスリンシグナルブロック22は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、インスリンシグナルブロック22を用いることにより、空腹時におけるグルコースの取込率GLUTを演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、インスリンシグナルブロック22を用いることにより、高インスリン血症時におけるグルコースの取込率GLUTを演算する処理が行われる。
<解糖系ブロック>
解糖系ブロック23は、生体器官のグルコース分解機能を仮想的に再現する機能ブロックである。身体のグルコース分解機能は、GLUT4の発現量に応じてグルコースを細胞内に取り込み、細胞内のグルコースを分解して、G6P(グルコース6リン酸)、GA3P(グリセルアルデヒド3リン酸)を介してピルビン酸を産生する。解糖系ブロック23は、かかる身体のグルコース分解機能を模したものであり、当該解糖系ブロック23をCPU11aが実行することにより、インスリンシグナルブロック22で得られたグルコース取込率GLUT、組織内での酸素消費速度及び二酸化炭素産生速度に基づいてグルコース取込速度が演算され、グルコースがG6Pに変換される反応速度fGLU→G6P、G6PがGA3Pに変換される反応速度fG6P→GA3P、GA3Pがピルビン酸に変換される反応速度fGA3P→PYRがそれぞれ演算される。また、これらの反応速度に基づき、一定時間経過後のグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、及びピルビン酸濃度が演算される。
以下に、生体器官のグルコース分解機能に関連する化学反応と、それに基づいた解糖系ブロック23の具体的な演算処理について説明する。なお、以下の式におけるグルコース、G6P、GA3P、ピルビン酸、NAD、及びNADHの細胞内濃度は、それぞれ所定の初期値が与えられており、1度目の演算では初期値が用いられ、その後の演算では更新された値が用いられる。
まず、血中のグルコースが、GLUT4の発現量(細胞表面における発現量)に応じて細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fGLUは、以下の式(16)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CGLUbは、入力された血中のグルコース濃度を、CGLUは細胞内のグルコース濃度を、σGLUはグルコースに関する分配係数をそれぞれ示す。
細胞内へ取り込まれたグルコース(GLU)はリン酸化され、G6Pに変換される。
GLU+ATP→G6P+ADP …(17)
この反応の速度は、次式(18)で表される。
Figure 2010001584
また、変換されて生じたG6PはATPと反応して、次式の通りGA3PとADPとを生じる。
G6P+ATP→2GA3P+ADP …(19)
この反応の速度は、次式(20)で示される。
Figure 2010001584
変換されて生じたGA3Pは、次式に従ってピルビン酸(PYR)に変換される。
GA3P+Pi+NAD+2ADP→PYR+NADH+2ATP …(21)
このPYRに変換される反応速度は、次式(22)で示される。
Figure 2010001584
解糖系ブロック23では、CPU11aにより、上記の式(18),(20),(22)で表されるfGLU→G6P,fG6P→GA3P,fGA3P→PYRの各反応速度が演算される。
また、解糖系ブロック23では、CPU11aにより、下式(23)で表されるグルコースの生成速度、下式(24)で表されるG6Pの生成速度、下式(25)で表されるGA3Pの生成速度、下式(26)で表されるピルビン酸の生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
ただし、式(26)において、反応速度fPYR→ACoAは、後述する式(28)で表され、ミトコンドリアブロック24において算出される。ミトコンドリアブロック24の演算が一度も行われていないときには、反応速度fPYR→ACoAの初期値が用いられる。
さらに解糖系ブロック23では、CPU11aにより、上記のようにして得られたグルコース、G6P、GA3P、及びピルビン酸の生成速度から、一定時間に生成されるグルコース、G6P、GA3P、及びピルビン酸の量がそれぞれ演算され、その時点での細胞内におけるグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、ピルビン酸濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内のグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、及びピルビン酸濃度が演算される。
また、解糖系ブロック23は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、解糖系ブロック23を用いることにより、空腹時における細胞内のグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、及びピルビン酸濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、解糖系ブロック23を用いることにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
<ミトコンドリアブロック>
ミトコンドリアブロック24は、生体器官のミトコンドリアの機能を仮想的に再現する機能ブロックである。ミトコンドリアは、ピルビン酸及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体をそれぞれ酸化させることでアセチル補酵素A(ACoA)を生成し、このアセチル補酵素AをTCA回路で消費する。また、アセチル補酵素Aの濃度により、脂肪酸酸化が抑制される。ミトコンドリアブロック24は、かかるミトコンドリアの機能を模したものであり、当該ミトコンドリアブロック24をCPU11aが実行することにより、解糖系ブロック23で得られたピルビン酸からアセチル補酵素Aが生成される反応速度fPYR→ACoA、脂肪酸代謝ブロック21で得られた脂肪酸アシル−補酵素A複合体からアセチル補酵素Aが生成される反応速度fFAC→ACoA、アセチル補酵素Aから二酸化炭素が生成される反応速度fACoA→CO2、酸素が消費され、水が生成される反応速度fO2→H2Oがそれぞれ演算される。また、これらの反応速度に基づき、一定時間経過後のアセチル補酵素A、補酵素A、酸素、及び二酸化炭素の細胞内濃度が演算される。
以下に、ミトコンドリアに関連する化学反応と、それに基づいたミトコンドリアブロック24の具体的な演算処理について説明する。なお、以下の式におけるアセチル補酵素A、補酵素A、酸素、及び二酸化炭素の細胞内濃度は、それぞれ所定の初期値が与えられており、1度目の演算では初期値が用いられ、その後の演算では更新された値が用いられる。
まず、細胞内のピルビン酸が酸化され、アセチル補酵素Aが生成される。
PYR+CoA+NAD→ACoA+NADH+CO …(27)
この反応の速度は、次式(28)で表される。
Figure 2010001584
また、脂肪酸代謝機能で生成された脂肪酸アシル−補酵素A複合体が酸化され、次式(29)の通りアセチル補酵素Aが生成される。このルートはβ酸化と呼ばれる。
Figure 2010001584
この反応の速度は、次式(30)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CMCoAは、マロニルCoAの濃度を示しており、ACoAの濃度CACoAに所定の係数を乗ずることにより得られる。このように、β酸化においては、マロニルCoAの濃度によりアセチル補酵素Aの生成速度が抑制される。したがって、マロニルCoAの濃度により、β酸化におけるアセチルCoAの生成速度が調整される。ここで、式(30)の最初の演算では、CMCoAの所定の初期値が用いられ、2度目以降の演算では、演算によって得られたCMCoAの値が用いられる。
また、脂肪酸アシル−補酵素A複合体は、TCA回路により代謝され、新たにATP及びNADHが生成される。
ACoA+ADP+Pi+4NAD→2CO +CoA+ATP+4NADH …(31)
この反応の速度は、次式(32)で表される。
Figure 2010001584
一方、ミトコンドリアにおけるNADH、酸素、及びADPの消費、並びにATPの合成の関係式は以下の式(33)ように示される。
+6ADP+6Pi+2NADH→2H O+6ATP+2NAD …(33)
この反応の速度は、次式(34)で表される。
Figure 2010001584
ミトコンドリアブロック24では、CPU11aにより、上記の式(28),(30),(32),(34)で表されるfPYR→ACoA,fFAC→ACoA,fACoA→CO2,fO2→H2Oの各反応速度が演算される。
細胞内における酸素の消費速度fO2 は、前述の通り、入力された骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量と骨格筋率とによって定まるが、次式(35)のようにも示すことができる。
Figure 2010001584
ただし、CO2bは血中酸素濃度(定数)を、CO2 は細胞内の酸素濃度を、λO2 は膜透過性を含む酸素の膜輸送の係数を、σO2 は酸素に関する分配係数をそれぞれ示す。CPU11aにより、上記の式(35)から細胞内の酸素濃度が求められる。
同様に、細胞内における二酸化炭素の産生速度fCO2は、前述の通り、入力された骨格筋の単位時間あたりの二酸化炭素産生量と骨格筋率とによって定まるが、次式のようにも示すことができる。
Figure 2010001584
ただし、CCO2bは血中二酸化炭素濃度(定数)を、CCO2は細胞内の二酸化炭素濃度を、λCO2は膜透過性を含む二酸化炭素の膜輸送の係数を、σCO2は二酸化炭素に関する分配係数をそれぞれ示す。CPU11aにより、上記の式(36)から細胞内の二酸化炭素濃度が求められる。
また、ミトコンドリアブロック24では、CPU11aにより、下式(37)で表されるアセチル補酵素Aの生成速度、及び下式(38)で表される補酵素Aの生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
さらにミトコンドリアブロック24では、CPU11aにより、上記のようにして得られた酸素、二酸化炭素、アセチル補酵素A、及び補酵素Aの生成(消費)速度から、一定時間に生成(消費)される酸素、二酸化炭素、アセチル補酵素A、及び補酵素Aの量がそれぞれ演算され、その時点での遊離脂肪酸濃度、中性脂肪濃度、脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内の酸素濃度、二酸化炭素濃度、アセチル補酵素A濃度、及び補酵素A濃度が演算される。
また、ミトコンドリアブロック24は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、ミトコンドリアブロック24を用いることにより、空腹時における細胞内の酸素濃度、二酸化炭素濃度、アセチル補酵素A濃度、及び補酵素A濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、ミトコンドリアブロック24を用いることにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
<補足演算処理>
また、CPU11aにより、以下のような補足演算処理が行われる。
ADPの濃度が高いときは、クレアチンリン酸(PCr)とADPとが反応することにより、クレアチン(Cr)とATPとが生成される。
PCr+ADP→Cr+ATP …(39)
この反応の速度は、次式(40)で表される。
Figure 2010001584
一方、ATPの濃度が高くなると、クレアチンとATPとによって、クレアチンリン酸とADPとが生成される。
Cr+ATP→PCr+ADP …(41)
この反応の速度は、次式(42)で表される。
Figure 2010001584
また、ATPは加水分解され、次式に従ってADPに変換される。
ATP→ADP+Pi …(43)
この反応の速度は、次式(44)で表される。
Figure 2010001584
補足演算処理では、CPU11aにより、上記の式(40),(42),(44)で表されるfPCr→Cr,fCr→PCr,fATP→ADPの各反応速度が演算される。
また、CPU11aにより、以下の式(45)〜(51)に従って、NAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Crの各生成速度が演算される。
Figure 2010001584
さらに、CPU11aにより、上記のようにして得られたNAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Crの各生成速度から、一定時間に生成されるNAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Crの量がそれぞれ演算され、その時点での細胞内におけるNAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Crの濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内のNAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Crの各濃度が演算される。
また、補足演算処理は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、補足演算処理を実行することにより、空腹時における細胞内のNAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Crの各濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、補足演算処理を実行することにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
[インスリン抵抗性評価支援システムの動作]
次に、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システム1の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。コンピュータ1aは、インスリン抵抗性評価支援プログラム14aを実行することにより、以下のように動作する。まず、被験者は、予め体重計で体重を計測し、体組成計又は呼気ガス分析により骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量を測定し、体組成計により骨格筋率の測定、血液検査、及び呼気ガス検査を行うことにより、被験者の体重、骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量及び二酸化炭素産生量(以下、「酸素消費量」及び「二酸化炭素産生量」という)、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度の各生体情報をそれぞれ取得しておく。なお、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度、及び血中遊離脂肪酸濃度は、それぞれ空腹時における測定値が用いられる。これらの生体情報は、インスリン抵抗性評価支援システムを使用する医師、オペレータ等のユーザに予め連絡される。
インスリン抵抗性評価支援プログラム14aが起動された後、まず、CPU11aは、被験者の体重、酸素消費量、二酸化炭素産生量、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度の入力をユーザに促すための入力画面を表示する(ステップS1)。図5は、入力画面の一例を示す模式図である。図5に示すように、入力画面3には、被験者の体重、酸素消費量、二酸化炭素産生量、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度をそれぞれ入力するための入力エリア31〜37と、入力エリア31〜37に各生体情報を入力した後に、インスリン抵抗性の推定の実行を指示するための実行ボタン38とが設けられている。ユーザは、入力部13を操作することによりこれらの入力エリア31〜37に被験者の体重、酸素消費量、二酸化炭素産生量、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度の各生体情報を入力し、実行ボタン38を選択(クリック)することによりインスリン抵抗性の推定の実行を指示する。CPU11aは、かかるユーザからの生体情報及び実行指示の入力を受け付ける(ステップS2)。かかる生体情報の入力があった場合、CPU11aに割り込みが発生し、ステップS3以下の処理が呼び出される。
ユーザから生体情報及び実行指示の入力を受け付けると、CPU11aは、第1グルコース取込速度推定処理(ステップS3)を実行する。図6は、第1グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャートである。この第1グルコース取込速度推定処理は、空腹時におけるグルコース取込速度を推定する処理であり、ステップS301〜S308の処理を順次的に繰り返し実行する処理となっている。まず、CPU11aは、変数に初期値をセット(初期化)する(ステップS301)。この処理では、上述した各物質の空腹時における細胞内濃度及び各反応速度の初期値をRAM11cに記憶し、また、グルコース取込速度の値として、初期値0をRAM11cに記憶する。次に、CPU11aは、その時点でのグルコース取込速度の値を、前回のグルコース取込速度の値としてRAM11cに記憶する(ステップS302)。そして、CPU11aは、脂肪酸代謝ブロック21における演算処理である脂肪酸代謝ブロック演算処理(ステップS303)、インスリンシグナルブロック22における演算処理であるインスリンシグナルブロック演算処理(ステップS304)、解糖系ブロック23における演算処理である解糖系ブロック演算処理(ステップS305)、ミトコンドリアブロック24における演算処理であるミトコンドリアブロック演算処理(ステップS306)、及び補足演算処理(ステップS307)を順次実行する。かかるステップS303〜307において得られる物質の濃度、反応速度、GLUT4発現量に応じた数値及びグルコース取込速度は、空腹時における数値となる。
次にCPU11aは、上記の処理によって得られた空腹時におけるグルコース取込速度が定常状態に到達したか否かを判定する(ステップS308)。この処理は、本実施の形態においては、今回の演算(ターン)によって求められたグルコース取込速度の値と、RAM11cに記憶された前回の演算(ターン)のグルコース取込速度の値との差を求め、その差がグルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定するための第1基準値(例えば、0.1)未満であるか否かを判定することにより行われる。そして、CPU11aは、グルコース取込速度の今回値と前回値との差が第1基準値未満であるときは(ステップS308においてYES)、メインルーチンにおける第1グルコース取込速度推定処理の呼出アドレスへ処理をリターンし、差が第1基準値以上であるときは(ステップS308においてNO)、再度ステップS302以下の処理を繰り返す。
次に、CPU11aは、第2グルコース取込速度推定処理を実行する(ステップS4)。図7は、第2グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャートである。この第2グルコース取込速度推定処理は、高インスリン血症時におけるグルコース取込速度を推定する処理であり、ステップS401〜S408の処理を順次的に繰り返し実行する処理となっている。まず、CPU11aは、インスリン濃度に所定値(高インスリン血症時のインスリン濃度)をセットする(ステップS401)。なお、第2グルコース取込速度推定処理では、インスリン濃度以外の各物質の空腹時における細胞内濃度及び各反応速度並びにグルコース取込率(GLUT)の初期値として、第1グルコース取込速度推定処理において最終的に得られた数値、すなわち、グルコース取込速度が定常状態に達したときの各物質の濃度及び反応速度並びにグルコース取込率がそのまま用いられる。血中グルコース濃度については、第1グルコース取込速度推定処理で使用した空腹時のグルコース濃度がそのまま用いられる。また、グルコース取込速度の値として、初期値0がRAM11cに記憶される。次に、CPU11aは、その時点でのグルコース取込速度の値を、前回のグルコース取込速度の値としてRAM11cに記憶する(ステップS402)。そして、CPU11aは、脂肪酸代謝ブロック21における演算処理である脂肪酸代謝ブロック演算処理(ステップS403)、インスリンシグナルブロック22における演算処理であるインスリンシグナルブロック演算処理(ステップS404)、解糖系ブロック23における演算処理である解糖系ブロック演算処理(ステップS405)、ミトコンドリアブロック24における演算処理であるミトコンドリアブロック演算処理(ステップS406)、及び補足演算処理(ステップS407)を順次実行する。かかるステップS403〜407において得られる物質の濃度、反応速度、GLUT4発現量に応じた数値及びグルコース取込速度は、高インスリン血症時における数値となる。
次にCPU11aは、上記の処理によって得られた高インスリン血症時におけるグルコース取込速度が定常状態に到達したか否かを判定する(ステップS408)。この処理は、本実施の形態においては、今回の演算(ターン)によって求められたグルコース取込速度の値と、RAM11cに記憶された前回の演算(ターン)のグルコース取込速度の値との差を求め、その差がグルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定するための第1基準値(例えば、0.1)未満であるか否かを判定することにより行われる。なお、第1グルコース取込速度推定処理と第2グルコース取込速度推定処理とにおいて、同じ第1の基準値を用いてグルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定する構成としたが、これに限られず、それぞれで異なる基準値を用いてもよい。そして、CPU11aは、グルコース取込速度の今回値と前回値との差が第1基準値未満であるときは(ステップS408においてYES)、メインルーチンにおける第2グルコース取込速度推定処理の呼出アドレスへ処理をリターンし、差が第1基準値以上であるときは(ステップS408においてNO)、再度ステップS402以下の処理を繰り返す。
次に、CPU11aは、入力された被験者の体重及び骨格筋率から、被験者の筋肉量を算出し(ステップS5)、この筋肉量、グルコース分布容量(定数)、及び第2グルコース取込速度推定処理によって得られたグルコース濃度を、第2グルコース取込速度推定処理によって得られたグルコース取込率(GLUT)に乗じ、単位重量当たりの高インスリン血症時のグルコース取込速度を算出する(ステップS6)。次に、CPU11aは、インスリン抵抗性の有無を推定する(ステップS7)。この処理では、ステップS6で得た単位重量当たりのグルコース取込速度の値(推定値)が、インスリン抵抗性の有無を推定するための第2基準値(例えば、12mg/kg/min)以上か否かを判定することにより行われる。これにより、グルコース取込速度の推定値が前記第2基準値以上であれば、インスリン抵抗性がない、即ち、インスリン感受性がある、と推定することができ、グルコース取込速度の推定値が前記第2基準値未満であれば、インスリン抵抗性がある、即ち、インスリン感受性がない、と推定することができる。このようにして、CPU11aは、インスリン抵抗性の推定を行う。
次にCPU11aは、インスリン抵抗性の推定結果の出力画面を表示する(ステップS4)。図8は、出力画面の一例を示す模式図である。図8に示すように、出力画面4には、上記の処理によって得られたインスリン抵抗性の推定結果41と、最終的に得られた単位重量当たりのグルコース取込速度の推定値42とが含まれる。この出力画面4により、ユーザに対して、インスリン抵抗性の推定結果及びグルコース取込速度の推定値が通知される。このようにインスリン抵抗性の推定結果及びグルコース取込速度の推定値をユーザに提供することにより、ユーザはこれらの情報を活用してインスリン抵抗性の評価を行うことができる。
上記のような構成とすることにより、被験者の負担の大きいグルコースクランプ及び経口糖負荷試験の検査結果を必要とせず、被験者の負担が少なく、簡便な検査によって得ることができる「体重」、「骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量」、「骨格筋の単位時間あたりの二酸化炭素生成量」、「骨格筋率」、「空腹時の血中グルコース濃度」、「空腹時の血漿インスリン濃度」、及び「空腹時の血中遊離脂肪酸濃度」の各生体情報によってインスリン抵抗性の有無を推定することができる。このような入力情報の中でも、空腹時の血中グルコース濃度及び血漿インスリン濃度については、上記のように血液検査によって簡便に得られる検査値を用いることができるが、グルコースクランプ又は経口糖負荷試験によって得られた検査値を入力情報として用いることもできる。しかし、グルコースクランプ及び経口糖負荷試験のような被験者にとって負担の大きい検査結果を常に必要とする訳ではなく、これらの検査結果でなくとも、簡便な血液検査の結果を利用することができるという点、及び、入力情報に用いる情報を、血液検査、グルコースクランプ、及び経口糖負荷試験のいずれからも選択することができるという点で、本システムは有用である。
また、マロニルCoAの濃度によるβ酸化におけるアセチルCoAの生成速度の抑制を考慮しており、アセチルCoAの濃度に基づいて求められたマロニルCoAにより、前記β酸化におけるアセチルCoAの生成速度を調整するように構成し、実際の生体におけるグルコースの代謝機能を忠実に再現した。このことからも、実際のグルコース取込速度を精度よく反映した推定値が得られることが期待できる。
また、上記の生体情報に基づき、実際の生体器官におけるグルコースの代謝機能を仮想的に再現し、グルコース取込速度の推定値を求めるため、実際のグルコース取込速度を精度よく反映した推定値が得られることが期待できる。また、本実施の形態では、高インスリン血症時におけるグルコース取込速度を推定し、この推定値を出力する。グルコースクランプ試験では、高インスリン血症の状態が維持されるようにグルコース及びインスリンが被験者に注入される。また、文献等に開示されるグルコース取込速度も、高インスリン血症時における値が一般的である。したがって、上述のように高インスリン血症時におけるグルコース取込速度を推定し、その推定値を出力することで、ユーザは上記推定値をグルコースクランプ試験の結果又は文献等に報告されている数値と比較することができ、その被験者のインスリン抵抗性を簡便に評価することができる。
さらに、本実施の形態では、単位重量当たりのグルコース取込速度を推定し、これを出力する構成とした。グルコースクランプ試験では、単位重量当たりのグルコース取込速度が得られる。また、文献等に開示されるグルコース取込速度も、単位重量当たりのものが一般的である。したがって、上述のように単位重量当たりのグルコース取込速度を推定し、その推定値を出力することで、ユーザは上記推定値をグルコースクランプ試験の結果又は文献等に報告されている数値と比較することができ、その被験者のインスリン抵抗性を簡便に評価することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態は、被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を受け付け、入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定し、推定されたグルコース取込速度に基づいて、被験者のインスリン抵抗性を推定し、推定結果を出力するインスリン抵抗性評価支援システムである。
[インスリン抵抗性評価支援システムの構成]
図9は、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システム201は、コンピュータ201aによって実現される。図9に示すように、コンピュータ201aは、本体211と、画像表示部212と、入力部213とを備えている。本体211は、CPU211aと、ROM211b、RAM211c、ハードディスク211d、読出装置211e、入出力インタフェース211f、及び画像出力インタフェース211gを備えており、CPU211a、ROM211b、RAM211c、ハードディスク211d、読出装置211e、入出力インタフェース211f、および画像出力インタフェース211gは、バス211iによって接続されている。
CPU211aは、RAM211cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなインスリン抵抗性評価支援プログラム214aを当該CPU211aが実行することにより、コンピュータ201aがインスリン抵抗性評価支援システム201として機能する。
RAM11cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM11cは、ハードディスク211dに記録されているインスリン抵抗性評価支援プログラム214aの読み出しに用いられる。また、CPU211aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU211aの作業領域として利用される。
ハードディスク211dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム等、CPU211aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述するインスリン抵抗性評価支援プログラム214aも、このハードディスク211dにインストールされている。
読出装置211eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体214に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体214には、コンピュータをインスリン抵抗性評価支援システムとして機能させるためのインスリン抵抗性評価支援プログラム214aが格納されており、コンピュータ201aが当該可搬型記録媒体214からインスリン抵抗性評価支援プログラム214aを読み出し、当該インスリン抵抗性評価支援プログラム214aをハードディスク211dにインストールすることが可能である。
なお、前記インスリン抵抗性評価支援プログラム214aは、可搬型記録媒体214によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ201aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記インスリン抵抗性評価支援プログラム214aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ201aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク211dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク211dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援プログラム214aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。なお、インスリン抵抗性評価支援プログラム214aの構成の詳細については後述する。
なお、本実施の形態2に係るコンピュータ201aのその他の構成は、実施の形態1に係るコンピュータ1aの構成と同様であるので、その説明を省略する。
[インスリン抵抗性評価支援システムの機能的な構成]
次に、インスリン抵抗性評価支援プログラム214aについて更に詳細に説明する。図10は、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システムにおける仮想的な物質の反応の流れを示す概念図である。インスリン抵抗性評価支援プログラム214aは、被験者の体重、骨格筋率、空腹時の血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度、及び血中遊離脂肪酸濃度の各生体情報を入力とし、被験者の末梢組織(骨格筋)の糖取込速度(糖取込率)の推定値を出力とする。かかるインスリン抵抗性評価支援プログラム214aは、身体の糖取込に関連する生体器官(機能)を機能別に分けたそれぞれの機能を仮想的に再現する4つのブロック221〜224を含んでいる。それぞれのブロック221〜224は、複数のパラメータを含んでおり、グルコースの取込に関連する物質の生成の反応速度を演算するように構成されている。また、インスリン抵抗性評価支援プログラム214aは、上記の反応速度から、グルコースの取込に関連する物質の生成速度(一定時間あたりの生成量)を演算し、この演算によって得られた一定時間後の生成量を反映した、一定時間後の物質濃度を演算するように構成されている。以下に、各ブロック221〜224の詳細な構成について説明する。
<脂肪酸代謝ブロック>
脂肪酸代謝ブロック221は、筋肉組織や脂肪組織などの生体器官の脂肪酸代謝機能を仮想的に再現する機能ブロックである。身体の脂肪酸代謝機能は、血中の遊離脂肪酸を細胞内に取り込んで遊離脂肪酸(FFA)から脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)を生成し、これとともに、ジアシルグリセロール(DG)を介して中性脂肪(TG)を生成する。脂肪酸代謝ブロック221は、かかる身体の脂肪酸代謝機能を模したものであり、当該脂肪酸代謝ブロック221をCPU11aが実行することにより、FACとD−グリセルアルデヒド3-リン酸(GA3P)からDGを生成する反応速度fGA3P→DG、DGとFACからTGを生成する反応速度fDG→TG、TGからDGとFFAを生成する反応速度fTG→DG、DGからFFAとグリセロール(GLR)を生成する反応速度fDG→FFA、FFAからFACが生成される反応速度fFFA→FAC、が演算され、また、一定時間経過後の細胞内FFA、GLR, DG、TG、FAC及びFAC濃度が演算される。
以下に、筋肉組織及び脂肪組織等の生体器官の脂肪酸代謝機能に関連する化学反応、並びにそれに基づいた脂肪酸代謝ブロック221の具体的な演算処理について説明する。なお、以下の式におけるFFA、FAC、DG、TG、GA3P、GLR,ATP、ADP、NAD, NADH、及び無機リン酸(Pi)の細胞内濃度は、それぞれ所定の初期値が与えられており、1度目の演算では初期値が用いられ、その後の演算では更新された値が用いられる。
まず、血中の脂肪酸(FFA)が細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fFFAは以下の式(52)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CFFA,bは、入力された血中の脂肪酸濃度を、CFFAは細胞内の脂肪酸濃度を、σFFAは脂肪酸に関する分配係数を、Qは筋肉組織の血流速をそれぞれ示す。
次に、血中のグリセロール(GLR)が細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fGLCは以下の式(53)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CGLR,bは、入力された血中のグリセロール濃度を、CGLRは細胞内のグリセロール濃度を、σGLCはグリセロールに関する分配係数をそれぞれ示す。
実施の形態1の式(8)にしたがって、細胞内に流入した脂肪酸(FFA)とCoAからATPを使いFACを合成する。また、この反応の速度は、次式(54)で示される。
Figure 2010001584
次に、解糖系ブロックのGA3Pと生成されたFACから複数の反応を経てDGを合成する。
GA3P+2FAC+NADH→DG+2CoA+Pi+NAD …(55)
また、この反応の速度は、次式(56)で示される。
Figure 2010001584
次に、DGとFACからTGが生成される。
DG+FAC→TG+CoA …(57)
また、この反応の速度は、次式(58)で示される。
Figure 2010001584
中性脂肪(TG)は、次式の通り、ホルモンセンシティブリパーゼ(HSL)などによってDGとFFAに分解される。
TG→DG+FFA …(59)
また、この反応の速度は、次式(60)で示される。
Figure 2010001584
ただし、HSL(insulin)はインスリンシグナリングブロック222にて演算される。
DGはHSLなどによってFFAとGLRに分解される。
DG→GLR+2FFA …(61)
また、この反応の速度は、次式(62)で示される。
Figure 2010001584
脂肪酸代謝ブロック221では、CPU211aにより、上記の式(52)、(53)、(54),(56),(58)、(60)、(62)で表されるfFFA,fGLC,fFFA→FAC,fGA3P→DG,fDG→TG,fTG→DG,fDG→GLRの各反応速度が演算される。
また、脂肪酸代謝ブロック221では、CPU211aにより、下式(63)で表されるFFAの生成速度、下式(64)で表されるFACの生成速度、下式(65)で表されるDGの生成速度、下式(66)で表されるTGの生成速度、下式(67)で表されるGLCの生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
ただし、式(64)において、反応速度fFAC→ACoAは、後述する式(152)で表され、ミトコンドリアブロック224において算出される。ミトコンドリアブロック224の演算が一度も行われていないときには、反応速度fFAC→ACoAの初期値が用いられる。
さらに脂肪酸代謝ブロック221では、CPU211aにより、上記のようにして得られたFFA、FAC、DG、TG及びGLRの生成速度から、一定時間に生成されるFFA、FAC、DG、TG及びGLRの量がそれぞれ演算され、その時点での細胞内におけるFFA濃度、FAC濃度、DG濃度、TG濃度、GLR濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内のFFA濃度、FAC濃度、DG濃度、TG濃度及びGLR濃度が演算される。
また、脂肪酸代謝ブロック221は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、脂肪酸代謝ブロック221を用いることにより、空腹時における細胞内のグルコース濃度、FFA濃度、FAC濃度、DG濃度、TG濃度及びGLC酸濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、脂肪酸代謝ブロック221を用いることにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
<インスリンシグナルブロック>
インスリンシグナルブロック222は、生体器官、特に筋肉組織、脂肪組織において発現が知られているグルコーストランスポータ(GLUT4)の発現量調整機能を仮想的に再現する機能ブロックである。生体のGLUT4発現量調整機能は、インスリン受容体に結合したインスリン量と、脂肪酸代謝の代謝生成物であるジアシルグリセロール(DG)の濃度に応じてグルコース輸送担体(GLUT4)の細胞膜上に占める割合を調整する。本実施の形態に係るインスリンシグナルブロック222は、かかる身体のGLUT4の細胞膜上に占める割合や、インスリン作用が知られているヘキソキナーゼ(HK)、グリコーゲンシンターゼ(GS)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の各酵素と、脂肪酸酸化の調整機能を模したものであり、当該インスリンシグナルブロック222をCPU211aが実行することにより、血漿インスリン濃度(PI)とDG濃度に基づいて、GLUT4の発現量ならびにHK,GS,PDH,HSLの各酵素と脂肪酸酸化の活性に応じた数値が演算される。
以下に、生体器官のGLUT4の細胞膜上発現量調整機能に基づいたインスリンシグナルブロック222の具体的な演算処理について説明する。生体器官のGLUT4発現量調整機能は、血漿インスリン濃度の上昇に従い、GLUT4の発現量が増加し、FAC濃度及びDG濃度の上昇に従い、GLUT4の発現量が抑制されるという特徴を有している。かかる特徴を考慮し、インスリンシグナルブロック222においては、下式(68)〜(131)従って、入力された血漿インスリン濃度と、脂肪酸代謝ブロック21の演算で得られたDG濃度とを用いて、GLUT4の発現量に応じた数値であるグルコースの取込率(GLUT)が演算される。
細胞膜上のインスリン未結合のインスリン受容体から、細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体へ遷移する速度fx2→x3は、下式(68)のように血漿インスリン濃度xと細胞膜上のインスリン未結合インスリン受容体濃度x2及び反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体から細胞膜上のインスリン未結合のインスリン受容体へ遷移する速度fx3→x2は、下式(69)のように細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k−1によって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体から細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx3→x5は、下式(70)のように細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体濃度x及び反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞膜上のインスリン未結合のインスリン受容体へ遷移する速度fx5→x2は、下式(71)のように細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x、プロテインチロシンフォスファターゼ(PTP)及び反応速度定数k−3によって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx5→x4は、下式(72)のように細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x及び反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx4→x5は、下式(73)のように細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k−2によって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上のインスリン未結合のインスリン受容体から、細胞内インスリン未結合のインスリン受容体へ遷移する速度fx2→x6は、下式(74)のように細胞膜上のインスリン未結合インスリン受容体濃度x及び反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
細胞内インスリン未結合のインスリン受容体から細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体へ遷移する速度fx6→x2は、下式(75)のように細胞内インスリン未結合のインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k−4によって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞内の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx5→x8は、下式(76)のように細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k4’によって決まる。
Figure 2010001584
細胞内の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx8→x5は、下式(77)のように細胞内の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k―4’によって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞内の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx4→x7は、下式(78)のように細胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k4’によって決まる。
Figure 2010001584
細胞内の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体へ遷移する速度fx7→x4は、下式(79)のように細胞内の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k−4’によって決まる。
Figure 2010001584
細胞内の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞内のインスリン未結合のインスリン受容体へ遷移する速度fx7→x6は、下式(80)のように細胞内の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x、プロテインチロシンフォスファターゼ(PTP)及び反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
細胞内の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体から細胞内のインスリン未結合のインスリン受容体へ遷移する速度fx8→x6は、下式(81)のように細胞内の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体濃度x、プロテインチロシンフォスファターゼ(PTP)及び反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
細胞内におけるインスリン受容体生成速度は、下式(82)のように定数k5で表される一定の値とする。
Figure 2010001584
細胞内のインスリン未結合のインスリン受容体の分解速度fx6→は、下式(83)のように細胞内のインスリン未結合のインスリン受容体濃度x及び反応速度定数k−5によって決まる。
Figure 2010001584
未リン酸化インスリン受容体基質1(IRS1)からチロシンリン酸化インスリン受容体基質1へ遷移する速度fx9→x10は、下式(84)のように未リン酸化インスリン受容体基質1濃度x、胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体x、胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体x及びチロシンリン酸化反応速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
ただし、IRは最大のインスリン刺激下における細胞膜上のリン酸化されたインスリン受容体濃度をあらわす。
チロシンリン酸化インスリン受容体基質1から未リン酸化インスリン受容体基質1(IRS1)へ遷移する速度fx10→x9は、下式(85)のようにチロシンリン酸化インスリン受容体基質1x10、プロテインチロシンフォスファターゼ(PTP)及び脱リン酸化反応速度定数k−7によって決まる。
Figure 2010001584
未リン酸化インスリン受容体基質1(IRS1)からセリンリン酸化インスリン受容体基質1へ遷移する速度fx9→x10aは、下式(86)のように未リン酸化インスリン受容体基質1濃度x、プロテインキナーゼC(PKC)及びセリンリン酸化反応速度定数k7’によって決まる。
Figure 2010001584
セリンリン酸化インスリン受容体基質1から未リン酸化インスリン受容体基質1(IRS1)へ遷移する速度fx10a→x9は、下式(87)のようにセリンリン酸化インスリン受容体基質1x10a及び脱リン酸化反応速度定数k−7’によって決まる。
Figure 2010001584
セリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)からセリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の複合体が生成される速度fx10→x12は、下式(88)のようにセリンリン酸化インスリン受容体基質1濃度x10、フォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)濃度x11及び速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
セリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の複合体からセリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)のそれぞれが生成される速度fx12→x10は、下式(89)のようにセリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の複合体濃度x12及び速度定数k−8によって決まる。
Figure 2010001584
フォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸が、Src homology 2 containinginositol 5' phosphatase(SHIP)などの5’脂質フォスファターゼによって、フォスファチジルイノシトール(3,4)二リン酸へ脱リン酸化される速度fx13→x15は、下式(90)のようにフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸の割合x13、SHIP濃度、及び速度定数k−10によって決まる。
Figure 2010001584
フォスファチジルイノシトール(3,4)二リン酸がフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸へリン酸化される速度fx15→x13は、下式(91)のようにフォスファチジルイノシトール(3,4)二リン酸の割合x15及び速度定数k10によって決まる。
Figure 2010001584
フォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸が、Phosphatase and Tensin Homolog Deleted from Chromosome 10 (PTEN)などの3’脂質フォスファターゼによって、フォスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸へ脱リン酸化される速度fx13→x14は、下式(92)のようにフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸の割合x13、PTEN濃度、及び速度定数k−9によって決まる。
Figure 2010001584
なお、k(stimulated)とは、フォスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸がフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸へリン酸化される速度fx14→x13に関する定数であって、当該速度におけるセリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)との複合体に対して依存している成分に関するものである。
フォスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸がフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸へリン酸化される速度fx14→x13は、下式(93)のようにフォスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸の割合x14、及び速度定数kによって決まる。
Figure 2010001584
なお、k(basal)とは、フォスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸がフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸へリン酸化される速度fx14→x13に関する定数であって、当該速度におけるセリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)との複合体に対して依存していない成分に関するものである。
未リン酸化AKTがリン酸化AKTへリン酸化される速度fx16→x17は、下式(94)のように未リン酸化AKTの割合x16及び速度定数k11によって決まる。
Figure 2010001584
リン酸化AKTが未リン酸化AKTへ脱リン酸化される速度fx17→x16は、下式(95)のようにリン酸化AKTの割合x17及び速度定数k−11によって決まる。
Figure 2010001584
未リン酸化PKCがリン酸化PKCへリン酸化される速度fx18→x19は、下式(96)のように未リン酸化PKCの割合x18及び速度定数k12によって決まる。
Figure 2010001584
リン酸化PKCから未リン酸化PKCへ脱リン酸化される速度fx19→x18は、下式(97)のようにリン酸化PKCの割合x19及び速度定数k−12によって決まる。
Figure 2010001584
細胞内GLUT4が生成される速度f→x20は、下式(98)のように生成速度k14によって決まる。
Figure 2010001584
細胞内GLUT4が分解される速度fx20→は、下式(99)のように細胞内GLUT4の割合x20及び速度定数k−14によって決まる。
Figure 2010001584
細胞内グルコース輸送担体GLUT4から細胞膜上のGLUT4への移動速度fx20→x21は、下式(100)のように細胞内GLUT4の割合x20及び速度定数k13、k13’によって決まる。
Figure 2010001584
細胞膜上グルコース輸送担体GLUT4から細胞内GLUT4への移動速度fx21→x20は、下式(101)のように細胞膜上GLUT4の割合x21及び速度定数k−13によって決まる。
Figure 2010001584
非活性酵素から活性化された酵素ヘの活性化速度fx22→x23は、下式(102)のように酵素活性補助変数x22及び速度定数k15によって決まる。
Figure 2010001584
活性化された酵素から非活性酵素ヘの非活性化速度fx23→x22は、下式(103)のように酵素活性補助変数x23及び速度定数k−15によって決まる。
Figure 2010001584
ヘキソキナーゼ活性
活性化されたヘキソキナーゼ(HK)の値は、下式(104)によって演算される。
Figure 2010001584
グリコーゲンシンターゼ活性
活性化されたグリコーゲンシンターゼ(GS)の値は、下式(105)によって演算される。
Figure 2010001584
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性
活性化されたピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)の値は、下式(106)によって演算される。
Figure 2010001584
ホルモンセンシティブリパーゼ活性
活性化されたホルモンセンシティブリパーゼ(HSL)の値は、下式(107)によって演算される。
Figure 2010001584
脂肪酸酸化(ベータ酸化)の活性
活性化されたヒドロキシアシルデヒドロゲナーゼ(HAD)の値は、下式(108)によって演算される。
Figure 2010001584
またインスリンシグナリングブロック222では、下式(109)で表される細胞膜上のインスリン未結合のインスリン受容体生成速度、下式(110)で表される細胞膜上の1つのインスリンが結合したインスリン受容体生成速度、下式(111)で表される細胞膜上の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体生成速度、下式(112)で表される細胞膜上の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体生成速度、下式(113)で表される胞膜内インスリン未結合のインスリン受容体生成速度、下式(114)で表される細胞内の1つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体生成速度、下式(115)で表される細胞内の2つのインスリンが結合しリン酸化により活性化されたインスリン受容体生成速度、下式(116)で表される未リン酸化インスリン受容体基質1(IRS1)生成速度、下式(117)で表されるチロシンリン酸化インスリン受容体基質1生成速度、下式(118)で表されるセリンリン酸化インスリン受容体基質1生成速度、下式(119)で表されるフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)生成速度、下式(120)で表されるセリンリン酸化インスリン受容体基質1とフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の複合体生成速度、下式(121)で表されるフォスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸生成速度、下式(122)で表されるフォスファチジルイノシトール(3,4)二リン酸生成速度、下式(123)で表されるフォスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸生成速度、下式(124)で表される未リン酸AKT生成速度、下式(125)で表されるリン酸化AKT生成速度、下式(126)で表される未リン酸PKC生成速度、下式(127)で表されるリン酸化PKC生成速度、下式(128)で表される細胞内グルコース輸送担体(GLUT4)生成速度、下式(129)で表される細胞膜上グルコース輸送担体(GLUT4)生成速度、下式(130)で表される酵素活性補助変数x22生成速度及び下式(131)で表される酵素活性補助変数x23生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
Figure 2010001584
また、インスリンシグナルブロック222は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、インスリンシグナルブロック222を用いることにより、空腹時におけるグルコースの取込率GLUTを演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、インスリンシグナルブロック222を用いることにより、高インスリン血症時におけるグルコースの取込率GLUTを演算する処理が行われる。
<解糖系ブロック>
解糖系ブロック223は、生体器官のグルコース分解機能を仮想的に再現する機能ブロックである。身体のグルコース分解機能は、グルコース輸送担体(GLUT4)の細胞膜上に占める割合に応じてグルコースを細胞内に取り込み、細胞内のグルコースを分解して、グルコース6−リン酸(G6P)、D−グリセルアルデヒド3−リン酸(GA3P)、1,3−ビスホスホグリセリン酸(BPG)を介してピルビン酸(PYR)を産生する。またピルビン酸(PYR)より乳酸(LAC)を生成する。解糖系ブロック223は、かかる身体のグルコース分解機能を模したものであり、当該解糖系ブロック223をCPU211aが実行することにより、インスリンシグナルブロック22で得られたグルコース取込率GLUT、組織内での酸素消費速度及び二酸化炭素産生速度に基づいてグルコース取込速度が演算され、グルコースがG6Pに変換される反応速度fGLU→G6P、G6PがGA3Pに変換される反応速度fG6P→GA3P、GA3PがBPGに変換される反応速度fGA3P→BPG、BPGがPYRに変換される反応速度fBPG→PYR、PYRがLACに変換される反応速度fPYR→LAC、LACがPYRに変換される反応速度fLAC→PYRがそれぞれ演算される。また、これらの反応速度に基づき、一定時間経過後のグルコース(GLU)濃度、G6P濃度、GA3P濃度、BPG濃度、PYR濃度及びLAC濃度が演算される。
以下に、生体器官のグルコース分解機能に関連する化学反応と、それに基づいた解糖系ブロック223の具体的な演算処理について説明する。なお、以下の式におけるグルコース、G6P、GA3P、BPG、ピルビン酸、LAC、NAD、及びNADHの細胞内濃度は、それぞれ所定の初期値が与えられており、1度目の演算では初期値が用いられ、その後の演算では更新された値が用いられる。
まず、血中のグルコースが、GLUT4の発現量(細胞表面における発現量)に応じて細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fGLUは、以下の式(132)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CGLU,bは、入力された血中のグルコース濃度を、CGLUは細胞内のグルコース濃度を、σGLUはグルコースに関する分配係数をそれぞれ示す。
まず、血中の乳酸(LAC)が細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fLACは、以下の式(133)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CLAC,bは、入力された血中の乳酸濃度を、CLACは細胞内の乳酸濃度を、σLACは乳酸に関する分配係数をそれぞれ示す。
まず、血中のピルビン酸(PYR)が細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fPYRは、以下の式(134)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CPYR,bは、入力された血中のピルビン酸濃度を、CPYRは細胞内のピルビン酸濃度を、σPYRはピルビン酸に関する分配係数をそれぞれ示す。
細胞内へ取り込まれたグルコース(GLU)はヘキソキナーゼによりリン酸化され、G6Pに変換される(式(17))。この反応の速度は、次式(135)で表される。
Figure 2010001584
ただし、HK(insulin)はインスリンシグナリングブロック222において演算される。
また、変換されて生じたG6PはATPと反応して、式(19)の通りGA3PとADPとを生じる。この反応の速度は、次式(136)で示される。
Figure 2010001584
変換されて生じたGA3Pは、次式(137)に従って1,3−ビスホスホグリセリン酸(BPG)に変換される。
GA3P+Pi+NAD→BPG+NADH …(137)
このBPGに変換される反応速度は、次式(138)で示される。
Figure 2010001584
変換されて生じたBPGは次式(139)に従ってピルビン酸(PYR)に変換される。
BPG+2ADP→PYR+2ATP …(139)
このPYRに変換される反応速度は、次式(140)で示される。
Figure 2010001584
生成されたピルビン酸(PYR)は、次式(141)に従って乳酸(LAC)に変換される。
PYR+NADH→LAC+NAD …(141)
この反応速度は、次式(142)で示される。
Figure 2010001584
乳酸(LAC)は、次式(143)に従ってピルビン酸(PYR)に変換される。
LAC+NAD→PYR+NADH …(143)
この反応速度は、次式(144)で示される。
Figure 2010001584
解糖系ブロック223では、CPU211aにより、上記の式(132),(133),(134),(135),(136),(138),(140),(142),(144)で表されるfGLU,fLAC,fPYR,fGLU→G6P,fG6P→GA3P,fGA3P→BPG,fBPG→PYR,fPYR→LAC,fLAC→PYRの各反応速度が演算される。
また、解糖系ブロック223では、CPU211aにより、下式(145)で表されるグルコースの生成速度、下式(146)で表されるG6Pの生成速度、下式(147)で表されるGA3Pの生成速度、下式(148)で表されるBPGの生成速度、下式(149)で表されるピルビン酸の生成速度、下式(150)で表される乳酸生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
ただし、式(149)において、反応速度fPYR→ACoAは、後述する式(151)で表され、ミトコンドリアブロック224において算出され、反応速度fPYR→ALAは、補足演算処理で算出される。ミトコンドリアブロック224と補足演算処理の演算が一度も行われていないときには、反応速度fPYR→ACoA、fPYR→ALAの初期値が用いられる。
さらに解糖系ブロック223では、CPU211aにより、上記のようにして得られたグルコース、G6P、GA3P、BPG、ピルビン酸及び乳酸の生成速度から、一定時間に生成されるグルコース、G6P、GA3P、BPG、ピルビン酸及び乳酸の量がそれぞれ演算され、その時点での細胞内におけるグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、BPG濃度、ピルビン酸濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内のグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、BPG濃度及びピルビン酸濃度が演算される。
また、解糖系ブロック223は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、解糖系ブロック223を用いることにより、空腹時における細胞内のグルコース濃度、G6P濃度、GA3P濃度、BPG濃度、ピルビン酸濃度、及び乳酸濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、解糖系ブロック223を用いることにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
<ミトコンドリアブロック>
ミトコンドリアブロック224は、生体器官のミトコンドリアの機能を仮想的に再現する機能ブロックである。ミトコンドリアは、ピルビン酸(PYR)及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)をそれぞれ酸化させることでアセチル補酵素A(ACoA)を生成し、このアセチル補酵素A(ACoA)をTCA回路で代謝し、HOとCOに変換する。また、アセチル補酵素A(ACoA)の濃度により、脂肪酸酸化が抑制される。ミトコンドリアブロック224は、かかるミトコンドリアの機能を模したものであり、当該ミトコンドリアブロック224をCPU211aが実行することにより、解糖系ブロック223で得られたピルビン酸からアセチル補酵素A(ACoA)が生成される反応速度fPYR→ACoA、脂肪酸代謝ブロック21で得られた脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)からアセチル補酵素A(ACoA)が生成される反応速度fFAC→ACoA、アセチル補酵素A(ACoA)とオキサロ酢酸(OXA)からクエン酸(CIT)が生成され、その後、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)、オキサロ酢酸(OXA)の順に代謝・生成される各反応速度fACoA→CIT、fCIT→aKG、faKG→SCoA、fSCoA→SUC、fSUC→MAL、fMAL→OXA、及び酸素が消費され水が生成される反応速度fO2→H2Oがそれぞれ演算される。また、これらの反応速度に基づき、一定時間経過後のアセチル補酵素A(ACoA)、クエン酸(CIT)、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)及びオキサロ酢酸(OXA)、酸素(O)及び二酸化炭素(CO)の細胞内濃度が演算される。
以下に、ミトコンドリアに関連する生化学反応と、それに基づいたミトコンドリアブロック224の具体的な演算処理について説明する。なお、以下の式におけるアセチル補酵素A(ACoA)、補酵素A(CoA)、酸素(O)、クエン酸(CIT)、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)及びオキサロ酢酸(OXA)及び二酸化炭素(CO)の細胞内濃度は、それぞれ所定の初期値が与えられており、1度目の演算では初期値が用いられ、その後の演算では更新された値が用いられる。
まず、細胞内のピルビン酸(PYR)が酸化され、アセチル補酵素A(ACoA)が生成される(式(27))。この反応の速度は、次式(151)で表される。
Figure 2010001584
ただしPDH(insulin)は、インスリンシグナリングブロック222において演算される。
また、脂肪酸代謝ブロック221で生成された脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)が酸化され、式(29)の通りアセチル補酵素A(ACoA)が生成される(β酸化)。この反応の速度は、次式(152)で表される。
Figure 2010001584
ただしHAD(insulin)はインスリンシグナリングブロック222にて演算される。
ピルビン酸(PYR)と脂肪酸アシル−補酵素A複合体(FAC)より生成されたアセチル−補酵素A複合体(ACoA)は、以下に示す一連の式によって表されるTCA回路により代謝され、新たにATP及びNADHが生成される。TCA回路内では、オキサロ酢酸(OXA)とアセチルCoAからクエン酸(CIT)が生成され、その後、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)、オキサロ酢酸(OXA)の順に生成され代謝される。
まずACoAとOXAからクエン酸シンターゼによりCITとCoAに変換される(式(153))。
ACoA+OXA→CIT+CoA …(153)
この反応の速度は、次式(154)で表される。
Figure 2010001584
クエン酸(CIT)が、cis−アコニット酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸を経由してαケトグルタル酸(aKG)が生成される反応過程を簡略化すると次の式で表される。
CIT+NAD→aKG+NADH+CO …(155)
この反応の速度は、次式(156)で表される。
Figure 2010001584
αケトグルタル酸(aKG)は酸化されスクシニルCoA(SCoA)と二酸化炭素(CO)が生成される(式(157))。
aKG+CoA+NAD→SCoA+NADH+CO …(157)
この反応の速度は、次式(158)で表される。
Figure 2010001584
スクシニルCoA(SCoA)は、スクシニルCoAシンテターゼによってコハク酸(SUC)が生成される(式(159))。
SCoA+ADP+Pi→SUC+CoA+ATP …(159)
この反応の速度は、次式(160)で表される。
Figure 2010001584
コハク酸(SUC)からフマル酸を介してリンゴ(MAL)が生成される(式(161))。
Figure 2010001584
この反応の速度は、次式(162)で表される。
Figure 2010001584
リンゴ酸(MAL)はリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって酸化されオキサロ酢酸(OXA)が生成される(式(163))。
MAL+NAD→OXA+NADH …(163)
この反応の速度は、次式(164)で表される。
Figure 2010001584
一方、ミトコンドリアにおけるNADH、酸素、及びADPの消費、並びにATPの合成の関係式は以下の式(165)ように示される。
Figure 2010001584
この反応の速度は、次式(166)で表される。
Figure 2010001584
細胞内への酸素の流入速度fO2 は、次式(167)のようにも示すことができる。
Figure 2010001584
ただし、CO2,bは血中酸素濃度(定数)を、CO2 は細胞内の酸素濃度を、σO2 は酸素に関する分配係数をそれぞれ示す。
同様に、細胞内における二酸化炭素の産生速度fCO2は、次式(168)のようにも示すことができる。
Figure 2010001584
ただし、CCO2,bは血中二酸化炭素濃度(定数)を、CCO2は細胞内の二酸化炭素濃度を、σCO2は二酸化炭素に関する分配係数をそれぞれ示す。
ミトコンドリアブロック224では、CPU211aにより、上記の式(151),(152),(154),(156),(158),(160),(162),(164),(166),(167),(168)で表されるfPYR→ACoA,fFAC→ACoA,fACoA→CIT、fCIT→aKG、faKG→SCoA、fSCoA→SUC、fSUC→MAL、fMAL→OXA、fO2→H2O、fO2 、fCO2の各反応速度が演算される。
また、ミトコンドリアブロック224では、CPU211aにより、下式(169)で表されるアセチル補酵素A(ACoA)の生成速度、下式(170)で表されるクエン酸(CIT)の生成速度、下式(171)で表されるαケトグルタル酸(aKG)の生成速度、下式(172)で表されるスクシニルCoA(SCoA)の生成速度、下式(173)で表されるコハク酸(SUC)の生成速度、下式(174)で表されるリンゴ酸(MAL)の生成速度、下式(175)で表されるオキサロ酢酸(OXA)の生成速度、下式(176)で表される酸素(O)の生成速度及び下式(177)で表される二酸化炭素(CO)の生成速度がそれぞれ演算される。
Figure 2010001584
さらにミトコンドリアブロック224では、CPU211aにより、上記のようにして得られたアセチル補酵素A(ACoA)、クエン酸(CIT)、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)及びオキサロ酢酸(OXA)、酸素(O)及び二酸化炭素(CO)の生成速度から、一定時間に生成(消費)されるアセチル補酵素A(ACoA)、クエン酸(CIT)、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)及びオキサロ酢酸(OXA)、酸素(O)及び二酸化炭素(CO)の量がそれぞれ演算され、前記一定時間経過後の細胞内のアセチル補酵素A(ACoA)、クエン酸(CIT)、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)及びオキサロ酢酸(OXA)、酸素(O)及び二酸化炭素(CO)が演算される。
また、ミトコンドリアブロック224は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、ミトコンドリアブロック224を用いることにより、空腹時における細胞内のアセチル補酵素A(ACoA)、クエン酸(CIT)、αケトグルタル酸(aKG)、スクシニルCoA(SCoA)、コハク酸(SUC)、リンゴ酸(MAL)及びオキサロ酢酸(OXA)、酸素(O)及び二酸化炭素(CO)を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、ミトコンドリアブロック224を用いることにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
<補足演算処理>
また、CPU211aにより、以下のような補足演算処理が行われる。
ADPの濃度が高いときは、クレアチンリン酸(PCr)からリン酸基が外れクレアチン(Cr)が生成されるとともに、ADPからATPが生成される(式(39))。この反応の速度は、次式(178)で表される。
Figure 2010001584
一方、ATPの濃度が高くなると、クレアチンとATPとによって、クレアチンリン酸とADPとが生成される(式(41))。この反応の速度は、次式(179)で表される。
Figure 2010001584
また、ATPは加水分解され、式(43)に従ってADPに変換される。この反応の速度は、次式(180)で表される。
Figure 2010001584
また、AMPとATPとはアデニル酸キナーゼによってADPが産生される(式(181))。
AMP+ATP→2ADP …(181)
この反応の速度は、次式(182)で表される。
Figure 2010001584
2つのADPから、アデニル酸キナーゼによりAMPとATPが生成される(式(183))。
2ADP→AMP+ATP …(183)
この反応の速度は、次式(184)で表される。
Figure 2010001584
解糖系ブロック223のG6PとATPから複数の反応を経由し、グリコーゲン(GLY)が生成される反応を簡略化すると反応式は次式のようになる。
G6P+ATP→GLY+ADP+2Pi …(185)
この反応の速度は、次式(186)で表される。
Figure 2010001584
ただし、GS(insulin)はインスリンシグナリングブロック222にて演算される。
グリコーゲン(GLY)が複数の反応を経由して分解され解糖系ブロック223のG6Pが生成される反応を簡略化すると反応式は次式のようになる。
GLY→G6P+Pi …(187)
この反応の速度は、次式(188)で表される。
Figure 2010001584
解糖系ブロック223で生成されたピルビン酸(PYR)とグルタミン酸からアラニン(ALA)が生成される反応を簡略化すると反応式は次式のようになる。
PYR→ALA …(189)
この反応の速度は、次式(190)で表される。
Figure 2010001584
血中のアラニン(ALA)が細胞内に取り込まれる。この取り込み速度fALAは以下の式(191)で表される。
Figure 2010001584
ただし、CALA,bは入力された血中の脂肪酸濃度を、CALAは細胞内の脂肪酸濃度を、σALAは脂肪酸に関する分配係数をそれぞれ示す。
補足演算処理では、CPU211aにより、上記の式(178),(179),(180),(182),(184),(186),(188),(190),(191)で表されるfPCr→Cr,fCr→PCr,fATP→ADP,fAMP→ADP,fADP→AMP,fG6P→GLY,fGLY→G6P,fPYR→ALA,fALAの各反応速度が演算される。
また、CPU211aにより、以下の式(192)〜(202)に従って、GLY、ALA、NAD、NADH、ATP、ADP、Pi、PCr、Cr、CoAの各物質の生成速度が演算される。
Figure 2010001584
さらに、CPU211aにより、上記のようにして得られたGLY、ALA、NAD、NADH、ATP、ADP、AMP、Pi、PCr、Cr、CoAの各生成速度から、一定時間に生成されるGLY、ALA、NAD、NADH、ATP、ADP、AMP、Pi、PCr、Cr、CoAの量がそれぞれ演算され、その時点での細胞内におけるGLY、ALA、NAD、NADH、ATP、ADP、AMP、Pi、PCr、Cr、CoAの濃度にこれらの量を反映させることで、前記一定時間経過後の細胞内のGLY、ALA、NAD、NADH、ATP、ADP、AMP、Pi、PCr、Cr、CoAの各濃度が演算される。
また、補足演算処理は、後述するように、第1グルコース取込速度推定処理と、第2グルコース取込速度推定処理の両方において用いられる。第1グルコース取込速度推定処理では、補足演算処理を実行することにより、空腹時における細胞内のGLY、ALA、NAD、NADH、ATP、ADP、AMP、Pi、PCr、Cr、CoAの各濃度を演算する処理が行われる。また、第2グルコース取込速度演算処理では、補足演算処理を実行することにより、高インスリン血症時における前記各物質の細胞内濃度を演算する処理が行われる。
上記の本実施の形態に係る脂肪酸代謝ブロック221、インスリンシグナリングブロック222、解糖系ブロック223、及びミトコンドリアブロック224については、以下の文献を参考にして作成されたものである。
1. A computational model of skeletal muscle metabolism linking cellular adaptations induced by altered loading states to metabolic responses during exercise.
Dash RK, Dibella JA 2nd, Cabrera ME.
Biomed Eng Online. 2007 Apr 20;6:14. PMID: 17448235
2. Metabolic dynamics in skeletal muscle during acute reduction in blood flow and oxygen supply to mitochondria: in-silico studies using a multi-scale, top-down integrated model.
Dash RK, Li Y, Kim J, Beard DA, Saidel GM, Cabrera ME.
PLoS ONE. 2008 Sep 9;3(9):e3168. PMID: 18779864
3. A mathematical model of metabolic insulin signaling pathways.
Sedaghat AR, Sherman A, Quon MJ.
Am J Physiol Endocrinol Metab. 2002 Nov;283(5):E1084-101. PMID: 12376338
[インスリン抵抗性評価支援システムの動作]
次に、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援システム201の動作について説明する。図11は、本実施の形態に係るインスリン抵抗性評価支援プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。コンピュータ201aは、インスリン抵抗性評価支援プログラム214aを実行することにより、以下のように動作する。まず、被験者は、予め体重計で体重を計測し、体組成計により骨格筋率の測定、血液検査を行うことにより、被験者の体重、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度の各生体情報をそれぞれ取得しておく。なお、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度、及び血中遊離脂肪酸濃度は、それぞれ空腹時における測定値が用いられる。これらの生体情報は、インスリン抵抗性評価支援システムを使用する医師、オペレータ等のユーザに予め連絡される。
インスリン抵抗性評価支援プログラム214aが起動された後、まず、CPU211aは、被験者の体重、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度の入力をユーザに促すための入力画面を表示する(ステップS21)。図12は、実施の形態2に係るインスリン抵抗性評価支援システム201の入力画面の一例を示す模式図である。図12に示すように、入力画面230には、被験者の体重、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度をそれぞれ入力するための入力エリア231,234〜237と、入力エリア231,234〜237に各生体情報を入力した後に、インスリン抵抗性の推定の実行を指示するための実行ボタン238とが設けられている。ユーザは、入力部213を操作することによりこれらの入力エリア231,234〜237に被験者の体重、骨格筋率、血中グルコース濃度、血漿インスリン濃度及び血中遊離脂肪酸濃度の各生体情報を入力し、実行ボタン238を選択(クリック)することによりインスリン抵抗性の推定の実行を指示する。CPU211aは、かかるユーザからの生体情報及び実行指示の入力を受け付ける(ステップS22)。かかる生体情報の入力があった場合、CPU211aに割り込みが発生し、ステップS23以下の処理が呼び出される。
ユーザから生体情報及び実行指示の入力を受け付けると、CPU211aは、第1グルコース取込速度推定処理(ステップS23)を実行する。図13は、実施の形態2に係る第1グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャートである。この第1グルコース取込速度推定処理は、空腹時におけるグルコース取込速度を推定する処理であり、ステップS231〜S238の処理を順次的に繰り返し実行する処理となっている。まず、CPU211aは、変数に初期値をセット(初期化)する(ステップS231)。この処理では、上述した各物質の空腹時における細胞内濃度及び各反応速度の初期値をRAM211cに記憶し、また、グルコース取込速度の値として、初期値0をRAM211cに記憶する。次に、CPU211aは、その時点でのグルコース取込速度の値を、前回のグルコース取込速度の値としてRAM211cに記憶する(ステップS232)。そして、CPU211aは、脂肪酸代謝ブロック221における演算処理である脂肪酸代謝ブロック演算処理(ステップS233)、インスリンシグナルブロック222における演算処理であるインスリンシグナルブロック演算処理(ステップS234)、解糖系ブロック223における演算処理である解糖系ブロック演算処理(ステップS235)、ミトコンドリアブロック224における演算処理であるミトコンドリアブロック演算処理(ステップS236)、及び補足演算処理(ステップS237)を順次実行する。かかるステップS233〜237において得られる物質の濃度、反応速度、GLUT4発現量に応じた数値及びグルコース取込速度は、空腹時における数値となる。
次にCPU211aは、上記の処理によって得られた空腹時におけるグルコース取込速度が定常状態に到達したか否かを判定する(ステップS238)。この処理は、本実施の形態においては、今回の演算(ターン)によって求められたグルコース取込速度の値と、RAM211cに記憶された前回の演算(ターン)のグルコース取込速度の値との差を求め、その差がグルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定するための第1基準値未満であるか否かを判定することにより行われる。そして、CPU211aは、グルコース取込速度の今回値と前回値との差が第1基準値未満であるときは(ステップS238においてYES)、メインルーチンにおける第1グルコース取込速度推定処理の呼出アドレスへ処理をリターンし、差が第1基準値以上であるときは(ステップS238においてNO)、再度ステップS232以下の処理を繰り返す。
次に、CPU211aは、第2グルコース取込速度推定処理を実行する(ステップS24)。図14は、実施の形態2に係る第2グルコース取込速度推定処理の手順を示すフローチャートである。この第2グルコース取込速度推定処理は、高インスリン血症時におけるグルコース取込速度を推定する処理であり、ステップS241〜S248の処理を順次的に繰り返し実行する処理となっている。まず、CPU211aは、インスリン濃度に所定値(高インスリン血症時のインスリン濃度)をセットする(ステップS241)。なお、第2グルコース取込速度推定処理では、インスリン濃度以外の各物質の空腹時における細胞内濃度及び各反応速度並びにグルコース取込率(GLUT)の初期値として、第1グルコース取込速度推定処理において最終的に得られた数値、すなわち、グルコース取込速度が定常状態に達したときの各物質の濃度及び反応速度並びにグルコース取込率がそのまま用いられる。血中グルコース濃度については、第1グルコース取込速度推定処理で使用した空腹時のグルコース濃度がそのまま用いられる。また、グルコース取込速度の値として、初期値0がRAM211cに記憶される。次に、CPU211aは、その時点でのグルコース取込速度の値を、前回のグルコース取込速度の値としてRAM211cに記憶する(ステップS242)。そして、CPU211aは、脂肪酸代謝ブロック221における演算処理である脂肪酸代謝ブロック演算処理(ステップS243)、インスリンシグナルブロック222における演算処理であるインスリンシグナルブロック演算処理(ステップS244)、解糖系ブロック223における演算処理である解糖系ブロック演算処理(ステップS245)、ミトコンドリアブロック224における演算処理であるミトコンドリアブロック演算処理(ステップS246)、及び補足演算処理(ステップS247)を順次実行する。かかるステップS243〜247において得られる物質の濃度、反応速度、GLUT4発現量に応じた数値及びグルコース取込速度は、高インスリン血症時における数値となる。
次にCPU211aは、上記の処理によって得られた高インスリン血症時におけるグルコース取込速度が定常状態に到達したか否かを判定する(ステップS248)。この処理は、本実施の形態においては、今回の演算(ターン)によって求められたグルコース取込速度の値と、RAM211cに記憶された前回の演算(ターン)のグルコース取込速度の値との差を求め、その差がグルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定するための第1基準値未満であるか否かを判定することにより行われる。なお、第1グルコース取込速度推定処理と第2グルコース取込速度推定処理とにおいて、同じ第1の基準値を用いてグルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定する構成としたが、これに限られず、それぞれで異なる基準値を用いてもよい。そして、CPU211aは、グルコース取込速度の今回値と前回値との差が第1基準値未満であるときは(ステップS248においてYES)、メインルーチンにおける第2グルコース取込速度推定処理の呼出アドレスへ処理をリターンし、差が第1基準値以上であるときは(ステップS248においてNO)、再度ステップS242以下の処理を繰り返す。
次に、CPU211aは、インスリン抵抗性の有無を推定する(ステップS25)。この処理では、ステップS248で得た単位筋肉量当たりのグルコース取込速度の値(推定値)が、インスリン抵抗性の有無を推定するための第2基準値(人種によって異なるが、例えば、グルコースクランプ時のインスリン濃度が約3480pMの場合に、12.0mg/kg/min)以上か否かを判定することにより行われる。これにより、グルコース取込速度の推定値が前記第2基準値以上であれば、インスリン抵抗性がない、即ち、インスリン感受性がある、と推定することができ、グルコース取込速度の推定値が前記第2基準値未満であれば、インスリン抵抗性がある、即ち、インスリン感受性がない、と推定することができる。このようにして、CPU211aは、インスリン抵抗性の推定を行う。なお、第2基準値を12.0mg/kg/minとする根拠は、次の文献の記載による。
Critical evaluation of adult treatment panel III criteria in identifying insulin resistance with dyslipidemia.
Liao Y, Kwon S, Shaughnessy S, Wallace P, Hutto A, Jenkins AJ, Klein RL, Garvey WT.
Diabetes Care. 2004 Apr;27(4):978-83.PMID: 15047659
次にCPU11aは、インスリン抵抗性の推定結果の出力画面を表示する(ステップS26)。かかる出力画面には、上記の処理によって得られたインスリン抵抗性の推定結果と、最終的に得られた単位筋肉量当たりのグルコース取込速度の推定値とが含まれる。この出力画面により、ユーザに対して、インスリン抵抗性の推定結果及びグルコース取込速度の推定値が通知される。このようにインスリン抵抗性の推定結果及びグルコース取込速度の推定値をユーザに提供することにより、ユーザはこれらの情報を活用してインスリン抵抗性の評価を行うことができる。また、この画面からは、後述するようなシミュレーション結果画面へと表示画面を遷移させることが可能である。シミュレーション結果画面の構成については後述する。
上記のような構成とすることにより、被験者の負担の大きいグルコースクランプ及び経口糖負荷試験の検査結果を必要とせず、被験者の負担が少なく、簡便な検査によって得ることができる「体重」、「骨格筋率」、「空腹時の血中グルコース濃度」、「空腹時の血漿インスリン濃度」、及び「空腹時の血中遊離脂肪酸濃度」の各生体情報によってインスリン抵抗性の有無を推定することができる。このような入力情報の中でも、空腹時の血中グルコース濃度及び血漿インスリン濃度については、上記のように血液検査によって簡便に得られる検査値を用いることができるが、グルコースクランプ又は経口糖負荷試験によって得られた検査値を入力情報として用いることもできる。しかし、グルコースクランプ及び経口糖負荷試験のような被験者にとって負担の大きい検査結果を常に必要とする訳ではなく、これらの検査結果でなくとも、簡便な血液検査の結果を利用することができるという点、及び、入力情報に用いる情報を、血液検査、グルコースクランプ、及び経口糖負荷試験のいずれからも選択することができるという点で、本システムは有用である。
なお、上記実施の形態1及び2においては、第2グルコース取込速度推定処理において、グルコースクランプ試験時の被験者の身体状態を再現するために、高インスリン血症時におけるインスリン濃度をセットし、グルコース濃度は第1グルコース取込速度推定処理から変更せず、空腹時におけるグルコース濃度をそのまま使用する構成としたが、これに限定されるものではない。インスリン抵抗性を評価するグルコースクランプ試験では、一般に正常血糖値かつ高インスリン状態で実施される。グルコースクランプ試験では、空腹時の血中グルコース濃度が維持されるようにインスリン及びグルコースが被験者に投与される場合、及び100mg/dLの血中グルコース濃度が維持されるようにインスリン及びグルコースが被験者に投与される場合等があり、後者を再現する場合には、第2グルコース取込速度推定処理において、高インスリン血症時におけるインスリン濃度をセットするだけでなく、血中グルコース濃度として100mg/dLをセットすればよい。
また、実施の形態2においては、単位筋肉量当たりのグルコース取込速度を推定し、これを出力する構成としたが、実施の形態1と同様に、単位重量当たりのグルコース取込速度を求め、これを出力する構成としてもよい。
また、実施の形態1及び2においては、グルコース取込速度が定常状態になるまで、第1代謝量演算処理〜補足演算処理を繰り返し実行し、各物質の反応速度、生成速度、及び細胞内濃度を繰り返し更新する構成とした。これにより、グルコース取込速度が定常状態に到達したときには、各物質の細胞内濃度も定常状態に到達していることが期待でき、この定常状態の各物質の濃度は、被験者の身体の状態を反映したものと考えることができる。従って、このような構成とすることにより、被験者の身体の状態を正確に反映したグルコースの取込速度を推定することができる。
[インスリン抵抗性評価支援システムの性能評価実験]
実施の形態2に係るインスリン抵抗性表化支援システム201の性能評価実験を行った。グルコースクランプ試験を実施した結果を報告している文献のひとつに、Basuら報告がある(Basu et al., Obesity and Type 2 Diabetes Impair Insulin-Induced Suppression of Glycogenolysis as well as gluconeogenesis, Diabetes 54:1942-1948, 2005)。Basuらの文献では、グルコースクランプ試験を用いて、非糖尿病痩せ型(Lean)10名, 非糖尿病肥満型(Obese)10名, 2型糖尿病患者(DM2)11名を対象に比較し、主に肝臓インスリン抵抗性について主に論じている。本実験では、文献中のデータを使用し、GIR値としてglucose appearance rateとendogeneous glucose productionの差を用いた。
以下の表1は、上記文献中に記載された、Lean、Obese、DM2の測定データをまとめたものである。
Figure 2010001584
本実験では、まず、上記表1に記載したLean、Obese、DM2の各測定データの空腹時の血糖値・インスリン値・遊離脂肪酸濃度をインスリン抵抗性評価支援システム201に入力し、第1グルコース取込速度推定処理の手順に従って定常状態の各物質濃度と反応速度を求めた。第1グルコース取り込み速度推定処理に用いた初期値と当該推定処理を行ったあとに定常状態となったときに得られた各変数(濃度、反応速度等の変数)の値(以下、「推定値」という)を表2〜4に示す。表2は、インスリン抵抗性評価支援システム201における物質の濃度の初期値及び推定値を示し、表3は、インスリンシグナリングブロック222におけるパラメータ(物質濃度及び反応速度以外の変数)の初期値及び推定値を示し、表4は、インスリン抵抗性評価支援システム201における物質の反応速度の初期値及び推定値を示している。
Figure 2010001584
Figure 2010001584
Figure 2010001584
表2〜4で示された第1グルコース取込速度推定処理後の各変数の推定値を初期値として、第2グルコース取込速度推定手段によりグルコースクランプ試験シミュレーションを行った。このグルコースクランプ試験シミュレーションでは、クランプ時(インスリン注入前の60分間)における血中グルコース、血中インスリン、及び血中脂肪酸の各濃度に表1の推定値を使用し、インスリン注入前60分間、注入後240分間の計300分間をシミュレートした。図15は、本評価実験におけるシミュレーション結果表示画面を示す図である。図に示すように、シミュレーション結果表示画面450には、シミュレーションに用いられる各種パラメータの設定値が表示されるパラメータ表示領域451と、シミュレーション結果のグラフ452〜455が含まれる。グラフ452は、血中グルコース濃度の時間的変化を示し、グラフ453は、血中インスリン濃度の時間的変化を示し、グラフ454は、血中脂肪酸濃度の時間的変化を示す。グラフ455は、グルコース取込速度の時間的変化を示し、グラフ456は、血中脂肪酸の酸化速度の時間的変化を示している。
図16〜図19に、さらに詳しくシミュレーションの結果を示す。図16は、血中グルコース濃度のシミュレーション結果を示すグラフであり、図17は、血中インスリン濃度のシミュレーション結果を示すグラフであり、図18は、血中脂肪酸濃度のシミュレーション結果を示すグラフであり、図19は、グルコース取込速度のシミュレーション結果を示すグラフである。
図16に示すように、Lean及びObeseの血中グルコース濃度は、シミュレーション期間全体を通じて約5mMで概ね一定であった。一方、DM2の血中グルコース濃度は、インスリン注入前60分間は約10mMで一定であり、インスリン注入後に減少した。図17に示すように、インスリン注入前の60分間において、Leanの血中インスリン濃度は約20pMで一定であり、同期間におけるObese及びDM2の血中インスリン濃度は約45〜50pMで一定であった。また、インスリン注入後の期間における血中インスリン濃度は、Lean、Obese、及びDM2共に140pM前後の一定値を示した。図18に示すように、インスリン注入前60分間におけるLean、Obese、及びDM2の血中脂肪酸濃度は、約0.3〜0.4mMで一定値を示した。また、インスリン注入後におけるLean、Obese、及びDM2は、いずれも減少し、時間経過と共にその減少率が低下した。図19に示すように、Leanのグルコース取込速度は、インスリン注入前60分間において約18umol/kg/minの一定値を示し、インスリン注入後増加した。また、その増加率は時間経過と共に減少した。Obese及びDM2のグルコース取込速度は、インスリン注入前60分間において約25umol/kg/minの一定値を示し、インスリン注入後増加した。上記のシミュレーションの結果、インスリン注入後240分後におけるLean、Obese、DM2のそれぞれのグルコース取込速度は、63.3umol/kg/min、53.1umol/kg/min、49.82umol/kg/minとなった。
図20は、文献中の実測値とシミュレーションの結果との比較結果を示すグラフである。図20において、縦軸は文献中に記載されたグルコース取込速度を示し、横軸はインスリン抵抗性評価支援システム201によって推定したグルコース取込速度を示している。図に示すように、文献に記載されたLeanのグルコース取込速度の実測値及びインスリン抵抗性評価支援システム201によるLeanのグルコース取込速度の推定値が対応する点261と、文献に記載されたObeseのグルコース取込速度の実測値と、インスリン抵抗性評価支援システム201によるObeseのグルコース取込速度の推定値とが対応する点262と、文献に記載されたDM2のグルコース取込速度の実測値と、インスリン抵抗性評価支援システム201によるDM2のグルコース取込速度の推定値とが対応する点263とは、直線上に並んでいる。このことから、Lean、Obese、及びDM2のそれぞれのグルコース取込速度の実測値の大小関係と推定値の大小関係は矛盾しておらず、十分に対応しており、インスリン抵抗性評価支援システム201が正確にグルコース取込速度を推定していることがわかる。また、より正確にグルコース取込速度を推定した場合には回帰直線が原点を通るはずである。これは上記の式中の係数等を調整することによって達成できる。
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1及び2においては、グルコース取込速度を推定し、その推定結果に基づいてインスリン抵抗性の有無の推定を行い、インスリン抵抗性の推定結果とグルコース取込速度の推定値とを出力画面に表示する構成としたが、これに限定されるものではない。他の実施の形態として、「インスリン抵抗性があると推定されます。」又は「インスリン抵抗性がないと推定されます。」のように、インスリン抵抗性の推定結果のみを示す画面を表示する構成としてもよい。また、インスリン抵抗性の有無を推定するステップS7の処理を行わず、高インスリン血症時におけるグルコース取込速度の演算値が定常状態に至ったときに、単位重量当たりのグルコース取込速度の推定値を示す出力画面を表示する構成としてもよい。この場合、「12mg/kg/min以上であれば、インスリン抵抗性がないと推定されます。」のような、インスリン抵抗性の評価を支援する情報を同時に表示してもよい。
また、上記の実施の形態1においては、測定された体重と骨格筋率とを入力情報に含め、これらの体重及び骨格筋率から筋肉量を求め、この筋肉量により単位重量当たりのグルコース取込速度を求める構成としたが、これに限定されるものではない。他の実施の形態として、測定された筋肉量を入力情報に含め、その筋肉量から単位重量当たりのグルコース取込速度を求める構成としてもよい。
また、上記の実施の形態1においては、マロニルCoAの濃度を用いて、β酸化におけるアセチルCoAの生成速度を調整する構成としたが、これに限定されるものではない。他の実施の形態として、マロニルCoAによる抑制を考慮せずに、β酸化におけるアセチルCoAの生成速度を求める構成としてもよい。
また、上記の実施の形態1及び2においては、遊離脂肪酸濃度を入力情報に含める構成としたが、これに限定されるものではない。他の実施の形態として、遊離脂肪酸濃度に代えて中性脂肪濃度を入力情報に含め、この中性脂肪濃度から遊離脂肪酸濃度を算出する構成としてもよい。
また、上記の実施の形態1においては、骨格筋の単位時間あたりの酸素消費量及び二酸化炭素産生量並びに骨格筋率を入力情報に含める構成としたが、これに限定されるものではない。他の実施の形態として、全身の単位時間あたりの酸素消費量及び二酸化炭素産生量並びに体脂肪率を入力情報としてもよい。この場合には、細胞内の酸素の消費速度を、全身の単位時間あたりの酸素消費量と体脂肪率とによって求め、細胞内の二酸化炭素の産生量を、全身の単位時間あたりの二酸化炭素産生量と体脂肪率とによって求める構成とする。
また、上記の実施の形態1及び2においては、ATPの加水分解反応速度がインスリン濃度には依存しないものとしているが、実際にはATPの加水分解反応を含むグリコーゲンの合成及びナトリウム−カリウムポンプがインスリン濃度に依存して活性化されることが知られている。従って、上記の構成に限るものではなく、ATPの加水分解反応速度がインスリン濃度によって変化するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態1及び2においては、ジアシルグリセロールの濃度は考慮せず、インスリン量及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度を用いてGLUT4の発現量に応じた数値を演算する構成としたが、これに限定されるものではない。GLUT4の発現量には、インスリン量及び脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度に加えて、ジアシルグリセロールの濃度が影響することが分かっている。そこで、他の実施の形態として、GLUT4の発現量に応じた数値GLUTを、ジアシルグリセロールの濃度も利用して求める構成とすることもできる。
また、上述した実施の形態1及び2においては、1つのコンピュータ1a,201aのCPU11a,211aにインスリン抵抗性評価支援プログラム14a,214aを実行させることにより、このコンピュータ1a,201aをインスリン抵抗性評価支援システム1,201として機能させる構成について述べたが、これに限定されるものではなく、インスリン抵抗性評価支援プログラム14a,214aと実質的に同一の処理を実行するための専用のハードウェア回路によりインスリン抵抗性評価支援システムを構成することもできる。
また、上述した実施の形態1及び2においては、単一のコンピュータ1a,201aによりインスリン抵抗性評価支援プログラムの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したインスリン抵抗性評価支援プログラムと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
本発明のインスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法、及びコンピュータプログラムは、被験者のインスリン抵抗性の評価を支援するためのインスリン抵抗性評価支援システム、インスリン抵抗性評価支援方法、及びコンピュータプログラムなどとして有用である。
1,201 インスリン抵抗性評価支援システム
1a,201a コンピュータ
11,211 本体
12,212 画像表示部
13,213 入力部
11d,211d ハードディスク
11g,211g 画像出力インタフェース
11e,211e 読出装置
11f,211f 入出力インタフェース
14,214 可搬型記録媒体
14a,214a インスリン抵抗性評価支援プログラム
21,221 脂肪酸代謝ブロック
22,222 インスリンシグナルブロック
23,223 解糖系ブロック
24,224 ミトコンドリアブロック
3,230 入力画面
31〜37,231,234〜237 入力エリア
38,238 実行ボタン
4 出力画面
41 インスリン抵抗性の推定結果
42 グルコース取込速度の推定値

Claims (14)

  1. 被験者のインスリン抵抗性の評価を支援するためのインスリン抵抗性評価支援システムであって、
    被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を受け付ける入力手段と、
    前記入力手段によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定する推定手段と、
    を備える、インスリン抵抗性評価支援システム。
  2. 前記推定手段は、
    血中のインスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、グルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定する第1推定手段と、
    前記第1推定手段によって推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、グルコース取込速度を推定する第2推定手段と、
    を備える、請求項1に記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  3. 前記第1推定手段は、
    血中の遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度を推定する第3推定手段と、
    血中のインスリン濃度及び前記第3推定手段によって推定された脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度に基づいて、グルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定する第4推定手段と、
    を備える、請求項2に記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  4. 前記推定手段は、
    前記第2推定手段によって推定されたグルコース取込速度に基づいて、細胞内のピルビン酸の濃度を推定する第5推定手段と、
    前記第3推定手段によって推定された脂肪酸アシル−補酵素A複合体の濃度と、前記第5推定手段によって推定されたピルビン酸の濃度とに基づいて、細胞内のアセチル補酵素の濃度を推定する第6推定手段と、
    前記第6推定手段によって推定されたアセチル補酵素の濃度に基づいて、脂肪酸アシル−補酵素A複合体から生成されるアセチル補酵素の生成速度を調整する調整手段と、
    を更に備え、
    前記第6推定手段は、前記調整手段による調整後のアセチル補酵素の生成速度に基づいて、アセチル補酵素の濃度を再度推定するように構成されている、請求項3に記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  5. 前記入力手段は、被験者の筋肉量に関する情報の入力をさらに受け付けるように構成されており、
    前記第2推定手段は、前記第1推定手段によって推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、被験者の単位筋肉量当たりのグルコース取込速度を推定するように構成されており、
    前記推定手段は、前記第2推定手段によって推定された被験者の単位筋肉量当たりのグルコース取込速度と、前記入力手段によって入力を受け付けた被験者の筋肉量に関する情報とに基づいて、被験者の単位重量当たりのグルコース取込速度を推定するように構成されている、請求項2乃至4の何れかに記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  6. 前記推定手段は、生体内におけるグルコースからピルビン酸への変化に関連する複数の物質の生成反応において、生成反応前の各物質の濃度に基づいて、各物質の一定時間あたりの生成量を取得し、それぞれの物質について、前記生成反応前の物質の濃度にその物質の前記生成量を反映させることにより、前記一定時間後の各物質の濃度を取得し、取得された各物質の濃度に基づいて、グルコース取込速度を推定する処理を、繰り返し実行するように構成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  7. 前記推定手段は、グルコース取込速度が定常状態に至ったか否かを判定し、グルコース取込速度が定常状態に至ったと判定されるまで、前記各物質の濃度を取得する処理を繰り返し実行するように構成されている、請求項6に記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  8. 前記入力手段は、被験者の空腹時における血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を受け付けるように構成されており、
    前記推定手段は、
    前記入力手段によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、空腹時における各物質の濃度を取得し、取得された各物質の濃度に基づいて、空腹時におけるグルコース取込速度を推定する第1グルコース取込速度推定手段と、
    前記第1グルコース取込速度推定手段によって取得された空腹時における各物質の濃度に基づいて、インスリン濃度が所定値の場合における各物質の濃度を取得し、取得された各物質の濃度に基づいて、インスリン濃度が所定値の場合におけるグルコース取込速度を推定する第2グルコース取込速度推定手段と、を備える、請求項6又は7のいずれかに記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  9. 前記推定手段によって推定されたグルコース取込速度を出力する出力手段をさらに備える、請求項1乃至8のいずれかに記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  10. 前記推定手段によって推定されたグルコース取込速度に関する情報に基づいて、被験者のインスリン抵抗性を推定するインスリン抵抗性推定手段と、
    前記インスリン抵抗性推定手段による推定結果を出力する出力手段と、
    をさらに備える、請求項1乃至8のいずれかに記載のインスリン抵抗性評価支援システム。
  11. 入力装置を備えるコンピュータにより、被験者のインスリン抵抗性の評価を支援するためのインスリン抵抗性評価支援方法であって、
    被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を前記入力装置により受け付けるステップと、
    前記入力装置によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、前記コンピュータにより被験者のグルコース取込速度を推定するステップと、
    を有する、インスリン抵抗性評価支援方法。
  12. 前記被験者のグルコース取込速度を推定するステップは、
    血中のインスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、前記演算部によりグルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定するステップと、
    推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、前記コンピュータによりグルコース取込速度を推定するステップと、
    を含む、請求項11に記載のインスリン抵抗性評価支援方法。
  13. 入力装置を備えるコンピュータに、
    被験者を測定することにより得られた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度に関する情報の入力を前記入力装置により受け付けるステップと、
    前記入力手段によって入力を受け付けた血中のグルコース濃度、インスリン濃度、及び遊離脂肪酸濃度、並びに被験者の血中のグルコース濃度に基づいて、被験者のグルコース取込速度を推定するステップと、
    を実行させる、コンピュータプログラム。
  14. 前記被験者のグルコース取込速度を推定するステップにおいて、前記コンピュータに、
    血中のインスリン濃度及び遊離脂肪酸濃度に関する情報に基づいて、グルコーストランスポータの発現量に応じた数値を推定するステップと、
    推定されたグルコーストランスポータの発現量に応じた数値と血中のグルコース濃度とに基づいて、グルコース取込速度を推定するステップと、
    を実行させる、請求項13に記載のコンピュータプログラム。
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