JPWO2009119538A1 - エピメラーゼ活性を有する新規ポリペプチド、その製造方法ならびにその利用方法 - Google Patents

エピメラーゼ活性を有する新規ポリペプチド、その製造方法ならびにその利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、オリゴ糖の水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒する新規ポリペプチドを取得し、水酸基の立体配座が変化したオリゴ糖の酵素的合成法を提供することにある。【解決手段】 (1)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または(2)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチド。

Description

本発明は、新規ポリペプチドおよびその利用に関するものであり、より詳細には、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドおよびその製造方法、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびその利用方法、ならびに当該ポリペプチドを用いた還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化した当該還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖およびプレバイオティクスの製造方法に関する。
炭水化物は、生物の主要なエネルギー源であり、生体成分(脂肪酸、トリグリセリド、アミノ酸、核酸)に変換される生合成前駆体である。炭水化物はまた、結合組織、神経組織、細菌細胞壁、および核酸の構造的成分として重要な役割を担っている。さらに、糖タンパク質等が有する糖鎖として生体内の種々の情報伝達において重要な役割を担うことが近年明らかにされており、遺伝子工学、タンパク質工学および糖鎖工学等で注目を集めている。
上記のようなエネルギー源としての炭水化物や生体内情報伝達に関与する糖タンパク質中の糖鎖とは異なる機能性糖類として、多種多様な天然オリゴ糖あるいは人工オリゴ糖が報告され、これらを利用した医薬品および/または健康食品の開発も盛んに行われている(例えば、特許文献1および2参照)。
近年、様々な生理機能を有するオリゴ糖はプレバイオティクスとして特に注目されている。こうした機能性オリゴ糖合成を目的として多くの研究開発が行われた結果、これまでに様々なオリゴ糖が発見、合成され、応用開発の研究素材として利用されたり、中には工業的に生産されたりしているものもある(例えば、特許文献3参照)。現在、日本における特定保健用食品の半数以上が、機能性成分としてオリゴ糖を含んでいる。
機能性オリゴ糖の一例は、広く食品や化粧品に利用されているトレハロース(α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド)である。トレハロースは、デンプンからイソアミラーゼを用いてアミロースを製造した後、これを出発物質として先ずマルトオリゴシルトレハロースシンターゼの作用でアミロシルトレハロースを中間体として生成し、さらにこの中間体をマルトオリゴシルトレハローストレハロヒドロラーゼを用いて加水分解することで、生成される。この生成方法では、反応残渣であるアミロースを回収して、上記と同じ反応を繰り返さすことが必要である(非特許文献1参照)。
トレハロースは、深海のパエニバチルス(Paenibacillus)属細菌の生産するマルトースホスホリラーゼを用いて、マルトースとリン酸存在下でβ−D−グルコース−1−リン酸を生成し、この反応液にグルコースを加えてトレハロースホスホリラーゼの逆反応によっても生成される(特許文献4参照)。この生成法も、デンプンを原料とする上記方法と同様に、2〜4段階の酵素反応を要するために煩雑である。
機能性オリゴ糖の別の例として、プレバイオティクスや低カロリー商品として使用されるイソマルトオリゴ糖を挙げることができる。イソマルトオリゴ糖は、デンプンからバチルス(Bacillus)属のα−アミラーゼ、大豆のβ−アミラーゼおよび黒かび(Aspergillus niger)のα−グルコシダーゼを用いた3段階酵素反応で生成される。この酵素反応で生成されるオリゴ糖は、一般に(α−1,2、α−1,3、α−1,6)グリコシド結合された重合度2〜6糖類の混合物であり、混合物中に含まれるオリゴ糖の組成制御は難しい(非特許文献2参照)。
機能性オリゴ糖の他の例として、エピラクトースがある。エピラクトースは、バチルス サーキュランス(Bacillus circulans)ATCC 31382株由来のβ−1,4−galactosidaseの逆反応を利用して製造される(非特許文献3参照)。しかしこの製造法では、β−1,3結合、β−1,4結合およびβ−1,6結合をもつガラクトシルマンノースが約1:3:1で生成されるため、純粋なエピラクトースを得るためには、残存する基質とともにこれら副産物を複雑な精製操作によって除去する必要がある。
本発明者らが見出したエピラクトースの別の製造方法として、セロビオース2−エピメラーゼ(以下、CEと表す)を利用する方法がある(非特許文献4参照)。CE(EC5.1.3.11)は、セロビオースの還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒する活性を有する酵素であり、偏性嫌気性ルーメン細菌ルミノコックス アルブス(Ruminococcus albus)(以下、R.albus)7株(ATCC 27210として保存されている)において、その存在が示唆されていた(非特許文献5参照)。本発明者らは、R.albus NE1株からCEをコードする遺伝子のクローニングとその塩基配列の決定に成功し、本酵素が菌体内酵素であること、セロビオースからO−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−マンノース(Glc−Man)(図1)を生成することに加え、セロトリオース(Glc−Glc−Glc)から希少セロオリゴ糖であるGlc−Glc−Man(O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−マンノース)(図2)を、セロテトラオース(Glc−Glc−Glc−Glc)からGlc−Glc−Glc−Man(O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−マンノース)を生成することを明らかにした(非特許文献4参照)。
本発明者らは R.albus NE1株由来CEが、ラクトース(Gal−Glc)からエピラクトース(O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−マンノース)(図3)を生成することを証明しており、別途特許出願を行っている(PCT/JP2007/001253)。
異性化酵素であるエピメラーゼは、これまでに30数種類が報告されている。エピメラーゼの多くは、ヌクレオチドやリン酸、アシル基等の修飾を受けた糖類を基質とするものであり、未修飾の糖を基質とするものはアルドース1−エピメラーゼ(EC5.1.3.3)、マルトース1−エピメラーゼ(EC5.1.3.21)および前記のCE(EC5.1.3.11)の3種類だけである。これら3種類のエピメラーゼのうち、還元末端糖残基の2位水酸基に作用するエピメラーゼは前記CEのみである。
CEは、基質分子内部の立体配座を変化させる反応を触媒するために副産物を生じず、オリゴ糖の製造における有用性が高いと期待できる。このように異性化酵素であるエピメラーゼは、その独特な酵素活性から、希少オリゴ糖の合成に対して多くの利点および有用性を期待することができるが、現在までに報告された還元末端糖残基の2位水酸基に作用するエピメラーゼは、前記CEただ1種類にすぎない(非特許文献4参照)。
特開平8−256730号公報(平成8年10月8日公開) 特開2003−47402公報(平成15年2月18日公開) 特開平2−16992号公報(平成2年1月19日公開) WO2005/003343(平成17年1月13日公開) 杉本利行ら、日本農芸化学会誌、1995年、)第72巻、第915−922頁 菅野智栄、月刊フードケミカル、1998年、第10巻、第61−66頁 Miyasato,M.and Ajisaka,K.、Biosci.Biotechnol.Biochem.、2004年、第68巻、第2086−2090頁 S.Ito et al.、Biochem.Biophys.Res.Commun.、2007年、第360巻、第640−645頁 T.R.Tyler and J.M.Leatherwood、Arch.Biochem.Acta、1967年、第119巻、第363−367頁
本発明の目的は、オリゴ糖の水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒する新規ポリペプチドを取得し、水酸基の立体配座が変化したオリゴ糖の酵素的合成法を提供することにある。
本発明者らは、オリゴ糖の水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するエピメラーゼをコードする遺伝子を新たに取得し、さらに当該遺伝子にコードされる、オリゴ糖の水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドを取得し、その酵素化学的諸性質を解明して、下記の各発明を完成するに至った。
(i)(1)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または(2)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチド。
(ii)下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が42〜44kDaであり、
(B)配列番号9に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜7.5で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH5.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)最適温度:25℃における酵素活性を100%とした場合に、15〜30℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)温度安定性:50℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
(iii)下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が43〜45kDaであり、
(B)配列番号10に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜8.0で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH4.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、10〜45℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)40℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
(iv)下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が46〜48kDaであり、
(B)配列番号11に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜9.0で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH4.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、15〜35℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)40℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
(v)下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が44〜46kDaであり、
(B)配列番号12に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜7.5で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH5.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、20〜45℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)50℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
(vi)(1)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または(2)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(vii)(1)配列番号5〜8のいずれかで示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、または(2)配列番号5〜8のいずれかで示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのいずれかである、(vi)記載のポリヌクレオチド。
(viii)(vi)または(vii)に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
(ix)(viii)に記載の組み換えベクターが導入された形質転換体。
(x)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドの生産方法であって、(ix)記載の形質転換体を培養する工程と、前記形質転換体に前記ポリペプチドを生産させる工程と、前記形質転換体または前記形質転換体の培養上清から前記ポリペプチドを回収する工程とを包含することを特徴とする方法。
(xi)還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化した当該還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の製造方法であって、(i)〜(v)のいずれかに記載のポリペプチドと還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖とをインキュベートする工程と、前記ポリペプチドに前記オリゴ糖の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒させて前記オリゴ糖を製造する工程を包含することを特徴とする方法。
(xii)還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化した当該還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を含むプレバイオティクスの製造方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドと還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を含む材料とをインキュベートする工程と、前記ポリペプチドに前記オリゴ糖の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒させて前記プレバイオティクスを製造する工程を包含することを特徴とする方法。
本発明が提供するポリペプチドは、(1)基質分子内部の立体配座を変化させる反応を触媒し、オリゴ糖以外の反応物を必要とはしないので、オリゴ糖の製造を簡便かつ安価に製造することができる、(2)反応副生物が無いため目的の生成物の精製が容易であり、機能性オリゴ糖の大量生産に好適である、(3)非還元末端糖についての基質特異性が厳密ではないので、従来の手法では合成し得ないオリゴ糖を合成することができる、等の利点を有する。
したがって本発明が提供するポリペプチドを用いれば、還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化したセロオリゴ糖やエピラクトースのみならず、所望の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化した還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を容易かつ大量に合成することができる。これにより、生理作用を有するオリゴ糖、プレバイオティクス、シンバイオティクス、およびこれらを含む機能性食品を低価格で提供することができる。
本発明のポリペプチドが触媒する、セロビオースの還元末端側グルコースの2位水酸基を異性化してGlc−Manに変換する反応を示すスキームである。 本発明のポリペプチドが触媒する、セロトリオースの還元末端側グルコースの2位水酸基を異性化してGlc−Glc−Manに変換する反応を示すスキームである。 本発明のポリペプチドが触媒する、ラクトースの還元末端側グルコースの2位水酸基を異性化してエピラクトースに変換する反応を示すスキームである。 CE−NE1(登録番号BAF81108)、C.phytofermentans 由来AGE様タンパク(Cp AGE−like、登録番号ABX42625)、C.saccharolyticus由来AGE様タンパク(Cs AGE−like、登録番号ABP65941)、およびB.fragilis由来AGE様タンパク(Bf AGE−like、登録番号BAD47600)のアミノ酸配列を、Clustal Wプログラムを用いて多重整列した結果を示す図である。配列中の太字アミノ酸は2つの保存領域を、配列下の*は全ての配列で保存されているアミノ酸を、●はAnabaenaのAGE反応に関与する推定触媒残基を示す。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)をSDS−PAGE後にCBB染色したゲルの写真を示す図である。レーン1は、CE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6である。 CE−NE1のアミノ酸配列と比較するため、mD1、mD2、mD3、mR6のアミノ酸配列をClustal Wプログラムを用いて多重整列した結果を示す図である。配列中の太字アミノ酸はCE−NE1で保存されているアミノ酸を示す。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、セロビオースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは酵素無添加、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、セロトリオースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは酵素無添加、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、セロテトラオースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは酵素無添加、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、ラクトースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは酵素無添加、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、4β−マンノビオースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは酵素無添加、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、グロボトリオースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは酵素無添加、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 精製した組み換え酵素mR6について、セロビオース、グルコシルマンノースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーン1はセロビオースのみ、レーン2はセロビオース+mR6、レーン3はグルコシルマンノースのみ、レーン4はグルコシルマンノース+mR6で反応させた生成物である。 精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、単糖を基質とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーン1はグルコース、レーン2はマンノース、レーン3はガラクトース、レーン4はフルクトース、レーン5はキシロース、レーン6はアラビノースを基質とし、各レーンの左側は酵素無添加、右側は酵素添加した反応生成物について分析を行った。 精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、単糖をα−2糖とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーン1はコージビオース、レーン2はニゲロース、レーン3はマルトース、レーン4はイソマルトースを基質とし、各レーンの左側は酵素無添加、右側は酵素添加した反応生成物について分析を行った。 精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、単糖をβ−2糖とした酵素反応を行った後、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーン1はソホロース、レーン2はラミナリビオース、レーン3はセロビオース、レーン4はゲンチオビオースを基質とし、各レーンの左側は酵素無添加、右側は酵素添加した反応生成物について分析を行った。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、(A)セロビオース、(B)ラクトースを基質とした酵素反応を行った後、反応生成物を酸加水分解後、TLCで分析した結果を示す図である。レーンStdは標準の単糖((A)グルコースとマンノース、(B)ガラクトースとマンノース)、レーン1はCE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6を用いた反応生成物である。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、最適pHを示す図である。グラフ縦軸は、pH7.5における酵素活性を100%とした場合の相対値を、グラフ横軸はpHを示す。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、pH安定性を示す図である。グラフ縦軸は、保持処理を行わない場合の酵素活性を100%とした場合の相対活性を、グラフ横軸はpHを示す。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、最適温度を示す図である。グラフ縦軸は、25℃における酵素活性を100%とした場合の相対活性を、グラフ横軸は反応温度を示す。 CE−NE1、精製した組換え酵素(mD1、mD2、mD3、mR6)について、温度安定性を示す図である。グラフ縦軸は、保持処理を行わない場合の酵素活性を100%とした場合の相対活性を、グラフ横軸は反応温度を示す。 精製した組換え酵素(mR6)を市販牛乳と反応させ、反応生成物をTLCで分析した結果を示す図である。レーンSは標準のラクトース、レーン1は30℃で反応1時間後、レーン2は30℃で反応2時間後、レーン3は30℃で反応3時間後、レーン4は30℃で反応4時間後、レーン5は室温で反応24時間後の反応生成物である。
(I)ポリペプチド
本発明は、(1)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または(2)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドを提供する。
また、本発明は、下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドも提供する:
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量は42〜44kDaであり、
(B)配列番号9に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜7.5で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH5.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、15〜30℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)50℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
なお、上記(A)のSDS−PAGEによる見かけの分子量は、用いたポリペプチドにおける翻訳後修飾の程度や、SDS−PAGEに用いるゲルの濃度によって若干変動するため、実際のポリペプチドの分子質量が約38kDa〜48kDaであり得ることを当業者は容易に理解する。また、本発明により提供される配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドの例であり、その配列情報に基づいて計算された分子量は45425.5である。また、図5のレーン2に示される単一のバンドの位置を正確に表せば、SDS−PAGEによる見かけの分子量は43.2kDaである。
さらに本発明は、下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドも提供する:
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が43〜45kDaであり、
(B)配列番号10に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜8.0で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH4.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)最適温度:25℃における酵素活性を100%とした場合に、10〜45℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)40℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
なお、上記(A)のSDS−PAGEによる見かけの分子量は、用いたポリペプチドにおける翻訳後修飾の程度や、SDS−PAGEに用いるゲルの濃度によって若干変動するため、実際のポリペプチドの分子量が約39kDa〜49kDaであり得ることを当業者は容易に理解する。また、本発明により提供される配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドの例であり、その配列情報に基づいて計算された分子量は48346.9である。また、図5のレーン3に示される単一のバンドの位置を正確に表せば、SDS−PAGEによる見かけの分子量は44.3kDaである。
本発明はさらに、下のA)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドも提供する:
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が46〜48kDaであり、
(B)配列番号11に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜9.0で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH4.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、

(F)最適温度:25℃における酵素活性を100%とした場合に、15〜35℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)40℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
なお、このSDS−PAGEによる見かけの分子量は、用いたポリペプチドにおける翻訳後修飾の程度や、SDS−PAGEに用いるゲルの濃度によって若干変動するため、実際のポリペプチドの分子量が約42kDa〜52kDaであり得ることを当業者は容易に理解する。また、本発明により提供される配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドの例であり、その配列情報に基づいて計算された分子量は46964.0である。また、図5のレーン4に示される単一のバンドの位置を正確に表せば、SDS−PAGEによる見かけの分子量は46.7kDaである。
本発明は、下のA)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドも提供する:
(A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が44〜46kDaであり、
(B)配列番号12に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
(C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
(D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜7.5で80%以上の酵素活性を示し、
(E)pH5.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
(F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、20〜45℃で80%以上の酵素活性を示し、および
(G)50℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
なお、このSDS−PAGEによる見かけの分子量は、用いたポリペプチドにおける翻訳後修飾の程度や、SDS−PAGEに用いるゲルの濃度によって若干変動するため、実際のポリペプチドの分子量が約40kDa〜50kDaであり得ることを当業者は容易に理解する。また、本発明により提供される配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチドの例であり、その配列情報に基づいて計算された分子量は49177.6である。また、図5のレーン5に示される単一のバンドの位置を正確に表せば、SDS−PAGEによる見かけの分子量は45.4kDaである。
上記のポリプチドは何れも、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドである。以下、本明細書において使用される場合、「2−エピメラーゼ活性」とは、オリゴ糖の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒する活性が意図され、「2−エピマー化」とは、オリゴ糖の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させることが意図される。したがって、本発明のポリペプチドは、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対して2−エピメラーゼ活性を示し、当該オリゴ糖を2−エピマー化することができるポリペプチドである。
本発明のポリペプチドは、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に作用し、還元末端糖残基がβ−1,2結合、β−1,3結合、β−1,6結合、α−1,2結合、α−1,3結合、α−1,4結合、α−1,6結合のいずれかにより結合しているオリゴ糖には作用しない基質特異性を有する。
本発明のポリペプチドに対して基質となる、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖は、2〜15個の糖残基からなるオリゴ糖が意図される。好ましい糖残基の数は2〜5個であり、具体的には、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、ラクトース、グルコシルマンノース、4β−マンノビオース(O−β−D−マンノピラノシル−(1→4)−O−D−マンノース)、またはグロボトリオース(O−α−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコース)等を挙げることができる。
本発明のポリペプチドが有する2−エピメラーゼ活性は、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を基質とした酵素反応により生成する2―エピマー化されたオリゴ糖を定性的または定量的に測定して、表すことができる。例えば、HPLCやTLC等のクロマトグラフィーで反応液中のオリゴ糖を分析し、標準品との保持時間または移動度の比較により反応生成物ピークを同定し、標準品とのピーク面積比またはスポット強度から反応生成物濃度を算出することで、活性を測定することができる。また、標準品がない未知の反応生成物の場合は、例えば反応生成物を酸分解して構成糖に分解した後、クロマトグラフィーによる分離後、還元末端糖残基濃度を分析することで、活性を測定することができる。
以上のように、本発明は、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドは、セロビオースに対する2−エピメラーゼ活性を有するが、ラクトースまたはセロビオース以外のセロオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性をも有する。このような性質を併せ持つ本発明のポリペプチドは、新規オリゴ糖の合成あるいは希少オリゴ糖の大量生産に非常に有用である。
本発明のポリペプチドが有する理化学的性質における(D)は、いわゆる「最適pH」に関する性質であり、30℃、pH7.5での酵素活性を100%とした場合に、80%以上の酵素活性を示すpHを意味する。また本発明のポリペプチドが有する理化学的性質における(E)は、いわゆる「pH安定性」に関する性質であり、種々のpHで酵素を20時間4℃で保持した後に、30℃、pH7.5での酵素活性が80%以上残存するpH範囲を意味する。さらに、本発明のポリペプチドが有する理化学的性質における(F)は、いわゆる「最適温度」に関する性質であり、25℃、pH7.5での酵素活性を100%とした場合に、80%以上の酵素活性を示す反応温度を意味する。そして本発明のポリペプチドが有する理化学的性質における(G)は、いわゆる「温度安定性」に関する性質であり、種々の温度で酵素を1時間保持した後に、30℃、pH7.5での酵素活性が80%以上残存する温度範囲を意味する。なお、反応液に要する緩衝液としては、リン酸ナトリウム緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液が好ましく、緩衝液の濃度は20〜100mMが好ましい。
本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク」と交換可能に使用される。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分アミノ酸配列からなるポリペプチドが意図される。
また、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの精製に有用なアミノ酸配列を含むポリペプチドであってもよい。ポリペプチドの精製に有用なアミノ酸配列としては、例えば、His、Myc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドをコードするアミノ酸配列が挙げられる。
また、本発明のポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、リン酸基や糖鎖等の様々な修飾基を有するポリペプチドであってもよい。
さらに本発明は、配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体も提供する。
本明細書中においてポリペプチドに関して用いられる場合、「変異体」は、配列番号1〜4のアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性を保持するポリペプチドが意図される。本発明におけるアミノ酸の変異部位および個数は、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性を有するポリペプチドが提供される限りにおいて特に制限はないが、アミノ酸の個数でいえば1〜80個、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個である。アミノ酸配列の同一性の程度で改変の許容範囲を表せば、本発明の蛋白質のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有していればよい。
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変し得ることは、当該分野において周知である。
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有する。好ましくは、サイレント置換、欠失、および付加であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明のポリペプチドの還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性を変化させない。代表的な保存性置換としては、疎水性アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの間での相互の置換、ヒドロキシルアミノ酸SerおよびThrの相互の置換、酸性残基AspおよびGluの相互の置換、アミド型アミノ酸AsnおよびGlnの相互の置換、塩基性アミノ酸LysおよびArgの相互の置換、芳香属アミノ酸PheおよびTyrの相互の置換等が挙げられる。
当業者は、既知の技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1個または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法や、DNAを用いたPCR法によって、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加された変異体を作製することができる。さらに、ランダム変異によっても目的は達成される。さらに、上で述べた2−エピメラーゼ活性測定方法を用いれば、作製した変異体が所望の還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性を有するか否かを容易に決定し得る。
(II)ポリヌクレオチド
本発明は、本発明のポリペプチドすなわち上記に説明した還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖に対する2−エピメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
本明細書の記載に基づけば、当業者は、本発明のポリペプチドの全アミノ酸配列および該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの全塩基配列(または、ORFもしくはその一部)を取得することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、以下のように取得され得る。
先ず、本発明のポリヌクレオチドをクローニングする際の鋳型となるDNAもしくはRNAを準備する。鋳型のDNAもしくはRNAは、特に限定されるものではなく、例えば単一の生物に由来するものであってもよいし、複数の生物に由来するものであってもよい。したがって例えば、ルーメンや土壌等の自然界のサンプルから公知の方法により調製したメタゲノムDNAもしくはRNAを用いることができる。
「メタゲノム」とは、自然界から、(微)生物の分離・培養をしないで直接回収されたゲノムをいう。近年、環境微生物の生態を調べたり、未培養微生物の有用機能を持つ遺伝子を獲得したりするために、メタゲノム的手法による微生物生態学の研究が注目されている。「メタゲノム的手法」とは、自然界から(微)生物の分離・培養をしないでDNAやRNAを直接組換えて大規模シークエンスを行ない、目的形質(例えば酵素活性)を発現させる手法である。
メタゲノム的手法は、類似遺伝子と目的遺伝子の配列がある程度判明している場合に最も有効に発揮され、PCRによる完全長の目的機能性遺伝子の単離と発現が可能となる。Eschenfeldtらは土壌中の難培養性微生物DNAから2種の2,5−ジケト−D−グルコン酸還元酵素を単離し(W.H.Eschenfeldt et al.、Appl.Environ.Microbiol.、2001年、第67巻、第4206−4214頁)、Bellらも環境バイオマスから新規なリパーゼを単離した(P.J.L.Bell et al.、Microbiology、2002年、第148巻、第2283−2291頁)。同様に、UchiyamaとWatanabeは、PCRでメタゲノム・ウォーキングを行い、キチナーゼの単離を行っている(T.Uchiyama and T.Watanabe、Biotechniques,2006年、第41巻、第183−188頁)。
本発明のポリヌクレオチドをクローニングする際のプライマーは、本発明のポリヌクレオチドを特異的に増幅可能な塩基配列からなることが好ましい。一例として、本発明のポリペプチドをコードする塩基配列、例えば配列番号5〜8のいずれかに示される塩基配列の中から、それぞれの塩基配列に特徴的な塩基配列の一部または全部を選択してプライマーとすることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、上記の鋳型DNAもしくはRNAと、上記のプライマーを用いて、公知のPCR等の方法により取得した組換えDNAから得ることができる。いくつかの組換えDNA単離物からのヌクレオチド配列情報を組み合わせて、本発明のポリペプチドの全アミノ酸のコード配列、ならびに上流ヌクレオチド配列および下流ヌクレオチド配列を提供し得る。
また、本発明のポリヌクレオチドは、ホスホアミダイド法等の化学合成的手法により、あるいは市販のDNAシンセサイザー等を用いて製造することもできる。
本発明のポリヌクレオチドの好ましい例は、配列番号5〜8のいずれかに示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。また、本発明は、配列番号5〜8の何れかに示される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドも提供する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、例えば、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。また、塩基配列の同一性(%)で示せば、配列番号5〜8の塩基配列に対してそれぞれ70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなる核酸であればよい。
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)の形態で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。当該核酸は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに付加されるHisタグやFLAGタグ、あるいはGFP等のマーカータンパク質をコードする塩基配列を、5’側または3’側に付加されたものであってもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列には、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列、非翻訳領域の配列等が含まれる。
(III)ベクター
本発明は、前記の本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
本発明のベクターは、上述した本発明のポリヌクレオチドを含むものであれば、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよく、またインビトロ翻訳に用いるベクターであっても組換え発現に用いるベクターであってもよい。例えば、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのcDNAが挿入された組換え発現ベクター等が挙げられる。
本発明のベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウイルスを用いることも可能である。本発明のベクターは、特に宿主中で自立複製可能なものが好ましく、プラスミドDNA、ファージDNAの形態にあることが好ましい。核酸を大腸菌に導入するためのベクターの例としては、pBR322、pUC18、pBluescriptII、市販の発現ベクターであるpET−23d(Novagen社製)、pET−28a(Novagen社製)等のプラスミドDNAを、EMBL3、M13、λgtII等のファージDNA等を、それぞれ挙げることができる。また酵母に導入するためのベクターの例としては、YEp13、YCp50等を挙げることができる
組換えベクターは、本発明のポリヌクレオチドに加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子を含むことが好ましい。選択マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子の他、アミノ酸や核酸等の栄養素の細胞内生合成に関与する遺伝子、GFP等の蛍光タンパク質遺伝子、およびルシフェラーゼ遺伝子等を挙げることができる。
組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミド等を用いる方法が挙げられるが特に限定されない。ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明のポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明のポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
本発明のポリペプチド、任意の塩基配列ならびに選択マーカー等を用いたベクターの構築に際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させたりあるいは消失させたりすることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、例えばJ.Sambrookら(Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年、参照)を初めとする、種々の遺伝子組み換え操作を詳細に解説した実験操作マニュアル書の指示に基づいて行うことができる。
本発明のベクターを使用すると、上記ポリヌクレオチドを生物または細胞に導入でき、当該生物または細胞中に本発明のポリペプチドを発現させることができる。さらに、本発明のベクターを無細胞タンパク質合成系に用いれば、本発明のポリペプチドを合成することができる。このように、本発明のベクターは、少なくとも、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含めばよいといえる。すなわち、発現ベクター以外のベクターも、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
(IV)形質転換体
本発明は、本発明のポリヌクレオチドが導入された形質転換体を提供する。すなわち本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドを発現し、生産することのできる形質転換体である。なお、本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドが安定的に発現することが好ましいが、一過性的に発現していてもよい。
本明細書中で使用される場合、「形質転換体」は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含むことが意図されるが、細胞(特に、原核生物細胞、菌類(例えば、糸状菌等)であることが好ましい。本発明における形質転換体は、適当な宿主細胞に本発明のポリヌクレオチドあるいはベクターを導入することによって作製することができる。本発明で使用される宿主細胞は、好ましくは微生物である。好適な微生物としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌(より好ましくは大腸菌)、バチルス(Bacillus)属細菌(より好ましくは枯草菌)の他に、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、エルウニア(Erwinia)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ストレプトミセス(Streptomyces)属微生物、ザイモモナス(Zymomonas)属微生物、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母等の微生物を挙げることができる。特に好ましい宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)である。
宿主細胞への本発明のポリヌクレオチドやベクターの導入は、当業者に知られた方法によって行うことができる。宿主細胞へのベクター等の導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、酢酸リチウム法、接合伝達法、カルシウムイオンを用いる方法や等が挙げられる。
(V)ポリペプチドの製造方法
本発明は、本発明のポリペプチドの製造方法を提供する。
例えば、上記発現ベクターを用いて形質転換された宿主を培養した後、上記ポリペプチドを含有する画分(形質転換細胞、培養上清、またはその混合物)を回収し、慣用的な手法(例えば、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等)に従って、目的のポリペプチドを回収、精製することができる。上記画分が形質転換細胞を含む場合は、上述の慣用的手法に細胞破砕処理を組み合わせて、目的のポリペプチドを回収、精製することも可能である。
上記精製の過程で単離された画分は、例えば、本発明のポリペプチドに特異的なバイオアッセイ(例えば、ラクトースまたはセロオリゴ糖を基質として用いる酵素反応およびその生成物の解析)を用いて分析されることによって、本発明のポリペプチドの存在を確認することができる。
また、例えば、本発明のポリペプチドは、上述の慣用的精製方法に組み合わせて、アフィニティークロマトグラフィーによる精製も可能である。例えば、本発明のポリペプチドのうち、Hisタグを有するものはニッケルカラムを、Mycタグを有するものは抗Myc抗体を、Flagタグを有するものは抗Flag抗体を利用したアフィニティークロマトグラフィーにより、効率的な精製が実現される。本発明のポリペプチドを、タグその他の機能性ポリペプチドを付した形態で発現させる場合には、適当なプロテアーゼ(トロンビン、トリプシン等)を用いて付加されたタグや機能性ポリペプチド切断し、本発明のタンパク質を回収することができる。
本発明のポリペプチドは、それ単独の形態でもタグや機能性ポリペプチドが付加された形態でも調製することができるが、これらのみに制限されるものではなく、本発明で使用されるタンパク質をさらに種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合、リポソームへの封入等、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。
本発明のポリペプチドは、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)やtBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の、有機化学的合成方法、あるいは市販されている適当なペプチド合成機を用いて製造することもできるが、遺伝子組換え技術によって、前記の核酸、特に発現ベクターに組み込まれたDNAを原核生物もしくは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた好適な発現系に導入することによって製造することが好ましい。
(VI)オリゴ糖の製造方法
本発明は、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合した2−エピマー化オリゴ糖の製造方法を提供する。
本発明のオリゴ糖の製造方法は、本発明のポリペプチドを用いる。一実施形態において、本発明の方法は、本発明のポリペプチドを、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖とともにインキュベートする工程を包含する。上記オリゴ糖は特に限定されないが、セロオリゴ糖(セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース等)、ラクトース、グルコシルマンノース、4β−マンノビオースまたはグロボトリオースであることが好ましい。
本発明の方法における触媒反応の条件については、特に限定されないが、使用する本発明のポリペプチドに応じて先に述べた至適条件を考慮して設定することができる。また、本発明のポリペプチドは、精製された状態で触媒反応に使用することもできるが、カラムに固定化した状態、もしくは上記形質転換体の状態で使用することもできる。
本発明の方法において製造したオリゴ糖は、HPLC、シリカゲル、活性炭カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、大量生産レベルで精製される。精製の確認は、先に述べた方法で2−エピメラーゼ活性を測定することで、行うことができる。
(VII)プレバイオティクスの製造方法
本発明は、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合した2−エピマー化オリゴ糖を含むプレバイオティクスの製造方法を提供する。
「プレバイオティクス」は、「腸内フローラ(消化管内に生息している微生物群(主に嫌気性菌叢))のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える難消化性物質」(G.R.Gibson and M.B.Roberfroid、J. Nutr.、1995年、第125巻、第1401−1412頁、またはM.B.Roberfroid、J.Nutr.、2007年、第137830S−137837S)とされており、本明細書中で使用される場合、「動物(ヒトを含む)の腸内環境において有用な微生物(例えば、乳酸菌、ビフィズス菌等のプロバイオティクス)を増殖させて、腸内環境の改善を促進する物質」が意図される。代表的な「プレバイオティクス」としては、オリゴ糖等の難消化性物質、プロピオン酸菌による乳清発酵物、および食物繊維等があり、オリゴ糖は、プロバイオティクスのエサとなり、食物繊維は腸内細菌を貯留させてその増殖を補助する。
「プレバイオティクス」の効果としては、ミネラル分吸収促進効果、血中コレステロールや中性脂肪値の抑制、動脈硬化の予防、血糖値の抑制、糖尿病の改善、肥満の改善、腸の運動の活性化、便秘の改善、免疫能の活性化、感染症の予防、癌の予防、血中アンモニア値の抑制、肝機能低下による肝性脳症の改善、腸内細菌によるビタミン類合成の促進、各種ミネラルの吸収の促進、潰瘍性大腸炎の症状の改善等が挙げられるが、これらに限定されない。また、「プレバイオティクス」の摂取によってミネラル(例えば、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe3+等)の吸収が改善されることが、最近の研究によって明らかにされており、特にCa2+の吸収促進効果が注目されている。オリゴ糖は、ミネラル分吸収促進効果を有する場合がある。この作用機序は、オリゴ糖が小腸または大腸の内面の細胞と細胞との間の細胞相互結合組織の隙間(いわゆる、タイトジャンクション(TJ))を広げることによって各種ミネラルの吸収が促進されるためであると考えられている(T.Suzuki and H.Hara、Life Sci.、2006年、第79401−79410頁)。
本発明者らは、ラクトースの還元末端糖残基の2位水酸基についての立体異性体(エピマー)であるエピラクトースが、プレバイオティクスとして腸内環境改善作用、脂質代謝改善作用、ミネラル吸収促進作用、低カロリー性といった機能を有することを見出し、別途特許出願を行っている(国際特許出願 第PCT/JP2007/001253号)。本発明のポリペプチドはラクトースからエピラクトースを生成することができ、従って本発明のポリペプチドは、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合した2−エピマー化オリゴ糖を含むプレバイオティクスの製造に利用することができる。
本発明のプレバイオティクスの製造方法は、上記ポリペプチドを用いる。一実施形態において、本発明の方法は、上記ポリペプチドを、還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を含む材料とともにインキュベートする工程を包含する。上記オリゴ糖を含む材料は、特に限定されないが、例えばラクトースを含む天然原料である乳、特にウシ、ヤギあるいはヒツジ等の家畜乳を生乳のまま、あるいは脱脂してから、用いることができる。また、家畜乳から回収されるホエイ(乳精)画分や、低脂肪乳、低タンパク乳、脱脂・脱タンパク乳あるいは低乳糖乳等の加工乳や乳飲料も、上記オリゴ糖を含む組成物として用いることができ、その場合は、エピラクトースを含むプレバイオティクスを安価にかつ簡便に製造することができる。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、請求項および上記実施形態に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、塩基配列の解析はpDRAW32 AcaClone Software(http://www.acaclone.com/) を,相同性検索はBLAST(S.F.Altschul et al.、J.Mol.Biol.、1990年、第215巻、第403−410頁)を、塩基配列およびアミノ酸配列の多重整列にはCLUSTAL W(ver.1.83)(J.D.Thompson et al.、Nucl.Acids.Res.、1994年、第22巻、第4673−4680頁)を使用した。
<実施例1>メタゲノムDNAとRNAからの遺伝子のクローニングとシーケンス
メタゲノムDNAおよびRNAからのCE遺伝子のクローニングおよび塩基配列の決定を,以下の方法に従って行った。なお、アガロースゲル電気泳動装置には、サブマリン型電気泳動層Mupid−ex(ADVANCE社,Tokyo,Japan)を使用し,電気泳動用アガロースには、Seakem GTG Agarose(Lonza社,Rockland,ME)を使用した。塩基配列の解析はダイ・ターミネーター法により行い、ABI PRISM 310(Applied Biosystems社,Foster City,CA)あるいはCEQ 8000(Beckman Coulter社,Fullerton,CA)によって行った。サーマルサイクラーは、T−gradient(Biometra社,Gottingen,Germany)またはTaKaRa Thermalcycler Dice(Takara Bio社,Kyoto,Japan)を使用した。
(1)ルーメン内容物からのDNAの抽出
ヒツジからカニューレによりルーメン内容物を採取した。約6gの新鮮なルーメン内容物を、45mLの0.1%(w/v)ツィーン80を含む希釈液[3g/L NaCO、0.34g/L KHPO、0.34g/L NaCl、0.34g/L (NHSO、7.5mg/L MnSO・HO、24.8mg/L CaCl・2HO、38.4mg/L MgSO・7HO、7.5mg/L FeSO・7HO、7.5mg/L ZnSO・7HO、0.75mg/L CoCl・7HO、0.5g/L L−システイン・HCl・HO、1mg/L レサズリン(pH6.8)]に懸濁し、4℃において植物表面からルーメン細菌を剥離した。その懸濁液を40μmのナイロンメッシュで濾過し、濾液を500×gで遠心分離した。回収した上清を遠心分離して(13,400×g、1分間、4℃)ルーメン細菌の沈殿を回収した。Isoplant II(Nippongene社)を用いて、この沈殿からDNAを抽出した。
(2)ルーメン内容物からのRNAの抽出と1本鎖cDNAの合成
上記(1)と同様に採取したヒツジのルーメン内容物約0.2gを液体窒素で凍結し、マルチビーズショッカー(Yasui Kikai社)を用いて凍結したまま2000rpm、10秒間の破砕を4回繰り返した。その後、トリゾール試薬(Invitrogen社)を1mL加え、室温にて2000rpm、10秒間の破砕を2回繰り返した。菌体破液に200μLのクロロホルムを加え、よく撹拌してから2〜3分間室温で静置後、遠心分離した(20000×g、10分間、室温)。上清に500μLのイソプロパノールを加え、よく撹拌してから10分間室温で静置後、遠心分離した(20000×g、10分間、4℃)。得られたRNAの沈殿を100μLのRNase−free水に溶解し、RNeasy(Qiagen社)を用いて精製した。精製したmRNAをMICROBExpress(Ambion社)を用いて濃縮した。濃縮後のmRNAから、SuperScript III 1st Strand cDNA Synthesis kit(Invitrogen社)を用いて、1本鎖cDNAを合成した。
(3)エピメラーゼ遺伝子部分断片の増幅
N−アセチル−D−グルコサミン 2−エピメラーゼ(N−acetyl−D−glucosamine 2−epimerase、以下AGE)は、N−アセチル−D−グルコサミンを2−エピマー化してN−アセチル−D−マンノサミンを生成する酵素であり、既にブタ(登録番号PDB 1F3P)とシアノバクテリアであるアナベナ(Anabaena)(登録番号PDB 2GZ6)で立体構造も判明している。そこで、エピメラーゼ遺伝子の増幅に適した共通プライマー(universal primer)の設計を目的として、R.albus由来CE−NE1(登録番号BAF81108)、クロストリジウム ファイトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)ISDg株由来AGE様タンパク(Cp AGE−like、登録番号ABX42625)、カルディセルロシルプター サッカロリティクス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)DSM 8903株由来AGE様タンパク(Cs AGE−like、登録番号EAP43970)とバクテロイデス フラギリス(Bacteroides fragilis)YCH 46株由来AGE様タンパク(Bf AGE−like、登録番号BAD47600)の各アミノ酸配列を、Clustal Wプログラムを用いて多重整列した。
多重整列の結果(図4)、2つの保存領域(それぞれ、ボールド・フェース体で表示)が認められた。配列の上に示した黒丸(●)は、AnabaenaのAGE反応に関与する推定触媒残基を示している(Y.C.Lee et al.、J.Mol.Biol.、2007年、第367巻、第895−908頁)。この保存領域の塩基配列を使用して、共通プライマーとして、univ−f(配列番号13)とuniv−r(配列番号14)を設計した。
前記(1)の抽出DNAを試料とした場合、100ngのDNA、1UのTaKaRa Ex Taq polymerase(Takara Bio社)、1×PCR緩衝液(2mM MgCl、0.25mMのdNTP)および各0.25μMの前記プライマーuniv−fとuniv−rにより調製した25μLのPCR反応溶液でPCRを行った。また、前記(2)の一本鎖DNAを試料とした場合、100ngのDNA、12.5μLのAmpdirect Plus(Shimadzu社)、1UのTaKaRa Ex Taq polymerase(Takara Bio社)またはNova Taq Hot Start DNA polymerase(Merck社)および各6.25pmolのプライマーuniv−fとuniv−rにより調製した25μLのPCR反応溶液でPCRを行った。DNAサーマルサイクラーは、94℃で30秒、48℃で30秒、72℃で30秒を30サイクル、続けて72℃で4.5分伸長反応後、4℃で冷却する設定とした。PCR反応によって増幅された4種類の断片(md1、md2、md3、md6)を電気泳動(1.5%アガロースゲル)で分離し、QIAquick PCR purification kit(Qiagen社)を用いて精製し、その塩基配列を決定した。
(4)エピメラーゼ遺伝子部分断片からの完全長遺伝子の取得
(3)で増幅されたmd1〜3およびmd6の各塩基配列を基にして、インバースPCRと入れ子式(nested)PCR用の下記の各プライマーを設計、合成した。
Figure 2009119538
(1)の抽出DNAをEcoRI、HindIII、PstIでそれぞれ2時間消化し、DNA Ligation Convenience kit(Nippongene社)を用いて、一晩、自己環状化(セルフライゲーション)反応を行った。100ngのセルフライゲーションしたDNA、1UのTaKaRa Ex Taq polymerase(Takara Bio社)および1×PCR緩衝液(2mM MgCl、それぞれ0.2mMのdNTP、インバースPCR用の各プライマーセット20pmolを含む)25μLにより調製したPCR反応溶液で、インバースPCRを行った。次に、インバースPCRの反応産物1.0μL、1UのTaKaRa Ex Taq polymerase(Takara Bio社)および1×PCR緩衝液(2mM MgCl、それぞれ0.2mMのdNTP、nested PCR用各プライマーセット20pmolを含む)25μLにより調製したPCR反応溶液で、nested PCRを行った。いずれのPCR反応も、DNAサーマルサイクラーは、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分を40サイクル、続けて72℃で5分伸長反応後、4℃で冷却する設定とした。nested PCRによる増幅断片を電気泳動(1.0%アガロースゲル)で分離し、Recochip(Takara Bio社)を用いて回収した。回収した増幅断片をそれぞれpGEM−Tベクター(Promega社)にサブクローニング後、塩基配列を決定した。
決定した塩基配列を基に、さらに下記の各プライマーを設計した。
md1; md1F−S1(配列番号31)とmd1F−A1(配列番号32)
md2; md2F−S1(配列番号33)とmd2F−A1(配列番号34)
md3; md3F−S1(配列番号35)とmd3F−A1(配列番号36)
mr6; mr6F−S1(配列番号37)とmr6F−A1(配列番号38)
前記(1)の抽出DNA100ng、1UのTaKaRa Ex Taq polymeraseおよび1×PCR緩衝液(2mM MgCl、0.2mMのdNTP、上記各プライマーセット20pmolを含む)25μLにより調製したPCR反応溶液で、さらにPCRを行った。DNAサーマルサイクラーは、94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で2分を35サイクル、続けて72℃で5分伸長反応後、4℃で冷却する設定とした。増幅されたDNA断片をpGEM−Tベクターにサブクローニングして、完全長のmd1、md2、md3、mr6を含む組換えプラスミドpGEM−md1、pGEM−md2、pGEM−md3およびpGEM−mr6を得、それぞれの塩基配列を決定した。
md1の塩基配列とそれにコードされるタンパク質(mD1と表す)の推定アミノ酸配列を配列番号5と配列番号1に、md2に含まれるORFの塩基配列とそれにコードされるタンパク質(mD2と表す)の推定アミノ酸配列を配列番号6と配列番号2に、md3に含まれるORFの塩基配列とそれにコードされるタンパク質(mD3と表す)の推定アミノ酸配列を配列番号7と配列番号3に、mr6に含まれるORFの塩基配列とそれにコードされるタンパク質(mR6と表す)の推定アミノ酸配列を配列番号8と配列番号4に、それぞれ示す。
<実施例2>タンパク質mD1、mD2、mD3、mR6の発現系の構築と精製
(1)発現用プラスミドの構築
タンパク質mD1、mD2、mD3、mR6を大腸菌を宿主として発現させるための発現ベクターを構築するため、以下のプライマーを設計した。
mD1;mD1−F(配列番号39)とmD1−R(配列番号40)
mD2;mD2−F(配列番号41)とmD2−R(配列番号42)
mD3;mD3−F(配列番号43)とmD3−R(配列番号44)
mR6;mR6−F(配列番号45)とmR6−R(配列番号46)
mD1−FおよびmD1−RとpGEM−md1とを、mD2−FおよびmD2−RとpGEM−md2とを、mD3−FおよびmD3−RとpGEM−md3とを、mR6−FおよびmR6−RとpGEM−mr6とを組み合わせてPCRを行い、各ORF両末端に制限酵素認識部位を導入した(md1:NdeI−XhoI、md2:NdeI−EcoRI、md3:NdeI−XhoI、md6:NdeI−XhoI)。PCRは98℃で10秒間、55℃で2秒間、72℃で1.5分間の反応を25サイクル行った。反応液から増幅断片をそれぞれ回収し、pBluescript II SK (+)(Stratagene社)のEcoRV部位にサブクローニングした。挿入断片に変異が導入されていないことを確認した後、導入した前記制限酵素認識部位を用いて大腸菌発現ベクターpET−23a(+)(Novagen社)に挿入して、発現ベクターpET−md1、pET−md2、pET−md3およびpET−mr6を得た。
(2)タンパク質の発現誘導
pET−md1、pET−md2、pET−md3およびpET−mr6をE. coli BL21(DE3)に導入し、最終濃度100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地上で形質転換体を選抜し、同様の液体培地10mL中にて37℃で一晩前培養した。500mL容三角フラスコに入れた同液体培地200mLに前培養液0.5mLを接種し(合計800mL)、37℃で160rpmにて振盪培養を行った。600nmにおける吸光度が0.6に達した時点でイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(isopropyl−β−D−thiogalactoside)を最終濃度0.1mMになるように添加し、目的タンパク質の発現を誘導し、さらに20℃にて20時間振盪培養を行った。
(3)組換え酵素の精製
以下の操作は全て4℃で行った。
4000×gで10分間の遠心分離により、(2)の培養液800mLから菌体を回収した。この菌体を、25mLの1mM フェニルメチルスルフォニルフルオリド(phenylmethylsulfonyl fluoride)を含む緩衝液A(20mM MES−NaOH(pH6.0)、1mM EDTA、1mM ジチオスレイトール)に懸濁した後に、Ultrasonic Disruptor UD−201(TOMY社)を用いて破砕した。菌体破砕後、20000×gで20分間の遠心分離を行い、得られた上清を粗酵素液とした。
粗酵素液を、予め緩衝液Aで平衡化したTOYOPEARL CM−650M(Tosoh Bioscience社)とDEAE Sepharose Fast Flow(GE Healthcare Bio−Sciences社)の連結カラムに添加した。緩衝液Aで洗浄後、TOYOPEARL CM−650Mカラムを分離し、DEAE−Sepharoseカラムに吸着したタンパク質を0〜500mMのNaCl直線濃度勾配で溶出して、5mLずつ50本に分画して回収した。各画分をSDS−PAGEに供し、組換えタンパク質が最も多く溶出された画分を精製画分として回収した後、緩衝液A中で透析した。
透析後の酵素溶液をVIVASPIN 20(VIVASCIENCE社)を用いて濃縮した。濃縮液に等量のグリセロールを加えてよく撹拌した後、精製された組み換え酵素として、使用するまで−20℃で保存した。
<実施例3>組換え酵素の性質
(1)組換え酵素のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)
SDS−PAGEは、Laemmliの方法(Nature,1970年、第227巻、第680−685頁)に従って行った。泳動装置には MiniProteanIII(Bio−Rad社)を使用した。分離ゲルのアクリルアミド濃度は10%(ゲル厚0.75mm)とし、15mAの定電流で泳動を行った。泳動後のゲルはBio−Safe CBB G−250 Stain(Bio−Rad社)を用いて染色した。標準タンパク質にはSDS−PAGE Standard,Low range(Bio−Rad社)を用いた。また対照のCE−NE1は、非特許文献1記載の方法に従って調製した。
得られた全ての精製組換え酵素、mD1、mD2、mD3、mR6はSDS−PAGEで単一なバンドを与えた。それぞれの組換え酵素の電気泳動パターンを図5に示した。レーン1は、CE−NE1(対照)、レーン2はmD1、レーン3はmD2、レーン4はmD3、レーン5はmR6である。
(2)組換え酵素のN末端アミノ酸配列
精製タンパク質をSDS−PAGEに供した後、Mini Trans Blot Eloctrophoretic Transfer Cell(Bio−Rad社)を用いてPVDF膜(Immobilon−P、Millipore社)に転写した。転写は、ブロッティング緩衝液(25mM Tris、192mM グリシン、0.1% SDS、10%メタノール)を使用し、100Vの定電圧で1時間行った。転写後、タンパク質をCBBで染色後、バンドを切り出し、水ならびにメタノールによってそれぞれ3回洗浄を行った。プロテインシーケンサーを用いて、得られたバンドのN末端アミノ酸配列を解析した。その結果、mD1、mD2、mD3、mR6のN末端アミノ酸配列は、それぞれMFVEEIKKDLVED(配列番号9)、MDLKTMSEQMKEH(配列番号10)、MKNEVVYKQL(配列番号11)、MVQTMIKEMQ(配列番号12)と同定された。これらのアミノ酸配列は、それぞれの完全長推定アミノ酸配列(配列番号1、2、3、4)のN末端配列と完全に一致した。
(3)分子量
精製された組み換え酵素mD1、mD2、mD3、mR6をSDS−PAGEして染色した後、ゲルを市販のデジタルカメラで撮影し,ImageJ 1.36b(National Institutes of Health)を用いて泳動度(図5)を測定し、同一ゲル上のSDS−PAGE Standard,Low range(Bio−Rad)の泳動度から分子量を算出した。その結果、mD1、mD2、mD3、mR6の分子量は、それぞれ約43.2、44.3、46.7、45.4kDaと推定された。また、mD1、mD2、mD3、mR6の推定アミノ酸配列をもとにCompute pI/Mw(http://kr.expasy.org/tools/pi_tool.html)を用いて推定分子量を計算した。その結果、mD1、mD2、mD3、mR6の分子量は45425.5(配列番号1;アミノ酸数、389)、48346.9(配列番号2;アミノ酸数、412)、46964.0(配列番号3;アミノ酸数、405)、49177.6(配列番号4;アミノ酸数、423)と見積もられ、SDS−PAGEの結果と近似していた。なお、非特許文献1によると、R.albus NE1のCE−NE1の分子量は、約43.1kDa付近である(計算分子量、45217.4;アミノ酸数、389)。
(4)等電点
推定アミノ酸配列をもとにした等電点(pI)を、Compute pI/Mwを用いて計算した。その結果、mD1、mD2、mD3、mR6の等電点は、それぞれpH4.99、4.83、4.82、4.89と計算された。なお、非特許文献1によると、R. albus NE1のCE−NE1の計算等電点は、pH4.69である。
(5)アミノ酸配列の相同性
mD1、mD2、mD3、mR6の推定アミノ酸配列と相同性の高い公知のそれと相同性(同一性)検索を行った(blastp、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)。
mD1は、コプロコックス ユータクタス(Coprococcus eutactus)ATCC 27759由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号EDP27130)と65%、フェカリバクテリウム プラウスニッチ(Faecalibacterium prausnitzii)M21/2由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号EDP22108)と60%、およびC.phytofermentans ISDg由来AGE(登録番号ABX42625)と59%の同一性を示した。R.albus NE1株とATCC 27210株のCE(登録番号BAF81108とBAF81109)に対しては51%の同一性を示した。
mD2は、C.eutactus ATCC 27759由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号EDP27130)と55%、C. phytofermentans ISDg由来AGE様タンパク(登録番号ABX42625)と55%、F.prausnitzii M21/2由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号ABP6594)と50%、C.saccharolyticus DSM8903由来AGE様タンパク(登録番号EDP27130)と45%の同一性を示した。R.albus NE1とATCC 27210のCE(BAF81108とBAF81109)に対しては44%の同一性を示した。
mD3は、C.eutactus ATCC 27759由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号EDP22108)と54%、F.prausnitzii M21/2由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号ABP6594)と51%、C.phytofermentans ISDg由来AGE様タンパク(登録番号ABX42625)と50%の同一性を示した。R.albus NE1とATCC27210のCE(登録番号BAF81108とBAF81109)に対しては46%の同一性を示した。
mR6は、バクテロイデス ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC8492由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号EDO52282)と57%、B.fragilis NCTC9343由来hypothetical protein(AGE様)(登録番号CAH06520)と56%、B.fragilis YCH46由来AGE様タンパク(登録番号BAD47600)と56%、パラバクテロイデス ディスタソニス(Parabacteroides distasonis)ATCC8503由来AGE様タンパク(登録番号ABR41852)と54%の同一性を示した。R.albus NE1とATCC 27210のCE(登録番号BAF81108とBAF81109)に対しては、38%の同一性を示した。
図6は、CE−NE1の推定アミノ酸配列(登録番号BAF81108)と、mD1、mD2、mD3、mR6の各推定アミノ酸配列との多重整列を示したものである。mD1、mD2、mD3、mR6の推定アミノ酸配列は、CE−NE1のそれと、それぞれ50.9、45.5、46.6、40.9%の同一性を示した。
(6)2−エピメラーゼ活性の定量的測定
40μLの250mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)、10μLの0.2M D−ラクトース(または、適当な基質)および40μLの水を混合した後、適当に希釈した10μLの酵素溶液を加え反応を開始した。反応温度は30℃とした。10分後、100μLの0.1N HClを加え混合した後、速やかに2分間煮沸し反応を停止させた。上記の条件で酵素反応させた後、300μLの水を加え13,000×gで5分間遠心分離した。上清90μLに内部標準として10μLの2mg/mLマルチトール(林原社)を混合し、下記の設定のHPLCに供した。
HPLCシステム:LC−2000 Plus(日本分光)
ガードカラム:SUGAR SP−G(6.0mm×50mm,Shodex)
分離カラム:SUGAR SP0810(8.0mm×300mm、Shodex)
溶離液:水
流速:0.8mL/分
カラム温度:80℃。
検出:気化光散乱検出器(ELD2000ES;Alltech Associates,Deerfield,IL)、温度115℃、ガス流速3.2l/分
検量線はエピラクトース(Sigma社)を用いて作成した。エピラクトースに由来するピーク(溶出時間)とマルチトールに由来するピーク(溶出時間)の面積から相対的に算出した。Bradford法(M.M.Bradford、Anal.Biochem.、1976年、第72巻、第248−254頁)に従って、タンパク質を定量した。検量線は牛血清アルブミンを用いて作製した。
(7)基質特異性
mD1、mD2、mD3、mR6の基質特異性を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって調べた。15μLの20mMグリシルグリシン−NaOH(pH7.5)、20μLの各基質溶液(0.1M)および5μLの精製酵素溶液(約0.5μg)を混合し、30℃で一晩反応させた。反応溶液の1μLをTLCアルミニウムシート(Silica gel 60、Merck社)にスポットし、2−プロパノール/1−ブタノール/水=7:6:2の溶媒系を用いて展開した。乾燥後、アニスアルデヒド法によって生産物の有無を検証した。
セロビオースを基質とした場合の結果を図7に、セロトリオースの結果を図8に、セロテトラオースの結果を図9に、ラクトースの結果を図10に、4β−マンノビオースの結果を図11に、グロボトリオースの結果を図12に示す。mD1、mD2、mD3は、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、ラクトース、4β−マンノビオースおよびグロボトリオースから生成物を生成した。mR6の場合、セロビオース、セロトリオース、ラクトース、4β−マンノビオースおよびグロボトリオースから生成物が検出され、セロテトラオースから生成物は検出されなかった。生成物の移動度はCE−NE1と同一であった。したがってセロビオースからはGlc−Man(O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−マンノース)が、セロトリオースからはGlc−Glc−Man(O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−マンノース)が、セロテトラオースからはGlc−Glc−Glc−Man(O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル−O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−マンノース)が、ラクトースからはエピラクトース(O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−マンノース)が、4β−マンノビオースからはMan−Glc(O−β−D−マンノピラノシル−(1→4)−D−グルコース)が、グロボトリオースからはO−α−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−マンノースが、それぞれ生成したと推察された。
同じ実験条件下で、セロビオースと、その2位水酸基についてのエピマーであるグルコシルマンノースを基質とした試験を行った。mR6を用いた結果を図13に示す。セロビオースを基質とした場合はグルコシルマンノースが生成し、グルコシルマンノースを基質とした場合はセロビオースが生成した。したがって本発明のポリペプチドは、2位水酸基がaxial位、equatrial位のいずれの位置にある糖に対しても、エピメラーゼ活性を示すことが明らかとなった。
同じ実験条件下でグルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、コージビオース(α−1,2)、ニゲロース(α−1,3)、マルトース(α−1,4)、イソマルトース(α−1,6)、ソホロース(β−1,2)、ラミナリビオース(β−1,3)、ゲンチオビオース(β−1,6)を基質として用いても、mD1,mD2、mD3、mD6はいずれも生成物を与えなかった(図14〜図16)。
(8)反応生成物の同定
a.反応生成物の精製
前記(7)で反応生成物が検出された基質のうち、セロビオース、セロトリオースおよびラクトースについて、生成物の同定を行った。50mgのセロビオース、セロトリオースあるいはラクトースを1mLの5mM glycylglycine−NaOH(pH7.5)に溶解し、酵素溶液5μL(約2μg)を加え、30℃で一晩反応させた後、全量を0.5mm厚ガラスTLCプレート(Silica gel 60 F254,Merck)によって2回展開した(2−プロパノール/1−ブタノール/水=12:3:4)。TLCプレートの反応生成物を含む領域のシリカゲルを削りとり、30mLの水で抽出した。これを8000×gで10分間の遠心分離を行い、上清を0.22μmのシリンジフィルター(ADVANTEC社)でろ過し、ろ液を凍結乾燥機FD−1000(EYELA社)で濃縮した。
b.酸加水分解による同定
精製されたセロビオースおよびラクトース(約1mg)からの反応生成物を100μLの水に溶解し、等量の8Mトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、100℃で3時処理し、減圧濃縮機で乾固させた。少量の2−プロパノールの添加→再乾固という操作を3回繰り返し、TFAを完全に取り除いた。その後、100μLの水に溶解し、1μLを前記aと同じ条件によるTLCで解析した。その結果、セロビオースからの生成物はグルコースとマンノースが、ラクトースからの生成物はガラクトースとマンノースが検出され、発色強度からその組成比はそれぞれ1:1であると予想された(図17)。これらの結果から、セロビオースから生成したオリゴ糖はGlc−Man、ラクトースから生成したオリゴ糖はエピラクトースであり、mD1、mD2、mD3、mR6が、CE−NE1と同様の2−エピメラーゼ活性を有することが示唆された。
c.核磁気共鳴(NMR)法による同定
上述のmR6をラクトースに反応させた生成物について、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を重水に置換した後、高分解能核磁気共鳴(NMR)装置(BRUKER AMX−500 spectrometer(500MHz);Bruker社)に供し、13Cのスペクトルを測定した(13C−NMR)。なお、外部標準としてTSP([2,2,3,3−D]sodium 3−3−(trimethylsilyl)propanoate)を用いた。得られた13Cのスペクトルは、市販のエピラクトース(Sigma社)スペクトルと完全に一致するものであった。さらに、表2の13C−NMRスペクトルにおけるケミカルシフトに纏めたように、得られたエピラクトースはαとβのアノマーであり、13C−NMRスペクトルのピークのケミカルシフトから生成物がエピラクトースであると同定した。
Figure 2009119538
また、セロトリオース反応生成物から得られたスペクトルは、過去に報告された細胞壁多糖由来Glc−Glc−Manのスペクトルと完全に一致した(R.Goldberg et al.Carbohydr.Res.、1991年、第210巻、第263−276頁)(データは示さない)ことから、Glc−Glc−Manであると同定した。
(9)最適pH
mD1、mD2、mD3、mR6について、最適pHを測定した。100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5、7.0、7.5、8.0)あるいは100mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5、8.0、8.5、9.0)を用い、緩衝液以外は全て前記(6)の条件に従って活性を測定した。その結果、mD2はリン酸緩衝液中でpH7.5近傍(図18A)、mD2はリン酸緩衝液中でpH7〜8(図18B)、mD3はリン酸緩衝液とグリシルグリシン緩衝液中でpH7〜8.5に渡り(図18C)、mR6はリン酸緩衝液とグリシルグリシン緩衝液中でpH7〜8に最大活性が認められた(図18D)。なお、CE−NE1の最大活性はリン酸緩衝液中でpH7.5近傍に認められた。
(10)pH安定性
mD1、mD2、mD3、mR6のpH安定性試験を行った。各酵素をpH2.5〜10.0の条件下、20時間4℃で保持した後、前記(6)の条件に従って残存酵素活性を測定した。その結果、mD1はpH5〜8、mD2はpH4〜8、mD3はpH4〜8、mR6はpH5〜8の保持処理後も80%以上の活性を維持した(図19A〜D)。なおCE−NE1は、pH5〜9の保持処理後も80%以上の活性を維持した。mD1、mD2、mD3、mR6はいずれもCE−NE1と同等のpH安定性を有していた。
(11)最適温度
mD1、mD2、mD3、mR6の酵素活性測定を各温度(20、30、40、50、60、70℃)で行った。反応温度以外は全て(6)の条件に従い、リン酸緩衝液中で活性を測定した。その結果、mD1、mD2、mD3、mR6は、それぞれ約25℃(図20A)、20〜40℃(図20B)、25〜35℃(図20C)、30〜45℃付近(図20D)で最大活性を示した。なお、CE−NE1の最大活性は30℃近傍に認められた。CE−NE1と比較して、mD2は0℃でも相対活性50%と、低温領域でも顕著な活性を示す酵素であった。また、mR6は50℃でも60%以上の相対活性を示しており、高温領域でも作用する酵素であった。
(12)温度安定性
mD1、mD2、mD3、mR6の温度安定性試験を行った。30、40、50、60℃で1時間インキュベート後、前記(6)の条件に従って、10分後、30分後、1時間後の酵素活性を測定した。その結果、mD1およびmR6は50℃、mD2とmD3は40℃の保持処理後も80%以上の活性を維持した(図21A〜D)。なおCE−NE1は、40℃の保持処理後も80%以上の活性を維持した。mD1とmR6はCE−NE1よりも優れた温度安定性を有しており、特にmR6は、50℃で1時間処理しても、ほぼ100%の活性を維持しており、極めて温度安定性の高い酵素であった。mD2およびmD3はCE−NE1と同等の温度安定性を有していた。
(13)最大UV吸収値
各ポリペプチドを230〜500nmでの吸収を測定した。その結果、mD1、mD2、mD3、mR6のいずれも最大吸収が278〜280nmにあるタンパク質であった。
<実施例4>市販牛乳を用いたプレバイオティクス製造試験
mR6を用いて、エピラクトースを含むプレバイオティクスの製造試験を行った。市販の牛乳490μlに10μl(約1μg)のmR6を添加して酵素反応を行い、30℃で反応1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、および室温で反応24時間反応を行った。反応液を水で10倍希釈し、10分間煮沸した後、15000×gで10分間の遠心分離を行って得た上清をTLCで分析した。上記以外は、全て実施例3の(7)の条件に従った。
30℃で反応3時間後、4時間後、および室温で反応24時間後の反応液において、エピラクトースの生成が認められ(図22)、本発明のポリペプチドを用いることによって市販牛乳から直接、エピラクトースを含むプレバイオティクスの製造が可能であることが示された。
本発明を用いれば、2−エピマー化したセロオリゴ糖やエピラクトースのみならず、所望のβ−1,4結合を有するエピマー化オリゴ糖を容易かつ大量に合成することができるので、食品分野において、例えば、プレバイオティクス、シンバイオティクス、これらを含有する機能性食品(例えば、ノンカロリーもしくは低カロリーの食品、またはミネラル(特に、Ca2+等)吸収に優れた食品)を低価格で提供することができる。 また、生理機能を有する食品または食品添加物等を開発することができるので、医薬/製薬の分野においても有用である。

Claims (12)

  1. (1)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または(2)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチド。
  2. 下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
    (A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が42〜44kDaであり、
    (B)配列番号9に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
    (C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
    (D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜7.5で80%以上の酵素活性を示し、
    (E)pH5.0〜8.0で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
    (F)最適温度:25℃における酵素活性を100%とした場合に、15〜30℃で80%以上の酵素活性を示し、および
    (G)温度安定性:50℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
  3. 下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
    (A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が43〜45kDaであり、
    (B)配列番号10に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
    (C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
    (D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜8.0で80%以上の酵素活性を示し、
    (E)pH4.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
    (F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、10〜45℃で80%以上の酵素活性を示し、および
    (G)40℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
  4. 下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
    (A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が46〜48kDaであり、
    (B)配列番号11に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
    (C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
    (D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜9.0で80%以上の酵素活性を示し、
    (E)pH4.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
    (F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、15〜35℃で80%以上の酵素活性を示し、および
    (G)40℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
  5. 下の(A)〜(G)に示される理化学的性質を有するポリペプチド;
    (A)SDS−PAGEによる見かけの分子量が44〜46kDaであり、
    (B)配列番号12に示されるアミノ酸配列をN末端に有し、
    (C)還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を特異的に触媒し、
    (D)pH7.5における酵素活性を100%とした場合に、pH7.0〜7.5で80%以上の酵素活性を示し、
    (E)pH5.0〜8.0下で4℃、20時間保持した後、酵素活性が80%以上残存し、
    (F)25℃における酵素活性を100%とした場合に、20〜45℃で80%以上の酵素活性を示し、および
    (G)50℃で1時間保持した後に、30℃における酵素活性が80%以上残存する。
  6. (1)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または(2)配列番号1〜4のいずれかで示されるアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  7. (1)配列番号5〜8のいずれかで示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、または(2)配列番号5〜8のいずれかで示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのいずれかである、請求項6記載のポリヌクレオチド。
  8. 請求項6または7に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
  9. 請求項8に記載の組み換えベクターが導入された形質転換体。
  10. 還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の当該還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒するポリペプチドの生産方法であって、請求項9記載の形質転換体を培養する工程と、前記形質転換体に前記ポリペプチドを生産させる工程と、前記形質転換体または前記形質転換体の培養上清から前記ポリペプチドを回収する工程とを包含することを特徴とする方法。
  11. 還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化した当該還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖の製造方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドと還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖とをインキュベートする工程と、前記ポリペプチドに前記オリゴ糖の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒させて前記オリゴ糖を製造する工程を包含することを特徴とする方法。
  12. 還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座が変化した当該還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を含むプレバイオティクスの製造方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドと還元末端糖残基がβ−1,4結合により結合しているオリゴ糖を含む材料とをインキュベートする工程と、前記ポリペプチドに前記オリゴ糖の還元末端糖残基の2位水酸基の立体配座を変化させる反応を触媒させて前記プレバイオティクスを製造する工程を包含することを特徴とする方法。
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WO2010090095A1 (ja) 2009-02-05 2010-08-12 株式会社林原生物化学研究所 セロビオース2-エピメラーゼとその製造方法並びに用途

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