JPWO2009122882A1 - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、画質むらの改善と、安定して均一な砂目を得ることができる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することである。アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属ウェブMWを複数の電解槽(11)の電解液EL中へ順次に浸漬させながら搬送し、電解槽(11)内で金属ウェブ(MW)に対向配置された複数の電極(13)と金属ウェブ(MW)との間に電流を供給して、金属ウェブ(MW)を電気化学的粗面化処理する際、電解槽(11)内の電解液(EL)の流速を、各電解槽内で平均流速を500〜4000mm/秒、電解槽(11)内の金属ウェブ(MW)の搬送方向と直交する幅方向に対する電解液(EL)の流速分布を平均流速の±50%以内にするとともに、複数の電極(13)のうち隣接する電極間の隙間領域に対面する金属ウェブの搬送路区間を槽内電極間処理休止区間としたときに、1回の槽内電極間処理休止区間を通過する時間Tinを0.05〜1秒とする速度で金属ウェブ(MW)を搬送する。

Description

本発明は、金属ウェブを複数の電解槽の電解液中へ順次に浸漬させ、金属ウェブに電解槽内で対向配置された複数の電極と金属ウェブとの間に電流を供給し、金属ウェブを連続的に電気化学的粗面化処理する平版印刷版用支持体の製造方法に関する。
印刷版用支持体、特に平版印刷版用支持体としては、アルミニウム板が用いられ、ユーザーの多様化からアルミニウム板も純アルミニウムに近いものから、マンガンを添加し強度を上げたものまで多様化している。そしてその様なアルミニウム板を平版印刷版用支持体として使用するためには、支持体表面が画像記録層である例えば感光材との適度な接着性と保水性を有していることが必要である。このためには、アルミニウム板の表面を均一かつ緻密な砂目を有するように粗面化しなければならない。この粗面化処理は、実際に印刷を行ったとき、版材の汚れ性能などの印刷性能に著しい影響を及ぼすので、その良否は版材製造上重要な要素となっている。
印刷版用アルミニウム支持体の粗面化方法としては、機械的な砂目立て法、電気化学的な砂目立て法などがあり、又それらを適時組合わせた形で粗面化を行っている。機械的な砂目立て法としては、例えばボールグレイン,ワイヤーグレイン,ブラッシグレイン,液体ホーニング法などがある。また電気化学的砂目立て方法としては、交流電解エッチング法が一般的に使用されており、電流としては普通の正弦波交流電流あるいは矩形波など、特殊交番電流が用いられている。またこの電気化学的砂目立ての前処理として、苛性ソーダなどでエッチング処理をしても良い。
その中で交流電解エッチング方法においては、ラジアル型セルにおいても槽型セルにおいても、電解液を供給する給液ノズルは1ヶ所であったため、ここから補給された電解液はアルミニウム板と電極との間の定められた狭い空間の間(例えば10mm)を通って反対側に流れ、電解液排出口に出て行くので、流路における電解によって次第に電解液が疲労し電極の初めと終りでは電解液が疲労してその成分に差が出て来て充分な電解効率が得られず、また液の入口と出口との温度差が大きくなり所望の砂目が得られなかった。上記の欠点を改善するため、給液ノズルを電極間に2ヶ所以上設けるようにした電解処理装置がある(特許文献1)。
また、アルミニウム板幅方向両端部に対して電極側より板幅に対して複数個の給液ノズルを設け、この複数個の給液ノズルから供給される液がアルミニウム板の幅方向両端部にカーテン膜を形成し、中央部の電解液が両端部に流れることを防ぐ方法がある(特許文献2)。
また、交流電解エッチング方法において、アルミニウム板の幅方向の電解液の流速分布が平均流速から大きくずれる変動がおこると幅方向での砂目立て性が大きく変化してしまい、印刷性能差が発生したりする。これを解消するために、幅方向流速分布を平均流速±50%以内に規定するために、給液ノズル内にアルミニウム板幅方向に摩擦抵抗を増加させるためのガイドベーンを幅方向に適当に間隔を違えて挿入する方法がある。(特許文献3)。
特開平2−015198号公報(請求項1、図1) 特開平5−195300号公報(請求項1、段落7) 特開平9−248977号公報(第5〜7頁、図1) 特開平9−39431号公報 特開2006−44263号公報 特開平10−869号公報 特開2002−283762号公報 特開平5−4466号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法では、電解液が疲労してその成分に差が出て来て充分な電解効率が得られず、また液の入口と出口との温度差が大きくなり所望の砂目が得られなくなるのを防止するために、電解液供給口を対極間に2ヶ所以上設けたものの、電解処理での画質むらの改善は充分とは言えず、より一層の改善が望まれていた。
また、上記特許文献2に記載された方法では、アルミニウム板幅方向両端部に対して電極側より板幅に対して複数個の給液ノズルを設け、この複数個の給液ノズルから供給される液がアルミニウム板の幅方向両端部にカーテン膜を形成し、中央部の電解液が両端部に流れることを防ぐようにしているものの、砂目の均一性と画質むらの改善は充分とはいえず、より一層の改善が望まれていた。
また、上記特許文献3に記載された方法では、画質むらの改善と、安定したハニカム状ピットの砂目を得るために提案されたが、凸部に平坦な部分が残ることがあり、耐刷力および密着力が低下する。
また、上記特許文献4に記載された方法では、平版印刷版用支持体の電解処理において、3槽の電解槽に、電極をそれぞれ設置し、電解処理中に、1〜20秒の処理休止時間を設定し、処理休止区間の通過時間を、1〜30秒に設定しているが、汚れ性能が不十分であるとともに、すじ状の画質むらも不十分だった。
また、上記特許文献5に記載された方法では、塩酸を含有する水溶液中での交流電解では、耐刷性および耐汚れ性に富む平版印刷版用支持体を得ることができないことを解消するために、アルミニウム板に、塩酸と硫酸とを含有する混合水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理、および、塩酸を含有する水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理を、この順に施すようにしているが、砂目の均一性と画質むらの改善は充分とはいえず、より一層の改善が望まれていた。
このとき、上記特許文献4に記載された方法の処理休止時間と、上記特許文献5に記載された方法の混合電解液とを組み合わせることで、図8に示す粗面化処理後の表面の凸部に平坦部が発生することを解消しようとしても、上記特許文献3と同様にして、凸部に平坦な部分が残り、耐刷力および密着力の低下を防げなかった。また、画質むらも充分とはいえず、より一層の改善が望まれていた。
また、上記特許文献6に記載された方法では、砂目のピット形状の均一性、粗大ピット生成の抑制、高精細でのドットラインの向上および「ボールペンやられ」を改善するために、アルミニウムまたはその合金板ウェブを酸性電解中で搬送させながら連続的に電解処理する。その際に、全電解工程中で電解処理の進行が速い部分と電解の進行が遅いかもしくは停止する部分とが交互に複数回存在するように電解処理する。そのときに、電解処理の進行が速い部分一工程での電解処理の電気量を平均で100C/dm2以下にして、電解粗面化の分割処理に着目している。しかし、砂目の均一性に密接に関係するのは各電解処理間での休止時間であり、休止時間が0.6秒から5秒以下では均一化できるが、0.5秒以下では均一化の効果が現れない問題があった。また、すじ状の処理むらやチャタマークの消失も不十分であり、画質むらの改善が望まれていた。
また、上記特許文献7に記載された方法では、電解液の平均速度を500〜4000mm/sとし、幅方向の流速分布を平均流速の±50%以内としているが、砂目の均一性と画質むらの改善は充分とはいえず、より一層の改善が望まれていた。
また、上記特許文献8に記載された方法では、電気化学的粗面化を、硫酸塩イオンおよび塩化物イオンを含み、その塩化物イオンが塩化アルミニウムの形である酸性電解液中で交流電圧の印加により行うようにしているが、汚れ性能を満足できるものではなく、改善が望まれていた。また、すじ状の処理むらやチャタマークの消失も不十分であり、画質むらの改善が望まれていた。
つまり、上記の各特許文献に記載された方法をそれぞれ組み合わせたとしても、図8に示すように、アルミニウム500の砂目の不均一が残り、凸部501に平坦な部分503が残ることがあり、依然として、上記の各問題点を解消することができなかった。また、すじ状の処理むらやチャタマークの消失も不十分であり、画質むらの問題を解消することができなかった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、画質むらの改善と安定して均一な砂目を得ることができる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属ウェブを複数の電解槽の電解液中へ順次に浸漬させながら搬送し、前記電解槽内で前記金属ウェブに対向配置された複数の電極と前記金属ウェブとの間に電流を供給して、前記金属ウェブを電気化学的粗面化処理する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記電解槽内の電解液の流速を、各電解槽内で平均流速を500〜4000mm/秒、前記電解槽内の前記金属ウェブの搬送方向と直交する幅方向に対する前記電解液の流速分布を前記平均流速の±50%以内にするとともに、
前記複数の電極のうち隣接する電極間の隙間領域に対面する前記金属ウェブの搬送路区間を槽内電極間処理休止区間としたときに、1回の前記槽内電極間処理休止区間を通過する時間を0.05〜1秒とする速度で前記金属ウェブを搬送することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、電解液の流速を、電解槽内でそれぞれ平均流速を500〜4000mm/秒、電解液の電解槽内幅方向の流速分布を平均流速の±50%以内にするとともに、複数の電極のうち隣接する電極間の領域を槽内電極間処理休止区間としたときに、1回の槽内電極間処理休止区間を通過する時間を0.05〜1秒とする速度で金属ウェブを搬送することで、アルミニウムの砂目を均一にでき、汚れ性能が良好で、耐刷力および密着力を向上させて、画質むらを良好にすることができる。
(2) (1)記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記電解液が塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含むことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、電解槽に収容される電解液を、塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含むようにすることで、アルミニウムの砂目の均一化を、より一層向上させることができるとともに、耐刷力および密着力を、より一層向上させて画質むらを良好にすることができる。
(3) (1)または(2)記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記電解液を前記金属ウェブの搬送方向に対向する方向に流動させることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、電解液を金属ウェブの搬送方向に対向させて流動させることで、金属ウェブ表面の電解液を攪拌することができ、金属ウェブ表面の液層を確実に更新させることができる。
(4) (1)〜(3)のいずれか1項記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記槽内電極間処理休止区間を、一つの前記電解槽内で少なくとも3区間設けることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、電解槽内における槽内電極間処理休止区間を少なくとも3区間設けることで、アルミニウムの砂目の均一化を、より一層向上させることができる。
(5) (1)〜(4)のいずれか1項記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記金属ウェブが前記電解槽の電解液中から取り出され、前記金属ウェブの搬送路下流側に配置された他の電解槽の電解液に浸かるまでの前記金属ウェブの搬送路区間を槽外処理休止区間、前記電解槽内の前記複数の電極の並び方向両端から前記電解槽の電解液気液界面までの両搬送路区間の和を槽内電極端外側処理休止区間、前記槽外処理区間およびこれに連続する前記槽内電極端外側処理休止区間との和を槽間処理休止区間としたきに、1回の前記槽間処理休止区間を通過する時間を1〜5秒とする速度で前記金属ウェブを搬送することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、1回の槽間処理休止区間を通過する時間を1〜5秒とする速度で金属ウェブを搬送することで、アルミニウムの砂目の均一化を、より一層向上させることができる。
(6) (5)記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記槽間処理休止区間を、少なくとも3区間設けることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、槽間処理休止区間を少なくとも3区間設けることで、アルミニウムの砂目の均一化を、より一層向上させることができる。
(7) (1)〜(6)のいずれか1項記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記金属ウェブと前記電極との間で前記電極に対応して複数配置された電解液供給口から、それぞれ前記電解液を噴射供給することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、金属ウェブと電極との間で電極に対応して複数配置された電解液供給口から電解液をそれぞれ噴射供給させることで、電解液の流れを強制的に作って、電解液の流れを、より一層確実に作ることができる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属ウェブを複数の電解槽の電解液中へ順次に浸漬させ、金属ウェブに電解槽内で対向配置された複数の電極と金属ウェブとの間に電流を供給し、金属ウェブを連続的に電気化学的粗面化処理する平版印刷版用支持体の製造方法において、画質むらの改善と、安定して均一な砂目を得ることができ、汚れ性能や耐刷力に優れた平版印刷版を提供することが可能になる。
本発明の一実施形態に係る平版印刷版用支持体の製造方法に適用される平版印刷版用支持体製造装置の概念図である。 図1の平版印刷版用支持体製造装置の要部拡大図である。 図1の平版印刷版用支持体製造装置に適用される電解液供給部の外観斜視図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における電解液の制御方法の一例を示す図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの他の一例を示す側面図である。 従来の平版印刷版用支持体の製造方法を用いて製造された金属ウェブの概略図である。
符号の説明
11 電解槽
13 電極
29 電解液供給口
100 平版印刷版用支持体製造装置
EL 電解液
MW 金属ウェブ
以下、本発明に係る平版印刷版用支持体の製造方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る平版印刷版用支持体の製造方法に適用される平版印刷版用支持体製造装置の概念図、図2は図1の平版印刷版用支持体製造装置の要部拡大図、図3は図1の平版印刷版用支持体製造装置に適用される電解液供給部の外観斜視図である。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施形態に係る平版印刷版用支持体の製造方法に適用される平版印刷版用支持体製造装置100は、複数(本実施形態では一例として4個)の電解槽11と、各電解槽11のそれぞれに設置された複数(本実施形態では一例として各槽で5個)の電極13と、各電極13の下方で金属ウェブMWの搬送路との間にそれぞれ設置された複数(本実施形態では一例として各槽で6個)の電解液供給部15と、を備える。各電極13はそれぞれ等しい電極面積を有する。なお、図示はしていないが、各電解槽11には電解液を排出させるための電解液排出口を備え、この排出口から電解液を排出するとともに電解液供給部15,15Aから電解液を供給することで、電解槽11内の電解液を循環させている。
電解槽11には、所定量の電解液ELがそれぞれ貯蔵されており、電解液EL内の電解液EL中に複数の電極13、および各電極13の下方に電解液供給部15がそれぞれ配置されている。
電解槽11に収容される電解液ELは、塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含んでいる。塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含むことで、電荷集中が比較的生じくにくくなり、アルミニウムの砂目の均一化を向上させることができるとともに、耐刷力および密着力を向上させて画質むらを低減する効果が得られる。
電解槽11は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属ウェブMWの搬送方向Aの上流側から下流に向けて、電解槽11外に配置され電解液ELに漬けられていない外部ローラ17と、電解槽11内に配置され電解液ELに漬けられた内部ローラ19,21と、電解槽11外に配置され交流電源BLに接続される給電ローラ23と、を有するローラ群を備えている。
ここで、電解槽11で金属ウェブMWが電極13に対面する金属ウェブMWの搬送路区間を処理区間とし、電解槽11内で一対の内部ローラ19,21間を搬送される際に複数の電極13のうち隣接する一対の電極13,13間の領域(電極13に対面しない領域)、すなわち、複数の電極13のうち隣接する電極間の隙間領域に対面する金属ウェブMWの搬送路区間を槽内電極間処理休止区間とする。また、この電解槽11内で処理の休止される区間は、電極間の隙間領域に対面する区間の他、内部ローラ19と外部ローラ17との間の気液界面から最近接された電極13が対面する搬送路領域までの間、および、内部ローラ21と外部ローラ23との間の気液界面から最後の電極13が対面する搬送路領域までの間についても処理休止区間と同様の区間となるが、ここでは上記槽内電極間処理休止区間とは区別して、槽内電極端外側処理休止区間とする。つまり、電解槽11内の複数の電極13の並び方向端部から電解槽11の電解液気液界面までの搬送路区間を槽内電極端外側処理休止区間とする。
また、電解槽11外で一対の外部ローラ23,17間を搬送される領域、すなわち、金属ウェブMWが電解槽11の電解液中から取り出され、金属ウェブMWの搬送路下流側に配置された他の電解槽11の電解液に浸かるまでの金属ウェブMWの搬送路区間を、槽外処理休止区間とする。つまり、内部ローラ21と外部ローラ23との間の気液界面から、隣接する外部ローラ17と内部ローラ19との間の気液界面までの間を槽外処理区間とする。また、槽外処理区間およびこれに連続する槽内電極端外側処理休止区間との和を槽間処理休止区間とする。なお、槽間処理休止区間には、搬送路上の最初の電解槽に金属ウェブMWが浸漬され最初の電極に対面するまで、および搬送路上の最後の電解槽の最後の電極に対面する位置から外れた後は、この槽間処理休止区間に含まれないものとする。
そして、一対の電極13間で表される一回の槽内電極間処理休止区間の長さを金属ウェブMW(金属ウェブMWの任意の一点)が通過に要する時間をTin、槽外処理休止区間の長さを金属ウェブMW(金属ウェブMWの任意の一点)が通過に要する時間をToutとする。また、槽内電極端外側処理休止区間である電解槽出口側の両端処理休止区間に要する時間をTs_in_aとし、同じく槽内電極端外側処理休止区間である電解槽入り口側の両端処理休止区間に要する時間をTs_in_bとする。
ここで、槽間処理休止区間に要する時間をTabとすると、TabはTs_in_a+Tout+Ts_in_bで表される。
図2に示すように、各電極13はそれぞれ交流電源BLに接続され、また、交流電源BLに接続された給電ローラ23と金属ウェブMWとが接しているため、処理区間においては、各電極13は、電解液ELを通じて金属ウェブMWに対して予め定められた交流電流を印加するようになっている。
図3に電解液供給部15の構成例を示すように、電解槽11内の電解液供給部15は、電解槽11の金属ウェブMWの搬送方向と直交する幅方向の両端部に、一対のガイド部25を備え、これらガイド部25の間に筒形状の噴射部27を備える。そして、噴射部27の幅方向にスリット形状の電解液供給口29が形成されている。
一対のガイド部25は、不図示の電解液タンクに連通接続されて、噴射部27に電解液を常時供給する。噴射部27に供給された電解液ELは、金属ウェブMWの搬送方向Aに対向する方向に、つまり搬送方向Aとは逆向きに電解液供給口29を通じて電解槽11の幅全体に噴射される。このように、電解液供給部15は、金属ウェブMWと電極13との間で電極13に対応して複数配置された電解液供給口29から、電解液ELを金属ウェブMWの搬送方向Aに対して対向させて逆向きに噴射させることで、電極13付近の電解液ELを強制的に流動させている。これにより、金属ウェブMWの表面が常に新鮮な電解液ELに接触するようになる。また、電解液ELは、不図示の排出口から排出されるために、電解液供給部15から供給される電解液ELとともに電解槽11内を循環する。
電解槽11内の金属ウェブMWの搬送方向最上流側に配置されている電解液供給部15Aは、ガイド部25に内蔵された不図示の回動機構によって噴射部27が回動される。これにより、電解液供給口29が電解液ELの噴射方向を変更しながら金属ウェブMWに向かって電解液ELを噴射させることで、電解液ELを電解槽11内で十分に攪拌し、局所的な淀みが生じないようにしている。なお、電解液供給口29の噴射方向を変更可能な電解液供給部15Aは、金属ウェブMWの搬送方向最上流側のものに加えて、他のすべての電解液供給部15に対しても同様の構成としてもよい。
上記構成の平版印刷版用支持体製造装置100は、金属ウェブMWを電解槽11の電解液EL中へ順次に浸漬させ、金属ウェブMWに電解槽11内で対向配置された電極13と金属ウェブMWとの間で通電し、金属ウェブMWを連続的に電気化学的粗面化処理する。その際に、電解液ELの流速を、電解槽11内でそれぞれ平均流速を500〜4000mm/秒、電解槽11内の金属ウェブMWの搬送方向と直交する幅方向に対する電解液ELの流速分布を平均流速の±50%以内とする。そして、電解槽11内で金属ウェブMWが電極13に対面する領域である処理区間に対する槽内電極間処理休止区間の通過時間Tin、槽間処理休止区間の通過時間Tabとの関係を、1回の槽内電極間処理休止区間を通過する時間Tinを0.05〜1秒、かつ、1回の槽間処理休止区間を通過する時間Tabを1〜5秒とする速度で金属ウェブMWを搬送する。上記の条件で平版印刷版用支持体の製造方法を行うことにより、金属ウェブMW表面のアルミニウム表面の画質むらの改善と、砂目を均一にできるとともに、汚れ性能および耐刷力を良好にすることができる。
本実施形態の平版印刷版用支持体製造装置100は、電解槽11内における槽内電極間処理休止区間(Tin)を16区間設けるとともに、電解槽11外を含む槽間処理休止区間(Tab)を3区間設けている。
このように、槽内電極間処理休止区間(Tin)と、槽間処理休止区間(Tab)とを規定の区間数設けることで、アルミニウムの砂目の均一化を向上させることができる。槽内電極間処理休止区間および槽間処理休止区間は、それぞれ少なくとも3区間を設けることが望ましく、区間数は多い程、金属ウェブMWの版面の性状を均一化する効果を高められる。なお、槽内電極間処理休止区間および槽間処理休止区間が2区間以下では、版面の性状が悪化することが実験により確められている。
なお、槽内電極間処理休止区間数を増やすと電解槽11のサイズが大型化するため、例えば50区間を最大に、槽内電極間処理休止区間数を3〜50区間とすることが実際上は好ましい。また、槽間処理休止区間数を増やすと装置全体の設置スペースを広く要するため、例えば10区間を最大に、槽間処理休止区間数を3〜10区間とすることが実際上は好ましい。ただし、上記区間数は、金属ウェブMWの寸法が例えば厚さ0.1〜0.5mm、幅500mm〜2000mm程度の場合であって、各電極13の寸法等を変更することでも上記の最大区間数は変動する。
そして、平版印刷版用支持体製造装置100は、電解液供給部15の電解液供給口29から、金属ウェブMWの搬送方向に対向する方向に電解液ELを噴射させながら平版印刷版用支持体の製造を行う。
次に、平版印刷版用支持体の製造方法を詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体の製造方法]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法には公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
また、使用済みアルミニウム飲料缶を溶解させたUBC(Used Beverage Can)地金を圧延して得られるアルミニウム板を用いることもできる。
このアルミニウム板において、Cu含有量は、0.00質量%以上であるのが好ましく、さらには0.01質量%以上、0.02質量%以上であるのがより好ましく、また、0.15質量%以下であるのが好ましく、さらには0.11質量%以下であるのが好ましく、0.03質量%以下であるのがより好ましい。特に好ましいのは、Si:0.07〜0.09質量%、Fe:0.20〜0.29質量%、Cu:0.03質量%以下、Mn:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Cr:0.01質量%以下、Zn:0.01質量%以下、Ti:0.02質量%以下、Al:99.5質量%以上であるアルミニウム板である。
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
本発明に用いられるアルミニウム板は、JISに規定されるH18の調質が行われているのが好ましい。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が120MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
また、アルミニウム板は、引張強度が160±15N/mm2、0.2%耐力が140±15MPa、JIS Z2241およびZ2201に規定される伸びが1〜10%であるのがより好ましい。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程等において、プレス圧延、転写等により凹凸を形成させて用いることもできる。
中でも、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延とともに、凹凸面をアルミニウム板に圧接させて凹凸形状を転写し、アルミニウム板の表面に凹凸パターンを形成させる方法が好ましい。具体的には、特開平6−262203号公報に記載されている方法を好適に用いることができる。
表面に凹凸パターンを有するアルミニウム板を用いることにより、ブラシと研磨剤とで形成する凹凸パターンより、平均ピッチと深さが均一な凹凸パターンを得ることができるので耐汚れ性が向上する。また後のアルカリエッチング処理および粗面化処理で消費されるエネルギーを少なくしつつ、印刷機上における湿し水の量の調整を容易にすることができる。例えば、後述する第1エッチング処理において、エッチング量を3g/m2程度以下と少なくすることができる。また、凹凸パターンを有するアルミニウム板を用いると得られる平版印刷版用支持体の表面積が増大するため、耐刷性により優れる。
転写は、通常のアルミニウム板の最終冷間圧延工程で行うのが特に好ましい。転写のための圧延は1〜3パスで行うのが好ましく、それぞれの圧下率は3〜8%であるのが好ましい。
また、転写により付与される凹凸は、アルミニウム板の両面に付与されるのがより好ましい。これにより、表面と裏面のアルミニウム板の伸び率を同程度に調整することができるので平面性のよいアルミニウム板を得ることができる。
凹凸の転写に用いられる、表面に凹凸を有する圧延ロールを得る方法としては、例えば、ブラスト法、電解法、レーザ法、放電加工法、これらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも、ブラスト法と電解法とを組み合わせた方法が好ましい。ブラスト法の中でも、エアーブラスト法が好ましい。
エアーブラスト法におけるエアー圧は、1〜10kgf/cm2(9.81×104〜9.81×105Pa)であるのが好ましく、2〜5kgf/cm2(1.96×105〜4.90×105Pa)であるのがより好ましい。
エアーブラスト法に用いられるグリッドは、所定の粒径のアルミナ粒子であれば特に限定されない。グリッドに、硬く、粒子一つ一つの角が鋭角なアルミナ粒子を用いると、転写ロールの表面に、深く均一な凹凸を形成させやすい。
アルミナ粒子の平均粒径は、50〜150μmであり、60〜130μmであるのが好ましく、70〜90μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、転写ロールとして十分な大きさの表面粗さが得られるため、この転写ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面粗さが十分に大きくなる。また、ピット数も十分に多くすることができる。
エアーブラスト法においては、噴射を2〜5回行うのが好ましく、中でも2回行うのがより好ましい。噴射を2回行うと、1回目の噴射で形成された凹凸の不揃いな凸部を2回目の噴射で削り取ることができるため、得られる圧延ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面に、局所的に深い凹部が形成されにくくなる。その結果、平版印刷版の現像性(感度)が優れたものとなる。
エアーブラスト法における噴射角は、噴射面(ロール表面)に対して60〜120°であるのが好ましく、80〜100°であるのがより好ましい。
エアーブラスト法を行った後、後述するめっき処理を行う前に、平均表面粗さ(Ra)がエアーブラスト後の値から10〜40%低下するまで、研磨するのが好ましい。研磨は、サンドペーパー、砥石またはバフを用いるのが好ましい。研磨することにより、転写ロールの表面の凸部の高さを揃えることができ、その結果、この転写ロールを用いて凹凸を付与したアルミニウム板の表面に、局所的に深い部分が形成されなくなる。その結果、平版印刷版の現像性(感度)が特に優れたものとなる。
転写ロールの表面の平均表面粗さ(Ra)は0.4〜1.0μmであるのが好ましく、0.6〜0.9μmであるのがより好ましい。転写ロールの表面の山数は、1000〜40000個/mm2であるのが好ましく、2000〜10000個/mm2であるのがより好ましい。山数が少なすぎると、平版印刷版用支持体の保水性および画像記録層との密着性が劣ったものになる。保水性が劣ると、平版印刷版としたときに、網点部が汚れやすくなる。
転写ロールの材質は、特に限定されず、例えば、公知の圧延ロール用材質を用いることができる。
本発明においては、鋼製のロールを用いるのが好ましい。中でも、鍛造により作られたロールであるのが好ましい。好ましいロール材質の組成の一例は、C:0.07〜6質量%、Si:0.2〜1質量%、Mn:0.15〜1質量%、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Cr:2.5〜12質量%、Mo:0.05〜1.1質量%、Cu:0.5質量%以下、V:0.5質量%以下、残部:鉄および不可避不純物である。
また、一般的に圧延用ロールとして用いられる、工具鋼(SKD)、ハイス鋼(SKH)、高炭素クロム軸受鋼(SUJ)、炭素とクロムとモリブデンとバナジウムとを合金元素として含む鍛造鋼が挙げられる。長いロール寿命を得るために、クロムを10〜20質量%程度含有する高クロム合金鋳鉄を用いることもできる。
中でも、鍛造法により製造されたロールを用いるのが好ましい。この場合、焼入れ、焼戻し後の硬度が、Hsで80〜100であるのが好ましい。焼戻しは、低温焼戻しを行うのが好ましい。
ロールの直径は200〜1000mmであるのが好ましい。また、ロールの面長は1000〜4000mmであるのが好ましい。
エアーブラスト法等により凹凸を形成された転写ロールは、洗浄の後、焼入れ、ハードクロムめっき等の硬質化処理を施されるのが好ましい。これにより耐摩耗性が向上し、寿命が長くなる。
硬質化処理としては、ハードクロムめっきが特に好ましい。ハードクロムめっきは、工業用クロムめっき法として従来周知のCrO3−SO4浴、CrO3−SO4−フッ化物浴等を用いた電気めっきによる方法を用いることができる。
ハードクロムめっき皮膜の厚さは3〜15μmであるのが好ましく、5〜10μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、ロール表面素地とめっき皮膜との境界から、めっき皮膜部分がはがれるめっきはく離が生じにくく、また、耐摩耗性の向上効果も十分となる。ハードクロムめっき皮膜の厚さは、めっき処理時間を調整することによって調節することができる。
ハードクロムめっきの前には、ハードクロムめっきに用いるめっき液中で、ロールを陽極とし、直流電流を用いて、5,000〜50,000C/dm2の電気量で電解処理を行うのが好ましい。これにより、ロールの表面の凹凸を均一化することができる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mm程度であり、0.15〜0.4mmであるのが好ましく、0.2〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚さは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
<表面処理>
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、上述したアルミニウム板に、電解液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を施して平版印刷版用支持体を得る。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法においては、上記以外の各種の工程を含んでいてもよい。
具体的には、例えば、アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第1エッチング処理)、酸性水溶液中でのデスマット処理、電気化学的粗面化処理、アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第2エッチング処理)、酸性水液中でのデスマット処理、陽極酸化処理をこの順に施す方法が好適に挙げられる。
また、前記処理で陽極酸化処理を施す前にさらに電気化学的粗面化処理、アルカリ水溶液中でのエッチング処理、酸性水溶液中でのデスマット処理を行ってよい。また、上記陽極酸化処理の後に、更に、封孔処理、親水化処理、または、封孔処理およびその後の親水化処理を施す方法も好ましい。
また、第1エッチング処理の前に、機械的粗面化処理を行うこともできる。これにより、電気化学的粗面化処理に用いられる電気量を低減させることができる。
機械的粗面化処理としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法(転写ロール法)を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特開平6−24168号公報に記載されている方法も適用可能である。
中でも、転写ロール法が、平版印刷版用支持体の製造工程の高速化に対応しやすいので、好ましい。転写ロール法は、上述したように、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延において、転写を行うのが好ましい。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
<第1エッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上述したアルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電気化学的粗面化処理の前には、第1エッチング処理を行うことが好ましい。第1エッチング処理は、電気化学的粗面化処理で均一な凹部を形成させること、および、アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として行われる。
第1エッチング処理においては、後に電気化学的粗面化処理を施される面のエッチング量は、0.5g/m2以上であるのが好ましく、1g/m2以上であるのがより好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、5g/m2以下であるのがより好ましい。エッチング量が0.5g/m2以上であると、電気化学的粗面化処理において均一なピットを生成させることができる。エッチング量が10g/m2以下であると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
電気化学的粗面化処理を施される面の裏面のエッチング量は、電気化学的粗面化処理を施される面のエッチング量の5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましく、また、50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、アルミニウム板の裏面の圧延油の除去効果と、経済性とのバランスに優れる。
後述する第2エッチング処理および第3エッチング処理においても、同様である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第一リン酸ソーダ、第一リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
第1エッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、1質量%以上であるのが好ましく、20質量%以上であるのがより好ましく、また、35質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、0.5質量%以上であるのが好ましく、4質量%以上であるのがより好ましく、また、10質量%以下であるのが好ましく、8質量%以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1エッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、95℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
第1エッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム板を連続的にエッチング処理していくと、アルカリ溶液中のアルミニウムイオン濃度が上昇していき、アルミニウム板のエッチング量が変動する。そこで、エッチング液の組成管理を、以下のようにして行うのが好ましい。
即ち、カセイソーダ濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作成しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるようにカセイソーダと水とを添加する。そして、カセイソーダと水とを添加することによって増加したエッチング液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加するカセイソーダとしては、工業用の40〜60質量%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
中でも、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
アルカリエッチング処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
また、水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は0.5〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
<第1デスマット処理>
第1エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第1デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム板を酸性溶液に接触させることにより行う。
用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。中でも、硝酸、硫酸が好ましい。具体的には、例えば、後述する陽極酸化処理工程で用いた硫酸水溶液の廃液を好適に用いることができる。
デスマット処理液の組成管理においては、酸性溶液濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と温度で管理する方法、電導度と比重と温度とで管理する方法、および、電導度と超音波の伝搬速度と温度とで管理する方法のいずれかを選択して用いることができる。
第1デスマット処理においては、0.5〜30質量%の酸および0.5〜10質量%のアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
酸性溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、また、95℃以下であるのが好ましい。
第1デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
中でも、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でデスマッティング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
デスマット処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、アルカリエッチング処理の後の水洗処理と同様である。ただし、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理は、塩素イオンと硫酸イオンを含有する混合水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理を行うことが望ましい。この電気化学的粗面化処理により、プラトー部(平坦部)の少ない、好ましくは平均直径2〜20μmの均一な凹部を有し、好ましくは平均表面粗さ0.3〜0.8μmの表面形状が得られる。このように、本発明においては、電気化学的粗面化処理後の表面において、プラトー部が少ないので、平版印刷版としたときの耐刷性が優れたものとなり、また、ピットが均一であるので、平版印刷版としたときの耐汚れ性が優れたものとなる。
これに対し、電解液として塩酸を含有し、かつ、硫酸を含有しない水溶液を用いる場合は、ピットが浅くなったり、重なったりして、不均一になる。また、プラトー部も多くなる。
電解液として用いられる混合水溶液における塩酸濃度は、3〜30g/Lであるのが好ましく、4〜20g/Lであるのがより好ましく、10〜18g/Lであるのが更に好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。
混合水溶液における硫酸濃度は、0.01〜10g/Lであるのが好ましく、0.1〜5g/Lであるのがより好ましく、1〜4g/Lであるのが更に好ましい。硫酸は、アノード反応で酸化皮膜を形成する。これにより、均一な凹凸表面が得られると考えられる。
また、本発明では、混合水溶液に硫酸が添加されているために、後述するように複数の電解槽を用いて電気化学的粗面化を行う場合にも、平均粗さRaを十分な値とすることができる。
混合水溶液には、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物または硝酸化合物を添加して使用することができる。また、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。混合水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
混合水溶液におけるアルミニウムイオン濃度は、3〜30g/Lであるのが好ましく、3〜20g/Lであるのがより好ましく、8〜18g/Lであるのが更に好ましい。上記範囲であると、ピットの均一性が高くなる。また、混合水溶液の補充量が多くなりすぎることがない。
電解液の各成分の濃度制御は、濃度測定方法等の多成分濃度測定法と、フィードフォワード制御およびフィードバック制御とを併用して行うのが好ましい。これにより、電解液の正確な濃度管理が可能となる。
多成分濃度測定法は、例えば、液中の超音波の伝搬速度と液の電導度(導電率)とを用いて濃度を測定する方法、中和滴定法、キャピラリー電気泳動分析法、イソタコフォレシス(isotachophoresis、細管式等速電気泳動法)分析法、イオンクロマトグラフ法が挙げられる。
イオンクロマトグラフ法は、検出器の種類により、吸光度検出イオンクロマトグラフ、ノンサプレッサ型電気電導度検出イオンクロマトグラフ、サプレッサ型イオンクロマトグラフ等に分類される。中でも、サプレッサ型イオンクロマトグラフが、測定の安定性の確保のうえで好ましい。
具体的には、以下に説明する方法によって、電解液の各成分の濃度制御をすることが好ましい。
電気化学的粗面化を行うと、電解液では、通電量に比例して水素イオン濃度が低下し、アルミニウムイオン濃度が上昇する。したがって、通電量に基づいたフィードフォワード制御を行うことにより、水素イオン濃度とアルミニウムイオン濃度とを一定に保つことができる。
すなわち、水素イオン濃度を上昇させるために、通電量、すなわち、交流電源が発生する電流値に比例した量の酸を電解液に補給し、アルミニウムイオン濃度を低下させるために、通電量に比例した量の水を電解液に補給し、さらに、水の添加によって酸の濃度が低下するので、添加された水の量に比例した量の酸を電解液に補給することによって、水素イオン濃度とアルミニウムイオン濃度とを一定に保つことができる。なお、以下の説明では、電解液に補給する水を補給水ともいう。
さらに、電解液の濃度を測定する濃度測定系を設け、測定された電解液の濃度に基づいて酸や補給水の補給を制御するフィードバック制御を併用して、電解液の各成分を濃度制御することが好ましい。フィードバック制御を併用することにより、アルミニウム板による電解液の持ち出しや持ち込み、電解液の蒸発等がある場合にも、電解液の濃度を制御よく制御することができる。
濃度測定方法としては、上述した多成分濃度測定法が挙げられるが、各成分の液組成に対応した電解液の電導度と超音波伝搬速度との対応をとっておき、電導度と超音波伝搬速度との値に基づいて濃度測定を行う方法が特に好ましい。
補給水および酸は、循環タンクに供給することが好ましい。循環タンクは、電解液を貯留しており、貯留されている電解液を電解槽に供給し、電解槽から排出された電解液を貯留する。循環タンクの容量を超えた電解液は、オーバーフローにより排出される。なお、排出された電解液は、無害化した後に廃液として河川などに放流される。
本発明では、硫酸、塩酸、アルミニウムイオンという3成分の濃度制御を行うが、3成分の濃度をリアルタイムに測定することは困難である。したがって、補給水に予め電解液中の硫酸濃度と同じ濃度の硫酸を添加しておき、硫酸が添加された補給水と塩酸とを補給することによって、濃度制御することが好ましい。
この方法では、補給水中の硫酸濃度も制御することが好ましい。補給水の硫酸濃度を制御する方法としては、補給水の硫酸濃度を測定して、測定した結果に基づいて硫酸または水を添加する方法が挙げられる。補給水の硫酸濃度を測定する方法としては、補給水の電導度、pH、比重、または超音波の伝搬速度に基づいて測定する方法、中和滴定法、キャピラリー電気泳動分析法、イソタコフォレシス分析法、イオンクロマトグラフ法などが挙げられるが、補給水の電導度を用いて測定する方法が好ましい。
図4は、本発明において電解液の濃度を制御するシステム(以下、「濃度制御システム」ともいう。)200の一例を示す図である。
図4では、交流電源201から出力された電流を電極202に供給することで、電解槽203に貯留されている電解液220の中を通過するアルミニウム板204に電気化学的粗面化処理が施されており、濃度制御システム200が、電解槽203内の電解液220に含まれる成分の濃度を制御している。
濃度制御システム200は、循環タンク210と、循環タンク210内の電解液220に含まれる塩酸およびアルミニウムイオンの濃度を測定する第1濃度測定系211と、塩酸221を貯留する塩酸貯留部212と、水と硫酸を含有する補給水222を貯留する補給水貯留部213と、交流電源201および第1濃度測定系211から供給されたデータに基づいて循環タンク210への塩酸221および/または補給水222の供給を制御するコントローラ214と、補給水222に含まれる硫酸の濃度を測定する第2濃度測定系215とを備える。なお、図4中Pはポンプを示している。また、図4中実線は液体の移動を示しており、破線は信号の流れを示している。
濃度制御システム200では、第1濃度測定系211が、循環タンク210内の電解液220中の塩酸およびアルミニウムイオンの濃度を測定しており、コントローラ214が、第1濃度測定系211が測定した濃度と交流電源201が発生している電流とに基づいて、塩酸貯留部212から循環タンク210への塩酸の補給と補給水貯留部213から循環タンク210への補給水の補給とを制御することによって、濃度制御されている。循環タンク210に貯留されている電解液220は電解槽203に供給され、また、電解槽203中の電解液220は循環タンク210に排出される。
なお、濃度制御システム200では、補給水貯留部213に貯留されている補給水222中の硫酸濃度を、第2の濃度測定系215によって測定し、測定結果に応じて水および/または硫酸を補給水貯留部213に供給することによって制御している。
電解液に補給する塩酸としては、10〜35質量%のものを用いることが好ましい。
また、補給水中の硫酸濃度は、電解液の硫酸濃度と同一とする。すなわち、例えば電解液の硫酸濃度が3g/Lの場合には、補給水の硫酸濃度も3g/Lである。補給水の硫酸濃度を電解液の硫酸濃度と同じにすることによって、電解液の硫酸濃度を測定することなく、電解液の硫酸濃度を一定に保つことができる。
電気化学的粗面化処理における電気量は、アルミニウム板が陽極時の電気量の総和で、150〜800C/dm2であるのが好ましく、200〜700C/dm2であるのがより好ましく、200〜500C/dm2であるのが更に好ましい。150C/dm2以上であると、表面粗さが十分となり、耐刷性および印刷時の水量の調整のしやすさがより優れたものとなる。800C/dm2以下であると、耐汚れ性がより優れたものとなる。
また、転写により凹凸パターンを形成したアルミニウム板を用いる場合は、200〜400C/dm2であるのが特に好ましい。
電気化学的粗面化処理における電流密度は、電流値のピークで、30〜300A/dm2であるのが好ましく、50〜200A/dm2であるのがより好ましく、75〜125A/dm2であるのが更に好ましい。30A/dm2以上であると、生産性がより優れたものとなる。300A/dm2以下であると、電圧が高くなく、電源容量が大きくなりすぎないので、電源コストを低くすることができる。
電流密度は、電解処理の最初から最後まで漸増するように設定するのが好ましい。これにより、均一なピットが生成しやすくなる。具体的には、(電解の最後の電流密度/電解の最初の電流密度)の値が1.1〜2.0になるように段階的に漸増するように、電源および電極を分割して設定するのが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4,203,637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
混合水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、25℃以上であるのがより好ましく、30℃以上であるのが更に好ましく、また、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましく、40℃以下であるのが更に好ましい。20℃以上であると、冷却のための冷凍機運転コストが高くならず、また、冷却のための地下水の使用量を抑制することができる。60℃以下であると、設備の耐食性を確保することが容易である。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、正弦波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、台形波または正弦波が好ましく、正弦波がより好ましい。台形波とは、図5に示したものをいう。台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(電流立ち上がり時間、TP)は0.5〜3.5msecであるの
が好ましく、0.8〜2.5msecであるのがより好ましい。0.5msec以上であると、電源の製作コストが低くなる。3.5msec以下であると、ピットの均一性がより優れたものとなる。三角波においては、電流立ち上がり時間は、任意に選定することができる。
また、正弦波を用いる場合には、商用交流等の実質的に正弦波として用いられているものを、特に限定されずに用いることができる。
交流のduty(1周期中のアルミニウム板が陽極となっている時間/1周期の時間)は、0.33〜0.66であるのが好ましく、0.45〜0.55であるのがより好ましい。
また、交流の周波数は、10〜200Hzであるのが好ましく、20〜150Hzであるのがより好ましく、30〜120Hzであるのが更に好ましい。10Hz以上であると、ファセット状(角張った四角い形状)の大きなピットができにくく、耐汚れ性がより優れたものとなる。200Hz以下であると、電解電流を流す回路のインダクタンス成分の影響を受けにくく、大容量の電源の製作が容易となる。
また、電源装置としては、例えば、商用交流を用いたもの、インバータ制御電源等を用いることができる。中でも、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を用いたインバータ制御電源が、アルミニウム板の幅および厚さ、電解液中の各成分の濃度の変動等に対して電圧を変動させて、電流値(アルミニウム板の電流密度)を一定に制御する際に、追従性に優れる点で好ましい。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図6に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図6において、311はアルミニウム板であり、312はラジアルドラムローラであり、313aおよび313bは主極であり、314は電解処理液であり、315は電解液供給口であり、316はスリットであり、317は電解液通路であり、318は補助陽極であり、319aおよび319bはサイリスタであり、320は交流電源であり、340は主電解槽であり、350は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。電流比(アルミニウム板が陽極時の電気量の総和とアルミニウム板が陰極時の電気量の総和との比)は、0.9〜3であるのが好ましく、0.95〜2であるのがより好ましい。
なお、電解槽は、前述のフラット型の他、縦型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているような上記のラジアル型電解槽が、電気化学的粗面化処理で生成するピットの裏廻りを防止できる観点から好ましい。
フラット型の電解槽を用いるときは、電気化学的粗面化処理で生成するピットの裏廻りを防止する目的で、アルミニウム板の非処理面に絶縁板を設けて電流が非処理面に流れるのを防止する方法をとることが好ましい。
電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよいが、カウンターがより望ましい。
ところで、アルミニウム板を電気化学的粗面化するに際し、生産量の向上のために、アルミニウム板の移動速度を速めることが好ましい。アルミニウム板の移動速度を速めるためには、電気化学的粗面化処理が行われる長さ、すなわち処理長を長くする必要がある。
処理長を長くする方法としては、大型化された電解槽を用いる方法が挙げられるが、大型化された電解槽は製造が困難であるので、複数の電解槽を用いることが好ましい態様の一つである。
用いる電解槽の数を増やすと、アルミニウム板表面の平均粗さRaを十分な値にすることが困難になるが、電解液に硫酸が含まれていると十分な値にすることができる。したがって、本発明は、電解槽を複数用いて電気化学的粗面化処理を行った場合にも、アルミニウム板表面の平均粗さRaを十分な値とすることが可能となるので、生産量を向上させることができる。
電解槽の数は、3〜10個であることが好ましい。3〜7個であれば、平均粗さRaを十分な値とすることができ、かつ生産性を向上させることができる。
ここで、上記のラジアル型電解槽を用いる場合も、前述同様に電解槽内の電解液の流速を平均流速で500〜4000mm/秒、また、電解槽内の金属ウェブの搬送方向と直交する幅方向に対する電解液の流速分布を上記平均流速の±50%以内にする。そして、1回の槽内電極間処理休止区間を通過する時間を0.05〜1秒とする速度で金属ウェブを搬送する。そして、電解液供給口は、この場合も金属ウェブ311と電極313a、313bとの間で、電極313a,313bに対応して複数配置する。これら各電解液供給口から、それぞれ電解液を噴射供給する。
なお、電気化学的粗面化処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
電気化学的粗面化処理で生成する凹部の平均開口径の測定は、例えば、電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から倍率2000倍または50000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真において、それぞれで生成した、ピットの周囲が環状に連なっているピットをそれぞれ少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出することにより行う。
また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。
本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。
<第2エッチング処理>
第2エッチング処理は、電気化学的粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、電気化学的粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。これにより、電気化学的粗面化処理によって形成された大きなピットのエッジ部分が溶解して表面が滑らかになり、インキがエッジ部分にひっかかりにくくなるため、耐汚れ性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
第2エッチング処理は、基本的に第1エッチング処理と同様であるが、エッチング量は、0.01g/m2以上であるのが好ましく、0.05g/m2以上であるのがより好ましく、0.1g/m2以上であるのが更に好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、5g/m2以下であるのがより好ましく、3g/m2以下であるのが更に好ましい。
<第2デスマット処理>
第2エッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第2デスマット処理)を行うのが好ましい。第2デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができる。
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理を施してもよい。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第二、第三の成分が添加されていても構わない。ここでいう第二、第三の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、50〜200g/L(5〜20質量%)であるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
電解液の組成管理は、上述した塩酸電解等の場合と同様の方法を用いて、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度により管理するのが好ましい。
電解液の液温は、25〜55℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
具体的には、直流電源の電流配分を、下流側の直流電源の電流が上流側の直流電源の電流以上にするのが好ましい。このような電流配分とすることにより、いわゆる焼けが生じにくくなり、その結果、高速での陽極酸化処理が可能となる。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2以上であると版に傷が入りにくくなる。5g/m2以下であると製造に多大な電力が不要となり、経済的に有利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
また、電気化学的粗面化処理を施された面の裏面の陽極酸化皮膜の量は、0.1〜1g/m2であるのが好ましい。0.1g/m2以上であると、裏面に傷がつきにくくなり、平版印刷版原版として、重ねたときに、裏面に接触する画像記録層が傷付きにくくなる。1g/m2以下であると、経済的に有利となる。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号、特開2001−11698号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図7に示す装置が好適に用いられる。図7は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。
図7に示される陽極酸化処理装置410では、アルミニウム板416に電解液を経由して通電するために、アルミニウム板416の進行方向の上流側に給電槽412、下流側に陽極酸化処理槽414を設置してある。アルミニウム板416は、パスローラ422および428により、図7中矢印で示すように搬送される。アルミニウム板416が最初に導入される給電槽412においては、直流電源434の正極に接続された陽極420が設置されており、アルミニウム板416は陰極となる。したがって、アルミニウム板416においてはカソード反応が起こる。
アルミニウム板416が引き続き導入される陽極酸化処理槽414においては、直流電源434の負極に接続された陰極430が設置されており、アルミニウム板416は陽極となる。したがって、アルミニウム板416においてはアノード反応が起こり、アルミニウム板416の表面に陽極酸化皮膜が形成される。
アルミニウム板416と陰極430の間隔は50〜200mmであるのが好ましい。陰極430としてはアルミニウムが用いられる。陰極430としては、アノード反応により発生する水素ガスが系から抜けやすくなるようにするために、広い面積を有する電極でなく、アルミニウム板416の進行方向に複数個に分割した電極であるのが好ましい。
給電槽412と陽極酸化処理槽414との間には、図7に示されるように、中間槽413と呼ばれる電解液が溜まらない槽を設けるのが好ましい。中間槽413を設けることにより、電流がアルミニウム板416を経由せず陽極420から陰極430にバイパスすることを抑止することができる。中間槽413にはニップローラ424を設置して液切りを行うことにより、バイパス電流を極力少なくするようにするのが好ましい。液切りにより出た電解液は、排液口442から陽極酸化処理装置410の外に排出される。
給電槽412に貯留される電解液418は、電圧ロスを少なくするために、陽極酸化処理槽414に貯留される電解液426よりも高温および/または高濃度とする。また、電解液418および426は、陽極酸化皮膜の形成効率、陽極酸化皮膜のマイクロポアの形状、陽極酸化皮膜の硬さ、電圧、電解液のコスト等から、組成、温度等が決定される。
給電槽412および陽極酸化処理槽414には、給液ノズル436および438から電解液を噴出させて給液する。電解液の分布を一定にし、陽極酸化処理槽414でのアルミニウム板416の局所的な電流集中を防ぐ目的で、給液ノズル436および438にはスリットが設けられ、噴出する液流を幅方向で一定にする構造となっている。
陽極酸化処理槽414においては、陰極430からみてアルミニウム板416を挟んだ反対側にはしゃへい板440が設けられ、電流がアルミニウム板416の陽極酸化皮膜を形成させたい面の反対側に流れるのを抑止する。アルミニウム板416と遮蔽しゃへい板440の間隔は5〜30mmであるのが好ましい。直流電源434は複数個用いて、正極側を共通に接続して用いるのが好ましい。これによって、陽極酸化処理槽414中の電流分布を制御することができる。
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理を行うことにより、平版印刷版原版の現像性(感度)を向上させることができる。
陽極酸化皮膜が、皮膜面にほぼ垂直な方向にポアと称する細孔を有する多孔質皮膜であることはよく知られている。本発明においては、陽極酸化処理に高封孔率の封孔処理を施すのが好ましい。封孔率は50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。ここで、「封孔率」は、下記式により定義される。
封孔率=(封孔前の表面積−封孔後の表面積)/封孔前の表面積×100%
表面積は、例えば、簡易BET方式の表面積測定装置(例えば、QUANTASORB(カンタソーブ)、湯浅アイオニクス社製)を用いて測定することができる。
封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理、電着封孔処理、特公昭36−22063号公報等に記載されているようなフッ化ジルコン酸処理、特開平9−244227号公報に記載されているリン酸塩および無機フッ素化合物を含む水溶液での処理、特開平9−134002号公報に記載されている糖を含む水溶液での処理、特開2000−81704号公報および特開2000−89466号公報に記載されているチタンとフッ素を含む水溶液での処理、米国特許3,181,461号明細書等に記載されているアルカリ金属ケイ酸塩処理が挙げられる。
好適な封孔処理の一例として、アルカリ金属ケイ酸塩処理が挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩処理は、液のゲル化および陽極酸化皮膜の溶解を起こすことのない25℃においてpH10〜13であるアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を用いて、アルカリ金属ケイ酸塩濃度、処理温度、処理時間等の処理条件を適宜選択して行うことができる。好適なアルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。また、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高く調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を配合することができる。
更に、必要に応じて、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液にアルカリ土類金属塩および/または4族(第IVA族)金属塩を配合してもよい。このアルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;アルカリ土類金属の硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩等の水溶性の塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜5.0質量%であるのがより好ましい。
好適な封孔処理の別の一例として、フッ化ジルコン酸処理が挙げられる。フッ化ジルコン酸処理は、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム等のフッ化ジルコン酸塩を用いて行われる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウムを用いるのが好ましい。これにより、平版印刷版原版の現像性(感度)が優れたものとなる。フッ化ジルコン酸処理に用いられるフッ化ジルコン酸溶液の濃度は、0.01〜2質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
フッ化ジルコン酸塩溶液は、リン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。リン酸二水素ナトリウムの濃度は、0.01〜3質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
フッ化ジルコン酸塩溶液は、アルミニウムイオンを含有していてもよい。その場合、フッ化ジルコン酸塩溶液のアルミニウムイオン濃度は、1〜500mg/Lであるのが好ましい。
封孔処理の温度は、20〜90℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましい。
封孔処理の時間(溶液中への浸せき時間)は、1〜20秒であるのが好ましく、5〜15秒であるのがより好ましい。
また、必要に応じて、封孔処理を行った後、上述したアルカリ金属ケイ酸塩処理、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、スルホ基等を側鎖に有するポリマーまたはコポリマー、特開平11−231509号公報に記載されているアミノ基とホスフィン基、ホスホン基およびリン酸基からなる群から選ばれる基とを有する有機化合物またはその塩等を含む溶液に浸し、または塗布する処理等の表面処理を行うことができる。
封孔処理の後には、後述する親水化処理を行うのが好ましい。
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の成分を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の成分を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
また、Siの吸着量は、1.0〜10.0mg/m2であるのがより好ましい。吸着するSi量が上記範囲である場合には、網点非画像部の耐汚れ性が良好になる。
具体的に説明すると、印刷物のシャドー部(網点部)においては、網点の面積率が高く(70〜90%)、平版印刷版のそれに相当する領域では、画像部(画像記録層)の面積が大きく、非画像部(支持体の露出部分)の面積が相対的に小さくなっている。このような場合、印刷時に、隣接する画像部に載せられたインキ同士が接触して(即ち、絡んで)、その間の非画像部にインキが付着し、印刷物の非画像部がつぶれてしまう(即ち、汚れてしまう)という現象が、発生しやすい。
しかし、親水化処理を行い、平版印刷版用支持体の表面に付着するSi量を上記範囲とすることにより、非画像部の親水性が向上するために、得られた平版印刷版用支持体を用いて平版印刷版を作製し、印刷を行った場合に、網点非画像部の耐汚れ性を良好にすることができる。
Si量を上記範囲とするためには、例えば、ケイ酸ソーダの濃度が1〜5質量%である水溶液を用いて、親水化処理を行う。ケイ酸ソーダとしては、1号ケイ酸ソーダを用いることが特に好ましい。
また、親水性の成分の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
<乾燥>
上述したようにして平版印刷版用支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また20秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
[平版印刷版原版]
本発明により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられ、特に、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、無処理タイプが好ましい。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<サーマルポジタイプ>
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、分子中に酸性基を含有する樹脂およびその2種以上の混合物が挙げられる。特に、フェノール性ヒドロキシ基、スルホンアミド基(−SO2NH−R(式中、Rは炭化水素基を表す。))、活性イミノ基(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R(各式中、Rは上記と同様の意味である。))等の酸性基を有する樹脂がアルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
光熱変換物質としては、記録感度の点で、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好適に挙げられる。染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、とりわけ特開2001−305722号公報に記載されている一般式(I)で表されるシアニン染料が好ましい。
サーマルポジタイプの感光性組成物中には、溶解阻止剤を含有させることができる。溶解阻止剤としては、例えば、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0055]に記載されているような溶解阻止剤が好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
以上説明した2層構造の画像記録層を、親水化処理によって表面のSi吸着量を1.0〜10.0mg/m2とした平版印刷版支持体上に形成すると、得られる平版印刷版は、インキの着肉性が良好になり、網点非画像部の耐汚れ性が良好になる。
<中間層>
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
<その他>
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重・BR>≡Wは、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
光熱変換物質としては、例えば、上述したサーマルポジタイプに用いられる光熱変換物質が挙げられる。特に好ましいシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されているものが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物中には、特開2001−133969号公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤)を含有させるのが好ましい。
重合層の製造方法および製版方法については、特開2001−133969号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<酸架橋層>
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
光熱変換物質としては、重合層に用いられるのと同様のものが挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
<フォトポリマータイプ>
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を、使用する光源の波長により適宜選択して用いることができる。例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物中には、特開2001−22079号公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤)を含有させるのが好ましい。
また、フォトポリマータイプの画像記録層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、その共重合体が挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出し剤、染料、塗膜の柔軟性および耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光層の下には、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けるのが好ましい。
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や、特開平7−92660号公報の[0031]に記載されているような塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルポジタイプの感光層の下には、上述したコンベンショナルネガタイプに好適に用いられる中間層と同様の中間層を設けるのが好ましい。
<無処理タイプ>
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
熱可塑性微粒子ポリマー型の感光性組成物は、疎水性かつ熱溶融性の微粒子ポリマーが親水性高分子マトリックス中に分散されたものである。熱可塑性微粒子ポリマー型の画像記録層においては、露光により発生する熱により疎水性の微粒子ポリマーが溶融し、互いに融着して疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
マイクロカプセル型の感光性組成物としては、特開2000−118160号公報に記載されているもの、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好適に挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型の感光性組成物に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマーが挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物に、親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感光層自体の皮膜強度も向上する。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するもの、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの画像記録層は、特別な現像工程を必要とせず、印刷機上で現像することができる。無処理タイプの画像記録層の製造方法および製版印刷方法については、特開2002−178655号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<バックコート>
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
[製版方法(平版印刷版の製造方法)]
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、コンベンショナルネガタイプ、コンベンショナルポジタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
1.アルミニウム板の製造
表1に示される各成分(質量%)を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延を行って、厚さ0.3mm、幅1060mmに仕上げ、アルミニウム板1を得た。
Figure 2009122882
2.平版印刷版用支持体の作製
(実施例1〜24および比較例1〜9)
上記で得られたアルミニウム板を以下に示す表面処理に供し、表2に示される各平版印刷版用支持体を得た。
Figure 2009122882
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(g)の各種処理を連続的に行った。
(a)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第1エッチング処理)
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度370g/L、アルミニウムイオン濃度1g/L、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、3g/m2であった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(b)酸性水溶液中でのデスマット処理
アルミニウム板に、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度50℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、5秒間デスマット処理を行った。硫酸水溶液としては、後述する(i)陽極酸化処理工程の廃液を用いた。その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(c)酸性水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理
電解液として、表2に示される塩酸濃度、アルミニウムイオン濃度および硫酸濃度の水溶液(温度35℃)を用い、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を用いたインバータ制御により電流を制御し、任意波形の交流電流を発生させうる電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。交流電流の波形、電流立ち上がり時間(正弦波以外の場合)、duty比および周波数は、それぞれ表2に示されるとおりであった。
電解槽毎に電源を設置し、電流密度が段階的に漸増するようにした。(電解の最後の電流密度/電解の最初の電流密度)の値は、1.8であった。交流のピーク時におけるアルミニウム板のアノード反応時の電流密度は、電解の最初において、45A/dm2であった。
電気量は、アルミニウム板のアノード時の電気量の総和で、表2に示されるとおりであった。また、電流比(アルミニウム板が陽極時の電気量の総和とアルミニウム板が陰極時の電気量の総和との比)は、表2に示されるとおりであった。
電解液の濃度制御は、予め求めたデータテーブルに従って、通電量に比例した量の塩酸および所望の濃度の硫酸を予め添加した補給水を添加することによって行った。また、各組成に応じた液の電導度と超音波の伝搬速度との関係を測定してデータテーブルを作成しておき、液の電導度と超音波の伝搬速度との測定結果から、添加する塩酸の量と補給水の量とをフィードバック制御した。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(d)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第2エッチング処理)
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度370g/L、アルミニウムイオン濃度1g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の電気化学的粗面化処理を施した面のエッチング量は、0.2g/m2であった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(e)酸性水溶液中でのデスマット処理
アルミニウム板に、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度50℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、5秒間デスマット処理を行った。硫酸水溶液としては、後述する(i)陽極酸化処理工程の廃液を用いた。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(f)陽極酸化処理
電解液としては、170g/L硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度50℃)を用いた。陽極酸化処理は、アルミニウム板がアノード反応する間の平均電流密度が15A/dm2となるように行い、最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。
(g)親水化処理1
アルミニウム板をケイ酸ソーダ1.0質量%水溶液(温度20℃)に10秒間浸せきさせた。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム板表面のSi量は、3.5mg/m2であった。
その後、ニップローラで液切りし、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理し、更に、ニップローラで液切りした。更に、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させて、平版印刷版用支持体を得た。
3.平版印刷版用支持体の表面の観察
実施例1〜24で得られた平版印刷版用支持体の表面形状を走査型電子顕微鏡(JSM−5500、日本電子社製。以下同じ。)を用いて倍率50000倍で観察したところ、その表面に直径0.1〜0.2μmの微細な凹凸が均一かつ緻密に生成していた。また、走査型電子顕微鏡を用いて倍率2000倍で観察したところ、これらの平版印刷版用支持体の表面には直径1〜20μmの凹凸が生成していた。直径0.1〜0.2μmの微細な凹凸は直径1〜20μmの凹凸に重畳して生成していた。
これに対して、比較例1〜9で得られた平版印刷版用支持体の表面形状を同様にして観察したところ、その表面に直径0.1〜0.2μmの微細な凹凸および直径1〜20μmの凹凸が生成していたが、直径1〜20μmの凹凸は、実施例の場合に比べて深さおよびピット径の分布が不均一であった。また、表面には、プラトー部が多く存在した。
4.平版印刷版原版の作製
上記で得られた平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原版を得た。なお、画像記録層を設ける前には、後述するように中間層を設けた。
(実施例1〜24、比較例1〜9)
平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液Aを塗布し、80℃で15秒間乾燥し、成分の塗膜(中間層)を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
<下塗液A組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2009122882
次いで、成分の上に、下記組成の画像記録層用塗布液B1を、乾燥後に0.85g/m2となるようにワイヤーバーで塗布し、140℃で50秒間乾燥させた。
その後、下記組成の画像記録層用塗布液B2を、乾燥後に0.25g/m2となるようにワイヤーバーで塗布し、140℃で1分間乾燥させ、重層型のサーマルポジタイプの画像記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。
<画像記録層用塗布液B1組成>
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000) 1.920g
・m,p−クレゾールノボラック(m−クレゾールノボラック/p−クレゾールノボラック比6/4、重量平均分子量4000) 0.213g
・下記式で表されるシアニン染料B 0.032g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.078g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業株式会社製) 0.020g
・γ−ブチロラクトン 13.18g
・メチルエチルケトン 25.41g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.97g
Figure 2009122882
<画像記録層用塗布液B2組成>
・フェノール/m,p−クレゾールノボラック(フェノール/m−クレゾールノボラック/p−クレゾールノボラック=5/3/2、重量平均分子量4000) 0.274g
・上記式で示されるシアニン染料B 0.029g
・下記式で示される構造ポリマーC/メチルエチルケトン30%溶液(構造ポリマーB/メチルエチルケトン30%溶液) 0.14g
・下記式で示される4級アンモニウム塩D 0.004g
・下記式で示されるスルホニウム塩E 0.065g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業株式会社製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−782、大日本インキ化学工業株式会社製) 0.020g
・メチルエチルケトン 10.39g
・1−メトキシー2−プロパノール 20.98g
Figure 2009122882
5.平版印刷版原版の評価
平版印刷版の画質の評価、耐刷性、耐汚れ性を下記の方法で評価した。
(1)画質の評価
上記のようにして得られた平版印刷版の塗布表面のすじ、チャタマークに関しての画質むらを目視での評価を行った。
(a)すじ
○ :すじが全く発生しない
○△:○よりはすじが発生しているが、△よりはすじが発生していない
△ :○△よりはすじが発生しているが、×よりはすじの発生が少ない
× :著しくすじが発生している
(b)チャタマーク
○ :チャタマークが全く発生しない
○△:○よりはチャタマークが発生しているが、△よりは少ない。
△ :○△よりはチャタマークが発生しているが、×よりは少ない
× :著しくチャタマークが発生している
(2)耐刷性
得られた平版印刷版原版を、Creo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、いずれの平版印刷版原版も感度は良好であった。
<アルカリ現像液組成>
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量10)0.5 質量%
・水 96.15質量%
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷した。なお、印刷時に5000枚毎に富士フイルム(株)製マルチクリーナーを画像記録層の表面に1分間付着させてから水で拭き取るという作業を行った。ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点での印刷枚数により、耐刷性を評価した。
結果を表3、表4に示す。表3、表4中の記号の意味は以下の通りである。
○ :30,000枚以上
○△:20,000枚以上30,000枚未満
△ :10,000枚以上20,000枚未満
× :10,000枚未満
(3)耐汚れ性
耐刷性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
結果を表3、表4に示す。表3、表4中の記号の意味は以下の通りである。
○:ブランケットがほとんど汚れていない
○△:ブランケットがわずかに汚れているが、印刷物は汚れていない
△:ブランケットが汚れており印刷物がわずかに汚れている
×:ブランケットが汚れており印刷物が明らかに汚れている
Figure 2009122882
Figure 2009122882
表3、表4から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法(実施例1〜24)により得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、いずれも耐刷性および耐汚れ性に優れていた。また、塗布表面のすじ、チャタマークに関しての画質むらも優れていた。
これに対して、比較例1〜9は、得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版が耐刷性および耐汚れ性に劣っていた。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2008年3月31日出願の日本特許出願番号2008−94245に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【0004】
の進行が遅いかもしくは停止する部分とが交互に複数回存在するように電解処理する。そのときに、電解処理の進行が速い部分一工程での電解処理の電気量を平均で100C/dm以下にして、電解粗面化の分割処理に着目している。しかし、砂目の均一性に密接に関係するのは各電解処理間での休止時間であり、休止時間が0.6秒から5秒以下では均一化できるが、0.5秒以下では均一化の効果が現れない問題があった。また、すじ状の処理むらやチャタマークの消失も不十分であり、画質むらの改善が望まれていた。
[0015]
また、上記特許文献7に記載された方法では、電解液の平均速度を500〜4000mm/sとし、幅方向の流速分布を平均流速の±50%以内としているが、砂目の均一性と画質むらの改善は充分とはいえず、より一層の改善が望まれていた。
[0016]
また、上記特許文献8に記載された方法では、電気化学的粗面化を、硫酸塩イオンおよび塩化物イオンを含み、その塩化物イオンが塩化アルミニウムの形である酸性電解液中で交流電圧の印加により行うようにしているが、汚れ性能を満足できるものではなく、改善が望まれていた。また、すじ状の処理むらやチャタマークの消失も不十分であり、画質むらの改善が望まれていた。
[0017]
つまり、上記の各特許文献に記載された方法をそれぞれ組み合わせたとしても、図8に示すように、アルミニウム500の砂目の不均一が残り、凸部501に平坦な部分503が残ることがあり、依然として、上記の各問題点を解消することができなかった。また、すじ状の処理むらやチャタマークの消失も不十分であり、画質むらの問題を解消することができなかった。
[0018]
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、画質むらの改善と安定して均一な砂目を得ることができる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段
[0019]
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属ウェブを、アルカリ水溶液中でのエッチング処理を行った後、酸性水溶液中でのデスマット処理を行ってから、塩素イオンを含む酸性電解処理液の収容される複数の電解槽の中へ順次に浸漬させながら搬送し、前記電解槽内で前記金属ウェブに対向配置された複数の電極と前記金属ウェブとの間に電流を供給して、前記金属ウェブを電気化学的粗面化処理する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記電極と前記金属ウェブとの間に供給する電気量を、前記金属ウェブが陽極時の電気量の総和で150〜800C/dm、電流密度を電流値のピークで30〜300A/dmとし、
前記電解槽内の電解液の流速を、各電解槽内で平均流速を500〜400
【0005】
0mm/秒、前記電解槽内の前記金属ウェブの搬送方向と直交する幅方向に対する前記電解液の流速分布を前記平均流速の±50%以内にするとともに、前記複数の電極のうち隣接する電極間の隙間領域に対面する前記金属ウェブの搬送路区間を槽内電極間処理休止区間としたときに、1回の前記槽内電極間処理休止区間を通過する時間を0.05〜1秒とする速度で前記金属ウェブを搬送することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
[0020]
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、アルミニウムの砂目を均一にでき、汚れ性能が良好で、耐刷力および密着力を向上させて、画質むらを良好にすることができる。
[0021]
(2)(1)記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記電解液が塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含むことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
[0022]
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、電解槽に収容される電解液を、塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含むようにすることで、アルミニウムの砂目の均一化を、より一層向上させることができるとともに、耐刷力および密着力を、より一層向上させて画質むらを良好にすることができる。
[0023]
(3)(1)または(2)記載の平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記電解液を前記金属ウェブの搬送方向に対向する方向に流動させることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
[0024]
この平版印刷版用支持体の製造方法によれば、電解液を金属ウェブの搬送方向に対向させて流動させることで、金属ウェブ表面の電解液を攪拌することができ、金属ウェブ表面の液層を確実に更新させることができる。

Claims (7)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属ウェブを複数の電解槽の電解液中へ順次に浸漬させながら搬送し、前記電解槽内で前記金属ウェブに対向配置された複数の電極と前記金属ウェブとの間に電流を供給して、前記金属ウェブを電気化学的粗面化処理する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
    前記電解槽内の電解液の流速を、各電解槽内で平均流速を500〜4000mm/秒、前記電解槽内の前記金属ウェブの搬送方向と直交する幅方向に対する前記電解液の流速分布を前記平均流速の±50%以内にするとともに、
    前記複数の電極のうち隣接する電極間の隙間領域に対面する前記金属ウェブの搬送路区間を槽内電極間処理休止区間としたときに、1回の前記槽内電極間処理休止区間を通過する時間を0.05〜1秒とする速度で前記金属ウェブを搬送することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
  2. 前記電解液が塩素イオン、硫酸イオン、アルミニウムイオンを含むことを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  3. 前記電解液を前記金属ウェブの搬送方向に対向する方向に流動させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  4. 前記槽内電極間処理休止区間を、一つの前記電解槽内で少なくとも3区間設けることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  5. 前記金属ウェブが前記電解槽の電解液中から取り出され、前記金属ウェブの搬送路下流側に配置された他の電解槽の電解液に浸かるまでの前記金属ウェブの搬送路区間を槽外処理休止区間、前記電解槽内の前記複数の電極の並び方向両端から前記電解槽の電解液気液界面までの両搬送路区間の和を槽内電極端外側処理休止区間、前記槽外処理区間およびこれに連続する前記槽内電極端外側処理休止区間との和を槽間処理休止区間としたきに、1回の前記槽間処理休止区間を通過する時間を1〜5秒とする速度で前記金属ウェブを搬送することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  6. 前記槽間処理休止区間を、少なくとも3区間設けることを特徴とする請求項5記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  7. 前記金属ウェブと前記電極との間で前記電極に対応して複数配置された電解液供給口から、それぞれ前記電解液を噴射供給することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
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